説明

アスファルト合材製造所におけるエポキシアスファルト合材の製造方法

【課題】アスファルト合材においてエポキシ樹脂に生じるブロッキング、エポキシ樹脂と硬化剤の反応性の高いことによる硬化時間の速さという課題がある。
【解決手段】アスファルト合材製造所でエポキシアスファルト合材を製造する際に、エポキシ当量400〜600、融点70℃以下のエポキシ樹脂100重量部に対して、酸化鉄顔料5〜10重量部、滑石粉4〜10重量部を混合した主剤と、ヨウ素価が35〜60の脂肪族一級アミンである硬化剤24〜36重量部とを別々に梱包し、梱包した主剤と硬化剤とをアスファルト合材製造機に投入することによるアスファルト合材製造所におけるエポキシアスファルト合材の製造方法を提供することで解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト合材製造所におけるエポキシアスファルト合材の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト合材製造所で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と硬化剤を混ぜたエポキシアスファルト合材を作ると、エポキシ樹脂と硬化剤が反応して可使時間が短くなり、舗設に支障を生じる。
【0003】
そのためアスファルト合材製造所でアスファルトにエポキシ樹脂を投入した中間混合物を作り、舗設現場でこの中間混合物に、硬化剤を混合する方法が採られている。(特開昭55-145749 参照)
【0004】
かかる方法は、計量、撹拌等樹脂を直接に手に触れる機会が多く、合材製造者の労働安全衛生で問題があり、合材製造者の熟練を必要とした。
【0005】
また一般合材製造温度(160℃)で、通常の可使時間3時間を確保すると、初期動的安定度の発現性が遅く、アスファルト合材の舗設後の交通開放までの時間が長く、工事渋滞の原因となっていた。
【0006】
これらを改良するため、アスファルト合材製造所において、アスファルト合材製造機を用いて、フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂と硬化剤を混ぜたアスファルト合材の製造方法が提案されるようになった。(特開2003-26929 参照)
【0007】
しかしながら,品質管理上にも幾つかの課題があり、フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂のうち、融点の高い樹脂では、一般合材製造温度とミキサ混合時間から溶融しないものがあり、また、融点の低い樹脂の中には、気温が20℃以上になると溶ける性質があるため、保管や輸送中に相互に融着し、大きな固まりとなってしまうブロッキング現象を生じるものもあった。
【0008】
大きな固まりとなった状態で、その固形エポキシ樹脂を合材製造機に投入してしまうと所定の混合時間(1〜2分間)では溶融しないため、混合時間を2〜3倍にしたり、あるいは投入時にハンマー等で細かく再粉砕するなどの手段を講じなければならないため、合材の生産性が著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭55−145201号公開公報
【特許文献2】特開昭55−145749号公開公報
【特許文献3】特開2003−26929号公開公報
【特許文献4】特開2003−64156号公開公報
【特許文献5】特開2004−92373号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような一般合材製造温度(160℃)で通常の可使時間を確保できないことによる工事渋滞、フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂に生じるブロッキング現象、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と硬化剤の反応性の高いことによる硬化時間の速さという課題を以下述べるところにより解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
まずは、アスファルト合材製造所で、アスファルトをバインダーとするアスファルト合材を製造する際に、エポキシ当量400〜600、融点70℃以下のフレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂100重量部に対して、酸化鉄顔料5〜10重量部、滑石粉4〜10重量部を混合した主剤と、ヨウ素価が35〜60の脂肪族一級アミンである硬化剤24〜36重量部とを、別々に梱包し、梱包した主剤と硬化剤とをアスファルト合材製造機に投入することを特徴とするエポキシアスファルト合材の製造方法を提供する。
【0012】
上記において、アスファルトバインダー100重量部に対して、主剤と硬化剤との合計の量は10〜30重量部であることが好ましい。
【0013】
上記において、梱包は160℃±20℃で融解する容器又はアスファルト合材製造機内に混入したときに粉砕可能である陶磁製容器によることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
エポキシ当量が400〜600、融点70℃以下のビスフェノールA型固形エポキシ樹脂の外観は、氷砂糖のように白色、半透明のフレーク状(例:タテ×ヨコ×アツサ=20mm×10mm×5mm程度)に粉砕してあり、使用にもっとも適しているが、気温が20℃以上になると溶ける性質があるため、保管や輸送中に大きな固まりとなるブロッキング現象を生じる。
【0015】
請求項1乃至請求項3において、フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂100重量部に対して、滑石粉4〜10重量部を混合した主剤は、製造されたアスファルト合材の性能を損なうことなく、ブロッキング現象を防止することができ、また、ブロッキング現象を生じても崩れやすく、割れやすいため、アスファルト合材製造機内で容易に分散することができる。
【0016】
フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂に滑石粉を混合すると(フレーク状の)固形エポキシ樹脂の周りは滑石粉でコーティングされる。滑石粉は白色であり、(フレーク状の)固形エポキシ樹脂も白色であることから、(フレーク状の)固形エポキシ樹脂全体が滑石粉でコーティングされたか否かを判別できない。
【0017】
請求項1乃至請求項3において、フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂100重量部に対して酸化鉄顔料5〜10重量部を加えることで目視によるコーティングの効果を確認できる。
【0018】
請求項1乃至請求項3において、予め計量した主剤と硬化剤とを別々に梱包して、合材製造機に投入するので、計量、撹拌等樹脂を直接に手に触れる機会がなく、合材製造者の労働安全衛生上でも問題がなく、合材製造者の熟練を必要としない。
【0019】
請求項2において、アスファルトバインダー100重量部に対して、主剤と硬化剤の合計量を10〜30重量部とすることで、アスファルト合材の靭性、水密性が向上する。
【0020】
請求項3において、主剤と硬化剤の梱包に160℃±20℃で融解する容器や粉砕可能な陶製容器、磁製容器を用いることで、計量、撹拌等樹脂を直接に手に触れる機会がなく,容易にエポキシアスファルト合材が製造でき,エポキシアスファルト合材の性能にも影響を与えない。陶製容器、磁製容器の場合には合材製造機内で粉砕後はエポキシアスファルト合材の骨材となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に用いられる滑石粉としては、中国産,韓国産,ロシア産等があり、酸化鉄顔料としては、赤色酸化鉄,黒色酸化鉄等がある。
滑石は世界各地で産出するが、国内産は鉄粉などの不純物が多く,白色度が劣るため,高品位の中国産,韓国産,ロシア産が多く使用されている。
【実施例】
【0022】
フレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂からなる主剤(エポキシ当量475、融点68℃)とヨウ素価が35の脂肪族一級アミンからなる硬化剤を主剤10:硬化剤3重量比の割合で別々の低密度ポリエチレン製容器(融点100〜115℃)に封入し、アスファルト(例えばストレートアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、改質アスファルト、トリニダットアスファルト等)と骨材とを合材製造機であるミキサで混練するときに、投入されるアスファルト100重量部に対して、主剤と硬化剤との合計量として、7,14,21,28重量部を投入し,初期動的安定度(60℃、3時間養生)と完全硬化時(60℃、6日間養生)の安定度を調べた。混練はミキサの室内温度160℃でウエットミキシングを90秒間に統一して行った。このようにして製造されたアスファルト合材は、舗設を3時間後に行うことができた。
【0023】
上記実施例において、酸化鉄顔料、滑石粉をフレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂100重量部に対して酸化鉄顔料、滑石粉を10重量部を超えて配合すると粉だけの固まりがみられた。また、5重量部と10重量部との間では、まんべんなくフレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂をコーティングし、ブロッキング防止の効果が発揮された。
【0024】
上記実施例において、主剤100に対して硬化剤を24重量部よりも少なく配合した場合には、反応しない主剤が、36重量部よりも多く配合した場合には、反応しない硬化剤が合材中に取り残されて、いずれの場合も初期安定度や完全硬化時の動的安定度が低くなり、耐水、耐久性を著しく低下させることが分った。
【0025】
また、硬化剤において、脂肪族一級アミンのヨウ素価が、35未満の場合は、反応が速くなって可使時間が確保できず、60を超えると反応が遅くなりすぎてアスファルト合材の舗設時間が確保できないことが分った。
【0026】
上記実施例において、投入されるアスファルト100重量部に対して、主剤と硬化剤との合計量が10重量部以上で,初期動的安定度は3000回/mm以上を示し,また15重量部以上で完全硬化時の動的安定度も10000回/mm以上を満足することができると判った。この結果をから,アスファルト100重量部に対して、主剤と硬化剤との合計量を15重量部としたアスファルト合材を舗設し,3時間後に交通開放したが、初期のわだち掘れは生ぜず,良好な平坦性が確保できた。
【0027】
幾つかのバリエーションを下表に示す。

【0028】
アスファルトバインダー100重量部に対して主剤と硬化剤の合計重量5重量部としたアスファルト合材は、初期安定度、完全硬化時の動的安定度のいずれも低いことが分った。
【0029】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものでないことはもちろんである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト合材製造所でアスファルトをバインダーとするアスファルト合材を製造する際に、エポキシ当量が400〜600、融点70℃以下のフレーク状に粉砕されたビスフェノールA型固形エポキシ樹脂100重量部に対して、酸化鉄顔料5〜10重量部、滑石粉4〜10重量部を混合した主剤と、ヨウ素価が35〜60の脂肪族一級アミンである硬化剤24〜36重量部とを、別々に梱包し、梱包した主剤と硬化剤とをアスファルト合材製造機に投入することを特徴とするアスファルト合材製造所におけるエポキシアスファルト合材の製造方法。
【請求項2】
アスファルトバインダー100重量部に対して、主剤と硬化剤の合計量を10〜30重量部とすることを特徴とする請求項1に記載のアスファルト合材製造所におけるエポキシアスファルト合材の製造方法。
【請求項3】
梱包は、160℃±20℃で融解する容器、アスファルト合材製造機に投入したとき粉砕可能な陶製又は磁製の容器によることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のアスファルト合材製造所におけるエポキシアスファルト合材の製造方法。

【公開番号】特開2012−229298(P2012−229298A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96891(P2011−96891)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(591063464)ショーボンド化学株式会社 (1)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【Fターム(参考)】