アゾ顔料組成物、アゾ顔料組成物の製造方法、アゾ顔料組成物を含む分散物、着色組成物及びインクジェット記録用インク
【課題】色相及び光堅牢性が極めて良好であり、優れた着色力(色濃度)を有するアゾ顔料組成物、好ましくは更に異なる位置に特徴的なX線回折ピークを有するアゾ顔料及びその互変異性体を含有するアゾ顔料組成物を提供する。
【解決手段】CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料または互変異性体を少なくとも1種含有することを特徴とするアゾ顔料組成物。
【解決手段】CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料または互変異性体を少なくとも1種含有することを特徴とするアゾ顔料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲な色再現性及び耐光性に優れたイエロー顔料組成物、イエロー顔料組成物を含む分散物、イエロー顔料組成物を含む分散物を用いたインクジェット記録用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。特に、良好な色相を有し、光、湿熱及び環境中の活性ガス、中でも着色力が高く、光に対して堅牢な顔料が強く望まれている。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
アゾ顔料は色彩的特性である色相及び着色力に優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料などに広く使用されている。これらのうち、最も典型的に使用されているアゾ顔料は、イエロージアリーリド顔料、レッドナフトールアゾ顔料である。ジアリーリド顔料としては例えば、C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同17などが挙げられる。ナフトールアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・レッド208、同242などが挙げられる。しかし、これらの顔料は堅牢性、とりわけ耐光性が非常に劣るため、印字物が光に曝されることによって顔料が分解して退色してしまい、印字物の長期間の保存に適さない。
【0006】
このような欠点を改良するために、分子量を大きくしたり、強い分子間相互作用を持つ基を導入したりすることによって、堅牢性を改善したアゾ顔料も開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかしながら、改良された顔料においても、例えば特許文献1に記載の顔料はその耐光性が改善されてはいるが未だ不十分であり、また、例えば特許文献2及び3に記載の顔料は色相が緑味で着色力が低くなり、色彩的特性に劣るといった欠点があった。
【0007】
また、特許文献4〜5には色再現性に優れた吸収特性と十分な堅牢性を有する色素が開示されている。しかしながら、該特許文献に記載されている具体的化合物は、どれも水又は有機溶剤に溶解するため、耐薬品堅牢性が十分でない。
【0008】
イエロー、マゼンタ、シアンの3色、又は更にブラックを加えた4色による減色混合法を用いてフルカラーを表現する場合、1色だけ堅牢性の劣る顔料を用いると、時間の経過とともに印字物のグレーバランスが変化してしまい、また、色彩的特性に劣る顔料を用いると、印刷時の色再現性が低下してしまう。したがって、高い色再現性を長期間維持する印字物を得るために、色彩的特性及び堅牢性の両立した顔料及び顔料分散物が望まれている。
【0009】
従来から、アゾ色素は種々の可視光吸収を有することが多いために、色素として種々の分野で利用されてきた。例えば合成樹脂の着色、印刷インク、昇華型感熱転写材料用色素、インクジェット用インク、カラーフィルター用色素等、種々の分野で用いられるようになってきている。色素としてアゾ色素に要求される大きな性能に吸収スペクトルがある。色素の色相は、色素によって着色した物体の色目、風合い等に大きな影響を与え、視覚に与える効果が大きい。従って、古くから色素の吸収スペクトルに関する研究がなされている。
従来から知られている含窒素5員環をアゾ成分とするアゾ染料は、特許文献6及び7にも開示されている。
【0010】
カラー画像形成において、イエロー領域の色を再現するには、イエロー顔料を含んでなるイエローインク組成物が用いられる。イエロー顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,150,151,154,155,180,185,213等が挙げられる。
【0011】
また、イエロー領域の色を広範囲に再現するには、上記イエロー顔料を組み合わせたイエロー顔料組成物を複数調整することにより色再現性を改良することが特許文献8及び9に開示されている。
しかしながら、良好な色再現性を有する2種以上のイエロー顔料を含んでなるイエローインク組成物では、1種類の顔料を含むインクよりは広範囲な色再現性を得ることができるが、イエロー領域における暗部色再現性は十分ではない。また、色相角が離れた顔料種の混合では2次色の彩度が低くなる傾向が顕著である。たとえば、C.I.ピグメントイエロー110と他の顔料を組み合わせて用いた場合、C.I.ピグメントイエロー110が赤味を帯びているため、インクセットに用いると緑色が低彩度になる欠点を有していた。
更に、インクセットには記録媒体上で鮮明な画像が得られるだけでなく、長期保存による画像の劣化がないこと(特に耐光性)が求められる。カラー画像を複数の顔料インク組成物で形成する場合は、1色でも耐光性に劣るものが存在すると画像の色相が変わりカラー画像の品質が極端に劣化する。たとえばC.I.ピグメントイエロー74は比較的良好な色相を有するが、耐光性が著しく低いために、インクセットに用いた場合はイエロー、レッド、グリーン、グレイ部の画像の色相が大幅に変化することからカラー画像の品質劣化が大きな課題となっていた。
【0012】
一方、イエロー領域の色を広範囲に再現するには、高明度のイエローインクとは別に、ダークイエローと呼ばれる低明度のイエローインクを更に備えるインクセットを用いる方法が特許文献10及び11に開示されている。
しかしながら、ダークイエローに代表される第2のインク組成物を使用する方法はインクの色数が増えるために色作りが複雑化し、コストも高くなる傾向があるだけでなく、その改良レベルは要求性能を十分満足できるレベルには達していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭56−38354号公報
【特許文献2】米国特許第2936306号明細書
【特許文献3】特開平11−100519号公報
【特許文献4】特開2005−213357号公報
【特許文献5】特開2003−246942号公報
【特許文献6】特開昭55−161856号公報
【特許文献7】特開2002−371214号公報
【特許文献8】特開2005−314545号公報
【特許文献9】特許第3911920号公報
【特許文献10】特許第3455764号公報
【特許文献11】特許第3553581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は特定の置換基を有するピラゾール環をアゾ基及び置換基の異なるもう1つのピラゾール環から構成される色素母核を、含窒素ヘテロ環を介して連結したビスアゾ顔料の結晶形であるアゾ顔料又はその互変異性体を含むアゾ顔料組成物に関し、その優れた安定性及び製造方法はこれまで知られていなかった。
本発明は色相及び光堅牢性が極めて良好であり、優れた着色力(色濃度)を有するアゾ顔料組成物を提供することを目的とするものであり、好ましくは更に、上記色素母核を異なる含窒素ヘテロ環を介して連結したアゾ顔料及びその互変異性体を含有するアゾ顔料組成物を提供することを目的とするものである。
更に本発明は、該アゾ顔料組成物を含有する着色組成物を提供することを目的とするものである。
更に、該アゾ顔料組成物の分散物を含む着色組成物、該顔料組成物を含む分散物を用いた色再現性と耐光性に優れたインクジェット記録用インクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は上記した実情に鑑みて鋭意検討した結果、特定の位置に特徴的なX線回折ピークを有するアゾ顔料又はその互変異性体を含むアゾ顔料組成物が分散性及び分散物安定性が極めて良好であり、優れた色相、着色力及び耐光性を有することを見出した。
また、アゾ顔料組成物が分散された分散物及び着色組成物は優れた色相、着色力及び耐光性を有するインクジェット記録用インクを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有することを特徴とするアゾ顔料組成物。
【0017】
【化1】
【0018】
〔2〕
更に、前記組成物が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも0.1質量%以上99質量%未満含有することを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料組成物。
【0019】
【化2】
【0020】
〔3〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1質量%以上70質量%未満含有することを特徴とする〔2〕に記載のアゾ顔料組成物。
〔4〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも5質量%以上45質量%未満含有することを特徴とする〔2〕又は〔3〕に記載のアゾ顔料組成物。
〔5〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも15質量%以上30質量%未満含有することを特徴とする〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載のアゾ顔料組成物。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のアゾ顔料組成物を含有する顔料分散物。
〔7〕
顔料分散物中の顔料粒子の体積平均粒子径が0.01μm〜0.2μmであることを特徴とする〔6〕に記載の顔料分散物。
〔8〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有する着色組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有するインクジェット記録用インク。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ分散性及び分散安定性にも優れるアゾ顔料が提供される。本発明の顔料を種々の媒体に分散させることにより、色彩的特性、分散性及び分散安定性に優れる顔料分散物が得られる。顔料分散物は、光堅牢性に優れた着色物として、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】合成例1に従って合成されたアゾ顔料(1)のX線回折の図である。
【図2】合成例2に従って合成されたアゾ顔料(2)のX線回折の図である。
【図3】合成例3に従って合成された粗顔料(1−2)のX線回折の図である。
【図4】合成例3に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−1のX線回折の図である。
【図5】合成例4に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−2のX線回折の図である。
【図6】合成例5に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−3のX線回折の図である。
【図7】合成例6に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−4のX線回折の図である。
【図8】合成例7に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−5のX線回折の図である。
【図9】合成例8に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−6のX線回折の図である。
【図10】合成例9に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−7のX線回折の図である。
【図11】合成例10に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−8のX線回折の図である。
【図12】合成例11に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−9のX線回折の図である 。
【図13】合成例12に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−10のX線回折の図である。
【図14】合成例13に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−11のX線回折の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアゾ顔料組成物はCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体(以下、単に式(1)で表されるアゾ顔料と称する場合がある)を少なくとも1種含有する。
【0024】
【化3】
【0025】
本発明のX線回折測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にて行うことができる。
【0026】
本発明のアゾ顔料組成物における式(1)で表されるアゾ顔料の含有量は全固形分に対して30筆量%〜100質量%であることが好ましく、更に55質量%〜95質量%であることが好ましく、その中でも特に70質量%〜85質量%であることが最も好ましい。
本発明のアゾ顔料組成物に含有される式(1)で表されるアゾ顔料以外の成分としては、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体、結晶多形、塩、水和物等を挙げることができる。
【0027】
本発明のアゾ顔料組成物は、式(1)で表されるアゾ顔料(アゾ顔料(1))を含有することにより、アゾ顔料組成物を分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク等に用いた場合に、色相、着色力、光・熱・湿度・酸化性ガス(特にオゾンガス)堅牢性及び顔料分散物の粒度分布制御(例えば顔料インクの液物性制御)に優れたものとすることができる。
【0028】
本発明のアゾ顔料組成物は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(1)で表されるアゾ顔料を含有し、好ましくは更にCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(2)で表されるアゾ顔料とを含有する。
【0029】
本発明のアゾ顔料組成物は好ましくは、更に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体(以下、単に式(2)で表されるアゾ顔料と称する場合がある)を0.1以上99質量%未満含有し、より好ましくは、1以上70質量%未満含有し、更に好ましくは、少なくとも5以上45質量%未満含有し、15以上30質量%未満含有する。
【0030】
【化4】
【0031】
アゾ顔料組成物が、式(1)のアゾ顔料及び式(2)のアゾ顔料を含有する場合、アソ顔料組成物中のアゾ顔料の含有量の割合は、アゾ顔料の総重量に対して、アゾ顔料(2)/アゾ顔料(1)=0/100(質量%/質量%)〜99/1(質量%/質量%)であり、好ましい範囲としては5/95(質量%/質量%)〜95/5(質量%/質量%)であり、更に好ましい範囲としては20/80(質量%/質量%)〜80/20(質量%/質量%)であり、特に好ましい範囲としては40/60(質量%/質量%)〜60/40(質量%/質量%)である。
【0032】
また、本発明の顔料組成物は、少なくとも2種類のアゾ顔料(1)及び(2)を上記の範囲で含有することにより、アゾ顔料組成物を分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク等に用いた場合に、色相、着色力、光・熱・湿度・酸化性ガス(特にオゾンガス)堅牢性及び顔料分散物の粒度分布制御(例えば顔料インクの液物性制御)において、より優れたものとすることができる。
【0033】
本発明において、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する上記式(1)で表される結晶形態アゾ顔料及びCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上記式(2)で表される結晶形態アゾ顔料の取得手段としては、下記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(4)及び(5)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる方法で反応条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)を制御して取得する方法が挙げられる。更に、上記工程で得られたアゾ顔料を更に後工程で処理する際の条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)を調製することにより容易に得る事ができる。
【0034】
【化5】
【0035】
本発明のアゾ顔料組成物は、好ましくは上記式(1)で表されるアゾ顔料又は上記(2)で表されるアゾ顔料を別途製造して、任意に好ましい含有比率に混合して用いる、又は、上記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、上記式(4)及び(5)で表される化合物(カップリング成分)とを任意に混合してアゾカップリング反応させる方法でアゾ顔料混合物を製造して用いることも可能である。
本発明の顔料分散物において、上記式(1)で表される結晶形態アゾ顔料と、好ましくは更に上記式(2)で表される結晶形態アゾ顔料とを好ましい範囲の含有量で含むアゾ顔料組成物を、安定品質で安定製造する観点から、アゾ顔料を任意に好ましい含有比率に混合して用いる方法が好ましい。
【0036】
単一の結晶形態である場合、分子間が密になり、分子間相互作用が強くなる。その結果、耐溶剤性、熱安定性、耐光性、耐ガス性、印画濃度があがり、更には色再現域が広がる。
【0037】
そのため、上記式(1)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が好ましく、更に、7.2°、15.0°、19.8°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態がより好ましい。その中でも特に、7.2°、8.2°、10.0°、13.4°、15.0°、19.8°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が最も好ましい。
【0038】
更に、上記式(2)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角
(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が好ましく、更に、7.6°、13.5°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態がより好ましい。その中でも特に、7.6°、13.5°、15.9°、16.9°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が最も好ましい。
【0039】
また、上記式(1)及び(2)で表されるアゾ顔料の1次粒子を、透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さは、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上30μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上2μm以下であることが特に好ましい。
【0040】
1次粒子を透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さが0.01μm以上である場合には、光やオゾンに対する堅牢性、及び、顔料分散物とした場合の分散性をより確実に発現できる。一方、30μm以下である場合には、分散して所望の体積平均粒子径にした際に過分散状態(1次粒子を破壊した形態)になりにくく、顔料粒子の表面に活性面を露出しにくいことから凝集が起こりにくいため、顔料分散物の保存安定性をより確実に発現できる。
【0041】
1次粒子の大きさが、上記の範囲内に制御する事で、分子内・分子間相互作用が強くて強固で安定な3次元ネーとワークを形成した顔料粒子となり、光、熱、湿度、酸化性ガスに対して高い堅牢性を示し、その顔料分散物を用いた着色物は保存安定性に優れていて好ましい。
【0042】
本発明の顔料組成物を含有する顔料分散物の体積平均粒子径測定は、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いることができる。その測定は、例えば、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行うことができる。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いる。
【0043】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(1)で表されるアゾ顔料の平均粒径は0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上10μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上1μm以下であることが最も好ましい。
【0044】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(2)で表されるアゾ顔料の平均粒径は0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上30μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上20μm以下であることが最も好ましい。
【0045】
上記の範囲であれば印画物の印画濃度が高く、分散物の安定性が増し、赤や緑などの混色部の色再現性が向上し、透明性が高くなり、インクジェット等で印画する際に、ノズルの目詰まりが起こりにくくなるため好ましい。また、顔料分散物の凝集が起こり難く、分散物の経時安定性が高くなる点からも好ましい。
【0046】
本発明の顔料組成物を含有する顔料分散物の体積平均粒径を上記の範囲とするには、後述の顔料分散条件を便宜組み合わせる事で容易に調整する事ができる。
【0047】
以下に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有するアゾ顔料組成物の製造方法に関して詳細に説明する。
【0048】
下式(1)で表されるアゾ顔料組成物の製造方法は、下記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(4)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる工程を含む。
【0049】
【化6】
【0050】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有するアゾ顔料組成物の製造方法に関して詳細に説明する。
【0051】
下式(2)で表されるアゾ顔料組成物の製造方法は、下記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(5)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる工程を含む。
【0052】
【化7】
【0053】
〔ヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製工程〕
上式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)のジアゾニウム塩への調製及びジアゾニウム塩と上式(4)及び(5)で表される化合物(カップリング成分)とのカップリング反応は、慣用法によって実施できる。
【0054】
上式(3)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製は、例えば酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)含有反応媒質中で、ニトロソニウムイオン源、例えば亜硝酸、亜硝酸塩又はニトロシル硫酸を用いる慣用のジアゾニウム塩調製方法が適用できる。
【0055】
より好ましい酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、リン酸、硫酸を単独又は併用して用いる場合が挙げられ、その中でリン酸、又は酢酸と硫酸の併用系、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が更に好ましく、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が特に好ましい。
【0056】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸を用いることが好ましく、特にリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸が好ましく、その中でも酢酸及び又はプロピオン酸が好ましい。
【0057】
好ましいニトロソニウムイオン源の例としては、亜硝酸エステル類、亜硝酸塩類、ニトロシル硫酸等が挙げられる。その中でも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、ONHSO4硫酸溶液)が好ましく、特に亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、40質量%〜50質量%ONHSO4硫酸溶液)が好ましく、その中でも上記の好ましい酸含有反応媒質中でニトロシル硫酸を用いることが安定にかつ効率的にジアゾニウム塩を調製できる。
【0058】
式(3)のジアゾ成分に対する溶媒の使用量は、0.5〜50質量倍が好ましく、より好ましくは1〜20質量倍であり、特に3〜15質量倍が好ましい。
【0059】
本発明において、式(3)のジアゾ成分は溶媒に分散している状態であっても、ジアゾ成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0060】
ニトロソニウムイオン源の使用量はジアゾ成分に対して0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.10当量であることが好ましい。
【0061】
反応温度は、−15℃〜40℃が好ましく、より好ましくは−5℃〜35℃であり、更に好ましくは−0℃〜30℃である。−15℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また40℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0062】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0063】
〔カップリング反応工程〕
カップリング反応する工程は、酸性反応媒質中〜塩基性反応媒質中で実施することができるが、本発明のアゾ顔料は酸性〜中性反応媒質中で実施することが好ましく、特に酸性反応媒質中で実施することがジアゾニウム塩の分解を抑制し効率良くアゾ顔料に誘導することができる。
【0064】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸、有機溶媒を用いることができるが、特に有機溶媒が好ましく、反応時に液体分離現象を起こさず、溶媒と均一な溶液を呈する溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のジオール系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる、これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
【0065】
好ましくは、極性パラメータ(ET)の値が40以上の有機溶媒である。なかでも溶媒分子中に水酸基を2個以上有するグリコール系の溶媒、あるいは炭素原子数が3個以下のアルコール系溶媒、総炭素数5以下のケトン系溶媒、好ましくは炭素原子数が2以下のアルコール溶媒(例えば、メタノール、エチレングリコール)、総炭素数4以下のケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン)が好ましい。またこれらの混合溶媒も含まれる。
【0066】
溶媒の使用量は上記式(4)及び(5)で表されるカップリング成分の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは1〜50質量倍であり、更に好ましくは2〜30質量倍である。
【0067】
本発明において、式(4)及び(5)で表されるカップリング成分は溶媒に分散している状態であっても、カップリング成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0068】
カップリング成分の使用量は、アゾカップリング部位あたり、ジアゾ成分が0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.50当量であることが好ましい。
【0069】
反応温度は、−30℃〜30℃が好ましく、より好ましくは−15℃〜10℃であり、更に好ましくは−10℃〜5℃である。−30℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また30℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0070】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0071】
本発明のアゾ顔料組成物の製造方法においては、これらの反応によって得られる生成物
(粗アゾ顔料)は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
【0072】
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、造塩等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、供することができる。
【0073】
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ、中和してあるいは中和せずに、遊離したものをあるいは有機溶媒/水溶液にて抽出したものを、精製せずにあるいは再結晶、晶析、造塩等にて精製する操作を単独に又は組み合わせて行なった後、供することもできる。
【0074】
更に詳細に本発明のアゾ顔料組成物の製造方法について説明する。
【0075】
本発明のアゾ顔料組成物の製造方法は、上記式(3)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(4)及び(5)で表される化合物とのカップリング反応において、該式(4)及び(5)で表される化合物を有機溶媒に溶解させた後カップリング反応を行うことを特徴とする。
【0076】
上記式(3)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(4)及び(5)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは15℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことが好ましい。
【0077】
上述した互変異性及び/又は結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。より好ましい形態である本発明の7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する式(1)の結晶又は7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する式(2)の結晶を主成分とする顔料組成物を製造する方法としては、例えば、上記式(4)及び(5)で表される化合物を有機溶媒に一度溶解させた後カップリング反応を行う本発明の方法を用いるのが好ましい。このとき使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン系溶媒が挙げられる。アルコール溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が好ましく、その中でもメタノールが特に好ましい。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましく、その中でもアセトンが特に好ましい。
【0078】
本発明の別のアゾ顔料組成物の製造方法は、上記式(3)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(4)及び(5)で表される化合物とのカップリング反応において、極性非プロトン性溶媒の存在下カップリング反応を行うことを特徴とする。
【0079】
極性非プロトン性溶媒の存在下カップリング反応を行う方法によっても、7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する式(1)の結晶又は7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する式(2)の結晶を主成分とする顔料組成物を効率よく製造することができる。極性非プロトン性溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルが特に好ましい。これらの溶媒を用いる場合、上記式(3)で表される化合物は溶媒に完溶していても完溶していなくてもよい。
【0080】
上記の製造方法によって得られた化合物を用途に応じて、精製工程として塩基を加えてpHを調整してもしなくても良い。pHを調整する場合、pHは4〜10が好ましい。その中でも、pHが5〜8がより好ましく、5.5〜7.5が特に好ましい。
【0081】
pHが10以下であれば、色相の観点で変色・褪色を引き起こすことなくが赤味を増すこともなく、一定品質の色相を確保する点の観点から好ましい。pHが4以上の場合には、例えば、インクジェット記録用インクとして用いた場合、ノズルを腐食してしまう等の問題が生じ難いため好ましい。
【0082】
上記の製造方法によって、上記式(1)及び(2)で表される化合物は粗アゾ顔料(クルード)として得られる。
本発明は上記製造方法で製造されたアゾ顔料組成物にも関する。
【0083】
〔後処理工程〕
本発明の製造方法においては、後処理を行う工程を含むことが好ましい。この後処理工程の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0084】
本発明の上式(1)及び(2)で表される化合物は後処理工程として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。例えば、水を除いた有機溶媒中で還流することにより目的とする結晶形態のアゾ顔料を製造できる。
【0085】
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えても良い。
【0086】
溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0087】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0088】
〔顔料分散物〕
本発明の顔料分散物は、上記(1)で表される本発明のアゾ顔料を少なくとも1種を含むことを特徴とし、更に好ましくは、上記(2)で表される本発明のアゾ顔料を併用することを特徴とする。これにより、色彩的特性、耐久性及び分散安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
【0089】
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の他価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0090】
更に、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0091】
更に,顔料の分散及び画像の品質を向上させるため,界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0092】
ノニオン性界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0093】
非水系顔料分散物は、上記式(1)及び(2)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0094】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0095】
本発明の顔料分散物は、上記のアゾ顔料及び水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0096】
本発明において、顔料粒子の体積平均粒子径は0.01μm〜0.2μmであることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料粒子の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0097】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上200nm以下であり、更に好ましくは30nm以上180nm以下であり、その中でも特に30nm以上150nm以下が最も好ましい。顔料分散物中の粒子の体積平均粒子径が20nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0098】
本発明の顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%に満たないと、インクとして顔料分散物を単独で用いるときに十分な画像濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0099】
本発明のアゾ顔料の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
【0100】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【0101】
本発明のアゾ顔料は、その用途に適した耐溶溶剤性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明のアゾ顔料は、用いられる系に応じて乳化分散状態、更には固体分散状態でも使用する事が出来る。
【0102】
〔着色組成物〕
本発明の着色組成物は、本発明のアゾ顔料組成物を着色剤として含有する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明のアゾ顔料を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0103】
〔インク〕
次に、本発明のインクについて説明する。
上記で説明した本発明の顔料分散物を含み、好ましくは水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
本発明のインクジェット記録用インクは本発明の顔料分散物を含み、本発明のインクをインクジェット記録用インクとして用いることもできる。
【0104】
また、本発明の顔料を含有する着色組成物はインクジェット記録用インクとして好ましく用いることができる。
【0105】
本発明のインクは、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0106】
本発明のインクは、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0107】
〔インクジェット記録用インク〕
次に、インクジェット記録用インクについて説明する。
【0108】
本発明のインクジェット記録用インクは、アゾ顔料組成物を着色剤として含有する。インクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0109】
インク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0110】
インク100質量部中に、本発明の顔料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0111】
インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0112】
更に、本発明におけるインクは、上記本発明におけるアゾ顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、C.I.P.Y.−74、C.I.P.Y.−128、C.I.P.Y.−155、C.I.P.Y.−213が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.−19、C.I.P.R.−122が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、C.I.P.B.−15:3、C.I.P.B.−15:4が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0113】
インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0114】
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0115】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0116】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0117】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0118】
本発明におけるインクの好ましい物性は以下の通りである。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0119】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
【0120】
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s−1として行った。
【0121】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0122】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0123】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
【0124】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0125】
〔インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインクジェット記録用インクタンク〕
インクジェット記録方法は、インクジェット記録用インクを用い、記録信号に応じて記録ヘッドから記録媒体表面にインクを吐出して、記録媒体表面に画像を形成する方法である。
また、インクジェット記録装置は、インクジェット記録用インクを用い、インク(必要により処理液)を記録媒体表面に吐出する記録ヘッドを備え、記録媒体表面に前記インクを記録ヘッドから吐出することにより、画像を形成する装置である。なお、インクジェット記録装置は、記録ヘッドに、インクを供給することができ、かつ、インクジェット記録装置本体に対して脱着可能なインクジェット記録用インクタンク(以下、「インクタンク」と称す場合がある)を備えていてもよい。この場合、このインクジェット記録用インクタンクには、インクが収納される。
【0126】
インクジェット記録装置としては、インクジェット記録用インクを用いることが可能な印字方式を備えた通常のインクジェット記録装置が利用でき、この他にも、必要に応じてインクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載していたり、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する機構を備えたものであってもよい。
また、インクジェット記録用インクタンクは、記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に対して脱着可能であり、インクジェット記録装置に装着した状態で、記録ヘッドにインクを供給できる構成を有するものであれば、従来公知のインクタンクが利用できる。
【0127】
インクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果がある。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果がある。
【0128】
インクジェット記録方法(装置)において、インクの記録ヘッドへの補給(供給)は、インク液体が満たされたインクタンク(必要により処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置本体に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インクの補給が簡易に行われる。
【0129】
[カラートナー]
カラートナー100質量部中のアゾ顔料の含有量は特に制限がないが、0.1質量部以上含有するのが好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部含有するのが最も好ましい。アゾ顔料を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用される全てのバインダーが使用出来る。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、更にはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0130】
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等があげられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0131】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどがあげられる。
【0132】
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0133】
トナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等があげられる。
【0134】
[感熱記録(転写)材料]
感熱記録材料は、支持体上に本発明のアゾ顔料をバインダーとともに塗設したインクシート、及び画像記録信号に従ってサーマルヘッドから加えられた熱エネルギーに対応して移行してきた顔料を固定する受像シートから構成される。インクシートは、本発明のアゾ顔料をバインダーと共に溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インクを支持体上に塗布して適宜に乾燥することにより形成することができる。支持体上のインクの塗布量は特に制限するものではないが、好ましくは30〜1000mg/m2である。好ましいバインダー樹脂、インク溶媒、支持体、更には受像シートについては、特開平7−137466号に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0135】
該感熱記録材料をフルカラー画像記録が可能な感熱記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成する事が好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートが更に形成されていても良い。
【0136】
[カラーフィルター]
カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の色素をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号や特開平6−35182号に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げる事ができる。又、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルターを得ることができる。カラーフィルターの場合も本発明のアゾ顔料の使用量の制限はないが0.1〜50質量%が好ましい。
【0137】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【0138】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは質量部を表す。
【実施例】
【0139】
本発明の顔料組成物のX線回折の測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にてCuKα線を用い、次の条件で行ったものである。
【0140】
使用測定器 : Rigaku社製 自動X線回折装置RINT2500
X線管球 : Cu
管電圧 : 55KV
管電流 : 280mA
スキャン方法 : 2θ/θスキャン
スキャン速度 : 6deg./min.
サンプリング間隔 :0.100deg.
スタート角度(2θ) : 5deg.
ストップ角度(2θ) : 55deg.
ダイバージェンススリット : 2deg.
スキャッタリングスリット : 2deg.
レジーピングスリット : 0.6mm
縦型ゴニオメータ使用
【0141】
〔合成例1〕アゾ顔料組成物(1)の合成
アゾ顔料(1)の合成スキームを下記に示す。
【0142】
【化8】
【0143】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0144】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
【0145】
(3)中間体(c)の合成
メタノール1.1Lに水136mLを加えて、炭酸水素ナトリウム182g(2.17モル)を添加し、室温にて攪拌した。同温度にて塩化シアヌル200g(1.08モル)を分割添加した。添加終了後、内温を30℃まで昇温した。同温度にて30分間攪拌した後、水500mLを加え、析出した固体を濾別し、水500mL、メタノール300mLでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を168g(白色粉末、収率86.2%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)4.14(s,3H)
【0146】
(4)中間体(d)の合成
ヒドラジン1水和物363mL(7.46モル)に水673mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(c)168g(934ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、水700mL、アセトニトリル1Lでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)の粗精製物(白色粉末)を得た。
【0147】
(5)中間体(e)の合成
中間体(d)の粗精製物に、エチレングリコール480mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル257g(2.06モル)を加え、内温が50℃になるまで加熱した。同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴下した後、内温が80℃になるまで加熱して3時間攪拌した。反応終了後、氷冷し内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗い後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体
(e)を105g(白色粉末、2工程収率29.2%)で得た。得られた中間体(e)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.00(s,4H),5.35(s,2H),4.05(s,3H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
【0148】
(6)アゾ顔料(1)の合成
酢酸125mLと硫酸24mLの混合液を氷冷し、内温を3℃まで冷却した。同温度にてニトロシル硫酸26.4gを添加し、続いて、同温度にて中間体(b)11.6gを分割添加して溶解させた。同温度にて1時間攪拌した後、同温度にて尿素1.2gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に、中間体(e)11.6gをメタノール405mLに室温にて完溶させ、氷冷して内温を−3℃に冷却した。同温にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が3℃以下になるように分割添加し、添加終了後、2時間攪拌した。氷浴をはずし、室温にて10分間攪拌した後、析出した結晶を濾別し、メタノール150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水750mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、メタノール80mLでかけ洗いした。得られた結晶を室温にて、12時間乾燥させた。
【0149】
得られた結晶をジメチルアセトアミド180mLと水180mLの混合溶液に懸濁させた後、内温を85℃まで昇温し、同温度にて2時間攪拌した。その後、得られた結晶を熱時にて濾別し、メタノール300mLに懸濁し、室温にて30分攪拌した。得られた結晶を濾別し、室温にて5時間乾燥させ、アゾ顔料(1)を19.5g得た。収率90.3%。
得られたアゾ顔料(1)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約150nmであった。
アゾ顔料(1)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図1に示す。
【0150】
〔合成例2〕アゾ顔料組成物(2)の合成
アゾ顔料(2)の合成スキームを下記に示す。
【0151】
【化9】
【0152】
(7)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0153】
(8)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
【0154】
(9)中間体(c’)の合成
ヒドラジン1水和物387mL(7.98モル)にメタノール298mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン149g(1.00モル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。その後更に加熱して内温60℃まで昇温し、同温度にて5時間攪拌した。反応終了後、水750mLを加えた後、氷冷して内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗いし、イソプロパノールでかけ洗いした。室温にて36時間乾燥を行い前記中間体(c’)を119g(白色粉末、収率84.5%)で得た。得られた中間体(c’)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.80(s,1H),7.52(s,2H),5.98(s,1H),4.13(s,4H)
【0155】
(10)中間体(d’)の合成
中間体(c’)50g(357ミリモル)に、水128mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル98.2g(785ミリモル)を加え、同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴加した後、内温が50℃になるまで加熱し、同温度にて6時間攪拌した。反応終了後、8Nの水酸化カリウム水溶液を加えて中和し、pH6.4にした。氷冷し内温が10℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗いした。得られた結晶を減圧下60℃にて乾燥し、得られた粗精製物にトルエン30mLを加え、60℃に加熱して溶解させた。得られた溶液を室温にて12時間静置し、析出した結晶をろ取、冷却したトルエンでかけ洗いし、減圧下60℃にて乾燥し、前記中間体(d’)を87.7g(白色粉末、収率69.3%)で得た。得られた中間体(d’)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)8.74(s,1H),7.99(s,1H),6.87(s,4H),5.35(s,2H),1.24(s,18H)
【0156】
(11)アゾ顔料(2)の合成
【0157】
酢酸55mLとプロピオン酸37mLの混合液に室温にて中間体(b)9.2gを溶解させた。氷冷して内温を−3℃まで冷却し、内温が−3℃〜4℃でニトロシル硫酸の40質量%硫酸溶液を10分かけて滴下した。内温4℃にて1時間攪拌した後、尿素0.2gを加え、その後、内温を−3℃に冷却し、更に10分攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に中間体(d’)10gをアセトン150mLに完溶させた後、内温を17℃に冷却し、上述のジアゾニウム塩溶液に内温−3℃〜3℃の範囲内で25分かけて添加した。添加完了後、3℃で30分攪拌した後、氷浴をはずし、30分かけて室温まで昇温させた。室温にて30分攪拌した後、得られた結晶を濾別し、アセトン150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水400mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、アセトン80mLをかけ洗いした。得られた結晶を室温にて、12時間乾燥させた。
【0158】
得られた結晶をアセトン580mLに懸濁させた後、還流下30分間攪拌した。その後、10分間かけて室温に冷却し、得られた結晶を濾別し、室温にて5時間乾燥させ、アゾ顔料(2)を17.1g得た。収率88.5%。
得られたアゾ顔料(2)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約15μmであった。
アゾ顔料(2)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを示した。CuKα特性X線回折図を図2に示す。
【0159】
〔合成例3〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−1の合成
α型結晶形態アゾ顔料(1)−1〜(1)−12の合成スキームを下記に示す。
【0160】
【化10】
【0161】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0162】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
【0163】
(3)中間体(c)の合成
メタノール1.1Lに水136mLを加えて、炭酸水素ナトリウム182g(2.17モル)を添加し、室温にて攪拌した。同温度にて塩化シアヌル200g(1.08モル)を分割添加した。添加終了後、内温を30℃まで昇温した。同温度にて30分間攪拌した後、水500mLを加え、析出した固体を濾別し、水500mL、メタノール300mLでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を168g(白色粉末、収率86.2%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)4.14(s,3H)
【0164】
(4)中間体(d)の合成
ヒドラジン1水和物363mL(7.46モル)に水673mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(c)168g(934ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、水700mL、アセトニトリル1Lでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)の粗精製物(白色粉末)を得た。
【0165】
(5)中間体(e)の合成
中間体(d)の粗精製物に、エチレングリコール480mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル257g(2.06モル)を加え、内温が50℃になるまで加熱した。同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴下した後、内温が80℃になるまで加熱して3時間攪拌した。反応終了後、氷冷し内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗い後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(e)を105g(白色粉末、2工程収率29.2%)で得た。得られた中間体(e)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.00(s,4H),5.35(s,2H),4.05(s,3H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
【0166】
(6)α型結晶形態アゾ顔料(1)―1の合成
酢酸20.5mLを氷冷し、内温10℃にした。内温15℃以下になるようにニトロシル硫酸16.8gを添加し、続いて内温15℃以下になるように中間体(b)9.5gを分割添加した。内温15℃にて15分間攪拌した後、15分かけて内温25℃に昇温した。同温度にて90分間攪拌した後、同温度にて尿素0.4gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。
別に、中間体(e)11.6gをメタノール405mLに室温にて完溶させ、氷冷して内温を−3℃に冷却した。同温にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が3℃以下になるように分割添加し、添加終了後2時間攪拌し、アゾ化合物反応液を得た。別に水810mLを用意し、アゾ化合物反応液を添加した。室温にて30分間攪拌し、析出した結晶を濾別し、メタノール150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水750mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、メタノール80mLでかけ洗いして、粗顔料(1−1)を得た。得られた粗顔料(1−1)を室温にて、12時間乾燥させ、粗顔料(1−2)を得た。
得られた粗顔料(1−2)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜500nmであった。
粗顔料(1−2)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図3に示す。
【0167】
得られた粗顔料(1−2)10gを2−プロパノール100mLに懸濁させた後、還流下2時間攪拌した。その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−1を9.2g(収率92.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−1を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜180nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−1のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図4に示す。
【0168】
〔合成例4〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−2の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−プロパノール50mL、水50mLの混合溶媒に懸濁させた後、内温78°にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−2を9.5g(収率95.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−2を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜160nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−2のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図5に示す。
【0169】
〔合成例5〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−3の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−メチル−1−プロパノール200mLに懸濁させた後、内温80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−3を9.3g(収率93.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−3を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約30〜140nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−3のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図6に示す。
【0170】
〔合成例6〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−4の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−メチル−1−プロパノール50mL、水50mLに懸濁させた後、内温80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−4を9.3g(収率93.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−4を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜120nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−4のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図7に示す。
【0171】
〔合成例7〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−5の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−メチル−1−プロパノール25mL、水75mLに懸濁させた後、内温80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−5を9.3g(収率93.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−5を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約30〜110nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−5のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図8に示す。
【0172】
〔合成例8〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−6の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを水200mLに懸濁させた後、80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−6を9.6g(収率96.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−6を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約30〜150nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−6のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図9に示す。
【0173】
〔合成例9〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−7の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをアセトン200mLに懸濁させた後、還流下2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−7を8.5g(収率85.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−7を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約60〜190nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−7のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図10に示す。
【0174】
〔合成例10〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−8の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをアセトン100mL、水100mLの混合溶媒に懸濁させた後、内温60℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−8を9.0g(収率90.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−8を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約50〜160nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−8のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図11に示す。
【0175】
〔合成例11〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−9の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをメタノール100mLに懸濁させた後、還流下2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−9を9.2g(収率92.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−9を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約50〜140nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−9のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図12に示す。
【0176】
〔合成例12〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−10の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをメタノール100mL、水100mLの混合溶媒に懸濁させた後、内温70℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−10を9.4g(収率94.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−10を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜130nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−10のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図13に示す。
【0177】
〔合成例13〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−11の合成
43%ニトロシル硫酸43.3gを氷冷し、内温を10℃まで冷却した。
内温15℃以下になるように酢酸60mLを添加し、続いて、内温15℃以下になるように中間体(b)25gを分割添加した。
内温15℃にて15分間攪拌した後、内温25℃に昇温し、同温度にて90分間攪拌した。
その後、同温度にて尿素0.9gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。
別に、中間体(e)30.3gをメタノール518mLに室温にて懸濁させ、内温を15℃に冷却した。
同温度にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が30℃以下になるように添加した。
添加終了後、2時間攪拌し、アゾ化合物反応液を得た。
別に水810mLを用意し、アゾ化合物反応液を添加した。
室温にて30分間攪拌した後、8規定の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを6.0にした。
その後、攪拌を止めて12時間静置し、上澄み液を除去し、除去した量と同量の水を加え、30分間攪拌した。
この操作を3回繰り返し行った後、内温80℃に昇温し、同温度にて2時間攪拌した。
その後、熱時にて濾過を行い、水1Lでかけ洗いをした後、減圧下室温にて、24時間乾燥させ、α型結晶形態アゾ顔料(1)−11を53.4g(収率97.1%)を得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−11を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約60〜250nmであった。
α型結晶形態アゾ顔料(1)−11のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図14に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
〔実施例1〕顔料分散物1の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物1(平均粒子径;Mv≒64nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0180】
〔実施例2〕顔料分散物2の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物2(平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0181】
〔実施例3〕顔料分散物3の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物3(平均粒子径;Mv≒67nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0182】
〔実施例4〕顔料分散物4の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.5部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を1.0部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物4(平均粒子径;Mv≒66nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0183】
〔実施例5〕顔料分散物5の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を1.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物5(平均粒子径;Mv≒69nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0184】
〔実施例6〕顔料分散物6の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を0.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を2.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物6(平均粒子径;Mv≒70nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0185】
〔実施例7〕顔料分散物7の作製
合成例3で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−1を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物7(体積平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0186】
〔実施例8〕顔料分散物8の作製
合成例8で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−6を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物8(体積平均粒子径;Mv≒70nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0187】
〔実施例9〕顔料分散物9の作製
合成例9で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−7を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物9(体積平均粒子径;Mv≒69nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0188】
〔実施例10〕顔料分散物10の作製
合成例10で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−8を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物10(体積平均粒子径;Mv≒79nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0189】
〔実施例11〕顔料分散物11の作製
合成例11で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−9を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物11(体積平均粒子径;Mv≒71nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0190】
〔実施例12〕顔料分散物12の作製
合成例12で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−10を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物12(体積平均粒子径;Mv≒65nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0191】
〔実施例13〕顔料分散物13の作製
合成例13で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−11を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物13(体積平均粒子径;Mv≒87nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0192】
〔実施例14〕顔料分散物14の作製
合成例13で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−11を2.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物14(体積平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0193】
〔実施例15〕顔料分散物15の作製
合成例3で合成した粗顔料(1−2)を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物15(体積平均粒子径;Mv≒79nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0194】
〔比較例1〕比較顔料分散物1の作製
実施例1で用いたアゾ顔料組成物(1)に替えてえてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を用いた以外は実施例1と同様にして黄色の比較顔料分散物1を得た。
【0195】
〔比較例2〕比較顔料分散物2の作製
実施例1で用いたアゾ顔料組成物(1)に替えてえてC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を用いた以外は実施例1と同様にして黄色の比較顔料分散物2を得た。
【0196】
〔比較例3〕比較顔料分散物3の作製
実施例3で用いたアゾ顔料組成物(1)及びアゾ顔料組成物(2)に替えてえてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)とC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を併用した以外は実施例3と同様にして黄色の比較顔料分散物3を得た。
【0197】
〔比較例4〕比較分散物4の作製
実施例1で用いたアゾ顔料組成物(1)に替えて下記式(A)で表される化合物(DYE−1)を用いた以外は実施例1と同様にして行ったところ、溶解してしまい、分散できなかった。
【0198】
【化11】
【0199】
<分散性>
顔料2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った結果、分散できなかったものを××、100nm以上の粗大粒子が確認されるものを×、ほとんど確認されないものを○として、本発明の顔料分散物1〜6、比較顔料分散物1〜3及び比較分散物4を評価した。結果を表−2に示す。
【0200】
<分散安定性>
上記実施例1〜6、比較例1〜3で得られた顔料分散物を室温にて4週間静置した。その結果、沈殿物が目視で確認されるものを×、沈殿物が確認されなかったものを○とした。結果を表−2に示す。
【0201】
<着色力評価>
上記実施例1〜6、比較例1〜3で得られた顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてエプソン社製フォトマット紙に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、「着色力(OD:Optical Density)」を以下の基準で評価した。ODが1.4以上の場合を◎、1.2以上で1.4未満の場合を○、1.0以上で1.2未満の場合を△、1.0未満の場合を×とした。結果を表−2に示す。
【0202】
<色相評価>
色相については、上記で得られた塗布物の色度を目視にて緑味が少なく鮮やかさが大きいものを◎(良好)、どちらか一方が当てはまらないものを○、及びどちらも当てはまらないものを×(不良)として評価を行った。結果を表−2に示す。
【0203】
<光堅牢性評価>
色相評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を作成し、フェードメーターを用いてキセノン光(99000lux;TACフィルター存在下)を35日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が80%以上の場合を○、60%以上80%未満の場合を△、60%未満の場合を×として、顔料分散物1〜6及び比較顔料分散物1〜3を評価した。結果を表−2に示す。
【0204】
<オゾンガス堅牢性評価>
色相評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を作成し、オゾン濃度5.0ppm25℃湿度50%条件下を35日間暴露し、オゾンガス暴露前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が80%以上の場合を○、70%以上80%未満の場合を△、70%未満の場合を×として、顔料分散物1〜6及び比較顔料分散物1〜3を評価した。結果を表−2に示す。
なお、例えば表中の「(1)/(2)=9/1」は、アゾ顔料組成物(1)とアゾ顔料組成物(2)を9:1の質量比で用いたことを表す。
【0205】
【表2】
【0206】
これらの結果から、本発明のアゾ顔料組成物を使用した顔料分散物は、易分散性であり顔料分散物の安定性が良好であることが確認された。更に、本発明の顔料分散物を含有する着色組成物は、イエローとしての色相に優れ、着色力が高く、耐光性・耐オゾンガス性にも優れることがわかった。
また、アゾ顔料(1)を単独で用いた実施例1及びアゾ顔料(1)とアゾ顔料(2)9:1の質量比で用いた実施例2、実施例14では着色力が特に優れ、アゾ顔料(1)とアゾ顔料(2)6:4〜1:9の質量比で用いた実施例4〜13、実施例15では色相及び耐光性が特に優れることがわかった。そして、アゾ顔料(1)とアゾ顔料(2)8:2の質量比で用いた実施例3,実施例7〜実施例13,実施例15では着色力、色相及び耐光性が特に優れることがわかった。
したがって、本発明のアゾ顔料組成物を含有する顔料分散着色組成物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に好適に使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲な色再現性及び耐光性に優れたイエロー顔料組成物、イエロー顔料組成物を含む分散物、イエロー顔料組成物を含む分散物を用いたインクジェット記録用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。特に、良好な色相を有し、光、湿熱及び環境中の活性ガス、中でも着色力が高く、光に対して堅牢な顔料が強く望まれている。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
アゾ顔料は色彩的特性である色相及び着色力に優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料などに広く使用されている。これらのうち、最も典型的に使用されているアゾ顔料は、イエロージアリーリド顔料、レッドナフトールアゾ顔料である。ジアリーリド顔料としては例えば、C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同17などが挙げられる。ナフトールアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・レッド208、同242などが挙げられる。しかし、これらの顔料は堅牢性、とりわけ耐光性が非常に劣るため、印字物が光に曝されることによって顔料が分解して退色してしまい、印字物の長期間の保存に適さない。
【0006】
このような欠点を改良するために、分子量を大きくしたり、強い分子間相互作用を持つ基を導入したりすることによって、堅牢性を改善したアゾ顔料も開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかしながら、改良された顔料においても、例えば特許文献1に記載の顔料はその耐光性が改善されてはいるが未だ不十分であり、また、例えば特許文献2及び3に記載の顔料は色相が緑味で着色力が低くなり、色彩的特性に劣るといった欠点があった。
【0007】
また、特許文献4〜5には色再現性に優れた吸収特性と十分な堅牢性を有する色素が開示されている。しかしながら、該特許文献に記載されている具体的化合物は、どれも水又は有機溶剤に溶解するため、耐薬品堅牢性が十分でない。
【0008】
イエロー、マゼンタ、シアンの3色、又は更にブラックを加えた4色による減色混合法を用いてフルカラーを表現する場合、1色だけ堅牢性の劣る顔料を用いると、時間の経過とともに印字物のグレーバランスが変化してしまい、また、色彩的特性に劣る顔料を用いると、印刷時の色再現性が低下してしまう。したがって、高い色再現性を長期間維持する印字物を得るために、色彩的特性及び堅牢性の両立した顔料及び顔料分散物が望まれている。
【0009】
従来から、アゾ色素は種々の可視光吸収を有することが多いために、色素として種々の分野で利用されてきた。例えば合成樹脂の着色、印刷インク、昇華型感熱転写材料用色素、インクジェット用インク、カラーフィルター用色素等、種々の分野で用いられるようになってきている。色素としてアゾ色素に要求される大きな性能に吸収スペクトルがある。色素の色相は、色素によって着色した物体の色目、風合い等に大きな影響を与え、視覚に与える効果が大きい。従って、古くから色素の吸収スペクトルに関する研究がなされている。
従来から知られている含窒素5員環をアゾ成分とするアゾ染料は、特許文献6及び7にも開示されている。
【0010】
カラー画像形成において、イエロー領域の色を再現するには、イエロー顔料を含んでなるイエローインク組成物が用いられる。イエロー顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,150,151,154,155,180,185,213等が挙げられる。
【0011】
また、イエロー領域の色を広範囲に再現するには、上記イエロー顔料を組み合わせたイエロー顔料組成物を複数調整することにより色再現性を改良することが特許文献8及び9に開示されている。
しかしながら、良好な色再現性を有する2種以上のイエロー顔料を含んでなるイエローインク組成物では、1種類の顔料を含むインクよりは広範囲な色再現性を得ることができるが、イエロー領域における暗部色再現性は十分ではない。また、色相角が離れた顔料種の混合では2次色の彩度が低くなる傾向が顕著である。たとえば、C.I.ピグメントイエロー110と他の顔料を組み合わせて用いた場合、C.I.ピグメントイエロー110が赤味を帯びているため、インクセットに用いると緑色が低彩度になる欠点を有していた。
更に、インクセットには記録媒体上で鮮明な画像が得られるだけでなく、長期保存による画像の劣化がないこと(特に耐光性)が求められる。カラー画像を複数の顔料インク組成物で形成する場合は、1色でも耐光性に劣るものが存在すると画像の色相が変わりカラー画像の品質が極端に劣化する。たとえばC.I.ピグメントイエロー74は比較的良好な色相を有するが、耐光性が著しく低いために、インクセットに用いた場合はイエロー、レッド、グリーン、グレイ部の画像の色相が大幅に変化することからカラー画像の品質劣化が大きな課題となっていた。
【0012】
一方、イエロー領域の色を広範囲に再現するには、高明度のイエローインクとは別に、ダークイエローと呼ばれる低明度のイエローインクを更に備えるインクセットを用いる方法が特許文献10及び11に開示されている。
しかしながら、ダークイエローに代表される第2のインク組成物を使用する方法はインクの色数が増えるために色作りが複雑化し、コストも高くなる傾向があるだけでなく、その改良レベルは要求性能を十分満足できるレベルには達していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭56−38354号公報
【特許文献2】米国特許第2936306号明細書
【特許文献3】特開平11−100519号公報
【特許文献4】特開2005−213357号公報
【特許文献5】特開2003−246942号公報
【特許文献6】特開昭55−161856号公報
【特許文献7】特開2002−371214号公報
【特許文献8】特開2005−314545号公報
【特許文献9】特許第3911920号公報
【特許文献10】特許第3455764号公報
【特許文献11】特許第3553581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は特定の置換基を有するピラゾール環をアゾ基及び置換基の異なるもう1つのピラゾール環から構成される色素母核を、含窒素ヘテロ環を介して連結したビスアゾ顔料の結晶形であるアゾ顔料又はその互変異性体を含むアゾ顔料組成物に関し、その優れた安定性及び製造方法はこれまで知られていなかった。
本発明は色相及び光堅牢性が極めて良好であり、優れた着色力(色濃度)を有するアゾ顔料組成物を提供することを目的とするものであり、好ましくは更に、上記色素母核を異なる含窒素ヘテロ環を介して連結したアゾ顔料及びその互変異性体を含有するアゾ顔料組成物を提供することを目的とするものである。
更に本発明は、該アゾ顔料組成物を含有する着色組成物を提供することを目的とするものである。
更に、該アゾ顔料組成物の分散物を含む着色組成物、該顔料組成物を含む分散物を用いた色再現性と耐光性に優れたインクジェット記録用インクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は上記した実情に鑑みて鋭意検討した結果、特定の位置に特徴的なX線回折ピークを有するアゾ顔料又はその互変異性体を含むアゾ顔料組成物が分散性及び分散物安定性が極めて良好であり、優れた色相、着色力及び耐光性を有することを見出した。
また、アゾ顔料組成物が分散された分散物及び着色組成物は優れた色相、着色力及び耐光性を有するインクジェット記録用インクを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有することを特徴とするアゾ顔料組成物。
【0017】
【化1】
【0018】
〔2〕
更に、前記組成物が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも0.1質量%以上99質量%未満含有することを特徴とする〔1〕に記載のアゾ顔料組成物。
【0019】
【化2】
【0020】
〔3〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1質量%以上70質量%未満含有することを特徴とする〔2〕に記載のアゾ顔料組成物。
〔4〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも5質量%以上45質量%未満含有することを特徴とする〔2〕又は〔3〕に記載のアゾ顔料組成物。
〔5〕
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも15質量%以上30質量%未満含有することを特徴とする〔2〕〜〔4〕のいずれかに記載のアゾ顔料組成物。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のアゾ顔料組成物を含有する顔料分散物。
〔7〕
顔料分散物中の顔料粒子の体積平均粒子径が0.01μm〜0.2μmであることを特徴とする〔6〕に記載の顔料分散物。
〔8〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有する着色組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有するインクジェット記録用インク。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、着色力、色相等の色彩的特性に優れ、かつ分散性及び分散安定性にも優れるアゾ顔料が提供される。本発明の顔料を種々の媒体に分散させることにより、色彩的特性、分散性及び分散安定性に優れる顔料分散物が得られる。顔料分散物は、光堅牢性に優れた着色物として、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】合成例1に従って合成されたアゾ顔料(1)のX線回折の図である。
【図2】合成例2に従って合成されたアゾ顔料(2)のX線回折の図である。
【図3】合成例3に従って合成された粗顔料(1−2)のX線回折の図である。
【図4】合成例3に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−1のX線回折の図である。
【図5】合成例4に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−2のX線回折の図である。
【図6】合成例5に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−3のX線回折の図である。
【図7】合成例6に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−4のX線回折の図である。
【図8】合成例7に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−5のX線回折の図である。
【図9】合成例8に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−6のX線回折の図である。
【図10】合成例9に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−7のX線回折の図である。
【図11】合成例10に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−8のX線回折の図である。
【図12】合成例11に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−9のX線回折の図である 。
【図13】合成例12に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−10のX線回折の図である。
【図14】合成例13に従って合成されたα型結晶形態顔料(1)−11のX線回折の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアゾ顔料組成物はCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体(以下、単に式(1)で表されるアゾ顔料と称する場合がある)を少なくとも1種含有する。
【0024】
【化3】
【0025】
本発明のX線回折測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にて行うことができる。
【0026】
本発明のアゾ顔料組成物における式(1)で表されるアゾ顔料の含有量は全固形分に対して30筆量%〜100質量%であることが好ましく、更に55質量%〜95質量%であることが好ましく、その中でも特に70質量%〜85質量%であることが最も好ましい。
本発明のアゾ顔料組成物に含有される式(1)で表されるアゾ顔料以外の成分としては、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体、結晶多形、塩、水和物等を挙げることができる。
【0027】
本発明のアゾ顔料組成物は、式(1)で表されるアゾ顔料(アゾ顔料(1))を含有することにより、アゾ顔料組成物を分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク等に用いた場合に、色相、着色力、光・熱・湿度・酸化性ガス(特にオゾンガス)堅牢性及び顔料分散物の粒度分布制御(例えば顔料インクの液物性制御)に優れたものとすることができる。
【0028】
本発明のアゾ顔料組成物は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(1)で表されるアゾ顔料を含有し、好ましくは更にCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(2)で表されるアゾ顔料とを含有する。
【0029】
本発明のアゾ顔料組成物は好ましくは、更に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体(以下、単に式(2)で表されるアゾ顔料と称する場合がある)を0.1以上99質量%未満含有し、より好ましくは、1以上70質量%未満含有し、更に好ましくは、少なくとも5以上45質量%未満含有し、15以上30質量%未満含有する。
【0030】
【化4】
【0031】
アゾ顔料組成物が、式(1)のアゾ顔料及び式(2)のアゾ顔料を含有する場合、アソ顔料組成物中のアゾ顔料の含有量の割合は、アゾ顔料の総重量に対して、アゾ顔料(2)/アゾ顔料(1)=0/100(質量%/質量%)〜99/1(質量%/質量%)であり、好ましい範囲としては5/95(質量%/質量%)〜95/5(質量%/質量%)であり、更に好ましい範囲としては20/80(質量%/質量%)〜80/20(質量%/質量%)であり、特に好ましい範囲としては40/60(質量%/質量%)〜60/40(質量%/質量%)である。
【0032】
また、本発明の顔料組成物は、少なくとも2種類のアゾ顔料(1)及び(2)を上記の範囲で含有することにより、アゾ顔料組成物を分散物、着色組成物、インクジェット記録用インク等に用いた場合に、色相、着色力、光・熱・湿度・酸化性ガス(特にオゾンガス)堅牢性及び顔料分散物の粒度分布制御(例えば顔料インクの液物性制御)において、より優れたものとすることができる。
【0033】
本発明において、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する上記式(1)で表される結晶形態アゾ顔料及びCuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上記式(2)で表される結晶形態アゾ顔料の取得手段としては、下記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(4)及び(5)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる方法で反応条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)を制御して取得する方法が挙げられる。更に、上記工程で得られたアゾ顔料を更に後工程で処理する際の条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)を調製することにより容易に得る事ができる。
【0034】
【化5】
【0035】
本発明のアゾ顔料組成物は、好ましくは上記式(1)で表されるアゾ顔料又は上記(2)で表されるアゾ顔料を別途製造して、任意に好ましい含有比率に混合して用いる、又は、上記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、上記式(4)及び(5)で表される化合物(カップリング成分)とを任意に混合してアゾカップリング反応させる方法でアゾ顔料混合物を製造して用いることも可能である。
本発明の顔料分散物において、上記式(1)で表される結晶形態アゾ顔料と、好ましくは更に上記式(2)で表される結晶形態アゾ顔料とを好ましい範囲の含有量で含むアゾ顔料組成物を、安定品質で安定製造する観点から、アゾ顔料を任意に好ましい含有比率に混合して用いる方法が好ましい。
【0036】
単一の結晶形態である場合、分子間が密になり、分子間相互作用が強くなる。その結果、耐溶剤性、熱安定性、耐光性、耐ガス性、印画濃度があがり、更には色再現域が広がる。
【0037】
そのため、上記式(1)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が好ましく、更に、7.2°、15.0°、19.8°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態がより好ましい。その中でも特に、7.2°、8.2°、10.0°、13.4°、15.0°、19.8°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が最も好ましい。
【0038】
更に、上記式(2)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角
(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が好ましく、更に、7.6°、13.5°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態がより好ましい。その中でも特に、7.6°、13.5°、15.9°、16.9°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が最も好ましい。
【0039】
また、上記式(1)及び(2)で表されるアゾ顔料の1次粒子を、透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さは、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上30μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上2μm以下であることが特に好ましい。
【0040】
1次粒子を透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さが0.01μm以上である場合には、光やオゾンに対する堅牢性、及び、顔料分散物とした場合の分散性をより確実に発現できる。一方、30μm以下である場合には、分散して所望の体積平均粒子径にした際に過分散状態(1次粒子を破壊した形態)になりにくく、顔料粒子の表面に活性面を露出しにくいことから凝集が起こりにくいため、顔料分散物の保存安定性をより確実に発現できる。
【0041】
1次粒子の大きさが、上記の範囲内に制御する事で、分子内・分子間相互作用が強くて強固で安定な3次元ネーとワークを形成した顔料粒子となり、光、熱、湿度、酸化性ガスに対して高い堅牢性を示し、その顔料分散物を用いた着色物は保存安定性に優れていて好ましい。
【0042】
本発明の顔料組成物を含有する顔料分散物の体積平均粒子径測定は、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いることができる。その測定は、例えば、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行うことができる。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いる。
【0043】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(1)で表されるアゾ顔料の平均粒径は0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上10μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上1μm以下であることが最も好ましい。
【0044】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態の上記式(2)で表されるアゾ顔料の平均粒径は0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上30μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上20μm以下であることが最も好ましい。
【0045】
上記の範囲であれば印画物の印画濃度が高く、分散物の安定性が増し、赤や緑などの混色部の色再現性が向上し、透明性が高くなり、インクジェット等で印画する際に、ノズルの目詰まりが起こりにくくなるため好ましい。また、顔料分散物の凝集が起こり難く、分散物の経時安定性が高くなる点からも好ましい。
【0046】
本発明の顔料組成物を含有する顔料分散物の体積平均粒径を上記の範囲とするには、後述の顔料分散条件を便宜組み合わせる事で容易に調整する事ができる。
【0047】
以下に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有するアゾ顔料組成物の製造方法に関して詳細に説明する。
【0048】
下式(1)で表されるアゾ顔料組成物の製造方法は、下記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(4)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる工程を含む。
【0049】
【化6】
【0050】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有するアゾ顔料組成物の製造方法に関して詳細に説明する。
【0051】
下式(2)で表されるアゾ顔料組成物の製造方法は、下記式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(5)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる工程を含む。
【0052】
【化7】
【0053】
〔ヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製工程〕
上式(3)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)のジアゾニウム塩への調製及びジアゾニウム塩と上式(4)及び(5)で表される化合物(カップリング成分)とのカップリング反応は、慣用法によって実施できる。
【0054】
上式(3)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製は、例えば酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)含有反応媒質中で、ニトロソニウムイオン源、例えば亜硝酸、亜硝酸塩又はニトロシル硫酸を用いる慣用のジアゾニウム塩調製方法が適用できる。
【0055】
より好ましい酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、リン酸、硫酸を単独又は併用して用いる場合が挙げられ、その中でリン酸、又は酢酸と硫酸の併用系、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が更に好ましく、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が特に好ましい。
【0056】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸を用いることが好ましく、特にリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸が好ましく、その中でも酢酸及び又はプロピオン酸が好ましい。
【0057】
好ましいニトロソニウムイオン源の例としては、亜硝酸エステル類、亜硝酸塩類、ニトロシル硫酸等が挙げられる。その中でも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、ONHSO4硫酸溶液)が好ましく、特に亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、40質量%〜50質量%ONHSO4硫酸溶液)が好ましく、その中でも上記の好ましい酸含有反応媒質中でニトロシル硫酸を用いることが安定にかつ効率的にジアゾニウム塩を調製できる。
【0058】
式(3)のジアゾ成分に対する溶媒の使用量は、0.5〜50質量倍が好ましく、より好ましくは1〜20質量倍であり、特に3〜15質量倍が好ましい。
【0059】
本発明において、式(3)のジアゾ成分は溶媒に分散している状態であっても、ジアゾ成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0060】
ニトロソニウムイオン源の使用量はジアゾ成分に対して0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.10当量であることが好ましい。
【0061】
反応温度は、−15℃〜40℃が好ましく、より好ましくは−5℃〜35℃であり、更に好ましくは−0℃〜30℃である。−15℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また40℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0062】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0063】
〔カップリング反応工程〕
カップリング反応する工程は、酸性反応媒質中〜塩基性反応媒質中で実施することができるが、本発明のアゾ顔料は酸性〜中性反応媒質中で実施することが好ましく、特に酸性反応媒質中で実施することがジアゾニウム塩の分解を抑制し効率良くアゾ顔料に誘導することができる。
【0064】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸、有機溶媒を用いることができるが、特に有機溶媒が好ましく、反応時に液体分離現象を起こさず、溶媒と均一な溶液を呈する溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のジオール系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる、これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
【0065】
好ましくは、極性パラメータ(ET)の値が40以上の有機溶媒である。なかでも溶媒分子中に水酸基を2個以上有するグリコール系の溶媒、あるいは炭素原子数が3個以下のアルコール系溶媒、総炭素数5以下のケトン系溶媒、好ましくは炭素原子数が2以下のアルコール溶媒(例えば、メタノール、エチレングリコール)、総炭素数4以下のケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン)が好ましい。またこれらの混合溶媒も含まれる。
【0066】
溶媒の使用量は上記式(4)及び(5)で表されるカップリング成分の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは1〜50質量倍であり、更に好ましくは2〜30質量倍である。
【0067】
本発明において、式(4)及び(5)で表されるカップリング成分は溶媒に分散している状態であっても、カップリング成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0068】
カップリング成分の使用量は、アゾカップリング部位あたり、ジアゾ成分が0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.50当量であることが好ましい。
【0069】
反応温度は、−30℃〜30℃が好ましく、より好ましくは−15℃〜10℃であり、更に好ましくは−10℃〜5℃である。−30℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また30℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0070】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0071】
本発明のアゾ顔料組成物の製造方法においては、これらの反応によって得られる生成物
(粗アゾ顔料)は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
【0072】
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、造塩等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、供することができる。
【0073】
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ、中和してあるいは中和せずに、遊離したものをあるいは有機溶媒/水溶液にて抽出したものを、精製せずにあるいは再結晶、晶析、造塩等にて精製する操作を単独に又は組み合わせて行なった後、供することもできる。
【0074】
更に詳細に本発明のアゾ顔料組成物の製造方法について説明する。
【0075】
本発明のアゾ顔料組成物の製造方法は、上記式(3)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(4)及び(5)で表される化合物とのカップリング反応において、該式(4)及び(5)で表される化合物を有機溶媒に溶解させた後カップリング反応を行うことを特徴とする。
【0076】
上記式(3)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(4)及び(5)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは15℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことが好ましい。
【0077】
上述した互変異性及び/又は結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。より好ましい形態である本発明の7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する式(1)の結晶又は7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する式(2)の結晶を主成分とする顔料組成物を製造する方法としては、例えば、上記式(4)及び(5)で表される化合物を有機溶媒に一度溶解させた後カップリング反応を行う本発明の方法を用いるのが好ましい。このとき使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン系溶媒が挙げられる。アルコール溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が好ましく、その中でもメタノールが特に好ましい。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましく、その中でもアセトンが特に好ましい。
【0078】
本発明の別のアゾ顔料組成物の製造方法は、上記式(3)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(4)及び(5)で表される化合物とのカップリング反応において、極性非プロトン性溶媒の存在下カップリング反応を行うことを特徴とする。
【0079】
極性非プロトン性溶媒の存在下カップリング反応を行う方法によっても、7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する式(1)の結晶又は7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する式(2)の結晶を主成分とする顔料組成物を効率よく製造することができる。極性非プロトン性溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルが特に好ましい。これらの溶媒を用いる場合、上記式(3)で表される化合物は溶媒に完溶していても完溶していなくてもよい。
【0080】
上記の製造方法によって得られた化合物を用途に応じて、精製工程として塩基を加えてpHを調整してもしなくても良い。pHを調整する場合、pHは4〜10が好ましい。その中でも、pHが5〜8がより好ましく、5.5〜7.5が特に好ましい。
【0081】
pHが10以下であれば、色相の観点で変色・褪色を引き起こすことなくが赤味を増すこともなく、一定品質の色相を確保する点の観点から好ましい。pHが4以上の場合には、例えば、インクジェット記録用インクとして用いた場合、ノズルを腐食してしまう等の問題が生じ難いため好ましい。
【0082】
上記の製造方法によって、上記式(1)及び(2)で表される化合物は粗アゾ顔料(クルード)として得られる。
本発明は上記製造方法で製造されたアゾ顔料組成物にも関する。
【0083】
〔後処理工程〕
本発明の製造方法においては、後処理を行う工程を含むことが好ましい。この後処理工程の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0084】
本発明の上式(1)及び(2)で表される化合物は後処理工程として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。例えば、水を除いた有機溶媒中で還流することにより目的とする結晶形態のアゾ顔料を製造できる。
【0085】
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えても良い。
【0086】
溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0087】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0088】
〔顔料分散物〕
本発明の顔料分散物は、上記(1)で表される本発明のアゾ顔料を少なくとも1種を含むことを特徴とし、更に好ましくは、上記(2)で表される本発明のアゾ顔料を併用することを特徴とする。これにより、色彩的特性、耐久性及び分散安定性に優れた顔料分散物とすることができる。
【0089】
本発明の顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の他価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0090】
更に、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0091】
更に,顔料の分散及び画像の品質を向上させるため,界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0092】
ノニオン性界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0093】
非水系顔料分散物は、上記式(1)及び(2)で表される顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0094】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0095】
本発明の顔料分散物は、上記のアゾ顔料及び水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0096】
本発明において、顔料粒子の体積平均粒子径は0.01μm〜0.2μmであることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料粒子の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0097】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上200nm以下であり、更に好ましくは30nm以上180nm以下であり、その中でも特に30nm以上150nm以下が最も好ましい。顔料分散物中の粒子の体積平均粒子径が20nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0098】
本発明の顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%に満たないと、インクとして顔料分散物を単独で用いるときに十分な画像濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0099】
本発明のアゾ顔料の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
【0100】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【0101】
本発明のアゾ顔料は、その用途に適した耐溶溶剤性、分散性、熱移動性などの物性を、置換基で調整して使用する。また、本発明のアゾ顔料は、用いられる系に応じて乳化分散状態、更には固体分散状態でも使用する事が出来る。
【0102】
〔着色組成物〕
本発明の着色組成物は、本発明のアゾ顔料組成物を着色剤として含有する。本発明の着色組成物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、本発明のアゾ顔料を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明の着色組成物には、媒体を除いたインク用組成物も含まれる。本発明の着色組成物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0103】
〔インク〕
次に、本発明のインクについて説明する。
上記で説明した本発明の顔料分散物を含み、好ましくは水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
本発明のインクジェット記録用インクは本発明の顔料分散物を含み、本発明のインクをインクジェット記録用インクとして用いることもできる。
【0104】
また、本発明の顔料を含有する着色組成物はインクジェット記録用インクとして好ましく用いることができる。
【0105】
本発明のインクは、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0106】
本発明のインクは、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0107】
〔インクジェット記録用インク〕
次に、インクジェット記録用インクについて説明する。
【0108】
本発明のインクジェット記録用インクは、アゾ顔料組成物を着色剤として含有する。インクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明した顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0109】
インク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0110】
インク100質量部中に、本発明の顔料を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、1〜10質量部含有するのが更に好ましい。また、本発明のインクには、本発明の顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。2種類以上の顔料を併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0111】
インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0112】
更に、本発明におけるインクは、上記本発明におけるアゾ顔料の他に別の顔料を同時に用いることが出来る。適用できるイエロー顔料としては、例えば、C.I.P.Y.−74、C.I.P.Y.−128、C.I.P.Y.−155、C.I.P.Y.−213が挙げられ、適用できるマゼンタ顔料としては、C.I.P.V.−19、C.I.P.R.−122が挙げられ、適用できるシアン顔料としては、C.I.P.B.−15:3、C.I.P.B.−15:4が挙げられ、これらとは別に、各々任意のものを使用する事が出来る。適用できる黒色材としては、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラアゾ顔料のほか、カーボンブラックの分散体を挙げることができる。
【0113】
インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0114】
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0115】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0116】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0117】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0118】
本発明におけるインクの好ましい物性は以下の通りである。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0119】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
【0120】
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s−1として行った。
【0121】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0122】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0123】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
【0124】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0125】
〔インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインクジェット記録用インクタンク〕
インクジェット記録方法は、インクジェット記録用インクを用い、記録信号に応じて記録ヘッドから記録媒体表面にインクを吐出して、記録媒体表面に画像を形成する方法である。
また、インクジェット記録装置は、インクジェット記録用インクを用い、インク(必要により処理液)を記録媒体表面に吐出する記録ヘッドを備え、記録媒体表面に前記インクを記録ヘッドから吐出することにより、画像を形成する装置である。なお、インクジェット記録装置は、記録ヘッドに、インクを供給することができ、かつ、インクジェット記録装置本体に対して脱着可能なインクジェット記録用インクタンク(以下、「インクタンク」と称す場合がある)を備えていてもよい。この場合、このインクジェット記録用インクタンクには、インクが収納される。
【0126】
インクジェット記録装置としては、インクジェット記録用インクを用いることが可能な印字方式を備えた通常のインクジェット記録装置が利用でき、この他にも、必要に応じてインクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載していたり、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する機構を備えたものであってもよい。
また、インクジェット記録用インクタンクは、記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に対して脱着可能であり、インクジェット記録装置に装着した状態で、記録ヘッドにインクを供給できる構成を有するものであれば、従来公知のインクタンクが利用できる。
【0127】
インクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果がある。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果がある。
【0128】
インクジェット記録方法(装置)において、インクの記録ヘッドへの補給(供給)は、インク液体が満たされたインクタンク(必要により処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置本体に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インクの補給が簡易に行われる。
【0129】
[カラートナー]
カラートナー100質量部中のアゾ顔料の含有量は特に制限がないが、0.1質量部以上含有するのが好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部含有するのが最も好ましい。アゾ顔料を導入するカラートナー用バインダー樹脂としては一般に使用される全てのバインダーが使用出来る。例えば、スチレン系樹脂・アクリル系樹脂・スチレン/アクリル系樹脂・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
トナーに対して流動性向上、帯電制御等を目的として無機微粉末、有機微粒子を外部添加しても良い。表面をアルキル基含有のカップリング剤等で処理したシリカ微粒子、チタニア微粒子が好ましく用いられる。なお、これらは数平均一次粒子径が10〜500nmのものが好ましく、更にはトナー中に0.1〜20質量%添加するのが好ましい。
【0130】
離型剤としては、従来使用されている離型剤は全て使用することができる。具体的には、低分子量ポリプロピレン・低分子量ポリエチレン・エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類、マイクロクリスタリンワックス・カルナウバワックス・サゾールワックス・パラフィンワックス等があげられる。これらの添加量はトナー中に1〜5質量%添加することが好ましい。
【0131】
荷電制御剤としては、必要に応じて添加しても良いが、発色性の点から無色のものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩構造のもの、カリックスアレン構造を有するものなどがあげられる。
【0132】
キャリアとしては、鉄・フェライト等の磁性材料粒子のみで構成される非被覆キャリア、磁性材料粒子表面を樹脂等によって被覆した樹脂被覆キャリアのいずれを使用してもよい。このキャリアの平均粒径は体積平均粒径で30〜150μmが好ましい。
【0133】
トナーが適用される画像形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば感光体上に繰り返しカラー画像を形成した後に転写を行い画像を形成する方法や、感光体に形成された画像を逐次中間転写体等へ転写し、カラー画像を中間転写体等に形成した後に紙等の画像形成部材へ転写しカラー画像を形成する方法等があげられる。
【0134】
[感熱記録(転写)材料]
感熱記録材料は、支持体上に本発明のアゾ顔料をバインダーとともに塗設したインクシート、及び画像記録信号に従ってサーマルヘッドから加えられた熱エネルギーに対応して移行してきた顔料を固定する受像シートから構成される。インクシートは、本発明のアゾ顔料をバインダーと共に溶媒中に微粒子状に分散させることによってインク液を調製し、該インクを支持体上に塗布して適宜に乾燥することにより形成することができる。支持体上のインクの塗布量は特に制限するものではないが、好ましくは30〜1000mg/m2である。好ましいバインダー樹脂、インク溶媒、支持体、更には受像シートについては、特開平7−137466号に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0135】
該感熱記録材料をフルカラー画像記録が可能な感熱記録材料に適用するには、シアン画像を形成することができる熱拡散性シアン色素を含有するシアンインクシート、マゼンタ画像を形成することができる熱拡散性マゼンタ色素を含有するマゼンタインクシート、イエロー画像を形成することができる熱拡散性イエロー色素を含有するイエローインクシートを支持体上に順次塗設して形成する事が好ましい。また、必要に応じて他に黒色画像形成物質を含むインクシートが更に形成されていても良い。
【0136】
[カラーフィルター]
カラーフィルターの形成方法としては、初めにフォトレジストによりパターンを形成し、次いで染色する方法、或いは特開平4−163552号、特開平4−128703号、特開平4−175753号公報で開示されているように色素を添加したフォトレジストによりパターンを形成する方法がある。本発明の色素をカラーフィルターに導入する場合に用いられる方法としては、これらのいずれの方法を用いても良いが、好ましい方法としては、特開平4−175753号や特開平6−35182号に記載されたところの、熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、色素及び溶剤を含有してなるポジ型レジスト組成物、並びに、それを基体上に塗布後、マスクを通して露光し、該露光部を現像してポジ型レジストパターンを形成させ、上記ポジ型レジストパターンを全面露光し、次いで露光後のポジ型レジストパターンを硬化させることからなるカラーフィルターの形成方法を挙げる事ができる。又、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGB原色系あるいはY、M、C補色系カラーフィルターを得ることができる。カラーフィルターの場合も本発明のアゾ顔料の使用量の制限はないが0.1〜50質量%が好ましい。
【0137】
この際使用する熱硬化性樹脂、キノンジアジド化合物、架橋剤、及び溶剤とそれらの使用量については、前記特許文献に記載されているものを好ましく使用することができる。
【0138】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは質量部を表す。
【実施例】
【0139】
本発明の顔料組成物のX線回折の測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にてCuKα線を用い、次の条件で行ったものである。
【0140】
使用測定器 : Rigaku社製 自動X線回折装置RINT2500
X線管球 : Cu
管電圧 : 55KV
管電流 : 280mA
スキャン方法 : 2θ/θスキャン
スキャン速度 : 6deg./min.
サンプリング間隔 :0.100deg.
スタート角度(2θ) : 5deg.
ストップ角度(2θ) : 55deg.
ダイバージェンススリット : 2deg.
スキャッタリングスリット : 2deg.
レジーピングスリット : 0.6mm
縦型ゴニオメータ使用
【0141】
〔合成例1〕アゾ顔料組成物(1)の合成
アゾ顔料(1)の合成スキームを下記に示す。
【0142】
【化8】
【0143】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0144】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
【0145】
(3)中間体(c)の合成
メタノール1.1Lに水136mLを加えて、炭酸水素ナトリウム182g(2.17モル)を添加し、室温にて攪拌した。同温度にて塩化シアヌル200g(1.08モル)を分割添加した。添加終了後、内温を30℃まで昇温した。同温度にて30分間攪拌した後、水500mLを加え、析出した固体を濾別し、水500mL、メタノール300mLでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を168g(白色粉末、収率86.2%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)4.14(s,3H)
【0146】
(4)中間体(d)の合成
ヒドラジン1水和物363mL(7.46モル)に水673mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(c)168g(934ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、水700mL、アセトニトリル1Lでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)の粗精製物(白色粉末)を得た。
【0147】
(5)中間体(e)の合成
中間体(d)の粗精製物に、エチレングリコール480mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル257g(2.06モル)を加え、内温が50℃になるまで加熱した。同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴下した後、内温が80℃になるまで加熱して3時間攪拌した。反応終了後、氷冷し内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗い後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体
(e)を105g(白色粉末、2工程収率29.2%)で得た。得られた中間体(e)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.00(s,4H),5.35(s,2H),4.05(s,3H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
【0148】
(6)アゾ顔料(1)の合成
酢酸125mLと硫酸24mLの混合液を氷冷し、内温を3℃まで冷却した。同温度にてニトロシル硫酸26.4gを添加し、続いて、同温度にて中間体(b)11.6gを分割添加して溶解させた。同温度にて1時間攪拌した後、同温度にて尿素1.2gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に、中間体(e)11.6gをメタノール405mLに室温にて完溶させ、氷冷して内温を−3℃に冷却した。同温にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が3℃以下になるように分割添加し、添加終了後、2時間攪拌した。氷浴をはずし、室温にて10分間攪拌した後、析出した結晶を濾別し、メタノール150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水750mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、メタノール80mLでかけ洗いした。得られた結晶を室温にて、12時間乾燥させた。
【0149】
得られた結晶をジメチルアセトアミド180mLと水180mLの混合溶液に懸濁させた後、内温を85℃まで昇温し、同温度にて2時間攪拌した。その後、得られた結晶を熱時にて濾別し、メタノール300mLに懸濁し、室温にて30分攪拌した。得られた結晶を濾別し、室温にて5時間乾燥させ、アゾ顔料(1)を19.5g得た。収率90.3%。
得られたアゾ顔料(1)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約150nmであった。
アゾ顔料(1)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図1に示す。
【0150】
〔合成例2〕アゾ顔料組成物(2)の合成
アゾ顔料(2)の合成スキームを下記に示す。
【0151】
【化9】
【0152】
(7)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0153】
(8)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
【0154】
(9)中間体(c’)の合成
ヒドラジン1水和物387mL(7.98モル)にメタノール298mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に4,6−ジクロロピリミジン149g(1.00モル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。その後更に加熱して内温60℃まで昇温し、同温度にて5時間攪拌した。反応終了後、水750mLを加えた後、氷冷して内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗いし、イソプロパノールでかけ洗いした。室温にて36時間乾燥を行い前記中間体(c’)を119g(白色粉末、収率84.5%)で得た。得られた中間体(c’)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.80(s,1H),7.52(s,2H),5.98(s,1H),4.13(s,4H)
【0155】
(10)中間体(d’)の合成
中間体(c’)50g(357ミリモル)に、水128mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル98.2g(785ミリモル)を加え、同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴加した後、内温が50℃になるまで加熱し、同温度にて6時間攪拌した。反応終了後、8Nの水酸化カリウム水溶液を加えて中和し、pH6.4にした。氷冷し内温が10℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗いした。得られた結晶を減圧下60℃にて乾燥し、得られた粗精製物にトルエン30mLを加え、60℃に加熱して溶解させた。得られた溶液を室温にて12時間静置し、析出した結晶をろ取、冷却したトルエンでかけ洗いし、減圧下60℃にて乾燥し、前記中間体(d’)を87.7g(白色粉末、収率69.3%)で得た。得られた中間体(d’)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)8.74(s,1H),7.99(s,1H),6.87(s,4H),5.35(s,2H),1.24(s,18H)
【0156】
(11)アゾ顔料(2)の合成
【0157】
酢酸55mLとプロピオン酸37mLの混合液に室温にて中間体(b)9.2gを溶解させた。氷冷して内温を−3℃まで冷却し、内温が−3℃〜4℃でニトロシル硫酸の40質量%硫酸溶液を10分かけて滴下した。内温4℃にて1時間攪拌した後、尿素0.2gを加え、その後、内温を−3℃に冷却し、更に10分攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に中間体(d’)10gをアセトン150mLに完溶させた後、内温を17℃に冷却し、上述のジアゾニウム塩溶液に内温−3℃〜3℃の範囲内で25分かけて添加した。添加完了後、3℃で30分攪拌した後、氷浴をはずし、30分かけて室温まで昇温させた。室温にて30分攪拌した後、得られた結晶を濾別し、アセトン150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水400mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、アセトン80mLをかけ洗いした。得られた結晶を室温にて、12時間乾燥させた。
【0158】
得られた結晶をアセトン580mLに懸濁させた後、還流下30分間攪拌した。その後、10分間かけて室温に冷却し、得られた結晶を濾別し、室温にて5時間乾燥させ、アゾ顔料(2)を17.1g得た。収率88.5%。
得られたアゾ顔料(2)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約15μmであった。
アゾ顔料(2)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、及び25.6°に特徴的なX線回折ピークを示した。CuKα特性X線回折図を図2に示す。
【0159】
〔合成例3〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−1の合成
α型結晶形態アゾ顔料(1)−1〜(1)−12の合成スキームを下記に示す。
【0160】
【化10】
【0161】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H),4.15(s,3H),3.81(s,3H)
【0162】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H),4.95(brs,2H),3.80(s,3H),3.60(s,3H)
【0163】
(3)中間体(c)の合成
メタノール1.1Lに水136mLを加えて、炭酸水素ナトリウム182g(2.17モル)を添加し、室温にて攪拌した。同温度にて塩化シアヌル200g(1.08モル)を分割添加した。添加終了後、内温を30℃まで昇温した。同温度にて30分間攪拌した後、水500mLを加え、析出した固体を濾別し、水500mL、メタノール300mLでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を168g(白色粉末、収率86.2%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl3)4.14(s,3H)
【0164】
(4)中間体(d)の合成
ヒドラジン1水和物363mL(7.46モル)に水673mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(c)168g(934ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、水700mL、アセトニトリル1Lでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)の粗精製物(白色粉末)を得た。
【0165】
(5)中間体(e)の合成
中間体(d)の粗精製物に、エチレングリコール480mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル257g(2.06モル)を加え、内温が50℃になるまで加熱した。同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴下した後、内温が80℃になるまで加熱して3時間攪拌した。反応終了後、氷冷し内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗い後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(e)を105g(白色粉末、2工程収率29.2%)で得た。得られた中間体(e)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.00(s,4H),5.35(s,2H),4.05(s,3H),5.35(s,2H),1.22(s,18H)
【0166】
(6)α型結晶形態アゾ顔料(1)―1の合成
酢酸20.5mLを氷冷し、内温10℃にした。内温15℃以下になるようにニトロシル硫酸16.8gを添加し、続いて内温15℃以下になるように中間体(b)9.5gを分割添加した。内温15℃にて15分間攪拌した後、15分かけて内温25℃に昇温した。同温度にて90分間攪拌した後、同温度にて尿素0.4gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。
別に、中間体(e)11.6gをメタノール405mLに室温にて完溶させ、氷冷して内温を−3℃に冷却した。同温にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が3℃以下になるように分割添加し、添加終了後2時間攪拌し、アゾ化合物反応液を得た。別に水810mLを用意し、アゾ化合物反応液を添加した。室温にて30分間攪拌し、析出した結晶を濾別し、メタノール150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水750mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、メタノール80mLでかけ洗いして、粗顔料(1−1)を得た。得られた粗顔料(1−1)を室温にて、12時間乾燥させ、粗顔料(1−2)を得た。
得られた粗顔料(1−2)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜500nmであった。
粗顔料(1−2)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図3に示す。
【0167】
得られた粗顔料(1−2)10gを2−プロパノール100mLに懸濁させた後、還流下2時間攪拌した。その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−1を9.2g(収率92.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−1を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜180nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−1のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図4に示す。
【0168】
〔合成例4〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−2の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−プロパノール50mL、水50mLの混合溶媒に懸濁させた後、内温78°にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−2を9.5g(収率95.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−2を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜160nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−2のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図5に示す。
【0169】
〔合成例5〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−3の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−メチル−1−プロパノール200mLに懸濁させた後、内温80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−3を9.3g(収率93.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−3を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約30〜140nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−3のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図6に示す。
【0170】
〔合成例6〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−4の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−メチル−1−プロパノール50mL、水50mLに懸濁させた後、内温80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−4を9.3g(収率93.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−4を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜120nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−4のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図7に示す。
【0171】
〔合成例7〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−5の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを2−メチル−1−プロパノール25mL、水75mLに懸濁させた後、内温80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−5を9.3g(収率93.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−5を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約30〜110nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−5のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図8に示す。
【0172】
〔合成例8〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−6の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gを水200mLに懸濁させた後、80℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−6を9.6g(収率96.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−6を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約30〜150nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−6のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図9に示す。
【0173】
〔合成例9〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−7の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをアセトン200mLに懸濁させた後、還流下2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−7を8.5g(収率85.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−7を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約60〜190nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−7のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図10に示す。
【0174】
〔合成例10〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−8の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをアセトン100mL、水100mLの混合溶媒に懸濁させた後、内温60℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−8を9.0g(収率90.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−8を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約50〜160nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−8のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図11に示す。
【0175】
〔合成例11〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−9の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをメタノール100mLに懸濁させた後、還流下2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−9を9.2g(収率92.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−9を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約50〜140nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−9のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図12に示す。
【0176】
〔合成例12〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−10の合成
合成例3で得た粗顔料(1−2)10gをメタノール100mL、水100mLの混合溶媒に懸濁させた後、内温70℃にて2時間攪拌した。
その後、得られた結晶を熱時にて濾別して室温にて12時間乾燥させ、本発明の結晶形を有する式(1)で表されるα型結晶形態アゾ顔料(1)−10を9.4g(収率94.0%)得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−10を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約40〜130nmであった。
α型結晶形態顔料(1)−10のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図13に示す。
【0177】
〔合成例13〕α型結晶形態アゾ顔料(1)−11の合成
43%ニトロシル硫酸43.3gを氷冷し、内温を10℃まで冷却した。
内温15℃以下になるように酢酸60mLを添加し、続いて、内温15℃以下になるように中間体(b)25gを分割添加した。
内温15℃にて15分間攪拌した後、内温25℃に昇温し、同温度にて90分間攪拌した。
その後、同温度にて尿素0.9gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。
別に、中間体(e)30.3gをメタノール518mLに室温にて懸濁させ、内温を15℃に冷却した。
同温度にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が30℃以下になるように添加した。
添加終了後、2時間攪拌し、アゾ化合物反応液を得た。
別に水810mLを用意し、アゾ化合物反応液を添加した。
室温にて30分間攪拌した後、8規定の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを6.0にした。
その後、攪拌を止めて12時間静置し、上澄み液を除去し、除去した量と同量の水を加え、30分間攪拌した。
この操作を3回繰り返し行った後、内温80℃に昇温し、同温度にて2時間攪拌した。
その後、熱時にて濾過を行い、水1Lでかけ洗いをした後、減圧下室温にて、24時間乾燥させ、α型結晶形態アゾ顔料(1)−11を53.4g(収率97.1%)を得た。
得られたα型結晶形態アゾ顔料(1)−11を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約60〜250nmであった。
α型結晶形態アゾ顔料(1)−11のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°、13.4°、15.0°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図14に示す。
【0178】
【表1】
【0179】
〔実施例1〕顔料分散物1の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物1(平均粒子径;Mv≒64nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0180】
〔実施例2〕顔料分散物2の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物2(平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0181】
〔実施例3〕顔料分散物3の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物3(平均粒子径;Mv≒67nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0182】
〔実施例4〕顔料分散物4の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.5部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を1.0部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物4(平均粒子径;Mv≒66nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0183】
〔実施例5〕顔料分散物5の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を1.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物5(平均粒子径;Mv≒69nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0184】
〔実施例6〕顔料分散物6の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を0.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を2.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物6(平均粒子径;Mv≒70nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0185】
〔実施例7〕顔料分散物7の作製
合成例3で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−1を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物7(体積平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0186】
〔実施例8〕顔料分散物8の作製
合成例8で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−6を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物8(体積平均粒子径;Mv≒70nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0187】
〔実施例9〕顔料分散物9の作製
合成例9で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−7を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物9(体積平均粒子径;Mv≒69nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0188】
〔実施例10〕顔料分散物10の作製
合成例10で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−8を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物10(体積平均粒子径;Mv≒79nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0189】
〔実施例11〕顔料分散物11の作製
合成例11で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−9を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物11(体積平均粒子径;Mv≒71nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0190】
〔実施例12〕顔料分散物12の作製
合成例12で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−10を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物12(体積平均粒子径;Mv≒65nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0191】
〔実施例13〕顔料分散物13の作製
合成例13で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−11を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物13(体積平均粒子径;Mv≒87nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0192】
〔実施例14〕顔料分散物14の作製
合成例13で合成したα型結晶形態アゾ顔料(1)−11を2.25部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.25部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物14(体積平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0193】
〔実施例15〕顔料分散物15の作製
合成例3で合成した粗顔料(1−2)を2.0部、合成例2で合成したアゾ顔料組成物(2)を0.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、1時間30分間分散を行った。
分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物15(体積平均粒子径;Mv≒79nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0194】
〔比較例1〕比較顔料分散物1の作製
実施例1で用いたアゾ顔料組成物(1)に替えてえてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を用いた以外は実施例1と同様にして黄色の比較顔料分散物1を得た。
【0195】
〔比較例2〕比較顔料分散物2の作製
実施例1で用いたアゾ顔料組成物(1)に替えてえてC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を用いた以外は実施例1と同様にして黄色の比較顔料分散物2を得た。
【0196】
〔比較例3〕比較顔料分散物3の作製
実施例3で用いたアゾ顔料組成物(1)及びアゾ顔料組成物(2)に替えてえてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)とC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を併用した以外は実施例3と同様にして黄色の比較顔料分散物3を得た。
【0197】
〔比較例4〕比較分散物4の作製
実施例1で用いたアゾ顔料組成物(1)に替えて下記式(A)で表される化合物(DYE−1)を用いた以外は実施例1と同様にして行ったところ、溶解してしまい、分散できなかった。
【0198】
【化11】
【0199】
<分散性>
顔料2.5部、オレイン酸ナトリウム0.5部、グリセリン5部、水42部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った結果、分散できなかったものを××、100nm以上の粗大粒子が確認されるものを×、ほとんど確認されないものを○として、本発明の顔料分散物1〜6、比較顔料分散物1〜3及び比較分散物4を評価した。結果を表−2に示す。
【0200】
<分散安定性>
上記実施例1〜6、比較例1〜3で得られた顔料分散物を室温にて4週間静置した。その結果、沈殿物が目視で確認されるものを×、沈殿物が確認されなかったものを○とした。結果を表−2に示す。
【0201】
<着色力評価>
上記実施例1〜6、比較例1〜3で得られた顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてエプソン社製フォトマット紙に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、「着色力(OD:Optical Density)」を以下の基準で評価した。ODが1.4以上の場合を◎、1.2以上で1.4未満の場合を○、1.0以上で1.2未満の場合を△、1.0未満の場合を×とした。結果を表−2に示す。
【0202】
<色相評価>
色相については、上記で得られた塗布物の色度を目視にて緑味が少なく鮮やかさが大きいものを◎(良好)、どちらか一方が当てはまらないものを○、及びどちらも当てはまらないものを×(不良)として評価を行った。結果を表−2に示す。
【0203】
<光堅牢性評価>
色相評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を作成し、フェードメーターを用いてキセノン光(99000lux;TACフィルター存在下)を35日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が80%以上の場合を○、60%以上80%未満の場合を△、60%未満の場合を×として、顔料分散物1〜6及び比較顔料分散物1〜3を評価した。結果を表−2に示す。
【0204】
<オゾンガス堅牢性評価>
色相評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を作成し、オゾン濃度5.0ppm25℃湿度50%条件下を35日間暴露し、オゾンガス暴露前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が80%以上の場合を○、70%以上80%未満の場合を△、70%未満の場合を×として、顔料分散物1〜6及び比較顔料分散物1〜3を評価した。結果を表−2に示す。
なお、例えば表中の「(1)/(2)=9/1」は、アゾ顔料組成物(1)とアゾ顔料組成物(2)を9:1の質量比で用いたことを表す。
【0205】
【表2】
【0206】
これらの結果から、本発明のアゾ顔料組成物を使用した顔料分散物は、易分散性であり顔料分散物の安定性が良好であることが確認された。更に、本発明の顔料分散物を含有する着色組成物は、イエローとしての色相に優れ、着色力が高く、耐光性・耐オゾンガス性にも優れることがわかった。
また、アゾ顔料(1)を単独で用いた実施例1及びアゾ顔料(1)とアゾ顔料(2)9:1の質量比で用いた実施例2、実施例14では着色力が特に優れ、アゾ顔料(1)とアゾ顔料(2)6:4〜1:9の質量比で用いた実施例4〜13、実施例15では色相及び耐光性が特に優れることがわかった。そして、アゾ顔料(1)とアゾ顔料(2)8:2の質量比で用いた実施例3,実施例7〜実施例13,実施例15では着色力、色相及び耐光性が特に優れることがわかった。
したがって、本発明のアゾ顔料組成物を含有する顔料分散着色組成物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に好適に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有することを特徴とするアゾ顔料組成物。
【化1】
【請求項2】
更に、前記組成物が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を0.1質量%以上99質量%未満含有することを特徴とする請求項1に記載のアゾ顔料組成物。
【化2】
【請求項3】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を1質量%以上70質量%未満含有することを特徴とする請求項2に記載のアゾ顔料組成物。
【請求項4】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を5質量%以上45質量%未満含有することを特徴とする請求項2又は3に記載のアゾ顔料組成物。
【請求項5】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を15質量%以上30質量%未満含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアゾ顔料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアゾ顔料組成物を含有する顔料分散物。
【請求項7】
顔料分散物中の顔料粒子の体積平均粒子径が0.01μm〜0.2μmであることを特徴とする請求項6に記載の顔料分散物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有する着色組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有するインクジェット記録用インク。
【請求項1】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有することを特徴とするアゾ顔料組成物。
【化1】
【請求項2】
更に、前記組成物が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を0.1質量%以上99質量%未満含有することを特徴とする請求項1に記載のアゾ顔料組成物。
【化2】
【請求項3】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を1質量%以上70質量%未満含有することを特徴とする請求項2に記載のアゾ顔料組成物。
【請求項4】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を5質量%以上45質量%未満含有することを特徴とする請求項2又は3に記載のアゾ顔料組成物。
【請求項5】
CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.6°、25.6°及び27.7°に特徴的なX線回折ピークを有する上式(2)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を15質量%以上30質量%未満含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のアゾ顔料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のアゾ顔料組成物を含有する顔料分散物。
【請求項7】
顔料分散物中の顔料粒子の体積平均粒子径が0.01μm〜0.2μmであることを特徴とする請求項6に記載の顔料分散物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有する着色組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の顔料組成物を着色剤として含有するインクジェット記録用インク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−159406(P2010−159406A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278057(P2009−278057)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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