説明

アゾ顔料分散物及びそれを用いたインク組成物、インクジェット記録用インク、記録方法、記録物並びにインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法

【課題】高温で経時された後であっても粒子径および粘度の増大が抑制され、耐光性に優れる顔料分散物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体と、酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有する。また該ポリマーの酸価を10〜120mgKOH/gとし、かつ、アミン価を10〜120mgKOH/gとする。さらに、前記アゾ顔料等の合計含有量に対して、前記ポリマーを10〜80質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顔料分散物及びそれを用いたインク組成物、インクジェット記録用インク、記録方法、記録物並びにインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法に係り、より詳細には、特定の構造を有するアゾ顔料の顔料分散物及びそれを用いたインク組成物等、並びに該アゾ顔料を含有するインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
特にアゾ顔料は、明度が高く、耐光性、耐熱性にも優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料、カラーフィルター用顔料として広く使用されている。そして用途の拡大に伴い、顔料も印刷インキ、グラビアインキ、着色剤で通常使用されているレベルより更に優れた使用媒体における分散性、経時における分散物の安定性や耐光性が求められるようになっている。
その中でも、インクジェット記録用顔料インクに用いるイエロー顔料としてアゾ系顔料(例えばC.I.Pigment Yellow 74)が好ましく使用されており、例えば、特許文献1には水性顔料インクとしてC.I.Pigment Yellow 74とアニオン性基含有有機高分子化合物を含有する顔料分散物を含むインクジェット記録用インクが開示されている。
また特許文献2には、スチレン系モノマーに由来する構成単位と、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方に由来する構成単位を含み、式(1)で表されるアゾ顔料を含むインクジェット記録用水性インクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−239594号公報
【特許文献2】特開2010−65212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の顔料分散物を用いて構成したインクジェット記録用インクでは、高温で経時された後に使用すると顔料の凝集に起因する目詰まりにより不吐出となる点や、用いる顔料自体の耐光性が低いという点で満足できるレベルではないことが判明した。
また特許文献2に記載のインクジェット記録用水性インクでは、更に過酷な条件下、例えば高温で経時された後では粒子径及び粘度の増大の抑制という点においては満足できるレベルではないことが判明した。
【0008】
本発明は、アゾ顔料を用いた顔料分散物及びそれを用いたインク組成物、インクジェット記録用インクにおける上記課題に着目してなされたものであって、その目的は、耐光性に優れ、高温で経時された後であっても粒子径及び粘度の増大が抑制されたアゾ顔料分散物及びそれを用いたインク組成物、インクジェット記録用インク、記録方法、記録物を提供することである。また、本発明の別の目的は、特定の構造を有するアゾ顔料を用いたインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するアゾ顔料と、酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有する顔料分散物により、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
【0010】
〔1〕
下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体と、酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有することを特徴とする顔料分散物。
【0011】
【化1】

【0012】
〔2〕
前記アゾ顔料又はその互変異性体のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が
7.6°及び25.6°、
7.0°、26.4°及び27.3°、又は
6.4°、26.4°及び27.2°
に特徴的X線回折ピークを有することを特徴とする〔1〕に記載の顔料分散物。
〔3〕
前記アゾ顔料又はその互変異性体のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°及び25.6°に特徴的X線回折ピークを有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の顔料分散物。
〔4〕
前記ポリマーの酸価が10〜120mgKOH/gであり、かつ、アミン価が10〜120mgKOH/gであることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の顔料分散物。
〔5〕
前記酸価及びアミン価を有するポリマーを、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体の合計含有量に対して10〜80質量%含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の顔料分散物。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の顔料分散物を含有することを特徴とするインク組成物。
〔7〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の顔料分散物又は〔6〕記載のインク組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
〔8〕
〔6〕記載のインク組成物又は〔7〕記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とする記録方法。
〔9〕
〔6〕記載のインク組成物又は〔7〕記載のインクジェット記録用インクを用いることで得られる記録物。
〔10〕
下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体と酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有する顔料分散物を用いることを特徴とするインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法。
【0013】
【化2】

【発明の効果】
【0014】
本発明の顔料分散物は、特定の構造を有するアゾ顔料と、酸性基及び塩基性基を有するポリマーとを含有するため、耐光性に優れ、高温で経時された後であっても粒子径及び粘度の増大が抑制されたアゾ顔料分散物及びそれを用いたインク組成物、インクジェット記録用インク、記録方法、記録物を提供することができる。また、特定の構造を有するアゾ顔料を用いたインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<顔料分散物>
本発明の顔料分散物は、下記式(1)のアゾ顔料又はその互変異性体(以下「式(1)のアゾ顔料等」という場合がある)と、酸価及びアミン価を有し、好ましくは、側鎖に酸性基及び塩基性基を有する、又は側鎖に酸性基を有し、塩基により中和されているポリマーとを含有する。これにより、耐光性、分散安定性、経時における分散物安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
顔料分散物中に含まれる該アゾ顔料及びその互変異性体の合計量は、顔料分散物の質量に対して1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることが更に好ましく、3〜15質量%であることが特に好ましい。1質量%未満では、顔料濃度が低く、濃度が出にくいからである。一方、40質量%を超えると、粘度が高くなり、また、凝集しやすくなり経時における保存安定性に問題が生じる場合がある。
【0016】
【化3】

【0017】
本明細書においては以下、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、及び25.6°に特徴的X線回折ピークを有する式(1)で表されるアゾ顔料をα型結晶形態アゾ顔料と称する。
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.0°、26.4°及び27.3°に特徴的X線回折ピークを有する式(1)で表されるアゾ顔料をβ型結晶形態アゾ顔料と称する。
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.4°、26.4°及び27.2°に特徴的X線回折ピークを有する式(1)で表されるアゾ顔料をγ型結晶形態アゾ顔料と称する。
【0018】
本発明において、上記式(1)で表されるα型、β型、及びγ型結晶形態アゾ顔料のX線回折の測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にて行うことができる。
【0019】
用いることのできる式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体の結晶形に関して、特に制限はないが、アゾ顔料又はその互変異性体のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が
7.6°及び25.6°、
7.0°、26.4°及び27.3°、又は
6.4°、26.4°及び27.2°
に特徴的X線回折ピークを有することが好ましい、すなわち、α型結晶形態アゾ顔料、β型結晶形態アゾ顔料、又はγ型結晶形態アゾ顔料が好ましい。その中でも、α型結晶形態アゾ顔料、β型結晶形態アゾ顔料が更に好ましく、7.6°及び25.6°に特徴的X線回折ピークを有することが好ましい、すなわちα型結晶形態アゾ顔料が特に好ましい。α型結晶形態アゾ顔料が光堅牢性の観点で特に好ましいからである。
【0020】
顔料分散物中の粒子の体積平均粒子径は10nm以上200nm以下であることが好ましく、15nm以上200nm以下であることがより好ましく、20nm以上150nm以下であることが更に好ましく、25nm以上130nm以下であることが最も好ましい。顔料分散物中の粒子の体積平均粒子径が10nm以上である場合には、分散物の経時安定性が増し、凝集し難く好ましい。また、粒子の体積平均粒子径が200nm以下である場合には、光学濃度が高くなり印画物の濃度が濃くなり、インクジェット等で印画する際に、ノズルの目詰まりが起こりにくくなるため好ましい。
【0021】
なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いることができる。その測定は、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行うことができる。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いる。
【0022】
1.ポリマー
本発明に用いられるポリマーは、酸価及びアミン価を有し、好ましくは、酸性基を有するモノマー及び塩基性基を有するモノマーのいずれか少なくとも一方を構成単位として含んでおり、ポリマーは塩に変換されていても良い。ポリマーが酸価及びアミン価を有していれば特にポリマー構造についての制限はなく、酸性基及び塩基性基を有するモノマーの単独重合体又は酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの共重合体、更に酸性基を有するモノマーの共重合体と塩基との塩、塩基性基を有するモノマーの共重合体と酸との塩を使用することができる。また、これらのモノマーと重合可能なその他のモノマーに由来する構成単位を含んで構成することができる。
【0023】
ポリマーを構成する酸性基を有するモノマーとしては、カルボン酸基を有するモノマー(たとえばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマール酸、アクロイルオキシエチルフタレート、アクロイルオキシサクシネート等が挙げられる)、スルホン酸基を有するモノマー(たとえば、アクリル酸2−スルホン酸エチル、メタクリル酸2−スルホン酸エチル、ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる)、ホスホン酸基を有するモノマー(例えば、メタクリル酸2−ホスホン酸エチル、アクリル酸2−ホスホン酸エチル等が挙げられる)、水酸基を有するモノマー(例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる)が挙げられ、中でも、カルボキシル基、ホスホン酸基を有するモノマーが好ましい。
【0024】
ポリマーを構成する塩基性基を有するモノマーとしては、第1級アミノ基を有するモノマー(例えば、アクリル酸アミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、ポリオキシアルキレンアミン等が挙げられる)、第2級アミノ基を有するモノマー(例えば、アクリル酸メチルアミノエチル、アクリル酸メチルアミノプロピル、アクリル酸エチルアミノエチル、アクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸メチルアミノエチル、メタクリル酸メチルアミノプロピル、メタクリル酸エチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル等が挙げられる)、第3級アミノ基を有するモノマー(例えば、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノプロピル等が挙げられる)、第4級アミノ基を有するモノマー(例えば、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩等が挙げられる)が好ましい。
【0025】
その他の重合しうる好ましいモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸セチル、メタクリル酸セチル、アクリル酸ステアリル、ステアリルメタクリレート、アクリル酸ベヘニル、ベヘニルメタクリレート等が挙げられる)、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン等が挙げられる)、無水イタコン酸、イタコン酸エステル(例えば、イタコン酸ベンジル等が挙げられる)、無水マレイン酸、マレイン酸エステル(例えば、マレイン酸ジメチル等が挙げられる)、無水フマール酸、フマール酸エステル(例えば、フマール酸ジメチル等が挙げられる)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、水酸基含有モノマー(例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等が挙げられる)、アミノ基含有モノマー(例えば、エチルアクリル酸アミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる)、αオレフィン(例えば、エチレン等が挙げられる)、エポキシド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、ビスフェノールAエポキサイド、ノボラック等が挙げられる)アリルアルコール、アリルポリエーテル(例えば、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルモノアセテート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアリルメチルエーテル等が挙げられる)等が挙げられる。
【0026】
ポリマー中の酸性基を中和するために、水酸化アルカリ金属(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる)、水酸化アルカリ土類金属(例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる)及びアンモニア、第1級、第2級又は第3級アミン及びアミノアルコールを使用することができる。アミン及びアミノアルコールの例としてはブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、N−オレイル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、アミノメチルプロパノール、2−ジブチルアミノエタノール、モノアミン、ジアミン又はポリアミンアルコキシレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、N、N−ビス[ポリ(オキシエチレン)]−N−オレイルアミンがあり、中でも第1級、第2級、第3級アミン及びアミノアルコールが好ましく、特にシ゛エタノールアミン、モノエタノールアミン、ポリアミンアルコキシレートが好ましい。
【0027】
中和の程度はポリマーの親水性及び企図している使用により導くことになる。従って、親水的に調節した重合体の中和は疎水的に調節したものよりも遥かに中和が少なくて済む。強い塩基性を必要とするシステムに使用する場合には、過剰の塩基を用いることが有利であるというようなケースもある。また、中和の程度は中和剤の種類によるので、トリエチレンアミンを使用する場合は水酸化カリウムを使用する場合に比べ、中和の程度を高くしなければならない。最終製品の溶解性、分散特性及び安定性は、とりわけ中和の程度によるものである。ポリマー中に残存している酸性基の中和の程度は0〜100%、特に、50〜100%が好ましい。
【0028】
ポリマーの数平均分子量は、1,000〜30,000が好ましく、中でも2,000〜2,5000がより好ましく、3,000〜20,000が特に好ましい。これによって、立体反発効果に優れ、高い分散性、流動性、及び保存安定性を得ることが可能である。1,000未満では、溶媒親和性ブロックによる立体反発効果が少なくなるため凝集しやすく、好ましくない場合がある。また、30,000を超える場合は、分散物の粘度が高くなり好ましくない場合がある。
【0029】
ポリマーについての酸価は、例えばDIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
ポリマーについてのアミン価は、例えばDIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0030】
ポリマーの酸価は10〜120mgKOH/gであることが好ましく、10〜80mgKOH/gであることが更に好ましく、15〜50mgKOH/gであることが特に好ましい。
ポリマーのアミン価は10〜120mgKOH/gであることが好ましく、10〜80mgKOH/gであることが更に好ましく、15〜50mgKOH/gであることが特に好ましい。
酸価及びアミン価が10mgKOH/g以上では顔料との親和性が高くなり、経時における安定性が高くなり好ましい。また、酸価及びアミン価が120mgKOH/g以下であれば、顔料との親和性が低くなり、顔料の分散性が高くなり好ましい。
【0031】
ポリマー(固形分)の添加量としては、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体の合計含有量に対して、10〜80質量%であることが好ましく、15〜60質量%であることが更に好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。10質量%〜80質量%であれば、ポリマーが顔料に対して十分に作用でき、分散中に粒子の凝集が起こり難いために分散性が向上し、経時での分散物安定性に優れる。
【0032】
なお、ポリマーは水溶性であっても、水不溶性であってもよい。水溶性である場合、顔料とポリマーが強く相互作用させることが容易であるため、水系で分散する場合に有利である。一方、水不溶性である場合、有機溶剤系で分散する場合や、有機溶剤系で分散した後に水系にする場合、例えば、転相乳化法等の場合に有利である。
【0033】
酸性基及び塩基性基を有するポリマーは市販品を使用することもできる。例えば、ビックケミー(株)社製のDISPERBYK、DISPERBYK−101、DISPERBYK−106、DISPERBYK−140、DISPERBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−187、DISPERBYK−181、DISPERBYK180、DISPERBYK−191、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2020、Ciba(株)社製のEFKA−4008、EFKA−4009、EFKA−4010、EFKA−4406、EFKA−4510、EFKA−4520、EFKA−4530、EFKA−5044、EFKA−5054、EFKA−5055、EFKA−5063、EFKA−5064、EFKA−5071、EFKA−6220、EFKA−6225等を挙げることができる。
【0034】
2.媒体
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0035】
本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0036】
非水系顔料分散物は、前記式(1)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0037】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0038】
本発明の顔料分散物においては、顔料の分散及び画像の品質を向上させるため界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0039】
ノニオン性界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコーン系等が挙げられる。
【0040】
3.製造方法
本発明の顔料分散物は、式(1)のアゾ顔料等と水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0041】
なお、本発明の顔料分散物の製造に用いる式(1)のアゾ顔料等は、後処理(フィニッシング)が行われたものであることが好ましい。本発明におけるフィニッシングとは、結晶形態、粒子の大きさや形等を整える処理を表す。この後処理工程の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられるが、式(1)のアゾ顔料等については、溶媒加熱処理及びソルベントソルトミリングの少なくとも一方を行うことが好ましい。
【0042】
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えても良い。
溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0043】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0044】
4.用途
本発明の顔料分散物の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
【0045】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【0046】
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、上で説明した本発明の顔料分散物を含有するものである。本発明の顔料分散物をそのままインク組成物として用いてもよいが、好ましくは、本発明の顔料分散物に水溶性溶媒、水等を混合して調製されたものである。
【0047】
<インクジェット記録用インク>
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上で説明した本発明の顔料分散物又はインク組成物を含有するものである。本発明の顔料分散物又はインク組成物をそのままインク組成物として用いてもよいが、好ましくは、本発明の顔料分散物に水溶性溶媒、水等を混合して調製されたものである。
【0048】
インク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜50質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜40質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0049】
インク100質量部中に、式(1)のアゾ顔料等を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1質量部以上10質量部以下含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、式(1)のアゾ顔料等とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっていることが好ましい。
【0050】
インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0051】
更に、本発明におけるインクは、上記本発明におけるアゾ顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、C.I.P.Y.−74、C.I.P.Y.−128、C.I.P.Y.−155、C.I.P.Y.−213が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.−19、C.I.P.R.−122が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、C.I.P.B.−15:3、C.I.P.B.−15:4が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散物を挙げることができる。
【0052】
インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0053】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0054】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0055】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0056】
インクには、前記各成分に加えて、後述する好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水を添加してもよい。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0057】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0058】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
【0059】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0060】
本発明のインクジェット記録用インクの好ましい物性は以下の通りである。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0061】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.6mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定した。
【0062】
<記録方法>
本発明の記録方法は、上で説明した本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インク(以下、「インク類」という場合がある)を使用する方法である。その他、インクジェット記録装置やインクジェット記録用インクタンクを必要に応じて用いることができる。
【0063】
例えば、本発明の記録方法の一実施形態は、本発明のインクジェット記録用インクを用い、記録信号に応じて記録ヘッドから記録媒体表面にインクを吐出して、記録媒体表面に画像を形成する方法である。
該インクジェット記録装置は、インクジェット記録用インクを用い、インク(必要により処理液)を記録媒体表面に吐出する記録ヘッドを備え、記録媒体表面に前記インクを記録ヘッドから吐出することにより、画像を形成する装置とすることができる。なお、インクジェット記録装置は、記録ヘッドに、インクを供給することができ、かつ、インクジェット記録装置本体に対して脱着可能なインクジェット記録用インクタンク(以下、「インクタンク」と称す場合がある)を備えていてもよい。この場合、このインクジェット記録用インクタンクには、インクが収納される。
【0064】
インクジェット記録装置としては、インクを用いることが可能な印字方式を備えた通常のインクジェット記録装置が利用でき、この他にも、必要に応じてインクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載していたり、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する機構を備えたりするものであってもよい。
また、インクジェット記録用インクタンクは、記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に対して脱着可能であり、インクジェット記録装置に装着した状態で、記録ヘッドにインクを供給できる構成を有するものであれば、従来公知のインクタンクが利用できる。
【0065】
インクジェット記録用インクを用いた記録方法(及びその装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果がある。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果がある。
【0066】
インクジェット記録用インクを用いた記録方法(及びその装置)において、インクの記録ヘッドへの補給(供給)は、インク液体が満たされたインクタンク(必要により処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置本体に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インクの補給が簡易に行われる。
【0067】
<記録物>
本発明の記録物は、上で説明した本発明のインク組成物又はインクジェット記録用インクを使用することで得られる。記録の方法は、特に限定はされないが、上で説明した本発明の記録方法によるものが好ましい。
【0068】
<インクジェット記録用インクの貯蔵安定化法>
本発明のインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法は、式(1)のアゾ顔料等を含有するインクジェット記録用インクについての貯蔵安定化法であり、酸価及びアミン価を有し、好ましくは側鎖に酸性基及び塩基性基を有する、又は側鎖に酸性基を有し、塩基により中和されているポリマーを含有する顔料分散物を用いるものである。
式(1)の構造を有するアゾ顔料等は、側鎖に酸性基及び塩基性基を有するポリマーを分散剤として分散することにより、経時における分散物安定性に優れた顔料分散物となる。なお、「側鎖に酸性基及び塩基性基を有するポリマー」及び「側鎖に酸性基を有し、塩基により中和されているポリマー」は、上記「顔料分散剤」のポリマーの項で説明したものと同義である。
【実施例】
【0069】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0070】
1.顔料分散物の作製
<アゾ顔料の合成>
アゾ顔料(1)は特開2010−31215記載の方法で合成した。得られたアゾ顔料(1)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約15μmであった。得られた結晶はCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°、27.7°に特徴的なX線回折ピークを有するα型結晶形態アゾ顔料(1)−aであった。
更に、特開2010−31215記載の方法でαβ型結晶形態アゾ顔料(1)を合成した。得られたアゾ顔料(1)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察した結果、1次粒子の長軸方向の長さが約150nmであった。得られた結晶はCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.0°、26.4°、27.3°に特徴的なX線回折ピークを有するβ型結晶形態アゾ顔料(1)−bであった。
【0071】
<γ型結晶形態アゾ顔料(1)−cの合成>
【0072】
【化4】

【0073】
酢酸55mLとプロピオン酸37mLの混合液に室温にて化合物(a)9.2gを溶解させた。氷冷して内温を−3℃まで冷却し、内温が−3℃〜4℃でニトロシル硫酸の40質量%硫酸溶液を10分かけて滴下した。内温4℃にて1時間攪拌した後、尿素0.2gを加え、その後、内温をー3℃に冷却し、更に10分攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に化合物(b)11.1gをアセトン160mLに完溶させた後、内温を17℃に冷却し、上述のジアゾニウム塩溶液に内温−3℃〜3℃の範囲内で25分かけて添加した。添加完了後、3℃で30分攪拌した後、氷浴をはずし、30分かけて室温まで昇温させた。室温にて30分攪拌した後、得られた結晶を濾別し、アセトン150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水400mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを6.7に調整した。室温にて25分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、アセトン80mLをかけ洗いした。得られた結晶を室温にて12時間乾燥させた。得られた結晶をアセトン500mLに懸濁させた後、還流下30分間攪拌した。その後、1時間かけて室温まで冷却し、得られた結晶を濾別し、室温にて5時間乾燥させアゾ顔料(1)を17.4g得た。収率81.0%
得られたアゾ顔料(1)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約300nmであった。得られた結晶はCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.4°、26.4°及び27.2°に特徴的なX線回折ピークを有するγ型結晶形態アゾ顔料(1)−cであった。
【0074】
<実施例1>顔料分散物1の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を0.71g、グリセリン5g、水41.79gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物1(体積平均粒子径;61.0nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物1の粘度は1.842mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0075】
<実施例2>顔料分散物2の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−181(ビックケミー(株)社製、63質量%)を0.79g、グリセリン5g、水41.71gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、4時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物2(体積平均粒子径;79.5nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物2の粘度は1.752mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0076】
<実施例3>顔料分散物3の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を0.35g、グリセリン5g、水42.15gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物3(体積平均粒子径;128.1nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物3の粘度は1.585mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0077】
<実施例4>顔料分散物4の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を1.42g、グリセリン5g、水41.08gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物4(体積平均粒子径;70.2nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物4の粘度は1.981mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0078】
<実施例5>顔料分散物5の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を2.50g、グリセリン5g、水40.05gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物5(体積平均粒子径;97.9nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物5の粘度は1.978mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0079】
<実施例6>顔料分散物6の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、EFKA―5071(Ciba(株)社製、53質量%)を0.94g、グリセリン5g、水41.56gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物6(体積平均粒子径;196.6nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物6の粘度は1.616mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0080】
<実施例7>顔料分散物7の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK(ビックケミー(株)社製、50質量%)を1.00g、グリセリン5g、水41.50gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物7(体積平均粒子径;132.9nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物7の粘度は1.732mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0081】
<実施例8>顔料分散物8の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK180(ビックケミー(株)社製、79質量%)を0.63g、グリセリン5g、水41.87gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物8(体積平均粒子径;145.9nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物8の粘度は1.755mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0082】
<実施例9>顔料分散物9の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、EFKA―4520(Ciba(株)社製、33質量%)を1.51g、グリセリン5g、水40.98gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、5時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物9(体積平均粒子径;72.8nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物9の粘度は1.682mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0083】
<実施例10>顔料分散物10の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、EFKA―4510(Ciba(株)社製、50質量%)を1.00g、グリセリン5g、水41.50gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物10(体積平均粒子径;68.5nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物10の粘度は1.639mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0084】
<実施例11>顔料分散物11の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、EFKA―4530(Ciba(株)社製、50質量%)を1.00g、グリセリン5g、水41.50gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物11(体積平均粒子径;71.2nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物11の粘度は1.691mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0085】
<実施例12>顔料分散物12の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を3.55g、グリセリン5g、水38.95gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物12(体積平均粒子径;130.8nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物12の粘度は1.932mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0086】
<実施例13>顔料分散物13の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を0.18g、グリセリン5g、水42.32gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、5時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物13(体積平均粒子径;69.0nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物13の粘度は1.691mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0087】
<実施例14>顔料分散物14の作製
アゾ顔料(1)−bを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を0.71g、グリセリン5g、水41.79gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、5時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物1(体積平均粒子径;62.2nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物14の粘度は1.752mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0088】
<実施例15>顔料分散物15の作製
アゾ顔料(1)−cを2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を0.71g、グリセリン5g、水41.79gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物1(体積平均粒子径;67.5nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた顔料分散物15の粘度は1.788mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0089】
<比較例1>比較顔料分散物1の作製
Pigment Yellow−74(Ciba社製Irgalite Yellow GO)を2.5g、DISPERBYK−187(ビックケミー(株)社製、70質量%)を0.71g、グリセリン5g、水41.8gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の顔料分散物1(体積平均粒子径;204.7nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた比較顔料分散物1の粘度は1.826mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0090】
<比較例2>比較顔料分散物2の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−192(ビックケミー(株)社製、98質量%)を0.5g、グリセリン5g、水42gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、更にポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、黄色の比較顔料分散物2(体積平均粒子径;58.4nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。得られた比較顔料分散物2の粘度は1.590mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0091】
<比較例3>比較顔料分散物3の作製
アゾ顔料(1)−aを2.5g、DISPERBYK−193(ビックケミー(株)社製、40質量%)を1.25g、グリセリン5g、水41.25gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、7時間分散を行ったところ、液がゲル化していた。
【0092】
<比較例4>比較顔料分散物4の作製
アゾ顔料(1)−aを用いて、特開2010−65212号公報の段落番号[0300]〜[0304]に記載の合成例に従ってポリマーを合成し、顔料を包含するポリマー粒子の分散液を作製した。顔料が5質量%になるように純水を加え、比較顔料分散物4を得た。得られた比較顔料分散物4の体積平均粒子径;64.4nm:日機装(株)社製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定。粘度は1.680mPa・sだった(東機産業(株)社製RE80L型粘度計を用いて、25℃、100rpmの条件で測定)。
【0093】
2.評価
上記実施例及び比較例で得られた顔料分散物について、以下の項目の評価を行った。
<分散性>
顔料分散物の作製過程において、分散後、平均体積粒子径が80nm以下に達したものをA、80〜200nm未満のものをB、200nm以上のものをC、ゲル化してしまい分散不能だったものをDとした。結果を表1に示す。比較例4は、分散方法が異なるため、評価は行わなかった。
【0094】
<分散安定性(平均体積粒子径)>
得られた顔料分散物を、70℃で2週間静置した際に、平均体積粒子径の変化が20nm以下のものをA、変化が20〜50nm未満のものをB、変化が50〜200nm未満のものをC、変化が200nm以上、あるいは目視にて粒子の沈殿が確認できるものをDとした。結果を表1に示す。
【0095】
<分散安定性(粘度)>
得られた顔料分散物を、70℃で4週間静置した際に、粘度の変化が0.1mPa・s未満のものをA、0.1〜0.2mPa・s未満のものをB、変化が0.2〜0.5mPa・s未満のものをC、変化が0.5以上、あるいは目視にて粒子の沈殿が確認できるものをDとした。結果を表1に示す。
【0096】
<耐光性評価>
イオン交換水3.5g、1,2−ヘキサンジオール1.1g、グリセリン5.6g、2−ピロリドン1.7g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル1.1g、プロピレングリコール0.3gを混合し、均一溶液を得た。ここに得られた顔料分散物30gを加えて、得られた混合液をポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより顔料インク液を得た。
上記インク液をEPSON社製インクジェットプリンターPM−G800のカートリッジに装填し、受像シートEPSON写真用紙クリスピア<高光沢>に印字した。得られた印字物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、画像濃度1.0の塗布物を作成した。フェードメーターを用いてキセノン光(130000lux;TACフィルター存在下)を10日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が90%以上の場合をA、80〜90%未満の場合をB、60〜80%未満の場合をC、60%未満の場合をDとして、顔料分散物を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
以上の結果より、式(1)のアゾ顔料等と酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有する顔料分散物は、耐光性に優れ、高温で経時された後であっても粒子径及び粘度の増大が抑制されることが確認された(実施例1〜6)。一方、酸価及びアミン価を有するポリマーを含有しているが式(1)の構造を有さないアゾ顔料を用いた顔料分散物(比較例1)や、式(1)のアゾ顔料を用いているが含有するポリマーに酸価及びアミン価の両方が含まれない顔料分散物(比較例2〜4)では、耐光性に劣ることが確認された。
【0099】
<実施例16>顔料インク液1の作製
イオン交換水3.5g、1,2−ヘキサンジオール1.1g、グリセリン5.6g、2−ピロリドン1.7g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル1.1g、プロピレングリコール0.3gを混合し、均一溶液を得た。ここに顔料分散物1を30g加えて、得られた混合液をポアサイズ5μmのフィルター(ミリポア(株)社製マイレクス−SV、ポリフッ化ビニリデン膜、外径:25mm)を取り付けた容量50mLのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより顔料インク液1を得た。
【0100】
<比較例5>比較顔料インク液1の作成
顔料分散物1にかえて、比較顔料分散物1を用いた以外は実施例16と同様にして、比較顔料インク1を得た。
【0101】
<比較例6>比較顔料インク液2の作成
顔料分散物1にかえて、比較顔料分散物2を用いた以外は実施例16と同様にして、比較顔料インク2を得た。
【0102】
<インクの貯蔵安定性(平均体積粒子径)>
得られた顔料分散物を、70℃で2週間静置した際に、平均体積粒子径の変化が20nm未満のものをA、変化が20〜50nm未満のものをB、変化が50〜200nm未満のものをC、変化が200nm以上、あるいは目視にて粒子の沈殿が確認できるものをDとした。結果を表1に示す。
【0103】
<インクの貯蔵安定性(粘度)>
得られた顔料分散物を、70℃で4週間静置した際に、粘度の変化が0.1mPa・s未満のものをA、0.1〜0.2mPa・s未満のものをB、変化が0.2〜0.5mPa・s未満のものをC、変化が0.5以上、あるいは目視にて粒子の沈殿が確認できるものをDとした。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
以上の結果より、式(1)のアゾ顔料等と酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有する顔料分散物を用いたインクジェット記録用インクは、高温で経時された後であっても粒子径及び粘度の増大が抑制されることが確認された(実施例16)。一方、酸価及びアミン価を有するポリマーを含有しているが式(1)の構造を有さないアゾ顔料を用いた顔料インク(比較例5)や、式(1)のアゾ顔料を用いているが含有するポリマーに酸価及びアミン価の両方が含まれない顔料インク(比較例6)では、高温で経時された後で粒子径及び粘度の増大が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体と、酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有することを特徴とする顔料分散物。
【化1】

【請求項2】
前記アゾ顔料又はその互変異性体のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が
7.6°及び25.6°、
7.0°、26.4°及び27.3°、又は
6.4°、26.4°及び27.2°
に特徴的X線回折ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の顔料分散物。
【請求項3】
前記アゾ顔料又はその互変異性体のCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°及び25.6°に特徴的X線回折ピークを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の顔料分散物。
【請求項4】
前記ポリマーの酸価が10〜120mgKOH/gであり、かつ、アミン価が10〜120mgKOH/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の顔料分散物。
【請求項5】
前記酸価及びアミン価を有するポリマーを、式(1)で表されるアゾ顔料及びその互変異性体の合計含有量に対してを10〜80質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料分散物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散物を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料分散物又は請求項6記載のインク組成物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。
【請求項8】
請求項6記載のインク組成物又は請求項7記載のインクジェット記録用インクを用いることを特徴とする記録方法。
【請求項9】
請求項6記載のインク組成物又は請求項7記載のインクジェット記録用インクを用いることで得られる記録物。
【請求項10】
下記式(1)で表されるアゾ顔料又はその互変異性体と酸価及びアミン価を有するポリマーとを含有する顔料分散物を用いることを特徴とするインクジェット記録用インクの貯蔵安定化法。
【化2】


【公開番号】特開2012−25864(P2012−25864A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166557(P2010−166557)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】