説明

アスファルト舗装面の補修方法。

【課題】 補修作業が容易であって、しかも補修跡が目立たずに補修箇所の仕上りの外観が優れるアスファルト舗装面の補修方法を提供する。
【手段】 アスファルト舗装面の不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらにその上に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させ、該焼き砂を回収することを特徴とするアスファルト舗装面の補修方法であって、不良個所が比較的大きい場合には予め不良個所に補修材を充填して舗装面を平坦にした後に、低粘度のアスファルト乳剤を散布し、また、好ましくは粘度0.9〜7.5cpsのアスファルト乳剤を用い、焼き砂としてアスファルトでコーテングした砂を用いるアスファルト舗装面の補修方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装面の補修方法に関し、より詳しくは、補修作業が容易であって、舗装面の補修箇所に色違い等の部分を生じることがなく、補修跡が目立たずに補修箇所の仕上りの外観が優れるアスファルト舗装面の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路などのアスファルト舗装面に亀裂、孔や窪みなどの不良個所が発生した場合には、この不良個所にアスファルト舗装材や補修材を充填して補修する方法が従来から実施されている。例えば、特開2005−180113号公報(特許文献1)には、アスファルト舗装面の不良個所を部分的に除去し、この除去スペースにハニカム構造の補強芯材を設置した後に、その上にアスファルト舗装材を被せて補強芯材を埋設する補修方法が記載されている。また、特開2004−324161号公報(特許文献2)には、アスファルト舗装の凹部不良個所に常温アスファルト舗装材を袋詰めした補修材を充填する補修方法が記載されている。さらに、特開2000−104211号公報(特許文献3)には、通水性アスファルト舗装面に生じた凹部に、特定範囲の粒径を有する骨材と樹脂を混合した通水性の充填材を詰める補修方法が記載されている。
【0003】
しかし、特許文献1の補修方法は大きな不良個所を対象としており、比較的小さな不良個所の補修には不向きであり、しかも補修芯材を設置して埋設するので、施工が大掛かりになり手間がかかる。一方、特許文献2の補修方法は予め袋詰めした常温アスファルト舗装材を不良個所に投入する方法なので、施工は容易に見えるが、実際には袋詰めした常温アスファルト舗装材を不良箇所に投入しただけでは隙間が生じやすく、これを隙間無く充填するのに手間がかかる。また、特許文献3の補修方法は、特定粒径範囲の骨材と樹脂の混合物からなる充填材を用意しなければならず、充填材の調製が面倒である。
【0004】
この他に、特許第2657803号公報(特許文献4)には、アスファルト舗装面の不良個所を含む部分を加熱して舗装層上部を軟化させ、軟化した部分を溝状に掻き起こし、この溝部分にシーリングシートを敷いて溝を埋め戻す補修方法が記載されている。この方法はシーリングシートを埋設するので該シートが剥離せず、かつ舗装層内部のクラック等にも対応できることを意図しているが、施工に手間がかかり、また比較的小さな不良個所には適さない。さらに従来の上記補修方法は、何れも補修箇所の表面外観が周囲と異なるために見苦しいと云う問題がある。具体的には、補修部分の色合い周囲の舗装面と異なり、あるいは補修部分表面に斑が生じるため外観が見苦しくなる。
【特許文献1】特開2005−180113号公報
【特許文献2】特開2004−324161号公報
【特許文献3】特開2000−104211号公報
【特許文献4】特許第2657803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の補修方法は、補修作業が容易であって、舗装面の補修箇所に色違い等の部分を生じることがなく、補修跡が目立たずに補修箇所の仕上りの外観が優れるアスファルト舗装面の補修方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成からなるアスファルト舗装面の補修方法に関する。
(1)アスファルト舗装面の不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらにその上に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させ、該焼き砂を回収することを特徴とするアスファルト舗装面の補修方法。
(2)アスファルト舗装面の不良個所であるポットホール、窪み、亀裂などの凹部に補修材を充填して舗装面を平坦にした後に、この充填箇所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらにその上に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させ、該焼き砂を回収する上記(1)に記載するアスファルト舗装面の補修方法。
(3)粘度0.9〜7.5cpsのアスファルト乳剤を用いる上記(1)または(2)に記載するアスファルト舗装面の補修方法。
(4)焼き砂として、アスファルトでコーテングした砂を用いる上記(1)〜(3)の何れかに記載するアスファルト舗装面の補修方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の補修方法は、アスファルト舗装面の不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布するので、不良個所にアスファルトが浸透し、乾燥後に不良個所がアスファルトによって充填されるので、容易に不良個所を充填することができ、表面仕上がりが緻密な補修面を得ることができる。さらに、アスファルト乳剤を散布した後に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させて除去するので、補修箇所の表面に色むらや色違いが発生せず、補修跡が目立たない。また、本発明の補修方法はアスファルト舗装面の骨材が飛散した跡の補修方法として有効である。
【0008】
焼き砂としてはアスファルトでコーテングした砂を用いるので、回収した焼き砂を乾燥して再び使用し、あるいはアスファルト舗装材の一部に使用することができるので、経済性に優れる。
【0009】
また、本発明の補修方法は、アスファルト舗装面の不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらにその上に焼き砂を散布して回収するだけで良く、不良個所に埋設する特定の補修材料を用いる必要がないので施工が簡単である。また、通常のアスファルト乳剤を希釈して用いれば良いので、容易に実施することができる。さらに、短時間で施工することができるので、交通量の多い道路でも交通を長時間遮断する必要がなく、容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の補修方法を具体的に説明する。
本発明の補修方法は、アスファルト舗装面の不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらに該アスファルト乳剤の上に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させた後に、該焼き砂を回収することを特徴とするアスファルト舗装面の補修方法である。
【0011】
アスファルト舗装面の不良個所とは、舗装面に生じたポットホール、窪み、亀裂などを生じた部分であり、これらの凹部が比較的小さい場合には、この不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を直接に散布すれば良い。また、これら不良個所の凹部が大きい場合には、不良個所の凹部に補修材を充填して舗装面を平坦にした後に、この充填箇所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布すると良い。補修材としてはアスファルト舗装材や、アスファルト舗装に用いる一般的な補修材であれば良い。
【0012】
アスファルト乳剤は低粘度のものを用いる。例えば、粘度0.9〜7.5cp程度のものが適当であり、0.9〜5.0cps程度がより好ましい。なお、ファンネル粘度計を用いた測定ではファンネル粘性18〜25(500/500cc)秒程度が適当であり、18〜22(500/500cc)秒程度が好ましい。この粘性のアスファルト乳剤を得るには、市販のアスファルト乳剤を水で希釈すれば良い。具体的には、アスファルト乳剤:水=40:60〜60:40程度に希釈すると良い。なお、アスファルト乳剤の粘性は温度によって異なるので、季節によって添加水量を調整し、また厳冬期には簡易バーナ等で加熱すると良い。アスファルト乳剤としては通常の市販品を用いることができる。
【0013】
低粘度のアスファルト乳剤を用いることによって、不良個所にアスファルトが容易に浸透し、乾燥後に不良個所がアスファルトによって充填されるので、不良個所を隙間無く充填することができる。なお、市販のアスファルト乳剤を希釈せずに用いると、粘性が高いので不良個所にアスファルト乳剤が浸透し難く、好ましくない。
【0014】
アスファルト乳剤は不良個所とその周囲に散布する。散布量は不良箇所の状態に応じて定めればよく、例えば、一般には1m2当たり0.5〜2.0L程度であれば良く、不良個所をアスファルト乳剤によって飽和した状態にすると良い。
【0015】
アスファルト舗装面の不良個所に低粘度のアスファルト乳剤を散布してアスファルト乳剤を不良個所に浸透させ、さらに、その上に焼き砂を散布し、浸透せずに残った余分なアスファルト乳剤を焼き砂に吸収させ、この焼き砂を掃き集めるなどして回収する。
【0016】
焼き砂としては、アスファルトでコーテングした砂を用いることができる。アスファルトのコーティング量は4wt%程度であれば良く、砂は細砂程度の粒径であれば良い。具体的には例えば粒径0.075mm〜2.5mmの細砂を用いると良い。焼き砂の散布量は余分なアスファルト乳剤を吸収するのに十分な量であれば良い。アスファルトでコーテングした砂を用いるとアスファルトに対して馴染みが良く、残留する余分なアスファルトを効果的に吸収することができる。
【0017】
なお、アスファルトでコーティングされていない砂を用いると補修箇所の表面に砂屑が残り、これを掃き集めたときに残留するアスファルトによって掃き跡などを生じて補修面を汚すので好ましくない。
【0018】
回収した焼き砂は乾燥して再び使用し、あるいはアスファルト舗装材の一部に使用することができる。
【0019】
本発明の補修方法を実施する場合、アスファルト舗装面は乾燥状態で施工するのが良い。雨天ではアスファルト乳剤が流れるので、施工に適さない。また、舗装面に付着したゴミや土汚れ等は予め清掃して除去すると良い。さらに、アスファルト乳剤を散布する前に、施工面の周囲をガムテープ等で囲み、また舗装面に露出している構造物や設置物はシートや板などで覆うことによって施工面の周囲を保護し、アスファルト乳剤や焼き砂による汚れを防止すると良い。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、アスファルト乳剤の粘性はファンネル粘度計で測定した値(500/500ml)である。
【0021】
〔実施例1〕
市販のアスファルト乳剤(種類記号:PK−3)に等量の水を加えて希釈し、ファンネル粘性20.5秒(PK−3)に調整した。一方、アスファルト道路舗装面の不良個所(亀裂発生箇所)を含む1m四方にガムテープを貼って施工面を区画し、希釈したアスファルト乳剤1リットルを均一に散布した。散布後1〜2分経過した後に、粒径0.075mm〜2.5mmの焼き砂(アスファルトコーテング砂)約3000gを均一に散布し、舗装面に残留しているアスファルト乳剤を吸収させた。次いで、焼き砂を掃き集めて回収し、施工箇所周囲にガムテープを剥がし、補修作業を終了した。道路舗装面の不良個所にはアスファルトが緻密に充填されており、平坦な仕上り面であった。また、この補修面には色違いの部分が無く、補修跡が目立たないものであった。また、施工時間は短く、施工後約30分で道路の交通を開放することができた。
【0022】
〔実施例2〕
市販のアスファルト乳剤(種類記号:PK−4)を用い、ファンネル粘性を20.3秒に調整した以外は実施例1と同様にしてアスファルト道路舗装面の不良個所を補修した。道路舗装面の不良個所にはアスファルトが緻密に充填されており、平坦な仕上り面であった。また、この補修面には色違いの部分が無く、補修跡が目立たないものであった。
【0023】
〔比較例1〕
市販のアスファルト乳剤(商品名:PK−3、PK−4)を希釈せずに使用した以外は実施例1と同様にしてアスファルト道路舗装面の不良個所を補修した。道路舗装面の不良個所にアスファルトが十分に充填されておらず、補修が不十分であった。
【0024】
〔比較例2〕
焼き砂を用いず、通常の砂を散布した以外は実施例1と同様にしてアスファルト道路舗装面の不良個所を補修したところ、余分なアスファルト乳剤が十分に吸収されずに補修面に残るため、砂を掃き集めて回収したときに、砂屑とアスファルト乳剤とが混じり合い、これが補修面に掃き跡として付着し、汚れた舗装面になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト舗装面の不良個所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらにその上に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させ、該焼き砂を回収することを特徴とするアスファルト舗装面の補修方法。
【請求項2】
アスファルト舗装面の不良個所であるポットホール、窪み、亀裂などの凹部に補修材を充填して舗装面を平坦にした後に、この充填箇所およびその周囲に低粘度のアスファルト乳剤を散布し、さらにその上に焼き砂を散布して余分なアスファルト乳剤を吸収させ、該焼き砂を回収する請求項1に記載するアスファルト舗装面の補修方法。
【請求項3】
粘度0.9〜7.5cpsのアスファルト乳剤を用いる請求項1または2に記載するアスファルト舗装面の補修方法。
【請求項4】
焼き砂として、アスファルトでコーテングした砂を用いる請求項1〜3の何れかに記載するアスファルト舗装面の補修方法。

【公開番号】特開2007−113184(P2007−113184A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302530(P2005−302530)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(591072949)東京鋪装工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】