説明

アシルスルホンアミド誘導体

【課題】糖尿病治療剤として有用な化合物の提供。
【解決手段】下式で示される化合物またはその製薬上許容される塩。


(式中、環Aは置換若しくは非置換の芳香族炭素環または置換若しくは非置換の芳香族複素環であり、Rは水素、置換若しくは非置換のアルキル等であり、R及びRはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル等であり、Rは−CR5a5b−、−O−または−S−であり、Rはそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、R5a及びR5bはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、mは0〜3の整数であり、nは0〜6の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特に糖尿病治療剤として有用な新規なアシルスルホンアミド誘導体またはその製薬上許容される塩、及びアシルスルホンアミド誘導体を有効成分とする医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、慢性的な高血糖を主徴とする疾患であり、インスリン作用の絶対的又は相対的な不足により発症する。臨床においては、インスリン依存性糖尿病(以下、「1型糖尿病」という。)とインスリン非依存性糖尿病(以下、「2型糖尿病」という。)に大別される。糖尿病患者の約9割を占める2型糖尿病において、膵β細胞からのインスリン分泌低下は主要な発症原因の一つであり、特に初期のインスリン分泌障害による食後高血糖が認められる。現在、インスリン分泌促進剤としてはスルホニルウレア剤(SU剤)が主流であるが、低血糖を起こしやすく、長期投与においては膵臓の疲弊により二次無効を引き起こすことが知られている。また、SU剤は食間の血糖コントロールには有効であるが、食後の過血糖を抑制することは困難である。最近、大規模臨床試験により、糖尿病性合併症の発症及び進展抑制には食後高血糖の是正が重要であることが確認された(非特許文献1)。また、食後高血糖のみの時期に動脈硬化が発症すること、食後軽度高血糖の持続が心血管疾患等の原因による死亡率を高めることが報告されている(非特許文献2および3)。このことは、食後高血糖はたとえ軽度であっても、心血管死の独立した危険因子であることを示している。以上のようなことから、食後高血糖に対する薬物治療の重要かつ必要性が認識されるようになっている。
また、2型糖尿病においては、慢性的な高血糖により膵β細胞の機能低下、即ち膵臓インスリン含量の低下を引き起こすと理解されている(非特許文献4)。
従って、作用発現が速く、かつ、低血糖を引き起こさずに血糖降下作用を有する医薬は、食後高血糖及び/若しくは空腹時血糖の是正、又は膵臓機能亢進に適したプロフィールを有し、1型糖尿病、2型糖尿病の治療及び予防に有用であると考えられる。
【0003】
特許文献1には、糖尿病に有用な化合物として、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されている。
【化1】


特許文献2には、C型肝炎に有用な化合物として、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化2】


特許文献3には、痛風に有用な化合物として、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化3】


特許文献4には、利尿薬に有用な化合物として、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化4】


非特許文献5には、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化5】


非特許文献6には、以下のアシルスルホンアミド誘導体のPPARγ活性について記載されているが、それらは単に予測に過ぎず、実際に以下の化合物を合成して確認したものではない。
【化6】


非特許文献7には、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化7】


非特許文献8には、アンギオテンシンIIアンタゴニスト作用を有する化合物として、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化8】


非特許文献9には、以下のアシルスルホンアミド誘導体が記載されているが、血糖降下作用については記載されていない。
【化9】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/108370号パンフレット
【特許文献2】特開2002−517508号公報
【特許文献3】特開昭51−021975号公報
【特許文献4】米国特許第3557153号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N. Engl. J. Med., 329: 977-986, 1993
【非特許文献2】Lancet, 354: 617, 1999
【非特許文献3】Brit. Med. J., 321: 405-413, 2000
【非特許文献4】Joslin′s Diabetes Mellitus, Thirteenth Edition, Lea and Febiger, Philadelphia, PA, U.S.A, 1994
【非特許文献5】Organic Letters (2009), 11(12), 2707-2710
【非特許文献6】Molecular Pharmacology (2007), 71(2), 398-406
【非特許文献7】Angewandte Chemie, International Edition (2006), 45(19), 3154-3157
【非特許文献8】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters (1995), 5(22), 2605-10
【非特許文献9】Journal of the American Chemical Society (1955), 77, 4564-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、血糖降下作用を有する新規化合物およびそれを含有する医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に関する。
(1)
式(I):
【化10】


(式中、
環Aは置換若しくは非置換の芳香族炭素環または置換若しくは非置換の芳香族複素環であり、
は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、
及びRはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、
は−CR5a5b−、−O−または−S−であり、
はそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、
5a及びR5bはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、
mは0〜3の整数であり、
nは0〜6の整数である。
但し、以下に示される化合物:
【化11】


【化12】


を除く。)で示される化合物またはその製薬上許容される塩。
(2)
環Aが
【化13】


(ここで、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、pは1〜3の整数であり、R14は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、R15は置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。)で示される基である。)で示される基である、前記(1)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(3)
がハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12、R13、p、R14及びR15は前記(2)と同意義である。)で示される基である、前記(2)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(4)
が置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシルまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12、R13、p、R14及びR15は前記(2)と同意義である。)で示される基である、前記(2)または(3)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(5)
、R、R及びR10が水素である、前記(3)または(4)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(6)
mが1である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(7)
が−CR5a5b−である、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(8)
5a及びR5bが水素であり、mが1であり、nが0である、前記(7)記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(9)
式(I)中、
【化14】


で示される部分が
【化15】


(ここで、R5a及びR5bは前記(1)と同意義であり、R11は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルである。)である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(10)
が水素である、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(11)
及びRが水素である、前記(1)〜(10)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
(12)
前記(1)〜(11)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩を含有する医薬組成物。
(13)
式(II):
【化16】


(式中、
環Aは置換若しくは非置換の芳香族炭素環または置換若しくは非置換の芳香族複素環であり、
環Bは置換若しくは非置換の非芳香族炭素環または置換若しくは非置換の非芳香族複素環であり、
は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、
及びRはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。但し、以下に示される化合物:
【化17】


を除く。)で示される化合物またはその製薬上許容される塩を有効成分とする、糖尿病治療剤。
また、本発明には、
(14)
糖尿病の治療および/または予防のための、前記(12)または(13)記載の医薬組成物、
(15)
前記(1)〜(11)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩を投与することを特徴とする、糖尿病の予防または治療方法、
(16)
糖尿病の治療および/または予防のための、前記(1)〜(11)のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩、
(17)
前記式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩による治療を受けている糖尿病患者に、他の糖尿病治療薬を投与することを特徴とする糖尿病の治療方法、
(18)
前記式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩と併用して他の糖尿病治療薬を投与することを特徴とする糖尿病の治療方法
も包含される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る化合物は、作用発現が速く、かつ、低血糖を引き起こさずに血糖降下作用を示すため、糖尿病、特に2型糖尿病の治療剤および/または予防剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】GKラットを用いた化合物(I−1)の血糖降下作用を示す図である。縦軸は血糖値、横軸は経過時間を表す。(実施例4)
【図2】Wistarラットを用いた化合物(I−1)の血糖降下作用を示す図である。縦軸は血糖値、横軸は経過時間を表す。(実施例5)
【図3】Wistarラットを用いた血漿インスリン値を示す図である。縦軸は血漿インスリン値を表す。(実施例5)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本明細書中で使用する各用語を説明する。なお、本明細書中、各用語は単独で使用されている場合も、または他の用語と一緒になって使用されている場合も、同一の意義を有する。
【0011】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0012】
「アルキル」とは、炭素数1〜10個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソぺンチル、ネオぺンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜6または1〜4個のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソぺンチル、ネオぺンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。
【0013】
「アルケニル」とは、上記「アルキル」に1個又はそれ以上の二重結合を有する炭素数2〜8個の直鎖状又は分枝状のアルケニルを意味し、例えば、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、3-メチル-2-ブテニル等が挙げられる。
【0014】
「アルキニル」とは、上記「アルキル」に1個又はそれ以上の三重結合を有する炭素数2〜8個の直鎖状又は分枝状のアルキニルを意味し、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル等が挙げられる。さらに二重結合を有してもよい。
【0015】
「シクロアルキル」とは、炭素数3〜15の環状飽和炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、橋かけ環式炭化水素基、スピロ炭化水素基などが挙げられる。好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、橋かけ環式炭化水素基が挙げられる。
【0016】
「橋かけ環式炭化水素基」とは、2つ以上の環が2個またはそれ以上の原子を共有している炭素数5〜8の脂肪族環から水素を1つ除いてできる基を包含する。具体的にはビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]オクチルおよびビシクロ[3.2.1]オクチル、トリシクロ[2.2.1.0]ヘプチルなどが挙げられる。
【0017】
「スピロ炭化水素基」とは、2つの炭化水素環が1個の炭素原子を共有して構成されている環から水素を1つ除いてできる基を包含する。具体的にはスピロ[3.4]オクチルなどが挙げられる。
【0018】
「シクロアルケニル」とは、炭素数3〜10の環状の不飽和脂肪族炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロペニル(例えば、1-シクロプロペニル)、シクロブテニル(例えば、1-シクロブテニル)、シクロペンテニル(例えば、1-シクロペンテン-1-イル、2-シクロペンテン-1-イル、3-シクロペンテン-1-イル)、シクロヘキセニル(例えば、1-シクロヘキセン-1-イル、2-シクロヘキセン-1-イル、3-シクロヘキセン-1-イル)、シクロヘプテニル(例えば、1-シクロヘプテニル)、シクロオクテニル(例えば、1-シクロオクテニル)等が挙げられる。好ましくはシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルである。シクロアルケニルには、環中に不飽和結合を有する橋かけ環式炭化水素基およびスピロ炭化水素基も含む。
【0019】
「アリール」とは、単環芳香族炭化水素基(例:フェニル)及び多環芳香族炭化水素基(例: 1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル等)を意味する。好ましくは、フェニル又はナフチル(1−ナフチル、2−ナフチル)が挙げられる。
【0020】
「ヘテロアリール」とは、単環芳香族複素環式基及び縮合芳香族複素環式基を意味する。
「単環芳香族複素環式基」とは、酸素原子、硫黄原子、および/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環から誘導される、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を意味する。
「縮合芳香族複素環式基」は、酸素原子、硫黄原子、および/又は窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環が、1〜4個の5〜8員の芳香族炭素環もしくは他の5〜8員の芳香族ヘテロ環と縮合している、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を意味する。
【0021】
「ヘテロアリール」としては、例えば、フリル(例: 2−フリル、3−フリル)、チエニル(例: 2−チエニル、3−チエニル)、ピロリル(例: 1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例: 1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例: 1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、トリアゾリル(例: 1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例:1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、5−テトラゾリル)、オキサゾリル(例:2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソキサゾリル(例:3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル)、チアゾリル(例:2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例:3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、ピリジル(例:2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例:3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、フラザニル(例:3−フラザニル)、ピラジニル(例:2−ピラジニル)、オキサジアゾリル(例:1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)、ベンゾフリル(例:2−ベンゾ[b]フリル、3−ベンゾ[b]フリル、4−ベンゾ[b]フリル、5−ベンゾ[b]フリル、6−ベンゾ[b]フリル、7−ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例:2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、4−ベンゾ[b]チエニル、5−ベンゾ[b]チエニル、6−ベンゾ[b]チエニル、7−ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾイミダゾリル(例:1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノキサリル(例:2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル)、シンノリニル(例:3−シンノリニル、4−シンノリニル、5−シンノリニル、6−シンノリニル、7−シンノリニル、8−シンノリニル)、キナゾリル(例:2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、5−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、8−キナゾリニル)、キノリル(例:2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル)、フタラジニル(例:1−フタラジニル、5−フタラジニル、6−フタラジニル)、イソキノリル(例:1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例:2−プテリジニル、4−プテリジニル、6−プテリジニル、7−プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例:1−アクリジニル、2−アクリジニル、3−アクリジニル、4−アクリジニル、9−アクリジニル)、インドリル(例:1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル)、イソインドリル、ファナジニル(例:1−フェナジニル、2−フェナジニル)又はフェノチアジニル(例:1−フェノチアジニル、2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル、4−フェノチアジニル)等が挙げられる。
【0022】
「ヘテロサイクリル」とは、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を少なくとも1以上環内に有する環、または、そのような環にシクロアルカン(5〜6員が好ましい)、ベンゼン環および/または窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を少なくとも1以上環内に有する環が縮合した環に、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい非芳香族複素環式基を意味する。なお、「非芳香族複素環式基」は、非芳香族であれば、飽和でも不飽和でもよい。好ましくは5〜8員環である。例えば、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル、1-イミダゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、1-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、4-ピラゾリニル、1-ピラゾリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、ピペリジノ、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、2-モルホリニル、3-モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル等が挙げられる。
【0023】
「アシル」とは、ホルミル、置換もしくは非置換のアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のアルケニルカルボニル、置換もしくは非置換のシクロアルキルカルボニル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルカルボニル、置換もしくは非置換のアリールカルボニル、置換もしくは非置換のヘテロアリールカルボニル、置換もしくは非置換のヘテロサイクリルカルボニルを意味する。「アルキルカルボニル」、「アルケニルカルボニル」、「シクロアルキルカルボニル」、「シクロアルケニルカルボニル」、「アリールカルボニル」、「ヘテロアリールカルボニル」、「ヘテロサイクリルカルボニル」の「アルキル」部分、「アルケニル」部分、「シクロアルキル」部分、「シクロアルケニル」部分、「アリール」部分、「ヘテロアリール」部分、「ヘテロサイクリル」部分は、それぞれ、上記「アルキル」、「アルケニル」、「シクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「ヘテロサイクリル」を意味する。
【0024】
「アルキルオキシ」、「アリールアルキルオキシ」、「ヘテロアリールアルキルオキシ」、「シクロアルキルアルキルオキシ」、「シクロアルケニルアルキルオキシ」および「ヘテロサイクリルアルキルオキシ」のアルキル部分は、上記「アルキル」を意味する。
「アリールオキシ」および「アリールアルキルオキシ」のアリール部分は、上記「アリール」を意味する。
「ヘテロアリールオキシ」および「ヘテロアリールアルキルオキシ」のヘテロアリール部分は、上記「ヘテロアリール」を意味する。
「シクロアルキルオキシ」および「シクロアルキルアルキルオキシ」のシクロアルキル部分は、上記「シクロアルキル」を意味する。
「シクロアルケニルオキシ」および「シクロアルケニルアルキルオキシ」のシクロアルケニル部分は、上記「シクロアルケニル」を意味する。
「ヘテロサイクリルオキシ」および「ヘテロサイクリルアルキルオキシ」のヘテロサイクリル部分は、上記「ヘテロサイクリル」を意味する。
【0025】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換アリール」、「置換ヘテロアリール」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルケニル」、「置換ヘテロサイクリル」、「置換アルキルオキシ」、「置換アリールオキシ」、「置換ヘテロアリールオキシ」、「置換シクロアルキルオキシ」、「置換シクロアルケニルオキシ」、「置換ヘテロサイクリルオキシ」、「置換アリールアルキルオキシ」、「置換ヘテロアリールアルキルオキシ」、「置換シクロアルキルアルキルオキシ」、「置換シクロアルケニルアルキルオキシ」、「置換ヘテロサイクリルアルキルオキシ」、「置換アシル」、「置換カルバモイル」または「置換アミノ」における置換基としては、例えば、
ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、
置換もしくは非置換のアルキル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、CF、CHF)、
置換もしくは非置換のアルケニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:ビニル)、
置換もしくは非置換のアルキニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:エチニル)、
置換もしくは非置換のアリール(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、アルキルオキシ、アルキルスルホニル、スルファモイル、カルバモイル、アミノ、−SCHF。例:フェニル、ナフチル)、
置換もしくは非置換のシクロアルキル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、アルキルオキシ、アルキルスルホニル、スルファモイル、カルバモイル、アミノ。例:シクロプロピル、シクロブチル)、
置換もしくは非置換のシクロアルケニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、アルキルオキシ、アルキルスルホニル、スルファモイル、カルバモイル、アミノ。例:シクロプロペニル)、
置換もしくは非置換のヘテロアリール(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、アルキルオキシ、アルキルスルホニル、スルファモイル、カルバモイル、アミノ。例:テトラゾリル、インドリル、ピラゾリル)、
置換もしくは非置換のヘテロサイクリル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル、アルキルオキシ、アルキルスルホニル、スルファモイル、カルバモイル、アミノ。例:ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジル)、
置換もしくは非置換のアルキルオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、OCF)、
置換もしくは非置換のアルケニルオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:ビニルオキシ、アリルオキシ)、
置換もしくは非置換のアリールオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:フェニルオキシ)、
置換もしくは非置換のヘテロアリールオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のシクロアルキルオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のシクロアルケニルオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のヘテロサイクリルオキシ(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のアミノ(例:アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ)、アシルアミノ(例:アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アリールアルキルアミノ(例:ベンジルアミノ、トリチルアミノ)、ヒドロキシアミノ、アルキルオキシカルボニルアミノ、アルキルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、シクロアルケニルスルホニルアミノ、ヘテロサイクリルスルホニルアミノ、カルバモイルアミノ、スルファモイルアミノ)、
置換もしくは非置換のカルバモイル(置換基としては、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:アルキルカルバモイル(例:メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル)、アルキルスルホニルカルバモイル、アルキルオキシカルバモイル。)、
置換もしくは非置換のカルバモイルオキシ(置換基としては、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のアシル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロサイクリルカルボニル、ホルミル、アセチル。)、
置換もしくは非置換のアルキルスルホニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:メタンスルホニル、エタンスルホニル)、
置換もしくは非置換のアリールスルホニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のヘテロアリールスルホニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のシクロアルキルスルホニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のシクロアルケニルスルホニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のヘテロサイクリルスルホニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のスルファモイル(置換基としては、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、
置換もしくは非置換のアルキルオキシカルボニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。例:メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル)、
アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、シクロアルケニルオキシカルボニル、ヘテロサイクリルオキシカルボニル、
アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、シクロアルキルスルフィニル、シクロアルケニルスルフィニル、ヘテロサイクリルスルフィニル、
アリールアルキルオキシ(例:ベンジルオキシ)、ヘテロアリールアルキルオキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、シクロアルケニルアルキルオキシ、ヘテロサイクリルアルキルオキシ、
アルキルチオ(例:メチルチオ)、アルケニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、シクロアルキルチオ、シクロアルケニルチオ、ヘテロサイクリルチオ、
置換もしくは非置換のシリルオキシ、
ニトロソ、アジド、イソシアノ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、メルカプト、ホルミルオキシ、ハロホルミル、オキザロ、チオホルミル、チオカルボキシ、ジチオカルボキシ、チオカルバモイル、スルフィノ、スルホ、スルホアミノ、ヒドラジノ、ウレイド、アミジノ、グアニジノ、フタルイミド、オキソ等からなる群から選択される基があげられる。1〜4個の当該置換基で置換されていてもよい。
【0026】
「置換カルバモイル」または「置換アミノ」の置換基としては、好ましくは、ヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルキル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、置換もしくは非置換のアルケニル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、置換もしくは非置換のアリール(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、置換もしくは非置換のシクロアルキル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、置換もしくは非置換のヘテロアリール(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、置換もしくは非置換のヘテロサイクリル(置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、ニトロ、シアノ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリール、ヘテロサイクリル。)、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、シクロアルケニルオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロサイクリルオキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、シクロアルキルスルホニル、シクロアルケニルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロサイクリルスルホニル、カルバモイル、スルファモイル、アシル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、シクロアルキルスルフィニル、シクロアルケニルスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロサイクリルスルフィニル、アミノなどが挙げられる。
【0027】
「アルキルスルホニル」、「アルキルアミノ」、「アリールアルキルアミノ」、「アルキルオキシカルボニルアミノ」、「アルキルスルホニルアミノ」、「アルキルカルバモイル」、「アルキルスルホニルカルバモイル」、「アルキルオキシカルバモイル」、「アルキルオキシカルボニル」、「アルキルスルフィニル」および「アルキルチオ」のアルキル部分は、上記「アルキル」を意味する。
「アルケニルオキシ」および「アルケニルチオ」のアルケニル部分は、上記「アルケニル」を意味する。
「アリールアルキルアミノ」、「アリールスルホニルアミノ」、「アリールスルホニル」、「アリールオキシカルボニル」、「アリールスルフィニル」および「アリールチオ」のアリール部分は、上記「アリール」を意味する。
「シクロアルキルスルホニルアミノ」、「シクロアルキルスルホニル」、「シクロアルキルオキシカルボニル」、「シクロアルキルスルフィニル」および「シクロアルキルチオ」のシクロアルキル部分は、上記「シクロアルキル」を意味する。
「シクロアルケニルスルホニルアミノ」、「シクロアルケニルスルホニル」、「シクロアルケニルオキシカルボニル」、「シクロアルケニルスルフィニル」および「シクロアルケニルチオ」のシクロアルケニル部分は、上記「シクロアルケニル」を意味する。
「ヘテロアリールスルホニルアミノ」、「ヘテロアリールスルホニル」、「ヘテロアリールオキシカルボニル」、「ヘテロアリールスルフィニル」および「ヘテロアリールチオ」のヘテロアリール部分は、上記「ヘテロアリール」を意味する。
「ヘテロサイクリルスルホニルアミノ」、「ヘテロサイクリルスルホニル」、「ヘテロサイクリルオキシカルボニル」、「ヘテロサイクリルスルフィニル」および「ヘテロサイクリルチオ」のヘテロサイクリル部分は、上記「ヘテロサイクリル」を意味する。
【0028】
本発明化合物のうち、以下の態様の化合物が好ましい。
環Aは置換若しくは非置換の芳香族炭素環または置換若しくは非置換の芳香族複素環である。環Aには、単環のみならず縮合環(2〜3個の縮合環)も含まれるが、特に単環が好ましい。
環Aとしては、例えば、以下の環が挙げられる。
【化18】


環Aとして、好ましくは、以下の環が挙げられる。
【化19】


環Aとして、さらに好ましくは、以下の環が挙げられる。
【化20】


環Aとして、特に好ましくは、以下の環が挙げられる。
【化21】


なお、環Aは、置換可能な任意の位置の原子が次の置換基から選択される1以上の基で置換されていてもよい。
置換基:ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノおよび式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12、R13、p、R14およびR15は前記と同意義である。)で示される基。
【0029】
は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。
は、より好ましくは、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニルまたは置換若しくは非置換のアルキニルである。
は、さらに好ましくは、水素である。
【0030】
及びRはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。
好ましくは、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニルまたは置換若しくは非置換のアルキニルである。
さらに好ましくは、水素である。
【0031】
は−CR5a5b−、−O−または−S−である。
は、より好ましくは、−CR5a5b−または−O−である。
【0032】
5a及びR5bはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルである。
好ましくは、水素である。
【0033】
はそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルである。
【0034】
mは0〜3の整数である。
好ましくは、0または1である。さらに好ましくは、1である。
【0035】
nは0〜6の整数である。
【0036】
、R、R、R及びR10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15で示される基である。
【0037】
は、好ましくは、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15で示される基である。
さらに好ましくは、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシルまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15で示される基である。
特に好ましくは、置換若しくは非置換のアシルである。
【0038】
12及びR13はそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。
好ましくは、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニルまたは置換若しくは非置換のアルキニルである。
さらに好ましくは、水素である。
【0039】
pは1〜3の整数である。
好ましくは、1または2である。さらに好ましくは、2である。
【0040】
14は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。
好ましくは、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニルまたは置換若しくは非置換のアルキニルである。
さらに好ましくは、水素である。
【0041】
15は置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。
好ましくは、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。
【0042】
式(I)中、
【化22】


で示される部分は、好ましくは、
【化23】


(ここで、R5a、R5b及びR11は前記と同意義である。)である。
【0043】
11は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルである。
11は、好ましくは、水素である。
【0044】
環Bは置換若しくは非置換の非芳香族炭素環または置換若しくは非置換の非芳香族複素環である。環Bには、単環のみならず縮合環(2〜3個の縮合環)も含まれるが、特に単環が好ましい。
環Bとしては、例えば、以下の環が挙げられる。
【化24】


環Bとして、好ましくは、以下の環が挙げられる。
【化25】


環Bとして、さらに好ましくは、以下の環が挙げられる。
【化26】


環Bとして、特に好ましくは、以下の環が挙げられる。
【化27】


なお、環Bは、置換可能な任意の位置の原子が次の置換基から選択される1以上の基で置換されていてもよい。
置換基:ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシおよび置換若しくは非置換のアルキル。
【0045】
式(I)で示される化合物の好ましい置換基の組合せとして、以下の1)〜2)が挙げられる。
1)環Aが置換若しくは非置換の芳香族炭素環であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、Rが−CR5a5b−であり、R5a及びR5bが水素であり、mが1であり、nが0であるである化合物、
2)環Aが置換若しくは非置換の芳香族炭素環であり、Rが水素であり、R及びRが水素であり、Rが−O−であり、Rがそれぞれ独立して、ヒドロキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、mが1であり、nが4である化合物。
【0046】
式(I)または式(II)で示される化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト−エノール異性体、イミン−エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。
【0047】
本発明化合物の一つ以上の水素、炭素および/または他の原子は、それぞれ水素、炭素および/または他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。本発明化合物は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、本発明化合物のすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究および/または診断のツールとして有用である。
【0048】
本発明化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(I)で示されるトリチウム標識化合物は、例えば、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(I)で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、式(I)で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。他のトリチウム標識化合物を調製するための適切な方法としては、文書Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)を参照にできる。14C−標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0049】
本発明化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、本発明化合物と、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特に塩酸、硫酸、リン酸、酒石酸、メタンスルホン酸との塩等が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0050】
本発明化合物またはその製薬上許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)および/または結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物および結晶多形も包含する。
例えば、「溶媒和物」は、式(I)で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。また、式(I)で示される化合物またはその製薬上許容される塩を、再結晶することでそれらの結晶多形を形成する場合がある。
【0051】
本発明化合物またはその製薬上許容される塩は、プロドラッグを形成する場合があり、本発明はそのような各種のプロドラッグも包含する。プロドラッグは、化学的又は代謝的に分解できる基を有する本発明化合物の誘導体であり、加溶媒分解により又は生理学的条件下でインビボにおいて薬学的に活性な本発明化合物となる化合物である。
例えば、プロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素的に酸化、還元、加水分解等を受けて式(I)で示される化合物に変換される化合物、胃酸等により加水分解されて式(I)で示される化合物に変換される化合物等を包含する。適当なプロドラッグ誘導体を選択する方法および製造する方法は、例えばDesign of Prodrugs, Elsevier, Amsterdam 1985に記載されている。プロドラッグは、それ自身が活性を有する場合がある。
【0052】
本発明化合物またはその製薬上許容される塩がヒドロキシル基を有する場合は、例えば、ヒドロキシル基を有する化合物と適当なアシルハライド、適当な酸無水物、適当なスルホニルクロライド、適当なスルホニルアンハイドライド及びミックスドアンハイドライドとを反応させることにより或いは縮合剤を用いて反応させることにより製造されるアシルオキシ誘導体やスルホニルオキシ誘導体のようなプロドラッグが例示される。例えば、CHCOO−、CCOO−、t−BuCOO−、C1531COO−、PhCOO−、(m−NaOOCPh)COO−、NaOOCCHCHCOO−、CHCH(NH)COO−、CHN(CHCOO−、CHSO−、CHCHSO−、CFSO−、CHFSO−、CFCHSO−、p-CH-O-PhSO−、PhSO−、p-CHPhSO−が挙げられる。
【0053】
(本発明の化合物の製造法)
本発明化合物の一般的製造法を以下に例示する。また、抽出、精製などは、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。
本発明の化合物の合成は、当該分野において公知の手法を参酌しながら実施することができる。
【0054】
式(I)で示される化合物は、以下のように合成することができる。
【化28】


(式中、各記号は前記と同意義であり、式(I−1)で示される化合物は公知の化合物を用いてもよく、公知の化合物から常法により誘導された化合物を用いてもよい。「Hal」はハロゲンを意味する。)
【0055】
第1工程
式(I−1)で示される化合物と、式(I−2)で示される化合物とを反応させ、式(I)で示される化合物を製造する工程である。
反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、飽和炭化水素類(例、シクロヘキサン、ヘキサンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、エステル類(例、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(例、アセトニトリルなど)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、t−ブタノールなど)、水およびそれらの混合溶媒等が挙げられる。
好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、芳香族炭化水素類(例、トルエン、ベンゼン、キシレンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなど)、エーテル類(例、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンなど)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)またはニトリル類(例、アセトニトリルなど)を用いればよい。
特にケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトンなど)またはニトリル類(例、アセトニトリルなど)が好ましい。
塩基としては、例えば金属水素化物(例、水素化ナトリウムなど)、金属水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、金属炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムなど)、金属アルコキシド(例、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなど)、炭酸水素ナトリウム、金属ナトリウム、金属アミド、有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、2,6−ルチジンなど)、ピリジン、アルキルリチウム(n−BuLi、sec−BuLi、tert−BuLi)等が挙げられる。
好ましくは、金属水素化物(例、水素化ナトリウムなど)、金属水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)、金属炭酸塩(例、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウムなど)、炭酸水素ナトリウムまたは有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、2,6−ルチジンなど)を用いればよい。
特に有機アミン(例、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、2,6−ルチジンなど)が好ましい。
反応温度は、−20℃〜使用する溶媒が還流する温度、好ましくは−10℃〜室温である。
反応時間は、0.5〜24時間、好ましくは0.5〜12時間である。
【0056】
式(II)で示される化合物も上記スキームと同様にして以下のように合成することができる。
【化29】


(式中、各記号は前記と同意義であり、式(I−1)で示される化合物は公知の化合物を用いてもよく、公知の化合物から常法により誘導された化合物を用いてもよい。「Hal」はハロゲンを意味する。)
【0057】
本発明に係る化合物は、作用発現が速く、かつ、低血糖を引き起こさずに血糖降下作用を示すため、糖尿病、特に2型糖尿病の治療剤および/または予防剤として有用である。
本発明化合物は、血糖降下作用のみならず、医薬としての有用性を備えており、下記いずれか、あるいは全ての優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)代謝安定性が高い。
d)CYP酵素(例えば、CYP3A4)に対し、本明細書に記載する測定条件の濃度範囲内で不可逆的阻害作用を示さない。
e)変異原性を有さない。
f)心血管系のリスクが低い。
g)高い溶解性を示す。
【0058】
本発明の医薬組成物を投与する場合、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。経口投与は常法に従って錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の通常用いられる剤型に調製して投与すればよい。非経口投与は、注射剤等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。本発明に係る化合物は経口吸収性が高いため、経口剤として好適に使用できる。
【0059】
本発明化合物の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。
【0060】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、成人に経口投与する場合、通常0.05〜100mg/kg/日であり、好ましくは0.1〜10mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005〜10mg/kg/日であり、好ましくは0.01〜1mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回〜数回に分けて投与すれば良い。
【0061】
本発明化合物は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減等を目的として、インスリン分泌促進薬(例えば、スルホニル尿素(SU)薬)、速効型インスリン分泌促進薬(例えば、フェニルアラニン誘導体薬)、ブドウ糖吸収阻害薬(例えば、αグルコシダーゼ阻害薬(αGI薬))、インスリン抵抗性改善薬(例えば、ビグアナイド系薬剤(BG薬)、チアゾリジン系誘導体(TZD薬))、インスリン製剤、ペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害薬、GLP−1受容体アゴニスト、1型ナトリウム依存性グルコース輸送体(SGLT1)阻害薬、2型ナトリウム依存性グルコース輸送体(SGLT2)阻害薬等(以下、併用薬剤と略記する)と組み合わせて用いることができる。この際、本発明化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類の製剤として投与されてもよいし、両方の活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
【0062】
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01〜100重量部用いればよい。
【0063】
以下に本発明の実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0064】
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
EtN:トリエチルアミン
DEAD:ジエチルアゾジカルボキシレート
PPh:トリフェニルホスフィン
DMAP:4−ジメチルアミノピリジン
THF:テトラヒドロフラン
DPPA:ジフェニルリン酸アジド
DMSO:ジメチルスルホキシド
PPTS:pyridinium p-toluenesulfonate
【0065】
各実施例で得られたNMR分析は300または400MHzで行い、CDCl3、acetone−d、DMSO−dを用いて測定した。
【実施例1】
【0066】
【化30】


化合物1(1.00 g、5.02 mmol)にアセトン(50 mL)、トリエチルアミン(1.40 mL、10.10 mmol)を加え、氷冷下、撹拌しながら化合物2(0.77 mL、5.02 mmol)を滴下した。その後、反応液を室温で2時間撹拌し、水を加え反応を停止した。この混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶にて精製し、化合物(I−1)(1.15 g、71 %)を得た。
化合物(I−1);1H-NMR (CDCl3) δ: 0.94 (m, 2H), 1.04 - 1.26 (m, 3H), 1.59 - 1.67 (m, 5H), 1.67 - 1.76 (m, 1H), 2.11 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.67 (s, 3H), 8.10 (dt, J = 8.8, 1.9 Hz, 2H), 8.17 (dt, J = 8.8, 1.9 Hz, 2H), 8.28 (br s, 1H).
【実施例2】
【0067】
【化31】


化合物3(2.02 g、16.14 mmol)、トルエン (50 mL)、化合物4(2.30 mL、16.61 mmol)の混合液を4時間加熱還流した。反応後、減圧下、溶媒を留去し、再結晶にて精製して化合物5(2.29 g、52 %)を得た。
化合物5;1H NMR (CDCl3) δ: 1.06 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 2.04 (s, 3H), 2.27 (q, J = 7.7 Hz, 2H), 2.88 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 3.58 (dt, J = 7.7, 6.5 Hz, 2H), 4.18 (s, 2H), 7.18 - 7.34 (m, 5H), 8.45 (br t, 1H).
Chlorosulfonic acid (3.0 mL)に氷冷下、撹拌しながら化合物5(1.54 g、5.70 mmol)を加えた後、反応液を室温に戻して1時間撹拌した。この反応液に氷冷しながら水を加え、析出した固体を濾取し、化合物6を得た。
化合物6;1H NMR (CDCl3) δ: 1.06 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.28 (q, J = 7.8 Hz, 2H), 3.01 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.63 (dt, J = 7.6, 5.4 Hz, 2H), 4.18 (s, 2H), 7.49 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 8.52 (br t, 1H).
化合物6のメタノール(5 mL)溶液に、28% アンモニア水(5 mL)を加え、この混合液を70℃で2.5時間撹拌した。この混合液に水、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、化合物7(1.70 g、85 %)を得た。
化合物7;1H NMR (CDCl3) δ: 1.06 (t, J = 8.0 Hz, 3H), 2.05 (s, 3H), 2.26 (q, J = 8.0 Hz, 2H), 2.95 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.60 (dt, J = 7.6, 6.3 Hz, 2H), 4.18 (s, 2H), 7.37 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.85 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 8.49 (t, J = 6.3 Hz, 1H).
化合物7(1.11g、3.16mmol)にアセトン(60mL)、トリエチルアミン(0.90 mL、6.49 mmol)を加えて、氷冷下、撹拌しながら化合物2(0.50 mL、3.26 mmol)を滴下し、反応液を室温で8時間撹拌した後、水を加えて反応を停止した。この混合液に酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶にて精製し、化合物(I−2)(0.56 g、37 %)を得た。
化合物(I−2);1H NMR (CDCl3) δ: 0.93 - 0.83 (m, 2H), 1.07 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 1.26 - 1.01 (m, 2H), 1.64 - 1.59 (m, 5H), 1.78 - 1.68 (m, 1H), 1.90 - 1.86 (m, 1H), 2.06 (s, 3H), 2.12 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.28 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 2.98 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 3.61 (dt, J = 7.6, 6.3 Hz, 2H), 4.21 (s, 2H), 7.40 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.98 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 8.56 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 9.18 - 9.10 (m, 1H).
【実施例3】
【0068】
【化32】


窒素気流中、化合物9(2.00 g、13.23 mmol)、化合物8(2.33 g, 13,47 mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.16 g、1.30 mmol)、トリフェニルホスフィン(5.19 g、19.80 mmol)、THF (60 mL)の混合液に、氷冷下、撹拌しながら40% ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)トルエン溶液(10.40 mL、23.89 mmol)を滴下した。この反応液を5時間撹拌し、室温で40時間静置した後、水を加えて反応を停止した。この混合液に飽和塩化アンモニウム水溶液、ジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで洗浄し、濾取して化合物10(2.46 g、61%)を得た。
化合物10;1H NMR (acetone-d6) δ: 1.22 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 2.62 (q, J = 7.7 Hz, 2H), 3.22 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 4.47 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 6.43 (br s, 2H), 7.06 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 7.27 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.56 (dd, J = 8.9, 2.4 Hz, 1H), 7.79 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 8.38 (d, J = 2.4 Hz, 1H).
化合物10(0.78 g、2.56 mmol)にアセトン(20 mL)、トリエチルアミン(1.00 mL、7.21 mmol)を加えて、冷却下、撹拌しながら化合物2(0.80 mL、5.21 mmol)を滴下した。その後、反応液を60℃で12時間撹拌し、水を加えて反応を停止した。この混合液にジクロロメタンを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(I−3)(0.83 g、75 %)を得た。
化合物(I−3);1H NMR (CDCl3) δ: 0.82 - 0.92 (m, 2H), 1.25 (t, J = 7.6 Hz, 3H), 1.11 - 1.28 (m, 3H), 1.59 - 1.66 (m, 5H), 1.67 - 1.75 (m, 1H), 2.08 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.64 (q, J = 7.6 Hz, 2H), 3.26 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 4.42 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 6.98 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.48 (dd, J = 7.8, 2.3 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 8.40 (d, J = 2.3 Hz, 1H).
【0069】
上記実施例と同様に、本発明化合物として、例えば、以下の化合物も合成することができる。
【化33】


ここで、Rとしては、以下の基が挙げられる。
【化34】


ここで、R11としては、水素、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルが挙げられる。
【0070】
さらに、本発明化合物として、以下の化合物も合成することができる。
【化35】


ここで、Rとしては、以下の基が挙げられる。
【化36】


ここで、環Bとしては、以下の環が挙げられる。
【化37】

【0071】
以下の化合物についても合成した。
(参考例1)
【0072】
【化38】


化合物(S−1)(1.92 g、11.29 mmol)、トルエン(25 mL)、トリエチルアミン(3.20 mL、23.09 mmol)、ジフェニルリン酸アジド(3.30 ml、15.31 mmol)の混合液を3時間加熱還流した。その後60℃に冷却して、化合物1(1.50 g、7.53 mmol)を加えた。その後、1時間加熱還流し、室温にて13時間静置した。この反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶にて精製し、化合物(S−3)(1.29 g、47 %)を得た。
化合物(S−3);1H-NMR (DMSO-d6) δ: 0.92 (d, J = 6.7 Hz, 6H), 1.01 - 1.31 (m, 5H), 1.40 - 1.55 (m, 1H), 1.73 - 1.87 (m, 4H), 2.76 (s, 3H), 3.23 - 3.36 (m, 1H), 6.53 (br d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.13 (dt, J = 8.5, 1.8 Hz, 2H), 8.25 (dt, J = 8.5, 1.8 Hz, 2H).
(参考例2)
【0073】
【化39】


化合物(S−4)(5.03 g、25.22 mmol)、2,2-dimethoxypropane (30 mL)、pyridinium p-toluenesulfonate (0.64 g、2.52 mmol) の混合液を7時間加熱還流した。この反応液を減圧下、濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶にて精製し、化合物(S−5)(4.50 g、73 %)を得た。続いて、化合物(S−5)(2.52 g、10.32 mmol)にDMSO (30 mL)、NaH (0.50 g、20.67 mmol)を加え、60℃で1時間撹拌した。この反応液に化合物(S−6)(1.58 mL、12.37 mmol)を加えて5時間撹拌した。この反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶にて精製し、化合物(S−7)(2.78 g、73%)を得た。続いて、化合物(S−7)(1.53 g、4.13 mmol)にTHF(15 mL)、6N HCl (2 mL)を加え、10分間撹拌した。この反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液、メタノール、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルにて洗浄して化合物(S−8)(1.25 g、93%)を得た。
化合物(S−8);1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.12 - 1.39 (m, 5H), 1.60 - 1.74 (m, 5H), 2.77 (s, 3H), 3.41 - 3.55 (m, 1H), 4.44 (s, 2H), 8.11 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.24 (d, J = 8.9, 1H), 8.28 (d, J = 8.5 Hz, 2H).
(参考例3)
【0074】
【化40】


化合物(S−9)(3.96g、31.40 mmol)にメタノール(15 mL) を加え、氷冷下、撹拌しながら、臭素(5.01 g、31.37 mmol)を滴下した。その後、反応液を15℃で30分間撹拌し、水を加え、室温で3時間撹拌した。この混合液にヘキサン/酢酸エチル (1 : 3)を加えて抽出し、有機層を10% 炭酸カリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下、溶媒を留去し、化合物(S−10)と化合物(S−9)(10:1)の混合物(6.55g)を得た。続いて、化合物(S−10)と化合物(S−9)(10:1)の混合物(1.00g、化合物(S−10)換算4.39 mmol)にアセトン(20 mL)、炭酸カリウム(1.89g、13.65 mmol)、化合物1(0.87 g、4.39 mmol)を加え、60℃で7時間撹拌した。この反応液に水、酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(S−11)(0.74 g、52 %)を得た。
化合物(S−11);1H-NMR (DMSO-d6) δ: 1.21 - 1.37 (m, 5H), 1.71 - 1.79 (m, 5H), 2.51 - 2.56 (m, 1H), 2.75 (s, 3H), 4.00 (s, 2H), 8.03 (d, J = 8.5, 2H), 8.23 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 8.24 - 8.26 (m, 1H).
【実施例4】
【0075】
GKラットを用いた評価法
5〜11週齢のGK雄性ラットを一群8匹に群分けし、試験前日より12〜18時間絶食させ、試験化合物として化合物(I−1)(100mg/kg、1mL/kg)を1.5%カルボキシメチルセルロースの懸濁液としたものを経口ゾンデにより強制的に胃内に投与した。コントロールには媒体の1.5%カルボキシメチルセルロース溶液(1mL/kg)を経口投与した。対照群には、化合物(S−8)(100mg/kg、1mL/kg)、既存の糖尿病薬(SU薬)であるアセトヘキサミド(100mg/kg、1mL/kg)を投与した。投与30分後にブドウ糖液(500mg/kg、2mL/kg)を経口投与し、一定時間ごとに尾静脈から採血し、アキュチェック・アクティブスティック(Rosch)を用いて血糖値を測定した。試験化合物の効果は、コントロールと投与群の比較で評価を行い、有意差検定を実施した。
結果を図1に示す。
非肥満2型糖尿病のモデルラットであるGK雄性ラットを用いた実験では、コントロール群の血糖値を、アセトヘキサミド、化合物(I−1)の投与により低下させることができた。また、化合物(I−1)は立ち上がりが早く、速効型の様相を示して食後の過血糖を抑制する上で、アセトヘキサミドに比べて、効果的であることがわかった。また、化合物(I−1)は、薬効の切れもよいので、アセトヘキサミドに比べて、低血糖を防止することができることがわかった。
参考例化合物(S−8)では、これらの効果は見られなかった。
なお、参考例化合物(S−11)については、図1には示さないが、血糖値の低下作用は認められなかった。
【実施例5】
【0076】
Wistar雄性ラットを用いた評価法
Wistar雄性ラットを一群4〜8匹に群分けし、試験前日より12〜18時間絶食させ、試験化合物(I−1)(50〜100mg/kg、1mL/kg)を1.5%カルボキシメチルセルロースの懸濁液としたものを経口ゾンデにより強制的に胃内に投与した。コントロールには媒体の1.5%カルボキシメチルセルロース溶液(1mL/kg)を経口投与した。対照群には既存の糖尿病薬であるアセトヘキサミド、ナテグリニド、化合物(S−8)を投与した。投与後一定時間ごとに尾静脈から採血し、アキュチェック・アクティブスティック(Rosch)を用いて血糖値を測定した(図2)。また、投与90分後に尾静脈より採血し、レビス インスリンラットT(シバヤギ)により血漿インスリン値を測定した(図3)。試験化合物の効果は、コントロールと投与群の比較で評価を行い、有意差検定を実施した。
結果を図2および図3に示す。
正常モデルのラットであるWistar雄性ラットを用いた実験では、アセトヘキサミド、ナテグリニド投与群では、コントロール群に比べて、血糖値を低下させた。それに対し、化合物(I−1)投与群では、低下させなかった。このことは、化合物(I−1)が、非肥満2型糖尿病のモデルラットであるGK雄性ラットでは血糖値低下に働き(実施例4)、正常モデルのラットであるWistar雄性ラットでは血糖値を低下させることがないことを示す。なお、参考例化合物(S−8)では、これらの効果は見られなかった。(図2)
また、投与90分後の血漿インスリン値については、アセトヘキサミド、ナテグリニド投与群では、コントロール群に比べて、上昇していたが、化合物(I−1)投与群では、そのような傾向は見られなかった。このことからも、化合物(I−1)とアセトヘキサミドやナテグリニドは、異なる作用を示すことがわかった。
なお、アセトヘキサミドおよびナテグリニドは以下の構造を有する。
【化41】

【0077】
以下に、本発明化合物の生物試験例を記載する。
【0078】
試験例1:CYP阻害試験
市販のプールドヒト肝ミクロソームを用いて、ヒト主要CYP5分子種(CYP1A2、2C9、2C19、2D6、3A4)の典型的基質代謝反応として7−エトキシレゾルフィンのO−脱エチル化(CYP1A2)、トルブタミドのメチル−水酸化(CYP2C9)、メフェニトインの4’−水酸化(CYP2C19)、デキストロメトルファンのO脱メチル化(CYP2D6)、テルフェナジンの水酸化(CYP3A4)を指標とし、それぞれの代謝物生成量が本発明化合物によって阻害される程度を評価する。
【0079】
反応条件は以下のとおり:基質、0.5μmol/L エトキシレゾルフィン(CYP1A2)、100μmol/L トルブタミド(CYP2C9)、50μmol/L S−メフェニトイン(CYP2C19)、5μmol/L デキストロメトルファン(CYP2D6)、1μmol/L テルフェナジン(CYP3A4);反応時間、15分;反応温度、37℃;酵素、プールドヒト肝ミクロソーム0.2mg タンパク質/mL;本発明化合物濃度、1、5、10、20μmol/L(4点)。
【0080】
96穴プレートに反応溶液として、50mmol/L Hepes緩衝液中に各5種の基質、ヒト肝ミクロソーム、本発明化合物を上記組成で加え、補酵素であるNADPHを添加して、指標とする代謝反応を開始する。37℃、15分間反応した後、メタノール/アセトニトリル=1/1(V/V)溶液を添加することで反応を停止する。3000rpm、15分間の遠心後、遠心上清中のレゾルフィン(CYP1A2代謝物)を蛍光マルチラベルカウンタで定量し、トルブタミド水酸化体(CYP2C9代謝物)、メフェニトイン4’水酸化体(CYP2C19代謝物)、デキストロルファン(CYP2D6代謝物)、テルフェナジンアルコール体(CYP3A4代謝物)をLC/MS/MSで定量する。
【0081】
薬物を溶解した溶媒であるDMSOのみを反応系に添加したものをコントロール(100%)とし、残存活性(%)を算出し、濃度と抑制率を用いて、ロジスティックモデルによる逆推定によりIC50を算出する。
【0082】
試験例2:BA試験
経口吸収性の検討実験材料と方法
(1)使用動物:マウスあるいはSDラットを使用する。
(2)飼育条件:マウスあるいはSDラットは、固形飼料および滅菌水道水を自由摂取させる。
(3)投与量、群分けの設定:経口投与、静脈内投与を所定の投与量により投与する。以下のように群を設定する。(化合物ごとで投与量は変更有)
経口投与 1〜30mg/kg(n=2〜3)
静脈内投与 0.5〜10mg/kg(n=2〜3)
(4)投与液の調製:経口投与は溶液または懸濁液として投与する。静脈内投与は可溶化して投与する。
(5)投与方法:経口投与は、経口ゾンデにより強制的に胃内に投与する。静脈内投与は、注射針を付けたシリンジにより尾静脈から投与する。
(6)評価項目:経時的に採血し、血漿中本発明化合物濃度をLC/MS/MSを用いて測定する。
(7)統計解析:血漿中本発明化合物濃度推移について、非線形最小二乗法プログラムWinNonlin(登録商標)を用いて血漿中濃度‐時間曲線下面積(AUC)を算出し、経口投与群と静脈内投与群のAUCから本発明化合物のバイオアベイラビリティ(BA)を算出する。
【0083】
試験例3:代謝安定性試験
市販のプールドヒト肝ミクロソームと本発明化合物を一定時間反応させ、反応サンプルと未反応サンプルの比較により残存率を算出し、本発明化合物が肝で代謝される程度を評価する。
【0084】
ヒト肝ミクロソーム0.5mgタンパク質/mLを含む0.2mLの緩衝液(50mmol/L Tris−HCl pH7.4、150mmol/L 塩化カリウム、10mmol/L 塩化マグネシウム)中で、1mmol/L NADPH存在下で37℃、0分あるいは30分間反応させる(酸化的反応)。反応後、メタノール/アセトニトリル=1/1(v/v)溶液の100μLに反応液50μLを添加、混合し、3000rpmで15分間遠心する。その遠心上清中の本発明化合物をLC/MS/MSにて定量し、反応後の本発明化合物の残存量を0分反応時の化合物量を100%として計算する。なお、加水分解反応はNADPH非存在下で、グルクロン酸抱合反応はNADPHに換えて5mmol/L UDP−グルクロン酸の存在下で反応を行い、以後同じ操作を実施する。
【0085】
試験例4:CYP3A4蛍光MBI試験
CYP3A4蛍光MBI試験は、代謝反応による本発明化合物のCYP3A4阻害の増強を調べる試験である。CYP3A4酵素(大腸菌発現酵素)により7−ベンジルオキシトリフルオロメチルクマリン(7−BFC)が脱ベンジル化されて、蛍光を発する代謝物7−ハイドロキシトリフルオロメチルクマリン(7−HFC)が生じる。7−HFC生成反応を指標としてCYP3A4阻害を評価する。
【0086】
反応条件は以下のとおり:基質、5.6μmol/L 7−BFC;プレ反応時間、0または30分;反応時間、15分;反応温度、25℃(室温);CYP3A4含量(大腸菌発現酵素)、プレ反応時62.5pmol/mL、反応時6.25pmol/mL(10倍希釈時);本発明化合物濃度、0.625、1.25、2.5、5、10、20μmol/L(6点)。
【0087】
96穴プレートにプレ反応液としてK−Pi緩衝液(pH7.4)中に酵素、本発明化合物溶液を上記のプレ反応の組成で加え、別の96穴プレートに基質とK−Pi緩衝液で1/10希釈されるようにその一部を移行し、補酵素であるNADPHを添加して指標とする反応を開始し(プレ反応無)、所定の時間反応後、アセトニトリル/0.5mol/L Tris(トリスヒドロキシアミノメタン)=4/1(V/V)を加えることによって反応を停止する。また残りのプレ反応液にもNADPHを添加しプレ反応を開始し(プレ反応有)、所定時間プレ反応後、別のプレートに基質とK−Pi緩衝液で1/10希釈されるように一部を移行し指標とする反応を開始する。所定の時間反応後、アセトニトリル/0.5mol/L Tris(トリスヒドロキシアミノメタン)=4/1(V/V)を加えることによって反応を停止する。それぞれの指標反応を行ったプレートを蛍光プレートリーダーで代謝物である7−HFCの蛍光値を測定する。(Ex=420nm、Em=535nm)
【0088】
本発明化合物を溶解した溶媒であるDMSOのみを反応系に添加したものをコントロール(100%)とし、本発明化合物をそれぞれの濃度添加したときの残存活性(%)を算出し、濃度と抑制率を用いて、ロジスティックモデルによる逆推定によりIC50を算出する。IC50値の差が5μmol/L以上の場合を(+)とし、3μmol/L以下の場合を(−)とする。
【0089】
試験例5:Fluctuation Ames Test
本発明化合物の変異原性を評価する。
凍結保存しているネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98株、TA100株)20μLを10mL液体栄養培地(2.5% Oxoid nutrient broth No.2)に接種し37℃にて10時間、振盪前培養する。TA98株は9mLの菌液を遠心(2000×g、10分間)して培養液を除去する。9mLのMicro F緩衝液(KHPO:3.5g/L、KHPO:1g/L、(NHSO:1g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:0.25g/L、MgSO・7H0:0.1g/L)に菌を懸濁し、110mLのExposure培地(ビオチン:8μg/mL、ヒスチジン:0.2μg/mL、グルコース:8mg/mLを含むMicroF緩衝液)に添加する。TA100株は3.16mL菌液に対しExposure培地120mLに添加し試験菌液を調製する。本発明化合物DMSO溶液(最高用量50mg/mLから2〜3倍公比で数段階希釈)、陰性対照としてDMSO、陽性対照として非代謝活性化条件ではTA98株に対しては50μg/mLの4−ニトロキノリン−1−オキシドDMSO溶液、TA100株に対しては0.25μg/mLの2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミドDMSO溶液、代謝活性化条件ではTA98株に対して40μg/mLの2−アミノアントラセンDMSO溶液、TA100株に対しては20μg/mLの2−アミノアントラセンDMSO溶液それぞれ12μLと試験菌液588μL(代謝活性化条件では試験菌液498μLとS9 mix 90μLの混合液)を混和し、37℃にて90分間、振盪培養する。本発明化合物を暴露した菌液460μLを、Indicator培地(ビオチン:8μg/mL、ヒスチジン:0.2μg/mL、グルコース:8mg/mL、ブロモクレゾールパープル:37.5μg/mLを含むMicroF緩衝液)2300μLに混和し50μLずつマイクロプレート48ウェル/用量に分注し、37℃にて3日間、静置培養する。アミノ酸(ヒスチジン)合成酵素遺伝子の突然変異によって増殖能を獲得した菌を含むウェルは、pH変化により紫色から黄色に変色するため、1用量あたり48ウェル中の黄色に変色した菌増殖ウェルを計数し、陰性対照群と比較して評価する。変異原性が陰性のものを(−)、陽性のものを(+)として示す。
【0090】
試験例6:hERG試験
本発明化合物の心電図QT間隔延長リスク評価を目的として、human ether−a−go−go related gene (hERG)チャンネルを発現させたHEK293細胞を用いて、心室再分極過程に重要な役割を果たす遅延整流K電流(IKr)への本発明化合物の作用を検討する。
全自動パッチクランプシステム(PatchXpress 7000A、AxonInstruments Inc.)を用い、ホールセルパッチクランプ法により、細胞を−80mVの膜電位に保持した後、+40mVの脱分極刺激を2秒間、さらに−50mVの再分極刺激を2秒間与えた際に誘発されるIKrを記録する。発生する電流が安定した後、本発明化合物を目的の濃度で溶解させた細胞外液(NaCl:135 mmol/L、KCl:5.4 mmol/L、NaHPO:0.3mmol/L、CaCl・2HO:1.8mmol/L、MgCl・6HO:1mmol/L、グルコース:10mmol/L、HEPES(4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfonic acid、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸):10mmol/L、pH=7.4)を室温条件下で、10分間細胞に適用させる。得られたIKrから、解析ソフト(DataXpress ver.1、Molecular Devices Corporation)を使用して、保持膜電位における電流値を基準に最大テール電流の絶対値を計測する。さらに、本発明化合物適用前の最大テール電流に対する阻害率を算出し、媒体適用群(0.1%ジメチルスルホキシド溶液)と比較して、本発明化合物のIKrへの影響を評価する。
【0091】
試験例7:溶解性試験
本発明化合物の溶解度は、1%DMSO添加条件下で決定する。DMSOにて10mmol/L化合物溶液を調製し、本発明化合物溶液6 μLをpH6.8人工腸液(0.2mol/L リン酸二水素カリウム試液 250mLに0.2mol/L NaOH試液118mL、水を加えて1000mLとする)594μLに添加する。25℃で16時間静置させた後、混液を吸引濾過する。濾液をメタノール/水=1/1(V/V)にて2倍希釈し、絶対検量線法によりHPLCまたはLC/MS/MSを用いて濾液中濃度を測定する。
【0092】
試験例8:粉末溶解度試験
適当な容器に本発明化合物を適量入れ、各容器にJP−1液(塩化ナトリウム2.0g、塩酸7.0mLに水を加えて1000mLとする)、JP−2液(pH6.8のリン酸塩緩衝液500mLに水500mLを加える)、20mmol/L タウロコール酸ナトリウム(TCA)/JP−2液(TCA1.08gにJP−2液を加え100mLとする)を200μLずつ添加する。試験液添加後に全量溶解した場合には、適宜、本発明化合物を追加する。密閉して37℃で1時間振とう後に濾過し、各濾液100μLにメタノール100μLを添加して2倍希釈を行う。希釈倍率は、必要に応じて変更する。気泡および析出物がないかを確認し、密閉して振とうする。絶対検量線法によりHPLCを用いて本発明化合物を定量する。
【0093】
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
(製剤例1)
硬質ゼラチンカプセルは次の成分を用いて製造する:
用量
(mg/カプセル)
活性成分 250
デンプン(乾燥) 200
ステアリン酸マグネシウム 10
合計 460mg
【0094】
(製剤例2)
錠剤は下記の成分を用いて製造する:
用量
(mg/錠剤)
活性成分 250
セルロース(微結晶) 400
二酸化ケイ素(ヒューム) 10
ステアリン酸
合計 665mg
成分を混合し、圧縮して各重量665mgの錠剤にする。
【0095】
(製剤例3)
以下の成分を含有するエアロゾル溶液を製造する:
重量
活性成分 0.25
エタノール 25.75
プロペラント22(クロロジフルオロメタン) 74.00
合計 100.00
活性成分とエタノールを混合し、この混合物をプロペラント22の一部に加え、−30℃に冷却し、充填装置に移す。ついで必要量をステンレススチール容器へ供給し、残りのプロペラントで希釈する。バブルユニットを容器に取り付ける。
【0096】
(製剤例4)
活性成分60mgを含む錠剤は次のように製造する:
活性成分 60mg
デンプン 45mg
微結晶性セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン(水中10%溶液) 4mg
ナトリウムカルボキシメチルデンプン 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
滑石 1mg
合計 150mg
活性成分、デンプン、およびセルロースはNo.45メッシュU.S.のふるいにかけて、十分に混合する。ポリビニルピロリドンを含む水溶液を得られた粉末と混合し、ついで混合物をNo.14メッシュU.S.ふるいに通す。このようにして得た顆粒を50℃で乾燥してNo.18メッシュU.S.ふるいに通す。あらかじめNo.60メッシュU.S.ふるいに通したナトリウムカルボキシメチルデンプン、ステアリン酸マグネシウム、および滑石をこの顆粒に加え、混合した後、打錠機で圧縮して各重量150mgの錠剤を得る。
【0097】
(製剤例5)
活性成分80mgを含むカプセル剤は次のように製造する:
活性成分 80mg
デンプン 59mg
微結晶性セルロース 59mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
合計 200mg
活性成分、デンプン、セルロース、およびステアリン酸マグネシウムを混合し、No.45メッシュU.S.のふるいに通して硬質ゼラチンカプセルに200mgずつ充填する。
【0098】
(製剤例6)
活性成分225mgを含む坐剤は次のように製造する:
活性成分 225mg
飽和脂肪酸グリセリド 2000mg
合計 2225mg
活性成分をNo.60メッシュU.S.のふるいに通し、あらかじめ必要最小限に加熱して融解させた飽和脂肪酸グリセリドに懸濁する。ついでこの混合物を、みかけ2gの型に入れて冷却する。
【0099】
(製剤例7)
活性成分50mgを含む懸濁剤は次のように製造する:
活性成分 50mg
ナトリウムカルボキシメチルセルロース 50mg
シロップ 1.25ml
安息香酸溶液 0.10ml
香料 q.v.
色素 q.v.
精製水を加え合計 5ml
活性成分をNo.45メッシュU.S.のふるいにかけ、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびシロップと混合して滑らかなペーストにする。安息香酸溶液および香料を水の一部で希釈して加え、攪拌する。ついで水を十分量加えて必要な体積にする。
【0100】
(製剤例8)
静脈用製剤は次のように製造する:
活性成分 100mg
飽和脂肪酸グリセリド 1000ml
上記成分の溶液は通常、1分間に1mlの速度で患者に静脈内投与される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上の試験例から明らかなように、本発明に係る化合物は血糖降下作用を示す。従って、本発明に係る化合物は、糖尿病治療薬として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


(式中、
環Aは置換若しくは非置換の芳香族炭素環または置換若しくは非置換の芳香族複素環であり、
は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、
及びRはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、
は−CR5a5b−、−O−または−S−であり、
はそれぞれ独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、
5a及びR5bはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルであり、
mは0〜3の整数であり、
nは0〜6の整数である。
但し、以下に示される化合物:
【化2】


【化3】


を除く。)で示される化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項2】
環Aが
【化4】


(ここで、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12及びR13はそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、pは1〜3の整数であり、R14は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、R15は置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。)で示される基である。)で示される基である、請求項1記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項3】
がハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換若しくは非置換のヘテロサイクリル、置換若しくは非置換のアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアリールオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルオキシ、置換若しくは非置換のアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルキルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のシクロアルケニルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のヘテロサイクリルアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシル、置換若しくは非置換のカルバモイル、置換若しくは非置換のアミノまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12、R13、p、R14及びR15は請求項2と同意義である。)で示される基である、請求項2記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項4】
が置換若しくは非置換のヘテロアリールアルキルオキシ、置換若しくは非置換のアシルまたは式:−(CR1213)p−NR14−(C=O)−R15(式中、R12、R13、p、R14及びR15は請求項2と同意義である。)で示される基である、請求項2または3記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項5】
、R、R及びR10が水素である、請求項3または4記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項6】
mが1である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項7】
が−CR5a5b−である、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項8】
5a及びR5bが水素であり、mが1であり、nが0である、請求項7記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項9】
式(I)中、
【化5】


で示される部分が
【化6】


(ここで、R5a及びR5bは請求項1と同意義であり、R11は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシまたは置換若しくは非置換のアルキルである。)である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項10】
が水素である、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項11】
及びRが水素である、請求項1〜10のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の化合物またはその製薬上許容される塩を含有する医薬組成物。
【請求項13】
式(II):
【化7】


(式中、
環Aは置換若しくは非置換の芳香族炭素環または置換若しくは非置換の芳香族複素環であり、
環Bは置換若しくは非置換の非芳香族炭素環または置換若しくは非置換の非芳香族複素環であり、
は水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルであり、
及びRはそれぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のアルキル、置換若しくは非置換のアルケニル、置換若しくは非置換のアルキニル、置換若しくは非置換のアリール、置換若しくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニルまたは置換若しくは非置換のヘテロサイクリルである。但し、以下に示される化合物:
【化8】


を除く。)で示される化合物またはその製薬上許容される塩を有効成分とする、糖尿病治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−14548(P2013−14548A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149066(P2011−149066)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(504260232)シオノギファーマケミカル株式会社 (3)
【Fターム(参考)】