説明

アジュバント組成物

【課題】免疫応答誘導に優れたアジュバント組成物等を得る。
【解決手段】代謝可能な油、アルファトコフェロールおよびツイン80を含有する水中油エマルジョンを含むアジュバント組成物;ならびに該アジュバント組成物および抗原または抗原性成分を含むワクチン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ワクチン処方、それらの製造方法および医薬におけるそれらの使用に関する。詳細には、本発明は、水中油エマルジョンに関する。かかるエマルジョンはトコフェロール、スクアレン、ツイン80(Tween80)、スパン85(Span85)およびレシチンからなり、有用なアジュバント特性を有する。かかる水中油エマルジョンと一緒になったQS21、キラジャ・サポナリア・モリナ(Quillaja Saponaria Molina)の樹皮由来のHplc精製された無毒のフラクション、および/または3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3De-O-acylated monophosphoryl lipid A)(3D−MPL)を含有するワクチンも本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAはGB2220211(リビ(Ribi))により知られている。化学的には、それは、4、5、または6位がアシル化された鎖を有する3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物であり、リビ・イミュノケム・モンタナ(Ribi Immunochem Montana)により製造されている。3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は国際特許出願第92/116556号に開示されている。
【0003】
QS21は、南アメリカの樹木キラジャ・サポナリア・モリナの樹皮由来のサポニンのHplc精製された無毒のフラクションであり、その製造方法は特許文献1に開示(QA21として)されている。
【0004】
水中油エマルジョンそれ自体は当該分野において公知であり、アジュバント組成物として有用であることが示唆されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許第5,057,540号
【特許文献2】欧州特許第399843号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、免疫応答誘導に優れたアジュバント組成物、ならびにそれを含有するワクチン組成物を得ることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、先行技術のエマルジョンとは異なりトコフェロールを含有する本発明水中油エマルジョンが、それ自体、またはQS21および/または3D−MPLと組み合わされて、一定の抗原に対する免疫応答を増強するという驚くべき知見に基づく。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、以前のものよりも良好な免疫学的応答が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
さらに、本発明水中油エマルジョンは、3D−MPLおよびQS21と一緒に処方された場合、IgG2a産生およびTH1細胞応答の選択的な刺激剤である。細胞により伝達される応答におけるTH応答の知られた関係のため、このことは有利である。実際に、マウスにおいて、IgG2aの誘導はかかる免疫応答と相関関係がある。
【0009】
例えば、かかる組み合わせのHIV抗原gp120のワクチン処方は、gp120蛋白特異的免疫応答の強力な相乗的誘導を引き起こす。ある動物モデルにおいて、これらの応答は疾病に対する防御を誘導することが知られているので、強力な細胞溶解性Tリンパ球応答を誘導することが可能であるという知見は重要である。
【0010】
本発明者らは、抗原と、水中油エマルジョンと一緒になったアジュバントQS21および3D−MPLとの組み合わせは、脾臓において、CS蛋白特異的CTLの強力な誘導を引き起こすことを示した。またQS21はそれ自体でCTLの誘導を増強するが、3D−MPLは増強しない。
【0011】
標的抗原が細胞内で合成される場合(例えば、ウイルス感染、細胞内細菌、または腫瘍において)、CTLの誘導は容易に見られる。なぜなら、抗原の蛋白分解的分解により生じたペプチドは適当なプロセッシング経路に入ることができ、細胞膜上のクラスIの分子と関連した提示を導くからである。しかしながら、一般的には、前以て生じた可溶性抗原はこのプロセッシングおよび表示経路に到達せず、クラスIの制限されたCTLを誘導しない。それゆえ、慣用的な生きていないワクチンは、抗体およびTヘルパー応答を誘導するが、一般的には、CTLにより伝達される免疫性を誘導しない。水中油エマルジョンと一緒になった2種のアジュバントQS21および3D−MPLの組み合わせは、組み換え蛋白をベースとしたワクチンのこの重大な限界を克服し、広スペクトル免疫応答を誘導する。
【0012】
CS蛋白に特異的なCTLは、マウスのモデル系において、マラリアから防御することが示されている(ロメロ(Romero)ら、ネイチャー(Nature)第341巻:323頁(1989年))。放射線照射されたピー・ファルシパルム(P.falciparum)のスポロゾイト(sporozoites)を用いて志願者を免疫し、引き続いてのマラリア攻撃に対して志願者が防御されることが示されたヒトにおける試験において、CSエピトープに特異的なCTLの誘導が示された(マリク(Malik)ら、プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ・ユーエスエイ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)第88巻:3300頁(1991年))。
【0013】
免疫応答の発生および性質によれば、放射線照射されたスポロゾイトの使用は実際的でないので、組み換え分子として投与された抗原に特異的なCTLを誘導する能力はマラリアワクチンの開発と相関関係がある。
【0014】
RTSは、B型肝炎表面抗原のプレS部分の4個のアミノ酸を介してB型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に結合しているピー・ファルシパルムのサーカムスポロゾイト(circumsporozoite)(CS)蛋白のすべてのC末端部分から実質的になるハイブリッド蛋白である。その全構造は、UK特許出願第9124390.7について優先権を主張している同時係属の国際特許出願PCT/EP92/02591(WO93/10152として公開された)に開示されている。酵母において発現された場合にはRTSはリポ蛋白粒子として産生され、HBV由来のS抗原とともに同時発現される場合にはRTS,Sとして知られる混合粒子を生じる。
【0015】
ヒト・免疫不全ウイルスおよびマラリアワクチンのほかに、CTL応答を誘導する能力は、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、および一般的には病原体が細胞内生活段階を有するすべてのケースに対するワクチンに恩恵を与える。
【0016】
同様に、既知腫瘍抗原に特異的なCTLは、組み換え腫瘍抗原と該2種のアジュバントとの組み合わせにより誘導される。このことは、抗癌ワクチンの開発を可能にするであろう。
【0017】
ある系において、水中油エマルジョンと一緒になった3D−MPLとQS21との組み合わせは、相乗的にインターフェロンγ産生を促進することも示されている。本発明者らは、gDtとして知られる単純ヘルペス抗原を用いることにより、水中油エマルジョンと一緒になった3D−MPLとQS21との組み合わせの潜在的可能性を示した。gDtは、HSV−2由来の可溶性切形糖蛋白Dであり、バーマン(Berman)ら、サイエンス(Science)第222巻:524〜527頁の方法論によりCHO細胞において生産される。
【0018】
IFN−γ分泌は、寄生虫、細菌およびウイルスを包含する細胞内病原体に対する防御的応答に関連している。IFN−γによるマクロファージの活性化は、微生物の細胞内での殺傷を促進し、Fc受容体の発現を増加させる。特に、リンフォトキシン(TH1細胞のもう1つの生産物)との相乗作用において、直接的な細胞毒性も生じうる。さらにIFN−γは、NK細胞のインデューサーであり同時に生産物であり、それは防御の本質的なエフェクターである。INF−γまたは他の機構のいずれかによるTH1タイプの応答は、IgG2a免疫グロブリンイソタイプに選択的な援助を提供する。
【0019】
糖蛋白Dはウイルスエンベロープ上に存在しており、感染細胞の細胞質中にも見いだされる(アイゼンベルク,アール・ジェイ(Eisenberg,R.J.)ら、ジャーナル・オブ・ウイロロジー(J.of Virol.)1980年、第35巻:428〜435頁)。それは、シグナルペプチドを含めて393個のアミノ酸からなり、約60kDの分子量を有する。すべてのHSVエンベロープ糖蛋白のうち、おそらくこれが最も特徴づけられている(コーエン(Cohen)ら、ジャーナル・オブ・ウイロロジー)。インビボにおいて、それは、細胞膜へのウイルスの付着において中心的な役割を果たしていることが知られている。そのうえ、糖蛋白Dは、インビボにおいて中和抗体を誘導しうることが示されている(エイング(Eing)ら、ジャーナル・オブ・メディカル・ウイロロジー(J.Med.Virology)第127巻:59〜65頁)。しかしながら、潜伏しているHSV2はやはり活性化され、患者の血清中の高い中和抗体の力価の存在にもかかわらず、疾病の再発を誘導しうる。それゆえ、中和抗体のみを誘導する能力では疾病の十分なコントロールには不足であることが明らかである。
【0020】
疾病の再発を防止するためには、いかなるワクチンであっても、中和抗体のみならずT細胞、特別には細胞毒性T細胞により伝達される細胞免疫をも刺激することが必要である。
【0021】
この場合、gDtは、アスパラギンおよびグルタミンが切形蛋白のC末端に付加されている、天然に存在する糖蛋白の1から306までのアミノ酸を含む308個のアミノ酸のHSV2糖蛋白である。この形態の蛋白は、開裂されて238個のアミノ酸の成熟蛋白を生じるシグナルペプチドを含んでいる。チャイニーズハムスターの卵巣細胞におけるかかる蛋白の生産は、ジェネンテック(Genentech)の欧州特許EP−B−139417に記載されている。
【0022】
好ましくは、哺乳動物細胞から分泌される成熟切形糖蛋白D(rgD2t)または等価な蛋白を本発明ワクチン処方に使用する。
【0023】
本発明処方は、モルモットの性器ヘルペスモデルにおける防御的免疫の誘導において非常に効果的である。低用量の抗原を用いても(例えば、5μg程度のrgD2t)、該処方はモルモットを1次感染から防御し、さらに特異的な中和抗体応答を刺激する。また本発明者らは、本発明処方を用いて、マウスにおいてエフェクター細胞により伝達されるTH1タイプの応答を示した。
【0024】
したがって、本発明の1の好ましい具体例において、3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA、QS21および水中油エマルジョンと組み合わされた抗原よりなるワクチンまたは医薬処方であって、水中油エマルジョンがスクアレンのごとき代謝可能な油、アルファトコフェロールおよびツイン80を含むものであるワクチンまたは医薬処方が提供される。かかる処方は広範囲の1価または多価ワクチンに適する。さらに、水中油エマルジョンはスパン85を含有していてもよい。3デ−O−アシル化モノホスホリルリピドAの好ましい形態は、第92116556号として公開された国際特許出願(スミスクライン・ビーチャム・バイオロジカルズ・s.a.(SmithKline Beecham Biologicals s.a.))に開示されている。
【0025】
水中油エマルジョンを、それのみ、または他のアジュバントもしくは免疫刺激剤とともに用いてもよく、それゆえ、本発明の重要な具体例は、スクアレンまたは別の代謝可能な油、アルファトコフェロール、およびツイン80を含む水中油処方である。該水中油エマルジョンはスパン85および/またはレシチンを含有していてもよい。
【0026】
好ましくは、該ワクチン処方は、ヒトもしくは動物の病原体に対する免疫応答を誘導しうる抗原または抗原組成物であって、HIV−1由来(gp120またはgp160のごとき)、ネコ・免疫不全ウイルスのいずれか由来、ヒトもしくは動物のヘルペスウイルス由来(gDもしくはその誘導体またはHSV−1もしくはHSV−2由来のICP27のごとき即時型初期蛋白)、サイトメガロウイルス由来((特にヒト)(gBまたはその誘導体のごとき))、帯状疱疹ウイルス由来(gpI、IIまたはIIIのごとき)、またはB型肝炎のごとき肝炎ウイルス由来(例えば、b型肝炎表面抗原またはその誘導体)、A型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスならびにE型肝炎ウイルス由来、または呼吸器合胞体ウイルス、ヒト乳頭腫ウイルスもしくはインフルエンザウイルスのごとき他の病原体由来、またはサルモネラ(Salmonalla)、ネイセリア(Neisseria)、ボレリア(Borrelia)のごとき細菌病原体由来(例えば、OspA、OspBまたはそれらの誘導体)、またはクラミジア(Chlamydia)由来、またはボルデテラ(Bordetella)由来(例えば、P.69、PTおよびFHA)、またはプラスモジウム(plasmodium)もしくはトキソプラズマ(Toxoplasma)のごとき寄生虫由来の抗原または抗原組成物を含有する。
【0027】
該処方は抗腫瘍抗原を含有していてもよく、免疫療法的な癌治療に使用してもよい。
【0028】
0日目においてBCL−1マウスのリンパ腫細胞がBalb/cマウスに腹腔内投与され、3、10および20日目にマウスがBCL−1イディオタイプでワクチン接種される、B細胞リンパ腫に関する免疫療法的動物モデルにおいて、処方SB62/MPL/QS21は、抗体力価および生存率(100%生存はただ1つの群)の両方に関して最も有効である。同様に、包含された抗原に対する細胞毒性Tリンパ球を刺激するこの処方の能力は、それらを癌抗原(例えば、能動免疫による腫瘍の免疫療法に関するメラノーマ抗原MAGE−1およびMAGE−3)に対する処方についての良好な候補とする。
【0029】
該処方は、国際特許出願PCT/GB92/00824および国際特許出願PCT/GB92/00179に記載されたようなヘルペス軽粒子とともに使用することに関しても有用でありうる。
【0030】
B型肝炎表面抗原の誘導体は当該分野においてよく知られており、とりわけ、欧州特許出願EP−A−414374;EP−A−0304578およびEP198−474に記載されたプレS1、プレS2 S抗原を包含する。1の好ましい態様において、本発明ワクチン処方は、HIV−1抗原、特にCHO細胞において発現された場合のgp120を含む。さらなる具体例において、本発明ワクチン処方は、上記定義のgDtを含む。
【0031】
本発明のさらなる態様において、医薬に使用される本明細書記載のワクチンを提供する。
【0032】
QS21:3D−MPLの比は、典型的には、1:10ないし10:1;好ましくは1:5ないし5:1、そしてしばしば実質的には1:1のオーダーであろう。最適な相乗効果のための好ましい範囲は、3D MPL:QS21が2.5:1ないし1:1である。典型的には、ヒトへの投与については、QS21および3D MPLが、1回分につき1μg〜100μg、好ましくは10μg〜50μgの範囲で1のワクチン中に存在するであろう。典型的には、水中油は、2ないし10%スクアレン、2ないし10%アルファトコフェロール、および0.3ないし3%ツイン80を含むであろう。好ましくは、スクアレン:アルファトコフェロールの比は、より安定なエマルジョンを提供する場合には、1に等しいかまたはそれ未満である。スパン85が1%のレベルで存在してもよい。いくつかの場合には、本発明ワクチンがさらに安定化剤を含有していることが有利であるかもしれない。
【0033】
一般的には、ワクチン組成物は、ボラー(Voller)ら編、ニュー・トレンズ・アンド・ディベロップメンツ・イン・ワクチンズ(New Trends and Developments in Vaccines)、米国ボルチモア(Baltimore)のユニバーシティー・パーク・プレス(University Park Press)(1978年)に記載されている。リポソーム中への封入は、例えば、フラートン(Fullerton)の米国特許第4,235,877号により記載されている。高分子への蛋白の結合は、例えば、ライクハイト(Likehite)の米国特許第4,372,945号およびアーマー(Armor)らの米国特許第4,474,757号により開示されている。
【0034】
各ワクチン用量中の蛋白量を、典型的なワクチンにおける有意かつ不利な副作用を伴わずに免疫防御応答を誘導する量として選択する。どの特定の免疫原を使用し、それがどのように存在しているかにより、かかる量は変更されよう。一般的には、各用量は、1〜1000μg、好ましくは2〜100μg、最も好ましくは4〜40μgの蛋白を含むであろう。特別なワクチンのための最適量を、対象における適切な免疫応答の観察を包含する標準的研究により確認することができる。最初のワクチン投与後、十分な間隔を置いて、1回または数回の追加免疫を対象に与える。
【0035】
本発明処方を、予防および治療両方の目的に使用することができる。
したがって、1の態様において、本発明は、有効量の本発明ワクチンを患者に投与することを特徴とする治療方法を提供する。
【0036】
以下の実施例は本発明を説明する。
【実施例1】
【0037】
実施例1 HIV−1のgp120抗原を含むワクチン処方
【0038】
以下の水中油エマルジョン成分を含む2種のアジュバント処方を作成した。
SB26:5%スクアレン、5%トコフェロール、0.4%ツイン80;
粒子サイズは500nmであった。
SB62:5%スクアレン、5%トコフェロール、2.0%ツイン80;
粒子サイズは180nmであった。
【0039】
1(a)エマルジョンSB62の調製(2倍濃度)
ツイン80をリン酸緩衝化セイライン(PBS)に溶解してPBS中2%溶液を得る。100mlの2倍濃度のエマルジョンを得るために、5gのDLアルファトコフェロールおよび5mlのスクアレンをボルテックス撹拌して完全に混合する。90mlのPBS/ツイン溶液を添加し、完全に混合する。次いで、得られたエマルジョンをシリンジに通し、M110Sマイクロフルイディクスマシーン(microfluidics machine)を用いることにより微小流体化する。得られた油滴は約180nmのサイズを有する。
【0040】
1(b)エマルジョンSB26の調製
0.4%ツイン80を用いて同様の方法でこのエマルジョンを調製した。
【0041】
1(c)表1に示す他のエマルジョンを同様の方法で作成した。以下の実施例に詳述する実験においてこれらを試験した。
【0042】
1(d)gp120 QS21/3D MPL水中油処方の調製
1a)またはb)またはc)のエマルジョンに、同体積の2倍濃度のrgp120(20μgまたは100μgのいずれか)を添加し、混合した。これを50μg/mlの3D−MPLおよび20μg/mlのQS21と混合して最終処方を得た。塩含量およびpHによってはバッファーを添加した。
【0043】
表3は、HIV由来のgp120および50μg/mlの3D MPL(MPL)および20μg/mlのQS21を用いるSB26の有効性を示す。結果は、2回目(P11)および3回目(P111)の接種後の幾何平均力価(GMT)、ならびにリンパ球増殖およびγインターフェロン産生に対する細胞により伝達される応答(CMI)を示す。
【実施例2】
【0044】
実施例2
導入:HIV gp120エマルジョン系の評価
【0045】
この実験において、4種のエマルジョン[SB26、SB62、SB40、SB61]を比較する。各処方の成分(抗原、エマルジョン、3D−MPL、QS21)の影響を評価する。
【0046】
2(b)使用動物の群
異なるワクチン処方を与えられた各群5匹の動物からなる22群がある。
−群1〜4:gp120(10μg)/エマルジョンなし±[3D−MPL,QS21]
−群5〜9:gp120(10μg)/SB26±[3D−MPL,QS21]
−群10:抗原なし/SB26+[3D−MPL,QS21]
−群11〜12:gp120(10μg)/SB62±[3D−MPL,QS21]
−群13〜16:gp120(10μg)/SB40±[3D−MPL,QS21]
−群17〜20:gp120(10μg)/SB61±[3D−MPL,QS21]
−群21〜22:gp120(5μg)/SB26±[3D−MPL,QS21]
−アッセイ:gp120W61Dに対する抗体力価およびイソタイプ分析(全群)
【0047】
2(c)免疫および採血のスケジュール
−1回分につき5μgの3D−MPLおよび5μgのQS21存在下で異なるo/wエマルジョン中に処方されたgp120W61Dで動物を免疫した。陰性対照には抗原不含の等価な処方を与えた。
−0日目および14日目に動物を皮下免疫した。各注射用量を体積100μlとして投与した。
−免疫前(0日目)および免疫14日目(1回目の免疫後)、21日目および28日目(2回目の免疫から7日および14日後)に血液試料を得た。
【0048】
2(d)血清学的応答の分析:
−1回目および2回目から14日後の血清学的応答を、gp120W61Dに対する直接ELISAアッセイにおいて評価した。
−また、2回目から14日後の応答を、免疫後にマウスにおいて誘導されたgp120W61D特異的抗体のイソタイプに関して特徴づけた。
【0049】
3 結果および議論:
結果を表2に示す。
【0050】
a)3D−MPL/QS21存在下または不存在下のエマルジョンの比較:
−抗原へのエマルジョンSB26、SB40またはSB62の添加により高い抗体力価が誘導される。免疫刺激剤不存在下において、gp120特異的抗体は本質的にはIgG1である。
−免疫刺激剤3D−MPLおよびQS21の添加により非常に大きな血清学的応答およびIgG1タイプからIgG2a/IgG2bへの抗体のシフトが誘導される。
好ましい組み合わせは[SB26+MPL+QS21]である。
【0051】
c)gp120/SB26処方:
群8および群9の間において、血清学的応答の有意な相違は観察されない:処方の他の成分の前または後にgp120を添加
【0052】
d)抗原用量:
SB26中に処方された5μgおよび10μgのgp120は高い血清学的応答を誘導する(群5〜8および21〜22)
【実施例3】
【0053】
実施例3 HSV rgDt処方
実施例1a)に示すのと類似の方法で、単純ヘルペス抗原rgDtを含む処方を作成し、モルモットに接種するために用いた。かかる処方はモルモットモデルにおいて再発および最初の疾病の両方に対する防御を誘導した。
【実施例4】
【0054】
実施例4
免疫原としてイディオタイプを用いる、防御的抗リンパ腫応答の誘導に関するアジュバントのスクリーニング
【0055】
BCL1リンパ腫細胞由来のイディオタイプでのBalb/cマウスの治療的接種
BALB/CのB細胞リンパ腫モデルのレビューはイェフェノー(Yefenoh)ら、カレント・オピニオンズ・イミュノロジー(Current opinions Immunology)、1993年、第5巻:740〜744頁により議論されている。
【0056】
10匹のマウスからなる群に、0日目に10個の腫瘍細胞を注射(腹腔内)し、次いで、3、10、20日目に異なるアジュバント処方中のエピトープ化
BCL1に対して指向された100μgのKLH−結合免疫グロブリンを接種する(背中に皮下注射)。KLHおよびイディオタイプに対する血清抗体のレベル、ならびにマウスの死亡をモニターする。
【0057】
試験された処方:
群番号 アジュバント
1 なし(抗原なし)
2 なし
3 フロイント
4 アラム
5 アラム/MPL
6 アラム/MPL/QS21
7 QS21
8 MPL/QS21
9 SB62MPL
10 SB62/MPL/QS21

群12〜15:抗原不含の異なるアジュバント

MPL:10μg
QS21:10μg

処方8、9、10は他の処方と比較すると一貫して良好に挙動した。
抗体力価および生存率の両方に関して処方10は最も有効である(生存率
100%の唯一の群)。
【実施例5】
【0058】
実施例5 RTS,Sの種々の処方
【0059】
a)サルにおける評価
RTS,Sは国際特許出願WO93/10152に記載されており、アカゲザル(Rhesus monkeys)の接種用に処方された。各群に5匹の動物を用いた。
群I RTS,S、3D−MPL(50μ)、AL(OH)
群II RTS,S、QS21(20μ)、AL(OH)
群III RTS,S、3D−MPL(50μ)、QS21(20μ)
群IV RTS,S、3D−MPL(50μ)、QS21、AL(OH)
群V RTS,S、3D−MPL(10μ)、QS21、AL(OH)
群VI RTS,S、3D−MPL(50μ)、QS21、SB60
【0060】
動物に接種し、1回目の免疫から14日後および2回目の免疫から12日後に採血し、抗B型肝炎表面抗原免疫グロブリンに関して試験した。図1からわかるように、SB60中のRTS,Sを与えられた動物は、他のいずれも群よりも約6倍高い抗体力価を有していた。
【0061】
b)RTS,Sの種々の処方−マウスでの評価
7群の動物に以下の処方を与えた。
群1 RTS,S、SB62
群2 RTS,S、QS21、3D−MPL
群3 RTS,S、QS21、3D−MPL、SB62
群4 RTS,S、3D−MPL、Al(OH)
群5 RTS,S、Al(OH)
群6 プレイン(Plain)
群7 陰性対照
(RTS,S−5μg/1回分、3D−MPL 5μg/1回分、
QS21 5μg/1回分)
【0062】
動物に接種し、1回目の免疫から15日後および2回目の免疫から7、15日後に採血し、次いで、抗HBSAg抗体サブタイプに関してアッセイした。図2からわかるように、エマルジョンSB62は、QS21および3D−MPLとともに処方された場合、IgG2a抗体応答を選択的かつ相乗的に増大させるが、SB62のみまたは3D−MPL/QS21はほとんどIgG2a応答を誘導しない。
【実施例6】
【0063】
実施例6:異なるBブルグドルフェリ(burgdorferi)OspA処方
6.1 BブルグドルフェリZS7OspAリポ蛋白の異なる処方の評価
Bブルグドルフェリに関するOspAリポ蛋白は、欧州特許出願
第0418827号(マックス・プランク(Max Plank)ら)に記載されている。 以下の処方をbalb/cマウスにおいて試験した。
1.OspA+Al(OH)
2.OspA+Al(OH)+3D−MPL(10μ)
3.OspA+Al(OH)+3D−MPL(30μ)
4.OspA+Al(OH)+3D−MPL(10μ)+QS21(5μ)
5.OspA+Al(OH)+3D−MPL(30μ)+QS21(15μ)
6.OspA+SB60+3D−MPL(10μ)+QS21(5μ)
7.OspA+SB60+3D−MPL(30μ)+QS21(15μ)
【0064】
次いで、最初の接種から7日後および2回目の接種から7日後に抗体力価およびサブタイプを調べた(接種は0日目および14日目に行った)。
【0065】
図3および4にグラフで示した結果は、本発明処方は高レベルの抗体を誘導し、これらは選択的にIgG2aサブタイプであることを示す。
【実施例7】
【0066】
実施例7:
a)HSV−2 ICP27
メスのBalb/cマウスを、0日目および14日目にNSI−ICP27の種々の処方を後ろ足の甲に免疫した。各注射は5μgのNSI−ICP27およびSB26水中油エマルジョン、QS21(10μg)およびMPL(25μg)の組み合わせを含有していた。
【0067】
ヒザ後部のリンパ節細胞を28日目に得て、ICP27遺伝子でトランスフェクションした相乗的なP815細胞を用いてインビトロにおいて刺激した。次いで、ICP27でトランスフェクションしたP815標的細胞およびP815 ICP27陰性対照に対する特異的細胞溶解活性について培養物を試験した。
【0068】
異なる免疫群についての異なるエフェクター:標的(E:T)比における特異的溶解の結果は以下のようであった。
【0069】
ICP27(5μg)
E:T P815 ICP27クローン121でトランスフェクション
されたP815
100:1 −1 0
30:1 −2 −3
10:1 3 0
3:1 1 0
1:1 2 2
0.3:1 2 2
【0070】
ICP27(5μg)+MPL(25μg)
E:T P815 ICP27クローン121でトランスフェクション
されたP815
100:1 5 7
30:1 2 2
10:1 1 2
3:1 −1 −1
1:1 −2 −2
0.3:1 −4 −1
【0071】
ICP27(5μg)+QS21(10μg)
E:T P815 ICP27クローン121でトランスフェクション
されたP815
100:1 4 17
30:1 5 10
10:1 3 7
3:1 4 5
1:1 3 5
0.3:1 0 1
【0072】
ICP27(5μg)+SB26
E:T P815 ICP27クローン121でトランスフェクション
されたP815
100:1 5 20
30:1 1 19
10:1 2 12
3:1 −2 7
1:1 1 5
0.3:1 1 2
【0073】
ICP27(5μg)+MPL(25μg)+QS21(10μg)
E:T P815 ICP27クローン121でトランスフェクション
されたP815
100:1 4 13
30:1 5 12
10:1 4 17
3:1 1 3
1:1 0 3
0.3:1 −1 −2
【0074】
ICP27(5μg)+MPL(25μg)+QS21(10μg)+SB26
E:T P815 ICP27クローン121でトランスフェクション
されたP815
100:1 2 20
30:1 0 17
10:1 3 19
3:1 3 8
1:1 1 6
0.3:1 2 3
【0075】
以下の免疫群において、低いICP27特異的溶解%が得られた。
ICP27(5μg)+QS21(10μg)
ICP27(5μg)+SB26
ICP27(5μg)+MPL(25μg)+QS21(10μg)
ICP27(5μg)+MPL(25μg)+QS21(10μg)+SB26
【0076】
一方、
ICP27(5μg)
ICP27(5μg)+MPL(25μg)
は陰性であった。
【0077】
よって、これらのデータは、水中油エマルジョンのみの中、またはQS21ならびにMPLを伴った水中油エマルジョン中の組み換えNS1−ICP27;あるいはQS21と一緒になった組み換えNS1−ICP27によるCTLの誘導を示す。
【0078】
b)5匹のBalb/cマウスからなる群に、異なるワクチン(NS1−ICP27/NSI−ICP27 MPL+QS21/NS1−ICP27 SB26−MPLおよびQS21/アジュバントのみ)を足の甲に接種した。1回分は10μgのNS1−ICP27、10μgのMPLおよび10μgのQS21を含有していた。
【0079】
2種のワクチン接種を0日目および7日目に行った。14日目にマウスを5.2x10 TCID50のHSV2 MS株で攻撃した。攻撃後14日目まで帯状疱疹様傷害の出現および死亡を記録した。
【0080】
HSV2のICP27をインフルエンザウイルスのNS1フラグメントとの融合蛋白としてイー・コリ(E.coli)中で発現させた。ネズミ・帯状疱疹様モデルにおいて、MPL QS21処方と混合して精製組み換え蛋白の防御効率を評価した。MPL+QS21または水中油エマルジョン(SB26)+MPLおよびQS21のいずれかと混合したNS1−ICP27による2種のワクチン接種をされたBalb/cマウスは、疾病および野生型HSV2攻撃後の死亡から完全に防御された(帯状疱疹様傷害なし)。対照的に、NS1−ICP27のみ、またはMPL不含SB26およびQS21と混合されたNS1−ICP27のいずれかでワクチン接種されたマウスにおいては防御は観察されなかった。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、特に、ワクチンの製造分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、SB60中のRTS,Sを与えられた動物における抗−HBs力価を示す。
【図2】図2aは、エマルジョンSB62を含む処方による抗体応答の増大を調べた結果を示す(抗原HbsAg)。図2bは、エマルジョンSB62を含む処方による抗体応答の増大を調べた結果を示す(抗HbsAg IgG1プール)。図2cは、エマルジョンSB62を含む処方による抗体応答の増大を調べた結果を示す(抗HbsAg IgG2aプール)。図2dは、エマルジョンSB62を含む処方による抗体応答の増大を調べた結果を示す(抗HbsAg IgG2bプール)。
【図3】図3a、3bは、リポ蛋白OspAの異なる処方にてBalb/Cマウスを免疫した後の抗−OspA抗体力価(Igt)を示す。
【図4】図4a、4bは、リポ蛋白OspAの異なる処方にてBalb/Cマウスを免疫した後の抗−OspA抗体力価(IgG2a)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝可能な油、アルファトコフェロールおよびツイン80を含有する水中油エマルジョンを含むアジュバント組成物。
【請求項2】
代謝可能な油がスクアレンである、請求項1記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
水中油エマルジョンが2〜10%のスクアレン、2〜10%のアルファトコフェロールおよび0.3〜3%のツイン80を含有するものである、請求項1または2記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載のアジュバント組成物および抗原または抗原性成分を含むワクチン組成物。
【請求項5】
下記のもの:
ヒト・免疫不全ウイルス、ネコ・免疫不全ウイルス、1型単純ヘルペスウイルス、2型単純ヘルペスウイルス、ヒト・サイトメガロウイルス、A、B、CまたはE型肝炎、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト・乳頭腫ウイルス、インフルエンザウイルス、サルモネラ、ネイセリア、ボレリア、クラミジア、ボルデテラ、プラスモジウムまたはトキソプラズマ
のいずれかに由来する抗原または抗原性成分を含む、請求項4記載のワクチン組成物。
【請求項6】
抗原が腫瘍抗原である、請求項4記載のワクチン組成物。
【請求項7】
ウイルス、細菌または寄生虫の感染の予防的治療用のワクチンの製造のための、請求項1ないし3のいずれか1項記載のアジュバント組成物の使用方法。
【請求項8】
ウイルス、細菌、寄生虫の感染または癌の免疫療法的治療用のワクチンの製造のための、請求項1ないし3のいずれか1項記載のアジュバント組成物の使用方法。
【請求項9】
請求項1記載のアジュバント組成物を抗原または抗原性成分と混合することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか1項記載のワクチン組成物の製造方法。
【請求項10】
QS21および3D−MPLをさらに含み、抗原または抗原性成分がRTS,Sを含むことを特徴とする、請求項1記載のアジュバント組成物を含むワクチン組成物。
【請求項11】
QS21および3D−MPLをさらに含み、抗原または抗原性成分がgp120を含むことを特徴とする、請求項1記載のアジュバント組成物を含むワクチン組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−249080(P2006−249080A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46982(P2006−46982)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【分割の表示】特願平7−517187の分割
【原出願日】平成6年12月20日(1994.12.20)
【出願人】(595136380)グラクソスミスクライン・バイオロジカルス・ソシエテ・アノニム (10)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE BIOLOGICALS S.A.
【Fターム(参考)】