説明

アシストグリップ取付構造

【課題】車体側部の後部側にピラー骨格部材が車両上下方向に沿って延在している車両において当該ピラー骨格部材の軽量化及び所定の剛性の確保という背反事項を満足させ、又地上から車室床面位置が高い場合であっても乗降性を改善する。
【解決手段】クォーターピラー14のピラー骨格部材としてのルーフサイドアウタパネル20は車両室内側へ向けて開放するハット形断面形状に形成されており、さらに、フランジ部22とフランジ部24との間を車両前後方向に沿って連結する状態でアシストグリップ30が締結固定されている。したがって、大きな荷重作用時において、ルーフサイドアウタパネル20の断面変形が抑制され、車両内方側及び外方側に倒れ込むことが防止される。これにより、車両10が走行中にレーンチェンジする際のRr廻り収束性(操縦安定性能)、車室内こもり音(NV性能)、耐久強度のレベル向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に適用される乗員把持用のアシストグリップ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、乗員の乗降性を向上させるために、乗員把持用のアシストグリップを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
前記特許文献1に示されたアシストグリップでは、当該アシストグリップをセンターピラーに取り付ける構成であり、一方、前記特許文献2に示されたアシストグリップでは、当該アシストグリップをルーフサイドインナパネルに取り付ける構成であり、何れのものも乗員は必要に応じて当該アシストグリップを把持して乗降することができ、乗降性が大幅に向上する。
【0004】
ところで、自動車等の車両のうち近年では「3列座席」を備えたもの(例えば、SUV等)がある。この種の「3列座席」を備えたSUV等の車両は、一般的に地上から車室床面位置が高く、このため、身長の低い乗員(例えば、女性や子供)にとっては乗降し難いものとなっていた。
【0005】
この場合、乗員の乗降性を改善するために、前記特許文献1に示されたアシストグリップを前述の如き「3列座席」を備えた例えば前記SUV等の車両に適用しても、当該アシストグリップをセンターピラーの座席に近い部分(2列目座席の前方)に取り付ける構成であるため、3列目の座席に乗降する乗員にとっては当該アシストグリップが乗降性に寄与せず、乗降性は改善されなかった。また、前記特許文献2に示されたアシストグリップでは、当該アシストグリップをルーフサイドインナパネルに取り付ける構成であるため(すなわち、車体の上部位置に設けられた構成であるため)、同様に、身長の低い乗員にとっての乗降性は依然として改善されず、このための対策が求められていた。
【0006】
一方、このような「3列座席」を備えた前記SUV等の車両では、車体側部の後部側にピラー骨格部材(所謂、クォーターピラーのパネル材)が車両上下方向に沿って延在している。このピラー骨格部材は、車両室内側へ向けて開放するハット形断面形状に形成されると共に、その下端部がホイールハウスに接合された構成となっており、所定の剛性を確保している。
【0007】
しかしながら、一般的に、前述の如きピラー骨格部材はホイールハウスとの接合部位周辺においては高い剛性を確保し易いものの、車両上下方向に沿って延在しているピラー骨格部材の中間部位においては、車体重量の軽量化及び所定の剛性の確保という背反する課題を満足させることが難しく、このための好適な対策が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平4−215535号公報
【特許文献2】特開平4−34131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、車体側部の後部側にピラー骨格部材が車両上下方向に沿って延在している車両において当該ピラー骨格部材の軽量化及び所定の剛性の確保という背反する要求を共に満足させることができ、また、地上から車室床面位置が高い場合であっても乗降性を改善することができるアシストグリップ取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明のアシストグリップ取付構造は、車両室内側へ向けて開放するハット形断面形状に形成され車体側部の後部側に車両上下方向に沿って延在するピラー骨格部材を備えた車両に適用される乗員把持用のアシストグリップ取付構造であって、前記アシストグリップを、前記ピラー骨格部材の前記開放側のフランジ部の間を車両前後方向に沿って連結する状態で締結固定した、ことを特徴としている。
【0011】
請求項1記載のアシストグリップ取付構造では、ハット形断面形状に形成されたピラー骨格部材の開放側のフランジ部の間が、アシストグリップによって車両前後方向に沿って連結する状態で締結固定されており、このアシストグリップによって当該ピラー骨格部材が実質的に補強される。したがって、大きな荷重作用時においても、ピラー骨格部材の断面変形(ハット形断面の開放側が押し拡がったり押し縮まる所謂口開き変形)が抑制され、当該ピラー骨格部材が車両内方側及び外方側に倒れ込むことが防止される。
【0012】
これにより、例えば、車両がレーンチェンジする際のRr廻り収束性(操縦安定性能)、車室内こもり音(NV性能)、耐久強度のレベル向上を図ることができる。
【0013】
しかもこの場合、単にアシストグリップをピラー骨格部材の開放側のフランジ部の間に締結固定するという簡単な構成であるため、不要な重量増加を招くことが無く、軽量でありつつ剛性を向上させることができる。
【0014】
またさらに、乗員は必要に応じて当該アシストグリップを把持して乗降することができ、乗降性が大幅に向上する。
【0015】
このように、請求項1記載のアシストグリップ取付構造では、車体側部の後部側にピラー骨格部材が車両上下方向に沿って延在している車両において当該ピラー骨格部材の軽量化及び所定の剛性の確保という背反する要求を共に満足させることができ、また、地上から車室床面位置が高い場合であっても乗降性を改善することができる。
【0016】
請求項2に係る発明のアシストグリップ取付構造は、請求項1記載のアシストグリップ取付構造において、前記アシストグリップを、車両のクォーターウインドウのベルトラインからホイールハウスの間の中間位置で締結固定した、ことを特徴としている。
【0017】
請求項2記載のアシストグリップ取付構造では、車両のクォーターウインドウのベルトラインからホイールハウスの間の中間位置でアシストグリップが締結固定されているため、車両上下方向に沿って延在しているピラー骨格部材の中間部位において好適(効果的)に補強されることとなり、軽量化できつつ所定の剛性の確保することができる。
【0018】
またさらに、地上から車室床面位置が高い場合であっても乗降を補助するのに最適であり、大幅に乗降性を改善することができる。
【0019】
請求項3に係る発明のアシストグリップ取付構造は、請求項1または請求項2記載のアシストグリップ取付構造において、前記ピラー骨格部材はルーフサイドアウタパネルとされ、前記ルーフサイドアウタパネルに内装トリムが直接に取り付けられている、ことを特徴としている。
【0020】
請求項3記載のアシストグリップ取付構造では、ピラー骨格部材がルーフサイドアウタパネルとされており、このルーフサイドアウタパネルに内装トリムが直接に取り付けられている。すなわち、一般的に用いられる「ルーフサイドインナパネル」が省略された構成であってもアシストグリップによって所定の剛性を確保することができ、更なる軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明のアシストグリップ取付構造は、車体側部の後部側にピラー骨格部材が車両上下方向に沿って延在している車両において当該ピラー骨格部材の軽量化及び所定の剛性の確保という背反する要求を共に満足させることができ、また、地上から車室床面位置が高い場合であっても乗降性を改善することができるという優れた効果を有している。
【0022】
請求項2に係る発明のアシストグリップ取付構造は、請求項1に係る発明のアシストグリップ取付構造が有する優れた効果に加えて、ピラー骨格部材の中間部位を効果的に補強することができ、またさらに、乗員の乗降を補助するのに最適であるという優れた効果を有している。
【0023】
請求項3に係る発明のアシストグリップ取付構造は、請求項1または請求項2に係る発明のアシストグリップ取付構造が有する優れた効果に加えて、更なる軽量化を図ることができるという優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図1乃至図4を用いて、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、矢印Up方向が上方であり、矢印Outが車両室外側であり、また、矢印Fr方向が車両前方側である。
【0025】
図1には、本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付構造が適用された車両10の3列目座席付近の構成が車両室内側から視た斜視図にて示されている。
【0026】
この車両10においては、車体後部側の座席12の近傍にクォーターピラー14及びクォーターウインドウ16が設けられている。クォーターピラー14は、車体側部の後部側に車両上下方向に沿って延在しており、座席12はクォーターウインドウ16の直近に位置している。
【0027】
図2及び図3に詳細に示す如く、クォーターピラー14においては、ボデー外板としてのサイドメンバー18の車両室内側に、ピラー骨格部材としてのルーフサイドアウタパネル20が設けられている。このルーフサイドアウタパネル20は、車両室内側へ向けて開放するハット形断面形状に形成されており、車両前後方向端部にそれぞれフランジ部22、フランジ部24を備えている。図3に示す如く、このルーフサイドアウタパネル20の下端部は、ホイールハウス26に接合された構成となっており、所定の剛性を確保している。また、ルーフサイドアウタパネル20の開放側(すなわち、車両室内側)には、内装トリム28が直接に取り付けられている。
【0028】
さらにここで、ルーフサイドアウタパネル20の開放側(車両室内側)には、乗員把持用のアシストグリップ30が取り付けられている。アシストグリップ30は、ルーフサイドアウタパネル20におけるクォーターウインドウ16のベルトラインからホイールハウス26の間の上下中間位置で、このルーフサイドアウタパネル20の開放側に形成されたフランジ部22とフランジ部24との間を車両前後方向に沿って連結する状態で、しかも前述した内装トリム28を挟み込んで、ボルト&ナット32によって、締結固定されている。
【0029】
以下に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0030】
上記構成のアシストグリップ30及びその取付構造が適用された車両10においては、ハット形断面形状に形成されたルーフサイドアウタパネル20(ピラー骨格部材)の開放側のフランジ部22とフランジ部24との間が、アシストグリップ30によって車両前後方向に沿って連結する状態で締結固定されており、このアシストグリップ30によって当該ルーフサイドアウタパネル20が実質的に補強される。
【0031】
ここで、図4(A)に示す如く仮にアシストグリップ30及びその取付構造が適用されていない構成であった場合には、大きな荷重作用時において、図4(A)に二点鎖線にて示す如くルーフサイドアウタパネル20の断面変形(ハット形断面の開放側が押し拡がったり押し縮まる所謂口開き変形)が生じやすくなる。このため、結果的に、図3に二点鎖線にて示す如き当該ルーフサイドアウタパネル20が車両内方側及び外方側に倒れ込む現象が生じ易くなる。したがって、このような剛性不足を補うための別の新たな対策(例えば、補強パネルを増設する等)が必要となり、重量増加の原因となってしまう。
【0032】
これに対し、本実施形態に係るアシストグリップ30及びその取付構造が適用された車両10においては、図4(B)に部分的に示す如く、ハット形断面形状に形成されたルーフサイドアウタパネル20(ピラー骨格部材)の開放側のフランジ部22とフランジ部24との間がアシストグリップ30によって連結する状態で締結固定されて、補強されている。
【0033】
したがって、大きな荷重作用時において、前記図4(A)に二点鎖線にて示す如きルーフサイドアウタパネル20の断面変形が抑制され、図3に二点鎖線にて示す如き当該ルーフサイドアウタパネル20が車両内方側及び外方側に倒れ込むことが防止される。
【0034】
これにより、例えば、車両10が走行中にレーンチェンジする際のRr廻り収束性(操縦安定性能)、車室内こもり音(NV性能)、あるいは耐久強度のレベル向上を図ることができる。
【0035】
しかもこの場合、単にアシストグリップ30をルーフサイドアウタパネル20の開放側のフランジ部22とフランジ部24との間に締結固定するという簡単な構成であるため、不要な重量増加を招くことが無く、軽量でありつつ剛性を向上させることができる。
【0036】
また、このアシストグリップ30は、車両10のクォーターウインドウ16のベルトラインからホイールハウス26の間の中間位置で締結固定されているため、車両上下方向に沿って延在しているクォーターピラー14(ルーフサイドアウタパネル20)の上下中間部位において好適(効果的)に補強されることとなり、軽量化できつつ所定の剛性の確保することができる。
【0037】
さらに、このアシストグリップ30の取付構造では、クォーターピラー14のピラー骨格部材としてのルーフサイドアウタパネル20に内装トリム28が直接に取り付けられている。すなわち、一般的に用いられる「ルーフサイドインナパネル」が省略された構成であってもアシストグリップ30によって所定の剛性を確保することができ、更なる軽量化を図ることができる。
【0038】
またさらに、アシストグリップ30は、クォーターピラー14(ルーフサイドアウタパネル20)の上下中間部位に設けられているため、身長の低い乗員(例えば、女性や子供)であっても必要に応じて容易に把持することができる。したがって、乗員の乗降を補助するのに最適であり、車両10の車室床面位置が地上から高い場合であっても大幅に乗降性を改善することができる。
【0039】
このように、本実施形態に係るアシストグリップ30の取付構造では、車体側部の後部側にルーフサイドアウタパネル20(ピラー骨格部材)が車両上下方向に沿って延在している車両10においてクォーターピラー14(ルーフサイドアウタパネル20)の軽量化及び所定の剛性の確保という背反する要求を共に満足させることができ、また、地上から車室床面位置が高い場合であっても乗降性を改善することができる。
【0040】
なお、前述した実施形態においては、3列座席を備えた車両10のクォーターピラー14(ルーフサイドアウタパネル20)にアシストグリップ30の取付構造を適用した例を説明したが、本発明に係るアシストグリップ取付構造はこれに限らず、車体側部の後部側にピラー骨格部材が車両上下方向に沿って延在している車両であれば他のピラー骨格部材に本取付構造を適用して構成することができる。この場合であっても、前記実施形態におけるルーフサイドアウタパネル20及びアシストグリップ30と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
また、前述した実施形態においては、ルーフサイドアウタパネル20の開放側に内装トリム28が直接に取り付けられており、アシストグリップ30は内装トリム28を挟み込んでルーフサイドアウタパネル20に締結固定された構成としたが、これに限らず、アシストグリップ30の取付け部分の形状に対応させて内装トリム28に取付用の透孔(ボルト孔)を形成し、内装トリム28を挟み込むことなく直接にアシストグリップ30をルーフサイドアウタパネル20に締結固定するように構成してもよい。
【0042】
さらに、前述した実施形態においては、ルーフサイドアウタパネル20に内装トリム28が直接に取り付けられた構成(すなわち、一般的に用いられる「ルーフサイドインナパネル」が省略された構成)としたが、当該「ルーフサイドインナパネル」がルーフサイドアウタパネル20と共に用いられて構成されたピラー骨格部材であっても、本発明に係るアシストグリップ取付構造を適用することができる。この場合には、アシストグリップ30によって更なる剛性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付構造が適用された車両の3列目座席付近の構成を示す車両室内側から視た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付構造の構成を示し、図1の2−2線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付構造の構成を示し、図1の3−3線に沿った断面図である。
【図4】(A)は本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付構造を適用しない場合のルーフサイドアウタパネルの変形状態を示す断面図であり、(B)は本発明の実施形態に係るアシストグリップ取付構造を簡易的に示す(A)に対応した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両
14 クォーターピラー
20 ルーフサイドアウタパネル(ピラー骨格部材)
22 フランジ部
24 フランジ部
26 ホイールハウス
28 内装トリム
30 アシストグリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両室内側へ向けて開放するハット形断面形状に形成され車体側部の後部側に車両上下方向に沿って延在するピラー骨格部材を備えた車両に適用される乗員把持用のアシストグリップ取付構造であって、
前記アシストグリップを、前記ピラー骨格部材の前記開放側のフランジ部の間を車両前後方向に沿って連結する状態で締結固定した、
ことを特徴とするアシストグリップ取付構造。
【請求項2】
前記アシストグリップを、車両のクォーターウインドウのベルトラインからホイールハウスの間の中間位置で締結固定した、
ことを特徴とする請求項1記載のアシストグリップ取付構造。
【請求項3】
前記ピラー骨格部材はルーフサイドアウタパネルとされ、前記ルーフサイドアウタパネルに内装トリムが直接に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のアシストグリップ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−227063(P2009−227063A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73992(P2008−73992)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】