説明

アジュバントを含む機能的に再構成されたウイルス膜

本発明は、病原体又は腫瘍細胞由来の膜タンパク質などの抗原に対するワクチンに関する。本発明は、更に、膜融合活性によって再構成ウイルス膜を形成する方法に関し、該膜は、好ましくは、ウイルスの天然脂質、ウイルス融合タンパク質、1種又は複数の場合により用いる抗原、並びに両親媒性アジュバントを含む脂質二分子膜である。このような再構成ウイルス膜を含む医薬組成物も本発明の一部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原体又は腫瘍細胞由来の膜タンパク質などの抗原に対するワクチンに関する。本発明は、膜融合活性によって、両親媒性アジュバントに加えて、ウイルスの天然脂質、両親媒性抗原を含む脂質二分子膜である、再構成ウイルス膜を形成する方法に更に関し、そのような再構成ウイルス膜を含む医薬組成物に更に関する。
【背景技術】
【0002】
古典的には、被膜ウイルスに対するワクチンは、不活化ウイルス若しくは弱毒生ウイルスを含むか、その成分の調製物(例えば、分割ウイルス又はサブユニット調製物)を含む。ワクチン接種には、通常、これらの調製物が注射される。注射のあと、ワクチンに存在するこれらのウイルス又はそのようなタンパク質は、樹状細胞又はマクロファージなどの免疫系の抗原提示細胞により取り込まれ、その後、ワクチンの抗原部分を免疫系の効果細胞に提示する。抗原提示細胞は、皮膚の直下に最も多く存在するので、ワクチンは注射すると効果的である。しかし、同様な細胞が、例えば、鼻部の内側を覆う粘膜にも存在することが明らかになっている(Ogra et al. 2001)。粘膜に存在するこれらの食細胞を誘発し、免疫応答を亢進するためには、皮下に存在する食細胞に比べて、非常に強い刺激が必要とされる(Janeway et al. 2001)。
【0003】
例えば、インフルエンザウイルス又ははしかウイルスなどの、ワクチンに含まれる特定のウイルス又はタンパク質の注射は、同じウイルスによる後の感染を防ぐために十分に強力な免疫応答を誘発するが、これは、例えば呼吸器合胞体ウイルスなどの多くの他の場合には当てはまらない。物理的手段又は化学的手段により、免疫応答を強化する非常に多くの試みがなされている。そのような実験から明らかになっている最も重要な原則は、(1)物理的刺激には、ウイルスタンパク質の多くの複製が粒子で結合する必要があるということである。これらの粒子は、すべてがウイルス、再構成ウイルス膜又は微小粒子担体上のタンパク質であってもよい。粒子は、個々のサブユニットより良好に免疫系を刺激する(Ogra et al. 2001、Janeway et al. 2001)。(2)一方、化学的刺激は、免疫系の食細胞又は効果細胞が、抗原提示細胞の表面に存在する受容体を通して(例えば、これら受容体によって認識される化学物質のアジュバントの使用を通して)、特定のシグナルを受ける必要がある。
【0004】
十分な物理化学的刺激を加えることで、ウイルスタンパク質は、例えば、鼻部への投与などの粘膜に対する適用ですら、強い免疫応答を誘発することができる(Ogra et al. 2001)。化学的手段若しくは物理的手段又は2つの原則の併用に関わらず、大部分の現行の方法及びそのような手段によって免疫応答を刺激するための組成物は、下記で概説されるように著しい不都合を有する。
【0005】
当技術分野で開発された特定の種類のワクチン組成物は、ウイルス糖タンパク質を含む脂質二重層である「ビロゾーム」として知られている。ビロゾームは、再構成ウイルス膜を含むことができ、これは通常、洗浄剤によって被膜ウイルスから膜タンパク質及び膜脂質を抽出し、その後脂質を添加し、抽出されたウイルス膜タンパク質及びウイルス膜脂質から前記洗浄剤を除去することによって製造され、これにより、タンパク質の突出物を有する特徴的な脂質二重層が形成される(Stegmann et al. 1987)。また、ビロゾームは、精製ウイルスタンパク質及び合成脂質若しくは天然脂質、又は二重層を形成する他の物質から形成された膜を含むことができる。ビロゾームの特性は、天然のウイルスエンベロープの組成、表面構造及び機能的活性と酷似する。前記ビロゾームの特に重要な特性は、天然のウイルスエンベロープの受容体結合及び膜融合活性の保存に関与することで、ウイルスが入る可能性のある同じ細胞にビロゾームが入り、これら同じ細胞によって免疫系に入ることを可能にすることである。受容体結合及び膜融合活性の保存は、前記ビロゾームの完全な免疫原性特性の発現にとって不可欠である(Arkema 2000、Bungener 2002)。
【0006】
特定のウイルス抗原に対して、ビロゾームは、例えば、鼻腔内にワクチンを投与する場合ですら、(WO88/08718及びWO92/19267で例証されているように)強力と考えられる防御免疫応答を誘発する。しかし、その他のビロゾーム製剤は、不活化ウイルス又はサブユニット調製物と比較して、(Gluck et al. 1994で例証されるように)わずかに免疫原性を改善するに過ぎない。ここに引用された実施例では、ビロゾームは、外因性脂質の添加を含むプロトコールによって産生し、我々はビロゾームの組成と表面構造が、天然のウイルスエンベロープのものとは異なることを発見している。そのような異なる表面構造は、製造されるビロゾームの膜融合特性に影響を及ぼし、したがってその免疫原性に影響を及ぼす可能性があることは当業者に公知である。
【0007】
免疫応答を亢進し、このワクチンの経鼻投与を可能にするために、大腸菌由来のアジュバントタンパク質(易熱性毒素)を、脂質を補足したビロゾームインフルエンザワクチンと混合した(EP0538437)。臨床試験では、注射されたワクチンと同等な血清抗体価を誘発するために、毒素の添加が不可欠であることが示された(Gluck et al. 1994)。したがって、毒素の添加は、このワクチンの免疫原性を亢進したが、顔面筋の一時性麻痺を生じるベル麻痺として知られる重篤な副作用も誘発した。毒素のアジュバント作用は抗原提示細胞による認識によるので、この場合、毒素とウイルスタンパク質が同じ細胞に接触する確実性がなく、したがって、すべての細胞の活性化を確実にするには、比較的高濃度の毒素が必要とされ、このことにより抗原が活性化細胞によって認識される機会が増加する。したがって、脂質の添加によるこの種のビロゾーム調製物は、非常に多くの不都合を有する。
【0008】
また、ビロゾームは、ムラミルジペプチドの誘導体と混合した精製インフルエンザ抗原から調製されている(EP0205098及びEP0487909)。この場合、ムラミルジペプチド誘導体は、膜を形成する。ムラミルジペプチドはアジュバントであり、本製剤がインフルエンザ抗原に対する免疫応答を亢進することが実際に発見されているが、ムラミルジペプチドは発熱性で(Kotani et al., 1976、Dinarello et al., 1978)、注射後に体から素早く排出され、肉芽腫及び炎症につながる局所毒性を有する(Ribi et al., 1979、Kohashi et al., 1980)。更に、これらは中性pHにおける貯蔵寿命が限られており(Powell et al., 1988)、構造上の完全性を維持するための最適pHは低すぎて、インフルエンザウイルスの血球凝集素などの、受容体介在エンドサイトーシスにより細胞に入るウイルスの融合タンパク質と共に、ワクチン製剤にすることができない。更に、そのような合成膜は、天然のウイルス膜によくは似ていないので、これらに対する免疫応答は、ウイルスに対して生じたものとは異なる。
【0009】
或いは、当技術分野の研究者は、QuilA(登録商標)(EP0231039B1、EP0109942A1、EP0180564A1)のようなサポニンなどのアジュバントと複合体をなすウイルスタンパク質を含む「免疫賦活複合体」(ISCOM、Morein et al. 1984)などの再構成ウイルス膜とは異なる複合化抗原を作製しており、これらの大部分が、Quillaia sopanaria Molinaの樹皮から分離されている。抗原及びコレステロールなどの脂質と混合することで、これらのアジュバントは30〜40nmのケージ様構造を形成して抗原を粒状にし、一方で、同時にアジュバントとして作用する。ISCOMは多くの動物用ワクチンで使用され、ウイルス膜タンパク質の免疫原性を増強するが、ヒトに対するそのようなワクチンの開発は、これらの毒性に関する懸念及び混合物の複雑さから抑制されてきた(Cox et al. 1998)。
【0010】
より最近、髄膜炎菌などの細菌の精製外膜タンパク質を、インフルエンザ血球凝集素又はヒト免疫不全症エンベロープ糖タンパク質などの抗原性タンパク質と混合した非共有結合の複合体からなる、プロテオソームインフルエンザワクチンが開発された(米国特許出願第20010053368号)。これらの複数の細菌タンパク質は、アジュバントとして作用し得るが、複数のタンパク質からなるそのような混合物の複合性により、調節上の問題が生じる。更に、その免疫応答は、溶液中に存在するタンパク質とその他の抗原の全てに対するもので、ウイルスタンパク質に対する特異性は相対的に低い。
【0011】
Biovector Therapeuticsによって開発された他の粒状製剤は、炭水化物の内核とこれを取り囲む抗原を含む脂質エンベロープからなる。抗原として、インフルエンザ血球凝集素によって、多少の免疫応答の亢進が確認されたが、更なる発展を保証するには十分ではない。
【0012】
気道での複製能を最小限に抑えたインフルエンザウイルスの低温適応株などの呼吸器ウイルスの弱毒生型が、経鼻ワクチンとして開発されている。これらのワクチンは、明確な利点を有し、野生型ウイルスの感染により誘発される自然免疫に近似した免疫応答を誘発する。インフルエンザでは、そのようなワクチンが1980年代から知られており、現在、商業化が近い。多くのウイルスが共有する急速に突然変異する能力により、弱毒ウイルスが部分的又は完全に野生型ウイルスに戻り、その結果、予防するはずの疾患を実際に引き起こすために、その商業化が遅れている。
【0013】
上記の理由により、ISCOM及びプロテオソームなどの組成物が開発されたとはいえ、それ自体は強力な免疫応答を誘発しない病原体に対して免疫応答を特に誘発させ、経鼻投与及びその他の粘膜投与をするために、強力な免疫応答を誘発し、生ウイルスを含まず、毒性の低い、特性決定が十分になされたワクチン組成物に対する要求が依然大きいことは、当技術分野で十分に認められている。
【特許文献1】WO88/08718
【特許文献2】WO92/19267
【特許文献3】EP0538437
【特許文献4】EP0205098
【特許文献5】EP0487909
【特許文献6】EP0231039B1
【特許文献7】EP0109942A1
【特許文献8】EP0180564A1
【特許文献9】米国特許出願第20010053368号
【非特許文献1】Ogra et al. 2001
【非特許文献2】Janeway et al. 2001
【非特許文献3】Stegmann et al. 1987
【非特許文献4】Arkema 2000
【非特許文献5】Bungener 2002
【非特許文献6】Gluck et al. 1994
【非特許文献7】Kotani et al., 1976
【非特許文献8】Dinarello et al., 1978
【非特許文献9】Ribi et al., 1979
【非特許文献0】Kohashi et al., 1980
【非特許文献11】Powell et al., 1988
【非特許文献12】Morein et al. 1984
【非特許文献13】Cox et al. 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記で示した多くの問題及び障害を解決する新しい手段及び方法を提供する。本発明は、両親媒性アジュバント及び抗原を含む再構成ウイルス膜(a reconstituted viral membrane)を提供し、前記アジュバント及び前記抗原は、疎水的相互作用を通して相互に作用し、両者は、再構成ウイルス膜の脂質二分子膜に存在し、本再構成ウイルス膜はEP0538437により調製されたビロゾームのウイルス膜より優れた膜融合活性を有する。更に再構成ウイルス膜は、再構成ウイルス膜の元となるウイルスエンベロープの組成、表面構造及び機能的特性と酷似する。本発明は、そのような再構成ウイルス膜を製造するための方法を更に提供し、本方法は、(i)適切な洗浄剤でウイルスを溶解する工程と、(ii)ウイルス遺伝物質及びコアタンパク質を除去する工程と、(iii)アジュバント活性を有する1つ又は複数の両親媒性分子を、洗浄剤を含む溶液で抗原と接触させる工程と、(iv)この膜の再形成を可能にする条件下で洗浄剤を除去する工程の一部又はすべてを含む。
【0015】
更に、本発明は、本発明による再構成ウイルス膜、薬学的に許容できる担体を含む製剤を提供することに加えて、経鼻投与、経口投与又は非経口投与のいずれかによる治療又は予防において、本発明によるそのような再構成ウイルス膜又は製剤の使用について提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は再構成ウイルス膜に関する。再構成ウイルス膜は、好ましくは(a)脂質二重層と、(b)ウイルスの融合タンパク質と、(c)両親媒性アジュバントと、(d)場合により、更なる抗原を含む。再構成ウイルス膜において、脂質二重層は、ウイルスの自然宿主の宿主細胞とウイルス膜との融合タンパク質によって誘発される融合に適合する脂質組成を有することが好ましい。脂質組成は、融合の最適pHにおける融合に適合することが好ましい。融合タンパク質、両親媒性アジュバント、更に好ましくは場合により用いる抗原は、脂質二重層の疎水性の内部と相互に作用することが好ましく、すなわち、これは二重層及び/又は互いの脂質との疎水的相互作用を通して、ウイルス膜の二重層に結合し、組み込まれ、及び/又は包埋される。また、融合タンパク質及び両親媒性アジュバントは、共有結合で結合しないことが更に好ましい。また、好ましくは、両親媒性アジュバントと更なる抗原は、共有結合により結合しない。本発明のウイルス膜は、脂質、好ましくはウイルスの天然脂質、両親媒性アジュバント、ウイルス融合タンパク質及び1種又は複数の抗原を含む、好ましくは機能的再構成ウイルス膜であって、この両親媒性アジュバント、脂質ウイルス融合タンパク質及び抗原が、主に疎水的相互作用を通して相互に作用し、この両親媒性アジュバントの疎水性部分が、好ましくは脂質二分子膜の一部を形成し、ここで二重層は融合タンパク質、抗原及び脂質を更に含む。機能的再構成によってとは、再構成された膜が膜融合活性を有することを意味する。好ましい再構成ウイルス膜は、小胞の形をとる。
【0017】
ウイルスの融合タンパク質は、ウイルスの内在性膜タンパク質を意味するものと理解され、通常、ウイルスは、適切な哺乳類(又は鳥類)の細胞の表面に発現した場合に、この細胞と適切なpHで、本ウイルスの自然宿主である細胞との融合を誘発することができる被膜ウイルスである(参照Hernandez et al., 1996)。再構成ウイルス膜へ組み込むウイルス融合タンパク質の例は、セムリキ森林熱ウイルスE1タンパク質、インフルエンザウイルスヘムアグルチニン(HA)タンパク質、HIV gp120/gp41タンパク質、パラミクソウイルスのFタンパク質を含む。ウイルス融合タンパク質に誘発される2種類の融合は、区別することができる。1番目のタイプの融合は、例えば、HIV gp120/gp41タンパク質によって誘発され、中性pHで、標的の宿主細胞の表面で起きる。2番目のタイプの融合は、例えば、インフルエンザウイルスヘムアグルチニン(HA)タンパク質によって誘発され、より低いpH(5.0〜6.5)で、宿主細胞のエンドソーム小胞内からの内在化に対して起きる。両方のタイプの融合は、特に本発明に含まれる。
【0018】
したがって、宿主細胞と融合する本発明の再構成ウイルス膜の能力は、適切なウイルス融合タンパク質の存在に依存する。しかし、合成脂質及びウイルス融合タンパク質からなるビロゾームは、融合できないと当技術分野で報告されているように、この能力は、再構成ウイルス膜の二重層の脂質組成に更に依存する。したがって、再構成ウイルス膜の脂質組成は、好ましくは、この膜が適切なpHで適切な宿主細胞と融合できるように選択される。再構成ウイルス膜の融合能は、例えば、本書の実施例3に記載のように赤血球影融合測定で評価することができる。インフルエンザ血球凝集素を含む再構成ウイルス膜に関して、本測定における好ましい融合活性は、1μMビロゾームを、問題の血球凝集素に最適なpHで、50μM赤血球影膜リン脂質と混合した場合、1分後、赤血球影で再構成ウイルス膜小胞の少なくとも30%の融合を誘発するものである。
【0019】
上記の測定により試験できない、その他の再構成ウイルスに関する好ましい融合活性は、これらの融合タンパク質が由来したウイルスを感染させることができる細胞へ再構成ウイルス膜を加えることにより生じる融合によるものである。本再構成膜は、これらの融合タンパク質に由来するウイルスと融合することが可能な細胞の少なくとも10%と融合することが必要である。
【0020】
融合活性を有する再構成ウイルス膜を提供する1つの好ましい脂質組成物は、ウイルスの天然脂質を含む脂質組成物である。「ウイルスの天然脂質」という用語は、本書では、好ましくは哺乳類の細胞で増殖したウイルス又は孵化鶏卵で増殖したウイルスの膜に存在する脂肪を意味するものと理解される。したがって、ウイルスの天然脂質は、合成脂質と対照的に、そのように増殖させたウイルス粒子から得るか、分離することが好ましい。しかし、本発明の機能的再構成ウイルス膜は、天然脂質に加えて、例えば、合成脂質などの他の供給源から精製される脂質を含むことができる。したがって、融合活性を有する再構成ウイルス膜を提供する脂質組成物は、好ましくは、天然のウイルス膜から得るか、得ることが可能な組成物である。したがって、本発明で使用される脂質組成物は、ウイルスの天然脂質だけからなる組成物と、他の供給源に由来する脂質を補充したウイルスの天然脂質からなる組成物と、天然ウイルス膜の脂質組成に類似した様々の供給源に由来する脂質からなる組成物を含む。
【0021】
本書では、アジュバントは、抗原と併用してヒト又は動物を免疫するために使用すると、これらの免疫系を刺激して、抗原に対して免疫応答を引き起こすか、亢進するか、促進し、好ましくはアジュバント自身に対して特定の免疫応答を生じない、あらゆる物質又は化合物を含むことを意図している。好ましいアジュバントは、アジュバントがない同一の条件下で、抗原に対して生じる免疫応答と比較して、少なくとも1.5、2、2.5、5、10又は20倍、特定の抗原に対する免疫応答を亢進する。対照群に対する動物又はヒトの群でのアジュバントによって製造された特定の抗原に対する免疫応答の亢進の統計的平均を測定する試験が当技術分野で利用できる。アジュバントは、好ましくは少なくとも2つの異なる抗原に対して免疫応答を亢進することができる。本発明のアジュバントは、通常、哺乳類と異種の化合物であって、したがって、例えばインターロイキン、インターフェロン及びその他のホルモンなどの哺乳類に内因性の免疫賦活性化合物は除外される。本発明の機能的再構成ウイルス膜に取り込まれるアジュバントは、好ましくは両親媒性アジュバントである。
【0022】
「両親媒性アジュバント」という用語は、包埋される疎水性膜及び極性(頭部)部分を正しい位置に置いた環境を有するリポペプチド及び糖脂質のような化合物であって、好ましくは自身によって結合することができ、より好ましくは、脂質二重層胞(lipid bilayer vesicles)又は水中でミセルに組み込むことができるリポペプチド及び糖脂質のような化合物を含む、あらゆるアジュバントを含むことを意図している。また、この用語は、疎水性部分を二分子膜の内側の疎水性領域と接触し、極性頭部部分を膜の外側の極性表面に向けて、脂質二重層(ウイルスの天然脂質を含む)に安定して取り込まれるあらゆる両親媒性アジュバントを含む。しかし、両親媒性が著明でない、すなわち、頭部部分の極性がないか、極性が弱いが、脂質二重層胞に結合するか、組み込むことができるより多くの疎水性アジュバントは、本発明から特に除外されない。したがって、本書では、アジュバント活性を有する「両親媒性アジュバント」は、再構成ウイルス膜の形成が可能な条件下の水環境下で、1種又は複数の重要な抗原及びウイルスの天然脂質と共に再構成ウイルス膜を形成することができる、自然発生のアジュバント又は(部分的)合成アジュバントを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
好ましい実施形態において、例えば、Quil A(商標)又は他のサポニンとは対照的に、再構成ウイルス膜に存在する両親媒性アジュバントは、ヒトでの使用で薬学的に許容でき、これは、アジュバント活性を有する両親媒性物質であって、当技術分野で特定の設定で試験されている。本発明の両親媒性アジュバントは、好ましくは抗原と共有結合しないが、再構成膜の脂質二重層で共に存在する。抗原及びアジュバントは共有結合しないという事実は、抗原の処理と免疫系に対するこのエピトープの提示が、天然タンパク質単独の場合と基本的に同一であり、天然の病原体に存在するタンパク質を良好に認識することを保証する。一方、抗原及びアジュバントと脂質二重層との疎水的相互作用(及び互いに)は、調製物における再構成ウイルス膜上のアジュバント及び抗原の分布を可能にし、それによって、調製物内の大部分の膜小胞が、1つの小胞内に抗原及びアジュバントの両方を含み、より好ましくは、少なくとも60、70、80、90、95又は95%の小胞が、抗原及びアジュバントの両方を含む。1つの膜又は小胞での抗原及びアジュバントの組み合わせは、アジュバントにより活性化される抗原提示細胞への抗原の送達を可能にし、それによって、再構成ウイルス膜の治療及び/又は予防的有効性を増加する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、前記両親媒性アジュバントは、抗原提示細胞上に存在するToll様受容体(TLR)によって認識される。TLRによって認識される様々な化合物は、当技術分野で公知であって、例えば、リポペプチド、リポ多糖体、ペプチドグリカン、リポタイコ酸、リポタンパク質(マイコプラズマ、放線菌又はスピロヘータ由来)、二本鎖RNA(ポリI:C)、非メチル化DNA、リポアラビノマンナン、フラゲリン、CpG含有DNA及びイミダゾキノリンを含む。すべてのTLR認識化合物が、アジュバントとして適しているわけではなく、例えば、野生型グラム陰性細菌のリポ多糖体の毒性はアジュバントとして非常に強く、アジュバントとして使用できない。すなわち、これらはヒトでの使用には薬学的に許容できない。しかし、その他のTLR認識化合物は、アジュバントとして使用することができる。そのようなTLR認識アジュバントは、それ自身が両親媒性アジュバントでもよいし、代わりに、例えば、極性TLRリガンドに疎水性化合物(後述参照)を結合することにより両親媒性アジュバントに改変してもよい。或いは、両親媒性アジュバントは、その他の受容体を標的にしてもよい。好ましい両親媒性アジュバントはリポペプチドであり、合成的又は準合成的に製造することができる。両親媒性アジュバントとして使用するための好ましいリポペプチドは、アジュバント活性を有し、ヒトでの使用に薬学的に許容できる。本発明のリポペプチドは、通常、脂肪酸、脂質、セラミド、プラスマロゲン、アルキル若しくはアルケン鎖、又はステロールから選択される1種又は複数の疎水性化合物と共有結合する1種又は複数の(オリゴ)ペプチドからなる。通常、本発明で使用するリポペプチドは、好ましくは3、4、5、6、7又は8つのアミノ酸を含み、好ましくは、このペプチドは陽極に電荷されるアミノ酸を40〜70%含み、これにはリジン及びアルギニンが好ましく、好ましくはこのペプチドは1つ又は複数のセリン及び/又はシステインを含む。特に好ましいリポペプチドを、表1に記載する。
【0025】
本発明の他の実施形態において、前記両親媒性アジュバントは糖脂質である。両親媒性アジュバントとして使用するための好ましい糖脂質は、アジュバント活性を有し、ヒトでの使用に薬学的に許容できる。糖脂質は、1つ又は複数の糖と共有結合する脂質(又はその他の疎水性の化合物)である。非常に好ましい実施形態において、本発明は、糖脂質がα−ガラクトシルセラミド又はホスファチジルイノシトールマンノシドである、本発明による再構成ウイルス膜を提供する。「α−ガラクトシルセラミド」及び「ホスファチジルイノシトールマンノシド」という用語は、いずれか1つのあらゆる誘導体を含むことを意図している。アジュバント活性を有し、本発明の状況で有用なこれらの分子の誘導体は、例えば、それぞれ、米国特許第5936076号及び米国特許第4542212号に記載される。本発明で使用されるその他の適した糖脂質アジュバントは、例えば、リポ多糖体(LPS)のリピドA部分の毒性を減少しているが、アジュバント活性(部分)を保持したグラム陰性菌LPSの改変型を含む。なお、これについては遺伝子改変グラム陰性病原体から得ることができ、WO02/09746において検討されている。
【0026】
本発明において両親媒性アジュバントとして使用する改変LPSは、好ましくは、毒性を減少した改変リピドA部分を有する。改変LPSの毒性は、好ましくは、対応する野生型LPSの毒性より低く、より好ましくは、改変LPSの毒性は、野生型LPSの毒性より90、80、60、40、20、10、5、2、1、0.5又は0.2%低い。野生型LPS及び毒性を減少した様々の改変LPSの毒性は、当技術分野で公知の適切な測定法で測定することができる。この毒性、すなわち、改変LPSの生物活性を測定するための好ましい測定法は、MM6マクロファージ細胞系でのTNF−α誘導に関するWEHI試験である(Espevik and Niessen, 1986, J.Immunol.Methods 95: 99-105、Ziegler-Heitbrock et al., 1988, Int.J.Cancer 41: 456-461)。一方、毒性を減少した改変LPSは、依然として十分な免疫賦活性活性(すなわちアジュバント活性)を持たなければならない。毒性を減少した改変LPSは、好ましくは、対応する野生型LPSの免疫賦活性活性の少なくとも10、20、40、80、90又は100%を有する。免疫賦活性活性は、インビボで、前述のように実験動物若しくは本書の実施例で測定でき、又はインビトロで、例えば、LPSと培養することで刺激された樹状細胞の成熟を、LPS刺激樹状細胞の少なくとも1種のサイトカイン(例えば、IL12、IL10、TNF−α、IL6及びIL−1−βのうちの1種)の産生を計測するか、LPS刺激樹状細胞の少なくとも1種の共起刺激分子(例えば、CD40又はCD86)の発現を計測することによる検査で、測定することができる。
【0027】
本発明のもう1つの態様において、本発明によるビロゾームに存在する両親媒性アジュバントは、ペプチドであって、好ましくは両親媒性ペプチドである。両親媒性アジュバントとして使用するための好ましいペプチドは、アジュバント活性を有し、ヒトでの使用に薬学的に許容できる。アジュバント活性を有するペプチドの、特に極性ペプチドを、それらを適した疎水性化合物(前述参照)に結合(共有結合)させることで、両親媒性アジュバントにすることができる。或いは、両親媒性ペプチドは、下記のように膜貫通配列などのアミノ酸の疎水性の範囲を含むことができる。好ましいペプチドは、Notch ligand Jagged−1(Weijzen et al., 2002参照、Genbankアクセッション番号AAC52020)由来の配列又は黄色ブドウ球菌プロテインA由来の配列を含む。Jagged−1又はプロテインA由来の配列を有するペプチドは、好ましくは、適した疎水性化合物(前述参照)と共有結合し、及び/又は膜貫通配列(後述参照)を含む。脂質二重層から突き出たJagged−1又はプロテインA由来ペプチドの(極性)部分は、好ましくは、3、4、5、6、7又は8つを超えないアミノ酸を含む。
【0028】
本発明の再構成ウイルス膜は、好ましくは、非経口及び粘膜(例えば、経鼻又は経口)投与に適している。しかし、本発明の重要な態様は、本発明の再構成ウイルス膜が、通常経鼻投与に対して十分な免疫応答を誘発しない抗原の経鼻投与に適用できるということであり、経鼻投与はこの抗原を含む病原菌による続発性感染症を防ぐために治療を受ける症例に行われる。
【0029】
本発明の再構成ウイルス膜は、ウイルス融合タンパク質を含み、場合によって、抗原を更らに含む。したがって、ウイルス融合タンパク質だけを含み、更なる抗原を含まない再構成ウイルス膜は、本発明の一部であって、この場合、ウイルス融合タンパク質は、融合タンパク質としての機能に加えて、抗原としての機能も有することを理解されたい。したがって他方では、再構成ウイルス膜は、ウイルス融合タンパク質に加えて、1種又は複数の抗原を更に含むことができる。
【0030】
好ましくは、本発明による再構成ウイルス膜の一部である抗原は、再構成ウイルス膜小胞の脂質二分子膜に挿入することができる疎水性部分を有する。ウイルス、細菌、酵母菌及び寄生虫などの多くの病原体は、キャプシド、細胞壁又は細胞膜に、宿主の免疫応答を誘発するタンパク質を有する。例えば、膜貫通セグメントなどの疎水性要素を有し、本発明による再構成ウイルス膜の一部として適している抗原の実施例は、病原体の膜(ウイルスの場合、エンベロープとも呼ばれる)に存在するタンパク質である。したがって、好ましくは、本発明の再構成ウイルス膜中に存在する抗原は、内在性膜タンパク質である。本発明の再構成ウイルス膜における抗原性タンパク質は、これらがウイルス又は細胞膜上に出現するときと同様に配置されるが、膜脂質二重層に存在するときは、通常、部分的又は少なくとも一時的に隠れているエピトープを提示することができる。これらの抗原提示再構成ウイルス膜による免疫系の刺激は、免疫系の細胞によるこれらの特異的認識、これらの特別な特徴、タンパク質の提示及び隠れたエピトープの露出の組み合わせによると考えられる。好ましくは、本発明の再構成ウイルス膜で使用される抗原性タンパク質は、1つ又は複数の防御エピトープを含み、すなわち、抗原が由来する病原体による感染に対して防御する哺乳類で免疫応答を誘発することができるエピトープ又は抗原を発現する腫瘍に対して防御するエピトープを含む。
【0031】
好ましい実施形態において、前記抗原は、ウイルス、寄生虫、真菌又は細菌に由来する。特に好ましいのは、前記抗原がインフルエンザウイルスに由来する再構成ウイルス膜である。本発明の再構成ウイルス膜に使用することができるインフルエンザウイルス由来のタンパク質は、好ましくは、血球凝集素(HA)タンパク質、ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質及び/又はM2タンパク質の単独又はその組み合わせである。
【0032】
本発明による再構成ウイルス膜の形成に適用及び使用できる抗原は、あらゆる種類のウイルスに由来することが可能で、そのようなウイルスの限定を意図しない例としては、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)などのレトロウイルス科、風疹ウイルス、パラインフルエンザウイルス、麻疹、流行性耳下腺炎、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどのパラミクソウイルス科、黄熱ウイルス、デング熱ウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ダニ媒介脳炎、セントルイス脳炎又は西ナイルウイルスなどのフラビウイルス科、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどのヘルペスウイルス科、ビニヤウイルス科、アレナウイルス科、ハンターンなどのハンタウイルス科(Hantaviridae)、コロナウイルス科、ヒトパピローマウイルスなどのパポバウイルス科、狂犬病ウイルスなどのラブドウイルス科である。ヒトコロナウイルスなどのコロナウイルス科、アルファウイルス科(Alphaviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、エボラウイルスなどのフィロウイルス科、アレナウイルス科、天然痘ウイルスなどのポックスウイルス科及びアフリカブタコレラウイルスなどがある。同様に、そのような抗原は、病原菌、菌類(酵母菌を含む)又は寄生虫に由来することができる。そのような抗原は、例えば、ヘリコバクターピロリ菌などのヘリコバクター属、髄膜炎菌などのナイセリア属、インフルエンザ菌などのヘモフィルス属、百日咳菌などのボルデテラ属、クラミジア属、連鎖球菌種(血清型A)などの連鎖球菌属、コレラ菌などのビブリオ属、例えばサルモネラ属、赤痢属、カンピロバクター属及び大腸菌属を含むグラム陰性腸内病原菌の細菌性抗原と、炭疽、ライ病、結核症、ジフテリア、ライム病、梅毒、腸チフス及び淋病の原因となる細菌由来の抗原を含む。寄生虫由来の抗原は、例えば、Babeosis bovis、変形体、レーシュマニア種トキソブラスマなどの原虫及びクルーズトリパノソーマなどのトリパノソーマ属由来の抗原を含む。真菌性抗原は、アスペルギルス種、カンジダアルビカンス、例えば、クリプトコッカスネオフォルマンス及びヒストプラスマカプスラーツムなどのクリプトコックス属などの菌類由来の抗原を含むことができる。
【0033】
ワクチン接種は、通常、病原体に対する予防的防御又は病原体感染後の疾患の治療に適用されるが、当業者は腫瘍治療におけるワクチンの適用(投与)について認識している。更に、数多くの腫瘍特異タンパク質は、ヒト抗体又はヒト化抗体により標的とされることができる適切な単位であることが発見されている。また、そのような腫瘍特異タンパク質は、本発明の範囲内である。多くの腫瘍特異抗原は、当技術分野で公知である。したがって、ある好ましい実施形態において、本発明は腫瘍特異抗原を含む再構成ウイルス膜を提供する。適した腫瘍抗原は、例えば、癌胎児性抗原、前立腺特異膜抗原、前立腺特異抗原、タンパク質MZ2−E、多形上皮粘液(PEM)、葉酸塩結合タンパク質LK26、切断された上皮成長因子受容体(EGRF)、トムゼンフリーデンライヒ(T)抗原、GM−2及びGD−2ガングリオシド、Ep−CAM、ムチン−1、上皮糖タンパク質−2並びに結腸特異抗原を含む。
【0034】
これら病原体由来の好ましい抗原は、内在性膜タンパク質である。しかし、非膜タンパク質抗原又は防御エピトープを含むその一部は、本発明の使用のために、膜貫通配列に融合させて改変することもできる。膜貫通配列又は膜固着配列は、当技術分野で公知であって、哺乳類の膜貫通分子の遺伝的配置に基づく。膜貫通配列は、通常、約10〜30の範囲で、通常、約20アミノ酸からなり、この大部分は疎水性の側鎖を有する。膜貫通配列は、様々なタンパク質に関して知られており、これらのいずれも使用可能である。本発明に用いられる膜固着配列の実施例は、例えばCD8、ICAM−2、IL−8R、CD4及びLFA−1由来の膜固着配列を含む。好ましくは、膜貫通配列は、ウイルス膜において自然に存在するウイルス内在性膜タンパク質に由来する。その実施例は、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV)糖タンパク質G(例えば、アミノ酸38〜63)の膜貫通領域又はインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(例えば、アミノ酸7〜27)の膜貫通領域を含む。
【0035】
もう1つの態様において、本発明は再構成ウイルス膜を製造するための方法を提供し、本方法は、(a)洗浄剤を含む溶液で、両親媒性アジュバント、ウイルス融合タンパク質、場合により用いる抗原及び脂質を混合する工程と、(b)両親媒性アジュバント及びウイルス融合タンパク質が、脂質二重層の疎水性内部と相互作用する脂質二重層を含むウイルス膜の再構成が可能な条件下で、洗浄剤の濃度を減少させ、それによって、好ましくは両親媒性アジュバント及びウイルス融合タンパク質が共有結合せず、また、それによって、好ましくは両親媒性アジュバント及び場合により用いる抗原が共有結合せず、それによって、再構成ウイルス膜は膜融合活性を有する、工程と、(c)場合によって、再構成ウイルス膜を精製する工程と、(d)場合によって、再構成ウイルス膜を医薬組成物に製剤する工程の一部又はすべてを含む。ウイルス脂質の提供のために、本方法は、(i)オクタエチレングリコールモノ−N−ドデシルエーテルなどの適した洗浄剤でウイルスを溶解する工程と、(ii)例えば、分離用超遠心によってウイルス遺伝物質及び中核タンパク質を除去する工程を更に含む。膜の再構成を可能にする適切な洗浄剤除去率で、洗浄剤濃度は、好ましくは、透析、ダイアフィルトレーション又は疎水性ビーズへの吸収(及び/又はサイズ排除)により減少し、好ましくは、両親媒性アジュバント及びウイルス融合タンパク質、並びに更なる抗原が、前記再構成ウイルス膜に存在し、疎水的相互作用を通して二分子膜の内側の疎水性領域と、及び/又は各々で相互作用する。本ウイルスは、好ましくは大部分が被膜ウイルスなどの膜含有ウイルスである。天然ウイルス脂質の供給源として使用される好ましいウイルスは、インフルエンザウイルス、セムリキ森林熱ウイルス又はパラミクソウイルスである。
【0036】
好ましくは、本発明により開示される再構成ウイルス膜を製造するための方法は、前記再構成ウイルス膜を精製する工程を含む。再構成ウイルス膜の精製法は、当技術分野で公知であって、例えば、分離用遠心及び密度勾配遠心並びに/又はクロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び/又はアフィニティークロマトグラフィー)を含む。洗浄剤は、界面活性を有する両親媒性分子である。適した洗浄剤は、ウイルス膜内容物を効率的に溶解するが、融合タンパク質、ウイルスキャプシド及び/又はコアタンパク質を変性しない、例えば、両性イオン性洗浄剤(例えば、オクタエチレングリコールモノ−N−ドデシルエーテル)などの洗浄剤である。
【0037】
疎水的相互作用は、水環境下で存在する疎水性物質間の、非共有結合の非静電吸引力の結果起こる。更なる態様において、本発明は、活性成分として、本発明による再構成ウイルス膜及び薬学的に許容できる担体を含む製剤を提供する。また、薬学的に許容できる安定化剤、浸透圧剤、緩衝剤、分散剤などを、医薬組成物に組み入れることができる。好ましい形態は、投与及び治療的適用の計画的様式に依存する。製剤担体は、患者に再構成ウイルス膜を投与するために適した互換性がある、あらゆる無毒性物質とすることができる。経鼻投与のための薬学的に許容できる担体は、水、緩衝生理食塩水、グリセリン、ポリソルベート20、クレモフォア(cremophor)EL及びカプリル酸/カプリン酸グリセリドの水性の混合物により例証され、中性pH環境を得るために緩衝してもよい。非経口投与のための薬学的に許容できる担体は、場合によって20%アルブミンを補充した、無菌緩衝0.9%NaCl又は5%グルコースにより例証される。非経口的投与のための調製物は、無菌でなければならない。ポリペプチド又は抗体の投与のための非経口経路は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内又は病巣内経路による注射又は注入などの公知の方法と一致する。再構成ウイルス膜は、ボーラス注射によって投与することが好ましい。筋肉内注射のための典型的な医薬組成物は、例えば、1〜10mLのリン酸緩衝食塩水及び1〜100μg、好ましくは15〜45μg(の抗原タンパク質)の本発明の再構成ウイルス膜を含むように構成させることが可能である。経口投与のための活性成分は、エリキシル、シロップ及び懸濁液などの液剤で投与することができる。経口投与のための液剤は、患者がより受け入れやすくするために着色剤及び香料を含むことができる。非経口的に、経口的に又は経鼻的に投与可能な組成物を調製するための方法は、当技術分野で公知であって、例えば、Remington's Pharmaceutical Science(15th ed., Mack Publishing, Easton, PA, 1980)(すべての目的において、その全体を本願出願書に援用する)を含む様々な出典において詳細が記載される。更なる態様において、本発明は、感染症若しくは腫瘍に対するワクチン接種の方法、又は予防処置若しくは治療のための方法に関し、これらは予防処置若しくは治療を必要とする被験者に対する、本発明の再構成ウイルス膜(を含む医薬組成物)の治療的若しくは予防的に有効な量の投与による。また本発明は、薬剤として使用するため、好ましくは、感染症若しくは腫瘍に対するワクチン接種、又は予防処置若しくは治療のための薬剤として使用するための本発明の再構成ウイルス膜に関する。本発明は更に、感染症若しくは腫瘍に対するワクチン接種、又は予防処置若しくは治療のための薬剤の製造における本発明の再構成ウイルス膜の使用に関する。
[実施例]
【実施例1】
【0038】
リポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リジル)−リジン、インフルエンザウイルスの天然脂質及びインフルエンザ膜タンパク質を含む再構成ウイルス膜の製造
インフルエンザウイルスは、世界インフルエンザセンター(World Influenza Center)又はATCC(American Type Tissue Culture Collection)から獲得したウイルスを、例えば、孵化鶏卵又は培養細胞にウイルスを増殖することによる当業者に公知の方法により、増殖することによって製造した。次に、このウイルスを、好ましくは、分離用超遠心若しくは密度勾配超遠心、又はその組み合わせによって精製し、引き続いて、確立された標準的方法に従い、ベータプロピオラクトン又はホルムアルデヒドにより不活化してもよい。
【0039】
精製及び濃縮されたA/Panama/2007/9ウイルス(1500nmolリン脂質)を、中性pH:145mM NaCl、2.5mM HEPES、1mm EDTA、pH7.4の等張緩衝液(緩衝液A)で、4℃、10分間、100mMの濃度(洗浄剤の臨界ミセル濃度以上の濃度が必要)の1mLの洗浄剤オクタ(エチレングリコール)−n−ドデシル−モノエーテル(C12E8)(Boehringerドイツ、マンハイム)によって、培養した。次に、ウイルスヌクレオカプシド及び基質(matrix)タンパク質を、4℃で30分間の100,000×gの遠心によって除去した。ペレットは廃棄し、上澄みは、ウイルス脂質750nmolにつきリポペプチド0.5mgの割合で、乾燥リポペプチドと混合し、更にリポペプチドが溶解するまで混合した。次に、128mgのバイオビーズSM−2(Bio-Rad)を、各350マイクロリットルの混合物に対して添加し、洗浄剤は、混合物とビーズを、1時間勢いよく振盪することにより除去した。次に、溶液を64mgの他のビーズに移して、10分間継続して振盪した。得られた混濁上澄みは、再構成ウイルス膜を含み、更に精製するか、精製しないかにかかわらず、ワクチン接種に使用することができる。
【0040】
脂質、リポペプチド及びウイルスタンパク質の間の物理的結合を分析するために、再構成ウイルス膜を含む混濁混合物を、緩衝液A中に40%スクロース(w/v)のクッション1mL、緩衝液A中に10%スクロース(w/v)の上層4mLを含む、不連続のスクロース勾配の上に載せた(図1に示したように)。この勾配を最大100,000gで90分間遠心し、40%クッション、40%クッションと10%上層の界面及び表面から試料を採取した。これらの勾配では、遠心の間に、取り込まれないウイルスタンパク質は、クッションへ移行し、再構成膜に存在しない脂質及びリポペプチドは勾配の最上部へ移行し、再構成ウイルス膜は界面で見つけることができる(図1)。15%のウイルス脂質は、6%のリポペプチドと同様に、勾配の最上部の近くで発見された。勾配上に載せたウイルス脂質の85%、リポペプチドの94%及びウイルス膜タンパク質の60%が、再構成ウイルス膜バンドに結合することが認められた。
【0041】
バンドの脂質組成を分析するために、再構成ウイルス膜の2つの試料を、前述のプロトコールにより調製するか、リポペプチドを添加せずに調整し、前述のようにスクロース勾配の40/10%の界面から回収し、Folch et al(1957)に従ってCHCl/MeoHで抽出した。この抽出した脂質及びリポペプチドを、二次元薄層クロマトグラフィーにより分析し、1番目の溶出剤として、CHCl/メタノール/HO 65/25/4を使用し、引き続いてN−ブタノール/酢酸/水 2/1/1を使用し、更にニンヒドリン染色法による誘導体化により染色した(プレートに2%ニンヒドリンを含むN−ブタノールを噴霧し、80℃で10分間培養した)。結果を図2に示す。結果は、本ウイルスの天然脂質とリポペプチドの物理的結合を実証している。
【0042】
勾配のバンドから収集したビロゾームの電子顕微鏡写真を図3に示す。電子顕微鏡写真は、粒子、ウイルスの大きさを明白に示し、インフルエンザウイルスの特性であるウイルス抗原スパイクを見せている。
【実施例2】
【0043】
リポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リジル)−リジン、インフルエンザウイルスの天然脂質及びインフルエンザ膜タンパク質を含む再構成ウイルス膜を使用する経鼻免疫接種実験
インフルエンザウイルスヘムアグルチニン及びN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リジル)−リジンを含む再構成ウイルス膜の経鼻投与によるワクチン接種を、標準のサブユニットワクチン又はEP0538437により調製したビロゾームワクチンの経鼻投与と比較した。Balb/Cマウスを、0日及び14日後に、5μgのインフルエンザタンパク質を含む抗原10マイクロリットルの経鼻滴液によって免疫した。血液サンプルを0日、14日及び35日後に採取し、鼻部洗浄液及び肺洗浄液を35日後に収集した。インフルエンザウイルスのいくつかの異なる株を比較した。マウスをそれぞれ1種の株によって免疫した。肺洗浄は、気管に接続した注射器を通して肺へPBS1.5mLを注射することにより実施し、引き続いて、1mLの液体を吸引した。鼻部洗浄は、気管を通して、上咽頭へのPBS0.5mLを注射することにより収集し、洗浄液体を鼻孔で収集した。残屑及び細胞の内容物は、遠心により洗浄液体から直ちに除去し、プロテアーゼインヒビター混合物(乾燥DMSO中の1000×濃縮原液より、ケムスタチン、アンチパイン、ロイペプチン、ペプスタチン、最終濃度1マイクログラム/mL)を添加し、その後は試料を液体窒素で凍結させ、分析まで−20℃で保存した。試料は、鼻部及び肺ではIgAによって分析し、インフルエンザタンパク質に対してはIgG ELISAで分析した。結果は、それぞれ図4及び図5に示す。
【実施例3】
【0044】
リポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リジル)−リジン、インフルエンザウイルスの天然脂質、ピレン標識ホスファチジルコリン及びインフルエンザ膜タンパク質を含む再構成ウイルス膜の膜融合活性
精製及び濃縮されたA/Panama/2007/9ウイルス(1500nmolリン脂質)を、中性pH:145mM NaCl、2.5mM HEPES、1mm EDTA、pH7.4の等張緩衝液(緩衝液A)で、4℃、10分間、100mMの濃度の1mLのオクタ(エチレングリコール)−n−ドデシル−モノエーテル(C12E8)によって、培養した。次に、ウイルスヌクレオカプシド及び基質タンパク質を、4℃で30分間の100,000×gの遠心によって除去した。ペレットは廃棄した。上澄みは、ウイルス脂質750nmolにつきリポペプチド0.5mg及び1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスファチジルコリン150nmolの割合で、乾燥リポペプチド及びピレン標識リン脂質と混合し、更にリポペプチド及びピレン標識リン脂質が溶解するまで混合した。次に、128mgのバイオビーズSM−2(Bio−Rad)を、各350マイクロリットルの混合物に対して添加し、洗浄剤は、混合物とビーズを、1時間勢いよく振盪することにより除去した。次に、溶液を64mgの他のビーズに移して、10分間継続して振盪した。
【0045】
膜融合の測定のために、赤血球影標的膜は、Steck及びKant(1974)の方法によって、古い赤血球濃縮物(血液型B、Rh因子陰性)から調製した。融合は、pH5.1で140mM NaCl、15mMクエン酸ナトリウムを含む緩衝液中、0.06M赤血球影リン脂質及び1μMビロゾームリン脂質の濃度で計測した。脂質混合は、pyrPCの希釈により監視した。この目的のために、ピレンエキサイマー蛍光を、発光ビームに475nmカットオフフィルターを装着した状態で、励起波長345nm(帯域通過2nm)、発光波長490nm(帯域通過16nm)で計測した。蛍光バックグラウンドを、35μLの0.2M C12E8を添加することによって得られたプローブの無限希釈で評価した。蛍光の変化を、f=100×(E−E)/(E−Ey)(式中、Eはすべての時間のエキサイマー蛍光を表し、E及びEyはそれぞれ、0時の490nmでの強度、C12E8添加時後の強度を表し、双方とも希釈効果で補正した)で算出することによって、融合の強度(f)に転換した。結果は図6に示し、再構成膜の強力な融合活性を明らかに示している。
【実施例4】
【0046】
EP0538437により調製したビロゾームによる免疫接種と比較したリポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リジル)−リジン、インフルエンザウイルスの天然脂質及びインフルエンザ膜タンパク質を含む再構成ウイルス膜の筋肉内免疫接種実験
25μLのインフルエンザ抗原(5μgのタンパク質)を、0日にBalb/Cマウスの1側後肢の筋肉内に注射した。0日及び14日後に血液検体を採取した。ウイルスのA/Panama/2007/99株を使用してワクチンを調製した。検体は、インフルエンザ血球凝集素に対するIgG ELISAにより分析した。結果を図7に示す。
【実施例5】
【0047】
平衡密度勾配遠心法によるA/Wyoming膜タンパク質を含む機能的再構成ウイルス膜の物理特性の決定
リポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リジル)−リジンを含む再構成膜ウイルス膜を、実施例1のように調整し、10〜60%w/vスクロース勾配の上部に載せ、Beckman SW55ローターにより50,000rpmで16時間遠心した。この種類の勾配では、脂質及びリポペプチドは最上部に残るが、タンパク質は最下部へ移行する。勾配から採集した試料を、屈折率測定法、タンパク質及びリン脂質測定により分析した。結果を図8に示す。結果は、基本的に、すべてのウイルスタンパク質及び大部分のウイルス脂質が1つのピークにおいて同時精製することを示している。また、リポペプチドは、4、5及び6の画分からのみ回収された。これらのデータは、再構成膜が約1.12g/mLの密度の粒子であることを示している。
【実施例6】
【0048】
リポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(プロリル)−プロリン、インフルエンザウイルスの天然脂質及びインフルエンザ膜タンパク質を含む再構成ウイルス膜を使用する経鼻免疫接種実験
上記の実施例1に記載のように、膜をA/Panama/2007/99から調製し、実施例2に記載のようにマウスを免疫するために使用した。血清のELISA IgG力価並びに鼻部及び肺のIgA力価を、それぞれ図9及び図10に示す。これらのデータは、リジン及びN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリルのプロリン誘導体が、およそ同等の免疫応答の亢進を生じることを示している。
【0049】
【表1】

【0050】
[参考文献]
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【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】アジュバント含有再構成ウイルス膜のリポペプチド、タンパク質及び脂質の間の物理的結合を分析するために使用されるスクロース勾配の図式画。
【図2】図1で概説されたように、勾配上の10/40%のスクロースインターフェイスから回収した脂質及びリポペプチドの二次元薄層クロマトグラム。パネルA:リポペプチドなしでウイルス膜を再構成した対照。ニンヒドリン反応性の天然ウイルス脂質が認められる。パネルB:リポペプチドを含む再構成ウイルス膜。ニンヒドリン反応性の天然ウイルス脂質に加えて、ニンヒドリン反応性のリポペプチドが認められる。クロマトグラムは、二次元で展開した。システム1 CHCl/メタノール/HO 65/25/4、システム2 N−ブタノール/酢酸/水 2/1/1、更にニンヒドリン染色法による誘導体化により染色した。試料添加部位を「点」でしるす。
【図3】本発明によるリポペプチドを含む再構成ウイルス膜の電子顕微鏡写真。リンモリブデン酸アンモニウムを使用した陰性染色法。膜は直径約100〜200nmである。
【図4】14日間隔で、A/Panama/2007/99による2回の経鼻ワクチン接種後の鼻及び肺のIgA力価。力価は、最後のワクチン接種の3週間後に測定した。免疫前力価を差し引いた。使用したワクチンは、標準の市販サブユニットワクチン、本発明によるリポペプチドを含んだ、EP0538437によって調製したビロゾーム又は再構成ウイルス膜であった。群の大きさは、マウス10匹である。
【図5】14日間隔で、2回の経鼻ワクチン接種後の血液中のIgG力価。力価は、最後のワクチン接種の3週間後に測定した。免疫前力価を差し引いた。使用したワクチンは、本発明によるリポペプチドを含んだ、EP0538437によって調製したビロゾーム又は再構成ウイルス膜であった。前述のようにウイルス1株由来の抗原をそれぞれ含む4つの異なるワクチン調製物を使用して、各群10匹からなる4群にワクチン接種を行った。
【図6】本発明による再構成ウイルス膜の融合活性。ピレン−リン脂質を含む再構成ウイルス膜を赤血球影と混合し、融合をテキストに従って計測した。
【図7】1回の筋肉内ワクチン接種後の血液中のIgG力価。力価は、ワクチン接種の3週間後に測定した。免疫前力価を差し引いた。使用したワクチンは、本発明によるリポペプチドを含んだ、EP0538437によって調製したビロゾーム又は再構成ウイルス膜であった。群の大きさは、マウス10匹であった。
【図8】ウイルスのA/Wyoming株由来の再構成ウイルス膜の平衡密度スクロース勾配分析。再構成物質の単密度ピークを示す。リポペプチドは、4、5及び6つの画分より回収された。
【図9】マウス10匹からなる1群における経鼻ワクチン接種の0日及び14日後の血液中のIgG力価。抗原はA/Panama/2007/99株由来で、膜はN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(プロリル)−プロリンを含む。
【図10】マウス10匹からなる1群における、リポペプチドN−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイロキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(プロリル)−プロリンを含むA/Panama/2007/99株の再構成膜による、14日間隔で2回の経鼻ワクチン接種後の鼻及び肺のIgA力価。力価は最後のワクチン接種の3週間後に測定した。免疫前力価を差し引いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスの融合タンパク質、両親媒性アジュバント、及び、場合により更なる抗原を含む脂質二重層の再構成ウイルス膜であって、
(a)脂質二重層が、ウイルス膜と、融合タンパク質が由来した前記ウイルスと融合可能な細胞膜との、融合タンパク質によって誘発される融合に適合する脂質組成を有し、
(b)融合タンパク質及び両親媒性アジュバントが、脂質二重層の疎水性内部と相互作用し、
(c)融合タンパク質、両親媒性アジュバント及び場合により用いる抗原が、共有結合していない
再構成ウイルス膜。
【請求項2】
脂質二重層が、ウイルス膜の天然脂質を含む、請求項1に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項3】
両親媒性アジュバントが、リポペプチド、糖脂質又はペプチドである、請求項1又は2に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項4】
両親媒性アジュバントが、哺乳類のToll様受容体(Toll−like receptor)のリガンドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項5】
リポペプチドが、N−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−セリン、S−2,3(ビスパルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−セリン、N−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)−リジン、S−2,3(ビスパルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)−リジン、N−パルミトイル−S−2,3(ビスオレオイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)3−リジン、S−2,3(ビスオレオイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−セリン−(リシル)−リジン、N−パルミトイル−S−2,3(ビスミリストイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)−リジン、S−2,3(ビスミリストイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)−リジン、N−パルミトイル−S−3(パルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)−リジン及びN−パルミトイル−S−2,3ヒドロキシ−プロピル−システイニル−セリル−(リシル)−リジン、N−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(プロリル)−プロリン、N−パルミトイル−S−2,3(ビスパルミトイルオキシ)−プロピル−システイニル−セリル−(グルタミニル)−グルタミン酸からなる群から選択される、請求項3に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項6】
糖脂質が、ホスファチジルイノシトールマンノシド、α−ガラクトシルセラミド又は毒性の減少した改変リポ多糖体である、請求項3に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項7】
抗原が、内在性膜タンパク質である、請求項1から6のいずれか一項に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項8】
抗原が、ウイルス抗原である、請求項1から7のいずれか一項に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項9】
抗原が、インフルエンザウイルスに由来する、請求項8に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項10】
抗原が、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)又はM2タンパク質である、請求項9に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項11】
抗原が、レトロウイルス科、風疹ウイルス、パラミクソウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科、ビニヤウイルス科、アレナウイルス科、ハンタウイルス科、コロナウイルス科、パポバウイルス科、ラブドウイルス科、コロナウイルス科、アルファウイルス科(Alphaviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、フィロウイルス科、アレナウイルス科、ポックスウイルス科及びアフリカブタコレラウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する、請求項8に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項12】
抗原が、寄生虫、細菌、真菌、酵母に由来するか、又は抗原が腫瘍特異抗原である、請求項1から7のいずれか一項に記載の再構成ウイルス膜。
【請求項13】
再構成ウイルス膜を製造するための方法であって、
(a)洗浄剤を含む溶液中で、両親媒性アジュバント、ウイルス融合タンパク質、場合により用いる抗原及び脂質を混合する工程と、
(b)脂質二重層を含み、両親媒性アジュバント及び前記ウイルス融合タンパク質が、脂質二重層の疎水性内部と相互作用するウイルス膜の再構成が可能な条件下で、洗浄剤の濃度を減少させる工程であって、両親媒性アジュバント及びウイルス融合タンパク質が共有結合せず、両親媒性アジュバント及び場合により用いる抗原が共有結合せず、且つ、再構成ウイルス膜が膜融合活性を有する工程と、
(c)場合によって、再構成ウイルス膜を精製する工程と、
(d)場合によって、再構成ウイルス膜を医薬組成物に製剤する工程からなる方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項で定義された再構成ウイルス膜と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【請求項15】
経鼻、経口又は非経口投与に適した、請求項14に記載の医薬組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−527598(P2006−527598A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516989(P2006−516989)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000437
【国際公開番号】WO2004/110486
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505305813)ベステウィル ホールディング ビー.ブイ. (2)
【Fターム(参考)】