説明

アダマンタン誘導体及びそれを含む組成物

【課題】吸水性、光線透過率及び耐熱性に優れた硬化物を与えるアダマンタン誘導体及びそれを含む組成物、その組成物を用いた半導体用封止材等を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体。


(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数を示す。m,kが2以上のとき、複数の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体用封止材料等に用いることのできるアダマンタン誘導体、特にエポキシ基を有するアダマンタン誘導体及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子・光学材料分野において、液晶や有機EL等を用いたフラットパネルディスプレイの高精細化、高視野角化、高画質化、発光ダイオード(LED)等の光半導体を用いた光源の高輝度、短波長化、白色化、電子回路の高周波数化、光を用いた回路・通信等の光学・電子部品の高性能化等の改良検討が進められている。また、半導体の技術分野においては電子機器の小型軽量化、高性能化、多機能化が急速に進んでいる。また、より高速処理が可能となる光導波路等を用いた光回路も検討されている。これらに対応して、配線基板の高密度化、高配線化が求められている。
【0003】
これらの封止樹脂、接着用樹脂、フィルム、又はレンズ用の樹脂として、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂やエポキシアクリレート樹脂等が使用されている。しかしながらこれらの樹脂を用いると、電子回路では誘電率が高くなる、耐熱性が不足する等の問題があり、光導波路やLED封止では透明性が低下する、劣化により樹脂が黄変する等の問題がある。例えば、特許文献1では芳香環を水素化したビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたLED用封止材が開示されているが、耐熱性が充分とは言い難い。
【0004】
エポキシアクリレート樹脂は、各種コーティング剤、構造材料、配線基板のソルダーレジスト、液晶ディスプレイやイメージセンサーのカラーフィルター用保護膜、カラーレジスト等に用いられている。ソルダーレジストについては、例えば特許文献2にビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂が開示されている。また、カラーフィルター用感光性組成物として特許文献3にクレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂が開示されている。しかし、これらのエポキシアクリレート樹脂は、透明性、長期耐熱性、長期耐光性に限界があり、これらの要求特性を満たす他の材料が求められている。
【0005】
エポキシ樹脂においても、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂等の熱硬化タイプ樹脂では上記と同様の問題があり、これらの要求特性を満たす封止材が求められている(非特許文献1)。
【0006】
アダマンタンは、シクロヘキサン環がカゴ形に4個縮合した構造を有し、対称性が高く安定な化合物である。その誘導体は特異な機能を示し、医薬品原料や高機能性工業材料の原料等として有用である。アダマンタンは光学特性や耐熱性等を有することから、光ディスク基板、光ファイバー又はレンズ等に用いる試みがなされている(特許文献1、4)。また、アダマンタンエステル類は、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性等を有するため、フォトレジスト用樹脂原料として用いる試みがなされている(例えば、特許文献5)。
特許文献6,7は、耐熱透明性を有するアダマンタン誘導体を開示するが、さらに高い耐熱透明性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平8−286371号公報
【特許文献3】特開2002−341533号公報
【特許文献4】特開平9−302077号公報
【特許文献5】特開平4−39665号公報
【特許文献6】国際公開第2007/086324号パンフレット
【特許文献7】特開2008−133246号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】技術情報協会発行:月刊「マテリアルステージ」2003年6月号20〜24頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、吸水性、光線透過率及び耐熱性に優れた硬化物を与えるアダマンタン誘導体及びそれを含む組成物、その組成物を用いた半導体用封止材等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下のアダマンタン誘導体等が提供される。
1.一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体。
【化1】

(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数を示す。m,kが2以上のとき、複数の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
2.RがC2n+1(nは1〜10の整数)で表わされるアルキル、アダマンチル又はアルキルアダマンチルである1記載のアダマンタン誘導体。
3.一般式(II)で表されるアダマンタン誘導体。
【化2】

(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数を示す。m,kが2以上のとき、複数の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
4.RがC2n+1(nは1〜10の整数)で表わされるアルキル、アダマンチル又はアルキルアダマンチルである3記載のアダマンタン誘導体。
5.3又は4に記載のアダマンタン誘導体と一般式(IV)で表わされる化合物とを反応させる1又は2記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【化3】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
6.Xが塩素原子である5記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
7.アダマンタンヒドロキシベンゼン類と、アルコール類又はアルキルハロゲン類とを反応させる3又は4記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
8.前記アルコール類がt−ブタノール、1−アダマンタノールであり、前記アルキルハロゲン類が2−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ブロモアダマンタンである7記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
9.一般式(III)で表されるアダマンタン誘導体。
【化4】

(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。R、Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基又はハロゲン化メチル基を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数、sは0〜10の整数を示し、rは1又は0を表す。)
10.1記載のアダマンタン誘導体と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を反応させる9記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
11.9記載のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させて得られるアダマンタン誘導体。
12.1、9又は11記載のアダマンタン誘導体と、重合開始剤を含む組成物。
13.1、9又は11記載のアダマンタン誘導体、又は12記載の組成物から得られる硬化物。
14.13記載の硬化物を用いたディスプレイ用カラーレジスト及びブラックマトリックス材料。
15.13記載の硬化物を用いた接着剤、シール剤及び封止材料。
16.13記載の硬化物を用いたプリント回路基板形成用レジスト材料及びソルダーレジスト材料。
17.13記載の硬化物を用いたプリント回路基板用プリプレグ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸水性、光線透過率及び耐熱性に優れた硬化物を与えるアダマンタン誘導体及びそれを含む組成物、その組成物を用いた半導体用封止材等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1のアダマンタン誘導体は以下の一般式(I)で表わされる。
【化5】

式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数を示す。m,kが2以上のとき、複数の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0013】
2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキルは直鎖又は分岐であってもよく、好ましくはt−ブチル、イソプロピル等の分岐状アルキル、及びn−ブチルであり、より好ましくはt−ブチルである。
【0014】
環状化合物としては脂環化合物が好ましく、シクロヘキサン等の単環の脂環化合物、ノルボルネン、アダマンタン等の多環の脂環化合物が挙げられる。環状化合物の置換基として、例えば、炭素数1〜10のアルキル等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4である。置換又は無置換の環状化合物は、好ましくは、アダマンタン又はアルキルアダマンタンである。
【0015】
jは好ましくは1〜3であり、より好ましくは2である。kは好ましくは1,2であり、より好ましくは1である。mは好ましくは1〜3であり、より好ましくは2である。m,kが2以上のとき、好ましくは複数の基は同じである。
【0016】
本発明の第2のアダマンタン誘導体は一般式(II)で表される。
【化6】

式中、R、j、k、mは上記式(I)と同じである。
【0017】
式(II)で表わされるアダマンタン誘導体としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
【化7】

【0018】
本発明の第3のアダマンタン誘導体は一般式(III)で表される。
【化8】

式中、R、j、k、mは上記式(I)と同じである。
、Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基又はハロゲン化メチル基を表す。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基である。
は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基又はハロゲン化メチル基を示す。好ましくは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基である。
sは0〜10の整数を示し、rは0〜10を表す。sは好ましくは2〜6であり、rは好ましくは0〜5である。
【0019】
本発明の第4のアダマンタン誘導体は、上記式(III)で表される第3のアダマンタン誘導体と多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させて得られる誘導体である。
多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物の例は後述する。
【0020】
次に上記のアダマンタン誘導体の製造方法について説明する。
式(I)で表わされる第1のアダマンタン誘導体は、対応する式(II)で表わされる第2のアダマンタン誘導体と、一般式(IV)で表わされる化合物とを反応させて得られる。反応は好ましくは塩基性触媒存在下で行い、その際、4級アンモニウム塩を相関移動触媒として添加してもよい。
【化9】

式中、Xは、ハロゲン原子を示す。好ましくはXは塩素原子である。
【0021】
反応温度は通常0〜200℃、望ましくは20〜100℃である。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し、反応時間が長くなる恐れがある。温度が高すぎる場合、着色が激しくなる恐れがある。
反応時の圧力は通常絶対圧力で0.01〜10MPa、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が高すぎる場合、安全上問題から特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
反応時間は通常1分〜24時間、望ましくは1時間〜10時間である。
【0022】
塩基性触媒としては、例えばナトリウムアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ピリジン、N、N−ジメチルアニリン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、ナトリウム、カリウム、セシウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酸化銀、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられる。
相間移動触媒としては、例えばテトラメチルクロライド、テトラエチルブロマイド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0023】
通常無溶媒又はアダマンタン誘導体の溶解度が0.5%以上、望ましくは5%以上の溶媒を用いる。このとき、アダマンタン類が懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
必要に応じて、蒸留、晶析、カラム分離等により精製が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0024】
式(II)で表わされる第2のアダマンタン誘導体は、アダマンタンヒドロキシベンゼン類と、アルコール類又はアルキルハロゲン類とを反応させて得られる。
【0025】
原料であるアダマンタンヒドロキシベンゼンとしては、1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
これらのアルコール類又はハロゲン化物の使用量はアダマンタン誘導体に対して、通常2〜40倍モル程度、好ましくは2〜10倍モルである。使用量が2倍モル以上であると、反応時間が長くなりすぎず好ましい。
【0026】
アルコール類又はハロゲン化物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ノルボルネオール、1−メチルシクロヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、ブロモメタン、ブロモエタン、ブロモプロパン、2−ブロモプロパン、2−ブロモ−2−メチルプロパン、ブロモブタン、ブロモへキサン、ブロモヘプタン、ブロモオクタン、ブロモシクロヘキサン、1−ブロモアダマンタン、2−ブロモアダマンタン、クロロメタン、クロロエタン、クロロプロパン、2−クロロプロパン、2−クロロ−2−メチルプロパン、クロロブタン、クロロへキサン、クロロヘプタン、クロロオクタン、クロロシクロヘキサン、1−クロロアダマンタン、2−クロロアダマンタン等が挙げられる。好ましくは、t−ブタノール、2−ブロモ−2−メチルプロパン、1−アダマンタノール、1−ブロモアダマンタンが反応性の観点から好ましい。
【0027】
アルコール類又はハロゲン化物と、アダマンタンヒドロキシベンゼン類との反応は、通常酸性触媒の存在下で行う。酸性触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、チオ酢酸及びβ−メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。この酸性触媒の使用量は、原料であるアダマンタンヒドロキシベンゼン類に対して、通常0.01〜1倍モル程度、好ましくは0.05〜0.8倍モルである。酸性触媒の使用量が0.01倍モル以上であると、反応時間が長くなり過ぎず、適度のものとなる。酸性触媒の使用量が1倍モル以下であると、得られる効果と経済性のバランスが良好となる。
【0028】
溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、DMF、DMAc、DMSO、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。これらを単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
反応温度は通常0℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃である。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し反応時間が長くなる恐れがある。
反応時の圧力は通常絶対圧力で0.01〜10MPa。望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が高すぎる場合は、安全上問題があり特別な装置が必要となり産業上有用でない。
【0030】
式(III)で表わされる第3のアダマンタン誘導体は、対応する式(I)で表わされる第1のアダマンタン誘導体と、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られる。
(メタ)アクリル酸誘導体としては、アクリル酸2−ヒドロキシルエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシルエチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸2−ヒドロキシルエチル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシルエチルが好ましい。上記の(メタ)アクリレート化の反応には、上記化合物を混合物で使用してもよい。
【0031】
反応温度は通常50〜200℃であり、望ましくは70〜150℃である。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し反応時間が長くなる恐れがある。温度が高すぎる場合、副反応がおき、着色が激しくなる恐れがある。
【0032】
反応時の圧力は通常絶対圧力で0.01〜10MPaであり、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が高すぎる場合、安全上問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
【0033】
触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の有機アミン、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。触媒は(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体に対して通常0.01重量%〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%用いる。
【0034】
無溶媒又はアダマンタン含有エポキシ樹脂の溶解度が0.5%以上の溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK、DMF、NMP(N−メチルピロリドン)、DMAc、DMSO、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒の量はアダマンタン誘導体の濃度が通常0.5%以上、望ましくは5%以上となる量である。この時、アダマンタン含有エポキシ樹脂が懸濁状態でもよい。
【0035】
重合禁止剤として、ヒドロキノン、メトキノン、フェノチアジン、メトキシフェノチアジン等を添加してもよい。使用量は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体に対して通常10〜10000wtppm、好ましくは50〜5000wtppmである。
蒸留、晶析、カラム分離等による精製が可能であり、生成物の性状と不純物の種類により精製方法を選択できる。
【0036】
第4のアダマンタン誘導体は、式(III)で表わされる第3のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させて得られる。
多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物(以下、多価カルボン酸類と略記することがある。)は、ジカルボン酸、テトラカルボン酸等の複数のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類であり、このような多価カルボン酸類の具体例としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸等のジカルボン酸及びそれらの無水物、トリメリット酸及びその無水物、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4−(1,2−ジカルボキシエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸及びそれらの酸二無水物等が挙げられる。
【0037】
式(III)で表わされるアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸類とを反応させる際には、必要に応じて多価アルコールを用いることもできる。この反応において、アダマンタン誘導体、多価カルボン酸及び多価アルコールの添加順序は特に問わない。例えば、これらを同時に混合して反応させることもでき、また、アダマンタン誘導体と多価アルコールとを混合し、次に多価カルボン酸類を添加、混合して反応させることもできる。また、これらの反応生成物にさらに多価カルボン酸類を添加し、反応させてもよい。
【0038】
多価カルボン酸類は、式(III)で表わされるアダマンタン誘導体と多価アルコールの水酸基の合計1当量(モル)に対して、酸無水物基換算で、好ましくは0.3〜1当量、より好ましくは0.4〜1当量の割合で反応に用いる。多価カルボン酸類が酸無水物基換算で、0.3当量以上であると、得られるアダマンタン誘導体反応物の分子量が高くなり、アダマンタン誘導体反応物を含む感放射線性樹脂組成物を用いて露光及び現像を行った場合に、得られる被膜の耐熱性が十分となり、被膜が基板上に残存しない。上記多価カルボン酸類が酸無水物基換算で1当量以下であると、未反応の多価カルボン酸類が残存せず、得られるアダマンタン誘導体反応物の分子量が低くならないため、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物の現像性に優れる。
【0039】
反応温度は通常50〜200℃であり、望ましくは80〜150℃である。温度が低すぎる場合、反応速度が低下し反応時間が長くなる恐れがある。温度が高すぎる場合、副反応がおき、着色が激しくなる恐れがある。
反応時の圧力は通常絶対圧力で0.01〜10MPaであり、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が高すぎる場合、安全上問題があり特別な装置が必要となり、産業上有用でない。
【0040】
上記式(I)又は(III)で表わされる第1又は第3のアダマンタン誘導体、式(III)のアダマンタン誘導体と多価カルボン酸類から得られる第4のアダマンタン誘導体を、硬化させて硬化物を得ることができる。このとき、第1、第3又は第4の誘導体と、重合開始剤を含む組成物を形成し、これを硬化させることが好ましい。重合開始剤は、熱により硬化させる場合には熱重合開始剤、光によって硬化させる場合には光重合開始剤を用いる。
【0041】
熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイト、メチルイソブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキサイド類、アシルホスフィン酸エステル類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。重合開始剤の添加量は全組成物に対して0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、これらを単独で使用してもよく、併用してもよい。
【0042】
上記の組成物は、さらに機械強度や溶解性、作業性等の最適化のために(硬化前)エポキシ樹脂を含むことができる。
エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールGジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
また、以下に示すエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレートを含んでもよい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールGジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0044】
上記エポキシ樹脂は、常温で固形でも液状でもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量は、100〜2000のものが好ましい。エポキシ当量が100より小さい場合には、組成物の硬化物が脆くなる場合がある。また、エポキシ当量が2000を超える場合には、硬化物のガラス転移温度(Tg)が低くなる場合がある。
【0045】
上記の組成物は、さらに硬化剤を含むことができる。
硬化剤としては、目的に応じて酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でもヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。また、酸無水物を用いる場合、その硬化を促進する目的で硬化促進剤を配合してもよい。この硬化促進剤の例としては、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物類又はこれらの塩、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等の金属石鹸類が挙げられる。
【0047】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノール/ノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。
【0048】
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドや、m‐フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。これらの硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0049】
これらの硬化剤の中では、硬化物の透明性等の点から、光半導体用封止材には酸無水物系硬化剤が好ましく、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸がより好ましい。
【0050】
組成物はアダマンタン誘導体の他、透明性や耐熱性等に悪影響を与えない限りにおいて他の重合性モノマーを含んでもよい。そのような重合性不飽和基を有する化合物として例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0051】
また、組成物に、必要に応じて従来から用いられている添加剤を適宜配合してもよい。添加材としては、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レべリング剤、離型剤、染料、顔料等が挙げられる。
【0052】
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、トリエチレンジアミン、トリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類、リン化合物を用いることが好ましい。
硬化促進剤の含有率は、組成物に対して、0.01〜8.0質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0質量%である。硬化促進剤の含有率を上記範囲とすることにより、充分な硬化促進効果を得られ、また、得られる硬化物に変色が見られない。
【0053】
組成物から得られる硬化物の耐熱性や透明性を保持するために、組成物に劣化防止剤を添加してもよい。劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、リン系化合物等の、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。
【0054】
フェノール系化合物としては、イルガノクス1010(Irganox1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス1076(Irganox1076、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス1330(Irganox1330、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3114(Irganox3114、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3125(Irganox3125、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、イルガノクス3790(Irganox3790、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、BHT、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社、商標)、スミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0055】
アミン系化合物としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社、商標)、GENOX EP(クロンプトン社、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)等、さらにはヒンダードアミン系である旭電化社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst社製のHostavin N30、Cytec社製のCyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval 299、Clariant社製のSanduvorPR−31等を挙げることができる。
【0056】
有機硫黄系化合物としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、DLTOIB(吉富社、商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社、商標)、Seenox 412S(シプロ化成社、商標)、Cyanox 1212(サイアナミド社、商標)等の市販品を挙げることができる。
【0057】
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等の従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えばシリコーン系等の従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えばガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ等の公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、オキセタン樹脂が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレン等の芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
【0058】
このような組成物を硬化させるとき、例えば、成型する金型へ注入、又はコーティングにより所望の形状にした後に、加熱硬化あるいはUV照射等で光硬化する。
硬化温度としては通常50〜200℃、好ましくは100〜180℃である。50℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色等を生じることが無くなる。硬化時間は硬化剤、促進剤や開始剤によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
光硬化の場合、例えば紫外線の照射により硬化物を得ることができる。紫外線の照射強度は、モノマーや重合開始剤の種類、硬化物の膜厚等から決められるので任意であるが、通常50〜5000mJ/cm程度、好ましくは100〜4000mJ/cmである。紫外線照射の後に加熱を行ってもよく、この場合70〜200℃で0.5〜12時間加熱を行うことが好ましい。成形方法は限定されるものではなく、射出成形、ブロー成形、プレス成形等が挙げられる。
【0059】
本発明の硬化物は耐熱性や透明性に優れる。また、溶解温度が低いので加工性に優れ、ガラス転移温度が高く、優れた耐久性(耐熱性及び耐光性)を有し、誘電率等電気特性にも優れる。
硬化物の特性と構造については以下のように考える。硬化物を構成するアダマンタン誘導体において、アルキル又は環状化合物のラジカルが発生しないようにベンゼン環に結合していることにより、硬化物の透過率が改良され、また、黄変が抑制される。アダマンタン等の脂環化合物が硬化物の耐熱性、屈折率に、多環式化合物が曲げ強度に寄与している。また、Rをアダマンチル又は分岐状アルキルとすることで、優れた硬度が得られる。
【0060】
本発明の硬化物は、光半導体(LED等)、フラットパネルディスプレイ(有機EL素子等)、電子回路、光回路(光導波路)用の樹脂(封止材、接着剤)、光通信用レンズ及び光学用フィルム等の光学電子部材に好適に用いることができる。
【0061】
また、硬化物は、半導体素子/集積回路(IC他)、個別半導体(ダイオード、トランジスタ、サーミスタ等)として、LED(LEDランプ、チップLED、受光素子、光半導体用レンズ)、センサー(温度センサー、光センサー、磁気センサー)、受動部品(高周波デバイス、抵抗器、コンデンサ等)、機構部品(コネクター、スイッチ、リレー等)、自動車部品(回路系、制御系、センサー類、ランプシール等)、接着剤(光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズ)等に用いられ、表面コーティング用として光学用フィルム等にも用いられる。
【0062】
さらに、硬化物はディスプレイ用カラーレジスト及びブラックマトリックス材料、接着剤、シール剤及び封止材料、プリント回路基板形成用レジスト材料及びソルダーレジスト材料、プリント回路基板用プリプレグ等に好適に用いることができる。
また、光半導体用封止材、電子回路用封止材、光導波路、光通信用レンズ、有機EL素子用封止材及び光学フィルムにも好適に利用できる。
【0063】
光半導体(LED等)用封止材としての構成は、砲弾型あるいはサーフェスマウント(SMT)型等に素子に適用でき、金属やポリアミド上に形成されたGaN等の半導体と良好に密着し、さらにYAG等の蛍光色素を分散しても使用できる。さらに、砲弾型LEDの表面コート剤、SMT型LEDのレンズ等にも使用可能である。
【0064】
有機EL用に適用する際の構成は、一般的なガラスや透明樹脂等の透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子に適用可能である。有機EL素子の封止材として、金属缶や金属シートあるいはSiN等のコーティングされた樹脂フィルムをEL素子にカバーする際の接着剤、あるいは本発明のオキセタン樹脂にガスバリアー性を付与するために無機フィラー等を分散することで、直接、EL素子を封止することも可能である。表示方式として、現在、主流のボトムエミッション型にも適用可能であるが、今後、光の取出し効率等の点で期待されるトップエミッション型に適用することで、本発明のエポキシ組成物の透明性や耐熱性の効果を活かせる。
【0065】
光回路に使用する際の構成は、シングルモードやマルチモード用の熱光学スイッチやアレイ導波路型格子、合分波器、波長可変フィルター、あるいは光ファイバーのコア材料やクラッド材料にも適用できる。また、導波路に光を集光するマイクロレンズアレイやMEMS型光スイッチのミラーにも適用できる。また、光電変換素子の色素バインダー等にも適用可能である。
【0066】
光学用フィルムとして用いる際の構成は、液晶用のフィルム基板、有機EL用フィルム基板等のディスプレイ用として、あるいは光拡散フィルム、反射防止フィルム、蛍光色素等を分散することによる色変換フィルム等に適用可能である。
【実施例】
【0067】
製造例1
原料である1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)アダマンタンを、国際公開第2007/086324号パンフレットに従い以下のように合成した。
【0068】
還流冷却管、攪拌機、温度計、窒素導入管を備え付けた300mL4つ口フラスコに1,3−アダマンタンジオール16.0g(0.10mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物9.0g(0.05mol)、1,2−ジメトキシエタン20mlを加え窒素置換した。そこにレゾルシノール83.8g(0.76mol)を加えた。これを90℃のオイルバスに入れ、6時間加熱攪拌した。反応液を冷却後、純水200mlを加え30分攪拌した後、固形分をろ過して集めた。これを減圧乾燥させた後、メタノール/水混合溶液で再結晶させた。結晶をトルエンで洗浄しながらろ過して集め、恒量になるまで減圧乾燥を行い、目的物を得た(収率85%)。
【0069】
実施例1
還流冷却管、攪拌機、温度計及び窒素導入管を備え付けた500mLの4つ口フラスコに1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)アダマンタン45g(0.128mol)、p−トルエンスルホン酸一水和物6.1g(0.032mol)及びヘプタン500mlを仕込み、窒素置換した。そこにt−ブタノール94.6g(1.28mol)を加えた。その後、83℃まで昇温し、24時間加熱攪拌した。反応液を冷却後、固形分をろ過して集めた。これをにメタノール300mlに溶解させ、水を入れて再結晶させることで、目的物を50.8g得た(収率86%、LC(液体クロマトグラフィ)純度99%、融点153℃)。尚、LC純度は、λ=280nmの光線により測定した。
核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)により同定した。スペクトルデータを以下に示す。
【0070】
【化10】

【0071】
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)日本電子株式会社製JNM−ECA500
H−NMR(500MHz):1.36(c,18H)、1.77−2.4(i、j、k、m、14H)、6.1(a、2H)、7.12(b、2H)
13C−NMR(125MHz):29.8(j)、30.1(l)、31.9(c)、34.3(h)、36.6(i)、40.6(k)、44.0(m)、105.9(a)、125.6(g)、127.6(b)、127.7(f)、152.5(d)、152.7(e)
【0072】
実施例2
還流冷却管、攪拌機、温度計及び窒素導入管を備え付けた500mLの4つ口フラスコに、MIBK(メチルイソブチルケトン)90ml、DMSO(ジメチルスルホキシド)180ml及びエピクロロヒドリン179.3g(92.5mol)を仕込み、30分間窒素置換した。これに実施例1で合成した化合物30g(464.42mol)を加え、30分窒素置換した後、攪拌しながら45℃に加熱した。この溶液に0.5時間かけて水酸化ナトリウム12.9g(0.32mol)を加え、1.5時間攪拌した。
反応液を室温まで冷却し、トルエン360mlを加え、360mlの水で水洗した後、0.1mol/LのHCl水溶液400mlを加えて分液した。さらに水相が中性になるまで水洗した後、有機層を濃縮し、アセトン、メタノール混合溶媒で再結晶をおこない白色固体の目的物を18.5g得た(収率42%、エポキシ当量188、融点154℃)。
核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)により同定した。スペクトルデータを以下に示す。
【0073】
【化11】

【0074】
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)日本電子株式会社製JNM−ECA500
H−NMR(500MHz):1.38(c,18H)、1.57−2.37(i、j、k、m、14H)、2.78−2.93(o)、3.4(p)、4.23−4.26(n)、6.5(a、2H)、7.22(b、2H)
13C−NMR(125MHz):29.8(j)、30.2(c、l)、36.4(h)、37.8(i)、40.5(k)、44.8(m)、44.9(p)、50.5(o)、69.1(n)、99.8(a)、125.1(b、g)、130(f)、155.7(d)、156.3(e)
【0075】
実施例3
還流冷却管、攪拌機、温度計及び窒素導入管を備え付けた500mLの4つ口フラスコに1,3−ビス(2’,4’−ジヒドロキシフェニル)アダマンタン60g(170mmol)、1−アダマンタノール57g(374mmol)、p−トルエンスルホン酸−水和物1.62g(8.51mmol)、n−ヘプタン600mlを仕込み、窒素雰囲気下にて95℃に加熱した。その後、3時間加熱攪拌した。反応液を冷却後、固形分をろ過して集めることで、目的物を102g得た(回収率97%、LC(液体クロマトグラフィ)純度96%、融点194℃)。尚、LC純度は、λ=280nmの光線により測定した。
核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)により同定した。スペクトルデータを以下に示す。
【0076】
【化12】

【0077】
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)日本電子株式会社製JNM−ECA500
H−NMR(500MHz):1.71−2.4(c、i、j、k、m、q、r、44H)、6.1(a、2H)、7.1(b、2H)
13C−NMR(125MHz):29.2(j)、29.9(q)、30.2(l)、36.4(h)、37.2(r)、37.9(i)、40.5(k、c)、50.5(m)、100.1(a)、125.0(b)、135.7(f、g)、156.0(e、d)
【0078】
実施例4
還流冷却器、温度指示計、三方コックを取付けた1000mlの4つ口フラスコに、実施例3で合成した化合物[10g、16.1mmol]、エピクロロヒドリン37.9ml(0.483mol)、ジメチルスルホキシド60ml、メチルイソブチルケトン30mlを仕込み、攪拌しながら45℃になるまで加熱する。所定温度になってから、水酸化ナトリウムを1.6gずつ30分ごとに4回に分けて添加した。3時間反応させ、原料の消失をLCにて確認し、反応液を冷却した。反応液にトルエン120ml、水120mlを加え、トルエン相を抽出し、120mlの水で水相が中性になるまで洗浄し、ろ液を濃縮し、粗体を14.9g得た。アセトン・メタノール溶媒で粗体の再結晶を行い、析出物をろ過し、乾燥した(収量9.72g、収率71%、エポキシ当量232、融点205℃)。
核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)により同定した。スペクトルデータを以下に示す。
【0079】
【化13】

【0080】
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)日本電子株式会社製JNM−ECA500
H−NMR(500MHz):1.38(c,18H)、1.57−2.38(i、j、k、m、44H)、2.81−2.93(o)、3.4(p)、4.00−4.23(n)、6.5(a、2H)、7.15(b、2H)
13C−NMR(125MHz):29.2(j)、29.9(q)、30.2(l)、36.4(h)、37.2(r)、37.9(i)、40.5(k、c)、44.8(p)、50.5(o、m)、69.1(n)、100.1(a)、125.0(b)、135.7(f、g)、156.0(e、d)
【0081】
実施例5
実施例2で得られた化合物20g、酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、MH700)19.4g、硬化促進剤として1,8−ジアザビシクルロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンのオクチル酸塩(サンアプロ社製、SA102)0.4gを室温で混合し、脱泡後、110℃で2時間、その後150℃で3時間加熱し、硬化樹脂(膜厚3mmシート)を製造した。得られた樹脂硬化物の物性を測定した。評価結果を表1に示す。
【0082】
実施例6
実施例4で得られた化合物を用い、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化(株)製、MH700)の使用量を15.7gとした他は実施例5と同様にして硬化樹脂を製造し、物性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0083】
比較例1
実施例4で得られた化合物の代わりに1,3−ビス(2,4−ジグリシジルオキシフェニル)アダマンタン(エポキシ当量157)20gを用い、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の使用量を21.1gとした他は実施例6と同様に硬化樹脂を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0084】
比較例2
還流冷却管、攪拌機、温度計及び窒素導入管を備え付けた500mLの4つ口フラスコに、MIBK57ml、DMSO157ml及びエピクロロヒドリン98g(1.057mol)を仕込み、30分間窒素置換した。これに4,6−ビス(1−アダマンチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン52.01g(0.137mol)を加え、30分窒素置換した後、攪拌しながら45℃に加熱した。この溶液に0.5時間かけて水酸化ナトリウム11.6g(0.290mol)を加え、1.5時間攪拌した。さらに水酸化ナトリウム2.9g(0.0725mol)を加え、さらに1時間攪拌した。
反応液を室温まで冷却し、クロロホルム300mlを加え、500mlの水で水洗した後、の0.1mol/LのHCl水溶液500mlを加えて分液した。さらに水相が中性になるまで水洗した後、有機層を濃縮し、恒量になるまで100℃の減圧乾燥機で乾燥させ、淡黄色固体の4,6−ビス(1−アダマンチル)−1,3−ジグリシジルオキシベンゼンを得た(収率92%、LC純度99.20%、エポキシ当量267、融点193℃)。
この4,6−ビス(1−アダマンチル)−1,3−ジグリシジルオキシベンゼンを、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR、13C−NMR)により同定した。スペクトルデータを以下に示す。
【0085】
核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)日本電子株式会社製JNM−ECA500
H−NMR(500MHz):1.77(s,12H),2.08(s,20H),2.80(dd,2H),2.91(dd,1H),3.39(m,2H),3.98(dd,2H),4.24(dd,2H),6.47(s,1H),7.08(s,1H)
13C−NMR(125MHz):29.2,36.7,37.2,41.1,44.7,50.5,69.0,99.6,125.0,130.5,155.9
【0086】
評価試験は、次のように行った。
(1)ガラス転移温度(℃):Tg
硬化物試料をアルミ容器に5mg入れ、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7)を用い、0℃から10℃/分にて昇温して、得られた熱流束曲線に観測される不連続点より求めた。
(2)光線透過率試験
150℃の恒温槽に100時間放置した後の硬化物と恒温槽に放置する前の硬化物について、サンシャインテスターを用いて、400nmの光線透過率の変化を測定し、恒温槽に放置した後の硬化物の光線透過率の低下率が15%未満の場合を○、15%以上の場合を×とした。
(3)吸水率試験
3時間、100℃の沸騰水に硬化物を浸し、浸す前後の硬化物重量から吸水率を算出した。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のアダマンタン誘導体から得られる硬化物は透明性、耐光性等の光学特性、長期耐熱性、誘電率等の電気特性、硬度(曲げ強度)等の機械物性に優れ、配線基板のソルダーレジスト、液晶ディスプレイやイメージセンサーのカラーフィルター用保護膜、カラーフィルター用着色組成物、電子回路用封止材(光半導体用封止材及び有機EL素子用封止材等)、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルム等)及びこれらに用いる接着剤等として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体。
【化14】

(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数を示す。m,kが2以上のとき、複数の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【請求項2】
がC2n+1(nは1〜10の整数)で表わされるアルキル、アダマンチル又はアルキルアダマンチルである請求項1記載のアダマンタン誘導体。
【請求項3】
一般式(II)で表されるアダマンタン誘導体。
【化15】

(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数を示す。m,kが2以上のとき、複数の基はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【請求項4】
がC2n+1(nは1〜10の整数)で表わされるアルキル、アダマンチル又はアルキルアダマンチルである請求項3記載のアダマンタン誘導体。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のアダマンタン誘導体と一般式(IV)で表わされる化合物とを反応させる請求項1又は2記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【化16】

(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項6】
Xが塩素原子である請求項5記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項7】
アダマンタンヒドロキシベンゼン類と、アルコール類又はアルキルハロゲン類とを反応させる請求項3又は4記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記アルコール類がt−ブタノール、1−アダマンタノールであり、前記アルキルハロゲン類が2−ブロモ−2−メチルプロパン、1−ブロモアダマンタンである請求項7記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項9】
一般式(III)で表されるアダマンタン誘導体。
【化17】

(式中、RはC2n+1(nは1〜20の整数)で表わされるアルキル又は置換又は無置換の環状化合物を示す。R、Rは、それぞれ水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基又はハロゲン化メチル基を示す。jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、mは2〜9の整数、sは0〜10の整数を示し、rは1又は0を表す。)
【請求項10】
請求項1記載のアダマンタン誘導体と(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸誘導体を反応させる請求項9記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載のアダマンタン誘導体と、多価カルボン酸及び/又は多価カルボン酸無水物とを反応させて得られるアダマンタン誘導体。
【請求項12】
請求項1、9又は11記載のアダマンタン誘導体と、重合開始剤を含む組成物。
【請求項13】
請求項1、9又は11記載のアダマンタン誘導体、又は請求項12記載の組成物から得られる硬化物。
【請求項14】
請求項13記載の硬化物を用いたディスプレイ用カラーレジスト及びブラックマトリックス材料。
【請求項15】
請求項13記載の硬化物を用いた接着剤、シール剤及び封止材料。
【請求項16】
請求項13記載の硬化物を用いたプリント回路基板形成用レジスト材料及びソルダーレジスト材料。
【請求項17】
請求項13記載の硬化物を用いたプリント回路基板用プリプレグ。

【公開番号】特開2011−57616(P2011−57616A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209114(P2009−209114)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】