説明

アスベスト含有部材の撤去方法

【課題】現位置でアスベスト解体作業用の専用エリアの設営を必要としないアスベスト含有部材の撤去方法を提供する。
【解決手段】アスベストを含有する部材12が設けられた建材10から部材12を撤去する方法であって、部材12および建材10を5×10℃以上の熱で溶断してブロック状にして切り出し、切り出したブロック状の建材10から部材12を除去するようにする。切断面には、溶融した部材12が固化することにより飛散防止膜20が形成されるので、現位置においてアスベスト解体作業用の専用エリアを設ける必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管ダクト周りの保温材などのアスベスト含有部材の撤去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アスベスト使用規制前の建築物内部の配管ダクトの保温材には、アスベストを含んだものが多く使用されている。このような保温材を解体・撤去する際、配管ダクトからアスベストを適切に取り除くためには、例えば、非特許文献1に示された作業レベル1の装備および養生設備等を施した後、かき取りにより保温材を剥がし取って、専用の袋に封入する処理を行う必要があった。
【0003】
保温材を撤去する従来の方法としては、以下の(1)〜(3)がある。
(1)現位置で全ての保温材を撤去し、現位置で配管ダクトを細かく細断する方法。
(2)現位置で全ての保温材を撤去した後に、配管ダクトを大ブロック状に切断し、別に設けた解体ヤードで細断する方法。
(3)現位置で切断予定部位の保温材のみを撤去して、配管ダクトを大ブロック状に切断し、別に設けた解体ヤードで残りの保温材を撤去した後に細断する方法。
【0004】
ここで、(1)と(2)の方法は、現位置で保温材を撤去することが容易な場合に適しており、(3)の方法は、高所あるいは狭隘の場所のように、配管ダクト全体をカバーできるエリアに作業床を設置できない場合に適している。
【0005】
一方、構造物等におけるアスベストの除去処理に関し、例えば、特許文献1〜9に示される技術が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「建築物の解体等工事における石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」、建設業労働災害防止協会、平成17年8月
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2008/041416号公報
【特許文献2】WO2007/037403号公報
【特許文献3】特開2007−275811号公報
【特許文献4】特開2007−063780号公報
【特許文献5】特開2007−303201号公報
【特許文献6】特開2008−296189号公報
【特許文献7】特開2007−113271号公報
【特許文献8】特開2008−255655号公報
【特許文献9】特開2007−125467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記(3)の方法では、まず、保温材の周囲にレベル1の養生設備を設置し、保温材を被覆する表面保護パネルの一部を剥がしてから、かき取りによりアスベストを剥がし取った後、アスベスト解体作業用の専用エリアを解除する。その後、配管ダクトを大ブロック状に切断する。しかし、この場合には、アスベスト解体作業用の専用エリアの設営を要し、エリア管理等に係るコストが発生してしまう。このため、アスベスト解体作業用の専用エリアを必要としないアスベスト含有部材の撤去技術の開発が求められていた。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、現位置でアスベスト解体作業用の専用エリアの設営を必要としないアスベスト含有部材の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るアスベスト含有部材の撤去方法は、アスベストを含有する部材が設けられた建材から前記部材を撤去する方法であって、前記部材および前記建材を5×10℃以上の熱で溶断してブロック状にして切り出し、切り出したブロック状の前記建材から前記部材を除去することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係るアスベスト含有部材の撤去方法は、上述した請求項1において、溶断の際に、前記部材内部からの飛散を防止するための膜を前記部材の切断面に形成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に係るアスベスト含有部材の撤去方法は、上述した請求項1または2において、前記部材は前記配管周りに設けられる保温材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アスベストを含有する部材が設けられた建材から前記部材を撤去する方法であって、前記部材および前記建材を5×10℃以上の熱で溶断してブロック状にして切り出し、切り出したブロック状の前記建材から前記部材を除去する。切断面には、溶融した部材が固化することにより飛散防止膜が形成されるので、部材内部のアスベストは飛散しない。このため、現位置でアスベスト解体作業用の専用エリアを設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係るアスベスト含有部材の撤去方法の実施例を示す断面である。
【図2】図2は、切り出した配管ダクトの運搬状況の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るアスベスト含有部材の撤去方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1(1)に示すように、鋼製配管ダクト10(建材)の周囲に保温材12が設けてある。保温材12は、アスベストを含有する部材であり、保温材12の表面は保護パネル14で保護されている。本発明に係るアスベスト含有部材の撤去方法は、この保温材12を配管ダクト10から撤去する方法である。
【0017】
具体的には、図1(2)、(3)に示すように、現位置において、配管ダクト10を保温材12ともども5×10℃以上の熱で溶断してブロック状にして切り出す。そして、図2に示すように、切り出したブロック状の配管ダクト10を搬送用吊りワイヤ22で吊り下げつつ、解体ヤードに搬送する。そして、解体ヤードにて配管ダクト10から保温材12を除去し、配管ダクト10を細断する。
【0018】
ここで、溶断は、プラズマ切断装置を用いて行うことができる。この場合、図1(2)に示すように、プラズマトーチ16からのプラズマ炎18を外側の保護パネル14に向け、この保護パネル14から順次内側に向かって溶断する。切断位置の温度は5000℃以上になるように調整しておくようにする。図1(3)に示すように、この溶断によって、溶融した保温材12が切断面で固化し、切断面には保温材12内部からの飛散を防止するための飛散防止膜20が形成される。このため、保温材12内部のアスベストは飛散しない。したがって、現位置でアスベスト解体作業用の専用エリアを設ける必要はない。
【0019】
こうすることで、保温材12のようなアスベストを含有する部材の撤去作業のために特別なエリア管理は不要となる。また、ブロック状の配管ダクト10を解体ヤードに搬送する場合に、切断面から保温材12が飛散することを防止する新たな措置を講じる必要もない。
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、アスベストを含有する部材が設けられた建材から前記部材を撤去する方法であって、前記部材および前記建材を5×10℃以上の熱で溶断してブロック状にして切り出し、切り出したブロック状の前記建材から前記部材を除去する。切断面には、溶融した部材が固化することにより飛散防止膜が形成されるので、部材内部のアスベストは飛散しない。このため、現位置でアスベスト解体作業用の専用エリアを設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、本発明に係るアスベスト含有部材の撤去方法は、配管ダクト周りの保温材などのアスベスト含有部材の撤去に有用であり、特に、現位置にアスベスト解体作業用の専用エリアを設けることなく、アスベスト含有部材を撤去するのに適している。
【符号の説明】
【0022】
10 配管ダクト(建材)
12 保温材(部材)
14 保護パネル
16 プラズマトーチ
18 プラズマ炎
20 飛散防止膜
22 搬送用吊りワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスベストを含有する部材が設けられた建材から前記部材を撤去する方法であって、
前記部材および前記建材を5×10℃以上の熱で溶断してブロック状にして切り出し、切り出したブロック状の前記建材から前記部材を除去することを特徴とするアスベスト含有部材の撤去方法。
【請求項2】
溶断の際に、前記部材内部からの飛散を防止するための膜を前記部材の切断面に形成することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト含有部材の撤去方法。
【請求項3】
前記部材は前記配管周りに設けられる保温材であることを特徴とする請求項1または2に記載のアスベスト含有部材の撤去方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−102548(P2012−102548A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252139(P2010−252139)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】