説明

アッセイ方法

薬物候補(特に、アルツハイマー病および脳卒中を治療するための候補薬剤)を迅速にスクリーニングする方法および装置が開示される。本発明は、治療化合物、ならびに特に化合物ライブラリーのスクリーニングに適用することができるバイオセンサー方法および装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、薬物候補(特に、アルツハイマー病および脳卒中を治療するための候補薬剤)を迅速にスクリーニングする方法および装置に関する。本発明は、特に化合物ライブラリーのスクリーニングに適用することができるバイオセンサー方法および装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書で引用された任意の特許または特許出願を含む全ての参考文献が参照として本明細書に組み入れられる。どの言及も先行技術を構成すると認められない。参考文献の説明は、その著者が主張するものを示し、出願人は、引用された文献の正確さおよび妥当性を疑う権利を有する。多数の先行技術刊行物が本明細書で言及されるが、これらの文献のいずれかがオーストラリアまたは他の任意の国での当技術分野における一般的な周知の知識の一部をなすと、この言及により認められないことが明確に理解されるだろう。
【0003】
アルツハイマー病(AD)は、アミロイド斑および脳アミロイドアンギオパチー(CAA)の形をとるアミロイドβタンパク質(Aβ)沈着の蓄積により特徴付けられる進行性の神経変性疾患である(Priceら,1991)。Aβには毒性があり、神経網におけるAβ蓄積は、もつれ形成および神経膠症などの変性変化の一因となる(Smallら,2001)。CAAの蓄積は、脳血管平滑筋細胞(SMC)の消失ならびに大脳皮質および軟髄膜の小さな血管および中程度の血管の脆弱化を引き起こし、結果として、脳内出血(脳卒中)、脳梗塞、および痴呆の危険因子となる(Vinters,1987;GhisoおよびFrangione,2001)。ある特定の家族性の状態では、アミロイドは主にCAAとして沈着する(GhisoおよびFrangione,2001)。
【0004】
アミロイド沈着の主成分は、βアミロイドタンパク質(Aβ)として知られる4kDaのポリペプチドである(Glennerら,1984;Mastersら,1985)。βアミロイドタンパク質は、これよりかなり大きなβ-アミロイドタンパク質前駆体(APP)から生じる(Kangら,1987)。脳において生じるAβの大部分の形態は40個のアミノ酸残基を含む。しかしながら、42個または43個の残基を含む少数派の形態も形成される。これらの少数派の形態の生成はADの発生と密接に関連している(Scheunerら,1996)。
【0005】
AD治療の1つのアプローチは脳におけるAβ生成を阻害することである。BACE1およびγ-セクレターゼによってAPPをタンパク質切断すると完全長Aβが生じ、次いで、細胞から完全長Aβが放出される(NunanおよびSmall,2000)。従って、BACE1およびγ-セクレターゼいずれかの阻害剤には治療上の価値がある可能性がある。あるいは、多くの研究によってコレステロールがAβの放出に影響を及ぼすことが分かっている(Simonsら,1998;Hartmann,2001;Fassbenderら,2001;Frearsら,1999;Friedhoffら,2001)。従って、スタチンなどのコレステロール生合成阻害剤にも治療上の価値がある可能性がある。スタチンの利点の1つは、毒性が比較的低く、その作用機序が、現在AD治療薬として研究されている他の多くの化合物より非常によく理解されていることである。しかしながら、コレステロールレベルを低下させる価値については当技術分野において意見の相違があり、研究者の中にはコレステロールは実際には有益であると考える者もいる(Jiら,2002)。
【0006】
Aβの毒性機構はあまり理解されていない(Smallら,2001)。Aβは、ガングリオシド(Arigaら,2001)、スフィンゴ脂質(Mahfoudら,2002)、およびコレステロール(Kremerら,2000;Avdulovら,1997;Eckbertら,2000)を含む脂質に結合することができる(Curtainら,2001;Valdez-Gonzalezら,2001)。特に、Aβは膜脂質に結合することができ、この相互作用は細胞にとって有毒である可能性がある(Hertelら,1997)。しかしながら、Aβによる脂質結合の程度とその毒性との相関付けを試みた研究はほとんどない。Jiら(2002)は、Aβとコレステロールの結合が、Aβのオリゴマー化を阻害することによってAβの毒性を阻止する可能性があることを示唆した。
【0007】
アルツハイマー病患者の脳に見られるアミロイド沈着においてアセチルコリンエステラーゼ(AChE)がAβと同じ場所に存在し、野生型Aβおよび変異Aβペプチド(単独ではアミロイド様線維をほとんど生成することができない)からのアミロイド形成を促進することも知られている。このAChEの作用は酵素活性部位阻害剤の影響を受けないが、周辺陰イオン結合部位に結合するプロピジウムにより阻害される。対照的に、この周辺陰イオン結合部位を欠くブチリルコリンエステラーゼはアミロイド形成に影響を及ぼさなかった(Inestrosaら,1996)。AChEは安定な複合体を形成し、Aβは酵素アセチルコリンエステラーゼに結合して、安定な複合体を形成することができ、この結合はアミロイド線維の神経毒性を高める(Alvarezら,1998)。モデリング研究から、AChEの表面上に暴露される主要な疎水性配列(部位Iと呼ばれる)がAβとの複合体形成に関与することが示唆され、この配列に対応する35アミノ酸の疎水性ペプチドは実際にアミロイド形成を促進することができ、成長しているAβ線維に取り込まれる (De Ferrariら,2001)。部位Iはまたリポソームと相互作用することもできる(Shinら,1996)。
【0008】
Aβ型のアミロイド沈着の他に、アミロイド沈着を形成する他の多数のタンパク質が存在する。これらのうち数種類は臨床状態の発生に関与することが知られている。例えば、免疫グロブリン軽鎖は原発性アミロイドーシスにおいてアミロイド線維を形成し、反応性または続発性アミロイドーシスは多数の異なるタンパク質によって引き起こされる。家族性アミロイドーシスは、変異型トランスチレチン、アポリポタンパク質A-I、ゲルソリン、フィブリノゲンAα、またはリゾチームの沈着によって引き起こされる。これらのうち、家族性アミロイドーシスの最も一般的な形は変異トランスチレチンによって引き起こされるものである。これらのアミロイドーシスは全て全身性であり、あるとしても稀にしか中枢神経系に関与しない。これらの全身性アミロイドーシスは最近、概説されている(Falkら,1997)。
【0009】
アミロイド様線維の沈着は、パーキンソン病およびα-シヌクレイン線維が沈着する他の状態などの他の神経変性疾患でも重要である可能性がある。これらの神経変性疾患として、パーキンソン病、レヴィー小体形成を伴う痴呆、多系統萎縮、ハレルフォルデン−スパッツ病、およびびまん性レヴィー小体病が挙げられる。
【0010】
表面プラズモン共鳴(SPR)法は、様々な状況のリガンドとリガンド結合化合物の相互作用の分析に非常に広範囲に適用されており、この原理に基づくバイオセンサーが、例えば、BIAcore ABおよびAffinity Sensors,Inc.から市販されている。バイオセンサー法は、標識を全く必要とすることなくリアルタイムで行われるという利点を有し、特に多数の試料をスクリーニングするのに適しており、結果として、候補医薬品のハイスループットスクリーニングに極めて有用である。最近、バイオセンサーはペプチドと膜との相互作用の研究に広範囲に用いられている(MozsolitsおよびAguilar(印刷中,2002))。
【0011】
特に、センサーチップ(例えば、BIAcore ABからのHPAおよびL1チップ、ならびにAffinity Sensors,Inc.からの疎水性表面キュベット)が脂質相互作用の研究に有用である。例えば、Lofangによる米国特許第5,922,594号ならびに前記で言及されたValdez-GonzalezらおよびArigaらによる論文を参照のこと。しかしながら、本発明者らが知る限り、アミロイド関連状態を治療するための候補薬剤のハイスループットスクリーニングにバイオセンサー法を使用することができるという示唆はなかった。
【0012】
本発明者らは、今や驚くべきことに、アミロイドタンパク質と、ある特定の細胞タイプから単離された膜との結合(バイオセンサーを用いて測定される)が、その細胞タイプに対する毒性の程度(細胞傷害アッセイにより測定される)と非常によく相関することを発見している。従って本発明は、毒性の指標として、アミロイドタンパク質とニューロンなどの細胞タイプから単離された膜との結合を測定するためにバイオセンサーを使用する。このように、化合物をその治療特性について迅速にスクリーニングすることができる。Aβは合成脂質または培養細胞に結合できることが以前に知られているが、これは、実際の細胞膜をバイオセンサーの目的で使用することができる最初の証明である。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
第1の局面において、本発明は、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物に結合したバイオセンサー膜を含む、脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療するための候補薬剤をスクリーニングする装置を提供する。
【0014】
好ましくは、脂質調製物は約30%〜80%のコレステロールを含む。より好ましくは、脂質調製物は、標的状態に従って選択される平滑筋細胞、神経細胞、腎細胞、心筋細胞、または肝細胞の細胞ホモジネートの原形質膜に富む画分である。状態が脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う場合、脂質調製物は平滑筋細胞または神経細胞から調製される。さらにより好ましくは、細胞は血管平滑筋細胞またはニューロン細胞である。全身性アミロイドーシスの場合、関与する主な組織は腎臓、心臓、および肝臓である。従って、これらの状態の場合、細胞ホモジネートは腎細胞、心筋細胞、または肝細胞から調製される。
【0015】
細胞は主な組織試料から得られてもよく、初代細胞株または形質転換細胞株の細胞から調製されてもよい。ニューロン細胞の場合、皮質または海馬由来の細胞株または初代細胞が特に好ましい。
【0016】
第2の局面において、本発明は、脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療するための候補薬剤をスクリーニングする方法であり、アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合に対する候補薬剤の作用を評価する段階(ここで、結合の阻害が潜在的に有用な活性を示す)を含む方法を提供する。
【0017】
第3の局面において、本発明は、脳または脳血管に対する潜在的な毒性について候補薬剤をスクリーニングする方法であり、アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合に対する候補薬剤の作用を評価する段階(ここで、結合の促進が潜在的に毒性の活性を示す)を含む方法を提供する。
【0018】
好ましくは、脂質調製物はバイオセンサー膜に結合している。好ましくは、脂質調製物は約30%〜80%のコレステロールを含む。より好ましくは、脂質調製物は筋肉細胞または神経細胞の原形質膜に富む画分である。さらにより好ましくは、細胞は血管平滑筋細胞またはニューロンである。
【0019】
好ましくは、アミロイドペプチドがAβである場合、前記方法はアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の存在下で行われる。より好ましくは、AChEは脂質調製物に添加される前にAβに添加される。最も好ましくは、本発明のこの形では、脂質調製物はバイオセンサー膜に結合している。適切には、AChEおよびAβの両方は約10μMまでの濃度である。
【0020】
第4の局面において、本発明は、アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合を阻害する能力を有する化合物である、脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う状態を治療するための薬剤を提供する。
【0021】
1つの好ましい態様において、化合物はコレステロール生合成を阻害する能力も有する。
【0022】
第5の局面において、本発明は、アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合を阻害する能力を有する化合物と共に、薬学的に許容される担体を含む、脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療するための組成物を提供する。
【0023】
第6の局面において、本発明は、脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療する方法であり、アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合を阻害する能力を有する有効量の化合物を、このような治療を必要とする被検体に投与する段階を含む方法を提供する。
【0024】
アミロイドタンパク質は、一般的に、標的状態と関連することが知られているものから選択される。例えば、状態が脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う場合、アミロイドペプチドは好ましくはAβである。アミロイドーシスが免疫グロブリン軽鎖関連(AL)アミロイドーシスである場合、タンパク質は免疫グロブリン軽鎖またはその生物学的に機能する断片(好ましくは、軽鎖可変領域)である。続発性アミロイドーシスの場合、アミロイドタンパク質は好ましくはアミロイドAである。家族性アミロイドーシスの場合、タンパク質は、好ましくはトランスチレチン、アポリポタンパク質A-I、ゲルソリン、フィブリノゲンAα、およびリゾチームからなる群より選択される。
【0025】
脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う状態は、散発性の状態(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群に関連したアミロイドーシス、プリオン関連脳アミロイドーシス(クロイツフェルト-ヤコブ病および「狂牛」病に関連したその新変異型を含む)、もしくは散発性脳アンギオパチー)でもよく、家族性の状態(例えば、常染色体優性型の家族性アルツハイマー病のいくつかの型の1つ(St George-Hyslop,2000に概説);Aβ前駆体タンパク質のFlemish、Arctic、Dutch、またはItalian変異に関連した遺伝性脳出血(GhisoおよびFrangione,2001に概説);アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(アイスランド型);髄膜の脳血管性(meningocerebrovascular)アミロイドーシスおよび眼の軟髄膜の(oculoleptomeningeal)アミロイドーシス;家族性英国人痴呆(familial British dementia);家族性デンマーク人痴呆(familial Danish dementia);シスタチンC関連脳アミロイドアンギオパチー;トランスチレチン関連脳アミロイドアンギオパチー;ならびにゲルソリン関連脊髄アミロイドアンギオパチーおよび脳アミロイドアンギオパチー)でもよい。
【0026】
好ましくは、脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う状態は、散発性または家族性アルツハイマー病、ダウン症候群に関連したアミロイドーシス、散発性脳アンギオパチー、プリオン関連脳アミロイドーシス、家族性英国人痴呆、シスタチンC関連脳アミロイドアンギオパチー、トランスチレチン関連脳アミロイドアンギオパチー、またはゲルソリン関連脊髄アミロイドアンギオパチーおよび脳アミロイドアンギオパチーである。
【0027】
全身性アミロイドーシスを伴う状態は原発性アミロイドーシスでもよく、反応性アミロイドーシスまたは家族性アミロイドーシスでもよい。好ましくは、この状態はAL、家族性トランスチレチン関連アミロイドーシス、アミロイドタンパク質A関連アミロイドーシス、またはアポリポタンパク質A-I、ゲルソリン、フィブリノゲンAα、もしくはリゾチームに関連した家族性アミロイドーシスからなる群より選択される。
【0028】
本発明による治療方法および組成物は、関連する状態の他の治療と併用できることが明確に理解されるだろう。例えば、状態が脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う場合(特に、アルツハイマー病の場合)、本発明による治療方法および組成物は、アセチルコリンエステラーゼ活性部位阻害剤(例えばフェンセリン(phenserine)、ガランタミン、もしくはタクリン);酸化防止剤(例えばビタミンEもしくはビタミンC);エストロゲン剤(例えば17-β-エストラジオール);キレート剤(例えばクリオキノール);またはAChE周辺部位阻害剤(例えばプロピジウムもしくはガラミン)などの別の薬剤を用いた治療と併用することができる。
【0029】
1つの態様において、状態は、Aβ以外のアミロイド型タンパク質(例えば、シヌクレイン)に関連する。この態様では、状態はパーキンソン病、レヴィー小体形成を伴う痴呆、多系統萎縮、ハレルフォルデン−スパッツ病、およびびまん性レヴィー小体病からなる群より選択される。
【0030】
本明細書で使用する用語「被検体」は、薬学的に活性な薬剤による治療を必要とする疾患または状態を有する任意の哺乳動物を意味する。哺乳動物はヒトでもよく、家畜またはコンパニオンアニマルでもよい。本発明の化合物はヒト治療での使用に適していることが特に意図されるが、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマルならびにウマ、ウシ、およびヒツジなどの家畜または類人猿およびサル、ネコ科、イヌ科、ウシ科、および有蹄類などの動物園の動物の治療を含む、獣医学的な治療にも適用することができる。
【0031】
薬学的組成物を調製するための方法および薬学的担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences,第20版,Williams&Wilkins,Pennsylvania,USAなどの教科書に示されるように、当技術分野において周知である。
【0032】
本発明の化合物および組成物は任意の適切な経路により投与することができ、当業者は、治療しようとする状態に最も適した経路および用量を容易に決定することができる。投与量は主治医または獣医師の自由裁量によって決まり、治療しようとする状態の種類および様子、治療しようとする被検体の年齢および一般的な健康状態、投与経路、ならびに投与された可能性のある以前の治療に左右される。任意で本発明の化合物は、状態の治療に適した1つまたは複数の種類の他の薬学的に活性な薬剤と共に投与することができる(すなわち本発明の化合物は、このような1つまたは複数の種類の薬剤と共に、このような1つまたは複数の種類の薬剤の前に、またはこのような1つまたは複数の種類の薬剤の後に投与することができる)。
【0033】
担体または希釈剤および他の賦形剤は投与経路に左右され、これもまた、当業者は、それぞれの特定の場合に最も適した処方物を容易に決定することができる。
【0034】
本明細書で使用する用語「治療有効量」は、望ましい治療反応を生じるのに有効な(例えば、薬学的に活性な薬剤の投与による治療に感受性のある疾患を予防または治療するのに有効な)本発明の化合物の量を意味する。
【0035】
もちろん、特定の「治療有効量」は、治療している特定の状態、被検体の身体状態および病歴、治療している動物の種類、治療期間、(もしあれば)併用療法の種類、ならびに使用される特定の処方物ならびに化合物またはその誘導体の構造などの要因によって変化する。
【0036】
本明細書で使用する「薬学的担体」は、本発明の化合物および/または別の薬学的に活性な薬剤を被検体に送達するための薬学的に許容される溶媒、懸濁剤、賦形剤、または伝播体である。担体は液体でも固体でもよく、計画された投与方法を想定して選択される。
【0037】
本発明の化合物は、従来の無毒の薬学的に許容される担体、佐薬、および伝播体を含む投与単位処方物の形で経口投与、局所投与、または非経口投与されてもよい。本明細書で使用する用語「非経口の」は、皮下の、静脈内の、筋肉内の、くも膜下の、頭蓋内の注射法または注入法を含む。
【0038】
一般的に、「治療する」、「治療」などの用語は、望ましい薬理学的効果および/または生理学的効果を得るように被検体、組織、または細胞に影響を及ぼすことを意味するのに本明細書で用いられる。この効果は、疾患またはその徴候もしくは症状を完全にまたは部分的に予防するという点で予防的な効果でもよく、ならびに/あるいは疾患を部分的または完全に治癒するという点で治療的な効果でもよい。本明細書で使用する「治療する」は、脊椎動物、哺乳動物(特にヒト)における疾患の任意の治療または予防を含み、疾患にかかる可能性があるが、疾患を有すると診断されていない被検体において、疾患が生じないようにすること;疾患を阻害すること(すなわち、疾患の発症を止めること);または疾患の影響を緩和もしくは改善すること(すなわち、疾患の影響を後退させること)を含む。
【0039】
本発明は、疾患を改善するのに有用な様々な薬学的組成物を含む。本発明の1つの態様による薬学的組成物は、担体、賦形剤、および添加剤もしくは佐剤を用いて、本発明の化合物および任意で1つまたは複数の種類の他の薬学的に活性な薬剤、または本発明の化合物および1つまたは複数の種類の他の薬学的に活性な薬剤の組み合わせを被検体への投与に適した形にすることによって調製される。
【0040】
よく用いられている担体または佐剤として、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物油および植物油、ポリエチレングリコールおよび溶媒(例えば、滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコール)が挙げられる。静脈内伝播体として液体補充物および栄養補充物が挙げられる。防腐剤として、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤および希ガスが挙げられる。他の薬学的に許容される 担体として、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,第20版. Williams&Wilkins(2000)およびThe British National Formulary 第43版 (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net)(この内容は参照として本明細書に組み入れられる)に記載のような、水溶液、無毒の賦形剤(塩、防腐剤、緩衝液などを含む)が挙げられる。薬学的組成物の様々な成分のpHおよび正確な濃度は当技術分野における日常的な技術に従って調節される。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (第7版,1985)を参照のこと。
【0041】
薬学的組成物は、好ましくは投与単位の形で調製および投与される。固体投与単位として、錠剤、カプセル、および坐剤が挙げられる。被検体を治療する場合、化合物の活性、投与方法、疾患の特徴および重篤度、被検体の年齢および体重に応じて、様々な一日量を使用することができる。しかしながら、ある特定の条件下では、それより高いまたは低い一日量が適している場合がある。一日量の投与は、個々の投与単位またはそれより小さいいくつかの投与単位の形で単回投与によって行うことができ、また、一定の間隔をあけて細分した量の複数回投与によって行うこともできる。
【0042】
本明細書の目的のために、単語「含む(comprising)」は「を含むが、それに限定されない(including but not limited to)」を意味し、単語「含む(comprises)」は対応する意味を有することが明確に理解されるだろう。
【0043】
発明の詳細な説明
今から、以下の限定しない実施例および図面のみを参照することによって、本発明を詳細に説明する。
【0044】
本明細書で用いられる略語は以下の通りである。
AD アルツハイマー病
APP β-アミロイドタンパク質前駆体
CAA 脳アミロイドアンギオパチー
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMPC ジミリストイル-L-α-ホスファチジルコリン
DMPE ジミリストイル-L-α-ホスファチジルエタノールアミン
MPG ジミリストイル-L-α-ホスファチジルグリセロール
DMPS ジミリストイル-L-α-ホスファチジルセリン
MTS [3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェ ニル)-2(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム
SMC 平滑筋細胞
SUV 100nmの小さな単層の小胞
【0045】
本発明者らは、表面プラズモン共鳴を用いて、Aβペプチドと合成脂質二重層との結合およびAβペプチドと血管平滑筋細胞(SMC)に由来する原形質膜に富む調製物との結合を調べた。本発明者らは、Aβと膜との結合の程度がAβの毒性の程度と非常によく相関することを発見した。重要なことに、本発明者らは、Aβと合成脂質の結合およびAβと無傷のSMC膜との結合にはコレステロールの存在が必要であり、コレステロール生合成阻害剤を用いて膜コレステロール含有量を低下させるとAβの毒性が低下することを証明した。
【0046】
本発明者らの結果は、コレステロールを低下させる薬物が、Aβの膜結合を低下させることによってAβの毒性を低下させるという考えを強く裏付けている。
【0047】
材料
Aβペプチドは、手動の固相Boc(N-tert-ブトカルボニル)アミノ酸合成を用いて合成した。ペプチドは、手動の固相Bocアミノ酸化学とインサイチュー中和を用いて合成した。
【0048】
アシル化は、5当量のBoc保護アミノ酸、4.9当量の2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロフォスフェート、5当量の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、および7.5当量のジイソプロピルエチルアミンを溶解したジメチルホルムアミドを用いて行った。それぞれのアシル化を、ニンヒドリンを用いてモニターし、必要に応じて、カップリングを繰り返した。Aβペプチドを、無水フッ化水素およびp-クレゾール/p-チオクレゾールを用いて樹脂から切り離した。次いで、フッ化水素を除去し、ペプチドをトリフルオロ酢酸に溶解し、エーテルで沈殿させた。
【0049】
ペプチドの精製は、60℃に加熱した逆相調製用Zorbax高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムにおいてアセトニトリル/水(0.01%トリフルオロ酢酸)勾配を用いて行った。ペプチドの純度(95%)および同一性は、分析用HPLC、エレクトロスプレー質量分析、およびアミノ酸分析によって分析した。
【0050】
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)およびペニシリン/ストレプトマイシンはGibco Life Technologies(Mulgrave,Vic,Australia)から購入し、胎仔ウシ血清(熱不活化)はCommonwealth Serum Laboratories(Parkville,Vic.,Australia)から購入した。N-オクチル-D-グルコピラノシド、ジミリストイル-L-α-ホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイル-L-α-ホスファチジル-DL-グリセロール(DMPG)、ジミリストイル-L-α-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジミリストイル-L-α-ホスファチジルセリン(DMPS)、およびD-コレステロールはSigma(St Louis,MO,USA)から購入した。ロバスタチンはCalbiochem(Sydney,NSW,Australia)から購入し、以前に述べられたように(Jakobisiakら,1991)、その活性開環型に活性化した。
【0051】
Aβペプチドの可溶化およびエイジング(aging)
Aβ1-42、Aβ1-40、Aβ1-28、Aβ17-42、およびAβ29-42を2mMの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。次いで、ペプチド溶液を5分間、超音波処理し(42kHz)、HermleZ160M卓上微量遠心機を用いて、5,000rpmで室温で1分間遠心分離した。可溶化したペプチドをすぐに急速冷凍し、ボルテックスミキサーで15秒間混合した。次いで、ペプチドを、最終濃度が10μMになるように細胞培養実験用にはDMEMで、またはバイオセンサー実験用には0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)で希釈した。線維オリゴマー種の割合を増加させるプロセスであるAβペプチドの「エイジング」のために(JarrettおよびLansbury,1992)、100μMの濃度のペプチドを、5%CO2の加湿雰囲気において37℃で5日間インキュベートした。
【0052】
アミロイド線維のコンゴレッドアッセイ
アミロイド線維の濃度はKlunkら(1999)のアッセイを用いて測定した。Aβペプチドとコンゴレッド(CR)を0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)中で混合した。ペプチドおよびCRの最終濃度は10μMであった。CRのみの溶液も0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)にて調製した。混合物を短時間ボルテックスし、次いで、室温で15分間インキュベートした。403nmおよび541nmでの吸光度を、BioRad SmartSpec3000分光光度計を用いて測定した。各試料から得られた値から、緩衝液のみのバックグラウンド吸光度値を差し引いた。次いで、以下の式を用いて、各調製物におけるAβ線維の濃度を求めた。
[A線維]=(A541nmAβ:CR溶液/4780)-(Aβ:CR溶液のA403nm/6830)-(CR溶液のA403nm/8620)
【0053】
全ての調製物を3回繰り返して調製し、アッセイを独立して3回行った。同様の結果がそれぞれの実験において得られた。
【0054】
血管平滑筋細胞培養
Sprague-Dawleyラットの大動脈に由来する血管SMCを、10%胎仔ウシ血清およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM中で5%CO2加湿雰囲気において37℃で培養した。血管SMCを、96ウェルプレートでは104細胞/ウェルの密度で、または培地20mlを含む75cm2細胞培養フラスコ(Nunc, Denmark)1個につき106細胞の密度でプレートし、80%コンフルエンスまで増殖させた。この後、培地を除去し、10μMロバスタチンを含む、または含まない新鮮な無血清培地と交換した。次いで、細胞を72時間インキュベートした。次いで、細胞を膜の調製に使用するか、または細胞傷害アッセイのためにAβペプチド(10μM)とインキュベートした。後者の場合では、Aβペプチドを培地に添加し、細胞をさらに24時間インキュベートした。対照のインキュベーションでは、伝播体のみを添加した(すなわち、ペプチドなし)。
【0055】
MTS細胞傷害アッセイ
細胞傷害性は、CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay kit(Promega Corporation,Madison,WI,USA)(Coryら,1991)を用いて測定した。[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム(MTS)試薬溶液を10体積%の濃度で培地に添加した。次いで、細胞を37℃でさらに2時間インキュベートし、試料の吸光度を、Wallac Victor1420プレートリーダーを用いて560nmの波長で測定した。
【0056】
原形質膜の調製
粗原形質膜の調製は分画遠心分離によって血管SMCから調製した(Hubbardら,1983)。細胞をセルスクレーパーを用いて10×75cm2フラスコからこそぎ落とし、DMEMに溶解してBeckman CoulterのAllegra21R遠心分離器において3,000rpmで4℃で3分間遠心分離した。次いで、ペレットをリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、STM緩衝液(0.25Mスクロース/5mM Tris-HCl,pH7.4/1.0mM MgCl2)10mlに添加し、ゆるくフィットする乳棒を備えた40mlDounce型ガラスホモジナイザー内で10回上げ下げして氷上でホモジナイズした。ホモジネートを1,100rpmで5分間遠心分離した。上清画分を取っておき、ペレットを5mlのSTM緩衝液中で再度ホモジナイズした。懸濁液を再度遠心分離し、第1の上清画分および第2の上清画分を混合し、次いで、40,000rpmで2時間遠心分離し(ベックマンL8-M超遠心機,70Tiローター,ブレーキなし)、結果として得られた粗原形質膜画分を0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)1.0mlに再懸濁した。膜の総コレステロールは、Amplexレッドコレステロールアッセイキット(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)を用いて測定した。膜調製物のタンパク質含有量は、ウシ血清アルブミンを標準として用いたビシンコニン酸(BCA)アッセイを用いて測定した。
【0057】
合成モデル膜の調製
DMPC、DMPG、DMPS、およびDMPE、ならびにコレステロールを含む100nmの小さな単層の小胞(SUV)を、0.02Mリン酸緩衝液(pH6.8)中で超音波処理および抽出することによって調製した。簡単に述べると、全脂質1.5mgをCHC13:MeOH(3:1,v/v)1.5mlに溶解した。アリコート(408μl)を取り出し、窒素の流れの下で蒸発させ、脂質を真空内で一晩さらに乾燥させた。次いで、脂質を0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)600μlに再懸濁した。結果として得られた脂質分散液を透明になるまで浴型超音波処理器(bath type sonicator)で超音波処理し、次いで、Liposofast 装置(Avestin,Ottawa,Canada)を用いて100nm孔径ポリカーボネートフィルターに17回押し出して、100nmのSUVを得た。この混合脂質小胞は、80%(w/w)、60%(w/w)、40%(w/w)、30%(w/w)、または0%(w/w)のコレステロールを含んだ。残りの脂質は、重量比75:20:2.5:2.5のDMPC:DMPE:DMPS:DMPG混合物からなった。
【0058】
結合試験
結合実験は、BIAcoreX分析システム(Biacore,Uppsala,Sweden)と製造業者により供給されたL1センサーチップ(Biacore)を用いて行った。好ましくは、チップ表面が、結合した脂質物質が二重層構造または単層構造を保持できるようなものであれば、他のタイプのバイオセンサーも使用できることが理解されるだろう。全ての実験で用いられるランニング緩衝液は0.02Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)(リン酸緩衝液)であった。洗浄液は40mM N-オクチルβ-D-グルコピラノシドであった。再生液は10mM水酸化ナトリウムであった。全ての溶液を新しく調製し、脱気し、0.22μMフィルターに通して濾過した。動作温度は25℃であった。
【0059】
L1チップのアルキル表面は、非イオン性40mMオクチルグルコシド25μlを5μl/分の流速で注入することによってきれいにした。次いで、直ぐにSUV(100μl)または血管SMC膜(100μl,0.33mgのタンパク質を含有)を5μl/分の低速でチップ表面に適用した。合成脂質表面から多層状の構造を取り除くために、10mM水酸化ナトリウム30μlを50μl/分の流速で注入した。これにより、固定化SUV層の首尾よい形成に対応する安定したベースラインが得られた。
【0060】
ペプチド溶液を0.5μM〜10μMの濃度で調製した。溶液を、脂質表面上に5μl/分の流速で20分間注入した。次いで、ペプチド溶液をリン酸緩衝液に交換し、ペプチド-膜複合体を解離させた。合成脂質層または血管SMC膜層の除去を伴わない、結合ペプチドの除去およびL1チップ表面の再生は、水酸化ナトリウム(30μl,10mM)を50μl/分の流速で注入することによって行った。
【0061】
結合の量(レスポンスユニット(RU))は、BIAevaluation3.0ソフトウェア(Biacore)を用いて、簡単な1対1ラングミュア(Langmuir)反応モデル(Mortonら,1995):
A+B⇔AB
または競合反応モデル(KarlssonおよびFalt,1997):
A+B⇔ABおよびA+C⇔AC
によりフィットされた。5種類のペプチド濃度で行った5種類の結合実験から得られたデータは、平衡会合定数(KA)を得るために全体的にフィットされた。各フィットの精度は、データのX2値を計算することによって評価した(KarlssonおよびFalt,1997)。X2値が小さければデータが良好にフィットしているとみなした。結合は、20分間のペプチドとのインキュベーション後に平衡に近づくことが分かった。従って、膜との全結合を日常的に定量するために、ペプチドを添加して20分後に得られたRU値(RU20)を各濃度での最大結合推定値(Req)とみなした。BIAevaluation3.0ソフトウェア(Biacore)を用いて、スキャッチャードプロットを作成した。
【0062】
実施例1 血管平滑筋細胞に対するAβの毒性
血管SMCに対するAβの毒性を測定するために、細胞培養物をAβペプチドおよび類似体(10μM)で処理し、毒性の量をMTSアッセイ(Coryら,1991)を用いて測定した。Aβ1-40、Aβ1-42、Aβ29-42、およびAβ17-42は全て、図1に示すように有意な毒性を引き起こすことが分かった。Aβ1-28は毒性が低かった。これは、Aβの毒性がペプチドのより疎水性のあるC末端領域と関連している可能性があることを示唆している。ペプチドを5日間インキュベートすることによってエイジングすると、毒性が有意に増大した。以前の研究(例えば、Pikeら,1991)から、Aβの線維への凝集は有毒種の発生にとって重要である可能性が示されている。本結果はこの結論を裏付けている。Aβペプチドを5日間インキュベートすると、図2に示したように線維種(fibrillar species)の割合が有意に増大した(コンゴレッド結合アッセイにより測定した)。一般的に、Aβ毒性の量は線維種の割合とほぼ相関していた。例えば、Aβ1-42をエイジングした後に細胞傷害性は有意に増大した(p<0.05;スチューデントt検定)。さらに、エイジングされたAβ1-28は、試験された他のAβ種より形成した線維種が少なく、血管SMC培養物に対する毒性が有意に低かった。
【0063】
実施例2 Aβペプチドと脂質との結合
以前の研究から、Aβは脂質膜と直接相互作用できることが分かっているので、本発明者らは、Aβ毒性作用の原因が血管SMC膜との直接的な相互作用である可能性を調べた。Aβと脂質との結合を研究するために、バイオセンサー技術を使用した。最初に、バイオセンサーチップを、60%コレステロール、30%DMPC、8%DMPE、1%DMPS、および1%DMPGを含む合成脂質混合物でコーティングし、Aβ1-42およびAβ1-40のセンサーグラムを得た。これらを、それぞれ図3Aおよび図3Bに示す。ペプチドは2相的に脂質表面に結合した。ペプチドと脂質表面との初期会合は急速であった。ペプチドを適用して約20分後に、最大結合に近づいた。結合複合体の解離曲線は同様の二相パターンに従った。シグナルは注入期間の終わりに急速に下がった。なぜなら、ペプチドはもはや存在せず、緩衝液の流れが多量の弱く結合したペプチドを取り除いたからである。一般的に、バイオセンサーが10mM NaOHではがされるまで、ペプチドセンサーグラムはゼロに戻らなかった。これは、ペプチドの一部が依然として表面に結合していたことを示している。
【0064】
Aβ-脂質相互作用の二相性は、会合解離曲線の曲線フィッティング分析によって確かめられた。最も簡単な1対1ラングミュア結合モデル(Mortonら,1995)を用いて、良好なフィットは得られなかった(Aβ1-42のX2=1035;Aβ1-40のX2=1200)。しかしながら、競合反応モデル(KarlssonおよびFalt,1997)を用いて、有意に改善したフィットが得られた(Aβ1-42のX2=400;Aβ1-40のX2=370)。図3Cに示すように、結合データのスキャッチャードプロット分析もAβ1-42およびAβ1-40の両方について二相相互作用と一致した。
【0065】
合成脂質混合物への結合能力についてのAβペプチドおよび類似体の比較から、脂質結合の程度(図4に示す)と各ペプチドにより引き起こされる毒性の量(図1に示す)はかなり一致することが分かった。例えば、毒性の強いC末端Aβ断片(Aβ29-42およびAβ17-42)は、毒性の弱いN末端断片(Aβ1-28)より強く結合した。
【0066】
図5に示すように、合成脂質混合物中のコレステロールとリン脂質との比は、高親和性の脂質結合の程度と直接の関連性があった。純粋なリン脂質混合物を使用した時、結合はほとんど観察されなかった。しかしながら、30%〜80%の高濃度のコレステロールでは、結合量は増大した。この結合の増大はまた、図3Aおよび3Bからのキネティックデータと競合反応モデルとのフィッティング後に求められた平衡会合定数の増加にも反映された。表1に示すように、Aβ1-42ペプチドおよびAβ1-40ペプチドは両方とも、高い割合のコレステロールを含む合成脂質混合物に対する結合親和性が高かった。
【0067】
(表1)結合の競合反応モデルに基づくAβと合成脂質混合物との結合の平衡会合定数(KA)の値

KA1=高親和性結合成分の平衡会合定数
KA2=低親和性結合成分の平衡会合定数
【0068】
実施例4 結合に及ぼすコレステロールの影響
血管SMC膜のコレステロール含有量がAβの結合に影響を及ぼすかどうかを確かめるために、本発明者らは、血管平滑筋細胞から原形質膜に富む画分を調製し、この画分をバイオセンサーチップに適用した。図6に示すように、10μMの濃度で適用した時、Aβ1-40およびAβ1-42は両方とも膜画分に結合した。全結合量は、図5に示した60%コレステロールおよび40%リン脂質を含む合成脂質混合物で観察された全結合量の約10%であった。
【0069】
実施例5 結合に及ぼすコレステロール合成阻害剤の影響
膜へのAβ結合に及ぼすコレステロール生合成阻害剤ロバスタチンの影響も調べた。細胞をロバスタチンで72時間前処理し、次いで、原形質膜に富む画分を調製した。膜画分のタンパク質組成は対照群(3.29±0.15mg/ml)およびロバスタチン処理群(3.24±0.03mg/ml)で非常によく似ていた。これは、ロバスタチン処理は全膜タンパク質の量を有意に変えなかったことを示している。図6Aおよび6Bに示すように、細胞をロバスタチンで処理すると、Aβ1-40と膜画分との結合およびAβ1-42と膜画分との結合は両方とも著しく低下することが分かった。ロバスタチン処理後、膜画分のコレステロール含有量は、未処理細胞から回収された膜画分のコレステロール含有量の約55%まで減少した(図6,パネルB)。Aβ1-40およびAβ1-42とロバスタチン処理細胞の原形質膜画分との結合は、ロバスタチンの前処理なしで得られた結合の約25%であった。平衡会合定数により示されるように、両ペプチドの、非処理血管SMC膜に対する結合親和性はロバスタチン処理膜に対する結合親和性より高かった。これを表2にまとめた。
【0070】
(表2)結合の競合反応モデルに基づくAβと血管SMC膜との結合の平衡会合定数の値

KA1=高親和性結合成分の平衡会合定数
KA2=低親和性結合成分の平衡会合定数
【0071】
実施例6 毒性に及ぼすコレステロール合成阻害の影響
この結合の低下がAβ毒性に対して結果をもたらす可能性があるかどうかを調べるために、細胞をロバスタチン処理した後にMTSアッセイを用いて、Aβ毒性の量を測定した。結果を図7に示す。ロバスタチンのみでは、血管SMCがMTSを還元する能力にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、Aβ1-40およびAβ1-42により誘導されるMTS還元の低下が、対照よりロバスタチン処理細胞において約25%〜40%低かったので、ロバスタチンで前処理された細胞は未処理細胞よりAβ毒性に対して耐性であった。
【0072】
考察
本発明者らは、Aβと合成脂質混合物との結合およびAβと血管SMC膜との結合にはコレステロールが必要であることを証明した。本発明者らの結果はまた、原形質膜コレステロールを減少させると、Aβの毒性が低下することも示唆している。ひとまとめにして考えると、本発明者らの結果は、Aβの毒性にはAβと原形質膜の脂質成分との結合が必要であることを示している。
【0073】
センサーグラムのデータ分析から、Aβと脂質膜との結合は簡単な1対1相互作用より複雑であることが分かった。この結論はまた、非直線(すなわち二相性)のスキャッチャードプロットによっても裏付けられた。これらのデータにはいくつかの解釈が可能であるが、1つの可能性はAβが複数の状態(それぞれが異なる親和性で脂質に結合する)で存在することである。ペプチドを5日間インキュベートすることによってエイジングすると、Aβの結合が増大し、アミロイド線維の濃度が増加することが分かった。非エイジングAβもいくらかのアミロイド線維を含んでいた。これは、異なるオリゴマー種が脂質結合に対して異なる親和性を有することを示唆している。この理由から、スキャッチャード分析からのデータは注意して解釈しなければならない。結合は二相性である可能性がある。しかしながら、より多くのデータによって、さらに複雑な相互作用が明らかになるかもしれない。同じ理由から、表1および表2に報告した、競合反応モデルから計算された親和性定数は、独立した重要性を有するのではなく、脂質膜に対するAβの全体的親和性を示していると考えるべきである。
【0074】
Aβ毒性におけるコレステロールの役割に関する相反する報告があった。ZhouおよびRichardson(1996)は、メチル-β-シクロデキストリン-コレステロールがAβによる毒性から細胞を保護することを報告した。しかしながら、この研究では、コレステロールは外因的に添加され、原形質膜の脂質組成は分析されなかった。対照的に、Wangら(2001)は、メチル-β-シクロデキストリン単独では細胞コレステロールを低下させることによってAβの毒性を弱めることを報告し、メチル-β-シクロデキストリン-コレステロールの作用が外因性コレステロールの添加と関連するのではなく細胞コレステロールの消失とより関連している可能性があることを示唆した。本発明者らの研究は、この考えを強く裏付けており、ならびに毒性低下の生化学的な説明を提供する。
【0075】
Aβの膜結合がAβの毒性に関与するという優れた証拠がある。Aβはリン脂質に結合することができ(Waschukら,2001)、Aβと負のリン脂質(negative phospholipid)との静電気的相互作用が阻害されるとAβの毒性を阻害することができる(Hertelら,1997)。本発明者らは、水酸化ナトリウムによって結合Aβが脂質膜から容易に取り除かれることを発見した。これは、疎水的な力ではなく静電気的な力が関与していることを示唆している。これは、脂質二重層に疎水的に結合し、脂質二重層に深く貫通する他の多くのペプチドの挙動とは異なる(Mozsolitsら,2001)。実際に、コレステロールはAβに(恐らく、疎水的な相互作用を介して)結合することができるが、JiらはAβとコレステロールの結合が線維形成を阻害することを示し、コレステロールが神経を保護する可能性があると推測した。しかしながら、本発明者らの研究では、コレステロールの増加は毒性の増大と明らかに関連していた。従って、Aβとコレステロールの直接的な結合は、本発明者らの系におけるAβと膜との相互作用に関与していない可能性がある。Aβはスフィンゴ脂質およびガングリオシドにも結合することができる(Arigaら,2001;Valdez-Gonzalezら,2001;Mahoufら,200)。従って、コレステロールは他の役割(恐らく、膜流動性の制御における役割)を果たしている可能性がある。この考えは、コレステロール含有量を変えると結合の平衡会合定数(KA)が変化する(すなわち、膜全体の性質がコレステロールによって結合親和性を高めるように変化する)という本発明者らの発見と合致する。
【0076】
Aβが細胞膜に結合することによって細胞毒性が引き起こされる機構は依然として不明確である。フリーラジカル生成、脂質過酸化、およびイオンチャンネル機能の変化が結び付けられてきた(SmallおよびMcLean,1999により概説)。Aβが膜の脂質成分に直接結合すれば、膜流動性の変化が生じるかもしれない。Chochinaら(2001)は、シナプス原形質膜を用いて、Aβ1-40がニューロン膜流動性を高めることができると報告したが、これとは対照的に、Kremerら(2001)は、合成脂質を用いて、Aβが膜流動性を低下できることを発見した。もちろん、膜流動性が変化すれば、イオンチャンネルを含む細胞表面上の様々なタンパク質の機能に影響が及ぶ可能性がある。例えば、流動性が変化すると、ニコチン受容体の膜直下局在および機能に影響が及ぶことが知られている(Baenzigerら,2000)。
【0077】
本発明者らは、Aβ凝集の程度が血管SMC毒性反応と相関することを発見した。エイジングの過程では、Aβから形成されるアミロイド線維の数が増加するが(CR結合アッセイを用いて評価した)、これは、線維がAβの主な毒性形態であるという証明にはならない。例えば、エイジングされたAβ1-28は線維を形成しなかったが、血管SMに対する毒性は他のペプチドより非常に低いが依然としてあった。Aβは、恐らく、単量体として分泌され、その後に、凝集して可溶性のオリゴマーまたは線維となる(Podlisnyら,1998)。Aβの可溶性オリゴマー種の濃度もエイジングのプロセスによって増加する可能性が高い。Lambertら(1998)による最近の研究によって、小さな低分子量のAβ1-42オリゴマーが、高分子量のAβ1-42線維種より神経毒として数桁強いことが分かった。
【0078】
従って、Aβの毒性形態の正体を特定する、および毒性機構を突き止めるためには、さらに多くの研究が必要である。
【0079】
血中コレステロール濃度の低下がアルツハイマー病にとって有益な可能性があるという、いくつかの疫学的証拠がある。少なくとも1つの集団に基づく研究において、コレステロール濃度が高い個体のAD発生率が高いことが発見された(Roherら,1999)。アポリポタンパク質E遺伝子のε4対立遺伝子は、アルツハイマー病の危険因子であることが知られており(Balesら,1997;Corderら,1993)、ε4対立遺伝子がホモの痴呆個体は、正常な高齢者対照より血漿中のコレステロール濃度が高いことが報告されている(Czechら,1994)。この考えはまた、コレステロール低下薬物で処置されたAPPトランスジェニックマウスでは、AD様症状の重篤度が低いという観察によっても裏付けられている(Refoloら,2001)。実際に、コレステロール低下スタチンを用いた2つの後向き研究は、ADを発症するリスクの劇的な減少を報告している(Jickら,2000;Wolozinら,2000)。
【0080】
コレステロールはAD発生において2つ以上の役割がある可能性がある。多くの研究によって、コレステロールはAβ生成の調節にも重要であることが分かっている(Mizunoら,1998)。高いコレステロールの取り込みは、トランスジェニックマウスのAβ沈着を増大させることができる(Refoloら,2000;Sparksら,1994)。コレステロールの欠乏は海馬ニューロンにおけるAβ生成を阻害することができ(Simonsら,1998)、この作用はAPPセクレターゼによって媒介される可能性がある(Kojiroら,2001)。従って、AD治療戦略としてのコレステロール生合成阻害は二重の有益な役割(脳におけるAβ生成を低下させる役割だけでなく、Aβ蓄積による毒性を低下させる役割)を有する可能性がある。コレステロール生合成阻害剤には大きな毒性副作用がほとんどないので、このアプローチと、セクレターゼ阻害剤(NunanおよびSmall,2000)、Aβ免疫化(Schenkら,1999)、またはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ガランタミンReminyl(登録商標)の使用などの他の治療戦略との併用が、えり抜きの治療になる可能性がある。
【0081】
分かりやすく、かつ理解しやすいようにするために本発明をいくらか詳しく説明したが、本明細書に開示される本発明の概念の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の態様および方法に様々な修正および変更を加えることができることは当業者に明らかであろう。
【0082】
本明細書で引用された参考文献が以下の頁に列挙され、参照として本明細書に組み入れられる。
参考文献










【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】血管SMCの生存に及ぼすAβペプチドの影響を示す。血管SMC培養物とAβペプチド(10μM,非エイジングまたは5日間エイジング)とを24時間インキュベートした。MTS放出の減少は、ペプチド非添加培養物の平均値の割合として計算した。値は平均±SEM(n=3)である。星印は、非エイジングペプチドを用いた対応するインキュベーションから得た値と有意に異なる値を示す(P<0.05,スチューデントt検定)。
【図2】新鮮なAβペプチド調製物またはエイジングさせたAβペプチド調製物におけるアミロイド線維の濃度を示す(コンゴレッド結合アッセイによって測定した)。Aβペプチドは5日間エイジングされるか、または新鮮に調製され、次いで、コンゴレッドとインキュベートした。アミロイド線維の濃度は分光光度法で測定した。星印は、非エイジングペプチドを用いた対応する実験から得た値と有意に異なる値を示す(P<0.05,スチューデントt検定)。
【図3】図3AおよびBは、様々な濃度の非エイジングAβ1-42(A)およびAβ1-40(B)と、60%コレステロールおよび40%リン脂質を含むSUVとの結合を示すセンサーグラムを示す。結合はレスポンスユニット(RU)で示される。図3Cは、Aβ1-42およびAβ1-40と、60%コレステロールおよび40%リン脂質を含むSUVとの結合のスキャッチャードプロット分析の結果を示す。Req =各濃度のRUの理論最大値。C(=Aβの濃度(μM))は、非結合Aβの総量の近似値として使用した。
【図4】Aβペプチドと合成リン脂質膜との結合に及ぼすエイジングの影響の定量分析結果を示す。5日間エイジングしたAβペプチド(10μM)を、コレステロール:リン脂質(60:40,w/w)表面上に注入した。結合は、ペプチド添加の20分後に記録したレスポンスユニット(RU20)で示される。値は平均±SEM(n=3)である。星印は、非エイジングペプチドを用いた対応する実験から得た値と有意に異なる値を示す(P<0.05,スチューデントt検定)。
【図5】Aβ1-40およびAβ1-42と合成脂質膜との結合に及ぼすコレステロール:リン脂質比の影響を示す。非エイジングAβペプチド(10μM)をバイオセンサーの膜表面上に注入し、結合を測定した。結合は、ペプチド添加の20分後に記録したレスポンスユニット(RU20)で示される。値は平均±SEM(n=3)である。星印は、Aβ1-40を用いた対応するインキュベーションから得た値と有意に異なるAβ1-42の値を示す(P<0.05,スチューデントt検定)。PL=リン脂質。
【図6】Aβペプチドと血管SMC膜との結合に及ぼすロバスタチンの影響を示す。非エイジングAβペプチド(10μM)を、ロバスタチン処理(10μg/ml)血管SMC膜表面および未処理血管SMC膜の表面に注入し、結合を測定した。A.Aβ結合は、ペプチド添加の20分後に記録したレスポンスユニット(RU20)で示される。棒は平均値±SEM(n=3)を示す。B.未処理細胞およびロバスタチン処理細胞からの粗原形質膜調製物のコレステロール含有量。アッセイ前に膜調製物を1:100に希釈した。棒は平均±SEM(n=3)である。星印は、ロバスタチンを使用しなかった対応するインキュベーションから得た値と有意に異なる値を示す(P<0.05,スチューデントt検定)。
【図7】Aβ毒性に及ぼすロバスタチンの影響を示す。ロバスタチン処理血管SMC培養物および未処理血管SMC培養物を非エイジングAβペプチド(10μM)とインキュベートした。MTS放出の減少を、非添加対照培養物の平均値の割合として計算した。値は平均±SEM(n=3)である。星印は、ロバスタチンを使用しなかった対応するインキュベーションから得た値と有意に異なる値を示す(P<0.05,スチューデントt検定)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物に結合したバイオセンサー膜を含む、脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療するための候補薬剤をスクリーニングする装置。
【請求項2】
脂質調製物が約30%〜80%のコレステロールを含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
脂質調製物が、標的状態に従って選択される平滑筋細胞、神経細胞、腎細胞、心筋細胞、または肝細胞の細胞ホモジネートの原形質膜に富む画分である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
状態が脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴い、かつ脂質調製物が平滑筋細胞または神経細胞から調製される、請求項1記載の装置。
【請求項5】
状態が全身性アミロイドーシスであり、かつ細胞ホモジネートが腎細胞、心筋細胞、または肝細胞から調製される、請求項1記載の装置。
【請求項6】
脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療するための候補薬剤をスクリーニングする方法であり、以下の段階を含む方法:
アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合に対する候補薬剤の作用を評価する段階であり、ここで、結合の阻害が潜在的に有用な活性を示す段階。
【請求項7】
脳または脳血管に対する潜在的な毒性について候補薬剤をスクリーニングする方法であり、以下の段階を含む方法:
アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合に対する候補薬剤の作用を評価する段階であり、ここで、結合の促進が潜在的に有毒な活性を示す段階。
【請求項8】
脂質調製物がバイオセンサー膜に結合している、請求項6記載の方法。
【請求項9】
脂質調製物が約30%〜80%のコレステロールを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
脂質調製物が筋肉細胞または神経細胞の原形質膜に富む画分である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
細胞が血管平滑筋細胞またはニューロンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アミロイドペプチドがAβであり、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の存在下で行われる、請求項8記載の方法。
【請求項13】
AChEが脂質調製物に添加される前にAβに添加される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
脂質調製物がバイオセンサー膜に結合している、請求項13記載の方法。
【請求項15】
AChEおよびAβの両方が約10μMまでの濃度である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合を阻害する能力を有する化合物である、脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う状態を治療するための薬剤。
【請求項17】
アミロイドペプチドがaβである、請求項16記載の薬剤。
【請求項18】
化合物が、コレステロール生合成を阻害する能力も有する、請求項16記載の薬剤。
【請求項19】
アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合を阻害する能力を有する化合物と共に、薬学的に許容される担体を含む、脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療するための組成物。
【請求項20】
脳アミロイドーシス、脳アンギオパチー、または全身性アミロイドーシスを伴う状態を治療する方法であり、以下の段階を含む方法:
アミロイドペプチドと、コレステロールおよびリン脂質を含む脂質調製物との結合を阻害する能力を有する有効量の化合物を、このような治療を必要とする被検体に投与する段階。
【請求項21】
状態が脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴い、アミロイドペプチドがAβである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う状態が、散発性の状態(例えば、アルツハイマー病、ダウン症候群に関連したアミロイドーシス、プリオン関連脳アミロイドーシス(クロイツフェルト-ヤコブ病および「狂牛」病に関連したその新変異型を含む)、もしくは散発性脳アンギオパチー)、または家族性の状態(例えば、常染色体優性型の家族性アルツハイマー病;Aβ前駆体タンパク質のFlemish、Arctic、Dutch、もしくはItalian変異に関連した遺伝性脳出血;アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血(アイスランド型);髄膜の脳血管性(meningocerebrovascular)アミロイドーシスおよび眼の軟髄膜の(oculoleptomeningeal)アミロイドーシス;家族性英国人痴呆(familial British dementia);家族性デンマーク人痴呆(familial Danish dementia);シスタチンC関連脳アミロイドアンギオパチー;トランスチレチン関連脳アミロイドアンギオパチー;ならびにゲルソリン関連脊髄アミロイドアンギオパチーおよび脳アミロイドアンギオパチー)である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
脳アミロイドーシスまたは脳アンギオパチーを伴う状態が、散発性もしくは家族性アルツハイマー病、ダウン症候群に関連したアミロイドーシス、散発性脳アンギオパチー、プリオン関連脳アミロイドーシス、家族性英国人痴呆、シスタチンC関連脳アミロイドアンギオパチー、トランスチレチン関連脳アミロイドアンギオパチー、またはゲルソリン関連脊髄アミロイドアンギオパチーおよび脳アミロイドアンギオパチーである、請求項20記載の方法。
【請求項24】
状態が全身性アミロイドーシスを伴い、かつ原発性アミロイドーシス、反応性アミロイドーシス、または家族性アミロイドーシスである、請求項20記載の方法。
【請求項25】
(a)状態が免疫グロブリン軽鎖関連(AL)アミロイドーシスであり、かつタンパク質が免疫グロブリン軽鎖またはその生物学的に機能する断片である、
(b)状態がアミロイドタンパク質A関連アミロイドーシスであり、かつアミロイドタンパク質がアミロイドAである、または
(c)状態が家族性アミロイドーシスであり、かつタンパク質がトランスチレチン、アポリポタンパク質A-I、ゲルソリン、フィブリノゲンAα、およびリゾチームからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
状態がシヌクレインに関連し、かつ状態がパーキンソン病、レヴィー小体形成を伴う痴呆、多系統萎縮、ハレルフォルデン−スパッツ病、およびびまん性レヴィー小体病からなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項27】
脂質調製物がバイオセンサー膜に結合している、請求項7記載の方法。
【請求項28】
脂質調製物が約30%〜80%のコレステロールを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
脂質調製物が筋肉細胞または神経細胞の原形質膜に富む画分である、請求項27記載の方法。
【請求項30】
細胞が血管平滑筋細胞またはニューロンである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
アミロイドペプチドがAβであり、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の存在下で行われる、請求項27記載の方法。
【請求項32】
AChEが脂質調製物に添加される前にAβに添加される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
脂質調製物がバイオセンサー膜に結合している、請求項32記載の方法。
【請求項34】
AChEおよびAβの両方が約10μMまでの濃度である、請求項31記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2006−515416(P2006−515416A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−530954(P2004−530954)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/019375
【国際公開番号】WO2004/001426
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(504357211)アクソニクス インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】