説明

アダプタ及び当該アダプタを用いる評価方法

【課題】ノイズ評価の効率化、及びノイズを抑制することができるアダプタを提供する。
【解決手段】第1の信号ケーブルに接続される第1のコネクタ部(9)と、前記被測定装置に接続される第2のコネクタ部(5)と、一端が前記第1のコネクタに接続されるコモンモードチョークコイル部(8)と、前記コモンモードチョークコイル部の他端と前記第2のコネクタ部とを接続する、前記第1の信号ケーブルの長さに応じて長さが設定される第2の信号ケーブル(6)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプタ及び当該アダプタを用いる評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器と、その情報機器に接続される信号ケーブルとを接続するアダプタに、コモンモードチョークコイルを内蔵し、情報機器からのノイズを抑制する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−193680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のアダプタでは、情報機器の完成後において、電気ケーブルに対して追加装着し、情報機器からのノイズを下げることになる。そのため、情報機器からのノイズを抑制する対策、ノイズを抑制した後の情報機器に対して最適なインダクタンスを持ったアダプタの選定を、情報機器の製品出荷前に行うことができない。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、情報機器からのノイズの評価の効率化、及びノイズを抑制することができるアダプタの最適な選定の容易化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のアダプタは、被測定装置と、第1の信号ケーブルとを接続するアダプタであって、前記第1の信号ケーブルに接続される第1のコネクタ部と、前記被測定装置に接続される第2のコネクタ部と、一端が前記第1のコネクタに接続されるコモンモードチョークコイル部と、前記コモンモードチョークコイル部の他端と前記第2のコネクタ部とを接続する、前記第1の信号ケーブルの長さに応じて長さが設定される第2の信号ケーブルと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のアダプタの評価方法は、被測定装置と、第1の信号ケーブルとを接続するアダプタであって、前記第1の信号ケーブルに接続される第1のコネクタ部と、前記被測定装置に接続される第2のコネクタ部と、一端が前記第1のコネクタに接続されるコモンモードチョークコイル部と、前記コモンモードチョークコイル部の他端と前記第2のコネクタ部とを接続する、前記第1の信号ケーブルの長さに応じて長さが設定される第2の信号ケーブルと、を備える前記アダプタの評価方法であって、複数個の前記アダプタのうちから、前記第1の信号ケーブルからのノイズ量が予め設定された閾値以下となる前記アダプタを選択する第1の過程と、前記被測定装置からのノイズ量が前記閾値以下である前記被測定装置に接続する複数の前記アダプタのうちから、ノイズ量の最も少ない前記アダプタを採用する第2の過程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、情報機器(被測定装置)からのノイズの評価の効率化、及びノイズを抑制することができるアダプタの最適な選定の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のアダプタ3を装着する位置を示す図である。
【図2】本発明のアダプタ3の構成を示す図である。
【図3】本発明のアダプタ3の評価を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下で説明する全ての図面において、同一の構成要素には同一の符号を付加し、適宜説明を省略する。
【0011】
本発明のアダプタは、例えばRJ45用コモンモードチョークコイル内蔵の外付けアダプタ(以下、アダプタ3とする)である。
図1は、本発明のアダプタ3を装着する位置を示している。
図1に示すように、アダプタ3は、被測定装置1に接続される全てのETHERNET(登録商標)ケーブル(以下、ケーブル4とする)の各々に対して、被測定装置1とケーブル4との間に、具体的には図1に示す(A)の位置に挿入される。
この構成により、本発明は、以下の内容を特徴としている。
まず、本発明のアダプタ3により、ケーブル4から放射されるノイズ(電磁界放射ノイズ)を低減させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、ケーブル4、及び電源ケーブル2を持つ被測定装置1からなるシステムの電磁界放射ノイズ評価測定において、被測定装置1の筐体および電源ケーブル2からのノイズレベルを確認し、被測定装置1の筐体および電源ケーブル2に対策を施す必要があるかを判断することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、被測定装置1の筐体および電源ケーブル2からのノイズレベルの確認後、コモンモードチョークコイル(以下、CMCという)のインダクタンス値の異なるアダプタ3に接続替えし、図1に示すシステムとしてノイズ評価を行い、被測定装置1内部の対策部品として最適なアダプタ3を選択し、被測定装置1へフィードバックすることを特徴とする。
【0014】
以下、詳細に説明する。最初に、アダプタ3の構成について説明する。
図2は、本発明のアダプタ3の構成を示す図である。
図2に示すように、アダプタ3は、RJ45モジュラ受け口9(第1のコネクタ部)と、装置側モジュラ5(第2のコネクタ部)と、CMC8(コモンモードチョークコイル部)と、ケーブル6(第2の信号ケーブル)と、を備える。
RJ45モジュラ受け口9は、ケーブル4の一端に設けられるRJ45モジュラに接続される。被測定装置側モジュラ5は、被測定装置1における信号線に接続される。また、CMC8は、一端がRJ45モジュラ受け口9に接続され、他端がケーブル6に接続される。ケーブル6は、CMC8の他端と被測定装置側モジュラ5とを接続する。
【0015】
アダプタ本体7は、4ペアの信号線、ペアの信号線各々対して配置されるCMC8、及びRJ45モジュラ受け口9から構成される。つまり、アダプタ本体7は、4ペアの信号線各々においてCMC8を備える。
CMC8は、コモンモードのノイズを抑制する目的でペアの信号ケーブルに実装するフェライトチョークコイルである。
【0016】
図2に示すように、アダプタ本体7は、4ペアの信号線上の同じ位置に、つまりケーブル6及びRJ45モジュラ受け口9からの距離が同じ位置に、1個ずつ同じ特性のCMC8を内蔵する。
アダプタ本体7は、a側に被測定装置側モジュラ5を含んだ状態で長さが5cmのETHERNET(登録商標)ケーブル(ケーブル6)が接続され、b側にRJ45モジュラ受け口9を有し、内蔵されたCMC8を経由して被測定装置側モジュラ5とRJ45モジュラ受け口9とを導通させる。なお、ケーブル6は、長さはケーブル4と異なるが、ケーブル4と同一構造(材質等)のケーブルである。すなわち、ケーブル6は、ケーブル4と同じ種類のケーブルをケーブル4の長さに応じてその長さを設定し、CMC8とともに被測定装置1からケーブル4へ放出するノイズを抑制する。
【0017】
上述した構成により、アダプタ3は、被測定装置1に装着されて評価され、アダプタ3を使用した評価時のCMC値が、被測定装置1内で使用されるCMC値に反映される。
以下に、この評価及び選定のフローについて説明する。
【0018】
図1に戻って、被測定装置1に接続される全てのケーブル4に対して、アダプタ3を挿入する。
被測定装置1からケーブル4を伝搬するノイズは、コモンモードのノイズであり、図2に示す被測定装置側モジュラ5からアダプタ本体7へと伝わる。
しかし、アダプタ本体7が内蔵するCMC8によりノイズの伝搬は抑制され、RJ45モジュラ受け口9から引き続き外への伝搬は抑えられる。
したがって、ケーブル4からの電磁界放射ノイズは抑制されることになる。
【0019】
続いて、アダプタ3の評価、選定方法について、図3を用いて説明する。
図3は、4つの状態(状態1〜状態4)におけるノイズレベルを示す図である。
図3は、各状態におけるケーブル4からのノイズレベル(◆印で示す)、電源ケーブル2あるいは被測定装置1の筐体におけるスリット(開口部)からのノイズ(●印で示す)を示している。
【0020】
図3において、状態1が評価前のノイズ初期状態を示している。
つまり、電源ケーブル2等からのノイズは規格限度値(予め設定された閾値)に対して大きく、ケーブル4からのノイズはさらに規格限度値に対して大きい。
通常、ノイズ対策手順としては、まず電源ケーブル2あるいは筐体のスリットからのノイズを対策する。
しかしながら、ケーブル4からのノイズが、電源ケーブル2あるいは筐体のスリットからのノイズよりも大きい。
そのため、ケーブル4からのノイズに隠れて電源ケーブル2あるいは筐体のスリットからのノイズが観測されない。
そこで、以下の手順1〜手順3により、まず、電源ケーブル2あるいは筐体のスリットからのノイズを抑え、その後、最適なアダプタ3を選定する。
【0021】
(手順1)まず、アダプタ3を全てのケーブル4に接続し、ケーブル4からのノイズを限度値内に収める(図3に示す状態2参照)。
【0022】
(手順2)その後、電源ケーブル2あるいは筐体のスリットの対策を行い、電源ケーブル2あるいは筐体のスリットからのノイズを規格限度値に入れる(図3に示す状態3参照)。なお、ケーブル4を抜くと当然、ノイズは無くなるが、対向している装置との通信が途絶え、試験対象装置の動作状況によりノイズが少なくなる方向に変わるため、ケーブル4を接続したままノイズ評価は行われる。
【0023】
(手順3)さらに、ケーブル4からのノイズを下げるため、CMC8のインダクタンス値の異なるアダプタ3に接続替えし、ノイズ測定を行う。
これは、装置内部のCMC8からケーブル4方向のインピーダンスは、様々な物理的条件(例えば、基板上のCMC8の実装位置、ケーブル4の長さ)で変化するためである。
そこで、最適な電圧定在波比(Voltage Standing Wave Ratio;VSWR)を見つけるために、CMC8のインダクタンス値のタイプ分繰り返し測定し、最もノイズ低減効果の大きいインダクタンス値を持つCMC8を採用する(図3に示す状態4参照)。
【0024】
このように、本発明は、被測定装置(被測定装置1)と、第1の信号ケーブル(ケーブル4)とを接続するアダプタ(アダプタ3)であって、前記第1の信号ケーブルと接続される第1のコネクタ部(RJ45モジュラ受け口9)と、前記被測定装置に接続される第2のコネクタ部(被測定装置側モジュラ5)と、一端が前記第1のコネクタに接続されるコモンモードチョークコイル部(CMC8)と、前記コモンモードチョークコイル部の他端と前記第2のコネクタ部とを接続する、前記第1の信号ケーブルの長さに応じて長さが設定される第2の信号ケーブル(ケーブル6)と、を備える前記アダプタの評価方法である。この評価方法は、複数個の前記アダプタのうちから、前記第1の信号ケーブルからのノイズ量が予め設定された閾値以下となる前記アダプタを選択する第1の過程(上記手順1)と、前記被測定装置からのノイズ量が前記閾値以下である前記被測定装置に接続する複数の前記アダプタのうちから、ノイズ量の最も少ない前記アダプタを採用する第2の過程(上記手順2及び手順3)と、を含むことを特徴とする。
【0025】
以上説明したように、本発明においては、以下に記載する効果を奏する。
まず、図1に示すように、アダプタ3をケーブル4の被測定装置1側に追加接続することで、ケーブル4から放射されるノイズを低減させることができる。その結果、評価の効率化を図ることができる。
【0026】
また、異なるインダクダンス値を持つCMC8を内蔵するアダプタ3を使用し、ノイズレベルの測定を行うことで、装置内部の対策部品として最適なインダクダンス値を有するCMC8を容易に選定することができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のアダプタ、及びアダプタの評価方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1…被測定装置、2…電源ケーブル、3…アダプタ、4,6…ケーブル、5…被測定装置側モジュラ、7…アダプタ本体、9…RJ45モジュラ受け口、8…CMC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定装置と、第1の信号ケーブルとを接続するアダプタであって、
前記第1の信号ケーブルに接続される第1のコネクタ部と、
前記被測定装置に接続される第2のコネクタ部と、
一端が前記第1のコネクタに接続されるコモンモードチョークコイル部と、
前記コモンモードチョークコイル部の他端と前記第2のコネクタ部とを接続する、前記第1の信号ケーブルの長さに応じて長さが設定される第2の信号ケーブルと、
を備えることを特徴とするアダプタ。
【請求項2】
被測定装置と、第1の信号ケーブルとを接続するアダプタであって、
前記第1の信号ケーブルに接続される第1のコネクタ部と、
前記被測定装置に接続される第2のコネクタ部と、
一端が前記第1のコネクタに接続されるコモンモードチョークコイル部と、
前記コモンモードチョークコイル部の他端と前記第2のコネクタ部とを接続する、前記第1の信号ケーブルの長さに応じて長さが設定される第2の信号ケーブルと、
を備える前記アダプタの評価方法であって、
複数個の前記アダプタのうちから、前記第1の信号ケーブルからのノイズ量が予め設定された閾値以下となる前記アダプタを選択する第1の過程と、
前記被測定装置からのノイズ量が前記閾値以下である前記被測定装置に接続する複数の前記アダプタのうちから、ノイズ量の最も少ない前記アダプタを採用する第2の過程と、
を含むことを特徴とするアダプタの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−97453(P2013−97453A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237594(P2011−237594)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】