説明

アスファルト粘着剤用ブロック共重合体及びアスファルト粘着剤組成物

【課題】溶融粘度が低く加工性に優れ、且つ粘接着剤性能特に軟化点と低温接着力とのバランスに優れ、基材との密着性に優れるアスファルト粘着剤組成物の提供。
【解決手段】ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であって、(イ)ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で6万〜25万、(ロ)ブロック共重合体中における全結合ビニル芳香族炭化水素含有量が10〜40重量%、(ハ)共役ジエン重合体ブロック中のビニル結合量が30%未満であるアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アスファルト粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルトルーフィング・防水シートの施工においては、加熱溶融アスファルトで基材に貼り付け積層していく、いわゆる熱工法が主流であった。その後、ルーフィング材の基材との接着面をバーナーで炙って溶かしながら施工するトーチ工法でも施工されている。しかし、近年、省エネルギー、環境負荷低減、作業環境改善などの観点から、粘接着剤を用いてルーフィング材を基材に貼り付ける、或いは裏面に自着層をもったルーフィング材を基材に貼り付けるといういわゆる冷工法を取り入れる施工が多く行なわれてきている。粘接着剤・自着層には、SBS、SIS、SBR、ブチルゴム、クロロプレン或いはオレフィン系等、種々のゴム質重合体をベースとした組成物やアクリル系やエポキシ系接着剤等、様々に使用されている。
例えば、特開平8−326228号公報(特許文献1)には、ブチルゴムをベースとした組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平8−326228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の冷工法用の粘接着剤シートは必ずしも満足な性能を有していなかった。特に、冬場での低温時でのシートの剥がれや平滑でない基材面での接着が不十分であった。そのため、本来の防水シートの性能を発揮することが出来ず、2層、3層にして、対応しているのが現状である。従って、より基材との粘接着性の高い防水シートの開発が期待されている。
本発明は、このような市場要求に鑑み、従来の粘接着剤シートにない、溶融粘度が低く加工性に優れ、且つ粘接着剤性能特に軟化点と低温接着力とのバランスに優れ、基材との密着性にも優れるアスファルト粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、ある特定のビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有するアスファルト粘着剤組成物によって、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は以下の通りである。
1.ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であって、(イ)ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で6万〜25万、(ロ)ブロック共重合体中における全結合ビニル芳香族炭化水素含有量が10〜40重量%、(ハ)共役ジエン重合体ブロック中のビニル結合量が30%未満であるアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
2.ビニル芳香族炭化水素を主体とする1個の重合体ブロックと共役ジエンを主体とする1個の重合体ブロックからなる1.に記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
3.ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で7万〜15万である1.又は2.に記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
4.ブロック共重合体中における全結合ビニル芳香族炭化水素含有量が20〜35重量%である1.〜3.のいずれかに記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
5.成分(A)として1.から4.のいずれかに記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体又は該ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物3〜40重量部、(B)粘着付与剤樹脂0〜60重量部、(C)軟化剤0〜50重量部、(D)アスファルト5〜90重量部を含むアスファルト粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば溶融粘度が低く加工性に優れ、且つ粘接着剤性能特に軟化点と低温接着力とのバランスに優れ、基材との密着性にも優れるアスファルト粘着剤組成物が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなる。ビニル芳香族化合物を主体とする1個の重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする1個の重合体ブロックよりなるブロック共重合体であると、特に基材との低温接着力の点で好ましい。
ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックとは、ビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックまたはビニル芳香族炭化水素を50重量%以上含有する実質的にビニル芳香族炭化水素を主成分とする重合体ブロックを示す。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとは、共役ジエン化合物単独重合体ブロックまたは共役ジエン化合物を50重量%以上含有する実質的に共役ジエン化合物を主成分とする重合体ブロックを示す。共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックが例えばビニル芳香族炭化水素−共役ジエン化合物の共重合体である場合、共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布してもまた不均一(例えばテーパー状)に分布してもよい。
【0008】
ブロック共重合体に使用されるビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、P−メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレンなどの単量体が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
一方、共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、フェニル−1,3−ブタジエンなどの単量体が挙げられ、中でも1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、1.3ブタジエンが最も好ましい。これらの単量体は、単独でも2種以上の併用でもよい。
【0009】
また、ブロック共重合体に含まれる全結合ビニル芳香族炭化水素含有量は、ブロック共重合体の生産性及び得られる粘着剤組成物の軟化点等の観点から、10重量%を超え、また、得られる粘着剤組成物の粘接着力性能の観点から、40重量%以下である。好ましくは20重量%を超え35重量%以下のものである。
さらに、ブロック共重合体の共役ジエン重合体ブロック中のビニル結合量はブロック共重合体及び得られるアスファルト粘着剤組成物の熱安定性の観点から、30%未満である。より好ましい範囲としては20%未満である。
本願発明のアスファルト粘着剤組成物は極端に耐熱性や耐候性を必要な場合には、基材と接触する粘着剤層としても用いることができる。その場合の基層となる材料としては、限定されるものではないが合成ゴム(SBR、IR、NBR、EPDM等)、天然ゴム(NR)、等の加硫ゴム、ウレタンゴム、塩化ビニル等の各シートが挙げられる。
【0010】
ブロック共重合体のピーク分子量は、得られる粘着剤組成物の軟化点の観点から標準ポリスチレン換算で6万以上、得られる粘着剤組成物の溶融粘度、加工性の観点から標準ポリスチレン換算で25万以下であり、より好ましい範囲としては7万〜15万である。
ブロック共重合体は、例えば不活性炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物を重合開始剤としてスチレンを重合させ、次いで、ブタジエンを重合させ、さらに場合によりこれらの操作を繰り返す方法によりスチレンブタジエンブロックコポリマーが得られる。その際、分子量は有機リチウム化合物量を制御することにより調製される。
また、ブロック共重合体は、共役ジエンに由来する不飽和二重結合の一部又は全てを水素添加されていてもよい。その水素化方法は特に限定されるものではなく、公知の技術を用いて行われる。
【0011】
本発明で使用される不活性炭化水素溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素溶媒が使用できる。これらは一種のみならず二種以上を混合して使用してもよい。
【0012】
また本発明で使用される有機リチウム化合物としては、公知の化合物、例えばエチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、プロペニルリチウム、ヘキシルリチウムなどが挙げられる。中でもn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムが好ましい。有機リチウム化合物は1種のみならず、2種以上の混合物としても用いられる。その使用量は、所望のピーク分子量が得られるような範囲で選択される。
【0013】
また、ブロック共重合体において、例えば共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックがビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物のランダム共重合体ブロックである場合、ビニル芳香族炭化水素を重合させた後、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物を同時に仕込み重合させる方法やビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物の一部を同時に重合させ、次いで共役ジエン化合物を追添する方法等も用いられる。さらには、重合開始前、及び/又は重合反応中に極性化合物を添加してビニル芳香族炭化水素連鎖分布を調整することが可能である。
【0014】
極性化合物としては、例えば、エーテル類や第三級アミン類など、具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、α−メトキシテトラヒドロフラン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどから選ばれる1種または2種以上の混合物が使用される。さらには、アルカリ金属第三級アルコキシドを使用することも可能である。アルカリ金属第三級アルコキシドとしては、例えばカリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−アミルアルコキシド、ナトリウム−アミルアルコキシド、カリウムイソペンチルオキシドなどが挙げられる。
【0015】
また、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物のビニル結合量を調整するために、例えば、エーテル類や第三級アミン類など、具体的には、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、α−メトキシテトラヒドロフラン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどから選ばれる1種または2種以上の混合物が使用される。
本発明のアスファルト粘着剤組成物は、成分(A)として前記アスファルト粘着剤用ブロック共重合体又は該ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物3〜40重量部、(B)粘着付与剤樹脂0〜60重量部、(C)軟化剤0〜50重量部、(D)アスファルト5〜90重量部を含む。
【0016】
アスファルト粘着剤組成物とは、アスファルトを必須成分とし、溶融粘度が低く加工性、熱安定性に優れ、軟化点が高く、基材との接着力特に低温接着力に優れる性質を示す組成物をいう。
成分(A)としては、前記のブロック共重合体又は該ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物が使用され、他のゴム質重合体としては、天然ゴム、合成ゴム(SBR、IR、NBR、EPDM等)、熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、エステル系、塩ビ系等)等が挙げられる。配合量は3〜40重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0017】
成分(B)としては、得られる粘着剤組成物の用途、要求性能によって、多種多様の粘着付与剤樹脂が選択される。例えば、クマロン系樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、水添脂環族系炭化水素樹脂、水添テルペン系樹脂、水添ロジン系樹脂等の公知の粘着付与剤樹脂が挙げられ、これらの粘着付与剤樹脂は2種以上の混合使用も可能である。成分(B)を使用する場合は、0〜60重量部、0〜50重量部が好ましい。
【0018】
成分(C)として軟化剤を使用することができる。軟化剤の種類は制限されるものではなく、公知のパラフィン系やナフテン系、アロマ系のプロセスオイル及びこれらの混合オイルを使用することができる。成分(C)を使用する場合は、0〜50重量部、0〜40重量部が好ましい。
【0019】
また、成分(D)アスファルトは、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したものなどを挙げることができ、その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的にはストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤などを使用することができる。これらは混合して使用しても良い。本発明においては、針入度が30〜300のストレートアスファルトが好ましい。配合量は5〜90重量部、10〜80重量部が好ましい。
【0020】
本発明のブロック共重合体には、必要により、所定量の酸化防止剤を添加しても良い。また、本発明の粘着剤組成物のさらなる熱安定性の向上をはかるために粘着剤組成物配合時に酸化防止剤を添加することも可能である。酸化防止剤は、ブロック共重合体酸化防止剤としては、例えば、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−O−クレゾール、2,4−ビス(n−ドデシルチオメチル)−O−クレゾール、2,4−ビス(フェニルチオメチル)−3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−tert−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)−エチル〕−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等のヒンダードフェノール系化合物、ペンタエリストール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート )、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどのイオウ系化合物、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系化合物などが挙げられる。
これらは単独又は2種以上混合して使用できる。これらの添加量は用途により任意であるが、好ましくは酸化防止剤添加前の粘着剤組成物100重量部に対して5重量部以下である。
【0021】
更に、本発明のブロック共重合体には、必要により、所定量の光安定剤を添加してもよい。また、本発明の粘着剤組成物配合時に光安定剤を添加することも可能である。光安定剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物や、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル〕イミノ〕ヘキサメチレン〔〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル〕イミノ〕〕などのヒンダードアミン系化合物、2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。
かかるベンゾトリアゾール系化合物やヒンダードアミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を本発明の組成物に組み合わせることにより、その耐光性を一層改善することができる。
【0022】
上記の酸化防止剤、光安定剤以外に、本発明の組成物には、必要により従来アスファルト組成物に慣用されている各種添加剤、例えばシリカ、タルク、炭酸カルシウム、鉱物質粉末、ガラス繊維などの充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタンなどの顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックスなどのワックス類、あるいは、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤、アタクチックポリプロビレン、エチレンーエチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンーブタジエンゴム、エチレンープロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレンーイソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及び本発明以外のスチレンーブタジエン系ブロック共重合体、スチレンーイソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン系ブロック共重合体などの合成ゴムを添加しても良い。
【0023】
本発明の粘着剤組成物を混合する方法は特に限定されるものではなく、所望により前記の各種添加剤を、公知の混合機、熱溶融釜、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機などにより加熱溶融混練し、均一混合する方法で調製される。
【実施例】
【0024】
本発明を更に詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本発明の範囲をなんら限定するものではない。
なお、各種測定は下記の方法に従った。
A)ブロック共重合体の分析;
A−1)ブロック共重合体の全結合スチレン含有量(TS)
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
A−2)ブロック共重合体のピーク分子量
GPC(装置はウォーターズ社製、カラムは、ポリマーラボラトリー社製のMINIMIXを3本の組み合わせ。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃、流速0.4ml/分、試料濃度0.1重量%、注入量40μlである。)のクロマトグラムより、ピーク分子量及びブロック共重合体の組成比を求めた。なお、ピーク分子量は、以下の標準ポリスチレン(ウォーターズ社製。1.54×10、4.1×10、1.10×10、3.5×10、8.5×103、1.8×10)検量線からの換算値である。
A−3)ブロック共重合体の共役ジエン重合体中ブロックのビニル結合量
赤外線分光光度計(装置は日本分光(株)社製)を用いて測定し、ハンプトン法により測定した。
【0025】
B)粘着剤組成物の物性の測定;
B−1)溶融粘度:
ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORYIES、INC.製)を用い、温度条件は160℃、180℃、スピンドル番号は28で測定した。
B−2)軟化点
JIS−K 2207に準拠して測定した。
B−3)熱安定性:
粘着剤組成物作成後、180℃のオーブン中に3日間保存後の溶融粘度を測定した。
【0026】
〔実施例1〕
<ブロック共重合体の製造>
ジャケットと攪拌機のついた40Lのステンレス製反応器を充分窒素置換した後、シクロヘキサン17,600g、テトラヒドロフラン4.8g、スチレン960gを仕込み、ジャケットに温水を通して内容物を約55℃に設定した。この後、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液(純分3.5g)を添加し、スチレンの重合を開始した。スチレンがほぼ完全に重合して、最高温度に達してから5分後に、ブタジエン(1,3−ブタジエン)2240gを添加し重合を継続し、ブタジエンがほぼ完全に重合した。スチレンを仕込んだ直後から、この間、攪拌機により系内を連続的に攪拌した。
【0027】
得られたブロック共重合体の溶液を抜き出し、水を20gを添加、攪拌後、n−オクタデシル−3−(3’,5’ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを7.5g、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−O−クレゾールを2.5g添加し、得られた該溶液をスチームストリッピングすることにより、溶媒を除去し含水クラムを得た。引き続き、熱ロールにより脱水乾燥させ、ブロック共重合体サンプルを得た。
このようにして得られたブロック共重合体60gと、アスファルトとしてストアス60−80(新日本石油(株)製)を400g配合し、180℃×3時間、1リットルの攪拌機付き容器で溶融混練し粘着剤組成物を得た。
【0028】
〔実施例2〜実施例4、比較例1〜比較例5〕
スチレン、ブタジエン(1,3−ブタジエン)の仕込み量及び仕込み手順、n−ブチルリチウムシクロヘキサン溶液の添加量を変えた以外は実施例1と同様の処方で重合して得たブロック共重合体溶液を得た。この間、攪拌機により系内を連続的に攪拌した。得られたブロック共重合体の溶液を実施例1と同様の方法により、溶媒除去、乾燥させ、ブロック共重合体を得て、実施例1と同様に配合し、粘着剤組成物を得た。
【0029】
得られた各ブロック共重合体の構造及びそれらを配合した粘着剤組成物の物性を表1に示した。本発明で規定される特定の構造を有するブロック共重合体を用いることにより、溶融粘度が低く加工性に優れ、且つ粘接着剤性能特に軟化点と低温接着力とのバランスに優れる粘着剤組成物が得られることがわかる。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体及びアスファルト粘着剤組成物はアスファルトルーフィング・防水シート等の分野において好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であって、
(イ)ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で6万〜25万、
(ロ)ブロック共重合体中における全結合ビニル芳香族炭化水素含有量が10〜40重量%、
(ハ)共役ジエン重合体ブロック中のビニル結合量が30%未満であるアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
【請求項2】
ビニル芳香族炭化水素を主体とする1個の重合体ブロックと共役ジエンを主体とする1個の重合体ブロックからなる請求項1に記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
【請求項3】
ブロック共重合体のGPC測定によるピーク分子量が標準ポリスチレン換算で7万〜15万である請求項1又は2に記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
【請求項4】
ブロック共重合体中における全結合ビニル芳香族炭化水素含有量が20〜35重量%である請求項1〜3のいずれかに記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体。
【請求項5】
成分(A)として請求項1から4のいずれかに記載のアスファルト粘着剤用ブロック共重合体又は該ブロック共重合体と他のゴム質重合体との組成物3〜40重量部、(B)粘着付与剤樹脂0〜60重量部、(C)軟化剤0〜50重量部、(D)アスファルト5〜90重量部を含むアスファルト粘着剤組成物。

【公開番号】特開2008−106149(P2008−106149A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290282(P2006−290282)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】