説明

アゼチジングリシン輸送体インヒビター

本発明は、グリシン輸送体GlyT1を阻害し、グリシン作動性またはグルタメート作動性神経伝達の機能不全に関連する神経学的及び精神医学的障害やグリシン輸送体GlyT1が関与する疾患の治療に有用であるアゼチジン化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
統合失調症は、消極的症状(感情の鈍麻、自閉、無快感)及び積極的症状(妄想、幻覚、譫妄)と顕著な認識欠損との併存を特徴とする消耗性の精神医学的障害である。統合失調症の病因は現在でもまだ解明されていないが、この疾患は、生物学的要因、環境要因及び遺伝的要因の複雑な相互作用によって発症すると考えられる。フェンシクリジン(PCP)が、統合失調症患者に観察される状態に酷似した精神病的状態をヒトに誘発することは40年以上も前から知見されていた。PCPの主要な作用モードがイオン向性(ionotropic)グルタメート受容体のN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)サブタイプの非競合的アンタゴニストの主要モードであるという知見が一連の研究を促進し、統合失調症のNMDA受容体機能低下モデルの開発を導いた(Jentsch JD and Roth RH,1999 Neuropsychopharmacology,20:201)。
【0002】
哺乳類の中枢神経系における高速グルタメート作動性(glutamatergic)伝達は、主としてイオン向性グルタメート受容体(iGluR)類に作用する興奮性アミノ酸グルタメートによって仲介される。これらのiGluR類は、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)、カイニン酸塩及びNMDA受容体のサブタイプなどの3つの主要なサブクラスを含む(Hollmann M and Heinemann S,1994,Annu.Rev.Neurosci.17:31)。これら3つのサブクラスは、グルタメート結合に応答して開き、分極性の興奮性シナプス後電流を誘導するマルチマーリガンドでゲート化されるカチオンチャンネルである。分子クローニングによって、NMDA受容体ファミリーが2つの主要サブユニットNR1及びNR2から成ることが解明された。更に、NR3と命名された発生的に調節される新規な阻害性サブユニットが最近になって発表された。サブユニットの各セットには高度な分子多様性が存在する。現在までにクローニングされたNR1サブユニット遺伝子は1つだけである。しかしながら、交互スプライシングによって8つの異なるNR1遺伝子サブユニットを産生できる。NR2サブユニットについては対照的に、4つの遺伝子(NR2A,NR2B,NR2C,及びNR2D)がクローニングされ、それらのうちの幾つかは交互スプライシングを示す(Hollmann M and Heinemann S,1994,Annu.Rev.Neurosci.17:31)。これらの複数サブユニットはヘテロマーグルタメートでゲート化されるイオンチャンネルを形成する。天然に産生する受容体のサブユニットの正確な化学量論はいまだ解明されていないが、機能的に活性な受容体−チャンネル複合体が哺乳類発現系で発現するにはNR1及びNR2の両方のサブユニットが必要である。NMDA受容体の活性化にはグルタメート及びグリシンの双方の結合が必要である(Johnson JW and Ascher P,1987,Nature 325:529)。部位特異的な突然変異誘発試験によって判断すると、興味深いことに、これらの2つのコアゴニストの結合部位は別々のサブユニットに存在する(Laube B,Hirai H,Sturgess M,Betz H and Kuhse J,1997,Neuron 18:493)。NR2A及びNR2Bサブユニットには、受容体のN−末端と細胞外ループとの相互作用によってグルタメートに関する結合ポケットが形成される。同様の実験では、グリシン結合部位をNR1サブユニットの相同領域に配置した(Kuryatov A, Laube B, Betz H and Kuhse J,1994,Neuron 12:1291)。サブユニットの実際の組成に依存して、グルタメート及びグリシンは、ナノモルの後半〜マイクロモルの前半の範囲のEC50値でNMDA受容体を活性化する。更に、NMDA受容体の細孔はマグネシウム不透過である。正常静止条件下で、細胞外マグネシウムは細孔内部の部位に結合してチャンネルのマグネシウムブロックを生じ得る。このマグネシウムブロックはチャンネルに強い電圧依存性を与え、これによってNMDA受容体は、電流導通前にグルタメート、グリシンの結合及びシナプス後分極の発生を必要とする同時発生デテクタとして作用できる。特に興味深いのは、精神異常作用薬MK−801、PCP及びケタミンがいずれも、マグネシウム結合部位にオーバーラップする部位に結合することによってNMDA受容体−チャンネルの開チャンネルブロッカーとして作用するという知見である。NMDA受容体サブユニット及び調節部位の豊かな多様性が、生理学的及び薬理学的に異なるヘテロマー受容体の複雑な組合せを提供することは明らかであり、このためNMDA受容体は新規な治療用化合物を設計するための理想的なターゲットとなり得る。
【0003】
NMDA受容体は、シナプス柔軟性、認識、注意及び記憶を非限定例とする様々な神経生理学的現象において、極めて重要な役割を果す(Bliss T and Collingridge W,1993,Nature 361:31;Morris RGMら,1986,Nature 319:774)。精神異常作用薬は、精神運動刺激剤(コカイン、アンフェタミン)、幻覚剤(1SD)及びNMDA受容体アンタゴニスト(PCP、ケタミン)のような広範な薬物クラスを構成する。これらのうちでもNMDA受容体アンタゴニストだけが統合失調症の陽性、陰性及び認識症状のロバストな誘発を惹起すると考えられる。ヒト対象でのケタミン誘発精神病の管理試験、及び、PCPを快感薬として濫用している患者の症状の観察から、NMDA受容体アンタゴニスト誘発精神病と統合失調症との類似性を確信させるリストが得られた(Jentsch JD and Roth RH,1999 Neuropsychopharmacology,20:201)。NMDA受容体アンタゴニストは、双方の臨床的識別が難しくなるほど統合失調症の症状を忠実に模倣する。更に、NMDA受容体アンタゴニストは統合失調症の症状を悪化させ得、また、安定な患者の症状の再発をトリガーし得る。最後に、グリシン、D−シクロセリン及びD−セリンのようなNMDA受容体コアゴニストが統合失調症患者に有益な効果を与えるという知見は、この障害にNMDA受容体の機能低下が関与していること、及び、NMDA受容体の活性化増進が治療効果を与える可能性があることを示唆する(Leiderman Eら,996,Biol.Psychiatry 39:213,Javitt DCら,1994,Am.J.Psychiatry 151:1234,Heresco−Levy U,2000,Int.J.Neuropsychopharmacol.3:243,Tsai Gら,1998,Biol.Psychiatry 44:1081)。動物モデルでの多数の試験は統合失調症のNMDA機能低下説を立証した。NMDA NR1サブユニットを正常レベルの5%しか発現しない突然変異マウスの最新世代は、機能性NMDA受容体のこのような減少が統合失調症に罹患している他の動物モデルで観察される状態に酷似した状態を誘発することを証明した(Mohn ARら,1999,Cell 98:427)。グルタメート経路の機能不全は、統合失調症以外にも、認識欠損、認知症、パーキンソン病、アルツハイマー病及び双極性異常を非限定例とする、ヒト中枢神経系(CNS)の多くの疾患状態に関与していた。
【0004】
NMDA受容体の機能は、コアゴニストであるグリシンの利用能を変更することによって変調できる。このアプローチは、NMDA受容体の活性依存的活性化を維持するという極めて大きい利点を有している。何故なら、グルタメート非存在下ではグリシンのシナプス濃度の増加がNMDA受容体の活性化を生じさせないからである。シナプスのグルタメートレベルは高親和性輸送メカニズムによって高度に維持されるので、活性化シナプスのNMDA成分を強化できるのはグリシン部位の活性化強化のみである。標準的な神経弛緩療法にアドオンとして高用量グリシンを経口投与した臨床試験は、統合失調症患者の症状の改善を示した(Javittら,Int.J.Neuropsychopharmacol.(2001)4:385−391)。外因性グリシンを投与しないでシナプスのグリシンレベルを向上させる1つの方法は、シナプスからグリシン除去を阻止することである。このアプローチが統合失調症の治療に有効であるという証拠は、統合失調症に罹患しているが抗精神病薬に対する応答が乏しい患者にサルコシンを投与した二重盲検プラセボ試験から得られる。陽性、陰性及び認識症状に対する有益な効果が観察され、このことは、グリシンの再取込み阻害が統合失調症治療の合理的アプローチであることを示す。
【0005】
2つの特異的グリシン輸送体GlyT1及びGlyT2が同定され、これらはタウリン、γ−アミノ酪酸(GABA)、プロリン、モノアミン及びオーファン輸送体を含むNa/C1依存性の神経伝達物質輸送体ファミリーに属することが証明された(Smith KEら,1992,Neuron 8:927;Borowsky Bら,1993,Neuron 10:851;Liu QRら,1993,J.Biol.Chem.268:22802;Kim KMら,1994,Mol.Pharmacol.45:608;Morrow JAら,1998,FEBS Lett.439:334;Ne1Son N,1998,J.Neurochem.71:1785)。GlyTl及びGlyT2は様々な種から単離され、アミノ酸レベルの一致は50%しかないことが判明した。これらはまた、哺乳類の中枢神経系では異なる発現パターンを有しており、GlyT2は、脊髄、脳幹及び小脳で発現され、GlyT1はこれらの領域と、皮質、海馬、中隔及び視床のような前脳区域に存在する(Smith KEら,1992,Neuron 8:927;Borowsky Bら,1993,Neuron 10:851;Liu QRら,1993,J.Biol.Chem.268:22802)。細胞レベルでは、GlyT2はラット脊髄のグリシン作動性神経終末によって発現されると報告されたが、GlyT1はグリア細胞によって優先的に発現されると考えられる(Zafra Fら,1995,J.Neurosci.15:3952)。これらの発現試験は、GlyT2が主としてグリシン作動性シナプスでのグリシン取込みを担当し、GlyT1がNMDA受容体発現シナプス近傍でグリシン濃度モニターに関与するという結論を導いた。ラットで行った最近の機能性試験は、強力なインヒビターである(N−[3−(4’−フルオロフェニル)−3−(4’−フェニルフェノキシ)プロピル])サルコシン(NFPS)によるGlyT1遮断がラットのNMDA受容体活性、及び、NMDA受容体依存性の長期増強作用を強化することを示した(Bergeron Rら,1998,PNAS USA 95:15730;Kinney Gら,2003,J.Neurosci.23:7586)。更に、NFPSは、統合失調症患者で欠損していることが公知である知覚ゲーティング尺度であるプレパルス阻害をマウスで強化すると報告されている(Kinney Gら,2003,J.Neurosci.23:7586)。前脳領域におけるGlyT1のこれらの生理学的効果は、GlyT1インヒビターであるサルコシンが統合失調症患者の症状を改善するのに有益な効果を示すという臨床報告(Tsai and Coyle W099/52519)と合わせて、選択的GlyT1取込みインヒビターが新規なクラスの抗精神病薬となることを示す。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、グルタメート作動性神経伝達の機能不全に関連する神経学的及び精神医学的障害ならびにグリシン輸送体GlyT1が関与する疾患の治療に有用であるグリシン輸送体GlyT1の阻害化合物に関する。
【0007】
本発明は、式I:
【0008】
【化10】

[式中、
は、−(CH−R15または−(CO)(CH−R15であり、ここでnは0−6であり、R15は、
(1)R1a、R1b及びR1cで置換されたフェニル、
(2)R1a、R1b及びR1cで置換された複素環、
(3)1−6ハロゲン、ヒドロキシ、−NR1011、R1a、R1b及びR1cで置換されたフェニル、または、R1a、R1b及びR1cで置換された複素環で置換されるかまたは未置換のC1−6アルキル、
(4)C1−6アルキル、1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR1011で置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル、
(5)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR1011で置換されるかまたは未置換の−O−C1−6アルキル、
(6)−CO、ここでRは独立に、
(a)水素、
(b)1−6フルオロで置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、
(c)ベンジル、及び
(d)フェニル
から選択される、
(7)−NR1011、ここでR10及びR11は、独立に
(a)水素、
(b)ヒドロキシ、1−6フルオロまたは−NR1213で置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、ここでR12及びR13は独立に水素及び−C1−6アルキルから選択される、
(c)ヒドロキシ、1−6フルオロまたは−NR1213で置換されるかまたは未置換の−C3−6シクロアルキル、
(d)ベンジル、及び
(e)フェニル
から選択される、
(8)−CO−NR1011
から成るグループから選択され、
1a、R1b及びR1cは独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)(a)1−6ハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、または、
(d)−NR1011
で置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、
(4)1−6ハロゲンで置換されるかまたは未置換の−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、及び
(15)−NO
から成るグループから選択され、
は、
(1)R2a、R2b及びR2cで置換されたフェニル、
(2)R2a、R2b及びR2cで置換された複素環、
(3)1−6ハロゲン、ヒドロキシ、−NR10ll、フェニルまたは複素環で置換されるかまたは未置換のC1−8アルキル、ここでこのフェニルまたは複素環はR2a、R2b及びR2cで置換されている、
(4)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル、
(5)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)、
から成るグループから選択され、
2a、R2b及びR2cは独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)(a)1−6ハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、または
(d) −NR1011
で置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、
(4)1−6ハロゲンで置換されるかまたは未置換の−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、及び
(15)−NO
から成るグループから選択され、
は、
(1)1−6ハロゲン、ヒドロキシル、−NR10ll、または、R2a、R2b及びR2cで置換された複素環で置換されるかまたは未置換のC1−6アルキル、
(2)1−6ハロゲン、ヒドロキシルまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル、
(3)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)、及び
(4)−NRl0ll
から成るグループから選択され、
及びRは独立に
(1)水素、及び
(2)ハロゲンまたはヒドロキシルで置換されるかまたは未置換のC1−6アルキルから成るグループから選択されるか、または、RとRとが一緒にC3−6シクロアルキル環を形成しており、
Aは、
(1)−O−、及び、
(2)−NR10
から成るグループから選択され、
mは0または1であり、mが0のときRはカルボニルに直接結合している]
の化合物、及び医薬的に許容されるその塩並びにそれらの個別の鏡像異性体及びジアステレオマーに向けられている。
【0009】
本発明の1つの実施態様は、式Ia:
【0010】
【化11】

[式中のR1a、R1b、R1c、R、R、R、R、A及びmは本明細書中で定義される通り]
の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
本発明の代替的な実施態様は、式Ia’:
【0011】
【化12】

[式中のR1a、R1b、R1c、R、R、R、R、A及びmは本明細書中で定義される通り]
の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
本発明の代替実施態様は、式Ia”:
【0012】
【化13】

[式中のR1a、R1b、R1c、R、R、R、R、A及びmは本明細書中で定義される通り]
の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
本発明の代替的な実施態様は、式Ia”’:
【0013】
【化14】

[式中のR、R、R、R、A及びmは本明細書中で定義される通り]
の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
【0014】
本発明の代替実施態様は、式Ia””:
【0015】
【化15】

[式中のR、R、R、R、A及びmは本明細書中で定義される通り]
の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
【0016】
本発明の1つの実施態様では、Rが、
(1)ハロゲンまたは−C1−6アルキルで置換されるかまたは未置換のフェニル、
(2)ハロゲンまたは−C1−6アルキルで置換されるかまたは未置換のピリジル、
(3)−(CH−シクロプロピル、ここでnは1−3である、及び
(4)−(CO)−モルホリニル
から成るグループから選択された化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
【0017】
更に本発明のこの実施態様のうちには、Rが、
(1)フェニル、
(2)ピリジル、
(3)−(CH)−シクロプロピル、及び、
(4)−(CO)−モルホリニル
から成るグループから選択される化合物が含まれる。
【0018】
更に本発明のこの実施態様のうちには、Rが2−ピリジルである化合物が含まれる。
【0019】
本発明の1つの実施態様は、式Ib:
【0020】
【化16】

[式中、RはC1−6アルキルであり、R、R、R、X及びmは本明細書中で定義される通り]の化合物または医薬的に許容されるその塩、または、それらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
【0021】
本発明の1つの実施態様は、RがC1−3アルキルであり、Rが水素またはC1−3アルキルである化合物を含む。
【0022】
この実施態様のうちには、Rが(S)立体配置のC1−3アルキルであり、Rが水素である化合物が含まれる。
【0023】
また、この実施態様のうちには、Rがメチルであり、Rが水素である化合物も含まれる。
【0024】
また、この実施態様のうちには、Rがメチルであり、Rがメチルである化合物も含まれる。
【0025】
また、この実施態様のうちには、Rが水素であり、Rが水素である化合物も含まれる。
【0026】
本発明の1つの実施態様は、mが0である化合物を含む。
【0027】
本発明のこの実施態様のうちには、式Ic:
【0028】
【化17】

[式中、R、R、R、R及びRは本明細書中で定義される通り]
の化合物または医薬的に許容されるその塩、または、それらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーが含まれる。
【0029】
更に本発明のこの実施態様は、Rが、
(1)R2a、R2b及びR2cで置換されたフェニル、
(2)R2a、R2b及びR2cで置換されたチエニル、
(3)1−6ハロゲン、フェニルまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC1−8アルキル、ここでフェニルはR2a、R2b及びR2cで置換されている、
(4)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル
から成るグループから選択され、
2a、R2b及びR2Cは独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−OCHF
(8)−SCF
(9)−SCHF、及び
(10)−NH
から成るグループから選択される化合物を含む。
【0030】
更に本発明のこの実施態様は、Rがフェニルまたはチエニルであり、R2a、R2b及びR2cが独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−OCHF
(8)−SCF
(9)−SCHF、及び
(10)−NH
から成るグループから選択される化合物を含む。
【0031】
更に本発明のこの実施態様は、Rがフェニルであり、R2a、R2b及びR2cが独立に、
(1)水素、
(2)フルオロ、
(3)クロロ、
(4)ブロモ、
(5)−OCH
(6)−CF、及び
(7)−NH
から成るグループから選択される化合物を含む。
【0032】
また、本発明のこの実施態様のうちには、Rがフェニルであり、R2a、R2b及びR2cが独立に、
(1)水素、
(2)フルオロ、
(3)クロロ、
(4)ブロモ
から成るグループから選択される化合物が含まれる。
【0033】
また、本発明のこの実施態様のうちには、式Id:
【0034】
【化18】

[式中、R、R2a、R2b、R、R、R及びR5は本明細書中で定義される通り]の化合物、及び医薬的に許容されるその塩及びそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーも含まれる。
【0035】
また、本発明のこの実施態様のうちには、式Id’:
【0036】
【化19】

[式中、R、R2a、R2b、R2c及びRは本明細書中で定義される通り]の化合物及び医薬的に許容されるその塩及びそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーも含まれる。
【0037】
また、本発明のこの実施態様のうちには、式Id”:
【0038】
【化20】

[式中、R、R2a、R2b、R2c、R及びRは本明細書中で定義される通り]の化合物及び医薬的に許容されるその塩及びそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーも含まれる。
【0039】
本発明の1つの実施態様は、Aが−NR10−である化合物を含む。
【0040】
本発明の1つの実施態様は、式If:
【0041】
【化21】

[式中、R、R、R、R、R10及びR11は本明細書中で定義される通り]の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーを含む。
【0042】
本発明のこの実施態様のうちには、式If’:
【0043】
【化22】

[式中、R、R、R10及びR11は本明細書中で定義される通り]の化合物及び医薬的に許容されるその塩並びにそれらの個別の鏡像異性体及びジアステレオマーが含まれる。
【0044】
本発明の1つの実施態様は、Aが−NR10−である化合物を含む。
【0045】
本発明のこの実施態様のうちには、式Ig:
【0046】
【化23】

[式中、R、R、R、R、R及びR10は本明細書中で定義される通り]の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーが含まれる。
【0047】
本発明の1つの実施態様は、式Ig’:
【0048】
【化24】

[式中、R、R、R及びR10は本明細書中で定義される通り]の化合物及び医薬的に許容されるその塩並びにそれらの個別の鏡像異性体及びジアステレオマーを含む。
【0049】
本発明の1つの実施態様はAが−O−である化合物を含む。
【0050】
本発明のこの実施態様のうちには、式Ih:
【0051】
【化25】

[式中、R、R、R、R及びRは本明細書中で定義される通り]の化合物または医薬的に許容されるその塩またはそれらの個別の鏡像異性体もしくはジアステレオマーが含まれる。
【0052】
本発明の1つの実施態様は、Rが、C1−6アルキル、または、−N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)である化合物を含む。
【0053】
本発明のこの実施態様のうちには、Rが−CHCHである化合物が含まれる。
【0054】
本発明のこの実施態様のうちには、Rが−(CHCHである化合物が含まれる。
【0055】
本発明のこの実施態様のうちには、Rがシクロプロピルである化合物が含まれる。
【0056】
本発明の特定の実施態様は、本明細書の実施例の表題化合物、及び医薬的に許容されるそれらの塩とそれらの個別の鏡像異性体及びジアステレオマーから成るグループから選択される化合物を包含する。
【0057】
本発明の化合物は1つまたは複数のキラル中心を有することができ、従って、ラセミ化合物、ラセミ混合物、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物及び個別のジアステレオマーの形態で生成し得る。分子に存在する種々の置換基の種類次第では追加の非対称中心が存在することもある。このような非対称中心の各々が独立に2つの光学異性体を生成し、混合物の形態及び純粋または部分的に純粋な化合物の形態を有し得る光学異性体及びジアステレオマーは全て本発明の範囲に包含されると理解されたい。本発明はこれらの化合物のこのような異性形態の全てを含意する。式Iは化合物のこのクラスの構造を好ましい化学量論を含まないで示す。
【0058】
これらのジアステレオマーの個別の合成またはそれらのクロマトグラフィー分離は、本明細書中に開示した方法に適切な修正を加えることによって当分野で公知の手順で行うことができる。それらの絶対的化学量論は、既知の絶対的立体配置の非対称中心を有している試薬によって、必要に応じて誘導体化した結晶質生成物または結晶質中間体のx線結晶学によって決定できる。
【0059】
所望の場合には、個別の鏡像異性体が単離されるように化合物のラセミ混合物を分離してもよい。分離は、例えば化合物のラセミ混合物を鏡像異性的に純粋な化合物にカップリングさせる当分野で公知の方法によってジアステレオマー混合物を形成し、次いで分別結晶化またはクロマトグラフィーのような標準方法によって個別のジアステレオマーを分離する手順で行う。結合反応はしばしば、鏡像異性的に純粋な酸または塩基を使用して塩を形成させる反応である。次に、付加されたキラル残基の開裂によってジアステレオマー誘導体を純粋な鏡像異性体に変換する。また、キラル固定相を使用する当分野で公知のクロマトグラフィー方法によって化合物のラセミ混合物を直接分離してもよい。
【0060】
あるいは、既知の立体配置の光学的に純粋な出発材料または試薬を使用する立体選択的合成によって化合物のいずれかの鏡像異性体を当分野で公知の方法で得ることもできる。
【0061】
当業者には明らかであろうが、本明細書中に使用したハロまたはハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを含意する。同様に、C1−6アルキルのようなC1−6は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を線状または分枝状の配列で有している基を表すと定義される。従ってC1−8アルキルは具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルを含む。置換基で独立に置換されていると指定された基は多数のこのような置換基で独立に置換されていてもよい。本明細書中に使用した“複素環”という用語は、不飽和及び飽和複素環部分の双方を包含し、不飽和複素環部分(即ち、“ヘテロアリール”)は、ベンゾイミダゾリル、ベンズイミダゾロニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル及びそれらのN−オキシドを包含し、飽和複素環部分は、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピリジン−2−オニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンズオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、及び、メチレンジオキシベンゾイル、及び、それらのN−オキシドを包含する。本発明の実施態様で、複素環は、ピリジルもしくはピリミジルのような不飽和複素環部分(“ヘテロアリール”)またはピペリジンもしくはアゼチジンのような飽和複素環部分である。
【0062】
“医薬的に許容される塩”という用語は、無機または有機の塩基及び無機または有機の酸のような医薬的に許容される無毒性塩基または酸から製造された塩を表す。無機塩基に由来の塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛、などの塩である。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウムの塩が特に好ましい。固体形態の塩は2つ以上の結晶構造で存在でき、また水和物の形態でもよい。医薬的に許容される有機の無毒性塩基に由来の塩は、第一級、第二級及び第三級アミン、天然産生置換アミンのような置換アミン、環状アミンの塩、及び、塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどを包含する。本発明の化合物が塩基性であるとき、無機酸及び有機酸のような医薬的に許容される無毒性酸から塩が製造され得る。このような酸は、酢酸、ベンゼスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコ酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、などである。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、フマル酸及び酒石酸が特に好ましい。本明細書中に使用された本発明の化合物という用語が医薬的に許容される塩も含意することは理解されよう。
【0063】
本発明の代表例では、実施例及び本明細書中に開示した化合物を使用する。本発明の範囲内の具体的な化合物は、後出の実施例に開示した化合物及び医薬的に許容されるそれらの塩及びそれらの個別のジアステレオマーから成るグループから選択された化合物を包含する。
【0064】
表題化合物は、グリシン輸送体GlyT1活性を阻害することが必要な哺乳動物などの患者に有効量の化合物を投与する段階を含む、グリシン輸送体GlyT1活性阻害方法に有用である。本発明は、本明細書中に開示された化合物をグリシン輸送体GlyT1活性のインヒビターとしての使用に向けられている。霊長類、特にヒトに加えて、様々な他の哺乳類を本発明の方法で治療できる。
【0065】
本発明は更に、本発明の化合物と医薬的担体または希釈剤とを組合せる段階を含む、ヒト及び動物のグリシン輸送体GlyT1活性阻害医薬の製造方法に向けられている。
【0066】
本発明方法で治療される対象は一般に、グリシン輸送体GlyT1活性の阻害が望まれる哺乳動物、好ましくはヒトの男性または女性である。“治療有効量”という用語は、組織、系、動物またはヒト体内で研究者、獣医師、内科医または他の臨床医が求めるような生物学的または医学的な応答を誘発する表題化合物の量を意味する。現在障害を患っている患者の治療またはこのような障害を患っている患者の予防的治療を有効量の本発明の化合物で行うことによって神経学的または精神医学的障害に影響を及ぼすことができることは当業者に理解されよう。本明細書中に使用した“治療”及び“治療する”という用語は、本明細書中に記載した神経学的及び精神医学的障害の進行の遅延、中断、制止、管理または停止をもたらす全てのプロセスを表すが、障害症状全部の完全な除去を必ずしも意味しない。該用語はまた、特にこのような疾患または障害の素因がある患者で上記の状態の進行を遅延させるかまたは危険を抑制する予防的治療も含意する。
【0067】
本明細書中に使用した“組成物”という用語は、特定成分を特定の量で含む製品、及び、特定量の特定成分の組合せから直接または間接に得られる製品を包含する。医薬組成物に関するこのような用語は、(1種または複数の)有効成分と、担体を構成する(1種または複数の)不活性成分とを含む製品、及び、2種類以上の成分の組合せ、複合化または凝集から、または、1種以上の成分の解離から、または、1種以上の成分の別のタイプの反応もしくは相互作用から直接または間接に得られる製品を含意する。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬的に許容される担体とを混合することによって製造されたいかなる組成物も包含する。“医薬的に許容される”という用語は、担体、希釈剤または賦形剤が配合物の他の成分と相溶性でなければならないこと、及び、そのレシピエントに有害でないことを意味する。
【0068】
化合物“の投与”または“を投与する”という用語は、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを治療が必要な個体に与えることを意味すると理解されたい。
【0069】
グリシン輸送体活性、特にGlyT1活性を阻害する本発明の化合物の有効性は、当分野で公知の方法によって証明し得る。GlyT1を内在的に発現しているヒト胎盤絨毛癌細胞(JAR細胞(ATCC No.HTB−144)を、96ウェルのCytostarシンチレーティングマイクロプレート(Amersham Biosciences)に入れ、10%ウシ胎仔血清を含有しているRPMI 1640培地中でペニシリン(100μg/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)の存在下に培養した。アッセイ前に、5%COの湿潤雰囲気中、37℃で細胞を40−48時間増殖させた。培養培地をCytostarプレートから除去し、本発明の化合物を添加または不添加の30μlのTB1Aバッファ(120mMのNaCl、2mMのKCl、1mMのCaCl、1mMのMgCl、10mMのHEPES、5mMのL−アラニン,トリス塩基でpH7.5に調整)と共にJAR細胞を1分間インキュベートした。次に、TB1Aで希釈した30μlの[14C]−グリシンを各ウェルに最終濃度10マイクロモルになるまで加えた。室温で3時間インキュベーション後、Cytostarシンチレーティングマイクロプレートを密閉し、Top Countシンチレーションカウンター(Packard)でカウントした。10mMの非標識グリシンの存在下で[14C]−グリシンの非特異的吸収を定量した。非特異的吸収を定量するために10mMの非標識タウリンを使用した以外は同じプロトコルに従って[14C]タウリン吸収実験を行った。力価を測定するために、一連の濃度の本発明の化合物を細胞に添加し、次いで一定濃度の[14C]グリシンを添加した。[14C]グリシンの特異的吸収を50%阻害した本発明の化合物の濃度(IC50値)をアッセイデータから非線形曲線適合によって決定した。
【0070】
特に、後出の実施例の化合物は、上記アッセイにおいて[14C]グリシンの特異的吸収を阻害する活性を一般に約10マイクロモル未満のIC50値で有していた。本発明の範囲内の好ましい化合物は、上記アッセイで[14C]グリシンの特異的吸収を阻害する活性を約1マイクロモル未満のIC50値で有していた。これらの化合物は、(JAR細胞中のタウリン輸送体TauTによる)[14C]タウリン吸収に比べて(JAR細胞中のGlyT1による)[14C]グリシン吸収に選択的であった。このような結果は、GlyT1輸送体活性のインヒビターとして使用された化合物の固有活性を表す。
【0071】
NMDA受容体は広範囲のCNSプロセスの中心であり、ヒトまたは他の種の多様な疾患状態で1つの役割を果している。GlyT1輸送体の作用はNMDA受容体周囲のグリシンの局所濃度に影響を及ぼす。選択的GlyT1インヒビターはシナプスからのグリシン除去を減速させ、シナプスのグリシンレベルを上昇させる。これがNMDA受容体のグリシン結合の占有率を増加させ、前シナプス終末からのグルタメート放出後のNMDA受容体の活性を増加させる。NMDA受容体が効率的に機能するためにはある量のグリシンが必要なので、この局所濃度の変化はNMDA仲介性神経伝達に影響を及ぼす。NMDA仲介性神経伝達の変化は、認知症、抑鬱、及び、例えば統合失調症のような精神病、及び、例えば注意不足症や自閉症のような学習及び記憶障害などの幾つかの神経精神医学的障害に関与していた。
【0072】
本発明の化合物は、以下の状態または疾患の1種以上を含むグルタメート作動性神経伝達機能不全に関連する様々な神経医学的及び精神医学的障害の治療に有効性を有する:統合失調症または精神病、例えば、統合失調症(妄想型、解体型、緊張型または分類不能型)、精神分裂病型障害、分裂情動障害、妄想性異常症、一時的精神異常症、共有精神異常症、全身の病的状態が原因の精神異常症、物質誘発または薬物誘発(フェンシクリジン、ケタミン及び他の解離性麻酔薬、アンフェタミン及び他の精神刺激剤及びコカイン)精神病、精神異常症、情動障害に付随する精神病、一時的反応性精神病、分裂情動精神病、“精神分裂スペクトル”障害例えば分裂病質もしくは分裂病性人格障害、または、統合失調症及び他の精神病の陽性及び陰性の双方の症状を含む精神病に付随する病気(例えば、主要うつ病、躁鬱異常性(双極性)障害、アルツハイマー病、外傷後ストレス症候群);認識障害、例えば、痴呆(アルツハイマー病、虚血、多発梗塞性痴呆、外傷、血管的問題または卒中、HIV疾患、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、クロイツフェルト−ヤコブ病、分娩時低酸素症、他の全身の病的状態または物質濫用));譫妄、健忘症または加齢関連認識減退;不安障害、例えば、急性ストレス障害、広場恐怖症、一般的不安異常症、強迫異常症、パニック発作、パニック異常症、外傷後ストレス異常症、隔離不安異常症、社交恐怖症、特定恐怖症、物質誘発不安症、全身の病的状態が原因の不安;物質関連障害及び耽溺行為(例えば、物質誘発譫妄、持続性痴呆、持続性健忘症、精神病的障害または不安症;アルコール、アンフェタミン、大麻、コカイン、幻覚剤、吸入剤、ニコチン、オピオイド、フェンシクリジン、鎮静剤、催眠薬または不安寛解剤などの物質に対する耐性、依存、禁断);肥満、神経性過食症、強迫摂食障害;双極性障害、情緒異常症例えば抑鬱障害;抑鬱、例えば、単極性抑鬱、季節的抑鬱及び分娩後抑鬱、月経前症候群(PMS)及び月経前気分不快症(PDD)、全身の病的状態が原因の情緒異常症、物質誘発情緒異常症;学習障害、ひねくれ発達異常症例えば自閉症、注意不足症例えば注意不足活動亢進症(ADHD)、行状異常症;NMDA−受容体関連障害、例えば、自閉症、抑鬱、良性健忘症、小児期学習障害及びclosed head傷害;運動障害、例えば、無動症、無動−硬直症候群(パーキンソン病、薬物誘発パーキンソニズム、脳炎後パーキンソニズム、進行性核上麻痺、多系統萎縮症、皮質基底変性、パーキンソニズム−A1S痴呆コンプレックス、基底神経節石灰化)、薬剤誘発パーキンソニズム(神経遮断薬誘発パーキンソニズム、神経遮断悪性症候群、神経遮断薬誘発急性ジストニー(筋緊張異常)、神経遮断薬誘発急性アカシジア(静坐不能)、神経遮断薬誘発遅発性ジスキネジー(異常運動症)、薬物誘発姿勢振戦)、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、癲癇、筋肉痙攣、筋肉の痙直または弱化に付随する障害例えば振戦;ジスキネジー[振戦(安静時振戦、姿勢性振戦、企図時振戦)、舞踏病(シデナム舞踏病、ハンチントン舞踏病、良性遺伝性舞踏病、神経有棘赤血球増加症、症候性舞踏病、薬物誘発舞踏病及び片側バリスム)、ミオクローヌス(筋間代痙攣)(全身ミオクローヌス及び局所ミオクローヌス)、チック(単純チック、複合チック、症候性チック)、ジストニー(全身ジストニー、例えば、特発性ジストニー、薬物誘発ジストニー、症候性ジストニー及び発作性ジストニー、並びに、局所ジストニー、例えば、眼瞼痙攣、口顎筋ジストニー、痙攣性発声障害、痙攣性斜頸、軸性ジストニー、ジストニー性書痙及び片麻痺性ジストニー)];尿失禁;神経損傷、例えば、視神経損傷、網膜症または眼の黄斑変性、耳鳴り、難聴、聴力喪失、脳浮腫;嘔吐;不眠症及びナルコレプシーのような睡眠障害。
【0073】
上記障害のうち、統合失調症、双極性障害、単極性抑鬱、季節性抑鬱及び分娩後抑鬱などの抑鬱、月経前症候群(PMS)及び月経前気分不快症(PDD)、学習障害、自閉症のようなひねくれ発達異常症、注意不足/活動亢進異常症のような注意障害、自閉、トゥレット病のようなチック症、恐怖症及び外傷後ストレス障害のような不安障害、痴呆、AIDS痴呆、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、痙直、ミオクローヌス、筋肉痙攣、耳鳴り及び難聴、聴力喪失に付随する認識障害の治療が特に重要である。
【0074】
特定の実施態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物を要治療患者に投与する段階を含む、認識障害の治療方法を提供する。具体的な認識障害は、痴呆、譫妄、健忘症及び加齢関連認識減退である。現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの改訂第四版(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)が、痴呆、譫妄、健忘症及び加齢関連認識減退のような認識障害の診断ツールを提供している。本明細書中に使用した“認識障害”という用語は、DSM−IV−TRに記載されるような精神障害の治療を含む。精神障害の代替的命名法、疾病分類表及び分類系が存在すること、また、これらの系が医学及び科学の進歩と共に発展することが当業者には理解されよう。従って、“認識障害”という用語は、他の診断ソースに記載されている同様の障害を含意する。
【0075】
別の特定実施態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物を要治療患者に投与する段階を含む、不安障害の治療方法を提供する。具体的な不安障害は、全身性不安障害、強迫異常症、パニック発作である。現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの改訂第四版(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)が、全身性不安障害、強迫異常症、パニック発作のような不安障害の診断ツールを提供している。本明細書中に使用した“不安障害”という用語は、DSM−IV−TRに記載されるような精神障害の治療を含む。精神障害の代替的命名法、疾病分類表及び分類系が存在すること、また、これらの系が医学及び科学の進歩と共に発展することが当業者には理解されよう。従って、“不安障害”という用語は、他の診断ソースに記載されている同様の障害を含意する。
【0076】
別の特定実施態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物を要治療患者に投与する段階を含む、統合失調症または精神病の治療方法を提供する。具体的な統合失調症または精神病は、妄想型、解体型、緊張型または分類不能型統合失調症及び物質誘発精神病的異常症である。現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの改訂第四版(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)が、妄想型、解体型、緊張型または分類不能型統合失調症及び物質誘発精神病的異常症の診断ツールを提供している。本明細書中に使用した“統合失調症または精神病”という用語は、DSM−IV−TRに記載されるような精神障害の治療を含む。精神障害の代替的命名法、疾病分類表及び分類系が存在すること、また、これらの系が医学及び科学の進歩と共に発展することが当業者には理解されよう。従って、“統合失調症または精神病”という用語は、他の診断ソースに記載されている同様の障害を含意する。
【0077】
別の特定実施態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物を要治療患者に投与する段階を含む、物質関連障害及び耽溺行為の治療方法を提供する。具体的な物質関連障害及び耽溺行為は、持続性痴呆、持続性健忘症、精神病的障害または物質濫用によって誘発される不安症;濫用物質に対する耐性、依存、禁断である。現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの改訂第四版(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)が、持続性痴呆、持続性健忘症、精神病的障害または物質濫用によって誘発される不安症;濫用物質に対する耐性、依存、禁断のような物質関連障害及び耽溺行為の診断ツールを提供している。本明細書中に使用した“物質関連障害及び耽溺行為”という用語は、DSM−IV−TRに記載されるような精神障害の治療を含む。精神障害の代替的命名法、疾病分類表及び分類系が存在すること、また、これらの系が医学及び科学の進歩と共に発展することが当業者には理解されよう。従って、“物質関連障害及び耽溺行為”という用語は、他の診断ソースに記載されている同様の障害を含意する。
【0078】
別の特定実施態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物を要治療患者に投与する段階を含む、疼痛の治療方法を提供する。具体的な疼痛の例は、骨及び関節の痛み(骨関節炎)、反復運動痛、歯痛、癌の痛み、筋膜性疼痛(筋肉傷害、線維筋肉痛)、手術関連疼痛(外科手術全般、婦人科)、慢性疼痛及び神経性疼痛である。
【0079】
別の特定実施態様では、本発明は、有効量の本発明の化合物を要治療患者に投与する段階を含む、過食に付随する肥満または摂食障害及びそれらに付随する合併症の治療方法を提供する。現在、肥満は、International Classification of Diseases and Related Health Problemsの第10版(ICD−10)(1992 World Health Organization)に全身の病的状態として含まれている。Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの改訂第四版(DSM−IV−TR)(2000,American Psychiatric Association,Washington DC)が、病的状態に影響を及ぼす心理的要因の存在下の肥満を含む診断ツールを提供している。本明細書中に使用した“過食に付随する肥満または摂食障害”という用語は、ICD−10及びDSM−IV−TRに記載されるような病的状態の治療を含む。全身の病的状態の代替的命名法、疾病分類表及び分類系が存在すること、また、これらの系が医学及び科学の進歩と共に発展することが当業者には理解されよう。従って、“過食に付随する肥満または摂食障害”という用語は、他の診断ソースに記載されている同様の障害を含意する。
【0080】
表題化合物は更に、本明細書中に示した疾患、障害及び状態を予防、治療、管理、改善またはその危険性を低減するための方法に有用である。
【0081】
表題化合物は更に、グリシン輸送体GlyT1活性のインヒビターのような他の薬剤と組合せて、上記に挙げた疾患、障害及び状態を予防、治療、管理、改善またはその危険性を低減するための方法に有用である。
【0082】
本発明の化合物は、本発明の化合物または他の薬剤が有効性を発揮する上記に挙げた疾患または状態を予防、治療、管理、改善またはその危険性を低減するために、薬剤の併用がいずれか1つの薬剤の単独使用よりも安全で効果的である場合には1種以上の他の薬剤と併用し得る。このような(1種または複数の)他の薬剤は、それらの常用の経路及び量で本発明の化合物と同時または順次に投与するとよい。本発明の化合物を1種以上の他の薬剤と同時に使用する場合には、このような他の薬剤と本発明の化合物とを含有している単一剤形の医薬組成物が好ましい。しかしながら、本発明の化合物と1種以上の他の薬剤とをオーバーラップする別々の投与計画で投与する治療方法も併用療法に包含される。1種以上の他の有効成分と併用する場合には、本発明の化合物及び他の有効成分は、各々が単独で使用されるときよりも低い用量で使用できると考えられる。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1種以上の他の有効成分を含有する医薬組成物を包含する。
【0083】
上記併用には、本発明の化合物と1種類の他の活性化合物との併用だけでなく、2種類以上の他の活性化合物との併用も含まれる。同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有効な疾患または状態の予防、治療、管理、改善、またはその危険性を低減するために使用される他の薬剤と併用し得る。このような他の薬剤は、それらの常用の経路及び量で本発明の化合物と同時または順次に投与するとよい。本発明の化合物を1種以上の他の薬剤と同時に使用するとき、本発明の化合物に加えてこのような他の薬剤を含有する医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物に加えて1種以上の他の有効成分を含有する医薬組成物も包含する。
【0084】
本発明の化合物対第二有効成分の重量比は、各成分の有効用量に応じて変更できる。一般には各成分の有効用量を使用する。従って、例えば、本発明の化合物を他の薬剤と併用するとき、本発明の化合物対他の薬剤の重量比は一般には約1000:1〜約1:1000、好ましくは約200:1〜約1:200の範囲であろう。本発明の化合物と複数の他の有効成分との組合せも一般的に上記の範囲内であろうが、どの場合にも、各有効成分の有効用量を使用しなければならない。
【0085】
このような併用では、本発明の化合物と他の有効薬剤とを別々に投与してもよく、または、合体させて投与してもよい。更に、一方の要素の投与が他方の(1種または複数の)薬剤の投与の前、同時または後のいずれでもよい。
【0086】
従って、表題化合物は、単独で使用してもよく、対象適応症に有効であることが判っている他の薬剤と併用してもよく、あるいは、受容体や酵素に影響を及ぼして本発明の化合物の有効性、安全性、利便性を増強するかまたは望ましくない副作用や毒性を減少させる他の薬物と併用してもよい。表題化合物及び他の薬剤は、共存療法としてまたは固定配合薬として同時投与し得る。
【0087】
1つの実施態様において表題化合物は、抗アルツハイマー薬、ベータ−セクレターゼインヒビター、ガンマ−セクレターゼインヒビター、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、イブプロフェンのようなNSAID類、ビタミンE、及び、抗アミロイド抗体と併用し得る。
【0088】
別の実施態様において表題化合物は、鎮静剤、催眠薬、不安寛解剤、抗精神病薬、抗不安薬、シクロピロロン、イミダゾピリジン、ピラゾロピリミジン、弱トランキライザー、メラトニンアゴニスト及びアンタゴニスト、メラトニン作動薬、ベンゾジアゼピン、バルビツレート、5HT−2アンタゴニストなど、例えば:アジナゾラム、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミスルプリド、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アリピプラゾール、ベンタゼパム、ベンズオクタミン、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブスプリオン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクローラル、クローラルベタイン、クローラルヒドレート、クロミプラミン、クロナゼパム、クロペリドン、クロラゼパート、クロルジアゼポキシド、クロルエタン、クロルプロマジン、クロザピン、シプラゼパム、デシプラミン、デクスクラモール、ジアゼパム、ジクローラルフェナゾン、ジバルプロエックス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、エスタゾラム、エトクロルビノール、エトミダート、フェノバム、フルニトラゼパム、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルラゼパム、フルボキサミン、フルオキセチン、フォサゼパム、グルテチミド、ハラゼパム、ハロペリドール、ヒドロキシジン、イミプラミン、リチウム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフラー、ミダゾラム、ネファゾドン、ニソバメート、ニトラゼパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロメタジン、プロポフォル、プロトリプチリン、クアゼパム、クエチアピン、レクラゼパム、リスペリドン、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクローン、テマゼパム、チオリダジン、チオチキセン、トラカゾラート、トラニルシプロマイン、トラゾドン、トリアゾラム、トレピパム、トリセタミド、トリクロフォス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、ベンラファキシン、ザレプロン、ジプラシドン、ゾラゼパム、ゾルピデム、及び、それらの塩、それらの組合せ、などと併用してもよく、または表題化合物の投与を、光治療もしくは電気刺激のような物理療法と併用してもよい。
【0089】
別の実施態様において表題化合物は、レボドパ(カルビドパまたはベンセラジドのような選択的脳外デカルボキシラーゼインヒビター添加または不添加)、ビペリデン(場合によっては塩酸塩または乳酸塩の形態)及びトリヘキシルフェニジル(ベンズヘキソール)塩酸塩のような抗コリン作動薬、エンタカポーンのようなCOMTインヒビター、MOA−Bインヒビター、抗酸化剤、A2aアデノシン受容体アンタゴニスト、コリン作動性アゴニスト、NMDA受容体アンタゴニスト、セロトニン受容体アンタゴニスト、アレンテモール、ブロモクリプチン、フェノルドパム、リスリド、ナキサゴリド、ペルゴリド及びプラミペキソールのようなドーパミン受容体アゴニストと併用し得る。ドーパミンアゴニストが医薬的に許容される塩の形態、例えば、アレンテモールヒドロブロミド、ブロモクリプチンメシラート、フェノルドパムメシラート、ナキサゴリド塩酸塩、ペルゴリドメシラートでもよいことは理解されよう。リスリド及びプラミペキソールは通常、非塩形態で使用される。
【0090】
別の実施態様において表題化合物は、フェノチアジン、チオキサンテン、複素環式ジベンズアゼピン、ブチロフェノン、ジフェニルブチルピペリジン及びインドロンクラスの神経遮断薬と併用し得る。フェノチアジンの適例は、クロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン及びトリフルオペラジンである。チオキサンテンの適例は、クロルプロチキセン及びチオチキセンである。ジベンズアゼピンの一例はクロザピンである。ブチロフェノンの一例はハロペリドールである。ジフェニルブチルピペリジンの一例はピモジドである。インドロンの一例はモリンドロンである。他の神経遮断薬としては、ロキサピン、スルピリド及びリスペリドンがある。表題化合物と併用するときの神経遮断薬は、医薬的に許容される塩の形態でよく、例えば、塩酸クロルプロマジン、メソリダジンベシラート、塩酸チオリダジン、マレイン酸アセトフェナジン、塩酸フルフェナジン、エナント酸フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、塩酸チオチキセン、デカン酸ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、塩酸モリンドンであることは理解されよう。ペルフェナジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ハロペリドール、ピモジド及びリスペリドンは非塩形態で使用されるのが普通である。従って、表題化合物は、アセトフェナジン、アレンテモール、アリピプラゾール、アミスルプリド、ベンズヘキソール、ブロモクリプチン、ビペリデン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロザピン、ジアゼパム、フェノルドパム、フルフェナジン、ハロペリドール、レボドパ、レボドパとベンセラジド、レボドパとカルビドパ、リスリド、ロキサピン、メソリダジン、モリンドロン、ナキサゴリド、オランザピン、ペルゴリド、ペルフェナジン、ピモジド、プラミペキソール、クエチアピン、リスペリドン、スルピリド、テトラベナジン、トリヘキシルフェニジル、チオリダジン、チオチキセン、トリフルオペラジンまたはジプラシドンと併用し得る。
【0091】
別の実施態様において表題化合物は、抗抑鬱剤または抗不安剤、例えば、ノルエピネフリン再吸収インヒビター(第三級アミン三環系及び第二級アミン三環系など)、選択的セロトニン再吸収インヒビター(SSRI)、モノアミンオキシダーゼインヒビター(MAOI)、モノアミンオキシダーゼの可逆性インヒビター(RIMA)、セロトニン及びノルアドレナリンの再吸収インヒビター(SNRI)、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニスト、α−アドレノレセプターアンタゴニスト、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、異型抗抑鬱剤、ベンゾジアゼピン、5−HT1Aアゴニストまたはアンタゴニスト、特に5−HT1A部分アゴニスト、及び、コルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニストと併用し得る。具体的な薬剤は、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミン及びトリミプラミン;アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン及びプロトリプチリン;フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン及びセルトラリン;イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン及びセレジリン;モクロベミド;ベンラファキシン;デュロキセチン;アプレピタント;ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドン及びビロキサジン;アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム及びプラゼパム;ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロン及びイプサピロン、及び、医薬的に許容されるそれらの塩である。
【0092】
本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、槽内注射または注入、皮下注射、または、インプラント)、噴霧吸入、鼻腔内、膣内、直腸内、舌下または表在的投与経路によって投与でき、各投与経路に適した医薬的に許容される慣用の無毒性担体、アジュバント及びビヒクルを含有する適正な投与単位配合物として単独でまたは組合せて配合し得る。マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、サルなどのような温血動物の治療に加えて、本発明の化合物はヒトに使用するために有効である。
【0093】
本明細書中に使用した“組成物”という用語は、特定成分を所定の量または割合で含む製品、及び、特定した量の特定成分の組合せから直接または間接に得られる製品を含意する。医薬組成物に関するこの用語は、1種以上の有効成分と不活性成分のような任意の担体とを含む製品、並びに、2種以上の成分の配合、複合化もしくは凝集、または、1種以上の成分の解離、または、1種以上の成分の別のタイプの反応もしくは相互作用から直接または間接に得られる製品を含意する。一般に医薬組成物は、有効成分を液体担体または微細分割固体担体またはこれら双方と均一かつ均質に会合させ、次いで必要ならば製品を所望の配合物に形成することによって調製できる。有効表題化合物は、疾患の進行または症状に所望の効果を生じるために十分な量で医薬組成物に含有される。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と医薬的に許容される担体とを混合することによって調製した任意の組成物を包含する。
【0094】
経口使用するための医薬組成物は、製薬業界で公知の方法に従って調製でき、このような組成物は、医薬的にエレガントで服用し易い製剤とするための甘味料、嬌味料、着色料及び保存料から成るグループから選択された1種以上の添加剤を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適した医薬的に許容される無毒性賦形剤と混合された有効成分を含有している。錠剤は剤皮なしでもよく、または、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させこれによって長期間の持続作用を与えるために公知技術によって剤皮をかけてもよい。経口使用するための組成物は、有効成分を不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合した硬質ゼラチンカプセル、または、有効成分を水もしくは油媒体例えばピーナツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合した軟質ゼラチンカプセルの形態であってもよい。水性懸濁液、油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、水中油型エマルジョン、注射可能な無菌の水性または油性懸濁液は当分野で公知の標準方法によって調製できる。
【0095】
グリシン輸送体GlyT1活性の阻害が必要な状態を治療する場合、適正投与量レベルは、一般には1日に患者の体重1kgあたり約0.01−500mgでよく、この量を一回でまたは複数回に分割して投与できる。投与量レベルは、好ましくは1日に約0.1−約250mg/kgであり、より好ましくは1日に約0.5−約100mg/kgであろう。適正投与量レベルは、1日に約0.01−250mg/kg、1日に約0.05−100mg/kg、または、1日に約0.1−50mg/kgであろう。この範囲内で投与量は1日あたり0.05−0.5、0.5−5または5−50mg/kgでよい。経口投与の場合、治療される患者への投与量を対症的に調整するために、組成物が、1.0−1000ミリグラムの有効成分、特に、1.0、5.0、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900及び1000ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態を有しているのが好ましい。化合物は1日に1−4回、好ましくは1日に1回または2回のレジメで投与するとよい。この投与レジメンは最適な治療レスポンスを生じるように調整し得る。しかしながら、個々の患者に対する具体的な投与量レベル及び投与頻度は変更でき、使用される特定化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用期間、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与モード及び時間、排泄速度、併用薬物、個々の状態の重篤度、及び、宿主が受けている治療、などに左右されることは理解されよう。
【0096】
化学的な記載及び実施例に使用した略号の意味を以下に示す:CHCl − ジクロロメタン;LHMDS − リチウムビス(トリメチルシリル)アミド;EDCI − 1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−3−エチルカルボジイミド塩酸塩;EtOAc − 酢酸エチル;Ra−Ni − ラネーニッケル;HOBt − ヒドロキシベンゾトリアゾール;THF − テトラヒドロフラン;MeOH − メタノール。
【0097】
本発明の化合物の幾つかの製造方法を以下のスキーム及び実施例に示す。出発材料及び必要な中間体は幾つかの場合には市販されており、または、文献に記載の手順で製造するかもしくは本明細書中に示した手順で製造できる。
【0098】
本発明の化合物は、以下のスキームに示すような反応を、文献で公知のまたは実験手順に例示した他の標準的操作と共に使用して製造できる。スキームに示した置換基の番号は、特許請求の範囲に使用した番号と必ずしも相関していない。また、明瞭化のためにしばしば、上記に定義の条件下で多数の置換基が可能な化合物に対しても1個の置換基の結合だけを示している。本発明の化合物を生成させるために使用した反応は、本明細書中のスキーム及び実施例に示した反応を、文献から公知であるかまたは実験手順で例示したようなエステル加水分解、保護基の開裂、などのような他の標準的操作と共に使用するように準備する。
【0099】
幾つかの場合には、例えば、置換基の操作によって最終生成物を更に改変し得る。これらの操作の非限定例は、当業者に公知の還元、酸化、アルキル化、アシル化、及び、加水分解、などの反応である。幾つかの場合には、反応を促進するためまたは望ましくない反応生成物の形成を防止するよう上記反応スキームの実施順序を改変し得る。本発明がより十分に理解されるよう、以下の実施例を示す。これらの実施例は単に例示的なものであり、本発明がこれらに限定されると解釈してはならない。
【0100】
【化26】

【0101】
反応スキームIに一般に示すように、適宜置換された3−シアノアゼチジンをグリニャール試薬と反応させ、還元させて、対応するアミンを生じる。クロマトグラフィーによるラセミ混合物の分割後、この物質を標準条件下でアシル化して、対応するアミドまたはウレアを与える(反応スキームI中のRは−(A)−Rを表す)。脱保護し、標準条件下でスルホニルクロリドと反応させると最終物質が得られる。この場合、全てのスルホニルクロリド、酸塩化物、グリニャール試薬及びカルボン酸は市販品であった。出発4−シアノアゼチジンは市販されている。
【0102】
【化27】

【0103】
あるいは、反応スキームIIに一般に示すように、適宜置換された3−シアノアゼチジンを標準反応条件下でスルホニルクロリドと反応させると、対応するスルホンアミドを生じる。ニトリルを対応するアミンに還元した後、この化合物を標準条件下でアシル化すると最終物質を得る(反応スキームII中のRは−(A)−Rを表す)。この場合、全てのスルホニルクロリド、酸塩化物及びカルボン酸は市販品であった。出発3−シアノアゼチジンは市販されている。
【0104】
【化28】

【0105】
tert−ブチル 3−シアノ−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−2)
室温でTHF(200mL)中の2−フルオロピリジン(2.6mL,30.2mmol)及びtert−ブチル3−シアノアゼチジン−1−カルボキシレート(I−1,5.0g,27.5mmol)の溶液を、LHMDS(THF中の1.0M溶液を55mL、55mmol)で処理した。6時間後、反応混合物を飽和NHCl水溶液(200mL)に入れ、EtOAc(3×150mL)で抽出した。集めた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮すると、tert−ブチル 3−シアノ−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−2)が黄褐色オイルとして得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),3.004分。この物質を、それ以上精製しないで後続の反応に使用した。
【0106】
tert−ブチル 3−[(1S)−1−アミノエチル]−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−3)
室温でトルエン(100mL)中のtert−ブチル 3−シアノ−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−2,5.0g,19.3mmol)の溶液を、15分間かけて滴下したMeMgBr(ジブチルエーテル中の1.0M溶液を55mL)によって処理した。18時間後、反応混合物を0℃に冷却し、MeOH(30mL)及びNaBH(1.3g,33.2mmol)で処理した。10分後、飽和NHCl水溶液(75mL)をゆっくりと添加してクエンチし、HO(75mL)で希釈し、EtOAc(3×150mL)で抽出した。集めた抽出物を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮すると、tert−ブチル3−(1−アミノエチル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−3)が得られた。ChiralPak ADカラムを使用し、この物質をIR異性体とIS異性体とに完全に分割した(>99%ee)。Mosher’sアミドのNOE分析により、各異性体の絶対的立体化学を確認した。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),2.689分。
【0107】
tert−ブチル 3−{(1S)−1−[(2,4−ジクロロベンゾイル)アミノ]エチル}−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−4)
CHCl(11mL)中のtert−ブチル 3−[(1S)−1−アミノエチル]−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−3,1.35g,5.1mmol)の溶液を、2,4−ジクロロ安息香酸(1.2g,6.1mmol)、EDCI(2.0g,10.2mmol)及びHOBt(690mg,5.1mmol)で処理し、室温で撹拌した。18時間後、HO(50mL)を加えてクエンチし、CHCl(3×50mL)で抽出した。集めた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(120gのSiO,50−80%EtOAc/ヘキサン)によって精製すると、tert−ブチル 3−{(1S)−1−[(2,4−ジクロロベンゾイル)アミノ]エチル}−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−4)が得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),3.010分。この物質を、それ以上精製しないで後続の反応に使用した。
【0108】
2,4−ジクロロ−N−{(1S)−1−[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]−エチル}ベンズアミド(I−5)
tert−ブチル 3−{(1S)−1−[(2,4−ジクロロベンゾイル)アミノ]エチル}−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−4,1.35g,3.5mmol)のサンプルをHCl(ジオキサン中の4.0M溶液を40mL)で処理し、室温で2時間撹拌した後、減圧下で濃縮すると、2,4−ジクロロ−N−[(1S)−1−(3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル)エチル]ベンズアミド塩酸塩(1.54g,86%)が得られ、それ以上精製しないで使用した。0℃のCHCl(45mL)中の2,4−ジクロロ−N−[(1S)−1−(3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル)エチル]ベンズアミド塩酸塩(1.54g,4.4mmol)の懸濁液を、i−PrNEt(3.1mL,18mmol)及びn−PrSOCl(0.75mL,6.6mmol)の滴下によって処理した。3時間後、1MのNaOH水溶液(50mL)を加えてクエンチし、1時間撹拌した後、CHCl(3×50mL)で抽出した。集めた有機抽出物を乾燥し(NaSO),減圧下で濃縮し、逆相HPLCによって精製すると、2,4−ジクロロ−N−{(1S)−1−[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]エチル}ベンズアミド(I−5)が白色非晶質固体として得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),2.954分。H NMR(CDCl,400MHz)δ8.53(d,J=4.2Hz,1H),7.85(d,J=8.0Hz,1H),7.77(td,J=1.8,7.8Hz,1H),7.64(d,J=8.3Hz,1H),7.43(d,J=2.0Hz,1H),7.34−7.21(m,2H),4.93−4.86(m,1H),4.47(d,J=8.2Hz,1H),4.22(d,J=8.0Hz,1H),4.12(d,J=8.0Hz,1H),3.98(d,J=8.2Hz,1H),2.97−2.93(m,2H),1.90−1.80(m,2H),1.08(d,J=6.5Hz,3H),1.06(t,J=7.4Hz,3H);13C NMR(CDCl,100MHz)δ165.4,160.2,149.2,137.2,136.7,133.7,131.6,131.3,130.1,127.5,122.5,121.7,58.3,56.6,53.3,52.0,44.8,17.0,15.8,13.0;HRMS m/z 456.0914(C2023ClS+Hに必要な量456.0910)。
【0109】
【化29】

【0110】
1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−カルボニトリル (II−1)
tert−ブチル3−シアノ−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(I−2,485mg,1.9mmol)のサンプルを、HCl(ジオキサン中の4.0M溶液を20mL)で処理し、室温で2時間撹拌した後、減圧下で濃縮すると、3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−カルボニトリル塩酸塩(365mg,99%)が得られ、それ以上精製しないで使用した。
【0111】
0℃のCHCl(10mL)中の3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−カルボニトリル塩酸塩(365mg,1.9mmol)の懸濁液を、i−PrNEt(1.1mL,6.3mmol)及びn−PrSOCl(0.35mL,3.1mmol)の滴下によって処理した。4時間後、2MのNaOH水溶液(10mL)を加えてクエンチし、72時間撹拌した後、CHCl(3×20mL)で抽出した。集めた有機抽出物を乾燥し(NaSO)、減圧下で濃縮すると、1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−カルボニトリル(II−1)が橙色オイルとして得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),2.664分。この物質を、それ以上精製しないで後続の反応に使用した。
【0112】
1−[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]メタンアミン(II−2)
2MのNH/MeOH(50mL)中の1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−カルボニトリル(II−1,379mg,1.43mmol)の溶液を過剰量のラネーニッケルで処理し、Parr装置に入れてH(40psi)雰囲気下で撹拌した。5時間後、反応混合物をセライト(MeOH洗液)で濾過し、減圧下で濃縮すると、1−[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]メタンアミン(II−2)が黄色オイルとして得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),1.791分。この物質を、それ以上精製しないで後続の反応に使用した。
【0113】
2,4−ジクロロ−N−{[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド(II−3)
CHCl(1mL)中の1−[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]メタンアミン(II−2,10mg,0.04mmol)の溶液を、i−PrNEt(0.1mL,0.58mmol)、2,4−ジクロロベンゾイルクロリド(20μL,0.14mmol)で処理し、室温で撹拌した。3時間後、N流下で揮発分を除去し、残渣を逆相HPLCによって精製すると、2,4−ジクロロ−N−{[1−(プロピルスルホニル)−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド(II−3)が白色非晶質固体として得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),2.707分。H NMR(CDCl,400MHz)δ8.54−8.52(m,1H),7.78(td,J=1.8,7.9Hz,1H),7.60(d,J=8.3Hz,1H),7.51(d,J=8.0Hz,1H),7.38(d,J=1.9Hz,1H),7.30(dd,J=2.0,8.3Hz,1H),7.26−7.20(m,1H), 4.35(d,J=8.3Hz,2H),4.17(d,J=5.9Hz,2H),4.07(d,J=8.3Hz,2H),3.02−2.98(m,2H),1.93−1.84 (m,2H),1.08(t,J=7.4Hz,3H);13C NMR(CDCl,100MHz)δ166.2,161.5,149.2,137.7,137.1,133.4,131.7,131.5,130.3,127.7,122.8,121.3,58.4,53.3(2C),46.5,42.3,17.2,13.2;HRMS m/z 442.0766(C1921ClS+Hに必要な量442.0754)。
【0114】
【化30】

【0115】
tert−ブチル 3−シアノ−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレート
1,2−ジクロロエタン(120ml)中のtert−ブチル3−シアノ−3−ピリジン−2−イルアゼチジン−1−カルボキシレート(14.2g,55mmol)を氷浴で冷却し、メチルトリフラートで処理した。反応物を室温で1時間撹拌し、次いで還流しながら室温で終夜撹拌した(溶液中に出発材料が全く存在しない)。得られた橙/褐色の沈殿物を濾別し、追加量の1,2−ジクロロエタンで洗浄した。次いで固体をエタノール(150ml)に溶解し、酢酸(1.5当量,5.5ml)を加えた。二酸化白金(1.5g)を添加し、反応物をparrに載せて40psiで終夜水素化した。TLC及びMS(質量分析)は完全変換を示した。反応物を窒素下で濾過し、濾液を蒸発乾固すると、tert−ブチル3−シアノ−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレートがオイルとして得られたので、それ以上精製しないで使用した。 m/z(M+H)280。
【0116】
tert−ブチル 3−(アミノメチル)−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレート
tert−ブチル3−シアノ−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレート(8.1g,29mmol)をメタノール(100mL)中の2Mのアンモニアに溶解し、ラネーニッケル(水中の50%スラリーを5.0g(2.5gのラネーニッケル))を添加し、混合物をparrに載せて45psiに1日間維持してTLCが完了を示すまで水素化した。反応物を窒素下で濾過し、濾液を蒸発乾固すると、tert−ブチル 3−(アミノメチル)−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレートがオイルとして得られた。m/z(M+H)284。
【0117】
tert−ブチル 3−{[(2−クロロ−3,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]メチル}−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレート
2−クロロ−3,6−ジフルオロベンゾイルクロリド(0.38ml,2.7mmol)を0℃のジクロロメタン(6ml)及びトリエチルアミン(0.54ml,3.9mmol)中のtert−ブチル 3−(アミノメチル)−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレート(0.55g,1.9mmol)に0℃で添加した。反応物を0℃で15分間撹拌した後、室温に昇温させた。30分後、LC−MSは出発材料の完全消費を示した。反応をクエンチし、得られた混合物をジクロロメタンと水とに分配した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾固した。メタノール勾配(0−8%)上のジクロロメタン(1%のアンモニア含有)で溶出させるシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製すると、tert−ブチル3−{[(2−クロロ−3,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]メチル}−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレートが白色固体として得られた。m/z(M+H)458。
【0118】
2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−{[3−(1−メチルピペリジン−2−イル)−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド
tert−ブチル 3−{[(2−クロロ−3,6−ジフルオロベンゾイル)アミノ]メチル}−3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−カルボキシレート(0.40g,0.9mmol)をジクロロメタン(3ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(2当量)を添加した。反応物を室温で終夜撹拌した。混合物を蒸発乾固し、残渣を飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理した。生成物をジクロロメタンに抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させると、2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−{[3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド(0.20g,64%)が得られたので、それ以上精製しないで使用した。0℃のジクロロメタン(2ml)中の2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−{[3−(1−メチルピペリジン−2−イル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド(0.10g,0.28mmol)及びトリエチルアミン(0.08g,0.56mmol)にプロパン−1−スルホニルクロリド(0.04ml,0.34mmol)を添加した。次いで反応物を室温で30分間撹拌した後、N,N−ジメチルエチレンジアミン(0.5当量)でクエンチした。得られた混合物をジクロロメタンと水とに分配した。有機相を水及びブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾固した。メタノール勾配(0−5%)上のジクロロメタン(1%アンモニア含有)で溶出させるシリカカートリッジでのフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製すると、2−クロロ−3,6−ジフルオロ−N−{[3−(1−メチルピペリジン−2−イル)−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミドが黄白色固体として得られた。m/z(M+H)464,H NMR(500MHz,DMSO):δ9.34(s,1H);7.58(t,J=6.7Hz,1H);7.43(s,1H);4.07(t,J=12.7Hz,1H);3.91(d,J=7.8Hz,1H);3.79(d,J=7.8Hz,2H);3.65(d,J=8.1Hz,1H);3.53(d,J=10.8Hz,1H);3.17(s,2H);3.05(t,J=7.4Hz,2H);2.80(s,1H);2.56(s,2H);1.75(s,1H);1.67(dd,J=7.8,15.0Hz,5H);1.39(s,2H);0.96(t,J=7.3Hz,3H)。
【0119】
【化31】

【0120】
1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−カルボニトリル
氷浴に入れたフラスコに、1−(ジフェニルメチル)アゼチジン−3−オン(3.0g,12.6mmol)、トリメチルシリルシアニド(1.69ml,12.6mmol)及びジエチルエーテル(1ml)を導入し、次いでヨウ化亜鉛(0.003g)を添加した。これによって黄色懸濁液が形成され、室温で20分間撹拌した後に橙色溶液に変った。溶液に、メタノール(6mL)中のモルホリン(1.1g,12.6mmol)を添加した。次いで溶液を終夜還流させると、TLCでは出発材料が全く残存していなかった。反応混合物を蒸発乾固し、生成物を酢酸エチル/イソ−ヘキサンから晶出させると、1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−カルボニトリルが淡黄色の結晶質固体として得られた。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),5.74分。
【0121】
[1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル]メチル}アミン
−78℃のエーテル中の水素化アルミニウムリチウム(1M,6ml)に、エーテル(20ml)中の1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−カルボニトリル(1.00g,3.00mmol)の溶液を30分間かけて添加した。混合物を低温で1時間撹拌し、次いで3時間で室温に昇温させた。反応物を45℃で終夜撹拌した。TLC及びMSは出発材料が存在しないことを示したので、反応をクエンチし、混合物を氷浴で冷却し、混合物に、水(0.5ml)、15%水酸化ナトリウム溶液(0.5ml)次いで水(0.5ml)を添加した。得られた白色の顆粒状固体を濾別し、フィルターケーキをジエチルエーテル及び高温の酢酸エチルで2回洗浄した。濾液を蒸発させると、[1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル]メチル}アミンが淡黄色オイルとして得られたので、それ以上精製しないで使用した。m/z(M+H)338。
【0122】
tert−ブチル[(3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル)メチル]カルバメート
[1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル]メチル}アミン(1.00g,3.0mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.71g,3.3mmol)を添加した。次いでトリエチルアミン(0.62ml,4.4mmol)を滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。有機相を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾固すると、tert−ブチル{[1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル]メチル}カルバメートが得られた。メタノール(20ml)中のtert−ブチル{[1−(ジフェニルメチル)−3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル]メチル}カルバメート(1.20g,2.7mmol)及び炭素に付けた20%水酸化パラジウム(0.12g)をparrに載せて45psiで2日間水素化した(LC−MSによれば生成物への完全変換)。得られた混合物を濾過し、フィルターケーキをメタノールで洗浄した。メタノールを蒸発させると、tert−ブチル[(3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル)メチル]カルバメートが得られ、それ以上精製しないで使用した。m/z(M+H)272。
【0123】
tert−ブチル{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}カルバメート
プロパン−1−スルホニルクロリド(0.44ml,3.9mmol)を0℃のジクロロメタン(9ml)中のtert−ブチル[(3−モルホリン−4−イルアゼチジン−3−イル)メチル]カルバメート(0.71g,2.6mmol)及びトリエチルアミン(0.91g,6.5mmol)に添加した。次いで反応物を室温で30分間撹拌した後、N,N−ジメチルエチレンジアミン(0.5当量)でクエンチした。得られた混合物をジクロロメタンと水とに分配した。有機層を水及びブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾固すると、粗tert−ブチル{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}カルバメートが得られたので、それ以上精製しないで使用した。m/z(M+H)378。
【0124】
2,4−ジクロロ−N−{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミド
tert−ブチル{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}カルバメート(0.98g,2.6mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、トリフルオロ酢酸(2当量)を添加した。反応物を室温で終夜撹拌した。混合物を蒸発乾固し、残渣を飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理した。生成物をジクロロメタンに抽出した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発させると、{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}アミンが得られ、それ以上精製しないで使用した。2,4−ジクロロベンゾイルクロリド(0.14ml,1.0mmol)を0℃のジクロロメタン(2ml)及びトリエチルアミン(0.22ml,1.6mmol)中の{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}アミンに添加した。反応物を0℃で15分間撹拌した後、室温に加温した。30分後、LC−MSは出発材料の完全消費を示した。反応をクエンチし、得られた混合物をジクロロメタンと水とに分配した。有機相をブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾固した。分取TLCによって精製すると、2,4−ジクロロ−N−{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミドがオイル(15mg,4%)として得られた。これを高温エタノール(1ml)に溶解し、エタノール(最少量)中のシュウ酸(2当量)を添加した。エタノールを蒸発させ、残渣をエーテルで粉砕すると、2,4−ジクロロ−N−{[3−モルホリン−4−イル−1−(プロピルスルホニル)アゼチジン−3−イル]メチル}ベンズアミドのシュウ酸塩が白色固体として得られた(15mg,4%)。分析用LCMS:単一ピーク(214nm),4.35分。H NMR(400MHz,DMSO):δ8.70(t,J=6.3Hz,1H);7.71(d,J=2.0Hz,1H);7.54−7.46(m,2H);3.81−3.69(m,4H);3.59(d,J=6.3Hz,6H);3.10−3.04(m,2H);2.56(t,J=7.4Hz,4H);1.74−1.66(m,2H);0.97(dd,J=7.4,7.4Hz,3H)。
【0125】
反応スキームI及びIIに示した手順で、スキーム1−4及び上記実施例に記載したような適宜置換されたスルホニルクロリド及び/または酸クロリド/カルボン酸を置換することによって、表1の化合物を合成した。必要な出発材料は市販品であるか、文献に記載されているか、または、有機合成分野の当業者により容易に合成された。
【0126】
【表1】




【0127】
本発明をその幾つかの特定実施態様に基づいて記載及び説明してきたが、本発明の要旨及び範囲を逸脱することなく、手順及びプロトコルの様々な応用、変更、改変、置換、削除または付加が可能であることが当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
は、−(CH−R15または−(CO)(CH−R15であり、ここでnは0−6であり、R15は、
(1)R1a、R1b及びR1cで置換されたフェニル、
(2)R1a、R1b及びR1cで置換された複素環、
(3)1−6ハロゲン、ヒドロキシ、−NR1011、R1a、R1b及びR1cで置換されたフェニル、または、R1a、R1b及びR1cで置換された複素環で置換されるかまたは未置換のC1−6アルキル、
(4)C1−6アルキル、1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR1011で置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル、
(5)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR1011で置換されるかまたは未置換の−O−C1−6アルキル、
(6)−CO、ここでRは独立に、
(a)水素、
(b)1−6フルオロで置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、
(c)ベンジル、及び
(d)フェニル
から選択される、
(7)−NR1011、ここでR10及びR11は、独立に
(a)水素、
(b)ヒドロキシ、1−6フルオロまたは−NR1213で置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、ここでR12及びR13は独立に水素及び−C1−6アルキルから選択される、
(c)ヒドロキシ、1−6フルオロまたは−NR1213で置換されるかまたは未置換の−C3−6シクロアルキル、
(d)ベンジル、及び
(e)フェニル
から選択される、
(8)−CO−NR1011
から成るグループから選択され、
1a、R1b及びR1cは独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)(a)1−6ハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、または、
(d)−NR1011
で置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、
(4)1−6ハロゲンで置換されるかまたは未置換の−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、及び
(15)−NO
から成るグループから選択され、
は、
(1)R2a、R2b及びR2cで置換されたフェニル、
(2)R2a、R2b及びR2cで置換された複素環、
(3)1−6ハロゲン、ヒドロキシ、−NR10ll、フェニルまたは複素環で置換されるかまたは未置換のC1−8アルキル、ここでこのフェニルまたは複素環はR2a、R2b及びR2cで置換されている、
(4)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル、
(5)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)、
から成るグループから選択され、
2a、R2b及びR2cは独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)(a)1−6ハロゲン、
(b)フェニル、
(c)C3−6シクロアルキル、または
(d)−NR1011
で置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル、
(4)1−6ハロゲンで置換されるかまたは未置換の−O−C1−6アルキル、
(5)ヒドロキシ、
(6)−SCF
(7)−SCHF
(8)−SCH
(9)−CO
(10)−CN、
(11)−SO
(12)−SO−NR1011
(13)−NR1011
(14)−CONR1011、及び
(15)−NO
から成るグループから選択され、
は、
(1)1−6ハロゲン、ヒドロキシル、−NR10ll、または、R2a、R2b及びR2cで置換された複素環で置換されるかまたは未置換のC1−6アルキル、
(2)1−6ハロゲン、ヒドロキシルまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル、
(3)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換の−C1−6アルキル−(C3−6シクロアルキル)、及び
(4)−NRl0ll
から成るグループから選択され、
及びRは独立に
(1)水素、及び
(2)ハロゲンまたはヒドロキシルで置換されるかまたは未置換のC1−6アルキルから成るグループから選択されるか、または、RとRとが一緒にC3−6シクロアルキル環を形成しており、
Aは、
(1)−O−、及び、
(2)−NR10
から成るグループから選択され、
mは0または1であり、mが0のときRはカルボニルに直接結合している]
の化合物及び医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
式Ia:
【化2】

で示される請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項3】
式Ia’:
【化3】

で示される請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項4】
が、
(1)ハロゲンまたは−C1−6アルキルで置換されるかまたは未置換のフェニル、
(2)ハロゲンまたは−C1−6アルキルで置換されるかまたは未置換のピリジル、
(3)−(CH−シクロプロピル、ここでnは1−3である、及び
(4)−(CO)−モルホリニル
から成るグループから選択される請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項5】
が2−ピリジルである請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式Ib:
【化4】

[式中、RはC1−6アルキルである]で示される請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項7】
がC1−3アルキルであり、Rが水素またはC1−3アルキルである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が(S)立体配置のC1−3アルキルであり、Rが水素である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルであり、Rが水素である請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
がメチルであり、Rがメチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が水素であり、Rが水素である請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
式Ic:
【化5】

で示される請求項1に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項13】
式Id:
【化6】

で示される請求項12に記載の化合物及び医薬的に許容されるその塩。
【請求項14】
式Id’:
【化7】

で示される請求項12に記載の化合物及び医薬的に許容されるその塩。
【請求項15】
式Id”:
【化8】

で示される請求項12に記載の化合物及び医薬的に許容されるその塩。
【請求項16】
が、
(1)R2a、R2b及びR2cで置換されたフェニル、
(2)R2a、R2b及びR2cで置換されたチエニル、
(3)1−6ハロゲン、フェニルまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC1−8アルキル、ここでフェニルはR2a、R2b及びR2cで置換されている、
(4)1−6ハロゲン、ヒドロキシまたは−NR10llで置換されるかまたは未置換のC3−6シクロアルキル
から成るグループから選択され、
2a、R2b及びR2Cは独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−OCHF
(8)−SCF
(9)−SCHF、及び
(10)−NH
から成るグループから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
がフェニルまたはチエニルであり、R2a、R2b及びR2cが独立に、
(1)水素、
(2)ハロゲン、
(3)−C1−6アルキル、
(4)−O−C1−6アルキル、
(5)−CF
(6)−OCF
(7)−OCHF
(8)−SCF
(9)−SCHF、及び
(10)−NH
から成るグループから選択される請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
がフェニルであり、R2a、R2b及びR2cが独立に、
(1)水素、
(2)フルオロ、
(3)クロロ、
(4)ブロモ、
(5)−OCH
(6)−CF、及び
(7)−NH
から成るグループから選択される請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が、C1−6アルキル、または、−N(C1−6アルキル)(C1−6アルキル)である請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
が−CHCHである請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が−(CHCHである請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
がシクロプロピルである請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
以下のグループ:
【化9】



から選択される化合物または医薬的に許容されるその塩。
【請求項24】
医薬的に許容される担体と請求項1の化合物または医薬的に許容されるその塩とを含む医薬組成物。
【請求項25】
有効量の請求項1の化合物または医薬的に許容されるその塩の投与を含む、その必要がある哺乳動物におけるグリシン輸送体GlyT1の阻害方法。
【請求項26】
請求項1の化合物または医薬的に許容されるその塩を医薬担体または希釈剤と組合せる段階を含む、その必要がある哺乳動物におけるグリシン輸送体GlyT1を阻害する医薬の製造方法。
【請求項27】
治療有効量の請求項1の化合物または医薬的に許容されるその塩を患者に投与する段階を含む、当該治療を要する哺乳類患者におけるグリシン作動性またはグルタメート作動性神経伝達の機能不全に関連する神経学的及び精神医学的障害の治療方法。
【請求項28】
治療有効量の請求項1の化合物または医薬的に許容されるその塩を患者に投与する段階を含む、当該治療を要する哺乳類患者における統合失調症の治療方法。

【公表番号】特表2007−535538(P2007−535538A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510840(P2007−510840)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/013956
【国際公開番号】WO2005/110983
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(390035482)メルク シャープ エンド ドーム リミテッド (81)
【Fターム(参考)】