説明

アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体およびその重合体

【課題】アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体の提供。
【解決手段】式(1)で表されるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を用いる。


式中、Xは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基、Yは炭素数1〜6のアルキル基、アミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基、トリアゾール基、ヒドラゾン基、ジスルフィド基又はシラン基の群から選択されるいずれかの官能基、Zはアジド基又はアルキン基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体およびその重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
温度応答性高分子とは、温度を変化させたときに相転移温度を境に物性が変化する高分子である。温度応答性高分子は、バイオアッセイ、細胞培養、クロマトグラフィーなどへの展開が盛んに行われている。
温度応答性高分子の一つに、N−アルキル置換アクリルアミド誘導体がある。また、N−アルキル置換アクリルアミド誘導体の一つに、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(以下、PNIPAAmと略記する)がある。
【0003】
PNIPAAmは、32℃の相転移温度(Lower Critical Solution Temperature;LCST)を境にそれ以下では水溶性を示し、それ以上では急激に不溶化して沈殿を生起する。そのため、PNIPAAmは、その連鎖を生体高分子(タンパク質・DNA・RNA・糖鎖など)に固定して温度変化のみで沈殿・溶解させ分離・回収する技術へ展開されている。また、細胞培養皿や分離担体表面に導入して温度変化のみで表面の親水性・疎水性を変化させ細胞や生理活性物質を回収する技術などへも展開されている。
【0004】
温度応答性高分子を他の分子や固体表面に固定するために、官能基を有するモノマーとの共重合が一般に行われている。
ところが、直鎖状の重合体またはハイドロゲル(すなわち、架橋物)においては、官能基の導入率を増加させると、相転移温度は顕著に上昇してしまい、さらにその転移挙動も鈍感になってしまうことが避けられないという問題があった。そのため、温度応答性重合体またはハイドロゲルにおいて鋭敏な温度応答性を保持したまま、多くの官能基を導入する方法が求められてきた。
【0005】
こうした背景のもと、これまでに本発明者らは、鋭敏な温度応答性を保持したまま多くの官能基が導入された高分子、あるいはハイドロゲルを調製するためのモノマーおよびその重合体あるいはハイドロゲルの開発を行ってきた。その結果、共重合させるモノマーと構造を極めて類似させることにより、単独重合体が保持している温度応答性を発現させることが出来ることを見いだした(特許文献1)。
そして、これまで本発明者らは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を開発した(非特許文献1)。
【0006】
一方、クリックケミストリー(Click Chemistry)は、化学分野において、クリック反応により簡単かつ安定な結合を生じさせ、容易に新たな機能性分子を創出できる方法として近年注目されている。クリック反応とは、選択性や効率が極めて高く、水中でも実行可能な反応の総称で、アジドとアルキンの付加環化反応がその中心的な反応として位置づけられている。
しかし、クリック反応可能な官能基を有し、クリックケミストリーで有効に用いることが可能なイソプロピルアクリルアミド誘導体はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−255001号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T.Aoyagi,M.Ebara、K.Sakai,Y.Sakurai,T.Okano、J.Biomater.Sci.Polym.Edn、11,101(2000)
【非特許文献2】T.Yoshida,T.Aoyagi,E.Kokufuta,T.Okano、J.Polym.Sci.:Part A:Polym.Chem.、41,779(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、クリック反応可能な官能基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体及びその重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
クリックケミストリーでは、アルキンとアジド化合物の付加環化反応が、他の官能基とほとんど反応せずお互いだけと反応する高い選択性を有する反応であることが知られている。
そこで、本発明者は、このアジド基もしくはアルキン基などの付加環化反応(クリック反応)可能な官能基を側鎖に有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を合成することで、高い反応性および選択性を有する温度応答性高分子を創出できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
本発明のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする。
【0012】
【化1】

【0013】
式中、Xは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、Yは炭素数1〜6のアルキル基、アミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基、トリアゾール基、ヒドラゾン基、ジスルフィド基又はシラン基の群から選択されるいずれかの官能基を表し、Zはアジド基又はアルキン基を表す。
【0014】
本発明の重合体は、先に記載のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、一般式(1)で表される構成なので、側鎖に付加環化反応(クリック反応)可能な官能基であるアルキン基とアジド基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を提供できる。アジド基又はアルキン基により、クリック反応により簡単かつ安定な結合を生じさせ、容易に新たな機能性分子を創出できる。
【0016】
本発明の重合体は、先に記載のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を含む構成なので、クリック反応可能な官能基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を含む重合体を提供することができる。
また、側鎖のアルキンとアジドの付加環化反応(クリック反応)を利用して共有結合により様々な特定分子の導入が可能である。
更に、水溶液中で特定の温度を境に低温側で溶解、高温側で不溶化を生じさせ、狭い温度範囲で親水性疎水性の変化を起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アジドエチルアミンの1H−NMR測定結果である。
【図2】アジド化イソプロピルアクリルアミド誘導体(Azido−CIPAAm)の1H−NMR測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体及びその重合体について説明する。
【0019】
(本発明の実施形態)
<アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体>
本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化2】

【0021】
式中、Xは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、Yは炭素数1〜6のアルキル基、アミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基、トリアゾール基、ヒドラゾン基、ジスルフィド基又はシラン基の群から選択されるいずれかの官能基を表し、Zはアジド基又はアルキン基を表す。
【0022】
本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、イソプロピルアクリルアミド骨格を有することにより、その単独重合体が保持している極めてシャープな温度応答性を発現させることができる。
【0023】
また、本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、Xが水素原子又は炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基であることにより、相転移温度や疎水性相互作用の制御ができる。
炭素数が6超の直鎖もしくは分岐したアルキル基の場合には、温度応答性自体が失われる可能性があり、好ましくない。
【0024】
また、本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、Yが炭素数1〜6のアルキル基、アミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基、トリアゾール基、ヒドラゾン基、ジスルフィド基又はシラン基の群から選択されるいずれかの官能基であることにより、通常の有機化学反応で用いられている結合基に対応できる。
炭素数が6超のアルキル基の場合には、温度応答性自体が失われる可能性があり、好ましくない。
【0025】
また、本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、Zがアジド基又はアルキン基であることにより、それらの官能基を付加環化反応(クリック反応)に供させることができ、共有結合により様々な特定分子の導入が可能である。
【0026】
また、本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、例えば、下記化学式(2)で表されるアジド化イソプロピルアクリルアミド誘導体(以下、Azido−CIPAAmという。)である。
【0027】
【化3】

【0028】
また、本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、例えば、下記化学式(3)で表されるプロパギル化イソプロピルアクリルアミド誘導体(以下、Propargyl−CIPAAmという。)である。
【0029】
【化4】

【0030】
<アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体の合成方法>
まず、アジド基又はアルキン基を有するアミン誘導体と、活性エステル化2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(以下、CIPAAmという。)と、をそれぞれ所定量はかりとり、ジクロロメタンに溶解し、室温で反応させる。
次に、カラムクロマトグラフィーで分離後、濃縮、乾燥させる。
以上の工程により、アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を生成できる。
【0031】
前記工程において、CIPAAmは、引用文献2に記載の方法で合成できる。
また、例えば、次の工程により、アミン誘導体としてアジドエチルアミンを合成できる。
まず、所定量の2−クロロエチルアミンを水に溶解させる。次に、その水溶液に所定量のアジ化ナトリウムを加え、所定の温度に加熱し反応させる。反応後、所定量の水酸化カリウムを加え、その溶液を室温まで冷却する。次に、所定量のジクロロメタンを加え、分液ロートにてジクロロメタン層を抽出する。次に、無水硫酸ナトリウムで脱水後、乾燥させる。
更に、アミン誘導体としてアジドエチルアミンを用いることにより、アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体としてAzido−CIPAAmを生成することができる。
【0032】
また、所定の方法により、プロパギルアミンを合成し、これをアミン誘導体として用いることにより、アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体としてPropargyl−CIPAAmを生成することができる。
【0033】
<アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体の重合体>
本発明の実施形態である重合体は、先に記載のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を含む重合体である。
この重合体は、例えば、一種のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体のみからなる単独重合体である。一種のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体のみからなる単独重合体とすることにより、アジド基又はアルキン基を有する低分子又は高分子を容易にクリック反応させることができ、容易に所望の新たな機能性分子を合成できる。
単独重合体としては、例えば、下記化学式(4)で表される重合体を挙げることができる。
【0034】
【化5】

【0035】
また、本発明の実施形態である重合体は、2種以上のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体からなる共重合体であってもよい。2種以上のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体からなる共重合体とすることにより、一の共重合体内でクリック反応による分子内結合を形成することができるとともに、他の共重合体と網の目のように分子間結合を形成することができる。
2種以上のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体からなる共重合体としては、例えば、下記化学式(5)で表される重合体を挙げることができる。
【0036】
【化6】

【0037】
また、本発明の実施形態である重合体は、アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体と別のモノマーとの共重合体であってもよい。アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体と別のモノマーとの共重合体とすることにより、その単独重合体が保持している極めてシャープな温度応答性を発現させることができる。
アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体と別のモノマーとの共重合体としては、例えば、下記化学式(6)で表される重合体を挙げることができる。
【0038】
【化7】

【0039】
<クリック反応>
側鎖のアルキンとアジドの付加環化反応(クリック反応)を利用して、容易に所望の新たな機能性分子を合成できる。
例えば、Azido−CIPAAmと、Propargyl−CIPAAmとを用いて付加環化反応(クリック反応)をさせることにより、下記化学式(7)に示す分子を合成できる。
【0040】
【化8】



【0041】
側鎖のアルキンとアジドの付加環化反応(クリック反応)を利用して、共有結合により様々な特定分子の導入が可能であり、容易に所望の新たな機能性重合体を合成できる。
また、Azido−CIPAAm重合体と、Propargyl−CIPAAm重合体とを用いて付加環化反応(クリック反応)をさせることにより、下記化学式(8)に示す重合体を合成できる。
【0042】
【化9】

【0043】
本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体は、一般式(1)で表される構成なので、付加環化反応(クリック反応)により簡単かつ安定な結合を生じさせ、所望の新たな機能性分子を合成できるアルキン基とアジド基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を提供できる。
【0044】
本発明の実施形態である重合体は、先に記載のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を含む構成なので、付加環化反応(クリック反応)により簡単かつ安定な結合を生じさせ、所望の新たな機能性分子を合成できるアルキン基とアジド基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体の重合体を提供することができる。
また、この重合体は、側鎖のアルキンとアジドの付加環化反応(クリック反応)を利用して共有結合により様々な特定分子の導入が可能である。
更に、この重合体は、水溶液中で特定の温度を境に低温側で溶解、高温側で不溶化を生じさせ、狭い温度範囲で親水性疎水性の変化を起こすことができる温度応答性高分子として利用可能である。
【0045】
本発明の実施形態であるアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体及びその重合体は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
<Azido−CIPAAmの合成>
初めに2−クロロエチルアミン(2.83g,24.4mmol)を水(50mL)に溶解させた。
次に、その水溶液にアジ化ナトリウム(4.76g,73.2mmol)を加え、80℃で15時間反応させた。
反応後、水酸化カリウム(1.51g,26.8mmol)を加え、その溶液を室温まで冷却した。
次に、ジクロロメタン(100mL)を加え、分液ロートにてジクロロメタン層を抽出した。
次に、無水硫酸ナトリウムで脱水後、乾燥させ、アジドエチルアミンを黄色の粘性液体として得た。収率はほぼ100%であった。
図1に示す1H−NMR測定結果により、アジドエチルアミンの合成を確認した。
【0047】
次に、アジドエチルアミン(2.77mmol)と活性エステル化2−カルボキシイソプロピルアクリルアミド(以下、CIPAAmという。)(2.25mmol)をジクロロメタンに溶解し、室温で6時間反応させた。なお、CIPAAmは、引用文献1に記載の方法で合成した。
次に、カラムクロマトグラフィーで分離後、濃縮、乾燥させ、Azido−CIPAAm(実施例1試料)を黄色の粘性液体として得た。
図2に示す1H−NMRスペクトル測定結果により、Azido−CIPAAm(実施例1試料)の合成を確認した。
【0048】
(実施例2)
<Propargyl−CIPAAmの合成>
まず、プロパギルアミン(2.7mmol)とCIPAAm(2.25mmol)をジクロロメタンに溶解し、室温で6時間反応させた。
次に、カラムクロマトグラフィーで分離後、濃縮、乾燥させ、Propargyl−CIPAAmを黄色の粘性液体(実施例2試料)として得た。
【0049】
(実施例3)
<Azido−CIPAAm単独および共重合体の合成>
まず、種々の比率のN−イソプロピルアミド(NIPAAmと略す)またはアクリルアミド(AAmと略す)、Azido−CIPAAm、および11.5mgの重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す)を35mLの1,4−ジオキサンに溶解させ、脱気封管後、65℃で2.5時間撹拌した。
次に、反応後ジエチルエーテルへの沈殿を2回繰り返して精製した。
以上の工程により、Azido−CIPAAm重合体(実施例3試料)を製造した。
【0050】
(実施例4)
<Propargyl−CIPAAm単独および共重合体の合成>
まず、種々の比率のN−イソプロピルアミド(NIPAAmと略す)またはアクリルアミド(AAmと略す)、Propargyl−CIPAAm、および11.5mgの重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBNと略す)を35mLの1,4−ジオキサンに溶解させ、脱気封管後、65℃で2.5時間撹拌した。
次に、反応後ジエチルエーテルへの沈殿を2回繰り返して精製した。
以上の工程により、Propargyl−CIPAAm共重合体(実施例4試料)を製造した。
【0051】
(実施例5)
<Azido−CIPAAm単独および共重合架橋物の合成>
まず、種々の比率のNIPAAm、Azido−CIPAAm、26.6mg/mLの架橋剤メチレンビスアクリルアミド(以下、MBAAmと略す。)水溶液0.1mLおよび0.0048mLの重合促進剤N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを0.9mLの水に溶解させた。
次に、窒素ガスをバブリングした後、40mg/mLの過硫酸アンモニウム水溶液0.02mLを直ちに加えた後、キャピラリー管中に溶液を吸い上げた。
0℃で24時間保った後、キャピラリーより調製した架橋物を取り出し、冷水中に1日間浸漬して精製した。
以上の工程により、Azido−CIPAAm共重合架橋物(実施例5試料)を製造した。
【0052】
(実施例6)
<Propargyl−CIPAAm単独および共重合架橋物の合成>
まず、種々の比率のNIPAAm、Propargyl−CIPAAm、26.6mg/mLのMBAAm水溶液0.1mLおよび0.0048mLの重合促進剤N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを0.9mLの水に溶解させた。
次に、窒素ガスをバブリングした後、40mg/mLの過硫酸アンモニウム水溶液0.02mLを直ちに加えた後、キャピラリー管中に溶液を吸い上げた。
0℃で24時間保った後、キャピラリーより調製した架橋物を取り出し、冷水中に1日間浸漬して精製した。
以上の工程により、Propargyl−CIPAAm共重合体架橋物(実施例6試料)を製造した。
【0053】
(実施例7)
<クリック反応>
実施例3の試料と実施例4の試料を用いて、クリック反応が容易に生じることを確認した。まず、実施例3の試料と実施例4の試料をそれぞれ1mg、0.5mgのCu(I)を1mLの水に溶解させた。室温で30分保った後、反応物を取り出し、冷水中に1日間浸漬して精製した。以上の工程により、架橋物を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、アジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体およびその重合体に関するものであり、合成化学産業等において利用可能性がある。
また、本発明のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体およびその重合体を用いて、生体高分子(タンパク質・DNA・RNA・糖鎖など)に固定して温度変化のみで沈殿・溶解させ分離・回収する技術や、細胞培養皿や分離担体表面に導入して温度変化のみで表面の親水性・疎水性を変化させ細胞や生理活性物質を回収する技術などに展開可能であり、生体高分子産業、細胞・生理活性物質回収産業等に利用可能性がある。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とするアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体。
【化1】


式中、Xは水素原子または炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐したアルキル基を表し、Yは炭素数1〜6のアルキル基、アミド基、エステル基、エーテル基、ケトン基、トリアゾール基、ヒドラゾン基、ジスルフィド基又はシラン基の群から選択されるいずれかの官能基を表し、Zはアジド基又はアルキン基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載のアジド基又はアルキン基を有するイソプロピルアクリルアミド誘導体を含むことを特徴とする重合体。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−201634(P2012−201634A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67969(P2011−67969)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】