説明

アセチル化ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびそれで可塑化されたPVC絶縁体

本開示は、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびそれを含む組成物に関する。アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルは、エポキシ化脂肪酸エステルとブレンドすることができる。本発明のアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびブレンドには可塑剤として有利な用途が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は2009年9月30日出願の米国特許出願第61/247,329号に関する優先権を主張するものである。その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
可塑剤は、柔軟性および可撓性を付与するために、ポリマー樹脂に添加される化合物または化合物の混合物である。フタル酸ジエステル(「フタレート」としても知られている)は、ポリ塩化ビニル(PVC)および他のビニルポリマーから作製されるポリマー製品などの多くの可撓性ポリマー製品における公知の可塑剤である。一般的なフタレート可塑剤の例には、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジアリルフタレート(DAP)、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート(DEHP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジイソデシルフタレート(DIDP)が含まれる。高温用途に使用される他の一般的な可塑剤はトリメリテートおよびアジピン酸ポリエステルである。最適な特性を得るために可塑剤の混合物がしばしば使用される。
【0003】
フタレート可塑剤は近年、フタレートの環境悪影響およびフタレートに曝露されたヒト(特に子供)における潜在的な健康悪影響に関心のある公共利益団体による厳しい監視下に置かれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ポリマー樹脂用の非フタル酸エステル可塑剤の必要性が存在する。フタレート可塑剤を含むポリマーと同じかまたは実質的に同じ化学的、機械的および/または物理的特性を有する非フタル酸エステル可塑化ポリマーの必要性がさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびそれを含む組成物に関する。アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルの非限定的な有益な用途は可塑剤である。
【0006】
一実施形態では、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを提供する。アセチル化脂肪酸エステルは、少なくとも1つの脂肪酸成分が約4〜約22個の炭素原子を有するポリグリセリドを含む。このアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルは少なくとも1つのアセチル基も含む。
【0007】
本開示は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の可塑剤を含む組成物を提供する。一実施形態では、その組成物は第1の可塑剤および任意選択の第2の可塑剤を含む。第1の可塑剤はアセチル化脂肪酸エステルを含む。
【0008】
一実施形態では、ポリマー組成物を提供する。ポリマー組成物はポリマー樹脂および可塑剤組成物を含む。可塑剤組成物は、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル、およびこれに限定されないがエポキシ化脂肪酸エステルを含む任意選択の他の可塑剤を含む。
【0009】
一実施形態では、コーティングされた導電体を提供する。コーティングされた導電体は導電体および導電体上のコーティングを含む。そのコーティングは、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の可塑剤を含む可塑剤組成物とを含む。可塑剤組成物は、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルと、これに限定されないがエポキシ化脂肪酸エステルを含む任意選択の他の可塑剤とを含む。
【0010】
本開示の利点は、ポリマー樹脂のための環境的に安全な可塑剤である。
【0011】
本開示の利点は、ヒトへの健康悪影響のリスクが低いまたはリスクがないフタル酸エステルを含まない可塑剤である。
【0012】
本開示の利点は、ポリマー樹脂に、フタレート含有可塑剤を含む同じポリマー樹脂と同じかまたは実質的に同じ特性を付与するフタル酸エステルを含まない可塑剤である。
【0013】
本開示の利点は、フタレートを含まないワイヤーおよびケーブルのためのコーティングである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびそれを含む組成物に関する。本明細書で提供する組成物は、ポリマー樹脂、特に塩化ビニル樹脂において使用する可塑剤として適している。
【0015】
元素周期表へのすべての言及は、CRC Press,Inc.(著作権保有)、2003年に公開されている元素周期表によるものである。また、族または族群への任意の言及は、族の番号付けのためのIUPACシステムを用いたこの元素周期表において反映されている族または族群に対するものとする。その反対の記述、文脈からの暗示のない限り、または当該分野における慣行でない限り、すべての部およびパーセントは重量ベースであり、すべての試験方法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実務のため、参照した任意の特許、特許出願または公開の内容を、特に合成技術、製品および加工の設計、ポリマー、触媒、定義(本開示において具体的に提供される任意の定義と矛盾しない程度)および当該分野における一般知識の開示に関して、全体として参照により本明細書に組み込む(またその均等な米国バージョンを同様に参照により本明細書に組み込む)。
【0016】
本開示における数値範囲はおおよそのものであり、したがって、別段の表示のない限りその範囲外の値も含むことができる。数値範囲は、1単位の増分で、その値を含む下限値から上限値までのすべての値を含む。ただし、任意の下限値と任意の上限値の間の少なくとも2つの単位の分離が存在する。一例として、例えば分子量、メルトインデックス等の組成的、物理的または他の特性が100〜1,000である場合、その意図は、100、101、102等のすべての個々の値および100〜144、155〜170、197〜200等の下位範囲を明らかに含むものとする。1未満または1より大きい小数(fractional number)(例えば、1.1、1.5等)を含む値を含む範囲について1単位は、必要に応じて、0.0001、0.001、0.01または0.1であるものとする。10より小さい一桁の数(例えば、1〜5)を含む範囲について1単位は通常0.1であるものとする。これらは具体的に意図しようとする例に過ぎず、列挙された下限値と上限値の間の数値の可能なすべての組合せは、本開示において明らかに言及されているものとする。とりわけ、熱可塑性組成物中の成分および/または熱可塑性組成物中のコーティング、添加剤および様々な他の成分ならびにそれによってこれらの成分が規定される様々な特徴および特性のための量について、数値範囲が本開示において提供される。
【0017】
別段の具体的な表示のない限り、化合物に関して使用されるような単数形はすべての異性体を含みその逆も同様である(例えば、「ヘキサン」は、ヘキサンのすべての異性体を個別にまたは集合的に含む)。「化合物」および「錯体」という用語は、互換的に用いられて有機化合物、無機化合物および有機金属化合物を指す。「原子」という用語は、イオン状態に関係なく、すなわち、それが電荷を担持していようと部分電荷を担持していようと別の原子と結合していようと、要素のうちの最も小さい構成要素を指す。「非晶質」という用語は、示差走査熱量測定(DSC)または同等の技術で測定して結晶融点をもたないポリマーを指す。
【0018】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびその派生語は、具体的に開示されていてもいなくても、追加の任意の成分、ステップまたは手順の存在を除外することを意図するものではない。疑念を回避するためだが、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求されるすべての組成物は、反対の記述がない限り、ポリマーであってもそれ以外であっても、追加の任意の添加剤、補助剤または化合物を含むことができる。これに対して、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作に本質的でないものを除いて、後続する任意の列挙の範囲から、他の任意の成分、ステップまたは手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に表示されていないまたは挙げられていない任意の成分、ステップまたは手順を除外する。「または(or)」という用語は、別段の表示のない限り、挙げられたメンバーを個別的にかつ任意の組合せで指すものとする。
【0019】
「組成物」および類似した用語は、2つ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。
【0020】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」および類似した用語は、2つ以上のポリマーのブレンドならびにポリマーと様々な添加剤のブレンドを意味する。そうしたブレンドは混和性であっても混和性でなくてもよい。そうしたブレンドは相分離していても相分離していなくてもよい。そうしたブレンドは、透過電子分光法、光散乱法、X線散乱法および当該分野で公知の他の任意の方法で判定して1つまたは複数のドメイン配置を含んでも含まなくてもよい。
【0021】
「ポリマー」という用語(および類似した用語)は、同じ種類かまたは異なる種類のモノマーを反応(すなわち、重合)することによって調製される高分子化合物である。「ポリマー」としてはホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。
【0022】
一実施形態では、本明細書で開示する組成物はフタレートを含まない。本明細書で用いる「フタル酸エステルを含まない組成物」という用語は、フタレートを欠いているか、あるいはフタレートを含まない組成物である。「フタレート」は以下の構造(I):
【化1】

を含む化合物である。
【0023】
式中、RおよびR’は同じであっても異なっていてもよい。RおよびR’のそれぞれは1〜20個の炭素原子を有する置換/非置換ヒドロカルビル基から選択される。本明細書で用いる「ヒドロカルビル」および「炭化水素」という用語は、分岐状または非分岐状、飽和または不飽和の、環状、多環式、縮合型または非環式の種およびそれらの組合せを含む、水素原子及び炭素原子のみを含む置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基およびアルキニル基が挙げられる。それぞれの3位、4位、5位および6位には、水素または他の部分が存在していてよい。
【0024】
本開示は、ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびそれを作製する方法を対象とする。一実施形態では、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル(すなわちAPE)を作製する方法を提供する。その方法は、ポリグリセリド脂肪酸エステルを形成させることを含む。ポリグリセリド脂肪酸エステルは続いてアセチル化されてアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを形成する。一実施形態では、本明細書で開示するアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルはフタレートを含まない。
【0025】
その方法は、ポリグリセリド脂肪酸エステルを形成させることを含む。ポリグリセリド脂肪酸エステルの形成は、(i)ポリグリセロールと脂肪酸との間のエステル化、または(ii)ポリグリセロールとトリグリセリドとの間のエステル交換によって生じる。本明細書で用いる「ポリグリセロール」は、エーテル結合で連結された2つ以上のグリセロール単位を有するグリセロールオリゴマーである。ポリグリセロール作製のための非限定的な反応機構は、(i)グリセロール縮合の反応生成物、および(ii)グリセロールとエピクロルヒドリンとの間の反応を含む。縮合度は重合度を決定する。それは一般に2〜10である。
【0026】
適切なポリグリセロールの非限定的な例には、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロール、オクタグリセロール、ノナグリセロール、デカグリセロールおよびその組合せが挙げられる。一実施形態では、ポリグリセロールのための重合度は3〜5である。他の実施形態では、そのポリグリセロールはテトラグリセロールである。ポリグリセロールの構造は、以下で詳細に論じるように、最終的なアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルの特性に影響を及ぼす。ポリグリセロール製品は相当量の遊離グリセロールを含むことができる。適切なポリグリセロール製品には、ジグリセロール(Solvayの製品)、ポリグリセロール−3(Solvayの製品)、ポリグリセロール−4(Solvayの製品)、R−PGポリグリセロール−3(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)、ポリグリセリン#310テトラグリセロール(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)、ポリグリセリン#500ヘキサグリセロール(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)およびポリグリセリン#750デカグリセロール(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)が挙げられる。
【0027】
本明細書で用いる「脂肪酸」は、末端カルボキシル基(COOH)を有する4〜22個の炭素原子を含む脂肪族鎖を含むモノカルボン酸である。脂肪酸は、飽和または不飽和、分岐状または非分岐状であってよく、1つもしくは複数のヒドロキシル基を含んでも含まなくてもよい。「脂肪酸成分」という用語は、エステル化後のポリグリセリド脂肪酸エステルの脂肪酸部分である。
【0028】
一実施形態では、脂肪酸は4〜22個の炭素原子を含む。適切な脂肪酸の非限定的な例には、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、12−ヒドロキシステアリン酸(C18)、パーム核油酸(C8〜C22脂肪酸と主としてラウリン酸およびミリスチン酸の混合物)、ヤシ油酸(C8〜C22脂肪酸、主としてラウリン酸およびミリスチン酸の混合物)、ヒマシ油酸(主としてリシノール酸)、硬化ヒマシ油(主に硬化リシノール酸)および上記の任意の組合せが挙げられる。
【0029】
一実施形態では、脂肪酸はラウリン酸である。
【0030】
他の実施形態では、脂肪酸は12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0031】
本明細書で用いる「トリグリセリド」は脂肪酸とグリセロールとのトリエステルである。トリグリセリドの非限定的な例には、野菜油及び植物油(vegetable and plant oil)(ココナツオイル、コーンオイル、パーム核油、ヒマシ油、水素添加ヒマシ油)、ワックスならびに脂肪が挙げられる。
【0032】
ポリグリセリド脂肪酸エステルは、ポリグリセロールと脂肪酸との間のエステル化によるか、またはポリグリセロールとトリグリセリドとの間のエステル交換によって形成させることができる。エステル化は、例えばオクチル酸スズなどの有機金属触媒により触媒作用を受けても受けなくてもよい。エステル交換は、アルカリ触媒により触媒作用を受け得る。脂肪酸に関するエステル化度は0〜12である。ポリグリセロールに対する脂肪酸のモル比は、ポリグリセリドのモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル、トリ脂肪酸エステル、テトラ脂肪酸エステル、ペンタ脂肪酸エステル、ヘキサ脂肪酸エステル、ヘプタ脂肪酸エステル、オクタ脂肪酸エステル、ノナ脂肪酸エステル、デカ脂肪酸エステル、モノデカ脂肪酸エステルおよび/またはドデカ脂肪酸エステルが生成するように調節することができる。一実施形態では、脂肪酸に関するエステル化度は0.5〜3である。本明細書で用いる「エステル化度」は、ポリグリセロールに対する脂肪酸のモル比である。
【0033】
テトラグリセロールのエステル化およびエステル交換の略図を以下の(II)に示す。
【化2】

は1〜22個の炭素原子を含む炭素鎖である。
【0034】
本発明の方法は、ポリグリセリド脂肪酸エステルをアセチル化してアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを生成することを含む。本明細書で用いる「アセチル化する」または「アセチル化」という用語は、−OH基を有する化合物の分子中にアセチル基を導入するプロセスである。言い換えれば、アセチル化は−OH基のHをCHCO−基で置き換えることである。脂肪酸成分がヒドロキシル基を含む場合、脂肪酸成分についてもまたアセチル化が起こり得る。適切なアセチル化試薬の非限定的な例には、無水酢酸および塩化アセチルが含まれる。ポリグリセリド脂肪酸エステルの−OH基のいくつか、実質的にすべてまたはそのすべてをアセチル化することができる。「アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル」(すなわちAPE)は、1つ、いくつか、実質的にすべてまたはすべての−OH基がアセチル化されているポリグリセリド脂肪酸エステルである。一実施形態では、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル(APE)は、ポリグリセリドのアセチル化モノ脂肪酸エステル/ジ脂肪酸エステル/トリ脂肪酸エステル/テトラ脂肪酸エステル/ペンタ脂肪酸エステル/ヘキサ脂肪酸エステル/ヘプタ脂肪酸エステル/オクタ脂肪酸エステル/ノナ脂肪酸エステル/デカ脂肪酸エステル/モノデカ脂肪酸エステル/ドデカ脂肪酸エステル、脂肪酸のアセチル化モノグリセリド、脂肪酸のアセチル化ジグリセリド、脂肪酸のアセチル化トリグリセリド、グリセロール、ポリグリセロール、トリアセチン(三酢酸グリセリン)、アセチル化ポリグリセロールの1つまたは複数およびその任意の組合せを含む。
【0035】
高い分子量(「MW」)を有するポリグリセリド脂肪酸エステルは一般に、多くのポリマー樹脂(塩化ビニル樹脂など)と相溶性が低い。驚くべきことに、本出願人らは、ポリグリセリド脂肪酸エステルをアセチル化すると、ポリグリセリド脂肪酸エステル中の水素結合が減少することを発見した。アセチル化はポリグリセロール部分の−OH基をキャップし、H結合を減少させることによって高MW脂肪酸エステル化ポリグリセリドの粘度を低下させる。粘度の低下は、(i)高い分子量(低揮発性)と(ii)低粘度(低H結合)の相乗的組合せを有する最終のアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルをもたらす。本発明のAPEは、ポリマー樹脂とブレンドした場合、優れた相溶性を示す。
【0036】
本発明のAPEによって示された高い分子量と低粘度の予想外の相乗効果は、ポリマー樹脂に適用した場合、可塑化特性を有するAPEを有利に提供する。一実施形態では、APEは、約500〜約2000g/モルの分子量及び25℃にて約100〜約3000mPa sの粘度(ASTM D445に従ってブルックフィールド粘度計で測定する)を有する。
【0037】
一実施形態では、本発明の方法は、ポリグリセリド脂肪酸エステルの実質的にすべてまたはすべての−OH基をアセチル化することを含む。このアセチル化は、0〜450未満、0〜200未満、0〜100未満、0〜50未満または0〜15未満、0〜10未満、0〜5未満、0〜2未満または0のヒドロキシル数を有するアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルをもたらす。上記で論じたように、ヒドロキシル基をキャッピングするとAPEの粘度を有利に低下させる。
【0038】
一実施形態では、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルは約0mg KOH/g〜約8mg KOH/gの酸価を有する。酸価はDIN53402に従って決定される。
【0039】
一実施形態では、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルは約0〜約3000、約0〜約1000、または約0〜約500のAPHA色数を有する。
【0040】
一実施形態では、本発明の方法は、ポリグリセロールを脂肪酸と反応させる、あるいはそれでエステル化し、続いて、脂肪酸エステル中間体をアセチル化して、ポリグリセロールベースで約3〜約5の平均重合度を有するアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを生成させることを含む。
【0041】
一実施形態では、本発明の方法は、テトラグリセロールをラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびその組合せから選択される脂肪酸でエステル化することを含む。
【0042】
一実施形態では、本発明の方法は、テトラグリセロールを、パーム核油、ココナツオイル、ヒマシ油、キャスターワックス(水素添加ヒマシ油)およびその組合せとエステル交換することを含む。続いて脂肪酸エステル中間体をアセチル化してアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを生成させる。
【0043】
本発明の方法は、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0044】
本開示は、上記方法によって生成するアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルに関する。一実施形態では、ポリグリセリド部分および少なくとも1つの脂肪酸成分を含むアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル(APE)を提供する。脂肪酸成分は約4〜約22個の炭素原子を有する。APEはまた少なくとも1つのアセチル基も含む。
【0045】
一実施形態では、APEは少なくとも3つのアセチル基を含む。
【0046】
一実施形態では、APEは、0〜450未満、0〜200未満、0〜100未満、0〜50未満、0〜15未満、0〜10未満、0〜5未満、0〜2未満または0のヒドロキシル価を有する。
【0047】
一実施形態では、APEは、25℃で約100〜約3000mPa sの粘度および約500〜約2000g/モルの分子量を有する。
【0048】
一実施形態では、そのポリグリセリド部分は、3〜5の平均重合度を有するポリグリセロールから誘導される。他の実施形態では、ポリグリセロール部分はテトラグリセロールである。
【0049】
一実施形態では、APEの脂肪酸エステル成分はラウリン酸である。
【0050】
一実施形態では、APEの脂肪酸エステル成分は12−ヒドロキシステアリン酸である。
【0051】
APEは、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0052】
APEは相当量の不溶性成分を含むことができる。本明細書で用いる「不溶性成分」という用語は、特に室温以下で保持したとき、経時的にAPEから相分離してくる1つまたは複数の化合物である。APEは室温で液体であり、その不溶性成分は、液相APEから固相として相分離することができる。次いで不溶性成分はAPEを濁らせ、底部に沈澱してくる。温度が低ければ低いほど不溶物はより多く生成する。さらに、ポリグリセリド脂肪酸エステルを作製するために使用する原料(ポリグリセロール、脂肪酸およびトリグリセリドなど)の品質は、アセチル化後に生成する不溶物の量ならびにAPEの色に影響を及ぼす。
【0053】
APEを精製工程にかけて、色を落とし、不溶物の量を減少させることができる。本明細書で用いる「精製工程」は以下の手順:ろ過手順、遠心分離手順、沈殿手順、添加剤[二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、活性炭、Perlite(天然由来の非晶質ケイ酸質火山岩)、珪藻土)での処理およびその組合せの1つまたは複数をAPEに適用することである。これらの手順のいずれも、任意選択で、5℃〜50℃の温度で実施し、この温度で少なくとも3時間保持することができる。添加剤を用いてろ過ステップを助けることができ、また、望ましくは、より淡い色のAPEをもたらすことができる。精製工程はAPE中にある不溶性成分のすべてまたは一部を除去し、望ましくは、色をより淡くすることもできる。添加剤を用いたAPEの処理、続くろ過を150℃という高温で実施して、不溶物の量を必ずしも減少させることなく色をより淡くすることもできる。APEからの固相の除去および/またはより淡い色により、得られる精製工程からのろ液は透明であり、濁りが少ないかまたは濁りがないものとなる。「精製APE」は、上記精製工程の少なくとも1つにかけられており、以下の特性:精製前のAPEと比較してより淡い色、より少ない(または存在しない)不溶性成分および/またはより少ない(または存在しない)濁りの少なくとも1つを示すAPEである。
【0054】
本開示は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の可塑剤を含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物(または可塑剤組成物)を提供するが、それは、(i)APEを含む第1の可塑剤および任意選択で(ii)第2の可塑剤のブレンドを含む。一実施形態では、組成物は、(i)APEと(ii)エポキシ化脂肪酸エステル(EFA)を含む第2の可塑剤のブレンドを含む。APEは、ヒドロキシル価および/または粘度に関して制限なしに、本明細書で前に開示した任意のAPEであってよい。本明細書で用いる「エポキシ化脂肪酸エステル」という用語は、少なくとも1つのエポキシド基を含む少なくとも1つの脂肪酸部分を有する化合物である。「エポキシド基」は、酸素原子が、すでに互いに結合している2個の炭素原子のそれぞれと結合している3員環状エーテル(オキシランまたはアルキレンオキシドとも称される)である。適切なエポキシ化脂肪酸エステルの非限定的な例には、エポキシ化された動物油および植物油、例えば天然のエポキシ化油類、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化コーンオイル、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化キャノーラ油、エポキシ化菜種油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化トールオイル、エポキシ化キリ油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化2−エチルヘキシルステアレート、エポキシ化ステアリン酸ステアリル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートエポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル、これらのそれぞれのエポキシ化誘導体およびこれらの任意の組合せが挙げられる。天然のエポキシ化油の非限定的な例はベルノニア油である。
【0055】
第2の可塑剤には、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロヘキセンジエポキシドおよびその任意の組合せも挙げることができる。
【0056】
エポキシ化脂肪酸エステルは様々な方法で調製することができる。例えば、天然油を出発原料として使用することができる。この場合、天然油をけん化して脂肪酸にし、次いでアルコールでエステル化することができる。続いて、低分子量エステルをエポキシ化する。不飽和エステルは、過酸によってエポキシ化することができる。あるいは、脂肪酸のグリシジルエステルは、エピクロルヒドリンまたは関連化学薬品を用いて調製することができる。さらに他の代替法では、トリグリセリドをアルコールでエステル交換し、次いで不飽和脂肪酸エステルを過酸でエポキシ化することができる。
【0057】
一実施形態では、エポキシ化脂肪酸エステルは、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよび2−エチルヘキシルエステルを含む任意のエポキシ化脂肪酸C〜C14エステルであってよい。他の実施形態では、エポキシ化脂肪酸エステルは脂肪酸メチルエステルのエポキシドである。
【0058】
脂肪酸メチルエステルのエポキシドの調製のための非限定的な例は、大豆油を用いて開始し、大豆油をメタノールでエステル交換して油中の脂肪酸のメチルエステルを作製する。不溶性のため、グリセロールを反応生成物から除去する。過酢酸の酢酸エチル溶液を用いて脂肪酸の二重結合をエポキシ化する。過酸は、35%未満の過酸で35℃未満に保持して爆発を防止する。完了したら、酢酸エチルおよび生成酢酸を真空ストリッピングにより除去する。
【0059】
一実施形態では、エポキシ化脂肪酸エステルはエポキシ化大豆油(ESO)である。
【0060】
一実施形態では、組成物(または可塑剤組成物)はAPE/EFA混合物である。APE/EFA混合物を「APE/EFA可塑剤」と称することができる。APE/EFA可塑剤は、約1重量%〜約100重量%または約10重量%〜約90重量%のAPEおよび約99重量%〜約0重量%または約90重量%〜約10重量%のEFA(可塑剤組成物の全重量ベースで)を含むことができる。一実施形態では、APE/EFA混合物は、87重量%のAPEおよび13重量%のEFAを含む。他の実施形態では、APE/EFA混合物は、50重量%のAPEおよび50重量%のEFAを含む。
【0061】
APEは、フタレートを含まない可塑剤として、ポリマー樹脂(および他の材料)に加えると有利である。「可塑剤組成物」または「可塑剤」は、添加に応じて、ポリマー樹脂(通常熱可塑性ポリマー)のモジュラスおよび引張強度を低下させ、可撓性、伸び、衝撃強度および引裂強度を増大させる物質である。可塑剤は、添加に応じて、ポリマー樹脂の融点を低下させ、ガラス転移温度を低下させ、ポリマー樹脂の加工性を向上させることもできる。
【0062】
一実施形態では、可塑剤組成物は、0〜450未満、0〜15未満、0〜10未満、0〜5未満、0〜2未満または0のヒドロキシル価および25℃で約100mPa s〜約3000mPa sの粘度を有するAPEを含む。APEは、上記EFAのいずれかとブレンドすることができる。
【0063】
一実施形態では、可塑剤組成物は、1つまたは複数のAPEおよび/または1つまたは複数のEFAを含むことができる。一実施形態では、可塑剤組成物は、0〜450未満、0〜15未満、0〜10未満、0〜5未満、0〜2未満または0のヒドロキシル価を有するAPEおよびエポキシ化大豆油(ESO)を含む。他の実施形態では、可塑剤組成物のAPEは0のヒドロキシル価を有し、またESOも含む。
【0064】
一実施形態では、可塑剤組成物はAPE、第1のEFAおよび第2のEFAを含む。第2のEFAは第1のEFAとは異なる。他の実施形態では、可塑剤組成物はAPE、ESOおよびエポキシ化プロピレングリコールジオレエートを含む。さらに他の実施形態では、可塑剤組成物はAPE、ESOおよびエポキシ化脂肪酸メチルエステルを含む。
【0065】
本開示の組成物はフタレートを含まなくてよいが、一実施形態では、可塑剤組成物は、これらに限定されないが、フタレート(ジイソノニルフタレート、ジアリルフタレート、ジ−2−エチルヘキシル−フタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレートおよびジイソトリデシルフタレートなど)、トリメリテート(トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートおよびトリイソデシルトリメリテートなど)、シトレート、Grindsted(登録商標)Soft−N−Safeの硬化ヒマシ油のアセチル化モノグリセリド(Daniscoの製品)、Hexamoll(登録商標)DINCHの1,2−シクロヘキサンジカルボン酸のジイソノニルエステル(BASFの製品)、ベンゾエートおよびアジピン酸ポリエステルを含む他の可塑剤も含むことができる。
【0066】
本発明の組成物は、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0067】
APEを単独で、または任意のEFAおよび/または他の可塑剤と組み合わせて含む本発明の組成物を様々な組成物または製品において使用することができる。この組成物のための適切な用途の非限定的な例には、化粧品組成物/製品、食品組成物/製品およびポリマー組成物/製品、軟質熱可塑性ポリオレフィン、形材(profile)(ガスケット)、フィルム等が挙げられる。
【0068】
本開示はポリマー組成物を提供する。一実施形態では、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の可塑剤を含む可塑剤組成物とを含むポリマー組成物を提供する。可塑剤組成物は本明細書で先に述べた任意の組成物であってよい。一実施形態では、可塑剤組成物は、第1の可塑剤(APE)を単独か、または本明細書で開示する任意のEFAなどの第2の可塑剤と組み合わせて含む。ポリマー組成物は、約1重量%〜約99重量%のポリマー樹脂および約99重量%〜約1重量%の可塑剤組成物を含む。重量パーセントはポリマー組成物の全重量ベースである。
【0069】
適切なポリマー樹脂の非限定的な例には、ポリスルフィド、ポリウレタン、アクリル、エピクロルヒドリン、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、合成ゴム、EPDMゴム、プロピレンベースポリマー、エチレンベースポリマーおよび塩化ビニル樹脂が挙げられる。本明細書で用いる「プロピレン系ポリマー」という用語は、大部分の重量パーセントで重合したプロピレンモノマー(重合したモノマーの全量ベースで)を含み、任意選択で少なくとも1つの重合コモノマーを含むポリマーである。本明細書で用いる「エチレン系ポリマー」という用語は、大部分の重量パーセントで重合したエチレンモノマー(重合したモノマーの全量ベースで)を含み、任意選択で少なくとも1つの重合コモノマーを含むポリマーである。
【0070】
本明細書で用いる「塩化ビニル樹脂」という用語は、ポリ塩化ビニル(PVC)または塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル/エチレンコポリマーなどの塩化ビニルコポリマーなどの塩化ビニルポリマー、あるいは、エチレン/酢酸ビニルコポリマーに塩化ビニルをグラフト化して得られるコポリマーである。樹脂組成物は、上記塩化ビニルポリマーまたは塩化ビニルコポリマーと、これらに限定されないが、塩素化ポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン、オレフィンポリマー、例えばメタクリルポリマーもしくはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー(ABS樹脂)を含む他の混和性または相溶性ポリマーとのポリマーブレンドを含むこともできる。
【0071】
一実施形態では、塩化ビニル樹脂はポリ塩化ビニル(PVC)である。
【0072】
一実施形態では、ポリマー組成物は熱可塑性組成物である。本明細書で用いる「熱可塑性組成物」は、(1)その元の長さを超えて引き伸ばされ、開放したときほぼその元の長さに縮み、(2)熱をかけたとき軟化し、室温に冷却したときほぼその元の状態に戻る能力を有するポリマー組成物である。
【0073】
一実施形態では、ポリマー組成物は、ポリマー樹脂ならびに1つまたは複数のAPE、任意選択の第1のEFAおよび任意選択の第2のEFAを含む可塑剤組成物を含む。
【0074】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVC、APEおよび任意選択のEFAを含む。ポリマー組成物は、約A60〜約A100または約A70〜約A95のショア硬度を有する。一実施形態では、ポリマー組成物は、約D10〜約D70または約D20〜約D60のショア硬度を有する。
【0075】
一実施形態では、可塑剤組成物は、DIN53408に従って測定して約140℃〜約200℃または約150℃〜約190℃の溶解温度(solution temperature)を有する。驚くべきことに、本出願人らは、APEおよび任意選択のEFAを含む可塑剤組成物が、予想外に、低粘度および低揮発性を有する可塑剤を提供することを発見した。この可塑剤は、高温用ワイヤーおよびケーブルの用途に特に適しており、それが混ぜ込まれている熱可塑性ポリマーから外部へ移動しない。さらに、本発明の可塑剤組成物のための溶解温度(140℃〜200℃の)は、慣用的な高分子量可塑剤の溶解温度(一般に約140℃〜約180℃)と同等である。さらに、本発明の可塑剤組成物の粘度は、アジピン酸ポリエステル可塑剤などの慣用的な高分子量可塑剤の粘度より低い。例えばUltramoll(登録商標)IVおよびUltramoll(登録商標)IIIアジピン酸ポリエステル(Lanxessの製品)として市場で知られるアジピン酸ポリエステル可塑剤は非常に高い粘度(25℃で約6000〜6500mPa s)を有している。可塑剤の粘度が低くなればなるほど、PVC粉末中への取り込みが速くなることは公知である。したがって、単独かまたは1つもしくは複数のEFAと組み合わせた本発明の可塑剤組成物、例えば約100mPa s〜約3000mPa sの粘度(25℃で)を有するAPE(0から450未満のヒドロキシル価)は、アジピン酸ポリエステル可塑剤よりも速い速度でPVC中に吸収され、より低いかもしくは同等の粘度を有するトリメリテートさえよりも速い速度でPVC中に吸収される。本発明の可塑剤組成物は、低粘度と高い分子量の予想外の相乗効果を示し、物理的、化学的および機械的特性を有するフタレートを含まない安全な可塑化PVCをもたらす。これは、慣用的なアジピン酸ポリエステル可塑剤および/または慣用的なフタレート系可塑剤および/または慣用的なトリメリテート系可塑剤で可塑化されたPVC樹脂の特性を満足するかまたはそれを超えるものである。特に注目すべき点は、136℃もの高温で168時間エージングした後でも、本発明の組成物が示す引張特性が保持されることである。さらに注目すべき点は、100℃もの高温で、IRM902オイル中で96時間エージングした後でも、本発明の組成物が示す引張特性が保持されることである。
【0076】
本発明のポリマー組成物は、慣用的なアジピン酸ポリエステル、フタレートおよび/またはトリメリテート可塑剤を含むポリマー樹脂と比較して、同じかまたはより良好な可撓性および/または伸びを示す。一実施形態では、本発明の組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドであり、約A60〜約A100または約A70〜約A95のショア硬度を有する。一実施形態では、本発明のポリマー組成物は約D10〜約D70または約D20〜約D60のショア硬度を有する。ショア硬度はASTM D2240に従って測定する。
【0077】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドであり、約10℃〜約90℃、約20℃〜約80℃または約25℃〜約75℃のガラス転移温度(「Tg」)を有する。
【0078】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドを含む。ポリマー組成物を成形してプラークにする。プラークは、ASTM D638に従って、30ミル厚さのプラークから切り出したドッグボーンについて測定する場合、113℃または136℃で168時間加熱エージングした後、約70%を超える引張強度保持率を有する。
【0079】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドを含む。ポリマー組成物を成形してプラックにする。プラックは、ASTM D638に従って、30ミル厚さのプラックから切り出したドッグボーンについて測定する場合、IRM902オイル中、100℃で96時間加熱エージングした後、約70%を超える引張強度保持率を有する。
【0080】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドを含む。ポリマー組成物を成形してプラックにする。プラックは、ASTM D638に従って、30ミル厚さのプラックから切り出したドッグボーンについて測定する場合、113℃で168時間加熱エージングした後、約30%を超える引張伸び保持率を有する。
【0081】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドを含む。ポリマー組成物を成形してプラックにする。プラックは、ASTM D638に従って、30ミル厚さのプラックから切り出したドッグボーンについて測定する場合、136℃で168時間加熱エージングした後、約30%を超える引張伸び保持率を有する。
【0082】
一実施形態では、ポリマー組成物はPVCとAPE/EFA可塑剤のブレンドを含む。ポリマー組成物を成形してプラックにする。プラックは、ASTM D638に従って、30ミル厚さのプラックから切り出したドッグボーンについて測定する場合、IRM902オイル中、100℃で96時間加熱エージングした後、約30%を超える引張伸び保持率を有する。
【0083】
引張強度と引張伸びは、ASTM D−638に従って、圧縮成形したプラックから切り出した(i)エージングなし、および(ii)加熱エージング、(iii)オイルエージングしたドッグボーン試料について測定する。
【0084】
上記ポリマー組成物のいずれも1つまたは複数の以下の添加剤を含むことができる:充てん剤、酸化防止剤、難燃剤(三酸化アンチモン、酸化モリブデン(molybdic oxide)およびアルミナ水和物)、熱安定剤、滴下防止剤、着色剤、滑剤、低分子量ポリエチレン、ヒンダードアミン光安定剤(少なくとも1つの第二または第三アミン基を有する)(「HALS」)、紫外線吸収剤(o−ヒドロキシフェニルトリアジンなど)、硬化剤、促進剤(booster)および遅延剤、加工助剤、結合剤、帯電防止剤、核形成剤、スリップ剤、粘度制御剤、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、エキステンダー油、酸捕捉剤、金属不活性化剤ならびにその任意の組合せ。
【0085】
一実施形態では、ポリマー組成物は充てん剤を含む。適切な充てん剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、焼成粘土、白亜(whiting)、フラー土、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、親水ヒュームドシリカ、疎水性(表面処理済み)ヒュームドシリカおよび上記の任意の組合せが挙げられる。焼成粘土の非限定的な例はSatintone(登録商標)SP−33およびPolyfil(登録商標)70である。
【0086】
一実施形態では、ポリマー組成物は酸化防止剤を含む。適切な酸化防止剤の非限定的な例には、ヒンダードフェノール、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタン;ビス[(β−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)およびチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;ホスファイトおよびホスホナイト、例えばトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびジ−tert−ブチルフェニル−ホスホナイト;チオ化合物、例えばジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートおよびジステアリルチオジプロピオネート;種々のシロキサン;重合2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミンおよび他のヒンダードアミン分解防止剤または安定剤が挙げられる。適切な酸化防止剤の非限定的な例には、Topanol(登録商標)CA、Vanox(登録商標)1320、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)245およびIrganox(登録商標)1076が挙げられる。1つまたは複数の酸化防止剤を、本開示の可塑剤組成物に加えることができる。酸化防止剤は、ポリマー組成物の重量に対して0.01〜5重量%の量で使用することができる。
【0087】
一実施形態では、ポリマー組成物は熱安定剤を含む。適切な熱安定剤の非限定的な例には、無鉛の混合金属熱安定剤、鉛安定剤、有機熱安定剤、エポキシド、モノカルボン酸の塩、フェノール系酸化防止剤、有機ホスファイト、ハイドロタルサイト、ゼオライト、過塩素酸塩および/またはβジケトンが挙げられる。適切なβジケトンの非限定的な例は、ジベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタンおよびその混合物である。適切なジベンゾイルメタンの非限定的な例はRhodiastab(登録商標)83である。パルミトイルベンゾイルメタンとステアロイルベンゾイルメタンの適切な混合物の非限定的な例はRhodiastab(登録商標)50である。適切な無鉛の混合金属熱安定剤の非限定的な例には、Mark(登録商標)6797、Mark(登録商標)6776ACM、Mark(登録商標)6777ACM、Therm−Chek(登録商標)RC215P、Therm−Chek(登録商標)7208、Naftosafe(登録商標)EH−314、Baeropan(登録商標)MC90400KA、Baeropan(登録商標)MC90400KA/1、Baeropan(登録商標)MC8553KA−ST3−US、Baeropan(登録商標)MC9238KA−US、Baeropan(登録商標)MC90249KAおよびBaeropan(登録商標)MC9754KAが挙げられる。1つまたは複数の熱安定剤を、本開示の可塑剤組成物に加えることができる。熱安定剤は、ポリマー組成物の重量に対して0.1〜10重量%の量で使用することができる。
【0088】
一実施形態では、ポリマー組成物は滑剤を含む。適切な滑剤の非限定的な例には、ステアリン酸、ステアリン酸の金属塩、パラフィンろうおよびポリエチレングリコールが挙げられる。滑剤は単独でも組み合わせても使用することができる。滑剤は熱安定剤と組み合わせることもできる。
【0089】
一実施形態では、ポリマー組成物は加工助剤を含む。適切な加工助剤の非限定的な例には、ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸またはエルカ酸などの脂肪酸;ステアラミド、オレアラミド、エルカミドまたはN,N’−エチレンビス−ステアラミドなどの脂肪族アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;エチレンオキシドのポリマー;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;植物ろう;石油ろう;非イオン性界面活性剤およびポリシロキサンが挙げられる。加工助剤は、ポリマー組成物の重量に対して0.05〜5重量%の量で使用することができる。
【0090】
ポリマー組成物は通常、PVC配合技術分野の技術者に公知の慣用的な乾式ブレンド法または湿式ブレンド法に従って調製される。ブレンディング工程から得られた混合物を、バンバリー式バッチ混合機、ファレル(Farrel)式連続型混合機または1軸もしくは2軸押出機などの混合機を用いてさらに配合することができる。
【0091】
一実施形態では、ポリマー組成物は、本開示の可塑剤をPVC粉末中に吸収(absorption)してドライブレンドを作ることによって作製される。これらに限定されないが、ヘンシェル混合機またはリボン型ブレンダーを含む適切な任意の方法/装置を用いてドライブレンドを作製することができる。ポリマー組成物は、PVCおよび可塑剤に加えて他の添加剤を含むことができる。次いで、ドライブレンドをさらに配合して(例えば溶融押出によって)、任意の所望形状(フィルム、ペレット等)を形成させることができる。
【0092】
最適の安定剤および酸化防止剤パッケージを用いると、本開示のポリマー組成物は、高温での長期間の乾式または湿式絶縁抵抗試験を必要とする用途、および温度136℃もの高い温度(空気中かまたはオイル中に浸漬させて)になる他の厳しい用途に適している。
【0093】
本発明のポリマー組成物は、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0094】
本発明のポリマー組成物によって示される可撓性、低い可塑剤揮発性、低い移行性、低粘度および/または高い溶解温度の驚くべき特性は、本発明のポリマー組成物を、ワイヤーおよびケーブルコーティング用途、特に高温用ワイヤー/ケーブル用途に非常に適したものにしている。したがって、本開示はコーティングされた導電体を提供する。「導電体」は、任意の電圧(DC、ACまたは過渡電流)でエネルギーを輸送するための細長い形状のエレメント(ワイヤー、ケーブル、ファイバー)である。導電体は一般に少なくとも1つの金属ワイヤーまたは少なくとも1つの金属ケーブル(アルミニウムまたは銅など)であるが、光ファイバーも含むことができる。
【0095】
一実施形態では、導電体および導電体上のコーティングを含むコーティングされた導電体を提供する。コーティングは、ポリマー樹脂と、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の可塑剤を含む本発明の可塑剤組成物とを含む本発明の組成物を含む。そのコーティングのポリマー樹脂は、本明細書で開示する任意のポリマー樹脂であってよい。可塑剤組成物は、1つもしくは複数のAFEを単独かまたは1つもしくは複数のEPAとのブレンドおよび/または本明細書で開示する1つもしくは複数の他の可塑剤とのブレンドで含む任意の可塑剤組成物であってよい。
【0096】
本明細書で用いる「金属導電体」は、少なくとも1つの金属ワイヤーおよび/または少なくとも1つの金属ケーブルである。コーティングされた金属導電体は可撓性、半剛性または剛性であってよい。コーティング(「ジャケット」、「シース」または「絶縁」とも称される)は、金属導電体上かまたは導電体周りの別のポリマー層上にある。コーティングは本発明の組成物を含む。その組成物は、本明細書で開示する任意の組成物であってよい。本明細書で用いる「上の(on)」は、コーティングと金属導電体の間の直接的接触または間接的接触を含む。「直接的接触」は、それによって、コーティングと金属導電体の間に介在する層および/または介在する材料が存在しないで、コーティングが金属導電体と直に接触する配置である。「間接的接触」は、それによって、介在する層および/または介在する構造物および/または介在する材料が、金属導電体とコーティングの間に位置している配置である。コーティングは、金属導電体を、完全にもしくは部分的に覆うかまたは取り囲むもしくは包み込むことができる。コーティングは、金属導電体を取り囲む唯一の成分であってよい。あるいは、コーティングは、金属導電体を包み込む多層状のジャケットまたはシースの1つの層であってよい。
【0097】
一実施形態では、ポリマー樹脂は、上記で論じたようなPVCなどの塩化ビニル樹脂である。PVCを可塑剤組成物とブレンドしてコーティングを生成させる。コーティングは追加の成分を含むことができる。一実施形態では、コーティングは、約1重量%〜約99重量%、約20重量%〜約80重量%または約30重量%〜約70重量%のPVCおよび99重量%〜約1重量%、約80重量%〜約20重量%または約70重量%〜約30重量%の可塑剤組成物を含む。他の実施形態では、コーティングは約30重量%〜約90重量%のPVCおよび約70重量%〜約10重量%の可塑剤組成物を含む。
【0098】
可塑剤組成物は、本明細書で開示する任意の可塑剤組成物であってよい。一実施形態では、可塑剤組成物はAPEを含む。コーティング中に存在するAPEは、0〜450未満、0〜200未満、0〜100未満、0〜50未満、0〜15未満、0〜10未満、0〜5未満、0〜2未満または0のヒドロキシル価を有する。可塑剤組成物は、APEに加えて第2の可塑剤を含むことができる。
【0099】
コーティングは、本発明の組成物について上記で論じたような特性のいずれかを有することができる。一実施形態では、コーティングされた導電体は、UL−1581に従って測定される加熱試験に合格する。他の実施形態では、コーティング中の可塑剤組成物は約140℃〜約200℃の溶解温度を有する。他の実施形態では、コーティングは、ASTM D2240に従って測定して約A60〜約A100のショア硬度を有する。他の実施形態では、コーティングは、ASTM D2240に従って測定して約D10〜約D70のショア硬度を有する。一実施形態では、コーティングは、約30重量%〜約90重量%のポリ塩化ビニルおよび約70重量%〜約10重量%のAPEまたはAPE/EFA可塑剤混合物を含む。
【0100】
適切なコーティングされた金属導電体の非限定的な例には、可撓配線、例えば家庭用電化製品用の可撓配線、電源ケーブル、携帯電話および/またはコンピューター用の充電器ワイヤー、コンピューターデータコード、電源コード、電化製品配線材料、建造物用ワイヤー、自動車用ワイヤーおよび消費家電付属コードが挙げられる。
【0101】
本発明のコーティングされた導電体は、本明細書で開示する2つ以上の実施形態を含むことができる。
【0102】
本明細書で開示する組成物を含むジャケットを有する、コーティングワイヤーまたはコーティングケーブルなどのコーティングされた導電体(任意選択で絶縁層を有する)は、様々な種類の押出機、例えば1軸または2軸押出機で作製することができる。慣用的な押出機の説明は、米国特許第4,857,600号に見ることができる。共押出および押出機の例は米国特許第5,575,965号に見ることができる。一般的な押出機は、その上流にホッパーを備え、下流末端にダイを備える。ホッパーからスクリューを備えた円筒状シリンダー(barrel)に供給される。スクリューの末端とダイの間にある下流末端に、スクリーンパックおよびブレーカープレートが位置する。押出機のスクリュー部は、上流から下流への順に、3つの部分、供給部、圧縮部および計量部、ならびに2つのゾーン、後部加熱ゾーンおよび前部加熱ゾーンに分けられると考えられる。別の方法では、上流から下流への順に軸に沿って複数の加熱ゾーン(3つ以上)が存在することができる。2つ以上の円筒状シリンダーを有する場合、その円筒状シリンダーは直列に連結される。それぞれの円筒状シリンダーの長さと直径の比は約15:1〜約30:1の範囲である。
【0103】
本開示のワイヤーおよびケーブル構造物(すなわち、コーティングされた金属導電体)は、本発明の組成物を導電体上または絶縁した導電体の束上に押し出して、絶縁した導電体周りにコーティング(ジャケット)を形成させることによって作製される。ジャケットまたは絶縁部の厚さは、所望の最終用途の要件に依存する。一般的なジャケットまたは絶縁部の厚さは、約0.010インチ〜約0.200インチまたは約0.015インチ〜約0.050インチである。本発明の組成物を、予め作製された組成物からジャケット中に押し出すことができる。通常、本発明の組成物は、押出機に供給し易いようにペレットの形態にする。ワイヤーおよびケーブルのジャケットまたは絶縁部は、本発明の組成物をペレット化する別個のステップを介することなく、配合押出機から直接押し出すことができる。この一段配合/押出プロセスによって、組成物に対する1つの熱履歴ステップが排除されることになる。
【0104】
ナイロン層を、例えば慣用的なTHHN、THWNおよびTHWN−2構造で、絶縁部上に押し出すこともできる。
【0105】
本発明の開示の実施形態の非限定的な例を以下に提供する。
【0106】
実施形態E1では、少なくとも1つの脂肪酸成分が約4〜約22個の炭素原子を有するポリグリセリドおよび少なくとも1つのアセチル基を含むアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを提供する。E2。0〜450未満のヒドロキシル価を有する、E1のアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。E3。ASTM D445に従って測定して25℃で約100〜約3000mPa sの粘度を有する、E1〜E2のアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。E4。約500〜約2000g/モルの分子量を有する、E1〜E3のいずれかのアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。E5。ポリグリセリド部分がテトラグリセロールを含む、E1〜E4のいずれかのアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。E6。脂肪酸成分がラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびその組合せからなる群から選択される、E1〜E5のいずれかのアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。
【0107】
実施形態E7では、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびエポキシ化脂肪酸エステルを含む組成物を提供する。E8。E1〜E6のいずれかのアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを含む、E7の組成物。E9。エポキシ化脂肪酸エステルが、エポキシ化大豆油、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル、上記のそれぞれのエポキシ化誘導体およびその組合せからなる群から選択される、E7〜E8のいずれかの組成物。E10。0〜450未満のヒドロキシル価を有するアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよびエポキシ化大豆油を含む、E7〜E9のいずれかの組成物。E11。第2のエポキシ化脂肪酸エステルを含む、E7〜E10のいずれかの組成物。
【0108】
実施形態E12では、ポリマー樹脂と、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよび任意選択のエポキシ化脂肪酸エステルを含む可塑剤組成物とを含むポリマー組成物を提供する。E13。請求項E1〜E11のいずれかの可塑剤組成物を含む、E12のポリマー組成物。E14。そのポリマー樹脂が塩化ビニル樹脂を含む、E12〜E13のいずれかのポリマー組成物。E15。可塑剤組成物が第1のエポキシ化脂肪酸エステルおよび第2のエポキシ化脂肪酸エステルを含む、E12〜E14のいずれかのポリマー組成物。E16。ポリマー組成物が、136℃で168時間の加熱エージング後に30%を超える引張伸び率を有するプラックである、E12〜E15のいずれかのポリマー組成物。E17。約1.0×1010〜約1.0×1017Ohm cmの体積固有抵抗値(volume resistivity)を有する、E12〜E16のいずれかのポリマー組成物。
【0109】
実施形態E18では、導電体;およびポリマー樹脂と、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルおよび任意選択のエポキシ化脂肪酸エステルを含む可塑剤組成物とを含む、導電体上のコーティングを含むコーティングされた導電体を提供する。E19。そのコーティングがE1〜E17のいずれかの組成物を含む、E18のコーティングされた導電体。E20。そのコーティングされた導電体がUL−1581に従って測定される加熱試験に合格する、E18〜E19のいずれかのコーティングされた導電体。
【0110】
試験方法
酸価(acid number)(または「酸価(acid value)」)は化合物中に存在する遊離酸の量の尺度である。酸価は、1gの物質中に存在する遊離酸(脂肪酸および/または例えば酢酸などの他の酸)を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。酸価は、ドイツ標準DIN53402に従って測定される(mg KOH/g)。
【0111】
APHA色数はHunterLabから入手できるColorQuest XE測色計または同等物を用いて測定される;20mm透過セル;HunterLab Universalソフトウェア、バージョン4.10または同等物;HunterLabから入手できる白黒カラーリファレンスタイトル(color reference title)または同等物;脱イオン(DI)水の測定APHA色数はゼロである。
【0112】
25℃での密度はドイツ標準DIN51 757に従って測定される(g/cm)。
【0113】
ガラス転移温度(Tg)は、DMA装備品(fixture)を備えたTA Instrument AR1000Nレオメーターを用いて動的機械分析(DMA)により測定される。試料は矩形固体の形態であり、テンションモードで試験される。温度は、5℃/分のランプ速度で−100℃〜+160℃の範囲で変化させ、試験周波数は6.283rad/s(1Hz)で一定に保持される。サンプルの貯蔵および損失モジュラスならびにtanδを温度の関数として測定する。ガラス転移温度(Tg)を、ピークのtanδ測定値から決定する。
【0114】
ヒドロキシル価(Hydroxyl Number)(またはヒドロキシル価(hydroxyl value))はアセチル化度の目安であり、ポリマー中に存在するヒドロキシル基の数の尺度である。ヒドロキシル価は、1gのポリマー中に存在するヒドロキシル基を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。ヒドロキシル価はドイツ標準DIN53 240に従って測定される(mg KOH/g)。
【0115】
ヨウ素価は水素化度の目安であり、ドイツ統一方法(German Einheitsmethode)DGF C−V11a(53)に従って測定される(g I/100g)。
【0116】
ポリマー組成物における可塑剤相溶性は、規定された期間(例えば、7日間)高温(例えば、113℃または136℃)でエージングされた成形または押出試料の目視検査によって評価される。押出試料はワイヤーの形態(すなわち、導電体上に押し出された絶縁部)であってよい。113℃または136℃で7日間後に表面上の浸出物(spew)の量を「なし」、「若干」、「中程度」または「多量」でランク付けする。
【0117】
ショア硬度はASTM D2240に従って測定される。
【0118】
溶解温度は、その温度で可塑剤とPVC樹脂の不均一混合物が単一の相に変化するのが認められる温度である。溶解温度は、ドイツ標準DIN53 408に従って、1gのPVCを20gの可塑剤に浸漬させ、顕微鏡下での観察によりPVCが完全に溶解するのが認められるまで温度を段階的に上昇させることによって測定される(℃)。
【0119】
コーティングされた導電体(押出ワイヤー)の表面平滑度は、日本のMitutoyo社製の表面粗度測定装置を用いてANSI/ASME B46.1に従って測定される。
【0120】
TG/DTA.220を用いて5%質量損失の温度(℃)を測定する。可塑剤試料を、不活性ガスをパージさせながら10K/分で室温から600℃まで加熱し、発生する質量損失および熱的効果をサーモグラムで記録する。5%質量損失のための温度が高ければ高いほど揮発性はより低い。
【0121】
エージングしていない試料、113℃または136℃で168時間エージングした試料、およびIRM902オイル中100℃で96時間エージングした試料について、成形プラックから切り出されたドッグボーンか、またはコーティングされた導電体(押出ワイヤー)から取り外された管状絶縁物について、引張強度(TS)、引張強度保持率(TSR)、引張伸び(TE)および引張伸び保持率(TER)(2インチ/分で)を、ASTM D638およびUL1581/2556に従って測定する。
【0122】
「UL1581」という用語は、電気用ワイヤー、ケーブルおよび可撓コードのためのUnderwriters Laboratories参考標準(Underwriters Laboratories Reference Standard for Electrical Wires, Cables, and Flexible Cords)である。UL1581は、ワイヤーおよびケーブル標準において必要とされる、導電体、絶縁体、ジャケットおよび他の被覆物のため、サンプル調製、試料選択および調整の方法のためならびに測定および計算のための具体的な詳細を含む。
【0123】
粘度は、標準ASTM D445に従って、25℃および/または40℃でブルックフィールド−粘度計で測定される。
【0124】
23℃での体積固有抵抗値(Vol Res)(Ohm−cm)は、ASTM D257に従って500ボルト直流で測定される。40ミル厚さの成形プラックから3.5インチ径の試料を切り出し、Hewlett Packard 4329A高抵抗計と連結されたHewlett Packard 16008A抵抗セルを用いて試験する。
【0125】
水分含量はドイツ標準DIN51 777に従って測定される(%)。
【0126】
136℃で7日間後の重量保持率(Wt.Ret.)(%)を、30ミル厚さの成形プラックから切り出された1.25インチ径の試料について測定する。
【0127】
限定的なものではなく、例示として本発明の開示の実施例を提供する。
【実施例】
【0128】
A.アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。
実施例1〜6
【0129】
(実施例1)
テトラグリセロールとラウリン酸の基準(nominal)アセチル化モノエステルの調製。テトラグリセロールをグリセロールの縮合により合成する。その特性は以下の通りである:1060mg KOH/gのヒドロキシル価および314.4g/モルの分子量。これは、9.1重量%のグリセロール、ならびに、誘導体化後ガスクロマトグラフィー(GC)で測定した面積%での以下の分布で以下の表Aに示すような異なる量のジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロールおよびヘキサグリセロールも含む。
【表1−1】

【0130】
62.9g(0.20mol)テトラグリセロール(グリセロールのオリゴマー化によって得られたもの)、40.1g(0.20mol)ラウリン酸および0.26gの触媒オクチル酸スズ(II)を1Lの一口ガラスフラスコに加える。フラスコを回転式エバポレーターに固定する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、排気する(3〜5回)。圧力を約10〜20ミリバールに調節し、反応を水の蒸留によりモニターする。4時間後に室温まで冷まして反応を停止させる。
【0131】
112.3g(1.1mol)無水酢酸を加え、フラスコを100℃に加熱する(常圧下)。3時間後、温度を1時間で120℃にする。温度を再度段階的に増大させて(30分間、10℃、常圧)150℃にし、残留した酢酸および無水酢酸を留去する。
【0132】
生成物、アセチル化ポリグリセリドラウリン酸モノエステル(平均重合度=4)は淡黄色液体である。収率:99%(対テトラグリセロール)。
【0133】
(実施例2)
テトラグリセロールとラウリン酸の基準アセチル化エステル混合物の調製。テトラグリセロールは実施例1で用いたものと同じである。
【0134】
62.9g(0.20mol)テトラグリセロール(グリセロールのオリゴマー化によって得られたもの)、20.05g(0.10mol)ラウリン酸および0.21g触媒オクチル酸スズ(II)を1Lの一口ガラスフラスコに加える。フラスコを回転式エバポレーターに固定する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、排気する(3〜5回)。圧力を約10〜20ミリバールに調節し、反応を水の蒸留によりモニターする。4時間後に室温まで冷まして反応を停止させる。
【0135】
123.5g(1.21mol)無水酢酸を加え、フラスコを100℃に加熱する(常圧下)。3時間後、温度を1時間で120℃にする。温度を再度段階的に増大させて(30分間、10℃、常圧)150℃にし、残留した酢酸および無水酢酸を留去する。
【0136】
生成物、アセチル化ポリグリセリドラウリン酸エステル(混合物)(平均重合度=4)は淡黄色液体である。収率:99%(対テトラグリセロール)。
【0137】
(実施例3)
テトラグリセロールとパーム核油脂肪酸の基準アセチル化モノエステルの調製。テトラグリセロールは実施例1で用いたものと同じである。
【0138】
94g(0.3mol)テトラグリセロール(グリセロールのオリゴマー化によって得られたもの)および70g(0.1mol)パーム核油をオートクレーブシリンダー中に導入する。シリンダーを閉め、加熱マントルに入れる。混合物を、機械的に攪拌しながら(400rpm)、240℃で13時間加熱する。生成物は黄色液体生成物(テトラグリセロールとパーム核油脂肪酸のモノエステル)である。
【0139】
90gのテトラグリセロールとパーム核油脂肪酸のモノエステルおよび108gの無水酢酸を250mLフラスコに加える。反応を真空回転式エバポレーターのもと120℃で3時間実施する。700〜50ミリバールの真空を用いて残留酢酸/無水物を除去する。生成物はアセチル化ポリグリセリドパーム核油脂肪酸モノエステルである。
【0140】
(実施例4)
テトラグリセロールとパーム核油脂肪酸の基準アセチル化トリエステルの調製。テトラグリセロールは実施例1で用いたものと同じである。
【0141】
47g(0.15mol)テトラグリセロール(グリセロールのオリゴマー化によって得られたもの)および105g(0.15mol)パーム核油をオートクレーブシリンダー中に導入する。シリンダーを閉め、加熱マントルに入れる。混合物を、機械的に攪拌しながら(400rpm)、240℃で13時間加熱する。生成物は黄色液体生成物(テトラグリセロールとパーム核油脂肪酸のトリエステル)である。
【0142】
110gのテトラグリセロールとパーム核油脂肪酸のトリエステルおよび75gの無水酢酸を250mLフラスコに加える。反応を真空回転式エバポレーターのもと120℃で3時間実施する。700〜50ミリバールの真空を用いて残留酢酸/無水物を除去する。生成物はアセチル化ポリグリセリドパーム核油脂肪酸トリエステルである。
【0143】
(実施例5)
テトラグリセロールと12−ヒドロキシステアリン酸の基準アセチル化モノエステルの調製。テトラグリセロールは実施例1で用いたものと同じである。
【0144】
56.6g(0.18mol)テトラグリセロール(グリセロールのオリゴマー化によって得られたもの)、54.1g(0.18mol)12−ヒドロキシステアリン酸および0.28g触媒オクチル酸スズ(II)を1Lの一口ガラスフラスコに加える。フラスコを回転式エバポレーターに固定する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、排気する(3〜5回)。圧力を約10〜20ミリバールに調節し、反応を水の留出によりモニターする。4時間後に室温まで冷まして反応を停止させる。
【0145】
121.3g(1.19mol)無水酢酸を加え、フラスコを100℃に加熱する(常圧下)。3時間後、温度を1時間で120℃にする。温度を再度段階的に増大させて(30分間、10℃、常圧)150℃にし、残留した酢酸および無水酢酸を留去する。
【0146】
生成物、アセチル化ポリグリセリドおよび12−ヒドロキシステアリン酸モノエステル(平均重合度=4)は淡黄色液体である。収率:99%(対テトラグリセロール)。
【0147】
(実施例6)
テトラグリセロールとラウリン酸の基準アセチル化モノエステルの調製。テトラグリセロールをグリセロールの縮合により合成する。その特性は以下の通りである:1084mg KOH/gのヒドロキシル価および314.4g/モルの分子量。これは、7.6重量%グリセロール、ならびに、誘導体化後ガスクロマトグラフィー(GC)で測定した面積%での分布で表Aに示すような異なる量のジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロールおよびヘキサグリセロールも含む。
【0148】
1932gテトラグリセリン(グリセロールのオリゴマー化によって得られたもの)および1231gラウリン酸を5L反応器にチャージする。機械的攪拌機および一般的な蒸留用ガラス装置を備えた反応器を外部浴で100℃の温度に加熱する。反応器を窒素でフラッシュし、3回排気する。触媒としての8gオクチル酸スズ(II)を添加した後、反応器を180℃に加熱する。200ミリバールの真空を用いて生成した水を留去させる。6時間後に反応を1.1mg KOH/gの酸価で停止させる。
【0149】
中間体エステルを2つに分けてアセチル化する。1488g中間体エステルを反応器から取り出し、1770g無水酢酸を残りの1564gエステルに加える。反応器を120℃に加熱し、この温度で4時間保持する。400〜100ミリバールの真空を用いて、120℃の浴温で酢酸および残留無水酢酸を除去する。生成物(暗黄色、若干の濁り、3.1mg KOH/gの酸価)を反応器から取り出す。次いで他方の中間体エステル(1488g)および1700g無水酢酸を反応器にチャージし、同様に反応を実施する。2つの部分を50℃で攪拌しながら反応器中で混合する。黄色液体(4165g)を得る。
【0150】
(実施例6A)
ポリグリセロールとラウリン酸の基準アセチル化モノエステルの調製。ポリグリセロールはR−PGポリグリセロール−3(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)である。その特性は以下の通りである:1173mg KOH/gのヒドロキシル価および240.3g/モルの分子量。これは、0.1重量%未満のグリセロール、ならびに、誘導体化後ガスクロマトグラフィー(GC)で測定した面積%での分布で表Aに示すような異なる量のジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロールおよびヘキサグリセロールも含む。
【0151】
120gポリグリセリン(R−PGポリグリセロール−3)、100.15gラウリン酸および0.55gオクチル酸スズ(II)(触媒)を1Lフラスコにチャージする。反応を真空回転式エバポレーターを用いて実施する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、3回排気する。反応は留出水の測定、および酸価の測定に従って行う。180℃、300〜12ミリバールで12時間かけた後、反応を3mg KOH/gの酸価で停止させる。生成物は濁ったペースト状物であり、以下の特性を有する:酸価:3.3mg KOH/g;けん化価:130mg KOH/g;ヒドロキシル価:577mg KOH/g。
【0152】
138.6g無水酢酸を120gの生成物に加え、混合物を115℃に加熱し、温度を115℃で4時間保持する。115℃の浴温で真空を用いて酢酸および残留無水酢酸を除去する。液状の生成物を得る。
【0153】
(実施例6B)
ポリグリセロールとラウリン酸の基準アセチル化ジエステルの調製。ポリグリセロールはR−PGポリグリセロール−3(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)である。その特性は以下の通りである:1173mg KOH/gのヒドロキシル価および240.3g/モルの分子量。これは、0.1重量%未満のグリセロール、ならびに、誘導体化後ガスクロマトグラフィー(GC)で測定した面積%での分布で表Aに示すような異なる量のジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロールおよびヘキサグリセロールも含む。
【0154】
80gポリグリセリン(R−PGポリグリセロール−3)、133.5gラウリン酸および0.53gオクチル酸スズ(II)(触媒)を1Lフラスコにチャージする。反応を真空回転式エバポレーターを用いて実施する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、3回排気する。反応は留出水の測定、および酸価の測定に従って行う。180℃、300〜12ミリバールで11時間かけた後、反応を2.0mg KOH/gの酸価で停止させる。生成物は濁ったペースト状物であり、以下の特性を有する:酸価:2.0mg KOH/g;ヒドロキシル価:280.8mg KOH/g。
【0155】
70.5g無水酢酸を120gの生成物に加え、混合物を120℃に加熱し、温度を120℃で4時間保持する。120℃の浴温で真空を用いて酢酸および残留無水酢酸を除去する。液状の生成物を得る。
【0156】
(実施例6C)
ポリグリセロールと12−ヒドロキシステアリン酸の基準アセチル化モノエステルの調製。ポリグリセロールはR−PGポリグリセロール−3(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)である。その特性は以下の通りである:1173mg KOH/gのヒドロキシル価および240.3g/モルの分子量。これは、0.1重量%未満のグリセロール、ならびに、誘導体化後ガスクロマトグラフィー(GC)で測定した面積%での分布で表Aに示すような異なる量のジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロールおよびヘキサグリセロールも含む。
【0157】
80gポリグリセリン(R−PGポリグリセロール−3)、100.17g12−ヒドロキシステアリン酸および0.45gオクチル酸スズ(II)(触媒)を1Lフラスコにチャージする。反応を真空回転式エバポレーターを用いて実施する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、3回排気する。反応は留出水の測定、および酸価の測定に従って行う。180℃、300〜12ミリバールで11時間かけた後、反応を1.3mg KOH/gの酸価で停止させる。生成物は黄色であり、2つの相を有する。下相を分離し(35.42g=19.7%)、上相(132g)の特性を評価する。上相は以下の特性を有する固体である:酸価:1.3mg KOH/g;けん化価:130mg KOH/g;ヒドロキシル価:348.8mg KOH/g。
【0158】
80g無水酢酸を111gのその上相に加え、混合物を115℃に加熱し、温度を115℃で4時間保持する。115℃の浴温で真空を用いて酢酸および残留無水酢酸を除去する。液状の生成物を得る。
【0159】
(実施例6D)
ポリグリセロールと12−ヒドロキシステアリン酸の基準アセチル化ジエステルの調製。ポリグリセロールはR−PGポリグリセロール−3(Sakamoto Yakuhin Kogyoの製品)である。その特性は以下の通りである:1173mg KOH/gのヒドロキシル価および240.3g/モルの分子量。これは、0.1重量%未満のグリセロール、ならびに、誘導体化後ガスクロマトグラフィー(GC)で測定した面積%での分布で表Aに示すような異なる量のジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロールおよびヘキサグリセロールも含む。
【0160】
51.5gポリグリセリン(R−PGポリグリセロール−3)、128.9g12−ヒドロキシステアリン酸および0.45gオクチル酸スズ(II)(触媒)を1Lフラスコにチャージする。反応を真空回転式エバポレーターを用いて実施する。160℃に加熱した後、フラスコを窒素でフラッシュし、3回排気する。反応は留出水の測定、および酸価の測定に従って行う。180℃、300〜12ミリバールで7時間かけた後、反応を0.7mg KOH/gの酸価で停止させる。生成物は以下の特性を有する固体である:酸価:0.7mg KOH/g;ヒドロキシル価:331mg KOH/g。
【0161】
83g無水酢酸を120gの生成物に加え、混合物を120℃に加熱し、温度を120℃で4時間保持する。120℃の浴温で真空を用いて酢酸および残留無水酢酸を除去する。液状の生成物を得る。
【0162】
表1は実施例1〜6、6A、6B、6Cおよび6Dについての特性を示す。
【表1−2】

【0163】
B.熱可塑性組成物:PVC、APEおよびEFAのブレンド
ポリ塩化ビニル(PVC)と種々の可塑剤および添加剤とのブレンドを調製する。評価した可塑剤は、実施例1〜6のAPEおよび以下の表2に示す可塑剤である。
【表2】

【0164】
PVC、可塑剤および添加剤を混合して熱可塑性組成物を調製する。それぞれの熱可塑性組成物中に存在する成分を以下の表3に示す。各熱可塑性組成物の調製手順は表3に従う。
【表3】

【0165】
以下の手順を用いて実施例7〜15および比較サンプル(CS)1〜8のための熱可塑性組成物を調製する:
− 個々の成分を計量し、すべてを、スパチュラを用いて容器中で混合する。
− 慣用的なローターを備えた「40cm」ブラベンダーミキシングボウルを用いて、40rpmの設定で各配合物のバッチを作製する。
− 窒素でミキシングボウルをパージはしない。
− PVCの混合物および他の成分を加え175℃で5分間混合する。
【0166】
体積固有抵抗値を除くすべての特性の試験用に、ミキシングボウルからのブレンド組成物を175℃、5分間で圧縮成形して30ミル厚さのプラックにする。体積固有抵抗値は、40ミル厚さの成形プラックから切り出した試料で測定する。
【0167】
以下の手順を用いて実施例16〜18および比較サンプル(CS)9〜10の熱可塑性組成物を調製する。
【0168】
ポリ塩化ビニル(PVC)と異なる3つの可塑剤混合物(および添加剤)のブレンドを、実施例16〜18および比較サンプル9〜10において調製する。各可塑剤混合物は、テトラグリセロールとラウリン酸(APE)のアセチル化モノエステル(上記実施例1から)またはDIDPもしくはTOTMおよびPLAS−CHEK(登録商標)775エポキシ化大豆油(ESO)を含む。表Bに示すように、異なる3つの可塑剤混合物(実施例16〜18)を以下のAPEとESOの重量比で調製し、異なる2つの比較サンプルを、以下のDIDPとESOの重量比またはTOTMとESOの重量比(可塑剤混合物の全重量に対して)で調製する:
【0169】
【表4−1】

− 個々の成分を計量し、すべてを、スパチュラを用いて容器中で混合する。
− 慣用的なローターを備えた「40cm」ブラベンダーミキシングボウルを用いて、40rpmの設定で各配合物のバッチを作製する。
− 窒素でミキシングボウルをパージはしない。
− PVCおよび他の成分を加え175℃で5分間混合する。
【0170】
体積固有抵抗値を除くすべての特性の試験用に、ブレンド組成物をミキシングボウルから取り出し175℃で5分間圧縮成形する。体積固有抵抗値は、40ミル厚さの成形プラークから切り出した試料で測定する。
【0171】
以下の手順を用いて実施例19および比較サンプル(CS)11を調製する。
−実施例6のAPE、TOTMおよびエポキシ化大豆油を60℃で少なくとも30分間予熱し、振とうさせて可塑剤混合物(87/13重量%APE/ESOまたは87/13重量%TOTM/ESO)を作製する。
− 個々の固体成分を計量し、すべてを、スパチュラを用いて容器中で混合する。
− ヘンシェル混合機を用いて80℃の設定温度および1800rpmで、まず固体混合物をフラクシングさせ、次いで可塑剤を加えて1kgの「ドライブレンド」を混合し、可塑剤収着(sorption)が完了するまでの時間を記録する。
− 「ドライブレンド」は、円錐型2軸スクリュー押出機(25:1L/D)を用いて45rpmおよび以下の設定温度プロファイルで溶融混合する:
CS11:ゾーン1=160℃、ゾーン2=165℃、ゾーン3=170℃、ダイ=175℃
Ex19:ゾーン1=155℃、ゾーン2=165℃、ゾーン3=175℃、ダイ=180℃
− 次いで押し出された標準品を空冷しペレット化する。
【0172】
ペレットを175℃で5分間圧縮成形する。体積固有抵抗値を除くすべての特性の試験用に、試料を30ミル成形プラックから切り出す。体積固有抵抗値は40ミル厚さの成形プラックから切り出した試料で測定する。また、25:1単軸スクリュー押出機を用いて160℃、165℃;170℃および175℃の設定温度で0.064インチ(14AWG)固体銅導電体上にコーティングすることによって、ペレットをワイヤー/ケーブルにも加工する。コーティングされた導電体の外径は約0.094インチ(約0.015インチの壁厚)である。ワイヤー押し出しの際のダイ圧力を記録する。
【0173】
以下の手順を用いて実施例20〜29および比較サンプル(CS)12の熱可塑性組成物を調製する。
【0174】
ポリ塩化ビニル(PVC)、添加剤および異なる可塑剤(または可塑剤混合物)のブレンドを、実施例20〜21および比較サンプル12において調製する。可塑剤は、(a)実施例6、6A、6B、6Cおよび6DのAPE、(b)50重量%の実施例6、6A、6B、6Cおよび6DのAPEと50重量%のPLAS−CHEK(登録商標)775ESOを含む混合物、ならびに(c)TOTMである。以下の手順を用いてブレンドを調製する:
− TOTM、APEおよびエポキシ化大豆油を60℃で少なくとも60分間予熱し、振とうさせて50/50重量%APE/ESO混合物(可塑剤組成物)を作製する。
− すべての成分(可塑剤および粘土を除く)を、スパチュラを用いて容器中で混合することによって「固体混合物」を作製する。
− 以下のようにして可塑剤をPVC粉末中に浸みこませることによって「ドライブレンド」を作製する。
− シグマブレードを備えた「40cm」ブラベンダーミキシングボウルを90℃で用いて40rpmの設定で各配合物のバッチを作製する。
− 窒素でミキシングボウルをパージはしない。
− 2分間ウォーミングアップさせた後、「固体混合物」を加え、30秒間混合する。
− 可塑剤を加えて6分間混合し、やはり、可塑剤吸収が完了する(すなわち、粉末の物理的外観が「ウェット」から「ドライ」へ変わる)のにどのくらい時間がかかるかを観察する。
− 充てん剤(粘土)を加えて60秒間混合する。
− 停止し、「ドライブレンド」を取り出す。
− 次いで「ドライブレンド」を、以下の手順を用いて溶融混合する:
(a)カムローターを備えた「40cm」ブラベンダーミキシングボウル中、40rpmの設定で混合する。
(b)窒素でミキシングボウルをパージはしない。
(c)「ドライブレンド」を加え、180℃で2分間混合する。
【0175】
ブレンド組成物をミキシングボウルから取り出し、180℃で5分間圧縮成形する。体積固有抵抗値およびショア硬度を除くすべての特性の試験用に、試料を30ミル厚さの成形プラックから切り出す。体積固有抵抗値は40ミル厚さの成形プラックから切り出した試料で測定する。ショア硬度は250ミル厚さの成形試料で測定する。
【0176】
熱可塑性組成物の特性を以下の表4〜9に示す。
【表4−2】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0177】
実施例7〜29の組成物は、比較サンプルで得られた特性と同等かまたはそれより良好な特性を示す。可塑剤組成物中にAPEを用いることによって、高温での耐油性は大幅に改善されている。ドライブレンドを作製するためのPVC中にAPEを含む可塑剤組成物の吸収は、比較例のトリメリテートベースの可塑剤組成物よりずっと速い。APEを含む組成物は、優れた特性を有するワイヤー上に平滑に押し出されたコーティングをもたらす。
【0178】
エポキシ化大豆油はPVC中に可溶性であり、許容できる程度に低いショアA硬度をもたらすが、136℃での加熱エージングは、引張伸びのほぼ完全な喪失をもたらし、この組成物を高温用途に不適切なものとしている。
【0179】
可塑剤混合物中のESOの量を増大させると、(i)低い硬度(すなわち、より高い可塑化効率)、(ii)より高い体積固有抵抗値、および(iii)より良好な組成物の加熱エージング後の引張伸びの保持率がもたらされる。
【0180】
特に、本開示は本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されるものではなく、実施形態の部分および異なる実施形態の要素の組合せを含むこれらの実施形態の改変形態を以下の特許請求の範囲に包含されるものとして含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの脂肪酸成分が約4〜約22個の炭素原子を有するポリグリセリド、および
少なくとも1つのアセチル基
を含むアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。
【請求項2】
0〜450未満のヒドロキシル価を有する、請求項1に記載のアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。
【請求項3】
前記脂肪酸成分が、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびその組合せからなる群から選択される、請求項1〜2のいずれかに記載のアセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステル。
【請求項4】
アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを含む第1の可塑剤、および
第2の可塑剤
を含む組成物。
【請求項5】
前記第2の可塑剤がエポキシ化脂肪酸エステルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー樹脂および
アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを含む可塑剤組成物
を含むポリマー組成物。
【請求項7】
前記可塑剤組成物が第2の可塑剤を含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
熱安定剤を含む、請求項6〜7のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項9】
導電体、および
ポリマー樹脂と、アセチル化ポリグリセリド脂肪酸エステルを含む可塑剤組成物とを含む、導電体上のコーティング
を含むコーティングされた導電体。
【請求項10】
前記可塑剤組成物が第2の可塑剤を含む、請求項9に記載のコーティングされた導電体。

【公表番号】特表2013−506735(P2013−506735A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532259(P2012−532259)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050664
【国際公開番号】WO2011/041372
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】