説明

アズトレオナムL−リジン及びそれを調製するための方法

本発明は、アズトレオナムL-リジン塩及びアズトレオナムのL-リジン塩を調製する方法に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許
本願は、2003年7月2日に提出された米国仮出願60/484,861 及び2004年3月4日に提出された米国仮出願の優先権を主張し、その開示内容は全体を本明細書中に参照として組み込まれている。
【0002】
発明の分野
本発明は、アズトレオナムのL-リジン塩及びアズトレオナムのL-リジン塩を調製する方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
アズトレオナムは、本明細書中にその全体が組み込まれた米国特許第4,775,670,号中に開示されたモノバクタム系抗生物質である。アズトレオナムは、化学名(Z)-2-[[[(2-アミノ-4-チアゾリル)[[(2S,-3S)-2-メチル-4-オキソ-1-スルホ-3-アゼチジニル]カルバモイル]メチレン]アミノ]オキシ]-2-メチルプロピオン酸を有する。アズトレオナムは、[3S-[3α(Z),4β]]-3-[[(2-アミノ-4-チアゾリル)[(1-カルボキシ-1-メチルエトキシ)イミノ]アセチル]アミノ]-4-メチル-2-オキソ-1-アゼチジンスルホン酸及び(2S,3S)-3-[[2-[2-アミノ-4-チアゾリル]-(Z)-2-[(1-カルボキシ-1-メチルエトキシ)イミノ]アセチル]アミノ]-4-メチル-2-オキソ-1-アゼチジン-1-スルホン酸としてとしても知られている。アズトレオナムは以下の構造を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
米国特許4,775,670号は、アズトレオナム及びその医薬的に許容できる塩を調製するための方法を開示する。しかし、米国特許4,775,670は、アミン又はアミノ酸によりアズトレオナムの塩を調製する方法を教示してはいない。
【0006】
本出願人は、アミン及びアミノ酸により、当該酸及び塩基を溶媒中に溶かしそして塩を沈殿させることによって、アズトレオナムの塩の調製を試みた際に予想外の困難に遭遇した。大部分の実験において、結晶化が不可能且つ非常に急速に分解する油が獲得された。
【0007】
出願人は、固体状の、安定なアズトレオナム L-リジン塩の調製を可能にする方法を開示した。
【発明の開示】
【0008】
本発明の概要
本発明は、非晶質の、固体状アズトレオナムL-リジン塩に関連する。本発明は、非晶質L-リジン塩を調製するための方法にも関連する。第1番目の方法は、アズトレオナムL-リジンの水性溶液を凍結乾燥させることを含んで成る。第2番目の方法は、アズトレオナムL-リジンの水性溶液を噴霧乾燥させることを含んで成る。第3番目の方法は、ある水性溶液からアズトレオナム L-リジンを沈殿させることを含んで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の詳細な説明
アズトレオナムは、水性溶液中でそのL-リジン塩へと転換される。pHはアズトレオナム L-リジン水性溶液の安定性において重要な役割を果たし且つ5.5を超えるべきではない。この塩は、3つの異なる技術によって非晶質固体として水性溶液から単離されうる。3つの技術には、凍結乾燥、噴霧乾燥及び有機溶媒中での沈殿が含まれる。これら3つの技術により非晶質産物が提供される。
【0010】
アズトレオナムL-リジン塩は、アズトレオナムL-リジンの水性溶液を凍結乾燥させることによって獲得されうる。当該水性溶液を形成させるために使用されるアズトレオナムとL-リジンの比は、好適に1:1〜1:2.1である。この方法によって獲得された産物は、見かけ上、白〜黄色みかかった破片であり且つ水を約3〜6%含む。
【0011】
アズトレオナムL-リジンは、アズトレオナム L-リジンの水性溶液を噴霧乾燥させることによって獲得されうる。噴霧することによって獲得したアズトレオナム L-リジン塩は、白〜オフホワイトの粉末である。この方法によって獲得された産物の含水率は約4〜約7%である。好適な噴霧乾燥パラメーターが以下の表に列挙されている。このパラメーターはBuchi laboratory噴霧乾燥器B-191(アスピレータスピード:31.5m3/h)に当てはまる。
【0012】
【表1】

【0013】
最適な乾燥パラメーターを使用することで、産物は、良好な取り扱い特性を示した。即ち、それは、自由に流れた。粒度は特異的乾燥パラメーターを調節することによっても影響されうる。
【0014】
アズトレオナムのL-リジン塩は、水性溶液からアズトレオナムL-リジンを沈殿させることによっても単離されて良い。水性溶液アズトレオナムL-リジンの水性溶液は好適に、水性又は無水有機溶媒の例えば、エタノール、アセトン中に滴下される。この沈殿のために使用したアルコールの含水率は、好適に約0〜9%(m/m)である。
【0015】
これらの方法を使用することで獲得したアズトレオナムL-リジンは2〜8℃で3月の間という点では安定であった:
1.アズトレオナムの含有率は、限界の60〜66%において定常であった;そして
2.0.3面積%を越える不純物は無かった。
【実施例】
【0016】
実施例
HPLC法を使用することでアズトレオナムリジン塩の不純物含有率を下のように特定した:
a.アズトレオナムリジン塩サンプルを0.02MのKH2PO4バッファー溶液(pHを2.0に、25%(w/w)リン酸により調節した)希釈剤中に溶かし、
b.このサンプル溶液(約10μl)を100.0mm×4.0mmの、3μmRP-18 HPLCカラムに注入し、
c.下記のプロファイルにより0.02MのKH2PO4バッファー溶液(pHを3.0に25%(w/w)のリン酸で調節した) (A)とアセトニトリル(B)の混合物により勾配溶離させ:
【表2】

d.各不純物の量を、UV検出器及び適切な記録装置により230nmの波長において測定した。
e.各不純物の量を濃度2.5g/mlのアズトレオナム標準試薬を参照することにより計算した。
【0017】
上記方法において、アズトレオナムは約10.2分のリテンションタイムを有する。
【0018】
HPLC法を使用することでアズトレオナムリジン塩の 含有率を次のようにして特定した:
a.アズトレオナムリジン塩サンプルを0.02MのKH2PO4バッファー溶液(pHを3.0に、25%(w/w)リン酸により調節した)とメタノール(80:20)希釈剤の混合物に溶かし、
b.このサンプル溶液(約10μl)を50.0mm×4.6mmの、3μmRP-18 HPLCカラムに注入し、
c.0.02MのKH2PO4バッファー溶液(pHを3.0に25%(w/w)のリン酸で調節した)とメタノールの混合物(83:17%(v/v)比)により1.5ml/minで定組成溶出させる。
d.各不純物の量を、270nmの波長においてUV検出器及び適切な記録装置により測定する。
e.濃度100μg/mlのアズトレオナム標準試薬を参照することにより含有率を計算する。
【0019】
上記方法において、アズトレオナムは約2.3分のリテンションタイムを有する。
【0020】
実施例1
アズトレオナム(5.00g、含水率:12.2%)を0〜5℃において25mlの蒸留水中で懸濁させた。13.5mlの蒸留水中2.70gのL-リジンの溶液を上記懸濁に、冷却しながら(氷水浴)滴下して加えた。この方法によって獲得したアズトレオナムL-リジン塩の溶液をガラスろ過器上でろ過して凍結乾燥させた。
産物:白色破片
収量:6.8g(量)
【0021】
実施例2
アズトレオナム(35.0g、含水率:12.6%)を0〜5℃において230mlの蒸留水中で懸濁させた。45mlの蒸留水中17.5gのL-リジンの溶液を上記懸濁に、冷却しながら(氷水浴)滴下して加えた。この方法によって獲得したアズトレオナムL-リジン塩の溶液を、チャコールで脱色し、ガラスフィルター上でろ過して、実験室噴霧乾燥器Buchi B-191を使用することで噴霧乾燥させた。
収量:31g(62%)
【0022】
この例により生産したアズトレオナムL-リジン塩は、約2〜8℃で3月に渡り保存した後、0.3面積%を超える不純物を何ら含まず、そして/又はアズトレオナムを約63重量%以上維持する。
【0023】
実施例3
アズトレオナム(3.50g、含水率:11.3%)を0〜5℃において8mlの蒸留水中で懸濁させた。3.5mlの蒸留水中1.80gのL-リジンの溶液を上記懸濁に、冷却しながら(氷水浴)滴下して加えた。この方法によって獲得したアズトレオナムL-リジン塩の溶液を23mlのエタノールで希釈して、60mlのエタノール及び4.75mlの水の撹拌した混合物に0〜5℃で15minに渡り滴下して加えた。120mlの純粋なエタノールをアズトレオナムL-リジン塩溶液(同時期間における他の滴下漏斗に由来する溶液を除く)と一緒に滴下して加えた。この沈殿をろ過して空気循環オーブン中38℃で乾燥させた。
産物:白色粉末
収量:3.86g(77%)
【0024】
特定の好適な実施態様を参照に本発明は記載され且つそれは例を伴い説明されており、当業者は、本明細書中に開示したように本発明の精神及び範囲から逸脱することなく記載及び説明されたような本発明の変形を理解するだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質アズトレオナムL-リジン塩。
【請求項2】
約3〜約7重量%の水の含水率を有する、請求項1に記載の非晶質L-リジン塩。
【請求項3】
アズトレオナムL-リジンの水性溶液を凍結乾燥させることを含んで成るアズトレオナムのL-リジン塩を調製するための方法であって、ここで当該水性溶液は約5.5以下のpHを有する方法。
【請求項4】
前記水性溶液を形成させるために使用したアズトレオナム:L-リジンの比が約1:1〜約1:2.1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アズトレオナムL-リジンの水性溶液を噴霧乾燥させることを含んで成る、アズトレオナムのL-リジン塩を調製するための方法であって、ここで当該水性溶液は約5.5以下のpHを有する方法。
【請求項6】
アズトレオナムL-リジンの水性溶液からアズトレオナムL-リジンを沈殿させることを含んで成るアゼトレオナムのL-リジン塩を調製するための方法であって、ここで当該水性溶液は約5.5以下のpHを有する方法。
【請求項7】
アズトレオナムL-リジンの水性溶液を有機溶媒中に滴下する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が、アセトン及びエタノールからなる群から選択されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法によって獲得した産物。
【請求項10】
請求項5に記載の方法によって獲得した産物。
【請求項11】
請求項6に記載の方法によって獲得した産物。
【請求項12】
アズトレオナムL-リジンが約3重量%〜約6重量%の含水率を有する、請求項9に記載の産物。
【請求項13】
アズトレオナムL-リジンが約4重量%〜約7重量%の含水率を有する、請求項10に記載の産物。
【請求項14】
約2〜8℃で保存した場合に3月以上に渡り安定である、請求項3〜13のいずれか1項に記載の産物。
【請求項15】
約2〜約8℃で3月に渡り保存した後も、任意の不純物を約0.3面積%超える量において含まない、請求項1に記載の塩。
【請求項16】
約2〜約8℃で3月に渡り保存した後も、約60〜約66重量%以上のアズトレナムL-リジンを維持する、請求項1に記載の塩。
【請求項17】
約2〜約8℃で3月に渡り保存した後も、約63重量%以上のアズトレナムを維持する、請求項16に記載の塩。
【請求項18】
非晶質アズトレオナムリジン塩中の不純物の量を特定するための方法であって、当該方法は:
初期pHにおける第1の一塩基性リン酸バッファー溶液中、請求項1に記載のアズトレオナムリジン塩を含んで成るサンプル溶液を形成し;
当該アズトレオナムリジン塩溶液のサンプルをHPLCカラム中へと注入し;
当該注入したサンプルを、第2の一塩基性リン酸バッファー溶液を含んで成る混合物により溶離させ;そして
少なくとも1種類の不純物の量を特定する、
ことを含んで成る方法。
【請求項19】
注入した産物を勾配溶離させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アズトレオナムリジン塩サンプルを、約0.02Mの濃度を有し且つpHを約2へと約25重量%のリン酸により調整したKH2PO4バッファー溶液中に溶かし;
前記注入したサンプルをKH2PO4バッファー溶液(A)とアセトニトリル(B)の混合物により溶出させ、ここで当該バッファー溶液(A)は約0.02Mの濃度を有し且つpHを3.0へと25重量%のリン酸で調節しており;
少なくとも1種類の不純物の量を、UV検出器により約230nmの波長において測定し;そして
各不純物の量を、約2.5g/mlの濃度におけるアズトレオナム標準試薬を参照することにより計算する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
最初に、前記サンプルを、約100体積%の溶出液(A)を含んで成る溶離液により溶離させ、ここで当該溶離液(A)は、約0.02Mの濃度を有し且つpHを約3へと約25重量%のリン酸により調節したKH2PO4バッファー溶液を含んで成り;
第1番目の時間期間の間、溶離液(A)の量を減らし、そしてある量のアセトニトリル溶離液(B)を当該溶離液に加え;
第2番目の時間期間の間、溶離液(A)の量を更に減らし、そして当該溶離液(B)の量を増やし;そして
第3番目の時間期間の間、溶離液(A)の量を約100体積%に増やし、そして前記溶出液(B)の量を約0体積%に減らす、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記注入したサンプルを定組成溶離させる、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
アズトレオナムリジン塩サンプルを、約0.02Mの濃度を有し且つpHを約3へと約25重量%のリン酸により調節したKH2PO4バッファー溶液とメタノールの混合物に溶かし;
前記注入したサンプルを、約0.02Mの濃度を有し且つpHを約3へと約25重量%のリン酸により調整したKH2PO4バッファー溶液とメタノールの約83:17の体積比における混合物により1.5ml/minで溶離させ;
少なくとも1種類の不純物の量を約270nmの波長でUV検出器により測定し;そして
不純物の量を、約100μg/mlの濃度におけるアズトレオナム標準試薬を参照することにより特定する、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記有機溶媒が無水物である、請求項7に記載の方法。
【請求項25】
約2〜約8℃で保存した場合、3月以上に渡り安定である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の非晶質アズトレオナムL-リジン塩。

【公表番号】特表2007−521306(P2007−521306A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518775(P2006−518775)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021237
【国際公開番号】WO2005/005424
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(506290028)コーラス ファーマ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】