説明

アスパラガス擬葉を有効成分とする自律神経調整剤

【課題】安全かつ効果的に自律神経を調整することができ、自律神経失調症の予防又は改善、睡眠状態を効果的に改善できる自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又は食品素材、及び前記自律神経調整剤を自律神経失調症の予防又は改善用、及び睡眠改善用として食品又は食品素材に含有する使用方法を提供すること。
【解決手段】アスパラガス擬葉や、その処理物(粉砕処理物、細断処理物、乾燥処理物、焙煎処理物、抽出処理物、超音波ホモゲナイズ処理物、凍結処理物の他、これらの処理の組み合わせにより得られる処理物)、好ましくは乾燥粉末を有効成分として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラガス擬葉を有効成分とする自律神経調整剤に関し、より詳細には、該アスパラガス擬葉又はその処理物を有効成分とする自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、睡眠改善剤、自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又は食品素材、及びアスパラガス擬葉又はその処理物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自律神経系は、各種内臓、血管、腺などに広く分布し、付随的に各臓器を調節することにより、外的内的環境に対して合目的に一定の状態homeostasis(ホメオスタシス)を維持する機能を果たしている神経系であり、植物神経系ともいわれている。自律神経系には交感神経系と副交感神経系の2系統があり、自律神経系は両者のバランスによりコントロールされている。すなわち、身体が活動している時は交感神経の活動が優位となり、全身が緊張した状態となる。逆に、副交感神経の活動が優位な時は身体の緊張がとれ、くつろいでいる状態となる。また、ストレスにより自律神経活動の乱れが長期に続くと様々な身体的障害が生じてくることが知られている。自律神経活動の乱れとは、交感神経活動が優位な状態あるいは副交感神経活動が優位な状態を意味するが、特に現代社会においては、交感神経活動の優位な状態が持続することによる健康障害が問題視されている。
【0003】
交換神経と副交感神経のバランスは、ヒトにおける心の状態とも密接に関連することがわかってきた。たとえばうつ状態では、リラックス時に活動が亢進するはずの副交感神経の活動が低下しているが、快癒すると、リラックス時には副交感神経が優位に働く正常なバランスを取り戻す。また、過度なストレスにさらされると、やはり副交感神経がうまく機能せず、交感神経の活動が亢進を続け、不眠等の体調不良を引き起こすこともわかってきた。他の症状としては、頭痛、めまい、疲労感、ふるえ、四肢冷感、発汗異常、動悸、息切れ、胸部圧迫感、胸痛、食欲不振、胃部膨満感、便秘、下痢など多彩である。近年では、副交感神経活動低下が冠動脈性心疾患や突然死の重要な危険因子である事が指摘されている。自律神経系の機能低下によって起こる様々な愁訴は自律神経失調症と呼ばれ、正常な日常生活の維持向上に著しい悪影響を及ぼす。
【0004】
前記各症状や疾患ごとに対症的に治療が行なわれているのが実状であって、根本的な原因である自律神経活動そのものをコントロールする方法はとられていない。対症療法は一時的にその病態そのものを改善することができるが、服薬を中止すれば再発し、また、服薬を継続していれば、一つの疾患は改善したとしても、根本原因である自律神経の乱れや自律神経活動低下による他の疾患が発症する場合も多い。そこで、根本原因である自律神経活動そのものをコントロールする医薬品あるいは健康食品が求められていた。つまり、何らかの要因により亢進した交感神経活動もしくは副交感神経活動を抑制したり、低下した交感神経活動もしくは副交感神経活動を上昇させることにより、交感神経活動優位な状態、副交感神経活動優位な状態、全体的に自律神経活動が亢進した状態もしくは低下した状態を回復させる作用を有する有効成分化合物、物質又は天然物が得られれば、種々の疾患の予防的観点からも利用価値はきわめて高い。
【0005】
従来、自律神経失調症、不安症、うつ病の予防・治療剤に用いる有効成分化合物は種々提案されており、また、天然に由来する物質がヒトには安心感を与え、古くは生薬として多く知られている。動植物に由来するものとしては、薬用ニンジンの粗サポニンを有効成分とする自律神経失調症を伴うストレス症状の回復剤(例えば、特許文献1参照)や、天然素材から通常の方法によって抽出することにより得られるドコサヘキサエン酸及び/又はエイコサペンタエン酸等のn−3系高度不飽和脂肪酸を構成成分として含むリン脂質を有効成分として含有する交感神経の興奮抑制剤(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0006】
また、テアニン(茶からの抽出物)と、ハーブ、GABA及びパラチノースからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有する抗ストレス及びリラックス用組成物(例えば、特許文献3参照)や、カルノシン及びアンセリンを含む鶏肉抽出物を含有する学習機能向上効果及び抗不安効果を有する機能性食品(例えば、特許文献4参照)や、マツリカ(茉莉花、jasmin sambac)の抽出物、3−メチルオクタノ−4−ラクトン、ボルニルアセテート、及びタイム(thymus vulgaris)の水蒸気蒸留物から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする自律神経調整剤(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0007】
さらに、リラックス効果がある飲料水としては、硬度が60〜2000の水を含む、リラックス効果を有する飲料水(例えば、特許文献6参照)が知られている。
【0008】
他方、アスパラガスの茎・擬葉を利用した技術としては、グリーンアスパラガスの茎の部分を乾燥、粉砕、焙煎してなるアスパラガスを原料とした粉末茶や、該粉末茶にアスパラガスの擬葉を同様に乾燥、粉砕、焙煎してなる粉末葉茶を配合した配合茶(例えば、特許文献7参照)や、ルチン及び1g乾燥重量あたり少なくとも100mgの糖類を含むアスパラガス(Asparagus)属植物の擬葉組織の乾燥粉末(例えば、特許文献8参照)が知られている。
【0009】
一方、アスパラガス擬葉を有効成分とする自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、睡眠改善剤等は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭62−44526号公報
【特許文献2】特開2004−67537号公報
【特許文献3】特開2005−232045号公報
【特許文献4】国際公開2007−116987号公報
【特許文献5】特開2009−235015号公報
【特許文献6】特開2009−274980号公報
【特許文献7】特開昭63−273462号公報
【特許文献8】国際公開第2006−22338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、安全かつ効果的に自律神経を調整することができ、自律神経失調症の予防又は改善、睡眠状態を効果的に改善できる自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又は食品素材、前記自律神経調整剤を自律神経失調症の予防又は改善用及び睡眠改善用として食品又は食品素材に含有する使用方法、及び自律神経失調症の予防又は改善用、及び睡眠改善用としての食品又は食品素材の製造における使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、アスパラガスの栽培が盛んな北海道で、アスパラガスの収穫後、先端より25cm以下の茎や、成長したグリーンアスパラガスに繁った葉(擬葉)が大量に廃棄されていることに注目し、前記擬葉には、以前からルチンの含有量が多いことが知られてはいたが、さらにアスパラガス擬葉の有効な用途を開発するべく鋭意検討した結果、アスパラガス擬葉又はその処理物を軽度のうつ病と診断された人や、不定愁訴の症状をもつ人、不眠症を訴える人などに投与したところ、前記症状が改善されたことから、さらに研究を進めた結果、自立神経失調症、不眠症など自律神経系統における疾患の予防、改善に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は(1)アスパラガス擬葉を有効成分とすることを特徴とする自律神経調整剤や、(2)アスパラガス擬葉を有効成分とすることを特徴とする自律神経失調症の予防又は改善剤や、(3)アスパラガス擬葉を有効成分とすることを特徴とする睡眠改善剤に関する。
【0014】
また、本発明は(4)アスパラガス擬葉を有効成分として含有することを特徴とする自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用の機能性食品又は食品素材や、(5)アスパラガス擬葉の、自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用の機能性食品又は食品素材の製造における使用に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自立神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、睡眠改善剤、自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又は食品素材は、その使用において副作用がなく、また個体の感受性や嗜好性に左右されずに自律神経を鎮静的に調整でき、自律神経のバランスが崩れて交感神経が過度に優位な状態にある人たちに対して、食欲不振、高血圧、頭痛、肩こり、のぼせ、イライラなど、自律神経失調による様々な症状や、不眠症などに対して安全かつ効果的に改善することができる。また、本発明は、アスパラガス擬葉の廃棄物の有効利用と、廃棄物の軽減という面から自然環境になんら影響を及ぼすことなく、むしろエコ対策に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】服用したサンプル毎の起床時睡眠感点数を示す。サンプルAは、比較例のデキストリンを、サンプルBは、本発明の自律神経調整剤であるアスパラガス擬葉粉末を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、及び睡眠改善剤としては、アスパラガスの擬葉を有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、上記自律神経調整剤における作用としては、疲労感、倦怠感、不眠、頭重感、発汗などの身体症状があるものの、不安感などの精神症状はあまりなく、抗不安薬を使うほどではない症状に対して改善するものであり、また、自律神経失調症には、個人差があるものの、自律神経のバランスが乱れ、自律神経系(各器官である、例えば頭、耳、口、のど、心臓・血管系、呼吸器、消化器、手、足、皮膚、泌尿器、生殖器、筋肉・関節における自律神経系)において多種類の自覚症状があり、具体的に、頭痛、耳鳴り、動悸、息詰まり、吐き気、多汗、手のしびれ、足の冷え性、頻尿、肩こり、関節の痛み、そのほか全身症状として倦怠感、疲れやすさ、めまい、のぼせ、食欲不振等の症状があり、精神症状としては、不安になる、恐怖心におそわれる、イライラする、落ち込む、怒りっぽい、集中力がない、やる気がない、記憶力や注意力が低下する症状があり、これらの症状に対して本発明は、予防又は改善するものである。また、睡眠改善剤は、眠れない、すぐ目が覚める、起きるのがつらい等の症状を改善するものである。
【0018】
アスパラガス擬葉は、可食部の若茎が伸びた後、枝分かれしてできる茎で、葉に代わり光合成で養分を作る。露地栽培なら5、6月ごろに若茎の大半を収穫するが、翌年用に養分を根に蓄えるため一部をそのまま残し、擬葉に成長させる。本発明での利用対象は成長させることによって出現する、先端が松葉のような形をしたこの擬葉である。
【0019】
アスパラガス属植物は、ユリ科の多年草で、南ヨーロッパからウクライナが原産地であり、ヨーロッパの他、アフリカ、アジアなど広く分布している。一般に「アスパラガス」と称され、食用として利用されているものは、アスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis、和名オランダキジカクシ)であるが、その他にもA.asparagoides(クサナギカズラ)、A.cochinchinensis(クサスギカズラ)、A.plumosus(シノブボウキ)、A.myrioclaudus(タチボウキ)等が、食用、観葉、漢方などに利用されている。本発明におけるアスパラガス擬葉としては、アスパラガス・オフィシナリスの擬葉を好適に例示することができる。
【0020】
アスパラガスの若茎には、ルチン、サポニン、フラクトオリゴ糖や食物繊維などの機能性物質が含まれている。これらの物質の中には抗酸化作用や、抗腫瘍活性などがあることが知られている。また、アスパラガス擬葉のルチン含量は普通ソバの100〜200倍と高く、しかもソバアレルギーの心配がないことと、抹茶のようなきれいな緑色とほのかな甘味のある淡いアスパラ風味を有することから、飲食品素材として利用可能であることも知られている。
【0021】
本発明におけるアスパラガス擬葉には、擬葉そのものや、その処理物が含まれる。その処理物としては、アスパラガス擬葉の粉砕処理物、細断処理物、乾燥処理物、焙煎処理物、抽出処理物、超音波ホモゲナイズ処理物、凍結処理物の他、これらの処理の組み合わせにより得られる処理物を挙げることができる。例えば、アスパラガスのピューレの製造法は概略次の通りである。晩夏まで栽培して発生した擬葉を洗浄して付着している土砂、すす等を除去した後、食品用カッターにより細断し、この細断物に水を加えて電動石臼等で所定の粒度になるまで摩砕して、得られるペースト状の溶液を低温濃縮機で濃縮する。この濃縮物(ピューレ)は濃い緑色の粥状を呈し、そのままで、あるいは他の賦形剤等を配合して、本発明の自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、睡眠改善剤、あるいは自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又食品素材として好適に利用できる。
【0022】
また、アスパラガス擬葉の乾燥粉砕処理物の製造法は概略次の通りである。アスパラガスの擬葉を食品用カッターにより細断し、細断された擬葉を、凍結乾燥機、減圧乾燥機、通風乾燥機などから選ばれる乾燥機を用いて温和な条件で乾燥させ、得られた乾燥アスパラガス擬葉を用途に応じた粉砕機で粉末化する。更に、例えば、ターボミル(ターボ工業株式会社)等の微粉砕機を用いて微粉末化することもできる。乾燥粉末は、そのままで、あるいは他の賦形剤等を配合して、本発明の自律神経調整剤あるいは自律神経失調症の予防又は改善剤、自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又は食品素材の原料として好適に利用することができる。乾燥粉末は、上記ピューレに比べて多分野での応用が可能となる。
【0023】
その他のアスパラガス擬葉の処理物として、アスパラガスの擬葉を細断したもの、あるいはその乾燥物、アスパラガスの擬葉を液状にしたもの(ジュース)、あるいはその乾燥物などを例示することができ、これらはそのままで、あるいは他の賦形剤等を配合して、本発明の自律神経調整剤あるいは自律神経失調症の予防又は改善剤、自律神経失調症の予防又は改善用機能性食品又は食品素材として用いることができる。
【0024】
本発明の自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、睡眠改善剤の剤型としては、粉剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤などを挙げることができ、通常サプリメントや医薬組成物として、経口的に投与する。また、これらの剤型は、従来から知られている通常の製剤方法で製造することができる。例えば、製剤の製造上許可される担体、賦形剤、香料、乳化剤、防腐剤、分散剤等と混合して成型する。また、必要に応じてさらに他の有効成分を配合することもできる。上記賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、セルロース、メチルセルロース、澱粉などがあげられる。
【0025】
本発明の自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用の機能性食品又は食品素材としては、アスパラガス擬葉そのものや、前記のアスパラガス擬葉の処理物を有効成分として含有し、自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用である点において、他のアスパラガス擬葉含有食品又は食品素材と、製品として区別しうるものであれば特に制限されず、ここで製品として区別しうる例として、食品や食品素材の包材に自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用の機能がある旨の表示の有無等を挙げることができる。このような機能性食品又は食品素材の製法としては、例えば、アスパラガスの擬葉を細断したもの、あるいは、その乾燥物、アスパラガスの擬葉を液状にしたもの(ピューレ、ジュース等)、あるいはその乾燥物、アスパラガスの擬葉を粉末化したものを、食品や食品素材に添加したり、或いは製造工程又は製造後に添加・配合する方法を挙げることができる。前記食品の対象としては特に制限されるものではなく、クッキー、パン、ケーキ、煎餅などの焼き菓子、ラムネ菓子等などの錠菓、羊羹などの和菓子、プリン、ゼリー、アイスクリーム類などの冷菓、チューインガム、キャンディ等の菓子類や、クラッカー、チップス等のスナック類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、チーズ、バターなどの乳製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ、スープ、シチュー等の各種総菜や、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料などを具体的に例示することができる。
【0026】
本発明の自律神経調整剤、自律神経失調症の予防又は改善剤、睡眠改善剤の投与量は、年齢、治療効果及び病態等により異なり、特に限定されないが、アスパラガスの擬葉を一日当たり乾燥重量として1〜300g、好ましくは2〜10g摂取できるよう配合量等を調整すればよい。アスパラガス擬葉は、前述のとおり、種々の剤型で、また種々の食品、飲料等に添加して服用することができるが、特に飲料の形で服用する場合は、水と共に服用すると抹茶風味となるが、好みによりスポーツ飲料、牛乳、豆乳等と共に服用してもよい。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
(アスパラガス擬葉ピューレの調製)
収穫したアスパラガス擬葉の夾雑物を除き、洗浄後、水切りし、食品用カッター(スライサーOV型、アーシェル社製)で2〜3cmに細断した。この細断物に3倍量の水を加えて、電動石臼(マスコロイダー、増幸産業株式会社製)で、所定の粒度になるまで2回摩砕した。ペースト状の溶液を低温濃縮機(エバポール、大川原製作所製)に入れ、液温35℃、Bx15程度まで濃縮し、さらに、55℃で15分間加熱し、アスパラガス擬葉濃縮液を調製した。製品は濃い緑色の粥状を呈し、水分含有に見合うルチン、糖を含有していた。収量は150%であった。この濃縮液は、このままで、あるいは、瓶、缶、紙容器などに充填して、本発明の自律神経調整剤として使用できる。また、自律神経失調症の予防又は改善用、及び睡眠改善用として食品又は食品素材の原料として配合することができる。凍結保存も可能である。
【実施例2】
【0029】
(アスパラガス擬葉凍結乾燥粉末の調製)
収穫したアスパラガス擬葉の夾雑物を除き、洗浄後、水切りし、食品用カッター(スライサーOV型、アーシェル社製)で2〜3cmに細断した。この細断物を−40℃で予備凍結し、さらに真空凍結乾燥機(協和真空技術(株)製)を用いて、乾燥時棚加熱温度30℃、乾燥時間48時間で凍結乾燥した。収量は24%であった。乾燥したアスパラガス擬葉をターボミル(ターボ工業株式会社)で粉砕し、粉末にした。この粉末は、このままで、あるいは、瓶、缶、紙容器などに充填して、本発明の自律神経調整剤として、また、各種剤型の自律神経調整剤に使用できる。
【実施例3】
【0030】
[顆粒(以下、配合割合は質量%で表す)]
(1)スクラロース 0.1
(2)自律神経調整剤(実施例2の乾燥粉末) 0.5
(3)香味料 5.0
(4)賦形剤(セオラス) 10.0
(5)マルチトール 残余
【実施例4】
【0031】
[錠剤(チュアブルタイプ)]
(1)イノシトール 11.0
(2)マルチトール 15.0
(3)スクロース 0.5
(4)鮭白子抽出物(DNA Na) 0.1
(5)酵母抽出物 0.1
(6)自律神経調整剤(実施例2の乾燥粉末) 0.5
(7)香味料 5.0
(8)賦形剤 残余
【実施例5】
【0032】
[タブレット]
(1)潤沢剤(ショ糖脂肪酸エステル等) 1.0
(2)アラビアガム水溶液(5%) 2.0
(3)酸味料 1.0
(4)着色料 適量
(5)自律神経調整剤(実施例2の乾燥粉末) 1.0
(6)糖質(粉糖又はソルビトール等) 残余
【実施例6】
【0033】
[キャンディー]
(1)砂糖 57.5
(2)水飴 40.0
(3)有機酸 2.0
(4)自律神経調整剤(実施例2の乾燥粉末) 0.5
【実施例7】
【0034】
[ガム]
(1)砂糖 33.0
(2)ガムベース 30.0
(3)グルコース 10.0
(4)水飴 16.0
(5)自律神経調整剤(実施例2の乾燥粉末) 1.0
【実施例8】
【0035】
(ヒトモニター試験による睡眠改善実験)
(対象)
1)自律神経失調症状関連の医薬品を服用していない、2)試験期間中、自律神経調整剤(実施例2のアスパラガス擬葉乾燥粉末)を毎日服用し、起床時に起床時アンケートを記入できる、この2条件を満たす9名を被験者として選定した。
(試験サンプル)
試験サンプルとして、サンプルA(デキストリン)、サンプルB(自律神経調整剤:実施例2のアスパラガス擬葉乾燥粉末)の2種類を用意し、外観からはこの2種類の試験サンプルの色調が区別がつかないカプセルに、それぞれ250mg/粒となるように詰めた。
【0036】
(試験方法)
乱数により2群に分けた被験者に、試験開始0日目から7日目は非服用期間として試験サンプルはなにも服用させず、8日目から21日目までは第一服用期間として試験サンプルAもしくはBを1日1回8粒、夕食後30分以内に水またはお湯で服用してもらった。試験開始22日目から28日目までは非服用期間とし、29日目から42日目までは第二服用期間として、第一服用期間で試験サンプルAを服用した被験者群には試験サンプルBを、試験サンプルBを服用した被験者群には試験サンプルAを同様の方法で服用してもらった。
試験は、被験者及びデータ解析者が、第一服用期間、第二服用期間に試験サンプルA、Bのどちらを被験者が服用したか判らないように行い、データの公平性を保った。
【0037】
就寝、起床、睡眠時間、飲酒量、服用薬物の名称及び起床時睡眠感調査表より抜粋した起床時の睡眠感に関する5項目である(1)起床時に疲れが取れている、(2)ぐっすり眠れた、(3)起床時頭がはっきりしている、(4)寝付が良かった及び(5)睡眠中に目が覚めることがなかった、について状況を記載する調査表を作成し、被験者に、試験期間中毎朝起床時直ちに状況を記入してもらった。起床時の睡眠感に関する5項目については、5段階評価の該当する箇所に○をつけてもらった。
【0038】
(服用による睡眠改善効果)
起床時の睡眠感に関する5項目についての5段階評価において、最も睡眠感が快適であった場合を10点、最も不快であった場合を−10点として期間中の睡眠感を数値化した。被験者毎に服用期間の睡眠感点数を平均した。
各被験者の睡眠感点数結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
第一服用期間と第二服用期間の平均点数を比較し、有意差検定を行った。図1にサンプル毎の起床時睡眠感点数を示す。サンプルA(デキストリン)服用期間とサンプルB(自律神経調整剤)服用期間では、実施例2のアスパラガス擬葉乾燥粉末であるサンプルB服用期間で睡眠感の有意な改善が認められた(p=0.0134)。
【実施例9】
【0041】
(症状;軽度うつ病、28歳、女性)
軽度のうつ病と診断され2年間近く薬物治療し、現在は市販パロキセチン塩酸塩20mg1錠/日にて治療中である。決められた服用量ではなく、2週間分の薬を3週間ぐらいで服用し、薬の服用を中止したいとの本人の希望もあって、アスパラガス擬葉を併用して様子をみた。アスパラガス擬葉の服用方法として、アスパラガス擬葉(実施例2の乾燥粉末)2g/日を清涼飲料水500mlに溶解懸濁させて飲用した。1週間後ぐらいで体がずいぶん楽になり、2週間を過ぎたぐらいから市販パロキセチン塩酸塩を飲むと異常にだるさ、眠気がでてきたため市販パロキセチン塩酸塩の服用を中止し経過をみた。ほぼ1ヵ月後薬の服用を完全に中止し、現在はアスパラガス擬葉と牡蠣抽出物含有錠剤6錠を服用中で回復の兆しが出てきた。
【実施例10】
【0042】
(症状;不眠、不安症、食欲不振、33歳、男性)
2年か3年前ぐらいから眠れない、急な不安感、食欲なしの症状があり、心療内科を受診し、現在、市販ミルナシプラン塩酸塩15mg2錠/日、市販ブロチゾラム1錠/日、市販クロキサゾラム1mg1錠/日を服用中で、それなりに安定しているが、日中の不安感は、まだあるためジアゼパム0.3g/日を頓服で使用していた。清涼飲料水500mlに溶解懸濁させたアスパラガス擬葉(実施例2の乾燥粉末)2g/日と市販の栄養・総合ビタミン剤4gを1日1〜2回摂取することにより、1週間後ぐらいから睡眠中に全く夢を見ることがなくなり、2週間ぐらいで自然な食欲を感じるようになってきた。アスパラガス擬葉とビタミン剤の飲用2ヶ月ぐらいで、薬をほとんど服用しないにもかかわらず、体調も睡眠状態も良好である。
【実施例11】
【0043】
(症状;食欲不振、うつ状態、32歳、女性)
市販のフルボキサミンマレイン酸塩25mg2錠/日、市販のクロキサゾラム1mg1錠/日を服用していたが、清涼飲料水500mlに溶解懸濁させたアスパラガス擬葉(実施例2の乾燥粉末)2g/日を摂取したところ、食欲・やる気が戻り、薬を減量していき、現在は服用していない。
【実施例12】
【0044】
(症状;下痢、食欲不振、38歳、男性)
食欲不振、体がだるく、何もやる気がない状態であり、何らかの胃腸病であると考え、内科を受診したが異常なしと判定され、精神科を受診した。精神科の処方薬を飲んでも眠くなるだけで改善せず、毎日ERABU6錠と市販の栄養・総合ビタミン剤、漢方薬(睡眠、安定剤)6錠を併用していたものの、毎日仕事に行くのがつらく、不安に駆られる日々を過ごしていた。投薬と並行して、清涼飲料水500mlに溶解懸濁させたアスパラガス擬葉(実施例2の乾燥粉末)2g/日を服用したところ、1週間で体が楽になった。
【実施例13】
【0045】
(症状;下痢、食欲不振、26歳、女性)
兄弟での会社経営によるストレスが原因となり、1日中イライラし、食欲も不振であり、体がだるく、何もする気にならない。何らかの胃腸病であると考え、内科を受診したが異常なしと判定された。しかし、どうしても1週間後の大学時代の友人たちとの富士山登山には行きたいと、この1週間は、食事は1日1食それもおかゆ程度の量をとり、それまでは、市販の栄養・総合ビタミンドリンク剤、牡蠣抽出物含有錠剤6錠などを服用していたが、登山の1週間前から、清涼飲料水500mlに溶解懸濁させたアスパラガス擬葉(実施例2の乾燥粉末)2g/日と漢方薬(牛黄精心元)3/4を追加服用したところ、すぐに食欲が出て、富士登山では、悪天候で皆が途中リタイアする中で唯一ひとり頂上まで登ることができ、元気に戻ってきた。
【実施例14】
【0046】
(症状;下痢、食欲不振、30歳代、男性)
下痢と腹痛、胃痛などで、胃カメラや大腸ファイバーなどの検査を受けても全く異常なしと判定された。夜も寝つきが悪く、朝はいつまでもだらだらと横になっている状態であった。市販の栄養・総合ビタミン剤と、清涼飲料水500mlに溶解懸濁させたアスパラガス擬葉(実施例2の乾燥粉末)2g/日と、市販の整腸薬3包/日とを併用したところ、1週間で元気になる。下痢も軟便になり、回数も1回ぐらいまで減少した。胃痛も薄らぎ、食欲も出てきた。夜も気がつけば寝ており、朝から食事が食べられるようになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラガス擬葉を有効成分とすることを特徴とする自律神経調整剤。
【請求項2】
アスパラガス擬葉を有効成分とすることを特徴とする自律神経失調症の予防又は改善剤。
【請求項3】
アスパラガス擬葉を有効成分とすることを特徴とする睡眠改善剤。
【請求項4】
アスパラガス擬葉を有効成分として含有することを特徴とする自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用の機能性食品又は食品素材。
【請求項5】
アスパラガス擬葉の、自律神経失調症の予防若しくは改善用、あるいは睡眠改善用の機能性食品又は食品素材の製造における使用。

【図1】
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【公開番号】特開2011−153125(P2011−153125A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183967(P2010−183967)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【特許番号】特許第4669077号(P4669077)
【特許公報発行日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(598043054)日生バイオ株式会社 (21)
【Fターム(参考)】