説明

アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含む抗酸化組成物

【課題】
抗酸化剤、肝機能改善剤、乳酸蓄積阻害剤、筋肉損傷改善剤及び筋肉向上剤を提供する。並びに、抗酸化効果、肝機能改善効果、乳酸蓄積阻害効果、筋肉損傷改善効果及び筋肉向上効果を有する飲食物を提供する。
【解決手段】
本発明は、アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含有してなる組成物が、それぞれ単独よりも高い抗酸化効果、肝機能改善効果、乳酸蓄積阻害効果、筋肉損傷改善効果及び筋肉向上効果があることを見いだし、これらの効果を有する薬剤及び飲食物を提供することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含有してなる組成物、さらには抗酸化剤、肝機能改善剤、乳酸蓄積阻害剤、筋肉損傷改善剤及び筋肉向上剤に関する。並びに、抗酸化剤、肝機能改善剤、乳酸蓄積阻害剤、筋肉損傷改善剤及び筋肉向上剤を含む飲食物に関する。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチンは、カロテノイドの一種あり、エビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、広く天然に分布しており、赤色色素として用いられている。アスタキサンチンは、生体内での抗酸効果を有すること(特許文献1)、肝機能改善効果を有すること(特許文献2)、筋肉損傷や疾病を改善する効果を有すること(特許文献3)が知られている。
【0003】
亜鉛は、生体内では鉄の次に多い必須金属元素であり、人の体内中には約1〜3g含まれており、多くの酵素内で構造形成や維持に関与している。特に抗酸化酵素(SODなど)の成分として働いている。特に、損傷や障害のあった器官の修復・改善に働く。亜鉛の欠乏により、生殖機能の異常や免疫機能の不全、感覚器官(視覚、味覚、嗅覚)の障害、皮膚障害、代謝機能障害、食欲不振、成長障害などが知られている。亜鉛の過剰摂取は、鉄や銅の欠乏、善高比重リポタンパク質の血液中の濃度を低下などが知られている。
【0004】
セレンは、人の体内中には約2〜20mg含まれており、生体内では主にセレノシステインとしてタンパク質に組み込まれてセレノプロテインとして働き、抗酸化に関与するグルタチオンペルオキシダーゼ、チオレドキシン還元酵素、SODなどの構成要素である。また、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質と協調して、活性酸素やラジカルから生体を防御している。セレンの欠乏により、貧血、高血圧、精子減少、ガン(特に前立腺ガン)、関節炎、早老、筋萎縮、多発性硬化症などが知られている。セレンの過剰摂取により、悪心、吐き気、下痢、食欲不振、頭痛、免疫抑制、高比重リポ蛋白減少などが知られている。
【0005】
生体内では活性酸素が発生し、様々な障害の原因となっている。特に活発に活動を行う筋肉や肝臓などの器官で大量の活性酸素が発生し、器官に障害や損傷を与える。通常の状態では、SOD(スーパーオキシド ジムスターゼ)やGPX(グルタチオンペルオキシターゼ)などの酵素が働き、活性酸素を除去することができるが、酒や薬物、過労、ウイルス、ストレス、過剰な運動により活性酸素を除去することができなくなり、器官に障害や損傷を与える。
【0006】
これまで、生体内でのアスタキサンチン、亜鉛、セレンのそれぞれの抗酸化効果、肝機能改善効果、筋肉損傷改善効果は知られていたが、これらの全てを配合した組成物は、顕著な抗酸化効果や肝機能改善効果、乳酸蓄積阻害効果、筋肉損傷改善効果及び筋肉向上効果を有することは知られていない。これまで、それぞれ単独、またはミネラル剤として亜鉛やセレンは同時に、投与されていたが、その栄養効果について期待されるに至らず、また亜鉛やセレンは過剰投与による副作用も懸念され、アスタキサンチンは亜鉛やセレンの副作用を抑える効果がある。
【特許文献1】日本国特開平2−49091号公報
【特許文献2】日本国特開平9−124470号公報
【特許文献3】日本国特表2001−514215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するべく、抗酸化組成物を探索した結果、アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含有する組成物がより抗酸化効果があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含有する抗酸化剤及び肝機能改善剤、乳酸蓄積阻害剤、筋肉損傷改善剤及び筋肉向上剤を提供するものである。
【0008】
本発明は、このような問題点の解消手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含有する組成物が抗酸化作用及び肝機能改善剤、乳酸蓄積阻害剤、筋肉損傷改善剤及び筋肉向上剤を示すことを見出した。本発明は係る知見に基づくものである。
【0010】
即ち、本発明は、(1)次の成分(A)及び(B);(A)アスタキサンチン、(B)亜鉛、セレンの1種以上、を含有することを特徴とする組成物であり、
(2)(1)の組成物に(C)アリシン、アリニン、クルクミノイド、カプサイシン、ポリフェノール、カロテノイド、フラボノイド、コエンザイムQ10、α−リポ酸、カルニチン、アンセリン、カルノシンの1種以上を含有することを特徴とする組成物であり、
(3)(1)〜(2)の組成物を含む抗酸化剤であり、
(4)(1)〜(2)の組成物を含む肝機能改善剤であり、
(5)(1)〜(2)の組成物を含む乳酸蓄積阻害剤であり、
(6)(1)〜(2)の組成物を含む筋肉損傷改善剤であり、
(7)(1)〜(2)の組成物を含む筋肉向上剤であり、
(8)請求項3〜7の薬剤を含む飲食物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においてアスタキサンチンとは、天然物由来のものまたは合成により得られるものを意味する。天然物由来のものとしては、例えば、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、卵および臓器、種々の魚介類の皮および卵、緑藻ヘマトコッカスなどの藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、海洋性細菌、福寿草および金鳳花などの種子植物から得られるものをあげることができる。天然からの抽出物および化学合成品は市販されており、入手は容易である。
【0012】
アスタキサンチンは、3,3'−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4'−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3'R)−アスタキサンチン、(3R,3'S)−アスタキサンチンおよび(3S,3'S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。
【0013】
アスタキサンチンは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られて、食品添加物として広く用いられている(高橋二郎ほか:ヘマトコッカス藻アスタキサンチンの毒性試験―Ames試験、ラット単回投与毒性試験、ラット90日反復経口投与性毒性試験―,臨床医薬,20:867−881,2004)。
【0014】
本発明において、アスタキサンチンとはアスタキサンチンのフリー体、モノエステル体及びジエステルを含む。
【0015】
本発明のアスタキサンチンを有効成分とする薬剤には、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル体、ジエステル体の少なくとも一種を用いることができる。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高く組成物中で酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかに遊離体のアスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。
【0016】
アスタキサンチンのモノエステルとしては、低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。前記低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へブタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。また、アスタキサンチンのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一または異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
【0017】
さらに、アスタキサンチンのモノエステルとしては、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価または多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記モノエステル類の塩も含む。
【0018】
アスタキサンチンのジエステルとしては、前記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価または多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸およびグリセロリン酸からなる群から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記ジエステル類の塩も含む。グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、または高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などをあげることができる。
【0019】
本発明において、アスタキサンチンは、天然物由来のものまたは合成により得られるもののいずれも用いることができるが、体内での吸収からアスタキサンチンエステルが各種の油脂に溶解した天然物由来が好ましい。天然物由来には、例えば、オキアミ抽出物、ファフィア酵母抽出物、ヘマトコッカス藻抽出物があるが、特に好ましいのはアスタキサンチンの安定性とアスタキサンチンのエステルの種類によりヘマトコッカス藻抽出物である。中でも、「アスタリール」(商標、富士化学工業株式会社製)が、安定性、吸収性が良く最も好ましい。
【0020】
ヘマトコッカス藻は、ボルボックス目クラミドモナス科に属する緑藻類である。通常は緑藻藻であるためクロロフィル含量が高く緑色であり、2本の鞭毛によって水中を遊泳している。しかし、栄養源欠乏や温度変化等の飢餓条件では休眠胞子を形成し、アスタキサンチン含量が高くなり赤い球形となる。本発明においては、いずれの状態でのヘマトコッカスを用いることができるが、アスタキサンチンを多く含有した休眠胞子となったヘマトコッカスを用いるのが好ましい。また、ヘマトコッカス属に属する
緑藻類では、例えば、ヘマトコッカス・プルビイアリス(Haematococcus pluviaris)が好ましい。
【0021】
ヘマトコッカス緑藻類の培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、一部解放型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開第99/50384号公報)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽やチューブ型の培養層を用いる方法が適している。
【0022】
本発明のヘマトコッカス藻から抽出物を得る方法としては、(1)ヘマトコッカスを乾燥し破砕した後、二酸化炭素を抽出溶媒として超臨界抽出を行い、二酸化炭素を除去して抽出物を得る方法、(2)ヘマトコッカス(湿末)を有機溶媒に懸濁した後、粉砕機に通して細胞を粉砕して抽出し、有機溶媒を除去して抽出物を得る方法があげられる。
【0023】
超臨界抽出による抽出方法は、常法によって行うことができ、例えば、広瀬らの方法(Ind Eng Chem Res、2006、45(10)、3652-3657、Extraction of Astaxanthin from Haematococcus pluvialis Using Supercritical CO2 and Ethanol as Entrainer)で行うことができる。
【0024】
有機溶媒による抽出方法については種々の方法が知られている。例えば、アスタキサンチン及びそのエステルは油溶性物質であることから、アスタキサンチンを含有する天然物からアセトン、アルコール、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルムなどの油溶性有機溶媒でアスタキサンチン含有成分を抽出することができる。また、二酸化炭素や水などを用い超臨界抽出を行うこともできる。抽出後、常法に従って溶媒を除去してモノエステル型のアスタキサンチンとジエステル型のアスタキサンチンの混合濃縮物を得ることができる。得られた濃縮物は、所望により分離カラムやリパーゼ分解によりさらに精製することができる。
【0025】
前記のドーム型培養装置や密閉型の培養装置で培養したヘマトコッカス藻を乾燥させ、粉砕後にアセトンで抽出または、アセトン中で粉砕と抽出を同時に行ったのち、アセトンを除去してアスタキサンチン抽出する製法(特開2006−70114)が、空気に触れることがないことからアスタキサンチンの酸化がほとんどなく、夾雑物が少なく、すなわち本発明の効果を阻害する物質が少なく、アスタキサンチンとトリグリセリドを純度良く多く含むことができ好適である。
【0026】
アスタキサンチンの使用形態としては、前述方法で得たアスタキサンチンの抽出物およびそれらを含有した粉末や水溶液、または赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などの乾燥品およびそれらの破砕品を用いることができる。
【0027】
本発明の組成物に用いる亜鉛及びセレンは、化合物のまま、または化合物を生物に食させた形で配合することができる。化合物としては、無機塩、有機塩いずれでもよく、無機塩としては硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩、ハイドロタルサイト類、酸化物などで、有機塩としては、酢酸、コハク酸、グルコン酸、アスコルビン酸などの塩で配合することができる。亜鉛塩、セレン塩を食させる生物としては、細菌類、微細藻類、酵母が挙げられる。吸収性や溶出性が良好であることから、亜鉛塩及びセレン塩を食させた酵母、ハイドロタルサイト類に固溶させた無機物、グルコン酸塩が好ましい。
【0028】
本発明の組成物に用いられるアスタキサンチンの量は、アスタキサンチン遊離体換算量で、成人では1日あたり、0.5〜100mg、好ましくは1〜20mgの服用量で経口投与または非経口投与で行う。投与量は、投与される患者の年齢、体重、症状の程度、投与形態によって異なる。本発明の医薬品におけるアスタキサンチン量は0.01〜99.9重量%、好ましくは0.1〜90重量%の量で含有させることができる。
【0029】
本発明の組成物に用いられる亜鉛の量は、亜鉛単体換算で、成人では1日あたり、1〜100mg、好ましくは3〜30mgの服用量で経口投与または非経口投与で行う。投与量は、投与される患者の年齢、体重、性別、症状の程度、投与形態によって異なる。本発明の医薬品における亜鉛の量は0.01〜99.9重量%、好ましくは0.1〜90重量%の量で含有させることができる。
【0030】
本発明の組成物に用いられるセレンの量は、セレン単体換算で、成人では1日あたり、1〜900μg、好ましくは7〜450μgの服用量で経口投与または非経口投与で行う。投与量は、投与される患者の年齢、体重、性別、症状の程度、投与形態によって異なる。本発明の医薬品におけるセレンの量は0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の量で含有させることができる。
【0031】
本発明の組成物においてアスタキサンチン、亜鉛、セレンは、それぞれ単品換算でアスタキサンチン:亜鉛:セレン=100:0.1〜10000:0.001〜90の割合で配合することができ、好ましくはアスタキサンチン:亜鉛:セレン=100:0.3〜3000:0.007〜45で配合することができる。
【0032】
本発明で用いるその他の効用成分としては、アリシン、アリイン、クルクミノイド、カプサイシン、トコトリエノール、ポリフェノール、カロテノイド、フラボノイド、コエンザイムQ10、α−リポ酸、カルニチン、アンセリン、カルノシンの1種以上が挙げられる。特に、アリシン、アリイン、イノド、カプサイシンが好ましい。これらは、天然由来のもの及び合成物を用いることができ、これらを含有する天然物を用いることができる。これらの成分は、一般には0.01〜90%、好ましくは0.1〜10%配合され、一種種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
本発明においてトコトリエノールとは、トコトリエノールの異性体や誘導体、トコフェロールの異性体や誘導体を含み、天然物由来のものまたは合成により得られるものを意味し、例えば、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール、これらの各異性体のトコトリエノールニコチン酸エステルなどを意味する。これらのトコトリエノールには、d−、l−、dl−型の異性体がある。また、これらの1種以上または2種以上の混合物としても使用することができる。これらのトコトリエノールは、常法により、例えば、天然物の圧搾、天然物からの抽出または合成などの方法により得ることができる。これらのトコトリエノール類は、所望により、例えば、カラムクロマトグラフィーなどにより、さらに分離精製し、純度を良くしたものであってもよい。
【0034】
本発明の組成物は、生体内及び皮膚表面上で良好な抗酸化効果があり、特に肝機能改善効果、乳酸蓄積阻害効果、筋肉損傷改善効果、筋肉向上効果を有する薬剤並びに飲食物として用いることができる。本発明の組成物は、抗酸化剤、肝機能改善剤、乳酸蓄積阻害剤、筋肉損傷改善剤、筋肉向上剤として用いることができる。運動時に生じる乳酸の蓄積阻害、筋肉の損傷の改善、筋肉自体の生成・生長を向上させる働きがあることから、運動能力、特に持久力を要する運動の能力向上に効果がある。また、運動の練習量を向上させ、それによって損傷した筋肉の回復をさせることによって筋肉自体の向上させることができる。さらに、長時間の運動など負荷のかかる運動によって、乳酸などの老廃物が生じ、それらを分解するため生じる肝機能を改善することができる。
【0035】
本発明において、アスタキサンチン、亜鉛及びセレンを含有する組成物が、それぞれ単独よりも顕著な効果を示すのは、詳細な原因は不明であるが、1)アスタキサンチンが脂質過酸化を抑制し、2)亜鉛とセレンがスーパーオキシドジムスターゼやグルタチオンペルオキシダーゼなどの活性酸素消去酵素群の補欠因子として働いてスーパーオキシドジムスターゼやグルタチオンペルオキシダーゼの活性を促進したため、1)と2)の相乗効果が生まれたと考えられる。
【0036】
本発明の薬剤は、経口または非経口で投与することがでる。経口用の剤形としては、例えば、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態で投与される。非経口の剤形としては、点鼻剤、貼付剤、軟膏剤、坐剤の形態で投与される。
【0037】
本発明の薬剤は、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などの無機化合物などがあげられる。結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、寒天、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、F−MELT(商標、富士化学工業(株)製)などがあげられる。酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などがあげられる。発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。香料としては、例えばレモン油、オレンジ油、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、シクロデキストリン等が挙げられる。pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。界面活性剤として、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどがあげられる。アスタキサンチンやトコトリエノールの吸収や製剤化を良くするためには粉末状態にして配合することが好ましい。
【0038】
本発明の薬効効果を補助するため、補助効果を有する物質を添加することができる。例えば、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、グアニン、キサンチン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩などの核酸関連物質;血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、胎盤抽出物、鶏冠抽出物、ローヤルゼリーなどの動物由来の抽出物;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、霊芝抽出物などの微生物由来の抽出物;ニンジン抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、オウバク抽出物、ニンニク抽出物、ヒノキチオール、セファランチンなどの植物由来の抽出物;α−またはγ−リノレイン酸、エイコサペンタエン酸及びそれらの誘導体、コハク酸及びその誘導体並びにそれらの塩、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸などのα−ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ε−アミノカプロン酸、酸化亜鉛、ジクロフェナクナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コラーゲン、アロエ抽出物、サルビア抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、シラカバ抽出物、オトギリソウ抽出物、ユーカリ抽出物及びムクロジ抽出、チロシナーゼ活性阻害剤が、システイン及びその誘導体並びにその塩、センプクカ抽出物、ケイケットウ抽出物、サンペンズ抽出物、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、イブキトラノオ抽出物、クララ抽出物、サンザシ抽出物、シラユリ抽出物、ホップ抽出物、ノイバラ抽出物及びヨクイニン抽出物、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸並びにこれらの塩類、コラーゲン、エラスチン、ケラチン及びこれらの誘導体並びにその塩類、海洋深層水、ヘチマ抽出物、センキュウ抽出物、パパイヤ末、亜鉛、高麗人参抽出物、ブルベリー抽出物、DHA、イチョウ葉抽出物、グルタチオン、レチノール、3,4−ジデヒドロレチノールなどのビタミンA類;ビタミンB;D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸などのビタミンC類;トコフェロール、酢酸ビタミンE、コハク酸ビタミンE、リン酸ビタミンE類などのビタミンE類;フラボノイド、タンニン、エラグ酸、核酸類、漢方薬類、海草類、無機物など、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。好ましくはトコトリエノールである。また、これらを含んだ果実や葉芽、藻類、菌類などの乾燥粉体を配合することによっても、同様の効果を得ることができる。
【0039】
シロップ、ドリンク剤、懸濁液などの液剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0040】
また、皮膚外用剤の形態には、上記成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0041】
本発明の組成物及び薬剤は、飲食物や飼料に配合して用いることができ、同様の効果を得ることができる。
【0042】
飲食物としては、サプリメント、保健機能食、特別用途食品、一般食品として用いることができ、摂取のしやすさや摂取量が決めやすいことから、サプリメント、保健機能食、特別用途食品が好ましく、前述薬剤と同様の形態、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態で摂取することができる。上記医薬用製剤で用いる成分のうち、食品で使用可能なものを選択でき、その他に乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。本発明の飲食物の形態は、これらに限定されるものではない。
【0043】
一般食品、すなわち飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、漬け物、フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子、かきもち、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、パン、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー、マカロニ、パスタ、ラーメン、蕎麦、うどん、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0044】
飲食物では、アスタキサンチン、亜鉛およびセレンを一般食品の原料と共に配合し、常法に従って加工製造することにより製造される。アスタキサンチン、亜鉛およびセレンの配合量は食品の形態などにより異なり特に限定されるものではないが、一般にはアスタキサンチン、亜鉛およびセレンの使用量は当業者が飲食物の種類に応じて適宜選択でき、前述の量を配合することができる。
【実施例】
【0045】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0046】
[実施例1] スーパーオキシドアニオンラジカルに対するアスタキサンチン、セレンおよび亜鉛の作用
コンフルエントなHepG2細胞をDMEM培地に培養し、アスタキサンチン10ng/ml、または、セレノメチオニン(セレンとして0.7ng/ml)+グルコン酸亜鉛(亜鉛として15ng/ml)、または、アスタキサンチン10ng/ml+セレノメチオニン(セレンとして0.7ng/ml)+グルコン酸亜鉛(亜鉛として15ng/ml)を加え24時間インキュベートした後、細胞を回収しPBSで2回洗浄した。洗浄した細胞をプロテアーゼインヒビターを含む冷PBS中でホモジェナイズし、Tienらの方法(In Lipid Peroxides in Biology and Medicine, p.23-39, 1982)に従ってキサンチン-キサンチンオキシダーゼ法によりスーパーオキサイドアニオンラジカルを発生させ、脂質過酸化の指標となるTBARSを定法に従って定量し、コントロールに対する阻害率を算出した。
【0047】
[表1] 脂質過酸化の阻害率

【0048】
この結果より、アスタキサンチンとセレンおよび亜鉛を組み合わせて投与したものは、アスタキサンチン単独、セレンと亜鉛を投与したものと比べて著しく相乗的にスーパーオキシドアニオンラジカル発生を阻害することが観察された。
【0049】
[実施例2] 生体の酸化的組織障害に対するアスタキサンチン、セレンおよび亜鉛の作用
ラットに表2の通り、各群に5日間連日経口投与した後、肝臓を摘出し、肝臓ミトコンドリアを分離した。塩化カリウムートリス塩酸緩衝液にて洗浄した。塩化カリウム−トリス塩酸緩衝液に2mg/mLタンパク量のミトコンドリアを加え、50μMとなるように二価鉄(モール塩)を添加した。37℃60分間脂質過酸化反応を行った。これに40%トリクロロ酢酸0.5mL、5N塩酸0.25mL、2%チオバルビト尿酸水溶液0.5mLを加えて、100℃15分間煮沸しTBA反応を行った。反応液を遠心分離し、上清を535nmの吸光度で過酸化脂質を定量し、脂質過酸化反応に対する各物質の阻害作用を調べた。
【0050】
[表2] ラット骨格筋および肝臓における生体膜脂質過酸化阻害率

【0051】
その結果、アスタキサンチンとセレンおよび亜鉛を組み合わせることにより、アスタキサンチン単独と比べて相乗的に生体における脂質過酸化が阻害されることが観察された。
【0052】
[製造例1] 錠剤
下記成分を下記組成比(重量%)で均一に混合し、1粒300mgの錠剤とした。
アスタリールパウダー 10重量部
グルコン酸亜鉛 1重量部
セレン含有酵母 1重量部
Vプレミックス 3重量部
乳糖 50重量部
バレイショデンプン 32重量部
ポリビニルアルコール 2重量部
ステアリン酸マグネシウム 1重量部
アスタリールパウダー(富士化学工業(株)製)はフリー体換算で1重量%のアスタキサンチンを含むヘマトコッカス藻抽出オイルから製造した粉末である。
【0053】
[製造例2] カプセル剤
常法により下記成分からなるソフトカプセル剤皮の中にソフトカプセル内容物を混練してから充填し、1粒300mgのソフトカプセルを得た。なお、1粒中には、アスタキサンチン3mg、亜鉛3mg、セレン50μg配合に相当する。
ソフトカプセル剤皮
ゼラチン 70重量部
グリセリン 23重量部
パラオキシ安息香酸プロピル 0.5重量部
水 6.5重量部
ソフトカプセル内容物
アスタリール50F 60重量部
グルコン酸亜鉛 21重量部
セレン含有酵母 0.5重量部
中鎖脂肪酸トリグリセリド 20重量部
コーンスターチ 58.5重量部
アスタリール50F(富士化学工業(株)製)はフリー体換算で5重量%のアスタキサンチンを含むヘマトコッカス藻抽出オイルから製造したオイルである。
【0054】
[製造例3] 口腔内速崩壊錠剤
下記成分を下記組成比(重量%)で均一に混合し、1粒300mgの錠剤とした。
アスタリールパウダー 10重量部
グルコン酸亜鉛 1重量部
セレン含有酵母 1重量部
Vプレミックス 3重量部
F−MELT 40重量部
ライススターチ 24重量部
ステアリン酸マグネシウム 1重量部
【0055】
[製造例4] ビスケット
下記の成分を配合し、常法に従って、ビスケットを焼いた。
アスタリールパウダー 10重量部
グルコン酸亜鉛 1重量部
セレン含有酵母 1重量部
牛乳 430重量部
砂糖 180重量部
コーンスターチ 280重量部
食塩 10重量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)
(A)アスタキサンチン、
(B)亜鉛、セレンの1種以上、
を含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1の組成物に
(C)アリシン、アリイン、クルクミノイド、カプサイシン、ポリフェノール、カロテノイド、フラボノイド、コエンザイムQ10、α−リポ酸、カルニチン、アンセリン、カルノシンの1種以上
を含有することを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1〜2の組成物を含む抗酸化剤。
【請求項4】
請求項1〜2の組成物を含む肝機能改善剤。
【請求項5】
請求項1〜2の組成物を含む乳酸蓄積阻害剤。
【請求項6】
請求項1〜2の組成物を含む筋肉損傷改善剤。
【請求項7】
請求項1〜2の組成物を含む筋肉向上剤。
【請求項8】
請求項3〜7の薬剤を含む飲食物。

【公開番号】特開2008−110942(P2008−110942A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294894(P2006−294894)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】