説明

アダマンタン誘導体、その反応物及びそれを含む硬化性樹脂組成物並びにそれらの製造方法及び用途

【課題】耐光性、耐熱性、機械特性、接着性、エッチング耐性に優れるアダマンタン誘導体、その反応物及びそれらを含む樹脂組成物並びにそれらの製造方法及び用途を提供する。
【解決手段】ベンゼン環にアクリレート構造及びアダマンタン骨格が結合している構造を有するアダマンタン誘導体、該アダマンタン誘導体と多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させてなる下記アダマンタン誘導体反応物、及びそれらを含む樹脂組成物並びにそれらの製造方法及び用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料や光学材料として有用である硬化物を与えるアダマンタン誘導体、その反応物及びそれを含む樹脂組成物並びにそれらの製造方法及び用途に関するものである。より詳しくは、半導体用フォトレジスト、光半導体用封止剤、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらの接着剤として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、誘電率など電気特性や、耐熱性に優れた硬化物を与えるアダマンタン誘導体、その反応物及びそれを含む樹脂組成物並びにそれらの製造方法及び用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子・光学材料分野においては、液晶や有機ELなどを用いたフラットパネルディスプレイの高精細化、高視野角化、高画質化、発行ダイオード(LED)などの光半導体を用いた光源の高輝度、短波長化、白色化、さらに電子回路の高周波数化や光を用いた回路・通信など、光学・電子部品の高性能化・改良検討が進められている。
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料などとして有用であることが知られている。例えば光学特性や耐熱性などを有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズなどに用いることが試みられている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、アダマンタンエステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性などを利用して、フォトレジスト用樹脂原料として、使用することが試みられている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
一方、光学特性に優れるアクリル系樹脂の欠点である耐熱性の向上も検討され、多官アクリレートモノマーを用いた架橋アクリル樹脂が検討されている。特に、脂環式アクリレートの硬化物は、ガラス転移温度が高く、硬化収縮率及び吸湿率が小さいことから、脂環式アクリレートを含むアクリレート共重合体に関する技術は多数開示されている。例えば、モノマー成分Aとしてエステル部分に炭素数4以下の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、モノマー成分Bとして脂環式多官能(メタ)アクリレート、及び重合開始剤を含有し、加熱又は光によって硬化する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。また、光学接着剤等を用途とする、エステル部に炭化水素5〜22の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとアルキレンオキサイドを有する多官能(メタ)アクリレートによる組成物が開示されている(例えば、特許文献5参照)。しかし、接着剤としての実装時の耐熱性を満足させるものではあるが、構造体としての耐熱性や機械特性については不十分である。
上記アクリレートの課題を解決するために、アダマンチル基含有エポキシ変性アクリレートがあるが、耐熱性が不十分である(例えば、特許文献7参照)。
【0004】
また、エポキシアクリレート樹脂は、各種コーティング剤、構造材料、配線基板のソルダーレジスト、液晶ディスプレイやイメージセンサーのカラーフィルター用保護膜、カラーレジスト、ナノインプリントなどに用いられている。ソルダーレジストに関して、ビスフェノールA型エポキシアクリレートが開示されている(例えば、特許文献8参照)。さらに、カラーフィルター用感光性組成物としてクレゾールノボラック型エポキシアクリレートが開示されている(例えば、特許文献9参照)。しかし、これらは透明性、(長期)耐熱性、(長期)耐光性に限界があり、それらの要求特性を満たす材料が求められている。ソルダーレジストや液晶ディスプレイ関連材料にエポキシアクリレートを使用する場合、これを含む感放射性樹脂組成物として用いられる場合が多く、樹脂組成物の透明性が不充分であると露光表面のみの硬化となり、良好な機械物性を有する硬化物を得られないという問題もある。
また、半導体などを集積した電子回路についても、情報化社会の進展に伴い、情報量や通信速度の増大と装置の小型化が進んでおり、回路の小型化、集積化、高周波数化が必要となっている。さらに、より高速処理が可能となる光導波路などを用いた光回路も検討されている。これらの用途で使用されている封止樹脂、接着用樹脂やフィルム、あるいはレンズ用の樹脂として、従来、使用されているビスフェノールA型のエポキシ樹脂などを使った場合、電子回路では誘電率が高かったり、耐熱性が不足したり、光導波路やLED封止では透明性の低下や樹脂の劣化による黄変などに問題がある。
したがって、アクリル系硬化性組成物において、その硬化物の光学的透明性が高く、耐光性、耐熱性、機械特性に優れ、硬化収縮の小さい、光学部材に好適な組成物が望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【特許文献4】特開2006−193660号公報
【特許文献5】特開平11−61080号公報
【特許文献6】特開平11−60656号公報
【特許文献7】特開2008−133246号公報
【特許文献8】特開平8−286371号公報
【特許文献9】特開2002−341533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような状況から、本発明は、耐光性などの光学特性、耐熱性、機械特性などに優れる硬化物を与え、カラーレジスト、ナノインプリント材料、プリント回路基板用レジスト、光導波路、光通信用レンズ、光学フィルムなどの光学電子部材及びこれらを接着する光学接着剤として好適な、耐光性、耐熱性、機械特性、接着性、エッチング耐性に優れるアダマンタン誘導体その反応物及びそれを含む樹脂組成物並びにそれらの製造方法及び用途を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定構造のアダマンタン誘導体は、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
1.下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表されるアダマンタン誘導体、
【化1】

(式中、R1〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、a〜eは、それぞれ独立に、0〜8の整数である。a〜eがそれぞれ2以上の場合、複数のR1〜R5は、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。X1〜X6は、それぞれ独立に、下記一般式(VI)で表わされるアクリレート系化合物残基であり、f〜kは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。f〜kがそれぞれ2以上の場合、複数のX1〜Xは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基又はトリフルオロメチル基である。mは、2〜6の整数である。mが2以上の場合、複数のR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
2.上記1に記載のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させてなるアダマンタン誘導体反応物、
3.上記1に記載のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させることを特徴とする上記2記載のアダマンタン誘導体反応物の製造方法、
4.上記1に記載のアダマンタン誘導体及び/又は上記2記載のアダマンタン誘導体反応物並びに重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物、
5.上記4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、
6.上記1に記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる光学接着剤、
7.上記1記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるシール剤、
8.上記1記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるカラーレジスト材料、
9.上記1記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるプリント回路基板形成用レジスト材料、
10.上記1記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるソルダーレジスト材料、
11.上記1記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる半導体用レジスト材料、
12.上記1、2記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる半導体用下地膜、
13.上記1、2記載のアダマンタン誘導体、上記2記載のアダマンタン誘導体反応物及び上記4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる光記録材料、及び
14.下記一般式(i)〜(iv)のいずれかで表わされるアダマンチルエポキシ類と、下記一般式(vi)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート類とを反応させることを特徴とする上記1記載のアダマンタン誘導体の製造方法、
【化3】

(式中、R1〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、a〜eは、それぞれ独立に、0〜8の整数である。a〜eがそれぞれ2以上の場合、複数のR1〜R5は、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。Yは下記式(a)で表わされるグリシジルオキシ基であり、f〜kは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。f〜kがそれぞれ2以上の場合、複数のYは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

【化5】

(式中、R6、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜6の整数である。nが2以上の場合、複数のR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、耐熱性及び光学特性などに優れるアダマンタン誘導体であることから、これに重合開始剤を含有させた硬化性樹脂組成物を、熱や光で硬化させることで、耐光性、耐熱性、光学特性、機械特性、接着性、エッチング耐性に優れた硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[アダマンタン誘導体]
本発明のアダマンタン誘導体は、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される。
【0010】
【化6】

【0011】
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、a〜eは、それぞれ独立に、0〜8の整数である。a〜eがそれぞれ2以上の場合、複数のR1〜R5は、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。X1〜X6は、それぞれ独立に、下記一般式(VI)で表わされるアクリレート系化合物残基であり、f〜kは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。f〜kがそれぞれ2以上の場合、複数のX1〜Xは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0012】
【化7】

(式中、R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基又はトリフルオロメチル基である。mは、2〜6の整数である。mが2以上の場合、複数のR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0013】
上記一般式(I)〜(IV)及び(VI)においてR1〜R9で示される炭素数1〜10の炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、特に炭素数1〜6のものが好ましい。この炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(I)で表わされるアダマンタン誘導体の具体例としては、1−(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1−(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1−(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1−(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0015】
上記一般式(II)で表わされるアダマンタン誘導体の具体例としては、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,6−ビス(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,6−ビス(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,4−ビス(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,4−ビス(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−2,5−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−5,6−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,3−ビス(1−アダマンチル)−5,6−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,4−ビス(1−アダマンチル)−5,6−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,4−ビス(1−アダマンチル)−5,6−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,2−ビス(1−アダマンチル)−4,5−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,2−ビス(1−アダマンチル)−4,5−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,2−ビス(1−アダマンチル)−5,6−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン、1,2−ビス(1−アダマンチル)−5,6−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0016】
上記一般式(III)で表わされるアダマンタン誘導体の具体例としては、2,2−ビス{[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン}−アダマンタン、2,2−ビス{[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}−アダマンタン、2,2−ビス{[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチルフェニル}−アダマンタン、2,2−ビス{[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチルフェニル}−アダマンタン、2,2−ビス{[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ジメチルフェニル}−アダマンタン、2,2−ビス{[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ジメチルフェニル}−アダマンタンなどが挙げられる。
【0017】
上記一般式(IV)で表わされるアダマンタン誘導体の具体例としては、1,3−ビス{[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}−アダマンタン、1,3−ビス{[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}−アダマンタン、1,3−ビス{[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチルフェニル}−アダマンタン、1,3−ビス{[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]メチルフェニル}−アダマンタン、1,3−ビス{[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ジメチルフェニル}−アダマンタン、1,3−ビス{[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ジメチルフェニル}−アダマンタンなどが挙げられる。
【0018】
[アダマンタン誘導体の製造方法]
本発明は、下記一般式(i)〜(iv)のいずれかで表わされるアダマンチルエポキシ類と、下記一般式(vi)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート類とを反応させる前記アダマンタン誘導体の製造方法をも提供する。
尚、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はα位の炭素原子に置換基を有するアクリレートを指す。
【0019】
【化8】

【0020】
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、a〜eは、それぞれ独立に、0〜8の整数である。a〜eがそれぞれ2以上の場合、複数のR1〜R5は、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。Yは下記式(a)で表わされるグリシジルオキシ基であり、f〜kは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。f〜kがそれぞれ2以上の場合、複数のYは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。)
一般式(i)〜(iv)におけるR1〜R5としては、前記一般式(I)〜(IV)におけるR1〜R5と同様のものが用いられる。
【0021】
【化9】

【化10】

【0022】
(式中、R6、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜6の整数である。nが2以上の場合、複数のR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(vi)におけるR6、R8、R9及びnは、前記一般式(I)〜(IV)におけるR6、R8、R9及びmとそれぞれ同様である。
【0023】
上記一般式(i)〜(iv)で表されるアダマンチルエポキシ類は、それぞれ下記一般式(i’)〜(iv’)で表されるフェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体と2位の炭素原子にR7を有するエピハロヒドリン、好ましくはエピクロロヒドリンとを反応させることにより得ることができる。上記エピハロヒドリンとの反応において、フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体は、一種を単独で用いてもよく二種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
【化11】

【0025】
上記フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体と2位の炭素原子にR7を有するエピハロヒドリンとの反応は、通常、塩基性触媒の存在下で行う。塩基性触媒としては、ナトリウムアミド,トリエチルアミン,トリブチルアミン,トリオクチルアミン,ピリジン,N,N−ジメチルアニリン,1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU),水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水素化ナトリウム,燐酸ナトリウム,燐酸カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,酸化銀,ナトリウムメトキシド及びカリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。
反応原料である一般式(i’)〜(iv’)で表されるフェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体に対する塩基性触媒の使用割合は、塩基性触媒/原料モノマーの活性水素(モル比)が、0.8〜10程度となる量であり、好ましくは1〜5となる量である。
【0026】
上記反応の際には、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド及びテトラエチルアンモニウムブロミドなどの4級アンモニウム塩を相間移動触媒として添加してもよい。この4級アンモニウム塩の使用割合は、フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体に対して0.01〜20モル%程度であり、好ましくは0.1〜10モル%である。
【0027】
反応は、無溶媒又は溶媒の存在下で行う。溶媒としては、上記フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いるのが有利である。溶媒の使用量は上記フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体の濃度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上となる量である。このとき、上記フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体は懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。溶媒の具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)及びなどが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
フェノール性水酸基含有アダマンタン誘導体と該エピハロヒドリンとの反応は、通常0〜200℃程度、好ましくは20〜150℃の温度において行う。反応温度が0℃以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、反応温度が200℃以下であると、生成物の着色が抑制される。反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは1〜10時間である。
【0029】
通常、エポキシ環を持つ基を含有する化合物には2量体以上のオリゴマー成分が含まれ、上記の反応においても2量体以上のグリシジルオキシ基を含有するアダマンタン誘導体オリゴマーが生成する。これらオリゴマーが混在していても何ら問題はないが、必要に応じて、蒸留、晶析、カラム分離などにより精製することができ、精製方法は、反応生成物の性状と不純物の種類により選択することができる。
【0030】
上記反応において、グリシジルオキシ基含有アダマンタン誘導体におけるグリシジルオキシ基の生成が不十分な場合、塩基触媒を用いた閉環反応により、グリシジルオキシ基含有量を改善することができる。
この閉環反応は、通常20〜200℃程度、望ましくは30〜150℃の温度において行う。反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは30分〜10時間である。
【0031】
上記閉環反応における塩基触媒としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,燐酸ナトリウム,燐酸カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
塩基触媒の使用量は、上記アダマンチルエポキシ類基準で0.1〜20質量%程度、好ましくは1〜10質量%である。塩基触媒の使用量が0.1質量%以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、塩基触媒の使用量が20質量%以下であると、得られる効果と経済性のバランスが良好となる。
【0032】
上記閉環反応は、無溶媒又は溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、上記アダマンチルエポキシ類の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いるのが有利である。溶媒の使用量は、上記アダマンチルエポキシ類の濃度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上となる量である。このとき、上記アダマンチルエポキシ類は懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。溶媒として具体的には、ヘキサン,ヘプタン、トルエン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)及びMIBK(メチルイソブチルケトン)などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
反応生成物は、蒸留、晶析、カラム分離などにより精製することができ、精製方法は、反応生成物の性状と不純物の種類により選択することができる。
【0033】
このようにして得られる、上記一般式(i)〜(iv)のいずれかで表わされるアダマンチルエポキシ類の具体例としては、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン、1−(2,4−ビス(グリシジルオキシ)フェニル)アダマンタン、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(2、4−ビス(グリシジルオキシ)フェニル)アダマンタンなどが挙げられ、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン及び1−(2,4−ビス(グリシジルオキシ)フェニル)アダマンタンが好ましい。
【0034】
上記一般式(vi)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート類の具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸2−ヒドロキシルエチルなどが挙げられる。
【0035】
上記アダマンチルエポキシ類と水酸基含有(メタ)アクリレート類との反応は、例えば、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができ、具体的には、炭化水素類、トルエン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングチコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、スルホラン等が挙げられる。
【0036】
反応に用いる触媒としては、塩基もしくは酸のどちらかを選択できる。
塩基触媒の具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウムなどの無機塩基が挙げられる。アダマンチルエポキシ類に対する塩基触媒の使用割合は、塩基/エポキシ当量が0.5〜5程度となる量であり、好ましくは1〜3となる量である。
酸触媒の具体例としては、p−トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フッ化ホウ素等を使用することができる。アダマンチルエポキシ類に対する酸の使用割合は、酸/エポキシ当量が0.1〜5程度となる量であり、好ましくは0.5〜3となる量である。
また、必要に応じて重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジンなどが挙げられる。重合禁止剤の添加量は、水酸基含有(メタ)アクリレート類に対して、10〜10000質量ppmとなる量が好ましく、50〜5000質量ppmとなる量がより好ましい。
【0037】
反応温度は、0〜200℃程度、好ましくは80〜140℃である。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる。温度が高すぎる場合、副反応が起き着色が激しくなる。
圧力は、特に限定されるものではないが、絶対圧力で0.01〜10MPaが好ましく、常圧〜1MPaがより好ましい。圧力が高すぎる場合、安全上問題があり、特別な装置が必要となり、産業上有用でない。また、装置の簡便さからは常圧で行うことが最も好ましい。
反応時間は、1分〜48時間が好ましく、1時間〜24時間がより好ましい。
上記反応により得られたアダマンタン誘導体は、必要に応じて、精製を行うことができる。精製方法としては、蒸留、晶析、カラムクロマトグラフィーなど一般的な精製方法の中から、製造スケール、必要な純度を考慮して、選択することができる。
本発明のアダマンタン誘導体は、エポキシ系樹脂等と異なり、硬化剤が不要であり、また、光硬化及び熱硬化のいずれにも供することができる。
【0038】
[アダマンタン誘導体反応物]
本発明はさらに、上記アダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させてなるアダマンタン誘導体反応物をも提供する。
上記アダマンタン誘導体反応物の製造に用いられる多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(以下、多価カルボン酸類と略記することがある。)は、ジカルボン酸、テトラカルボン酸などの複数のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類であり、このような多価カルボン酸類の具体例としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸などのジカルボン酸及びそれらの無水物;トリメリット酸及びその無水物、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4-(1,2−ジカルボキシエチル)-1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸およびそれらの酸二無水物などが挙げられる。
【0039】
上記アダマンタン誘導体と、多価カルボン酸類とを反応させる際には、必要に応じて多価アルコールを用いることもできる。この反応において、アダマンタン誘導体、多価カルボン酸及び必要に応じて用いられる多価アルコールの添加順序は特に問わない。例えば、これらを同時に混合して反応させることもでき、また、アダマンタン誘導体と多価アルコールとを混合し、ついで、多価カルボン酸類を添加、混合して反応させることもできる。また、これらの反応生成物にさらに多価カルボン酸類を添加し、反応させてもよい。
多価カルボン酸類は、アダマンタン誘導体と多価アルコールの水酸基の合計1当量(モル)に対して、酸無水物基換算で、好ましくは0.3〜1当量、より好ましくは0.4〜1当量の割合で反応に供される。多価カルボン酸類が酸無水物基換算で、0.3当量以上であると、得られるアダマンタン誘導体反応物の分子量が高くなり、アダマンタン誘導体反応物を含む感放射線性樹脂組成物を用いて露光および現像を行った場合に、得られる被膜の耐熱性が十分となり、被膜が基板上に残存しない。上記多価カルボン酸類が酸無水物基換算で1当量以下であると、未反応の多価カルボン酸類が残存せず、得られるアダマンタン誘導体反応物の分子量が低くならないため、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物の現像性に優れる。
【0040】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記のアダマンタン誘導体及び/又は上記のアダマンタン誘導体反応物並びに硬化に必要な重合開始剤とを含有する。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。
上記熱重合開始剤の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイト、メチルイソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤が挙げられる。
上記光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、アシルホスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物などが挙げられる。
重合開始剤の添加量は、硬化性樹脂組成物の全量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、これらを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物は、耐熱性や機械物性等に悪影響を与えない限りにおいて他の重合性モノマーを含んでもよい。そのような重合性モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコール ジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオール ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジオール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジメタノール ジ(メタ)アクリレート、アダマンタン−1,3−ジエタノール ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール テトラアクリレート、ジペンタエリスリトール ヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらにバインダーポリマーを含んでいても良い。バインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン等の重合可能なスチレン誘導体、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、これらの構造異性体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、従来から用いられている、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レベリング剤、離型剤、染料、及び顔料など公知の各種添加剤を添加してもよい。
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類及びリン化合物を用いることが好ましい。
硬化促進剤の含有率は、上記アダマンタン誘導体100質量部に対して、0.01〜8.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。硬化促進剤の含有率を上記範囲とすることにより、充分な硬化促進効果を得られ、また、得られる硬化物に変色が見られない。
【0044】
劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物及びリン系化合物などの、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤を添加すると、本発明の硬化性樹脂組成物における耐熱性や透明性等の特性を保持することができる。
フェノール系化合物としては、イルガノクス1010(Irganox1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、イルガノクス1076(Irganox1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、イルガノクス1330(Irganox1330、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、イルガノクス3114(Irganox3114、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、イルガノクス3125(Irganox3125、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、イルガノクス3790(Irganox3790、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、BHT、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社製、登録商標)及びスミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社製、登録商標)などの市販品を挙げることができる。
【0045】
アミン系化合物としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、登録商標)、GENOX EP(クロンプトン社製、登録商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)など、さらにはヒンダードアミン系である旭電化社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst 社製のHostavin N30、Cytec社製の Cyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval 299及びClariant社製の SanduvorPR−31等を挙げることができる。
有機硫黄系化合物としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社製、登録商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社製、登録商標)、DLTOIB(吉富社製、登録商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社製、登録商標)、Seenox 412S(シプロ化成社製、登録商標)及びCyanox 1212(サイアナミド社、登録商標)などの市販品を挙げることができる。
【0046】
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類などの、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系などの、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系などの、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛及びアルミナなどの公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、樹脂成分が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などを使用することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、成型する金型への注入後に、あるいはコーティングにより所望の形状にした後に、加熱硬化あるいはUV照射等で光硬化することができる。
【0047】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記硬化性樹脂組成物を熱硬化または光硬化することにより得ることができる。
熱硬化温度は30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。30℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色などを生じることがなくなる。硬化時間は使用する硬化性樹脂組成物や重合開始剤などによって異なるが、0.5〜6時間程度が好ましい。
光硬化においては、例えば紫外線の照射により硬化物を得ることができる。紫外線の照射光量は硬化性樹脂組成物や重合開始剤の種類、硬化物の膜厚などの諸条件により異なるが、通常、10〜10,000mJ/cm2程度、好ましくは10〜7,000mJ/cm2である。紫外線照射後に後加熱を行ってもよく、70〜200℃程度で0.5〜12時間程度行うことが好ましい。
【0048】
[用途]
本発明の硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は、透明性、(長期)耐光性などの光学特性、耐熱性に優れており、良好な機械物性を有し、線膨張係数や硬化収縮率が低い。また、本発明の硬化性樹脂組成物が含有するアダマンタン誘導体はアダマンタン骨格を有し、耐熱性、接着性に優れており且つエッチング耐性も備えている。
このように本発明のアダマンタン誘導体、アダマンタン誘導体反応物及び硬化性樹脂組成物は、優れた特性を有するので、これらから選択される1種以上を、光回路(光導波路)、光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズなどに用いられる光学接着剤、シール剤、カラーレジスト材料、プリント回路基板形成用レジスト材料、ソルダーレジスト材料、半導体用レジスト材料、半導体用下地膜、光記録材料などとして好適に用いることができる。
【0049】
その他、本発明の硬化性樹脂組成物は、光半導体(LEDなど)、フラットパネルディスプレイ(有機EL素子など)、電子回路、光回路(光導波路)用の封止剤、光通信用レンズ、光学用フィルムなどの光学電子部材、半導体素子/集積回路(IC他),個別半導体(ダイオード、トランジスタ、サーミスタなど)、LED(LEDランプ、チップLED、受光素子、光半導体用レンズ),センサー(温度センサー、光センサー、磁気センサー)、受動部品(高周波デバイス、抵抗器、コンデンサなど)、機構部品(コネクター、スイッチ、リレーなど)、自動車部品(回路系、制御系、センサー類、ランプシールなど)、光学用フィルムの表面コーティング、半導体用封止剤、半導体用反射防止膜などの半導体形成材料としても有用である。
【0050】
光半導体(LEDなど)用封止剤としての構成は、砲弾型あるいはサーフェスマウント(SMT)型などの素子に適用でき、金属やポリアミド上に形成されたGaNなどの半導体と良好に密着し、さらにYAGなどの蛍光色素を分散しても使用できる。さらに、砲弾型LEDの表面コート剤、SMT型LEDのレンズなどにも使用可能である。
有機EL用に適用する際の構成は、一般的なガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子に適用可能である。有機EL素子の封止材として、金属缶や金属シートあるいはSiNなどのコーティングされた樹脂フィルムをEL素子にカバーする際の接着剤、あるいは本発明の硬化性樹脂組成物にガスバリアー性を付与するために無機フィラーなどを分散させることで、直接、EL素子を封止することも可能である。表示方式として、現在、主流のボトムエミッション型にも適用可能であるが、今後、光の取出し効率などの点で期待されるトップエミッション型に適用することで、本発明の硬化性樹脂組成物の透明性や耐熱性の効果を活かせる。
光回路に使用する際の構成は、シングルモードやマルチモード用の熱光学スイッチやアレイ導波路型格子、合分波器、波長可変フィルター、あるいは光ファイバーのコア材料やクラッド材料にも適用できる。また、導波路に光を集光するマイクロレンズアレイやMEMS型光スイッチのミラーにも適用できる。また、光電変換素子の色素バインダーなどにも適用可能である。
光学用フィルムとして用いる際の構成は、液晶用のフィルム基板、有機EL用フィルム基板などのディスプレイ用として、あるいは光拡散フィルム、反射防止フィルム、蛍光色素などを分散することによる色変換フィルムなどに適用可能である。
回路形成用基板に用いる場合であっても、該基板に対する密着性と剥離特性との双方を高水準で維持することができ、配線を形成する際に、配線の断線及びショートの発生を充分に防止することが可能となる。
【実施例】
【0051】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例1(1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼンの合成)
還流冷却管、攪拌機、温度計、エアー導入管を備え付けた100mLの4口フラスコに、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン(出光興産株式会社製、アダマンテートE−201)5g(19.23mmol)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.75g(28.84mmol)、トルエン50ml、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 2.93g(19.23mmol)、メトキノン10mgを仕込み130℃のオイルバスにつけ、4時間加熱還流させた。その後、反応液を室温にまで放冷し、溶媒を留去し粗生成物を得た。これにクロロホルム100mlを加え、分液ロートに移した。有機層を飽和食塩水100mlで4回洗浄した。有機層を分け、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し、下記式の褐色粘状のアダマンタン誘導体10.4gを得た(収率72%)。
【0052】
【化12】

【0053】
(スペクトルデータ)
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR(500MHz):1.65(m,12H)、1.84−1.86(o,12H)、1.96(c,6H)、2.2(n,6H)、3.5−3.7(g,4H)、3.77(f,4H)、3.9(h,2H)、4.20(i,4H)、4.29(e,4H)、5.5(a2,2H)、6.0(a1,2H)、7.10(j,1H),7.25(k,1H)、
13C−NMR(125MHz):18.3(c)、21.5(l)、29.1(n)、37.1(o)、41.3(m)、61.2(e)、63.8(f)、66.4(h)、69.1(g)、70(i)、98.9(j)、125.3(a)、125.9(k)、128.9(q)、136.1(b)、145(p)、167.7(d)
【0054】
実施例2(1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼンの合成)
還流冷却管、攪拌機、温度計、エアー導入管を備え付けた100mLの4口フラスコに、1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(グリシジルオキシ)ベンゼン(出光興産株式会社製、アダマンテートE−201)5g(19.23mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート3.75g(28.84mmol)、トルエン50ml、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7 2.93g(19.23mmol)、メトキノン10mgを仕込み130℃のオイルバスにつけ、4時間加熱還流させた。その後、反応液を室温にまで放冷し、溶媒を留去し粗生成物を得た。これにクロロホルム100mlを加え、分液ロートに移した。有機層を飽和食塩水100mlで4回洗浄した。有機層をわけ、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し、下記式の褐色粘状のアダマンタン誘導体7.6gを得た(収率55%)。
【0055】
【化13】

【0056】
(スペクトルデータ)
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl3)日本電子株式会社製 JNM−ECA500
1H−NMR(500MHz):1.65(m,12H)、1.84−1.86(o,12H)、1.96(c,6H)、2.2(n,6H)、3.5−3.7(g,4H)、3.77(f,4H)、3.9(h,2H)、4.20(i,4H)、4.29(e,4H)、5.7(a2,2H)、6.0(c,2H)、6.3(a1,2H)、7.10(j,1H),7.25(k,1H)、
13C−NMR(125MHz):18.3(c)、21.5(l)、29.1(n)、37.1(o)、41.3(m)、61.2(e)、63.8(f)、66.4(h)、69.1(g)、70(i)、98.9(j)、125.9(k)、128.9(q)、128(b)、131.1(a)、145(p)、167.7(d)
【0057】
実施例3(硬化物の製造)
実施例1で得られたアダマンタン誘導体5gに対して、重合開始剤であるベンゾイソブチルエーテル0.05g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、硬化性樹脂組成物を調製した。これを撥水処理を施したガラス基板へ塗布してから、70℃で乾燥を行い、高圧水銀灯を用いて紫外線を光量6000mJ/cm2で照射して硬化させた。得られた硬化物の物性を表1に示す。
【0058】
実施例4(硬化物の製造)
実施例2で得られたアダマンタン誘導体5gと重合開始剤であるベンゾイソブチルエーテル0.05g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、硬化性樹脂組成物を調製した。これを撥水処理を施したガラス基板へ塗布してから、70度で乾燥を行い、高圧水銀灯を用いて紫外線を6000mJ/cm2で照射して硬化させた。得られた硬化物の物性を表1に示す。
【0059】
比較例1
実施例2と同様に、下記式で表わされるアダマンチル基含有エポキシ変性アクリレート(1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゼン)5gに対し、開始剤としてベンゾイソブチルエーテル0.05g、MEK10gを加え、樹脂組成物を調製した。これを、撥水処理を施したガラス基板へ塗布してから、70℃で乾燥をおこない、高圧水銀灯を用いて紫外線を6000mJ/cm2で照射して硬化させた。得られた硬化物の物性を表1に示す。
【0060】
【化14】

【0061】
物性評価は、以下に示すようにして行った。
(1)ガラス転移温度(℃):Tg
硬化物試料をアルミ容器に5mg入れ、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、0℃から10℃/分にて昇温して、得られた熱流束曲線に観測される不連続点より求めた。
(2)硬化率の評価
実施例3、比較例1で形成した薄膜をフーリエ変換型赤外分光装置(パーキンエルマー社製、SP−1)にて、測定をおこない、下記式に基づいて硬化率を算出した。測定波長は、二重結合の面外変角である約810cm-1のピーク強度から算出した。
(硬化率%)=(1−(硬化物のピーク強度)/(反応前のサンプルのピーク強度))×100%
【0062】
【表1】

【0063】
実施例5(アダマンタン誘導体反応物の合成)
実施例1で得られた1,3−ビス(1−アダマンチル)−4,6−ビス[3−(2−メクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]ベンゼン20gにトルエン200gを加えて溶解した後、臭化テトラエチルアンモニウム0.2g、ヘキサヒドロ−4−メチルフタル酸無水物4.4gを添加し、100℃で8時間反応させた。反応は、薄膜クロマトグラフィー(TLC)で原料が消失したことにより、終点を確認した。
その後、反応液を室温にまで放冷し、これにトルエン200mlを加え、分液ロートに移した。有機層を飽和食塩水200mlで4回洗浄した後、有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を留去し、下記式の黄色粘状物のアダマンタン誘導体反応物28gを得た(収率96%)。
【0064】
【化15】

【0065】
得られたアダマンタン誘導体反応物について、次の項目の評価を行ったところ、酸価は200mgKOH/gであり、重量平均分子量(Mw)は1060であった。
(1)酸価
酸価(mgKOH/g)=(0.1N水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)×0.1N水酸化ナトリウム溶液のファクター×0.1×56.11)/サンプル採取量(g)
(2)GPC測定
下記の装置及び条件で、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)測定した。
GPC測定装置
検出器 :RI検出器
カラム :東ソー株式会社製、TSKgel G4000H,G200H
測定条件
溶媒 :テトラヒドロフラン
測定温度 :カラム温度40℃
流速 :1.0 ml/min
試料濃度 :2000ppm
検量線 :標準ポリスチレン換算
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のアダマンタン誘導体及びアダマンタン誘導体反応物は、アダマンタン骨格を有するアクリレート化合物であり、耐光性、耐熱性、機械特性、接着性、エッチング耐性等に優れることから、半導体用フォトレジスト材料、半導体用反射防止膜、光ファイバー、光導波路、各種レンズ類及びこれらを接着する光学接着剤、シール剤、カラーレジスト材料、回路基板形成用レジスト材料、ソルダーレジスト材料、半導体用レジスト材料、光記録材料などとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)〜(IV)のいずれかで表されるアダマンタン誘導体。
【化1】

(式中、R1〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、a〜eは、それぞれ独立に、0〜8の整数である。a〜eがそれぞれ2以上の場合、複数のR1〜R5は、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。X1〜X6は、それぞれ独立に、下記一般式(VI)で表わされるアクリレート系化合物残基であり、f〜kは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。f〜kがそれぞれ2以上の場合、複数のX1〜Xは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R6〜R9は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基又はトリフルオロメチル基である。mは、2〜6の整数である。mが2以上の場合、複数のR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
請求項1に記載のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させてなるアダマンタン誘導体反応物。
【請求項3】
請求項1に記載のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させることを特徴とする請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のアダマンタン誘導体及び/又は請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物並びに重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項6】
請求項1に記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる光学接着剤。
【請求項7】
請求項1記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるシール剤。
【請求項8】
請求項1記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるカラーレジスト材料。
【請求項9】
請求項1記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるプリント回路基板形成用レジスト材料。
【請求項10】
請求項1記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなるソルダーレジスト材料。
【請求項11】
請求項1記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる半導体用レジスト材料。
【請求項12】
請求項1、2記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる半導体用下地膜。
【請求項13】
請求項1、2記載のアダマンタン誘導体、請求項2記載のアダマンタン誘導体反応物及び請求項4記載の硬化性樹脂組成物から選択される1種以上を用いてなる光記録材料。
【請求項14】
下記一般式(i)〜(iv)のいずれかで表わされるアダマンチルエポキシ類と、下記一般式(vi)で表される水酸基含有(メタ)アクリレート類とを反応させることを特徴とする請求項1記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【化3】

(式中、R1〜R5は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基またはトリフルオロメチル基であり、a〜eは、それぞれ独立に、0〜8の整数である。a〜eがそれぞれ2以上の場合、複数のR1〜R5は、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。Yは下記式(a)で表わされるグリシジルオキシ基であり、f〜kは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。f〜kがそれぞれ2以上の場合、複数のYは、それぞれにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

【化5】

(式中、R6、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基、カルボキシル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜6の整数である。nが2以上の場合、複数のR8は互いに同一であっても異なっていてもよく、また、複数のR9は互いに同一であっても異なっていてもよい。)

【公開番号】特開2010−132576(P2010−132576A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307826(P2008−307826)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】