説明

アダプタ移載装置及びそれを用いた検体検査自動化システム

【課題】アダプタ移載機構がアダプタを不安定な状態で把持することがなく、信頼性の向上したアダプタ移載装置及びそれを用いた検体検査自動化システムを提供することにある。
【解決手段】アダプタ移載機構8は、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2を備え、複数の検体容器を保持したアダプタ5を把持する。アダプタ移載機構8は、アダプタをある位置で把持し、他の位置に移動した後、その位置で把持を解放して、その位置に載置する。ピン44−1による位置決め部は、アダプタ5に設けられた凹部に挿入される。アダプタを把持する際に、位置決め部がアダプタの凹部に挿入されることで、前記アダプタの位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体容器を載置したアダプタを移載するアダプタ移載装置及びそれを用いた検体検査自動化システムに係り、特に、信頼性の向上したアダプタ移載装置及びそれを用いた検体検査自動化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野では多様な自動化機器の導入により、検査業務の省力化が進められている。病院の検査では、入院患者や外来患者の検査検体は病院内の各課で集められ、検査室で一括して処理される。検体ごとの検査項目はオンラインの情報処理システムを利用して医師より検査室に伝えられ、検査結果はオンラインで逆に検査室より医師に報告される。血液,尿の検査項目の多くは、検査処理の前処理として遠心分離処理,開栓処理,分注処理等の前処理を必要とし、その作業が検査作業時間全体に占める割合は大きい。
【0003】
前記前処理のうち遠心分離処理は、患者から採取した血液を遠心分離により血清成分を抽出して検査試料とするための処理である。一般的に検体検査自動化システムで使用する自動遠心分離装置は、回転するロータに揺動自在に保持された複数のバケット群を有している。バケット群は複数のバケットペアで構成され、各バケットペアは互いに回転対称位置に設けられたバケットで構成される。各バケットには、複数(例えば5〜10本程度)の検体容器が起立保持された状態で挿入され、ロータを高速回転させることで遠心分離処理が行われる。従来、各バケットには人手により検体を挿入していたが、前処理を自動化した検体検査自動化システムでは、これらの作業が自動化されている。
【0004】
前処理を自動化した検体検査自動化システムでは、複数の検体容器を起立保持するためのアダプタを使用し、アダプタを自動で遠心分離装置内に移動搬入し、遠心分離装置のロータに載置し、遠心分離処理終了後自動で搬出を行うアダプタの移載機構を備えている。各バケットはロータに固定させているわけではなく、スイングできる構造になっている。アダプタの搬入および搬出時は水平に停止しており、検体を起立保持するアダプタがアダプタ移載機構により起立保持した状態でバケットに挿入される。その後、バケットはロータの高速回転により検体が起立状態からスイングし、検体は水平状態で高速回転、遠心分離処理され、終了後にロータの回転が停止し、検体は起立状態に復帰し、アダプタ移載機構によりアダプタが搬出される。
【0005】
ここで、従来のアダプタ移載機構としては、アダプタの両側面で把持しアダプタを搬入,搬出するものが知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3551008号
【特許文献2】特許第4042501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたものでは、遠心分離処理後に遠心分離装置内からアダプタを搬出する場合、メンテナンス不良などにより、バケットの停止位置が不安定な場合があり、アダプタ搬出機構がアダプタを把持できない、または不安定な状態で把持し搬出する可能性があり、その結果、検体を落下させて検体を損失するという可能性があり、信頼性が低いものであった。
【0008】
これは、自動遠心分離装置のみならず、複数の検体容器を保持したアダプタを移載する必要のある分類モジュールなどの検体検査自動化システムを構成する処理部でも同様なことが言える。
【0009】
本発明の目的は、アダプタ移載機構がアダプタを不安定な状態で把持することがなく、信頼性の向上したアダプタ移載装置及びそれを用いた検体検査自動化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、複数の検体容器を保持するアダプタを把持するアダプタ把持部を有し、前記アダプタをある位置で把持し、前記アダプタを他の位置に移動した後、その位置で把持を解放して、その位置に載置するアダプタ移載装置であって、前記アダプタに設けられた凹部に挿入される位置決め部を備え、前記アダプタを把持する際に、前記位置決め部が前記アダプタの凹部に挿入されることで、前記アダプタの位置決めを行うようにしたものである。
かかる構成により、アダプタ移載機構がアダプタを不安定な状態で把持することがなく、信頼性を向上し得るものとなる。
【0011】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記位置決め部は、複数個備えられるものである。
【0012】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記アダプタ把持部は、前記アダプタの上面の内側を把持する位置に複数個備えられるものである。
【0013】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記位置決め部が、前記アダプタの凹部に挿入されたことを検出する検出部を備えるようにしたものである。
【0014】
(5)上記(4)において、好ましくは、前記位置決め部は、前記アダプタの凹部に挿入される第1のピンからなり、前記検出部は、前記アダプタの上面と接触して摺動する第2のピンと、該第2のピンが前記アダプタの上面を接触して摺動したことを検出する検出手段とからなり、前記第1のピンは、前記第2のピンよりも長いものである。
【0015】
(6)また、上記目的を達成するために、本発明は、検体容器を複数載置可能なアダプタと、該アダプタを搬送するアダプタ移載装置と、前記検体容器の搬送を行う搬送ライン部と、遠心分離,開栓,分注,分類,検体保存の機能をそれぞれ有する複数の処理部と、前記搬送ライン部及び前記複数の処理部の制御を行う制御部とを有する検体検査自動化システムにおいて、前記アダプタ移載装置は、複数の検体容器を保持するアダプタを把持するアダプタ把持部を有し、前記アダプタをある位置で把持し、前記アダプタを他の位置に移動した後、その位置で把持を解放して、その位置に載置するものであって、前記アダプタ移載装置は、前記アダプタに設けられた位置決め部に挿入される位置決め部を備え、前記アダプタを把持する際に、前記位置決め部が前記アダプタの凹部に挿入されることで、前記アダプタの位置決めを行うようにしたものである。
かかる構成により、アダプタ移載機構がアダプタを不安定な状態で把持することがなく、信頼性を向上し得るものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アダプタ移載機構がアダプタを不安定な状態で把持することがなく、信頼性を向上し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる検体処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる自動遠心分離装置の外観構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる自動遠心分離装置の上面図である。
【図4】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置で移載するアダプタの外観構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構の外観構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構によるアダプタの把持前の状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構によるアダプタの把持状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる遠心分離部の状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる遠心分離部の状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる遠心分離部の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1〜図10を用いて、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置を用いる検体処理システムの全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる検体処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態による検体処理システムは、患者から採取した生体試料(血液)を前処理する前処理システムと、前処理の行われた生体試料の分析を行う自動分析装置とから構成される。
【0020】
生体試料の前処理システム100は、投入モジュール110と、遠心分離モジュール(自動遠心分離装置)111と、開栓モジュール112と、バーコードなどのラベラモジュール113と、分注モジュール114と、閉栓モジュール115と、分類モジュール(分類装置)116と、収納モジュール(検体保存装置)117を基本要素とする複数のモジュールからなる。制御用PC121は、前処理システム100の全体を制御する。
【0021】
自動分析装置120は、前処理システム100で前処理された生体試料の成分を分析する。自動分析装置120は、一般に、生化学分析装置や、免疫分析装置など複数の分析装置から構成されている。
【0022】
前処理システム100の内部及び、前処理システム100と自動分析装置120との間では、搬送ライン102を用いて検体(検体容器)が搬送される。
【0023】
投入モジュール110では、検体を生体試料の前処理装置内に投入する。遠心分離モジュール111では、投入された検体に対して遠心分離を行う。開栓モジュール112では、遠心分離された検体の栓を開栓する。分注モジュール114では、遠心分離された親検体を、自動分析装置120などで分析するために子検体に小分けする。すなわち、搬送ライン102で搬送された親検体容器に収納された親検体を、複数の子検体容器に分注する。ラベラモジュール113では、その小分けの容器にバーコードを貼り付ける。
【0024】
閉栓モジュール115では、検体に栓を閉栓する。収納モジュール117では、閉栓された検体を収納する。分類モジュール116では、分注された検体容器の分類を行う。
【0025】
次に、図2を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置を用いる自動遠心分離装置の構成について説明する。なお、ここでは、検体検査自動化システムを構成する自動遠心分離装置を例に説明するが、検体検査自動化システムを構成する分類装置や、検体保存装置などでも応用が可能である。
図2は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる自動遠心分離装置の外観構成を示す斜視図である。
【0026】
遠心分離モジュール(自動遠心分離装置)111は、遠心分離部1と、搬送ライン部4と、アダプタ設置部6と、検体容器移載機構7と、アダプタ移載機構(アダプタ移載装置)8と、XYZ機構部9から構成される。
【0027】
遠心分離部1は、検体容器の搭載されたアダプタを高速回転し、遠心分離処理を行う。搬送ライン部4は、検体容器2を載置したホルダ3を搬送および待機させる。アダプタ設置部6には、検体容器を複数載置可能なアダプタ5が設置される。検体容器移載機構7は、搬送ライン部4により搬送されてきたホルダから、検体容器2を把持し、アダプタ設置部6に設置されたアダプタ5に移載する。なお、遠心分離部1と、搬送ライン部4と、アダプタ設置部6との詳細については、図3を用いて後述する。
【0028】
アダプタ移載機構8は、アダプタ設置部6に設置され、検体容器移載機構7により検体容器が移載されたアダプタ5を遠心分離部1の内部にアダプタ搬入部10から移動搬入し、アダプタ5を遠心分離部1のロータに載置する。また、遠心分離処理終了後、アダプタ移載機構8は、アダプタ搬入部10からアダプタ5を搬出し、アダプタ設置部6に戻す。なお、アダプタ移載機構8の詳細構成については、図5〜図7を用いて後述する。
【0029】
XYZ機構部9は、検体容器移載機構7およびアダプタ移載機構8を、X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の3軸方向に駆動させる。
【0030】
次に、図3を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置を用いる自動遠心分離装置における検体容器の流れについて説明する。
図3は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる自動遠心分離装置の上面図である。なお、図3は、自動遠心分離装置を上面から見た構成を簡略した図示している。
【0031】
上流のユニットから検体容器2を保持したホルダ3が、搬入部21aまたは、搬入部21bより搬入される。搬入されたホルダ3は、搬送ライン22a,22bを経由して検体容器取り出し部23aまで搬送される。ホルダ3は検体容器取り出し部23aで停止する。検体容器取り出し部23aにおいて、検体容器移載機構7は、ホルダ3から検体容器2のみ取り出し、アダプタ設置部6に待機しているアダプタ5に移載する。検体容器2が取り出された後、ホルダ3は搬送ライン22b,22cを経由し、搬送ライン22d,22eに搬送される。
【0032】
アダプタ5には、最大9本の検体容器2が載置可能である。なお、アダプタ5の詳細構成については、図4を用いて後述する。検体容器2が載置されたアダプタ5は、図2に示したアダプタ移載機構8により、アダプタ搬入部10から遠心分離部1の内部のバケット24に移送される。バケット24は遠心分離部1の内部に4個備えている。4個のバケット24は、順次、モータMにより低速で回転され、アダプタ搬入部10の位置に停止する。その上で、4個のバケット24にそれぞれ、アダプタ5が搬入される。
【0033】
次に、モータMを予め設定された時間だけ高速回転させることにより、遠心分離処理が実施される。遠心分離処理の実施後、再びアダプタ搬入部10からアダプタ移載機構8により搬出され、アダプタ設置部6に戻される。
【0034】
一方、搬送ライン22c,22d,22eにより搬送された空のホルダ3は、検体容器受け取り部23bで停止する。そして、検体容器移載機構7は、検体容器2をアダプタ5からホルダ3に移載する。検体容器2を保持したホルダ3は、搬送ライン22d,22eにより、バーコードリーダ25の位置まで搬送される。
【0035】
次に、バーコードリーダ25は、検体容器2の識別用バーコードを読み取る。読み取りが終了すると、ホルダ3は、搬送ライン22fまたは搬送ライン22gを経由して、下流のユニットに搬出される。
【0036】
次に、図4を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置で移載するアダプタ5の構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置で移載するアダプタの外観構成を示す斜視図である。
【0037】
アダプタ5は、9個の凹部(穴)33を備えている。凹部33は、3行3列のマトリックス状に配置されている。凹部33は、図2にて説明した検体容器2が保持する。すなわち、アダプタ5は、最大9本の検体容器を載置可能になっている。また、アダプタ5は、遠心分離処理中の遠心加速度に耐える強度を保持するため、強化樹脂もしくは金属で製造される。
【0038】
アダプタ5の中央部には、図5にて後述するアダプタ移載機構8による移送を行う際に、位置決めとアダプタの把持確認に用いられる4箇所の凹部31a1,31a2,31b1,31b2が設けられている。凹部31a1,31a2,31b1,31b2は、検体容器の載置用の凹部の間に配置し、検体容器2の載置を邪魔しない構成になっている。
【0039】
凹部(穴)31a1,31a2は、位置決め用に用いられるものであり、アダプタ5の上面の中心位置に対して対角位置に設けられている。凹部31b1,31b2は、把持確認用に用いられるものであり、アダプタ5の上面の中心位置に対して対角位置に設けられている。凹部31a1と凹部31a2の中心を結ぶ線と、凹部31b1と凹部31b2の中心を結ぶ線とが直交するように、凹部31a1,31a2,31b1,31b2は配置されている。
【0040】
なお、図5にて後述するアダプタ移載機構8は、4本の位置決めピンを備えている。4本の位置決めピンの内、2本の位置決めピンは、他の2本の位置決めピンよりも直径が大きくなっている。2本の位置決めピンの直径は、凹部31a1,31a2,31b1,31b2の直径よりも小さく、他の2本の位置決めピンの直径は、凹部31a1,31a2,31b1,31b2の直径よりも大きくなっている。
【0041】
さらに、4箇所の位置決め用の凹部31a1,31a2,31b1,31b2の上面の外周には、面取り部32が付加されている。
【0042】
また、アダプタ5の上面の内周側には、両端に2箇所ずつ計4箇所の凹部34a1,34a2,34b1,34b2が設けられている。凹部34a1,34a2,34b1,34b2は、図5にて後述するアダプタ移載機構8による把持のために設けられている。凹部34a1,34a2は、アダプタ5の上面の四角形の第1の辺の内周に設けられている。凹部34a1の中心と凹部34a2の中心を結ぶ線は、第1の辺と平行である。また、凹部34a1,34a2は、アダプタ5の第1と平行な第2の辺の内周に設けられている。凹部34b1の中心と凹部34b2の中心を結ぶ線は、第2の辺と平行である。
【0043】
特許文献1,特許文献2記載のものでは、アダプタの両側側面部で把持を行う構成となっており、アダプタ移載機構が大型化するとともに、バケットにアダプタを挿入,搬出時、アダプタを把持,解放するためスペースを確保する必要があり、装置が大型化する。それに対して、アダプタ5の把持用の凹部34a1,34a2,34b1,34b2を、アダプタ5の上面の内周側に設けることで、把持をアダプタの上面側から行えるため、把持する際、解放する際のスペースを小さくすることができ、装置を小型化することができる。
【0044】
次に、図5を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構8の構成について説明する。
図5は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構の外観構成を示す斜視図である。
【0045】
アダプタ移載機構8は、4本のアダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2を備えている。アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端には、図4に示したアダプタ5を把持するための爪部が設けられている。アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端を結ぶ線と、アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端を結ぶ線とは、互いに平行である。例えば、アダプタ把持部41a1は、図4に示したアダプタ5の凹部34a1に挿入され、先端の爪部が、図4に示したアダプタ5の凹部34a1の内部の突起に係合する。アダプタ把持部41a2は、図4に示したアダプタ5の凹部34a2に挿入され、先端の爪部が、図4に示したアダプタ5の凹部34a2の内部の突起に係合する。また、アダプタ把持部41b1は、図4に示したアダプタ5の凹部34b1に挿入され、先端の爪部が、図4に示したアダプタ5の凹部34b1の内部の突起に係合する。アダプタ把持部41b2は、図4に示したアダプタ5の凹部34b2に挿入され、先端の爪部が、図4に示したアダプタ5の凹部34b2の内部の突起に係合する。
【0046】
なお、アダプタ把持部41a1が、図4に示したアダプタ5の凹部34b2に挿入され、アダプタ把持部41a2が、図4に示したアダプタ5の凹部34b1に挿入され、アダプタ把持部41b1が、図4に示したアダプタ5の凹部34a2に挿入され、アダプタ把持部41b2が、図4に示したアダプタ5の凹部34a1に挿入されることも可能である。
【0047】
また、アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端は、図示の矢印Y1方向に移動可能である。アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端は、図示の矢印Y2方向に移動可能である。方向Y2は、方向Y1と逆方向である。従って、アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端が矢印Y1方向に移動し、アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端が矢印Y2方向に移動すると、アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端と、アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端との間の距離は狭くなる。アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端は、アダプタ移載機構8の上部構造体8UFの内部に備えられたモータによって移動される。
【0048】
また、アダプタ移載機構8は、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2が設けられている位置よりも中央より側に、位置決めに用いられるピン43−1,43−2,44−1,44−2が設けられている。ピン44−1,44−2の直径は、ピン43−1,43−2の直径よりも大きくなっている。ピン43−1,43−2,44−1,44−2は、図4に示したアダプタ5の凹部31a1,31a2,31b1,31b2の何れにも挿入できる太さである。
【0049】
また、ピン43−1,43−2は、アダプタ移載機構8の上部構造体8UFに対して固定されている。ピン44−1,44−2は、アダプタ移載機構8の上部構造体8UFに対して、矢印Z1方向にそれぞれ独立に摺動可能である。ピン44−1,44−2の先端がアダプタ5に当接すると、ピン44−1,44−2は、矢印Z1方向に摺動する。ピン44−1,44−2の摺動は、上部構造体8UFの内部に備えられた検出部により検出される。また、ピン43−1,43−2の先端は、ピン44−1,44−2の先端よりも下方に位置している。また、ピン43−1,43−2の先端は、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端よりも下方に位置している。
【0050】
次に、図6及び図7を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構8によるアダプタ5の把持状態について説明する。
図6は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構によるアダプタの把持前の状態を示す斜視図である。図7は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置であるアダプタ移載機構によるアダプタの把持状態を示す斜視図である。
【0051】
図6に示すように、アダプタ移載機構8の上部構造体8UFの内部には、モータ51が備えられている。モータ51の出力軸には、カムが取り付けられている。カムのカム面は、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の上部と接触している。モータ51によりカムが正方向に90°回転すると、アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端が矢印Y1方向に移動し、アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端が矢印Y2方向に移動する。また、モータ51によりカムが逆方向に回転すると、アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端が矢印Y1方向と逆方向に移動し、アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端が矢印Y2方向と逆方向に移動する。従って、モータ51の正転や逆転により、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端を閉じたり、開いたりすることができる。なお、図6に示す状態は、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端が閉じた状態を示している。すなわち、アダプタ移載機構8によるアダプタの把持前においては、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端が閉じた状態とされる。そして、アダプタ移載機構8は、矢印Z2方向に下降して、アダプタ5に接近する。
【0052】
また、上部構造体8UFの内部には、検出部52が備えられている。検出部52は、遮光板52Aと、フォトインタラプタ52Bとから構成される。遮光板52Aは、ピン44−2の上部に取り付けられている。ピン44−2は矢印Z1方向に移動可能であり、ピン44−2に移動に応じて、遮光板52Aも、同方向に移動する。この際、フォトインタラプタ52Bを構成する発光部と受光部との間を遮光板52Aが移動する。図6に示す状態では、遮光板52Aはフォトインタラプタ52Bを構成する発光部と受光部との間の光路を遮らない位置にある。ピン44−2の先端がアダプタ5の上面に当接すると、ピン44−2は矢印Z1方向に摺動し、このとき、遮光板52Aはフォトインタラプタ52Bを構成する発光部と受光部との間の光路を遮り、ピン44−2が摺動したことを検出できる。なお、上部構造体8UFの内部には、検出部は2個備えられており、他の検出部は、ピン44−1の摺動を検出する。
【0053】
次に、図6及び図7により、アダプタ移載機構8の動作について説明する。
【0054】
図6に示すように、アダプタ移載機構8によるアダプタの把持前においては、モータ51の駆動により、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端が閉じた状態とされる。そして、アダプタ移載機構8は、Z軸モータMZにより駆動され、矢印Z2方向に下降して、アダプタ5に接近する。
【0055】
図7は、アダプタ移載機構8によるアダプタの把持状態を示している。
【0056】
位置決め用ピン43−1,43−2は、図5に示したアダプタ5の凹部31a1,31a2,31b1,31b2より小さい径でかつ、検知用ピン44−1,44−2の2箇所より長尺になっている。従って、アダプタ5の位置が多少ずれていても、位置決めピン43−1,43−2の先端がアダプタ5の凹部31b1,31b2の面取り部32に接触することで、位置決めピン−1,43−2がアダプタ5の位置を補正しながら、アダプタ5の凹部31b1,31b2に位置決めピン43−1,43−2が挿入される。
【0057】
検知用の2箇所のピン44−1,44−2の直径は、アダプタ5の凹部31a1,31a2,31b1,31b2より大きく作られており、検知用のピン44−1,44−2がアダプタ5の凹部31a1,31a2に接触すると戻される。2本の検知用のピン44−1,44−2に各々備えられた検出部52は、2箇所ともピン44−1,44−2の摺動を検知すると、アダプタ5の把持が成功となる。検出部52が1箇所のみ、または2箇所とも検知しない場合はエラーとなる。これにより、把持が失敗になったことを検出できる。従って、不安定な位置でアダプタ4を把持することがなくなる。
【0058】
また、2カ所の検出部52が2カ所ともピン44−1,44−2の摺動を検知すると、アダプタ移載機構8のモータ51により、アダプタ把持部41a1とアダプタ把持部41a2の先端が矢印Y1方向と逆方向に移動し、アダプタ把持部41b1とアダプタ把持部41b2の先端が矢印Y2方向と逆方向に移動する。これにより、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端が開いた状態となる。これにより、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端の爪部が、アダプタ5の内部の突起に係合可能となる。この状態で、Z軸モータMZにより、矢印Z3方向にアダプタ移載機構8を上昇させることで、アダプタ移載機構8は、アダプタ5を把持して、上昇する。
【0059】
図3に示したアダプタ搬入部10において、アダプタ移載機構8がアダプタ5を把持して、上昇した後、XYZ機構部9のX軸モータMX及びY軸モータMYにより、アダプタ5は、アダプタ設置部6の上部に移動される。そして、XYZ機構部9のZ軸モータMZによりアダプタ移載機構8が下降し、アダプタ5をアダプタ設置部6に設置する。そして、図6に示したモータ52を駆動して、アダプタ把持部41a1,41a2,41b1,41b2の先端を狭くすることで、アダプタ把持部の先端の爪部とアダプタ5の内部の突起の係合が解放される。その状態で、Z軸モータMZによりアダプタ移載機構8を上昇させれば、アダプタ設置部6にアダプタ5が設置される。アダプタ設置部6からアダプタ搬入部10までのアダプタ5の移載も同様に行われる。
【0060】
次に、図8〜図10を用いて、本実施形態によるアダプタ移載装置を用いる遠心分離装置における遠心分離中のバケットの位置について説明する。
図8〜図10は、本発明の一実施形態によるアダプタ移載装置を用いる遠心分離部の状態を示す斜視図である。
【0061】
図8〜図10は、遠心分離部1の内部での遠心分離処理中のバケット24の位置を示す。アダプタ5は、バケット24の内部に収納される。バケット24は遠心分離部1のロータ74に架設され、回転に合わせてスイングする構造になっている。
【0062】
図8は、ロータ74の回転が停止している状態を示しており、バケット停止時は、アダプタ5の上面は床面に水平となっている。また、ロータ74が等速回転しているときは、図9に示すように、バケット5の上面は床面に対して垂直となる。さらに、加減速時は、図10に示すように、水平位置から垂直位置の間の位置となり、回転状態により位置が変わる。
【0063】
また、グリースアップなど、定期的なメンテナンスを必要とし、グリース切れなどによりバケット24の停止位置が水平とならない場合がある。そのような場合には、位置決め用のピン43−1,43−2がアダプタ5の凹部に挿入できないため、検知用の2箇所のピン44−1,44−2が摺動することがない。そのため、2本の検知用のピン44−1,44−2に各々備えられた検出部52は、ピン44−1,44−2の摺動を検知できないため、把持が失敗になったことを検出できる。この場合には、不安定な位置でアダプタを把持することがなくなるため、アダプタ5を不安定な状態で搬出することを回避できる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、アダプタ移載機構に位置決めピンを備え、アダプタの凹部に挿入することで、アダプタの位置決めを可能として、検体アダプタ移送時の信頼性を高めることができる。また、把持用のピンは、アダプタの上面の内周側において、アダプタを把持する構成としているため、アダプタの両側面から把持する場合に比べて、アダプタを把持、解放するためのスペースを無くし、小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1…遠心分離部
2…検体容器
3…ホルダ
4…搬送ライン部
5…アダプタ
6…アダプタ設置部
7…検体容器移載機構
8…アダプタ移載機構
9…XYZ機構
10…アダプタ搬入部
21a,21b…ホルダ搬入部
22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g…搬送ライン
23a…検体容器取り出し部
23b…検体容器受け取り部
24…バケット
25…バーコードリーダ
31a1,31a,31b1,31b2…位置決め用凹部
32…面取り部
33…容器収納用凹部
34a1,34a2,34b1,3b2…把持部用凹部
41a1,41a2,41b1,41b2…アダプタ把持部
43−1,43−2…位置決めピン(位置決め用)
44−1,44−2…位置決めピン(検知用)
51…モータ
52…検出部
74…ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検体容器を保持するアダプタを把持するアダプタ把持部を有し、
前記アダプタをある位置で把持し、前記アダプタを他の位置に移動した後、その位置で把持を解放して、その位置に載置するアダプタ移載装置であって、
前記アダプタに設けられた凹部に挿入される位置決め部を備え、
前記アダプタを把持する際に、前記位置決め部が前記アダプタの凹部に挿入されることで、前記アダプタの位置決めを行うことを特徴とするアダプタ移載装置。
【請求項2】
請求項1記載のアダプタ移載装置において、
前記位置決め部は、複数個備えられることを特徴とするアダプタ移載装置。
【請求項3】
請求項1記載のアダプタ移載装置において、
前記アダプタ把持部は、前記アダプタの上面の内側を把持する位置に複数個備えられることを特徴とするアダプタ移載装置。
【請求項4】
請求項1記載のアダプタ移載装置において、
前記位置決め部が、前記アダプタの凹部に挿入されたことを検出する検出部を備えることを特徴とするアダプタ移載装置。
【請求項5】
請求項4記載のアダプタ移載装置において、
前記位置決め部は、前記アダプタの凹部に挿入される第1のピンからなり、
前記検出部は、前記アダプタの上面と接触して摺動する第2のピンと、該第2のピンが前記アダプタの上面を接触して摺動したことを検出する検出手段とからなり、
前記第1のピンは、前記第2のピンよりも長いことを特徴とするアダプタ移載装置。
【請求項6】
検体容器を複数載置可能なアダプタと、該アダプタを搬送するアダプタ移載装置と、前記検体容器の搬送を行う搬送ライン部と、遠心分離,開栓,分注,分類,検体保存の機能をそれぞれ有する複数の処理部と、前記搬送ライン部及び前記複数の処理部の制御を行う制御部とを有する検体検査自動化システムにおいて、
前記アダプタ移載装置は、複数の検体容器を保持するアダプタを把持するアダプタ把持部を有し、
前記アダプタをある位置で把持し、前記アダプタを他の位置に移動した後、その位置で把持を解放して、その位置に載置するものであって、
前記アダプタ移載装置は、前記アダプタに設けられた位置決め部に挿入される位置決め部を備え、
前記アダプタを把持する際に、前記位置決め部が前記アダプタの凹部に挿入されることで、前記アダプタの位置決めを行うことを特徴とする検体検査自動化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93133(P2012−93133A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238916(P2010−238916)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】