説明

アテローム性動脈硬化、脂肪血症および関連した状態を処置する方法、ならびに医薬組成物

ニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニストがDP受容体アンタゴニストとの組合せで患者に投与される、アテローム性動脈硬化を処置する方法が開示される。DP受容体アンタゴニストは、そうでない場合に生じ得る顔面紅潮を軽減、防止または除去するために投与される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナイアシンまたはニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)は、高密度リポタンパク質(HDL)の血清中レベルを上昇させることにおける効果のために一般に公知である薬物である。しかしながら、ニコチン酸はしばしば、顔面紅潮と呼ばれることがある皮膚の血管拡張を伴う。この副作用は、皮膚におけるプロスタグランジンD2のニコチン酸誘導による放出によって引き起こされ、非常に重篤であるので、多くの患者はニコチン酸処置を中断する。本発明は、ニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニストを、そうでない場合には生じる皮膚の血管拡張を軽減または除去する化合物との組合せで投与し、この結果、処置が、実質的な顔面紅潮を伴うことなく進行し得るようにすることによる、アテローム性動脈硬化、脂肪血症(dyslipidemias)、糖尿病および関連した状態の処置に関連する。これは、ニコチン酸またはニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体に拮抗する化合物とを投与することによってヒトにおいて達成される。
【0002】
種々のサブタイプの受容体がプロスタグランジンD2と相互作用する。1つのプロスタグランジンD2受容体が「DP」と呼ばれ、別のプロスタグランジンD2受容体が「CRTH2」として公知である。本発明では、DP受容体の拮抗作用が、そうでない場合には生じ得る顔面紅潮を防止するか、または最小限に抑えるか、または軽減するために利用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の1つの目的は、ニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニストを使用して、アテローム性動脈硬化、脂肪血症、糖尿病および関連した状態についてヒトを処置している期間中の副作用としての実質的な顔面紅潮(頻度および/または重篤度)を除去または軽減することである。
【0004】
本発明の別の目的は、一般には、副作用を最小限に抑える、アテローム性動脈硬化のための混合治療を提供することである。
【0005】
さらに別の目的は、経口使用のための確立された混合医薬組成物を提供することである。
【0006】
これらの目的および他の目的が、本明細書中に示される説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下でアテローム性動脈硬化を処置するために効果的である量で患者に投与することからなる、このような処置を必要としているヒト患者におけるアテローム性動脈硬化を処置する方法が提供される。
【0008】
本発明は、本明細書に添付された図面に関連して例示される。
【0009】
(発明の詳細な説明)
ナイアシンまたはニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸)は、高密度リポタンパク質(HDL)レベルの上昇、ならびに、脂質プロフィルの他の有益な変化(超低密度リポタンパク質(VLDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、トリグリセリド、遊離脂肪酸(FFA)およびリポタンパク質(a)[Lp(a)]を低下させること)におけるこの効果のために一般に公知である薬物である。ニコチン酸は、治療効果的な用量(例えば、1日あたり約50mgから約8グラムもの大きい用量など)でヒトに投与されたとき、HDLレベルを上昇させる。しかしながら、ニコチン酸はしばしば、顔面紅潮とも呼ばれる皮膚の血管拡張を伴う。顔面紅潮は典型的には、暖かく感じること、痒みまたは過敏を伴う皮膚の発赤を引き起こす。顔面紅潮は極めて不快であり得るし、また、非常に重篤であり得るので、多くの患者はニコチン酸処置を中断する。本発明は、実質的な顔面紅潮を伴わない、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストを用いたアテローム性動脈硬化ならびに本明細書中に記載される他の疾患および状態の処置、防止または逆転に関連する。これは、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体に拮抗する化合物とを投与し、従って、顔面紅潮作用をこの頻度および/または重篤度において防止するか、または軽減するか、または最小限に抑えることによってヒトにおいて達成される。
【0010】
プロスタグランジンD2と相互作用する受容体が少なくとも2つ存在する(これらは「DP」および「CRTH2」と呼ばれている)。本発明は主に、DP受容体のアンタゴニストとの組合せで使用されるニコチン酸またはニコチン酸受容体アゴニストに関連する。
【0011】
注目される本発明の1つの側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下でアテローム性動脈硬化を処置するために効果的である量で患者に投与することを含む、このような処置を必要としているヒト患者におけるアテローム性動脈硬化を処置する方法である。
【0012】
注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを患者に投与することを含み、前記組合せが、実質的な顔面紅潮の非存在下で患者における血清HDLレベルを上昇させるために効果的である、このような処置を必要としているヒト患者における血清HDLレベルを上昇させる方法に関連する。
【0013】
注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下で脂肪血症を処置するために効果的である量で患者に投与することを含む、このような処置を必要としているヒト患者における脂肪血症を処置する方法に関連する。
【0014】
注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下で患者における血清LDLレベルまたは血清LDLレベルを低下させるために効果的である量で患者に投与することを含む、このような処置を必要としているヒト患者における血清VLDLレベルまたは血清LDLレベルを低下させる方法に関連する。
【0015】
注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下で患者における血清トリグリセリドレベルを低下させるために効果的である量で患者に投与することを含む、このような処置を必要としているヒト患者における血清トリグリセリドレベルを低下させる方法に関連する。
【0016】
注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下で患者における血清Lp(a)レベルを低下させるために効果的である量で患者に投与することを含む、このような処置を必要としているヒト患者における血清Lp(a)レベルを低下させる方法に関連する。本明細書中で使用されるLp(a)はリポタンパク質(a)を示す。
【0017】
特に注目される本発明の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物が利用される上記に記載された方法のそれぞれに関連する。より具体的には、ニコチン酸の使用が注目される。注目されるなおさらなる側面において、DP受容体アンタゴニストは、患者における顔面紅潮作用を軽減または防止するために効果的である量でDP受容体を選択的に調節する。
【0018】
特に注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸が利用され、DP受容体アンタゴニストがDP受容体を選択的に調節し、およびCRTH2受容体を実質的には調節しない上記に記載された方法のそれぞれに関連する。
【0019】
特に注目される本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを患者に投与することを含み、前記組合せが、実質的な顔面紅潮の非存在下でアテローム性動脈硬化、脂質血症、糖尿病または関連した状態を処置するために効果的である量で投与される、このような処置を必要としているヒト患者におけるアテローム性動脈硬化、脂質血症、糖尿病または関連した状態を処置する方法に関連する。
【0020】
本発明の1つの側面は、実質的な顔面紅潮の非存在下でヒトにおけるアテローム性動脈硬化を処置するための、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストとの組合せでのDP受容体アンタゴニストの使用である。
【0021】
特に注目される本発明の別の側面は、DP受容体アンタゴニストが、化合物Aから化合物AJならびにこの医薬適合性の塩および溶媒和物からなる群から選択される上記に記載される方法に関連する。
【0022】
DP受容体に選択的に拮抗し、および顔面紅潮作用を抑制するために特に有用な化合物の例には、下記の化合物:
【0023】
【化3】



ならびにこの医薬適合性の塩および溶媒和物
が含まれる。
【0024】
本明細書中で使用されるアテローム性動脈硬化は、大動脈および中程度のサイズの動脈の壁の最も内側の層における、コレステロールおよび脂質を含有するアテローム斑の沈着によって特徴づけられる血管疾患の形態を示す。アテローム性動脈硬化は、関連した医学分野に従事する医師によって認識および理解される血管の様々な疾患および状態を包含する。アテローム硬化性心臓血管疾患(血管再生術後の再狭窄を含む)、冠状動脈心疾患(これは冠状動脈疾患または虚血性心疾患としても公知である)、脳血管性疾患(多重梗塞性認知症を含む)、および末梢血管疾患(勃起機能不全を含む)はすべて、アテローム性動脈硬化の臨床的発現であり、従って、「アテローム性動脈硬化」および「アテローム硬化性疾患」の用語によって包含される。
【0025】
「脂肪血症(dyslipidemia)」は、異常なレベルの血清脂質(例えば、HDL(低)、LDL(高)、VLDL(高)、トリグリセリド(高)、リポタンパク質(a)(高)、FFA(高)および他の血清脂質など)、またはそれらの組合せを示すために従来の意味で使用される。脂肪血症は、糖尿病(糖尿病性脂肪血症)および代謝性症候群などの特定の関連した疾患または状態の単純な状態または一部であり得る。従って、単純な脂肪血症、ならびに、基礎となっている状態に関連する脂肪血症は本発明に含まれる。
【0026】
用語「患者」には、本発明の活性な薬剤が医学的状態の防止または処置のために使用される哺乳動物(特に、ヒト)が含まれる。薬物を患者に投与することには、自己投与、および他者による患者への投与の両方が含まれる。患者は、既存の疾患または医学的状態のための処置を必要としていてもよく、または、アテローム性動脈硬化の発症の危険性を防止するか、または低下させるための予防的処置を望んでいてもよい。
【0027】
用語「治療効果的な量」は、所望される生物学的または医学的な応答を誘発する薬物のこのような量を意味することが意図される。一例として、ニコチン酸は、多くの場合、約50mgから約8グラムの用量で毎日、投与される。
【0028】
用語「予防効果的な量」および用語「防止するために効果的である量」は、防止することが求められる生物学的または医学的な事象の発生の危険性を防止するか、または低下させる薬物のこのような量を示す。多くの場合、予防効果的な量は治療効果的な量と同じである。
【0029】
本明細書中に記載される発明は、冠状動脈心疾患事象、脳血管性事象および/または間欠性跛行の発生の危険性を防止するか、または低下させるための、または、可能性が存在する場合には、冠状動脈心疾患事象、脳血管性事象および/または間欠性跛行の再発を防止するか、または低下させるための、本明細書中に記載される化合物および組成物の投与を含む。冠状動脈心疾患事象は、CHD死、心筋梗塞(すなわち、心臓発作)および冠状動脈血管再生術を包含することが意図される。脳血管性事象は、虚血性または出血性の発作(これはまた脳血管障害として公知である)および一過性の虚血性発作を包含することが意図される。間欠性跛行は末梢血管疾患の臨床的発現である。本明細書中で使用される用語「アテローム硬化性疾患事象」は、冠状動脈心疾患事象、脳血管性事象および間欠性跛行を包含することが意図される。1つまたは複数の非致命的なアテローム性疾患事象を以前に経験している人は、このような事象を再発する潜在的可能性が存在する人であることが意図される。
【0030】
従って、本発明はまた、アテローム硬化性疾患事象の最初の発生または続く発生の危険性を防止するか、または低下させる方法を提供し、この場合、この方法は、実質的な顔面紅潮を防止するか、または最小限に抑えながら、本明細書中に記載される化合物の予防効果的な量をこのような事象について危険性のある患者に投与することを含む。患者は、投与時に既にアテローム硬化性疾患を有する場合があるか、または、アテローム硬化性疾患を発症する危険性にある場合がある。
【0031】
この方法はさらに、実質的な顔面紅潮を防止するか、または最小限に抑えながら、新しいアテローム硬化性病変またはアテローム硬化性斑の形成を防止または遅くすること、および、既存の病変または斑の進行を防止または遅くすること、ならびに、既存の病変または斑の退行を生じさせることに関連する。
【0032】
従って、本発明の1つの側面は、アテローム硬化性斑の進行を停止または遅くすることを含めて、アテローム性動脈硬化の進行を停止または遅くするための方法を伴い、この場合、この方法は、本明細書中に記載されるDPアンタゴニストのいずれかの治療効果的な量を、ニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニストとの組合せで、このような処置を必要としている患者に投与することを含む。この方法はまた、この処置が開始されたときに存在するアテローム硬化性斑(すなわち、「既存のアテローム硬化性斑」)の進行を停止または遅くすること、ならびに、アテローム性動脈硬化の患者における新しいアテローム硬化性斑の形成を停止または遅くすることを含む。
【0033】
本発明の別の側面は、アテローム硬化性斑の破裂の危険性を防止するか、または低下させるための方法を伴い、この場合、この方法は、本明細書中に記載される化合物のいずれかの予防効果的な量を、ニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニストと一緒に、このような処置を必要としている患者に投与することを含む。破裂は、本明細書中で使用される場合、血管内に留まり得る斑の脱離を示す。本発明のさらなる側面は、アテローム性動脈硬化を発症する危険性を防止するか、または低下させるための方法を伴い、この場合、この方法は、本明細書中に記載される化合物の予防効果的な量を、このような処置を必要としている患者に投与することを含む。
【0034】
本発明の別の側面は、アテローム性動脈硬化、脂肪血症または関連した状態を処置または防止する方法に関連し、この場合、この方法は、このような治療を必要としているヒト患者を、顔面紅潮を阻害するか、または低下させる効果的な量のDP受容体アンタゴニストで事前に処置し、次いで、前記アテローム性動脈硬化、脂肪血症または関連した状態を実質的な顔面紅潮の非存在下で処置または防止するために効果的である量のニコチン酸、この塩もしくは溶媒和物、または別のニコチン酸受容体アゴニストで前記患者を処置することを含む。
【0035】
本発明のさらに別の側面は、HMGCo−Aレダクターゼ阻害剤で患者を前処置または処置することをさらに含む上記に記載される方法に関連する。
【0036】
本発明の別の側面は、HMGCo−Aレダクターゼ阻害剤がシンバスタチンである、上記の状態を処置または防止する方法に関連する。
【0037】
本明細書中に記載される方法の1つの側面は、本明細書中に記載される結果を達成するために効果的である量でのニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニスト化合物と、CRTH2受容体を実質的に調節することなくDP受容体を選択的に調節するDP受容体アンタゴニストとの使用に関連する。従って、DP受容体アンタゴニストは、DP受容体における親和性(すなわち、K)がCRTH2受容体における親和性よりも少なくとも約10倍大きい(数字の上では、CRTH2受容体における親和性よりも小さいK値を有する)。これらの指針に従う、DPと選択的に相互作用する化合物はどれも、「DP選択的」であると見なされる。
【0038】
表現「実質的な顔面紅潮の非存在下で」は、ニコチン酸が治療量で投与されたときに見られることが多い副作用を示す。ニコチン酸の顔面紅潮作用は通常、患者が治療的用量において薬物に対して寛容性を発達させるにつれて、頻度が少なくなり、および重篤度が小さくなるが、しかし、顔面紅潮作用が依然としてある程度生じる。従って、「実質的な顔面紅潮の非存在下で」は、顔面紅潮が生じたとき、顔面紅潮の重篤度が低下していること、または、そうでないときに生じるよりも、顔面紅潮事象が少なくなっていることを示す。好ましくは、顔面紅潮の発生率が少なくとも約1/3低下し、より好ましくは、この発生率が1/2低下し、最も好ましくは、顔面紅潮発生率が約2/3以上低下する。同様に、重篤度が好ましくは少なくとも約1/3低下し、より好ましくは少なくとも1/2低下し、最も好ましくは少なくとも約2/3低下する。明らかではあるが、顔面紅潮発生率および重篤度の100パーセントの低下は非常に好ましいが、要求されない。
【0039】
任意の特定の患者に対する具体的な投薬療法および投薬量レベルは、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排出速度、薬物の組合せ、および患者の状態の重篤度を含む様々な要因に依存する。これらの要因を検討することは、状態の進行を防止、阻止または停止するために必要とされる治療効果的または予防効果的な投薬量を決定する目的のために通常の能力を有する医師の範囲に十分に含まれる。本明細書中に記載される化合物は、数ヶ月、数年または患者の生涯に及ぶ治療の経過を含めて、患者に関連した医学的状態を処置または防止するための適切な期間にわたって毎日投与される。
【0040】
1つまたは複数のさらなる活性な薬剤を、本明細書中に記載される化合物とともに投与することができる。このような1つまたは複数のさらなる活性な薬剤は、他の薬学的活性を有する脂質調節化合物または脂質調節剤、または、脂質調節作用および他の薬学的活性の両方を有する薬剤であり得る。用いることができるさらなる活性な薬剤の例には、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、これには、このラクトン化形態またはヒドロキシ開環酸形態でのスタチン類、ならびにこの医薬適合性の塩およびエステルが含まれる(これらには、ロバスタチン(米国特許第4,342,767号を参照のこと)、シンバスタチン(米国特許第4,444,784号を参照のこと)、ジヒドロキシ開環酸シンバスタチン(特にこのアンモニウム塩またはカルシウム塩)、プラバスタチン(特にこのナトリウム塩、米国特許第4,346,227号を参照のこと)、フルバスタチン(特にこのナトリウム塩、米国特許第5,354,772号を参照のこと)、アトルバスタチン(特にこのカルシウム塩、米国特許第5,273,995号を参照のこと)、ピタバスタチン(これはまたNK−104として示される)(PCT国際特許出願公開番号WO97/23200を参照のこと)、およびロスバスタチン(これはまたZD−4522として公知である)(CRESTOR(登録商標);米国特許第5,260,440号を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない);HMG−CoAシンターゼ阻害剤;スクアレンエポキシダーゼ阻害剤;スクアレンシンセターゼ阻害剤(これはまたスクアレンシンターゼ阻害剤として公知である);アシル補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤、これには、ACAT−1またはACAT−2の選択的阻害剤、ならびに、ACAT−1およびACAT−2の二重阻害剤が含まれる;ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤;内皮リパーゼ阻害剤;胆汁酸封鎖剤;LDL受容体誘導剤;血小板凝集阻害剤、例えば、糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストおよびアスピリン;ヒトペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ)アゴニスト、これには、グリタゾン類(例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン)として一般に呼ばれる化合物が含まれ、また、チアゾリジンジオンとして公知である構造クラスに含まれるこのような化合物、ならびに、チアゾリジンジオンの構造クラスに含まれないこのようなPPARγアゴニストが含まれる;PPARαアゴニスト、例えば、クロフィブラート、フェノフィブラート(微粉末化フェノフィブラートを含む)、およびゲムフィブロジルなど;PPAR二重α/γアゴニスト;ビタミンB(これはまたピリドキシンとして公知である)およびこの医薬適合性の塩(例えば、HCl塩など);ビタミンB12(これはまたシアノコバラミンとして公知である);葉酸またはこの医薬適合性の塩もしくはエステル、例えば、ナトリウム塩およびメチルグルカミン塩など;抗酸化性ビタミン、例えば、ビタミンCおよびビタミンEならびにβ−カロテンなど;β遮断剤;アンギオテンシンIIアンタゴニスト、例えば、ロサルタンなど;アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、エナラプリルおよびカプトプリルなど;レニン阻害剤;カルシウムチャネル遮断剤、例えば、ニフェジピンおよびジルチアゼムなど;エンドセリンアンタゴニスト;ABCA1遺伝子発現を高める薬剤;コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害化合物;5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)阻害化合物;5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害化合物;ファルネソイドX受容体(FXR)リガンド(これはアンタゴニストおよびアゴニストの両方を含む);肝臓X受容体(LXR)−αリガンド、LXR−βリガンド;ビスホスホナート化合物、例えば、アレンドロナートナトリウムなど;シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、例えば、ロフェコキシブおよびセレコキシブなど;ならびに、血管炎症を弱める化合物。
【0041】
コレステロール吸収阻害剤もまた、本発明において使用することができる。このような化合物は、腸内腔から小腸壁の腸細胞へのコレステロールの移動を阻止し、従って、血清コレステロールレベルを低下させる。コレステロール吸収阻害剤の様々な例が、米国特許第5,846,966号、同第5,631,365号、同第5,767,115号、同第6,133,001号、同第5,886,171号、同第5,856,473号、同第5,756,470号、同第5,739,321号、同第5,919,672号、およびPCT出願第WO00/63703号、同第WO00/60107号、同第WO00/38725号、同第WO00/34240号、同第WO00/20623号、同第WO97/45406号、同第WO97/16424号、同第WO97/16455号および同第WO95/08532号に記載される。最も注目されるコレステロール吸収阻害剤はエゼチミベであり、これは1−(4−フルオロフェニル)−3(R)−[3(S)−(4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシプロピル]]−4(S)−(4−ヒドロキシフェニル)−2−アゼチジノンとしても知られており、米国特許第5,767,115号および同第5,846,966号に記載される。
【0042】
コレステロール吸収阻害剤の治療効果的な量は、1日あたり約0.01mg/kg体重から約30mg/kg体重(好ましくは、約0.1mg/kgから約15mg/kg)の投薬量を包含する。
【0043】
糖尿病患者の場合、本発明において使用される化合物は従来の糖尿病薬物とともに投与することができる。例えば、本明細書中に記載されるような処置を受けている糖尿病患者はまた、インスリンまたは経口抗糖尿病薬物を服用し続けることができる。この場合において有用な経口抗糖尿病薬物の一例がメトホルミンである。
【0044】
投薬量情報
ニコチン酸は、本明細書中で使用される場合、ピリジン−3−カルボン酸を示す。しかしながら、ニコチン酸の塩および溶媒和物もまた、本発明における使用のために含まれ、ニコチン酸の数々の医薬適合性の塩および溶媒和物が本発明において有用である。アルカリ金属塩(特にナトリウムおよびカリウム)は、本明細書中に記載されるように有用である塩を形成する。同様に、アルカリ土類金属(特にカルシウムおよびマグネシウム)は、本明細書中に記載されるように有用である塩を形成する。アミンの様々な塩(例えば、アンモニウム化合物および置換アンモニウム化合物など)もまた、本明細書中に記載されるように有用である塩を形成する。同様に、ニコチン酸の溶媒和形態が本発明において有用である。例には、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物およびセスキ水和物が含まれる。遊離酸(ピリジン−3−カルボン酸)は本発明における使用のために特に注目される。
【0045】
本明細書中に記載されるように、DPアンタゴニストは、単回または分割された1日用量で投与される約0.01mg/kg/日もの少ない投薬量から、約100mg/kg/日もの大きい投薬量にまで及ぶ投薬量で哺乳動物患者(特にヒト)における顔面紅潮作用を低下させるか、または防止するために有用である。好ましくは、投薬量は、単回または分割された1日用量で、約0.1mg/日から約1.0g/日もの多くまでである。
【0046】
本明細書中に記載されるように有用であるニコチン酸の用量は、単回または分割された1日用量で、約50mg/日もの少ない用量から、約8g/日もの大きい用量にまで及ぶ。より少ない投薬量を最初に使用し、次いで、投薬量を増大して、顔面紅潮作用をさらに最小化することができる。
【0047】
ニコチン酸以外のニコチン酸受容体アゴニストの投薬量は広い範囲の中で変化する。一般に、アテローム性動脈硬化を処置するために有用であるニコチン酸受容体アゴニストは、単回用量または分割用量で、約0.01mg/kg/日もの少ない量から約100mg/kg日もの多い量にまで及ぶ量で投与される。代表的な投薬量は約0.1mg/日から約2g/日である。
【0048】
本発明において使用される化合物は任意の従来の投与経路によって投与することができる。好ましい投与経路は経口である。
【0049】
ニコチン酸、この塩もしくは溶媒和物、または他のニコチン酸受容体アゴニスト、およびDPアンタゴニストは、本発明から逸脱することなく、単回または多数回の1日用量で、例えば、1日に2回、1日に3回、または1日に4回、一緒に、または連続して投与することができる。特に長い持続した放出が所望される場合(例えば、24時間を超える放出プロフィルを示す持続放出製造物など)、投薬を1日おきに施すことができる。しかしながら、単回の1日用量が好ましい。同様に、午前中または夕方の投薬を利用することができる。
【0050】
医薬組成物
本明細書中に記載される医薬組成物は一般に、ニコチン酸または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストと、医薬適合性のキャリアとから構成される。
【0051】
好適な経口組成物の例には、錠剤、カプセル、トローチ剤、口内錠、懸濁物、分散性粉末剤または顆粒剤、乳剤、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。キャリア成分の例には、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香料、着色剤および保存剤などが含まれる。希釈剤の例には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムおよびリン酸ナトリウムが含まれる。造粒剤および崩壊剤の例には、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸が含まれる。結合剤の例には、デンプン、ゼラチンおよびアラビアゴムが含まれる。滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸およびタルクが含まれる。錠剤は非コーティングであり得るか、または、公知である技術によってコーティングされ得る。このようなコーティング剤は、崩壊、および、従って、胃腸管における吸収を遅らせることができ、それにより、より長い期間にわたる持続した作用を提供することができる。
【0052】
本発明の1つの実施態様において、ニコチン酸、この塩もしくは溶媒和物、または別のニコチン酸受容体アゴニストは、確立された混合製造物を形成するために、DP受容体アンタゴニストおよびキャリアと組み合わせられる。この確立された混合製造物は、経口使用のための錠剤またはカプセルであり得る。
【0053】
より具体的には、本発明の別の実施態様において、ニコチン酸、またはこの塩もしくは溶媒和物、または別のニコチン酸受容体アゴニスト(約1mgから約1000mg)、およびDPアンタゴニスト(約1mgから約500mg)が医薬適合性のキャリアと一緒にされ、これにより、経口使用のための錠剤またはカプセルが提供される。
【0054】
より長い期間にわたる持続した放出はニコチン酸医薬組成物の配合において特に重要であり得る。持続放出錠剤が特に好ましい。例えば、時間遅延物質(例えば、グリセリルモノステアラートまたはグリセリルジステアラートなど)を用いることができる。投薬形態物はまた、制御された放出のための浸透圧型治療錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号、同第4,166,452号および同第4,265,874号に記載される技術によってコーティングすることができる。
【0055】
他の制御された放出技術もまた利用することができ、本明細書中に含まれる。持続放出錠剤におけるニコチン酸の放出を遅くするために有用である典型的な成分には、様々なセルロース系化合物、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロースおよびデンプンなどが含まれる。様々な天然物質および合成物質もまた、持続放出配合物において有用である。例には、アルギン酸および様々なアルギン酸塩、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グァーゴム、ゼラチン、様々な長鎖アルコール(例えば、セチルアルコールなど)、および密ろうが含まれる。
【0056】
特に注目される持続放出錠剤では、ニコチン酸が、ポリマーマトリックスを形成するために持続放出錠剤に圧縮成形される上記のセルロー系化合物の1つまたは複数との組合せで利用される。DPアンタゴニスト化合物は圧縮成形前に混合物に配合することができ、または、マトリックスの外側表面にコーティングすることができる。
【0057】
より注目される実施態様において、ニコチン酸およびマトリックス形成物質が組み合わせられ、圧縮成形されて、持続放出コアを形成し、DPアンタゴニスト化合物が1つまたは複数のコーティング剤と混合され、コアの外側表面にコーティングされる。
【0058】
必要に応じて、また、さらにより注目されることに、上記に記載されるような錠剤は、HMGCo−Aレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチン)でさらにコーティングされる。従って、この特定の実施態様は、3つの有効成分、すなわち、HMGCo−Aレダクターゼ阻害剤と、DPアンタゴニスト(これは、実質的には摂取時に放出可能であり得る)と、ニコチン酸(これは、上記に記載されるように、より長い期間にわたって放出可能であり得る)とを含有する。
【0059】
本発明による持続放出錠剤のための典型的な放出時間枠は約1時間から約48時間もの長い時間にまで及び、好ましくは約4時間から約24時間であり、より好ましくは約8時間から約16時間である。
【0060】
硬ゼラチンカプセルは経口使用のための別の固体の投薬形態物を構成する。このようなカプセルは同様に、上記に記載されるようなキャリア物質と混合された有効成分を含む。軟ゼラチンカプセルは、水混和性溶媒(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)およびエタノールなど)またはオイル(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィンまたはオリーブ油など)と混合された有効成分を含む。
【0061】
水性懸濁物はまた、水性懸濁物を製造するために好適な賦形剤との混合で活性な物質を含有するとして意図される。このような賦形剤には、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴムなど;分散化剤または湿潤化剤、例えば、レシチン;保存剤、例えば、パラ−ヒドロキシ安息香酸エチル、パラ−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル;着色剤;香料;および甘味剤などが含まれる。
【0062】
水の添加によって水性懸濁物を調製するために好適な分散性粉末剤および顆粒剤は、有効成分を、分散化剤または湿潤化剤、懸濁化剤、および1つまたは複数の保存剤との混合で提供する。好適な分散化剤または湿潤化剤および懸濁化剤は、既に上記で述べられたものによって例示される。
【0063】
シロップおよびエリキシル剤もまた配合することができる。
【0064】
特に注目される医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物と、DP受容体アンタゴニストとから構成される持続放出錠剤である。
【0065】
特に注目される別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物と、DP受容体アンタゴニストと、HMGCo−Aレダクターゼ阻害剤とから構成される持続放出錠剤である。
【0066】
より一層特に注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DP受容体アンタゴニストと、シンバスタチンとから構成される持続放出錠剤である。
【0067】
特に注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、化合物Aから化合物AJからなる群から選択されるDP受容体アンタゴニストとから構成される持続放出錠剤である。
【0068】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、化合物A、B、D、E、X、AA、AF、AG、AH、AIおよびAJからなる群から選択されるDP受容体アンタゴニストとから構成される。
【0069】
特に注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物Aとから構成される。
【0070】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物Bとから構成される。
【0071】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物Dとから構成される。
【0072】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物Eとから構成される。
【0073】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物Xとから構成される。
【0074】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物AAとから構成される。
【0075】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物AFとから構成される。
【0076】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物AGとから構成される。
【0077】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物AHとから構成される。
【0078】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物AIとから構成される。
【0079】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DPアンタゴニスト化合物AJとから構成される。
【0080】
さらにより注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、上記に記されたDPアンタゴニスト化合物の1つと、シンバスタチンとから構成される。
【0081】
より注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、化合物Aから化合物AJからなる群から選択されるDP受容体アンタゴニストと、シンバスタチンとから構成される持続放出錠剤である。
【0082】
より一層特に注目されるさらに別の医薬組成物は、医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、化合物A、B、D、E、X、AA、AF、AG、AH、AIおよびAJからなる群から選択されるDP受容体アンタゴニストと、シンバスタチンとから構成される持続放出錠剤に関連する。
【0083】
用語「組成物」は、上記に記載される医薬組成物を包含することに加えて、任意の2つ以上の成分(有効成分または賦形剤)の組合せ、複合体化または集合から、または、成分の1つまたは複数の分離から、または、成分の1つまたは複数の他のタイプの反応または相互作用から、直接的または間接的にもたらされる任意の製造物をも包含する。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と、任意のさらなる有効成分と、医薬適合性の賦形剤とを混合するか、または、そうでない場合には組み合わせることによって作製される任意の組成物を包含する。
【0084】
本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストおよびDPアンタゴニストの、医薬品の製造における使用に関連する。
【0085】
より具体的には、本発明の別の側面は、ニコチン酸またはこの塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニスト、DPアンタゴニスト、およびHMGCo−Aレダクターゼ阻害剤(例えば、シンバスタチンなど)の、医薬品の製造における使用に関連する。この医薬品は、本明細書中に記載される用途を有する。
【0086】
基準となるニコチン酸受容体アゴニストであるニコチン酸に加えて、数々のニコチン酸受容体アゴニストが記載されている。下記の刊行物は、ニコチン酸受容体アゴニストである化合物を開示する:
Lorenzen,A.他、Molecular Pharmacology、59:349−357(2001)、
Lorenzen,A.他、Biochemical Pharmacology、64:645−648(2002)、
Soga,T.他、Biochemical and Biophysical Research Comm.、303:364−369(2003)
Tunaru,S.他、Nature Medicine、9:352−355(2003)、および
Wise.A.他、Journal of Biological Chemistry、278:9869−9874(2003)
Van Herk,T.他、Journal of Medicinal Chemistry、46:3945−3951(2003)。
【0087】
ニコチン酸受容体に対する部分的アゴニスト(例えば、van Herk他によって開示される部分的アゴニストなど)が本発明の組成物および処置方法において含められることが留意される。
【0088】
さらに、ニコチン酸受容体は、国際特許出願公開WO02/084298A2(2002年10月24日公開)、ならびに、Soga,S.他、Tunaru,S.他およびWise.A.他(上記引用文献)において同定され、特徴づけられている。
【0089】
数々のDP受容体アンタゴニスト化合物が公開されており、本発明の方法において有用であり、含められる。例えば、DP受容体アンタゴニストを、国際特許出願公開WO01/79169(2001年10月25日公開)、欧州特許EP1305286(2003年5月3日公開)、国際特許出願公開WO02/094830(2002年11月28日公開)および国際特許出願公開WO03/062200(2003年7月31日公開)に従って得ることができる。化合物ABを、国際特許出願公開WO01/66520A1(2001年9月13日公開)に示される記載に従って合成することができる。化合物ACを、国際特許出願公開WO03/022814A1(2003年3月20日公開)に示される記載に従って合成することができる。化合物ADおよび化合物AEを、国際特許出願公開WO03/078409(2003年9月25日公開)に示される記載に従って合成することができる。本発明において使用される他の代表的なDPアンタゴニスト化合物を、下記に提供される実施例に従って合成することができる。
【実施例】
【0090】
(実施例1)
[5−[(4−クロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物G)
【0091】
【化4】

【0092】
工程1 4−クロロニコチンアルデヒド
表題化合物を、F.Marsais他、J.Heterocyclic Chem.、25、81(1988)によって記載されるように調製した。
【0093】
工程2 4−(メチルチオ)ニコチンアルデヒド
NaSMe(9.5g、135mmol)のMeOH(250mL)における溶液に、工程1の4−クロロニコチンアルデヒド(13.5g、94.4mmol)をMeOH(250mL)に溶解して加えた。反応混合物を60℃で15分間維持した。反応混合物をNHClおよびEtOAcに注いだ。有機相を分離し、HOで洗浄して、NaSOで乾燥した。次に、化合物を、ヘキサン(hexanes)における50%EtOAcによりシリカゲルで精製して、表題化合物を得た。
【0094】
工程3 (2Z)−2−アジド−3−[4−(メチルチオ)ピリジン−3−イル]プロパ−2−エン酸メチル
4−(メチルチオ)ニコチンアルデヒド(4.8g、31mmol)およびアジド酢酸メチル(9.0g、78mmol)のMeOH(50mL)における溶液を、MeOHにおける25%NaOMeの溶液(16.9mL、78mmol)に−12℃で加えた。30分の添加期間中、内部温度をモニターし、−10℃から−12℃で維持した。次に、得られた混合物を氷浴で数時間撹拌し、続いて低温室において氷浴で一晩撹拌した。次に、懸濁物を氷およびNHClの混合物に注ぎ、スラリーを10分間の撹拌の後にろ過した。生成物を冷HOで洗浄し、次いで、真空下で乾燥して、表題化合物を、少量の塩を含有するベージュ色の固体として得た(7.4g)。次に、この化合物をEtOAcによりシリカゲルで精製する。
【0095】
工程4 4−(メチルチオ)−1H−ピロロ[2.3−b]ピリジン−2−カルボン酸メチル
工程3の化合物(0.40g、1.6mmol)のキシレン(16mL)における懸濁物を140℃にゆっくり加熱した。140℃で15分間の期間の後、黄色溶液を室温に冷却した。窒素の生成による発熱の可能性があるために用心しなければならない。次に、懸濁物を0℃に冷却し、ろ過し、キシレンで洗浄して、表題化合物を得た。
【0096】
工程5 4−(メチルチオ)−6−オキソ−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−7−カルボン酸エチル
工程4の化合物(0.35g、1.6mmol)のDMF(20mL)における溶液に0℃でNaH(1.2当量)を加えた。5分間の期間の後、nBuNI(0.10g)および4−ブロモ酪酸エチル(0.40mL)を加えた。室温で1時間の期間の後、反応混合物を飽和NHClおよびEtOAcに注いだ。有機相を分離し、HOで洗浄し、NaSOで乾燥した。エバポレーション後、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。次に、ビスエステルをTHF(7.0mL)に溶解し、カリウムtert−ブトキシドの1.06MのTHF溶液(2.2mL)を0℃で加えた。室温で1時間の期間の後、反応混合物を飽和NHClおよびEtOAcに注いだ。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、減圧下でエバポレーションして、表題化合物をエチルエステルおよびメチルエステルの混合物として得た。
【0097】
工程6 4−(メチルチオ)−8,9−ジヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6(7H)−オン
工程5の化合物(0.32g)にEtOH(8.0mL)および濃HCl(2.0mL)を加えた。得られた懸濁物を5時間還流した。反応混合物をEtOAcとNaCOとの間で分配した。有機相を分離し、エバポレーションして、表題化合物を得た。
【0098】
工程7 (2E,2Z)−[4−(メチルチオ)−8,9−ジヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6(7H)−イリデン]エタン酸エチル
ホスホノ酢酸トリエチル(0.45g、2.17mmol)のDMF溶液(12mL)に80%NaH(0.06g、2.00mmol)および工程6の化合物(0.22g、1.00mmol)を加えた。55℃で4時間の期間の後、反応混合物を飽和NHClおよびEtOAcに注いだ。有機相を分離し、減圧下でエバポレーションした。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を得た。
【0099】
工程8 [4−(メチルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル
工程7の化合物を、溶解熱を使用してMeOH−THFに溶解した。事前に冷却された溶液に、室温で、PtOを加え、得られた混合物を水素大気圧下で18時間維持した。得られた混合物を、CHClを使用してセライトで注意深くろ過した。ろ液を減圧下でエバポレーションして、表題化合物を得た。または、工程7の化合物を、40PSIのHで18時間、EtOAc中においてPd(OH)で水素化することができる。
【0100】
工程9 [4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル
MeOH(3.0mL)における工程8の化合物(0.08g、0.27mmol)にNaWO(0.10g)および30%H(600μL)を加えた。1時間の期間の後、反応混合物をHOとEtOAcとの間で分配した。有機相をHOで洗浄し、分離して、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0101】
工程10 [5−[(4−クロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル
4,4’−ジクロロジフェニルジスルフィド(0.24g)の1,2−ジクロロエタン溶液(2.0mL)にSOCl(50μL)を加えた。DMF(2.0mL)における工程9の化合物(0.05g)に前記混合物(約180μL)を加えた。反応をH−NMRによって追跡し、出発物質が残留しなくなるまで室温で維持した。反応混合物を飽和NaHCOおよびEtOACに注いだ。有機相を分離し、エバポレーションして、表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0102】
工程11 [5−[(4−クロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸
THF−MeOHの1/1の混合物に溶解された工程10の化合物に1NのNaOHを加えた。室温で18時間の期間の後、反応混合物を飽和NHClとEtOACとの間で分配した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、エバポレーションして、表題化合物を得た。
【0103】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ11.00(bs,1H),8.60(d,1H),7.80(d,1H),7.20(d,2H),7.00(d,2H),4.65(m,1H),4.20(m,1H),3.75(m,1H),3.35(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0104】
(実施例2)
5−[(4−クロロフェニル)チオ]−4−(メチルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物H)
【0105】
【化5】

【0106】
表題化合物は、実施例1の工程10および工程11に記載されるのと類似する様式で実施例1の工程8の化合物から調製することができる。
【0107】
(実施例3)
5−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物I)
【0108】
【化6】

【0109】
表題化合物を、工程10においてビス(3,4−ジクロロフェニル)ジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0110】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.55(d,1H),7.85(d,1H),7.35(d,1H),7.15(s,1H),6.95(d,1H),4.60(m,1H),4.15(m,1H),3.80(m,1H),3.40(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
m/z484。
【0111】
エナンチマーを、8ml/分の流速で、ヘキサンにおける30%イソプロパノール/17%エタノール/0.2%酢酸を使用してChiralecel ODカラム(25cmx20mm)で分離した。エナンチマーの純度を、ヘキサンにおける35%イソプロパノール/0.2%酢酸を1.0ml/分の流速で使用してChiralecel ODカラム(25cmx4.6mm)で確認した。移動度が大きい方のエナンチマーTr=9.7分、移動度が小さい方のエナンチマーTr=11.1分。
【0112】
(実施例4)
5−[4−クロロベンゾイル−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物J)
【0113】
【化7】

【0114】
工程1 [5−(4−クロロベンゾイル)−4−(メチルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル
4−クロロベンゾイルクロリド(0.30g、1.7mmol)の1,2−ジクロロエタン(6.0ml)における溶液にAlCl(0.24g、1.8mmol)を加えた。5分間の期間の後、実施例1の工程8から得られた[4−(メチルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル(0.15g、0.47mmol)の1,2−ジクロロエタン(6.0mL)における溶液を前記混合物に加えた。80℃で4時間の期間の後、反応混合物をEtOAcとNaHCOとの間で分配した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0115】
工程2 [5−(4−クロロベンゾイル)−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル
[5−(4−クロロベンゾイル)−4−(メチルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチル(0.12g、0.27mmol)のMeOH(5.0mL)における溶液に、NaWO(0.1g)および30%H(300μL)を加えた。反応混合物を55℃で1時間撹拌した。次に、反応混合物をHOとEtOAcとの間で分配した。有機相をHOで洗浄し、NaSOで乾燥し、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0116】
工程3 [5−(4−クロロベンゾイル)−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸
5−(4−クロロベンゾイル)−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸エチルを実施例1の工程11に記載されるように処理して、表題化合物を得た。
【0117】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.55(d,1H),7.90(d,2H),7.65(d,1H),7.45(d,2H),4.55(m,1H),4.25(m,1H),3.45(m,1H),3.20(s,3H),2.05から3.00(m,6H)。
m/z446。
【0118】
(実施例5)
[5−(4−ブロモフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物K)
【0119】
【化8】

【0120】
表題化合物を、4,4’−ジブロモジフェニルジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0121】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.60(d,1H),7.80(d,1H),7.35(d,2H),7.00(d,2H),4.65(m,1H),4.20(m,1H),3.80(m,1H),3.35(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0122】
(実施例6)
(実施例6:方法−1)
[9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸(化合物L)
【0123】
【化9】

【0124】
工程1 2−(メチルチオ)ニコチンアルデヒド
表題化合物を、溶液を55℃で2時間加熱したことを除いて、実施例1の工程2に記載されるように、2−ブロモニコチンアルデヒドから調製した(A.Numata、Synthesis、1999、306頁)。
【0125】
工程2 (2Z)−2−アジド−3−[2−(メチルチオ)ピリジン−3−イル]プロパ−2−エン酸メチル
表題化合物を実施例1の工程3に記載されるように調製した。
【0126】
工程3 4−(メチルチオ)−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボン酸メチル
(2Z)−2−アジド−3−[2−(メチルチオ)ピリジン−3−イル]プロパ−2−エン酸メチル(1.00g、4.00mmol)のメシチレン(50mL)における溶液を160℃で1時間の期間にわたって加熱した。反応混合物を室温に冷却し、次いで0℃に冷却して、析出物をろ過し、冷メシチレンで洗浄して、表題化合物を得た。
【0127】
工程4 1−(メチルチオ)−8−オキソ−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−7−カルボン酸メチル
4−(メチルチオ)−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボン酸メチル(0.30g、1.35mmol)のTHF(3mL)−トルエン(12.0mL)における懸濁物にカリウムtert−ブトキシドの1.06MのTHF溶液(1.42mL/1.41mmol)およびアクリル酸メチル(300μL)を加えた。得られた混合物を80℃で18時間加熱した。混合物をEtOAcとNHClとの間で分配し、セライトによりろ過した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、ろ過して、表題化合物を得た。
【0128】
工程5 1−(メチルチオ)−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン
1−(メチルチオ)−8−オキソ−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−7−カルボン酸メチルを実施例1の工程6に記載されるように表題化合物に変換した。
【0129】
工程6 [8−ヒドロキシ−1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチル
1−(メチルチオ)−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン(0.15g、0.68mmol)、ブロモ酢酸メチル(0.34mL)、Zn−Cu(0.226g)のTHF(3.0mL)における混合物を2時間にわたって超音波処理した。次に、混合物を、反応が完了するまで60℃で5分間加熱した。反応混合物をEtOAcとNHClとの間で分配した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、ろ過し、減圧下でエバポレーションして、表題化合物を得た。化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0130】
工程7 [1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチル
CHCN(3.2mL)におけるNaI(0.300g)にTMSCl(0.266mL)を加えた。この混合物を、水浴において、[8−ヒドロキシ−1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチル(0.15g、0.515mmol)のCHCN(1.5mL)における懸濁物に加えた。0.5時間の期間の後、反応混合物をEtOAcとNaHCOとの間で分配した。有機相を分離し、チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、MgSOで乾燥し、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0131】
工程8 [1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチル
[1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチルを実施例1の工程9に記載されるように表題化合物に変換した。
【0132】
工程9 [9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸
[1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチルを、実施例1の工程10および工程11に記載されるようにして、工程10においてビス(3,4−ジクロロフェニル)ジスルフィドを使用して表題化合物に変換した。
【0133】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.35(d,1H)7.80(d,1H),7.35(d,1H),7.15(s,1H),6.95(d,1H),4.55(m,1H),4.35(m,1H),3.90(m,1H),3.30(s,3H),3.15(m,1H),3.05(m,1H),2.80(m,1H),2.50(m,1H)。
【0134】
(実施例6:方法−2)
[9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸
工程1 1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オール
実施例6の方法−1の工程5から得られた1−(メチルチオ)−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン(0.55g、2.2mmol)のEtOH(10mL)−THF(1mL)における懸濁物にNaBH(0.10g、2.6mmol)を0℃で加えた。室温で30分間の期間の後、反応をアセトンの添加によって停止させた。溶媒を減圧下でエバポレーションし、EtOAcおよびHOを残渣に加えた。有機相を分離し、MgSOで乾燥し、エバポレーションした。表題化合物をEtOAc/ヘキサンで洗浄し、ろ過した。
【0135】
工程2 2−[1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]マロン酸ジメチル
1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オール(0.54g、2.1mmol)のTHF(10mL)における懸濁物に、−78℃で、THFにおける1MのNaHMDS(2.35mL、2.4mmol)およびジフェニルクロロホスファート(0.53mL、2.6mmol)を加えた。30分間の期間の後、マロン酸ジメチル(0.73mL、6.4mmol)およびTHFにおける1MのNaHMDS(6.8mL、6.8mmol)を加えた。反応混合物を0℃にし、次いで室温にした。次に、混合物をEtOAcとNHClとの間で分配した。有機相をMgSOで乾燥し、ろ過し、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0136】
工程3 [1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチル
2−[1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]マロン酸ジメチル(0.59g、2.17mmol)およびDMSO(4mL)の混合物に、NaCl(0.45g)をHO(0.45mL)に溶解して加えた。150℃で18時間の期間の後、反応混合物をEtOAcとHOとの間で分配した。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、エバポレーションした。次に、表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0137】
工程4 [9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸
表題化合物を、[1−(メチルチオ)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸メチルから、実施例6の方法−1の工程8から工程9に記載されるように得た。
【0138】
(実施例7)
[10−[(3,4−ジクロロフェニル)スルファニル]−1−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,4−b]インドリジン−9−イル]酢酸(化合物M)
【0139】
【化10】

【0140】
工程1 [1−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,4−b]インドリジン−9−イル]酢酸エチル
表題化合物を、実施例1の工程5から工程9に記載されるのと同じ様式で実施例6の工程3の生成物から調製した。
【0141】
工程2 [10−[(3,4−ジクロロフェニル)スルファニル]−1−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,4−b]インドリジン−9−イル]酢酸
工程1の生成物を、実施例1の工程10から工程11に記載されるのと同じ様式で、工程10においてビス(3,4−ジクロロフェニル)ジスルフィドを使用して表題化合物に変換した。
【0142】
MS M+1=485。
【0143】
(実施例8)
【0144】
(4−(メチルスルホニル)−5−{[4−(トリフルオロメチル)フェニル]チオ}−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物N)
【0145】
【化11】

【0146】
表題化合物を、ビス[4−トリフロロメチル]フェニル]ジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0147】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.55(d,1H),7.75(d,1H),7.45(d,2H),7.15(d,2H),4.55(m,1H),4.15(m,1H),3.80(m,1H),3.30(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
m/z 513(M+1)。
【0148】
(実施例9)
[5−[(2−クロロ−4−フルオロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物O)
【0149】
【化12】

【0150】
表題化合物を、ビス(2−クロロ−4−フロロフェニル)ジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0151】
m/z469(M+1)。
【0152】
(実施例10)
【0153】
[4−(メチルスルホニル)−5−(2−ナフチルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物P)
【0154】
【化13】

【0155】
表題化合物を、ジ(2−ナフチル)ジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0156】
M/z467(M+1)。
【0157】
(実施例11)
【0158】
[5−[(2,3−ジクロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物Q)
【0159】
【化14】

【0160】
表題化合物を、ビス(2,3−ジクロロフェニル)ジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0161】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.85(d,1H),7.80(d,1H),7.30(d,1H),7.00(t,1H),6.60(d,1H),4.60(m,1H),4.20(m,1H),3.80(m,1H),3.40(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0162】
(実施例12)
[5−[(4−メチルフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物R)
【0163】
【化15】

【0164】
表題化合物を、p−トリルジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0165】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.55(d,1H),7.80(d,1H),6.95(m,4H),4.60(m,1H),4.15(m,1H),3.80(m,1H),3.35(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0166】
(実施例13)
[4−(メチルスルホニル)−5−(フェニルチオ)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物S)
【0167】
【化16】

【0168】
表題化合物を、ジフェニルジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。
【0169】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.55(d,1H),7.80(d,1H),7.15から6.90(m,5H),4.60(m,1H),4.15(m,1H),3.75(m,1H),3.30(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0170】
(実施例14)
[5−[(2,4−ジクロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[3,2−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物T)
【0171】
【化17】

【0172】
表題化合物を、ビス(2,4−ジクロロフェニル)ジスルフィドを使用して実施例1に記載されるように調製した。このジスルフィドは、エーテル中で、Brを使用して2,4−ジクロロチオフェニルから調製された。
【0173】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.55(d,lH),7.85(d,1H),7.35(s,1H),7.00(d,1H),6.65(d,1H),4.55(m,1H),4.15(m,1H),3.80(m,1H),3.35(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0174】
(実施例15)
[5−[(4−クロロフェニル)チオ]−4−(メチルスルホニル)−6,7,8,9−テトラヒドロピリド[4,3−b]インドリジン−6−イル]酢酸(化合物U)
【0175】
【化18】

【0176】
表題化合物を、3−クロロニコチンアルデヒド(Hetrocycles、151頁、1993)から実施例1に記載されるように調製したが、末端の環化を、還流しながらアジドをデカリンに添加することによって行った。
【0177】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ9.20(s,1H),8.85(s,1H),7.20(d,2H),7.00(d,2H),4.70(m,1H),4.30(m,1H),3.75(m,1H),3.35(s,3H),2.80から2.10(m,6H)。
【0178】
(実施例16)
[9−[(4−クロロフェニル)チオ]−1−(メチルスルホニル)−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル]酢酸(化合物V)
【0179】
【化19】

【0180】
表題化合物を、実施例1の工程10および工程11に概略される手順に記載されるようにして、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィドを工程10において使用して実施例6の方法1の工程8の生成物から調製した。
【0181】
H NMR(500MHz,アセトン−d)δ8.25−8.3(m,1H),7.71−7.75(m,1H),7.12−7.17(m,2H),6.97−7.04(m,2H),4.45−4.51(m,1H),4.32−4.39(m,1H),3.73−3.80(m,1H),3.29(s,3H),3.15−3.21(m,1H),2.99−3.08(m,1H),2.66−2.73(m,1H),2.46−2.54(m,1H)。
【0182】
(実施例17)
(−)−[(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−5−メタンスルホニル)−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル]酢酸(化合物E)
【0183】
【化20】

【0184】
工程1:(+/−)−(7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸エチルエステル
【0185】
【化21】

【0186】
10.00gの4−フルオロ−2−ヨードアニリン、6.57gの2−(2−オキソシクロペンチル)酢酸エチル、および121mgのp−トルエンスルホン酸の100mlのベンゼンにおける溶液を、N雰囲気下で24時間にわたってディーン・スタークトラップを用いて還流した。この後、ベンゼンを蒸留下で除いた。次に、60mlのDMFを加えて、溶液を脱気し、次に、19mlのHunig塩基、次いで405mgのPd(OAc)を続けて加えた。溶液を115℃に3時間にわたって加熱し、次いで、室温に冷却した。反応を停止させるために、300mlの1N HClおよび200mlの酢酸エチルを加えて、混合物をセライトによりろ過した。相を分離し、酸性相を200mlの酢酸エチルで2回抽出した。有機相を一緒にして、ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥し、セライトによりろ過し、濃縮した。粗製物を、100%トルエンを用いて溶出するフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、表題化合物を得た。
【0187】
H NMR(アセトン−d)δ9.76(br s,1H),7.34(dd,1H),7.03(d,1H),6.78(td,1H),4.14(q,2H),3.57(m,1H),2.85−2.55(m,5H),2.15(m,1H),1.22(t,3H)。
【0188】
工程2:(+/−)−(7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸
【0189】
【化22】

【0190】
工程1から得られた1.24gのエステルの14mLのテトラヒドロフラン(THF)における溶液に、室温で、7mLのMeOH、次いで7mLの2N NaOHを加えた。2.5時間後、反応混合物を、酢酸エチル(EtOAc)/1N HClを含有する分液ロートに注いだ。相を分離し、酸性相をEtOAcで2回抽出した。有機層を一緒にして、ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥し、乾固するまでエバポレーションして、次の工程でこのまま使用した粗オイルを得た(90%を越える純度)。
【0191】
H NMR(アセトン−d)δ10.90(br s,1H),9.77(br s,1H),7.34(dd,1H),7.04(dd,1H),6.79(td,1H),3.56(m,1H),2.90−2.50(m,5H),2.16(m,1H)。MS(−APCI)m/z232.2(M−H)
【0192】
工程3:(+/−)−(5−ブロモ−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸
【0193】
【化23】

【0194】
工程2から得られた2.20gの酸(90%を越える純度)の30mLのピリジンにおける溶液に、6.85gのピリジニウムトリブロミド(90%の純度)を−40℃で加えた。懸濁物を0℃で10分間撹拌し、室温に30分間にわたって加温した。次に、溶媒を、高真空下で加熱することなく除いた。粗製物を40mLのAcOHに溶解し、2.88gのZn粉末を少量ずつ、0℃の冷却された溶液に加えた。懸濁物を15℃で15分間撹拌して、さらに15分間にわたって室温に加温した。このとき、反応混合物を1N HClの添加によって停止させ、この混合物を、ブライン/EtOAcを含有する分液ロートに注いだ。層を分離し、有機層を水、ブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濃縮した。この物質を、さらに精製することなく、次の工程において使用した。
【0195】
H NMR(アセトン−d)δ10.77(br s,1H),9.84(br s,1H),7.09(m,2H),3.60(m,1H),2.95−2.65(m,4H),2.56(dd,1H),2.19(m,1H)。
【0196】
工程4:(+/−)−[5−ブロモ−4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸
【0197】
【化24】

【0198】
工程3から得られた2.13gの酸の10mLのTHFにおける溶液に、ジアゾメタンのエーテルにおける溶液を、酸の完全な消費がTLCでモニターされるまで過剰に加えた。次に、溶媒を真空下で除いた。このようにして形成された粗メチルエステルの20mLのDMFにおける溶液に、539mgのNaH懸濁物(オイルにおいて60%)を−78℃で加えた。懸濁物を0℃で10分間撹拌して、再び−78℃に冷却し、1.70gの4−クロロベンジルブロミドで処理した。5分後、温度を0℃に加温し、混合物を20分間撹拌した。このとき、反応を2mLのAcOHの添加によって停止させて、この混合物を、1N HCl/EtOAcを含有する分液ロートに注いだ。層を分離し、有機層をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濃縮した。アルキル化物を、工程2に記載される手順を使用して加水分解した。粗製物を、EtOAc/ヘキサン(hexanes)を用いた粉砕によってさらに精製して、表題化合物を得た。
【0199】
H NMR(アセトン−d)δ10.70(br s,1H),7.31(d,2H),7.18(d,1H),7.06(d,1H),6.92(d,2H),5.90(d,1H),5.74(d,1H),3.61(m,1H),3.00−2.70(m,3H),2.65(dd,1H),2.39(dd,1H),2.26(m,1H)。MS(−APCI)m/z436.3,434.5(M−H)
【0200】
工程5:(+)−[5−ブロモ−4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸
【0201】
【化25】

【0202】
工程4の2.35gの酸の130mLのEtOHにおける溶液に、80℃で、780μLの(S)−(−)−(1−ナフチル)エチルアミンを加えた。溶液を室温に冷却し、一晩撹拌した。回収された塩(1.7g)を200mLのEtOHから再び再結晶した。ろ過後、得られた白色固体の塩を1N HClで中和し、生成物をEtOAcで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濃縮した。物質を、EtOAcを用いて溶出することによってSiOの詰め物でろ過して、表題エナンチオマーを得た。これら2つのエナンチオマーの保持時間はそれぞれ7.5分および9.4分であった[ChiralPak ADカラム、ヘキサン/2−プロパノール/酢酸(95:5:0.1)]。より極性のエナンチオマーは98%eeであった。
【0203】
ee=98%;保持時間=9.4分[ChiralPak ADカラム:250x4.6mm、ヘキサン(hexanes)/2−プロパノール/酢酸(75:25:0.1)]:[α]21=+39.2°(c1.0,MeOH)。
【0204】
工程6:(−)−[4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−5−(メタンスルホニル)−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸およびナトリウム塩
工程5から得られた酸(15.45g)を最初にジアゾメタンでエステル化した。スルホニル化を、このようにして形成されたエステルをN−メチルピロリジノン中で16.3gのメタンスルフィン酸ナトリウム塩および30.2gのCuI(I)と混合することによって達成した。懸濁物をN気流下で脱気し、150℃に加熱して、3時間撹拌し、次いで室温に冷却した。反応を停止させるために、500mlの酢酸エチルおよび500mlのヘキサン(hexanes)を加え、混合物を、EtOAcを用いて溶出することによってSiOの詰め物によりろ過した。有機相を濃縮した。粗オイルを、EtOAcを用いて溶解し、水で3回、ブラインで1回洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗製物を、EtOAc中での100%トルエンから50%トルエンへのグラジエントを用いて溶出するフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、14gのスルホン化エステルを得た。これを、工程2に記載される手順を使用して加水分解した。表題化合物を、2回の連続した再結晶(酢酸イソプロピル/ヘプタン、次いでCHCl/ヘキサン(hexanes))の後で得た。
【0205】
H NMR(500MHzアセトン−d)δ10.73(br s,1H),7.57(d,2H,J=8.8Hz),7.31(m,1H),7.29(m,1H),6.84(d,2H,J=8.8Hz),6.29(d,1H,JAB=17.8Hz),5.79(d,1H,JAB=17.8Hz),3.43(m,1H),2.98(s,3H),2.94(m,1H),2.85−2.65(m,3H),2.42(dd,1H,J=16.1Hz,J=10.3Hz),2.27(m,1H)。13C NMR(125MHzアセトン−d)δ173.0,156.5(d,JCF237Hz),153.9,139.2,133.7,133.3,130.0(d,JCF=8.9Hz),129.6,128.2,127.5(d,JCF=7.6Hz),122.2(d,JCF=4.2Hz),112.3(d,JCF=29.4Hz),111.0(d,JCF=22.6Hz),50.8,44.7,38.6,36.6,36.5,23.3。MS(−APCI)m/z436.1,434.1(M−H)
【0206】
ee=97%;保持時間=15.3分[ChiralCel ODカラム:250x4.6mm、ヘキサン(hexanes)/2−プロパノール/エタノール/酢酸(90:5:5:0.2)];[α]21=−29.3°(c1.0,MeOH)。Mp175.0℃。
【0207】
ナトリウム塩を、6.45g(14.80mmol)の上記酸をEtOH(100mL)中で14.80mLの1N NaOH水溶液で処理することによって調製した。有機溶媒を真空下で除き、粗固体を還流下で1.2Lのイソプロピルアルコールに溶解した。最終体積を溶媒の蒸留により500mLに減らした。ナトリウム塩を、rtに冷却することによって結晶化させた。結晶性のナトリウム塩をHOに懸濁し、ドライアイス浴で凍結し、高真空下で凍結乾燥して、表題化合物をナトリウム塩として得た。
【0208】
H NMR(500MHzDMSO−d)δ7.63(dd,1H,J=8.5Hz,J=2.6Hz),7.47(dd,1H,J=9.7Hz,J=2.6Hz),7.33(d,2H,J=8.4Hz),6.70(d,2H,J=8.4Hz),6.06(d,1H,JAB=17.9Hz),5.76(d,1H,JAB=17.9Hz),3.29(m,1H),3.08(s,3H),2.80(m,1H),2.69(m,1H),2.55(m,1H),2.18(m,2H),1.93(dd,1H,J=14.4Hz,J=9.7Hz)。
【0209】
(実施例17)
(実施例17A)
(+/−)−[5−ブロモ−4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸(実施例4、工程4)の代わりの手順
工程1:(+/−)−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸ジシクロヘキシルアミン(DHCA)塩
(2−オキソシクロペンチル)酢酸エチル(1.5当量)および硫酸(0.02当量)を伴う2−ブロモ−4−フルオロアニリンのキシレンにおける0.526M溶液を、20時間にわたって加熱還流した。水を、ディーン・スターク装置を用いて共沸物として除いた。反応をNMRによって追跡し、20時間後には、所望するイミン中間体への80%から85%の変換が一般に観測された。反応混合物を15分間、1Mの重炭酸ナトリウム(0.2容量)で洗浄し、有機画分をエバポレーションした。残留するシロップを真空(0.5mmHg)で蒸留した。残留キシレンが30℃で蒸留され、次いで、過剰のケトンおよび未反応のアニリンが50℃から110℃の範囲で回収された。イミンを110℃から180℃の画分で明るい褐色の透明な液体として83%の純度で回収した。
【0210】
次に、イミン中間体を、酢酸カリウム(3当量)、塩化テトラn−ブチルアンモニウム一水和物(1当量)、酢酸パラジウム(0.03当量)およびN,N−ジメチルアセトアミドの脱気した混合物に加えた(イミンの最終濃度=0.365M)。反応混合物を115℃に5時間にわたって加熱して、室温に冷却した。次に、3N KOH(3当量)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を水(1.0用量)で希釈し、トルエンで洗浄した(0.75容量で3回)。水相を3N HClでpH1に酸性化して、tert−ブチルメチルエーテルで抽出した(0.75容量で2回)。有機画分を一緒にして水(0.75容量)で洗浄した。透明な明るい褐色の溶液に、ジシクロヘキシルアミン(1当量)を加え、溶液を室温で16時間撹拌した。塩をろ過し、酢酸エチル、tert−ブチルメチルエーテルで洗浄し、乾燥して、表題化合物を得た:アッセイ:94A%。
【0211】
H NMR(500mHz,CDCl3):δ9.24(s,1H),7.16−7.08(m,2H),6.82(t,1H),6.2(br,2H),3.6−3.5(m,1H),3.04−2.97(m,2H),2.88−2.70(m,3H),2.66(dd,1H),2.45−2.37(m,1H),2.13−2.05(m,2.05),1.83(d,4H),1.67(d,2H),1.55−1.43(m,4H),1.33−1.11(m,6H)。
【0212】
工程2:(+/−)−(5−ブロモ−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸
上記工程1から得られたDCHA塩のジクロロメタンにおけるスラリー(0.241Mの溶液)を−20℃から−15℃に冷却した。ピリジン(2当量)を一度に加え、スラリーに、温度を−20℃から−15℃の間で維持しながら臭素(2.5当量)を30分から45分かけて滴下して加えた(1/3の臭素を加えたとき、反応混合物は粘度が高くなり、効率的な撹拌が必要になった。最終的には、約1/2の臭素を加えたとき、混合物は再び「ゆるく」なった)。添加が完了した後、反応混合物を−15℃でさらに1時間放置した。次に、酢酸(3.04当量)を5分かけて加え、亜鉛粉末(3.04当量)を少量ずつ加えた(少量の亜鉛を−15℃で加え、混合物を約5分間放置して、発熱を確実に治まらせた(およそ−15℃から−10℃))。この操作を約30分にわたって約5回繰り返した。それ以上の発熱が観測されなくなったとき、残る亜鉛をより速く加えた。全操作にはおよそ30分から45分を要した。
【0213】
添加が完了した後、回分反応物を室温に加温し、1時間放置して、濃縮した。反応混合物をメチルt−ブチルエーテル(MTBE、0.8容量)に切り換え、10%の酢酸水溶液(0.8容量)を加えた。混合物(塩(例えば、ピリジウム)の再結晶)を室温で1時間放置し、solka−flocによりろ過した。solka−flocの詰め物をMTBE(約0.2容量)で洗浄し、ろ液(二相、MTBE/水相)を抽出器に移した。有機相を水(0.8容量)で洗浄した。MTBE抽出液を濃縮し、イソプロピルアルコール(IPA、0.25容量)に切り換えて、化合物を結晶化させた。水(0.25容量)を加え、この回分処理物を1時間放置した。さらなる水(0.33容量)を1時間かけて加えた。水の添加が完了した後、回分処理物をさらに1時間放置して、ろ過し、30/70のIPA/水(0.15容量)ですすいだ。結晶化したブロモ酸を+45℃でオーブンにおいて乾燥した。
【0214】
工程3:(+/−)−[5−ブロモ−4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル]酢酸
工程2のブロモ酸をジメチルアセトアミドに溶解し(0.416Mの溶液)、炭酸セシウム(2.5当量)を一度に加えた。このスラリーに4−クロロベンジルクロリド(2.5当量)を一度に加えて、回分反応物を50℃に20時間にわたって加熱した。回分反応物をr.t.に冷却し、5Nの水酸化ナトリウム(4.00当量)を5分かけて加えた(温度が+40℃に上昇した)。反応液を50℃で約3時間放置し、室温に冷却して、L抽出器に移した。溶液を酢酸イソプロピル(IPAc、2容量)で希釈し、+15℃に冷却した。溶液を5N HClでpH〜2に酸性化した。層を分離し、有機層を水で洗浄した(2容量で2回)。IPAc溶液を濃縮し、IPA(0.8容量)に切り換えて、生成物を結晶化させた。水(8L)を2時間かけて加え、回分処理物をろ過して、表題化合物を得た。回分処理物は、+40℃で24時間、オーブンにおいて乾燥することができる。
【0215】
(実施例18)
(+/−)−{4−[1−(4−クロロフェニル)エチル]−7−フルオロ−5−メタンスルホニル−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル}酢酸(化合物X)
【0216】
【化26】

【0217】
表題化合物を、PCT国際特許出願公開WO03/062200(2003年7月30日公開)に示される記載に従って合成した。
【0218】
(実施例19)
(+/−)−[9−(4−クロロベンジル)−6−フルオロ−メタンスルホニル−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸(化合物Y)
【0219】
【化27】

【0220】
表題化合物を、PCT国際特許出願公開WO03/062200(2003年7月30日公開)に示される記載に従って合成した。
【0221】
(実施例20)
[4−(4−クロロベンジル)−7−フルオロ−5−メタンスルホニル−1−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロシクロペンタ[b]インドール−3−イル)酢酸(化合物Z)
【0222】
【化28】

【0223】
表題化合物を、PCT国際特許出願公開WO03/062200(2003年7月30日公開)に示される記載に従って合成した。
【0224】
(実施例21)
{9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−イソプロピル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル}酢酸(エナンチオマーAおよびエナンチオマーB)(化合物AA)
【0225】
【化29】

【0226】
工程1 2−クロロニコチンアルデヒド
ジイソプロピルアミン(110mL、780mmol)のTHF(500mL)における溶液にn−BuLiの2.5Mヘキサン(hexanes)溶液(300mL、750mmol)を−40℃で加えた。5分後、反応混合物を−95℃に冷却し、次いで、DMPU(15mL)および2−クロロピリジン(50mL、532mmol)を連続して加えた。次に、得られた混合物を−78℃で4時間撹拌した。この後、黄色の懸濁物を再び−95℃に冷却し、次いで、DMF(70mL)を加えた。最終反応混合物を−78℃に加温し、この温度で1.5時間撹拌した。反応混合物を冷HCl水溶液(3N、800mL)に注ぎ、5分間撹拌した。濃NHOH水溶液を加えて、pHを7.5に調節した。水層をEtOAcで3回抽出した。有機層を一緒にして、NHCl水溶液およびブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過し、濃縮した。粗製物をさらに、100%ヘキサン(hexanes)から100%EtOAcへのグラジエントを用いて溶出することによってシリカゲルの詰め物により精製した。生成物を冷ヘキサン(hexanes)において再結晶して、表題化合物を淡黄色の固体として得た。
【0227】
工程2 (2Z)−2−アジド−3−(2−クロロピリジン−3−イル)プロパ−2−エン酸メチル
2−クロロニコチンアルデヒド(20.0g、139.9mmol)およびアジド酢酸メチル(32.2mL、349.7mmol)のMeOH(168mL)における溶液を、MeOHにおける25%NaOMeの溶液(80mL、349mmol)に−20℃で加えた。30分間の添加期間中、内部温度をモニターし、約−20℃で維持した。次に、得られた混合物を氷浴で数時間撹拌し、続いて、低温室において氷浴で一晩撹拌した。次に、懸濁物を氷およびNHClの混合物に注ぎ、スラリーを10分間の撹拌の後でろ過した。生成物を冷HOで洗浄し、次いで、真空下で乾燥した。粗製物をCHClに溶解し、MgSOを加えた。懸濁物をシリカゲルの詰め物によりろ過し、CHClで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮し、表題化合物のベージュ色の沈殿(20g)を得た。
【0228】
工程3 4−クロロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボン酸メチル
(2Z)−2−アジド−3−[2−クロロピリジン−3−イル]プロパ−2−エン酸メチル(21g、88mmol)のメシチレン(880mL)における溶液を1時間の期間にわたって加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、次いで0℃に冷却し、析出物をろ過し、冷ヘキサンで洗浄した。物質を1:20のEtOAc/ヘキサンにおいて一晩撹拌して、ろ過後に、表題化合物を淡黄色の固体として得た(13.2g)。
【0229】
工程4:1−クロロ−8−オキソ−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−7−カルボン酸メチル
4−クロロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボン酸メチル(12.5g、59mmol)のTHF(116mL)−トルエン(460mL)における懸濁物にカリウムtert−ブトキシドの1.0MのTHF溶液(64mL、64mmol)およびアクリル酸メチル(55mL、611mmol)を加えた。得られた混合物を100℃で18時間加熱した。この後、懸濁物を室温に冷却し、NHCl飽和水溶液(400mL)およびヘキサン(hexanes)(400mL)の混合物に注いだ。固体をデカンテーションし、ろ過し、HOおよびヘキサン(hexanes)で洗浄して、表題化合物を得た。
【0230】
工程5 1−クロロ−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン
前記工程の化合物にイソプロパノール(8.0mL)および濃HCl(2.0mL)を加え、100℃で1時間加熱した。反応混合物をEtOAcとNaCOとの間で分配した。有機相を分離し、エバポレーションして、表題化合物を得た。
【0231】
工程6 1−イソプロペニル−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン
1−クロロ−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン(5.0g、24.3mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1.0g、1.09mmol)およびトリフェニルアルシン(2.70g、8.82mmol)のDMF(100mL)における混合物に、トリブチルイソプロペニルスタナン(9.60g、29.00mmol)を加えた。得られた混合物を脱気して、78℃で18時間の期間にわたって加熱した。溶媒を減圧下でエバポレーションした。CHClおよびセライトを得られた混合物に加え、次いで、混合物をセライトでろ過した。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した(ヘキサンにおける50%から100%へのEtOAc)。
【0232】
工程7 (2E)−(1−イソプロペニル−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イリデン)エタン酸エチル
1−イソプロペニル−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−オン(0.60g、2.8mmol)およびホスホノ酢酸トリエチル(1.00g、4.46mmol)のTHF(24mL)における溶液に、−78℃で、80%NaH(0.12g、4.00mmol)を加え、反応混合物を0℃に加温し、次いで室温に加温した。反応混合物を飽和NHClおよびEtOAcに注いだ。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した(ヘキサンにおける40%のEtOAc)。
【0233】
工程8 (1−イソプロピル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル)酢酸エチル
(2E)−(1−イソプロペニル−6,7−ジヒドロ−8H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イリデン)エタン酸エチル(0.40g、1.4mmol)のMeOH(20mL)における溶液にPd(OH)(0.20g)を加えた。混合物を1atmのHのもとで3時間撹拌した。混合物をセライトでろ過し、エバポレーションして、表題化合物を得た。
【0234】
工程9 {9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−イソプロピル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル}酢酸エチル
ビス(3,4−ジクロロフェニル)ジスルフィド(0.24g、0.67mmol)のCHCl(5.6mL)における溶液にSOCl(0.036mL)を加えた。得られた黄色の混合物を室温で1時間撹拌した。この溶液を、(1−イソプロピル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル)酢酸エチル(0.15g、0.52mmol)のDMF(5.6mL)における溶液に0℃で加えた。0℃で1.5時間後、反応混合物を飽和NaHCOおよびEtOAcに注いだ。有機相を分離し、NaSOで乾燥し、ろ過し、エバポレーションした。表題化合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製した(ヘキサンにおける30%から40%へのEtOAc)。
【0235】
工程10 {9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−イソプロピル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル}酢酸
{9−[(3,4−ジクロロフェニル)チオ]−1−イソプロピル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[3,4−b]ピロリジン−8−イル}酢酸エチル(0.23g、0.50mmol)のTHF(5mL)およびMeOH(2.5mL)における溶液に1.0MのNaOH(1.5mL、1.5mmol)を加えた。RTで1時間撹拌した後、HOAc(0.25mL)を加え、溶媒をエバポレーションした。残渣をEtOAc/HOに溶解し、有機層をHOおよびブラインで洗浄した。乾燥(NaSO)後、溶液をろ過し、エバポレーションした。残渣を1:1のEtOAc:hexとともに撹拌して、ろ過後に、表題化合物を白色の固体として得た。
【0236】
H NMR(MeOH−d)δ1.14−1.26(m,6H),2.47−2.56(m,1H),2.56−2.64(m,1H),2.94−3.05(m,2H),3.81−3.89(m,1H),4.22−4.30(m,1H),4.33−4.44(m,2H),6.93−6.99(m,1H),7.14−7.19(m,1H),7.33−7.39(m,1H),7.54−7.59(m,1H),8.16−8.21(m,1H)。
【0237】
工程10の生成物を、CHを使用してこのメチルエステルに変換し、エステルをキラルな定常相(chiralcel ODカラム 2x25cm)でのHPLC分離に供し、ヘキサンにおける12%の2−プロパノールを用いて6mL/分の流速で溶出した。エナンチオマーA(より小さい極性)は31.9分の保持時間を有し、エナンチオマーB(より大きい極性)は35.5分の保持時間を有する。AおよびBの両方を実施例17の工程10の場合のように加水分解して、表題化合物のエナンチオマーAおよびエナンチオマーBを得た。
【0238】
(実施例22)
((1R)−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−9−{(1S)−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸(化合物AJ)
【0239】
【化30】

【0240】
工程1:2−(2−ブロモ−4−フルオロフェニル)ヒドラジニウムクロリド
2−ブロモ−4−フルオロアニリンの濃HClにおける溶液(1.5M)に、−10℃で、10.0MのNaNO水溶液(1.1当量)をゆっくり加えた。混合物を0℃で2.5時間撹拌した。次に、SnClの濃HClにおける冷却された(−30℃)溶液(3.8M)を、内部温度を10℃未満で維持しながらゆっくり加えた。得られた混合物を、10℃で20分間、次いで室温で1時間、機械的に撹拌した。濃厚なスラリーをろ過し、固体を一晩風乾した。固体を冷HClに再懸濁して、再びろ過した。乾燥物をEtOに懸濁し、10分間撹拌し、ろ過し、一晩風乾して、表題化合物をベージュ色の固体として得た。
【0241】
工程2:(+/−)−(8−ブロモ−6−フルオロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチル
工程1の化合物(1当量)のAcOHにおける懸濁物(0.5M)に(2−オキソシクロヘキシル)酢酸エチル(1当量)を加えた。混合物を還流しながら16時間撹拌し、冷却して、AcOHを減圧下でのエバポレーションによって除いた。残渣をEtOAcで希釈し、水および飽和NaHCO水溶液で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。次に、残渣をシリカゲルの詰め物で精製し、トルエンにより溶出した。ろ液を濃縮し、ヘキサン(hexanes)中で撹拌して、ろ過後に、表題化合物を白色の固体として得た。MS(+APCI)m/z354.2(M+H)
【0242】
工程3:(+/−)−[6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸エチル
工程2の化合物の無水DMSOにおける溶液(0.28M)にメタンスルフィン酸ナトリウム(3当量)およびヨウ化銅(3当量)を加えた。Nを混合物に5分間吹き込み、次いで、反応液をN雰囲気下において100℃で撹拌した。12時間後、さらなるメタンスルフィン酸ナトリウム(2当量)およびヨウ化銅(2当量)を加えた。混合物を100℃でさらに12時間撹拌し、冷却し、EtOAcで希釈し、1N HClを加えて、混合物を酸性化した。懸濁物を30分間撹拌し、セライトによりろ過した。ろ液を水で洗浄し、NaSOで乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルの詰め物によりろ過し、最初にトルエンにより溶出して、非極性の不純物を除き、次いでヘキサン(hexanes)/EtOAcの2:1の混合物により溶出して、所望する生成物を溶出した。ヘキサン(hexanes)/EtOAcの混合物による溶出から得られたろ液を濃縮して、表題化合物を淡黄色の固体として得た。MS(−APCI)m/z352.1(M−H)
【0243】
工程4:[(1R)−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチル
工程3のラセミ混合物を、15%iPrOH/ヘキサンの混合物により溶出されるchiralpak AD調製用カラムでの調製的HPLCによって分割した。より極性のエナンチオマー(より長い保持時間)を、最終生成物の活性に基づいて表題化合物として同定した。
【0244】
工程5:[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチル
工程4の化合物(1当量)、トリフェニルホスフィン(1.5当量)および(1R)−1−(4−クロロフェニル)エタノール(1.5当量、これは参考文献の実施例1に記載される一般的手順に従って調製される)のTHFにおける溶液(0.175M)に、ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラート(THFにおいて2.1M、1.5当量)を10分間の期間で加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、濃縮した。残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、7%EtOAc/トルエンにより溶出して、所望する生成物(約90%の純度)を得た。これを次の反応のためにこのまま使用した。
【0245】
工程6:[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸および[(1S)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸
THFおよびメタノールの2:1の混合物における工程5の化合物の溶液(0.1M)に1NのLiOH水溶液(3当量)を加えた。混合物を室温で2時間撹拌し、AcOHを加え、溶媒をエバポレーションによって除いた。残渣をEtOAc/HOに溶解し、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過して、濃縮した。残渣を30%EtOAc/ヘキサンで洗浄し、生成物をジエチルエーテルに懸濁し、45分間にわたって超音波処理して、ろ過し、50℃で24時間にわたって高真空下で乾燥して、表題化合物を白色の固体として得た。MS(−APCI)m/z462.1(M−H)。
【0246】
または、(+/−)−[6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸エチルを、工程5におけるアルキル化反応のために使用して、2つのジアステレオマー、すなわち、[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルおよび[(1S)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルの混合物を得た。このジアステレオマー混合物を、下記の手順を使用する選択的加水分解によって分割して、所望する[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸を得た。
【0247】
分割:
[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルおよび[(1S)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルのジアステレオマー混合物(1当量)をTHF/MeOHの3.5/1の混合物に溶解し(0.25M)、0℃で冷却した。1NのLiOH水溶液(1当量)をゆっくり加え、混合物を0℃で12時間、または、[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルがほぼ完全に加水分解されるまで撹拌した。もう一方のジアステレオマーはこれらの条件のもとではわずかに加水分解されただけであった。AcOHを加え、溶媒をエバポレーションによって除いた。残渣をEtOAc/HOに溶解し、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過して、濃縮した。[(1S)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルおよび[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸エチルを、1%のAcOHを含有する40%EtOAc/ヘキサン(hexanes)により溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって分離して、所望する[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸を、90%を越えるdeで得た。これを30%EtOAc/ヘキサンで洗浄して、所望する化合物を、95%を越えるdeを有する白色の固体として得た。
【0248】
工程7:[(1R)−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸メチル
[(1R)−9−[(1S)−1−(4−クロロフェニル)エチル]−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル)酢酸([α]=−226°、MeOH中)のMeOHにおける溶液(0.1M)に10%パラジウム担持炭素(10%wt/wt)を加えた。N気流を混合物に5分間吹き込んだ。反応物をH雰囲気下(風船)の室温で24時間撹拌して、セライトの詰め物によりろ過し、CHClで溶出した。溶媒を減圧下でのエバポレーションによって除き、残渣をMeOHで洗浄して、化合物[(1R)−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸メチルを得た。
【0249】
【化31】

【0250】
工程8:((1R)−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−9−{(1S)−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸(化合物AJ)
工程7の化合物(1当量)、トリフェニルホスフィン(1.5当量)および(1R)−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール(1.5当量)のTHFにおける溶液(0.2M)に、ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシラートの溶液(THFにおいて1M、1.5当量)を20分間の期間で加えた。混合物を室温で2時間撹拌して、濃縮した。残渣を、トルエンにおける10%EtOAcにより溶出するシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、((1R)−6−フルオロ−8−(メチルスルホニル)−9−{(1S)−1−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]エチル}−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−イル]酢酸メチル(約90%の純度)を得た。これを次の工程のためにこのまま使用した。
【0251】
上記エステル(1当量)のTHF/MeOHの3.5/1の混合物における溶液(0.25M)に、0℃で、1NのLiOH水溶液(1当量)をゆっくり加え、混合物を0℃で16時間、または、エステルがほぼ完全に加水分解されるまで撹拌した。これらの条件のもとでは、もう一方の微量のジアステレオマーははるかにより遅い加水分解速度を有する。AcOHを加え、溶媒を真空下で除いた。残渣をEtOAc/HOに溶解し、有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過して、濃縮した。未反応のメチルエステルを除くために、残渣をシリカゲルの詰め物によりろ過し、最初に10%EtOAc/トルエンにより溶出し、次いで、1%のAcOHを含有する60%EtOAc/トルエンにより溶出した。残渣を30%EtOAc/ヘキサンで洗浄し、高真空下において50℃で16時間乾燥して、表題化合物を、95%を越えるdeおよびeeを有する白色の固体として得た(キラルHPLCによって調べた)。MS(−APCI)m/z496.0(M−H)。MeOH中[α]=−181°
生物学
選択的なDPアンタゴニストとして機能する本発明において使用される化合物は、典型的には、CRTH2受容体に対する親和性(K)よりも少なくとも約10倍大きいDPに対する親和性(K)(数字的には小さいK値)を明らかにする。本発明において使用される典型的なDPアンタゴニストは、CRTH2受容体よりも、DP受容体に対して少なくとも約10倍選択的である。より具体的には、このような選択的DP受容体アンタゴニストは、CRTH2受容体と比較して、DP受容体に対して少なくとも約100倍選択的である。さらにより具体的には、DPの選択的なアンタゴニスト化合物は、CRTH2受容体よりも、DP受容体に対して少なくとも約800倍から1000倍選択的である。すなわち、DP受容体に対する親和性(K)が、CRTH2受容体に対する親和性(K)よりも800倍から1000倍大きい。
【0252】
本明細書中で使用されるように、化合物が「DP受容体を選択的に調節する」とき、この化合物は、治療的用量において達成可能である濃度でDP受容体に結合し、このDP受容体に拮抗し、この一方で、CRTH2受容体をこのような治療的に達成可能な濃度で実質的には調節しない。
【0253】
一般に、本明細書中で使用されるDPアンタゴニストは、CRTH2受容体に対する親和性(K)が約0.5マイクロモル濃度以上である。CRTH2に対する結合親和性が約0.5マイクロモル濃度以上であり、および、CRTH2よりもDP受容体に対する選択性が少なくとも約10倍である化合物は、このような選択的DPアンタゴニストを用いることなくニコチン酸が投与されるときに見られる顔面紅潮作用を阻害するために有用である。
【0254】
組換えヒトDP受容体およびCRTH2受容体における化合物の親和性および選択性の測定
DPおよびCRTH2における化合物の受容体親和性および受容体選択性を、Abramovitz M他、Biochem.Biophys.Acta(2000)、1483:285から293、および、Sawyer N他、Br.J.Pharmacol.(2002)、137:1163から1172に記載されるように、放射性リガンド結合アッセイを使用して明らかにした。簡単に記載すると、ヒトのDP受容体およびCRTH2受容体を個々に発現する安定な細胞株を、ヒト胚腎臓(HEK)293EBNA(エプスタイン・バールウイルス核抗原)細胞(これはHEK293E細胞株と名付けられている)を使用して樹立した。これらの組換え細胞株から調製された膜画分を、DP受容体およびCRTH2受容体における化合物の親和性および選択性を明らかにするための平衡競合放射性リガンド結合アッセイにおいて用いた。
【0255】
全長のコード配列に対応するDPおよびCRTH2のcDNAを哺乳動物発現ベクターpCEP4(Invitrogen)の適切な部位にサブクローン化して、HEK293E細胞において発現させた。細胞を、プロテアーゼ阻害剤(2mMのAEBSF、10μMのE−64、100μMのロイペプチンおよび0.05mg/mlのペプスタチン)の存在下、氷上における30分間の800psiでの窒素キャビテテーションによって溶解した後、膜を示差的遠心分離(1000xgで10分間、次いで、160,000xgで30分間、すべて4℃において)によって調製した。160,000xgのペレットを、1mMのEDTAを含有する10mM HEPES/KOH(pH7.4)に、約5mg/mLから10mg/mLのタンパク質で、Dounceホモジネート化(Dounce A;10ストローク)によって再懸濁し、液体窒素で凍結し、−80℃で保存した。受容体結合アッセイを、1mMのEDTA、10mMのMnClおよび0.7nMの[H]PGD(200Ci/mmol)を含有する10mM HEPES/KOH(pH7.4)において0.2mLの最終インキュベーション体積で行った。反応を、160,000xg画分から得られた膜タンパク質(DPについては約30μg、CRTH2については約10μg)の添加によって開始した。リガンドを、すべてのインキュベーションにおいて1%(v/v)で一定に保たれたジメチルスルホキシド(DMSO)において加えた。非特異的な結合を10μMの非放射性PGDの存在下で測定した。インキュベーションをミニ回旋式振とう機において室温で60分間行った。結合アッセイを、Tomtec Mach III 96ウエル半自動細胞ハーベスターを使用して、EDTAを含まない(4℃の)アッセイインキュベーション緩衝液で事前に湿らした96ウエルUnifilter GF/C(Canberra Packard)による迅速ろ過によって停止させた。フィルターを3mLから4mLの同じ緩衝液で洗浄し、55℃で90分間乾燥して、個々のフィルターに結合している残存放射能を、1450MicroBeta(Wallac)カウンターを使用して、50μlのUltima Gold F(Canberra Packard)の添加とともにシンチレーション計測によって測定した。
【0256】
最大の特異的結合を、総結合−非特異的結合(競合剤の非存在下)として定義した。特異的な結合を化合物の各濃度において求め、最大特異的結合の百分率として表した。シグモイド状の平衡競合曲線が、パーセント最大特異的結合を試験化合物濃度の関数として表すことによって描かれ、変曲点(InPt)を決定するために四パラメーター式に基づくシンプレックス・ドリブン非線形最小2乗曲線近似ルーチンを用いる特注設計のソフトウエアパッケージによって分析した。試験化合物の結合親和性を、平衡阻害定数(K)を式K=InPt/1+([放射性リガンド]/K)(式中、Kは放射性リガンド−受容体の相互作用に対する平衡解離定数である)から計算することによって求めた。InPtを決定することができないとき、IC50を使用した(すなわち、最大特異的結合の50%を阻害するために要求される試験化合物の濃度)。
【0257】
全般に、本発明において使用される化合物は、約0.4nMの低いKから約16.3nMの大きいKまでの、DP受容体に対するKを示す。同様に、本発明において使用される化合物は全般に、約180nMの低いKから約22,000nM以上の大きいKまでの、CRTH2受容体に対するKを示す。
【0258】
マウスにおけるニコチン酸誘導による血管拡張に対する化合物の効果
本明細書中に記載される選択的DPアンタゴニストの効力を、顔面紅潮阻害効果を測定する、ヒトでのニコチン酸による誘導顔面紅潮のマウスモデルを使用して明らかにすることができる。マウス耳における血流(血管拡張の指標、これはヒトにおける顔面紅潮の顕著な成分である)が、ビヒクル(コントロールとして)またはDPアンタゴニストで前処理されているマウスにニコチン酸を投与した後で測定される。具体的には、オスのC57BL/6マウス(約25g)がこの研究では使用された。5匹のマウスが各試験群において評価された。ネムブタールを水で5mg/mlの最終濃度に希釈し、マウスあたり0.3mlを腹腔内注射した。DPアンタゴニストを5%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンに5mg/mlの最終濃度で溶解して、化合物をマウスあたり0.2mlの体積(約40mpk)で腹腔内投与した。ニコチン酸を5%ヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンに12.5mg/mlの最終濃度で溶解した。このニコチン酸ストック溶液を2NのNaOHでpH7.4に調節し、マウスあたり0.2ml(約100mpk)を皮下注射した。
【0259】
マウス耳皮膚の灌流を、ニコチン酸投与の5分前から開始して15分間にわたって30秒毎にレーザードップラー灌流画像化装置(PeriScan PIM II、Perimed、スウェーデン)を用いてモニターした。ビヒクルまたはニコチン酸を投与した後の10分間の期間にわたる平均灌流のパーセント変化を計算し、時間に対する平均灌流のパーセント変化のグラフを各動物について作製した。次に、平均灌流の曲線下面積(AUC)(%Δx分)を各グラフから計算した。結果が、各群について、平均AUC±SEMで表される。
【0260】
化合物Dは、マウスにおけるPGD−2誘導による血管拡張を抑制した(図1)。試験されたDPアンタゴニストは、マウスにおけるニコチン酸誘導による血管拡張を抑制した。選択された化合物についてのデータが図2および図3に示される。
【0261】
本明細書中に引用されるすべての特許、特許出願および刊行物はこれら全部が本明細書中に参照により組込れられる。特定の好ましい実施態様が本明細書中に詳細に記載されているが、数々の代わりの実施態様が本発明の範囲に含まれるとして理解される。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】化合物DがマウスにおけるプロスタグランジンD2誘導による血管拡張を阻害することを示すグラフである。
【図2】化合物Dがマウスにおけるニコチン酸誘導による血管拡張を阻害することを示すグラフである。
【図3】他の選択された化合物がマウスにおけるニコチン酸誘導による血管拡張を阻害することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを、実質的な顔面紅潮の非存在下でアテローム性動脈硬化を処置するために効果的である量で患者に投与することを含む、このような処置を必要としているヒト患者におけるアテローム性動脈硬化を処置する方法。
【請求項2】
ニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとを患者に投与することを含み、前記組合せが、実質的な顔面紅潮の非存在下で患者における血清HDLレベルを上昇させるために効果的である、このような処置を必要としているヒト患者における血清HDLレベルを上昇させる方法。
【請求項3】
ニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物が投与され、DP受容体アンタゴニストがDP受容体を選択的に調節し、およびCRTH2受容体を実質的には調節しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
DP受容体アンタゴニストが、
【化1】



またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとから構成される医薬組成物。
【請求項6】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DP受容体アンタゴニストとから構成される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
DPアンタゴニストが、
【化2】



またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物
からなる群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
DPアンタゴニストが、化合物化合物A、B、D、E、X、AA、AF、AG、AH、AIおよびAJからなる群から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
HMGCo−Aレダクターゼ阻害化合物をさらに含む、請求項5、6、7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
HMGCo−Aレダクターゼ阻害化合物がシンバスタチンである、請求項9に記載の医薬組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者において実質的な顔面紅潮の非存在下でアテローム性動脈硬化を処置するための医薬の製造における、DP受容体アンタゴニストとニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物との使用。
【請求項2】
ヒト患者において実質的な顔面紅潮の非存在下で血清HDLレベルを上昇させるための医薬の製造における、DP受容体アンタゴニストとニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物との使用。
【請求項3】
ニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物が投与され、DP受容体アンタゴニストがDP受容体を選択的に調節し、およびCRTH2受容体を実質的には調節しない、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
DP受容体アンタゴニストが、
【化1】



またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物
からなる群から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物または別のニコチン酸受容体アゴニストと、DP受容体アンタゴニストとから構成される医薬組成物。
【請求項6】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と、DP受容体アンタゴニストとから構成される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
DPアンタゴニストが、
【化2】



またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物
からなる群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
DPアンタゴニストが、化合物A、B、D、E、X、AA、AF、AG、AH、AIおよびAJからなる群から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
HMGCo−Aレダクターゼ阻害化合物をさらに含む、請求項5、6、7または8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
HMGCo−Aレダクターゼ阻害化合物がシンバスタチンである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と式E:
【化3】

の化合物またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項12】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸約1000mgと式EのDPアンタゴニストまたはこの塩もしくは溶媒和物とから構成される医薬組成物。
【請求項13】
DPアンタゴニストである化合物Eまたはこの塩もしくは溶媒和物が、約1mgから約500mgの量で存在する、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ナイアシンと、式E:
【化4】

の化合物またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物とシンバスタチンとを含む医薬組成物。
【請求項15】
ニコチン酸約1000mgと、DPアンタゴニストである化合物E約1mgから約500mgと、シンバスタチン約20mgとを含有する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ニコチン酸約1000mgと、化合物Eまたはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物約1〜500mgと、シンバスタチン約20〜40mgと医薬適合性のキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項17】
錠剤またはカプセルの形態である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
錠剤の形態である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
持続放出錠剤または持続放出カプセルの形態である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
持続放出錠剤の形態である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸と式FもしくはAA:
【化5】

の化合物またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物とを含む、医薬組成物。
【請求項22】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、ニコチン酸約1000mgと式FもしくはAAのDPアンタゴニストまたはこの塩もしくは溶媒和物とを含む医薬組成物。
【請求項23】
DPアンタゴニストである化合物FもしくはAAまたはこの塩もしくは溶媒和物が、約1mgから約500mgの量で存在する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
医薬適合性のキャリアとの組合せで、式FもしくはAA:
【化6】

の化合物またはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物と、シンバスタチンとを含む、医薬組成物。
【請求項25】
ニコチン酸約1000mgと、DPアンタゴニストである化合物FもしくはAAまたはこの塩もしくは溶媒和物約1mgから500mgとシンバスタチン約20mgとを含有する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ニコチン酸約1000mgと、化合物FもしくはAAまたはこの医薬適合性の塩もしくは溶媒和物約1〜500mgと、シンバスタチン約20〜40mgと医薬適合性のキャリアとを含む、医薬組成物。
【請求項27】
錠剤またはカプセルの形態である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
錠剤の形態である、請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
持続放出錠剤または持続放出カプセルの形態である、請求項1〜27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
持続放出錠剤の形態である、請求項27に記載の医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−526030(P2006−526030A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515355(P2006−515355)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/014980
【国際公開番号】WO2004/103370
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【出願人】(305042057)メルク フロスト カナダ リミテツド (99)
【Fターム(参考)】