説明

アゾ系色素、及び、着色組成物

【課題】非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れたアゾ系色素、及び、着色組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表され、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるアゾ系色素。


上記の式(1)中、Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NH2の残基を表す。B1およびB2は、各々独立に、−CR1=、−CR2=、または窒素原子を表し、B1およびB2が同時に窒素原子を表すことはない。R5およびR6は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等を表す。G、R1、およびR2は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基等を表す。B1またはB2が有するR1またはR2とR5、およびR5とR6は、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ系色素、及び、着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ材料、光記録媒体、インクジェット用材料等に有機色素が数多く用いられている。色素を塗布プロセスやインクジェットプロセスに使用する場合、着色効率を上げるため、高いモル吸光係数に加え、溶媒への高い溶解性が求められる。
また、非特許文献1において、エレクトロウェッティング法のディスプレイが報告されて以来、エレクトロウェッティング法のディスプレイが注目を浴びている。エレクトロウェッティング法のディスプレイは、基板上に水性媒体と油性着色インクの2相で満たされた複数のピクセルを配し、ピクセルごとに電圧印加のon−offによって水性媒体/油性着色インク界面の親和性を制御し、油性着色インクを基板上に展開/凝集させることによって行う画像表示方式である。このようなエレクトロウェッティング法のディスプレイに用いられる色素には、炭化水素系溶媒への高い溶解性が求められる。
【0003】
ディスプレイ部材であるカラーフィルタ用の色素としては、例えば、下記化合物C−101、C−102をはじめとする各種アゾ系色素化合物が知られている。
【0004】
【化1】

【0005】
【化2】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nature(London),425,383(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記C−101、C−102等の色素は、非極性溶媒への溶解性、特に炭化水素系溶媒への溶解性の点で不十分で、更なる改善が求められていた。
本発明は、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れたアゾ系色素を提供することを課題とする。また、該アゾ系色素を含み、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置、および電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタに好適な着色組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1> 下記一般式(1)で表され、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるアゾ系色素。
【0009】
【化3】

【0010】
Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NHの残基を表す。BおよびBは、各々独立に、−CR=、−CR=、または窒素原子を表し、BおよびBが同時に窒素原子を表すことはない。RおよびRは、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。G、R、およびRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換された置換アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。BまたはBが有するRまたはRとR、およびRとRは、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。
【0011】
<2> 前記一般式(1)で表されるアゾ系色素が、下記一般式(2)で表される化合物である<1>に記載のアゾ系色素。
【0012】
【化4】

【0013】
はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表し、Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表す。R、およびRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換された置換アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。RおよびRは各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。RおよびRは、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。Qは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表す。
【0014】
<3> <1>または<2>に記載のアゾ系色素、および非極性溶媒を含み、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置のカラーフィルタの作製に用いられる着色組成物。
<4> <1>または<2>に記載のアゾ系色素、および非極性溶媒を含み、電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタの作製に用いられる着色組成物。
【0015】
本発明においては一般式(1)で表されるアゾ系色素は、分子中に−SOH、−PO、−COH等の極性基を有していない色素であり、非極性溶媒に溶解しやすく、非極性溶媒に溶解して色素組成物を調製することができる。
特に一般式(1)で表されるアゾ系色素は、長鎖アルキル基、分岐アルキル基を有しているので、非極性溶媒への溶解性に優れる。一般式(1)で表されるアゾ系色素のSP値(溶解性パラメーター)が本発明で使用される非極性溶媒のSP値に近い為、非極性溶媒との溶解性が良化したものと推定している。前記C−101、C−102のSP値は極性基が導入されており、SP値が非極性溶媒のSP値と異なるために溶解性低下するものと考えられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れたアゾ系色素を提供することができる。また、本発明によれば、該アゾ系色素を含み、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置、および電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタに好適な着色組成物を提供することがきる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<アゾ系色素>
本発明の下記一般式(1)で表されるアゾ系色素は、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上である。
色素として、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であり、一般式(1)で表されるアゾ系色素を用いることで、ディスプレイ等、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイに用いられる色素として有用である。
以下、一般式(1)で表されるアゾ系色素について詳細に説明する。
【0018】
【化5】

【0019】
Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NHの残基を表す。BおよびBは、各々独立に、−CR=、−CR=、または窒素原子を表し、BおよびBが同時に窒素原子を表すことはない。RおよびRは、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。G、R、およびRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換された置換アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。BまたはBが有するRまたはRとR、およびRとRは、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。
【0020】
前記一般式(1)において、Aは5員複素環ジアゾ成分であるA−NHの残基を表す。このA−NHのAを構成する5員複素環のヘテロ原子の例としては、N、O、およびSを挙げることができる。好ましくは含窒素5員複素環であり、複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。
【0021】
前記Aにおける好ましい複素環の例には、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環を挙げることができる。これらの各複素環は更に置換基を有していてもよい。中でも、下記一般式(a)〜(f)で表される、ピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環が好ましい。
【0022】
【化6】

【0023】
前記一般式(a)〜(f)のR〜R20は、一般式(1)におけるG、R、およびRと同義であり、その好ましい態様も同様である。一般式(a)〜(f)のうち、好ましいのは一般式(a)または(b)で表されるピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましいのは一般式(a)で表されるピラゾール環である。
【0024】
前記BおよびBは、各々独立に、−CR=、−CR=、または窒素原子を表し、BおよびBが同時に窒素原子を表すことはない。すなわち、−CR=、−CR=を表すか、あるいはBおよびBのいずれか一方が窒素原子を、他方が−CR=または−CR=を表す。中でも特に、各々−CR=、−CR=を表すものがより好ましい。R、およびRは、一般式(1)におけるR、およびRと同義であり、その好ましい態様も同様である。
【0025】
前記RおよびRは、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していてもよい。前記R、Rで表される好ましい基としては、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、またはアリールスルホニル基である。最も好ましくは、水素原子、芳香族基、複素環基である。これら好ましい各基が更に置換基を有する態様も好適である。
【0026】
前記G、R、およびRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表し、これらの基は更に置換されていてもよい。
【0027】
前記Gで表される好ましい基としては、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、またはヘテロ環チオ基が挙げられ、より好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」、またはアシルアミノ基である。中でも、水素原子、アリールアミノ基が最も好ましい。各基は更に置換基を有していてもよい。
【0028】
前記R、Rで表される好ましい基としては、水素原子、脂肪族基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、またはシアノ基を挙げることができる。各基は更に置換基を有していてもよい。
また、BまたはBが有するRまたはRとR、及び/又は、RとRは、互いに結合して5員環若しくは6員環を形成してもよい。
前記A、R、R、R、R、およびGで表される各基が更に置換基を有する場合の置換基としては、上記のG、R、およびRで挙げたものと同様の極性基を有しない置換基を挙げることができる。
【0029】
以下、一般式(1)に係る各基について詳細に説明する。
本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
本明細書において、脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基および置換アラルキル基を意味する。脂肪族基は、分岐を有していてもよく、また環を形成していてもよい。脂肪族基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。アラルキル基および置換アラルキル基のアリール部分はフェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルが特に好ましい。脂肪族基の例には、メチル基、エチル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、2−フェネチル基、ビニル基、およびアリル基を挙げることができる。
【0030】
本明細書において、芳香族基は、アリール基および置換アリール基を意味する。アリール基は、フェニル基またはナフチル基であることが好ましく、フェニル基が特に好ましい。芳香族基の炭素数は6〜20であることが好ましく、6〜16がさらに好ましい。芳香族基の例には、フェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、o−クロロフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル基が含まれる。
【0031】
本明細書において、複素環基には、置換基を有する複素環基および無置換の複素環基が含まれる。複素環に脂肪族環、芳香族環または他の複素環が縮合していてもよい。複素環基としては、5員環または6員環の複素環基が好ましい。置換基の例には、脂肪族基、ハロゲン原子、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アシルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基などが含まれる。複素環基の例には、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基および2−フリル基が含まれる。
【0032】
また、カルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ジオクチルカルバモイル基、ピロリジノカルボニル基が含まれる。
【0033】
アルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基および無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、炭素数が2〜12のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基が含まれる。
【0034】
アリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素数が7〜12のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0035】
アシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、炭素数が1〜12のアシル基が好ましい。アシル基の例には、アセチル基、オクタノイル基、2−エチルヘキサノイル基、ドデカノイル基およびベンゾイル基が含まれる。
アルコキシ基には、置換基を有するアルコキシ基および無置換のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基としては、炭素数が1〜12のアルコキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基、ヒドロキシル基が含まれる。アルコキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基が含まれる。
アリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素数が6〜12のアリールオキシ基が好ましい。置換基の例には、アルコキシ基が含まれる。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、o−メトキシフェノキシ基、p−オクチルオキシフェノキシ基、p−ドデシルオキシフェノキシ基が含まれる。
【0036】
アシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、炭素数1〜12のアシルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、2−エチルヘキサノイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が含まれる。
カルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0037】
ヘテロ環オキシ基には、5員環または6員環の複素環基を有するオキシ基が好ましく、該複素環基の例としては、2−ピリジル基、2−チエニル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基および2−フリル基が挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルオキシ基および無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、アルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素数が2〜12のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基の例には、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、ブトキシカルボニルオキシ基、オクチルオキシカルボニルオキシ基、ドデシルオキシカルボニルオキシ基が含まれる。
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルオキシ基および無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素数が7〜12のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基の例には、フェノキシカルボニルオキシ基が含まれる。
【0038】
「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」の置換基は、さらに置換基を有していてもよい。無置換のアミノ基は含まれない。アルキルアミノ基としては、炭素数1〜6のアルキルアミノ基が好ましい。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基が含まれる。アリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素数が6〜12のアリールアミノ基が好ましい。更に置換基を有するときの置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基、2−メチルアニリノ基、2,4,6−トリメチルアニリノ基、2,6−ジエチル−4−メチルアニリノ基、2−クロロアニリノ基、2,4,6−トリクロロアニリノ基が含まれる。
アシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基が含まれる。前記アシルアミノ基としては、炭素数が2〜12のアシルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基の例には、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、N−フェニルアセチルアミノ基が含まれる。
【0039】
ウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。前記ウレイド基としては、炭素数が1〜12のウレイド基が好ましい。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
スルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N,N−ジブチルスルファモイルアミノ基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルコキシカルボニルアミノ基および無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素数が2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素数が7〜12のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。前記アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0040】
アルキルスルホニルアミノ基及びアリールスルホニルアミノ基には、置換基を有するアルキル及びアリールスルホニルアミノ基、および無置換のアルキル及びアリールスルホニルアミノ基が含まれる。スルホニルアミノ基としては、炭素数が1〜12のスルホニルアミノ基が好ましい。スルホニルアミノ基の例には、メタンスルホニルアミノ基、N−フェニルメタンスルホニルアミノ基、オクタンスルホニルアミノ基、ドデカンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基、アリールチオ基およびヘテロ環チオ基には、置換基を有するアルキルチオ基、アリールチオ基およびヘテロ環チオ基と無置換のアルキルチオ基、アリールチオ基およびヘテロ環チオ基が含まれる。アルキルチオ基、アリールチオ基およびヘテロ環チオ基としては、炭素数が1〜12のものが好ましい。アルキル,アリール又は複素環チオ基の例には、メチルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、フェニルチオ基、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0041】
アルキルスルホニル基およびアリールスルホニル基の例としては、それぞれメタンスルホニル基およびフェニルスルホニル基を挙げることができる。
アルキルスルフィニル基およびアリールスルフィニル基の例としては、それぞれメタンスルフィニル基およびフェニルスルフィニル基を挙げることができる。
スルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基が含まれる。
【0042】
本発明において、一般式(1)で表されるアゾ系色素は、下記一般式(2)で表されるアゾ系色素が、特に好ましい。
【0043】
【化7】

【0044】
前記一般式(2)中、Zは、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表す。
としては、σp値が0.30〜1.0の電子吸引性基であることが好ましい。好ましい具体的な基については後述する電子吸引性置換基が挙げられるが、中でも炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜12のカルバモイル基、または炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
【0045】
は、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表し、脂肪族基、芳香族基、複素環基については既述の通りである。
また、一般式(2)中のR、R、R、およびRは、既述の一般式(1)におけるR、R、R、およびRと同義であり、好ましい態様も同様である。RとR、及びRとRは、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。
【0046】
一般式(2)中、RおよびRは各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。中でも、水素原子、芳香族基、複素環基、アシル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基が好ましく、水素原子、芳香族基、複素環基が特に好ましい。各基の詳細は既述の通りである。
Qは、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す。中でも、Qは5〜8員環を形成するのに必要な非金属原子群からなる基が好ましい。この5〜8員環は置換されていてもよいし、飽和環であっても不飽和結合を有していてもよい。中でも特に、芳香族基、複素環基が好ましい。好ましい非金属原子としては、窒素原子、酸素原子、イオウ原子および炭素原子が挙げられる。
5〜8員環の具体例としては、例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロヘキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環,ベンゾイミダゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサン環、スルホラン環、およびチアン環等が挙げられる。
前記一般式(2)における各基は更に置換基を有していてもよく、これら各基が更に置換基を有する場合の該置換基としては、既述の一般式(1)で説明した置換基、G、R、Rで例示した基が挙げられる。
【0047】
ここで、置換基Zに関連して、本明細書中で用いられるハメットの置換基定数σp値について説明する。
ハメット則はベンゼン誘導体の反応または平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために、1935年にL.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s and book of Chemistry」第12版、1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。
なお、本発明において各置換基をハメットの置換基定数σpにより限定したり、説明したりするが、これは上記の成書で見出せる文献既知の値がある置換基にのみ限定されるという意味ではなく、その値が文献未知であってもハメット則に基づいて測定した場合にその範囲内に包まれるであろう置換基をも含むものである。また、前記一般式(1)および(2)の中には、ベンゼン誘導体ではないものも含まれるが、置換基の電子効果を示す尺度として置換位置に関係なくσp値を使用する。本発明においてはσp値をこのような意味で使用する。
【0048】
ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。
ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばm−クロロフェノキシカルボニル基)、アルキルスルフィニル基(例えばn−プロピルスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ハロゲン化アルキル基(例えばトリフロロメチル基)を挙げることができる。
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えばアセトキシ基)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)、ハロゲン化アルコキシ基(例えばトリフロロメチルオキシ基)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えばペンタフロロフェニルオキシ基)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えばジフロロメチルチオ基)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基、ペンタクロロフェニル基)、および複素環基(例えば、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル基)を挙げることができる。
σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、上記に加え、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0049】
前記一般式(1)で表されるアゾ系色素として特に好ましい置換基の組み合わせは、以下の(イ)〜(ニ)の2以上を任意に組み合わせた態様である。
(イ)RおよびRはそれぞれ、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基であり、最も好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基である。
(ロ)Gは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ヒドロキシル基、「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」、アミド基であり、さらに好ましくは水素原子、「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」、アミド基であり、最も好ましくは水素原子、「アルキル基、アリール基または複素環基で置換された置換アミノ基」、アミド基である。
(ハ)Aは、好ましくはピラゾール環、イミダゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環であり、さらに好ましくはピラゾール環、イソチアゾール環であり、最も好ましくはピラゾール環である。
(ニ)BおよびBは、それぞれ−CR=、−CR=であり、これらのRおよびRはそれぞれ、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子、シアノ基、カルバモイル基、アルキル基である。
【0050】
なお、前記一般式(1)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが上記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が上記の好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が上記の好ましい基である化合物が最も好ましい。
さらに、前記一般式(1)で表される化合物は、炭素数8以上の置換基を少なくとも1つ以上有することが好ましい。さらにこの置換基は炭素数8以上のアルキル基であることが特に好ましい。
【0051】
下記に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。本発明はこれらの具体例によって制限されるものではない。
【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
【化13】

【0058】
【化14】

【0059】
これらの化合物は、特許第4408380号、特許第4642403号、特許第4357383号、特許第4359541号、特開2006−91190号、特開2007−31616号、特開2007−39478号、特許第4597806号、特開2002−371079号、及び特許第4666873号の各公報などに示す公知の方法で製造することができる。
【0060】
〔本発明のアゾ系色素の溶解度〕
本発明のアゾ系色素は、非極性溶媒への溶解性、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れ、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンに対する溶解度が、1質量%以上である。
1質量%以上であることは、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイを製造するための部材(例えば、カラーフィルタ)に適用しうることを示す。
以下、「色素の25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンに対する溶解度」を、単に『溶解度』とも称する。
本発明のアゾ系色素を、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイや電気泳動法で動作するディスプレイを製造するための部材(例えば、カラーフィルタ)に適用する場合には、溶解度は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。溶解度は高ければ高いほど好ましいが、通常は80質量%以下程度である。
【0061】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、上述した本発明のアゾ系色素の少なくとも1種と、非極性溶媒とを含む。
本発明の着色組成物は、本発明のアゾ系色素の1種のみを含んでいても、2種以上を含んでいてもよく、2種以上のアゾ系色素を含む場合の各色素の比率は任意である。
また、本発明の着色組成物における色素は、本発明のアゾ系色素のみからなっていてもよく、所望の色調とするために、他の色素を含んでいてもよい。例えば、本発明のアゾ系色素に、本発明のアゾ系色素とは異なる構造の赤色、青色等の色素を混合して黒色とすることもできる。
【0062】
〔他の色素〕
本発明の着色組成物が含んでいてもよい本発明のアゾ系色素とは異なる構造の他の色素としては、使用する非極性溶媒に対して溶解性・分散性を有する色素の中から、本発明のアゾ系色素の効果を損なわない範囲で、任意に選択することが可能である。
例えば、本発明の着色組成物をエレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置に用いる場合、本発明の着色組成物が含んでいてもよい他の色素としては、脂肪族炭化水素系溶媒などの非極性溶媒に溶解するものの中から任意の色素を用いることができる。具体例としては、Oil Blue N(アルキルアミン置換アントラキノン)、Solvent Green、Sudan Red、Sudan Blackなどが挙げられる。
【0063】
〔非極性溶媒〕
上記色素を溶解させる非極性溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒が挙げられる。
本発明の着色組成物における非極性溶媒の含有量は、本発明のアゾ系色素、その他の色素等を除いた残部を構成するものである。
【0064】
〔その他の成分〕
本発明の着色組成物は、さらに、必要に応じて任意の紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
添加剤の含有量に特に制限はないが、通常、着色組成物の総量に対して20質量%以下程度で用いられる。
【0065】
本発明のアゾ系色素、および、必要に応じて用いる他の色素は、既述の脂肪族炭化水素系溶媒などの非極性溶媒に溶解することにより、エレクトロウェッティング法の原理で動作するディスプレイ用のインクとすることができる。
【0066】
本発明の着色組成物中における本発明のアゾ系色素の濃度(C)については、その目的に応じて任意の濃度で調製される。エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置ディスプレイ用の紫色色素として用いる場合、通常0.2質量%以上の濃度で、必要とされるεC値(εは着色組成物の吸光係数)に応じて非極性溶媒に希釈して用いられる。
【0067】
<表示装置>
本発明のアゾ系色素は、非極性溶媒、特に炭化水素系溶媒への溶解性に優れた特長を持つため、ディスプレイ等の表示装置、中でもエレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置(ディスプレイ)や電気泳動法で動作する表示装置(ディスプレイ)に用いられる色素として有用である。従って、本発明の着色組成物は、これらの表示装置のカラーフィルタ等の作製に用いられる。
【0068】
エレクトロウェッティング法の原理は、国際公開第2005−098524号パンフレットに記載されている。この原理は、疎水液に対する疎水性表面をもつポリマー固体の濡れ性に依存する2つの切り替え可能な状態に関連する。
疎水性ポリマー固体は、好ましくは白色を呈している。疎水液および固体は、さらに親水液(例えば水)によって取り囲まれている。親水液と疎水性固体との間に印加される電圧により電圧差が発生し、それに起因して疎水液の表面張力に変化が現われ、印加された電位を退ける。それにより、疎水液は、好ましくは白色であるピクセル底部をもしくは完全には覆わずに、その一部分だけを覆うようになる。最大電圧が印加された場合および電圧が印加されない場合の表面張力のこの変化が、観察者にはピクセルの「オン」または「オフ」の状態として認識され得る。「オン」状態ではピクセルは白、「オフ」状態ではカラーの光学的印象が生じる。
【0069】
ディスプレイにおけるエレクトロウェッティング技術は、他のディスプレイ技術に比べて少ないエネルギー消費や、ビデオの使用にとって必須である、ピクセル状態の迅速な切り替え時間など、多くの利点を有している。さらに、疎水液中に溶解された色素によってピクセルの彩色性が保証されるので、ディスプレイのピクセルは様々な色を呈することが可能である。色素は親水液に不溶でなければならない。それによって、赤、緑、青(“RGB”)および黒を基調にした透過型ディスプレイ、またはシアン、マゼンタ、イエロー(“CMY”)および黒を基調にした反射型ディスプレイを実現できる。
【0070】
疎水液の表面張力の変化は印加電圧に比例する。したがって、電圧に応じてピクセル中に様々なグレースケールを表現することができ、ディスプレイにおいて高品質の画像を生成することができる。
【0071】
エレクトロウェッティングは、ディスプレイの他、光学フィルタ、適応レンズ、およびラボオンチップ技術にも利用できる。
【0072】
また、電気泳動法は、溶媒中に分散された電荷を帯びた粒子が、電界によって移動する現象を利用した原理であり、省消費電力で、視野角依存性がないという利点を有している。
電気泳動法の原理で動作するディスプレイは、着色溶液中に分散粒子を添加してなる分散液を対向する基板間に配置させ、基板間に数ボルト程度の電圧を印加することにより、液相中を粒子が移動して画像表示を行うものである。例えば、着色溶液として、本発明の着色組成物を用い、分散液をマイクロカプセル化して、これを対向する基板間に配置して、ディスプレイを構成することが考えられる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
〔実施例1〜5〕
前記例示化合物F−1、2、3、4、および9で示される色素を、それぞれ、溶媒(n−hexane〔n−ヘキサン〕)に3質量%溶解して着色組成物(インク)を調製した。得られた着色組成物(インク)について、着色組成物の色、吸収極大波長(λmax)、吸光度(abs)、吸光係数(ε)、及び、溶媒に対する各色素の溶解度(質量%)を評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
−各物性評価手法−
1.溶液の色
着色組成物の色は、目視で判断した。
【0076】
2.着色組成物の吸収極大波長、吸光度、及び吸光係数
着色組成物の吸収極大波長(λmax)、および吸光度(abs)は、可視光吸光度計(島津製 UV−1800PC)で測定し、吸光度(abs)からランベルト・ベールの法則により吸光係数(ε)を算出した。
【0077】
3.n−hexaneへの溶解度
溶媒であるn−hexaneに対する各色素の溶解度は、次のようにして測定した。
50℃に加熱したn−hexaneに各色素を溶解して飽和溶液を調製し、得られた飽和溶液を、25℃、0.1MPaの環境下に1時間放置し、析出した色素を濾過し、析出量を測定することにより、25℃、0.1MPaにおける各色素のn−hexaneに対する溶解度(質量%)を算出した。
【0078】
〔比較例1、2〕
実施例1において、色素として例示化合物F−1を用いる代わりに、下記化合物C−101、C−102を、それぞれ用いた他は実施例1と同様にして、着色組成物の色、吸収極大波長、吸光度、吸光係数、及び溶解度を評価した。評価結果を表1に示す。
【0079】
【化15】

【0080】
【化16】

【0081】
【表1】

【0082】
表1から、本発明のアゾ系色素である例示化合物F−1、2、3、4、および9は、比較化合物であるC−101、C−102に比べて、炭化水素系溶媒に対して高い溶解度を示すことがわかり、得られた着色組成物は、吸光係数が大きいものであった。
従って、例示化合物F−1、2、3、4、および9を含む着色組成物によって、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置や電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタを好適に作製することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、25℃、0.1MPaにおけるn−ヘキサンへの溶解度が1質量%以上であるアゾ系色素。
【化1】


Aは、5員複素環ジアゾ成分A−NHの残基を表す。BおよびBは、各々独立に、−CR=、−CR=、または窒素原子を表し、BおよびBが同時に窒素原子を表すことはない。RおよびRは、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。G、R、およびRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換された置換アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。BまたはBが有するRまたはRとR、およびRとRは、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアゾ系色素が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載のアゾ系色素。
【化2】


はハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基を表し、Zは水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表す。R、およびRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アルキル基またはアリール基または複素環基で置換された置換アミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、スルファモイル基、スルホ基、またはヘテロ環チオ基を表す。RおよびRは各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。RおよびRは、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはスルファモイル基を表す。RとR、及びRとRは、各々独立に、互いに結合して5員または6員環を形成してもよい。Qは、水素原子、脂肪族基、芳香族基、または複素環基を表す。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアゾ系色素、および非極性溶媒を含み、エレクトロウェッティング法の原理で動作する表示装置のカラーフィルタの作製に用いられる着色組成物。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のアゾ系色素、および非極性溶媒を含み、電気泳動法で動作する表示装置のカラーフィルタの作製に用いられる着色組成物。

【公開番号】特開2013−76012(P2013−76012A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217311(P2011−217311)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】