説明

アスタキサンチンを有効成分とする体脂肪減少用組成物

【課題】体脂肪が原因となっている成人病の治療及び予防効果がある副作用のない天然物由来の医薬品および食品を提供することを目的とする。
【解決手段】アスタキサンチンが過剰な体脂肪を減少すること、及び体脂肪の過剰な増加を抑制することを見い出した。アスタキサンチンを含有することを特徴とする体脂肪減少用組成物、医薬品および食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチンを有効成分とする体脂肪減少用の組成物であり、薬剤として投与または食品として摂取することにより体脂肪減少や肥満やそれに伴う疾病の予防・改善及び治療に有効な薬剤および食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食事の欧米化による高カロリー化や生活習慣の変化、運動不足、ストレスなどの原因によって生活習慣病が増加しており、大きな社会問題となっている。特に体脂肪率が増加する肥満や過体重は、日本人全体の2割以上を占める大きな問題である。肥満とは、消費エネルギーよりも摂取エネルギーの方が過剰となり、脂肪組織が通常以上に蓄積した身体状況のことをいい、日本人では体脂肪率が成人男性では25%以上、女性では30%以上を指す。肥満になると、体脂肪が多く蓄積することにより高血圧症、心血管障害、高脂血症、動脈硬化、糖尿病等の種々の疾病を引き起こし、血管障害、視力障害、神経障害、抵抗力低下等の合併症を併発する。生活習慣病の大きな要因を占める肥満を解消する手段について多くの研究が行われており、食事療法、運動療法、薬物療法などさまざまな治療法が開発され実施されている。
【0003】
一般的には、肥満の治療として、食事療法や運動療法が行われているが、食事の欧米化に伴うエネルギー摂取の増大や労働環境の変化など現代社会においては継続的なカロリー摂取制限(ダイエット)や適当な運動を行うための時間や空間をとる運動療法は、実際に行うのが困難である。
【0004】
肥満の薬物療法としては、脂肪組織での脂肪分解の亢進などによるエネルギー消費を促進する方法と、脂質、糖質などの消化管からの吸収阻害や摂食抑制などのエネルギー摂取を抑制する方法などが行われている。しかし、薬物療法は適切な投与が必要であり、過剰摂取により必要な栄養の摂取を妨げることや吸収される栄養のバランスを崩すこと等の副作用や医師の処方が必要であるため容易に使用できないという問題があった。
【0005】
天然由来で副作用がなく、食品として容易に摂取可能な体脂肪減少組成物が求められており、ガルシニアカンボジア種皮抽出物とダイダイの果実からなる体脂肪減少剤(特許文献1)、共役リノール酸を投与する方法(特許文献2)、ビタミンD3を投与する方法(特許文献3)が知られている。
【0006】
アスタキサンチンはβ−カロテンと同じカロテノイドの一種で、エビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布する食経験豊かな赤色色素であり、ビタミンEの約1,000倍、β−カロテンの約40倍もの強力な抗酸化作用を有することが見いだされている。
【0007】
アスタキサンチンの有するその他の機能特性として、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、糖尿病に対する作用、光傷害からの網膜保護作用、日周リズム調節作用、免疫賦活作用、抗ストレス作用、精子の質向上作用や膀胱がん誘発抑制等数多くの報告がなされている。また、運動に対する作用としては、筋肉持続力向上作用(特許文献4)、運動中での血中乳酸値上昇抑制効果(非特許文献1)、運動後の疲労回復効果(非特許文献2)が報告されている。
【0008】
しかし、アスタキサンチンが体脂肪を減少及び増加を抑制し、この結果として肥満の治療や予防効果有する旨の報告は未だなされていない。
【特許文献1】日本国特開第2001−321126号公報
【特許文献2】日本国特表平第10−508189号公報
【特許文献3】日本国特開平第3−3210156号公報
【特許文献4】日本国特表第2001−514215号公報
【非特許文献1】臨床医薬、18(9)、1085−1100、2002年
【非特許文献2】疲労と休養の科学、18(1)、35−46、2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、体内の脂肪の減少や増加の抑制効果を有する組成物、その組成物からなる医薬品や飲食品を提供することを課題とする。その結果、体脂肪の過多による肥満によって生じる各種の疾病を治療、改善、予防することおよび痩身効果による美的体型の現出・維持を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アスタキサンチンによる体脂肪の減少、増加抑制効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、(1)アスタキサンチンを含有することを特徴とする体脂肪減少用組成物であり、
(2)(A)アスタキサンチン、(B)水溶性添加剤及び/又は水不溶性添加剤を含有することを特徴とする体脂肪減少用組成物であり、
(3)水溶性添加剤及び/又は水不溶性添加剤が活性酸素除去剤、賦形剤及び崩壊剤のいずれかの一種または二種以上である(2)に記載の体脂肪減少用組成物であり、
(4)医薬品である(1)〜(3)のいずれかに記載の体脂肪減少用組成物であり、
(5)食品である(1)〜(3)のいずれかに記載の体脂肪減少用組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の天然由来で毒性のないアスタキサンチンを配合した体脂肪減少効果を有する組成物、特にアスタキサンチンを配合した体脂肪減少効果を有する医薬品または食品により、副作用なく体脂肪の過多すなわち肥満が原因となっている疾病の治療・改善・予防することができる。
【0013】
本発明において「アスタキサンチン」とは、天然物由来のものまたは合成により得られるものを意味する。天然物由来のものとしては、例えば、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、卵および臓器、種々の魚介類の皮および卵、緑藻ヘマトコッカスなどの藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、海洋性細菌、福寿草および金鳳花などの種子植物から得られるものをあげることができる。天然からの抽出物および化学合成品は市販されており、入手は容易である。
【0014】
アスタキサンチンは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などを、公知の方法に準拠して、適宜な培地で培養することにより得られる。培養や抽出のしやすさ、アスタキサンチンを最も高濃度で含有することや生産性の高さから緑藻ヘマトコッカスが最も好適である。ヘマトコッカス緑藻類のアスタキサンチン含量の高いものを得る培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、密閉型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法(国際公開番号WO99/50384号公報)や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽で培養する方法が適している。
【0015】
前記培養物または前記甲殻類から抽出および精製する方法については種々の方法が知られている。例えば、アスタキサンチン及びそのエステルは油溶性物質であることから、アスタキサンチンを含有する天然物からアセトン、アルコール、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルムなどの油溶性有機溶媒でアスタキサンチン含有成分を抽出することができる。また、二酸化炭素や水などを用い超臨界抽出を行うこともできる。抽出後、常法に従って溶媒を除去してモノエステル型のアスタキサンチンとジエステル型のアスタキサンチンの混合濃縮物を得ることができる。得られた濃縮物は、所望により分離カラムやリパーゼ分解によりさらに精製することができる。
【0016】
前記のドーム型培養装置で培養したヘマトコッカス藻を乾燥させ、粉砕後にアセトンで抽出または、アセトン中で粉砕と抽出を同時に行ったのち、アセトンを除去してアスタキサンチン抽出する製法が、夾雑物が少なく、すなわち本発明の体脂肪減少効果を阻害する物質が少なく、アスタキサンチンとトリグリセリドを純度良く多く含むことができ好適である。
【0017】
アスタキサンチンの使用形態としては、前記方法で得たアスタキサンチンの抽出物およびそれらを含有した粉末や水溶液、または赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌などの乾燥品およびそれらの破砕品を用いることができる。
【0018】
アスタキサンチンは、3,3’−ジヒドロキシ−β,β−カロテン−4,4’−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R,3’R)−アスタキサンチン、(3R,3’S)−アスタキサンチンおよび(3S,3’S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。
【0019】
アスタキサンチンは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られて、食品添加物として広く用いられている(高橋二郎ほか:ヘマトコッカス藻アスタキサンチンの毒性試験−Ames試験、ラット単回投与毒性試験、ラット90日反復経口投与性毒性試験−,臨床医薬,20:867−881,2004.)。
【0020】
本発明の記載で、特に記載がない限り、アスタキサンチンはアスタキサンチンおよび/またはそのエステルを含む。さらに、アスタキサンチンのエステルにはモノエステル体および/またはジエステル体を含む。
【0021】
本発明の体脂肪減少用組成物のアスタキサンチンとしては、アスタキサンチンの遊離体、モノエステル体、ジエステル体の少なくとも一種を用いることができる。ジエステル体は2つの水酸基がエステル結合により保護されているため化学的及び物理的に遊離体やモノエステル体よりも安定性が高く本発明の組成物中で酸化分解されにくい。しかし、生体中に取り込まれると生体内酵素により速やかにアスタキサンチンに加水分解され、効果を示すものと考えられている。
【0022】
アスタキサンチンのモノエステルとしては、低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。前記低級または高級飽和脂肪酸、あるいは低級または高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ヘブタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5,13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサオペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。また、アスタキサンチンのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一または異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
【0023】
さらに、アスタキサンチンのモノエステルとしては、グリシン、アラニンなどのアミノ酸;酢酸、クエン酸などの一価または多価カルボン酸;リン酸、硫酸などの無機酸;グルコシドなどの糖;グリセロ糖脂肪酸、スフィンゴ糖脂肪酸などの糖脂肪酸;グリセロ脂肪酸などの脂肪酸;グリセロリン酸などによりエステル化されたモノエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記モノエステル類の塩も含む。
【0024】
アスタキサンチンのジエステルとしては、前記低級飽和脂肪酸、高級飽和脂肪酸、低級不飽和脂肪酸、高級不飽和脂肪酸、アミノ酸、一価または多価カルボン酸、無機酸、糖、糖脂肪酸、脂肪酸およびグリセロリン酸からなる群から選択される同一または異種の酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。なお、考えられ得る場合は前記ジエステル類の塩も含む。グリセロリン酸のジエステルとしては、グリセロリン酸の飽和脂肪酸エステル類、または高級不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸から選択される脂肪酸類を含有するグリセロリン酸エステル類などをあげることができる。
【0025】
本発明のアスタキサンチンの体脂肪減少効果を高めるために、水溶性添加剤及び/又は水不溶性添加剤を配合することができる。水溶性添加剤及び/又は水不溶性添加剤としては、活性酸素除去剤、増量剤、崩壊剤などが挙げられる。活性酸素除去剤としては、例えば、ビタミンEアセテート等のビタミンE及びその誘導体並びにそれらの塩;トコトリエノール及びその誘導体並びにそれらの塩;アスコルビン酸、リン酸−L−アスコルビルマグネシウム、L−アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、ビタミンCジパルミテート等のビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩、ビタミンD類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩;ビタミンAアセテート、ビタミンAパルミテート等のビタミンA類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩;ビタミンB類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩;イチョウ抽出物、ゴカヒ抽出物、ヤシャジツ抽出物、ジコッピ抽出物などのフラボノイドを成分中に含む植物抽出物;血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、胎盤抽出物、鶏冠抽出物、ローヤルゼリーなどの動物由来の抽出物;ニンジン抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、オウバク抽出物、ニンニク抽出物、ヒノキチオール、セファランチンなどの植物由来の抽出物;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、霊芝抽出物などの微生物由来の抽出物;BHT及びBHAなどのビタミン類;デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、グアニン、キサンチン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩などの核酸関連物質;グルタチオン及びその誘導体並びにそれらの塩;α−又はγ−リノレイン酸、エイコサペンタエン酸及びそれらの誘導体;コハク酸及びその誘導体並びにそれらの塩:エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩;乳酸、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、サリチル酸などのα−ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩等;ハイドロキノン、ビリルビン、コレステロール、トリプトファン、ヒスチジン、クエルセチン、クエルシトリン、没食子酸、没食子酸誘導体などがあげられる。
上記活性酸素除去剤のうち、好ましいものとしては、ビタミンE及びその誘導体並びにその塩、トコトリエノール及びその誘導体並びにそれらの塩、ビタミンC及びその誘導体並びにその塩が挙げられる。
【0026】
本発明の体脂肪減少用組成物に配合できる増量剤としては、特に規制するものではないが、乳糖、ショ糖などの糖類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどの糖アルコール類、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、マガルトレート、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機賦形剤、二酸化珪素、タルクなどの無機化合物、セルロース類、デンプン類、ゼラチン、寒天、中鎖脂肪酸トリグリセライド、食用油脂類などがあげられる。アスタキサンチンの安定性を増すことによって効果を高めることから、中鎖脂肪酸トリグリセライド、食用油脂類が好ましい。
【0027】
崩壊剤としては、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシスターチナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび結晶セルロースから選択される1種以上が好ましく、これらのいずれかを単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の組成物において、アスタキサンチン1重量部に対して、活性酸素除去剤は0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部であり、増量剤は1〜1000重量部、好ましくは2〜500重量部含まれる。
【0029】
本発明での体脂肪減少効果とは、本発明の体脂肪減少剤を単に投与することでも体脂肪を減少させる効果であり、本発明の体脂肪減少剤を投与している期間中に定期的に軽い運動を行うことによってさらに体脂肪の減少効果を高めることができる。本発明での体脂肪増加抑制効果とは、本発明の組成物を投与することにより、体脂肪の増加を抑止し、肥満を防止する効果である。
【0030】
また、過剰な体脂肪を減少させることにより、肥満や過体重が原因であると言われている疾患、例えば、糖尿病、動脈硬化、高血圧、ガン、高脂血症、リュウマチ、高尿酸血症、変形性関節症、痛風、脳卒中、虚血性心疾患、呼吸障害、膵炎、腎炎、白内障、アルツハイマー病、アレルギー性疾患、老化、多汗症、虚血疾患、糖尿病の合併症である腎症や神経障害や網膜障害に関する疾病の治療・改善・予防効果も有している。神経障害においては、突発性の難聴、眼や顔面の異常(麻痺や痛み)、起立性低血圧、発汗の異常、下痢や便秘(消化器症状)、排尿障害、四肢の痛み、知覚の異常、筋肉の委縮、壊疽の治療・改善・予防に効果がある。眼の障害においては、白内障、単純網膜症、前増殖網膜症および増殖網膜症に効果がある。また、虚血性疾患においては脳梗塞・心筋梗塞の治療・改善・予防にも効果がある。
【0031】
本発明の体脂肪減少効果を高める運動としては、ウォーキング、バイクリング、クラミング、エアロビクス、マシントレーニング、水中エアロビクス、水中ウォーキングなどの有酸素運動が挙げられ、1週間に2〜4回で、1回当たり30分〜2時間の運動を行えばよい。
【0032】
本発明の組成物は、常法により、例えば、錠剤、舌下錠、丸剤、坐剤、散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、注射剤、乳剤、貼付剤などの形態に製剤化することができる。例えば、錠剤は薬理的に受容しうる担体と均一に混合して打錠することにより、また、散剤、粉剤、顆粒剤は薬剤と担体とを乾式造粒または湿式造粒して製造することができ、湿式造粒としては、常法により、例えば、噴霧乾燥法、流動層造粒法、混練造粒法又は凍結乾燥法などにより乾燥することにより製造できる。また、必要に応じて、常法によりチュアブル錠や口腔内速崩壊錠とすることができる。
【0033】
散剤、粉剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤はラクトース、グルコース、スクロース、マンニトール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン水素酸カルシウムなどの賦形剤、でんぷん、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、マグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの表面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。
【0034】
本発明のアスタキサンチンまたはそのエステルを有効成分とする組成物は、常法に従って、適宜なソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどの糖アルコール、乳糖、ショ糖、マルチトールなどの糖類、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、マガルトレート、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機賦形剤、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、またはデンプン、寒天、クロスボビドン、結晶セルロースなどの崩壊剤、或いは二酸化珪素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコールなどの滑剤、フレーバ剤、甘味料を配合し、各種製剤の形態にすることができる。例えば、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、エリキシール、シロップおよび懸濁液のような液体投薬形態で投与される。
【0035】
アスタキサンチンまたはそのエステルの分解や酸化を抑えるため、必要ならば上記組成物には安定剤として抗酸化能を持つ物質を添加することができる。例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンEまたはこれらのビタミン誘導体、トコトリエノール、システイン、グルタチオン、グルタチオンペルオキシターゼ、クエン酸類、リン酸類、ポリフェノール類、核酸類、漢方薬類、海草類、無機物などの既存の抗酸化剤から選ばれる一種または二種以上の混合物を添加することもできる。アスタキサンチンの単体やモノエステル体の吸収を良くするためには微粉状態にして投与することが好ましい。
【0036】
本発明の組成物には必要ならばさらに他の抗酸化剤を添加してもよい。抗酸化剤は特に限定されるものでなく、抗酸化作用を有するものであれば適用可能である。例えば、レチノール、3,4−ジデヒドロレチノールなどのビタミンA類、ビタミンB、D−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸などのビタミンC類、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸ビタミンE、コハク酸ビタミンEなどのビタミンE類、リン酸ビタミンE類、コエンザイムQ、フラボノイド、タンニン、エラグ酸、ポリフェノール類、ラジカル阻止剤、ヒドロペルオキシド分解剤、金属キレート剤、活性酸素除去剤、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、及びδ−カロチンを含むカロチン類、トコキノン、及びこれらの薬学的に許容できる塩、並びにそれらの混合物からなる群から1種または2種以上選択することができる。
【0037】
注射剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。
【0038】
懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0039】
本発明の医薬品におけるアスタキサンチン量は0.01〜99.9重量%、好ましくは0.1〜90重量%の量で含有させることができる。
【0040】
本発明の医薬品に配合されるアスタキサンチンまたはそのエステルの量は、アスタキサンチン遊離体換算量で、成人では1日あたり、0.2mg〜100mg、好ましくは0.5mg〜20mgの服用量であり、経口投与または非経口投与で行う。投与量は、投与される患者の年齢、体重、症状の程度、投与形態によって異なる。
【0041】
本発明の組成物は体脂肪低減効果を有する食品としても用いることができる。
【0042】
食品の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、フライドポテト、ポテトチップス、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカーなど、マカロニ、パスタ、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、または果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料または非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコールまたはリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0043】
本発明の食品は、アスタキサンチンまたはそのエステルを一般食品の原料と共に配合し、常法に従って加工製造することにより製造される。アスタキサンチンまたはそのエステルの配合量は食品の形態などにより異なり特に限定されるものではないが一般には0.00001〜10重量%、好ましくは0.0001〜5重量%であり、予防または改善作用を発揮するのに必要な量だけ含まれるように調製する。アスタキサンチンまたはそのエステルの使用量は当業者が飲食物の種類に応じて適宜選択でき、成人1日摂取量あたり0.2〜100mg、好ましくは0.5〜20mgである。
【0044】
本発明の食品を栄養補助食品あるいは機能性食品として用いる場合、その形態は、上記医薬用製剤と同様の形態であってもよい。乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、または、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、乳化剤、香料などを配合した自然流動食、半消化体栄養食および栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工物を挙げることができる。ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料および色素などを配合してもよい。本発明の食品の形態は、これらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0045】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0046】
試験に供されたアスタキサンチンは緑藻類の一種ヘマトコッカス藻を密閉系の培養装置で培養したものから抽出・濃縮したアスタキサンチンオイルであるアスタリール〔商標、富士化学工業(株)製、アスタキサンチン遊離体換算で5%含有〕50Fである。試験試料は、このアスタキサンチン濃縮物をアスタキサンチンとして6mg含有するカプセル(実薬カプセル)に製剤し試験に供した。プラセボカプセル(対照カプセル)として同形のアスタキサンチン0mg含有カプセルを試験に供した。
【0047】
[被験者及び摂取法]
23〜57歳の健常な女性である被験者32名を無作為に一群16名の二群に分け試験群と対照群とした。試験群と対照群への割付は二重盲検法で行い被験者及び試験実施者に試験終了まで各被験者がどちらの群に属するかわからないようにした。試験群は実薬カプセル、対照群はプラセボカプセルをそれぞれ1日2カプセルタ食後に服用させた。服用期間(試験期間)は6週間とした。全ての被験者について試験開始時(0週)、服用終了時(6週)に体脂肪率と体重を測定した。体脂肪率は体重計〔TBF−511、(株)タニタ製〕にて測定した。
【0048】
[試験期間中の運動負荷]
被験者に試験期間中に負荷する運動はウォーキングとし、運動量は試験開始前に最大心拍数法にて決定した。最大酸素摂取量40ml/kg体重/分以上の被験者に対しては最大心拍数の60〜70%で、最大酸素摂取量40ml/kg体重/分未満の被験者に対しては最大心拍数の50〜60%で連続40分間のウオーキングを行い、ウオーキングは1週間に3回実施した。
得られた測定値の比較は、各群の試験開始時と試験終了時は対応あるt検定にて、また群間の比較については対応のないt検定にて行った。
【0049】


【0050】

【0051】
表1は平均体脂肪率の変化、表2は平均体重の変化を示す。試験群、対照群共に体重の有意な変化はみられなかった。体脂肪率において、試験群は27.6%から26.6%へと体脂肪の3.6%の低下を示し、対照群は26.6%から26.8%へと変化したのみで有意な差は見られなかった。この結果より、アスタキサンチンを摂取することによって、体脂肪率が減少することは明かである。
【0052】
[製造例1] 錠剤
下記成分を下記組成比(重量%)で均一に混合し、1粒200mgの錠剤とした。
アスタリールP2 50%
乳糖 48%
重質酸化マグネシウム 2%
アスタリールP2[商標、富士化学工業(株)製]はアスタキサンチン遊離体換算で2%を含有する粉末である。
【0053】
[製剤例2] カプセル剤
下記成分からなるソフトカプセル剤皮180mgの中にアスタリール50Fの20mgを常法により充填し、1粒200mgのソフトカプセルを得た。
ゼラチン 70%
グリセリン 23%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.5%
水 適量
計 100%
【0054】
[製剤例3] ドリンク剤
下記成分を配合し、常法に従って、水10kgを加えてドリンク剤を調製した。
アスタリール50F 5g
液糖 4kg
DL−酒石酸ナトリウム 1g
クエン酸 50g
ビタミンC 50g
ビタミンE 150g
シクロデキストリン 25g
塩化カリウム 5g
硫酸マグネシウム 2g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンを含有することを特徴とする体脂肪減少用組成物。
【請求項2】
(A)アスタキサンチン、(B)水溶性添加剤及び/又は水不溶性添加剤を含有することを特徴とする体脂肪減少用組成物。
【請求項3】
水溶性添加剤及び/又は水不溶性添加剤が活性酸素除去剤、増量剤及び崩壊剤のいずれかの一種または二種以上である請求項2に記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項4】
医薬品である請求項1〜3のいずれかに記載の体脂肪減少用組成物。
【請求項5】
食品である請求項1〜3のいずれかに記載の体脂肪減少用組成物。

【公開番号】特開2007−238441(P2007−238441A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382296(P2004−382296)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(390011877)富士化学工業株式会社 (53)
【出願人】(505010320)鈴鹿回生病院 (1)
【Fターム(参考)】