説明

アタッチメント、それを備えたネジ止め機及び石膏ボードの固定方法

【課題】本発明は、ネジ止め機を適正な位置や姿勢に保ち易いアタッチメント、それを備えたネジ止め機及び石膏ボードの固定方法を提供する。
【解決手段】アタッチメントは、コンタクトアーム9の先端に係止される係止部11と、コンタクトアーム9から射出されるネジの射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面12を備えた鍔状のボード保持部13と、を備えた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ止め機に設けられたコンタクトアームの先端に装着されるアタッチメント、それを備えたネジ止め機及び石膏ボードの固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建物の天井の施工方法の一つとして、天井下地材(野縁)に石膏ボードをネジ止めし、さらに、この石膏ボードに仕上げ材としてビニールクロスを糊付けする方法があり、石膏ボードのネジ止めを行う場合、通常高圧空気の圧力を利用したネジ止め機が用いられる。
【0003】
上記石膏ボードのネジ止め作業を、補助作業者をつけずに単独で行うことがある。この場合、重量のある石膏ボードを不安定な体勢で保持しながらネジ止め作業を行うので、ネジ止め機の位置や姿勢を適正な状態に保ち、ネジの軸方向が石膏ボードに対し垂直となるように天井下地材に確実にネジ止めすることが難しく、ネジ止め機の位置や姿勢の修正あるいはネジの打ち直しが必要となることが多い。また、石膏ボードの端部をネジ止めする際には、軟らかく脆い石膏ボードを破損させてしまうこともある。
【0004】
特許文献1には、石膏ボードに当接される前端面を備えた携帯用動力駆動工具のアタッチメントの記載があるが、このアタッチメントは、石膏ボードより軟らかい材質で形成されているため、携帯用動力駆動工具の位置や姿勢を安定させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−224907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ネジ止め機の位置や姿勢を適正な状態に保ち易いアタッチメント、それを備えたネジ止め機及び石膏ボードの固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ボードを天井下地材にネジ止めして固定する際に使用され、高圧空気の圧力を利用して天井下地材にネジを打ち込むとともにネジを締め込む機構を有するネジ止め機に設けられたコンタクトアームに装着されるアタッチメントであって、
コンタクトアームの先端に係止される係止部と、
コンタクトアームから射出されるネジの射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面を備えた鍔状のボード保持部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、請求項1記載のアタッチメントを備えたことを特徴とするネジ止め機
である。
【0009】
また、本発明は、請求項2記載のネジ止め機を用いた天井下地材に対する石膏ボードの固定方法であって、
石膏ボードを持ち上げ、位置合わせをして天井下地材に石膏ボードを沿わせて、一方の手で石膏ボードを支える第1工程と、
他方の手でネジ止め機を把持し、アタッチメントの当接面を石膏ボードの所定のネジ止め位置に当接させるとともにネジ止め機を介して石膏ボードを押し上げて、石膏ボードを天井下地材に密着させる第2工程と、
石膏ボードと天井下地材の密着状態を保ったまま、ネジ止め機のトリガを引いて石膏ボードを天井下地材にネジ止めする第3工程と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
上記アタッチメントは、ネジの射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面を有する鍔状のボード保持部を備えている。このようなアタッチメントをネジ止め機に装着して当接面をボードのネジ止め位置に当接させることで、ネジ止め機の位置や姿勢を適正な状態に保ち易くなり、効率よくボードのネジ止め作業ができる。また、ネジをボードに対し垂直に確実に打ち込むことができるため、ボードが柔らかく脆い石膏ボードであっても、その端部をネジ止めする際に、石膏ボードの破壊を抑制することができる。
【0011】
また、一般的に、石膏ボードは軟質な為圧力によって凹みが形成されやすく、石膏ボードに薄い素材のビニールクロスを糊付けして仕上げる場合、その凹みがわずかなものであっても、天井面に水平方向から照明器具等の光が当たった場合に陰影が生じることがある。このようなわずかな凹みをパテ処理等で補修することは難しく、石膏ボードを貼り替える必要がある。これに対し、本発明のようにネジの射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面を備えたアタッチメントを用いてネジ止めする場合、天井下地材に石膏ボードをネジ止めする際に当接面を石膏ボードに押し当てても圧力が分散されるため、石膏ボードの凹みを抑制することができ、上述のような陰影の問題が生じにくい。
【0012】
また、通常、天井下地材が石膏ボードに比べて極めて硬い鋼材等の材料で構成されている場合、強力なトルクでネジを高速回転させて貫入し、その際の反力によって貫入深さが管理されるネジ止め機を用いると作業効率が向上する。この際、ネジが天井下地材に対し所定の深さだけ貫入し、反力が所定のトルク値に達したところでネジ止め機の作動が自動的に終了する。しかしながら、単独の作業者で作業を行う場合重量のある石膏ボードを天井下地材に密着させた状態に保つのは困難であり、この密着しない状態でネジ止め作業が行われると、天井下地材に比べて極めて軟らかい石膏ボードは高速回転するネジによって欠損し、天井下地材側に引き寄せられて密着することがないまま(ネジのみが天井下地材に対し所定の深さまで貫入するので頭部が石膏ボード内に潜り込んだ状態となる)ネジ止め機の作動が完了するため、平坦な天井面が形成されない。
【0013】
これに対し、本発明の石膏ボードの固定方法においては、一方の手で石膏ボードを支え、他方の手で把持されたネジ止め機が備えるアタッチメントの当接面を、石膏ボードの所定のネジ止め位置に当接させた状態でネジ止め機を介して石膏ボードを押し上げて、石膏ボードの裏面を天井下地材の下面に密着させた状態で、ネジ止め機のトリガを引いて天井下地材にネジ止めする。これによって、石膏ボードを天井下地材に確実に密着させた状態でネジ止めすることができるため、平坦な天井面を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ネジ止め機の位置や姿勢を適正な状態に保ち易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るアタッチメントを備えたネジ止め機の正面図である。
【図2】(a)はアタッチメントの斜視図、(b)はアタッチメントの正面図である。
【図3】本発明に係る石膏ボードの固定方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るアタッチメント、それを備えたネジ止め機及び石膏ボードの固定方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1に示されたネジ止め機1は、石膏ボードを鋼材等の石膏ボードに比べて極めて硬い天井下地材にネジ止めすることを可能にしている。
【0018】
図1に示されたネジ止め機1の主な構成自体は周知である。ネジ止め機1の構成を概略的に説明すると、ネジ止め機1は手で握られるグリップ部2と、内部にシリンダを有するハウジング3とが一体に形成されており、ハウジング3の後部にはエアーバルブ部4が設けられている。ハウジング3の内部には、このエアーバルブ部4内に設けられた図示しないエアーバルブ機構に接続されて圧縮空気の導入・排気が行われるシリンダ室が形成されている。
【0019】
グリップ部2の底部には、エアホースを接続するためのエアプラグ5が設けられている。グリップ部2の内部にはエアホースから送られてくる圧縮空気をエアーバルブ機構に送るためのエア通路(図示省略)が形成されており、エア通路の途中には、トリガ6をグリップ部2側に引き込むことによって、エアプラグ5とエアーバルブ機構とを接続して圧縮空気をシリンダ室内に送り込むためのトリガバルブ(図示省略)が設けられている。
【0020】
エアーバルブ機構は、グリップ部2内に形成されたエア通路を経由して圧縮空気を導入し、また、シリンダ室内の空気を大気に排気する。エアーバルブ機構には、シリンダ室のシリンダヘッドが接続されており、このシリンダヘッドには、エアーバルブ機構の給気通路と排気通路が形成されている。
【0021】
シリンダの内部には、導入された圧縮空気によってシリンダの中心軸方向に前後移動する図示しない打撃ピストンが内蔵されており、打撃ピストンのシリンダヘッドの反対側の部位には、ネジの頭部を打撃する丸棒状のドライバが取り付けられている。
【0022】
ハウジング3の先端部には、中空のネジ射出通路(図示省略)を形成しているノーズ部7が取り付けられており、ドライバはノーズ部7のネジ射出通路内で摺動するノーズ部7のネジ射出通路の側面において、ネジ供給ガイド(図示省略)の接続部には開口部(図示省略)が形成されており、この開口部にはドライバがネジを1本打ち込む度にネジ供給ガイドからネジが1本ずつ供給される。
【0023】
ネジ供給ガイドから送られてくるネジは、開口部からネジ射出通路の内部に送り込まれる。ネジ供給ガイドには、前述のドライバの往復動毎にネジを送り出すネジ供給機構(図示省略)が設けられており、ネジ供給機構の近傍には、ロール状に巻回されて帯状にネジが配列された連結ネジを収納するためのマガジン部8が設けられている。
【0024】
マガジン部8内においてロール状に巻かれた連結ネジはネジ供給機構の送り動作により、ノーズ部7のネジ射出通路内に1本ずつ順次供給されるようになっている。
【0025】
ノーズ部7には、コンタクトアーム9が装着されている。ノーズ部7に対して摺動可能に装着されていたコンタクトアーム9は、中空形状であり、ネジ20を通過させるためのネジ通路16を有している(図2参照)。コンタクトアーム9は、石膏ボードや木材に後述するアタッチメント10を押し当てたときに、グリップ部2側に後退して、トリガ6の引き込みよるドライバのネジ止めを許容する。すなわち、ネジ止め機1は、トリガ6のグリップ部2側への引き込みと、コンタクトアーム9のグリップ部2側への後退とによって、グリップ部2のエア通路とエアーバルブ機構とを接続し、圧縮空気をシリンダ室内に供給される。そして、コンタクトアーム9の先端側には着脱可能なアタッチメント10が装着されている。
【0026】
図2に示すように、アタッチメント10は、コンタクトアーム9の先端に係止される係止部11と、係止部11の先端に設けられたボード保持部13を有している。係止部11は、コンタクトアーム9の先端部の形状に対応したキャップ状をなし、対向する一対の係止片11aが設けられている。各係止片11aには、並置された係止孔11bが形成されている。これに対して、コンタクトアーム9の先端部近傍の側面には、アタッチメント10の係止孔11bに嵌合する係止凸部17が設けられている。アタッチメント10は、コンタクトアーム9の先端部に嵌められて、コンタクトアーム9の係止凸部17が係止孔11bに嵌め込まれることで、ネジ止め機1に装着された状態が保持される。
【0027】
係止部11の先端側に固定または一体成形されたボード保持部13は、鍔状(円錐台形状)をなし、その先端には、ネジ20の射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面12が形成されている。
【0028】
アタッチメント10の中央のコンタクトアーム9のネジ射出口14に対応する位置には、係止部11側からボード保持部13の当接面12にかけて貫通するネジ通路15が形成されている。
【0029】
アタッチメント10は、エンジニアリング樹脂を用いて、コンタクトアーム9の先端部に嵌める際に係止片11aが適度に変形し、且つ、当接面12をボードに押し当てて下方から保持した際にボード保持部13が大きく変形しないように形状や材厚が設計されている。
【0030】
上記のとおり、アタッチメント10にはネジ20の射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面12が形成されており、これをネジ止め機1に装着して当接面12をボードのネジ止め位置に当接させることで、ネジ止め機1の位置や姿勢を適正な状態に保ち易くなり、効率よくボードのネジ止め作業ができる。また、ネジ20をボードに対し垂直に確実に打ち込むことができるため、ボードが柔らかく脆い石膏ボードであっても、その端部をネジ止めする際に、石膏ボードの破壊を抑制することができる。
【0031】
また、当接面12がネジ20の射出方向に対して垂直且つ平坦であるため、石膏ボードを天井下地材にネジ止めする際に柔らかく脆い石膏ボードに当接面12を押し当てても、圧力が分散されるので石膏ボードの凹みを抑制することができる。
【0032】
次に、ネジ止め機1を用いた石膏ボード30の天井下地材40への固定方法を図3を参照して説明する。この石膏ボードの固定方法は、建物の壁や上階の床で支持された状態の天井下地材40に石膏ボード30をネジ20で固定する際に用いられる方法である。
【0033】
まず、図3(a)に示すように、石膏ボード30を持ち上げ、位置合わせをして天井下地材40に石膏ボード30を沿わせる。次に、一方の手(矢印A参照)やヘルメットを装着した頭部などで石膏ボード30を支えておき(この状態では石膏ボード30と天井下地材40との間に隙間が生じている)、図3(b)に示すように、他方の手(図示省略)でアタッチメント10が装着されたネジ止め機1を把持し、アタッチメント10の当接面12を、所定のネジ止め位置に当接させるとともに、天井下地材40との間に隙間が生じている石膏ボード30を押し上げて、石膏ボード30の裏面30aを天井下地材40の下面40aに密着させる。
【0034】
そして、石膏ボード30と天井下地材40との密着状態を保ったまま、ネジ止め機1のトリガ6を引く。これにより、図3(c)に示すように、石膏ボード30の裏面30aを天井下地材40の下面40aに密着させた状態で、天井下地材40にネジ20が打ち込まれ、石膏ボード30が天井下地材40に固定される。このような方法で石膏ボード30を天井下地材40に固定することにより平坦な天井面を形成することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…ネジ止め機、6…トリガ、9…コンタクトアーム部、10…アタッチメント、11…係止部、12…当接面、13…ボード保持部、14…ネジ射出口、15…ネジ通路、20…ネジ、30…石膏ボード、40…天井下地材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボードを天井下地材にネジ止めして固定する際に使用され、高圧空気の圧力を利用して前記天井下地材にネジを打ち込むとともにネジを締め込む機構を有するネジ止め機に設けられたコンタクトアームに装着されるアタッチメントであって、
前記コンタクトアームの先端に係止される係止部と、
前記コンタクトアームから射出されるネジの射出方向に対して垂直且つ平坦な当接面を備えた鍔状のボード保持部と、
を備えることを特徴とするアタッチメント。
【請求項2】
請求項1記載のアタッチメントを備えたことを特徴とするネジ止め機。
【請求項3】
請求項2記載のネジ止め機を用いた天井下地材に対する石膏ボードの固定方法であって、
前記石膏ボードを持ち上げ、位置合わせをして前記天井下地材に前記石膏ボードを沿わせて、一方の手で前記石膏ボードを支える第1工程と、
他方の手で前記ネジ止め機を把持し、前記アタッチメントの当接面を前記石膏ボードの所定のネジ止め位置に当接させるとともに前記ネジ止め機を介して前記石膏ボードを押し上げて、前記石膏ボードを前記天井下地材に密着させる第2工程と、
前記石膏ボードと前記天井下地材の密着状態を保ったまま、前記ネジ止め機のトリガを引いて前記石膏ボードを前記天井下地材にネジ止めする第3工程と、
を備えることを特徴とする石膏ボードの固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152873(P2012−152873A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15618(P2011−15618)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)