アスベスト硬化剤塗布装置及びこれを用いたアスベスト硬化剤塗布方法
【課題】 一度に広範な面積を有するスレートに硬化剤を塗布するとともに、スレート上の余剰硬化剤を回収、浄化した後、再度スレートに塗布できるアスベスト硬化剤塗布装置及び塗布方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 波形状のカバー12を設けた硬化剤塗布回収部11と、浄化装置等を内部に有する本体21をホース14を介して接続する。スレートに塗布した硬化剤から不要な余剰硬化剤を本体21に回収、浄化し、浄化した硬化剤を硬化剤供給管27を介して、塗布回収部11から再度スレートに塗布する。ホース14には圧縮空気供給管18を接続し、コンプレッサーからの圧縮空気を送り込んで、効率的に余剰硬化剤の回収を促進できるため、長尺ホース14を使用しても効率的に余剰硬化剤を回収でき、一度に広範な面積のスレートの処理を可能としている。
【解決手段】 波形状のカバー12を設けた硬化剤塗布回収部11と、浄化装置等を内部に有する本体21をホース14を介して接続する。スレートに塗布した硬化剤から不要な余剰硬化剤を本体21に回収、浄化し、浄化した硬化剤を硬化剤供給管27を介して、塗布回収部11から再度スレートに塗布する。ホース14には圧縮空気供給管18を接続し、コンプレッサーからの圧縮空気を送り込んで、効率的に余剰硬化剤の回収を促進できるため、長尺ホース14を使用しても効率的に余剰硬化剤を回収でき、一度に広範な面積のスレートの処理を可能としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレートにアスベスト硬化剤を塗付してスレートを処理するアスベスト硬化剤塗布装置及びこれを用いたアスベスト硬化剤塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根や外壁等の建築材料として、耐久性及び加工容易性が高い石綿スレートが大量に使用されてきた。石綿スレートは、セメントの強度を補強すべく強化材としてアスベストを混入したものである。アスベストはその繊維が非常に細く、容易に大気中に浮遊する。このため、容易に人体に吸引されやすく、肺繊維症や悪性中皮種の原因となり、肺がんを引き起こす可能性がある。
【0003】
石綿スレートは、アスベストの飛散の心配はないと言われてきたが、経年変化、雨、酸性雨や大気汚染などの影響を受けて劣化し、アスベストを飛散させることがわかってきた。このため、現在では使用禁止に至っている。
【0004】
しかし、既存の工場や駅の屋根等に大量に使われており、その撤去、修繕が社会問題の一つに挙げられている。スレートの廃棄処分には、一般的に破砕後、熱処理する必要があるが、スレートは耐熱性に優れるため、高温処理が必要である。
【0005】
このような事情を鑑みて、無機物質からなる硬化剤によってガラス化する発明(例えば、特許文献1)や、比較的低温でスレートを融解し、ガラス化する発明(例えば、特許文献2)等が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、アスベスト含有セメント硬化体の除去剤及び除去方法に関するものである。
【0007】
酸解離定数が6.4未満の酸を含むアスベスト含有セメント硬化体の除去剤であり、酸として、硝酸、塩酸及びフッ酸から選ばれる1種または2種以上を含む除去剤の発明である。本除去剤は、緻密化した硬化体に対しても、浸透性に優れ、硬化体の強度に寄与している水和生成物を溶解させて、その結合力を弱めることができる。
【0008】
そして、この除去剤をアスベスト含有セメント硬化体にスプレー、はけ塗り、ノズル等により、塗付、散布、注入又は含浸させて湿潤させた後に、除去する方法である。
【0009】
特許文献2に記載の発明は、スレートを融解剤で前処理した後、融解剤に入れて加熱して、スレート廃材に含有するアスベストを処理している。
【0010】
アスベストを含むスレート廃材を粉砕せずに、ホウ砂、ホウ酸と炭酸ナトリウムの混合物、又はホウ砂と炭酸ナトリウムの混合物からなる融解剤の水溶液に漬ける。それを減圧下又は加圧下のもと、融解剤をスレートの表面から内部の空隙に含浸した後に、融解剤を満たした溶融炉に浸漬して780℃〜1000℃の範囲で加熱し、スレートに含まれるアスベストを溶融してガラス化するものである。
【特許文献1】特開2006−117481号公報
【特許文献2】特開2005−279589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の発明は、除去材をスレートに塗布、散布、注入又は含浸させる際に、スプレー、はけ塗り、ノズル等で塗布等をしているため、塗布等の作業中にアスベスト微粒子を飛散させてしまうおそれがある。
【0012】
また、スレートは波形状のものが多く、スレートの山部分に塗布等した除去剤は谷部分に流れてしまう。そして、屋根に設置されているスレートは一般的に勾配が設けられており、勾配によって除去剤がスレートに浸透する前に、下方に流れ落ちてしまう。このため、スレート全体に除去剤を浸透させるには過剰に除去剤を塗布等する必要があるが、過剰の除去剤を回収する手段は全く開示されていない。この過剰の除去剤は塵等の異物を含み、また、硬化してしまうものであるため、再度利用することはできず、無駄になってしまうという問題がある。
【0013】
更に、スレートは一般的に広範囲にわたって設置されているが、広範な面積を処理する方法について何ら開示されていない。
【0014】
特許文献2に記載の発明は、溶融炉で行うものであり、溶融炉はある場所に設置して稼動させるものゆえ、溶融炉までスレート廃材を搬送しなければ処理できないという課題を有する。
【0015】
また、同様の理由から、スレート廃材の撤去や搬送する過程でアスベストを飛散させてしまうおそれを有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、スレートに硬化剤を噴射塗布し、余剰硬化剤を回収する塗布回収部と、前記余剰硬化剤を吸引する吸引装置と、回収した前記余剰硬化剤を浄化する浄化槽と、浄化した硬化剤と一定量の硬化剤を貯留する貯留槽と、硬化剤を前記塗布回収部に供給するポンプとを有する本体と、前記塗布回収部と前記本体とを接続し、余剰硬化剤回収路を有するホースと、前記本体から前記塗布回収部に硬化剤を供給する硬化剤供給路と、前記余剰硬化剤回収路に接続しコンプレッサーから圧縮空気を供給する圧縮空気供給管とを備え、前記余剰硬化剤回収路に圧縮空気を送ってスレート上の余剰硬化剤を回収し、浄化した硬化剤を再度スレートに塗布することを特徴とする。
【0017】
更に、本発明は、前記圧縮空気供給管を2以上設け前記余剰硬化剤の回収を高めたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記塗布回収部の端部を波形状カバーとし、噴射した硬化剤の前記波形状カバー外部への飛散を抑制したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記波形状カバー内部にブラシを設け、硬化剤をスレート上に均一に塗布することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記本体を支持部材に固定して、前記塗布回収部のみを移動してスレートに硬化剤を塗布し、余剰硬化剤を回収して浄化した硬化剤を再度スレートに噴射塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、スレートに含浸しない余剰硬化剤を回収、浄化して再利用できるため、必要十分量のみの硬化剤でスレートを処理できる利点を有する。
【0022】
また、本発明によると、圧縮空気供給管から圧縮空気を供給して余剰硬化剤やスレート上の異物等を回収するため、長いホースを用いることができる。このため、本体部分を動かすことなく、余剰硬化剤を回収、浄化により硬化剤を再利用しつつ、広範な面積のスレートに硬化剤を塗布できる利点を有する。
【0023】
更に、本発明によると、スレートの前処理を行う必要がなく、既存の建造物の状態のままで処理できるため、解体、撤去時にもアスベスト微粒子が飛散するおそれがない利点を有する。
【0024】
更に、本発明によると、余剰硬化剤とともに回収したアスベストの微粒子等は集塵フィルタによって除去されるため、アスベストの微粒子が外部に飛散することがない利点を有する。
【0025】
更に、本発明によると、塗布回収部の先端に波形状のカバーを設けているため、スレートとカバーが密着し、噴射した硬化剤や、硬化剤の噴射によってスレートに含有するアスベストの微粒子及びスレート上の塵等の異物が外部に飛散することがないという利点を有する。
【0026】
更に、波形状のカバー内部にブラシを設けているため、硬化剤をスレートに均一に塗布することができ、必要量の硬化剤を塗布できる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1を参照して、本発明のアスベスト硬化剤塗布装置の概略について説明する。
【0028】
アスベスト硬化剤塗布装置は、主に塗布回収部11と、ホース14と、本体21と、硬化剤供給管27と、圧縮空気供給管18から構成される。
【0029】
塗布回収部11はホース14と接続している。塗布回収部11の長手方向の幅は20〜100cm程度が好ましい。塗布回収部11が大きいと一度に処理できる範囲が大きくなる一方、作業者が作業し辛くなってしまう。また、小さすぎると処理面積が小さくなり、作業が煩雑になってしまうからである。なお、塗布回収部11を機械等で駆動させる場合、さらに大きくすることも可能である。
【0030】
波形状スレートの場合、大波、小波等種々のサイズがあるが、例えば、大波スレートの場合、山部から山部の幅は約130mm、山部から谷部の高さは約36mmである。塗布回収部11の長手方向の幅が50cm程度だと、スレート大波4、5列分を一度に処理できる。
【0031】
塗布回収部11先端にはスレートの形状に合わせた波形状のカバー12を設けている。このため、スレートとの間に隙間ができず、噴射した硬化剤や、噴射圧力によってスレートに含有するアスベスト微粒子や塵等が外部に飛散することがない。
【0032】
また、カバー12の内側にはブラシ13を設けている。ブラシ12もアスベストの微粒子が飛散することを抑えるほか、塗布した硬化剤をスレート上に均一にする役割を有する。
【0033】
ホース14は一端が塗布回収部11と接続し、他端は本体21と接続している。ホース14には圧縮空気供給管18が接続している。
【0034】
ホース14内には圧縮空気供給管18を通じ、コンプレッサー51(図5参照)からの圧縮空気が供給される。圧縮空気供給管18は本体21方向に圧縮空気が供給されるように接続しており、本体21に設けた吸引装置26との相乗効果により、余剰硬化剤の回収を促進するとともに、圧縮空気が塗布回収部11に送られないようにしている。本実施形態では2つの圧縮空気供給管18をホース14に設けて、余剰硬化剤の回収能力を高めている。なお、更に余剰硬化剤の回収能力を上げる場合、圧縮空気供給管18を追加して使用することも可能である。
【0035】
ホース14の長さは処理をする建物等に合わせて任意に選択可能である。広範囲にわたる建物等を処理する場合、長いホース14を用いればよい。50m程度の長いホース14を用いた場合でも、圧縮空気の作用により、余剰硬化剤の回収を可能としている。
【0036】
ホース14には吸気調節具15を設けており、吸気調節具15はホース14の周りを回転し、吸気調節具固定ネジ17によって任意の吸気量にて固定できる。吸気孔16から吸気を行うことで、余剰硬化剤及びスレート上の異物等の回収を促進している。
【0037】
本体21はホース14と硬化剤供給管27と接続している。ホース14を介して回収した余剰硬化剤を、本体21内部に設けた浄化槽41(図4参照)で浄化する。浄化した硬化剤は再び硬化剤供給管27を介して塗布回収部11に供給している。
【0038】
スレートの裏面全体まで硬化させるためには、スレートの体積の120%程度の硬化剤が必要である。
【0039】
図2に示すように、屋根に設置されたスレート61は勾配が設けられている。屋根勾配は建物によって異なるが、概ね5〜30度である。スレート61の裏面まで硬化剤が浸透するまでに一定時間が必要であるが、適量の硬化剤(スレート61体積の100%)を塗布すると屋根勾配があるため、矢印のように硬化剤は下方に流れてしまい、スレート61裏面まで硬化剤を浸透させることができない。また、波形状のスレート61の場合、山部分に塗布した硬化剤は、矢印のように谷部分に流れてしまう。このため、スレート61全体に硬化剤を浸透させるには過剰の硬化剤を塗布することが必要であり、スレート61の体積の20%程度多く硬化剤を塗布しなければならない。
【0040】
このように、スレート61全体に硬化剤を浸透させるためには、スレート61体積の120%程度の硬化剤を塗布しなければならないが、塗布した硬化剤の20%程度は無駄になってしまう。本発明では、この20%程度の余剰硬化剤を塗布回収部11(図1参照)から回収し、本体21(図1参照)内部の浄化槽41(図4参照)にて浄化して再利用できるため、硬化剤を無駄なく使用できる。
【0041】
図3を参照して、硬化剤の塗布及び回収機構にについて詳細に説明する。
【0042】
本実施形態では、ホース14の任意の箇所に硬化剤供給管27を挿入しており、ホース14内部は硬化剤回収路32と硬化剤供給管27から構成されている。硬化剤供給管27の先端に硬化剤噴射ノズル31を設けており、本体21(図4参照)のポンプ(図4参照)から硬化剤供給管27を介して送られてきた硬化剤が硬化剤噴射ノズル31からスレート61に噴射される。本発明では、広範な面積のスレート61を処理するため、本体21と塗布回収部11は長尺なホース14を用いている。このため、塗布回収部11まで硬化剤を供給する必要性から、高圧力で硬化剤を供給して塗布可能な噴射ノズル31により噴射塗布をしている。
【0043】
なお、硬化剤供給管27をホース14内の任意箇所に挿入せず、塗布回収部11に直接挿入しても良い。
【0044】
塗布回収部11先端には、波形状のスレートに合わせて、波形状のカバー12を設けているため、噴射した硬化剤が外部に飛散することがなく、また、ブラシ13によって硬化剤はスレート61に均一に塗布される。
【0045】
カバー12はラバー等柔軟なものを用いると良い。一般に、スレート61は突起状の固定具で固定されているが、カバー12にラバー等を用いることで、スレート61とカバー12との密着状態を維持し、噴射塗布した硬化剤やアスベスト微粒子が外部に飛散することを抑制できる。
【0046】
なお、スレート波板には小波、中波、大波と形状が種々あるが、波形状カバー12はそれらに適応したものを適宜選択して使用することも可能である。
【0047】
余剰硬化剤及びスレート61に含有するアスベストの微粒子等は、本体21に設けた吸引装置26(図4参照)の吸引力及びホース14に設けた圧縮空気供給管18(図1参照)から供給される圧縮空気の作用によって、硬化剤回収路32を経由して本体21に回収される。ホース14には吸気孔16を設けており、余剰硬化剤の吸引を促進している。
【0048】
硬化剤には、液状の無機系ガラス等、スレート61に浸透して硬化できるものを用いれば良い。好ましくは、紫外線により硬化するものが良い。塗布回収部11内は波形状のカバー12よってスレート61と密着しており、光が入らないため、硬化剤が固まることはなく、液状のまま本体21内部に回収することが可能となる。これにより、余剰硬化剤の回収を効率的に行うことができる。
【0049】
また、分子量が小さい硬化剤を使用することが好ましい。分子量が小さいと粘度が低く、スレート61への浸透が速いため処理時間を短縮できる。
【0050】
図4を参照して、本体21について詳細に説明する。
【0051】
本体21には吸引装置26を設けている。このため、短いホース14の場合では、圧縮空気を供給しなくてもスレート上の硬化剤を吸引して回収することもできる。吸引装置としては吸引能力が高いものを使用すれば良く、例えば真空吸引装置等が挙げられる。
【0052】
ホース14を介して回収された硬化剤及び異物はフィルタ22でろ過される。ここで、主に塵等の異物が取り除かれる。
【0053】
ろ過された余剰硬化剤は、硬化剤を貯留する貯留槽とを兼ねた浄化槽41に通じ、ここで浄化が行われる。本実施形態では硬化剤の浄化にせき板44を3つ用いた油分離法を用いている。油分離法は比重差で分離しており、一般にせき板44の数が多いほど分離効果が高くなるため、せき板44を多く設置するとよい。
【0054】
なお、本実施形態では、硬化剤貯留槽を浄化槽41と一体として構成しているが、別々に構成して、浄化槽で浄化した硬化剤を硬化剤貯留槽に供給する形態としてもよい。
【0055】
浄化槽で浄化した硬化剤はポンプ43を介して硬化剤供給管27に送られ、再度スレートに塗布される。なお、浄化の過程で分離したドレンはドレン口28から排出される。
【0056】
使用に伴い、硬化剤が減少した場合には硬化剤注入口29から硬化剤を補充することも可能である。
【0057】
余剰硬化剤及び異物とともに本体21に回収された空気は、ろ過フィルタ22、硬化剤分離板42を通り、ろ過フィルタ22では除去しきれないアスベスト等の微粒子を集塵フィルタ23で除去した後、排気ダクト24を経由してブロワー25から排気として排出される。硬化剤分離板42の作用により、硬化剤等は排気ダクト24に送られることがない。
【0058】
また、集塵フィルタ23でアスベスト等の微粒子が除去されるため、ブロワー25からの排気にはアスベスト微粒子が含まれない。このため、排気を外部に排出しても環境に悪影響を及ぼすことがない。なお、集塵フィルタ23にはHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタや、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタを用いると良い。微粒子の捕集効果が高く、アスベスト微粒子の除去が高いためである。
【0059】
次に、図5を参照してアスベスト硬化剤塗布装置の使用方法について説明する。
【0060】
工場や駅の屋根等、一般にスレートが使用されている箇所は面積が大きく、処理が面倒である。本発明では、長いホース14を用いてアスベスト硬化剤を塗布することができるため、本体21を支持部52に固定したまま、塗布回収部11のみを移動させるだけで塗布することが可能である。
【0061】
本発明では、スレート61上の塵等も含め、スレート61の全体を硬化剤で固めるため、スレート61の前処理は特に行う必要はないが、落ち葉等の大きなごみ等は事前に処理するとよい。
【0062】
空中作業車53の支持部52にアスベスト硬化剤塗布装置の本体21及びコンプレッサー51を固定する。作業者は塗布回収部11のみを移動させてアスベスト硬化剤を塗布すればよいため、一度に広範なスレート61を処理することができる。
【0063】
塗布回収部11には波形状のカバー12(図1参照)が設けられているため、塗布回収部11をスレート61の波形状に沿って移動させながら硬化剤を塗布すればよい。また、スレート屋根上部から下部へ塗布回収部11を移動させて処理することが好ましい。塗布回収部11を何度も往復する必要はなく、スレート61屋根の勾配により余剰硬化剤が下方に流れるものを利用しつつ塗布することができる。また、塗布回収部11の不要な往復運動によりスレート61のアスベスト微粒子を飛散させることもない。
【0064】
本体21から硬化剤供給管27を通じて供給される硬化剤を塗布すると同時に、本体21に設けられた吸引装置26(図4参照)及びコンプレッサー51から圧縮空気供給管18を介して供給される圧縮空気により、余剰硬化剤が本体21に回収される。回収した余剰硬化剤は本体21内部で浄化され、硬化剤供給管27を介し、再度塗布回収部11からスレート61に塗布される。
【0065】
処理したスレート61は硬化剤が浸透し、含有アスベストは固められているため、アスベスト微粒子が飛散するおそれはない。このため、そのまま使用継続することもできる。
【0066】
また、処理したスレート61を撤去処分する際にもアスベスト微粒子が飛散することはないため、環境問題を引き起こすことなく、安全に撤去処分することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の概略を示す全体図である。
【図2】スレート屋根に硬化剤を塗布した際の硬化剤の流れを示す斜視図である。
【図3】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の塗布回収部の内部構造を示す断面図である。
【図4】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の本体の内部構造を示す断面図である。
【図5】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
11 塗布回収部
12 カバー
13 ブラシ
14 ホース
15 吸気調節具
16 吸気孔
17 吸気調節具固定ネジ
18 圧縮空気供給管
21 本体
22 濾過フィルタ
23 集塵フィルタ
24 排気ダクト
25 ブロワー
26 吸引装置
27 硬化剤供給管
28 ドレン口
29 硬化剤注入口
31 硬化剤噴射ノズル
32 回収路
41 浄化槽
42 硬化剤分離板
43 ポンプ
44 せき板
51 コンプレッサー
52 支持部材
53 空中作業車
61 スレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレートにアスベスト硬化剤を塗付してスレートを処理するアスベスト硬化剤塗布装置及びこれを用いたアスベスト硬化剤塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根や外壁等の建築材料として、耐久性及び加工容易性が高い石綿スレートが大量に使用されてきた。石綿スレートは、セメントの強度を補強すべく強化材としてアスベストを混入したものである。アスベストはその繊維が非常に細く、容易に大気中に浮遊する。このため、容易に人体に吸引されやすく、肺繊維症や悪性中皮種の原因となり、肺がんを引き起こす可能性がある。
【0003】
石綿スレートは、アスベストの飛散の心配はないと言われてきたが、経年変化、雨、酸性雨や大気汚染などの影響を受けて劣化し、アスベストを飛散させることがわかってきた。このため、現在では使用禁止に至っている。
【0004】
しかし、既存の工場や駅の屋根等に大量に使われており、その撤去、修繕が社会問題の一つに挙げられている。スレートの廃棄処分には、一般的に破砕後、熱処理する必要があるが、スレートは耐熱性に優れるため、高温処理が必要である。
【0005】
このような事情を鑑みて、無機物質からなる硬化剤によってガラス化する発明(例えば、特許文献1)や、比較的低温でスレートを融解し、ガラス化する発明(例えば、特許文献2)等が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、アスベスト含有セメント硬化体の除去剤及び除去方法に関するものである。
【0007】
酸解離定数が6.4未満の酸を含むアスベスト含有セメント硬化体の除去剤であり、酸として、硝酸、塩酸及びフッ酸から選ばれる1種または2種以上を含む除去剤の発明である。本除去剤は、緻密化した硬化体に対しても、浸透性に優れ、硬化体の強度に寄与している水和生成物を溶解させて、その結合力を弱めることができる。
【0008】
そして、この除去剤をアスベスト含有セメント硬化体にスプレー、はけ塗り、ノズル等により、塗付、散布、注入又は含浸させて湿潤させた後に、除去する方法である。
【0009】
特許文献2に記載の発明は、スレートを融解剤で前処理した後、融解剤に入れて加熱して、スレート廃材に含有するアスベストを処理している。
【0010】
アスベストを含むスレート廃材を粉砕せずに、ホウ砂、ホウ酸と炭酸ナトリウムの混合物、又はホウ砂と炭酸ナトリウムの混合物からなる融解剤の水溶液に漬ける。それを減圧下又は加圧下のもと、融解剤をスレートの表面から内部の空隙に含浸した後に、融解剤を満たした溶融炉に浸漬して780℃〜1000℃の範囲で加熱し、スレートに含まれるアスベストを溶融してガラス化するものである。
【特許文献1】特開2006−117481号公報
【特許文献2】特開2005−279589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の発明は、除去材をスレートに塗布、散布、注入又は含浸させる際に、スプレー、はけ塗り、ノズル等で塗布等をしているため、塗布等の作業中にアスベスト微粒子を飛散させてしまうおそれがある。
【0012】
また、スレートは波形状のものが多く、スレートの山部分に塗布等した除去剤は谷部分に流れてしまう。そして、屋根に設置されているスレートは一般的に勾配が設けられており、勾配によって除去剤がスレートに浸透する前に、下方に流れ落ちてしまう。このため、スレート全体に除去剤を浸透させるには過剰に除去剤を塗布等する必要があるが、過剰の除去剤を回収する手段は全く開示されていない。この過剰の除去剤は塵等の異物を含み、また、硬化してしまうものであるため、再度利用することはできず、無駄になってしまうという問題がある。
【0013】
更に、スレートは一般的に広範囲にわたって設置されているが、広範な面積を処理する方法について何ら開示されていない。
【0014】
特許文献2に記載の発明は、溶融炉で行うものであり、溶融炉はある場所に設置して稼動させるものゆえ、溶融炉までスレート廃材を搬送しなければ処理できないという課題を有する。
【0015】
また、同様の理由から、スレート廃材の撤去や搬送する過程でアスベストを飛散させてしまうおそれを有する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、スレートに硬化剤を噴射塗布し、余剰硬化剤を回収する塗布回収部と、前記余剰硬化剤を吸引する吸引装置と、回収した前記余剰硬化剤を浄化する浄化槽と、浄化した硬化剤と一定量の硬化剤を貯留する貯留槽と、硬化剤を前記塗布回収部に供給するポンプとを有する本体と、前記塗布回収部と前記本体とを接続し、余剰硬化剤回収路を有するホースと、前記本体から前記塗布回収部に硬化剤を供給する硬化剤供給路と、前記余剰硬化剤回収路に接続しコンプレッサーから圧縮空気を供給する圧縮空気供給管とを備え、前記余剰硬化剤回収路に圧縮空気を送ってスレート上の余剰硬化剤を回収し、浄化した硬化剤を再度スレートに塗布することを特徴とする。
【0017】
更に、本発明は、前記圧縮空気供給管を2以上設け前記余剰硬化剤の回収を高めたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記塗布回収部の端部を波形状カバーとし、噴射した硬化剤の前記波形状カバー外部への飛散を抑制したことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記波形状カバー内部にブラシを設け、硬化剤をスレート上に均一に塗布することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記本体を支持部材に固定して、前記塗布回収部のみを移動してスレートに硬化剤を塗布し、余剰硬化剤を回収して浄化した硬化剤を再度スレートに噴射塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、スレートに含浸しない余剰硬化剤を回収、浄化して再利用できるため、必要十分量のみの硬化剤でスレートを処理できる利点を有する。
【0022】
また、本発明によると、圧縮空気供給管から圧縮空気を供給して余剰硬化剤やスレート上の異物等を回収するため、長いホースを用いることができる。このため、本体部分を動かすことなく、余剰硬化剤を回収、浄化により硬化剤を再利用しつつ、広範な面積のスレートに硬化剤を塗布できる利点を有する。
【0023】
更に、本発明によると、スレートの前処理を行う必要がなく、既存の建造物の状態のままで処理できるため、解体、撤去時にもアスベスト微粒子が飛散するおそれがない利点を有する。
【0024】
更に、本発明によると、余剰硬化剤とともに回収したアスベストの微粒子等は集塵フィルタによって除去されるため、アスベストの微粒子が外部に飛散することがない利点を有する。
【0025】
更に、本発明によると、塗布回収部の先端に波形状のカバーを設けているため、スレートとカバーが密着し、噴射した硬化剤や、硬化剤の噴射によってスレートに含有するアスベストの微粒子及びスレート上の塵等の異物が外部に飛散することがないという利点を有する。
【0026】
更に、波形状のカバー内部にブラシを設けているため、硬化剤をスレートに均一に塗布することができ、必要量の硬化剤を塗布できる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1を参照して、本発明のアスベスト硬化剤塗布装置の概略について説明する。
【0028】
アスベスト硬化剤塗布装置は、主に塗布回収部11と、ホース14と、本体21と、硬化剤供給管27と、圧縮空気供給管18から構成される。
【0029】
塗布回収部11はホース14と接続している。塗布回収部11の長手方向の幅は20〜100cm程度が好ましい。塗布回収部11が大きいと一度に処理できる範囲が大きくなる一方、作業者が作業し辛くなってしまう。また、小さすぎると処理面積が小さくなり、作業が煩雑になってしまうからである。なお、塗布回収部11を機械等で駆動させる場合、さらに大きくすることも可能である。
【0030】
波形状スレートの場合、大波、小波等種々のサイズがあるが、例えば、大波スレートの場合、山部から山部の幅は約130mm、山部から谷部の高さは約36mmである。塗布回収部11の長手方向の幅が50cm程度だと、スレート大波4、5列分を一度に処理できる。
【0031】
塗布回収部11先端にはスレートの形状に合わせた波形状のカバー12を設けている。このため、スレートとの間に隙間ができず、噴射した硬化剤や、噴射圧力によってスレートに含有するアスベスト微粒子や塵等が外部に飛散することがない。
【0032】
また、カバー12の内側にはブラシ13を設けている。ブラシ12もアスベストの微粒子が飛散することを抑えるほか、塗布した硬化剤をスレート上に均一にする役割を有する。
【0033】
ホース14は一端が塗布回収部11と接続し、他端は本体21と接続している。ホース14には圧縮空気供給管18が接続している。
【0034】
ホース14内には圧縮空気供給管18を通じ、コンプレッサー51(図5参照)からの圧縮空気が供給される。圧縮空気供給管18は本体21方向に圧縮空気が供給されるように接続しており、本体21に設けた吸引装置26との相乗効果により、余剰硬化剤の回収を促進するとともに、圧縮空気が塗布回収部11に送られないようにしている。本実施形態では2つの圧縮空気供給管18をホース14に設けて、余剰硬化剤の回収能力を高めている。なお、更に余剰硬化剤の回収能力を上げる場合、圧縮空気供給管18を追加して使用することも可能である。
【0035】
ホース14の長さは処理をする建物等に合わせて任意に選択可能である。広範囲にわたる建物等を処理する場合、長いホース14を用いればよい。50m程度の長いホース14を用いた場合でも、圧縮空気の作用により、余剰硬化剤の回収を可能としている。
【0036】
ホース14には吸気調節具15を設けており、吸気調節具15はホース14の周りを回転し、吸気調節具固定ネジ17によって任意の吸気量にて固定できる。吸気孔16から吸気を行うことで、余剰硬化剤及びスレート上の異物等の回収を促進している。
【0037】
本体21はホース14と硬化剤供給管27と接続している。ホース14を介して回収した余剰硬化剤を、本体21内部に設けた浄化槽41(図4参照)で浄化する。浄化した硬化剤は再び硬化剤供給管27を介して塗布回収部11に供給している。
【0038】
スレートの裏面全体まで硬化させるためには、スレートの体積の120%程度の硬化剤が必要である。
【0039】
図2に示すように、屋根に設置されたスレート61は勾配が設けられている。屋根勾配は建物によって異なるが、概ね5〜30度である。スレート61の裏面まで硬化剤が浸透するまでに一定時間が必要であるが、適量の硬化剤(スレート61体積の100%)を塗布すると屋根勾配があるため、矢印のように硬化剤は下方に流れてしまい、スレート61裏面まで硬化剤を浸透させることができない。また、波形状のスレート61の場合、山部分に塗布した硬化剤は、矢印のように谷部分に流れてしまう。このため、スレート61全体に硬化剤を浸透させるには過剰の硬化剤を塗布することが必要であり、スレート61の体積の20%程度多く硬化剤を塗布しなければならない。
【0040】
このように、スレート61全体に硬化剤を浸透させるためには、スレート61体積の120%程度の硬化剤を塗布しなければならないが、塗布した硬化剤の20%程度は無駄になってしまう。本発明では、この20%程度の余剰硬化剤を塗布回収部11(図1参照)から回収し、本体21(図1参照)内部の浄化槽41(図4参照)にて浄化して再利用できるため、硬化剤を無駄なく使用できる。
【0041】
図3を参照して、硬化剤の塗布及び回収機構にについて詳細に説明する。
【0042】
本実施形態では、ホース14の任意の箇所に硬化剤供給管27を挿入しており、ホース14内部は硬化剤回収路32と硬化剤供給管27から構成されている。硬化剤供給管27の先端に硬化剤噴射ノズル31を設けており、本体21(図4参照)のポンプ(図4参照)から硬化剤供給管27を介して送られてきた硬化剤が硬化剤噴射ノズル31からスレート61に噴射される。本発明では、広範な面積のスレート61を処理するため、本体21と塗布回収部11は長尺なホース14を用いている。このため、塗布回収部11まで硬化剤を供給する必要性から、高圧力で硬化剤を供給して塗布可能な噴射ノズル31により噴射塗布をしている。
【0043】
なお、硬化剤供給管27をホース14内の任意箇所に挿入せず、塗布回収部11に直接挿入しても良い。
【0044】
塗布回収部11先端には、波形状のスレートに合わせて、波形状のカバー12を設けているため、噴射した硬化剤が外部に飛散することがなく、また、ブラシ13によって硬化剤はスレート61に均一に塗布される。
【0045】
カバー12はラバー等柔軟なものを用いると良い。一般に、スレート61は突起状の固定具で固定されているが、カバー12にラバー等を用いることで、スレート61とカバー12との密着状態を維持し、噴射塗布した硬化剤やアスベスト微粒子が外部に飛散することを抑制できる。
【0046】
なお、スレート波板には小波、中波、大波と形状が種々あるが、波形状カバー12はそれらに適応したものを適宜選択して使用することも可能である。
【0047】
余剰硬化剤及びスレート61に含有するアスベストの微粒子等は、本体21に設けた吸引装置26(図4参照)の吸引力及びホース14に設けた圧縮空気供給管18(図1参照)から供給される圧縮空気の作用によって、硬化剤回収路32を経由して本体21に回収される。ホース14には吸気孔16を設けており、余剰硬化剤の吸引を促進している。
【0048】
硬化剤には、液状の無機系ガラス等、スレート61に浸透して硬化できるものを用いれば良い。好ましくは、紫外線により硬化するものが良い。塗布回収部11内は波形状のカバー12よってスレート61と密着しており、光が入らないため、硬化剤が固まることはなく、液状のまま本体21内部に回収することが可能となる。これにより、余剰硬化剤の回収を効率的に行うことができる。
【0049】
また、分子量が小さい硬化剤を使用することが好ましい。分子量が小さいと粘度が低く、スレート61への浸透が速いため処理時間を短縮できる。
【0050】
図4を参照して、本体21について詳細に説明する。
【0051】
本体21には吸引装置26を設けている。このため、短いホース14の場合では、圧縮空気を供給しなくてもスレート上の硬化剤を吸引して回収することもできる。吸引装置としては吸引能力が高いものを使用すれば良く、例えば真空吸引装置等が挙げられる。
【0052】
ホース14を介して回収された硬化剤及び異物はフィルタ22でろ過される。ここで、主に塵等の異物が取り除かれる。
【0053】
ろ過された余剰硬化剤は、硬化剤を貯留する貯留槽とを兼ねた浄化槽41に通じ、ここで浄化が行われる。本実施形態では硬化剤の浄化にせき板44を3つ用いた油分離法を用いている。油分離法は比重差で分離しており、一般にせき板44の数が多いほど分離効果が高くなるため、せき板44を多く設置するとよい。
【0054】
なお、本実施形態では、硬化剤貯留槽を浄化槽41と一体として構成しているが、別々に構成して、浄化槽で浄化した硬化剤を硬化剤貯留槽に供給する形態としてもよい。
【0055】
浄化槽で浄化した硬化剤はポンプ43を介して硬化剤供給管27に送られ、再度スレートに塗布される。なお、浄化の過程で分離したドレンはドレン口28から排出される。
【0056】
使用に伴い、硬化剤が減少した場合には硬化剤注入口29から硬化剤を補充することも可能である。
【0057】
余剰硬化剤及び異物とともに本体21に回収された空気は、ろ過フィルタ22、硬化剤分離板42を通り、ろ過フィルタ22では除去しきれないアスベスト等の微粒子を集塵フィルタ23で除去した後、排気ダクト24を経由してブロワー25から排気として排出される。硬化剤分離板42の作用により、硬化剤等は排気ダクト24に送られることがない。
【0058】
また、集塵フィルタ23でアスベスト等の微粒子が除去されるため、ブロワー25からの排気にはアスベスト微粒子が含まれない。このため、排気を外部に排出しても環境に悪影響を及ぼすことがない。なお、集塵フィルタ23にはHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタや、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタを用いると良い。微粒子の捕集効果が高く、アスベスト微粒子の除去が高いためである。
【0059】
次に、図5を参照してアスベスト硬化剤塗布装置の使用方法について説明する。
【0060】
工場や駅の屋根等、一般にスレートが使用されている箇所は面積が大きく、処理が面倒である。本発明では、長いホース14を用いてアスベスト硬化剤を塗布することができるため、本体21を支持部52に固定したまま、塗布回収部11のみを移動させるだけで塗布することが可能である。
【0061】
本発明では、スレート61上の塵等も含め、スレート61の全体を硬化剤で固めるため、スレート61の前処理は特に行う必要はないが、落ち葉等の大きなごみ等は事前に処理するとよい。
【0062】
空中作業車53の支持部52にアスベスト硬化剤塗布装置の本体21及びコンプレッサー51を固定する。作業者は塗布回収部11のみを移動させてアスベスト硬化剤を塗布すればよいため、一度に広範なスレート61を処理することができる。
【0063】
塗布回収部11には波形状のカバー12(図1参照)が設けられているため、塗布回収部11をスレート61の波形状に沿って移動させながら硬化剤を塗布すればよい。また、スレート屋根上部から下部へ塗布回収部11を移動させて処理することが好ましい。塗布回収部11を何度も往復する必要はなく、スレート61屋根の勾配により余剰硬化剤が下方に流れるものを利用しつつ塗布することができる。また、塗布回収部11の不要な往復運動によりスレート61のアスベスト微粒子を飛散させることもない。
【0064】
本体21から硬化剤供給管27を通じて供給される硬化剤を塗布すると同時に、本体21に設けられた吸引装置26(図4参照)及びコンプレッサー51から圧縮空気供給管18を介して供給される圧縮空気により、余剰硬化剤が本体21に回収される。回収した余剰硬化剤は本体21内部で浄化され、硬化剤供給管27を介し、再度塗布回収部11からスレート61に塗布される。
【0065】
処理したスレート61は硬化剤が浸透し、含有アスベストは固められているため、アスベスト微粒子が飛散するおそれはない。このため、そのまま使用継続することもできる。
【0066】
また、処理したスレート61を撤去処分する際にもアスベスト微粒子が飛散することはないため、環境問題を引き起こすことなく、安全に撤去処分することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の概略を示す全体図である。
【図2】スレート屋根に硬化剤を塗布した際の硬化剤の流れを示す斜視図である。
【図3】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の塗布回収部の内部構造を示す断面図である。
【図4】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の本体の内部構造を示す断面図である。
【図5】本発明によるアスベスト硬化剤塗布装置の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
11 塗布回収部
12 カバー
13 ブラシ
14 ホース
15 吸気調節具
16 吸気孔
17 吸気調節具固定ネジ
18 圧縮空気供給管
21 本体
22 濾過フィルタ
23 集塵フィルタ
24 排気ダクト
25 ブロワー
26 吸引装置
27 硬化剤供給管
28 ドレン口
29 硬化剤注入口
31 硬化剤噴射ノズル
32 回収路
41 浄化槽
42 硬化剤分離板
43 ポンプ
44 せき板
51 コンプレッサー
52 支持部材
53 空中作業車
61 スレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレートに硬化剤を噴射塗布し、余剰硬化剤を回収する塗布回収部と、
前記余剰硬化剤を吸引する吸引装置と、回収した前記余剰硬化剤を浄化する浄化槽と、浄化した硬化剤と一定量の硬化剤を貯留する貯留槽と、硬化剤を前記塗布回収部に供給するポンプとを有する本体と、
前記塗布回収部と前記本体とを接続し、余剰硬化剤回収路を有するホースと、
前記本体から前記塗布回収部に硬化剤を供給する硬化剤供給路と、
前記余剰硬化剤回収路に接続しコンプレッサーから圧縮空気を供給する圧縮空気供給管とを備え、
前記余剰硬化剤回収路に圧縮空気を送ってスレート上の余剰硬化剤を回収し、浄化した硬化剤を再度スレートに噴射塗布することを特徴とするアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項2】
前記圧縮空気供給管を2以上設け前記余剰硬化剤の回収を高めたことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項3】
前記塗布回収部の端部を波形状カバーとし、噴射した硬化剤の前記波形状カバー外部への飛散を抑制したことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項4】
前記波形状カバー内部にブラシを設け、硬化剤をスレート上に均一に塗布することを特徴とする請求項3に記載のアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項5】
前記本体を支持部材に固定して、前記塗布回収部のみを移動してスレートに硬化剤を塗布し、余剰硬化剤を回収して浄化した硬化剤を再度スレートに噴射塗布することを特徴とする請求項1から4に記載のアスベスト硬化剤塗布装置を用いたアスベスト硬化剤塗布方法。
【請求項1】
スレートに硬化剤を噴射塗布し、余剰硬化剤を回収する塗布回収部と、
前記余剰硬化剤を吸引する吸引装置と、回収した前記余剰硬化剤を浄化する浄化槽と、浄化した硬化剤と一定量の硬化剤を貯留する貯留槽と、硬化剤を前記塗布回収部に供給するポンプとを有する本体と、
前記塗布回収部と前記本体とを接続し、余剰硬化剤回収路を有するホースと、
前記本体から前記塗布回収部に硬化剤を供給する硬化剤供給路と、
前記余剰硬化剤回収路に接続しコンプレッサーから圧縮空気を供給する圧縮空気供給管とを備え、
前記余剰硬化剤回収路に圧縮空気を送ってスレート上の余剰硬化剤を回収し、浄化した硬化剤を再度スレートに噴射塗布することを特徴とするアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項2】
前記圧縮空気供給管を2以上設け前記余剰硬化剤の回収を高めたことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項3】
前記塗布回収部の端部を波形状カバーとし、噴射した硬化剤の前記波形状カバー外部への飛散を抑制したことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項4】
前記波形状カバー内部にブラシを設け、硬化剤をスレート上に均一に塗布することを特徴とする請求項3に記載のアスベスト硬化剤塗布装置。
【請求項5】
前記本体を支持部材に固定して、前記塗布回収部のみを移動してスレートに硬化剤を塗布し、余剰硬化剤を回収して浄化した硬化剤を再度スレートに噴射塗布することを特徴とする請求項1から4に記載のアスベスト硬化剤塗布装置を用いたアスベスト硬化剤塗布方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2008−155103(P2008−155103A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345386(P2006−345386)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(594117515)株式会社橋津塗料 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(594117515)株式会社橋津塗料 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]