説明

アップライトピアノ

【課題】柱や床に固定しなくても、地震の際に転倒を防止する転倒防止機構を備えたアップライトピアノを提供する。
【解決手段】キャスター3は、支持具30を嵌挿可能な取付孔を妻土台の底面に設け、この取付孔に支持具30を嵌挿してアップライトピアノに固定される。このキャスター3を取り付けたアップライトピアノは、アップライトピアノを支持するキャスター3に地震による揺れを吸収する油32が備えられており、この油32を介して車輪31bに支持されているので、地震が来ても油32で揺れが吸収され、ピアノの本体が転倒することを防止することができる。従って、このキャスター3を取り付けたアップライトピアノは、柱や床に固定しなくても、地震の際に転倒を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転倒防止機構を備えたアップライトピアノに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アップライトピアノが地震の際に転倒することを防止するため、アップライトピアノを柱や床に金具で固定するなどの措置がとられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、家屋の構造上、そもそも柱や床に固定できない可能性があり、一般家庭では、柱や床に固定する方法での転倒防止対策を取ることが難しかった。
そこで本発明は、柱や床に固定しなくても、地震の際に転倒を防止する転倒防止機構を備えたアップライトピアノを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成する本発明のアップライトピアノは、ピアノの本体と、該本体の底面に取り付けられ、前記本体を支える複数のキャスターとを備えるアップライトピアノにおいて、前記キャスターは、前記本体を支持する支持部と、地震による揺れを吸収する吸収手段と、該吸収手段を介して、前記支持部を支持する車輪部とを備えることを特徴とする。
【0005】
本発明のアップライトによれば、アップライトピアノを支持するキャスターに地震による揺れを吸収する吸収手段が取り付けられており、この吸収手段を介して車輪に支持されているので、地震が来ても吸収手段で揺れが吸収され、ピアノの本体が転倒することを防止することができる。
【0006】
従って、本発明のアップライトピアノによれば、柱や床に固定しなくても、地震の際に転倒を防止することができる。
尚、ピアノの本体には、妻土台をも含む。
【0007】
次に、請求項2に記載したように、請求項1に記載のアップライトピアノにおいて、前記車輪部は、車台と、該車台の一端に回転可能に取り付けられ、前記車台を支持する車輪とを備え、前記支持部は、前記車台の他端を挿入可能な挿入空間を備え、該挿入空間内で前記車台の他端が前記吸収手段を介して前記支持部を支持する構成としてもよい。
【0008】
このようにすると、ピアノから車輪に重量が伝わる経路が、支持部内の挿入空間を介する構造、すなわち、外部構造に一切依存せずに振動を吸収する内部完結型の構造となるので、本発明のキャスターを単にピアノの本体に取り付けるだけで、地震の際に転倒を防止することができる。
【0009】
尚、請求項3に記載したように、吸収手段としては、オイル、空気、ゴム、スプリング、ゲル状物質などを用いることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のアップライトピアノの左側面図である。
【図2】キャスターの斜視図である。
【図3】キャスターに内部構造を説明するための模式図である。
【図4】キャスターに内部構造を説明するための模式図で、他の実施形態について説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本実施形態のアップライトピアノ1は、図1に示すように、複数のキャスター3を備えている(尚、図1中のWは壁、Fは床で、図1では、壁にアップライトピアノ1の裏面を当てた状態で配置した例について示している)。
【0012】
これらキャスター3は、アップライトピアノ1の本体10の底面の後方側(非演奏者側)と、妻土台11の底面の前方側(演奏者側)に取り付けられ、各キャスター3は同一構成となっている。
【0013】
以下では、代表して、妻土台11に取り付けられたキャスター3について説明する。
キャスター3は、図2(a)に示すように、円筒形状に形成された支持具30と、車輪部31とを備えている。
【0014】
このうち車輪部31は、車台31aと、車輪31bとからなり、車輪31bは、車台31aの一端に回転可能に取り付けられ、車台31aを支持している。車台31aは、他端側が支持具30内に挿入されている。
【0015】
支持具30は、図2(b)に示すように、車台31aの他端側の先端31aaが上下方向に移動可能な挿入空間30aが形成されており、その挿入空間30aには、振動吸収用の油32が注入されている。
【0016】
車台31aの他端側の先端31aaは、地震による振動を吸収するため、この支持具30内に注入された油32の抵抗を受け易いように、水平断面が、挿入空間30の水平断面に沿った形状に形成されている。
【0017】
このように形成されたキャスター3は、図3に示すように、支持具30を嵌挿可能な取付孔11aを妻土台11の底面に設け、この取付孔11aに支持具30を嵌挿してアップライトピアノ1に固定される。
【0018】
以上のように構成されたキャスター3を備えるアップライトピアノ1は、アップライトピアノ1を支持するキャスター3に、地震による揺れを吸収する油32が備えられており、この油32を介して車輪31bに支持される。
【0019】
そのため、本実施形態のアップライトピアノ1は、地震の揺れを受けても、車台31aの他端側の先端31aaが挿入空間30a内の油32の抵抗を受けながら、挿入空間30a内を移動することで地震の揺れが吸収され、本体10に伝わる揺れが抑えられるので、本体10が転倒することを防止することができる。
【0020】
従って、本実施形態のアップライトピアノ1によれば、柱や床に固定しなくても、地震の際に転倒を防止することができる。
また、本実施形態のアップライトピアノ1は、ピアノの本体10から車輪31bに重量が伝わる経路が、支持具30内の挿入空間30aを介する構造、すなわち、外部構造に一切依存せずに振動を吸収する内部完結型の構造となるので、キャスター3を単にピアノの本体10に取り付けるだけで、地震の際に転倒を防止することができる。
【0021】
(その他の実施形態)
上述した実施形態では、地震の震動を吸収する構成として油32を用いたが、この油32に替えて、空気を挿入空間30a内に注入してもよいし、図4(a)に示すように、車台31aの一端の支持具30の挿入空間30a内の天面との間にゴム材料32aや、図4(b)に示すように、スプリング32bを取り付けるようにしてもよい。
【0022】
また、キャスター3は、アップライトピアノ1に対して着脱可能に構成してもよい。
さらに、キャスター3は、一定以上の振動を受けないと、地震の震動を吸収しない構造としてもよい。
【0023】
特許請求の範囲に記載された支持部は、上述の実施形態に示された支持具30に限定されるものではない。
また、吸収手段は、油32や空気、ゴム材料32aやスプリング32bの他に、地震の揺れを吸収できる素材、例えばゲル状物質等どのような物でも良い。
【0024】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1…アップライトピアノ、3…キャスター、10…本体、11…妻土台、11a…取付孔、30…支持具、30a…挿入空間、31…車輪部、31a…車台、31b…車輪、32…油、32a…ゴム材料、32b…スプリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアノの本体と、
該本体の底面に取り付けられ、前記本体を支える複数のキャスターと
を備えるアップライトピアノにおいて、
前記キャスターは、
前記本体を支持する支持部と、
地震による揺れを吸収する吸収手段と、
該吸収手段を介して、前記支持部を支持する車輪部と
を備えることを特徴とするアップライトピアノ。
【請求項2】
請求項1に記載のアップライトピアノにおいて、
前記車輪部は、車台と、該車台の一端に回転可能に取り付けられ、前記車台を支持する車輪とを備え、
前記支持部は、前記車台の他端を挿入可能な挿入空間を備え、
該挿入空間内で前記車台の他端が前記吸収手段を介して前記支持部を支持することを特徴とするアップライトピアノ。
【請求項3】
請求項1,2に記載のアップライトピアノにおいて、
前記吸収手段は、オイル、空気、ゴム、スプリング、ゲル状物質であることを特徴とするアップライトピアノ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−73503(P2012−73503A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219466(P2010−219466)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)