説明

アセンブリおよび電気的に接続するための方法

【課題】使用されるはんだの量を減少させても、はんだ結合の機械的強度が低下しないはんだ継ぎ手を備えたアセンブリを提供する
【解決手段】アセンブリは、サスペンション搭載面および前記サスペンション搭載面上のサスペンションパッドを含むサスペンションアセンブリと、スライダパッドが前記サスペンションパッドと整列した状態で、前記サスペンション搭載面に隣接して位置決めされるスライダと、前記スライダパッドまたは前記サスペンションパッドの少なくとも一方における窪んだ溝と、前記サスペンションパッドおよび前記スライダパッドの間に形成され、かつ前記窪んだ溝に延在するはんだ継手とを備える。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
HDDは、典型的に1つ以上のディスクを含む。スライダによって保持される伝達ヘッドを用いて、ディスク上のデータトラックに対して読出および書込が行なわれる。スライダは、アクチュエータアームおよびサスペンションアセンブリを含むアームアセンブリによって保持され、別個のジンバル構造を含むか、またはジンバルを一体形成することができる。スライダは典型的に、熱相互接続(TIC)処理によってサスペンションアセンブリ上のサスペンション結合パッドに接続されたスライダ結合パッドを含む。TIC処理において、スライダ結合パッドとサスペンション結合パッドとの間に溶融はんだが塗布され、続いて冷却され、接続部を構成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
HDDの出現以来、スライダの形状因子(寸法および形状)が着実に減少してきた。スライダへの追加的な電気接続のために、結合パッドの数を増加させる傾向もある。したがって、結合パッドの寸法および結合パッド間の空間も減少している。これらの寸法が小さくなるにつれて、はんだがある結合パッド対(1つのスライダパッドおよび対応するサスペンションパッド)から隣接する結合パッド対(別のスライダパッドおよび対応するサスペンションパッド)に不所望に橋絡する可能性が増大している。橋絡の問題を抑制するために、各はんだ接続に使用されるはんだの量を減少させることが可能である。しかし、使用されるはんだの量を減少させると、各はんだ結合の機械的強度が低下するという新たな問題が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本発明によれば、スライダは、スライダ本体および結合パッドを含む。結合パッドはスライダ本体上に位置決めされ、はんだ流を方向付けるための窪んだ溝を有する結合面を含む。
【0004】
別の実施例は、第1の結合パッドを第2の結合パッドに電気的に接続するための方法を含む。当該方法は、液体はんだを第1の結合パッドおよび第2の結合パッドの間に配置するステップと、第1の結合パッド内の窪んだ溝によってはんだ流を方向付けるステップと、はんだを凝固させて、第1の結合パッドが第2の結合パッドとほぼ垂直に整列するように第1の結合パッドおよび第2の結合パッドの間に結合部を形成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】例示的なハードディスクドライブHDDシステムの斜視図である。
【図2】本発明のスライダおよびサスペンションアセンブリの斜視図である。
【図3】熱相互接続結合処理における図2のスライダおよびサスペンションアセンブリの側面図である。
【図4A】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図4B】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図4C】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図4D】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図4E】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図4F】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図4G】多様な実施例の窪んだ溝を有するスライダパッドを含む図2のスライダの端面図である。
【図5】測定距離を示す、図2のスライダの端面図である。
【図6A】窪んだ溝を有する結合パッドを形成するためのステップの概略断面図である。
【図6B】窪んだ溝を有する結合パッドを形成するためのステップの概略断面図である。
【図6C】窪んだ溝を有する結合パッドを形成するためのステップの概略断面図である。
【図6D】窪んだ溝を有する結合パッドを形成するためのステップの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
図1は例示的なハードディスクドライブ(HDD)システム20の斜視図であり、軸24を中心に回転するように構成された磁気記憶ディスク22、作動モータ26(たとえばボイスコイルモータ)、アクチュエータアーム28、サスペンションアセンブリ30、および伝達ヘッド(図2に示す)を保持するスライダ32を含む。スライダ32は、サスペンションアセンブリ30によって支持され、ひいてはアクチュエータアーム28によって支持される。作動モータ26は、軸34を中心にアクチュエータアーム28を旋回させるように構成され、回転するディスク22の表面を横切って弧を描くようにサスペンション30およびスライダ32を掃引させる。スライダ32は、エアークッションによって、ディスク22を横切って「摺動」または「飛行」する。スライダ32によって保持される伝達ヘッドは、ディスク22に対して読出および書込を行なうために、ディスク22の選択された同心データトラック36に対して位置決めすることができる。なお、同時に回転するディスク22のスタックに対して、当該スタックの各ディスク22の上面および下面における読出および書込のために、追加的なアクチュエータアーム28と、サスペンションアセンブリ30と、伝達ヘッドを保持するスライダ32とを設けることができる。
【0007】
図2は、サスペンションアセンブリ30に接続されたスライダ32の斜視図である。スライダ32は、後縁42の反対側の前縁40と、サスペンション対面表面46の反対側の空気軸受面44とを含む。伝達ヘッド48は、後縁42付近の空気軸受面44上に位置決めされる。スライダパッド50A〜50Fは、サスペンション対面表面46付近の後縁42上に位置決めされたはんだ結合パッドである。サスペンションアセンブリ30はサスペンションパッド52A〜52Fを含み、これらはスライダ32の後縁42付近のサスペンション搭載面54上に位置決めされたはんだ結合パッドである。スライダパッド50A〜50Fは、サスペンションパッド52A〜52Fとそれぞれ整列され、かつほぼ垂直である。前縁42も、サスペンション搭載面54にほぼ垂直である。スライダパッド50A〜50Fは、形状、寸法および方位が互いにほぼ同様であるが、前縁42上の位置が互いに異なる。同様に、サスペンションパッド52A〜52Fは、形状、寸法および方位が互いにほぼ同様であるが、サスペンション搭載面54上の位置が互いに異なる。
【0008】
スライダパッド50Aは、サスペンション搭載面54に最も近く位置決めされた第1のエッジ56Aと、反対側の空気軸受面44に最も近く位置決めされた第2のエッジ58Aとを有する。スライダパッド50Aは、結合面62A上に窪んだ溝60Aを有する。窪ん
だ溝60Aは、一端が幅広く他端が幅狭い涙滴形状を有する。したがって、窪んだ溝60Aのより大きな部分は、第2のエッジ58Aよりも第1のエッジ56Aに近い。スライダパッド50B〜50Fは、同様の窪んだ溝60B〜60Fをそれぞれ有する(スライダパッド50D〜50Fについては図4Cに示す)。
【0009】
サスペンションパッド52Aは、スライダパッド50Aに最も近く位置決めされた第1のエッジ64Aと、スライダパッド50Aから離れて位置決めされた第2のエッジ66Aとを有する。サスペンションパッド52Aは、結合面70A上に窪んだ溝68Aを有する。窪んだ溝68Aも、一端が幅広く他端が幅狭い涙滴形状を有する。したがって、窪んだ溝68Aのより大きな部分は、第2のエッジ66Aよりも第1のエッジ64Aに近い。サスペンションパッド52B〜52Fは、同様の窪んだ溝68B〜68Fをそれぞれ有する(サスペンションパッド52D〜52Fについては図示せず)。
【0010】
代替的な実施例において、サスペンションパッド52A〜52Fは、窪んだ溝68A〜68Fを有さない比較的平滑な結合面を有することができる。スライダパッド50A〜50Fは、窪んだ溝60A〜60Fをそのまま有する。別の代替的な実施例において、スライダパッド50A〜50Fは比較的平滑であり、サスペンションパッドサスペンションパッド52A〜52Fだけが窪んだ溝68A〜68Fを有し得る。さらに他の実施例では、スライダパッド50A〜50Fおよびスライダパッド50A〜50Fは、少なくとも1つのスライダまたはサスペンションパッドが少なくとも1つの窪んだ溝を有する限り、平滑面および窪んだ溝のいずれの組合せも有し得る。
【0011】
はんだ継手72D〜70Fは、スライダパッド50D〜50Fをサスペンションパッド52D〜52Fにそれぞれ接続する。スライダパッド50A〜50Cをサスペンションパッド52A〜52Cにそれぞれ接続するはんだ継手は、窪んだ溝60A〜60Cおよび68A〜68Cをよりよく例示するため、図2では省略されている。しかし、すべてのパッド対が、それぞれの窪んだ溝によって成形されるはんだ接続部を有する。たとえば、スライダパッド50Eは、はんだ継手72Eの大きく幅広い部分を第1のエッジ56E付近に位置決めし、はんだ継手72Eの小さく幅狭い部分を第2のエッジ58E付近に位置決めする、涙滴形状の窪んだ溝60E(図4Eに示す)を有する。はんだ継手72Eが固体であるときには、窪んだ溝60Eに延在する。はんだ継手72Eが溶融すると、窪んだ溝60Eは、はんだ流を窪んだ溝60Eによって規定される経路に沿って方向付ける。涙滴形状の窪んだ溝60Eの狭い部分にはんだが流れると、窪んだ溝60Eは、第2のエッジ58Eの方に、かつ近傍のスライダパッド50Dおよび50Fから離れる方にはんだ流を方向付ける。窪んだ溝60Eの最も大きくかつ最も幅広い部分は第1のエッジ56E付近にあるため、第1のエッジ56E付近の窪んだ溝60Eにはより多くの量のはんだが流れ込む。したがって、はんだ継手72Eは細長いが、そのはんだの大部分は第1のエッジ56E付近にある。はんだ流を移動させるための力は、表面張力、毛管作用、および熱相互接続(TIC)結合処理に由来する。
【0012】
図3は、TIC結合処理におけるスライダ32およびサスペンションアセンブリ30の側面図である。1回のTIC処理において、レーザ80の光線84がはんだボール82を加熱し、溶融させる。毛管ノズル86が窒素によって加圧され、矢印A1によって示されるように、溶融したはんだボール82をスライダパッド50Aとサスペンションパッド52Aとの間の偶角部の方に前進させる。溶融したはんだボール82は、およそ45°の角度でスライダパッド50Aおよびサスペンションパッド52Aの各々に当たり、矢印A2およびA3によって例示されるような方向に跳ね返る(キックバックとも称する)。跳ね返ったはんだボール82の流れは押し返され、窪んだ溝60Aおよび68A(図2に示す)によって規定される流路に沿って方向付けられる。他の実施例において、はんだボール82は、約35°〜約55°の間の仮想的にいずれかの角度でスライダパッド50Aおよ
びサスペンションパッド52Aに当たり得る。窪んだ溝60Aおよび68Aが図2に例示したものとは異なるパターンを有する場合、スライダパッド50Aおよびサスペンションパッド52Aに沿って、異なる態様ではんだ流を方向付けることができる。
【0013】
図4Aは、一実施例の窪んだ溝160A〜160Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。第1のセンターライン軸CL1は、空気軸受面44、第1のエッジ56A、および第2のエッジ58Aの各々とほぼ平行である。サスペンションアセンブリ30(図2に示す)上に搭載されると、第1のセンターライン軸CL1は、サスペンションパッド52A〜52F(図2に示す)にもほぼ平行である。第1のセンターライン軸CL1は、スライダパッド50Aを、サスペンションパッド52A付近の近位半分と、第1のサスペンションパッド52Aから離れた遠位半分とに分割する。第2のセンターライン軸CL2は、第1のセンターライン軸CL1とほぼ垂直である。
【0014】
窪んだ溝160Aは、ダイヤモンド形状を有する。ダイヤモンド形状は本質的に、第1および第2のセンターライン軸CL1およびCL2に沿って辺が交差する3つの同心の菱形の形状である。ダイヤモンド形状は、第1および第2のセンターライン軸CL1およびCL2の各々に関してほぼ対称である。ダイヤモンド形状は、スライダパッド50Aのエッジ付近にはんだ流を方向付けるが、これらのエッジを越えて隣接するスライダパッド50Bには方向付けない。ダイヤモンド形状は、より多くの量のはんだをスライダパッド50Aの中央に方向付ける傾向がある。
【0015】
図4Bは、別の実施例の窪んだ溝260A〜260Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。窪んだ溝260A〜260Eは、異なる形状パターンを除いて、窪んだ溝160A〜160Eと同様である。
【0016】
溝260Aは楕円形状を有する。楕円形状は本質的に、3つの同心の細長い円の形状である。楕円形状は、第1および第2のセンターライン軸CL1およびCL2の各々に関してほぼ対称である。楕円形状は、スライダパッド50Aのエッジ付近にはんだ流を方向付けるが、これらのエッジを越えて隣接するスライダパッド50Bには方向付けない。楕円形状は、図4Aのダイヤモンド形状とよく似て、より多くの量のはんだをスライダパッド50Aの中央に方向付ける傾向がある。しかし、楕円形状は、ダイヤモンド形状よりも、第2のセンターライン軸CL2に沿って、より幅狭く細長いはんだ継手をもたらす傾向がある。
【0017】
図4Cは、別の実施例の窪んだ溝360A〜360Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。窪んだ溝360A〜360Eは、異なる形状パターンを除いて、窪んだ溝160A〜160Eと同様である。
【0018】
窪んだ溝360Aは長方形形状を有する。長方形形状は本質的に、3つの同心の細長い長方形の形状である。長方形形状は、第1および第2のセンターライン軸CL1およびCL2の各々に関してほぼ対称である。長方形形状は、スライダパッド50Aのエッジ付近にはんだ流を方向付けるが、これらのエッジを越えて隣接するスライダパッド50Bには方向付けない。長方形は、図4Aのダイヤモンド形状および図4Bの楕円形状とよく似て、より多くの量のはんだをスライダパッド50Aの中央に方向付ける傾向がある。しかし長方形形状は、ダイヤモンド形状または楕円形状よりも、第2のセンターライン軸CL2に沿って、より細長いはんだ継手をもたらす傾向がある。さらに長方形形状は、はんだ流をスライダパッド50Aの角に方向付けて、結合領域を増大させることもできる。
【0019】
図4Dは、別の実施例の窪んだ溝460A〜460Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。窪んだ溝460A〜460Eは、異なる形状パターンを除いて、窪んだ溝160A〜160Eと同様である。
【0020】
窪んだ溝460Aは凧形状を有する。凧形状は本質的に、2つの同心の四辺構造の形状である。凧形状は、第2のセンターライン軸CL2に関してほぼ対称であるが、第1のセンターライン軸CL1に関しては非対称である。凧形状は、第1のセンターライン軸CL1に関して非対称であることを除けば、図4Aのダイヤモンド形状と同様である。凧形状の窪んだ溝460Aのより大きな部分は、第2のエッジ58Aよりも第1のエッジ56Aに近い。これにより、凧形状は、第1のエッジ56Aの方に、したがって搭載されるとサスペンションパッド52A(図2に示す)の方に、より多くの量のはんだ流を方向付ける。対称性によって、およそ等しい量のはんだが第2のセンターライン軸CL2の両側の窪んだ溝460Aに方向付けられる。別の実施例では、より多くの量のはんだ流を第2のエッジ58Aに方向付けるため、凧形状の窪んだ溝460Aのより大きな部分は、第1のエッジ56Aよりも第2のエッジ58Aの近くにあり得る。
【0021】
図4Eは、図2を参照して説明したように、涙滴形状の窪んだ溝60A〜60Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。
【0022】
涙滴形状は、3つの同心の曲線構造を有する。涙滴形状は、第2のセンターライン軸CL2に関してほぼ対称であるが、第1のセンターライン軸CL1に関しては非対称である。涙滴形状は、第1のセンターライン軸CL1に関して非対称であることを除けば、図4Bの楕円形状と同様である。涙滴形状の窪んだ溝60Aのより大きな部分は、第2のエッジ58Aよりも第1のエッジ56Aに近い。これにより、涙滴形状は、第1のエッジ56Aの方に、したがって搭載されるとサスペンションパッド52A(図2に示す)の方により多くの量のはんだ流を方向付ける。図4Eに例示するように、涙滴形状は、図4Dに例示した凧形状よりも第1のエッジ56A付近により多くのはんだを方向付ける。対称性によって、およそ等しい量のはんだが第2のセンターライン軸CL2の両側の窪んだ溝60Aに方向付けられる。別の実施例では、より多くの量のはんだ流を第2のエッジ58Aに方向付けるため、涙滴形状の窪んだ溝60Aのより大きな部分は、第1のエッジ56Aよりも第2のエッジ58Aの近くにあり得る。
【0023】
図4Fは、別の実施例の窪んだ溝560A〜560Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。窪んだ溝560A〜560Eは、異なる形状パターンを除いて、窪んだ溝160A〜160Eと同様である。
【0024】
窪んだ溝560Aは長方形のタンク形状を有する。長方形のタンク形状は、スライダパッド50Aにおける1つの幅広い窪んだ溝である。長方形のタンク形状は、第2のセンターライン軸CL2に関してほぼ対称であるが、第1のセンターライン軸CL1に関しては非対称である。長方形のタンク形状は、溝幅と第1のセンターライン軸CL1に関して非対称であることとを除けば、図4Cの長方形形状と同様である。長方形のタンク形状の窪んだ溝560Aのより大きな部分は、第2のエッジ58Aよりも第1のエッジ56Aに近い。スライダパッド50Aの隆起部分562は、第1のエッジ56Aを除くすべての側面で窪んだ溝560Aを包囲する。これにより、長方形のタンク形状は、第1のエッジ56Aの方に、したがって搭載されるとサスペンションパッド52A(図2に示す)の方により多くの量のはんだ流を方向付ける。対称性によって、およそ等しい量のはんだが第2のセンターライン軸CL2の両側の窪んだ溝560Aに方向付けられる。隆起部分562は、はんだ流を窪んだ溝560Aによって規定される領域に効果的に閉じ込め、スライダパッド50Bなどの隣接するスライダパッドから離れる方にはんだ流を方向付けることができる。したがって長方形のタンク形状は、比較的大量のはんだとの使用に好適である。一実施例において、スライダパッド50Aの隆起部分562は、約5ミクロン幅であり得る。
【0025】
図4Gは、別の実施例の窪んだ溝660A〜660Eを有するスライダパッド50A〜50Eを含むスライダ32の後縁42の端面図である。窪んだ溝660A〜660Eは、異なる形状パターンを除いて、窪んだ溝160A〜160Eと同様である。
【0026】
窪んだ溝660Aは、互いの上に重ね合わせられた(ひげ飾りなしの)文字Y、IおよびMの形状を有し、したがってここでは「YIM」形状と称する。YIM形状は本質的に、2本の対角線溝によって互いに接続された3本の平行な溝の形状である。3本の平行な溝は、第1のセンターライン軸CL1にほぼ垂直である。2本の対角線溝は、3本の平行な溝に対しておよそ45°の角度であり、互いに対しておよそ90°の角度である。2本の対角線溝は、第2のエッジ58A付近のスライダパッド50Aの角に延在する。3本の平行な溝は、それらの長さに沿って、第1のエッジ56Aおよび第2のエッジ58Aの方にはんだ流を方向付ける。3本の平行な線ははんだ継手を細長くし、はんだ流が近傍のパッドに流れないようにする傾向がある。2本の対角線溝によって、YIM形状の窪んだ溝660Aのより大きな部分が、第1のエッジ56Aよりも第2のエッジ58Aに近い。したがって、窪んだ溝660Aは、第1および第2のエッジ56Aおよび58Aの両方にはんだ流を方向付けるが、第2のエッジ58Aを越えて流れることなくより多くの量のはんだ流を第2のエッジ58Aの方に方向付ける。YIM形状は、比較的大量のはんだとの使用に好適である。対称性によって、およそ等しい量のはんだが第2のセンターライン軸CL2の両側において窪んだ溝660Aに方向付けられる。
【0027】
図4A〜図4Gを参照して例示される窪んだ溝は、スライダパッド50A〜50F上だけでなくまたはスライダパッド50A〜50F上の代わりに、サスペンションパッド52A〜52F(図2に示す)上で使用することもできる。しかし窪んだ溝の形状は、図4A〜図4Gに例示されるものに厳密に限定される必要はない。代わりに、図4A〜図4Gを参照して例示される窪んだ溝を、設計パラメータに応じて変化させることができる。たとえば、スライダパッド50A〜50Fは、図4A〜図4Eに例示されるよりも少ないまたは多い溝を有することができる。さらに、一実施例の局面を別の実施例の局面と組合せて、特定の目的に好適な窪んだ溝を作製することができる。
【0028】
特定の目的のための窪んだ溝形状の選択は、さまざまな要因および設計要件、たとえばスライダパッド50A〜50Fおよびサスペンションパッド52A〜52Fの寸法、スライダパッド50A〜50Fとサスペンションパッド52A〜52Fとの間隔、はんだボール82(図3に示す)の寸法、はんだ継手72D〜72F(図2に示す)の強度要件、および歩留まり要件(たとえば、製造中に不所望に橋絡し、再加工を必要とするはんだ継手72D〜72Fの許容パーセンテージがどのくらいか)に依存することができる。
【0029】
たとえば、スライダパッド50A〜50Fおよびサスペンションパッド52A〜52Fが比較的小さく、スライダパッド50A〜50Fとサスペンションパッド52A〜52Fとの間隔が比較的小さい用途においては、はんだ継手72D〜72F(図2に示す)の強度を高めるために、はんだボール82について比較的大きい寸法を選択することができる。しかし、比較的大きいはんだボール82を使用することによって、隣接するパッド同士を橋絡する可能性が高くなる。橋絡の可能性を抑制するためには、大量のはんだに好適な窪んだ溝形状(溝360A、560Aまたは660Aなど)を選択して、結合面62Aおよび70A(図2に示す)のより大きな部分上にはんだを広げ、スライダパッド50A〜50Fおよびサスペンションパッド52A〜52Fの中心にはんだを閉じ込める、または両方行うことができる。
【0030】
代替的に、比較的小さいはんだボール82が選択された場合、はんだボール82は、結合面62Aおよび70Aの大部分を覆ってもなお接続を形成するのに十分な量のはんだを含まない可能性がある。このような用途においては、少量のはんだに好適な窪んだ溝形状(60Aまたは460Aなど)を選択して、はんだ流を第1のエッジ56Aおよび64A(図2に示す)付近に方向付けることができる。これにより、小さくてもなお比較的強いはんだ継手のために、スライダパッド50Aとサスペンションパッド52Aとの間の偶角部付近に、はんだ継手72D〜72F(図2に示す)が位置決めされる。他の実施例では、他の要因および設計要件によって窪んだ溝形状を誘導することができる。
【0031】
図5は、測定距離を示すスライダ32の端面図である。一実施例において、スライダ32の後縁42の幅W1は、約770ミクロンであり得る。スライダパッド50A〜50Fの幅W2は、約80ミクロンであり得る。このようなスライダパッド50A〜50Fは、約50ミクロンの幅W3で互いに離間させることができ、それでもなお後縁42上に嵌合する。上記のような窪んだ溝を用いると、はんだ継手72D〜72F(図2に示す)を橋絡させることなく、幅W3を約40ミクロン、30ミクロン、またはさらに20ミクロンまで減少させることができる。幅W3を減少させることにより、スライダパッド50Aおよび50Fの外側エッジにおける空間が、約95ミクロンの幅W4まで増大する。このような減少によって、スライダ32の幅W1を減少させること、または後縁42上のスライダパッドの数を増加させることが可能となる。スライダパッド50A〜50Fの幅W2を約60ミクロンもしくはさらに40ミクロンに減少させて、スライダ32の幅W1をさらに減少させるか、または後縁42上のスライダパッドの数をさらに増加させることもできる。
【0032】
図6A〜図6Dは、窪んだ溝60Aを有するスライダパッド50Aを製造する方法のためのステップの、図4Eの線6−6に沿った概略断面図である。図6A〜図6Cは、さまざまな完成段階における線6−6に沿ったスライダパッド50Aの図である。図6Dは、製造が完了したときの、線6−6に沿ったスライダパッド50Aを示す。
【0033】
図6Aは、第1の製造ステップ中のスライダ32の断面図を例示する。スライダ32は、スライダ32の後縁42に位置決めされ、伝達パッド702から延在する導電性スタッド700を有する。伝達パッド702は、伝達ヘッド48(図2に示す)に電気的に接続される。スタッド700および伝達パッド702は、アルミナ層704によって包囲される。アルミナ層704の表面がスタッド700の表面と同一高さとなるように、後縁42の表面が平坦化される。
【0034】
図6Bは、第2の製造ステップ中のスライダ32の断面図を例示する。感光層706がスタッド700において後縁42上にパターニングされる。感光層706は、窪んだ溝60A(図2に示す)のための孔とほぼ同様の形状であるが若干幅広い孔708を有する。孔708は、スタッド700およびアルミナ層704の両方の真上に位置決めされる。
【0035】
図6Cは、第3の製造ステップ中のスライダ32の断面図を例示する。感光層706によって後縁42に対してイオンミリングを行ない、孔708の形状で第1の窪んだ溝710を製造する。感光層706は次いで後縁42から剥離される。
【0036】
図6Dは、第4の製造ステップ中のスライダ32の断面図を示す。後縁42上および第1の窪んだ溝710内に導電材料層を堆積して、結合パッド50Aを形成し、窪んだ溝60Aを規定する。窪んだ溝60Aは、この方法によって製造される最終的な窪んだ溝である。結合パッド50Aは、金などの導電性材料の薄い層であり得る。例示した実施例では、窪んだ溝60Aは約2〜約2.5ミクロンの深さDを有し、約4〜約5ミクロンの幅W5を有する。窪んだ溝60A同士の間の結合パッド50Aの部分の幅W6も約5ミクロンである。他の実施例では、幅W5およびW6ならびに深さDは変動し、したがって結合面62Aの接触面積も変動し得る。結合面62Aは、結合パッド50Aの外形寸法面積より約10%〜約40%大きい表面積を有し得る。
【0037】
本発明は、多くの利点および利益をもたらすと認識されるであろう。たとえば、窪んだ溝によって、結合処理中のはんだ流を制御し、スライダおよびサスペンションパッドの所望の位置にはんだを位置決めすることが可能となる。このような流量制御により、結合強度が増大し、隣接するパッドへの橋絡の可能性が低下する。結合強度が増大すると、HDDを地面に落とすことなどによる衝撃に耐えるHDDの能力が向上する。窪んだ溝は、スライダおよびサスペンションパッド上の有効はんだ結合表面積を増大させる効果も有する。結合表面積の増大によっても、はんだ結合強度を増大させることができる。これらの利点のすべてによって、スライダおよびサスペンションパッドを小型化し、かつパッド同士の間隔を減少させることが可能となる。これにより、最終的に、形状因子が減少したスライダを使用することが可能となる。またこれにより、スライダ上のスライダパッドの数を増加させることも可能となる。
【0038】
(1) 実施例のスライダは、スライダ本体と、前記スライダ本体上に位置決めされ、かつはんだ流を方向付けるための窪んだ溝を有する結合面を含む第1の結合パッドとを備える、スライダである。
【0039】
(2) 実施例のスライダは、前記第1の結合パッドに隣接して前記スライダ本体上に位置決めされた第2の結合パッドをさらに備え、前記窪んだ溝が、はんだ流を前記第2の結合パッドから離れる方に方向付ける、上記(1)に記載のスライダであってもよい。
【0040】
(3) 実施例のスライダは、前記第1の結合パッドが、第1および第2の対向するエッジを有し、前記窪んだ溝が、はんだ流を前記第1および第2のエッジの両方に方向付け、より多くの量のはんだが、前記第1および第2のエッジの他方よりも、前記第1および第2のエッジの一方に近く方向付けられる、上記(1)に記載のスライダであってもよい。
【0041】
(4) 実施例のスライダは、結合表面積が、前記結合パッドの外形寸法面積より約10%〜約40%大きい、上記(1)に記載のスライダであってもよい。
【0042】
(5) 実施例のスライダは、前記窪んだ溝が、空気軸受面に平行な第1のセンターライン軸に関して非対称な形状を有する、上記(1)に記載のスライダであってもよい。
【0043】
(6) 実施例のスライダは、前記窪んだ溝が涙滴形状を有する、上記(5)に記載のスライダであってもよい。
【0044】
(7) 実施例のスライダは、前記窪んだ溝が凧形状を有する、上記(5)に記載のスライダであってもよい。
【0045】
(8) 実施例のスライダは、前記窪んだ溝の一部分が、前記第1のセンターライン軸にほぼ垂直である、上記(5)に記載のスライダであってもよい。
【0046】
(9) 実施例のスライダは、前記窪んだ溝が、前記第1のセンターライン軸に垂直な第2のセンターライン軸に関してほぼ対称である、上記(5)に記載のスライダであってもよい。
【0047】
本発明を例示的な実施例を参照して説明したが、当業者であれば、発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が行なわれ得、その要素を均等物で置換し得ることを理解するであろう。また、本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況または材料を適用する多くの変更が行なわれ得る。したがって、本発明は開示された特定の実施例に限定されるものではなく、本発明は、添付の請求項の範囲内のすべての実施例を含む。たとえば、パッドがはんだ流を方向付けるための窪んだ溝を有する限り、パッドの寸法、形状、量、および位置をスライダ32上に例示したものから変化させることができる。また、図3および図6A〜図6Dを参照して例示した製造および組立の方法を、窪んだ溝を有する結合パッドを形成するのに好適な他の方法によって修正またはさらに置換することができる。
【符号の説明】
【0048】
22 磁気記憶ディスク、24 軸、26 作動モータ、28 アクチュエータアーム、30 サスペンションアセンブリ、32 スライダ、40 前縁、42 後縁、44 空気軸受面、46 サスペンション対面表面、48 伝達ヘッド、50A〜50F スライダパッド、52A〜52F サスペンションパッド、54 サスペンション搭載面、56A,56E,64A,64E 第1のエッジ、58A,58E,66A,66E 第2のエッジ、60A〜60F,68A〜68C 窪んだ溝、62A,70A 結合面、72D〜70F はんだ継手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセンブリであって、
サスペンション搭載面および前記サスペンション搭載面上のサスペンションパッドを含むサスペンションアセンブリと、
スライダパッドが前記サスペンションパッドと整列した状態で、前記サスペンション搭載面に隣接して位置決めされるスライダと、
前記スライダパッドまたは前記サスペンションパッドの少なくとも一方における窪んだ溝と、
前記サスペンションパッドおよび前記スライダパッドの間に形成され、かつ前記窪んだ溝に延在するはんだ継手とを備える、アセンブリ。
【請求項2】
前記スライダパッドは前記サスペンションパッドにほぼ垂直であり、前記窪んだ溝は前記スライダパッドにあって、前記サスペンションパッドに平行なセンターライン軸に関して非対称な形状を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記スライダは空気軸受面を備え、前記スライダパッドは、サスペンションに最も近い第1のエッジと、前記空気軸受面に最も近い第2のエッジとを有し、前記窪んだ溝は前記スライダパッド上に位置決めされ、前記窪んだ溝のより大きな部分は、前記第2のエッジよりも前記第1のエッジに近い、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記はんだ継手は、前記窪んだ溝に延在する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
第1の結合パッドを第2の結合パッドに電気的に接続するための方法であって、前記方法は、
液体はんだを前記第1の結合パッドおよび前記第2の結合パッドの間に配置するステップと、
前記第1の結合パッドの窪んだ溝によってはんだ流を方向付けるステップと、
はんだを凝固させて、前記第1の結合パッドが前記第2の結合パッドとほぼ垂直に整列するように前記第1の結合パッドおよび前記第2の結合パッドの間に結合部を形成するステップとを含む、方法。
【請求項6】
前記窪んだ溝は、はんだ流を前記第2の結合パッドの方に方向付ける、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の結合パッドは、前記第2の結合パッドに平行な第1のセンターライン軸を有し、前記第1のセンターライン軸は、前記第1の結合パッドを、前記第2の結合パッド付近の近位半分と前記第2の結合パッドから離れた遠位半分とに分割し、前記方法はさらに、より多くの量のはんだを前記遠位半分の窪んだ溝よりも前記近位半分の窪んだ溝に流れ込ませるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
毛管から前記第1の結合パッドおよび前記第2の結合パッドの各々に、約35°〜約55°の間のある角度で溶融はんだを噴射することによって、前記第1の結合パッドと前記第2の結合パッドとの間に液体はんだが配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の結合パッドは、スライダ上に位置決めされたスライダパッドであり、前記第2の結合パッドは、サスペンションアセンブリ上に位置決めされたサスペンションパッドである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記窪んだ溝は、前記スライダ上の前記第1の結合パッドに隣接して位置決めされた第3の結合パッドから離れる方にはんだ流を方向付ける、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記窪んだ溝は、前記スライダ上の前記第1の結合パッドに隣接して位置決めされた第4の結合パッドから離れる方にはんだ流をさらに方向付ける、請求項10に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate

【図4F】
image rotate

【図4G】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate


【公開番号】特開2012−256418(P2012−256418A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−164631(P2012−164631)
【出願日】平成24年7月25日(2012.7.25)
【分割の表示】特願2010−140738(P2010−140738)の分割
【原出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】