アシストグリップ
【課題】組付け作業性に優れ、見栄えがよく、かつ使用時の強度の高いアシストグリップとする。
【解決手段】ヒンジ部材の回動軸を、ヒンジ部材と一体の軸突起と、ヒンジ部材とは別体のピン部材とから構成し、ヒンジ部材に形成された空間にスプリングケースを配置し、コイルスプリングがスプリングケースを介してヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するようにした。
【解決手段】ヒンジ部材の回動軸を、ヒンジ部材と一体の軸突起と、ヒンジ部材とは別体のピン部材とから構成し、ヒンジ部材に形成された空間にスプリングケースを配置し、コイルスプリングがスプリングケースを介してヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室に設けられ握ることで人体を支持するアシストグリップに関する。より詳しくは、コイルスプリングを備え、不使用時には車室壁面に沿うように付勢されることで車室内への突出量を少なくできるアシストグリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車室内には、搭乗者が身体を支持するために、アシストグリップが設けられている。このアシストグリップは、固定タイプのものもあるが、近年では、不使用時には車室壁面に沿い、使用時に回動させて握るようにした回動タイプのものが多く用いられている。この回動タイプのアシストグリップは、長手形状をなし両側基部にヒンジ用凹部をもつ略U字形状のグリップ本体と、ヒンジ用凹部内に各々回動可能に保持されたヒンジ部材と、ヒンジ部材とグリップ本体との間に介装されヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するコイルスプリングと、ヒンジ部材に保持され車体に形成された係合穴に係合することでヒンジ部材を車体に固定するクリップと、を有するものである。
【0003】
この回動タイプのアシストグリップは、ヒンジ部材がクリップによって車体に固定され、不使用時にはコイルスプリングの付勢力によってグリップ本体が車室壁面に沿った状態となり、車室内への突出量が僅かとなっている。そして使用時には、コイルスプリングの付勢力に抗してグリップ本体をヒンジ部材の回動軸を中心に回動させて車室内へ突出させる。こうすることでグリップ本体を握ることができ、身体を支持することができる。
【0004】
例えば特開2006−175990号公報あるいは特開2006−117074号公報には、ヒンジ部材にそれぞれ貫通孔をもつ一対の脚部を形成し、グリップ本体のヒンジ用凹部の周壁の互いに対向する左右壁にも貫通孔を形成したアシストグリップが提案されている。このアシストグリップによれば、ヒンジ部材とヒンジ用凹部とに形成された各貫通孔を同軸に配置し、金属製のピン部材を挿通することで、ヒンジ部材がヒンジ用凹部に回動可能に保持される。
【0005】
ところが上記したアシストグリップでは、ヒンジ用凹部の外側表面にピン部材の端面が表出する。また使用時にグリップ本体を回動させると、ヒンジ部材の一対の脚部の間にピン部材が視認される。したがってピン部材の金属光沢が視認されるため、見栄えが悪いという問題がある。さらに上記したアシストグリップでは、ピン部材の抜けを防止するために、ピン部材にローレット加工などを施してヒンジ用凹部の貫通孔に圧入することで固定している。そのため上記したアシストグリップは、ピン部材の圧入工数が大きく組付け作業性が悪いという不具合がある。
【0006】
そこで特表2009−501663号には、ヒンジ部材の一対の脚部にそれぞれ外方へ突出する軸部を一体に形成し、ヒンジ用凹部の周壁の互いに対向する左右内表面にそれぞれ軸穴を形成し、軸部を軸穴に係合させることでヒンジ部材をヒンジ用凹部に回動可能に保持したアシストグリップが提案されている。このようにしたことで、ピン部材が不要となり、突起の端面が視認されることもないので見栄えがよくなる。
【0007】
また特表2009−501663号には、コイルスプリングを収納したスプリングケースをヒンジ部材の一対の脚部の間に保持し、グリップ本体の戻り機能を果たすような設計としたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−175990号公報
【特許文献2】特開2006−117074号公報
【特許文献3】特表2009−501663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献3に記載のアシストグリップでは、ヒンジ部材の一対の脚部を互いに近接する方向へ弾性変形させながら軸部を軸穴に係合させているため、組付け作業性が悪いという不具合がある。また軸部が樹脂製であるため、金属製のピン部材に比べて強度が低いという不具合もある。さらにスプリングケースの固定構造に関する具体的な記載が無く、スプリングケースが脱落することが想定される。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヒンジ部材をヒンジ用凹部に組付ける際の作業性に優れ、見栄えがよく、部品の脱落を確実に防止でき、かつ使用時の強度の高いアシストグリップとすることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明のアシストグリップの特徴は、長手形状をなし両側基部にヒンジ用凹部をもつグリップ本体と、ヒンジ用凹部内に各々回動可能に保持されたヒンジ部材と、ヒンジ部材とグリップ本体との間に介装されヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するコイルスプリングと、ヒンジ部材に保持され車体に形成された係合穴に係合することでヒンジ部材を車体に固定するクリップと、を有するアシストグリップであって、
ヒンジ用凹部はヒンジ部材の回動軸方向に対向する一対の側壁の内表面にそれぞれ側壁を貫通しない軸受穴を有し、
ヒンジ部材はケース用凹部と、ケース用凹部の回動軸方向に対向する一対の側壁の一方に形成された貫通孔と、貫通孔と同軸に一対の側壁の他方から外方へ突出する軸突起と、を有し、軸突起が一方の軸受穴に挿入され貫通孔が他方の軸受穴と連通するようにヒンジ用凹部に収納され、
ケース用凹部には貫通孔及び他方の軸受穴を貫通するピン部材が挿入され、ヒンジ部材は軸突起とピン部材とが同軸に配置されることで一対の軸受穴に対して回動可能に配置され、
ケース用凹部にはコイルスプリングが収納されたスプリングケースがヒンジ部材と共に回動可能に保持され、
スプリングケースはコイルスプリングの中心軸方向に延びる底壁と、底壁から立設されコイルスプリングの両端面に対向する一対の立壁と、底壁に形成されコイルスプリングの一端部が巻回方向へ移動するのを可能とするスリットと、を備え、
コイルスプリングは一端部がグリップ本体に係合し他端部がスプリングケースに係合することでスプリングケースを介してヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢していることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアシストグリップによれば、ピン部材の一端部が貫通しない軸受穴に挿入され、ピン部材の他端部はヒンジ部材及びスプリングケースによって覆われた状態となるため、アシストグリップの使用時にもピン部材は外部から視認されず見栄えがよい。またグリップ本体は、ヒンジ部材から突出する軸突起とピン部材とで両端が支持されて回動するので、金属製のピン部材を用いることで十分な強度を確保することができる。さらにコイルスプリングやピン部材及びヒンジ部材の組付けが容易であり、組付工数を軽減することができる。
【0013】
そしてコイルスプリングの一端部がグリップ本体に係合し他端部がスプリングケースに係合することで、ヒンジ部材はスプリングケースを介してヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢されている。したがってスプリングケースはコイルスプリングの付勢力によってケース用凹部に向かって押圧されているので、ケース用凹部からの脱落が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るアシストグリップの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るアシストグリップの要部分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るアシストグリップに用いたスプリングケースの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係るアシストグリップに用いられコイルスプリングが収納されたスプリングケースを回動軸方向から見た正面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るアシストグリップに用いられコイルスプリングが収納されたスプリングケースの斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、ヒンジ部材をヒンジ用凹部に挿入している状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、ピン部材を軸受孔に嵌合する状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納する前の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施例に係るアシストグリップの要部断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップに用いたヒンジ部材の斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納する前の状態を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納した後でスプリングケースの回動前の状態を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納した後でスプリングケースの回動後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアシストグリップを組付けるには、先ずピン部材をヒンジ部材のケース用凹部内に配置し、ケース用凹部の貫通孔に挿入して、ピン部材の先端が外側に突出しない状態で保持しておく。次いでヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する。このとき、ヒンジ部材の軸突起を一方の軸受穴に係合させるとともにヒンジ部材の貫通孔側の端部がヒンジ用凹部から出た位置とし、ヒンジ用凹部に対してヒンジ部材を斜めの状態とする。そしてヒンジ部材の貫通孔側の端部をヒンジ用凹部に向かって押圧することで、ヒンジ部材をヒンジ用凹部に容易に収納することができる。その後、ピン部材を軸受穴に向かって押圧してヒンジ用凹部の他方の軸受穴に挿入する。
【0016】
あるいは、先ずヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納し、その後にピン部材をケース用凹部に配置し、ケース用凹部の貫通孔からヒンジ用凹部の他方の軸受け穴に貫通するように挿入してもよい。
【0017】
なおクリップは、ヒンジ部材に予め装着しておいてもよいし、ヒンジ部材の収納後に装着してもよい。
【0018】
次に、コイルスプリングが収納されたスプリングケースをヒンジ部材のケース用凹部に挿入する。このとき、コイルスプリングの一端部がグリップ本体のヒンジ用凹部の一部に係合し、他端部がスプリングケースに係合する。したがってスプリングケースの挿入に伴ってコイルスプリングを巻回することができ、挿入後はコイルスプリングの一端部がスプリングケースをケース用凹部に向かって付勢するため、スプリングケースは安定してケース用凹部に保持される。
【0019】
ピン部材の一端が貫通孔からケース用凹部に突出し、ピン部材の端面がスプリングケースの一方の立壁と対向している。このようにしたことで、立壁によってピン部材の移動が規制されるため、ピン部材が他方の軸受穴から抜けるのを防止することができる。したがってピン部材を軸受穴に嵌合する必要がなくなり、組付工数を低減することができる。また立壁とピン部材の端面と間の隙間によって各部材の成形時の形状誤差を吸収することができ、ガタも防止することができる。さらにピン部材を金属製とすれば、グリップ本体の回動時にピン部材の端面とスプリングケースの立壁とが摺接しても、異種材どうしの摺接となるため異音の発生を防止することができる。
【0020】
スプリングケースは、コイルスプリングの巻回方向に延びる底壁と、底壁から立設されコイルスプリングの両端面に対向する一対の立壁と、底壁に形成されコイルスプリングの一端部が巻回方向へ移動するのを可能とするスリットと、を備え、底壁の表面にコイルスプリングが横たわる状態で収納される。コイルスプリングの他端部は底壁に対向し、一端部はスリットに位置して巻回方向への移動が許容されている。
【0021】
スプリングケースの一対の立壁の少なくとも一方には、コイルスプリングの内周面に当接する突起を形成することが望ましい。突起によってコイルスプリングがスプリングケースから脱落するのを防止することができ、組付け作業性が向上する。
【0022】
スプリングケースの一方の立壁は、ピン部材を案内するガイド溝を有することが望ましい。このようにすることで、コイルスプリングが収納されたスプリングケースをケース用凹部に収納する際に、貫通孔から突出するピン部材の先端がガイド溝で案内されて一方の立壁の外側表面と対向する。したがってスプリングケースのケース用凹部への収納が容易となる。このとき、コイルスプリングの一端部がグリップ本体と当接するので、スプリングケースをケース用凹部へ向かって一方向へ挿入するだけで、コイルスプリングを巻回し、付勢力を蓄えることができる。
【0023】
またスプリングケースは他方の立壁の外側表面に凸部をもち、ヒンジ部材はケース用凹部の一対の側壁の他方に貫通しない凹部をもち、凸部が凹部に係合していることが好ましい。このようにすることで、ケース用凹部からのスプリングケースの脱落をさらに防止することができる。
【0024】
このように組付けられたアシストグリップは、ヒンジ部材に取付けられたクリップが車体に形成された取付孔に係合されることで、ヒンジ部材を介して車体に固定される。ヒンジ部材はコイルスプリングによってスプリングケースを介してヒンジ用凹部へ収納される方向へ付勢されているので、グリップ本体は車室の壁に沿った状態となり、車室内への突出量は少ない。そして使用時にグリップ本体を回動させると、コイルスプリングにはさらに付勢力が蓄えられるため、乗員には適度な荷重で支持される感覚が得られ、使用フィーリングに優れている。
【0025】
本発明のアシストグリップは、さらに次のような構成を有することが好ましい。すなわち、スプリングケースの他方の立壁とケース用凹部の側壁には互いに係合することでスプリングケースのケース用凹部へのスライド移動を案内するスライド凹部とスライド凸部とをそれぞれ備え、スライド凹部はスライド凸部がスライド係合した後に回動可能であると共にスライド凸部の回動を規制する規制部をもち、コイルスプリングが収納されたスプリングケースをケース用凹部に収納する際にスライド凸部がスライド凹部をスライド移動することでコイルスプリングに付勢力が蓄えられ、スライド移動後にその付勢力によってスライド凸部が回動し、スライド凸部が規制部に当接してスライド凸部の回動が規制されることでスプリングケースがケース用凹部に固定されるように構成することが好ましい。
【0026】
このような構成とすれば、組付時には、スライド凸部がスライド凹部をスライド移動することで蓄えられた付勢力によってスプリングケースが自動的に所定角度回動し、スライド凸部が規制部に当接することで回動が規制されるとともにスプリングケースがケース用凹部に固定される。したがってスプリングケースのケース用凹部からの脱落をさらに確実に防止することができる。
【0027】
また規制部はスライド凹部とスライド凸部とのスライド方向に対して交差する方向にスライド凹部に向かって突出し、スライド凸部が回動して規制部に当接することでスライド凸部がスライド凹部から抜ける方向の移動を規制するように構成することが好ましい。このようにすることで、規制部によってスプリングケースのケース用凹部からの脱落をさらに確実に防止することができる。
【0028】
以下、実施例によって本発明の実施形態を具体的に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1に本実施例のアシストグリップの分解斜視図を示す。このアシストグリップは、樹脂製のグリップ本体1を備えている。グリップ本体1は棒状の握り部と一対の基部とからなる略U字状をなし、握り部の延びる方向(以下、左右方向という)の両端に基部10がそれぞれ形成されている。
【0030】
両端の基部10には、ヒンジ用凹部11がそれぞれ形成されている。ヒンジ用凹部11を区画形成する側壁の互いに対向する左右内表面には、それぞれ側壁を貫通しない軸受穴12が形成されている。また一方のヒンジ用凹部11の側壁にはバネ係止部13が形成され、他方のヒンジ用凹部11の側壁にはダンパ係止部14が形成されている。
【0031】
ヒンジ用凹部11には、それぞれ樹脂製のヒンジ部材2と樹脂製のカバー部材3が回動可能に収納されている。一対のヒンジ部材2は、それぞれ鏡対称形状に形成され、図2にも示すように、基部20と、図2の上下方向を貫通する空間をもつ枠部21と、ケース用凹部22と、枠部21内から突出する舌片部23とを備えている。
【0032】
図2には、左側のヒンジ部材2を示している。ケース用凹部22の基部10に対して内側となる右側壁には貫通孔24が形成されている。また貫通孔24が形成されていない左側壁の内周面には凹溝状のガイド部25が形成され、ガイド部25の底部には貫通しない凹部26と、凹部26から端部に向かって徐々に深くなる溝部27とが形成されている。
【0033】
またヒンジ部材2の左側壁には、貫通孔24と同軸で外方に突出する軸突起28(図6参照)が一体に形成されている。軸突起28の先端には面取り部280が形成されている。また右側壁の外側表面には、貫通孔24を挟んだ両側に一対のリブ200が形成され、右側壁の外側表面のケース用凹部22に対向する部分には曲面形状の面取り部201が形成されている。この面取り部201は、平面形状の切欠き部としてもよい。
【0034】
カバー部材3は、ヒンジ部材2の基部20と係合保持されるキャップ部30と、キャップ部30から突出する一対の保持板31とからなる。キャップ部30には係止爪300が形成され、ヒンジ部材2の両側部に形成されたカバー係止部202と係止されるようになっている。また一対の保持板31は枠部21で形成される矩形空間に挿入される。このカバー部材3は、アシストグリップを車体パネルに仮固定した後に本固定するために用いられる。
【0035】
ヒンジ部材2には、図1に示す金属製のクリップ4が保持される。このクリップ4は、ばね弾性を有する金属板を断面略U字形状に曲折して形成され、それぞれの先端にはヒンジ部材2の枠部21の内側に係合する断面L字形状の係合部40が形成され、係合部40とU字状の曲折部との間には、それぞれ膨出部41が互いに近づく方向及び互いに遠ざかる方向に弾性変形可能にそれぞれ設けられ、膨出部41には、図示しない車体パネルに設けた矩形孔の縁部に係止される凹状の係止部42がそれぞれ形成されている。さらにそれぞれの膨出部41の先端には、係止爪43が2個に分かれて形成されている。
【0036】
ヒンジ部材2のケース用凹部22には、樹脂製のスプリングケース5が収納保持されている。このスプリングケース5は、図3に示すように断面略U字形状の底壁50と、底壁50の両端に立設された一対の立壁51,52と、一方の立壁51の近傍で底壁50に形成されたスリット53と、一方の立壁51の内側表面に形成された突起54とからなる。突起54には、テーパー面54aと、テーパー面54aに対して曲折して連続する係止面54bが形成されている。他方の立壁52の外側表面には、断面円形状の凸部55が形成され、その周囲に枠状の案内部56が形成されている。また一方の立壁51の外側表面には、扇状のガイド溝57(図5参照)が形成されている。
【0037】
スプリングケース5にコイルスプリング6を収納するには、コイルスプリング6のL字状に曲折された一端部60を一方の立壁51側とし、短い他端部61を他方の立壁52側として底壁50に向かって挿入する。このとき、コイルスプリング6は突起54のテーパー面54aによって押圧されて縮みながら挿入され、テーパー面54aを容易に乗り越えて係止面54bと係合する。係止面54bは、コイルスプリング6の内周形状に対応している。
【0038】
コイルスプリング6が収納されたスプリングケース5の他方の立壁51の正面図を図4に、一方の立壁51側から見た斜視図を図5に示す。コイルスプリング6のL字状に曲折された一端部60はスリット53の開口に対向して周方向(巻回方向)に移動可能であり、他端部61が底壁50に当接することで、コイルスプリング6の回動が規制されている。またコイルスプリング6には突起54が係合しているので、スプリングケース5からの脱落が防止されている。したがって組付け作業を容易に行うことができる。
【0039】
右側のヒンジ用凹部11には、左側と同様にヒンジ部材2が回動可能に収納保持される。しかしヒンジ部材2のケース用凹部22には、スプリングケース5に代えてオイルダンパ−7が収納保持されている。このオイルダンパ−7は、ダンパー軸の先端に直線状のリブ70をもち、外ケースの外周面には係合凸部71が形成されている。右側のヒンジ部材2はケース用凹部22の右側壁の内周面にリブ70と係合する図示しない凹部をもち、リブ70がその凹部に係合することでオイルダンパー7のダンパー軸がヒンジ部材2のケース用凹部22に固定される。また係合凸部71がダンパ係止部14と係合することで、オイルダンパ−7の外ケースがヒンジ用凹部11に固定される。
【0040】
したがって、ヒンジ部材2に対してグリップ本体1を回動させたとき、オイルダンパー7のダンパー軸がその外ケースに対して回動し、適度な回動抵抗を付与するように回動する。
【0041】
さて、上記のように構成された各部品を組付ける際には、図6に示されるように、先ず一対のヒンジ部材2のケース用凹部22に金属製のピン部材8を配置する。このピン部材8は先端に大径部80を有し、その大径部80を貫通孔24に挿入することで、先端がヒンジ部材2の外側へ突出しないようにヒンジ部材2に保持しておく。このピン部材8を保持したヒンジ部材2を、グリップ本体1のヒンジ用凹部11に挿入する。
【0042】
このとき図6に示すように、ヒンジ部材2の軸突起28を一方の軸受穴12に係合させるとともにヒンジ部材2の貫通孔24側の端部がヒンジ用凹部11から出た位置とし、ヒンジ用凹部11に対してヒンジ部材2を斜めの状態とする。そして、ヒンジ部材2の貫通孔24側の端部をヒンジ用凹部11に向かって押圧する。すると面取り部280と面取り部201とによってヒンジ部材2が案内されることで、図7に示すようにヒンジ部材2をヒンジ用凹部11に容易に収納することができ、貫通孔24と他方の軸受穴12とが連通する。
【0043】
次に、図7に示すようにピン部材8を軸受穴12に向かって押圧し、他方の軸受穴12に嵌合する。これによりピン部材8は先端の大径部80が他方の軸受穴12に固定され、ヒンジ部材2は、軸突起28とピン部材8によってケース用凹部22に回動自在に保持される。図8に示すように、ピン部材8は大径部80と反対側の端部がケース用凹部22内へ僅かに突出している。
【0044】
なお本実施例ではピン部材8の大径部80を他方の軸受穴12に嵌合して固定したが、大径部80をもたないピン部材8を軸受穴12に挿入するだけの構造とすることもできる。
【0045】
続いて図7,8に示すように、コイルスプリング6が収納されたスプリングケース5を、ヒンジ部材2のケース用凹部22へ収納する。このとき他方の立壁52に形成された案内部56がガイド部25に案内され、凸部55が溝部27に案内され、かつピン部材8の端部が扇状のガイド溝57に案内されながら、スプリングケース5が収納される。スプリングケース5の挿入に伴って、コイルスプリング6の一端部60がバネ係止部13に当接してスリット53内を移動し、他端部61は底壁50に当接して移動が規制されることで、コイルスプリング6には付勢力が蓄えられる。
【0046】
そしてスプリングケース5の収納の最終段階では、図9に示すように、凸部55が凹部26に係合されるとともに、ピン部材8の先端面が一方の立壁51の外側表面と僅かな間隔を隔てて対向した状態で、スプリングケース5がケース用凹部22内に収納される。矩形状の案内部56がガイド部25を構成する一対のガイドレールに挟持され、かつスプリングケース5はコイルスプリング6の付勢力によってヒンジ部材2に押圧されているので、スプリングケース5は回動することなくヒンジ部材2と一体に固定される。
【0047】
このようにして組付けられた本実施例のアシストグリップには、クリップ4がヒンジ部材2に保持され、その後に車体パネルに取付けられる。先ずヒンジ部材2の舌片部23をクリップ4の一対の係合部40の間に挿入し、一対の係合部40を互いに近接するように押さえながら枠部21を貫通させて枠部21の裏面側に係合させる。その後にクリップ4を車体に形成された図示されない矩形孔に圧入すると、一対の膨出部41が互いに近づくように弾性変形し、膨出部41が矩形孔を貫通すると弾性反力によって膨出部41の形状が復元され、凹状の係止部42が矩形孔の縁部に係止されて、アシストグリップが車体パネルに仮固定される。その後、カバー部材3の一対の保持板31をヒンジ部材2の裏側から枠部21に挿入することでクリップ4の一対の膨出部41が互いに近接するのを防止して、アシストグリップを車体パネルに本固定し、係止爪300とカバー係止部202との係合によってカバー部材3とヒンジ部材2とを固定する。
【0048】
したがって本実施例のアシストグリップは、図9に示すように、ピン部材8の一端部は貫通しない軸受穴12に嵌入され、他の部分はヒンジ部材2及びスプリングケース5によって覆われた状態となるため、アシストグリップの使用時にも外部からピン部材8が視認されず見栄えがよい。またグリップ本体1は、ヒンジ部材2から突出する軸突起28とピン部材8を軸中心として回動するので、金属製のピン部材8を用いることで十分な強度を確保することができる。さらにコイルスプリング6やピン部材8の組付けがきわめて容易であり、組付工数を軽減することができる。
【実施例2】
【0049】
本実施例のアシストグリップは、ヒンジ部材2とスプリングケース5の形状が異なること以外は実施例1と同様であるので、異なる部分についてのみ説明する。また機能が同じ部材には、実施例1と同じ符号を付けて説明する。
【0050】
図10には、左側のヒンジ部材2を示している。ケース用凹部22の基部10に対して内側となる右側壁には貫通孔24が形成されている。また貫通孔24が形成されていない左側壁の内周面には凹溝状のガイド部250が形成され、ガイド部250の底部には貫通しない凹部26と、凹部26から端部に向かって徐々に深くなる溝部27とが形成されている。
【0051】
ここでガイド部250を構成する一対のガイドレール251、252は、図11に拡大して示すように、中央部で互いの間隔が狭くなる狭窄部253をもち、狭窄部253から開口へ向かうにつれて間隔が拡がる入り口側拡径部254と、狭窄部253から奥方へ向かうにつれて間隔が拡がる奥側拡径部255とを備えている。そして一方のガイドレール251の入り口側拡径部254には、ガイドレール252の入り口側拡径部254へ向かって突出する規制突起256が形成されている。
【0052】
またスプリングケース5には、他方の立壁52の外側表面に、略矩形状の案内部500が形成されている。案内部500の短辺の長さは、規制突起256の頂点からガイドレール252迄の距離と等しく形成され、かつ狭窄部253におけるガイドレール251とガイドレール252の距離と等しく形成されている。
【0053】
本実施例のアシストグリップにおいては、スプリングケース5をケース用凹部22に挿入する際には、図12に示すように、案内部500は、先ず案内部500が規制突起256と干渉せずガイドレール252の入り口側拡径部254に案内されるように挿入される。案内部500の先端が狭窄部253を通過した後は、案内部500はガイドレール251の奥側拡径部255に案内されながら挿入される。案内部500の挿入に伴って、コイルスプリング6の一端部60がバネ係止部13に当接して押圧されることでコイルスプリング6には付勢力が蓄えられる。また凸部55が溝部27に案内され、かつ一方の立壁51側では、ピン部材8の端部が扇状のガイド溝57に案内されながら収納される。
【0054】
そしてスプリングケース5の収納の最終段階では、図9に示したと同様に、凸部55が凹部26に係合するとともに、ピン部材8の先端面が他方の立壁51と僅かな間隔を隔てて対向した状態で、スプリングケース5がケース用凹部22内に収納される。このとき、図12に示すように、案内部500はガイドレール251の奥側拡径部255とガイドレール252の入り口側拡径部254に接している。
【0055】
次いで挿入が完了した時点でスプリングケース5の押圧を解除すると、コイルスプリング6の付勢によって案内部500は図12の時計回り方向に約10度回動し、図13に示すように、規制突起256の表面に当接するとともにガイドレール252の奥側拡径部255に当接して回動が規制される。
【0056】
したがって本実施例のアシストグリップによれば、コイルスプリング6の付勢力によってスプリングケース5がヒンジ部材2に押圧されるとともに、案内部500がガイドレール252に押圧され、かつ規制突起256によって案内部500が係止されるため、スプリングケース5はヒンジ部材2と一体に固定され、スプリングケース5の脱落をさらに確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:グリップ本体 2:ヒンジ部材 3:カバー部材
4:クリップ 5:スプリングケース 6:コイルスプリング
7:オイルダンパー 8:ピン部材 10:基部
11:ヒンジ用凹部 12:軸受穴 22:ケース用凹部
24:貫通孔 28:軸突起 50:底壁
51:一方の立壁 52:他方の立壁 53:スリット
54:突起 55:凸部 57:ガイド溝
60:一端部 61:他端部
250:ガイド部(スライド凹部) 256:規制突起(規制部)
500:案内部(スライド凸部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車室に設けられ握ることで人体を支持するアシストグリップに関する。より詳しくは、コイルスプリングを備え、不使用時には車室壁面に沿うように付勢されることで車室内への突出量を少なくできるアシストグリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車室内には、搭乗者が身体を支持するために、アシストグリップが設けられている。このアシストグリップは、固定タイプのものもあるが、近年では、不使用時には車室壁面に沿い、使用時に回動させて握るようにした回動タイプのものが多く用いられている。この回動タイプのアシストグリップは、長手形状をなし両側基部にヒンジ用凹部をもつ略U字形状のグリップ本体と、ヒンジ用凹部内に各々回動可能に保持されたヒンジ部材と、ヒンジ部材とグリップ本体との間に介装されヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するコイルスプリングと、ヒンジ部材に保持され車体に形成された係合穴に係合することでヒンジ部材を車体に固定するクリップと、を有するものである。
【0003】
この回動タイプのアシストグリップは、ヒンジ部材がクリップによって車体に固定され、不使用時にはコイルスプリングの付勢力によってグリップ本体が車室壁面に沿った状態となり、車室内への突出量が僅かとなっている。そして使用時には、コイルスプリングの付勢力に抗してグリップ本体をヒンジ部材の回動軸を中心に回動させて車室内へ突出させる。こうすることでグリップ本体を握ることができ、身体を支持することができる。
【0004】
例えば特開2006−175990号公報あるいは特開2006−117074号公報には、ヒンジ部材にそれぞれ貫通孔をもつ一対の脚部を形成し、グリップ本体のヒンジ用凹部の周壁の互いに対向する左右壁にも貫通孔を形成したアシストグリップが提案されている。このアシストグリップによれば、ヒンジ部材とヒンジ用凹部とに形成された各貫通孔を同軸に配置し、金属製のピン部材を挿通することで、ヒンジ部材がヒンジ用凹部に回動可能に保持される。
【0005】
ところが上記したアシストグリップでは、ヒンジ用凹部の外側表面にピン部材の端面が表出する。また使用時にグリップ本体を回動させると、ヒンジ部材の一対の脚部の間にピン部材が視認される。したがってピン部材の金属光沢が視認されるため、見栄えが悪いという問題がある。さらに上記したアシストグリップでは、ピン部材の抜けを防止するために、ピン部材にローレット加工などを施してヒンジ用凹部の貫通孔に圧入することで固定している。そのため上記したアシストグリップは、ピン部材の圧入工数が大きく組付け作業性が悪いという不具合がある。
【0006】
そこで特表2009−501663号には、ヒンジ部材の一対の脚部にそれぞれ外方へ突出する軸部を一体に形成し、ヒンジ用凹部の周壁の互いに対向する左右内表面にそれぞれ軸穴を形成し、軸部を軸穴に係合させることでヒンジ部材をヒンジ用凹部に回動可能に保持したアシストグリップが提案されている。このようにしたことで、ピン部材が不要となり、突起の端面が視認されることもないので見栄えがよくなる。
【0007】
また特表2009−501663号には、コイルスプリングを収納したスプリングケースをヒンジ部材の一対の脚部の間に保持し、グリップ本体の戻り機能を果たすような設計としたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−175990号公報
【特許文献2】特開2006−117074号公報
【特許文献3】特表2009−501663号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献3に記載のアシストグリップでは、ヒンジ部材の一対の脚部を互いに近接する方向へ弾性変形させながら軸部を軸穴に係合させているため、組付け作業性が悪いという不具合がある。また軸部が樹脂製であるため、金属製のピン部材に比べて強度が低いという不具合もある。さらにスプリングケースの固定構造に関する具体的な記載が無く、スプリングケースが脱落することが想定される。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ヒンジ部材をヒンジ用凹部に組付ける際の作業性に優れ、見栄えがよく、部品の脱落を確実に防止でき、かつ使用時の強度の高いアシストグリップとすることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明のアシストグリップの特徴は、長手形状をなし両側基部にヒンジ用凹部をもつグリップ本体と、ヒンジ用凹部内に各々回動可能に保持されたヒンジ部材と、ヒンジ部材とグリップ本体との間に介装されヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するコイルスプリングと、ヒンジ部材に保持され車体に形成された係合穴に係合することでヒンジ部材を車体に固定するクリップと、を有するアシストグリップであって、
ヒンジ用凹部はヒンジ部材の回動軸方向に対向する一対の側壁の内表面にそれぞれ側壁を貫通しない軸受穴を有し、
ヒンジ部材はケース用凹部と、ケース用凹部の回動軸方向に対向する一対の側壁の一方に形成された貫通孔と、貫通孔と同軸に一対の側壁の他方から外方へ突出する軸突起と、を有し、軸突起が一方の軸受穴に挿入され貫通孔が他方の軸受穴と連通するようにヒンジ用凹部に収納され、
ケース用凹部には貫通孔及び他方の軸受穴を貫通するピン部材が挿入され、ヒンジ部材は軸突起とピン部材とが同軸に配置されることで一対の軸受穴に対して回動可能に配置され、
ケース用凹部にはコイルスプリングが収納されたスプリングケースがヒンジ部材と共に回動可能に保持され、
スプリングケースはコイルスプリングの中心軸方向に延びる底壁と、底壁から立設されコイルスプリングの両端面に対向する一対の立壁と、底壁に形成されコイルスプリングの一端部が巻回方向へ移動するのを可能とするスリットと、を備え、
コイルスプリングは一端部がグリップ本体に係合し他端部がスプリングケースに係合することでスプリングケースを介してヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢していることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアシストグリップによれば、ピン部材の一端部が貫通しない軸受穴に挿入され、ピン部材の他端部はヒンジ部材及びスプリングケースによって覆われた状態となるため、アシストグリップの使用時にもピン部材は外部から視認されず見栄えがよい。またグリップ本体は、ヒンジ部材から突出する軸突起とピン部材とで両端が支持されて回動するので、金属製のピン部材を用いることで十分な強度を確保することができる。さらにコイルスプリングやピン部材及びヒンジ部材の組付けが容易であり、組付工数を軽減することができる。
【0013】
そしてコイルスプリングの一端部がグリップ本体に係合し他端部がスプリングケースに係合することで、ヒンジ部材はスプリングケースを介してヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢されている。したがってスプリングケースはコイルスプリングの付勢力によってケース用凹部に向かって押圧されているので、ケース用凹部からの脱落が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係るアシストグリップの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るアシストグリップの要部分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るアシストグリップに用いたスプリングケースの分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係るアシストグリップに用いられコイルスプリングが収納されたスプリングケースを回動軸方向から見た正面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るアシストグリップに用いられコイルスプリングが収納されたスプリングケースの斜視図である。
【図6】本発明の一実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、ヒンジ部材をヒンジ用凹部に挿入している状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、ピン部材を軸受孔に嵌合する状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納する前の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施例に係るアシストグリップの要部断面図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップに用いたヒンジ部材の斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納する前の状態を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納した後でスプリングケースの回動前の状態を示す説明図である。
【図13】本発明の第2の実施例に係るアシストグリップの組付け方法を示し、スプリングケースをケース用凹部へ収納した後でスプリングケースの回動後の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のアシストグリップを組付けるには、先ずピン部材をヒンジ部材のケース用凹部内に配置し、ケース用凹部の貫通孔に挿入して、ピン部材の先端が外側に突出しない状態で保持しておく。次いでヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納する。このとき、ヒンジ部材の軸突起を一方の軸受穴に係合させるとともにヒンジ部材の貫通孔側の端部がヒンジ用凹部から出た位置とし、ヒンジ用凹部に対してヒンジ部材を斜めの状態とする。そしてヒンジ部材の貫通孔側の端部をヒンジ用凹部に向かって押圧することで、ヒンジ部材をヒンジ用凹部に容易に収納することができる。その後、ピン部材を軸受穴に向かって押圧してヒンジ用凹部の他方の軸受穴に挿入する。
【0016】
あるいは、先ずヒンジ部材をヒンジ用凹部に収納し、その後にピン部材をケース用凹部に配置し、ケース用凹部の貫通孔からヒンジ用凹部の他方の軸受け穴に貫通するように挿入してもよい。
【0017】
なおクリップは、ヒンジ部材に予め装着しておいてもよいし、ヒンジ部材の収納後に装着してもよい。
【0018】
次に、コイルスプリングが収納されたスプリングケースをヒンジ部材のケース用凹部に挿入する。このとき、コイルスプリングの一端部がグリップ本体のヒンジ用凹部の一部に係合し、他端部がスプリングケースに係合する。したがってスプリングケースの挿入に伴ってコイルスプリングを巻回することができ、挿入後はコイルスプリングの一端部がスプリングケースをケース用凹部に向かって付勢するため、スプリングケースは安定してケース用凹部に保持される。
【0019】
ピン部材の一端が貫通孔からケース用凹部に突出し、ピン部材の端面がスプリングケースの一方の立壁と対向している。このようにしたことで、立壁によってピン部材の移動が規制されるため、ピン部材が他方の軸受穴から抜けるのを防止することができる。したがってピン部材を軸受穴に嵌合する必要がなくなり、組付工数を低減することができる。また立壁とピン部材の端面と間の隙間によって各部材の成形時の形状誤差を吸収することができ、ガタも防止することができる。さらにピン部材を金属製とすれば、グリップ本体の回動時にピン部材の端面とスプリングケースの立壁とが摺接しても、異種材どうしの摺接となるため異音の発生を防止することができる。
【0020】
スプリングケースは、コイルスプリングの巻回方向に延びる底壁と、底壁から立設されコイルスプリングの両端面に対向する一対の立壁と、底壁に形成されコイルスプリングの一端部が巻回方向へ移動するのを可能とするスリットと、を備え、底壁の表面にコイルスプリングが横たわる状態で収納される。コイルスプリングの他端部は底壁に対向し、一端部はスリットに位置して巻回方向への移動が許容されている。
【0021】
スプリングケースの一対の立壁の少なくとも一方には、コイルスプリングの内周面に当接する突起を形成することが望ましい。突起によってコイルスプリングがスプリングケースから脱落するのを防止することができ、組付け作業性が向上する。
【0022】
スプリングケースの一方の立壁は、ピン部材を案内するガイド溝を有することが望ましい。このようにすることで、コイルスプリングが収納されたスプリングケースをケース用凹部に収納する際に、貫通孔から突出するピン部材の先端がガイド溝で案内されて一方の立壁の外側表面と対向する。したがってスプリングケースのケース用凹部への収納が容易となる。このとき、コイルスプリングの一端部がグリップ本体と当接するので、スプリングケースをケース用凹部へ向かって一方向へ挿入するだけで、コイルスプリングを巻回し、付勢力を蓄えることができる。
【0023】
またスプリングケースは他方の立壁の外側表面に凸部をもち、ヒンジ部材はケース用凹部の一対の側壁の他方に貫通しない凹部をもち、凸部が凹部に係合していることが好ましい。このようにすることで、ケース用凹部からのスプリングケースの脱落をさらに防止することができる。
【0024】
このように組付けられたアシストグリップは、ヒンジ部材に取付けられたクリップが車体に形成された取付孔に係合されることで、ヒンジ部材を介して車体に固定される。ヒンジ部材はコイルスプリングによってスプリングケースを介してヒンジ用凹部へ収納される方向へ付勢されているので、グリップ本体は車室の壁に沿った状態となり、車室内への突出量は少ない。そして使用時にグリップ本体を回動させると、コイルスプリングにはさらに付勢力が蓄えられるため、乗員には適度な荷重で支持される感覚が得られ、使用フィーリングに優れている。
【0025】
本発明のアシストグリップは、さらに次のような構成を有することが好ましい。すなわち、スプリングケースの他方の立壁とケース用凹部の側壁には互いに係合することでスプリングケースのケース用凹部へのスライド移動を案内するスライド凹部とスライド凸部とをそれぞれ備え、スライド凹部はスライド凸部がスライド係合した後に回動可能であると共にスライド凸部の回動を規制する規制部をもち、コイルスプリングが収納されたスプリングケースをケース用凹部に収納する際にスライド凸部がスライド凹部をスライド移動することでコイルスプリングに付勢力が蓄えられ、スライド移動後にその付勢力によってスライド凸部が回動し、スライド凸部が規制部に当接してスライド凸部の回動が規制されることでスプリングケースがケース用凹部に固定されるように構成することが好ましい。
【0026】
このような構成とすれば、組付時には、スライド凸部がスライド凹部をスライド移動することで蓄えられた付勢力によってスプリングケースが自動的に所定角度回動し、スライド凸部が規制部に当接することで回動が規制されるとともにスプリングケースがケース用凹部に固定される。したがってスプリングケースのケース用凹部からの脱落をさらに確実に防止することができる。
【0027】
また規制部はスライド凹部とスライド凸部とのスライド方向に対して交差する方向にスライド凹部に向かって突出し、スライド凸部が回動して規制部に当接することでスライド凸部がスライド凹部から抜ける方向の移動を規制するように構成することが好ましい。このようにすることで、規制部によってスプリングケースのケース用凹部からの脱落をさらに確実に防止することができる。
【0028】
以下、実施例によって本発明の実施形態を具体的に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1に本実施例のアシストグリップの分解斜視図を示す。このアシストグリップは、樹脂製のグリップ本体1を備えている。グリップ本体1は棒状の握り部と一対の基部とからなる略U字状をなし、握り部の延びる方向(以下、左右方向という)の両端に基部10がそれぞれ形成されている。
【0030】
両端の基部10には、ヒンジ用凹部11がそれぞれ形成されている。ヒンジ用凹部11を区画形成する側壁の互いに対向する左右内表面には、それぞれ側壁を貫通しない軸受穴12が形成されている。また一方のヒンジ用凹部11の側壁にはバネ係止部13が形成され、他方のヒンジ用凹部11の側壁にはダンパ係止部14が形成されている。
【0031】
ヒンジ用凹部11には、それぞれ樹脂製のヒンジ部材2と樹脂製のカバー部材3が回動可能に収納されている。一対のヒンジ部材2は、それぞれ鏡対称形状に形成され、図2にも示すように、基部20と、図2の上下方向を貫通する空間をもつ枠部21と、ケース用凹部22と、枠部21内から突出する舌片部23とを備えている。
【0032】
図2には、左側のヒンジ部材2を示している。ケース用凹部22の基部10に対して内側となる右側壁には貫通孔24が形成されている。また貫通孔24が形成されていない左側壁の内周面には凹溝状のガイド部25が形成され、ガイド部25の底部には貫通しない凹部26と、凹部26から端部に向かって徐々に深くなる溝部27とが形成されている。
【0033】
またヒンジ部材2の左側壁には、貫通孔24と同軸で外方に突出する軸突起28(図6参照)が一体に形成されている。軸突起28の先端には面取り部280が形成されている。また右側壁の外側表面には、貫通孔24を挟んだ両側に一対のリブ200が形成され、右側壁の外側表面のケース用凹部22に対向する部分には曲面形状の面取り部201が形成されている。この面取り部201は、平面形状の切欠き部としてもよい。
【0034】
カバー部材3は、ヒンジ部材2の基部20と係合保持されるキャップ部30と、キャップ部30から突出する一対の保持板31とからなる。キャップ部30には係止爪300が形成され、ヒンジ部材2の両側部に形成されたカバー係止部202と係止されるようになっている。また一対の保持板31は枠部21で形成される矩形空間に挿入される。このカバー部材3は、アシストグリップを車体パネルに仮固定した後に本固定するために用いられる。
【0035】
ヒンジ部材2には、図1に示す金属製のクリップ4が保持される。このクリップ4は、ばね弾性を有する金属板を断面略U字形状に曲折して形成され、それぞれの先端にはヒンジ部材2の枠部21の内側に係合する断面L字形状の係合部40が形成され、係合部40とU字状の曲折部との間には、それぞれ膨出部41が互いに近づく方向及び互いに遠ざかる方向に弾性変形可能にそれぞれ設けられ、膨出部41には、図示しない車体パネルに設けた矩形孔の縁部に係止される凹状の係止部42がそれぞれ形成されている。さらにそれぞれの膨出部41の先端には、係止爪43が2個に分かれて形成されている。
【0036】
ヒンジ部材2のケース用凹部22には、樹脂製のスプリングケース5が収納保持されている。このスプリングケース5は、図3に示すように断面略U字形状の底壁50と、底壁50の両端に立設された一対の立壁51,52と、一方の立壁51の近傍で底壁50に形成されたスリット53と、一方の立壁51の内側表面に形成された突起54とからなる。突起54には、テーパー面54aと、テーパー面54aに対して曲折して連続する係止面54bが形成されている。他方の立壁52の外側表面には、断面円形状の凸部55が形成され、その周囲に枠状の案内部56が形成されている。また一方の立壁51の外側表面には、扇状のガイド溝57(図5参照)が形成されている。
【0037】
スプリングケース5にコイルスプリング6を収納するには、コイルスプリング6のL字状に曲折された一端部60を一方の立壁51側とし、短い他端部61を他方の立壁52側として底壁50に向かって挿入する。このとき、コイルスプリング6は突起54のテーパー面54aによって押圧されて縮みながら挿入され、テーパー面54aを容易に乗り越えて係止面54bと係合する。係止面54bは、コイルスプリング6の内周形状に対応している。
【0038】
コイルスプリング6が収納されたスプリングケース5の他方の立壁51の正面図を図4に、一方の立壁51側から見た斜視図を図5に示す。コイルスプリング6のL字状に曲折された一端部60はスリット53の開口に対向して周方向(巻回方向)に移動可能であり、他端部61が底壁50に当接することで、コイルスプリング6の回動が規制されている。またコイルスプリング6には突起54が係合しているので、スプリングケース5からの脱落が防止されている。したがって組付け作業を容易に行うことができる。
【0039】
右側のヒンジ用凹部11には、左側と同様にヒンジ部材2が回動可能に収納保持される。しかしヒンジ部材2のケース用凹部22には、スプリングケース5に代えてオイルダンパ−7が収納保持されている。このオイルダンパ−7は、ダンパー軸の先端に直線状のリブ70をもち、外ケースの外周面には係合凸部71が形成されている。右側のヒンジ部材2はケース用凹部22の右側壁の内周面にリブ70と係合する図示しない凹部をもち、リブ70がその凹部に係合することでオイルダンパー7のダンパー軸がヒンジ部材2のケース用凹部22に固定される。また係合凸部71がダンパ係止部14と係合することで、オイルダンパ−7の外ケースがヒンジ用凹部11に固定される。
【0040】
したがって、ヒンジ部材2に対してグリップ本体1を回動させたとき、オイルダンパー7のダンパー軸がその外ケースに対して回動し、適度な回動抵抗を付与するように回動する。
【0041】
さて、上記のように構成された各部品を組付ける際には、図6に示されるように、先ず一対のヒンジ部材2のケース用凹部22に金属製のピン部材8を配置する。このピン部材8は先端に大径部80を有し、その大径部80を貫通孔24に挿入することで、先端がヒンジ部材2の外側へ突出しないようにヒンジ部材2に保持しておく。このピン部材8を保持したヒンジ部材2を、グリップ本体1のヒンジ用凹部11に挿入する。
【0042】
このとき図6に示すように、ヒンジ部材2の軸突起28を一方の軸受穴12に係合させるとともにヒンジ部材2の貫通孔24側の端部がヒンジ用凹部11から出た位置とし、ヒンジ用凹部11に対してヒンジ部材2を斜めの状態とする。そして、ヒンジ部材2の貫通孔24側の端部をヒンジ用凹部11に向かって押圧する。すると面取り部280と面取り部201とによってヒンジ部材2が案内されることで、図7に示すようにヒンジ部材2をヒンジ用凹部11に容易に収納することができ、貫通孔24と他方の軸受穴12とが連通する。
【0043】
次に、図7に示すようにピン部材8を軸受穴12に向かって押圧し、他方の軸受穴12に嵌合する。これによりピン部材8は先端の大径部80が他方の軸受穴12に固定され、ヒンジ部材2は、軸突起28とピン部材8によってケース用凹部22に回動自在に保持される。図8に示すように、ピン部材8は大径部80と反対側の端部がケース用凹部22内へ僅かに突出している。
【0044】
なお本実施例ではピン部材8の大径部80を他方の軸受穴12に嵌合して固定したが、大径部80をもたないピン部材8を軸受穴12に挿入するだけの構造とすることもできる。
【0045】
続いて図7,8に示すように、コイルスプリング6が収納されたスプリングケース5を、ヒンジ部材2のケース用凹部22へ収納する。このとき他方の立壁52に形成された案内部56がガイド部25に案内され、凸部55が溝部27に案内され、かつピン部材8の端部が扇状のガイド溝57に案内されながら、スプリングケース5が収納される。スプリングケース5の挿入に伴って、コイルスプリング6の一端部60がバネ係止部13に当接してスリット53内を移動し、他端部61は底壁50に当接して移動が規制されることで、コイルスプリング6には付勢力が蓄えられる。
【0046】
そしてスプリングケース5の収納の最終段階では、図9に示すように、凸部55が凹部26に係合されるとともに、ピン部材8の先端面が一方の立壁51の外側表面と僅かな間隔を隔てて対向した状態で、スプリングケース5がケース用凹部22内に収納される。矩形状の案内部56がガイド部25を構成する一対のガイドレールに挟持され、かつスプリングケース5はコイルスプリング6の付勢力によってヒンジ部材2に押圧されているので、スプリングケース5は回動することなくヒンジ部材2と一体に固定される。
【0047】
このようにして組付けられた本実施例のアシストグリップには、クリップ4がヒンジ部材2に保持され、その後に車体パネルに取付けられる。先ずヒンジ部材2の舌片部23をクリップ4の一対の係合部40の間に挿入し、一対の係合部40を互いに近接するように押さえながら枠部21を貫通させて枠部21の裏面側に係合させる。その後にクリップ4を車体に形成された図示されない矩形孔に圧入すると、一対の膨出部41が互いに近づくように弾性変形し、膨出部41が矩形孔を貫通すると弾性反力によって膨出部41の形状が復元され、凹状の係止部42が矩形孔の縁部に係止されて、アシストグリップが車体パネルに仮固定される。その後、カバー部材3の一対の保持板31をヒンジ部材2の裏側から枠部21に挿入することでクリップ4の一対の膨出部41が互いに近接するのを防止して、アシストグリップを車体パネルに本固定し、係止爪300とカバー係止部202との係合によってカバー部材3とヒンジ部材2とを固定する。
【0048】
したがって本実施例のアシストグリップは、図9に示すように、ピン部材8の一端部は貫通しない軸受穴12に嵌入され、他の部分はヒンジ部材2及びスプリングケース5によって覆われた状態となるため、アシストグリップの使用時にも外部からピン部材8が視認されず見栄えがよい。またグリップ本体1は、ヒンジ部材2から突出する軸突起28とピン部材8を軸中心として回動するので、金属製のピン部材8を用いることで十分な強度を確保することができる。さらにコイルスプリング6やピン部材8の組付けがきわめて容易であり、組付工数を軽減することができる。
【実施例2】
【0049】
本実施例のアシストグリップは、ヒンジ部材2とスプリングケース5の形状が異なること以外は実施例1と同様であるので、異なる部分についてのみ説明する。また機能が同じ部材には、実施例1と同じ符号を付けて説明する。
【0050】
図10には、左側のヒンジ部材2を示している。ケース用凹部22の基部10に対して内側となる右側壁には貫通孔24が形成されている。また貫通孔24が形成されていない左側壁の内周面には凹溝状のガイド部250が形成され、ガイド部250の底部には貫通しない凹部26と、凹部26から端部に向かって徐々に深くなる溝部27とが形成されている。
【0051】
ここでガイド部250を構成する一対のガイドレール251、252は、図11に拡大して示すように、中央部で互いの間隔が狭くなる狭窄部253をもち、狭窄部253から開口へ向かうにつれて間隔が拡がる入り口側拡径部254と、狭窄部253から奥方へ向かうにつれて間隔が拡がる奥側拡径部255とを備えている。そして一方のガイドレール251の入り口側拡径部254には、ガイドレール252の入り口側拡径部254へ向かって突出する規制突起256が形成されている。
【0052】
またスプリングケース5には、他方の立壁52の外側表面に、略矩形状の案内部500が形成されている。案内部500の短辺の長さは、規制突起256の頂点からガイドレール252迄の距離と等しく形成され、かつ狭窄部253におけるガイドレール251とガイドレール252の距離と等しく形成されている。
【0053】
本実施例のアシストグリップにおいては、スプリングケース5をケース用凹部22に挿入する際には、図12に示すように、案内部500は、先ず案内部500が規制突起256と干渉せずガイドレール252の入り口側拡径部254に案内されるように挿入される。案内部500の先端が狭窄部253を通過した後は、案内部500はガイドレール251の奥側拡径部255に案内されながら挿入される。案内部500の挿入に伴って、コイルスプリング6の一端部60がバネ係止部13に当接して押圧されることでコイルスプリング6には付勢力が蓄えられる。また凸部55が溝部27に案内され、かつ一方の立壁51側では、ピン部材8の端部が扇状のガイド溝57に案内されながら収納される。
【0054】
そしてスプリングケース5の収納の最終段階では、図9に示したと同様に、凸部55が凹部26に係合するとともに、ピン部材8の先端面が他方の立壁51と僅かな間隔を隔てて対向した状態で、スプリングケース5がケース用凹部22内に収納される。このとき、図12に示すように、案内部500はガイドレール251の奥側拡径部255とガイドレール252の入り口側拡径部254に接している。
【0055】
次いで挿入が完了した時点でスプリングケース5の押圧を解除すると、コイルスプリング6の付勢によって案内部500は図12の時計回り方向に約10度回動し、図13に示すように、規制突起256の表面に当接するとともにガイドレール252の奥側拡径部255に当接して回動が規制される。
【0056】
したがって本実施例のアシストグリップによれば、コイルスプリング6の付勢力によってスプリングケース5がヒンジ部材2に押圧されるとともに、案内部500がガイドレール252に押圧され、かつ規制突起256によって案内部500が係止されるため、スプリングケース5はヒンジ部材2と一体に固定され、スプリングケース5の脱落をさらに確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0057】
1:グリップ本体 2:ヒンジ部材 3:カバー部材
4:クリップ 5:スプリングケース 6:コイルスプリング
7:オイルダンパー 8:ピン部材 10:基部
11:ヒンジ用凹部 12:軸受穴 22:ケース用凹部
24:貫通孔 28:軸突起 50:底壁
51:一方の立壁 52:他方の立壁 53:スリット
54:突起 55:凸部 57:ガイド溝
60:一端部 61:他端部
250:ガイド部(スライド凹部) 256:規制突起(規制部)
500:案内部(スライド凸部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手形状をなし両側基部にヒンジ用凹部をもつグリップ本体と、該ヒンジ用凹部内に各々回動可能に保持されたヒンジ部材と、該ヒンジ部材と該グリップ本体との間に介装され該ヒンジ部材を該ヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するコイルスプリングと、該ヒンジ部材に保持され車体に形成された係合穴に係合することで該ヒンジ部材を車体に固定するクリップと、を有するアシストグリップであって、
該ヒンジ用凹部は該ヒンジ部材の回動軸方向に対向する一対の側壁の内表面にそれぞれ該側壁を貫通しない軸受穴を有し、
該ヒンジ部材はケース用凹部と、該ケース用凹部の該回動軸方向に対向する一対の側壁の一方に形成された貫通孔と、該貫通孔と同軸に一対の側壁の他方から外方へ突出する軸突起と、を有し、該軸突起が一方の該軸受穴に挿入され該貫通孔が他方の該軸受穴と連通するように該ヒンジ用凹部に収納され、
該ケース用凹部には該貫通孔及び他方の該軸受穴を貫通するピン部材が挿入され、該ヒンジ部材は該軸突起と該ピン部材とが同軸に配置されることで一対の該軸受穴に対して回動可能に配置され、
該ケース用凹部には該コイルスプリングが収納されたスプリングケースが該ヒンジ部材と共に回動可能に保持され、
該スプリングケースは該コイルスプリングの中心軸方向に延びる底壁と、該底壁から立設され該コイルスプリングの両端面に対向する一対の立壁と、該底壁に形成され該コイルスプリングの一端部が巻回方向へ移動するのを可能とするスリットと、を備え、
該コイルスプリングは該一端部が該グリップ本体に係合し他端部が該スプリングケースに係合することで該スプリングケースを介して該ヒンジ部材を該ヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢していることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記スプリングケースの一方の前記立壁は、前記ピン部材を案内するガイド溝を有し、前記コイルスプリングが収納された前記スプリングケースを前記ケース用凹部に収納する際に、前記貫通孔から突出する前記ピン部材の先端が該ガイド溝で案内されて一方の前記立壁の外側表面と対向する請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記ピン部材の一端が前記貫通孔から前記ケース用凹部に突出し、前記ピン部材の端面が前記スプリングケースの前記一方の前記立壁の外側表面と対向している請求項2に記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記スプリングケースの一対の前記立壁の少なくとも一方には、前記コイルスプリングの内周面に当接して脱落を防止する突起が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のアシストグリップ。
【請求項5】
前記スプリングケースは他方の前記立壁の外側表面に凸部をもち、前記ヒンジ部材は前記ケース用凹部の一対の側壁の他方に貫通しない凹部をもち、該凸部が該凹部に係合している請求項1〜4のいずれかに記載のアシストグリップ。
【請求項6】
前記スプリングケースの他方の前記立壁と前記ケース用凹部の側壁には互いに係合することで前記スプリングケースの前記ケース用凹部へのスライド移動を案内するスライド凹部とスライド凸部とをそれぞれ備え、
該スライド凹部は該スライド凸部がスライド係合した後に該スライド凸部が回動可能であると共に該スライド凸部の回動を規制する規制部をもち、
前記コイルスプリングが収納された前記スプリングケースを前記ケース用凹部に収納する際に、該スライド凸部が該スライド凹部をスライド移動することで前記コイルスプリングに付勢力が蓄えられ、スライド移動後に該付勢力によって該スライド凸部が該スライド凹部に対して相対的に回動し該規制部に当接して該スライド凸部の回動が規制されることで前記スプリングケースが前記ケース用凹部に固定される請求項1〜5のいずれかに記載のアシストグリップ。
【請求項1】
長手形状をなし両側基部にヒンジ用凹部をもつグリップ本体と、該ヒンジ用凹部内に各々回動可能に保持されたヒンジ部材と、該ヒンジ部材と該グリップ本体との間に介装され該ヒンジ部材を該ヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢するコイルスプリングと、該ヒンジ部材に保持され車体に形成された係合穴に係合することで該ヒンジ部材を車体に固定するクリップと、を有するアシストグリップであって、
該ヒンジ用凹部は該ヒンジ部材の回動軸方向に対向する一対の側壁の内表面にそれぞれ該側壁を貫通しない軸受穴を有し、
該ヒンジ部材はケース用凹部と、該ケース用凹部の該回動軸方向に対向する一対の側壁の一方に形成された貫通孔と、該貫通孔と同軸に一対の側壁の他方から外方へ突出する軸突起と、を有し、該軸突起が一方の該軸受穴に挿入され該貫通孔が他方の該軸受穴と連通するように該ヒンジ用凹部に収納され、
該ケース用凹部には該貫通孔及び他方の該軸受穴を貫通するピン部材が挿入され、該ヒンジ部材は該軸突起と該ピン部材とが同軸に配置されることで一対の該軸受穴に対して回動可能に配置され、
該ケース用凹部には該コイルスプリングが収納されたスプリングケースが該ヒンジ部材と共に回動可能に保持され、
該スプリングケースは該コイルスプリングの中心軸方向に延びる底壁と、該底壁から立設され該コイルスプリングの両端面に対向する一対の立壁と、該底壁に形成され該コイルスプリングの一端部が巻回方向へ移動するのを可能とするスリットと、を備え、
該コイルスプリングは該一端部が該グリップ本体に係合し他端部が該スプリングケースに係合することで該スプリングケースを介して該ヒンジ部材を該ヒンジ用凹部に収納する方向へ付勢していることを特徴とするアシストグリップ。
【請求項2】
前記スプリングケースの一方の前記立壁は、前記ピン部材を案内するガイド溝を有し、前記コイルスプリングが収納された前記スプリングケースを前記ケース用凹部に収納する際に、前記貫通孔から突出する前記ピン部材の先端が該ガイド溝で案内されて一方の前記立壁の外側表面と対向する請求項1に記載のアシストグリップ。
【請求項3】
前記ピン部材の一端が前記貫通孔から前記ケース用凹部に突出し、前記ピン部材の端面が前記スプリングケースの前記一方の前記立壁の外側表面と対向している請求項2に記載のアシストグリップ。
【請求項4】
前記スプリングケースの一対の前記立壁の少なくとも一方には、前記コイルスプリングの内周面に当接して脱落を防止する突起が形成されている請求項1〜3のいずれかに記載のアシストグリップ。
【請求項5】
前記スプリングケースは他方の前記立壁の外側表面に凸部をもち、前記ヒンジ部材は前記ケース用凹部の一対の側壁の他方に貫通しない凹部をもち、該凸部が該凹部に係合している請求項1〜4のいずれかに記載のアシストグリップ。
【請求項6】
前記スプリングケースの他方の前記立壁と前記ケース用凹部の側壁には互いに係合することで前記スプリングケースの前記ケース用凹部へのスライド移動を案内するスライド凹部とスライド凸部とをそれぞれ備え、
該スライド凹部は該スライド凸部がスライド係合した後に該スライド凸部が回動可能であると共に該スライド凸部の回動を規制する規制部をもち、
前記コイルスプリングが収納された前記スプリングケースを前記ケース用凹部に収納する際に、該スライド凸部が該スライド凹部をスライド移動することで前記コイルスプリングに付勢力が蓄えられ、スライド移動後に該付勢力によって該スライド凸部が該スライド凹部に対して相対的に回動し該規制部に当接して該スライド凸部の回動が規制されることで前記スプリングケースが前記ケース用凹部に固定される請求項1〜5のいずれかに記載のアシストグリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−23073(P2013−23073A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159669(P2011−159669)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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