説明

アセチレン重合体

【課題】 溶解性が確保され、用途が限定されず、安定な片巻き螺旋構造を有するアセチレン重合体を提供する。
【解決手段】 本発明のアセチレン重合体は、下記式(I)で表される構成単位を含有するアセチレン重合体において、式(II)における主鎖末端の炭素Cと側鎖Rとの結合における回転バリア(△Erot)が30kJ/mol以上である。
【化1】


式中、Rは、不斉炭素を有し、炭素Cに直接結合する原子が炭素である置換基であり、nは1以上の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖に螺旋構造を有し、その螺旋構造が右巻きもしくは左巻きのどちらかに偏った片巻き構造のアセチレン重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタセシス触媒、ロジウム錯体触媒等の存在下、アセチレン化合物を重合することでアセチレン重合体が生成することが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。特に、ロジウム錯体触媒存在下で重合して得たアセチレン重合体の中には、主鎖がシス−トランス構造を有して螺旋構造を形成するものが知られている。さらに、アセチレンモノマーとして、キラルなものを重合に用いた場合には、得られたアセチレン重合体主鎖の螺旋構造が右巻きもしくは左巻きのどちらかに偏ることが知られている(以下、右巻きもしくは左巻きのどちらかに偏ったアセチレン重合体のことを、片巻きアセチレン重合体という。)。
片巻きアセチレン重合体は、不斉炭素を有するモノマーに比べて高い比旋光度を有し、300〜400nmの波長領域に円二色性スペクトルを示す特徴があり、独自の機能を発揮することが期待される。例えば、片巻きアセチレン重合体は大きな分子不斉を有するため、偏光膜、液晶などの電気材料や非線形光学材料、光学分割剤として有用である。このようなことから、キラルなアセチレンモノマーを用いて様々な片巻きアセチレン重合体を合成することが試みられている。
【特許文献1】特開昭59−210914号公報
【特許文献2】特開昭63−277212号公報
【特許文献3】特開昭63−275613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、片巻きアセチレン重合体は溶液中で不安定であり、時間経過と共に比旋光度や円二色性吸収が減少する傾向にある。この現象は、片巻きアセチレン重合体が結晶中では片巻き構造をとっているものの、溶液状態では、右巻き螺旋と左巻き螺旋の安定性の差が小さいために螺旋の巻きなおし(ラセミ化)が起こるためと考えられる。このラセミ化は、片巻きアセチレン重合体の実用化への大きな障害となっている。
そこで、アセチレン重合体の塩にキラルアミンやキラルカルボン酸を添加してイオン結合により片巻き構造を持続させる試みが行われている。しかしながら、このようにして得られた片巻きアセチレン重合体は、塩であるために溶解性が低く、また、電気材料としての適用が困難になり用途が限定されてしまうという欠点があった。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、溶解性が確保され、用途が限定されず、安定な片巻き螺旋構造を有するアセチレン重合体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のアセチレン重合体は、下記式(I)で表される構成単位を含有するアセチレン重合体において、
式(II)における主鎖末端の炭素Cと側鎖Rとの結合における回転バリア(△Erot)が30kJ/mol以上であることを特徴とする。
【0005】
【化1】

式中、Rは、不斉炭素を有し、炭素Cに直接結合する原子が炭素である置換基であり、nは1以上の整数である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアセチレン重合体は、溶液中であってもラセミ化が起こりにくく、安定な片巻き螺旋構造を有している。また、塩ではないから、溶解性が確保され、用途が限定されない。このようなアセチレン重合体は、高い配向性を持つ材料であるため、液晶材料や有機ELや有機LED等の電気材料、非線形材料、DDSや光学分割剤等の医薬材料等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアセチレン重合体は、上記式(I)で表される構成単位(アセチレン単量体単位)を含有するものである。また、本発明のアセチレン重合体は、式(II)における主鎖末端の炭素Cと側鎖Rとの結合における回転バリア(△Erot)が30kJ/mol以上、好ましくは40kJ/molのものである。
ここで、回転バリア(△Erot)とは、式(II)における主鎖末端の炭素Cと側鎖Rとの結合がその結合を軸として回転する際に要するエネルギーのことである。本発明における回転バリアは、非経験的分子軌道法であるab initio HF法により、基底関数として3−21Gを使用し、プログラムとしてはWavefunction社のSpartan02を使用して計算することで求めた値である。
【0008】
その計算手順としては、まず、式(III)において、Molecular Mechanics(MM)法により最安定のコンフォーマーを計算する。次いで、その最安定コンフォーマーにおけるC=Cと、Cに隣接するCと、Cに結合するXの4つの原子とから形成される2面角を、−180度〜180度の範囲で動かして、2面角以外の結合の角度をab initioHF/3−21G法で最適化する。このようにしてポテンシャルエネルギーのマップを作成する。そして、最安定構造をとる2面角を計算で求めた後、その構造を0kJ/molとし、最も大きいエネルギーとの差を求め、その差を回転バリアとした。
【0009】
【化2】

式(III)において、CはCに直接結合する炭素である。また、Xは、不斉炭素を有する置換基であり、Yは、水素原子、酸素原子、特に制限されない置換基のいずれかであり、Zは、水素原子、特に制限されない置換基のいずれかである。なお、Yが酸素原子であって、CとYとが二重結合で結合する場合にはZは省略される。
【0010】
このようなアセチレン重合体は、不斉炭素を有する一般式(IV)で表されるアセチレン化合物が重合したものである。
R−C≡CH (IV)
式中、Rは、不斉炭素を有し、炭素Cに直接結合する原子が炭素である置換基である。
【0011】
アセチレン化合物としては、不斉炭素を有し、置換基を有してもよいフェニルアセチレン、アルキルプロピオレート、アリールプロピオレート、プロピオル酸アミド、ペンチノイック酸エステル、ペンチノイック酸アミド、プロパルギルエステル、プロパルギルアミド等が挙げられる。
具体的には、(S)−2−ペンチルプロピオレート、(R)−2−ペンチルプロピオレート、(S)−2−ヘキシルプロピオレート、(R)−2−ヘキシルプロピオレート、(S)−2−ヘプチルプロピオレート、(R)−2−ヘプチルプロピオレート、(S)−1−フェニルエチルプロピオレート、(R)−1−フェニルエチルプロピオレート、(S)−3−テトラヒドロヒラニルプロピオレート、(R)−3−テトラヒドロピラニルプロピオレートなどが挙げられるが、本発明はこれら具体例に限定されない。
【0012】
このアセチレン重合体は、上記不斉炭素を有するアセチレン化合物が1種重合した単独重合体であってもよいし、2種以上重合した共重合体であってもよいし、上記不斉炭素を有するアセチレン化合物に不斉炭素を持たないモノマーが共重合した共重合体であってもよい。
不斉を持たないアセチレン化合物としては特に制限されず、例えば、フェニルアセチレン、4−メトキシフェニルアセチレンのようなフェニルアセチレン、エチルプロピオレート、フェニルプロピオレートなどのプロピオレートやエチルペンチノレート、プロパルギルアセテートなどが挙げられる。
【0013】
本発明のアセチレン重合体は、上記アセチレン化合物を下記一般式(V)の有機金属錯体触媒の存在下で、重合することで製造される。
一般式(V):[MLL’]
(式中、Mは周期表第7〜10族の元素、Lは多重結合を有する化合物に由来する配位子、L’は孤立電子対を有する化合物に由来する配位子、Xは陰イオン、mは0〜7の整数、nは0〜6の整数、pは1〜2の整数、qは0〜2の整数を表す。)
【0014】
一般式(V)式中のMは、好ましくはロジウム、ルテニウム、レニウム、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウムなどが挙げられ、特に好ましくはロジウムが用いられる。
Lは多重結合を有する化合物に由来する配位子を表す。Lは、好ましくはオレフィン、アセチレン、ジエン、シクロオレフィン、一酸化炭素、アリル、フェニルアセチレンなどが挙げられ、特に好ましくはシクロオレフィン、アリル、一酸化炭素、フェニルアセチレンなどが挙げられ、より好ましくはシクロオレフィンが挙げられる。シクロオレフィンとしては、シクロオクタジエン、ノルボルナジエンが好ましく用いられる。L’は孤立電子対を有する化合物に由来する配位子を表す。
【0015】
L’は、好ましくは窒素、リン、ヒ素、酸素、イオウなどの原子を有する配位子、ハロゲン原子などが挙げられる。特に好ましくはリンを有する配位子、ハロゲン原子が挙げられ、最も好ましくはハロゲン原子が挙げられる。具体的には、窒素を有する配位子としては、例えばピリジン、ビピリジル、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、フェナンスロリンなどが挙げられる。リンを有する化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスファイト、トリフェニルホスフェート、ビスジフェニルホスフィン、n−ノニルフェニルホスフィン、エチレンビスフェニルホスフィンなどが挙げられ、トリフェニルホスフィンが特に好ましい。ヒ素を有する配位子としてはトリフェニルアルシンなどが挙げられる。酸素を有する配位子としてはジフェニルエーテル、アルコキシなどが挙げられる。イオウを有する配位子としては、ジフェニルチオエーテルなどが挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられ、塩素が特に好ましい。
【0016】
Xは陰イオンを表す。Xは、具体的には、PF、BF、ClO、SOCFなどが挙げられ、PFが好ましく用いられる。
mは0〜7の整数、好ましくは0〜6の整数、特に好ましくは1〜2の整数を表す。nは0〜6の整数、好ましくは0〜5の整数、特に好ましくは1〜2の整数を表す。pは1〜2の整数を表す。qは0〜2の整数、好ましくは1〜2の整数を表す。
【0017】
一般式(V)で表される触媒の具体例としては、[Rh(COD)Cl]、[Rh(NBD)Cl]、[Rh(NBD)OCH、[Rh(COD)bipy]SOCF、[Rh(COD)bipy]PF、[Rh(NBD)bipy]PF、[Rh(COD)bipyam]PF、[Rh(COD)(PPh]PF、[Rh(COD)EDA]Cl、[Rh(COD)TEDA]Cl、Re(Co)Z、[Re(CO)Cl]、[Re(CO)Cl]、Re(CO)(PPh)Cl、Re(CO)(PPhCl、Re(CO)(bipy)Cl、Re(CO)(C≡CPh)、Re(CO)(phPCHCHPPh)Cl、Ni(CO)(PPh、Ni(PPh、Pt(PPh(C≡CPh)、Pt(PPh)HCl、Pt(PPhClなどが挙げられる。但し、CODはシクロオクタジエニル、NBDはノルボナジエニル、bipyはビピリジル、bipyamはビピラン、phはフェニル、EDAはエチレンジアミン、TEDAはトリエチレンジアミン、Zはハロゲン原子を示す。
これら中でも、[Rh(COD)Cl]、[Rh(NBD)Cl]、[Rh(NBD)OCHが好ましく、[Rh(NBD)Cl]が特に好ましい。
【0018】
重合は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、トルエンなどの芳香族系溶媒、クロロホルムなどの塩素系溶媒が挙げられる。
溶媒中のアセチレン化合物の濃度は0.01〜10mol/L、好ましくは0.1〜5mol/Lである。触媒濃度は1×10−10〜1mol/L、好ましくは1×10−5〜1×10−1mol/Lである。モノマー量に対する触媒添加量は、モノマー/触媒=1×1012〜1×10−2mol/mol、好ましくは5×10〜1mol/molである。重合温度は−30〜120℃、好ましくは0〜100℃、特に好ましくは20〜80℃ある。圧力は通常常圧で行われるが、使用する溶媒またはアセチレン化合物の種類によっては加圧条件で行われる。
【0019】
以上説明したアセチレン重合体は、回転バリアが30kJ/mol以上であるため、溶液中でラセミ化が起こりにくい。この理由は明らかではないが、回転バリアが大きいと、側鎖の回転が阻害されて主鎖の構造が固定されるためであると思われる。
このように、溶液中でラセミ化が起こりにくければ、片巻きアセチレン重合体を溶媒に溶解し、その溶液を基材に塗布して片巻きアセチレン重合体の層を形成できるようになるので、実用性が高くなる。
また、片巻きを維持するために、塩にする必要がなく、溶解性が確保されると共に、電気材料にも適用でき、用途が限定されない。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例において、H−NMRは、Varian製、Gemini−200(200MHz)を使用し、溶媒に重クロロホルムを使用し測定した。GPCは昭和電工製、Shodex K−806Lカラムを使用し、ポリスチレンを標準サンプルとし、溶媒にクロロホルムを使用して測定した。比旋光度は日本分光製DIP−370を使用し、クロロホルム溶媒中で測定した。
【0021】
(実施例1)(S)−フェニルエチルプロピオレートの合成/重合
プロピオール酸1.15g(16.37ミリモル)と2−フェニルエタノール1.0g(8.19ミリモル)をジクロロメタン10mlに溶解し、さらにジメチルアミノピリジン0.08g(0.66ミリモル)を添加した。次いで、氷冷下、ジシクロヘキシルカルバジド2.02g(9.82ミリモル)を10分間で添加して反応液を得た。反応液を30分間攪拌した後、反応液中の析出物を濾別し、濾液を濃縮した。濃縮残渣をトルエン50mlに溶解し、5%塩酸水、飽和重曹水、飽和食塩水の順に洗浄した。そして、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮して粘調液体を得た。その粘調液体をカラムクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で精製して、下記化学式(VI)に示す(S)−1−フェニルエチルプロピオレート0.75g(収率;53%)を得た。
得られた化合物のH−NMR(200MHz)を測定したところ、δ1.62(d、3H、CH)、2.88(s、1H、HC≡C)、5.98(q、1H、CH(CH))、4.29(m、2H、CH)、7.2〜7.5(m、5H、aromatic)であった。
【0022】
【化3】

【0023】
次に、(S)−1−フェニルエチルプロピオレート0.3g(1.7mmol)を反応器に採り、メタノール1.7mlを添加した。次いで、反応器内を脱気後、[Rh(NBD)Cl]のメタノール懸濁液1.7mlを添加し、40℃で4時間重合させた。重合反応終了後、生成物を一旦メタノールに分散させ、濾過後乾燥して重合体を得た(ポリマー収率;18.8%)。
得られた重合体をクロロホルムに溶解し、GPCで分子量を測定したところ、Mn:6,000、Mw:37,000、Mw/Mn:5.5であった。また、比旋光度は−198.8°(クロロホルム溶媒、濃度;0.3質量%)であり、片巻き螺旋であった。
(S)−1−フェニルエチルプロピオレートの重合体の回転バリアを、ab initio HF/3−21G法で計算したところ、43.5kJ/molであった。
【0024】
(実施例2)
(S)−2−ヘプタノール1g(8.61ミリモル)、p−トルエンスルホン酸・一水塩0.2g(0.86ミリモル)、プロピオール酸0.72g(10.3ミリモル)のトルエン(100ml)溶液を1時間、加熱還流した。飽和重曹水で反応液を洗浄した後、濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフ(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、(s)−2−へチルプロピオレート0.31g(収率;21%)を得た。
下記化学式(VII)に示す(S)−2−ヘプチルプロピオレート0.24g(1.4mmol)を反応器に採り、メタノール1.4mlを添加した。次いで、反応器内を脱気後、[Rh(NBD)Cl]のメタノール懸濁液1.4mlを添加し、40℃で4時間重合させた。重合反応終了後、生成物を一旦メタノールに分散させ、濾過後乾燥して重合体を得た(ポリマー収率;7.5%)。
得られた重合体をクロロホルムに溶解し、GPCで分子量を測定したところ、Mn:20,000、Mw:52,000、Mw/Mn:2.6であった。また、比旋光度は+234.0°(クロロホルム溶媒、濃度;0.2質量%)であり、片巻き螺旋であった。
(S)−1−フェニルへプチルプロピオレートの重合体の回転バリアを、ab initio HF/3−21G法で計算したところ、44.3kJ/molであった。
【0025】
【化4】

【0026】
(比較例1)1−エテニル−4−(S−2−メチルブトキシ)ベンゼンの重合
下記化学式(VIII)に示す1−エテニル−(S−3−メチルブトキシ)ベンゼン0.5016gを反応器に採り、約6.6mlのメタノールを添加して溶液にした。次いで、反応器内を脱気後、 4.9mgの[Rh(NBD)Cl]と、助触媒として0.11gのトリエチルアミン(TEA)とをメタノール約6.6mlに溶解して触媒溶液を調製した。次いで、その触媒溶液を脱気し、これを反応器に添加し、40℃で4時間重合させた。重合条件は、モノマー濃度;0.2mol/l、モノマー/触媒;250mol/mol、TEA/触媒;100mol/molとした。重合反応終了後、生成物を一旦メタノール100mlに分散させ洗浄し、1Gのガラスフィルターで濾過後乾燥して重合体を得た(収率;80.6%)。
得られた重合体をクロロホルムに溶解し、GPCで分子量を測定したところ、Mn;148,000、Mw;1,229,000、Mw/Mn;8.3であった。また、比旋光度は+144°(クロロホルム溶媒、濃度;0.3質量%)であり、片巻き螺旋であった。
1−エテニル−(S−3−メチルブトキシ)ベンゼンの重合体の回転バリアを、ab initio HF/3−21G法で計算したところ、10.5kJ/molであった。
【0027】
【化5】

【0028】
実施例1、実施例2、比較例1のポリマーを、それぞれ濃度0.3質量%のクロロホルム溶液とし、23℃で保存し、保存時間に対するポリマー溶液の比旋光度を測定して、安定性について調べた。
回転バリアが30kJ/mol以上の実施例1,2のポリマーでは、図1に示すように、保存時間が200時間経過後も初期の比旋光度の50%以上を維持していた。これに対し、回転バリアが30kJ/mol未満の比較例1のポリマーは200時間経過後には完全にラセミ化していた。
このように、回転バリアの高いアセチレン重合体は溶液中でも安定な片巻き螺旋を維持し、ラセミ化しにくいため、実用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1,2および比較例1のポリマーのクロロホルム溶液における保存時間に対するポリマー溶液の比旋光度の維持率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構成単位を含有するアセチレン重合体において、
式(II)における主鎖末端の炭素Cと側鎖Rとの結合における回転バリア(△Erot)が30kJ/mol以上であることを特徴とするアセチレン重合体。
【化1】

式中、Rは、不斉炭素を有し、炭素Cに直接結合する原子が炭素である置換基であり、nは1以上の整数である。

【図1】
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【公開番号】特開2006−77170(P2006−77170A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264144(P2004−264144)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000230652)日本化成株式会社 (85)
【Fターム(参考)】