説明

アセチル化グリセリンエステル及びエポキシ化脂肪酸エステルとのそのブレンド

本開示は、アセチル化グリセリンエステル、及びそれを含む組成物に関する。このアセチル化グリセリンエステルをエポキシ化脂肪酸エステルをはじめとする他の可塑剤とブレンドすることができる。本アセチル化グリセリンエステル及びブレンドは、可塑剤として有利な利用を認めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2009年9月30日出願の米国特許出願第61/247,427号の優先権を主張するものであり、該出願の全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、ポリマー樹脂に柔軟性及び可撓性を付与するために添加される、化合物又は化合物の混合物である。フタル酸ジエステル(「フタレート」としても公知)は、多くの可撓性ポリマー製品、例えば、ポリビニルクロライド(PVC)及び他のビニルポリマーから形成されるポリマー製品における公知の可塑剤である。一般的なフタレート可塑剤の例としては、ジ−イソノニルフタレート(DINP)、ジアリルフタレート(DAP)、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート(DEHP)、ジオクチルフタレート(DOP)及びジイソデシルフタレート(DIDP)が挙げられる。高温用途に用いられる、他の一般的な可塑剤は、トリメリテート及びアジピン酸系ポリエステルである。最適な特性を得るために、可塑剤の混合物が使用されることが多い。
【0003】
フタレート可塑剤は、フタル酸のマイナスの環境影響、及びフタル酸に曝露された人(特に子供達)の健康への潜在的悪影響を懸念する公益団体により、近年厳しい監視下に置かれている。
【0004】
その結果として、ポリマー樹脂用のフタレート不含可塑剤が必要とされている。フタレート可塑剤を含有するポリマーと同じ、又は実質的に同じ、化学的、機械的及び/又は物理的特性を有するフタレート不含可塑化ポリマーがさらに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、アセチル化グリセリンエステル、及びそれを含む組成物に関する。本アセチル化グリセリンエステルについての非限定的な有益用途は、可塑剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の可塑剤を含有する組成物を提供する。ある実施形態において、前記組成物は、第一の可塑剤及び第二の可塑剤を含む。前記第一の可塑剤は、アセチル化グリセリンエステルを含む。前記第二の可塑剤は、エポキシ化脂肪酸エステルであり得る。
【0007】
ある実施形態において、ポリマー組成物が提供される。前記ポリマー組成物は、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の可塑剤を含有する可塑剤組成物とを含む。前記可塑剤組成物は、アセチル化グリセリンエステルを含む。前記可塑剤組成物は、エポキシ化脂肪酸エステルをはじめとする(しかしこれに限定されない)他の可塑剤を場合により含有することがある。
【0008】
ある実施形態において、コーティングされた導体が提供される。前記コーティングされた導体は、導体と該導体上のコーティングとを含む。前記コーティングは、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の可塑剤を含有する可塑剤組成物とを含む。前記可塑剤組成物は、アセチル化グリセリンエステル及び場合により第二の可塑剤を含む。前記第二の可塑剤は、エポキシ化脂肪酸エステルであり得る。
【0009】
本開示の有利な点は、ポリマー樹脂用の環境的に安全な可塑剤である。
【0010】
本開示の有利な点は、人に対する有害健康リスクが低い又はない、フタレート非含有可塑剤である。
【0011】
本開示の有利な点は、フタレート非含有可塑剤であって、ポリマー樹脂に、フタレート含有可塑剤を含有する該ポリマー樹脂と同じ、又は実質的に同じ特性をもたらすものであるフタレート非含有可塑剤である。
【0012】
本開示の有利な点は、フタレート非含有の電線及びケーブル用のコーティングである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、アセチル化グリセリンエステル、及びそれを含む組成物に関する。本明細書において提供される組成物は、ポリマー樹脂及びビニルクロライド樹脂における可塑剤として使用するのに好適であり、具体的には、とりわけ電線及びケーブル用途のためのポリマー樹脂及びビニルクロライド樹脂好適である。
【0014】
元素周期表へのすべての言及は、CRC Press,Inc.が2003年に出版し著作権を有する元素周期表を指す。また、族へのいずれの言及も、族の番号付けにIUPAC体系を用いてこの元素周期表に示されている族へのものとする。相反する言明がない限り、文脈からの言外の意がない限り、又は当分野において通例でない限り、すべての部及びパーセントは重量に基づき、すべての試験法は本開示の出願日現在で最新のものである。米国特許実務を目的として、いかなる参照特許、特許出願又は公報の内容も、とりわけ、合成技術、生成物及び加工計画、ポリマー、触媒、定義(本開示に具体的に提供されるいずれの定義とも矛盾しない程度に)及び当分野における一般知識に関して、それら全体が参照により組み込まれる(又はその対応米国版が、参照により同じように組み込まれる)。
【0015】
本開示における数値範囲は近似的であり、従って、別の指示がない限りその範囲外の値を含むことがある。数値範囲は、低い方と高い方とに由来し低い方と高い方を含める1単位刻みの増分ですべての値を含むが、但し、任意の低い方の値と任意の高い方の値との間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件とする。例として、例えば分子量、メルトインデックスなどのような組成的、物理的又は他の特性が、100から1,000である場合には、その意図は、すべての個々の値、例えば100、101、102など、及び部分範囲、例えば100から144、155から170、197から200などを明確に列挙することである。1未満である値を含む又は1より大きい少数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲については、1単位を、適宜、0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考える。10未満の一桁の数を含む範囲(例えば、1から5)については、1単位を概して0.1であると考える。これらは、何を具体的に意図しているかの単なる例であり、列挙する最低値と最高値の間の数値のすべての可能な組み合わせが、本開示において明確に述べてられていると考えるべきである。数値範囲は、数ある中でも、前記組成物及び/又はコーティング中の成分についての量、添加剤についての量、及び前記組成物中の様々な他の成分についての量、並びにこれらの成分により規定される様々な特徴及び特性に関して、本開示の中で提供される。
【0016】
化合物に関して用いる場合、特に別の指示がない限り、単数形は、すべての異性体を含み、逆もまた同じである(例えば、「ヘキサン」は、ヘキサンのすべての異性体を個々に又は集合的に含む)。用語「化合物」及び「錯体」は、有機−、無機−及び有機金属化合物を指すために交換可能に用いられる。用語「原子」は、イオン状態に関係なく、すなわち、それが電荷若しくは部分電荷を帯びていようといなかろうと、又は他の原子に結合していようといなかろうと、元素の最小構成要素を指す。用語「非晶質」は、示差走査熱量測定(DSC)又は等価の技術によって測定したときに結晶融点がないポリマーを指す。
【0017】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの派生語は、任意の追加の成分、工程又は手順の存在を、それが具体的に開示されていようといまいと、除外することを意図していない。一切の疑義を避けるため、用語「含む(comprising)」を用いて特許請求されるすべての組成物は、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を、ポリマーのものであろうとそれ以外であろうと、相反する言及がされない限り、含む(include)ことがある。対照的に、用語「から本質的に成る」は、次に続く任意の詳述の範囲から、実施可能性に本質的でないものは除き、一切の他の成分、工程又は手順を除外する。用語「から成る」は、具体的に描写されていない及び列挙されていない一切の成分、工程又は手順を排除する。用語「又は」は、特に言及されない限り、列挙されている構成物を個々に並びに任意の組み合わせで指す。
【0018】
「組成物」及びこれに類する用語は、2つ又はそれ以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。
【0019】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」及びこれらに類する用語は、2つ又はそれ以上のポリマーのブレンド、並びにポリマーと様々な添加剤とのブレンドを意味する。そのようなブレンドは、混和性であることがあり、又はないことがある。そのようなブレンドは、相分離していることがあり、又はしていないことがある。そのようなブレンドは、透過電子顕微鏡法、光散乱、X線散乱、及び当分野において公知の任意の他の方法から測定したとき、1つ又はそれ以上のドメイン構造を含むことがあり、又は含まないことがある。
【0020】
用語「ポリマー」(及びこれに類する用語)は、同じ又は異なるタイプのモノマーを反応させること(すなわち、重合させること)によって調製される高分子化合物である。「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマーを含む。
【0021】
ある実施形態において、本明細書に開示する組成物は、フタレート不含(phthalate-free)である。用語「フタレート不含組成物」は、本明細書において用いる場合、フタレートが全くない組成物であり、又は別様にフタレートがない。「フタレート」は、次の構造(I):
【化1】

【0022】
(式中、R及びR’は、同じであることがあり、又は異なることがある)を含む化合物である。R及びR’のそれぞれは、1から20個の炭素原子を有する置換−/非置換−ヒドロカルビル基から選択される。本明細書において用いる場合、用語「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」は、分岐又は非分岐、飽和又は不飽和、環式、多環式、縮合、又は非環式化学種、及びこれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル−、シクロアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、シクロアルケニル−、シクロアルカジエニル−、アリール−、アラルキル、アルキルアリール、及びアルキニル−基が挙げられる。3、4、5及び6位それぞれが、水素又は他の部分によって占められていることがある。
【0023】
本開示は、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の可塑剤を含有する組成物を提供する。ある実施形態において、組成物(又は可塑剤組成物)が提供され、この組成物は第一の可塑剤及び第二の可塑剤を含む。前記第一の可塑剤は、アセチル化グリセリンエステルを含む。用語「アセチル化グリセリンエステル」は、本明細書において用いる場合、脂肪酸のアセチル化グリセリドを指し、次の式(II):
【化2】

【0024】
(式中、R、R及びRは、それぞれ個々に、アセチル基又は水素原子を表し、並びにR〜Rの少なくとも1つは、4から22個の炭素原子を有する脂肪酸部分を含む)によって表される。ある実施形態において、前記R基の少なくとも1つはアセチル基である。さらなる実施形態において、少なくとも2つのR基はアセチル基である。ある実施形態において、前記アセチル化グリセリンエステルは、脂肪酸のアセチル化モノグリセリド、脂肪酸のアセチル化ジグリセリド、脂肪酸のアセチル化トリグリセリド、グリセロール、トリアセチン(グリセリントリアセテート)、及びこれらの任意の組み合わせの1つ又はそれ以上を含む。
【0025】
本開示は、グリセリンエステル、及びそれらを生成するためのプロセスに関する。ある実施形態において、アセチル化グリセリンエステルを生成するためのプロセスが提供される。このプロセスは、グリセリンエステルの形成を含む。その後、そのグリセリンエステルをアセチル化して、アセチル化グリセリンエステルを形成する。本明細書に開示するアセチル化グリセリンエステルは、フタレート不含である。
【0026】
前記プロセスは、グリセリンエステルの形成を含む。前記グリセリンエステルの形成は、(i)グリセリンと脂肪酸の間のエステル化、又は(ii)グリセリンとトリグリセリドの間のエステル交換反応によって行われる。「脂肪酸」は、本明細書において用いる場合、主に4から22個の炭素原子と末端カルボキシル基(COOH)を含有する脂肪族鎖から構成されるモノカルボン酸である。前記脂肪酸は、飽和している場合があり、又は不飽和である場合があり、分岐している場合があり、又は分岐していない場合があり、及び1つ若しくはそれ以上のヒドロキシル基を含むことがあり又は含まないことがある。
【0027】
ある実施形態において、前記脂肪酸は、主に8から22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸の非限定的な例としては、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パーム核油(C8−C22脂肪酸の混合物、並びに主としてラウリン酸及びミリスチン酸)、ヤシ油(C8−C22脂肪酸の混合物、主としてラウリン酸及びミリスチン酸)、ヒマシ油(様々な脂肪酸の混合物、主にリシノール酸)、硬化ヒマシ油(様々な脂肪酸の混合物、主に硬化リシノール酸)、及び前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。
【0028】
前記グリセリンエステルをアセチル化する。用語「アセチル化する」又は「アセチル化」は、本明細書において用いる場合、−OH基を有する化合物の分子にアセチル基を導入するプロセスである。言い換えると、アセチル化は、−OH基のHをCHCO−基で置き換える。脂肪酸成分がヒドロキシル基を含むときには脂肪酸成分でアセチル化を行うこともできる。適するアセチル化試薬の非限定的な例としては、無水酢酸及びアセチルクロライドが挙げられる。従って、「アセチル化グリセリンエステル」(又は「AGE」)は、アセチル化反応に付されたグリセリンエステルである。AGEの非限定的な例は、Riken Vitaminから入手できるRikemal(登録商標)PL 002、Rikemal(登録商標)PL−012及びRikemal(登録商標)PL−014(CAS番号30899−62−8);並びにDaniscoから入手できるGrindsted Soft−N−Safe(登録商標)硬化ヒマシ油のアセチル化モノグリセリド(CAS番号736150−63−3)である。
【0029】
前記グリセリンエステルの−OH基のいくつか、実質的にすべて、又はすべてをアセチル化することができる。前記アセチル基の総量は、1molのグリセリンにつき2.7から3.0mol、又は1molのグリセリンにつき2.9から3.0molの範囲である。前記アセチル化は、結果として、0から100未満、又は0から15未満、又は0から10未満、又は0から5未満、又は0から2未満、又は0のヒドロキシル価(hydroxyl number)を有するアセチル化グリセリンエステルを生じさせる。前記ヒドロキシル価は、DIN 53240に従って決定する。
【0030】
ある実施形態において、前記アセチル化グリセリンエステルは、約10mPasから約300mPas、又は約20mPasから約200mPasの粘度を有する。粘度は、ASTM D445(ブルックフィールド、25℃)に従って測定する。
【0031】
ある実施形態において、前記アセチル化グリセリンエステルは、DIN 53408に従って測定したとき、約140℃から約200℃、又は約150℃から約180℃の溶解温度を有する。
【0032】
ある実施形態において、前記アセチル化グリセリンエステルは、約0から約3000、又は約0から約1000、又は約0から約500のAPHAカラーを有する。
【0033】
ある実施形態において、前記アセチル化グリセリンエステルは、グリセリンジアセテートモノラウレート(すなわちGDM)である。ある実施形態において、前記GDMは、ラウリン酸のアセチル化モノグリセリド、ラウリン酸のアセチル化ジグリセリド、ラウリン酸のアセチル化トリグリセリド、グリセロール、トリアセチン(グリセリントリアセテート)、及びこれらの任意の組み合わせを含む。前記グリセリンジアセテートモノラウレートは、0から100未満、又は0から15未満、又は0から5未満、又は0から2未満、又は0の水酸基価(hydroxyl value)を有する。ある実施形態において、前記グリセリンジアセテートモノラウレートは、約10mPasから約300mPas、又は約20mPasから約200mPasの粘度を有する。粘度は、ASTM D445(ブルックフィールド、25℃)に従って測定する。
【0034】
ある実施形態において、前記グリセリンジアセテートモノラウレートは、DIN 53408に従って測定したとき、約140℃から約200℃、又は約150℃から約180℃の溶解温度を有する。
【0035】
ある実施形態において、前記アセチル化グリセリンジアセテートモノラウレートは、約0から約3000、又は約0から約1000、又は約0から約500のAPHAカラーを有する。
【0036】
前記アセチル化グリセリンエステルは、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0037】
前記アセチル化グリセリンエステル(AGE)は、有意な量の不溶性成分を含有することがある。用語「不溶性成分」は、本明細書において用いる場合、特に室温及びそれより下で保持したとき、時間が経つにつれてAGEから相分離する1つ又はそれ以上の化合物である。AGEは、室温で液体であり、不溶性成分は、その液相AGEから固相として相分離することがある。この不溶性成分は、AGEを濁らせ、底に沈降する。温度が低いほど、多くの不溶物が形成される。さらに、AGEを作るために使用される原料(例えば、グリセロール、脂肪酸及びトリグリセリド)の量が、アセチル化後に形成される不溶物の量、並びにAGEの色に影響を及ぼす。
【0038】
AGEを精製プロセスに付して、着色を低減すること及び不溶物の量を減少させることができる。「精製プロセス」は、本明細書において用いる場合、AGEへの以下の手順の1つ又はそれ以上の適用である:濾過手順、遠心分離手順、沈降分離手順、添加剤[例えば、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、活性炭、パーライト(天然に産生する非晶質ケイ酸質火山岩)、珪藻土]での処理、及びこれらに類するもの。これらの手順のいずれかを、5℃から50℃の温度で、及びこの温度で少なくとも3時間保持して、場合により行うことができる。濾過工程を助長するために添加剤を使用することができ、該添加剤によってAGEの望ましい、より淡い色を得ることもできる。前記精製プロセスは、AGE中に存在する任意の不溶成分を完全に又は部分的に除去し、該精製プロセスによって望ましい、より淡い色を得ることもできる。添加剤でのAGEの処理と、その後の濾過を、150℃ほどもの高い温度で行って、不溶物の量を必ずしも減少させずに、より淡い色を得ることもできる。AGEからの固相の除去及び/又はより淡い色のため、精製プロセスから得られる濾液は透明であり、低い濁度を有する、又は濁度を有さない。「精製AGE」は、上述の精製プロセスの少なくとも1つに付されたAGEであり、次の特性の少なくとも1つを呈示する:精製前のAGEと比較して、より淡い色、より少ない(若しくは無)不溶性成分、及び/又はより小さい(若しくは無)濁度。
【0039】
第一の可塑剤に加えて、本組成物は、第二の可塑剤も含む。ある実施形態において、前記第二の可塑剤は、エポキシ化脂肪酸エステル(EFA)である。用語「エポキシ化脂肪酸エステル」は、本明細書において用いる場合、少なくとも1つのエポキシド基を含有する少なくとも1つの脂肪酸部分を有する化合物である。「エポキシド基」は、1個の酸素原子が、既に互いに結合している2個の炭素原子のそれぞれに連結している、3員環式エーテルである(オキシラン又はアルキレンオキシドとも呼ばれる)。好適なエポキシ化脂肪酸エステルの非限定的な例としては、エポキシ化動物油及び植物油、例えば自然に産生するエポキシ化油、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化パーム油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化ナタネ油、エポキシ化ベニバナ油、エポキシ化トール油、エポキシ化キリ油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化メチルステアレート、エポキシ化ブチルステアレート、エポキシ化2−エチルヘキシルステアレート、エポキシ化ステアリルステアレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル、前述のもののそれぞれのエポキシ化誘導体、及び前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。自然に産生するエポキシ化油の非限定的な例は、ベルノニア油である。
【0040】
前記第二の可塑剤としては、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロヘキセンジエポキシド、及びこれらの任意の組み合わせも挙げることができる。
【0041】
前記エポキシ化脂肪酸エステルを様々な方法で調製することができる。例えば、天然油を出発原料として使用することができる。この場合、天然油を鹸化して脂肪酸にし、その後、アルコールでエステル化することができる。次に、それらの低分子量エステルをエポキシ化する。不飽和エステルを過酸でエポキシ化することができる。
【0042】
或いは、脂肪酸のグリシジルエステルをエピクロロヒドリン又は関連化学物質によって調製することができる。さらにもう1つの代替実施形態では、アルコールを用いてトリグリセリドをエステル交換反応させ、その後、その不飽和脂肪エステルを過酸でエポキシ化することが可能である。
【0043】
ある実施形態において、前記エポキシ化脂肪酸エステルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及び2−エチルヘキシルエステルをはじめとする、任意のエポキシ化脂肪酸C−C14エステルであり得る。さらなる実施形態において、前記エポキシ化脂肪酸エステルは、脂肪酸メチルエステルのエポキシドである。
【0044】
脂肪酸メチルエステルのエポキシドの調製についての非限定的な例は大豆油で始まり、メタノールを用いてその大豆油をエステル交換反応させて、その油中の脂肪酸のメチルエステルを作る。不溶性のためグリセロールはその反応生成物から除去される。酢酸エチル中の過酢酸の溶液を使用して、それらの脂肪酸上の二重結合をエポキシ化する。爆発を防止するために、過酸を35%過酸及び摂氏35度より下に保つ。完了後、酢酸エチル及び生成物酢酸を真空ストリッピングによって除去する。
【0045】
ある実施形態において、前記エポキシ化脂肪酸エステルは、エポキシ化大豆油である。
【0046】
ある実施形態において、前記組成物(又は可塑剤組成物)は、AGE/EFA混合物である。AGE/EFAを「AGE/EFA可塑剤」と呼ぶことがある。このAGE/EFA可塑剤は、(可塑剤組成物の総重量に基づき)約1重量%から約100重量% アセチル化グリセリンエステル及び約99重量%から約0重量% EFA、又は約30重量%から約99重量% アセチル化グリセリンエステル及び約70重量%から約1重量% EFAを含むことがある。
【0047】
「可塑剤組成物」又は「可塑剤」は、それを添加するポリマー樹脂(概して熱可塑性ポリマー)の弾性率及び引張強度を低下させ、可撓性、伸び、衝撃強度及び引裂強度を増加させる物質である。可塑剤は、それを添加するポリマー樹脂の融点を低下させること、ガラス転移温度を低下させること及びポリマー樹脂の加工性を向上させることもできる。
【0048】
前記可塑剤組成物は、1つ若しくはそれ以上のAGE及び/又は1つ若しくはそれ以上のEFAを含むことがある。ある実施形態において、前記可塑剤組成物は、0から100未満、又は0から15未満、又は0から10未満、又は0から5未満、又は0から2未満、又は0のヒドロキシル価を有するグリセリンジアセテートモノラウレート(GDM)と、エポキシ化大豆油(ESO)とを含む。さらなる実施形態において、前記可塑剤組成物のGDMは、0のヒドロキシル価を有し、該可塑剤組成物はESOも含む。
【0049】
ある実施形態において、前記可塑剤組成物は、(i)GDMと(ii)エポキシ化脂肪酸エステル(EFA)のブレンドを含む。
【0050】
ある実施形態において、前記可塑剤組成物は、アセチル化グリセリンエステル、第一のEFA、及び第二のEFAを含む。前記第二のEFAは、前記第一のEFAとは異なる。さらなる実施形態において、前記可塑剤組成物は、アセチル化グリセリンエステル、ESO、及びエポキシ化プロピレングリコールジオレエートを含む。さらにもう1つの実施形態において、前記可塑剤組成物は、アセチル化グリセリンエステル、ESO、及びエポキシ化脂肪酸メチルエステルを含む。
【0051】
本開示の組成物は、フタル酸不含であり得るが、ある実施形態における可塑剤組成物は、フタレート(例えば、ジ−イソノニルフタレート、ジアリルフタレート、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート及びジイソトリデシルフタレート)、トリメリテート(例えば、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート及びトリイソデシルトリメリテート)、シトレート、Hexamoll(登録商標)DINCH 1,2−シクロヘキサンジカルボン酸のジイソノニルエステル(BASFの製品)、ベンゾエート及びアジピン酸系ポリエステルをはじめとする(しかしこれに限定されない)、他の可塑剤も含むことがある。
【0052】
本可塑剤組成物は、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0053】
AGE単独、又は任意のEFA及び/若しくは他の可塑剤との組み合わせたAGEから構成される本組成物を、様々な組成物又は製品に使用することができる。前記組成物の好適な用途の非限定的な例としては、化粧品組成物/化粧品、食品組成物/食品、及びポリマー組成物/ポリマー製品、軟質熱可塑性ポリオレフィン、異形材(ガスケット)、フィルムなどが挙げられる。
【0054】
本開示は、ポリマー組成物を提供する。ある実施形態において、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の可塑剤を含有する本可塑剤組成物とを含むポリマー組成物を提供する。前記可塑剤組成物は、単独での、又は本明細書に開示するような任意の1つ若しくはそれ以上のEFAとの組み合わせでの、任意のアセチル化グリセリンエステルであり得る。前記ポリマー組成物は、約1重量%から約99重量%、又は約30重量%から約90重量%、又は約40重量%から約80重量%のポリマー樹脂、及び約99重量%から約1重量%、又は約70重量%から約10重量%、又は約60重量%から約20重量%の前記可塑剤組成物を含有する。重量パーセントは、その組成物の総重量に基づく。
【0055】
好適なポリマー樹脂の非限定的な例としては、ポリスルフィド、ポリウレタン、アクリル樹脂、エピクロロヒドリン、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、合成ゴム、EPDMゴム、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、及びビニルクロライド樹脂が挙げられる。用語「プロピレン系ポリマー」は、本明細書において用いる場合、(重合可能なモノマーの総量に基づき)大部分の重量パーセントの重合プロピレンモノマーを含む、及び場合により少なくとも1つの重合コモノマーを含むことがある、ポリマーである。用語「エチレン系ポリマー」は、本明細書において用いる場合、(重合可能なモノマーの総重量に基づき)大部分の重量パーセントの重合エチレンモノマーを含む、及び場合により少なくとも1つの重合コモノマーを含むことがある、ポリマーである。
【0056】
用語「ビニルクロライド樹脂」は、本明細書において用いる場合、ビニルクロライドポリマー、例えばポリビニルクロライド(PVC)、又はビニルクロライドコポリマー、例えばビニルクロライド/ビニルアセテートコポリマー、ビニルクロライド/ビニリデンクロライドコポリマー、ビニルクロライド/エチレンコポリマー、若しくはエチレン/ビニルアセテートコポリマーにビニルクロライドをグラフトさせることによって調製されたコポリマーである。前記樹脂組成物は、上述のビニルクロライドポリマー又はビニルクロライドコポリマーと、塩素化ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、オレフィンポリマー、例えばメタクリルポリマー又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS樹脂)をはじめとする(しかしこれに限定されない)、他の混和性又は相溶性ポリマーとのポリマーブレンドも含む場合がある。
【0057】
ある実施形態において、前記ビニルクロライド樹脂は、ポリビニルクロライド(PVC)である。
【0058】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、熱可塑性組成物である。「熱可塑性組成物」は、本明細書において用いる場合、(1)その原長を超えて伸張されて解放すると実質的にその原長に収縮する能力を有する、並びに(2)熱に曝露すると軟化し、室温に冷却すると実質的にその原状態に戻る、ポリマー組成物である。
【0059】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、ポリマー樹脂と、1つ又はそれ以上のアセチル化グリセリンエステル、場合により第一のEFA及び場合により第二のEFAを含む可塑剤とを含む。
【0060】
ある実施形態において、前記可塑剤組成物は、DIN 53408に従って測定したとき約140℃から約200℃の溶解温度を有する。本出願人らは、アセチル化グリセリンエステルと場合によりEFAとから構成される可塑剤組成物が、低粘度で低揮発性の可塑剤であって、高温電線及びケーブル用途に特に好適であり、それが添合される熱可塑性ポリマーから外に移動しないものである可塑剤を意外にも生じさせることを、驚くべきことに発見した。加えて、本可塑剤組成物の(140℃〜200℃の)溶解温度は、従来の高分子量可塑剤及び一部の従来のフタレート可塑剤の溶解温度(概して約140℃と約180℃の間)と同様である。さらに、本可塑剤組成物の粘度は、アジビン酸系ポリエステル可塑剤などの従来の高分子量可塑剤の粘度より小さい。例えば、Ultramoll(登録商標)IV及びUltramoll(登録商標)IIIアジピン酸系ポリエステル(Lanxessの製品)として商業的に公知のアジピン酸系ポリエステル可塑剤は、非常に高い粘度(25℃でおおよそ6000から6500mPas)を有する。可塑剤の粘度が低いほど、PVCパウダーへのその取り込みが速いことは公知である。それ故、本可塑剤組成物は、アジピン酸系ポリエステル可塑剤より速い速度で、及びさらに、より低い又は同様の粘度のフタレート又はトリメリテートより早い速度で、PVCに吸収される。本可塑剤組成物は、低粘度と中分子量との予想外の相乗作用を呈示し、並びに従来のアジピン酸系ポリエステル可塑剤又は従来のフタレート系可塑剤又は従来のトリメリテート系可塑剤で可塑化されたPVC樹脂の特性を満たす及び/又は超える物理的、化学的及び機械的特性を有する、フタル酸不含で安全な可塑化PVCを生ずる。113℃又は136℃の高さの温度での168時間のオーブンエージング後に本組成物が呈示する引張特性の保持率は、特に注目に値する。
【0061】
本ポリマー組成物は、従来のアジピン酸系ポリエステル、フタレート及び/又はトリメリテート可塑剤を含有するポリマー樹脂と比較したとき、同じ、又はより良好な、可撓性及び/又は伸びを呈示する。ある実施形態において、本ポリマー組成物は、PVCとGDM/EFA可塑剤のブレンドであり、約A60から約A100、又は約A70から約A95のショア硬度を有する。ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、約D10から約D70、又は約D20から約D60のショア硬度を有する。ショア硬度は、ASTM D2240に従って測定する。
【0062】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、PVCとGDM/EFA可塑剤組成物のブレンドであり、約10℃から約60℃、又は約20℃から約50℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する。
【0063】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、PVCと、AGE及びEFAから構成される可塑剤組成物とから構成される。前記ポリマー組成物をプラックに成形する。前記プラックは、ASTM D638に従って30ミル厚プラックから切断したドッグボーンで測定したとき113℃での168時間熱エージング後に約70%より大きい引張強度保持率を有する。
【0064】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、PVCと、AGE及びEFAから構成される可塑剤組成物とのブレンドから構成される。前記ポリマー組成物をプラックに成形する。前記プラックは、ASTM D638に従って30ミル厚プラックから切断したドッグボーンで測定したとき136℃での168時間熱エージング後に約70%より大きい引張強度保持率を有する。
【0065】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、PVCと、AGE及びEFAから構成される可塑剤組成物とのブレンドから構成される。前記ポリマー組成物をプラックに成形する。前記プラックは、ASTM D638に従って30ミル厚プラックから切断したドッグボーンで測定したとき113℃での168時間熱エージング後に約30%より大きい引張伸び保持率を有する。
【0066】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、PVCと、AGE及びEFAから構成される可塑剤組成物とのブレンドから構成される。前記ポリマー組成物をプラックに成形する。前記プラックは、ASTM D638に従って30ミル厚プラックから切断したドッグボーンで測定したとき136℃での168時間熱エージング後に約30%より大きい引張伸び保持率を有する。
【0067】
圧縮成形プラックから切断した(i)非エージング及び(ii)熱エージング試験片についての引張強度及び引張伸びをASTM D−638に従って測定する。
【0068】
上述のいずれのポリマー組成物も、以下の添加剤の1つ又はそれ以上を含むことがある:充填剤、酸化防止剤、難燃剤(三酸化アンチモン、酸化モリブデン及びアルミナ水和物)、熱安定剤、アンチドリップ剤、着色剤、潤滑剤、低分子量ポリエチレン、ヒンダードアミン光安定剤(少なくとも1つの第二級又は第三級アミン基を有するもの)(「HALS」)、UV線吸収剤(例えば、o−ヒドロキシフェニルトリアジン)、硬化剤、ブースタ及び遅延剤、加工助剤、カップリング剤、静電防止剤、成核剤、スリップ剤、粘度調節剤、粘着性付与剤、粘着防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸掃去剤、金属不活性化剤、及びこれらの任意の組み合わせ。
【0069】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、充填剤を含む。好適な充填剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、焼成クレー、白亜、フラー土、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、親水性ヒュームドシリカ、疎水性(表面処理)ヒュームドシリカ、及び前述のものの任意の組み合わせが挙げられる。焼成クレーの非限定的な例は、Satintone(登録商標)SP−33及びPolyfil(登録商標)70である。
【0070】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、酸化防止剤を含む。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン;ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイト及びホスホナイト、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト及びジ−tert−ブチルフェニル−ホスホナイト;チオ化合物、例えばジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネート;様々なシロキサン;重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤が挙げられる。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、Topanol(登録商標)CA、Vanox(登録商標)1320、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)245及びIrganox(登録商標)1076が挙げられる。酸化防止剤を本開示の可塑剤組成物に添加することがある。酸化防止剤は、そのポリマー組成物の重量に基づき0.01から5重量%の量で使用することができる。
【0071】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、熱安定剤を含む。好適な熱安定剤の非限定的な例としては、鉛不含混合金属熱安定剤、鉛安定化剤、有機熱安定剤、エポキシド、モノカルボン酸の塩、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、パークロレート及び/又はβジケトンが挙げられる。好適なβジケトンの非限定的な例は、ジベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン及びこれらの混合物である。好適なジベンゾイルメタンの非限定的な例は、Rhodiastab(登録商標)83である。パルミトイルベンゾイルメタンとステアロイルベンゾイルメタンの好適な混合物の非限定的な例は、Rhodiastab(登録商標)50である。好適な鉛不含混合金属熱安定剤の非限定的な例としては、Mark(登録商標)6797、Mark(登録商標)6776 ACM、Mark(登録商標)6777 ACM、Therm−Chek(登録商標)RC215P、Therm−Chek(登録商標)7208、Naftosafe(登録商標)EH−314、Baeropan(登録商標)MC 90400 KA、Baeropan(登録商標)MC 90400 KA/1、Baeropan(登録商標)MC8553 KA−ST 3−US、Baeropan(登録商標)MC 9238 KA−US、Baeropan(登録商標)MC 90249 KA、及びBaeropan(登録商標)MC 9754 KAが挙げられる。熱安定剤を本開示の可塑剤組成物に添加することがある。熱安定剤は、そのポリマー組成物の重量に基づき0.1から10重量%の量で使用することができる。
【0072】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、潤滑剤を含む。好適な潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸、ステアリン酸の金属塩、パラフィンろう、及びポリエチレングリコールが挙げられる。前記潤滑剤を単独で使用することがあり、又は併用することがある。前記潤滑剤を前記熱安定剤と併用することもある。
【0073】
ある実施形態において、前記ポリマー組成物は、加工助剤を含む。好適な加工助剤の非限定的な例としては、カルボン酸の金属塩、例えばステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウム;脂肪酸、例えばステアリン酸、オレイン酸又はエルカ酸;脂肪アミド、例えばステアラミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’−エチレンビス−ステアラミド;ポリエチレンろう;酸化ポリエチレンろう;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;植物ろう;石油ろう;非イオン性界面活性剤;及びポリシロキサンが挙げられる。加工助剤は、そのポリマー組成物の重量に基づき0.05から5重量%の量で使用することができる。
【0074】
前記ポリマー組成物は、一般に、PVC配合分野における技術者に公知の従来の乾式ブレンド又は湿式ブレンド法に従って調製する。前記ブレンディングプロセスから得た混合物を、ミキサ、例えばバンバリー(Banbury)バッチミキサ、ファレル(Farrel)連続ミキサ又は一軸若しくは二軸スクリュー押出機でさらに配合することができる。
【0075】
ある実施形態では、本開示の可塑剤をPVCパウダーに吸収させてドライブレンドを作ることにより、本ポリマー組成物を作る。ヘンシェル(Henschel)ミキサ又はリボンブレンダをはじめとする(しかしこれに限定されない)任意の好適な方法/機器を使用して、前記ドライブレンドを作ることができる。前記ポリマー組成物は、PVC及び可塑剤に加えて他の添加剤を含有することがある。その後、前記ドライブレンドを(例えば、溶融押出により)さらに配合し、任意の所望の形状(フィルム、ペレットなど)に形成することができる。
【0076】
本ポリマー組成物は、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0077】
最適な安定剤と酸化防止剤のパッケージのため、本開示の本ポリマー組成物は、高温での長期乾燥又は湿潤絶縁抵抗試験を要求する用途、及び温度が(空気中、又は油に浸漬されている間、いずれかで)136℃の高さになる他の要求の厳しい用途に好適である。
【0078】
本ポリマー組成物が呈示する可撓性、低い可塑剤揮発性、少ない移行量、低い粘度及び/又は高い溶解温度という驚くべき特性のため、本ポリマー組成物は、電線及びケーブルコーティング用途、特に、高温電線/ケーブル用途にうってつけである。従って、本開示は、コーティングされた導体を提供する。「導体」は、任意の電圧(DC、AC、又は過渡)でエネルギーを伝達するための伸びた形の要素(電線、ケーブル、線維)である。導体は、光学繊維を含み得るが、典型的には少なくとも1つの金属線又は少なくとも1つの金属ケーブル(例えば、アルミニウム又は銅)である。
【0079】
ある実施形態において、コーティングされた導体が提供され、該コーティングされた導体は、導体と該導体上のコーティングとを含む。前記コーティングは、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つ又はそれ以上の可塑剤を含有する本可塑剤組成物とを含む、本ポリマー組成物から構成される。前記コーティング中のポリマー樹脂は、本明細書に開示する任意のポリマー樹脂であり得る。前記可塑剤組成物は、単独での、又は1つ若しくはそれ以上のEFAとブレンドされた、及び/又は本明細書に開示するような1つ若しくはそれ以上の他の可塑剤とのブレンドとブレンドされた、1つ又はそれ以上のアセチル化グリセリンエステルから構成される任意の可塑剤組成物であり得る。
【0080】
「金属導体」は、本明細書において用いる場合、少なくとも1つの金属線及び/又は少なくとも1つの金属ケーブルである。コーティングされた金属導体は、可撓性であっても、半硬質であっても、又は硬質であってもよい。金属導体の上又は該導体の周囲の別のポリマー層上に、コーティング(「ジャケット」又は「シース」又は「絶縁材」とも呼ばれる)がある。前記コーティングは、本組成物を含む。前記組成物は、本明細書に開示するような任意の組成物であり得る。本明細書において用いる場合、「上に」は、コーティングと金属導体との直接接触又は間接接触を含む。「直接接触」は、コーティングと金属導体の間に位置する介在層が一切ない及び/又は介在材料が一切ない、コーティングが金属導体と直接接触する配置である。「間接接触」は、介在層及び/又は介在構造及び/又は介在材料が金属導体とコーティングの間に位置する配置である。前記コーティングは、完全に又は部分的に前記金属導体を覆っている又は別様に包囲している若しくは包み込んでいることがある。前記コーティングは、前記金属導体を包囲する唯一の成分であることがある。或いは、前記コーティングは、前記金属導体を包み込む多層ジャケット又はシースの1層であることがある。
【0081】
ある実施形態において、前記ポリマー樹脂は、上で論じたようなPVCなどのビニルクロライド樹脂である。前記PVCを前記可塑剤組成物とブレンドして前記コーティングを形成する。前記コーティングは、追加の成分を含むことがある。ある実施形態において、前記コーティングは、約1重量%から約99重量%、又は約20重量%から約80重量%、又は約30重量%から約70重量% PVC、及び99重量%から約1重量%、又は約80重量%から約20重量%、又は約70重量%から約30重量% 可塑剤組成物を含む。さらなる実施形態において、前記コーティングは、約30重量%から約90重量% PVC、及び約70重量%から約10重量% 可塑剤組成物を含有する。
【0082】
前記可塑剤組成物は、本明細書に開示する任意の可塑剤組成物であり得る。ある実施形態において、前記コーティング中に存在するアセチル化グリセリンエステルは、0から100未満、又は0から15未満、又は0から10未満、又は0から5未満、又は0から2未満、又は0のヒドロキシル価を有する。
【0083】
前記コーティングは、本組成物について上で論じたような特性をいずれも有することができる。ある実施形態において、前記コーティングされた導体は、UL−1581に従って測定したとき耐熱試験に合格する。もう1つの実施形態において、前記コーティング中の可塑剤組成物は、約140℃から約170℃の溶解温度を有する。もう1つの実施形態において、前記コーティングは、ASTM D2240に従って測定したとき約A60から約A100のショア硬度を有する。もう1つの実施形態において、前記コーティングは、ASTM D 2240に従って測定したとき約D10から約D70のショア硬度を有する。ある実施形態において、前記コーティングは、約30重量%から約90重量%のポリビニルクロライド、及び約70重量%から約10重量%のアセチル化グリセリンエステル又はアセチル化グリセリンエステルとEFAの混合物を含む。
【0084】
好適なコーティングされた金属導体の非限定的な例としては、フレキシブル配線、例えば家電製品用のフレキシブル配線、電源ケーブル、携帯電話及び/又はコンピュータ用の電源充電器、コンピュータ・データ・コード、電源コード、機器用配線材、建築用ワイヤ、自動車用ワイヤ、並びに家電製品付属コードが挙げられる。
【0085】
本コーティングされた導体は、本明細書に開示する2つ又はそれ以上の実施形態を含むことがある。
【0086】
本明細書に開示する組成物を含むジャケットを有するコーティングされた導体、例えばコーティングされた電線又はコーティングされたケーブル(場合により絶縁層を伴う)は、様々なタイプ、例えば一軸又は二軸スクリュータイプの押出機で調製することができる。従来の押出機の説明は、米国特許第4,857,600号において見つけることができる。共押出及び押出機の例は、米国特許第5,575,965号において見つけることができる。典型的な押出機は、その上流端部にホッパー及びその下流端部にダイを有する。そのホッパーによりバレルに供給され、このバレルはスクリューを有する。上流端部、そのスクリューの端部とダイの間に、スクリーンパック及びブレーカープレートがある。この押出機のスクリュー部分は、3つのセクション、供給セクション、圧縮セクション及び計量セクションと、2つのゾーン、背面加熱ゾーン及び前面加熱ゾーンとに分割されており、これらのセクション及びゾーンが上流から下流へと連なっていると考えられる。代替実施形態では、上流から下流に延びる軸に沿って、多数の(2つより多くの)加熱ゾーンがある場合がある。1つより多くのバレルを有する場合、それらのバレルは、直列に接続されている。各バレルの長さ対直径比は、約15:1から約30:1の範囲である。
【0087】
本開示の電線及びケーブル構造体(すなわち、コーティングされた金属導体)は、本ポリマー組成物を導体上に又は絶縁導体束上に押出して該絶縁導体の周囲にコーティング(又はジャケット)を形成することによって作られる。前記ジャケット又は絶縁材の厚さは、所望の最終用途の要件に依存する。前記ジャケット又は絶縁材の典型的な厚さは、約0.010インチから約0.200インチ、又は約0.015インチから約0.050インチである。本ポリマー組成物を、予め作っておいた組成物から、前記ジャケットに押し出すことができる。通常、本組成物は、押出機への容易な供給のためにペレットの形態である。前記電線及びケーブルジャケット又は絶縁材を、本組成物をペレット化する別工程を通ることなく、前記配合押出機から直接押し出すことができる。この1工程配合/押出プロセスは、組成物の1熱履歴工程をなくすであろう。
【0088】
ナイロン層をその絶縁層上に、例えば従来のTHHN、THWN及びTHWN−2構成で、押し出すこともできる。
【0089】
前記アセチル化グリセリンエステル及びそれらのEFAとの混合物を単独で使用して(又は他の材料とブレンド若しくは混合して)、他の用途、例えば化粧品、食品産業、ポリマー変性、軟質熱可塑性ポリオレフィン、異形材(ガスケット)、フィルムなどにおいて使用するための様々な組成物を作ることもできる。
【0090】
本開示の実施形態の非限定的な例を以下に提供する。
【0091】
実施形態E1において、組成物が提供され、この組成物は、アセチル化グリセリンエステル、及びエポキシ化脂肪酸エステルを含む。E2。前記アセチル化グリセリンエステルが0から5未満のヒドロキシル価を有する、E1の組成物。E3。前記アセチル化グリセリンエステルがグリセリンジアセテートモノラウレートである、E1〜E2のいずれかの組成物。E4。前記エポキシ化脂肪酸エステルが、エポキシ化大豆油、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化パーム油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル、前述のもののそれぞれのエポキシ化誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、E1〜E3のいずれかの組成物。E5。約30重量%から約99重量% グリセリンジアセテートモノラウレート及び約1重量%から約70重量% エポキシ化脂肪酸エステルを含む、E1〜E4のいずれかの組成物。E6。0から5未満のヒドロキシル価を有するグリセリンジアセテートモノラウレートとエポキシ化大豆油とを含む、E1〜E5のいずれかの組成物。E7。第二のエポキシ化脂肪酸エステルを含む、E1〜E6のいずれかの組成物。
【0092】
実施形態E8において、ポリマー組成物が提供され、このポリマー組成物は、ポリマー樹脂と、アセチル化グリセリンエステル及び場合によりエポキシ化脂肪酸エステルを含む可塑剤組成物とを含む。E9。E1〜E7のいずれかの可塑剤組成物を含むE8のポリマー組成物。E10。前記ポリマー樹脂がビニルクロライド樹脂を含む、E8〜E9のいずれかのポリマー組成物。E11。113℃での168時間熱エージング後に30%より大きい引張伸び保持率を有するプラックである、E8〜E10のいずれかのポリマー組成物。E12。約1.0E+10から約1.0E+17の体積抵抗率を有する、E8〜E10のいずれかのポリマー組成物。
【0093】
実施形態E13において、コーティングされた導体が提供され、このコーティングされた導体は、導体と該導体上のコーティングとを含み、該コーティングは、ポリマー樹脂と、アセチル化グリセリンエステル及び場合によりエポキシ化脂肪酸エステルを含む可塑剤組成物とを含む。E14。前記コーティングがE1〜E12のいずれかの組成物を含む、E13のコーティングされた導体。E15。UL−1581に従って判定したときコーティングが耐熱試験を合格する、E13〜E14のいずれかのコーティングされた導体。
【0094】
試験法
酸価(acid number)(又は「酸値(acid value)」)は、化合物中に存在する遊離酸の量の尺度である。酸価は、1グラムの物質中に存在する遊離酸(脂肪酸及び/又は他の酸、例えば酢酸など)の中和に必要とされる水酸化カリウムのミリグラム数である。この酸価は、ドイツ規格DIN 53402に従って決定する(mg KOH/g)。
【0095】
APHAカラーは、HunterLabから入手できるColorQuest XE色度計、又は等価物;20−mm透過セル;HunterLab Universalソフトウェア、バージョン4.10又は等価物;HunterLabから入手できるBlack及びWhiteカラーリファレンスタイトル、又は等価物を使用して測定する;脱イオン(DI)水中での測定APHAカラー値はゼロである。
【0096】
25℃での密度は、ドイツ規格DIN 51 757に従って決定する(g/cm)。
【0097】
1.動的貯蔵弾性率(G’)及びガラス転移温度(Tg)は、動的機械的分析(DMA)取付具を有するTA Instrument AR1000N Rheometerを使用して動的機械的分析(DMA)によって決定する。試験片は直方体の形態であり、それを引張モードで試験する。温度を5℃/分の上昇速度で−100℃から+160℃へと変動させ、試験周波数を6.283ラド/秒(1Hz)で一定に保つ。サンプルの貯蔵及び損失弾性率、並びにtanδを、温度の関数として測定する。そのピークtanδ測定値からガラス転移温度(Tg)を決定する。−20℃での動的貯蔵弾性率(G’)を低温可撓性の基準として用いる。粘弾性材料の貯蔵及び損失弾性率は、貯蔵エネルギー(弾性部分によって表される)と、熱として散逸されるエネルギー(粘性部分によって表される)の尺度である。
【0098】
ヒドロキシル価(又は水酸基価)は、アセチル化度の指標であり、ポリマー中に存在するヒドロキシル基の数の尺度である。ヒドロキシル価は、1グラムのポリマー中のヒドロキシル基を中和するために必要とされる水酸化カリウムのミリグラム数である。このヒドロキシル価は、ドイツ規格DIN 53 240に従って決定される(mg KOH/g)。
【0099】
前記ポリマー組成物中の可塑剤相溶性は、所定の時間長(例えば、7日)にわたって高温(例えば、113℃又は136℃)でエージングさせた成形又は押出試験片の目視検査によって測定する。前記押出試験片は、電線(すなわち、導体上に押出された絶縁材)の形態であり得る。113℃又は136℃で7日後の表面上の滲出物(スピュー)の量を「なし」、「微量」、「適量」又は「大量」と等級づけする。
【0100】
ショア硬度は、ASTM D 2240に従って決定される。
【0101】
溶解温度は、可塑剤とPVC樹脂の不均質混合物が単相に変わるのが観察される温度である。溶解温度は、ドイツ規格DIN 53 408に従って、20グラムの可塑剤に1グラムのPVCを浸漬し、顕微鏡での観察によりPVCの完全溶解が見られるまで温度を段階的に上昇させることにより決定される(℃)。
【0102】
5%質量損失温度(℃)は、TG/DTA 220を用いて決定する。不活性ガスパージしながら可塑剤試験片を10K/分で室温から600℃まで加熱し、発生する質量損失及び熱的影響をサーモグラムに記録する。5%質量損失のための温度が高いほど、揮発性が低い。
【0103】
非エージング試験片での、113℃で168時間エージングさせた試験片での、又は136℃で168時間エージングさせた試験片での、引張強度(TS)、引張強度保持率(TSR)、引張伸び(TE)及び引張伸び保持率(TER)(2インチ/分で)は、成形プラックから切断したドッグボーン又はコーティングされた導体(押出電線)から取り出した管状絶縁材のいずれかを用いて、ASTM D638及びUL 1581/2556に従って決定する。
【0104】
用語「UL 1581」は、電線、ケーブル及びフレキシブルコードについてのUnderwriters Laboratories基準規格(Underwriters Laboratories Reference Standard for Electrical Wires, Cables, and Flexible Cords)である。UL 1581は、導体、絶縁材、ジャケット及び他のカバーについての、並びにサンプル調製、試験片選択及び調整の方法についての、並びに電線及びケーブル規格に要求される測定値及び計算値についての具体的な詳細を含む。
【0105】
粘度は、規格ASTM D445、25℃及び/又は40℃でのブルックフィールド−粘度計に従って決定する。
【0106】
体積抵抗率(23℃でのΩ・cm)は、ASTM D257に従って、500ボルト直流で測定する。3.5インチの直径の試験片を40ミル厚の成形プラックから切断し、Hewlett Packard 4329A High Resistance Meterに接続されたHewlett Packard 16008 Resistivity Cellを使用して試験する。
【0107】
含水率は、ドイツ規格DIN 51 777に従って決定される(%)。
【0108】
限定としてではなく例示として、本開示の実施例を提供する。
【実施例】
【0109】
実施例1:グリセリンジアセテートモノラウレート(GDM)の調製
41.4g(0.45mol) グリセリン、90.1g(0.45mol) ラウリン酸及び0.33g 触媒オクタン酸錫(II)を、1Lの一つ口ガラスフラスコに添加する。そのフラスコを回転エバポレータに取り付ける。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、排気する(3〜5回)。圧力をおおよそ10〜20mbarに調整し、水の蒸留により反応をモニターする。4時間後、室温に冷却することにより反応を停止させる。
【0110】
101.07g(0.99mol) 無水酢酸を添加し、フラスコを(常圧下で)100℃に加熱する。3時間後、温度を1時間にわたって120℃に上昇させる。再び温度を段階的に150℃に上昇させ(30分、10℃、常圧)、残留酢酸及び無水酢酸を蒸発除去する。
【0111】
生成物のグリセリンジアセテートモノラウレートは、淡黄色の液体である。収率:99%(グリセリンに基づき算出)。その特性は次のとおりである:
OH価:0mg KOH/g(DIN 53 240)
酸価:4.5mg KOH/g(DIN 53 402)
分子量:358.4
密度、25℃(g/cm):0.994
5%質量損失温度(℃):173
含水率(%):0.01
【0112】
実施例1A:グリセリンジアセテートモノラウレート(GDM)の調製
41.4g(0.45mol) グリセリン、90.1g(0.45mol) ラウリン酸及び0.33g 触媒オクタン酸錫(II)を、1Lの一つ口ガラスフラスコに添加する。そのフラスコを回転エバポレータに取り付ける。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、排気する(3〜5回)。圧力をおおよそ10〜20mbarに調整し、水の蒸留により反応をモニターする。4時間後、室温に冷却することにより反応を停止させる。
【0113】
101.07g(0.99mol) 無水酢酸を添加し、フラスコを(常圧下で)100℃に加熱する。3時間後、温度を1時間にわたって120℃に上昇させる。再び温度を段階的に150℃に上昇させ(30分、10℃、常圧)、残留酢酸及び無水酢酸を蒸発除去する。
【0114】
生成物のグリセリンジアセテートモノラウレートは、淡黄色の液体である。収率:99%(グリセリンに基づき算出)。その特性は次のとおりである:
【0115】
OH価:0mg KOH/g(DIN 53 240)
酸価:2mg KOH/g(DIN 53 402)
分子量:358.4
密度、25℃(g/cm):0.994
5%質量損失温度(℃):175
含水率(%):0.04
【0116】
PVCへのグリセリンジアセテートモノラウレートの溶解温度をドイツ規格DIN 53 408に従って決定し、他の可塑剤の溶解温度と比較する(表1参照)。粘度をASTM D445に従ってブルックフィールド−粘度計(25℃)で測定し、他の可塑剤のEastman Plasticizers Selector Chart, Publication L-174L, USA (June 2002)の文献データと比較する。調査した他の可塑剤としては、Grindsted(登録商標)Soft−N−Safe、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジオクチルフタレート(DOP)、Ultramoll(登録商標)IV及びUltramoll(登録商標)IIIポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)(これらはドイツ、レヴァークーゼンのLanxessから入手可能)が挙げられる。200℃を超えない限り、より高い溶解温度のほうが、熱エージング後の特性の長期間保持を確保するために望ましいと一般に考えられる。これに関連して、グリセリンジアセテートモノラウレートは、DIDP及びDOPより高い溶解温度を示す。グリセリンジアセテートモノラウレートは、溶解温度の点では、Ultramoll製品及びGrindsted(登録商標)Soft−N−Safeと同様である。グリセリンジアセテートモノラウレートの粘度は、フタレート可塑剤及びGrindsted(登録商標)Soft−N−Safeのものよりさらに低い。より低い粘度のほうが、より速い浸漬及び改善された加工性を生じさせる結果となるので、ドライブレンド及び/又はペレットの形態の組成物の製造に、並びに電線及びケーブル構造体の加工の際に望ましいと一般に考えられる。
【表1】

【0117】
実施例2〜3及び比較サンプル1〜5
ポリビニルクロライド(PVC)と様々な可塑剤及び添加剤のブレンドから構成される熱可塑性組成物を調製する。評価した第一の可塑剤は、グリセリンジアセテートモノラウレート、ジイソデシルフタレート(DIDP;TCI Japanの製品)、ジオクチルフタレート(DOP;TCI Americaの製品)、トリイソノニルトリメリテート(Sigma−AldrichからのTINTM)、及びVikoflex(登録商標)7010(エポキシ化脂肪酸メチルエステル、e−FAME)である。前記熱可塑性組成物は、63.9重量% PVC(OxyVinyls(登録商標)240F)、23.8重量% 第一の可塑剤、6.4重量% 炭酸カルシウム(Hubercarb(登録商標)Q1T)、3.5重量% エポキシ化大豆油(第二の可塑剤としてのPLAS−CHEK(登録商標)775)、2.1重量% Dabco(登録商標)T−12ジブチル錫ジラウレート(実施例2及び比較例1〜3のみ)、2.1重量% Mark(登録商標)6797(実施例3及び比較例4〜5のみ)、及び0.3重量% Irganox(登録商標)1076を含有する。
【0118】
以下の手順を用いてブレンドを調製する:
−個々の配合材料を計量し、スパチュラを使用して容器内ですべてを混合する
−従来のロータを有する「40cm」ブラベンダー(Brabender)混合ボールを使用して、40rpm設定で各配合物のバッチを作る
−混合ボールを窒素でパージしてはならない
−PVCと他の配合材料の混合物を添加し、175℃で5分間、混合する
【0119】
それらのブレンド組成物を混合ボールから取り出し、175℃で5分間、圧縮成形する。体積抵抗率を除くすべての特性の試験のために、30ミル厚の成形プラックから試験片を切断する。体積抵抗率は、40ミル厚の成形プラックから切断した試験片で測定する。新しい(すなわち非エージング)試験片を用いて、及び168時間、113℃又は136℃でエージングさせた試験片を用いて、引張強度及び伸びを2インチ/分で測定する。動的機械的分析を約−100℃から+160℃の範囲にわたって5℃/分の速度で行い、ガラス転移温度(Tg)を決定する。データを表2に提供する。
【表2】

【0120】
実施例2の組成物は、比較サンプル1、2及び3で得られる望ましい範囲内である特性を示す。実施例3の組成物は、DIDP(比較サンプル4)で得られるものに匹敵する特性を示す。
【0121】
実施例4〜5及び比較サンプル6〜7
以下の手順を用いて、実施例4〜5及び比較サンプル(CS)6〜7の熱可塑性組成物を調製する。実施例4から5及び比較サンプル6から7でポリビニルクロライド(PVC)と添加剤と異なる可塑剤(又は可塑剤混合物)とのブレンドを調製する。これらの熱可塑性組成物は、60.3重量% PVC(OxyVinyls(登録商標)240F)、30.0重量% 可塑剤又は可塑剤混合物、6.4重量% 焼成クレー(Satintone(登録商標)SP−33)、3.0重量% カルシウム−亜鉛混合金属熱安定剤(Baeropan(登録商標)MC 90249 KA)、及び0.3重量% 酸化防止剤(Irganox(登録商標)1076)を含有する。評価した可塑剤は、(a)実施例1AのGDM;(b)50重量%の実施例1AのGDMと50重量%のPLAS−CHEK(登録商標)775 ESOとから構成される混合物;(c)トリオクチルトリメリテート(TOTM;Sigma−Aldrichの製品)及び(d)ジイソデシルフタレート(DIDP;Univarの製品)である。以下の手順を用いてブレンドを調製する:
−TOTM、DIDP、GDM及びエポキシ化大豆油を少なくとも60分間、60℃に予熱し、振盪し、50/50重量% GDM/ESO混合物(可塑剤組成物)を作る
−スパチュラを使用して容器内で(可塑剤及びクレーを除く)すべての配合材料を混合することにより、「固体混合物」を作る
−次のように、PVC粉末への可塑剤の浸漬により「ドライブレンド」を作る
−シグマブレードを取り付けた「40cm」ブラベンダー混合ボールを90℃で使用して、40rpm設定で各配合物のバッチを作る
−混合ボールを窒素でパージしてはならない
−2分温めた後、「固体混合物」を添加し、30秒間混合する
−可塑剤を添加し、6分間混合し、そして可塑剤吸収が完了する(すなわち、粉末の外観が「湿潤」から「乾燥」に変わる)のにかかる時間も観察する
−充填剤(クレー)を添加し、60秒間混合する
−停止し、「ドライブレンド」を取り出す
−その後、以下の手順を用いてその「ドライブレンド」を溶融混合する:
(a)カムロータを取り付けた「40cm」ブラベンダー混合ボールにおいて40rpm設定で混合する
(b)混合ボールを窒素でパージしてはならない
(c)「ドライブレンド」を添加し、180℃で2分間混合する
【0122】
そのブレンド組成物を混合ボールから取り出し、180℃で5分間、圧縮成形する。体積抵抗率及びショア硬度を除くすべての特性の試験のために、30ミル厚の成形プラックから試験片を切断する。体積抵抗率は、40ミル厚の成形プラックから切断した試験片で測定する。ショアA及びショアDは、250ミル厚の成形試験片で測定する。データを表3に提供する。
【0123】
実施例4及び5の組成物は、比較サンプル(CS)6及び7で得られるものと同様である又はそれらより良好である特性を示す。特に、実施例5の組成物は、TOTM(比較サンプル7)で得られるものに匹敵する7日間136℃での熱エージング後の引張伸びの優れた保持率、並びに望ましい低さの硬度及び速い可塑剤吸収速度を呈示する。
【表3】

【0124】
実施例6
ポリビニルクロライド(PVC)と第一の可塑剤としてのGrindsted Soft−N−Safe(登録商標)硬化ヒマシ油のアセチル化モノグリセリド(S−N−S;Daniscoの製品)とのブレンドから構成される熱可塑性組成物を調製する。この熱可塑性組成物は、63.9重量% PVC(OxyVinyls(登録商標)240F)、23.8重量% 第一の可塑剤、6.4重量% 焼成クレー(Polyfil(登録商標)70カオリンクレー)、3.5重量% エポキシ化大豆油(第二の可塑剤としてのPLAS−CHEK(登録商標)775)、2.1重量% Mark(登録商標)6797及び0.3重量% Irganox(登録商標)1076を含有する。
【0125】
以下の手順を用いて、実施例6の熱可塑性組成物を調製する:
−個々の配合材料を計量し、スパチュラを使用して容器内ですべてを混合する
−従来のロータを有する「40cm」ブラベンダー(Brabender)混合ボールを使用して、40rpm設定で各配合物のバッチを作る
−混合ボールを窒素でパージしてはならない
−PVCと他の配合材料の混合物を添加し、175℃で5分間、混合する
【0126】
それらのブレンド組成物を混合ボールから取り出し、175℃で5分間、圧縮成形する。体積抵抗率を除くすべての特性の試験のために、30ミル厚の成形プラックから試験片を切断する。体積抵抗率は、40ミル厚の成形プラックから切断した試験片で測定する。新しい(すなわち非エージング)試験片を用いて、及び168時間、113℃又は136℃でエージングさせた試験片を用いて、引張強度及び伸びを2インチ/分で測定する。動的機械的分析を約−100℃から+160℃の範囲にわたって5℃/分の速度で行い、Tg及び−20℃での弾性率を決定する。データを表4に提供する。
【表4】

【0127】
実施例6は、高温での申し分のない熱エージング性能をはじめとする、優れた特性を呈示する。
【0128】
本開示は、本明細書に含まれている実施形態及び例示に限定されず、本特許請求の範囲内に入る実施形態の変更形態を、該実施形態の部分及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含めて、包含することを明確に意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル化グリセリンエステルを含む第一の可塑剤と、
第二の可塑剤と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記アセチル化グリセリンエステルが0から100未満のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アセチル化グリセリンエステルがグリセリンジアセテートモノラウレートである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
0から100未満のヒドロキシル価を有するグリセリンジアセテートモノラウレートとエポキシ化大豆油とを含む、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記第二の可塑剤がエポキシ化脂肪酸エステルを含む、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記エポキシ化脂肪酸エステルが、エポキシ化大豆油、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化パーム油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル、これら各々のエポキシ化誘導体、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ポリマー樹脂と、
アセチル化グリセリンエステルを含む可塑剤組成物と
を含む、ポリマー組成物。
【請求項8】
前記可塑剤組成物が第二の可塑剤を含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
導体と該導体上のコーティングとを含むコーティングされた導体であって、該コーティングが、ポリマー樹脂とアセチル化グリセリンエステル及び場合によりエポキシ化脂肪酸エステル又は他の可塑剤を含む可塑剤組成物とを含むものである、コーティングされた導体。
【請求項10】
前記可塑剤組成物が第二の可塑剤を含む、請求項9に記載のコーティングされた導体。

【公表番号】特表2013−506734(P2013−506734A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532256(P2012−532256)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050654
【国際公開番号】WO2011/041363
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】