説明

アスペクト比が大きい薄片状アルファーアルミナ結晶体及びその製造方法

本発明は、アスペクト比が大きい薄片状アルファーアルミナ結晶体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、水溶性溶剤を含有するアルミニウム前駆体水溶液、亜鉛前駆体水溶液及びスズ前駆体水溶液を加水分解して混合ゲルを製造した後、熟成、乾燥及び結晶工程を行うことで製造される酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズを含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体に関する。前記結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、平均粒子直径が30μm以上、アスペクト比が100以上であり、従って、高品質の真珠光沢顔料基質、研磨剤、セラミック材料及び充填剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスペクト比が大きい薄片状アルファーアルミナ結晶体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、水溶性溶剤を含有するアルミニウム前駆体水溶液、亜鉛前駆体水溶液及びスズ前駆体水溶液を加水分解して混合ゲルを製造した後、熟成、乾燥及び結晶工程を行うことで製造される酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズを含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体に関する。前記結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、平均粒子直径が30μm以上、アスペクト比が100以上であり、従って、高品質の真珠光沢顔料基質、研磨剤、セラミック材料及び充填剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
セラミックは、高温で熱処理して製造された非金属無機固体材料を言い、耐火性、耐酸性及び耐アルカリ性が優れている。セラミック材料、研磨剤、充填剤及び真珠光沢顔料用基質は、薄片形状を持ち、サイズ及び厚さが均一であり、表面が平坦であり、粒子間の凝集が比較的低くなければならない。
【0003】
セラミック材料と充填剤として使用するためには、熱伝導度と機械的強度の向上が必要である。この目的のために、厚さが薄く、粒子サイズが均一でなければならず、均一な分散及び分布のために、粒子間の凝集を低下させなければならない。
【0004】
真珠光沢顔料の基質としての重要な特性は、粒子サイズ、形状、表面特性及び屈折率である。即ち、反射光と透過光の比率はサイズが大きい粒子と小さい粒子で異なるため、鮮明な色を得るためには、均一な粒子サイズが必要である。また、粒子サイズは光の波長と密接な関係があり、真珠光沢顔料の着色力に大きく影響を及ぼす。
表面積は、粒子サイズが小さくなるほど大きくなるため、着色力と反射率が増加し、色は鮮明となる。しかしながら、粒子が小さいと金属または金属酸化物を均一にコーティングすることが難しく、光の干渉効果が低下し、真珠の光沢性を低下させる。従って、粒子は、多様な真珠色の実現のために十分に均一なサイズを持つものが好ましい。
【0005】
また、着色力と隠蔽力のような真珠色の実現に影響を及ぼすため、真珠光沢顔料の基質は、均一な厚さと平坦な表面を持つ透明な粒子でなければならない。粒子の厚さが均一でなかったり、表面が平坦でない場合、表面で大部分の光が反射したり、散乱する。また、粒子が金属または金属酸化物でコーティングされるとき、粒子の凝集と不均一な厚さが多様な真珠色の実現を阻害する。
【0006】
従って、真珠光沢顔料として有用であるためには、薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下であり、平均粒子サイズが15μm以上であり、凝集が発生することなく表面が非常に平坦である透明な薄片状粒子でなければならない。
【0007】
従来の真珠光沢顔料の基質の例として、炭酸鉛、オキシ塩化ビスマス(BiOCl)及び天然または合成雲母を含む。前記雲母は、セラミック材料の延性及び機械的性質を向上させるために補強財として使用されるか、または熱伝導性を向上させるために添加剤として使用される。
【0008】
一方、薄片状アルミナ基質は従来、水熱法を使用して製造されるか、真珠光沢顔料の基質として使用するために添加剤として二酸化チタンまたは二酸化スズを使用して製造される。
【0009】
前記水熱法は、粒子サイズが小さく、アスペクト比が低いという問題を有する。二酸化チタンの添加方法は老化作用がないため、真珠光沢顔料の基質として優れた物性を示すにもかかわらず、粒子サイズが不均一であり、分散性が優れた薄片状アルファ−アルミナ結晶体を得ることが困難である。二酸化スズの方法は、サイズが大きいにもかかわらず、厚さが比較的厚くなる。
【0010】
従って、アルミニウム溶液は通常、溶液化学法により加水分解されて疑ベーマイトになる。前記疑ベーマイトは、400℃以上でガンマ−アルミナ(γ−Al23)に相転移される。六方晶系の薄片状結晶体は、1,200℃で加熱処理法により溶融塩溶液でγ−アルミナ(γ−Al23)をアルファ−アルミナに変えることで形成される。
【0011】
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、金属または金属酸化物でコーティングする際に多様な色の真珠光沢効果を示すように、薄く、均一な平面であり、50以上のアスペクト比(=直径/厚さ)であると共に、透明でなければならない。
【0012】
しかし、従来の薄片状結晶体は、厚さが厚いため比較的アスペクト比が低く、真珠光沢顔料の基質として優れた特性を示すことができない。
【0013】
本発明の発明者らは、アスペクト比が大きい薄片状アルファ−アルミナ結晶体の探索した結果として、必須成分として酸化アルミニウム及び酸化亜鉛を含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体及びその製造方法に関して特許を出願している[特許文献1]。上記のように製造された薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、厚さが0.1〜0.5μm、直径が15〜25μm、アスペクト比が50〜250である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2005−0025126号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の発明者らは、従来の真珠光沢顔料の基質として広く使用されている薄片状アルミナ結晶体の形態学的な問題を解決し、特に、本発明者により出願された特許文献1に開示された薄片状アルファ−アルミナ結晶体のアスペクト比を向上するために鋭意研究を行った。その結果、主成分として酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズが一定質量比で含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下であり、平均粒子直径が30μm以上であり、アスペクト比が100以上であることを発見した。また、水溶性溶剤を含むアルミニウム前駆体水溶液、亜鉛前駆体水溶液及びスズ前駆体水溶液を加水分解する方法により混合ゲルを製造した後、特定条件下で、熟成、乾燥及び結晶化工程を行うことで、薄片状アルファ−アルミナ結晶体が製造されることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0016】
従って、本発明は、主成分として酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズを含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体、及びその製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、主成分として酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズを含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体に関する。
【0018】
更に、本発明は、
(a)水溶性溶剤を含有するアルミニウム前駆体水溶液と、前記アルミニウム前駆体100質量部に対して、亜鉛前駆体0.05〜5質量部及びスズ前駆体0.01〜0.5質量部を含有する前駆体水溶液を混合することで、金属前駆体水溶液を製造する工程と、
(b)前記金属前駆体水溶液をナトリウム塩水溶液でpH6.0〜7.5に滴定した後、加水分解することで、混合ゲルを製造する工程と、
(c)前記混合ゲルを60〜100℃で5〜30時間熟成し、前記熟成した混合ゲルを乾燥して混合ゲルを前処理する工程と、
(d)前記前処理した混合ゲルを60〜200℃で5〜30時間乾燥する工程と、
(e)前記乾燥した混合ゲルを850〜1,300℃で1〜8時間結晶化することにより、薄片状アルファ−アルミナ結晶体と溶剤が混合されたケーキを製造する工程と、
(f)前記ケーキを室温まで冷却して、前記ケーキを20〜90℃の水に溶解した後、ろ過することで前記溶剤を除去して、20〜90℃の0.1〜30%硫酸溶液に分散した後、ろ過、洗浄及び乾燥することで、アルファ−アルミナ結晶体を製造する工程と、
からなる薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法を示す。
【図2】実施例1により製造された薄片状アルファ−アルミナ結晶体のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0021】
本発明は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛と酸化スズが一定質量比で含有されている新規の薄片状アルファ−アルミナ結晶体に関する。前記酸化亜鉛と酸化スズはアルミニウム結晶体の表面に分布されるため、厚さの減少と粒子の成長を促進させ、凝集を防止する。前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、好ましくは、0.1〜0.3μmであり、平均粒子直径が30μm以上、好ましくは、30〜70μmであり、アスペクト比が100以上、好ましくは、100〜500、更に好ましくは、150〜300であり、従って、真珠光沢顔料の基質として有用である。
【0022】
前記薄片状アルミナ結晶体は、本発明の発明者らにより出願された特許文献1に開示された発明を向上させた発明であり、特に、光学的特性またはその他の物性を決定するアスペクト比を向上させたものである。この目的のために、主成分である酸化スズは、酸化亜鉛と共にアルミナの表面に分布され、従来使用される酸化亜鉛に比べて、薄片状粒子の直径方向への成長を促進するのに効率的である。これは、直径方向(即ち、
【0023】
【化1】

【0024】
面)への結晶体の成長エネルギーを増加させ、結晶体の長さ方向へのアルミニウム原子と酸素原子、即ち、結晶成長単位の配列を促進させるためである。
【0025】
図1に例示するように、薄片状アルファ−アルミナ結晶体について詳細に説明すると次の通りである。
【0026】
まず、金属前駆体水溶液は、水溶性溶剤を含むアルミニウム前駆体水溶液と、亜鉛前駆体水溶液及びスズ前駆体水溶液を混合して製造される。
【0027】
従来のアルミニウム前駆体が、本発明のアルミニウム前駆体として使用され、アルミニウム前駆体の例として限定はなく、アルミニウムの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物が含まれ、特に、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム及び塩化アルミニウムを含む。従来の亜鉛前駆体が、本発明の亜鉛前駆体として使用され、亜鉛前駆体の例として限定はなく、亜鉛の酸塩、ハロゲン化物及び酸化物が含まれ、特に、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛及び塩化亜鉛を含む。従来のスズ前駆体が、本発明のスズ前駆体として使用され、スズ前駆体の例として限定はなく、スズの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物が含まれ、特に、硫酸スズ、硝酸スズ及び塩化スズを含む。
【0028】
本発明において、硫酸アルミニウムは、加水分解、溶剤との化学親和力、及び結晶化後の水内の薄片状結晶体との容易な分離などの特性を考慮して前記の例の中から選択される。その他の前駆体として、硫酸亜鉛と硫酸スズは、硫酸アルミニウムとの化学親和力、及び薄片状結晶体の厚さ減少と凝集の防止が優れていることを考慮して選択される。前記硫酸亜鉛と硫酸スズは各々、300℃以上の温度で酸化亜鉛と酸化スズに酸化される。前記酸化亜鉛と酸化スズは、結晶化工程で、薄片状アルファ−アルミナの結晶面に付着する。従って、表面エネルギーが相対的に高い(0001)面の成長が抑制されながら、表面エネルギーが相対的に低い
【0029】
【化2】

【0030】
面の成長が促進される(エピタキシャル成長)。
【0031】
従って、厚さ方向への成長が抑制されながら、直径方向への成長が促進されるため、酸化亜鉛のみ使用して製造された薄片状アルミナ結晶体と比較して、厚さはほぼ同等であるが、直径がはるかに大きい薄片状アルミナ結晶体を製造することができる。また、前記酸化亜鉛と酸化スズが使用される量によって様々な厚さとサイズを持つため、多様なアスペクト比を持つ薄片状アルファ−アルミナ結晶体が製造される。
【0032】
前記アルミニウム前駆体、亜鉛前駆体及びスズ前駆体は、水溶液の形態で、各々15〜35質量%、20〜50質量%及び20〜18質量%の含量で使用されることが好ましい。前記含量が前述した範囲を逸脱する場合、加水分解と乾燥工程の実施、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の凝集の防止、及びサイズ及びアスペクト比の調節が困難となる。
【0033】
前記亜鉛前駆体は、アルミニウム前駆体100質量部に対して0.05〜5質量部の含量で使用される。前記含量が0.05質量部未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の凝集を抑制することが難しいため、厚さが大きくなり、アスペクト比は減少する。前記含量が5質量部を超過する場合、前記酸化亜鉛は結晶化工程で不純物として適用し、不均一核を生成するため、サイズの小さい結晶体の生成を増加させる。
【0034】
前記スズ前駆体は、アルミニウム前駆体100質量部に対して0.01〜0.5質量部の含量で使用される。前記含量が0.01質量部未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体のサイズを大きくすることが難しい。前記含量が0.5質量部を超過する場合、アルファ−アルミナ結晶体の厚さが増加することでアスペクト比は減少する。
【0035】
更に、前記溶剤水溶液は、固相を核生成と核成長が比較的に容易である液相に変える。溶融塩で核生成と核成長の機構は下記のとおりである。溶質分子または原子は凝集して種を形成し、表面自由エネルギーと体積自由エネルギーの支配下で核生成及び核成長が続く。
【0036】
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体の核生成は、均一核生成と不均一核生成に分けられる。前記均一核生成は、溶融塩溶液内の過飽和による原子の拡散により起きる。前記不均一核生成は、溶液を含む容器または固体または不純物の表面で発生する。
【0037】
前記薄片状アルファ−アルミナ結晶体の核生成は、その他の物質の核生成の場合のように不均一に進行される。界面エネルギーは、核生成がるつぼの表面及び不純物粒子の表面のような固体表面に発生するときに低下するため、活性エネルギーが不均一核生成より比較的低くなる。
【0038】
前記不均一核生成での活性エネルギーは、固体表面の溶液の濡れ角によって大きく変わり、核生成は濡れ角が小さいほど容易となる。
【0039】
しかしながら、濡れ角が小さくとも、表面の化学親和力または物性は濡れ角よりも重要因子であるため、核生成は容易に発生されない。従って、固体表面の微細気孔や溝、または核生成物質と固体表面との化学親和力がある場合、核生成が促進される。
【0040】
不均一核発生には2種類がある。一つは、るつぼ表面と不純物粒子表面での核発生及び核成長であり、もう一つは、エピタキシャル方向と呼ばれる特定方向への核成長である。
【0041】
従来の水溶性溶剤が、本発明で使用され得る。前記水溶性溶剤は、アルミニウム前駆体との化学親和力が優れており、比較的低い温度でも溶融塩を容易に形成し、結晶化後の水に容易に溶解される。前記水溶液溶剤の例として限定はなく、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム及び水酸化カリウムを含む。前記水溶性溶剤は、アルミニウム前駆体100質量部に対して80〜120質量部の含量で使用されることが好ましい。前記含量が80質量部未満の場合、溶融塩の形成と薄片状アルファ−アルミナ結晶体の成長が困難となり得る。前記含量が120質量部を超過する場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体のサイズとアスペクト比が減少してしまう。
【0042】
次の工程として、前記金属前駆体水溶液をナトリウム塩水溶液でpH6.0〜7.5に滴定した後、加水分解を行い、混合ゲルを製造する。
【0043】
従来のナトリウム塩水溶液は、本発明で使用され得る。前記ナトリウム塩の例として限定はなく、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム及びこれらの混合物を含む。
【0044】
前記混合ゲルを熟成して乾燥する。前記熟成は、5〜30時間60〜100℃で実施される。前記温度が60℃未満の場合、前記混合ゲルに含有される疑ベーマイトの成長が困難となり得る。前記温度が100℃を超過する場合、疑ベーマイトの形態変化が、熱水反応により起こり、薄片状結晶体の形成が困難となり得る。前記熟成時間が5時間未満の場合、均一な混合ゲルが得られず、疑ベーマイトの成長が抑制されるため、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の凝集が激しく起きる。一方、前記熟成時間が30時間を越えると、疑ベーマイトの過度な成長により厚さが厚い薄片状アルファ−アルミナ結晶体が得られる。
【0045】
前記混合、加水分解、及び熟成工程は、疑ベーマイトの生成及び成長、及び混合ゲルの均一な分散を促進する。また、結晶化工程は、針状ガンマ−アルミナ結晶体の凝集により薄片状体の形成を可能とし、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の表面に酸化亜鉛と酸化スズを分散させるため、厚さの減少、粒子の成長を促進させて、凝集を防止する。
【0046】
前記乾燥は、5〜30時間60〜200℃で実施される。前記温度が60℃未満の場合、乾燥が不十分である。前記温度が200℃を超えるとき、混合ゲルの過度な乾燥収縮により硬い乾燥ゲルが形成され、疑ベーマイトの凝集により不均一な薄片状結晶体が形成され得る。
【0047】
前記乾燥された混合ゲルは、1〜8時間850〜1,300℃で結晶化される。前記温度が850℃未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の形成が困難となり得る。前記温度が1,300℃を超える場合、溶剤を含有する硫黄が分離され、溶融塩の維持が困難であるため、薄片状結晶体が凝集し、また、製造コストが増加する。
【0048】
前記結晶化は、温度勾配なく均一な溶融塩を形成することで、アルファ−アルミナに相転移される前に、十分なサイズを有する薄片状結晶体が針状粒子の凝集により形成されるように、実施される。
【0049】
前記結晶化されたケーキは、従来の方法により冷却、洗浄及び乾燥される。本発明において、 室温まで前記ケーキを冷却し、29〜90℃で0.1〜30%硫酸溶液で前記ケーキを分散した後、ろ過、洗浄及び乾燥することで、薄片状アルファ−アルミナ結晶体は製造される。前記硫酸溶液の濃度が0.1%未満の場合、薄片状アルファ−アルミナ結晶体の分散が困難となり得る。前記濃度が30%を超過すると、分散効果が期待できない一方、廃液を排出すための費用が増加する。
【0050】
従って、主成分として酸化アルミニウムと、補助成分として酸化亜鉛が一定質量比含有された薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下であり、平均粒子サイズが30μm以上であり、アスペクト比が100以上である。
【0051】
本発明を下記実施例により更に詳しく説明する。下記実施例を本発明を例示するだけであり、請求発明の範囲の限定とみなしてはならない。
【0052】
実施例1
純水1,900mLが入った反応器5Lに、硫酸アルミニウム(Al2(SO43・18H2O)670g、硫酸ナトリウム(Na2SO4)345g、硫酸カリウム(K2SO4)280g、34%硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)水溶液4.8g、及び17%硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)水溶液1.0gを65℃で混合して、均一な混合溶液を製造した。アルカリ溶液は、65℃の蒸留水900mLに、炭酸ナトリウム(Na2CO3)324gとリン酸ナトリウム((NaPO36)2.7gを溶解して製造された。疑ベーマイトと溶剤が混合されたゲルは、攪拌しながら、硫酸アルミニウム混合溶液(65℃)にアルカリ溶液を25mL/minの速度で滴定して、最終pH6.8となるように調節して製造された。前記混合ゲルは90℃で20時間熟成され、60℃で真空蒸留して、110℃で20時間乾燥した。薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、前記乾燥された混合ゲルを約5mm以下に粉砕して、7時間1,200℃でアルミナるつぼ(2L)で結晶化して製造された。室温まで前記るつぼを冷却して、温水(60℃)に前記溶剤を溶解した後、ろ過することで、薄片状アルファ−アルミナ結晶体から前記溶剤を分離した。反応器(5L)に、前記分離した薄片状アルファ−アルミナ結晶体と10%硫酸溶液3Lを入れて、 前記混合液を60℃で48時間攪拌することで、前記結晶体を完全に分散した。
前記分散された溶液をろ過し、洗浄して、100℃で乾燥することで、平均粒子厚さが0.22μmであり、平均粒子サイズが35.8μmである透明な薄片状アルファ−アルミナ粒子を製造した。X線回折分析を通して、アルファ−アルミナ結晶体が生成されたことを確認し、原子分析を通して、0.4質量部の酸化亜鉛と0.09質量部の酸化スズを含有することを確認した。
【0053】
実施例2
17%硫酸スズ0.5gを使用することを除いて、実施例1と同様に、透明な薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。
前記製造した薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.2μmであり、平均粒子サイズが32.8μmであることを確認した。原子分析を通して、0.4質量部の酸化亜鉛と0.04質量部の酸化スズを含有することを確認した。
【0054】
実施例3
35%硫酸亜鉛6gを使用することを除いて、実施例1と同様に、透明な薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。
前記製造した薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.18μmであり、平均粒子サイズが32.1μmであることを確認した。原子分析を通して、1.0質量部の酸化亜鉛と0.09質量部の酸化スズを含有することを確認した。
【0055】
実施例4
17%硫酸スズ1.0gを使用することを除いて、実施例3と同様に、透明な薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。
前記製造した薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが0.17μmであり、平均粒子サイズが31.5μmであることを確認した。原子分析を通して、1.0質量部の酸化亜鉛と0.09質量部の酸化スズを含有することを確認した。
【0056】
比較例1
17%硫酸スズ3gを使用することを除いて、実施例1と同様に、透明な薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。
前記製造した薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが1.0μmであり、平均粒子サイズが36.4μmであることを確認した。原子分析を通して、0.27質量部の酸化スズを含有することを確認した。
【0057】
比較例2
17%硫酸亜鉛6.0gを使用することを除いて、比較例1と同様に、透明な薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。
前記製造した薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均粒子厚さが1.5μmであり、平均粒子サイズが42.6μmであることを確認した。原子分析を通して、0.55質量部の酸化スズを含有することを確認した。
【0058】
比較例3:特許文献1の実施例1
純水1,900mLが入った反応器5Lに、硫酸アルミニウム(Al2(SO43・18H2O)670g、硫酸ナトリウム(Na2SO4)345g、硫酸カリウム(K2SO4)280g、及び35%硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)水溶液6gを65℃で混合して、均一な混合溶液を製造した。アルカリ溶液は、65℃の蒸留水900mLに、炭酸ナトリウム(Na2CO3)327gとリン酸ナトリウム((NaPO36)2.7gを溶解して製造された。疑ベーマイトと溶剤が混合されたゲルは、攪拌しながら、硫酸アルミニウム混合溶液(65℃)にアルカリ溶液を25mL/minの速度で滴定して、最終pH6.8となるように調節して製造された。前記混合ゲルは90℃で20時間熟成され、60℃で真空蒸留して、110℃で20時間乾燥した。
前記乾燥された混合ゲルは約5mm以下に粉砕され、焼成が1時間500℃でるつぼ(2L)で実施され、結合水(結晶水)を十分に除去した。前記温度を930℃まで上げて30分間維持して、均一な溶融塩の生成と針状ガンマ−アルミナ粒子の凝集による薄片状結晶体の生成を促進させた。 1,150℃で5.5時間結晶化を行うことで、薄片状アルファ−アルミナ結晶体を製造した。前記るつぼを室温まで冷却して、温水(60℃)に前記溶剤を溶解した後、ろ過することで、薄片状アルファ−アルミナ結晶体から前記溶剤を分離した。反応器(5L)に、前記分離した薄片状アルファ−アルミナ結晶体と10%硫酸溶液3Lを入れて、前記混合液を60℃で48時間攪拌することで、前記結晶体を完全に分散した。
前記分散された溶液をろ過し、洗浄して、100℃で乾燥することで、平均粒子厚さが0.25μmであり、平均粒子サイズが15.6μmである透明な薄片状アルファ−アルミナ粒子を製造した。原子分析を通して、0.05質量部の酸化亜鉛を含有することを確認した。
【0059】
実施例1〜4と比較例1〜3で製造された薄片状アルファ−アルミナ結晶体の厚さ及び平均粒子サイズを表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示されるように、実施例1〜4で製造された薄片状アルファ−アルミナ結晶体は、平均厚さが0.1〜0.3μm、平均サイズが31.5〜35.9μm、アスペクト比が160以上である。
【0062】
更に、本発明による実施例と比べて、硫酸亜鉛が含有されていない比較例1と、硫酸スズを過度に使用された比較例2はアスペクト比が著しく低く、硫酸スズが含有されていない比較例3は粒子サイズとアスペクト比(〜65)が大幅に減少する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
前述した通り、該結晶体は、必須成分として酸化アルミニウム、酸化亜鉛と酸化スズを一定質量比で含有し、厚さとサイズの抑制を促進させる。該結晶体は、平均粒子厚さが0.5μm以下、平均粒子サイズが30μm以上、アスペクト比が100以上であるため、高品質の真珠光沢顔料の基質、セラミック材料及び充填剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
必須成分として酸化アルミニウム、酸化亜鉛及び酸化スズを含有する薄片状アルファ−アルミナ結晶体。
【請求項2】
前記酸化アルミニウム(Al23)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化スズ(SnO)が100:0.05〜5:0.01〜0.5の質量比で含有される、請求項1に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体。
【請求項3】
厚さが0.1〜0.5μmであり、平均直径が30〜70μmであり、アスペクト比が100〜500である、請求項1に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体。
【請求項4】
(a)水溶性溶剤を含有するアルミニウム前駆体水溶液と、前記アルミニウム前駆体100質量部に対して、亜鉛前駆体0.05〜5質量部及びスズ前駆体0.01〜0.5質量部を含有する前駆体水溶液を混合することで、金属前駆体水溶液を製造する工程と、
(b)前記金属前駆体水溶液をナトリウム塩水溶液でpH6.0〜7.5に滴定した後、加水分解することで、混合ゲルを製造する工程と、
(c)前記混合ゲルを60〜100℃で5〜30時間熟成し、前記熟成した混合ゲルを乾燥することで、混合ゲルを前処理する工程と、
(d)前記前処理した混合ゲルを60〜200℃で5〜30時間乾燥する工程と、
(e)前記乾燥した混合ゲルを850〜1,300℃で1〜8時間結晶化することにより、薄片状アルファ−アルミナ結晶体と溶剤を混合するケーキを製造する工程と、
(f)前記ケーキを室温まで冷却して、前記ケーキを20〜90℃の水に溶解した後、ろ過することで前記溶剤を除去して、20〜90℃の0.1〜30%硫酸溶液に分散した後、ろ過、洗浄及び乾燥することで、アルファ−アルミナ結晶体を製造する工程と、
からなる薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム前駆体は、アルミニウムの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項4に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。
【請求項6】
前記亜鉛前駆体は、亜鉛の酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項4に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。
【請求項7】
前記スズ前駆体は、スズの酸塩、ハロゲン化物及び酸化物からなる群から選択される、請求項4に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。
【請求項8】
前記水溶性溶剤は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウム、硝酸カリウム、水酸化カリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。
【請求項9】
前記水溶性溶剤は、アルミニウム前駆体100質量部に対して、80〜120質量部の含量で含有される、請求項4または7に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。
【請求項10】
前記ナトリウム塩は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の薄片状アルファ−アルミナ結晶体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−502539(P2010−502539A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526532(P2009−526532)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004114
【国際公開番号】WO2008/026860
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(398043850)コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー (21)
【出願人】(509044936)シーキューヴィー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】