説明

アッセイ緩衝剤、それを含有する組成物、及びその使用方法

【課題】無機リン酸塩含有pH緩衝剤による悪影響を受けているアッセイに使用する代替pHアッセイ緩衝剤、そのpHアッセイ緩衝剤を含有する組成物、試薬、キット、システム、システムコンポーネント及び使用方法を提供する。
【解決手段】アッセイ性能を向上させるため、pH緩衝剤とリン酸特異的抗体を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2001年9月10日に出願された米国仮出願第60/318,289号、及び2002年3月11日に出願された米国仮出願第60/363,498号の優先権を主張するものである。この両方の米国仮出願を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本願は、アッセイ、特に電気化学発光アッセイに使用する組成物、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、薬物スクリーニングを含めた分析測定に電気化学発光(ECL)を利用するいくつかの市販機器がある。誘導されてECLを放出することができる種(ECL活性種)が、ECL標識として使用されてきた。ECL標識の例には、i)トリス−ビピリジル−ルテニウム(RuBpy)成分などのRu含有及びOs含有有機金属化合物を含めて、金属が例えばVIII族の貴金属である有機金属化合物、並びにii)ルミノール及びその関係化合物がある。ECLプロセスにECL標識と共に関与する種を、本明細書ではECL共反応物(coreactant)と呼ぶ。一般に使用される共反応物としては、RuBpy由来のECLに対する第三級アミン(例えば、参照により本明細書に援用する米国特許第5,846,485号を参照されたい)、オキザレート及びパーサルフェート、並びにルミノール由来のECLに対する過酸化水素(例えば、米国特許第5,240,863号を参照されたい)などがある。ECL標識が発生する光を、レポーターシグナルとして診断手続に使用することができる(Bard他、米国特許第5,238,808号)。例えば、ECL標識は、抗体、核酸プローブ、受容体又はリガンドなどの結合剤に共有結合することができる。ECL標識から発せられるECLを測定することによって、結合相互作用への結合試薬の関与をモニターすることができる。あるいは、ECL活性化合物からのECLシグナルによって、化学的環境を示すことができる(例えば、ECL共反応物の形成又は破壊をモニターするECLアッセイについて記載した米国特許第5,641,623号を参照されたい)。ECLアッセイを実施するためのECL、ECL標識、ECLアッセイ及び計装についてのさらに詳細な背景については、米国特許第5,093,268号、同第5,147,806号、同第5,324,457号、同第5,591,581号、同第5,597,910号、同第5,641,623号、同第5,643,713号、同第5,679,519号、同第5,705,402号、同第5,846,485号、同第5,866,434号、同第5,786,141号、同第5,731,147号、同第6,066,448号、同第6,136,268号、同第5,776,672号、同第5,308,754号、同第5,240,863号、同第6,207,369号及び同第5,589,136号、並びに国際公開第99/63347号、同第00/03233号、同第99/58962号、同第99/32662号、同第99/14599号、同第98/12539号、同第97/36931号及び同第98/57154号を参照されたい。
【0004】
市販のECL機器は、並外れた性能を示す。これらの機器は、優れた感度、ダイナミックレンジ、精度、及び複雑な試料マトリックスの許容度を含めた理由のために広範に使用されるようになった。市販の計測手段は、恒久的に再使用可能なフローセルを含むフローセルベースの設計を用いている。最近、電極上に固定された、ECLの誘導に使用される試薬を用いるECL計測手段が開示された(例えば、米国特許第6,140,045号、同第6,066,448号、同第6,090,545号、同第6,207,369号及び国際公開第98/12539号を参照されたい)。このようなECL測定に適した一体型電極を有するマルチウェルプレートも最近開示された(例えば、それぞれ2002年6月28日に出願され、参照により本明細書に援用する「発光試験測定用アッセイプレート、リーダーシステム及び方法(Assay Plates、Reader Systems and Methods for Luminescence Test Measurements)」と題する米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号を参照されたい)。本願と同日に出願され、参照により本明細書に援用するGlezer他による米国特許出願第 号(発明の名称:「1つの試料について複数の測定を実施する方法及び装置(Methods and Apparatus for Conducting Multiple Measurements on a Sample)」[整理番号100405−06410])も参照されたい。
【0005】
現在、無機リン酸塩を含有するpH緩衝剤が多数の電気化学発光アッセイに使用されている。出願人らは、このようなpH緩衝剤が、あるアッセイにおいて、アッセイと干渉し、アッセイの性能を低下させる恐れがあることを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,846,485号
【特許文献2】米国特許第5,240,863号
【特許文献3】米国特許第5,238,808号
【特許文献4】米国特許第5,641,623号
【特許文献5】米国特許第5,093,268号
【特許文献6】米国特許第5,147,806号
【特許文献7】米国特許第5,324,457号
【特許文献8】米国特許第5,591,581号
【特許文献9】米国特許第5,597,910号
【特許文献10】米国特許第5,641,623号
【特許文献11】米国特許第5,643,713号
【特許文献12】米国特許第5,679,519号
【特許文献13】米国特許第5,705,402号
【特許文献14】米国特許第5,846,485号
【特許文献15】米国特許第5,866,434号
【特許文献16】米国特許第5,786,141号
【特許文献17】米国特許第5,731,147号
【特許文献18】米国特許第6,066,448号
【特許文献19】米国特許第6,136,268号
【特許文献20】米国特許第5,776,672号
【特許文献21】米国特許第5,308,754号
【特許文献22】米国特許第5,240,863号
【特許文献23】米国特許第6,207,369号
【特許文献24】米国特許第5,589,136号
【特許文献25】国際公開第99/63347号
【特許文献26】国際公開第00/03233号
【特許文献27】国際公開第99/58962号
【特許文献28】国際公開第99/32662号
【特許文献29】国際公開第99/14599号
【特許文献30】国際公開第98/12539号
【特許文献31】国際公開第97/36931号
【特許文献32】国際公開第98/57154号
【特許文献33】米国特許第6,140,045号
【特許文献34】米国特許第6,066,448号
【特許文献35】米国特許第6,090,545号
【特許文献36】米国特許第6,207,369号
【特許文献37】国際公開第98/12539号
【特許文献38】米国特許出願第10/185,274号
【特許文献39】米国特許出願第10/185,363号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、無機リン酸塩含有pH緩衝剤による悪影響を受けているアッセイに使用する、それに代わるpHアッセイ緩衝剤、そのpHアッセイ緩衝剤を含有する組成物、及びその使用方法を見出すことが求められている。ECLアッセイにおいて性能が向上した代替ECLアッセイ緩衝剤を見出すことも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アッセイを実施するための改良組成物、試薬、キット、システム、システムコンポーネント及び方法に関する。より詳細には、本発明は、アッセイ性能を向上させる試薬の新規な組合せの使用に関する。
【0009】
本発明の一態様は、ECL共反応物及び、好ましくは、pH緩衝剤を含む改良されたECLアッセイ緩衝剤に関する。このECLアッセイ緩衝剤によって、ECL標識を効率良く誘導してECLを発生させ、ECLを測定することによってECL標識を高感度で測定するのに適した環境が提供される。本発明のECLアッセイ緩衝剤は、場合によっては、洗浄剤、保存剤、消泡剤、ECL活性種、塩、金属イオン及び/又は金属キレート剤を含めた追加の成分を含むことができる。本発明のECLアッセイ緩衝剤は、結合試薬、酵素、酵素基質、補助因子及び/又は酵素阻害剤を含めたバイオアッセイ成分も含むことができ、いくつかのケースではバイオアッセイ成分をECL標識で標識することができる。本発明には、本発明のECLアッセイ緩衝剤及び、場合によっては、追加のアッセイ成分を含むアッセイ試薬、組成物、キット、システム及びシステムコンポーネントも含まれる。本発明には、本発明のECLアッセイ緩衝剤を用いてECLアッセイを実施する方法も含まれる。
【0010】
本発明の別の態様は、無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤の使用に関する。このような緩衝剤は、いくつかの用途では、ECL測定性能を有意に向上させることが見出された。このような緩衝剤は、リン酸塩が化学反応、生化学反応又は生体反応と干渉することが見出されたある種の用途で有利なことも見出された。
【0011】
驚くべきことに、このような試薬によって、リン酸特異的抗体(すなわち、リンペプチド、ホスホアミノ酸及び/又はリンタンパク質に特異的に結合する抗体)を用いたアッセイの性能の向上を含めて、いくつかの驚くべき利点がもたらされる。これらの抗体は、おそらく無機リン酸塩に対する親和性が低く、無機リン酸塩を含まないことによってpH緩衝剤のリン酸塩とリン酸特異的抗体との干渉が多いに減少すると考えられる。したがって、本発明には、フリー又は実質的にフリーである(例えば、リン酸特異的抗体と干渉するレベル未満)緩衝剤組成物を用いた、リンペプチド、ホスホアミノ酸又はリンタンパク質を測定するための方法、試薬、キット及び組成物が含まれる。このような方法、キット、組成物及び試薬は、好ましくは、反応生成物又は基質の特異的測定によるタンパク質キナーゼ又はホスホリラーゼ活性の(最も好ましくはECL検出を用いた)測定に適用される。
【0012】
本発明の別の態様は、電気化学発光アッセイにおけるシグナル/バックグラウンド比が高い組成物及び試薬に関する。このような性能の向上は、ECL共反応物、pH緩衝剤、洗浄剤及びpHの有利な組合せを特定することによって、特に、TPA及びリン酸塩以外のECL共反応物及び/又はpH緩衝剤を使用することによって達成された。これらの改良配合は、非洗浄アッセイ(non−wash assay)及び高感度アッセイにおいて特に価値がある。本発明のいくつかの実施形態において、ECLアッセイの性能は、試薬組成物と電極組成物を最適に組み合わせることによってさらにいっそう改良される。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態においては、本発明の組成物及び試薬によって、結合標識からのECLシグナルと遊離標識からのECLシグナルとの比が改善される。これは、電極などの固体表面に固定された試薬を含むアッセイに特に当てはまる。これは、例えば、洗浄ステップがない固相アッセイにおいて(特に、低親和性相互作用アッセイにおいて)重要である。というのは、バックグラウンドシグナルの主な部分は、溶液中に存在する標識に由来するからである。
【0014】
本発明のさらに別の利点は、本発明の組成物を用いたアッセイの感度の向上に関する。より具体的には、本発明のECLアッセイ緩衝剤によって、ECL標識の非存在下におけるバックグラウンドの電気化学発光が低下して、低検出レベルにおける感度が改良される。驚くべきことに、リン酸塩以外のpH緩衝剤を含み、又は無機リン酸塩を実質的に含まないECLアッセイ緩衝剤は、無機リン酸塩ベースのpH緩衝剤を含む従来のECLアッセイ緩衝剤よりもバックグラウンドの発光が少ない。これは、シグナル/バックグラウンド比の増加によってアッセイ性能が大きく向上する低検出レベルにおいて特に有利である。
【0015】
本発明の別の態様は、試薬が非リン酸塩ベースのpH緩衝剤を含み、ECLアッセイ緩衝剤が無機リン酸塩を実質的に含まず、かつ/又はECLアッセイ緩衝剤にTPA以外の第三級アミン共反応物が使用される、ECLアッセイ緩衝剤を含む改良試薬キットに関する。特に、1つ又は複数の容器中に、ECLアッセイ緩衝剤を含み、好ましくは1つ又は複数の他のアッセイ成分も含むキット。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明を用いて実施される改良された方法、特に、リン酸特異的抗体、低検出限界、固定化試薬及び/又は非洗浄形式を使用するアッセイ方法に関する。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、本発明の組成物又は試薬を含む改良システム及び装置、及び/又は本発明の改良された方法を実施するように構成された改良システム及び装置に関する。
【0018】
本発明には以下が包含される。
(1) pH緩衝剤とリン酸特異的抗体を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物。
(2) pH緩衝剤とリン酸特異的抗体を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない、アッセイに適した組成物。
(3) pH緩衝剤と、リンペプチド特異的抗体と、前記リンペプチド特異的抗体に結合するリンペプチドとを含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物。
(4) 前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、項目1、2又は3に記載の組成物。
(5) 1つ若しくは複数のキナーゼ、及び/又は1つ若しくは複数のキナーゼ基質をさらに含む、項目1、2、3又は4に記載の組成物。
(6) 1つ若しくは複数のホスファターゼ、及び/又は1つ若しくは複数のホスファターゼ基質をさらに含む、項目1、2、3又は4に記載の組成物。
(7) 前記pH緩衝剤がグリシルグリシンである、項目1、2、3、5又は6に記載の組成物。
(8) 前記pH緩衝剤がトリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンである、項目1、2、3、5又は6に記載の組成物。
(9) 前記組成物が1つ又は複数のECL共反応物を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(10) 前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、項目9に記載の組成物。
(11) 前記ECL共反応物がトリプロピルアミン(TPA)を含む、項目9に記載の組成物。
(12) さらにKOHを含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(13) さらに洗浄剤又は界面活性剤を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(14) さらに非イオン洗浄剤又は界面活性剤を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(15) 前記リンペプチド特異的抗体に結合するリンペプチドをさらに含む、項目1、2又は4から14までのいずれか一項に記載の組成物。
(16) 前記組成物が無機リン酸塩を含まない、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(17) さらに停止試薬を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(18) さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(19) さらに塩基を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(20) さらにKOHを含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(21) さらにKOH及び界面活性剤又は洗浄剤を含む、項目1から18までのいずれか一項に記載の組成物。
(22) さらに電気化学発光標識を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(23) さらに金属含有電気化学発光標識を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(24) さらにRu又はOs含有電気化学発光標識を含む、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(25) 前記組成物のpHが6〜9である、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(26) 前記組成物のpHが7〜8である、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(27) 前記組成物のpHが7.5〜8である、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(28) 前記組成物のpHが約7.8である、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(29) 項目1から28までのいずれか一項に記載の組成物を含む電気化学発光アッセイを実施するように構成された装置。
(30) 前記組成物から放出される光を検出する光検出器、及び/又は電気化学発光を誘導するのに十分な電圧を前記組成物に印加する電圧源をさらに含む、項目29に記載の装置。
(31) 1つ又は複数の容器中に、項目1から28までのいずれか一項に記載の組成物及び1つ又は複数の作用電極を含むアッセイモジュールを含むキット。
(32) 項目1から28までのいずれか一項に記載の組成物に電気化学エネルギーを与えるステップを含む電気化学発光方法を実施する方法。
(33) 放出された電気化学発光を検出するステップをさらに含む、項目32に記載の方法。
(34) 項目1から28までのいずれか一項に記載の組成物を用いてアッセイを実施する方法であって、
前記組成物とキナーゼ産物を含むアッセイ混合物を形成させるステップと、前記キナーゼ産物と前記リン酸特異的抗体を含む複合体を形成させるステップとを含む、方法。
(35) キナーゼをキナーゼ基質と接触させて前記キナーゼ産物を形成させるステップと、前記複合体を検出するステップをさらに含む、項目34に記載の方法。
(36) 電気化学発光を用いて前記複合体を検出する、項目34又は35に記載の方法。
(37) キナーゼ産物とリン酸特異的抗体を含む複合体を形成させ、前記複合体を無機リン酸塩に曝さないステップを含むアッセイを実施する方法。
(38) キナーゼをキナーゼ基質と接触させて前記キナーゼ産物を形成させるステップと、前記キナーゼ産物を前記リン酸特異的抗体と接触させて前記複合体を形成させるステップと、前記複合体を検出するステップとをさらに含む項目37に記載の方法。
(39) 電気化学発光を用いて前記複合体を検出する、項目37又は38に記載の方法。
(40) pH緩衝剤と、ECL共反応物とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物であって、
前記pH緩衝剤は、グリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択され、前記ECL共反応物は第三級アミンを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物。
(41) 前記ECL共反応物がトリプロピルアミンである、項目40に記載の組成物。
(42) 無機リン酸塩ではないpH緩衝剤と、Ru又はOs含有ECL標識と、ECL共反応物とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物。
(43) 前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、項目42に記載の組成物。
(44) 前記ECL共反応物がトリプロピルアミンである、項目43に記載の組成物。
(45) 無機リン酸塩ではないpH緩衝剤と、トリプロピルアミンであるECL共反応物とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物。
(46) 前記pH緩衝剤がECLアッセイpH緩衝剤バックグラウンド低減剤である、項目42、43、44又は45に記載の組成物。
(47) 前記共反応物の濃度が50〜1000mMである、項目40、41、42、43、44、45又は46に記載の組成物。
(48) 電気化学発光方法に使用するのに適した組成物であって、(a)濃度が50〜1000mMの範囲にあるトリプロピルアミンと、(b)濃度が50〜1000mMの範囲にあり、グリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択されるpH緩衝剤とを含み、pHが6.5〜8.5の範囲にある組成物。
(49) さらにECL成分を含む、項目40、41、45又は48に記載の組成物。
(50) 前記ECL成分が金属含有ECL成分である、項目49に記載の組成物。
(51) 前記ECL成分がRu又はOs含有ECL標識である、項目50に記載の組成物。
(52) 前記ECL成分が電気化学発光を繰り返し放出可能である、項目42、43、44、49、50又は51に記載の組成物。
(53) 無機リン酸塩の濃度が20mM未満である、項目40から52までのいずれかに記載の組成物。
(54) 前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、項目40から52までのいずれかに記載の組成物。
(55) 前記組成物が無機リン酸塩を含まない、項目40から52までのいずれかに記載の組成物。
(56) キナーゼ及びキナーゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、項目54又は55に記載の組成物。
(57) ホスファターゼ及びホスファターゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、項目54又は55に記載の組成物。
(58) 前記pH緩衝剤がグリシルグリシンである、項目40から57までのいずれか一項に記載の組成物。
(59) 前記pH緩衝剤がトリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンである、項目40から57までのいずれか一項に記載の組成物。
(60) さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、項目40から59までのいずれか一項に記載の組成物。
(61) さらにKOHを含む、項目40から60までのいずれか一項に記載の組成物。
(62) 塩、洗浄剤、保存剤、キレート化剤及び消泡剤からなる群から選択される物質をさらに含む、項目40から61までのいずれか一項に記載の組成物。
(63) さらに界面活性剤を含む、項目40から62までのいずれか一項に記載の組成物。
(64) 前記組成物のpHが6.5〜8.5である、項目40から63までのいずれか一項に記載の組成物。
(65) 前記組成物のpHが7〜8である、項目40から64までのいずれか一項に記載の組成物。
(66) 前記組成物のpHが7.5〜8である、項目40から65までのいずれか一項に記載の組成物。
(67) 前記組成物のpHが約7.8である、項目40から66までのいずれか一項に記載の組成物。
(68) 前記組成物が水性である、項目40から67までのいずれか一項に記載の組成物。
(69) 前記組成物が、酸化条件下で金属含有ECL成分からECLを誘導するのに適切な環境を提供する、項目40から68までのいずれか一項に記載の組成物。
(70) 項目40から69までのいずれか一項に記載の組成物を含む、電気化学発光方法に使用するのに適した試薬。
(71) 無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤と、Ru又はOs含有ECL成分とを含む試薬であって、
前記試薬はECLアッセイを実施するための組成物に使用するのに適していて、
(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、
(ii)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物と、
(iii)前記ECL成分及び前記アミン又はアミン成分がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質と、
からなる群から選択される成分を含むアッセイ組成物によって電磁放射が放出される、試薬。
(72) 前記試薬がさらに前記pH緩衝剤と、アミン又はアミン成分と、前記グループ(i)〜(iii)の他の2つの成分のうちの1つとを含む、項目71に記載の試薬。
(73) さらに界面活性剤又は洗浄剤を含む、項目71に記載の試薬。
(74) さらにECL共反応物を含む、項目71に記載の試薬。
(75) さらにEDTAを含む、項目71に記載の試薬。
(76) 1つ又は複数の容器中に、pH緩衝剤及びECL共反応物を含み、前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択され、前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
(77) 1つ又は複数の容器中に、pH緩衝剤と、Ru又はOs含有ECL標識と、ECL共反応物とを含み、前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
(78) 1つ又は複数の容器中に、pH緩衝剤とトリプロピルアミンを含み、前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
(79) 1つ又は複数の容器中に、(a)濃度50〜1000mMのトリプロピルアミンと、(b)グリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される濃度50〜1000mMのpH緩衝剤とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
(80) 濃度50〜1000mMのトリプロピルアミンを含む、項目78に記載のキット。
(81) 無機リン酸塩を含まない、項目76、77、78、79又は80に記載のキット。
(82) キナーゼ及びキナーゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、項目76、77、78、79、80又は81に記載のキット。
(83) ホスファターゼ及びホスファターゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、項目76、77、78、79、80又は81に記載のキット。
(84) 前記pH緩衝剤がグリシルグリシンである、項目76から83までのいずれか一項に記載のキット。
(85) 前記pH緩衝剤がトリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンである、項目76から83までのいずれか一項に記載のキット。
(86) 前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、項目77又は81から83までのいずれか一項に記載のキット。
(87) 前記ECL共反応物がトリプロピルアミン(TPA)を含む、項目76又は77に記載のキット。
(88) さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、項目76から87までのいずれか一項に記載のキット。
(89) 前記pH緩衝剤がグリシルグリシンであり、前記組成物がさらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、項目76、77又は78に記載のキット。
(90) さらにKOHを含む、項目76から89までのいずれか一項に記載のキット。
(91) さらにECL成分を含む、項目76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
(92) 電気化学発光を繰り返し放出可能であるECL成分をさらに含む、項目76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
(93) さらに金属含有ECL成分を含む、項目76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
(94) さらにRu又はOs含有ECL標識を含む、項目76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
(95) 塩、洗浄剤、保存剤、キレート化剤及び消泡剤からなる群から選択される1つ又は複数の物質をさらに含む、項目76から94までのいずれか一項に記載のキット。
(96) さらに界面活性剤を含む、項目76から95までのいずれか一項に記載のキット。
(97) 前記キットが水性である、項目76から96までのいずれか一項に記載のキット。
(98) ECL成分(i)及び電解質(ii)からなる群の1つ又は複数の成分を含めて少なくとも1つの別個の成分をさらに含む、項目76、78から89まで又は95から97までのいずれか一項に記載のキット。
(99) (a)無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤と(b)リン酸特異的抗体とを含む組成物において、定性的又は定量的に特異的結合アッセイを実施する方法。
(100) 前記組成物がさらにECL共反応物を含む、項目99に記載の方法。
(101) 前記組成物がさらにECL標識を含む、項目99に記載の方法。
(102) 前記組成物がさらにリン酸特異的抗体を含む、項目101に記載の方法。
(103) 結合試薬がその上に固定された1つ又は複数のアッセイドメインを含むウェルにおいて、無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤を含む組成物を用いて、定性的又は定量的に特異的結合非洗浄アッセイを実施する方法。
(104) 電気化学発光標識と、
キナーゼ、キナーゼ基質、キナーゼ産物及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの試薬と、
を含む組成物であって、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物を用いて、キナーゼアッセイを実施する方法。
(105) 電気化学発光標識を誘導して電磁放射を放出させるのに有効な電気化学エネルギーを与えるステップと、放出された電気化学発光を検出するステップとをさらに含む項目104に記載の方法。
(106) 前記組成物をリン酸特異的抗体と接触させるステップをさらに含む、項目104又は105に記載の方法。
(107) アッセイを実施する方法であって、
(a)キナーゼ産物とリン酸特異的抗体を含む複合体を形成させ、前記複合体を無機リン酸塩に曝さないステップと、
(b)金属含有ECL成分を誘導して電磁放射を放出させるステップと、
(c)放出された電磁放射を検出するステップとを含む方法。
(108) 前記複合体がさらに前記金属含有ECL成分を含む、項目107に記載の方法。
(109) ECL標識と、ECL共反応物と、リン酸塩ではないpH緩衝剤とを含む組成物の存在下で誘導される電気化学発光を誘導する方法。
(110) 前記pH緩衝剤がECLアッセイpH緩衝剤バックグラウンド低減剤である、項目109に記載の方法。
(111) 前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、項目109に記載の方法。
(112) 前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、項目109、110又は111に記載の方法。
(113) 前記ECL共反応物が第三級アミンである、項目109、110、111又は112に記載の方法。
(114) 前記共反応物が濃度50〜1000mMで存在し、前記pH緩衝剤が濃度50〜1000mMで存在し、前記pHが6.5〜8.5であり、前記ECL共反応物がトリプロピルアミンであり、前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、項目109に記載の方法。
(115) 前記ECL標識がルテニウム又はオスミウムの有機金属複合体である、項目109から114までのいずれか一項に記載の方法。
(116) 前記方法がさらに、
(a)前記組成物を電気化学エネルギーに曝し、前記電気化学発光組成物を誘導して電磁放射を放出させるステップと、
(b)放出された電磁放射を検出するステップとを含む、項目109から115までのいずれか一項に記載の方法。
(117) 電極に酸化電位を印加することによって前記電気化学エネルギーを発生させる、項目116に記載の方法。
(118) 前記ECL標識が前記電極に付着している、項目117に記載の方法。
(119) 前記電極が元素状炭素を含む、項目117又は118に記載の方法。
(120) 第三級アミンであるECL共反応物と、少なくとも1つの非リン酸塩ベースのpH緩衝剤とを含む電気化学発光アッセイpH緩衝剤。
(121) 前記共反応物がTPAである、項目120に記載の電気化学発光アッセイpH緩衝剤。
(122) 前記非リン酸塩ベースのpH緩衝剤が、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン(Tris)、オリゴ(グリシン)又はそれらの組合せから選択される、項目120に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
(123) 前記非リン酸塩ベースのpH緩衝剤がグリシル−グリシン(Gly−Gly)である、項目120に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
(124) キレート化剤、洗浄剤、塩、消泡剤及び保存剤からなる群から選択される1つ又は複数の物質をさらに含む、項目120から123までのいずれか一項に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
(125) さらにリン酸特異的抗体を含む、項目120から124までのいずれか一項に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
(126) 項目120から125までのいずれか一項に記載のアッセイ緩衝剤とECL標識を接触させるステップと、電気化学発光を誘導するステップと、放出された電気化学発光を検出するステップとを含む、電気化学発光を発生させる方法。
(127) 電気化学発光標識と、非TPA電気化学発光共反応物と、少なくとも1つのフェニルエーテル含有洗浄剤とを含む組成物。
(128) 前記非TPA電気化学発光共反応物がPIPESである、項目127に記載の組成物。
(129) 前記非TPA電気化学発光共反応物が、3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸、4−[ビス−(2−ヒドロキシエタン)−アミノ]−ブタンスルホン酸、ピペリジン−N−(3−プロパンスルホン酸)、アゼパン−N−(3−プロパンスルホン酸)、ピペリジン−N−(3−プロピオン酸)(PPA)、3−モルフォリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、3−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(EPPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−エタンスルホン酸(BES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、N−2−ヒドロキシピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−N,N’−ビス−4−ブタンスルホン酸、ホモピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N,N’−ビス−3−プロパンスルホン酸、ピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N−2−ヒドロキシエタン−N’−3−メチルプロパノエート、ピペラジン−N,N’−ビス−3−メチルプロパノエート、1,6−ジアミノへキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N−ビスプロピル−N−4−アミノブタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(ビス−Trisプロパン)、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−2−プロパノール、N,N,N’,N’−テトラプロピルプロパン−1,3,−ジアミン(TPA2量体)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン)スルホン酸(POPSO)及び2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]プロパン−1−スルホン酸(HEPPSO)からなる群から選択される、項目127に記載の組成物。
(130) 前記組成物が作用電極と接触している、項目127、128又は129に記載の組成物。
(131) 前記組成物が炭素ベースの作用電極と接触している、項目127、128又は129に記載の組成物。
(132) 前記電気化学発光標識がRu又はOs含有ECL標識である、項目127から131までのいずれかに記載の組成物。
(133) 3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸又は4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸を含む組成物。
(134) さらにECL標識を含む、項目133に記載の組成物。
(135) さらに金属含有ECL標識を含む、項目133に記載の組成物。
(136) さらにRu又はOs含有ECL標識を含む、項目133に記載の組成物。
(137) 前記項目133から136までのいずれか一項に記載の組成物を用いて電気化学発光を誘導する方法。
(138) 電気化学発光を発生させる方法であって、
(a)電気化学発光標識を項目136に記載の組成物と接触させるステップと、
(b)前記電気化学発光標識を誘導して電気化学発光を放出させるステップと、
(c)前記電気化学発光を検出するステップとを含む方法。
(139) 電気化学発光を発生させる方法であって、
(a)項目133から137までのいずれか一項に記載の組成物を誘導して電気化学発光を放出させるステップと、
(b)前記電気化学発光を検出するステップとを含む方法。
(140) 前記電気化学発光標識が作用電極に付着している、項目138又は139に記載の方法。
(141) 前記ECL誘導が、実質的に洗浄剤を含まない組成物において実施される、項目138又は139に記載の方法。
(142) 1つ又は複数の容器中に、電気化学発光標識と、非TPA電気化学発光共反応物と、少なくとも1つのフェニルエーテル含有洗浄剤とを含むキット。
(143) 1つ又は複数の容器中に、少なくとも1つのトリアルキルアミン非TPA共反応物を含む1つ又は複数のECLアッセイ緩衝剤を含むキット。
(144) 1つ又は複数の容器中に、金属含有電気化学発光標識、及び3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの共反応物を含むキット。
(145) 電気化学発光を発生させる方法であって、
(a)電気化学発光標識を電気化学発光共反応物と接触させるステップと、
(b)前記電気化学発光標識を誘導して電気化学発光を放出させるステップと、
(c)前記電気化学発光を検出するステップと、を含み、
前記電気化学発光共反応物がTPA以外の第三級アミンである、方法。
(146) 電気化学発光標識を電気化学発光共反応物と接触させることを含む、電気化学発光を誘導する方法であって、
電気化学発光共反応物がトリ−n−プロピルアミン以外の第三級アミンであり、前記電気化学発光標識が作用電極に付着している、電気化学発光を誘導する方法。
(147) 電気化学発光アッセイを実施する方法であって、
(a)電気化学発光標識と、少なくとも1つの電気化学発光共反応物と、を含む組成物を形成させるステップであって、前記電気化学発光共反応物はトリ−n−プロピルアミン以外の第三級アミンであり、前記電気化学発光標識は作用電極に付着しているステップと、
(b)前記電気化学発光標識を誘導して電気化学発光を放出させるのに有効な電気化学エネルギーを与えるステップと、
(c)放出された電気化学発光を検出するステップとを含む方法。
(148) 電気化学発光アッセイを実施する方法であって、
(a)電気化学発光標識と、少なくとも1つの電気化学発光共反応物とを含む組成物を形成させるステップであって、前記電気化学発光共反応物がトリ−n−プロピルアミン以外の第三級アミンであり、前記電気化学発光標識の第1の部分が作用電極に付着しており、前記電気化学発光標識の第2の部分が溶液中にあるステップと、
(b)前記電気化学発光標識の第1の部分を誘導して電気化学発光を放出させるのに有効な電気化学エネルギーを与えるステップと、
(c)前記電気化学発光標識の第1の部分から放出された電気化学発光を選択的に検出するステップとを含む方法。
(149) 目的分析物又は活性のアッセイを実施する方法であって、
(a)試料を含む組成物と、ECL標識を含むアッセイ試薬と、電極とを形成させるステップであって、前記試料中に前記分析物又は活性が存在することによって前記電極からの前記アッセイ試薬の付着又は解離がもたらされるステップと、
(b)ECL共反応物を含むECLアッセイ緩衝剤と前記電極を接触させるステップであって、前記共反応物はTPA以外の第三級アミンであるステップと、
(c)前記電極上のECL標識を誘導してECLを誘導するのに適切な条件下で前記電極に電気化学エネルギーを与えるステップと、
(d)放出されたECLを測定するステップとを含む方法。
(150) 結合現象を測定する方法であって、
(a)電極上に固定された結合試薬を、ECL標識を含むアッセイ試薬と接触させるステップであって、前記結合試薬が前記アッセイ試薬に特異的に結合するステップと、
(b)前記アッセイ試薬を前記結合試薬に結合させて前記標識を前記電極に付着させるステップと、
(c)前記電極を、ECL共反応物を含むECLアッセイ緩衝剤と接触させるステップであって、前記共反応物はTPA以外の第三級アミンであるステップと、
(d)前記電極上のECL標識を誘導してECLを誘導するのに適切な条件下で前記電極に電気化学エネルギーを与えるステップと、
(e)放出されたECLを測定するステップとを含む方法。
(151) 前記共反応物が1つ又は複数の以下の諸特性を有する、すなわち、i)1電極酸化において炭素ベース電極上で酸化されてアミンラジカルカチオンを与え、前記アミンラジカルカチオンは、プロトンをその後失ってラジカル還元剤を形成することができ、ii)炭素ベース電極上で、Ru(II)(bpy)の酸化電位と同等以上の酸化電位を有し、iii)炭素ベース電極において、水を分解するのに必要な電位よりも低い電位で酸化され、iv)前記ラジカル還元剤とRu(III)(bpy)が反応してRu(II)(bpy)を生成する反応によって放出されるエネルギーが、発光励起状態のRu(II)(bpy)を生成するのに十分であり、v)前記アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の寿命が、対応するTPA誘導種よりも短い、項目145から150までのいずれかに記載の方法。
(152) 前記共反応物がアミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤を形成し、前記アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の拡散距離が100nm未満である、項目145から151までのいずれか一項に記載の方法。
(153) 前記方法が洗浄ステップなしで実施される、項目145から152までのいずれか一項に記載の方法。
(154) 前記ECL共反応物をTPAで置換することによって、溶液中の標識に対する電極に付着している標識からのECL誘導の選択性が少なくとも2倍低下する、項目145から153までのいずれか一項に記載の方法。
(155) 前記電気化学発光共反応物がPIPESである、項目145から154までのいずれかに記載の方法。
(156) 前記共反応物が、NRの構造を有するアミンであり、式中、R、R及びRは少なくとも2つの炭素を含むアルキル基であり、R、R及びRのうち1つ又は複数は親水性官能基で官能化されている、項目145から154までのいずれか一項に記載の方法。
(157) 前記親水性官能基が帯電した基を含む、項目156に記載の方法。
(158) 前記親水性官能基が負に帯電した基を含む、項目157に記載の方法。
(159) 前記親水性官能基がヒドロキシル、ジアルキルアミノ、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート及び/又はカルボン酸エステルを含む、項目157に記載の方法。
(160) 前記共反応物が(n−Pr)N(CHRの構造を有し、式中、nは2以上であり、Rは親水性官能基である、項目145から154までのいずれか一項に記載の方法。
(161) 前記共反応物が以下の式を有し、i)Xが−(CH)−又はヘテロ原子であり、ii)R及びRが2つ以上の炭素を含むアルキル基であり、iii)n及びmが各々1以上であり、iv)R(及び、場合によってはR)が親水性官能基を含む、項目145から154までのいずれか一項に記載の方法。
【化1】


(162) 前記共反応物が、3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸、4−[ビス−(2−ヒドロキシエタン)−アミノ]−ブタンスルホン酸、ピペリジン−N−(3−プロパンスルホン酸)、アゼパン−N−(3−プロパンスルホン酸)、ピペリジン−N−(3−プロピオン酸)(PPA)、3−モルフォリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、3−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(EPPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−エタンスルホン酸(BES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、N−2−ヒドロキシピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−N,N’−ビス−4−ブタンスルホン酸、ホモピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N,N’−ビス−3−プロパンスルホン酸、ピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N−2−ヒドロキシエタン−N’−3−メチルプロパノエート、ピペラジン−N,N’−ビス−3−メチルプロパノエート、1,6−ジアミノへキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N−ビスプロピル−N−4−アミノブタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(ビス−Trisプロパン)、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−2−プロパノール、N,N,N’,N’−テトラプロピルプロパン−1,3,−ジアミン(TPA2量体)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン)スルホン酸(POPSO)及び2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]プロパン−1−スルホン酸(HEPPSO)からなる群から選択される、項目145から154までのいずれか一項に記載の方法。
(163) 前記共反応物がピペリジン−N−(3−プロピオン酸)及びピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)からなる群から選択される、項目145から154までのいずれか一項に記載の方法。
(164) 前記電気化学発光が、1つ又は複数の炭素ベースの作用電極を用いて誘導される、項目145から163までのいずれか一項に記載の方法。
(165) 前記1つ又は複数の炭素ベースの作用電極が炭素粒子又はカーボンナノチューブを含む、項目164に記載の方法。
(166) 前記ECL標識を少なくとも1つのフェニルエーテル含有洗浄剤とも接触させる、項目145から165までのいずれか一項に記載の方法。
(167) 前記共反応物の濃度が10〜800mMである、項目145から166までのいずれか一項に記載の方法。
(168) 前記標識をpH緩衝剤と接触させるステップをさらに含む、項目146から167までのいずれか一項に記載の方法。
(169) 前記pH緩衝剤の濃度が好ましくは0〜800mMである、項目168に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】異なるpH緩衝剤を含む3つの異なるECLアッセイ緩衝剤におけるリンペプチド−抗リンペプチド(anti−phosphopeptide)複合体の解離速度を比較したグラフである。
【図2】ECL共反応物としてTPA、及びpH緩衝剤としてTrisを含むECLアッセイ緩衝剤における、リンペプチド−抗リンペプチド複合体の解離速度を示すグラフである。ECLアッセイ緩衝剤を添加する前に、この複合体を洗浄して遊離抗体を除去することはしなかった。
【図3】2つの異なるECLアッセイ緩衝剤、すなわち、150mM TPA/150mMリン酸塩及び100mM TPA/400mMグリシル−グリシンにおける、自己リン酸化されたEGF受容体からの抗ホスホチロシン抗体の解離速度を比較した最終生成物の安定性試験を示すグラフである。標識α−ホスホチロシン抗体の濃度は6.7nMであった。
【図4A】エッチングされていないカーボンインク電極の表面に固定された標識試薬のECL測定における、4つの異なるECLアッセイ緩衝剤の性能を比較したグラフである。このグラフは、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下でのバックグラウンドシグナル、及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。
【図4B】プラズマエッチングされたカーボンインク電極の表面に固定された標識試薬のECL測定における、4つの異なるECLアッセイ緩衝剤の性能を比較したグラフである。このグラフは、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナル、及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。
【図5A】エッチングされていないカーボンインク電極表面に固定された標識試薬のECL測定における4つの異なるECLアッセイ緩衝剤の性能を比較したグラフである。このグラフは、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナル及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。この図は、表面に結合していない標識試薬をECLアッセイ緩衝剤に導入したときに得られたシグナル、及び表面結合と表面非結合試薬とのシグナル比(B/F)も示している。
【図5B】プラズマエッチングされたカーボンインク電極表面に固定された標識試薬のECL測定における4つの異なるECLアッセイ緩衝剤の性能を比較したグラフである。このグラフは、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナル及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。この図は、表面に結合していない標識試薬をECLアッセイ緩衝剤に導入したときに得られたシグナル、及び表面結合と表面非結合試薬とのシグナル比(B/F)も示している。
【図6A】プラズマエッチングされたカーボンインク電極表面に固定された標識試薬からのECLシグナルに対する3つの異なる洗浄剤の効果を比較したグラフである。TPA及びリン酸塩を含むECLアッセイ緩衝剤に洗浄剤を導入した。このグラフは、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナル、及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。
【図6B】プラズマエッチングされたカーボンインク電極表面に固定された標識試薬からのECLシグナルに対する3つの異なる洗浄剤の効果を比較したグラフである。PIPES及びリン酸塩を含むECLアッセイ緩衝剤に洗浄剤を導入した。このグラフは、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナル、及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。
【図7】エッチングされていないカーボンインク電極表面に固定された標識試薬からのECLシグナルに対する5つの異なる洗浄剤の効果を比較したグラフである。ECL共反応物又はpH緩衝剤の種類が異なる4つの異なるECLアッセイ緩衝剤に洗浄剤を導入した。この図は、表面に結合した試薬からのシグナル、結合試薬の非存在下で測定されたバックグラウンドシグナル、及びシグナル/バックグラウンド比(S/B)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明、並びに、そのさらなる目的、特徴及び利点は、以下の特定の好ましい実施形態の詳細な説明からより完全に理解されるはずである。
【0021】
ECL活性種は、ECL成分、ECL標識、ECL標識化合物、ECL標識物質などとも呼ぶことができる。(本発明による組成物、試薬、キット、方法又はシステムの実施形態のどれかに利用するとき)他の分子、特に、生化学又はバイオアッセイの成分、例えば、分析物又はその類似物、分析物の結合相手又はその類似物、そのような上述の結合相手のさらなる結合相手、あるいは分析物、その類似物又は上述した結合相手と結合可能である反応成分と連結されるこれらのECL活性種も本発明の範囲内である。上述の種を、1つ若しくは複数の結合相手、及び/又は1つ若しくは複数の反応成分の組合せと連結させることもできる。特定の酵素アッセイにおいては、ECL活性種を酵素基質と連結させることができる。
【0022】
以後時折「ECL、組成物」又は「システム」と称する上述の「組成物」が、上述の励起状態におけるECL成分、及び上述の強い還元剤など、ECL反応の過程で形成される不安定種、準安定種、及び他の中間体種を含有することも同様に本発明の範囲内である。また、可視光の放出は本発明の特定の実施形態の有利な特徴であるが、赤外光又は紫外光、X線、マイクロ波など他のタイプの電磁放射を放出する組成物(以後、時折「ECL組成物」と呼ぶ)又はシステムも本発明の範囲内である。本発明に関係する「電気化学発光」、「電気化学発光の」、「電気化学発光する(electrochemiluminesce)」、「発光」、「発光の」及び「発光する」という用語の使用は、放出が光である必要はなく、放出がそのような他の電磁放射形式であってもよい。
【0023】
本発明は、ECLアッセイ緩衝剤、それを含有するアッセイ組成物、及びその使用方法に関する。上述したように、従来技術のリン酸塩ベースのECLアッセイ緩衝剤を使用したときに、いくつかの欠点を発見した。より具体的には、ECL共反応物TPAの標準配合(ORIGENアッセイ緩衝剤、IGEN International:200mMリン酸塩、約100mMTPA、pH約7.5)中のリン酸塩によって、リン酸特異的抗体とリン酸化基質の結合が破壊されることを、チロシンキナーゼ活性に特異的なECLアッセイを開発中に見出した。アッセイには、i)炭素電極に固定されたペプチドのキナーゼに依存したリン酸化、ii)(Ru(bpy)誘導体によって)標識されたリン酸特異的抗体の特異的結合、iii)ECL共反応物トリプロピルアミン(TPA)の添加、及びiv)結合標識からのECLの検出が含まれる(例えば、下記実施例A参照)。出願人らは、ORIGENアッセイ緩衝剤の添加によってTPAが加えられたときに、測定ECLシグナルが、ORIGENアッセイ緩衝剤に結合複合体が曝され続けた時間に明確に依存し(図1)、測定シグナルが時間とともに急激に低下することを発見した。事実、1時間のインキュベーション後、初期シグナルのほんのわずかな部分(約10%)しか検出されなかった。酵素反応中にプレート表面に形成されたホスホチロシン部位に対する、アッセイに使用したpY20抗体(Zymed Lab)の親和性は、溶液中の遊離リン酸塩に対する親和性よりも極めて大きかった。しかし、ORIGENアッセイ緩衝剤(200mM)中の遊離リン酸塩濃度が高いため、ホスホチロシン/pY20複合体が解離して、シグナルが急速に減衰する結果になると現時点では考えられる。
【0024】
この問題を回避する1つの方法は、ECLアッセイ緩衝剤の投与から読み取りステップまでの時間を固定し、シグナル減衰を検量して差し引くことである。しかし、この手法は、アッセイの堅牢性及び投与プロトコルの柔軟性が望まれるハイスループットスクリーニング用途では望ましくない。
【0025】
したがって、いくつかの異なる有機pH緩衝剤が、従来のリン酸塩ベースのアッセイ緩衝剤の代替品として試験された。しかし、(すべてSigma製であるトリシン、HEPES、MOPS、BESを含めて)従来の生物学的緩衝剤の多くが、TPAからのECL発生と干渉し、ORIGENアッセイ緩衝剤を用いて観測されるECLシグナルのわずか2〜20%を与えるに過ぎなかった。しかし、出願人らは、TPA/リン酸塩において観測されるシグナルと同等のECLシグナルを与える1組の緩衝剤を発見した。
【0026】
したがって、出願人らは、無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤でリン酸塩緩衝剤を置換することによって、上述の欠点がなく、標準ORIGENアッセイ緩衝剤において観測されるシグナルと同等のECLシグナルができることを発見した。pH緩衝剤は無機緩衝剤を含まないことが好ましい。
【0027】
また、出願人らは、本発明のリン酸塩を含まないECLアッセイ緩衝剤が、リンペプチド結合アッセイに適用したときに有利であるだけでなく、広範なECLアッセイを改善することができる(バックグラウンドシグナルが低いことも含めた)他の有利な諸特性も有することを発見した。
【0028】
また、出願人らは、ECLアッセイ緩衝剤に導入したときにECLアッセイ緩衝剤のバックグラウンドを低下させ、アッセイ性能を向上させるECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド低減剤(background reducing agent)を発見した。これらの低減剤は、好ましくは、pH緩衝剤でもあり、最も好ましくは、GlyGly又はTrisである。
【0029】
また、出願人らは、従来のTPA以外のECL共反応物を使用する新規なECLアッセイ緩衝剤を発見した。驚くべきことに、いくつかの共反応物が、TPAが発生するECLシグナルと同等のECLシグナルを発生することを発見した。また、TPA以外のECL共反応物は、その性能がTPAよりも向上しているため、その使用によって非洗浄ECLアッセイ性能が向上して、電極の近傍に保持されたECL標識と溶液中に遊離している標識とが識別されることが判明した。TPA以外の共反応物を使用することは、確認された新しい共反応物のいくつかの水溶性が高く蒸気圧が低いため別な利点もある。
【0030】
また、出願人らは、洗浄剤の有無が、ECLアッセイ緩衝剤の性能に重大な影響を及ぼし得ることを発見した。驚くべきことに、ECLに対する洗浄剤の効果は、ECL共反応物及び作用電極材料に何を選ぶかによって左右され得る。出願人らは、異なる様々な用途及びECLシステムに適切な洗浄剤含有ECLアッセイ緩衝剤を開発した。
【0031】
上述したように、本発明の一態様は、ECL共反応物及び、好ましくは、pH緩衝剤を含む改良されたECLアッセイ緩衝剤に関する。このECLアッセイ緩衝剤によって、ECL標識を効率良く誘導してECLを発生させ、ECLを測定することによってECL標識を高感度で測定するのに適した環境が提供される。本発明のECLアッセイ緩衝剤は、場合によっては、洗浄剤、保存剤、消泡剤、ECL活性種、塩、金属イオン及び/又は金属キレート剤を含めて追加の成分を含むことができる。本発明のECLアッセイ緩衝剤は、結合試薬、酵素、酵素基質、補助因子及び/又は酵素阻害剤を含めたバイオアッセイ成分も含むことができ、いくつかのケースではバイオアッセイ成分をECL標識で標識することができる。
【0032】
好ましくは、本発明のECLアッセイ緩衝剤は、本質的に、水性又は実質的に水性であるが、DMSO、DMF、メタノール、エタノール、他のアルコールなどの有機共溶媒を添加することが望ましい用途もある。本発明の一実施形態において、ECLアッセイ緩衝剤(又はその1つ若しくは複数の成分)は乾燥された形で提供され、使用者は、適切な溶媒又はマトリックス(好ましくは、水又は水性媒体)を添加することによって、ECLアッセイ緩衝剤溶液を作製する。
【0033】
5.1 ECL共反応物
すべてではないにしてもほとんどの現行の市販ECL技術の適用例には、共反応物としてのトリ−n−プロピルアミン(TPA)及びpH緩衝剤としてのリン酸塩を含有するECLアッセイ緩衝剤の存在下におけるECL標識(及び、特に、ルテニウムの有機金属複合体)の測定が含まれている。これらのECLアッセイ緩衝剤は、結合アッセイの固相として金属(一般に、白金)電極表面に収集された磁気粒子を使用する市販のECL計測手段に対して最適化され、優れた性能を示す。
【0034】
出願人らは、いくつかの用途において、ある種の官能性を持たせた第三級アルキルアミンが、TPAと同等以上の性能を示すことができることを発見した。これらの官能性第三級アミンは、炭素ベースの電極(例えば、プラスチック、インクなどの炭素粒子又はカーボンナノチューブを含む複合材料を含めた電極)及び/又は電極上に固定されたアッセイ試薬(結合試薬など)を使用するアッセイにおいて特に有用である。本発明の官能性第三級アルキルアミンは、好ましくは、1つ又は複数の以下の諸特性を有する。i)官能性第三級アルキルアミンは1電極酸化(one electrode oxidation)で炭素ベース電極上で酸化されてアミンラジカルカチオンとなり、アミンラジカルカチオンはプロトンをその後失ってラジカル還元剤を形成することができる(スキーム1)。ii)炭素ベース電極上で、Ru(II)(bpy)の酸化電位と同等(150mV以内)又はそれよりも大きい酸化電位を有する。iii)最も好ましくはpH6〜9で、水を分解するのに必要な電位よりも低い電位で、炭素ベースの電極において酸化することができる。iv)ラジカル還元剤とRu(III)(bpy)3が反応してRu(II)(bpy)を生成する反応によって放出されるエネルギーは、発光励起状態のRu(II)(bpy)を生成するのに十分である。v)アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の寿命は、対応するTPA誘導種(TPA−derived species)よりも短い。
【0035】
【化2】

【0036】
出願人らは、本発明の官能性第三級アルキルアミンを使用することによって、(溶液中に遊離しているECL標識とは異なって)電極に結合したECL標識に対する、電極でのECL励起の選択性を向上させることが可能であることを発見した。理論に拘泥するのではないが、この選択性の増加は、アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の寿命が、対応するTPA誘導種よりも短い(したがって、電極表面近傍で起こるECL反応への反応性種の関与が制限される)ためであると考えられる。好ましくは、アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の拡散距離(種がその寿命の間に拡散することができる距離)は1μm未満であり、より好ましくは<500nm、さらにより好ましくは100nm未満、さらにより好ましくは50nm未満、最も好ましくは<10nmである。遊離標識と結合標識との選択性が高いことによって、非洗浄形式のECLアッセイフォーマットにおける感度が向上した。結合標識と遊離標識からのシグナル比(B/F比)は、TPAを本発明の非TPA共反応物で置換することによって向上させることができる。この向上は、好ましくは2倍を超え、より好ましくは5倍を超え、最も好ましくは10倍を超える。
【0037】
本発明の官能性第三級アミン共反応物は、NRの構造を有することが好ましい。式中、R、R及びRは、少なくとも2つ、好ましくは3つの炭素を含むアルキル基であり、1つ又は複数のR、R及びRは親水性官能基、より好ましくは帯電基、最も好ましくは負の帯電基で官能化されている。好ましい官能基としては、ヒドロキシル、ジアルキルアミノ、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート、カルボン酸エステルなどがある。
【0038】
特に好ましい共反応物としては、(n−Pr)N(CHRの構造を有する化合物などがある。式中、nは2以上(より好ましくは3)であり、Rは上で定義した親水性官能基、好ましくは、カルボキシレート、ジアルキルアミノ(より好ましくはジプロピルアミノ)、最も好ましくはスルホネートである。
【0039】
他の好ましい共反応物としては、以下の構造の化合物などがある。
【0040】
【化3】

【0041】
式中、i)Xは−(CH)−又はヘテロ原子、好ましくは−O−、−S−、又は−N(R)−であり、ii)R及びRは2つ以上の(好ましくは3つ以上の)炭素を含むアルキル基であり、iii)n及びmは各々1以上、好ましくは2であり、iv)R(及び、場合によってはR)は上で定義した親水性官能基を含む。最も好ましくは、Rは−(CH−Fである。式中、nは3以上であり、Fは親水性官能基、好ましくは、カルボキシレート又はスルホネートである。Xが−N(R)−である場合、Rは最も好ましくは−(CH−Fである。式中、nは3以上であり、FはH、アルキル又は親水性官能基、最も好ましくは、カルボキシレート又はスルホネートである。
【0042】
いわゆる「グッド」緩衝剤(Good等、Biochemistry、5、467(1966);Good等、Methods in Enzymol.、24、Part B、53(1972)、及びFerguson等、Anal.Biochem.、104、300(1980))の多数が第三級アミンを含み、炭素電極上でECL共反応物として作用することが見出された。これらの「グッド」緩衝剤は、一般に、ピペラジン又はモルホリン核を有する第三級アミンを含む。炭素ベース電極上でECL共反応物として作用する特定のアミンとしては、3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸、4−[ビス−(2−ヒドロキシエタン)−アミノ]−ブタンスルホン酸、ピペリジン−N−(3−プロパンスルホン酸)、アゼパン−N−(3−プロパンスルホン酸)、ピペリジン−N−(3−プロピオン酸)(PPA)、3−モルフォリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、3−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(EPPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−エタンスルホン酸(BES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、N−2−ヒドロキシピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−N、N’−ビス−4−ブタンスルホン酸、ホモピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N,N’−ビス−3−プロパンスルホン酸、ピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N−2−ヒドロキシエタン−N’−3−メチルプロパノエート、ピペラジン−N,N’−ビス−3−メチルプロパノエート、1,6−ジアミノへキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N−ビスプロピル−N−4−アミノブタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(ビス−Trisプロパン)、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−2−プロパノール、N,N,N’,N’−テトラプロピルプロパン−1,3−ジアミン(TPA2量体)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン)スルホン酸(POPSO)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]プロパン−1−スルホン酸(HEPPSO)などがある。HEPES、POPSO、HEPPSO、EPPSO、PPA及びPIPESが、シグナルが高く、結合標識と遊離標識の識別が容易であるため特に好ましい。TESも、シグナルが高く好ましい。
【0043】
さらなる共反応物としては、プロリン、N−末端プロリンを有するペプチドなどがある。プロリンは、N−アルキル化されて第三級アミンを形成していることが好ましい。
【0044】
親水性官能基を有する共反応物(及び、特に、中性pHで双生イオンである共反応物)を使用することは、ECL共反応物としての作用能力とは無関係に様々な利点がある。これらの種は、水溶性が高く、蒸気圧が低い傾向にある。そのため、使用時に必要に応じて希釈される高度に濃縮された原液を製造することが可能である。気相へ共反応物が消失する不安定さがなく、共反応物を含む乾燥試薬を調製することも可能である。また、これらの共反応物は、乾燥試薬である場合、最小限の体積に速やかに溶解する。
【0045】
5.2 pH緩衝剤
市販のECL機器で使用するために最適化された従来のECLアッセイ緩衝剤は、一般に、リン酸塩ベースのpH緩衝剤中にTPAを含んでいる。それらの配合物は、電極上に捕獲された磁気粒子を用いる固相アッセイを実施するために特に有用であった。出願人らは、いくつかの用途において、(有機pH緩衝剤を含めて)他のpH緩衝剤がリン酸塩以上の性能をもたらすことができることを発見した。これらの非リン酸塩pH緩衝剤(及び、pH緩衝剤溶液、及びこれらの緩衝剤を含むECLアッセイ緩衝剤は、炭素ベースの電極(例えば、プラスチック及びインクなどの炭素粒子又はカーボンナノチューブ含有複合材料を含む電極)及び/又は電極上に固定されたアッセイ試薬(結合試薬など)を用いるアッセイに特に有用である。それらは、リン酸塩が干渉物質(interferent)となるアッセイに使用する場合にも有利である。好ましくは、本発明の非リン酸塩緩衝剤を用いるECLアッセイ緩衝剤は、15mM未満の無機リン酸塩、より好ましくは5mM未満の無機リン酸塩、さらにより好ましくは1mM未満のリン酸塩を含み、さらにより好ましくは無機リン酸塩を実質的に含まない、最も好ましくは無機リン酸塩を含まない。
【0046】
pH緩衝剤は、ECLを放出するために用いられる諸条件下で酸化されず、ECLの生成を干渉しないことが好ましい。特に有用であることが証明された2つのpH緩衝剤は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)及びオリゴ(グリシン)、好ましくはグリシル−グリシン(Gly−Gly)である。出願人らは、TPA/Tris又はTPA/Gly−Gly ECLアッセイ緩衝剤を用いた炭素ベース電極上でのECLアッセイでは、電極に結合したECL標識からのシグナルが、従来のTPA/リン酸塩緩衝剤によって観測されるシグナルと同等であることを発見した。しかし、ECL標識の非存在下におけるバックグラウンドシグナルは、Tris及びGly−Gly緩衝剤の方が極めて少ない。バックグラウンドシグナルが低下したことによって、シグナル/バックグラウンド比(S/B)が高くなり、新しい配合物を用いたECLアッセイの感度が上昇した。本発明のECLアッセイ緩衝剤のS/B比は、リン酸塩ベースのシステムを用いて得られるS/B比の2倍、より好ましくは5倍、最も好ましくは10倍良好であることが好ましい。
【0047】
理論に拘泥するものではないが、出願人らは、Tris及びGly−glyベースのECLアッセイ緩衝剤の性能向上が、アッセイ緩衝剤バックグラウンドの原因である第三級アミン酸化生成物及び/又は他の反応性酸化種(例えば、アミンラジカルカチオン及びラジカル還元剤)と反応しそれを破壊することによるECLアッセイ緩衝剤還元剤としての緩衝剤の作用能力に関係しているとの仮説を立てている。この効果は、電極表面から離れてこれらの種の濃度がより低く、したがって、Tris及びGly−gly成分が電極結合標識からのシグナルに影響を及ぼさない場所で最も顕著である。Tris及びGly−gly緩衝剤によって、観測される結合/遊離比(bound to free ratio)も改善され得る。ただし、この効果は、PIPESなどの非TPA緩衝剤に置換することによって観測される効果よりは小さい。
【0048】
出願人らは、Tris及びGly−gly緩衝システムが、PIPESなどの非TPA共反応物を用いて使用するのにも適していることを見出した。pH緩衝剤として作用し得るPIPESなどの共反応物を使用すると、追加の緩衝剤を省略することができる。
【0049】
5.3 洗浄剤
出願人らは、洗浄剤の有無が、ECLシグナルに対して驚くほど大きな効果を及ぼし得ることを発見した。この効果の性質は、予想外なことに、電極によって決まる。TPA含有ECLアッセイ緩衝剤に曝された酸化電極(例えば、炭素粒子又はカーボンナノチューブを含有するプラズマ酸化カーボンインク又はプラズマ酸化ポリマー複合材料)上では、この効果は、Triton、Nonidetシリーズの洗浄剤(例えば、Triton X−100)などのフェニルエーテル含有洗浄剤の場合を除き、比較的小さいように見える。ECLを発生させる一般的な方法は、傾斜電位(ramp potential)を使用することである。一般に、ECL強度と印加された電位のプロットは、ピーク形状をしている。ECLは、標識の酸化電位と共反応物の酸化電位が近づくにつれ増加する。この電位を過ぎてスキャンし続けると、結局、共反応物が消費されてECL強度が減少し始め、水の酸化が起き始める。出願人らは、フェニルエーテル含有洗浄剤を添加することによって、ECL主ピークよりも高電位で小さなECLピークが追加されることを観測した。このピークは、純粋なTriton X−100を用いて観測される酸化波とほぼ同じ電位にあり、したがって、出願人らは新しいピークが洗浄剤(又は同伴する不純物)の酸化及びECL反応へのその酸化生成物の関与と関連があると推測している。
【0050】
非酸化炭素ベース電極(及び、特に、未処理カーボンインク電極)での挙動は極めて異なっている。これらの電極では、TPA含有緩衝剤の存在下のECLシグナル(並びにS/B比)が、洗浄剤の添加によって大幅に改良された。この効果は、洗浄剤の性質に比較的依存しないように思えるが(非イオン洗浄剤は、生体系を変性させる能力が比較的弱いために好ましいが)、洗浄剤濃度が洗浄剤の臨界ミセル濃度(cmc)とほぼ同等以上である必要がある。好ましい本発明の実施形態においては、ECLアッセイ緩衝剤に洗浄剤を添加することによって、(好ましくは炭素ベースの電極、最も好ましくはカーボンインク電極によって誘導された)アッセイシグナル又はS/Bが、2倍を超えて、より好ましくは5倍を超えて、最も好ましくは10倍を超えて改善される。
【0051】
非TPA含有ECLアッセイ緩衝剤、特に、非TPA含有ECLアッセイ緩衝剤(特に、本発明の非TPA第三級アミン共反応物、好ましくはN−置換モルホリン又はピペラジン、最も好ましくはPIPESを含む緩衝剤)の挙動は、炭素電極の性質にあまり依存しないように見える。例えば、出願人らは、共反応物としてPIPESを用いるアッセイが、フェニルエーテル含有物質、特に、フェニルエーテル含有洗浄剤を添加することによって、酸化電極でも非酸化電極でも予想外に大きく改善されることを見出した。フェニルエーテル成分を含まない他の洗浄剤は、この効果を示さなかった。好ましい本発明の実施形態において、非TPAベースのECLアッセイ緩衝剤(好ましくは、PIPESベースのECLアッセイ緩衝剤)に洗浄剤を添加すると、(好ましくは炭素ベースの電極、最も好ましくはカーボンインク電極を用いて誘導される)アッセイシグナル又はS/Bが、10倍を超えて、より好ましくは30倍を超えて、最も好ましくは100倍を超えて改善される。
【0052】
ある種のアッセイ、例えば、生体膜などの洗浄剤感受性成分を含むアッセイにおいては、ECLアッセイ緩衝剤から洗浄剤を削減(例えば、<0.1%に)又は排除することが有利なことがある。本発明の様々な洗浄剤含有配合は、これらの洗浄剤感受性用途向けに、洗浄剤の少ない形でも洗浄剤のない形でも調製することができることを理解すべきである。好ましい実施形態において、洗浄剤感受性成分を用いるアッセイでは、以下の共反応物、すなわち、TPA、N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−N−4−アミノブタンスルホン酸又はAN−(CH−NBのうちの1つを含有するECLアッセイ緩衝剤が使用される。式中、A及びBはアルキル基(好ましくは、プロピル)であり、nは整数(好ましくは3又は4、最も好ましくは3)である。
【0053】
5.4 保存剤
ECLアッセイ緩衝剤を保存するときには、微生物増殖を防止する保存剤を入れることが有利な場合がある。保存剤は、ECLアッセイ緩衝剤を用いて発生したECLに対してほとんど又はまったく影響を及ぼさないことが好ましく、特に炭素ベースの電極でECLアッセイ緩衝剤を使用するときにはそうである。アジドは、適切な保存剤であることが判明した。イソチアゾロン(例えば、Kathon、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン及び5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン)、オキサゾリジン(例えば、Oxaban A又は4,4ジメチルオキサゾリジン)及び関係する保存剤は、ECLとの高い相溶性、高い活性、安全上の問題又は環境問題に関連する諸問題が少ないことのために、特に好ましい。
【0054】
5.5 消泡剤
特にHTS用途では、バブル、即ち、泡の生成を回避することが有利なことがある。このため、消泡剤をECLアッセイ緩衝剤に添加することが望ましいことがある。出願人らは、(Antifoams o−30、Antifoam 204、Antifoam A、Antifoam SE−15、Antifoam SO−25及びAntifoam 289を含めて)多数の市販の消泡剤が、ECLアッセイ緩衝剤の性能に有意な影響を及ぼすことなくECLアッセイ緩衝剤に添加できることを見出した。
【0055】
5.6 ECL標識
本発明の組成物はECL標識を含むことができる。ECL標識は、従来のECL標識でもよい。ECL標識の例としては、i)トリス−ビピリジル−ルテニウム(RuBpy)成分などのRu含有及びOs含有有機金属化合物を含めて、金属が、例えば、VIII族貴金属から選択される有機金属化合物、並びにii)ルミノール及び関係化合物がある。ECL標識は、電気化学発光を繰り返し放出できることが好ましい。好ましいECL標識は、ルテニウム又はオスミウム含有有機金属種である。より好ましくは、これらのルテニウム又はオスミウム含有有機金属は、ポリピリジルリガンド(最も好ましくは、ビピリジン、フェナントロリン及び/又はその置換誘導体)とキレートを形成しているルテニウム又はオスミウムを含む。最も好ましくは、ECL標識は、ルテニウム−トリス−ビピリジンを含み、ビピリジンリガンドは、場合によっては、例えば、標識をアッセイ試薬に結合させる連結基で置換されている。
【0056】
ECL標識は、場合によっては連結基によって、アッセイ試薬に連結されていてもよい。ECL標識と連結することができる結合試薬の例としては、細胞全体、細胞表面抗原、細胞下の粒子(例えば、細胞小器官又は膜断片)、ウイルス、プリオン、チリダニ又はその断片、ウイロイド、抗体、抗原、ハプテン、脂肪酸、核酸(及び合成アナログ)、タンパク質(及び合成アナログ)、リポタンパク質、多糖、阻害剤、補助因子、ハプテン、細胞受容体、受容体リガンド、リポ多糖、糖タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素、酵素基質、酵素生成物、セカンドメッセンジャー、細胞代謝産物、ホルモン、薬物、合成有機分子、有機金属分子、トランキライザー、バルビツール酸塩、アルカロイド、ステロイド、ビタミン、アミノ酸、糖、レクチン、組換え又は誘導タンパク質、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンがある。アッセイ試薬は、例えば、結合アッセイ又は酵素アッセイにおいて、結合試薬又は酵素基質として有用であることが好ましい。
【0057】
5.7 組成物
本発明の一態様は、本発明のECLアッセイ緩衝剤を含む組成物に関する。
【0058】
本発明の別の態様は、無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤を含むアッセイに使用するのに適した組成物に関する。適切なpH緩衝剤には、グリシルグリシン(「Glygly」)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(「Tris」)又はそれらの組合せが含まれる。やはり無機リン酸塩を実質的に含まない又はまったく含まない他のpH緩衝剤も、本発明に使用するのに適している。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、本組成物はpH緩衝剤を含み、好ましくは、無機リン酸塩を実質的に含まず、好ましくは1つ又は複数のECL共反応物(好ましくは、TPA又は非TPA共反応物、より好ましくはN−置換モルホリン又はピペラジン、最も好ましくはPIPES)をさらに含む。特に好ましい実施形態によれば、本組成物は、無機リン酸塩を含まない。適切なpH緩衝剤としては、glygly、trisなどがある。さらなる緩衝剤を、ある好ましい諸特性、すなわち、i)pH6.5〜8.5、好ましくは7〜8における緩衝能力(より好ましくは、緩衝剤のpKaは6.5〜8.5、より好ましくは7.5〜8.5の範囲である)、ii)低価格での商業的入手性、iii)ECLに対する阻害効果がないこと、及び/又はiv)0〜1.2V、より好ましくは0〜1.5V(Ru(bpy)及びTPAの酸化に対する電圧ウィンドウ)の範囲に有意な酸化波がないことに基づいて選択することができる。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、本組成物は、非リン酸塩pH緩衝剤を含み、好ましくは1つ又は複数のECL共反応物(好ましくは、TPA又は非TPA共反応物、より好ましくはN−置換モルホリン又はピペラジン、最も好ましくはPIPES)をさらに含む。好ましくは、本組成物は、15mM未満の無機リン酸塩、より好ましくは5mM未満の無機リン酸塩、さらにより好ましくは1mM未満のリン酸塩を含み、さらにより好ましくは無機リン酸塩を実質的に含まず、最も好ましくは無機リン酸塩を含まない。適切なpH緩衝剤としては、glygly、trisなどがある。さらなる緩衝剤を、ある好ましい諸特性、すなわち、i)pH6.5〜8.5、好ましくは7〜8における緩衝能力(より好ましくは、緩衝剤のpKaは6.5〜8.5、より好ましくは7.5〜8.5の範囲である)、ii)低価格での商業的入手性、iii)ECLに対する阻害効果がないこと、及び/又はiv)0〜1.2V、より好ましくは0〜1.5V(Ru(bpy)及びTPAの酸化に対する電圧ウィンドウ)の範囲に有意な酸化波がないことに基づいて選択することができる。
【0061】
これらの実施形態に用いられるECL共反応物は、電極によって誘導される発光反応(electrode induced luminescence reaction)(例えば、電気化学発光)における使用に適していることが好ましい。適切なECL共反応物としては、トリプロピルアミン(TPA)などがある。非TPA共反応物(好ましくは、上記共反応物の項に記載したTPA以外の第三級アミン)は、いくつかの用途、特に、非洗浄形式のアッセイにおいて有利である。
【0062】
本組成物は、10〜2000mM、より好ましくは50〜1200mM、さらにより好ましくは100〜600mM、最も好ましくは300〜500mMのpH緩衝剤を含むことが好ましい。
【0063】
本組成物は、10〜1000mM、より好ましくは30〜600mM、さらにより好ましくは50〜200mM、最も好ましくは75〜150mMのECL共反応物を含むことが好ましい。
【0064】
Tris及びGly−Glyを含有するpH緩衝剤におけるTPA濃度の最適範囲は、ORIGEN(登録商標)緩衝剤の濃度に極めて類似している(すなわち、50〜200mMの範囲)。Tris及びGly−Gly緩衝剤濃度の試験範囲は100〜600mMである。好ましくは、濃度は200mMである。本発明の非TPA共反応物(好ましくは、PIPES)を含むECLアッセイ緩衝剤は、ほぼ同じ範囲の濃度の共反応物を含むことができる。ただし、多数の用途において、好ましい範囲は、10〜100mM、最も好ましくは20〜50mMである。
【0065】
別の好ましい実施形態によれば、Gly−Gly/TPA緩衝剤の最終配合は、200mM Gly−Gly、100mM TPA、0.1%Triton、pH=7.8±0.05である。
【0066】
別の好ましい実施形態によれば、Gly−Gly/TPA緩衝剤の最終配合は、50〜1000mM Gly−Gly、50〜1000mM TPA、pH=7.8±1である。この配合は、0.2%〜2%Triton X−100及び/又は20〜500mM塩も含むことが好ましい。
【0067】
別の好ましい実施形態によれば、Tris/TPA緩衝剤の最終配合は、200mM Tris、100mM TPA、0.1%Triton、pH=7.8±0.05である。
【0068】
別の好ましい実施形態によれば、Tris/TPA緩衝剤の最終配合は、50〜1000mM Tris、50〜1000mM TPA、pH=7.8±0.05である。この配合は、0.2%〜2%Triton X−100及び/又は20〜500mM塩も含むことが好ましい。
【0069】
別の好ましい実施形態によれば、PIPES/Phos緩衝剤の最終配合は、40〜1000mMリン酸塩(好ましくは、リン酸カリウム)、10〜200mM PIPES、pH=7.8±0.05である。この配合は0.2%〜2%Triton X−100も含むことが好ましい。
【0070】
Tris及びGly−Glyアッセイ緩衝剤の使用によって、ECLベースのチロシンキナーゼアッセイにおけるリンペプチド−抗リンペプチド複合体の安定性がかなり向上した。しかし、Tris緩衝剤においてこの複合体が一部解離することが認められた。ただし、その速度は、ORIGENアッセイ緩衝剤におけるよりもはるかに遅かった。Gly−Gly緩衝剤の場合、酵素反応を抑える停止試薬をアッセイ溶液に導入しなかったので、ECLシグナルが徐々に増大した。
【0071】
好ましい一実施形態によれば、組成物はさらに、停止試薬(すなわち、反応を停止するために添加される試薬、又は反応との干渉を抑えるために添加される試薬)を含む。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤は、Mg依存キナーゼアッセイにおける一般的な停止試薬である。EDTAは、ATPを正常に活性化させるために必要なMg2+イオンに結合する。例えば、5mM EDTAをGly−Glyアッセイ緩衝剤に添加すると、残留チロシンキナーゼ酵素活性を停止させるのに役立つ。5mM EDTAを含むGly−Gly/TPA緩衝剤におけるリンペプチド−抗リンペプチド複合体の解離は、非洗浄形式のアッセイにおいて1時間当たり1%を超えなかった。EDTAは、10mMよりも高濃度では、ECLシグナルの絶対値に対して負の効果を及ぼし得るが、アッセイ緩衝剤中でのインキュベーションによってECLシグナルの安定性が損なわれることはない。96ウェルプレートの所望の最終読み取り体積(final read volume)(100μl又は250μl)及びアッセイのタイプ(洗浄又は非洗浄)に応じて、Gly−Gly/TPA溶液配合が異なり得る。
【0072】
好ましくは、本組成物のpHは6〜9、より好ましくは7〜8、さらにより好ましくは7.5〜8、最も好ましくは約7.8である。好ましい一実施形態によれば、pHは、酸又は塩基、好ましくはKOH、より好ましくは10%KOHを添加して調節される。
【0073】
本発明の一実施形態は、
(a)好ましくは0.1〜0.7M、より好ましくは0.3〜0.5M、最も好ましくは約0.2Mのグリシルグリシン(Gly−Gly)と、
(b)好ましくは0.01M〜0.3M、より好ましくは0.05〜0.2、最も好ましくは約0.1Mのトリプロピルアミン(TPA)とを含むECLアッセイ緩衝剤に関する。
【0074】
このアッセイ緩衝剤はさらに、EDTA(好ましくは1〜10mM、より好ましくは5mM)を含むことが好ましい。このアッセイ緩衝剤のpHは、好ましくは6〜9、より好ましくは7〜8、さらにより好ましくは7.5〜8、最も好ましくは約7.8である。好ましい一実施形態によれば、pHは酸又は塩基、好ましくはKOH、より好ましくは10%KOHを添加して調節される。
【0075】
本発明の別の好ましい実施形態は、
(a)好ましくは0.1〜0.7M、より好ましくは0.3〜0.5M、最も好ましくは約0.2Mのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)と、
(b)好ましくは0.01M〜0.3M、より好ましくは0.05〜0.2M、最も好ましくは約0.1Mのトリプロピルアミン(TPA)とを含むECLアッセイ緩衝剤に関する。
【0076】
このアッセイ緩衝剤は、好ましくは1〜10mM、より好ましくは5mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)をさらに含むことが好ましい。本組成物のpHは、好ましくは6〜9、より好ましくは7〜8、さらにより好ましくは7.5〜8、最も好ましくは約7.8である。好ましい一実施形態によれば、pHは、酸又は塩基、好ましくはKOH、より好ましくは10%KOHを添加して調節される。
【0077】
本発明の別の好ましい実施形態は、TPA以外の共反応物、好ましくは(共反応物の項に記載したように)親水性官能基を有するトリアルキルアミンを含むECLアッセイ緩衝剤に関する。好ましくは、この共反応物はPPA又はPIPESであり、最も好ましくはPIPESである。この共反応物の濃度は、好ましくは10〜800mM、最も好ましくは10〜200mM、最も好ましくは20〜50mMである。ECLアッセイ緩衝剤は、pH緩衝剤、好ましくは、リン酸塩、Tris又はGly−Glyも含むことが好ましい。pH緩衝剤の濃度は、好ましくは0〜800mM、より好ましくは0〜400mM、さらにより好ましくは20〜200mM、最も好ましくは75〜150mMである。本組成物のpHは、好ましくは6〜9、より好ましくは7〜8、さらにより好ましくは7.2〜7.8、最も好ましくは約7.5である。ECLアッセイ緩衝剤は、フェニルエーテル成分及び/又は洗浄剤、好ましくは非イオン洗浄剤、さらにより好ましくはフェニルエーテル含有洗浄剤、最も好ましくはTriton X−100を含む物質も含むことが好ましい。洗浄剤濃度は、好ましくは0.02%よりも高く、より好ましくは0.05%よりも高く、最も好ましくは0.05〜0.5%よりも高い。
【0078】
好ましい一実施形態によれば、本発明の試薬又は組成物はさらに、1つ又は複数の洗浄剤及び/又は界面活性剤(例えば、Nonidet、Brij、Triton、Tween、Thesit、Lubrol、Genapol、Pluronic、Tetronic、F108及びSpanの商品名で知られるクラスの非イオン洗浄剤/界面活性剤)を含む。特に好ましい洗浄剤としては、Tween 20、Triton X−100、NP−40、Thesitなどがある。
【0079】
本発明の別の好ましい実施形態は、上述のアッセイ緩衝剤を濃縮して含む試薬組成物に関する。この試薬組成物は、好ましくは水溶液で希釈して、アッセイ、好ましくはECLアッセイに使用するための最適成分濃度を有するアッセイ緩衝剤にできることが好ましい。
【0080】
別の実施形態は、上述の乾燥されたアッセイ緩衝剤の1つを含む乾燥試薬前駆体に関する。この乾燥試薬前駆体は、溶液、好ましくは水溶液と混合して、アッセイ、好ましくはECLアッセイに使用するための最適成分濃度を有するアッセイ緩衝溶液にできることが好ましい。
【0081】
本発明の別の態様は、アッセイ、好ましくは発光アッセイ、より好ましくは化学発光アッセイ、又は電極誘導発光アッセイ、最も好ましくは電気化学発光アッセイを実施するための組成物の準備に使用するのに適した、無機リン酸塩を実質的に含まない1つ又は複数のpH緩衝剤を含有する試薬に関する。
【0082】
本発明の別の態様は、アッセイ、好ましくは発光アッセイ、より好ましくは化学発光アッセイ又は電極誘導発光アッセイ、最も好ましくは電気化学発光アッセイを実施するための組成物の準備に使用するのに適した1つ又は複数のECLアッセイバックグラウンド低減剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含有する試薬に関する。好ましくは、この試薬は、15mM未満の無機リン酸塩、より好ましくは5mM未満の無機リン酸塩、さらにより好ましくは1mM未満のリン酸塩を含み、さらにより好ましくは無機リン酸塩を実質的に含まず、最も好ましくは無機リン酸塩を含まない。
【0083】
一実施形態によれば、この試薬は、ECLアッセイ緩衝剤還元剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含み、かつ/又は無機リン酸塩を実質的に含まず、ECLアッセイを実施するための組成物の調製に使用するのに適している。ここで、電磁放射はアッセイ組成物から放出され、アッセイ組成物は、
(i)電磁放射から励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、
(ii)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物(好ましくはアミン又はアミン成分、最も好ましくは第三級アミン、最も好ましくはTPA)と、
(iii)前記ECL成分及び前記ECL共反応物がその中で酸化され得る媒体として機能できる電解質と、
からなる群から選択される成分を含む。
【0084】
前記試薬は、前記pH緩衝剤、前記ECL共反応物、及び前記基(i)〜(iii)の他の2つの成分の1つを含むことが好ましい。
【0085】
本発明の別の態様は、1つ又は複数の結合試薬と、酵素及び/又は基質と、本発明のpH緩衝剤とを含むアッセイ組成物に関する。
【0086】
本発明の別の態様は、タンパク質キナーゼ及びホスホリラーゼアッセイを実施するための、かつ/又はリンペプチド、リンタンパク質及びホスホアミノ酸を測定するための組成物、試薬、キット及び方法に関する。本発明の一実施形態は、pH緩衝剤とリンペプチド特異的抗体を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物に関する。組成物は、無機リン酸塩を含まないことが好ましい。組成物は、リンペプチド特異的抗体に結合するリンペプチド、ホスホアミノ酸及び/又はホスフィル化(phosphylated)タンパク質をさらに含むことが好ましい。
【0087】
好ましくは、pH緩衝剤は、グリシルグリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される。
【0088】
本組成物は、キナーゼ及びキナーゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含むことが好ましい。別の実施形態によれば、本組成物は、ホスファターゼ及びホスファターゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分を含む。
【0089】
本組成物のpHは6〜9、好ましくは7〜8、より好ましくは7.5〜8、最も好ましくは約7.8であることが好ましい。
【0090】
好ましい一実施形態によれば、組成物はさらに、1つ又は複数のECL共反応物を含む。ECL共反応物はアミン又はアミン成分を含むことが好ましい。より好ましくは、ECL共反応物はトリプロピルアミン(TPA)を含む。
【0091】
別の好ましい実施形態によれば、組成物はさらに停止試薬を含む。停止試薬は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むことが好ましい。
【0092】
別の好ましい実施形態によれば、組成物はさらに酸又は塩基、好ましくはKOHを含む。
【0093】
好ましい一実施形態によれば、本発明の試薬又は組成物はさらに、1つ又は複数の洗浄剤及び/又は界面活性剤(例えば、Brij、Triton、Tween、Thesit、Lubrol、Genapol、Pluronic、Tetronic、F108及びSpanの商品名で知られるクラスの非イオン洗浄剤/界面活性剤)を含む。
【0094】
本組成物は、阻害剤及び/又は酵素、より好ましくはリン酸化又は脱リン酸化反応の阻害剤及び/又は酵素を含むことが好ましい。
【0095】
本発明の別の実施形態は、pH緩衝剤及びECL共反応物を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物に関する。組成物は、無機リン酸塩を含まないことが好ましい。
【0096】
pH緩衝剤は、グリシルグリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択されることが好ましい。
【0097】
本組成物は、キナーゼ及びキナーゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分、あるいはホスファターゼ及びホスファターゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分を含むことが好ましい。
【0098】
本組成物のpHは6〜9、好ましくは7〜8、より好ましくは7.5〜8、最も好ましくは約7.8であることが好ましい。
【0099】
ECL共反応物は、アミン又はアミン成分を含むことが好ましい。より好ましくは、ECL共反応物はトリプロピルアミン(TPA)を含む。
【0100】
別の好ましい実施形態によれば、組成物はさらに停止試薬を含む。停止試薬は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むことが好ましい。
【0101】
別の好ましい実施形態によれば、組成物はさらに酸又は塩基、好ましくはKOHを含む。
【0102】
本組成物は、阻害剤及び/又は酵素、より好ましくはリン酸化反応又は脱リン酸化反応の阻害剤及び/又は酵素を含むことが好ましい。
【0103】
好ましい一実施形態によれば、pH緩衝剤はグリシルグリシンであり、前記組成物はさらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びTPAを含む。組成物は、さらにKOH及び/又はECL成分も含むことが好ましい。
【0104】
本発明の別の実施形態は、pH緩衝剤を含む試薬に関する。前記pH緩衝剤は、無機リン酸塩を実質的に含まず、前記試薬は、ECLアッセイを実施するための組成物の準備に使用するのに適している。ここで、電磁放射は、
(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、
(ii)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物と、
(iii)前記ECL成分及び前記アミン又はアミン成分がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質とからなる群から選択される成分を含むアッセイ組成物によって放出される。
【0105】
試薬は、前記pH緩衝剤、ECL共反応物(好ましくはアミン又はアミン成分)及び前記基(i)〜(iii)の他の2つの成分の1つをさらに含むことが好ましい。
【0106】
本発明の別の実施形態は、pH緩衝剤を含む試薬に関する。前記pH緩衝剤は、無機リン酸塩を実質的に含まず、前記試薬はECLアッセイを実施するための組成物の準備に使用するのに適している。ここで、電磁放射は、
(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、
(ii)酸化されると強い還元剤を形成する、アミン又はアミン成分(好ましくはTPA)であるECL共反応物と、
(iii)前記ECL成分及び前記アミン又はアミン成分がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質とからなる群から選択される成分を含むアッセイ組成物によって放出される。
【0107】
本発明の別の実施形態は、
(a)リン酸特異的抗体と、
(b)リン酸化酵素、リン酸化酵素の基質又はそれらの組合せからなる群から選択される試薬と、
(b)pH緩衝剤とを含み、無機リン酸塩を実質的に含まない、好ましくは含まない組成物に関する。組成物は、ECL共反応物(例えば、TPA)も含むことが好ましい。
【0108】
5.8 キット
本発明の一態様は、1つ又は複数の容器中に、本発明のECLアッセイ緩衝剤の1つ又は複数の成分を含むキットに関する。それらの成分を、場合によっては、追加の試薬と組み合わせて、本発明のECLアッセイ緩衝剤を形成させることができる。このキットには、ECL標識、ECL標識アッセイ試薬、酵素、結合試薬、電極、アッセイプレートなど追加のアッセイ関連成分も含めることができる。
【0109】
本発明の別の態様は、1つ又は複数の容器中に、TPA以外の本発明のトリアルキルアミン共反応物を含む1つ又は複数のECLアッセイ緩衝剤を含むキットに関する。このキットは、緩衝剤内容、並びにアッセイにおける適切な保管及び使用についての指示に関する情報が適切にラベル表示された1つ又は複数のガラス又はプラスチック容器に入れられていることが好ましい。ECLアッセイ緩衝剤成分のいくつか又はすべては、乾燥状態で保存することができる。このキットには、酵素、結合試薬、電極、アッセイプレートなど他のアッセイ関連成分をさらに含めることができる。
【0110】
本発明の別の態様は、1つ又は複数の容器中に、無機リン酸塩を実質的に含まない、かつ/又はECLアッセイ緩衝剤還元剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含む1つ又は複数のECLアッセイ緩衝剤を含むキットに関する。このキットは、緩衝剤内容、並びにアッセイにおける適切な保管及び使用についての指示に関する情報が適切にラベル表示された1つ又は複数のガラス又はプラスチック容器に入れられていることが好ましい。ECLアッセイ緩衝剤成分のいくつか又はすべては、乾燥状態で保存することができる。このキットには、ECL標識、ECL標識アッセイ試薬、酵素、結合試薬、電極、アッセイプレートなど他のアッセイ関連成分をさらに含めることができる。
【0111】
Gly−Gly/TPA緩衝剤の貯蔵安定性に関する正式な研究は実施されていない。しかし、3〜4ヶ月経過したアッセイ緩衝剤を使用しても、アッセイ性能に影響はなかった。出願人らは、Gly−Gly安定性に対しても、例えば、ORIGENアッセイ緩衝剤と同じ注意を払うべきであると考える。溶液中の二価イオンの濃度は、μMレベル以下に保たれることが好ましい。
【0112】
このキットは、組成物から放出される電磁放射を検出するECLアッセイを実施できるように構成されている又は実施するのに適していることが好ましい。このキットは、1つ又は複数の容器中にpH緩衝剤を含み、好ましくは、無機リン酸塩を実質的に含まない、かつ/又はECLアッセイ緩衝剤還元剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含む。このキットには、(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、(ii)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物(好ましくはアミン又はアミン成分)と、(iii)前記ECL成分及び前記ECL共反応物(例えば、アミン又はアミン成分)がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質とからなる群から選択される少なくとも1つの他の成分も含まれる。前記キットには、前記ECL成分(i)、ECL共反応物(ii)、及び電解質(iii)からなる群の1つ又は複数の成分を含む少なくとも1つの単独成分が含まれる。
【0113】
本発明の別の態様は、アッセイ、好ましくは発光アッセイ、より好ましくは電極誘導発光アッセイ、最も好ましくは電気化学発光アッセイの実施に使用されるキットに関する。このキットは、1つ又は複数の容器中に、無機リン酸塩を実質的に含まない1つ又は複数のpH緩衝剤と、(a)少なくとも1つの発光標識(好ましくは電気化学発光標識)、(b)少なくとも1つのECL共反応物、(c)1つ又は複数のリン酸特異的結合試薬、(d)1つ又は複数の電極及び/又は磁気ビーズ、(e)1つ又は複数の遮断薬、(f)保存剤、(g)安定剤、(h)酵素、(i)洗浄剤、(j)乾燥剤、及び/又は(k)吸湿剤からなる群から選択される少なくとも1つのアッセイ成分とを含む。
【0114】
このキットには、それぞれ2002年6月28日に出願され、参照により本明細書に援用する「発光試験測定用アッセイプレート、リーダーシステム及び方法(Assay Plates、Reader Systems and Methods for Luminescence Test Measurements)」と題する米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号による、1つ又は複数のアッセイ電極、好ましくはアッセイプレート、より好ましくはマルチウェルアッセイプレートと、1つ又は複数、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上の容器に入れられたアッセイ成分とを含むアッセイモジュールが含まれることが好ましい。
【0115】
一実施形態によれば、このキットでは、1つ又は複数のアッセイ成分が、1つ又は複数のマルチウェルプレートウェルに、好ましくは乾燥された形で含まれる。
【0116】
一実施形態によれば、各アッセイ成分は別々の容器に入れられている。別の実施形態によれば、このキットには、結合試薬及び安定剤を入れた容器が含まれる。別の実施形態によれば、ウェルの試薬(well reagent)には、結合試薬、安定剤が含まれ得る。キットは、ウェル中に液体を含まないことが好ましい。
【0117】
好ましい一実施形態は、アッセイプレート、好ましくはマルチウェルアッセイプレートと、1つ又は複数のpH緩衝剤と、少なくとも1つの発光標識(好ましくは、電気化学発光標識)及び少なくとも1つの電気化学発光共反応物からなる群から選択される少なくとも1つのアッセイ成分とを含む電極誘導発光アッセイ(好ましくは、電気化学発光アッセイ)の実施に使用されるキットに関する。前記pH緩衝剤は、ECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド低減剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含み、又は実質的にリン酸塩を含まず、かつ/又は前記ECL共反応物がTPAでない(好ましくは、官能性第三級アルキルアミン、最も好ましくはPIPESである)。
【0118】
別の実施形態は、マルチウェルプレートと、pH緩衝剤と、少なくとも1つの電極誘導発光標識(好ましくは、電気化学発光標識)、及び/又は少なくとも1つのバイオ試薬、及び/又は少なくとも1つの遮断薬(例えば、BSA)とを含むキットに関する。このキットには、ECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド低減剤(好ましくは、非リン酸塩緩衝剤)が含まれ、無機リン酸塩が実質的に含まれず、かつ/又はTPA以外のECL共反応物(好ましくは官能性第三級アルキルアミン、最も好ましくはPIPES)が含まれる。
【0119】
好ましい一実施形態によれば、このキットには、完全な細胞、細胞溶解物、細胞断片、細胞膜、膜ゴースト、細胞小器官、細胞小器官断片、細胞小器官膜、ビリオン、ビリオン断片、ビリオン膜、リポソーム、洗浄剤可溶性タンパク質、洗浄剤可溶性脂質又はそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料が含まれる。
【0120】
別の実施形態によれば、このキットには、原形質膜断片、エンドソーム、クラスリン被覆小胞、エンドプラミック断片、シナプス小胞、ゴルジ断片、メンブレンサブドメイン(membrane subdomain)、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、リソソーム、リポソーム、ウイルス粒子、細胞から分離されウイルスによって誘導される膜に包まれた粒子(viral−induced membrane enclosed particles shed from cells)、及び完全な生物由来の脂質膜体(lipid membrane bodies)からなる群から選択される生体用材料が含まれる。
【0121】
好ましい一実施形態によれば、このキットには、抗体、抗体断片、タンパク質、酵素、酵素基質、阻害剤、補助因子、抗原、ハプテン、リポタンパク質、リポサッカライド、細胞、細胞下成分、細胞受容体、ウイルス、核酸、抗原、脂質、糖タンパク質、炭水化物、ペプチド、アミノ酸、ホルモン、タンパク質結合リガンド、薬物、発光標識(好ましくは、ECL標識)又はそれらの組合せから選択されるプレート表面に好ましくは固定された少なくとも1つのバイオ試薬が含まれる。少なくとも1つのバイオ試薬は、1つ又は複数の膜に結合するようになされ又は選択されて、そのような固定化膜を有する電極を生じることが好ましい。
【0122】
生体用材料は、チロシンキナーゼ固有活性を有する1回膜貫通受容体;非チロシンキナーゼ膜貫通受容体(例えば、トランスフェリン受容体);G−タンパク質共役受容体(GPCR);GPCRエフェクタータンパク質(例えば、アデニル酸シクラーゼ);ホスホイノシチド(例えば、ホスファチジルイノシトール4,5ビスリン酸塩(PIP));リン脂質又はスフィンゴ脂質の組成物、同定(identification)又は機能(function)(すなわち、アポトーシス中のホスフォチジルセリンの存在における変化);細胞小器官に結合したGTP加水分解酵素/グアニンヌクレオチド交換因子(exchange factors)(GEF)/GTP加水分解酵素活性化タンパク質(GAP);サイトカイン/ケモカイン受容体;細胞接着分子(例えば、VCAM、インテグリン);細胞質外在性膜タンパク質キナーゼ(cytoplasmic peripheral membrane protein kinases)(例えば、src);細胞内タンパク質キナーゼアダプタ/ドッキングタンパク質(例えば、インシュリン受容体基質1、GRB2);イオンチャネル(例えば、ニコチンアセチルコリン受容体、CFTRなど);受動輸送体(例えば、グルコース);能動(ATP駆動)輸送体;イオン連結輸送体(ion−linked transporter)(例えば、Na+/グルコース);グリコシルトランフェラーゼ/糖タンパク質修飾酵素;核膜断片;及び可溶性受容体からなる群から選択される少なくとも1つの活性タンパク質を含む脂質/タンパク質層を含むことが好ましい。
【0123】
このキットは、タンパク質、核酸又はそれらの組合せを含む固定化試薬を含むことが好ましい。
【0124】
好ましい一実施形態によれば、複数のウェルが少なくとも2つの異なるバイオ試薬を含む。例えば、1つのウェルが、異なるバイオ試薬を含む2つ以上のアッセイドメインを含むことができる。
【0125】
このキットは、少なくとも1つの電気化学発光共反応物及び/又は少なくとも1つの電極誘導発光標識(好ましくは電気化学発光標識)を含むことが好ましい。
【0126】
別の実施形態によれば、このキットは、複数のアッセイに適合する。このキットは、放射能アッセイ、酵素アッセイ、化学比色アッセイ、蛍光アッセイ、化学発光アッセイ及びそれらの組合せからなる群から選択される追加のアッセイに使用される追加のアッセイ試薬をさらに含むことが好ましい。
【0127】
別の実施形態によれば、このキットには、2つ以上、好ましくは4つ以上、より好ましくは8つ以上、より好ましくは15個以上、最も好ましくは25個以上のアッセイモジュール又はプレートが含まれる。好ましい一実施形態によれば、このキットは、何度でも封ができるバッグ又は容器(例えば、ジップロック式)に納められている。
【0128】
バッグ又は容器は、水を実質的に通さないことが好ましい。一実施形態によれば、バッグは金属箔、好ましくはアルミニウム処理箔であることが好ましい。
【0129】
パッケージングは、半透明、透明又は不透明とすることができる。プレートは、アルミニウムによって裏打ちされた乾燥又は不活性雰囲気を含むプラスチック容器又はバッグで包装されていることが好ましい(例えば、窒素又はアルゴン雰囲気下でバッグを密封することができ、又はバッグに乾燥剤を入れることができる)。別の実施形態によれば、容器は減圧密封されている。
【0130】
容器には1つのプレートが含まれることが好ましい。別の実施形態によれば、容器には10個のプレートが含まれる。別の実施形態によれば、容器には10〜100個のプレートが含まれる。
【0131】
アッセイモジュール又はプレートは、無菌であり、かつ/又はダスト及び他の汚染物質を実質的に含まないことが好ましい。
【0132】
アッセイモジュールも、実質的に無菌であることが好ましい。
【0133】
一実施形態によれば、このキットは、「クリーンルーム」環境において(少なくとも部分的に)製造及び/又は包装される。このキットは、<100,000粒子(0.5ミクロン粒子カウント数によるクリーンルーム粒子カウント)/立方フィート(353万粒子/立方メートル)のクラス100,000クリーンルーム内で(少なくとも部分的に)製造及び/又は包装されることが好ましい。
【0134】
好ましくは、キットの汚染粒子カウント(0.5ミクロン未満の粒子)は、6000万/立方メートル未満、より好ましくは3000万/立方メートル、さらにより好ましくは2000万未満、さらにより好ましくは1500万未満、最も好ましくは1000万未満である。
【0135】
好ましくは、脱イオン水中の不揮発性残渣は、0.50g/m未満、より好ましくは0.25g/m未満、さらにより好ましくは0.15g/m未満、最も好ましくは0.10g/m未満である。
【0136】
好ましくは、汚染イオン濃度は、50ppm未満、より好ましくは20ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満、最も好ましくは1ppm未満である。
【0137】
5.9 方法
本発明の別の態様は、本発明の改良された緩衝剤、試薬及び/又は組成物を用いる方法に関する。
【0138】
本発明の一実施形態は、本発明のECLアッセイ緩衝剤の存在下で電気化学発光が誘導される電気化学発光アッセイを実施する方法に関する。電気化学発光は、炭素ベースの電極を用いて誘導されることが好ましい。
【0139】
本発明の別の実施形態は、ECL標識の量を測定する方法に関する。ECL標識は、本発明のECLアッセイ緩衝剤の存在下で誘導されて電気化学発光を放出し、その電気化学発光を測定することによってECL標識量が測定される。電気化学発光は、炭素ベース電極を用いて誘導されることが好ましい。ECL標識は電極近傍に結合し保持されることが最も好ましい。
【0140】
本発明の別の実施形態は、分析物の量又は活性を測定する方法に関する。分析物は、ECL標識を含む標識物質と反応し、ECL標識を含む標識物質と複合体を形成し、又はECL標識を含む標識物質と特異的結合相互作用において競合する。ECL標識は、本発明のECLアッセイ緩衝剤の存在下で誘導されて電気化学発光を放出し、電気化学発光を測定して分析物の量又は活性を測定する。電気化学発光は、炭素ベース電極を用いて誘導されることが好ましい。分析物の存在又は活性によって、(例えば、特異的結合複合体の形成を介して、又は化学結合の切断又は形成を介して)標識が電極に結合し、又は電極から放出されることが最も好ましい。
【0141】
本発明の一実施形態は、電気化学発光アッセイを実施する方法に関する。電気化学発光は、pH緩衝剤とECL共反応物を含む組成物の存在下で誘導され、前記組成物は無機リン酸塩を実質的に含まず、かつ/又はECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド低減剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含む。
【0142】
本発明の別の実施形態は、電気化学発光アッセイを実施する方法に関する。電気化学発光は、pH緩衝剤とECL共反応物を含む組成物の存在下で誘導される。ECL共反応物は、官能性トリアルキルアミン、好ましくはPIPESである。
【0143】
本発明の別の実施形態は、電磁放射放出を起こす方法であって、
(a)(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、
(ii)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物(好ましくはアミン又はアミン成分)と、
(iii)前記ECL成分及び前記ECL共反応物(例えば、アミン又はアミン成分)がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質と、
(iv)pH緩衝剤とを含む組成物を形成するステップであって、前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まず、ECLバックグラウンド低減剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含み、かつ/又は前記ECL共反応物が官能性第三級アルキルアミンであるステップと、
(b)組成物を誘導して電磁放射を放出させるのに有効な量の電気化学エネルギーに適切な諸条件下で組成物を曝すステップと、
(c)放出された電磁放射を検出するステップとを含む、電磁放射放出を起こす方法に関する
【0144】
本発明の別の実施形態は、無機リン酸塩及びリン酸特異的抗体を実質的に含まないpH緩衝剤を含む試料又は組成物において、特異的結合アッセイを定性的又は定量的に実施する方法に関する。試料又は組成物はさらにECL共反応物を含むことが好ましい。
【0145】
本発明の別の実施形態は、結合試薬がその上に固定された1つ又は複数のアッセイドメインを含むウェルにおいて、無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤を含む組成物を用いて、特異的結合アッセイを定性的又は定量的に実施する方法に関する。組成物はさらにリン酸特異的抗体を含むことが好ましい。
【0146】
本発明の別の実施形態は、結合試薬がその上に固定された1つ又は複数のアッセイドメインを含むウェルにおいて、無機リン酸塩を実質的に含まず、かつ/又は官能性トリアルキルアミンECL共反応物を含むECLアッセイ緩衝剤を含む組成物を用いて、特異的結合非洗浄アッセイを定性的又は定量的に実施する方法に関する。
【0147】
本発明の別の実施形態は、キナーゼ産物とリン酸特異的抗体を含む複合体を形成するステップを含むアッセイを実施する方法であって、前記複合体を無機リン酸塩に曝さない方法に関する。
【0148】
本発明の別の実施形態は、
(a)キナーゼ産物とリン酸特異的抗体を含む複合体を形成するステップであって、前記複合体を無機リン酸塩に曝さないステップと、
(b)金属含有ECL成分を誘導して電磁放射を放出させるステップと、
(c)放出された電磁放射を検出するステップとを含むアッセイを実施する方法に関する。
【0149】
複合体はさらに前記金属含有ECL成分を含むことが好ましい。
【0150】
本発明の別の実施形態は、
(a)pH緩衝剤を含み、無機リン酸塩を実質的に含まず、(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分、(ii)酸化されると強い還元剤を形成するアミン又はアミン成分、及び/又は(iii)前記ECL成分及び前記アミン又はアミン成分がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質を含む組成物を形成するステップと、
(b)適切な諸条件下で、組成物を誘導して電磁放射を放出させるのに有効な量の電気化学エネルギーに組成物を曝すステップと、
(c)放出された電磁放射を検出するステップとを含む電磁放射放出を起こす方法に関する。
【0151】
本発明の別の態様は、改良アッセイに関する。本発明は、例えば、1つ又は複数の目的分析物の検出及び/又は定量化を可能にするのに有用である。それらの反応には、例えば、抗原−抗体相互作用、リガンド−受容体相互作用、DNAとRNAの相互作用、酵素反応、及び他の既知の反応がある。特定の実施形態において、本発明は、多成分試料又は多成分システム中の目的分析物の存在を定性的かつ定量的に検出する方法に関する。(本願と同日に出願され、参照により本明細書に援用するGlezer他による米国特許出願第 号(発明の名称:「1つの試料について複数の測定を実施する方法及び装置(Methods and Apparatus for Conducting Multiple Measurements on a Sample)」[代理人参照番号100405−06410])も参照されたい。
【0152】
本発明の好ましい一態様には、(a)リン酸特異的抗体、(b)電極を含む又は電極に隣接した固体表面に固定された捕獲試薬(capture reagent)を含むアッセイ、及び/又は(c)低検出レベルを含む(かつ/又は高いシグナル/バックグラウンド比を要する)アッセイのうち1つ又は複数を含む方法が含まれる。
【0153】
本発明の実施形態を用いて、目的分析物又は活性を含み得る様々な試料を試験することができる。このような試料は、固体、エマルジョン、懸濁液、液体又は気体の形とすることができる。これらは、例えば、(生又は死)細胞及び細胞から誘導される生成物、不死化細胞、細胞断片、細胞画分、細胞溶解物、細胞小器官、細胞膜、ハイブリドーマ、(ハイブリドーマなどの抗体産生生物からの上清を含めた)細胞培養上清、廃水又は飲料水、食品、飲料、薬学的組成物、血液、血清、血しょう、毛、汗、尿、糞便、組織、生検試料、流出液、分離及び/又は分画試料、分離及び/又は分画液体、器官、唾液、動物の一部、動物副産物、植物、植物の一部、植物副産物、土壌、鉱物、鉱床、水、上水道、水源、流体(気体及び液体)のろ過残渣、ビール(swipes)、吸収剤材料、ゲル、細胞骨格、タンパク質複合体、未分画試料、未分画細胞溶解物、内分泌因子、パラクリン因子、オートクリン因子、サイトカイン、ホルモン、細胞情報伝達因子及び又は成分、セカンドメッセンジャー情報伝達因子及び/又は成分、細胞核、核画分、化学物質、化学溶液、構造生物学的成分、骨格(靭帯、腱)成分、分離及び/又は分画骨格成分、毛、毛皮、羽毛、毛画分及び/又は分離物、皮膚、皮膚試料、皮膚画分、真皮、内皮、真核細胞、原核細胞、菌、酵母、抗体、抗体断片、免疫因子、免疫細胞、薬物、治療薬物、オイル、抽出物、粘液、毛皮、オイル、下水、環境試料、有機溶媒又は空気を含む試料、あるいはこれらから誘導される試料とすることができるが、これらだけに限定されない。試料は、さらに、例えば、水、有機溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、n−メチルピロリドン又はアルコール)又はそれらの混合物を含むことができる。
【0154】
測定することができる分析物としては、試料中に存在する細胞全体、細胞表面抗原、細胞下粒子(例えば、細胞小器官又は膜断片)、ウイルス、プリオン、チリダニ又はその断片、ウイロイド、抗体、抗原、ハプテン、脂肪酸、核酸(及び合成アナログ)、タンパク質(及び合成アナログ)、リポタンパク質、多糖、阻害剤、補助因子、ハプテン、細胞受容体、受容体リガンド、リポ多糖、糖タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、酵素、酵素基質、酵素生成物、セカンドメッセンジャー、細胞代謝産物、ホルモン、薬物、合成有機分子、有機金属分子、トランキライザー、バルビツール酸塩、アルカロイド、ステロイド、ビタミン、アミノ酸、糖、レクチン、組換え又は誘導タンパク質、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、無機分子などがあるが、これらだけに限定されない。測定することができる活性としては、ホスホリラーゼ、ホスファターゼ、エステラーゼ、トランスグルタミナーゼ、核酸損傷活性(nucleic acid damaging activities)、トランスフェラーゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、グリコシダーゼ、リボソーム、タンパク質プロセシング酵素(例えば、プロテアーゼ、キナーゼ、タンパク質ホファターゼ、ユビキチン−タンパク質リガーゼなど)、核酸プロセシング酵素(例えば、ポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、インテグラーゼ、リガーゼ、ヘリカーゼ、テロメラーゼなど)、細胞受容体活性化、セカンドメッセンジャーシステム活性化などの活性があるが、これらだけに限定されない。
【0155】
細胞全体(whole cell)は、動物、植物又は細菌であってもよく、生きていても死んでいてもよい。例としては、菌類、線虫などの植物病原体がある。「細胞下粒子」という用語は、例えば、細胞下細胞小器官、分裂した細胞の膜粒子、細胞壁断片、リボソーム、複数の酵素の複合体、及び生きている生物から誘導することができる他の粒子を包含するものである。核酸としては、例えば、染色体DNA、プラスミドNA、ウイルスDNA、及び複数の源から誘導される組換えDNAがある。核酸には、RNA、例えば、メッセンジャーRNA、リボソームRNA及び転移RNAも含まれる。ポリペプチドとしては、例えば、酵素、輸送タンパク質、受容体タンパク質、及びウイルスのコートタンパク質などの構造タンパク質がある。好ましいポリペプチドは酵素及び抗体である。特に好ましいポリペプチドは、モノクローナル抗体である。ホルモンとしては、例えば、インシュリン及びT4甲状腺ホルモンがある。薬物としては、例えば、強心配糖体がある。合成ポリペプチド、合成核酸、及び合成メンブレン、小胞及びリポソームなどの生物学的材料に化学的に類似した合成物質を含むことも当然本発明の範囲内にある。上記は、本発明における使用に適した生物学的物質の包括的リストではなく、広範な本発明の範囲を説明するためのものに過ぎない。
【0156】
本発明の組成物又は試薬は好ましくは水性である。この組成物又は試薬は、非水性とすることもできる。適切な有機液体の例は、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、及び上記の2つ以上の混合物である。例を挙げると、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸塩などのテトラアルキルアンモニウム塩は、有機液体に可溶であり、有機液体と共に用いて非水性電解質を形成することができる。
【0157】
また、一般に、目的分析物は、10−3モル以下、例えば、少なくとも10−18モルの濃度で存在する。目的分析物を含有し得る試料は、固体、エマルジョン、懸濁液、液体又はガスの形とすることができ、例えば、細胞及び細胞によって誘導される生成物、水、食品、血液、血清、毛、汗、尿、糞便、組織、唾液、オイル、有機溶媒又は空気から誘導することができる。試料は、さらに、例えば、水、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、n−メチル−ピロリドン又はアルコールを含むことができる。
【0158】
一実施形態において、試薬は、抗体、抗原、核酸、ハプテン、小さなヌクレオチド配列、オリゴマー、リガンド、酵素、又は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、若しくは、それらの複合体、又は、タンパク質相互作用によって第1の結合相手に結合可能である他の第2の結合相手、に複合されたECL成分などである。
【0159】
本発明の一実施形態は、ECLアッセイによって目的分析物を検出又は定量する方法に関する。この方法は、
(1)(a)目的分析物について試験される試料と、
(b)(i)追加の目的分析物又は目的分析物のアナログと、
(ii)目的分析物又はその前記アナログの結合相手と、
(iii)(i)又は(ii)と結合可能である反応成分とからなる群から選択される少なくとも1つの物質と、
(c)電磁放射が放出される励起状態に転化可能であり、(b)目的分析物又は(b)(i)、(b)(ii)又は(b)(iii)に定義した物質と結合相互作用可能である金属含有ECL成分と、
(d)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物(好ましくは、アミン又はアミン成分)と、
(e)前記ECL成分及び前記種をその中で酸化することができる媒体として機能することができる電解質とを含む組成物を形成するステップと、
(2)組成物を誘導して電磁放射を放出させるのに有効な量の電気化学エネルギーに前記組成物を曝すステップと、
(3)放出された電磁放射を検出するステップとを含み、試料はアッセイ性能に有害な無機リン酸塩に曝されず、前記組成物はさらにECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド低減剤(好ましくは、非リン酸塩pH緩衝剤)を含む。好ましくは、組成物は、15mM未満の無機リン酸塩、より好ましくは5mM未満の無機リン酸塩、さらにより好ましくは1mM未満のリン酸塩を含み、さらにより好ましくは無機リン酸塩を実質的に含まず、最も好ましくは無機リン酸塩を含まない。
【0160】
固相アッセイ形式(例えば、固相結合アッセイ)では、生物活性又は結合反応が、表面への標識の付着又は表面からの標識の解離と組み合わされることが多い。例えば、付着している結合試薬と標識分析物の結合相互作用によって、固定化結合試薬を支持している固相上に標識が局在化することになる。測定すべき生物活性又は結合反応を、固相上の標識を測定することによって定量することができる。多くの固相アッセイ形式には、固相上の標識を検出する前に非結合標識を除去する洗浄ステップが含まれる(洗浄アッセイ)。この洗浄ステップを含まないアッセイは、検出方法が遊離標識と結合標識を識別することができるときに実施することができる。洗浄ステップは多数の用途において実施が困難又は手間がかかり得るので、非洗浄アッセイ形式が望ましい。しかし、多くの場合、非洗浄アッセイ性能は、遊離標識と結合標識の識別が不完全なためにバックグラウンドシグナルが高く、限定されている。
【0161】
出願人らは、驚くべきことに、本発明のECLアッセイ緩衝剤では、ECLアッセイにおいて、ECLを誘導するために使用される作用電極に(例えば、共有相互作用、特異的結合相互作用、非特異的吸着などによって)付着したアッセイ試薬を用いて、遊離標識と結合標識の識別(すなわち、電極に結合された標識を選択的に検出する能力)が向上することを見出した。より具体的には、本発明の組成物及び試薬によって、結合標識からのECLシグナルと遊離標識からのECLシグナルの比が向上する。本発明のECLアッセイ緩衝剤によって、ECL標識が誘導されて発光を起こす固体電極表面からの距離が減少すると考えられる。これによって、(電極に結合していない)遊離標識に対する(電極表面に結合している)結合標識のシグナルが増加する。これを特徴付ける別の方法は、「有効励起長(effective excitation length)」(遊離ECL標識が励起され得る最大距離)によるものである。「有効励起長」は、i)ECLの生成に関与する短寿命中間体(例えば、TPAの酸化生成物)が破壊的な副反応で破壊されるまでに電極から拡散することができる距離(これらの中間体の寿命及び拡散定数の関数)、及びii)遊離標識又は標識試薬が、これらの反応性中間体との反応に関与するために電極に十分近い領域まで拡散する速度(非結合ECL標識又は標識試薬の拡散定数の関数)の影響を受ける。
【0162】
本発明のECLアッセイ緩衝剤を用いると、有効励起長は、>50%、好ましくは>75%、さらにより好ましくは>90%短縮される。したがって、本発明のECLアッセイ緩衝剤は、アッセイ性能を向上させる結合/遊離ECLシグナル比を最大にするので望ましい。これらの考察は、溶液中に高濃度の標識種が存在することが必要であるが、洗浄ステップ中に結合複合体が解離するためにかなりのシグナル損失も予想される低親和性相互作用を測定する場合に特に重要である。
【0163】
したがって、本発明の別の態様は、pH緩衝剤無機リン酸塩を実質的に含まず、結合/遊離ECLシグナル比を最大にする非洗浄形式アッセイに関する。このアッセイは、電極表面を含む表面又はそれに隣接する表面においてECL標識を捕獲するものであることが好ましい。例えば、米国特許第6,066,448号、同第6,090,545号、同第6,140,045号、同第6,207,369号、同第6,214,369号、及びそれぞれ2002年6月28日に出願され、参照により本明細書に援用する「発光試験測定用アッセイプレート、リーダーシステム及び方法(Assay Plates、Reader Systems and Methods for Luminescence Test Measurements)」と題する米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号を参照されたい。
【0164】
したがって、本発明の別の実施形態は、一般に、表面(好ましくは、電極表面)に固定された試薬を使用し、有利な有効励起長を有する電気化学発光アッセイに関する。好ましくは、このアッセイでは、有効励起長が100ミクロン未満、より好ましくは75ミクロン未満、さらにより好ましくは50ミクロン未満、さらにより好ましくは25ミクロン未満、さらにより好ましくは10ミクロン未満、さらにより好ましくは5ミクロン未満、最も好ましくは1ミクロン未満となる。特に好ましい実施形態によれば、有効励起長は0.5ミクロン未満、好ましくは0.2ミクロン未満、さらにより好ましくは0.1ミクロン未満である。
【0165】
5.10 システム
本発明のさらに別の態様は、アッセイを実施するための、本発明の試薬及び/又は組成物を含む又は使用するシステムに関する。
【0166】
本発明の一実施形態は、試料中の目的分析物のECL検出又は定量のためのシステムに関する。前記システムは、
(a)pH緩衝剤と
(b)試料と、
(c)(i)添加された目的分析物又は目的分析物のアナログと、
(ii)目的分析物又はその前記アナログの結合相手と、
(iii)(i)又は(ii)と結合可能である反応成分とからなる群から選択される少なくとも1つの物質であって、前記物質の1つが、電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分に、直接又は1つ若しくは複数の他の分子を介して連結されている物質と、
(d)強い還元剤及び電解質に転化可能であるECL共反応物、好ましくはアミン又はアミン成分と、
(d)ECL成分を誘導して電磁放射を放出させる1つ又は複数の電極と、
(e)放出された放射エネルギーを測定して試料中の目的分析物の有無又は量を決定するための1つ又は複数の検出器とを含み、
前記pH緩衝剤は、実質的にリン酸塩を含まないECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド低減剤であり、かつ/又は前記ECL共反応物は官能性第三級アミンである。
【0167】
本発明の別の実施形態は、試料中の目的分析物のECL検出又は定量のためのシステムに関する。前記システムは、
(a)pH緩衝剤と
(b)試料と、
(c)(i)添加された目的分析物又は目的分析物のアナログと、
(ii)目的分析物又はその前記アナログの結合相手と、
(iii)(i)又は(ii)と結合可能である反応成分とからなる群から選択される少なくとも1つの物質であって、前記物質の1つが、電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分に、直接又は1つ若しくは複数の他の分子を介して連結されている物質と、
(d)強い還元剤及び電解質に転化可能であるECL共反応物、好ましくは官能性第三級アミンと、
(d)ECL成分を誘導して電磁放射を放出させる1つ又は複数の電極と、
(e)放出された放射エネルギーを測定して試料中の目的分析物の有無又は量を決定するための1つ又は複数の検出器とを含む。
【0168】
11 生物活性化合物を選択し新規な薬物を製造する方法
本発明の別の態様は、2002年6月28日にそれぞれ出願され、参照により本明細書に援用する「発光試験測定用アッセイプレート、リーダーシステム及び方法(Assay Plates、Reader Systems and Methods for Luminescence Test Measurements)」と題する米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号のパラグラフ6.11に記載されたように、生物活性化合物を選択し又は同定し、場合によっては、このような生物活性化合物を適切な担体組成物に適切な用量で組み込むための改良された方法及びシステムに関する。
【0169】
一実施形態は、新しい薬物を、好ましくは50を超える、より好ましくは100、より好ましくは500、さらにより好ましくは1,000、最も好ましくは5,000のスクリーニングを含む、好ましくはハイスループットスクリーニング(HTS)によって、スクリーニングするための本発明の使用に関する。特に好ましい実施形態によれば、スクリーニングは、10,000を超える、50,000を超える、100,00を超える、500,000を超える、及び/又は1,000,000を超える化合物を含む。
【0170】
本発明の試薬、組成物、方法、装置及び/又はアッセイプレート若しくはモジュールは、様々なスクリーニング及び/又は創薬方法に、組み込まれかつ/又はその中で使用されることが有利である。このようなスクリーニング及び/又は創薬方法としては、Blakeの米国特許第5,565,325号、Chen他の米国特許第5,593,135号、Thastrup他の米国特許第5,521,135号、Agrafiotis他の米国特許第5,684,711号、Dower他の米国特許第5,639,603号、Ashby他の米国特許第5,569,588号、米国特許第5,541,061号、米国特許第5,574,656号、及びPeterson他の米国特許第5,783,431号に示された方法などがある。
【0171】
別の実施形態によれば、本発明はさらに、薬物に付随する副作用を同定するステップと、その副作用に関する情報をデータベースに保存するステップとを含む。Classenの米国特許第6,219,674号を参照されたい。
【0172】
本発明の別の態様は、本発明の方法を用いて調製される改良された生物活性化合物及び/又は薬物に関する。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある電極、プレート、キット及び方法のいくつかを説明するものである。これらの実施例が、決して本発明を限定するものと考えるべきでないことは言うまでもない。本発明に関する多数の変更形態及び改変形態が、当業者によって不必要な実験をすることなくなされ得る。
【0174】
(実施例1)
ECL測定
別段に示さない限り、一体型カーボンインク電極を有するマルチウェルプレートを用いてECL測定を実施した(2002年6月28日にそれぞれ出願され、参照により本明細書に援用する「発光試験測定用アッセイプレート、リーダーシステム及び方法(Assay Plates、Reader Systems and Methods for Luminescence Test Measurements)」と題する同時係属中の米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号の実施例6.1及び、特に、プレートタイプA及びBを参照されたい)。電極を、場合によっては、結合試薬で被覆する前に酸素プラズマで処理した(以後、プラズマ処理及び非プラズマ処理プレートを、それぞれPT又はNPTプレートと表す)。米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号に記載された方法又はその改造方法を用いて、結合試薬をプレートの作用電極に固定した。別段に示さない限り、これらのマルチウェルプレートを使用するように構成されたマルチウェルプレートリーダーを用いてECL測定を実施した。リーダー及びそれらの使用は、米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号の実施例6.3に記載されている。米国特許出願第10/185,274号及び同第10/185,363号及び、特に、プレートタイプ、固定化方法、プレートリーダー及びECL測定方法の記述を、参照により本明細書に援用する。報告するECL強度は相対値であり、個々の実験で使用する機器、ゲイン設定及びプレートによって左右され得る。このため、異なる実験において報告された絶対値を直接比較することはできない。
【0175】
(実施例2)
チロシンキナーゼアッセイ
構成には、ECL測定(実施例I参照)用に構成されたマルチウェルプレート中の電極に固定されたキナーゼ基質のリン酸化、標識抗ホスホチロシン抗体への生成物の複合体形成、及びECL共反応物を含むECLアッセイ緩衝剤の存在下におけるECL測定による表面結合標識の検出が含まれる。電極を酸素プラズマでエッチング前処理して露出炭素量を増加させた。GluとTyrの比が4:1であり、分子量が20,000〜50,000ダルトンであるポリ(Glu、Tyr)(PGT、Sigma−Aldrich Co.)のキナーゼ基質を、プレートのウェル中の作用電極表面に非特異的に吸着させて固定した。各ウェル中の作用電極を、PBS緩衝剤で希釈した1mg/ml PGTを含有する溶液1500nLで処理した。次いで、プレートを終夜乾燥し、ウシ血清アルブミンの5%溶液中4℃でブロックした。プレートを洗浄して、使用前に遮断剤を除去した。
【0176】
可溶性チロシンキナーゼ(c−src、Upstate Biotechnology)、ルテニウム−トリス−ビピリジンのスルホン化誘導体(Sulfo−TAG(商標)標識、Meso Scale Discovery)で標識された抗ホスホチロシンモノクローナル抗体(Abzyme、IGEN International)、ATP及びMg+2を含有する緩衝溶液50μLを各ウェルに添加することによってアッセイを実施した。反応を1時間進行させた。プレートを洗浄し、トリプロピルアミンを含有するECLアッセイ緩衝剤100μLを添加した。実施例1に記載したように電気化学発光検出によってプレートを分析した。
【0177】
リン酸塩緩衝剤で希釈したTPAを含有する従来のECLアッセイ緩衝剤(ORIGEN Assay Buffer、IGEN International)をこの手順に使用すると、標識抗体とリン酸化基質で形成された複合体は、リン酸塩イオンと標識抗体との競合的な結合のために、30分から1時間で解離した(解離の大部分は最初の数分で起きた)。この問題を回避する一手法は、形成された複合体を無機リン酸塩含有溶液に暴露する時間を制御することである。しかし、この手法は、多数のプレートを含むハイスループットアッセイなどのいくつかのアッセイでは、実行不可能な場合がある。
【0178】
出願人らは、この問題を克服する他の解決法がリン酸塩を含まない緩衝剤を使用することであることを発見した。驚くべきことに、ECLの発生を助けるECLアッセイ緩衝剤の能力を損なうことなく、リン酸塩を他の緩衝剤で置換できることを発見した。
【0179】
以下の2つのECLアッセイ緩衝剤組成物を用いてアッセイを実施した。
Gly−Glyアッセイ緩衝剤:
0.4Mグリシルグリシン(Gly−Gly)
0.1Mトリプロピルアミン(TPA)
12mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)
pH=7.8(10%KOHを添加して調整)
Trisアッセイ緩衝剤:
0.4Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)
0.15Mトリプロピルアミン(TPA)
12mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)
pH=7.8(10%KOHを添加して調整)
【0180】
新しいECLアッセイ緩衝剤にEDTAを添加して、キナーゼ活性に必要なイオンであるMg+2を封鎖することによって、リン酸化反応を停止させた(マグネシウムイオンに対するリン酸塩の親和性が高いので、リン酸塩ベースのECLアッセイ緩衝剤ではEDTAは不要であった)。この組成物によって、2つのステップ(停止溶液及び実際のアッセイ緩衝剤の添加)をまとめて1ステップにすることができた。EDTAは10mMよりも高い濃度でECL発生と干渉するが、ECLシグナルの減少をほんの僅かに抑えながら反応を停止させるには5〜12mMのEDTAで十分であることを出願人らは見出した。
【0181】
図1に、リンペプチド−抗体複合体由来のECLの減少を、アッセイ緩衝剤の添加からECL測定までの時間の関数として示す。驚くべきことに、複合体は、リン酸塩含有ORIGENアッセイ緩衝剤に曝されると(プレートをECLリーダーに置くのに要した0分の時間内に)ほぼ完全に解離したが、Gly−Gly(40分で<80%解離)及びTris(40分で<55%解離)アッセイ緩衝剤中では優れた安定性を示した。
【0182】
複合体の安定性は、アッセイ緩衝剤を添加する前の洗浄ステップを省略することによってさらに改良された。図2に、洗浄ステップを介在させずに(EDTA濃度が5mMであり、0.2%Triton X−100が添加された以外は上述した)Gly−Glyアッセイ緩衝剤200μLを反応混合物に直接添加した実験の結果を示す。ECLを測定する前に20時間プレートを保存しても、シグナルはわずか15%減少しただけであった。
【0183】
この手順のさらに驚くべき利点の1つは、その堅牢性であった。驚くべきことに、リン酸化ステップの時間が、再現性のある結果を得るために厳格に制御する必要がある唯一の時間であった。アッセイ結果は、他の全ステップ間の時間に左右されなかった。
【0184】
(実施例3)
リン酸化EGF受容体の検出
サンドイッチ免疫測定法を用いて、EGF活性化A−431細胞(American Type Culture Collection)から調製された細胞溶解物中の自己リン酸化α−表皮成長因子受容体(α−EGFR)を検出した。このアッセイには、α−EGFR細胞外ドメインに対するビオチン標識捕獲抗体、及びホスホチロシンに特異的なSulfo−TAG標識検出抗体(実施例2参照)を使用した。ビオチン標識と電極表面に受動的に吸着されたアビジンとの相互作用によって、ECLアッセイ(実施例1参照)に使用するように構成されたマルチウェルプレートの作用電極上にビオチン標識抗体を固定した。次いで、(RIPA、デオキシコレート含有緩衝剤中の)可溶化EGFRを添加し、抗EGFR抗体に結合させた。次いで、Sulfo−TAG標識α−ホスホチロシン抗体を添加して自己リン酸化EGFRを検出した。
【0185】
最終生成物の安定性実験において、上述したようにアッセイを実施し、ECLを誘導し測定する前に、得られたサンドイッチ複合体を、2つの異なるECLアッセイ緩衝剤、すなわち、150mM TPA/150mMリン酸塩、pH7.48及び100mM TPA/400mMグリシン−グリシン、pH7.8中で時間を変えてインキュベートした。図3は、リン酸塩含有緩衝剤の存在下で時間に依存してシグナルがかなり減衰することを示している。すなわち、シグナルは、1時間後およそ80%減少した。グリシン−グリシン緩衝剤では、この減少がおよそ20%に抑えられた。シグナルがリン酸塩緩衝剤で大きく減少するのは、抗ホスホチロシン抗体に対してリン酸塩イオンがリン酸化タンパク質と競合するためと考えられる。また、シグナル/バックグラウンド比は、グリシル−グリシンアッセイ緩衝剤によって2.5倍に増加した。
【0186】
(実施例4)
特異的シグナルとアッセイ緩衝剤バックグラウンドの識別能力に対するECLアッセイ緩衝剤組成物の効果
多数のECLアッセイ形式において、ECL標識の測定感度は、ECL標識の非存在下におけるECLアッセイ緩衝剤によって生成される光シグナル(及び光シグナル中のノイズ)(ECLアッセイ緩衝剤バックグラウンド)の制限を受ける。この制限は、非特異的結合レベルが低くかつ/又は高感度低ノイズ光検出器を有するECLリーダーを使用する洗浄アッセイにおいて特に明白である。出願人らは、ECLアッセイ緩衝剤組成物と、ECL標識によるシグナルとECLアッセイ緩衝剤バックグラウンドとの識別能力との関係を調べた。特に、出願人らは、ECL共反応物の種類及び/又はpH緩衝剤の種類を変えた4つのECLアッセイ緩衝剤配合、すなわち、TPA/リン酸塩、TPA/Tris、TPA/Gly−Gly及びPIPES/リン酸塩(ここで、PIPESは1,4−ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸を表す)を試験した。
【0187】
作用電極上に固定されたアビジンを含む(実施例1に記載した)マルチウェルプレート上で実験を実施した。酸素プラズマで処理したプレート(PTプレート)及び未処理プレート(NPTプレート)上で実験を実施した。0.5mg/mLアビジン及び0.0035%Triton X−100を含有する溶液2.5uLを各ウェルの作用電極に施し、溶液を蒸発させて1時間以上乾燥させ、ウェルの残りの表面を4℃で終夜5%(w/v)BSA溶液でブロッキングすることによって、アビジンをPTプレート上に固定した。0.5mg/mLアビジン及び0.0075%Triton X−100を含有する溶液2.5uLを各ウェルの作用電極に施し、溶液を蒸発させて終夜乾燥させ、ウェルの残りの表面を5%(w/v)BSA溶液で2時間ブロッキングすることによって、アビジンをNPTプレート上に固定した。ビオチンで標識されたウシIgGとタンパク質(BT−IgG*)1つにつき約1.9個のSulfo−TAG標識とを含有する溶液でウェルを処理することによって、電極表面近傍に様々な量のECL標識を組み込んだ。1nM BT−IgG*を含有するPBS溶液50uLをウェルに添加し、60分間振とうさせながらインキュベートすることによって、BT−IgG*を結合させた。ウェルを水で洗浄し、ECLアッセイ緩衝剤100uLを添加し、ECLを測定した。BT−IgG*を省略した以外は上述した実験を繰り返して、ECLアッセイ緩衝剤バックグラウンドによるシグナルを測定した。
【0188】
試験する共反応物とpH緩衝剤の4つの組合せを最適化して、BT−IgG*からのシグナルとECLアッセイ緩衝剤バックグラウンドの最良の比(S/B比)を与える共反応物濃度、pH緩衝剤濃度、及びpHを特定した。共反応物の濃度をTPAでは25〜200mM、PIPESでは13〜200mMで変化させた。pH緩衝剤の濃度を、リン酸塩では50〜300mM、Trisでは100〜600mM、Gly−Glyでは50〜800mMで変化させた。pHを7〜8で変化させた。すべてのケースにおいて、ECLアッセイ緩衝剤には、0.05%Triton X−100も入れた。所望のpHにするために、KOH又はHClを必要に応じて添加した。試験範囲内で、すべての配合が、ECLアッセイに使用するのに十分な性能を示したが、以下の最適配合、すなわち、TPA/リン酸塩(125mM TPA、200mMリン酸塩、0.05%Triton X−100、pH7.5)、TPA/Tris(125mM TPA、200mM Tris、0.05%Triton X−100、pH7.8)、TPA/Gly−Gly(100mM TPA、200mM Gly−Gly、0.05%Triton X−100、pH7.8)、及びPIPES/Phos(25mM PIPES、100mMリン酸塩、0.05%Triton X−100、pH7.5)をそれらのS/B比に基づいて特定した。
【0189】
図4A及び4Bに、それぞれNPTプレート及びPTプレート上で実施したアッセイに対する4つの最適配合の性能を比較した。本発明者らは、TPA/リン酸塩とTPA/Tris緩衝剤がBT−IgG*に対してほぼ同等のシグナルを与えるが、TPA/TrisシステムのECLアッセイ緩衝剤バックグラウンドが低いので、TPA/リン酸塩緩衝剤よりもS/B比がかなり改善されることを見出した。バックグラウンドのノイズがバックグラウンドシグナルにほぼ比例すると仮定すると、S/B比の4〜6倍の向上は、検出限界の4〜6倍の向上に直接反映される。特異的シグナルが低いにもかかわらず、TPA/Gly−Gly緩衝剤は、TPA/Tris緩衝剤のS/B比とほぼ同じS/B比を有し、したがって、検出限界もほぼ同じであると予想される。PIPES/リン酸塩緩衝剤は、(S/B比に関して)TPA/リン酸塩緩衝剤よりも、エッチングされていないプレート上ではわずかに良好であり、エッチングされたプレートではわずかに劣った。
【0190】
(実施例5)
電極表面に結合しているECL標識と溶液中に遊離しているECL標識との識別能力に対するECLアッセイ緩衝剤組成物の効果
いくつかのECLアッセイ形式において、電極近傍に保持されたECL標識の測定感度は、溶液中のECL標識によって生成される光シグナル(及び光シグナルのノイズ)の制限を受ける。この制限は、ECLアッセイ緩衝剤の添加及びECL測定の前の洗浄によって溶液中の標識が除去されないアッセイ(非洗浄アッセイ)において特に明白である。出願人らは、ECLアッセイ緩衝剤組成物と、電極に結合している(又は近傍に保持されている)ECL標識と溶液中に遊離しているECL標識によるシグナル間の識別能力との関係を調べた。
【0191】
これらの実験において、結合ECL標識からの特異的シグナルを、実施例4に記載したように、アビジン被覆電極に結合したBT−IgG*を用いて測定した。ECLアッセイ緩衝剤バックグラウンドを、やはり実施例4に記載したようにBT−IgG*を用いないで測定した。ウェルに添加したECLアッセイ緩衝剤がタンパク質(IgG*)1つにつき3.9個の標識を含む10nMウシIgGを含む以外は、ECLアッセイ緩衝剤バックグラウンドと同様に、溶液中の遊離ECL標識からのECLシグナルを測定した。結合BT−IgG*からのECLシグナルと遊離IgG*からのECLシグナルとの比(B/F比)によって、溶液中の遊離ECL標識の存在下で結合ECL標識を検出することができる感度が示される。
【0192】
実施例4で最適化された4つのECLアッセイ緩衝剤を、表面結合ECL標識間の識別能力について試験した。結果を表IA及びIBに示す。リン酸塩をTrisで置換すると、TPA含有緩衝剤の場合、B/F比が向上した。しかし、最も極端な向上は、共反応物成分を置換することによって、すなわち、TPAをPIPESに置換することによって得られた。TPA/PhosをPIPES/Phosで置換することによってB/F比が4〜5倍向上した。
【0193】
【表1】

【0194】
【表2】

【0195】
PIPES含有ECLアッセイ緩衝剤を、緩衝剤としてリン酸塩、Tris又はGly−Glyを用いて調製した。これらの混合物の各々のB/F比を、PIPES濃度及び緩衝剤成分を変えてさらに最適化した。PIPES濃度を、リン酸塩ベースの緩衝剤では12.5〜200mM、Tris及びGly−Gly緩衝剤では25〜100mMで変化させた。緩衝剤濃度を100〜400mMで変化させた。すべてのケースにおいて、ECLアッセイ緩衝剤には、0.05%Triton X−100も入れた。所望のpHにするために、KOH又はHClを必要に応じて添加した。試験範囲内で、緩衝剤成分を添加していない組成物を含めて、すべての配合が、ECLアッセイに使用するのに十分な性能を示した。PIPESがpH緩衝剤として作用可能であるために、緩衝剤を添加しないで、十分な性能を得ることも可能である。20〜100mMのPIPES濃度によって、妥当なECL強度が維持されつつ高いB/F比がもたらされることが判明した。リン酸塩濃度がPIPES濃度のほぼ2〜4倍であるときに最高性能が得られた。S/B比が高いこと及びシグナル強度が妥当であることに基づいて、以下の最適配合、すなわちPIPES/リン酸塩(25mM PIPES、100mMリン酸塩、0.05%Triton X−100、pH7.5)、PIPES/Tris(25mM PIPES、200mM Tris、0.05%Triton X−100、pH7.8)、及びPIPES/Gly−Gly(25mM PIPES、100mM Gly−Gly、0.05%Triton X−100、pH7.8)を特定した。
【0196】
図5A及び5Bに、それぞれNPTプレート及びPTプレート上で実施した非洗浄アッセイに対する3つの最適配合の性能を比較した。図では、従来のTPA/リン酸塩緩衝剤に対して性能を比較している。本発明者らは、試験した3つの緩衝剤で、共反応物としてPIPESを使用することによって、TPA/リン酸塩に対してB/F比がかなり(4〜5倍も)向上することを見出した。
【0197】
(実施例6)
ECLアッセイ緩衝剤性能に対する洗浄剤の効果
図6に、アビジン被覆プラズマ処理電極に結合したBT−IgG*からのECLシグナルに対する様々な非イオン洗浄剤の有無による効果を示す。2つのECLアッセイ緩衝剤のうちの1つに洗浄剤を0.5%(w/v)添加した。図6Aに、150mM TPA、250mMリン酸塩、pH7.5を用いて得られた結果を示す。図6Bに、50mM PIPES、150mMリン酸塩、pH7.5を用いて得られた結果を示す。BT−IgG*(0.01nM溶液50μL)をアビジン表面に結合させた。プレートを洗浄し、ECLアッセイ緩衝剤を添加し、ECLを検出してプレートを分析した。図に、ECLアッセイ緩衝剤の各々を用いて測定したアッセイ緩衝剤バックグラウンド、シグナル、及び(実施例4と同様に計算した)S/B比を示す。試験した洗浄剤のうち、Triton X−100のみが性能に対して有意な効果を示した。PIPESベースの緩衝剤の場合、その効果は大きく、Tritonの添加によってS/B比が>2.5倍増加した。TPAベースの緩衝剤に対するTriton X−100の効果は極めてわずかであった。Triton X−100は、フェノールエーテル成分を含有している点で、使用した他の洗浄剤とは異なる。出願人らは、Triton X−100の有利な効果は、電極でのフェノールエーテル成分の酸化、及びECL反応へのTriton酸化生成物の関与に起因しているとの仮説を立てている。
【0198】
驚くべきことに、非プラズマ処理プレート上で実施されるアッセイに対する洗浄剤の効果は異なり極めて大きい。図7に、TPA/Phos、TPA/Tris、TPA/Gly−Gly及びPIPES/Phosアッセイ緩衝剤(洗浄剤の組成及び量以外は実施例4の最適配合)に対する異なる5つの非イオン洗浄剤の効果を示す。Tween 20、Thesit、Triton X−100及びTriton X−114の濃度はすべて0.05%(v/v)であった。β−オクチルグルコピラノシドの濃度は4%(v/v)であった。この実験においては、ストレプトアビジン被覆電極を体積50uL中0.018pmolのBT−IgG*(タンパク質1つにつき6.3個の標識)で処理した。図から、すべての洗浄剤で、TPA含有アッセイ緩衝剤の存在下で測定されたECLシグナルが、洗浄剤の非存在下における同じアッセイ緩衝剤よりもかなり向上していることがわかる。ほとんどのケースで2倍以上向上した。追加実験では、各アッセイ緩衝剤において観測された最大シグナルが、洗浄剤の臨界ミセル濃度(cmc)以上で発生する傾向にあることが観察された。TPA含有ECLアッセイ緩衝剤とは対照的に、PIPESの性能は、フェノールエーテル含有洗浄剤(Triton X−100及びTriton X−114)の添加によって約30倍向上したが、Tween及びThesit洗浄剤の存在下では極めてわずかなシグナルの向上しか観測されなかった。
【0199】
出願人らは、PIPES/Phos緩衝剤に対するTriton洗浄剤の効果は、ECLプロセスへのTriton酸化生成物の関与に関係があるという仮説を立てている。これに対し、NPT電極上でのTPA含有アッセイ緩衝剤からのECLシグナルに対する洗浄剤の効果は、より一般的な現象であり、洗浄剤ミセル中のTPA酸化生成物の安定化に関係しているように見える。
【0200】
洗浄剤のより大きなスクリーニングを実施して、TPA/リン酸塩の存在下でストレプトアビジン被覆NPT電極上のBT−IgG*からのECLシグナルを向上させる他の洗浄剤を同定した。試験した非イオン洗浄剤(APO−14、Triton X−100、β−ノニルグルコシド、Tween 20、Genapol及びペンタエチレングリコールモノ−n−ドデシルエーテル)及び双生イオン洗浄剤(ASB−14及びEmpigen)のすべてを添加すると、ECLシグナルが増加した。
【0201】
(実施例7)
選択した第三級アミンのECL活性
いくつかの第三級アミンを、共反応物としての作用能力についてスクリーニングした。実施例4及び5に記載した方法と同様にして測定を実施した。選択した第三級アミン(200mM)、リン酸塩緩衝剤(200mM)、Triton X−100(0.1%)を含有し、pH7.5に調節されたECLアッセイ緩衝剤を調製した。電極に付着した標識からのシグナルを以下の手順により測定した。i)ECLアッセイ緩衝剤中に0.3nM Bt−IgG*(Sulfo−TAG及びビオチンで標識されたIgG)を含有する溶液を、ストレプトアビジン被覆96ウェルNPT又はPTプレートのウェルに導入した。ii)プレートを2時間振とうさせながらインキュベートしてBt−IgG*を表面に結合させた。iii)プレートを4回洗浄し、ECLアッセイ緩衝剤150μLを添加した。iv)標識からのECLを測定した。ECLアッセイ緩衝剤150uLをストレプトアビジン被覆プレートに導入し、ECLを測定することによって、アッセイ緩衝剤バックグラウンドを測定した。10nM IgG*(Sulfo−TAGで標識されビオチンでは標識されていないIgG)を含有する溶液をストレプトアビジン被覆96ウェルNPT又はPTプレートのウェルに導入し、ECLを測定することによって、溶液中の遊離ECL標識からのECLシグナルを測定した。
【0202】
表IIa及びIIbは、それぞれNPT及びPTプレートでの実験結果を示している。結果から、様々な第三級アミンが、共反応物としての使用に適していることがわかる。一般に、官能性をもたせることによって、結合シグナルと遊離シグナルの比が向上するように見えた。N−置換モルホリン核又は、さらにいっそう有利には、ジ−N−置換ピペラジン核(特に、PIPES、HEPES、POPSO、HEPPSO及びEPPS)を含む第三級アミンは、(特にNPT表面で)結合シグナルと遊離シグナルを識別するのに特に適しているように見えた。PT及びNPTプレート上での相対性能にはやや違いがあった。例えば、MOPSはPTプレート上で特に良好に機能し、一方、ビス−Tris−プロパンは、NPTプレート上で例外的に高いシグナルを示すことが見出された。
【0203】
洗浄剤を含まない、又はTween 20を洗浄剤として使用している以外はほぼ同じ緩衝剤において、共反応物を用いてECLを測定した。TPA以外の2つの共反応物は、Triton X−100(N,N−ビス−(ヒドロキシエチル)−N−4−アミノブタンスルホン酸及びTPA2量体)の有無にほとんど依存せず突出していた。これらの洗浄剤は、TPAよりも結合/遊離比を有し、洗浄剤感受性成分を含む非洗浄アッセイに特に適切である。
【0204】
追加実験から、これらの共反応物は、異なる様々なpH緩衝剤、例えば、GlyGly、Gly、Tris、トリシン及びリン酸塩で緩衝されたECLアッセイ緩衝剤において使用できることが判明した。
【0205】
【表3】

【0206】
【表4】

【0207】
本発明は、本明細書に記載する具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載する実施形態に加えて本発明の様々な変更形態が、上述の説明及び添付した図から当業者には明らかになるはずである。このような変更形態も、特許請求の範囲内にあるものとする。様々な出版物を本明細書に引用したが、その開示全体を参照により本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH緩衝剤とリン酸特異的抗体を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物。
【請求項2】
pH緩衝剤とリン酸特異的抗体を含み、無機リン酸塩を実質的に含まない、アッセイに適した組成物。
【請求項3】
pH緩衝剤と、リンペプチド特異的抗体と、前記リンペプチド特異的抗体に結合するリンペプチドとを含み、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物。
【請求項4】
前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1、2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
1つ若しくは複数のキナーゼ、及び/又は1つ若しくは複数のキナーゼ基質をさらに含む、請求項1、2、3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
1つ若しくは複数のホスファターゼ、及び/又は1つ若しくは複数のホスファターゼ基質をさらに含む、請求項1、2、3又は4に記載の組成物。
【請求項7】
前記pH緩衝剤がグリシルグリシンである、請求項1、2、3、5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記pH緩衝剤がトリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンである、請求項1、2、3、5又は6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が1つ又は複数のECL共反応物を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ECL共反応物がトリプロピルアミン(TPA)を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
さらにKOHを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
さらに洗浄剤又は界面活性剤を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
さらに非イオン洗浄剤又は界面活性剤を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記リンペプチド特異的抗体に結合するリンペプチドをさらに含む、請求項1、2又は4から14までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が無機リン酸塩を含まない、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
さらに停止試薬を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
さらに塩基を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
さらにKOHを含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
さらにKOH及び界面活性剤又は洗浄剤を含む、請求項1から18までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
さらに電気化学発光標識を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
さらに金属含有電気化学発光標識を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
さらにRu又はOs含有電気化学発光標識を含む、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物のpHが6〜9である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物のpHが7〜8である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物のpHが7.5〜8である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物のpHが約7.8である、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項29】
請求項1から28までのいずれか一項に記載の組成物を含む電気化学発光アッセイを実施するように構成された装置。
【請求項30】
前記組成物から放出される光を検出する光検出器、及び/又は電気化学発光を誘導するのに十分な電圧を前記組成物に印加する電圧源をさらに含む、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
1つ又は複数の容器中に、請求項1から28までのいずれか一項に記載の組成物及び1つ又は複数の作用電極を含むアッセイモジュールを含むキット。
【請求項32】
請求項1から28までのいずれか一項に記載の組成物に電気化学エネルギーを与えるステップを含む電気化学発光方法を実施する方法。
【請求項33】
放出された電気化学発光を検出するステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1から28までのいずれか一項に記載の組成物を用いてアッセイを実施する方法であって、
前記組成物とキナーゼ産物を含むアッセイ混合物を形成させるステップと、前記キナーゼ産物と前記リン酸特異的抗体を含む複合体を形成させるステップとを含む、方法。
【請求項35】
キナーゼをキナーゼ基質と接触させて前記キナーゼ産物を形成させるステップと、前記複合体を検出するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
電気化学発光を用いて前記複合体を検出する、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
キナーゼ産物とリン酸特異的抗体を含む複合体を形成させ、前記複合体を無機リン酸塩に曝さないステップを含むアッセイを実施する方法。
【請求項38】
キナーゼをキナーゼ基質と接触させて前記キナーゼ産物を形成させるステップと、前記キナーゼ産物を前記リン酸特異的抗体と接触させて前記複合体を形成させるステップと、前記複合体を検出するステップとをさらに含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
電気化学発光を用いて前記複合体を検出する、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
pH緩衝剤と、ECL共反応物とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物であって、
前記pH緩衝剤は、グリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択され、前記ECL共反応物は第三級アミンを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物。
【請求項41】
前記ECL共反応物がトリプロピルアミンである、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
無機リン酸塩ではないpH緩衝剤と、Ru又はOs含有ECL標識と、ECL共反応物とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物。
【請求項43】
前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記ECL共反応物がトリプロピルアミンである、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
無機リン酸塩ではないpH緩衝剤と、トリプロピルアミンであるECL共反応物とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適した組成物。
【請求項46】
前記pH緩衝剤がECLアッセイpH緩衝剤バックグラウンド低減剤である、請求項42、43、44又は45に記載の組成物。
【請求項47】
前記共反応物の濃度が50〜1000mMである、請求項40、41、42、43、44、45又は46に記載の組成物。
【請求項48】
電気化学発光方法に使用するのに適した組成物であって、(a)濃度が50〜1000mMの範囲にあるトリプロピルアミンと、(b)濃度が50〜1000mMの範囲にあり、グリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択されるpH緩衝剤とを含み、pHが6.5〜8.5の範囲にある組成物。
【請求項49】
さらにECL成分を含む、請求項40、41、45又は48に記載の組成物。
【請求項50】
前記ECL成分が金属含有ECL成分である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
前記ECL成分がRu又はOs含有ECL標識である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記ECL成分が電気化学発光を繰り返し放出可能である、請求項42、43、44、49、50又は51に記載の組成物。
【請求項53】
無機リン酸塩の濃度が20mM未満である、請求項40から52までのいずれかに記載の組成物。
【請求項54】
前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、請求項40から52までのいずれかに記載の組成物。
【請求項55】
前記組成物が無機リン酸塩を含まない、請求項40から52までのいずれかに記載の組成物。
【請求項56】
キナーゼ及びキナーゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項54又は55に記載の組成物。
【請求項57】
ホスファターゼ及びホスファターゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項54又は55に記載の組成物。
【請求項58】
前記pH緩衝剤がグリシルグリシンである、請求項40から57までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
前記pH緩衝剤がトリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンである、請求項40から57までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項60】
さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項40から59までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項61】
さらにKOHを含む、請求項40から60までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
塩、洗浄剤、保存剤、キレート化剤及び消泡剤からなる群から選択される物質をさらに含む、請求項40から61までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
さらに界面活性剤を含む、請求項40から62までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記組成物のpHが6.5〜8.5である、請求項40から63までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項65】
前記組成物のpHが7〜8である、請求項40から64までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項66】
前記組成物のpHが7.5〜8である、請求項40から65までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項67】
前記組成物のpHが約7.8である、請求項40から66までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項68】
前記組成物が水性である、請求項40から67までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項69】
前記組成物が、酸化条件下で金属含有ECL成分からECLを誘導するのに適切な環境を提供する、請求項40から68までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項70】
請求項40から69までのいずれか一項に記載の組成物を含む、電気化学発光方法に使用するのに適した試薬。
【請求項71】
無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤と、Ru又はOs含有ECL成分とを含む試薬であって、
前記試薬はECLアッセイを実施するための組成物に使用するのに適していて、
(i)電磁放射が放出される励起状態に転化可能である金属含有ECL成分と、
(ii)酸化されると強い還元剤を形成するECL共反応物と、
(iii)前記ECL成分及び前記アミン又はアミン成分がその中で酸化され得る媒体として機能することができる電解質と、
からなる群から選択される成分を含むアッセイ組成物によって電磁放射が放出される、試薬。
【請求項72】
前記試薬がさらに前記pH緩衝剤と、アミン又はアミン成分と、前記グループ(i)〜(iii)の他の2つの成分のうちの1つとを含む、請求項71に記載の試薬。
【請求項73】
さらに界面活性剤又は洗浄剤を含む、請求項71に記載の試薬。
【請求項74】
さらにECL共反応物を含む、請求項71に記載の試薬。
【請求項75】
さらにEDTAを含む、請求項71に記載の試薬。
【請求項76】
1つ又は複数の容器中に、pH緩衝剤及びECL共反応物を含み、前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択され、前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
【請求項77】
1つ又は複数の容器中に、pH緩衝剤と、Ru又はOs含有ECL標識と、ECL共反応物とを含み、前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
【請求項78】
1つ又は複数の容器中に、pH緩衝剤とトリプロピルアミンを含み、前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
【請求項79】
1つ又は複数の容器中に、(a)濃度50〜1000mMのトリプロピルアミンと、(b)グリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される濃度50〜1000mMのpH緩衝剤とを含む、電気化学発光方法に使用するのに適したキット。
【請求項80】
濃度50〜1000mMのトリプロピルアミンを含む、請求項78に記載のキット。
【請求項81】
無機リン酸塩を含まない、請求項76、77、78、79又は80に記載のキット。
【請求項82】
キナーゼ及びキナーゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項76、77、78、79、80又は81に記載のキット。
【請求項83】
ホスファターゼ及びホスファターゼ基質からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項76、77、78、79、80又は81に記載のキット。
【請求項84】
前記pH緩衝剤がグリシルグリシンである、請求項76から83までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項85】
前記pH緩衝剤がトリス[ヒドロキシメチル]アミノメタンである、請求項76から83までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項86】
前記ECL共反応物が第三級アミンを含む、請求項77又は81から83までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項87】
前記ECL共反応物がトリプロピルアミン(TPA)を含む、請求項76又は77に記載のキット。
【請求項88】
さらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項76から87までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項89】
前記pH緩衝剤がグリシルグリシンであり、前記組成物がさらにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項76、77又は78に記載のキット。
【請求項90】
さらにKOHを含む、請求項76から89までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項91】
さらにECL成分を含む、請求項76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項92】
電気化学発光を繰り返し放出可能であるECL成分をさらに含む、請求項76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項93】
さらに金属含有ECL成分を含む、請求項76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項94】
さらにRu又はOs含有ECL標識を含む、請求項76又は78から90までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項95】
塩、洗浄剤、保存剤、キレート化剤及び消泡剤からなる群から選択される1つ又は複数の物質をさらに含む、請求項76から94までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項96】
さらに界面活性剤を含む、請求項76から95までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項97】
前記キットが水性である、請求項76から96までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項98】
ECL成分(i)及び電解質(ii)からなる群の1つ又は複数の成分を含めて少なくとも1つの別個の成分をさらに含む、請求項76、78から89まで又は95から97までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項99】
(a)無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤と(b)リン酸特異的抗体とを含む組成物において、定性的又は定量的に特異的結合アッセイを実施する方法。
【請求項100】
前記組成物がさらにECL共反応物を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記組成物がさらにECL標識を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項102】
前記組成物がさらにリン酸特異的抗体を含む、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
結合試薬がその上に固定された1つ又は複数のアッセイドメインを含むウェルにおいて、無機リン酸塩を実質的に含まないpH緩衝剤を含む組成物を用いて、定性的又は定量的に特異的結合非洗浄アッセイを実施する方法。
【請求項104】
電気化学発光標識と、
キナーゼ、キナーゼ基質、キナーゼ産物及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの試薬と、
を含む組成物であって、無機リン酸塩を実質的に含まない組成物を用いて、キナーゼアッセイを実施する方法。
【請求項105】
電気化学発光標識を誘導して電磁放射を放出させるのに有効な電気化学エネルギーを与えるステップと、放出された電気化学発光を検出するステップとをさらに含む請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記組成物をリン酸特異的抗体と接触させるステップをさらに含む、請求項104又は105に記載の方法。
【請求項107】
アッセイを実施する方法であって、
(a)キナーゼ産物とリン酸特異的抗体を含む複合体を形成させ、前記複合体を無機リン酸塩に曝さないステップと、
(b)金属含有ECL成分を誘導して電磁放射を放出させるステップと、
(c)放出された電磁放射を検出するステップとを含む方法。
【請求項108】
前記複合体がさらに前記金属含有ECL成分を含む、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
ECL標識と、ECL共反応物と、リン酸塩ではないpH緩衝剤とを含む組成物の存在下で誘導される電気化学発光を誘導する方法。
【請求項110】
前記pH緩衝剤がECLアッセイpH緩衝剤バックグラウンド低減剤である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記組成物が無機リン酸塩を実質的に含まない、請求項109、110又は111に記載の方法。
【請求項113】
前記ECL共反応物が第三級アミンである、請求項109、110、111又は112に記載の方法。
【請求項114】
前記共反応物が濃度50〜1000mMで存在し、前記pH緩衝剤が濃度50〜1000mMで存在し、前記pHが6.5〜8.5であり、前記ECL共反応物がトリプロピルアミンであり、前記pH緩衝剤がグリシルグリシン、トリス[ヒドロキシメチル]−アミノメタン又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項115】
前記ECL標識がルテニウム又はオスミウムの有機金属複合体である、請求項109から114までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記方法がさらに、
(a)前記組成物を電気化学エネルギーに曝し、前記電気化学発光組成物を誘導して電磁放射を放出させるステップと、
(b)放出された電磁放射を検出するステップとを含む、請求項109から115までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
電極に酸化電位を印加することによって前記電気化学エネルギーを発生させる、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記ECL標識が前記電極に付着している、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
前記電極が元素状炭素を含む、請求項117又は118に記載の方法。
【請求項120】
第三級アミンであるECL共反応物と、少なくとも1つの非リン酸塩ベースのpH緩衝剤とを含む電気化学発光アッセイpH緩衝剤。
【請求項121】
前記共反応物がTPAである、請求項120に記載の電気化学発光アッセイpH緩衝剤。
【請求項122】
前記非リン酸塩ベースのpH緩衝剤が、トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン(Tris)、オリゴ(グリシン)又はそれらの組合せから選択される、請求項120に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
【請求項123】
前記非リン酸塩ベースのpH緩衝剤がグリシル−グリシン(Gly−Gly)である、請求項120に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
【請求項124】
キレート化剤、洗浄剤、塩、消泡剤及び保存剤からなる群から選択される1つ又は複数の物質をさらに含む、請求項120から123までのいずれか一項に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
【請求項125】
さらにリン酸特異的抗体を含む、請求項120から124までのいずれか一項に記載の電気化学発光アッセイ緩衝剤。
【請求項126】
請求項120から125までのいずれか一項に記載のアッセイ緩衝剤とECL標識を接触させるステップと、電気化学発光を誘導するステップと、放出された電気化学発光を検出するステップとを含む、電気化学発光を発生させる方法。
【請求項127】
電気化学発光標識と、非TPA電気化学発光共反応物と、少なくとも1つのフェニルエーテル含有洗浄剤とを含む組成物。
【請求項128】
前記非TPA電気化学発光共反応物がPIPESである、請求項127に記載の組成物。
【請求項129】
前記非TPA電気化学発光共反応物が、3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸、4−[ビス−(2−ヒドロキシエタン)−アミノ]−ブタンスルホン酸、ピペリジン−N−(3−プロパンスルホン酸)、アゼパン−N−(3−プロパンスルホン酸)、ピペリジン−N−(3−プロピオン酸)(PPA)、3−モルフォリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、3−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(EPPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−エタンスルホン酸(BES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、N−2−ヒドロキシピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−N,N’−ビス−4−ブタンスルホン酸、ホモピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N,N’−ビス−3−プロパンスルホン酸、ピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N−2−ヒドロキシエタン−N’−3−メチルプロパノエート、ピペラジン−N,N’−ビス−3−メチルプロパノエート、1,6−ジアミノへキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N−ビスプロピル−N−4−アミノブタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(ビス−Trisプロパン)、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−2−プロパノール、N,N,N’,N’−テトラプロピルプロパン−1,3,−ジアミン(TPA2量体)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン)スルホン酸(POPSO)及び2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]プロパン−1−スルホン酸(HEPPSO)からなる群から選択される、請求項127に記載の組成物。
【請求項130】
前記組成物が作用電極と接触している、請求項127、128又は129に記載の組成物。
【請求項131】
前記組成物が炭素ベースの作用電極と接触している、請求項127、128又は129に記載の組成物。
【請求項132】
前記電気化学発光標識がRu又はOs含有ECL標識である、請求項127から131までのいずれかに記載の組成物。
【請求項133】
3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸又は4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸を含む組成物。
【請求項134】
さらにECL標識を含む、請求項133に記載の組成物。
【請求項135】
さらに金属含有ECL標識を含む、請求項133に記載の組成物。
【請求項136】
さらにRu又はOs含有ECL標識を含む、請求項133に記載の組成物。
【請求項137】
前記請求項133から136までのいずれか一項に記載の組成物を用いて電気化学発光を誘導する方法。
【請求項138】
電気化学発光を発生させる方法であって、
(a)電気化学発光標識を請求項136に記載の組成物と接触させるステップと、
(b)前記電気化学発光標識を誘導して電気化学発光を放出させるステップと、
(c)前記電気化学発光を検出するステップとを含む方法。
【請求項139】
電気化学発光を発生させる方法であって、
(a)請求項133から137までのいずれか一項に記載の組成物を誘導して電気化学発光を放出させるステップと、
(b)前記電気化学発光を検出するステップとを含む方法。
【請求項140】
前記電気化学発光標識が作用電極に付着している、請求項138又は139に記載の方法。
【請求項141】
前記ECL誘導が、実質的に洗浄剤を含まない組成物において実施される、請求項138又は139に記載の方法。
【請求項142】
1つ又は複数の容器中に、電気化学発光標識と、非TPA電気化学発光共反応物と、少なくとも1つのフェニルエーテル含有洗浄剤とを含むキット。
【請求項143】
1つ又は複数の容器中に、少なくとも1つのトリアルキルアミン非TPA共反応物を含む1つ又は複数のECLアッセイ緩衝剤を含むキット。
【請求項144】
1つ又は複数の容器中に、金属含有電気化学発光標識、及び3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの共反応物を含むキット。
【請求項145】
電気化学発光を発生させる方法であって、
(a)電気化学発光標識を電気化学発光共反応物と接触させるステップと、
(b)前記電気化学発光標識を誘導して電気化学発光を放出させるステップと、
(c)前記電気化学発光を検出するステップと、を含み、
前記電気化学発光共反応物がTPA以外の第三級アミンである、方法。
【請求項146】
電気化学発光標識を電気化学発光共反応物と接触させることを含む、電気化学発光を誘導する方法であって、
電気化学発光共反応物がトリ−n−プロピルアミン以外の第三級アミンであり、前記電気化学発光標識が作用電極に付着している、電気化学発光を誘導する方法。
【請求項147】
電気化学発光アッセイを実施する方法であって、
(a)電気化学発光標識と、少なくとも1つの電気化学発光共反応物と、を含む組成物を形成させるステップであって、前記電気化学発光共反応物はトリ−n−プロピルアミン以外の第三級アミンであり、前記電気化学発光標識は作用電極に付着しているステップと、
(b)前記電気化学発光標識を誘導して電気化学発光を放出させるのに有効な電気化学エネルギーを与えるステップと、
(c)放出された電気化学発光を検出するステップとを含む方法。
【請求項148】
電気化学発光アッセイを実施する方法であって、
(a)電気化学発光標識と、少なくとも1つの電気化学発光共反応物とを含む組成物を形成させるステップであって、前記電気化学発光共反応物がトリ−n−プロピルアミン以外の第三級アミンであり、前記電気化学発光標識の第1の部分が作用電極に付着しており、前記電気化学発光標識の第2の部分が溶液中にあるステップと、
(b)前記電気化学発光標識の第1の部分を誘導して電気化学発光を放出させるのに有効な電気化学エネルギーを与えるステップと、
(c)前記電気化学発光標識の第1の部分から放出された電気化学発光を選択的に検出するステップとを含む方法。
【請求項149】
目的分析物又は活性のアッセイを実施する方法であって、
(a)試料を含む組成物と、ECL標識を含むアッセイ試薬と、電極とを形成させるステップであって、前記試料中に前記分析物又は活性が存在することによって前記電極からの前記アッセイ試薬の付着又は解離がもたらされるステップと、
(b)ECL共反応物を含むECLアッセイ緩衝剤と前記電極を接触させるステップであって、前記共反応物はTPA以外の第三級アミンであるステップと、
(c)前記電極上のECL標識を誘導してECLを誘導するのに適切な条件下で前記電極に電気化学エネルギーを与えるステップと、
(d)放出されたECLを測定するステップとを含む方法。
【請求項150】
結合現象を測定する方法であって、
(a)電極上に固定された結合試薬を、ECL標識を含むアッセイ試薬と接触させるステップであって、前記結合試薬が前記アッセイ試薬に特異的に結合するステップと、
(b)前記アッセイ試薬を前記結合試薬に結合させて前記標識を前記電極に付着させるステップと、
(c)前記電極を、ECL共反応物を含むECLアッセイ緩衝剤と接触させるステップであって、前記共反応物はTPA以外の第三級アミンであるステップと、
(d)前記電極上のECL標識を誘導してECLを誘導するのに適切な条件下で前記電極に電気化学エネルギーを与えるステップと、
(e)放出されたECLを測定するステップとを含む方法。
【請求項151】
前記共反応物が1つ又は複数の以下の諸特性を有する、すなわち、i)1電極酸化において炭素ベース電極上で酸化されてアミンラジカルカチオンを与え、前記アミンラジカルカチオンは、プロトンをその後失ってラジカル還元剤を形成することができ、ii)炭素ベース電極上で、Ru(II)(bpy)の酸化電位と同等以上の酸化電位を有し、iii)炭素ベース電極において、水を分解するのに必要な電位よりも低い電位で酸化され、iv)前記ラジカル還元剤とRu(III)(bpy)が反応してRu(II)(bpy)を生成する反応によって放出されるエネルギーが、発光励起状態のRu(II)(bpy)を生成するのに十分であり、v)前記アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の寿命が、対応するTPA誘導種よりも短い、請求項145から150までのいずれかに記載の方法。
【請求項152】
前記共反応物がアミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤を形成し、前記アミンラジカルカチオン及び/又はラジカル還元剤の拡散距離が100nm未満である、請求項145から151までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項153】
前記方法が洗浄ステップなしで実施される、請求項145から152までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記ECL共反応物をTPAで置換することによって、溶液中の標識に対する電極に付着している標識からのECL誘導の選択性が少なくとも2倍低下する、請求項145から153までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項155】
前記電気化学発光共反応物がPIPESである、請求項145から154までのいずれかに記載の方法。
【請求項156】
前記共反応物が、NRの構造を有するアミンであり、式中、R、R及びRは少なくとも2つの炭素を含むアルキル基であり、R、R及びRのうち1つ又は複数は親水性官能基で官能化されている、請求項145から154までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
前記親水性官能基が帯電した基を含む、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記親水性官能基が負に帯電した基を含む、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
前記親水性官能基がヒドロキシル、ジアルキルアミノ、サルフェート、スルホネート、カルボキシレート及び/又はカルボン酸エステルを含む、請求項157に記載の方法。
【請求項160】
前記共反応物が(n−Pr)N(CHRの構造を有し、式中、nは2以上であり、Rは親水性官能基である、請求項145から154までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記共反応物が以下の式を有し、i)Xが−(CH)−又はヘテロ原子であり、ii)R及びRが2つ以上の炭素を含むアルキル基であり、iii)n及びmが各々1以上であり、iv)R(及び、場合によってはR)が親水性官能基を含む、請求項145から154までのいずれか一項に記載の方法。
【化1】

【請求項162】
前記共反応物が、3−(ジ−n−プロピルアミノ)−プロパンスルホン酸、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ブタンスルホン酸、4−[ビス−(2−ヒドロキシエタン)−アミノ]−ブタンスルホン酸、ピペリジン−N−(3−プロパンスルホン酸)、アゼパン−N−(3−プロパンスルホン酸)、ピペリジン−N−(3−プロピオン酸)(PPA)、3−モルフォリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、3−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(EPPS)、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−3−エタンスルホン酸(BES)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、N−2−ヒドロキシピペラジン−N−2−エタンスルホン酸(HEPES)、ピペラジン−N,N’−ビス−4−ブタンスルホン酸、ホモピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N,N’−ビス−3−プロパンスルホン酸、ピペリジン−N−3−プロパンスルホン酸、ピペラジン−N−2−ヒドロキシエタン−N’−3−メチルプロパノエート、ピペラジン−N,N’−ビス−3−メチルプロパノエート、1,6−ジアミノへキサン−N,N,N’,N’−四酢酸、N,N−ビスプロピル−N−4−アミノブタンスルホン酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、1,3−ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(ビス−Trisプロパン)、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジメチルアミノ−2−プロパノール、N,N,N’,N’−テトラプロピルプロパン−1,3,−ジアミン(TPA2量体)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン)スルホン酸(POPSO)及び2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]プロパン−1−スルホン酸(HEPPSO)からなる群から選択される、請求項145から154までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記共反応物がピペリジン−N−(3−プロピオン酸)及びピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)からなる群から選択される、請求項145から154までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記電気化学発光が、1つ又は複数の炭素ベースの作用電極を用いて誘導される、請求項145から163までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記1つ又は複数の炭素ベースの作用電極が炭素粒子又はカーボンナノチューブを含む、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記ECL標識を少なくとも1つのフェニルエーテル含有洗浄剤とも接触させる、請求項145から165までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
前記共反応物の濃度が10〜800mMである、請求項145から166までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記標識をpH緩衝剤と接触させるステップをさらに含む、請求項146から167までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項169】
前記pH緩衝剤の濃度が好ましくは0〜800mMである、請求項168に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181410(P2010−181410A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44295(P2010−44295)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【分割の表示】特願2003−527403(P2003−527403)の分割
【原出願日】平成14年9月10日(2002.9.10)
【出願人】(504002920)メソ スケイル テクノロジーズ,エルエルシー (8)
【Fターム(参考)】