説明

アゾ化合物、該アゾ化合物を含有する顔料分散剤、顔料組成物、顔料分散体及びトナー

【課題】アゾ顔料の非水溶性溶剤に対する分散性を改善するアゾ化合物の提供。
【解決手段】下記式で表されるアゾ化合物を用いる。


非水溶性溶剤、特に非極性溶剤への親和性、及びアゾ顔料、特にアセトアセトアニリド系顔料に対する親和性が高いことから、顔料分散剤として用いることで、アゾ顔料の分散性が改善された顔料組成物。又、該顔料組成物を用いることで、非水溶性溶剤に良好に分散した顔料分散体、特にスチレンモノマーの顔料分散体が提供される。更に、該顔料組成物を着色剤として用いることで色調良好なトナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ化合物、該アゾ化合物を含有してなる顔料分散剤、顔料組成物、顔料分散体及びトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
顔料の着色剤としての用途は多岐にわたり、塗料、インクジェットインク、電子写真トナー、カラーフィルター等の分野で広く用いられている。このような分野で用いられる場合、着色力及び透明性等の分光特性を向上させるために、各種媒体中に顔料を微分散しなければならない。ところが、一般的に顔料は微細化すると分散工程やその後の製造工程において熱履歴や溶剤との接触により結晶の成長や転移等が起きやすくなり、着色力や透明性の低下等の問題を引き起こしてしまう。このような問題を改善するために様々な顔料組成物及びそれを構成する顔料分散剤が提案されている。例えば、アゾ顔料に対して、異種のアゾ色素を顔料分散剤として添加した顔料組成物が提案されている(特許文献1参照)。又、顔料分散剤として、Solsperse(登録商標)(Lubrizol社製)を用いた例が開示されている(特許文献2参照)。
【0003】
一方、アセトアセトアニリド系ジスアゾ化合物は古くから黄色又は赤色着色剤として様々な化学構造のものが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262382号公報
【特許文献2】特表2002−504586号公報
【特許文献3】仏国特許第2106450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種々の提案がなされているものの、依然として顔料分散性の更なる向上が求められている。例えば、トナーを製造する際の結着樹脂中での顔料分散性は、トナーの色調の更なる向上のために重要な要件である。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、顔料分散性を向上させるアゾ化合物及び該アゾ化合物を含む顔料分散剤を提供することである。又、本発明が解決しようとする別の課題は、該アゾ化合物によってアゾ顔料の分散性を向上させた顔料組成物を提供することである。又、本発明が解決しようとする別の課題は、非水溶性溶剤中でのアゾ顔料の分散状態を向上させた顔料分散体を提供することである。更に、本発明が解決しようとする別の課題は、色調が良好なトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は下記の本発明によって解決される。即ち本発明は、下記式(1)で表されるアゾ化合物を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
[式(1)中、
乃至Rはそれぞれ水素原子又はハロゲン原子を表し、
乃至Rはそれぞれ水素原子、COOR17基又はCONR1819基を表し、且つ、R乃至Rの少なくとも一つはCOOR17基又はCONR1819基(R17乃至R19はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。)を表し、
10は炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、
11乃至R15はそれぞれ水素原子、L20基又はL2122基を表し、且つ、R11乃至R15の少なくとも一つはL20基又はL2122基(Lは二価の連結基を表し、Lは三価の連結基を表し、R20乃至R22はそれぞれ炭素原子数8以上のアルキル基又は炭素原子数8以上のアルケニル基を表す。)を表し、
16は炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。]
又、本発明は、上記式(1)で示される構造を有するアゾ化合物を含有する顔料分散剤、顔料組成物、顔料分散体及びトナーを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により新規なアゾ化合物が提供される。本発明における前記式(1)で表されるアゾ化合物は、非水溶性溶剤、特に非極性溶剤への親和性、及びアゾ顔料、特にアセトアセトアニリド系顔料に対する親和性が高いことから、顔料分散剤として用いることで、アゾ顔料の分散性が改善された顔料組成物が提供される。又、該顔料組成物を用いることで、非水溶性溶剤に良好に分散した顔料分散体、特にスチレンモノマーの顔料分散体が提供される。更に、該顔料組成物を着色剤として用いることで色調良好なトナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の化合物(38)のH−NMRスペクトル図である。
【図2】本発明の化合物(39)のH−NMRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のアゾ化合物を更に詳細に説明する。
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、前記式(1)で表されるアゾ化合物が、アゾ顔料及び非水溶性溶剤への親和性が高く、アゾ顔料の非水溶性溶剤への分散性を改善することを見出した。又、該アゾ化合物を用いることで分散性が良好なアゾ顔料組成物が得られ、更に該顔料組成物を用いることで分散状態が良好なアゾ顔料分散体及び良好な色調のトナーが提供されることを見出して、本発明に至った。
【0013】
先ず、本発明にかかる下記式(1)で表される構造を有するアゾ化合物について詳細に説明する。
【0014】
【化2】

【0015】
[式(1)中、
乃至Rはそれぞれ水素原子又はハロゲン原子を表し、
乃至Rはそれぞれ水素原子、COOR17基又はCONR1819基を表し、且つ、R乃至Rの少なくとも一つはCOOR17基又はCONR1819基(R17乃至R19はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。)を表し、
10は炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、
11乃至R15はそれぞれ水素原子、L20基又はL2122基を表し、且つ、R11乃至R15の少なくとも一つはL20基又はL2122基(Lは二価の連結基を表し、Lは三価の連結基を表し、R20乃至R22はそれぞれ炭素原子数8以上のアルキル基又は炭素原子数8以上のアルケニル基を表す。)を表し、
16は炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。]
上記式(1)で表されるアゾ化合物は、アゾ顔料との親和性に寄与する色素母骨格と、非水溶性溶剤との親和性に寄与する、L20基、L2122基より構成される。
【0016】
先ず顔料親和性に寄与する色素母骨格について説明する。
上記式(1)中のR乃至Rにおけるハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
上記式(1)中のR乃至Rは、それぞれハロゲン原子及び水素原子から任意に選択できるが、式(1)で表されるアゾ化合物の顔料との親和性の点から水素原子であることが好ましい。
【0017】
上記式(1)中のR乃至Rは、それぞれ水素原子、COOR17基及びCONR1819基から、少なくとも一つがCOOR17基又はCONR1819基となるように選択できるが、顔料分散性の点からR及びRがいずれもCOOR17基であり、R、R及びRが水素原子であることが好ましい。
上記式(1)中のR17乃至R19におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基又はn−プロピル基である。
【0018】
上記式(1)中のR17乃至R19は、それぞれ炭素原子数1乃至3のアルキル基及び水素原子から任意に選択できるが、式(1)で表されるアゾ化合物の顔料との親和性の点から式(1)中のR乃至RのうちのいずれかがCOOR17基である場合、R17はメチル基であることが好ましく、また、式(1)中のR乃至RのうちのいずれかがCONR1819基である場合、R18がメチル基であり、R19が水素原子又はメチル基であることが好ましい。
上記式(1)中のR10おけるアルキル基としては、炭素原子数が1乃至6のものであれば良く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。これらは直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であっても良い。
【0019】
上記式(1)中のR10は、式(1)で表されるアゾ化合物の顔料との親和性が著しく阻害されない限りは、更に置換基により置換されていても良い。この場合の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びシアノ基が挙げられる。
上記式(1)中のR10は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びフェニル基から任意に選択できるが、式(1)で表されるアゾ化合物の顔料との親和性の点からメチル基であることが好ましい。
【0020】
上記式(1)中のR16におけるアルキル基としては、炭素原子数が1乃至6のものであれば良く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。これらは直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であっても良い。
上記式(1)中のR16は、式(1)で表されるアゾ化合物の顔料との親和性が著しく阻害されない限りは、更に置換基により置換されていても良い。この場合の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びシアノ基が挙げられる。上記式(1)中のR16は、炭素原子数1乃至6のアルキル基及びフェニル基から任意に選択できるが、合成容易性の点からメチル基であることが好ましい。
【0021】
次に、非水溶性溶剤との親和性に寄与する、L20基及びL2122基について説明する。
上記式(1)中のR11乃至R15のうち少なくとも一つはL20基又はL2122基を表し、残りは水素原子を表す。
上記式(1)中のLは二価の連結基であり、特に限定されるものではないが、例えば、
カルボニル基
【0022】
【化3】

【0023】
を表す。Lは、合成容易性の点でカルボン酸エステル基、カルボン酸二級アミド基、スルホン酸エステル基又はスルホン酸二級アミド基であることが好ましく、カルボン酸エステル基又はカルボン酸二級アミド基であることがより好ましい。
【0024】
上記式(1)中のLは三価の連結基であり、特に限定されるものではないが、例えば、三級アミノ基
【0025】
【化4】

【0026】
を表す。Lは、合成容易性の点でカルボン酸三級アミド基又はスルホン酸三級アミド基であることが好ましく、カルボン酸三級アミド基であることがより好ましい。
【0027】
上記式(1)中のR20乃至R22におけるアルキル基は、炭素原子数8以上(好ましくは炭素原子数8以上30以下)であれば特に限定されるものではないが、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基又はトリアコンチル基等が挙げられる。これらアルキル基は直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であっても良い。
【0028】
上記式(1)中のR20乃至R22におけるアルケニル基は、炭素原子数8以上(好ましくは炭素原子数8以上30以下)であれば特に限定されるものではないが、例えば、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基又はトリアコンテニル基が挙げられる。これらアルケニル基は直鎖状、分岐状、及び環状のいずれの構造であっても良い。又、二重結合の位置はいずれの箇所でも良く、少なくとも一つ以上の二重結合を有していれば良い。
【0029】
上記式(1)中のR20乃至R22は、それぞれ更に置換基により置換されていても良い。この場合の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びシアノ基が挙げられる。
【0030】
上記式(1)中のR20乃至R22は、式(1)で表されるアゾ化合物の非水溶性溶剤との親和性の点から、それぞれ炭素原子数30以下である場合が好ましい。又、式(1)のアゾ化合物を顔料分散剤として使用する際は、顔料分散性の点から式(1)中の全てのR20乃至R22の炭素原子の総和(式(1)中に複数のR20乃至R22が存在する場合は、それら全ての炭素原子の総和)が10以上である場合が好ましい。
【0031】
上記式(1)で表されるアゾ化合物は、下記スキームに示されるように、下記式(3)及び(4)等の構造の互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
【0032】
【化5】


[式(3)及び(4)中のR乃至R16は、それぞれ式(1)におけるR乃至R16と各々同義である。]
【0033】
本発明における式(1)で表されるアゾ化合物は、公知の合成方法に基づき製造することができる。合成スキームの一例を以下に示す。
【0034】
【化6】

【0035】
[上記式(5)乃至(17)におけるR乃至R16、及び、R20乃至R22は、それぞれ上記式(1)におけるR乃至R16、及び、R20乃至R22と各々同義であり、X乃至Xは、それぞれ反応して上記式(1)における連結基L又はLを形成する置換基であり、X及びXはそれぞれ脱離基であり、nは1乃至5である。]
上記に例示した合成スキームでは、原料(5)及び原料(6)又は原料(7)を使用して中間体(8)を合成する工程1、中間体(8)のニトロ基を還元し中間体(9)を合成する工程2、原料(10)及び原料(11)を使用してアミド化し、アセトアセトアニリド類縁体である中間体(12)を合成する工程3、中間体(9)と中間体(12)をカップリングさせアゾ化合物である中間体(13)を合成する工程4、中間体(13)のニトロ基を還元し中間体(14)を合成する工程5、中間体(14)及び原料(15)を使用してアミド化し中間体(16)を合成する工程6、及び、中間体(16)と原料(17)をカップリングさせる工程7の工程を経て、本発明のアゾ化合物(1)を製造する。
【0036】
先ず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、式(5)中のXがヒドロキシル基であり、nが1である中間体と、式(6)中のXがハロゲン原子、例えば塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である原料を使用することで連結基Lがエーテル基となる式(1)で表されるアゾ化合物を合成することができる(例えば、「実験化学講座」、丸善、第1版、第19巻、p.176−188参照)。
【0037】
又、式(5)中のXがカルボン酸基であり、nが1である中間体と、式(7)中のXが二級アミノ基である原料を使用することで、連結基Lがカルボン酸三級アミド基となる式(1)で表されるアゾ化合物を合成することができる。具体的には、脱水縮合剤、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を使用する方法(例えば、Melvin S.Newman、外1名、「Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1961年、第26巻、第7号、p.2525−2528参照)、又は、ショッテン−バウマン法(例えば、Norman O.V.Sonntag、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、p.237−416参照)等が挙げられる。
【0038】
又、Xが一級アミノ基である原料(5)とXがハロゲン原子、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である原料(6)を使用することで連結基Lが二級アミノ基又はLが三級アミノ基となる式(1)で表されるアゾ化合物を合成することができる(例えば、「実験化学講座」、丸善、第1版、第20巻、p.471−489参照)。
【0039】
上記原料(5)乃至(7)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0040】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではない。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン及びヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、並びに、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。又、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記式(5)で表される化合物に対し1.0乃至20.0質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0041】
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、金属化合物、鉄、錫等と酸、塩酸、又は、酢酸等を用いる還元反応(例えば、「実験化学講座」、丸善、第1版、第17−2巻、p.162−179参照)、接触水素添加法(例えば、「実験化学講座」、丸善、第1版、第15巻、p.390−448、及び、国際公開第2009−060886号パンフレット参照)等が挙げられる。
【0042】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール及びプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン及びヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸等の酸類、並びに、水等が挙げられる。又、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記式(8)で表される化合物に対し1.0乃至20.0質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0043】
次に、工程3について説明する。工程3では公知の方法を利用できる(例えば、Datta E. Ponde、外 4名、「Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1998年、第63巻、第4号、p.1058−1063参照)。又、式(11)中のR16がメチル基の場合は原料(11)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である(例えば、Kiran Kumar Solingapuram Sai、外2名、「Journal of Organic Chemistry」、(米国)、及び、American Chemical Society、2007年、第72巻、第25号、p.9761−9764参照)。
【0044】
上記原料(10)及び(11)は、それぞれ多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0045】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール及びプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン及びヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸等の酸類、並びに、水等が挙げられる。又、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記式(10)で表される化合物に対し1.0乃至20.0質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0046】
次に、工程4について説明する。工程4では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、下記に示す方法が挙げられる。先ず、メタノール溶剤中、原料(9)を塩酸又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、このジアゾニウム塩を中間体(12)とカップリングさせて、中間体(13)を合成する。
【0047】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。又、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記式(9)で表される化合物に対し1.0乃至20質量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常−50℃乃至100℃の温度範囲で行われ、24時間以内に完結する。
【0048】
次に、工程5について説明する。工程5では工程2と同様の方法を利用し、中間体(14)を合成する。
次に、工程6について説明する。工程6では工程3と同様の方法を利用し、中間体(16)を合成する。
次に、工程7について説明する。工程7では工程4と同様の方法を利用し、上記式(1)で表されるアゾ化合物を合成する。
【0049】
上記原料(17)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0050】
各工程で得られた上記式(1)、(8)、(9)、(12)、(13)、(14)及び(16)で表される化合物は、通常の有機化合物の単離、精製方法を用いることができる。単離、精製方法とは、例えば、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、シリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー等である。これらの方法は、単独又は2つ以上組み合わせて精製を行うことにより高純度で得ることが可能である。
【0051】
各工程で得られた上記式(1)、(8)、(9)、(12)、(13)、(14)及び(16)で表される化合物は、核磁気共鳴分光分析(H−NMR)[ECA−400、日本電子(株)製]、質量分析(ESI−TOF MS)[LC/MSD TOF、Agilent Technologies製]、HPLC分析[LC−20A、(株)島津製作所製]により同定、定量を行った。
【0052】
上記の製造方法によって、上記式(1)で表されるアゾ化合物を製造することができる。下記表1〜6に、本発明のアゾ化合物の具体例として化合物(18)乃至(51)を示すが、下記の例に限定されるものではない。表1中の「Ph」は無置換のフェニル基を表し、「*」は置換基の結合部位を表す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
次に本発明の顔料分散剤、及び顔料組成物について説明する。本発明のアゾ化合物は、アゾ顔料、特にアセトアセトアニリド系顔料との親和性が高く、且つ非水溶性溶剤への親和性も高いことから、単独で又は2種以上を組み合わせて顔料分散剤として用いることができる。
【0060】
本発明の顔料組成物は、塗料、インキ、トナー、樹脂成形品に用いることができる。本発明の顔料組成物は、アゾ顔料と上記式(1)で表されるアゾ化合物である顔料分散剤とを含有することを特徴とする。
【0061】
本発明に使用し得る顔料としては、モノアゾ顔料又はジスアゾ顔料又はポリアゾ顔料等が挙げられる。その中でも、C.I.Pigment Yellow 74、C.I.Pigment Yellow 93、C.I.PigmentYellow 128、C.I.Pigment Yellow 155、C.I.Pigment Yellow180に代表されるアセトアセトアニリド系顔料は本発明の顔料分散剤との親和性がより強く好ましい。特に下記式(2)で表されるC.I.Pigment Yellow 155は、本発明の上記式(1)で表されるアゾ化合物による分散効果が高いことからより好ましい。上記顔料は単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0062】
【化7】

【0063】
尚、本発明に使用し得る顔料としては、上記のようなイエロー顔料以外の顔料でも、本発明の顔料分散剤と親和性がある顔料なら好適に用いる事ができ、限定されるものではない。
【0064】
本発明に好適に用いる事ができる顔料としては、例えば、C.I.Pigment Orange 1、C.I.Pigment Orange 5、C.I.PigmentOrange 13、C.I.Pigment Orange 15、C.I.Pigment Orange 16、C.I.Pigment Orange 34、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 38、C.I.Pigment Orange 62、C.I.Pigment Orange 64、C.I.Pigment Orange 67、C.I.Pigment Orange 72、C.I.Pigment Orange 74、C.I.Pigment Red 2、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 4、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 16、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 32、C.I.Pigment Red 41、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 166、C.I.Pigment Red 170、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 187、C.I.Pigment Red 208、C.I.Pigment Red 210、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 221、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 253、C.I.Pigment Red 258、C.I.Pigment Red 266、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Violet 13、C.I.Pigment Violet 25、C.I.Pigment Violet32、C.I.Pigment Violet 50、C.I.Pigment Blue 25、C.I.Pigment Blue 26、C.I.Pigment Brown 23、C.I.Pigment Brown 25、C.I.Pigment Brown 41等のアゾ系顔料が挙げられる。
【0065】
これらは粗製顔料であっても良く、又、本発明の顔料分散剤の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であっても良い。
【0066】
本発明の顔料組成物における顔料と顔料分散剤との質量組成比(顔料の質量:顔料分散剤の質量)は、100:0.1乃至100:20の範囲である場合が好ましい。更に好ましくは100:1乃至100:10の範囲である場合である。このように顔料と顔料分散剤との質量組成比を調整することによって、顔料分散剤が顔料の分散性に適切に寄与し、更に良好な色調を得ることができる。
【0067】
本発明の顔料組成物は湿式又は乾式にて製造が可能である。本発明のアゾ化合物が非水溶性溶剤との高い親和性を有していることを考えると簡便に均一な顔料組成物が製造できる湿式による製造が好ましい。具体的には、例えば、下記のようにして得られる。分散媒体中に顔料分散剤、及び必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料粉末を徐々に加え十分に分散媒体になじませる。更にニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル及びハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで顔料の粒子表面に顔料分散剤を吸着させ、顔料を安定に均一な微粒子状に分散することができる。
【0068】
本発明の顔料組成物に使用し得る分散媒としては顔料組成物の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されないが、本発明の上記式(1)で示される構造を有するアゾ化合物による高い顔料分散効果を得るためには、分散媒が非水溶性溶剤である場合が好ましい。該非水溶性溶剤として具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びテトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類が挙げられる。
【0069】
本発明の顔料組成物に使用し得る分散媒は重合性単量体であっても良い。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又は、アクリルアミド等を挙げる事ができる。
【0070】
本発明の顔料組成物に使用し得る樹脂としては顔料組成物の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、又は、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。その他ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。又これらの分散媒体を2種以上混合して用いることができる。湿式製造された顔料組成物は公知の方法、例えば、濾過、デカント又は遠心によって単離することができる。溶剤は洗浄によって除去することもできる。
【0071】
本発明の顔料組成物は製造時に更に助剤を添加しても良い。具体的には、例えば、表面活性剤、顔料及び非顔料分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、又はこれらの組み合わせである。又、本発明の顔料分散剤は粗製顔料製造の際に予め添加しておいても良い。
【0072】
次に本発明の顔料分散体について説明する。本発明の顔料分散体は、上記顔料組成物と非水溶性溶剤とからなる。上記顔料組成物を非水溶性溶剤に分散させても良いし、上記顔料組成物の各構成成分を非水溶性溶剤に分散させても良い。具体的には、例えば、下記のようにして得られる。分散媒体中に、必要に応じて顔料分散剤及び樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料又は顔料組成物粉末を徐々に加え十分に分散媒体になじませる。更にボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル及びハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで顔料の粒子表面に顔料分散剤を吸着させ、顔料を安定に均一な微粒子状に分散することができる。
【0073】
本発明の顔料分散体に使用し得る非水溶性溶剤としては顔料分散体の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びテトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類が挙げられる。
【0074】
本発明の顔料分散体に使用し得る非水溶性溶剤は重合性単量体であっても良い。具体的にはスチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又は、アクリルアミドを挙げることができる。
【0075】
なお、本発明において非水溶性溶剤は実質的に非水溶性であればよく、わずかに水溶性を有する溶剤も含まれる。
【0076】
本発明の顔料分散体に使用し得る樹脂としては顔料組成物の目的用途に応じて決められるものであり、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、又は、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。その他ポリウレタン樹脂やポリペプチド樹脂が挙げられる。又これらの樹脂を2種以上混合して用いることができる。
【0077】
次に本発明のトナーについて詳細を説明する。本発明の顔料組成物は、少なくとも、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を含むトナーにおいて、着色剤としても使用可能である。本発明の顔料組成物を用いることにより、トナー粒子中の着色剤の分散性が良好に保たれるため、色調良好なトナーが提供される。
【0078】
本発明に用いられるトナーを構成するトナー粒子の着色剤としては、本発明の顔料組成物が必ず使用されるが、本発明の顔料分散剤による顔料分散性向上の効果を阻害しない限りは、該顔料と他の着色剤を併用することができる。
【0079】
具体的には、例えば、C.I.Pigment Yellow 109、C.I.Pigment Yellow 110、C.I.Pigment Yellow 129、C.I.Pigment Yellow 147、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Solvent Yellow 9、C.I.Solvent Yellow 17、C.I.Solvent Yellow 24、C.I.Solvent Yellow 31、C.I.Solvent Yellow 35、C.I.Solvent Yellow 58、C.I.Solvent Yellow 93、C.I.Solvent Yellow 100、C.I.Solvent Yellow102、C.I.Solvent Yellow 103、C.I.Solvent Yellow 105、C.I.Solvent Yellow 112、C.I.Solvent Yellow 162、及び、C.I.Solvent Yellow 163等の顔料や染料が挙げられる。
【0080】
本発明のトナーを構成するトナー粒子に用いられる結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、あるいはそれらを結合させたハイブリッド樹脂等が使用可能である。
【0081】
又、重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、及び、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体、ブタジエン、イソプレン、及び、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独又は、一般的にはJ.Brandrup、E.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley&Sons、1989年、p.209−277に記載の理論ガラス転移温度が、40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合することによって、トナーの保存安定性、多数枚印刷時の画像安定性、及び、フルカラー画像における画像の鮮明性を更に向上させることができる。
【0082】
更に、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、結着樹脂の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
【0083】
本発明のトナーを構成するトナー粒子に用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及び上記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0084】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0085】
これらの架橋剤は、トナーの定着性及び耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10.0質量部の範囲、より好ましくは0.100乃至5.00質量部の範囲で用いることが良い。
【0086】
本発明のトナーを構成するトナー粒子には、ワックス成分を含有させても良い。ワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス及びペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、及び、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びキャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられ、該誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物及びグラフト変性物も含まれる。又、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、及び、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併せて用いることができる。
【0087】
ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、更には3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が結着樹脂100質量部に対して2.5乃至15.0質量部の範囲であることによって、ワックスがトナーの帯電特性に影響を与えることなく、オイルレス定着を行うことができる。
【0088】
本発明のトナーを構成するトナー粒子は、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量をコントロールするために、必要に応じて荷電制御剤を混合して用いても良い。このような荷電制御剤としては、例えば、モノアゾ金属化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸、その金属塩、無水物、及び、エステル体等が挙げられる。又、上記荷電制御化合物を導入した樹脂をトナー中に内添させても良い。
【0089】
本発明のトナーを構成するトナー粒子は、流動化剤として無機微粉体が外部添加されていても良い。このような流動化剤としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ又はそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体等が挙げられる。
【0090】
本発明のトナーは、磁性トナー又は非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、本発明のトナーを構成するトナー粒子は、磁性材料を混合して用いても良い。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、又は他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co及びNiのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W及びVのような金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。 本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、従来使用されている方法は全て使用することができる。具体的には、粉砕法、懸濁重合法、及び、乳化重合法等が挙げられる。
【0091】
本発明において、トナーの重量平均粒径(以下、D4とも称する)は、好ましくは3.0乃至15.0μmであり、より好ましくは4.0乃至12.0μmである。D4が3.0乃至15.0μmであれば、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化、多数枚の連続現像動作(耐久動作)におけるカブリやトナー飛散の発生低減、及び、ハーフトーン部での色再現性の面で好ましい。3.0μm未満の場合には、電子写真現像システムに適用したときに帯電安定化が達成しづらくなり、多数枚の連続現像動作(耐久動作)において、カブリやトナー飛散が発生しやすくなる。D4が15.0μmを超える場合には、ハーフトーン部の再現性が大きく低下し、得られた画像は表面に凹凸のある画像になってしまい好ましくない。
【0092】
又、トナーのD4と個数平均粒径(以下、D1)の比(以下、D4/D1)は1.35以下であることが好ましく、より好ましく1.30以下である。D4/D1が1.35以下である場合は、カブリの発生や転写性の低下がさらに生じにくくなるとともに、高解像度が得やすくなる。
【0093】
尚、本発明のトナーのD4とD1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、又は反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
【実施例】
【0094】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、文中の「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0095】
〔実施例1〕
下記のようにして、前記式(1)で表されるアゾ化合物を得た。
【0096】
<合成例1>
[化合物(38)の合成]
式(1)において、R乃至R、R、R、R、R11、R13、及び、R15が水素原子であり、R12及びR14がL2122基であり、Lがカルボン酸三級アミド基であり、R21及びR22が2−エチルヘキシル基であり、R及びRがCOOR17基であり、R10、R16及びR17がメチル基である化合物(38)を下記の合成スキームに従って合成した。
【0097】
【化8】

【0098】
先ず、化合物(52)及び(53)を用いて化合物(54)を合成した。クロロホルム50.00部に化合物(52)5.00部を加え、10℃以下に氷冷し、塩化チオニル11.00部を加えた。その後、65℃で3時間撹拌した。再び10℃以下に氷冷し、化合物(53)11.70部及びトリエチルアミン6.00部を加えた。その後、65℃で3時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、カラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル/ヘプタン)により精製することで中間体(54)13.00部を得た(収率83.4%)。
【0099】
次に、化合物(54)を用いて化合物(55)を合成した。N,N−ジメチルホルムアミド20.00部に化合物(54)12.00部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.400部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、室温で4時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(55)11.00部を得た(収率96.0%)。
【0100】
次に、化合物(56)及び(57)を用いて化合物(58)を合成した。クロロホルム30.00部に化合物(56)5.00部を加え、10℃以下に氷冷し、化合物(57)3.20部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(58)7.60部を得た(収率94.5%)。
【0101】
次に、化合物(55)及び(58)を用いて化合物(59)を合成した。化合物(55)10.00部に、メタノール50.00部、濃塩酸4.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム1.60部を水3.50部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.77部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール50.00部に、化合物(58)3.54部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム4.60部を水5.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(59)11.5部を得た(収率83.9%)。
【0102】
次に、化合物(59)を用いて化合物(60)を合成した。N,N−ジメチルホルムアミド20.00部に化合物(59)11.00部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.40部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、室温で4時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(60)9.00部を得た(収率84.8%)。
【0103】
次に、化合物(60)及び(57)を用いて化合物(61)を合成した。クロロホルム50.00部に化合物(60)8.50部を加え、10℃以下に氷冷し、化合物(57)0.90部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(61)8.50部を得た(収率90.8%)。
【0104】
次に、化合物(61)及び(62)を用いて化合物(38)を合成した。化合物(62)1.83部に、メタノール20.00部、濃塩酸2.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム0.90部を水2.00部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.42部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール80.00部に、化合物(61)8.00部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム2.50部を水5.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、クロロホルムで抽出し、カラムクロマトグラフィーにより精製して化合物(38)8.20部を得た(収率82.6%)。
【0105】
以下に、得られた化合物(38)の分析結果を示す。
[前記化合物(38)の分析結果]
[1]核磁気共鳴分光分析(H−NMR)[400MHz、CDCl、室温(25℃)]の結果(図1参照):
δ[ppm]=15.56(1H、s)、14.72(1H、s)、11.36(1H、s)、11.34(1H、s)、8.54(1H、s)、8.08(1H、d)、7.73(1H、d)、7.67(2H、d)、7.56(2H、d)、7.33(2H、s)、7.00(1H、s)、4.0(3H、s)、3.91(3H、s)、3.3(4H、s)、3.11(4H、s)、2.61(3H、s)、2.48(3H、s)、1.74(2H、s)、1.43−0.96(32H、m)、0.95−0.59(24H、m)
[2]質量分析(ESI−TOF MS)の結果:
(M−H)のm/z=1133.7
((M−H)は化合物(38)のプロトン脱離イオンを表す。)
[3]HPLC分析の結果:
純度=99.0面積%、保持時間19.6分、電子吸収スペクトルλmax=382nm(溶媒:メタノール)
【0106】
<合成例2>
[化合物(39)の合成]
式(1)において、R乃至R、R、R、R、R11、R14、及び、R15が水素原子であり、R12及びR13がL20基であり、Lがカルボン酸エステル基であり、R20が2−エチルヘキシル基であり、R及びRがCOOR17基であり、R10、R16及びR17がメチル基である化合物(39)を下記の合成スキームに従って合成した。
【0107】
【化9】

【0108】
先ず、化合物(63)及び(64)を用いて化合物(65)を合成した。化合物(63)8.74部、化合物(64)16.18部及びテトライソプロポキシチタン0.12部を加えて、150℃で4時間撹拌した。反応終了後、未反応の化合物(64)を減圧蒸留により留去後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(65)15.30部を得た(収率86.0%)。
【0109】
次に、化合物(65)を用いて化合物(66)を合成した。N,N−ジメチルホルムアミド20.00部に化合物(65)12.00部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.60部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、室温で4時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(66)10.00部を得た(収率89.5%)。
【0110】
次に、前記合成例1と同様にして化合物(58)を合成した。
次に、化合物(66)及び(58)を用いて化合物(67)を合成した。化合物(66)9.00部に、メタノール50.00部、濃塩酸5.80部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.30部を水4.60部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸1.10部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール50.00部に、化合物(58)5.00部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム6.40部を水7.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(67)12.50部を得た(収率88.2%)。
【0111】
次に、化合物(67)を用いて化合物(68)を合成した。N,N−ジメチルホルムアミド20.00部に化合物(67)11.00部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.50部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、室温で4時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(68)9.30部を得た(収率88.7%)。
【0112】
次に、化合物(68)及び(57)を用いて化合物(69)を合成した。クロロホルム50.00部に化合物(68)8.50部を加え、10℃以下に氷冷し、化合物(57)1.23部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(69)9.00部を得た(収率93.0%)。
【0113】
次に、化合物(69)及び(62)を用いて化合物(39)を合成した。化合物(62)2.00部に、メタノール20.00部、濃塩酸3.00部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム1.20部を水3.00部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.56部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール80.00部に、化合物(69)8.00部を加えて、10℃以下に氷冷し、上記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム3.30部を水5.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、クロロホルムで抽出し、カラムクロマトグラフィーにより精製して化合物(39)9.10部を得た(収率86.3%)。
【0114】
以下に、得られた化合物(39)の分析結果を示す。
[前記化合物(39)の分析結果]
[1]核磁気共鳴分光分析(H−NMR)[400MHz、CDCl、室温(25℃)]の結果(図2参照):
δ[ppm]=15.61(1H、s)、14.82(1H、s)、11.39(2H、s)、8.60(1H、s)、8.14(1H、d)、7.86(1H、d)、7.78(1H、d)、7.73(2H、d)、7.62(1H、s)、7.62(2H、d)、4.33−4.14(4H、m)、4.07(3H、s)、3.98(3H、s)、2.68(3H、s)、2.60(3H、s)、1.80−1.63(2H、m)、1.60(2H、s)、1.47−1.19(16H、m)、0.98−0.75(12H、m)
[2]質量分析(ESI−TOF MS)の結果:
(M−H)のm/z=911.4
((M−H)は化合物(39)のプロトン脱離イオンを表す。)
[3]HPLC分析の結果:
純度=99.0面積%、保持時間=20.8分、電子吸収スペクトルλmax=384nm(溶媒:メタノール)
【0115】
〔顔料分散体の調製〕
本発明の顔料分散体を下記の方法で調製した。
【0116】
<顔料分散体の調製例1>
アゾ顔料として前記式(2)で表される顔料18.00部、顔料分散剤として前記化合物(18)1.80部、非水溶性溶剤としてスチレン180.00部を用い、ガラスビーズ(直径1mm)130部と共に混合し、更にアトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させメッシュで濾し、顔料分散体(101)を得た。
【0117】
<顔料分散体の調製例2>
前記顔料分散体の調製例1において化合物(18)を、化合物(19)乃至(51)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ顔料分散体(102)乃至(134)を得た。
【0118】
<顔料分散体の調製例3>
前記顔料分散体の調製例1において、前記式(2)で表される顔料を下記式(70)で表される顔料に変更し、化合物(18)を化合物(38)に変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(135)を得た。
【0119】
【化10】

【0120】
<顔料分散体の調製例4>
前記顔料分散体の調製例1において、前記式(2)で表される顔料を下記式(71)で表される顔料に変更し、化合物(18)を化合物(38)に変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(136)を得た。
【0121】
【化11】

【0122】
<顔料分散体の調製例5>
前記顔料分散体の調製例1において、化合物(18)を化合物(38)に変更し、スチレンモノマーをアクリル酸ブチルに変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(137)を得た。
【0123】
<顔料分散体の調製例6>
前記顔料分散体の調製例1において、化合物(18)を化合物(38)に変更し、スチレンモノマーをトルエンに変更した以外は同様の操作を行って、顔料分散体(138)を得た。
【0124】
〔比較用顔料分散体の調製〕
比較用顔料分散体を下記の方法で調製した。
【0125】
<比較用顔料分散体の調製例1>
前記の顔料分散体の調製例1において、化合物(18)を加えないこと以外は同様の操作を行って、比較用顔料分散体(139)を得た。
【0126】
<比較用顔料分散体の調製例2>
前記の顔料分散体の調製例3及び4において、それぞれ化合物(38)を加えないこと以外は同様の操作を行って、比較用顔料分散体(140)及び(141)を得た。
【0127】
<比較用顔料分散体の調製例3>
前記の顔料分散体の調製例5及び6において、それぞれ化合物(38)を加えないこと以外は同様の操作を行って、比較用顔料分散体(142)及び(143)を得た。
【0128】
<比較用顔料分散体の調製例4>
前記の顔料分散体の調製例1において化合物(18)を、前記特許文献3に記載の下記比較用化合物(72)に変更した以外は同様の操作を行って、比較用顔料分散体(144)を得た。
【0129】
【化12】

【0130】
<比較用顔料分散体の調製例5>
前記の顔料分散体の調製例1において化合物(18)を、前記特許文献2に記載の比較用顔料分散剤(73)「Solsperse 24000SC(登録商標)(Lubrizol社製)」に変更した以外は同様の操作を行って、比較用顔料分散体(145)を得た。
【0131】
〔実施例2〕
本発明で得た化合物を下記の方法で評価した。
【0132】
<顔料分散性評価>
上記式(1)で示される化合物による顔料分散性について、前記顔料分散体の塗工膜の光沢評価によって行った。即ち顔料分散体をスポイトですくい取り、アート紙(SA金藤+、180kg)[王子製紙(株)製]上部に直線上に載せ、ワイヤーバー(#10)を用いて紙上に均一に塗工し、乾燥後の光沢(反射角:60°)を光沢計Gloss Meter VG2000[日本電色工業(株)製]により測定した。顔料がより微細に分散するほど塗工膜の平滑性が向上し光沢が向上することから、顔料分散剤を加えていない顔料分散体の塗工膜の光沢を基準として、顔料分散剤を加えた顔料分散体の塗工膜の光沢向上率を下記のように評価した。
A:光沢向上率が20%以上
B:光沢向上率が10%以上20%未満
C:光沢向上率が1%以上10%未満
D:光沢向上率が1%未満
【0133】
なお、基準となる顔料分散体は顔料分散剤を含んでいないこと以外は非水溶性溶媒及び顔料の種類が同じになるものを選択した。具体的には、顔料分散体(139)の塗工膜の光沢を基準として顔料分散体(101)乃至(134)の塗工膜の光沢向上率、顔料分散体(140)の塗工膜の光沢を基準として顔料分散体(135)の塗工膜の光沢向上率、顔料分散体(141)の塗工膜の光沢を基準として顔料分散体(136)の塗工膜の光沢向上率、顔料分散体(142)の塗工膜の光沢を基準として顔料分散体(137)の塗工膜の光沢向上率、顔料分散体(143)の塗工膜の光沢を基準として顔料分散体(138)の塗工膜の光沢向上率をそれぞれ測定し、評価した。
光沢向上率が10%以上であれば良好な顔料分散性であると判断した。
【0134】
顔料分散体の種類、顔料分散剤の種類、及び顔料分散体の顔料分散性の評価結果を表7に示した。
【0135】
〔比較例1〕
比較用顔料分散体(139)乃至(145)の顔料分散性を実施例2と同じ方法で評価した。評価結果を表7に示した。
【0136】
【表7】

【0137】
表7より、本発明のアゾ化合物はアゾ顔料と共に用いることで、アゾ顔料の分散性が良好な顔料分散体を与える。このことから、本発明のアゾ化合物がアゾ顔料に対しての顔料分散剤として有用であることが確認された。
【0138】
<顔料分散体の調整例7>
アゾ顔料として前記式(2)で表わされる顔料42.00部、顔料分散剤として前記化合物(38)4.20部をハイブリダイゼーションシステム NHS−0(奈良機械製作所社製)によって、乾式混合し、顔料組成物を調製した。
【0139】
得られた顔料組成物の18.00部を、スチレン180.00部と混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で1時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散体を得た。
【0140】
得られた顔料分散体に対して、上記の実施例2の顔料分散性の評価を行ったところ、同様に良好な顔料分散性が得られることが確認された。
【0141】
<イエロートナー粒子の製造例1>
高速撹拌装置TK−ホモミキサー[プライミクス(株)製]を備えた2l用四つ口フラスコ中にイオン交換水710.00部と0.1mol/l−NaPO水溶液450.00部を添加し回転数を12000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−CaCl水溶液68.00部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤としてCa(POを含む水系分散媒体を調製した。
【0142】
下記成分を60℃に加温し、TK−ホモミキサーを用いて5000rpmにて均一に溶解、分散した。
・顔料分散体(101) 132.00部
・スチレン単量体 46.00部
・n−ブチルアクリレート単量体 34.00部
・極性樹脂 10.00部
[プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物(ガラス転移温度=65℃、M=10000、M=6000)]
・エステルワックス 25.00部
(DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度=70℃、M=704)・サリチル酸アルミニウム化合物 2.00部
[オリエント化学工業(株)製 ボントロンE−88]
・ジビニルベンゼン単量体 0.10部
これに重合開始剤である2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)10部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。上記水系分散媒体中にこの重合性単量体組成物を投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
【0143】
次に、重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、Ca(POを含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、濾過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とをCa(POを含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返し行った。その後に、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してイエロートナー粒子(201)を得た。
【0144】
<イエロートナー粒子の製造例2>
前記イエロートナー粒子の製造例1において、顔料分散体(101)を顔料分散体(102)乃至(136)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれイエロートナー粒子(202)及び(236)を得た。
【0145】
<比較用イエロートナー粒子の製造例1>
前記イエロートナー粒子の製造例1において、顔料分散体(101)を顔料分散体(139)乃至(141)、(144)、及び、(145)にそれぞれ変更した以外は同様の操作を行って、比較用イエロートナー粒子(237)乃至(241)を得た。
【0146】
<イエロートナーの製造例1>
前記イエロートナー粒子(201)の100.00部に、BET法で測定した比表面積が200m/gである疎水化処理されたシリカ微粉体1.80部をヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製]で乾式混合してイエロートナー(301)を得た。
【0147】
<イエロートナーの製造例2>
前記イエロートナーの製造例1において、イエロートナー粒子(201)をイエロートナー粒子(202)乃至(236)にそれぞれ変更した以外は同様の操作を行って、イエロートナー(302)乃至(336)を得た。
【0148】
<比較用イエロートナーの製造例1>
前記イエロートナーの製造例1において、イエロートナー粒子(201)をそれぞれイエロートナー粒子(237)乃至(241)に変更した以外は同様の操作を行って、イエロートナー(337)乃至(341)を得た。
【0149】
〔実施例3〕
本発明で得たイエロートナーを下記の方法で評価した。
【0150】
<イエロートナーの色調評価例>
イエロートナー(301)乃至(336)について、それぞれイエロートナー5部に対し、アクリル樹脂でコートされたフェライトキャリア95.00部を混合し、現像剤とした。カラー複写機CLC−1100改造機[キヤノン(株)製、定着オイル塗布機構を除いた]を用いて、温度25℃/湿度60%RHの環境下において画像出しを行い、CIE(国際照明委員会)により規定されたL表色系におけるL、Cを反射濃度計Spectrolino(GretagMacbeth製)にて、光源:D50、視野:2°の条件で測定した。顔料分散剤を含有していないイエロートナーの画像を基準として、それぞれのイエロートナー画像のL=95.5におけるCの向上率を下記のように評価した。
A:Cの向上率が5%以上
B:Cの向上率が1%以上5%未満
C:Cの向上率が0%以上1%未満
D:Cの向上率が0%未満
の向上率が1%以上であれば良好な色調であると判断した。 イエロートナーの種類、イエロートナーの色調評価結果を表8に示した。
【0151】
〔比較例2〕
<比較用イエロートナーの色調評価例>
比較用イエロートナー(337)乃至(341)を実施例3と同様の方法で評価した。評価結果を表8に示した。
【0152】
【表8】

【0153】
表8より、本発明のアゾ化合物は色調が良好なトナーを与える。このことから、本発明のアゾ化合物がトナー用のアゾ顔料分散剤として有用であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明の活用例としては、本発明にかかるアゾ化合物は種々の用途に適用可能であり、本明細書で説明した顔料分散剤としての用途にとどまらず、静電荷像現像用トナー、インクジェットインク、感熱転写記録シート、カラーフィルター用の着色剤、光記録媒体用のとしても使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアゾ化合物。
【化1】


[式(1)中、
乃至Rはそれぞれ水素原子又はハロゲン原子を表し、
乃至Rはそれぞれ水素原子、COOR17基又はCONR1819基を表し、且つ、R乃至Rの少なくとも一つはCOOR17基又はCONR1819基(R17乃至R19はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1乃至3のアルキル基を表す。)を表し、
10は炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表し、
11乃至R15はそれぞれ水素原子、L20基又はL2122基を表し、且つ、R11乃至R15の少なくとも一つはL20基又はL2122基(Lは二価の連結基を表し、Lは三価の連結基を表し、R20乃至R22はそれぞれ炭素原子数8以上のアルキル基又は炭素原子数8以上のアルケニル基を表す。)を表し、
16は炭素原子数1乃至6のアルキル基又はフェニル基を表す。]
【請求項2】
式(1)において、R10及びR16がいずれもメチル基である請求項1に記載のアゾ化合物。
【請求項3】
式(1)において、R及びRがいずれもCOOR17基であり、R、R及びRがいずれも水素原子である請求項1又は2に記載のアゾ化合物。
【請求項4】
式(1)において、R乃至Rの少なくとも一つはCOOR17基であり、R17がメチル基である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
式(1)において、R乃至Rの少なくとも一つはCONR1819基であり、R18がメチル基であり、R19が水素原子又はメチル基である請求項1又は2に一項に記載のアゾ化合物。
【請求項6】
式(1)において、R11乃至R15の少なくとも一つがL20基であり、
がカルボン酸エステル基
【化2】


である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアゾ化合物。
【請求項7】
式(1)において、R11乃至R15の少なくとも一つがL2122基であり、
がカルボン酸三級アミド基
【化3】


である請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアゾ化合物。
【請求項8】
式(1)の化合物が有する全てのL20基及びL2122基におけるR20乃至R22の炭素原子の総和が10以上である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアゾ化合物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の式(1)で表されるアゾ化合物を含有することを特徴とする顔料分散剤。
【請求項10】
請求項9に記載の顔料分散剤とアゾ顔料とを含有することを特徴とする顔料組成物。
【請求項11】
該アゾ顔料が、アセトアセトアニリド系顔料であることを特徴とする請求項10に記載の顔料組成物。
【請求項12】
該アゾ顔料が、下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の顔料組成物。
【化4】

【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の顔料組成物と非水溶性溶剤とを含むことを特徴とする顔料分散体。
【請求項14】
該非水溶性溶剤がスチレンである請求項13に記載の顔料分散体。
【請求項15】
結着樹脂及び着色剤を有するトナー粒子を有するトナーであって、該着色剤が請求項10乃至12のいずれか一項に記載の顔料組成物を含有することを特徴とするトナー。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−67282(P2012−67282A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175002(P2011−175002)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】