説明

アゾ化合物、それを含有する偏光膜及び偏光板

遊離酸の形で下記式(1)
【化1】


〔式(1)中、R1、R2は各々独立にスルホン酸基、カルボキシル基、低級アルキル基又は低級アルコキシル基を、R3は低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R4〜R6は各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R7は水素原子、アミノ基又は水酸基をそれぞれ表す。〕で示されるアゾ化合物を二色性染料として含有する偏光膜又は偏光板は、偏光性能及び耐久性に優れるとともに可視光領域における色漏れの少ない優れたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物、並びにそれを含有してなる偏光膜及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過・遮へい機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も初期の頃の電卓及び時計等の小型機器から、ノートパソコン、ワープロ、液晶プロジェクタ、液晶テレビ、カーナビゲーション及び屋内外の計測機器等の広範囲に広がり、使用条件も低温〜高温、低湿度〜高湿度、低光量〜高光量の幅広い条件で使用されることから、偏光性能が高くかつ耐久性に優れた偏光板が求められている。
【0003】
現在、偏光膜は延伸配向したポリビニルアルコール又はその誘導体のフィルムあるいは、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸又はポリビニルアルコール系フィルムの脱水によりポリエンを生成して配向せしめたポリエン系のフィルムなどの偏光膜基材に、偏光素子としてヨウ素や二色性染料を染色乃至は含有せしめて製造される。これらのうち、偏光素子としてヨウ素を用いたヨウ素系偏光膜は、初期偏光性能には優れるものの、水及び熱に対して弱く、高温、高湿の状態で長時間使用する場合にはその耐久性に問題がある。耐久性を向上させるためにホルマリン、あるいは、ほう酸を含む水溶液で処理したり、また透湿度の低い高分子フィルムを保護膜として用いる方法などが考えられているがその効果は十分とはいえない。一方、偏光素子として二色性染料を用いた染料系偏光膜はヨウ素系偏光膜に比べ、耐湿性及び耐熱性は優れるものの、一般に初期偏光性能が十分でない。
【0004】
高分子フィルムに数種の二色性染料を吸着・配向させてなる中性色(可視光領域(400〜700nm)の波長領域において全波長に吸収がある、ニュートラルグレー)の直視用偏光膜において、2枚の偏光膜をその配向方向が直交するように重ね合わせた状態(直交位)で、可視光領域の波長領域における特定波長の光漏れ(色漏れ)があると、偏光膜を液晶パネルに装着したとき、暗状態において液晶表示の色相が変わってしまうことがある。そこで、偏光膜を液晶表示装置に装着したとき、暗状態において特定波長の色漏れによる液晶表示の変色を防止するためには、高分子フィルムに数種の二色性染料を吸着・配向させてなる中性色の偏光膜において、可視光領域の波長領域における直交位の透過率(直交透過率)を一様に低くしなければならない。
【0005】
また、カラー液晶投射型ディスプレー、即ちカラー液晶プロジェクタの場合、その液晶画像形成部に偏光板を使用するが、以前は偏光性能が良好でニュートラルグレーを呈するヨウ素系偏光板が使用されていた。しかし、ヨウ素系偏光板は前記したようにヨウ素が偏光子であるが故に耐光性、耐熱性、耐湿熱性が十分でないという問題がある。この問題を解決するため、染料系の二色性色素を偏光子としたニュートラルグレーの偏光板が使用されるようになってきたが、ニュートラルグレーの偏光板は、可視光波長領域全域での透過率、偏光性能を平均的に向上させるべく、通常3原色の色素を組み合わせて使用する。このため、カラー液晶プロジェクタのように、より明るくという市場の要求に対しては、光の透過率が悪く、明るくするためには光源強度をより高くしなければならないという問題がある。この問題解決のため、3原色に対応した、即ち、青色チャンネル用、緑色チャンネル用、赤色チャンネル用という3つの偏光板が使用されるようになってきた。
【0006】
しかしながら、偏光板により光が大幅に吸収されること、及び0.9〜6インチの小面積の画像を数十インチ乃至百数十インチ程度まで拡大すること等により明るさの低下は避けられず、その為光源としては高い輝度のものが使用される。しかも液晶プロジェクタの一層の明るさの向上の要望は根強く、その結果として自ずと、使用する光源強度は益々強くなってきており、それに伴って偏光板にかかる光、熱も増大している。
【0007】
上記のような染料系偏光膜の製造に用いられる染料としては、例えば特許文献1から特許文献4などに記載されている水溶性アゾ化合物が挙げられる。
【0008】
しかしながら、前記水溶性染料を含有してなる従来の偏光板は、偏光特性、吸収波長領域、色相等の観点から、市場のニーズを十分に満足させるに至っていない。また、カラー液晶プロジェクタの3原色に対応した、即ち、青色チャンネル用、緑色チャンネル用、赤色チャンネル用という3つの偏光板に明るさと偏光性能、高温や高湿条件における耐久性、更には長時間暴露に対する耐光性のいずれにおいても良好というものがなく、その改良が望まれている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−33627号公報
【特許文献2】特開2002−296417号公報
【特許文献3】特開2002−105348号公報
【特許文献4】特開平10−259311号公報
【特許文献5】特開昭59−145255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の一つは、優れた偏光性能及び耐湿性・耐熱性・耐光性を有する高性能な偏光板を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、高分子フィルムに二種類以上の二色性染料を吸着・配向せしめてなる中性色の偏光板であって、可視光領域(400〜700nm)の波長領域における直交位の色もれがなく、優れた偏光性能及び耐湿性、耐熱性、耐光性を有する高性能な偏光板を提供することにある。
更に本発明の目的はカラー液晶プロジェクタの3原色に対応した、明るさと偏光性能、耐久性及び耐光性のいずれもが良好である高性能な偏光板を提供することにある。
更に本発明は、上記した優れた特性を有する偏光板の提供を可能にする新規なアゾ化合物を提供することにある。また、この新規なアゾ化合物を含有し、上記した優れた特性を有する偏光板に使用するための偏光膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、特定の構造を有する染料を含有する偏光膜及び偏光板が、優れた偏光性能及び耐湿性、耐熱性、耐光性を有し、前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、下記式(1)
【化1】


〔式(1)中、R1、R2は各々独立にスルホン酸基、カルボキシル基、低級アルキル基又は低級アルコキシル基を、R3は低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R4〜R6は各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R7は水素原子、アミノ基又は水酸基をそれぞれ表す。〕で示されるアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物に関する。
更に本発明は、上記のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物を偏光膜基材に含有することを特徴とする偏光膜に関する。
更に本発明は、上記のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物と、これら以外の有機染料を1種類以上偏光膜基材に含有することを特徴とする偏光膜に関する。
更に本発明は、上記の偏光膜を有する偏光板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の「アゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物(以下アゾ化合物と表す)」は、偏光膜用の染料として有用である。そしてこの化合物を含有する偏光膜は、ヨウ素を用いた偏光膜に匹敵する高い偏光性能を有し、この偏光膜を有する偏光板は耐久性にも優れ、各種液晶表示体及び液晶プロジェクタ用、又、高い偏光性能と耐久性を必要とする車載用途、各種環境で用いられる工業計器類の表示用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアゾ化合物は、上記式(1)で表される。式(1)おいて、R1、R2はスルホン酸基、カルボキシル基、低級アルキル基、低級アルコキシル基を表し、R1、R2のどちらか一方がスルホン酸基で、他方がカルボキシル基、メチル基、メトキシ基であることが好ましい。R1の結合位置はアゾ基に対してパラ位又はメタ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。R3は低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を表し、メチル基がもっとも好ましい。R4〜R6は各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基、アセチルアミノ基を表し、水素原子、メチル基、メトキシ基が好ましい。さらにR5はメチル基、R6はメチル基又はメトキシ基が好ましく、R6はメチル基が特に好ましい。R7は、水素原子、アミノ基、水酸基を表し、アミノ基であることが好ましく、結合位置としては−NHCO−基に対してパラ位であることが好ましい。本発明において、低級アルキル基及び低級アルコキシル基とは、炭素数1〜4のアルキル基及びアルコキシル基を言う。R3〜R6の結合位置は、式(1)中の番号で、R3が5位、R4が2位、R5が5'位、R6が2'位であることが好ましい。
【0014】
本発明では、式(1)において、R3の結合位置が5位、R4が2位、R5が5'位、R6が2'位であるアゾ化合物;式(1)において、R1、R2はスルホン酸基、カルボキシル基、低級アルキル基、又は低級アルコキシル基、R3は低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基、R4は水素原子又は低級アルキル基又は低級アルコキシル基、R5は低級アルキル基、R6は低級アルキル基又は低級アルコキシル基であるアゾ化合物;式(1)において、R1、R2のどちらか一方がスルホン酸基、他方がカルボキシル基、メチル基又はメトキシ基、R1の結合位置はアゾ基に対してパラ位であり、R3がメチル基、R4が水素原子、メチル基又はメトキシ基、R5がメチル基、R6がメチル基又はメトキシ基、R7が−NHCO−基に対してパラ位のアミノ基であるアゾ化合物が好ましい。
【0015】
特に、本発明では、下記式(18)
【化2】


〔式(18)中、R11はアルキル基又はアルコキシル基を、R12はスルホン酸基又はカルボキシル基を、R13及びR14はアルキル基、アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R15及びR16はアルキル基又はアルコキシル基を、R17は水素原子又はアミノ基をそれぞれ表す。〕で示されるアゾ化合物が好ましい。
【0016】
次に本発明の式(1)で表されるアゾ化合物の好ましい具体例を以下に挙げる。以下の式は、スルホン酸基、カルボキシル基及び水酸基は遊離酸の形で表す。
【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】

【0017】
遊離酸の形で式(1)で表されるアゾ化合物は、通常のアゾ染料の製法に従い、公知のジアゾ化、カップリングを行うことにより容易に製造できる。具体的な製造例としては、下記式(A)
【化12】


(式中、R1、R2は、式(1)と同じ意味を表す。)で示される化合物をジアゾ化し、例えば下記式(B)
【化13】


(式中、R1、R2は、式(1)と同じ意味を表す。)で示されるアニリン類とカップリングさせ、下記式(C)
【化14】


(式中、R1、R2、R3、R4は、式(1)と同じ意味を表す。)で示されるモノアゾアミノ化合物を得る。
【0018】
次いで、このモノアゾアミノ化合物をジアゾ化し、下記式(D)
【化15】


(式中、R5、R6は、式(1)と同じ意味を表す。)で示されるアニリン類と二次カップリングさせ、下記式(E)
【化16】


(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、式(1)と同じ意味を表す。)で示されるジスアゾアミノ化合物を得る。
【0019】
このジスアゾアミノ化合物をジアゾ化し、下記式(F)
【化17】


(式中、R7は、式(1)と同じ意味を表す。)で表されるナフトール類と三次カップリングさせることにより式(1)のアゾ化合物が得られる。
【0020】
上記反応において、ジアゾ化工程はジアゾ成分の塩酸、硫酸などの鉱酸水溶液又はけん濁液に亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩を混合するという方法によるか、あるいはジアゾ成分の中性もしくは弱アルカリ性の水溶液に亜硝酸塩を加えておき、これと鉱酸を混合するという方法によって行われる。ジアゾ化の温度は、−10〜40℃が適当である。アニリン類とのカップリング工程は塩酸、酢酸などの酸性水溶液と上記各ジアゾ化液を混合し、温度が−10〜40℃でpH2〜7の酸性から中性条件で行われる。
【0021】
カップリングして得られたモノアゾ化合物及びジスアゾ化合物はそのままあるいは酸析や塩析により析出させ濾過して取り出すか、溶液又は懸濁液のまま次の工程へ進むこともできる。ジアゾニウム塩が難溶性で懸濁液となっている場合は濾過し、プレスケーキとして次のカップリング工程で使うこともできる。
【0022】
ジスアゾアミノ化合物のジアゾ化物と、式(F)で表されるナフトール類との三次カップリング反応は、温度が−10〜40℃でpH7〜10の中性からアルカリ性条件で行われる。反応終了後、塩析により目的物を析出させ濾過して取り出す。また精製が必要な場合には、塩析を繰り返すか又は有機溶媒を使用して水中から目的物を析出させればよい。精製に使用する有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等の水溶性有機溶媒が挙げられる。
【0023】
式(1)で表されるアゾ化合物を合成するための出発原料である式(A)で示されるアニリン類としては、例えば、2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼンスルホン酸、4−アミノ−3−メトキシベンゼンスルホン酸、2−アミノ−4−スルホ安息香酸、2−アミノ−5−スルホ安息香酸等が挙げられ、特に2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2−アミノ−4−スルホ安息香酸が好ましい。
【0024】
一次、及び二次カップリング成分である、式(B)又は式(D)で示されるアニリン類における置換基(R3、R4又はR5、R6)としては、例えば、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基があげられる。これらの置換基は1つ又は2つが結合していてもよい。その結合位置は、アミノ基に対して、置換基が1つの場合は、2位又は3位、置換基が2つの場合は、2位と5位、3位と5位、又は2位と6位が好ましく、特に置換基は1つの場合は3位、置換基が2つの場合は、2位と5位が好ましい。アニリン類としては、例えば、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、2、5−ジメチルアニリン、2、5−ジエチルアニリン、2−メトキシアニリン、3−メトキシアニリン、2−メトキシ−5−メチルアニリン、2、5−ジメトキシアニリン、2−メトキシ−5−アセチルアミノアニリン、3,5−ジメチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、3,5−ジメトキシアニリン等が挙げられる。これらのアニリン類はアミノ基が保護されていてもよい。保護基としては、例えば、そのω−メタンスルホン酸基が挙げられる。一次カップリングに使用するアニリン類とニ次カップリングに使用するアニリン類は同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
上記した三次カップリング成分である式(F)で表わされるナフトール類としては、例えば、6−ベンゾイルアミノ−3−スルホン酸−1−ナフトール、6−(4′−アミノベンゾイル)アミノ−3−スルホン酸−1−ナフトール、6−(4′−ヒドロキシベンゾイル)アミノ−3−スルホン酸−1−ナフトール等が挙げられる。
【0026】
本発明の式(1)で示される化合物は遊離酸の形で、あるいはその塩の形で存在しうる。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩又はアンモニウム塩が挙げられる。偏光膜用の基材に染色する場合にはナトリウム、カリウム又はアンモニウムの塩であることが好ましい。
式(1)で示される化合物の塩は、カップリング反応後、鉱酸の添加により遊離酸の形で単離する事ができ、これから水又は酸性化した水による洗浄により無機塩を除去する事が出来る。次に、この様にして得られる低い塩含有率を有する酸型色素は、水性媒体中で所望の無機又は有機の塩基により中和することで対応する塩の溶液とすることが出来る。あるいは、カップリング反応後の塩析時に例えば塩化ナトリウムなどを用いてナトリウム塩とすることもでき、例えば塩化カリウムを用いてカリウム塩とすることもでき、このようにして所望の塩とすることができる。また、硫酸銅等で処理して銅錯塩化合物とすることもできる。
【0027】
本発明の偏光膜又は偏光板には、式(1)で表されるアゾ化合物が単独で使用される他、必要に応じて他の有機染料を一種以上併用してもよい、併用する有機染料に特に制限はないが、本発明のアゾ化合物の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収特性を有する染料であって二色性の高いものが好ましい。例えば、シー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.イエロー28、シー.アイ.ダイレクト.イエロー44、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ26、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ107、シー.アイ.ダイレクト.レッド 2、シー.アイ.ダイレクト.レッド 31、シー.アイ.ダイレクト.レッド 79、シー.アイ.ダイレクト.レッド 81、シー.アイ.ダイレクト.レッド 247、シー.アイ.ダイレクト.グリーン80、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59又は特許文献1、4に記載された染料等が挙げられ、これらの色素は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。
【0028】
必要に応じて、他の有機染料を併用する場合、目的とする偏光膜が、中性色の偏光膜、液晶プロジェクタ用カラー偏光膜、その他のカラー偏光膜により、それぞれ配合する染料の種類は異なる。その配合割合は特に限定されるものではないが、一般的には、式(1)のアゾ化合物1重量部に対して、前記の有機染料の少なくとも一種以上の合計で通常0.1〜10重量部の範囲で用いるのが好ましい。
【0029】
本発明の偏光膜又は液晶プロジェクタ用偏光膜は、式(1)で表されるアゾ化合物を、必要に応じて他の有機染料と共に、偏光膜材料である高分子フィルムに公知の方法で含有せしめることにより、各種の色相及び中性色を有する偏光膜を製造することができる。得られた偏光膜は、保護膜を付け偏光板として、必要に応じて保護層又はAR(反射防止)層及び支持体等を設け、液晶プロジェクタ、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、カーナビゲーション及び屋内外の計測器や表示器等に使用される。
【0030】
本発明の偏光膜に使用する基材として用いる高分子フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムが良く、ポリビニルアルコール系樹脂としてはポリビニルアルコール又はその誘導体、及びこれらのいずれかをエチレン、プロピレンのようなオレフィンや、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸のような不飽和カルボン酸などで変性したもの等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体からなるフィルムが、染料の吸着性及び配向性の点から、好適に用いられる。基材の厚さは通常50〜100μm、好ましくは60〜90μm程度である。
【0031】
このような高分子フィルムに、式(1)のアゾ化合物を含有せしめるにあたっては、通常、高分子フィルムを染色する方法が採用される。染色は、例えば、次のように行われる。まず、本発明の化合物及び必要によりこれ以外の有機染料を水に溶解して染浴を調製する。染浴中の有機染料濃度は特に制限されないが、通常は0.001〜10重量%程度の範囲から選択される。また、必要により染色助剤を用いてもよく、例えば、芒硝を通常0.1〜10重量%程度の濃度で用いるのが好適である。このようにして調製した染浴に高分子フィルムを通常1〜10分間浸漬し、染色を行う。染色温度は、好ましくは40〜80℃程度である。
【0032】
本発明の化合物の配向は、上記のようにして染色された高分子フィルムを延伸することによって行われる。延伸する方法としては、例えば湿式法、乾式法など、公知のいずれの方法を用いてもよい。延伸倍率は通常4〜8倍である。
高分子フィルムの延伸は、場合により、染色の前に行ってもよい。この場合には、染色の時点で本発明の化合物の配向が行われる。本発明の化合物を含有・配向せしめた高分子フィルムは、必要に応じて公知の方法によりホウ酸処理などの後処理が施される。このような後処理は、偏光膜の光線透過率及び偏光度を向上させる目的で行われる。ホウ酸処理の条件は、用いる高分子フィルムの種類や用いる本発明の化合物の種類によって異なるが、一般的にはホウ酸水溶液のホウ酸濃度を0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲とし、処理は通常30〜80℃、好ましくは40〜75℃の温度範囲で、通常0.5〜10分間浸漬して行われる。更に必要に応じて、カチオン系高分子化合物を含む水溶液で、フィックス処理を併せて行ってもよい。
【0033】
このようにして得られた本発明の偏光膜は、その片面又は両面に、光学的透明性及び機械的強度に優れる保護膜を貼合して偏光板とすることができる。保護膜を形成する材料としては、例えば、セルロースアセテート系フィルムやアクリル系フィルムのほか、四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体のようなフッ素系フィルム、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂又はポリアミド系樹脂からなるフィルム等が用いられる。保護膜の厚さは通常40〜200μmである。
偏光膜と保護膜を貼り合わせるのに用いる接着剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル−イソシアネート系接着剤などが挙げられ、ポリビニルアルコール系接着剤が好適である。
【0034】
本発明の偏光板の表面には、さらに透明な保護層を設けてもよい。保護層としては、例えば、アクリル系やポリシロキサン系のハードコート層やウレタン系の保護層等が挙げられる。単板光透過率をより向上させるために、この保護層の上にAR(反射防止)層を設けることが好ましい。AR層は、例えば二酸化珪素、酸化チタン等の物質を蒸着又はスパッタリング処理によって形成することができ、またフッ素系物質を薄く塗布することにより形成することができる。なお、本発明の偏光板は、位相差板を貼付して楕円偏光板として使用することも出来る。
【0035】
このように構成した本発明の偏光板は中性色を有し、可視光領域の波長領域において直交位の色もれがなく、偏光性能に優れ、さらに高温、高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こさず、可視光領域における直交位での光もれが少ないという特徴を有する。
【0036】
本発明の液晶プロジェクタ用偏光膜は、二色性分子として、式(1)で表されるアゾ化合物を、必要に応じて更に前記の他の有機染料と共に含有するものである。また、該液晶プロジェクタ用偏光膜も、前記の本発明の偏光膜の製造法の箇所で記載した方法で製造され、さらに保護膜を付け偏光板とし、必要に応じて保護層又はAR層及び支持体等を設け、液晶プロジェクタ用偏光板として用いられる。
【0037】
液晶プロジェクタ用偏光板としては、該偏光板の必要波長域(青色チャンネル用;通常420〜500nm、緑色チャンネル用;通常500〜580nm、赤色チャンネル用;通常600〜680nm)における、単板平均光透過率が通常39%以上、直交位の平均光透過率が通常0.4%以下で、より好ましくは該偏光板の必要波長域における単板平均光透過率が41%以上、直交位の平均光透過率が0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。さらに好ましくは、該偏光板の必要波長域における単板平均光透過率が42%以上、直交位の平均光透過率が0.1%以下である。本発明の偏光板の利用の1形態である液晶プロジェクタ用カラー偏光板は上記のように明るさと優れた偏光性能を有するものである。
【0038】
本発明の偏光板の利用の1形態である液晶プロジェクタ用偏光板は、偏光膜と保護膜からなる偏光板に、前記AR層を設け、AR層付き偏光板としたものが好ましく、さらに透明ガラス板などの支持体に貼付したAR層及び支持体付き偏光板がより好ましい。
【0039】
なお、単板平均光透過率は、AR層及び透明ガラス板等の支持体の設けていない一枚の偏光板(以下単に偏光板と言うときは同様な意味で使用する)に自然光を入射したときの特定波長領域における光線透過率の平均値である。直交位の平均光透過率は、配向方向を直交位に配した二枚の偏光板に自然光を入射したときの特定波長領域における光線透過率の平均値である。
【0040】
本発明の偏光板の利用の1形態である液晶プロジェクタ用偏光板は、通常支持体付偏光板として使用される。支持体は偏光板を貼付するため、平面部を有しているものが好ましく、また光学用途であるため、ガラス成形品が好ましい。ガラス成形品としては、例えばガラス板、レンズ、プリズム(例えば三角プリズム、キュービックプリズム)等があげられる。レンズに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクタにおいて偏光板付のコンデンサレンズとして利用し得る。また、プリズムに偏光板を貼付したものは液晶プロジェクタにおいて偏光板付きの偏光ビームスプリッタや偏光板付ダイクロイックプリズムとして利用し得る。また、液晶セルに貼付してもよい。ガラスの材質としては、例えばソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、サファイヤガラス等の無機系のガラスやアクリル、ポリカーボネート等の有機系のガラス等があげられるが無機系のガラスが好ましい。ガラス板の厚さや大きさは所望のサイズでよい。また、ガラス付き偏光板には、単板光透過率をより向上させるために、そのガラス面又は偏光板面の一方もしくは双方の面にAR層を設けることが好ましい。
【0041】
液晶プロジェクタ用支持体付偏光板を製造するには、それ自体公知の方法で実施され、例えば支持体平面部に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に本発明の偏光板を貼付する。また、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持体を貼付してもよい。ここで使用する接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。尚、この偏光板を楕円偏光板として使用する場合、位相差板側を支持体側に貼付するのが通常であるが、偏光板側をガラス成形品に貼付してもよい。
【0042】
即ち、本発明の偏光板を用いたカラー液晶プロジェクタでは、緑色チャンネル部の場合、液晶セルの入射側又は出射側のいずれか一方もしくは双方に本発明の偏光板が配置される。該偏光板は液晶セルに接触していても、接触していなくてもよいが、耐久性の観点からすると接触していないほうが好ましい。光源の後ろにPBS(ポーラライジングビームスプリッター)を使用したシステムにおいては、入射側の偏光板としてヨウ素系の偏光板を使用してもよく、また本発明の偏光板を使用してもよい。出射側において、偏光板が液晶セルに接触している場合、液晶セルを支持体とした本発明の偏光板を使用することができる。偏光板が液晶セルに接触していない場合、液晶セル以外の支持体を使用した本発明の偏光板を使用することが好ましい。また、耐久性の観点からすると、液晶セルの入射側又は出射側のいずれにも本発明の偏光板が配置されることが好ましく、さらに本発明の偏光板の偏光板面を液晶セル側に、支持体面を光源側に配置することが好ましい。なお、液晶セルの入射側とは、光源側のことであり、反対側を出射側という。
【0043】
本発明の偏光板を用いたカラー液晶プロジェクタでは、紫外線カットフィルタを光源と上記入射側の支持体付偏光板の間に配置したものが好ましい。また、使用する液晶セルは、例えば、アクティブマトリクス型で、電極及びTFTが形成された透明基板と対向電極が形成された透明基板との間に液晶を封入して形成されるものが好ましい。メタルハライドランプ等の光源から放射された光は、紫外線カットフィルタを通過し、3原色に分離した後、青色、緑色、赤色のそれぞれのチャンネル用支持体付カラー偏光板を通過し、ついで合体し、投射レンズにより拡大されてスクリーンに投影される。
【0044】
このように構成したカラー液晶プロジェクタ用偏光板は、偏光性能に優れ、さらに高温、高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こさないという特徴を有する。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明をなんら限定するものではない。実施例中にある%及び部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0045】
実施例1
2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸20.3部を水500部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、冷却し10℃以下で、35%塩酸32部を加え、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、5〜10℃で1時間攪拌した。そこへ希塩酸水に溶解した3−メチルアニリン10.7部を加え、30〜40℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過して、モノアゾ化合物を得た。得られたモノアゾ化合物に35%塩酸32部を、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、25〜30℃で2時間攪拌した。そこへ希塩酸水に溶解した2,5−ジメチルアニリン12.1部を加え、20〜30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過して、下記式(11)
【化18】


で示されるジスアゾ化合物を得た。
上記式(11)のジスアゾ化合物15部を水600部に分散させたのち、35%塩酸32部を、次に亜硝酸ナトリウム6.9部を加え、25〜30℃で2時間攪拌してジアゾ化する。一方、6−(4′−アミノベンゾイル)アミノ−3−スルホン酸−1−ナフトール35.8部を水250部に加え、炭酸ナトリウムで弱アルカリ性として溶解し、この液に先に得られたジスアゾ化合物のジアゾ化物をpH7〜10を保って注入し、攪拌して、カップリング反応を完結させる。塩化ナトリウムで塩析し、濾過して本発明の前記式(2)で示されるトリスアゾ化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は550nmであった。
【0046】
実施例2
実施例1における3−メチルアニリン10.7部から2、5−ジメチルアニリン12.1部に代える以外は実施例1と同様にして本発明の前記式(4)で表される化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は549nmであった。
【0047】
実施例3
実施例1における3−メチルアニリン10.7部から2−メトキシ−5−メチルアニリン13.7部に代える以外は実施例1と同様にして本発明の前記式(5)で表される化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤紫色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は561nmであった。
【0048】
実施例4
実施例1における2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸20.3部から2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸18.7部に代える以外は実施例1と同様にして本発明の前記式(6)で示される化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は549nmであった。
【0049】
実施例5
実施例1における2−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸20.3部から4−アミノ−3−メチルベンゼンスルホン酸18.7部に代える以外は実施例1と同様にして前記式(7)で示される化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は547nmであった。
【0050】
実施例6
実施例1における2−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸20.3部から2−アミノ−4−スルホ安息香酸21.7部に代え、更に1次カップラーを3−メチルアニリン10.7部から2、5−ジメチルアニリン12.1部、2次カップラーを2、5−ジメチルアニリン12.1部から2−メトキシ−5−メチルアニリン13.7部に変更する以外は実施例1と同様にして、合成した下記式(12)
【化19】


で示されるジスアゾ化合物を得、それ以外は実施例1と同様にして本発明の前記式(8)の化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は565nmであった。
【0051】
実施例7
実施例1における2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸20.3部を2−アミノ−5−スルホ安息香酸21.7部に代えて合成して下記式(13)
【化20】


で示されるジスアゾ化合物を得、それ以外は実施例2と同様にして本発明の前記式(9)の化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は赤色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は553nmであった。
【0052】
実施例8
実施例2における1次、2次カップラーである2,5−ジメチルアニリン12.1部から1次カップラーを2−メトキシ−5−アセチルアミノアニリン18.1部に、2次カップラーを2−メトキシ−5−メチルアニリン13.7部に代えて合成して下記式(14)
【化21】


で示されるジスアゾ化合物を得、それ以外は実施例2と同様にして本発明の前記式(10)で示される化合物をナトリウム塩として得た。この化合物は青色を呈し、20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は592nmであった。
【0053】
実施例9
実施例1で得られた化合物(2)の染料0.03%及び芒硝0.1%をそれぞれ含む45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥し本発明の偏光膜を得た。
得られた偏光膜の(a)極大吸収波長は555nm、(b)偏光率は、99.9%であり、また(c)耐光性(照射前後の偏光率の変化)は0.25%と長時間暴露に対する耐光性も優れていた。また、高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示し、次に示す比較例1及び比較例2に比べ優れた耐光性が得られた。試験方法を下記に示す。
【0054】
(a)偏光膜の極大吸収波長(λmax)の測定
上記で得られた偏光膜2枚をその配向方向が直交するように重ね合わせた状態(直交位)で、分光光度計(日立製作所製 U−4100)を用いて、極大吸収波長を測定した。
(b)偏光率の測定
上記の分光光度計を用いて、平行位の透過率(Tp)、直交位の透過率(Tc)を測定した。偏光率=[(Tp−Tc)/(Tp+Tc)]1/2×100(%)で算出した。
(c)耐光性(照射前後の偏光率の変化)
促進キセノンアークフェードメーター(ワコム社製)を用いて288時間光照射し、照射後の偏光率を上記(b)に記載の方法で求め、照射前後の偏光率の変化=(照射前の偏光率−照射後の偏光率)/照射前の偏光率×100(%)で算出した。
【0055】
比較例1〜2
実施例1の化合物に代えて、特許文献1の実施例1に記載されている下記式(15)
【化22】


で示される化合物及び特許文献4の実施例5に記載されている下記式(16)
【化23】


で示される化合物を用いる以外は実施例9と同様にして作成した偏光膜をワコム社製の前記キセノンアークフェードメーターを用いて288時間光照射前後の偏光率の変化は、それぞれ2.34%、2.08%であり、長時間暴露に対する耐光性が実施例9より劣っていた。
【0056】
実施例10〜16
実施例9と同様にして、化合物(2)の代わりに、前記実施例で得られた(5)〜(11)のアゾ化合物を用いて、実施例9と同様にして偏光膜を得た。実施例10は実施例2で得られた式(4)の化合物を、実施例11は実施例3で得られた式(5)の化合物を、実施例12は実施例4で得られた式(6)の化合物を、実施例13は実施例5で得られた式(7)の化合物を、実施例14は実施例6で得られた式(8)の化合物を、実施例15は実施例7で得られた式(9)の化合物を、実施例16は実施例8で得られた式(10)の化合物を、それぞれ用いたものである。
得られた偏光膜の極大吸収波長及び実施例9と同様にして測定した偏光率変化(耐光性)を表1に示す。
【0057】

【0058】
表1より、本発明の化合物を用いて作成した本発明の偏光膜は高い偏光率を有し、耐光性も優れていることがわかる。
【0059】
実施例17
実施例1で得られた化合物(2)0.04%、シー・アイ・ダイレクト・レッド81を0.04%、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39を0.03%、特許文献5に記載の下記式(17)
【化24】


で示される染料0.03%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液に厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して中性色(平行位ではグレーで、直交位では黒色)の偏光膜を得た。得られた偏光膜は、単板平均光透過率は41%、直交位の平均光透過率は0.1%以下であり、高い偏光率を有していた。しかも高温かつ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。
【0060】
実施例18
実施例1で得られた化合物(2)0.05%、シー・アイダイレクト・オレンジ39を0.03%及び芒硝を0.1%の濃度とした45℃の水溶液に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中で50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜の一方の面にTAC膜(膜厚80μm、商品名TD−80U、富士写真フィルム社製)、他方の面に該TAC膜の片側に約10μmのUV(紫外線)硬化型ハードコート層を形成したフィルムをPVA系の接着剤を使用して貼付し、本発明の偏光板を得た。この偏光板の片側にアクリル酸エステル系の粘着剤を付与して粘着層付き偏光板とし、さらにハードコート層の外側に真空蒸着によりAR(反射防止)マルチコート加工を施し、30mm×40mmの大きさにカットし、同じ大きさの透明な片面AR層付きのガラス板に貼付してAR支持体付きの本発明の偏光板(液晶プロジェクタ緑色チャンネル用)を得た。本実施例の偏光板は、極大吸収波長(λmax)552nmであり、500〜580nmにおける単板平均光透過率は42%、直交位の平均光透過率は0.2%以下であり、高い偏光率を有し、しかも、高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。また長時間暴露に対する耐光性も優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】


〔式(1)中、R1、R2は各々独立にスルホン酸基、カルボキシル基、低級アルキル基又は低級アルコキシル基を、R3は低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R4〜R6は各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R7は水素原子、アミノ基又は水酸基をそれぞれ表す。〕で示されるアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物。
【請求項2】
式(1)において、R3の結合位置が5位、R4が2位、R5が5'位、R6が2'位である請求項1に記載のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の式(1)において、R1、R2はスルホン酸基、カルボキシル基、低級アルキル基、又は低級アルコキシル基、R3は低級アルキル基、低級アルコキシル基又はアセチルアミノ基、R4は水素原子又は低級アルキル基又は低級アルコキシル基、R5は低級アルキル基、R6は低級アルキル基又は低級アルコキシル基である請求項1又は2に記載のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物。
【請求項4】
請求項1に記載の式(1)において、R1、R2のどちらか一方がスルホン酸基、他方がカルボキシル基、メチル基又はメトキシ基、R1の結合位置はアゾ基に対してパラ位であり、R3がメチル基、R4が水素原子、メチル基又はメトキシ基、R5がメチル基、R6がメチル基又はメトキシ基、R7が−NHCO−基に対してパラ位のアミノ基である請求項1から3のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物。
【請求項5】
下記式(18)
【化2】


〔式(18)中、R11はアルキル基又はアルコキシル基を、R12はスルホン酸基又はカルボキシル基を、R13及びR14はアルキル基、アルコキシル基又はアセチルアミノ基を、R15及びR16はアルキル基又はアルコキシル基を、R17は水素原子又はアミノ基をそれぞれ表す。〕で示されるアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物を偏光膜基材に含有することを特徴とする偏光膜。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアゾ化合物若しくはその塩、又はそのいずれかの銅錯塩化合物と、これら以外の有機染料を1種類以上偏光膜基材に含有することを特徴とする偏光膜。
【請求項8】
偏光膜基材がポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムである請求項6又は請求項7に記載の偏光膜。
【請求項9】
液晶プロジェクタ用である請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の偏光膜。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の偏光膜を有する偏光板。

【国際公開番号】WO2005/075572
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517680(P2005−517680)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001412
【国際出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(594190998)株式会社ポラテクノ (30)
【Fターム(参考)】