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アスベスト分析方法
説明

アスベスト分析方法

【課題】土砂状を呈する試料中における微細なアスベスト繊維を比較的簡易な手法で分析する。
【解決手段】土砂状を呈する試料を水中に懸濁させて懸濁液を調製する懸濁液調製工程と、懸濁液から篩い分級により粗粒分を分離除去する粗粒分分離工程と、懸濁液中の細粒分から分析対象の粒径以下の微細粒子成分を沈降分離によって分級して該微細粒子成分を含む懸濁液を採取する微細粒子成分採取工程と、懸濁液に含まれる微細粒子成分を顕微鏡により観察することにより分析対象の粒径以下の微細なアスベスト繊維の有無を判定する判定工程とを有する。粗粒分分離工程の後段で有機物分解工程を実施し、微細粒子成分採取工程の前段で細粒分を分散させる分散工程を実施し、X線回折装置によるX線分析工程による判定を行うことも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスベストの分析方法に関わり、特に土砂状の試料中における微細なアスベスト繊維の有無を判定するための分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、アスベスト(石綿)は過去においては有用な建材として多用されていたが、粒径が5-10μm以下の微細なアスベスト繊維は空気中に飛散して呼吸により人体に吸引され肺に沈着して重大な健康被害の原因となることから、その対策のためにたとえば特許文献1〜3に示されるような様々な分析手法が提案され実施されている。
これらの分析手法は、いずれも建材や保温材に含まれるアスベストあるいは空気中におけるアスベストの有無やその量を顕微鏡やX線回折測定により分析することを基本とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−181268号公報
【特許文献2】特開平9−127102号公報
【特許文献3】特開2008−101945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、たとえば産業廃棄物の処理に際して、あるいは地震・津波災害によるがれきやヘドロの処理に際して、処理対象物中にアスベストが混在している可能性がある場合には、その処理に際してアスベストの飛散防止や作業安全性の確保のための対策が必要であるか否かを判断しなければならず、そのためには処理対象物中にアスベストが混在しているか否かを事前に確認するための分析が必要となる。
【0005】
しかし、産業廃棄物やがれき・ヘドロ等の処理対象物は土砂状(ないし泥土状)を呈するので、それに対するアスベスト分析を現場にて実施することは必ずしも容易ではないし、特許文献1〜3に示されるような建材や保温材あるいは空気中のアスベストを分析するための従来一般的な分析手法をそのまま適用することも合理的ではない。
【0006】
すなわち、上述したような従来の分析手法では、建材や保温材中に安定に固定されている成分や、粒径が十分に大きくて飛散し難い成分も含めてアスベストの全量を分析するものであるが、そのような成分は人体に吸引される懸念が少なく、また吸引されても肺に沈着することなく体外に排出されてしまうことから、直ちに健康被害を及ぼすものではないことが知られている。
したがって、たとえば地震・津波災害の復旧のために多量のがれきやヘドロを迅速に処理するに際しては、特に飛散し易い微細なアスベスト繊維の有無を判定することのみで十分なのであるが、そのような場合においても従来手法と同様にアスベストの全成分を高精度で厳密に分析することは安全側ではあっても過剰であるといえ、緊急性が要求されるような場合には現実的ではないと考えられる。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は土砂状を呈する試料中における微細なアスベスト繊維を比較的簡易な手法で分析するための合理的な分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、土砂状を呈する試料中における微細なアスベスト繊維の有無を判定するためのアスベスト分析方法であって、前記試料を水中に懸濁させて懸濁液を調製する懸濁液調製工程と、前記懸濁液から篩い分級により粗粒分を分離除去する粗粒分分離工程と、前記懸濁液中の細粒分から分析対象の粒径以下の微細粒子成分を沈降分離によって分級して該微細粒子成分を含む懸濁液を採取する微細粒子成分採取工程と、前記懸濁液に含まれる微細粒子成分を顕微鏡により観察することにより分析対象の粒径以下の微細なアスベスト繊維の有無を判定する判定工程とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のアスベスト分析方法であって、前記粗粒分分離工程の後段に、前記懸濁液に過酸化水素水を添加して加熱することにより懸濁液中の有機物を分解する有機物分解工程を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のアスベスト分析方法であって、前記微細粒子成分採取工程の前段に、前記懸濁液に分散剤を添加して超音波振動を付与することにより該懸濁液中の細粒分を分散させる分散工程を有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載のアスベスト分析方法であって、前記微細粒子成分採取工程の後段に、前記懸濁液に含まれる微細粒子成分をX線回折装置により分析するX線分析工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分析方法によれば、たとえば地震・津波災害によるがれきやヘドロの処理に際して土砂状(ないし泥土状)の処理対象物を試料として分析を行うことにより、その試料中のアスベストの有無を有効に判定することが可能であり、その判定結果に基づいて必要かつ最適な対策を実施することにより安全かつ効率的ながれき・ヘドロ処理が可能となる。
特に本発明の分析方法は、一連の工程を現場において簡易な設備で容易に実施可能であり、分析に要するコストや時間も従来の分析手法に比較して十分に軽減することが可能である。
しかも、従来の分析手法ではアスベストの全量を高精度かつ厳密に分析することを前提としているのに対し、本発明の分析方法では健康被害の原因となる特定の粒径以下の微細アスベスト繊維を沈降分離により選択的に採取して分析を行うので、アスベストによる健康被害の防止を目的として実施する分析手法としては従来手法に比べて合理的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である分析方法における一連の工程を示すフローチャートである。
【図2】同、微細粒子成分採取工程を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態である分析方法における一連の工程をフローチャートとして示すものである。
本実施形態では地震・津波災害によるがれきやヘドロの処理に際して、土砂状ないし泥土状を呈している処理対象物中にアスベストが混在しているか否かを判定することを目的として実施されるものであるが、特にがれきやヘドロの処理に際して空気中に飛散し易く、したがって作業員に対する健康被害が問題となる微細なアスベスト繊維、具体的には粒径が5-10μm以下の微細粒子成分を選択的に分析することを主眼とする。
【0015】
本実施形態では、まず処理対象物から試料としての土砂やヘドロを採取し、それを蒸留水中に懸濁させて懸濁液を調製する(懸濁液調製工程)。
試料の量は適宜で良いがたとえば100g〜2kg程度が適当であり、懸濁液における水:懸濁物の重量比はたとえば1:1〜10:1程度、特に3:1程度とすることが良い。
【0016】
次に、その懸濁液から篩い分級により粗粒分を分離除去する(粗粒分分離工程)。
その場合、必要に応じて75mm篩いにより石等の大きな固形物を除去した後、2mm篩いにより粒径2mmを超える礫成分を分離除去して2mm以下の砂や粘土等の細粒分のみを通過させる。
粗粒分を分離した後の懸濁液では細粒分が100g程度となるようにすると良い。
【0017】
そして、必要に応じて懸濁液中の有機物たとえば重油等の油成分を分解する(有機物分解工程)。
具体的には、懸濁液に過酸化水素水を1〜30%程度の濃度となるように添加し、ゆっくりと加熱して有機物と反応させる工程を必要に応じて2〜3回繰り返す。これにより有機物に付着していたアスベスト成分が有機物から解放される。
【0018】
次に、必要に応じて懸濁液中において細粒分を十分に分散させる(分散工程)。
そのためには、たとえばヘキサメタリン酸ナトリウム等の分散剤を添加し、懸濁液1Lに対して飽和分散剤溶液を20ml程度加え、よく混合して超音波洗浄機により1〜10分程度の超音波振動を与えて十分に分散させると良い。
【0019】
しかる後に、懸濁液中の細粒分から分析対象の粒径以下の微細粒子成分(本実施形態では5-10μm以下)を、図2に示すように沈降分離手法によって分級することにより、微細粒子成分を含む懸濁液を採取する(微細粒子成分採取工程)。
具体的には、以下に示すストークスの式に基づいて分析対象の5-10μm以下のアスベスト微細粒子の水中沈降速度vを求め、それに基づいてその微細粒子が水中を所定距離A(たとえば100mm)だけ沈降するに要する沈降時間を求める。
【0020】
【数1】

【0021】
そして、懸濁液を図2(a)に示すような沈降容器1内に満たして静置し、上記の沈降時間が経過した時点で(b)に示すようにバルブ2を開いてそれよりも上部の懸濁液を採取容器3に採取する。
これにより、粒径が5-10μmを超える比較的大きな粒子は上記の沈降時間が経過するまでにバルブ2の位置(満水位より所定距離Aだけ下方位置)よりも下方に沈降してしまうから、そこまでは沈降し得ずに沈降容器1の上部において未だ懸濁している5-10μm以下の微細粒子成分のみを含む懸濁液を採取容器3に採取できる。
【0022】
たとえば、粒径10μmのアスベスト粒子の水中沈降速度vは、d=0.001cm(=0.01mm=10μm)とし、アスベスト密度は2.55(クリソタイル)〜3.43(アモサイト)であるので最大密度を代表値としてρs=3.43として、それらの値をストークスの式に代入すると、水中沈降速度はv≒13239×10-6cm/s(≒0.794cm/min≒47.6cm/H)となり、したがって沈降容器1内における沈降時間は約1.26min/cm(≒0.126min/mm)となる。
つまり、粒径d=10μm、粒子密度ρs=3.43のアスベスト繊維の微細粒子が水中をたとえば100mm沈降するためには約12分を要することになるから、10μm以下の微細粒子を選択的に採取するためには(a)に示すように沈降容器1内に懸濁液を満たして静置してから約12分後にバルブ2を開いて(b)に示すようにバルブ2よりも上位の100mmの範囲にある懸濁液を採取容器3に採取すれば良い。
また、上記のように沈降容器1の所定位置にバルブ2を設けておくことに代えて、沈降容器1内にサイホン管を挿入して所定水位以上の懸濁液を吸引して採取することでも良い。
【0023】
以上の工程により分析対象の微細粒子成分のみを含む懸濁液を採取した後、その懸濁液をろ過して顕微鏡観察のためのサンプルを作成し、顕微鏡観察によりアスベスト繊維の有無を判定すれば良い(判定工程)。
具体的には、採取した懸濁液をたとえばフッ素樹脂バインダグラスファイバーフィルターを用いてガラスフィルターベース付吸引ろ過装置でろ過し、無じん水に10〜20mg取って分散させ、スライドガラスに滴下し、所定の浸液を滴下してプレパラートを作成し、位相差顕微鏡あるいは偏光顕微鏡にて観察すれば良い。
【0024】
以上で説明した本実施形態の分析方法によれば、地震・津波災害によるがれきやヘドロの処理に際してその処理対象物の一部を試料として分析を行うことにより、試料中のアスベストの有無を有効に判定することが可能であり、その判定結果に基づいて必要かつ最適な対策を実施することにより安全かつ効率的ながれき・ヘドロ処理が可能となる。
【0025】
特に本実施形態の分析方法は、上記の一連の工程を現場において簡易な設備で容易に実施可能であり、分析に要するコストや時間も従来の分析手法に比較して十分に軽減することが可能である。
しかも、健康被害の原因となる5-10μm以下の微細なアスベスト繊維を選択的に採取して分析を行うこととして、安定に固定されていて飛散の余地のないアスベスト成分や、人体に容易に吸引されずかつ吸引されても容易に体外に排出されてしまうような粒子径の大きいアスベスト成分は分析対象外としているので、アスベストによる健康被害を問題として実施する分析手法として合理的であり、アスベストの全量を高精度かつ厳密に分析することを前提としている従来の分析手法に比べて有利であるといえる。
以上のことから、本発明の分析方法は土砂や泥土等を緊急かつ迅速に処理する必要がある場合において、その処理対象物におけるアスベストの有無を簡易に判定するための手法として極めて有効であり、特に地震・津波被害によるがれきやヘドロ処理に際して適用するものとして好適である。
【0026】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態はあくまで好適な一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜の設計的変更や応用が可能である。
【0027】
たとえば、上記実施形態では特に健康被害の原因となる微細なアスベスト繊維として粒径が5-10μmのものを分析対象としたが、本発明はそれに限るものではなく、分析対象とする粒径範囲は分析の目的や要求される精度等の条件を考慮して最適に設定すれば良く、それに応じて最適な沈降分離を行って分析対象の微細粒子成分のみを含む懸濁液を選択的に採取するようにすれば良い。
【0028】
また、上記実施形態においては微細粒子成分の沈降分離に先立って有機物分解工程と細粒分の分散工程を実施したが、それらの工程は試料の状況によって必要に応じて実施すれば良く、不要であれば省略して差し支えない。
【0029】
さらに、微細なアスベスト繊維の有無は顕微鏡観察により十分に判定可能であるし、必要に応じて定量分析も可能であるが、さらに必要であれば図1に示すように顕微鏡観察による判定工程に併せてX線回折装置(XRD)によるX線分析を行い(X線分析工程)、その結果も考慮して総合的な判定を行うことも考えられる。
【符号の説明】
【0030】
1 沈降容器
2 バルブ
3 採取容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂状を呈する試料における微細なアスベスト繊維の有無を判定するためのアスベスト分析方法であって、
前記試料を水中に懸濁させて懸濁液を調製する懸濁液調製工程と、
前記懸濁液から篩い分級により粗粒分を分離除去する粗粒分分離工程と、
前記懸濁液中の細粒分から分析対象の粒径以下の微細粒子成分を沈降分離によって分級して該微細粒子成分を含む懸濁液を採取する微細粒子成分採取工程と、
前記懸濁液に含まれる微細粒子成分を顕微鏡により観察することにより分析対象の粒径以下の微細なアスベスト繊維の有無を判定する判定工程と
を有することを特徴とするアスベスト分析方法。
【請求項2】
請求項1記載のアスベスト分析方法であって、
前記粗粒分分離工程の後段に、前記懸濁液に過酸化水素水を添加して加熱することにより懸濁液中の有機物を分解する有機物分解工程を有することを特徴とするアスベスト分析方法。
【請求項3】
請求項1または2記載のアスベスト分析方法であって、
前記微細粒子成分採取工程の前段に、前記懸濁液に分散剤を添加して超音波振動を付与することにより該懸濁液中の細粒分を分散させる分散工程を有することを特徴とするアスベスト分析方法。
【請求項4】
請求項1,2または3記載のアスベスト分析方法であって、
前記微細粒子成分採取工程の後段に、前記懸濁液に含まれる微細粒子成分をX線回折装置により分析するX線分析工程を有することを特徴とするアスベスト分析方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−29442(P2013−29442A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166301(P2011−166301)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】