説明

アダマンチルウレア誘導体

【課題】糖尿病などの疾患の予防または/および治療薬として有用な11βHSD1阻害剤を提供する。
【解決手段】式(1)


(式中、環Bは、下記式で表される基等を表し、


nは、1または2を表す。)で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なアダマンチルウレア誘導体に関する。より詳しくは、グルココルチコイドが関与する病態の治療剤または予防剤、もしくは11βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼタイプ1酵素(以下に11βHSD1と記す)阻害剤または11βHSD1調整剤として有効なアダマンチルウレア誘導体に関する。更に11βHSD1阻害剤または11βHSD1調整剤として有効なアダマンチルウレア誘導体を有効成分とする糖尿病治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイドは末梢での糖代謝やアミノ酸代謝を調節する。ヒトにおいて、グルココルチコイドは副腎で産生されるほかに、脂肪や肝臓などの末梢組織でも代謝が行われる。11βHSD1は不活性型コルチゾンを活性型コルチゾールに変換する酵素であり、主に脂肪や肝臓に発現することから、11βHSD1は脂肪や肝臓でのグルココルチコイド活性化に関与すると考えられている。コルチゾールは脂肪細胞への脂肪蓄積促進作用や肝臓での糖新生促進作用を有することから、11βHSD1は末梢での糖・脂質代謝を調節することによって、全身の恒常性維持に寄与しているものと考えられる。その一方で、ヒトにおいてはインスリン抵抗性患者で脂肪組織11βHSD1が有意に活性上昇しており、11βHSD1活性は皮下脂肪より内臓脂肪で顕著に高い。また、11βHSD1遺伝子欠損マウスは高脂肪食負荷時に内臓脂肪蓄積、糖・脂質代謝異常の発症が抑制され、さらに脂肪細胞特異的11βHSD1過剰発現マウスは顕著な内臓脂肪型肥満、糖・脂質代謝異常を呈する。これらの知見から、ヒトおよびマウスにおいて、11βHSD1の過剰な活性化が内臓脂肪蓄積・メタボリックシンドロームの発症と深く関連していることが示唆されている。すなわち、本酵素の活性を阻害することにより、肝臓における糖新生の抑制、脂肪細胞での脂肪蓄積の抑制、さらには全身の糖・脂質代謝の改善という効果が期待される。
糖代謝の改善については、膵臓β細胞の11βHSD1活性がインスリン分泌の低下に寄与する可能性や、ヒト筋肉細胞において11βHSD1活性が筋肉細胞の糖取込み低下に関与している可能性が報告されていることから、11βHSD1阻害剤は直接的に高血糖を是正できる可能性がある。
他に11βHSD1は、神経細胞、免疫細胞で機能することなども示されており、11βHSD1阻害剤はこれらの異常に起因する疾患の治療効果も期待される。
【0003】
特許文献1には、スピロ環化合物が開示されている。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第444945号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、II型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、低HDL症、高LDL症、脂質代謝異常症、高脂血症、高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、アテローム性動脈硬化、肥満、認知障害、緑内障、網膜症、痴呆症、アルツハイマー症、骨粗しょう症、免疫障害、シンドロームX、鬱、心血管疾患、神経変性疾患などの疾患の予防または/および治療できる治療薬として、11βHSD1阻害作用を有し医薬品として満足できる化合物の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは上記課題を達成するために鋭意検討した結果、置換基を有するアダマンチル基を有するアミンおよびスピロ構造を有するアミンからなるウレア誘導体またはその薬学上許容される塩(以下必要に応じ本発明化合物と略称することがある)が優れた11βHSD1阻害作用を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は:
〔1〕 式(1):
【0008】
【化1】

[式中、aは0または1を表す。
Aは、CONR12、CONR12で置換されたアルキル基、CONR12で置換されたアルコキシ基、SO2NR12、またはSO2NR12で置換されたアルキル基を表す。
1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表すか、または、R1およびR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、置換されてもよい含窒素飽和へテロ環基を表す。
環Bは、下記式(G2):
【0009】
【化2】

(式中、(G2)で表される基は、さらに置換されていてもよい。)
の中から選ばれる基を表す。
1は、酸素原子、硫黄原子、または−NR3で表される基を表す。
2は、酸素原子、−S(O)p−、または−NR3で表される基を表す。
3は、−(CH2m−、酸素原子、または−NR3で表される基を表す。
mは、0、1または2を表す。
nは、1または2を表す。
pは、0、1または2を表す。
3は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいシクロアルキルアルキル基、置換されてもよいヘテロシクロアルキルアルキル基、または置換されてもよいアリールアルキル基、または置換されてもよいヘテロアリールアルキル基を表す。]
で表される化合物、またはその薬学上許容される塩、
〔2〕
aが0であり、Aがカルバモイル基である、〔1〕記載の化合物またはその薬学上許容される塩、
〔3〕
アダマンチル基が結合する窒素原子と基Aとが、Eの立体配置を有する、〔1〕〜〔2〕のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩、
〔4〕
式(2):
【0010】
【化3】

[式中、aは0または1を表す。
1は、水酸基、CONR12、CONR12で置換されたアルキル基、CONR12で置換されたアルコキシ基、SO2NR12、またはSO2NR12で置換されたアルキル基を表す。
1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換されてもよいアルキル基を表すか、または、R1およびR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、置換されてもよい含窒素飽和へテロ環基を表す。
環Bは、下記式(G2):
【0011】
【化4】

(式中、(G2)で表される基は、さらに置換されていてもよい。)
の中から選ばれる基を表す。
1は、酸素原子、硫黄原子、または−NR3で表される基を表す。
2は、酸素原子、−S(O)p−、または−NR3で表される基を表す。
3は、−(CH2m−、酸素原子、または−NR3で表される基を表す。
mは、0、1または2を表す。
nは、1または2を表す。
pは、0、1または2を表す。
3は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいシクロアルキルアルキル基、置換されてもよいヘテロシクロアルキルアルキル基、または置換されてもよいアリールアルキル基、置換されてもよいヘテロアリールアルキル基を表す。]
で表される化合物、またはその薬学上許容される塩を含有するII 型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、脂質代謝異常症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、肥満、認知障害、痴呆症、アルツハイマー症、シンドロームX、鬱、心血管疾患、またはアテローム性動脈硬化の治療剤、
〔5〕
aが0であり、A1が、水酸基またはカルバモイル基である、〔4〕記載の化合物またはその薬学上許容される塩を含有するII 型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、脂質代謝異常症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、肥満、認知障害、痴呆症、アルツハイマー症、シンドロームX、鬱、心血管疾患、またはアテローム性動脈硬化の治療剤、
〔6〕
アダマンチル基が結合する窒素原子と基A1とが、Eの立体配置を有する、〔4〕〜〔5〕のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を含有するII 型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、脂質代謝異常症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、肥満、認知障害、痴呆症、アルツハイマー症、シンドロームX、鬱、心血管疾患、またはアテローム性動脈硬化の治療剤、
〔7〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する糖尿病、インスリン抵抗性、またはII 型糖尿病の治療剤、
〔8〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する動脈硬化またはアテローム性動脈硬化の治療剤、
〔9〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有するシンドロームXの治療剤、
〔10〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する肥満の治療剤、
〔11〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する認知障害、痴呆症、アルツハイマー症または鬱の治療剤、
〔12〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する脂質代謝異常症の治療剤、または
〔13〕
前述のいずれかに記載の化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する高血圧の治療剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明化合物は、II型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、低HDL症、高LDL症、脂質代謝異常症、高脂血症、高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、アテローム性動脈硬化、肥満、認知障害、緑内障、網膜症、痴呆症、アルツハイマー症、骨粗しょう症、免疫障害、シンドロームX、鬱、心血管疾患、神経変性疾患などの疾患の予防または/および治療薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、「置換されてもよい」もしくは「置換された」で定義される基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数である。また、特に指示した場合を除き、各々の基の説明はその基が他の基の一部分または置換基である場合にも該当する。
【0014】
「ハロゲン原子」としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子等が挙げられ、好ましくはフッ素原子または塩素原子が挙げられる。
「アルキル基」としては、例えば炭素数1から5の直鎖もしくは分枝のアルキル基等が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、プロピル、1−メチルエチル、ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、2,2−ジメチルプロピルなどが挙げられる。
アルキルスルホニル基、アリールアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロシクロアルキル基等のアルキル部分としては、上述のアルキル基と同様のものが挙げられる。
「アルコキシ基」としては、例えば、炭素数1から5のアルコキシ基等が挙げられ、具体的には例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルプロポキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ペンチルオキシ、2,2−ジメチルプロポキシ等が挙げられる。
アルコキシアルコキシ基等のアルコキシ部分としては、上述のアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
「ハロアルコキシ基」としては、例えば、ハロゲン原子で置換されたアルコキシ基等が挙げられる。
【0015】
「シクロアルキル基」としては、例えば炭素数3から8のシクロアルキル基等が挙げられ、具体的には例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、またはシクロオクチル等が挙げられる。
シクロアルキル基は、任意の置換可能部位に2重結合を有してもよい。
シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキルスルホニル基等のシクロアルキル部分としては、上述のシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
「シクロアルキル基」には、アリールまたはヘテロアリールと縮合したものも含まれ、例えば、下記式(B1):
【0016】
【化5】

の非芳香環部分の水素原子が結合手に変わったもの等が挙げられる。
【0017】
「アリール基」としては、例えば、炭素数6から10のアリール基等が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル等が挙げられる。
好ましいアリール基としては、例えばフェニルなどが挙げられる。
【0018】
「ヘテロアリール基」としては、例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1個以上(例えば1乃至4個)を含む5乃至10員、単環または多環式の基等が挙げられる。具体的には例えば、フリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフリル、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリニル、ベンズオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ピラジル、トリアジニル、テトラゾリル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、ジベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、シンノリル、インダゾリル、ナフチリジル、キノロニルまたはイソキノロニル等が挙げられる。好ましくは、例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1個から3個含む5乃至6員の基等が挙げられ、具体的には、例えばピリジル、ピラジニル、チエニルまたはオキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリルなどが挙げられる。
【0019】
アリールアルキル基、アリールオキシ基等のアリール部分としては、上述のアリール基と同様のものが挙げられる。ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールオキシ基等のヘテロアリール部分としては、上述のアリール基と同様のものが挙げられる。
【0020】
「ヘテロシクロアルキル基」としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1個以上(例えば1乃至3個)を含む、5から6員環のヘテロシクロアルキル基等が挙げられ、具体的には、例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキソイミダゾリジニル、ジオキソイミダゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニル等が挙げられる。
ヘテロシクロアルキルアルキル基等のヘテロシクロアルキル部分としては、上述のヘテロシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0021】
「含窒素飽和ヘテロ環基」としては、例えば、窒素原子を1から2個有し、更に酸素原子または硫黄原子を有してもよい、5から6員環の含窒素飽和ヘテロ環基等が挙げられ、具体的には、例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジオキソチオモルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキソイミダゾリジニル、ジオキソイミダゾリジニル、オキソオキサゾリジニル、ジオキソオキサゾリジニル、ジオキソチアゾリジニル、またはテトラヒドロピリジニル等が挙げられる。好ましくはピペリジニル等が挙げられる。
【0022】
「アラルキル基」としては、例えばアルキル基にアリール基が置換した、炭素数7から12のアラルキル基等が挙げられる。具体的には、例えば、ベンジル、2−フェニルエチルまたは1−ナフチルメチル等が挙げられる。
アラルキルオキシ基等のアラルキル部分としては、上述のアラルキル基と同様のものが挙げられる。
【0023】
「置換アルキル基」、「置換アルコキシ基」および「置換シクロアルキル基」における置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、−OR10、−OCOR10、−COR10、−COOR10、C3〜C6シクロアルキル基、アミノ基、カルボキシ基、カルバモイル基、−NHR10、−NR1011、−NR12COR10、または−SO210などが挙げられる(式中、R10およびR11は、各々独立して、例えばシクロアルキル基、C1〜C4アルキル基、C6〜C10アリール基またはC7〜C12アラルキル基等を表し、これらの基は、さらに、例えば水酸基、ハロゲン原子、C1〜C4アルコキシ基、アミノ基、C1〜C4アルキルアミノ基またはC1〜C4ジアルキルアミノ基等で置換されても良い。またはR10とR11は、一緒になって、それらが結合する窒素原子と共に、置換されてもよい飽和へテロ環基を表してもよい。R12は、例えば、水素原子またはアルキル基等を表す。)。好ましい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ハロアルコキシ基、アルキルスルホニル基またはアルコキシ基等が挙げられる。さらに好ましい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、またはアルコキシ基等が挙げられる。
【0024】
「置換シクロアルキル基」における置換基としては、上記のほか、例えば、アルキル基(水酸基またはハロゲン原子等で置換されてもよい)なども挙げられる。
【0025】
「置換アリール基」および「置換へテロアリール基」における置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、含窒素飽和環基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、C1〜C4アルキル基(該アルキル基は、例えばハロゲン原子、水酸基またはアミノ基、シクロアルキルオキシ基、ハロアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、ヒドロキシアルコキシ基などで置換されていてもよい。)、C1〜C4アルコキシ基(該アルコキシ基は、例えばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などで置換されていてもよい。)、−COR10、−OCOR10、−COOR10、カルボキシ基、アミノ基、−NHR10、−NR1011、−NHCOR10、−CONH2、−CONHR10、−CONR1011、−SO2NH2、−SO2NHR10、−SO2NR1011、C6〜C10アリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C7〜C12アラルキルオキシ基(このアリール基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基は、さらに例えば水酸基、ハロゲン原子、C1〜C4アルコキシ基などで置換されていてもよい)、または−SO210、シクロアルキルスルホニル基等が挙げられる(R10およびR11は上記と同様の基を表す。)。
好ましい置換基としては、例えば、含窒素飽和環基、アルキルスルホニル基、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基(アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換されてもよい)、またはアルコキシ基(アルコキシ基、ハロゲン原子などで置換されてもよい)等が挙げられる。さらに好ましい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(ハロゲン原子などで置換されてもよい)、またはアルコキシ基(ハロゲン原子などで置換されてもよい)等が挙げられる。
また、置換アリール基における置換基には、メチレンジオキシまたはエチレンジオキシなどのC1〜C3アルキレンジオキシ基も挙げられる。
【0026】
「置換されたアリール基」には、シクロアルキルまたはシクロヘテロアルキルと縮合したものも含まれ、例えば、上記式(B1)の芳香環部分の水素原子が結合手に変わったもの等が挙げられる。
【0027】
「置換含窒素飽和ヘテロ環基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4アルキル基(該アルキル基は、例えば水酸基、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。)、C1〜C4アルコキシ基(該アルコキシ基は、例えばハロゲン原子などで置換されていてもよい。)、−COR10、−COOR10、−CONR1011、カルボキシ基、アミノ基、C1〜C4アルキルアミノ基、C1〜C4ジアルキルアミノ基、カルバモイル基、オキソ基またはチオキソ基などが挙げられる(R10およびR11は上記と同様の基を表す。)。
【0028】
(G2)で表される基がさらに置換される場合の置換基としては、「置換アリール基」および「置換へテロアリール基」における置換基として挙げられた基等が挙げられる。
好ましい置換基としては、例えばハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、C1〜C4アルキル基(該アルキル基は、例えばハロゲン原子、水酸基またはアルコキシ基などで置換されていてもよい。)、C1〜C4アルコキシ基(該アルコキシ基は、例えばハロゲン原子などで置換されていてもよい。)などが挙げられる。
【0029】
「薬学上許容される塩」としては、例えば、カリウム塩またはナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、N−メチルグルカミン(メグルミン)等の水溶性アミン付加塩、または有機アミンの低級アルカノールアンモニウム塩;および、
例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、またはパモエート[1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)]との塩等が挙げられる。
本発明化合物の塩を取得したいとき、本発明化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸または塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
また、本発明化合物およびその薬学的に許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明に包含される。さらに、本発明は、本発明化合物のあらゆる互変異性体、存在するあらゆる立体異性体、およびあらゆる態様の結晶形のものも包含している。
【0030】
本発明化合物またはその薬学上許容される塩は、これを医薬として用いるにあたり、経口的または非経口的(例えば、静脈内、皮下、もしくは点滴剤、筋肉内注射、皮下注射、鼻腔内服剤、目薬、坐剤、経皮投与剤(軟膏、クリーム、ローション等)として投与することができる。経口投与のための形体としては、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、シロップ剤または懸濁剤などが挙げられ、非経口投与のための形体としては、例えば、注射用水性剤もしくは油性剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、エアロゾル剤、坐剤、貼付剤などが挙げられる。
これらの製剤は、従来公知の技術を用いて調製され、許容される通常の担体、賦形剤、結合剤、安定剤、滑沢剤、崩壊剤等を含有することができる。また、注射剤形で用いる場合には許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等を添加することもできる。また、適宜矯味矯臭剤を用いることもできる。
【0031】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ぶどう糖、マンニット、ソルビットのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプンのような澱粉誘導体;結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;などの有機系賦形剤;および軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩;などの無機系賦形剤を挙げることができる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーガム、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸:アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DL−ロイシン;脂肪酸ナトリウム塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;および、上記澱粉誘導体などを挙げることができる。
結合剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、マクロゴールおよび前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば、前記賦形剤と同様の化合物およびクロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェエノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;およびソルビン酸を挙げることができる。
矯味矯臭剤としては、例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
【0032】
経口投与用には、賦形剤を含有する錠剤を、種々の崩壊剤の他に、造粒結合剤と一緒に用いてよい。また、滑沢剤は、しばしば錠剤成形用に極めて有用である。同様の種類の固体組成物を、ゼラチンカプセル中の充填剤として用いてもよい(この結合に好ましい材料には、ラクトースまたは乳糖、高分子量ポリエチレングリコールも含まれる)。
経口投与用に水性懸濁剤および/またはエリキシル剤が望まれる場合、その活性成分は、種々の甘味剤、着香剤、着色剤または染料と一緒に、そして必要に応じて、乳化剤および/または懸濁化剤も、希釈剤と共に組み合わせることができる。該希釈剤としては、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびそれらの混合物が挙げられる。動物の場合、それらは、動物用飼料または飲料水中に5−5000ppm、好ましくは25−5000ppmの濃度で好都合に含まれる。
非経口投与用(筋肉内、腹腔内、皮下および静脈内使用)には、通常、活性成分の滅菌注射用溶液を製造する。本発明化合物のゴマ油もしくはラッカセイ油中かまたは水性プロピレングリコール中溶液を用いることができる。それら水溶液は、必要ならば、好ましくは8より大のpHで適当に調整され、緩衝されるべきであり、そして液体希釈剤を最初に等張にする。この水溶液は、静脈内注射用に適している。それら油状溶液は、関節内、筋肉内および皮下注射用に適している。無菌条件下でのこれら全ての溶液の製造は、当業者に周知の標準的な製剤技術によって容易に行われる。
【0033】
鼻腔内投与または吸入による投与には、本発明化合物またはその薬学上許容される塩は、患者が絞り出すもしくはポンプで放出するポンプスプレー容器からの溶液もしくは懸濁液の形で、または加圧式容器もしくはネブライザーからのエアゾルスプレー状態として、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適当なガスの使用を伴って、供給される。加圧式エアゾルの場合、投与単位は、計量された一定量を供給するバルブを与えることによって決定ができる。加圧式容器またはネブライザーは、活性化合物の溶液または懸濁液を入れることができる。
吸入器または吹入器で用いるためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチンから製造される)は、本発明化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適当な粉末基剤の粉末配合物を含有して製剤化されうる。
また、本発明化合物またはその薬学上許容される塩は、カカオ脂または他のグリセリドなどの慣用的な坐剤基材を含有する坐剤または停留浣腸剤などの肛門用組成物中で製剤化できる。
本発明化合物またはその薬学上許容される塩を投与する場合、その使用量は、症状、年齢、投与方法等によって異なるが、例えば、経口投与の場合には、成人に対して、1日当たり、下限として、0.01 mg(好ましくは1 mg)、上限として、5000 mg(好ましくは500mg)を、1回または数回に分けて、症状に応じて投与することが望ましい。静脈内投与の場合には、成人に対して、1日当たり、下限として、0.01mg(好ましくは0.1mg)、上限として、1000mg(好ましくは30mg)を、1回または数回に分けて、症状に応じて投与することにより効果が期待される。
【0034】
本発明化合物は、その効果の増強を目的として、糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤、抗肥満剤、利尿剤などの薬剤(以下、併用薬剤と略記する)と組み合わせて用いることができる。本発明化合物および併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、本発明化合物と併用薬剤の合剤としても良い。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤との配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01〜100重量部用いればよい。
【0035】
なお、糖尿病治療剤としては、インスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌、イーストを用い、遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤など)、インスリン抵抗性改善剤(例、ピオグリタゾンまたはその塩酸塩、トログリタゾン、ロシグリタゾンまたはそのマレイン酸塩、GI−262570、JTT−501、MCC−555、YM−440、KRP−297、CS−011等)、α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート等)、ビグアナイド剤(例、メトホルミン等)、インスリン分泌促進剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド等のスルホニルウレア剤;レパグリニド、セナグリニド、ナテグリニド、ミチグリニド等)、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)阻害剤(例、シタグリプチンまたはそのリン酸塩、ビルダグリプチン、アログリプチンまたはその安息香酸塩、デナグリプチンまたはそのトシル酸塩等)、GLP−1、GLP−1アナログ(エキセナタイド、リラグルタイド、SUN−E7001、AVE010、BIM−51077、CJC1131等)、プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸等)、β3アゴニスト(例、GW−427353B、N−5984等)が挙げられる。
【0036】
糖尿病性合併症治療剤としては、アルドース還元酵素阻害剤(例、トルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、ゾポレスタット、ミナレスタット、フィダレスタット、ラニレスタット、SK−860、CT−112等)、神経栄養因子(例、NGF、NT−3、BDNF等)、PKC阻害剤(例、LY−333531等)、AGE阻害剤(例、ALT946、ピマゲジン、ピラトキサチン、N−フェナシルチアゾリウム ブロマイド(ALT766)等)、活性酸素消去薬(例、チオクト酸等)、脳血管拡張剤(例、チアプリド、メキシレチン等)が挙げられる。抗高脂血症剤としては、HMG−CoA還元酵素阻害剤(例、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチンまたはそれらのナトリウム塩等)、スクアレン合成酵素阻害剤、ACAT阻害剤等が挙げられる。降圧剤としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例、カプトプリル、エナラプリル、アラセプリル、デラプリル、リジノプリル、イミダプリル、ベナゼプリル、シラザプリル、テモカプリル、トランドラプリル等)、アンジオテンシンII拮抗剤(例、オルメサルタン、メドキソミル、カンデサルタン、シレキセチル、ロサルタン、エプロサルタン、バルサンタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン等)、カルシウム拮抗剤(例、塩酸ニカルジピン、塩酸マニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、アムロジピン等)等が挙げられる。
【0037】
抗肥満剤としては、例えば中枢性抗肥満薬(例、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デキサンフェタミン、マジンドール、SR−141716A等)、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット等)、ペプチド性食欲抑制薬(例、レプチン、CNTF(毛様体神経栄養因子)等)、コレシストキニンアゴニスト(例、リンチトリプト、FPL−15849等)等が挙げられる。利尿剤としては、例えばキサンチン誘導体(例、サリチル酸ナトリウムテオブロミン、サリチル酸カルシウムテオブロミン等)、チアジド系製剤(例、エチアジド、シクロペンチアジド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ペンフルチジド、ポリチアジド、メチクロチアジド等)、抗アルドステロン製剤(例、スピロノラクトン、トリアムテレン等)、炭酸脱水酵素阻害剤(例、アセタゾラミド等)、クロルベンゼンスルホンアミド系製剤(例、クロルタリドン、メフルシド、インダパミド等)、アゾセミド、イソソルビド、エタクリン酸、ピレタニド、ブメタニド、フロセミド等が挙げられる。
【0038】
併用薬剤は、好ましくはGLP−1、GLP−1アナログ、α−グルコシダーゼ阻害剤、ビグアナイド剤、インスリン分泌促進剤、インスリン抵抗性改善剤、DPP-IV阻害剤などである。上記併用薬剤は、2種以上を適宜の割合で組み合せて用いてもよい。
【0039】
本発明化合物が、併用薬剤と組み合せて使用される場合には、これらの薬剤の使用量は、薬剤の副作用を考えて安全な範囲内で低減できる。例えば、ビグアナイド剤は通常の投与量よりも低減できる。したがって、これらの薬剤により引き起こされるであろう副作用は安全に防止できる。それに加えて、糖尿病合併症剤、抗高脂血症剤、降圧剤などの投与量は低減でき、その結果これらの薬剤により引き起こされるであろう副作用は効果的に防止できる。
【0040】
本発明によって得られる一般式(1)を有する化合物の具体例としては、例えば以下に示す化合物を挙げることができる。
【0041】
【化6】

【0042】
以下に、本発明における式(1)で表される化合物の製造法について、例を挙げて説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。
【0043】
式(1)で表される化合物は、例えば、次の方法により合成することができる。
【0044】
製造法1
式(1)で表される化合物またはその塩は、例えば下記に示される方法によって製造される。
【0045】
【化7】

(式中、a、Aおよび環Bは、前記記載と同義である。)
【0046】
工程1:
アミン(A−1)およびアミン(A−2)から化合物(1)を製造する工程である。
不活性溶媒中、通常−10℃から30℃で0.5時間から6時間、アミン(A−1)と、例えば、1,1’-カルボニルジイミダゾール、トリホスゲン、ジホスゲンまたはホスゲン等を反応させる。続いて、通常−10℃から加熱還流下で0.5時間から8時間、アミン(A−2)を反応させる(順はアミン(A−2)、アミン(A−1)の順でもよい)。その結果、化合物(1)を製造することができる。
また、塩基存在下、不活性溶媒中のアミン(A−1)と、パラニトロフェニルクロロホルメートとを通常−10℃から30℃で反応させた後、アミン(A−2)を加えることで化合物(1)を製造することもできる(順はアミン(A−2)、アミン(A−1)の順でもよい)。塩基としては、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリンまたはN-メチルモルホリン(NMM)等の含窒素有機塩基類等があげられる。
不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒などがあげられる。
【0047】
製造法2
また、式(1)で表される化合物のうち、式(A−5)で表される化合物は、例えば下記に示される方法によって製造することもできる。
【0048】
【化8】

(式中、a、環B、R1およびR2は、前記記載と同義である。Rはメチル基、エチル基、またはベンジル基等を表す。)
【0049】
工程1:
製造法1の工程1と同様の方法により、化合物(A−1a)から化合物(A−3)を製造することができる。
工程2:
本工程は、式(A−3)の化合物のエステル基の脱保護により、式(A−4)のカルボン酸化合物へと導く工程である。
本工程を実施するには、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、グリーン著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1981年)に記載されている方法が挙げられる。
具体的には、例えば以下のような方法で実施される。
【0050】
(A)Rがメチル基、エチル基等の場合、アルカリ加水分解、または酸加水分解によってカルボン酸へと導くことができる。すなわち、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の存在下、水とともに、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒の共存または非共存下において、通常、室温から加熱還流の温度範囲で、0.5時間から48時間反応させることにより、式(A−4)の化合物を得ることができる。
【0051】
(B)Rがベンジル基の場合、例えば、パラジウム/カーボン、水酸化パラジウム、ニッケル等の金属触媒の存在下、必要ならばギ酸アンモニウム等を添加して、水素ガス雰囲気下で反応させることにより、式(A−4)の化合物へと導くことができる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、酢酸等の有機酸またはそれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0052】
工程3:
化合物(A−4)のカルボキシ基を活性化した後、アミンNHR12またはその塩と反応させて化合物(A−5)を製造する工程である。
カルボキシ基の活性化方法としては、例えばカルボキシ基を酸無水物、混合酸無水物、酸ハロゲン化物、活性エステル、酸アジドに変換する方法または縮合剤を用いる方法等が挙げられる。
酸ハロゲン化物法を用いるときは、化合物(A−4)と、例えばオギザリルクロリド、塩化チオニル、オキシ塩化リン、五塩化リン等のハロゲン化試薬を反応させて酸ハロゲン化物を調製した後、塩基の存在下でアミンNHR12またはその塩と反応させ、化合物(A−5)を得ることができる。ここで、塩基としては特に限定はないが、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリンまたはN-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、または炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類などが挙げられる。溶媒は、本工程の反応条件で反応しない溶媒であれば使用できる。例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、水、またはこれらの混合物等が挙げられる。反応温度は、-80℃から加熱還流下で行われ、通常-20℃から氷冷温度である。反応時間は、10分間から48時間である。
【0053】
混合酸無水物法を用いる場合、化合物(A−4)を、塩基の存在下、酸ハロゲン化物と反応させることによって混合酸無水物とした後、アミンNHR12またはその塩と反応させ、化合物(A−5)に導くことができる。酸ハロゲン化物としては、例えば、メトキシカルボニルクロリド、エトキシカルボニルクロリド、イソプロピルオキシカルボニルクロリド、イソブチルオキシカルボニルクロリド、パラニトロフェノキシカルボニルクロリドまたはt−ブチルカルボニルクロリドなどがあげられる。塩基としては特に限定はないが、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリンまたはN-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類、または、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム等の無機塩基類などが挙げられる。溶媒は本工程の反応条件で反応しない溶媒であれば使用できる。例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、もしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、水、またはそれらの混合物が挙げられる。反応温度は、-80℃から加熱還流下で行われ、通常-20℃から氷冷温である。反応時間は、30分間から48時間である。
【0054】
縮合剤により化合物(A−4)とアミンNHR12またはその塩を、塩基存在下または非存在下に反応させ、化合物(A−5)を製造することもできる。ここで縮合剤としては、実験化学講座(日本化学会編、丸善)22巻に表記されているものなどが挙げられる。例えば、シアノリン酸ジエチル、ジフェニルホスホリルアジド等のリン酸エステル類、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩、ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド類、2,2’-ジピリジルジスルフィド等のジスルフィド類とトリフェニルホスフィンのようなホスフィンとの組合せ、N,N’-ビス(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)ホスフィニッククロリド等のリンハライド類、アゾジカルボン酸ジエチル等のアゾジカルボン酸ジエステルとトリフェニルホスフィン等のホスフィンの組み合わせ、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨーダイド等の2-ハロ-1-低級アルキルピリジニウムハライド類、1,1’-カルボニルジイミダゾール、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、ジエチルホスホリルシアニド(DEPC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチル-ウロニウム テトラヒドロボレイト(TBTU)、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウム ヘキサフルオロホスフェイト (HBTU)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェートなど等が挙げられる。溶媒は、特に限定されず、本工程の反応条件で反応しない溶媒であれば使用できる。具体的には酸ハロゲン化物法を用いるときと同じ溶媒か、さらにN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水、またはそれらの混合溶媒が用いられる。塩基としては特に限定はないが、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピコリンまたはN-メチルモルホリン(NMM)等の有機塩基類が挙げられる。反応は、通常-10℃から加熱還流下で行われる。反応時間は、主に反応温度、使用される原料、および溶媒等の条件によって異なるが、通常0.5時間から48時間である。
【0055】
上記において説明した製造法において、反応点以外の何れかの官能基が、説明した反応条件下で変化するか、または説明した方法を実施するのに不適切な場合は、反応点以外を保護し、反応させた後、脱保護することにより目的化合物を得ることができる。保護基としては、例えば前述のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス等に記載されているような通常の保護基を用いることができ、更に具体的には、アミンの保護基としては、例えば、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、アセチル、またはベンジル等を、また水酸基の保護基としては、例えば、トリ低級アルキルシリル、アセチル、またはベンジル等をあげることができる。
保護基の導入および脱離は、有機合成化学で常用される方法(例えば、上記のプロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス参照)、あるいはそれらに準じた方法により行うことができる。
また、上記製造方法における、中間体、または最終生成物は、その官能基を適宜変換することによって、本発明に含まれる別の化合物へ導く事もできる。官能基の変換は、通常行われる一般的方法(例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations)、R.C.ラロック(Larock)著(1989年)等参照)によって行うことができる。
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば中和、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等によって単離精製することができる。また、中間体は、特に精製することなく次の反応に用いることも可能である。
また、光学異性体は前記製造法の適切な工程で、光学活性カラムを用いた方法、分別結晶化法などの公知の分離工程を実施することで分離することができる。また、出発原料として光学活性体を使用することもできる。
【0056】
本発明の化合物が、光学異性体、立体異性体、ケトエノール体のような互変異性体、および/または幾何異性体を有する場合、本発明は、これらを含め全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
上記製造法における出発原料および中間体は、公知化合物であるか、公知化合物から公知の方法により合成することができる。
【0057】
本発明化合物において、アダマンタン上の2つの置換基の立体配置は、参考文献(C. D. Jones, M. Kaselj, etal. J. Org. Chem. 63:2758-2760, 1998)に従ってZ又はE相対配置と定義する。
【0058】
以下に本発明を、参考例、実施例および試験例により、さらに具体的に説明するが、本発明はもとよりこれに限定されるものではない。尚、以下の参考例および実施例において示された化合物名は、必ずしもIUPAC命名法に従うものではない。
【0059】
実施例および参考例において以下の略語を使用することがある。
THF:テトラヒドロフラン
NaBH(OAc)3:トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
(Boc)2O:ジ−tert−ブチルジカーボネート
Pd(OH)2:水酸化パラジウム
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
WSCI・HCl:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
HOBt・H2O:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール 1水和物
【実施例1】
【0060】
参考例1
メチル 4-アミノアダマンタン-1-カルボキシレート塩酸塩
【0061】
【化9】

工程(i):
化合物I(40.0g)のメタノール(500mL)溶液に、チオニルクロリド(22.7mL)を加えた。3時間還流下攪拌した後、減圧濃縮した後、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮し、化合物II(44.0g)を得た。
工程(ii):
化合物II(55.4g)をジクロロメタン(1.25L)に溶解させ、(R)-(+)-1-フェネチルアミン(32.2g)、NaBH(OAc)3(82.0g)、酢酸(10ml)を加えて、室温で終夜攪拌した。6N塩酸で処理した後、2N水酸化ナトリウム溶液で塩基性にし、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール=100/0から98/2)で精製し、化合物III(73.6g)を得た。
工程(iii):
化合物III(12.6g)の酢酸(200mL)溶液に、水酸化パラジウム(6.0g)、を加え、水素雰囲気下(3atm)9時間攪拌した。パラジウムを濾別した後、濾液を減圧濃縮した。残渣を飽和重曹水とTHFで溶解し、(Boc)2O(9.65g)を加え、室温で1時間半攪拌した。反応溶液に飽和重曹水を加えて酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム/メタノール=19/1)で精製した。これをクロロホルム(150ml)に溶解した後、4N塩酸−ジオキサン(50ml)を加え、室温で終夜攪拌した。これを減圧濃縮し、生じた白色固体を濾別し、減圧濃縮し、表題化合物IV(7.0g)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δ 1.50(m,1H), 1.70-1.80(m,4H), 1.87-2.06(m,6H), 2.06-2.10(m,3H), 3.31(s,3H), 8.17(bs,3H)
【0062】
実施例1
N-[(E)-5-(アミノカルボニル)-2-アダマンチル]-1'H-スピロ[インデン-1,4'-ピペリジン]-1'-カルボキサミドおよびN-[(Z)-5-(アミノカルボニル)-2-アダマンチル]-1'H-スピロ[インデン-1,4'-ピペリジン]-1'-カルボキサミド
【0063】
【化10】

工程(i):
化合物I(90mg)のTHF(3mL)溶液に、DIEA(293μL)、パラニトロフェニルクロロホルメート(94mg)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、4-スピロインデン-ピペリジン塩酸塩(142mg)を加え、更に室温で終夜攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、2N水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=10/1)で精製し、化合物II(111mg)を得た。
【0064】
工程(ii):
化合物IIをメタノール(5ml)で溶解し、2N水酸化ナトリウム溶液(250μL)を加え、室温で終夜攪拌した。減圧濃縮後、希塩酸で酸性にした後、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。これをDMF(5ml)に溶解し、塩化アンモニウム(16mg)、WSCI(56mg)、HOBt(40mg)、トリエチルアミン(68μL)を加え、室温で終夜攪拌した。水を加えた後、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。残渣をプレパラティブTLC(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=10/1)で精製し、高極性成分として化合物III(29mg)と低極性成分として化合物IV(23mg)を得た。
N-[(E)-5-(アミノカルボニル)-2-アダマンチル]-1'H-スピロ[インデン-1,4'-ピペリジン]-1'-カルボキサミド (高極性成分)
1H-NMR(CDCl3)δ 1.40-1.43(m,2H), 1.58-1.66(m,3H), 1.81-1.84(m,2H), 1.92 (m,2H), 1.99-2.09(m,6H), 2.13-2.15(m,2H), 3.21-3.25(m,2H), 4.01-4.08(m,3H), 4.81(m,1H), 5.27(s,1H), 5.61(s,1H), 6.81-6.86(m,2H), 7.20-7.29(m,2H), 7.32-7.36(m,2H)
N-[(Z)-5-(アミノカルボニル)-2-アダマンチル]-1'H-スピロ[インデン-1,4'-ピペリジン]-1'-カルボキサミド (低極性成分)
1H-NMR(CDCl3)δ 1.39-1.42(m,2H), 1.67(m,1H), 1.73-1.91(m,8H), 1.99-2.03(m,4H), 2.14-2.16(m,2H), 3.15-3.23(m,2H), 3.99-4.08(m,3H), 4.81(m,1H), 5.32 (s,1H), 5.63(s,1H), 6.80-6.83(m,2H), 7.21-7.28(m,2H), 7.31-7.35(m,2H)
【0065】
実施例1と同様の方法で、下記の化合物を合成した。
【0066】
実施例2
N-[(E)-5-(アミノカルボニル)-2-アダマンチル]-1'H,3H-スピロ[2-ベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-1'-カルボキサミド
【0067】
【化11】

1H-NMR(CDCl3)δ 1.59-1.67(m, 2H), 1.76-1.94(m, 8H), 1.99-2.05(m, 5H), 2.12-2.16(m, 2H), 3.26-3.33(m, 2H), 3.91-4.01(m, 3H), 4.77(m, 1H), 5.10(s, 2H), 5.23(bs、1H), 5.59(bs, 1H), 7.09(m, 1H), 7.24-7.30(m, 3H)
【0068】
実験例1(ヒト11βHSD1酵素源の調製)
ヒト11βHSD1遺伝子(GenBank Accession No.BC012593)のORFを含む配列を定法に従ってPCR法で増幅し、制限酵素BamHI/XhoIで消化した。アガロースゲルより回収した2kb DNA断片を定法に従ってpCMV-Tag2Bプラスミド(ストラタジーン社)に挿入した。大腸菌で大量調製した本プラスミドをCHO-K1細胞に形質転換後、400μg/ml G-418溶液(ギブコ社)含有培地で選抜することにより、ヒト11βHSD1遺伝子の安定発現株を取得した。取得した安定発現株を、10% チャコール−デキストラン処理ウシ胎児血清(ハイクローン社)、1% ペニシリン−ストレプトマイシン(ナカライテスク社)、400μg/ml G-418を含有するF-12培地(ナカライテスク社)で〜90%コンフルエントになるまで培養した。トリプシン処理により回収した細胞を1Lの上記培地に懸濁し、セルスタック10チャンバー(コーニング社)に全量播種した。CO2インキュベータ(5% CO2, 37℃)にて4-5日間培養した後、トリプシン処理により全量回収した細胞をPBS緩衝液(ギブコ社)で洗浄し、-80℃で保存した。細胞を8mlの緩衝液(50mM HEPES pH7.3, 5% グリセロール, 1mM EDTA, プロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ社))に懸濁後、細胞破砕を行なった。細胞破砕液を1,500rpmで10分間遠心した後、上清を更に100,000gで1時間超遠心した。超遠心後の沈殿を回収し、緩衝液(50mM HEPES pH7.3, 5% グリセロール, 1mM EDTA)に懸濁後、分注して-80℃に保存した。得られた酵素画分を後述する実験例において、ヒト11βHSD1酵素画分として用いた。
【0069】
実験例2(ヒト11βHSD1阻害活性の測定)
被検化合物及びコルチゾン(シグマ社)を緩衝液(50mM HEPES pH7.3, 150mM NaCl, 1mM EDTA)で希釈し、被検化合物を含む基質溶液(50mM HEPES pH7.3, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 1mM NADPH, 20nM コルチゾン)(2 % DMSO溶液)を調製し、4μl/ウェルで384穴ローボリュームプレート(グライナー社製、No.3782086)に添加した。次に実験例1で得られたヒト11βHSD1 酵素画分をアッセイ終濃度60-100μg/mlの濃度となるように緩衝液(50mM HEPES pH7.3, 150mM NaCl, 1mM EDTA, 5% グリセロール)で希釈した。希釈後のヒト11βHSD1 酵素画分を4μl/wellで各ウェルに添加して 穏やかに攪拌後、スピンダウンし、37℃で2時間反応させた。酵素反応後、生成したコルチゾールは、時間分解蛍光測定法(Homogeneous time-resolved fluorescence、HTRF法)を用いて検出することで酵素阻害活性を測定した。400μM カルベノキソロン(シグマ社)を含むXL-665標識コルチゾール(又はd2標識コルチゾール)及びクリプテート標識コルチゾール抗体(シスバイオ インターナショナル社)をそれぞれ4μl/ウェルで添加し、穏やかに攪拌後、スピンダウンし、室温で2時間以上保管した。蛍光強度は、2120 EnVision(登録商標) マルチラベルカウンター (パーキンエルマー社)を用いて測定し、2波長の蛍光強度比(665nm/620nm)から酵素阻害活性を算出した。
各被検化合物の阻害活性(%)は、同一条件である4ウェルの阻害活性の平均値(%)から算出した。被検化合物のかわりにDMSOを添加したウェルの阻害率を0%とし、ヒト11βHSD1 酵素画分を添加しないウェルの阻害率を100%とした。ヒト11βHSD1を50%阻害するのに必要な被検化合物の濃度(IC50値)を算出した。
その結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明化合物は、II型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、低HDL症、高LDL症、脂質代謝異常症、高脂血症、高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、アテローム性動脈硬化、肥満、認知障害、緑内障、網膜症、痴呆症、アルツハイマー症、骨粗しょう症、免疫障害、シンドロームX、鬱、心血管疾患、神経変性疾患などの疾患の予防または/および治療薬として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

[式中、aは0または1を表す。
Aは、CONR12、CONR12で置換されたアルキル基、CONR12で置換されたアルコキシ基、SO2NR12、またはSO2NR12で置換されたアルキル基を表す。
1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換されてもよいアルキル基を表すか、または、R1およびR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、置換されてもよい含窒素飽和へテロ環基を表す。
環Bは、下記式(G2):
【化2】

(式中、(G2)で表される基は、さらに置換されていてもよい。)
の中から選ばれる基を表す。
1は、酸素原子、硫黄原子、または−NR3で表される基を表す。
2は、酸素原子、−S(O)p−、または−NR3で表される基を表す。
3は、−(CH2m−、酸素原子、または−NR3で表される基を表す。
mは、0、1または2を表す。
nは、1または2を表す。
pは、0、1または2を表す。
3は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいシクロアルキルアルキル基、置換されてもよいヘテロシクロアルキルアルキル基、または置換されてもよいアリールアルキル基、または置換されてもよいヘテロアリールアルキル基を表す。]
で表される化合物、またはその薬学上許容される塩。
【請求項2】
aが0であり、Aがカルバモイル基である、請求項1記載の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項3】
アダマンチル基が結合する窒素原子と基Aとが、Eの立体配置を有する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容される塩。
【請求項4】
式(2):
【化3】

[式中、aは0または1を表す。
1は、水酸基、CONR12、CONR12で置換されたアルキル基、CONR12で置換されたアルコキシ基、SO2NR12、またはSO2NR12で置換されたアルキル基を表す。
1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、または置換されてもよいアルキル基を表すか、または、R1およびR2は、それらが結合する窒素原子と一緒になって、置換されてもよい含窒素飽和へテロ環基を表す。
環Bは、下記式(G2):
【化4】

の中から選ばれる基を表す。
1は、酸素原子、硫黄原子、または−NR3で表される基を表す。
2は、酸素原子、−S(O)p−、または−NR3で表される基を表す。
3は、−(CH2m−、酸素原子、または−NR3で表される基を表す。
mは、0、1または2を表す。
nは、1または2を表す。
pは、0、1または2を表す。
3は、水素原子、置換されてもよいアルキル基、置換されてもよいシクロアルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいヘテロアリール基、置換されてもよいシクロアルキルアルキル基、置換されてもよいヘテロシクロアルキルアルキル基、または置換されてもよいアリールアルキル基、置換されてもよいヘテロアリールアルキル基を表す。]
で表される化合物、またはその薬学上許容される塩を含有するII 型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、脂質代謝異常症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、肥満、認知障害、痴呆症、アルツハイマー症、シンドロームX、鬱、心血管疾患、またはアテローム性動脈硬化の治療剤。
【請求項5】
aが0であり、A1が、水酸基またはカルバモイル基である、請求項4記載の化合物またはその薬学上許容される塩を含有するII 型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、脂質代謝異常症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、肥満、認知障害、痴呆症、アルツハイマー症、シンドロームX、鬱、心血管疾患、またはアテローム性動脈硬化の治療剤。
【請求項6】
アダマンチル基が結合する窒素原子と基A1とが、Eの立体配置を有する、請求項4〜5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容される塩を含有するII 型糖尿病、耐糖能異常、高血糖、インスリン抵抗性、脂質代謝異常症、高血圧、動脈硬化、血管狭窄、肥満、認知障害、痴呆症、アルツハイマー症、シンドロームX、鬱、心血管疾患、またはアテローム性動脈硬化の治療剤。

【公開番号】特開2009−40693(P2009−40693A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204741(P2007−204741)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】