説明

アテローム性動脈硬化を治療及び/又は予防するための免疫調節方法及びシステム

個人におけるアテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態を治療及び/又は予防するための、免疫賦活性T細胞、組成物、方法及びシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての相互参照)
本開示は、2009年11月14日に提出された、発明の名称が「アテローム性動脈硬化を治療及び/又は予防するための免疫調節方法及びシステム」という米国仮出願S/N61/261,331に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照することによりここに組み込まれる。
【0002】
本開示は、アテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態を治療又は予防するのに適した免疫調節方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
現在、アテローム性動脈硬化は、動脈壁の脂質に関係のある免疫介在性の慢性炎症性疾患と見なされている。多くの免疫成分は、アテローム発生に関与することが確認されている。臨床前研究では、それら成分を標的にする免疫調節治療がアテローム性動脈硬化を縮小できることを示唆するという期待できる結果が得られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここに提供されるのは、個体における免疫調節応答を誘発するための方法及びシステムである。幾つかの実施態様においては、本開示の方法及びシステムによって誘発される免疫調節応答が、個体におけるアテローム性動脈硬化又はそれに関係した状態に関連している治療効果及び/又は予防効果と関係がある。
【0005】
第1の態様によれば、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分によって活性化されたCD8(+)T細胞が、関連した方法及びシステムと共に記載される。その活性化CD8(+)T細胞は、上記免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的である。
【0006】
第2の態様によれば、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分によって活性化されたCD8(+)T細胞が、薬剤用として、特には個体におけるアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防用として記載される。その活性化CD8(+)T細胞は、上記免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的である。上記免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分は、個体におけるアテローム性動脈硬化の縮小に関係している。
【0007】
第3の態様によれば、個体におけるアテローム性動脈硬化を治療及び/又は予防するための方法及びシステムが記載される。上記方法は、個体に、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分によって活性化されたCD8(+)T細胞を有効量投与することを含んでおり、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分は、アテローム性動脈硬化の縮小に関係しており、該活性化CD8(+)T細胞は、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的である。上記システムは、少なくとも2種の活性化CD8(+)T細胞、1種以上の適したアジュバントを含む。
【0008】
第4の態様によれば、活性化CD8(+)T細胞を提供するための方法及びシステムが記載される。上記方法は、CD8(+)T細胞を、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、ある時間の間、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的なCD8(+)T細胞を得るための条件下で接触させることを含む。一部の実施態様においては、活性化CD8(+)T細胞が、アテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態を治療及び/又は予防するのに適している。上記免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分は、アテローム性動脈硬化の縮小に関係している。上記システムは、少なくとも2種のCD8(+)T細胞、ApoB100の免疫原性断片、前述の免疫原性断片の免疫原性的に活性がある部分、及びT細胞エンハンサーを含む。
【0009】
第5の態様によれば、ここに記載される少なくとも1種の活性化CD8(+)T細胞を適切な媒体と共に含む組成物が記載される。
【0010】
第6の態様によれば、個体におけるアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防用の治療薬を確認するための方法及びシステムが記載される。上記方法は、CD8(+)T細胞を、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、ある時間の間、活性化CD8(+)T細胞を提供するための条件下で接触させることを含み、該活性化CD8(+)T細胞は、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的である。上記方法は、更に、上記活性化CD8(+)T細胞を動物モデルに投与することと、該動物モデルにおいてアテローム性動脈硬化の縮小を検出することとを含む。上記システムは、少なくとも2種のCD8(+)T細胞、T細胞エンハンサー、動物モデル、T細胞の活性化を検出するための試薬、及びアテローム性動脈硬化の縮小を検出するための試薬を含む。
【0011】
ここに記載されたT細胞、組成物、方法及びシステムは、プラークの減少、プラーク成長の減弱及び/又は個体におけるアテローム性動脈硬化に対する治療的若しくは予防的効果が望まれる応用に関連して使用できる。
【0012】
以下、付随の図面及び説明において、上記開示の一以上の実施態様の詳細を説明する。他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【0013】
付随の図面は、この明細書に組み込まれ、明細書の一部を構成するものであり、本開示の一以上の実施態様を詳細な説明及び実施例のセクションと共に説明し、本開示の本質及び実施を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】p210免疫化が粥状保護効果を与えることを示す。(A)天然p210を用いた免疫化は、PBS及びcBSA/ミョウバングループと比較した場合、アテローム性大動脈硬化の有意な縮小をもたらした(各グループn=9〜10、各グループからの典型となる写真を示す)。(B)p210免疫化は、大動脈洞プラークにおけるマクロファージ浸潤及びDCの存在を有意に低減した。それぞれは、MOMA−2(各グループn=9〜10)及びCD11c(各グループn=7〜12)によって評価された。
【図2】DCsに対するp210免疫化の効果を示す。一次免疫の一週間後、(A)CD11c(+)又は(B)CDc(+)CD86(+)細胞は、免疫化部位にて、cBSA/ミョウバングループと比べてp210/cBSA/ミョウバングループの場合に有意に減少した。各グループn=10。(C)三次免疫の一週間後、p210免疫化マウスは、cBSA/ミョウバングループと比べて、リンパ節中のCD11c(+)CD86(+)細胞を低減させた(各グループn=5;ANOVAと、その後の多群比較)。
【図3】p210免疫化の前後でのp210に対するIgM又はIgG力価を示す。(A)p210IgG力価は、免疫化の前が低く、安楽死時点では、PBSグループは低いままであったが、cBSA/ミョウバン及びp210/cBSA/ミョウバングループにおいては有意に増加し、cBSA/ミョウバングループが最も高い力価であった。(B)p210IgM力価は、免疫化の前が低く、安楽死時点で有意に増加し、マウスの3グループで差異はなかった。6〜7週間の時点でn=5、25週間の時点でn=9である。
【図4】インビボでの免疫化後の活性化したリンパ球集団を示す。(A)リンパ節におけるCD8(+)CD25(+)T−細胞集団は、PBS又はcBSA/ミョウバングループと比較して、p210/cBSA/ミョウバングループが有意に高かった;(B)リンパ節におけるCD4(+)CD25(+)T−細胞は、3つのグループの間で差異がなかった。3つのグループの中では、p210/cBSA/ミョウバングループが、脾臓CD8(+)CD25(+)IL−10(+)T−細胞の集団が有意に大きかったものの(C)、脾臓CD8(+)CD25(+)IL12(+)T−細胞は、3つのグループの中で差異がなかった(D)。脾臓CD4(+)CD25(+)IL−10(+)T−細胞集団は、cBSA/ミョウバングループにおいて有意に増加したが、p210/cBSA/ミョウバン免疫化によって有意に減弱され(E)、そして、(F)脾臓CD4(+)CD25(+)IL12(+)T−細胞は、3つのグループにおいて差異がなかった。(A)及び(B)については、各グループn=9〜10で、(C)、(D)、(E)及び(F)については、各グループn=5である。
【図5】p210免疫化ドナーからCD8(+)T−細胞の養子移植は、p210免疫化の粥状保護効果を再現したが、B−細胞又はCD4(+)CD25(+)T−細胞の移植によってはなかったことを示す。(A)p210/cBSA/ミョウバン免疫化ドナーからCD8(+)T−細胞の受容マウスは、他の2つのグループからCD8(+)T−細胞の受容マウスと比べて有意に小さいアテローム性動脈硬化症を発現した(各グループn=9〜10)。(B)p210/cBSA/ミョウバンドナーからB−細胞の養子移植は、PBS又はcBSA/ミョウバングループからB−細胞の受容マウスと比較して、アテローム性動脈硬化を縮小しなかった(各グループn=9)。異なる2つの用量(C.1×10細胞/マウス又はD.3×10細胞/マウス)によるCD4(+)CD25(+)T−細胞の受容マウス(各グループn=9〜13)は、p210免疫化の粥状縮小効果を再現できなかった。
【図6】インビトロでの樹枝状細胞に対するp210活性化マウスからのCD8(+)T細胞の細胞溶解活性の増加を示す。p210免疫化マウスからのCD8(+)T−細胞は、PBS又はBSA/ミョウバングループからのものと比較して細胞溶解活性が有意に高かった。各グループにおいて5匹のマウスから毎回プールされたCD8(+)T−細胞を用いて、実験を4回繰り返し行った。各グループ全体で合計11個のデータ点を用い、二重反復試験及び三重反復試験を毎回行った。
【図7】p210免疫化マウスからのCD8(+)T−細胞がPBS又はcBSA/ミョウバングループからのものと比べて高いレベルのグランザイムBを含有する一方で、パーフォリンレベルに違いがないことを示す。
【図8】p210免疫化後のKLH又はTNPに対するIgG力価を示す。(A)p210による事前の免疫化は、IgG抗体力価によって評価されるように、マウスがPBS又はcBSA/ミョウバンを受け取った場合と比較して、その後のT−細胞依存性(KLH、各グループn=3〜6)又は(B)T−細胞非依存性(TNP、各グループn=4〜5)免疫化の有効性に影響しなかった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
個体におけるアテローム性動脈硬化又はそれに関係した状態の治療及び/又は予防に適しているT細胞並びに関連した方法及びシステムをここに説明する。
【0016】
ここに使用される「T細胞」の語は、リンパ球として知られる白血球細胞のグループに属するTリンパ球を示し、体液性又は細胞媒介性の免疫に関与する。T細胞は、T細胞受容体(TCR)等、その細胞表面上の特異的マーカーの存在によって、B細胞及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)等の他のリンパ球の種類と区別できる。T細胞を確認する追加のマーカーには、CD1a、CD3、CD4、CD8の他、場合により当業者が理解し得るT細胞の状態及び/又は機能性と関係した追加のマーカーが含まれる。
【0017】
ここに使用される「治療する」又は「治療」の語は、ある状態への医療的ケアの一部であるか又はある状態を医学的に若しくは外科的に扱うあらゆる活動を示す。ここに使用される「予防する」又は「予防」の語は、個体におけるある状態からの死亡率又は罹患率の重荷を減少させるあらゆる活動を示す。これは、一次、二次及び三次の予防レベルで起こり、ここでは、a)一次予防が、疾患の発生を回避し;b)二次予防活動が、早期の疾患治療を目的としており、それにより、疾患の進行及び症状の発生を防ぐための介入の機会を増加させ;c)三次予防が、既に確立している疾患の負の影響を機能の回復及び疾患に関連した合併症の減少によって低下させる。
【0018】
ここに使用される「アテローム性動脈硬化」の語は、コレステロール等の脂肪質の蓄積の結果として動脈壁が厚くなる状態を示す。それは、大部分が酸化脂質、マクロファージ、活性化リンパ球の蓄積によるか又は低密度リポタンパク質(コレステロール及びトリグリセリドを運ぶ血漿タンパク質)によって促進された、動脈血管に典型的に影響する症候群である。それは、一般に、動脈の硬化と称される。アテローム性動脈硬化は、現在、動脈壁の脂質に関連した免疫介在性の慢性炎症性疾患と見なされている。多くの免疫成分は、アテローム発生に関与することが確認されており、臨床前研究では、それら成分を標的にする免疫調節治療がアテローム性動脈硬化を縮小できることを示唆するという期待できる結果が得られている。その戦略の1つに、apoB−100に関連したペプチドを免疫原として使用するものがあり、幾つかの候補ペプチドには、かかる用途が確認されている(非特許文献1及び2参照)。
【0019】
ここに使用される「状態」の語は、通常、身体的、精神的、場合により社会的に完全な健康状態と関係している個体の身体状況(全体又はその器官の1つ若しくは複数)に従わない個体の体の身体状況(全体又はその器官の1つ若しくは複数)を示す。ここに記載される状態には、限定されるものではないが、障害及び疾患が挙げられ、ここで、「障害」の語は、体又はその器官のいずれかの機能的異常に関係している生存個体の状態を示し、「疾患」の語は、体又はその器官のいずれかの正常な機能を害する生存個体の状態を示し、典型的には兆候及び症状を見分けることにより明らかになる。状態の例としては、限定されるものではないが、傷害、身体障害、障害(精神的な及び身体的な障害を含む)、症候群、感染、個体の逸脱行動、並びに個体の体又はその器官の構造及び機能の異型変化が挙げられる。
【0020】
2つの事項に関してここに使用される「に関係した」との表現は、第一の事項の出現が第二の事項の出現を伴うような2つの事項間の関係を示し、限定されるものではないが、因果関係及び兆候/症状−疾患関係が含まれる。
【0021】
ここに使用される「個体」の語は、高等動物等の単一生物有機体、特には哺乳動物等の脊椎動物、特には人間を示す。
【0022】
一実施態様においては、ApoB100の免疫原性断片によって活性化されたCD8(+)T細胞が記載され、該活性化CD8(+)T細胞は、該免疫原性断片に対して特異的である。
【0023】
「CD8(+)T細胞」の語は、その表面でCD8糖タンパク質を発現するT細胞を示し、ここで、CD8(表面抗原分類8)糖タンパク質は、T細胞受容体(TCR)の共受容体として機能する膜貫通糖タンパク質である。TCRと同様に、CD8は、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合するが、分類IのMHCタンパク質に対して特異的である。CD8T細胞の例としては、細胞傷害性記憶CD8T細胞、制御性CD8T細胞、細胞傷害性エフェクターCD8T−細胞、及び当業者によって識別可能な追加の細胞が含まれる。CD8タンパク質の2つのイソ型、アルファ及びベータが確認されており、それぞれは、異なる遺伝子によってコードされている。ヒトにおいて、両遺伝子は、位置2p12における染色体2に位置する。
【0024】
特に、ここに記載されるT細胞、組成物、方法及びシステムの一部の実施態様において、CD8(+)T細胞は、ApoB100の1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分を用いて活性化できる。
【0025】
ここに使用される「活性化された」及び「活性化」の語は、T細胞が、特異抗原を提示する抗原提示細胞と、ある時間の間、免疫系内で予め定められた免疫学的役割(例えば細胞傷害性)を有するT細胞をもたらす条件下で相互作用する課程を示す。「抗原提示細胞」(APC)の語は、その表面上に主要組織適合性複合体(MHC)との抗原複合体を表示する細胞を示す。T−細胞は、そのT細胞受容体(TCR)を用いてこの複合体を認識する。APCの例としては、先天及び後天免疫を結び付ける際に重要な役割を果たすことが知られている樹枝状細胞(DC)(非特許文献3及び4参照)が挙げられ、両方の免疫応答は、アテローム発生に関与する(非特許文献5及び6参照)。
【0026】
T細胞、特にはCD8(+)T細胞の検出は、CD8等のマーカー単独での又はTCR及び当業者によって特定可能な追加のマーカーと組み合わせた検出によって実行できる。活性化CD8(+)T細胞の検出は、表面マーカーの検出に適した方法及び技術を用いたT細胞マーカー並びにCD25、CD44、CD62及び当業者によって特定可能な追加のマーカー等の他のマーカーの検出によって実行できる。
【0027】
ここに使用される「検出する」又は「検出」の語は、限定されるものではないが、サンプル、反応混合物、分子複合体及び基質を含む限られた空間部分における分子又は細胞の生存、存在又は実態の決定を示す。ここに使用される「検出する」又は「検出」は、限定されるものではないが、他の化合物と相互作用、特には結合する能力、他の化合物を活性化する能力、及び本開示を読んだ際に当業者によって特定可能な追加の特性を含む標的の化学的及び/又は生物学的特性の決定を含むことができる。上記検出は、定量的でも定性的でもよい。検出が、標的又は信号の量の測定について言及し、関係し又は含む場合、それは「定量的」であり(定量化ともいう)、限定されるものではないが、標的又は信号の量又は割合を決定するように設計されたあらゆる分析が含まれる。検出が、標的又は信号の質又は種類を他の標的又は信号に対する相対存在量の観点から同定することについて言及し、関係し又は含む場合、それは「定性的」であり、数量化されない。
【0028】
T細胞マーカーを検出するのに適した技術の例としては、適切なモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は検出を可能にする適当な分子で標識された抗原特異的HLA若しくはMHC五量体若しくは六量体の使用、並びに当業者によって特定可能な追加の方法及び技術が含まれる。アプローチの例では、T細胞マーカーが、実施例セクションに記載されるように、フローサイトメトリー分析によって確認される。
【0029】
本開示に従う活性化CD8(+)T細胞は、ApoB100の1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分によって活性化され、典型的には、その活性化に使用された免疫原性断片又は免疫原性の活性がある部分に対して特異的である。
【0030】
免疫応答に関してここに使用される「特異的な」、「特異的に」又は「特異性」との表現は、免疫学的活性をある抗原に向ける免疫学的薬剤の能力であって、一緒に存在し得る他の抗原に対しては免疫学的活性が実質的に低いか又は無いものを指す。結果として、CD8(+)T細胞は、この点で、それらを活性化するために使用された免疫原性断片又は活性部分に対して特異的に活性化され、他の抗原については活性化されない。
【0031】
上記免疫原性断片に対して特異的なCD8T細胞を確認するのに使用できる抗原特性の例には、実施例セクションにおいて例示されたような方法及び技術を用いて検出可能な体液性及び/又は細胞応答、並びに当業者によって特定可能な他の方法及び技術が含まれる。抗原特性を検出するための方法及びシステムの例には、本開示の意味において、ELISA、特には血清ELISA、及び実施例セクションにおいて例示された追加の方法が含まれる。T細胞マーカーを検出するのに適した技術の例には、適切なモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は検出を可能にする適当な分子で標識された抗原特異的HLA若しくはMHC五量体若しくは六量体の使用、並びに当業者によって特定可能な追加の方法及び技術が含まれる。アプローチの例では、T細胞マーカーが、実施例セクションに記載されるように、フローサイトメトリー分析によって確認される。
【0032】
ここに使用される「免疫原性断片」又は「抗原断片」の語は、抗原等の、免疫応答を発生することが可能な任意の長さのポリペプチドの一部を示す。抗原は、免疫系によって認識される分子である。従って、ApoB100の抗原断片は、抗原特性を提示するapoB−100の一部である。
【0033】
本開示の意味における「ApoB100の断片」の語は、ApoB100からの任意の長さの断片だけでなく、遺伝子組み換えによって生成された又は化学的に合成されたペプチドでもあって、ApoB100からの配列を含むものも含む。本開示の意味で「免疫原性断片」の語は、更に、変異断片(残基が置換、追加又は除去された断片を含む)、酸化誘導体、及び/又はMDA若しくは銅で処置したペプチド等のあらゆる断片の誘導体をも含み、それらは、元の断片の検出可能な抗原特性(例えば、特異的体液性及び/又は細胞応答)を維持する。
【0034】
第一ペプチド(例えば免疫原性断片)に関してここに使用される「誘導体」の語は、第一ペプチドと構造的に関連しており、第一ペプチドの機能的特性を維持しつつ第一ペプチドに存在しない特徴を導入する修飾によって第一ペプチドから誘導できる第二ペプチドを示す。従って、免疫原性断片又はその任意部分(例えばそのエピトープ)の誘導ペプチドは、通常、アミノ酸配列の修飾によって元の免疫原性断片又はその部分と異なるが、該アミノ酸配列は、元のペプチド又はその部分に存在しない追加の機能と関係していてもよいし、関係していなくてもよい。しかしながら、免疫原性断片又はその任意部分の誘導ペプチドは、免疫原性断片又はその部分に関連してここに記載される1種以上の免疫原性の活性を保有する。抗原特性は、免疫原性断片のために既に記載されているような方法及びシステム、並びに当業者によって特定可能な追加の方法及びシステムを用いて検証できる。典型的には、免疫原性断片の誘導体は、該免疫原性断片のエピトープを少なくとも1種含む。
【0035】
本開示の意味における「免疫原性の活性がある部分」の語は、特異的な免疫応答を誘発できる基準抗原のあらゆる部分を示す。免疫原性の活性がある部分の例は、免疫原性断片内の5個以上の残基によって典型的に形成されるエピトープである。一部の実施態様において、1種以上の断片内のエピトープは、重複することができる。
【0036】
免疫原性断片は、親和性又はエピトープタグとの融合、遊離の又は担体タンパク質に結合したオリゴペプチドの化学合成、或いはApoB−100ペプチドを発現するための当該技術分野において知られているあらゆる他の方法等の、組み換え技術によって発現できる。
【0037】
ApoB100の断片の例は、実施例セクションにおいて更に詳細に説明される配列番号1〜配列番号302のような配列表に記載された配列の一つを含むペプチドである。本開示の意味における免疫原性断片を確認するのに適した方法及びシステムは、WO02/080954に記載されており、参照することによってここに組み込まれる。追加の方法は、実施例セクションにおいて例示される(例えば、例1参照)。
【0038】
ここに使用される「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「ペプチド」の語は、2つ以上のアミノ酸モノマー及び/又はその類似体からなる有機ポリマーを示す。「ポリペプチド」の語には、全長タンパク質又はペプチド並びにその類似体及び断片を含むあらゆる長さのアミノ酸ポリマーが含まれる。3つ以上のアミノ酸のペプチドは、オリゴペプチドとも称される。ここに使用されるように、「アミノ酸」、「アミノ酸モノマー」又は「アミノ酸残基」の語は、非天然の側鎖を持つ合成アミノ酸を含み、そして、D及びL光学異性体の両方を含む20種のアミノ酸のいずれかを指す。「アミノ酸類似体」の語は、1つ以上の個別の原子が異なる原子、同位体と置換されたり又は異なる官能基と置換されたりするアミノ酸を指すが、別の面では、その天然アミノ酸類似体と同一である。
【0039】
一実施態様において、ApoB100の免疫原性断片は、アテローム性動脈硬化の縮小に関係している。特に、一部の実施態様において、ApoB100の免疫原性断片は、個体又は動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化の縮小に関係した免疫応答を生じる免疫原性断片である。これら実施態様の一部においては、アテローム性動脈硬化の縮小割合が、少なくとも20%、又は少なくとも30%〜50%又は40%〜80%である。実施例セクションについて言及すると、ここでは、本開示の実施態様が、約57.6%のアテローム性動脈硬化の縮小と関係した免疫原性断片p210に関して例示されている(例2参照)。
【0040】
一部の実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した免疫原性断片は、少なくとも1種のペプチドを含み、該ペプチドはそれぞれp1(配列番号1)、p2(配列番号2)、p10(配列番号10)、p11(配列番号11)、p25(配列番号25)、p30〜p34(配列番号30〜34)、p40(配列番号40)、p40(配列番号40)、p45(配列番号45)、p68(配列番号68)、p74(配列番号74)、p94(配列番号94)、p99(配列番号99)、p100(配列番号100)、p102(配列番号102)、p103(配列番号103)、p105(配列番号105)、p107(配列番号107)、p111(配列番号111)、p129(配列番号129)、p143(配列番号143)、p148(配列番号148)、p149(配列番号149)、p154(配列番号154)、p162(配列番号162)、p169(配列番号169)、p177(配列番号177)、p199(配列番号199)、p210(配列番号210)、p222(配列番号222)、p236(配列番号236)、p252(配列番号252)又はp301(配列番号301)を含む。
【0041】
一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、1種以上のペプチドを含み、該ペプチドはそれぞれp2(配列番号2)、p11(配列番号11)、p32(配列番号32)、p45(配列番号45)、p74(配列番号74)、p102(配列番号102)、p148(配列番号148)、p162(配列番号162)又はp210(配列番号210)を含む。
【0042】
一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、2種のペプチドを含み、該ペプチドはそれぞれp143(配列番号143)又はp210(配列番号210)を含む。一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、3種のペプチドを含み、該ペプチドはそれぞれp11(配列番号11)、p25(配列番号25)又はp74(配列番号74)の内の1種を含む。一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、5種のペプチドを含み、該ペプチドはそれぞれp99(配列番号99)、p100(配列番号100)、p102(配列番号102)、p103(配列番号103)及びp105(配列番号105)の内の1種を含む。
【0043】
一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、1種以上のペプチドを含み、該ペプチドはそれぞれp2(配列番号2)、p45(配列番号45)、p74(配列番号74)、p102(配列番号102)又はp210(配列番号210)を含む。
【0044】
一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、ヒトapoB−100のアミノ酸16〜35(p2;配列番号2)を含むペプチドを含む。
【0045】
一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、ヒトapoB−100のアミノ酸661〜680(p45;配列番号45)を含むペプチドを含む。
【0046】
一実施態様において、アテローム性動脈硬化の縮小に関係した1種以上の免疫原性断片は、ヒトapoB−100のアミノ酸3136〜3155(p210;配列番号210)を含むペプチドを含む。
【0047】
上記ペプチドのアテローム性動脈硬化の縮小に対する関係を示す典型的なデータは、国際出願WO02/080954に示されており、全体が参照することによりここに組み込まれる(特に表1、表2、表A及び表B参照)。特に、それらペプチド又はそれらの組み合わせの一部について、64.6%(p143及びp210)、59.6%(p11、p25及びp74)、56.8%(p129、p148及びp167)、p67.7(p2)、57.9%(p210)、55.2%(p301)、47.4%(p45)、31%(p1)の縮小百分率が検出された(全体が参照することによりここに組み込まれるWO/02080954、特には表B参照)。
【0048】
一部の実施態様において、ここに記載される適切な活性化CD8(+)T細胞は、CD8(+)T細胞を、ApoB100の1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、ある時間の間、該免疫原性断片に対して特異的なCD8(+)T細胞を得るための条件下で、接触させることにより活性化できる。
【0049】
一実施態様において、上記接触は、インビボで、個体に有効量の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分を投与することによって実行できる。一部の実施態様において、上記有効量は、動物モデルにおいて決定できる。一部の実施態様においては、上記投与の後に、当業者によって特定可能な方法に従って、活性化T細胞を個体(例えば血液又は他の液体サンプル)から単離する。
【0050】
インビボでT細胞を活性化させるのに有効な免疫原性断片の量は、活性化が行われる個体によって決まることになり、当業者によって特定可能である。例えば、一実施態様において、T細胞活性化は、約1〜約100μgの免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分の有効量で実行できる。一実施態様において、T細胞活性化は、約1〜約100mgの免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分の有効量で実行できる。追加の有効量は、活性化が行われる個体及び望まれる活性化を考慮して、当業者によって特定可能である。
【0051】
一実施態様において、上記接触は、インビトロで、T細胞を適当量の免疫原性断片又はその活性がある部分によって脈動させる等の適切な技術を用いて実行できる(例えば、全体が参照することによりここに組み込まれる(41)及び(42)参照)。
【0052】
インビトロでT細胞を活性化させるのに有効な免疫原性断片の量は、当業者によって特定可能である。例えば、一実施態様において、T細胞活性化は、約1〜約100μgの免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分の有効量で実行できる。
【0053】
一実施態様において、上記接触は、CD8(+)T細胞をCD8(+)T細胞活性化のエンハンサーと共に接触させることによって実行できる。
【0054】
「エンハンサー」及び「増強する」の語は、それがCD8T細胞に関係した分子に関連するため、免疫系の細胞の活性化を促進することによって免疫応答を変更する分子の能力を指す。適当なエンハンサーの選択は、免疫応答の活性化の制御を可能にすることができる。エンハンサーの例には、IL−2等のサイトカインが含まれる。ここに使用される「サイトカイン」の語は、免疫調節剤として作用し、当業者が特定可能であるようなインターロイキン及びインターフェロン等のタンパク質を含む細胞シグナル伝達分子を指す。適切なサイトカインの選択は、適当な条件下で、体液性又は細胞免疫応答の選択的誘導をもたらすことができる。
【0055】
一実施態様において、エンハンサーは、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン15(IL−15)、TGF−ベータ(TGF−β)、IL2−抗IL−2抗体複合体及び/又は本開示を読んだ際に当業者によって特定可能な追加のエンハンサーとすることができる。非特許文献38、非特許文献39及び非特許文献40について言及すると、それぞれはその全体が参照することによりここに組み込まれており、T細胞活性化に関係したエンハンサーの使用の例を記載している。
【0056】
特に、一部の実施態様において、上記増強は、個体における樹枝状細胞によってCD86の発現及び/又はIL12の分泌を低下させることにより行われる。
【0057】
幾つかの実施態様において、個体におけるアテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態の治療又は予防は、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的な活性化CD8(+)T細胞を個体中に増加させることによって実行できる。
【0058】
特に、幾つかの実施態様において、p210特異的CD8(+)又はここに記載される他の活性化CD8(+)T細胞の増加は、アテローム性動脈硬化巣における樹枝状細胞の減少と関連する。より具体的には、この特異的CD8(+)T細胞の増加が、配列KTTKQ SFDLS VKAQY KKNKH(配列番号210)を含むペプチドp210又はここに記載された個体におけるアテローム性動脈硬化の縮小に関係した他の免疫原性断片の有効量を個体に投与することによって実行できる。
【0059】
一実施態様において、上記増加は、有効量の活性化CD8(+)T細胞を個体に投与することによって実行できる。
【0060】
一実施態様において、上記有効量は、約500,000〜2,000,000細胞の間に含まれることが期待される。一実施態様において、上記有効量は、約750,000〜約1,500,000細胞の間に含まれることが期待される。一実施態様において、上記有効量は、約1,000,000細胞であることが期待される。
【0061】
特に、一実施態様において、約1,000,000細胞の投与は、アテローム性動脈硬化の治療及び予防の両方をもたらすことが期待される。投与は、処置されるべき個体の状態及び望ましい効果に基づき特定される用量及び予定に従って行われることが期待される。例えば、予防を対象とする投与では、有効量の活性化CD8(+)T細胞の投与が、個体の状態に基づいた所望の免疫化を得るため、ここに記載される活性化CD8(+)T細胞の単回投与又は複数回投与(例えば3回以上の投与、特には6回以下の投与)を間隔をおいて行うことによって実行できる。特に、複数回投与は、持続効果が望まれる場合にいつでも実行できる。
【0062】
ここに記載されるCD8(+)T細胞の投与は、当業者によって特定可能な個体を免疫化するための方法に従って実行できる。一実施態様において、上記投与は、非経口投与によって実行できる。非経口投与は、消化管以外の経路によって物質が与えられる全身投与経路であり、限定されるものではないが、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与、及び膀胱内注入が含まれる。特に、一実施態様において、上記投与は、静脈内投与によって実行できる。
【0063】
一実施態様において、投与は、活性化CD8(+)T細胞を、1回で、典型的には静脈内経路を通して、免疫効果の所望の持続時間に応じて1回又は複数回で、投与することによって実行できる。
【0064】
一実施態様において、CD8(+)T細胞の投与は、ApoB100の1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分を単独で組み合わせて又はこれらのいずれかをIL2等のCD8(+)T細胞エンハンサーと共に組み合わせて行われる場合、特に有効であることが期待される。特に、一部の実施態様において、上記投与はまた、ここに記載される活性化CD8(+)T細胞と、ここに記載されるApoB100の免疫原性断片のいずれかとの任意の組み合わせを、場合によりここに記載されるエンハンサーと組み合わせて投与することによっても実行できる。
【0065】
一実施態様において、個体中の活性化CD8(+)T細胞を増加させると、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的な活性化CD8(+)T細胞は、プラーク、樹枝状細胞含量及び/又はマクロファージ含量の減少をもたらすことが期待される。指導目的のためにだけ提供され、限定されることを目的としない考えられる機構によれば、動脈壁中での危険信号(酸化LDL、熱ショックタンパク質等)は、DC又は他のAPCを活性化することができ、それらは、アテローム性動脈硬化巣の成長又は不安定化に導く免疫介在性の炎症カスケード及びメディエーターのその後の活性化によってエフェクターT−細胞を誘発する(非特許文献7及び8参照)。動脈壁中へのかかるDC補充の減少は、アテローム性動脈硬化の減少と関係付けることができる。
【0066】
また、一部の実施態様において、上記増強は、寛容原性樹枝状細胞を発生させるように個体における樹枝状細胞の表現型を調節することによって行われる。加えて、幾つかの実施態様において、アテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態を提示する個体は、個体におけるT制御性細胞集団を増強させることによって治療できる。
【0067】
一実施態様において、CD8(+)T細胞は、アテローム性動脈硬化又はそれに関係した状態の治療及び/又は予防のための治療薬を確認する方法において使用できる。上記方法は、CD8(+)T細胞を、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、ある時間の間、活性化CD8(+)T細胞を提供するための条件下で、接触させることを含み、該活性化CD8(+)T細胞は、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的である。上記方法は、更に、活性化CD8(+)T細胞を動物モデルに投与することと、該動物モデル中でのアテローム性動脈硬化の縮小を検出することとを含む。
【0068】
ここに使用される「動物モデル」の語は、ヒトの疾患の調査及び研究期間中に、その過程中にあるヒトが実際に害を受けるという副次的なリスクもなく、ヒトの疾患を更に理解する目的で使用される非ヒトの生存動物を示す。選択される動物は、通常、必要に応じて人間生理学と似た方法で疾患又はその治療と反応させるために、ヒトに対する決定された分類学的同等性を満たすことになる。ヒトの疾患についての多くの薬剤、治療及び治癒は、動物モデルの使用によって開発されてきた。また、開発過程の調査及び研究において特異的な分類群を表す動物モデルは、モデル生物と称される。
【0069】
一実施態様において、動物モデル中でのアテローム性動脈硬化の縮小の検出は、実施例セクションで説明されるような免疫組織化学技術及び組織形態計測技術によって実行できる。ヒト中でのアテローム性動脈硬化の縮小の検出は、頸動脈内膜厚さの超音波測定、頸動脈アテローム性動脈硬化のMRIスキャン、冠状動脈又は末梢動脈循環のCT血管造影等の画像技術によって実行できる。
【0070】
免疫原性断片及び/又はその免疫原性の活性がある部分並びにそれによって活性化されたCD8(+)T細胞は、動物モデル中での投与を受けてアテローム性動脈硬化の縮小に関係したものであり、アテローム性動脈硬化の治療又は予防用の治療薬として選択できる。特に、一部の実施態様においては、免疫原性断片若しくはその免疫原性部分又はそれにより活性化されたCD8(+)T細胞は、少なくとも20%のアテローム性動脈硬化の縮小に関係があり、治療薬として選択できる。一実施態様において、縮小割合は、約30%〜50%又は約40%〜80%になることがある。
【0071】
ここに開示されるように、ここに記載されるCD8(+)T細胞、免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分、及びエンハンサーは、アテローム性動脈硬化又はそれに関係した状態を治療及び/又は予防するためのシステムの一部として、或いは、アテローム性動脈硬化又はそれに関係した状態の治療及び/又は予防における治療薬を確認するためのシステムの一部として提供できる。
【0072】
一部の実施態様において、上記システムは、個体中で活性化したCD8(+)T細胞を増加させるのに適した1種以上の薬剤の内の2種以上及び/又は増加したCD8(+)T細胞を個体において検出するのに適した1種以上の薬剤を含む。
【0073】
一部の実施態様において、上記システムは、ApoB100の免疫原性断片に対して特異的な活性化CD8(+)T細胞を個体において増加させるのに適した1種以上の薬剤の内の2種以上と、減少したプラーク、樹枝状細胞含量及び/又はマクロファージ含量を個体において検出するのに適した1種以上の薬剤を含む。
【0074】
上記システムは、複数の部品からなるキットの形態において提供できる。複数の部品からなるキットにおいて、ここに記載されるCD8(+)T細胞、及びここに記載される方法を行うための他の試薬は、独立して、キット中に含まれることができる。ここに記載されるCD8(+)T細胞は、1種以上の組成物中に含まれてもよく、ここに記載される各CD8(+)T細胞は、適切な媒体と一緒に組成物中にあってもよい。
【0075】
追加の成分としては、単独又は組み合わせでのここに記載される免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分、エンハンサー(例えば、IL2、IL15、IL2−抗IL2抗体複合物)、アジュバント(例えば、アルミニウム塩、一般にはアルミニウムアジュバント)、ここに記載されるCD8(+)T細胞を検出することのできる試薬、標識分子、特には標識抗体、標識、微小流体チップ、参照基準等のプラークの減少を検出することのできる試薬、及び本開示を読んだ際に当業者によって特定可能な追加の成分の内のいずれかを含むことができる。
【0076】
複合体又は分子の成分としてここに使用される「標識」及び「標識分子」の語は、検出可能な分子を指し、限定されるものではないが、放射性同位体、フルオロフォア、化学発光色素、発色団、酵素、酵素基質、酵素補助因子、酵素阻害剤、色素、金属イオン、ナノ粒子、金属ゾル、リガンド(ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン又はハプテン等)等が挙げられる。「フルオロフォア」の語は、検出可能な画像において蛍光を示すことが可能な物質又はその一部を指す。結果として、ここに使用される「標識信号」との表現は、標識の検出を可能にする標識から放出される信号を示し、限定されるものではないが、放射線、蛍光、化学発光、酵素反応の結果の化合物の生成等が挙げられる。
【0077】
一実施態様において、上記システムは、(例えば、CD8(+)T細胞を生成するために)個体においてCD8(+)T細胞を増加させることに向けられており、そして、上記システムは、個体において活性化したCD8(+)T細胞を増加させるのに適した1種以上の薬剤の内の2種以上及び/又は個体において増加したCD8(+)T細胞を検出するのに適した1種以上の薬剤を含む。
【0078】
一実施態様において、上記システムは、プラーク、樹枝状細胞含量及び/又はマクロファージ含量を(例えば治療のための個体中で又は生物学的調査のための動物モデル中で)減少させることに向けられており、そして、上記システムは、個体においてApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的な活性化CD8(+)T細胞を増加させるのに適した1種以上の薬剤の内の2種以上並びに個体においてプラーク、樹枝状細胞含量及び/又はマクロファージ含量の減少を検出するのに適した1種以上の薬剤を含む。
【0079】
一部の実施態様において、ここに記載されるCD8(+)T細胞の検出は、蛍光に基づく読み出しを経由して行うことができ、ここで、その標識抗体は、フルオロフォアで標識されており、それは、包括的ではないものの、小分子色素、タンパク質発色団、量子ドット、及び金ナノ粒子を含む。追加の技術は、本開示を読んだ際に当業者によって特定可能であり、更に詳細には論じない。
【0080】
特に、上記キットの要素は、ここに記載される方法を行うため、適当な指示及び他の必要な試薬を備えることができる。上記キットは、通常、別個の容器に組成物を含有することになる。指示、例えば書面又は音声による指示は、分析を行うため、テープ又はCD−ROM等の紙又は電子支持体上にあり、通常、キット中に含まれることになる。また、上記キットは、使用される特定の方法に応じて、他の包装試薬及び材料(例えば、洗浄緩衝剤等)を含有することができる。
【0081】
一部の実施態様において、ここに記載されるCD8(+)T細胞は、適切な媒体と共に組成物中に含まれることができる。
【0082】
ここに使用される「媒体」の語は、活性成分として組成物中に含まれるT細胞用の溶媒、キャリヤー、結合剤又は希釈剤として通常作用する各種媒体のいずれかを示す。
【0083】
上記組成物が個体に投与される一部の実施態様において、該組成物は、抗炎症性医薬組成物になることができ、T細胞及び薬学的に許容できる媒体を含む。
【0084】
特に、一部の実施態様においては、ここに記載されるCD8(+)T細胞の少なくとも1種を、適合性のある薬学的に許容できる媒体の1種以上と組み合わせて、特には薬学的に許容できる希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含有する医薬組成物が開示される。これら医薬組成物において、ここに記載されるCD8(+)T細胞は、個体のある状態の治療又は予防用の活性成分として投与できる。
【0085】
ここに使用される「賦形剤」の語は、薬剤の活性成分用のキャリヤーとして使用される不活性物質を示す。ここに開示される医薬組成物に適した賦形剤には、ここに記載されるCD8(+)T細胞を吸収する個体の体の能力を増強するあらゆる物質が含まれる。また、適切な賦形剤には、簡便で正確な用量を可能にするためにここに記載されるCD8(+)T細胞を含む製剤を大きくするのに使用できるあらゆる物質も含まれる。その単一用量での使用に加えて、賦形剤は、製造過程においても使用でき、ここに記載されるCD8(+)T細胞の取り扱いの助けとなる。投与経路及び薬剤の形態に応じて、異なる賦形剤を使用することができる。賦形剤の例としては、限定されるものではないが、付着防止剤、結合剤、被覆剤、崩壊剤、充填剤、香味料(甘味料等)及び着色剤、流動促進剤、潤滑剤、防腐剤、吸着剤が挙げられる。
【0086】
ここに使用される「希釈剤」の語は、組成物の活性成分を希釈するか又は運ぶために供される希釈剤を示す。適切な希釈剤には、医薬製剤の粘度を低減できるあらゆる物質が含まれる。
【0087】
一実施態様において、ここに記載される組成物は、更に、アジュバントを含むことができる。ここに記載される「アジュバント」の語は、免疫系を刺激でき、ワクチンに対する応答を増大でき、それ自体には特異的な抗原効果がない薬剤を示す。「アジュバント」の単語は、ラテン語のadjuvareに由来し、役立つこと又は助けることを意味する。典型的に、免疫学的アジュバントは、特異的なワクチン抗原と組み合わせて使用する場合に抗原特異的免疫応答を加速、延長又は増強させるように作用するあらゆる物質と定義される。
【0088】
本開示の更なる利点及び特徴は、説明の目的のみのために実験セクションを参照し、以下に示す詳細な開示からより明らかになる。
【実施例】
【0089】
ここに記載される方法及びシステムを以下に示す例において更に説明する。該例は、説明のために提供され、限定することを目的としていない。
【0090】
具体的に、以下に示す例は、CD8(+)T細胞の例と、関連した活性化の方法及びアテローム性動脈硬化を治療又は予防するための使用を説明する。より詳細には、免疫原性断片p210を用いて行われたCD8(+)T細胞の活性化、並びにそのようにして得られたCD8(+)T細胞のマウスモデルにおけるアテローム性動脈硬化を治療及び予防するための使用を示す。
【0091】
当業者は、本開示の実施態様に従いインビボ又はインビトロで皮下に投与された又は他の投与経路を用いた、追加の免疫原性断片に、本セクションにおいて詳細に説明される特徴を適合させるため、適用性及び必要な変更を正しく理解するであろう。
【0092】
他に示されていない限り、以下に示す材料及び方法は、以下に報告される例に従ったものである。
【0093】
免疫化のためのペプチドの選択及びその調製
ヒトapoB−100の確立及び選別は報告されている(8)。出願人のパイロット実験及び事前報告(非特許文献9及び10参照)に基づき、出願人は、候補免疫原としてペプチド210(p210、KTTKQ SFDLS VKAQY KKNKH−配列番号210)を選択した。天然p210ペプチド(Euro−Diagnostica AB,スウェーデン)は、先に報告された方法を用い、キャリヤーとしての陽イオン性ウシ血清アルブミン(cBSA)に結合させた(非特許文献3及び4参照)。アジュバントとしてミョウバンを用い、体積比1:1のペプチド/cBSA接合体と混合した。ペプチドの結合及びミョウバンとの混合は、それぞれの免疫化前に新しく準備された。
【0094】
免疫化プロトコル
雄apoE(−/−)マウス(Jackson Laboratories)を、米国実験動物管理公認協会によって認定されている動物施設に収容し、水及び食物の利用が無制限の12時間昼/夜サイクルを続けた。Cedars−Sinai医療センターの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)は、その実験プロトコルを承認した。パイロット実験では、用量100μgを用いたp210の免疫化が、用量25又は50μgと比べて、最適な粥状低下を与えた。それ故、その後の全実験に100μgの用量を用いた。マウスは、通常の食事で維持され、年齢6〜7週で肩甲骨間の背部領域に皮下の一次免疫を受け、次に、年齢9週及び12週で追加免疫が行われた。最後の追加免疫から1週間後、食事を高コレステロール食事に切り替え(TD88137、Harlan−Teklad)、年齢25週での安楽死まで続けた。同一の免疫化時点でPBS又はcBSA/ミョウバンを受けたマウスの個々のグループは、コントロールとした。p210に対する免疫応答を評価するため、一部のマウスを年齢8又は13週で犠牲にした。
【0095】
組織の収集及び準備
安楽死時点でその心臓を収集し、クリオ・セクションのため、OCTコンパウンド(Tissue−Tek)に埋め込んだ。大動脈全体を清潔にし、加工し、オイル・レッド・Oによって染色し、コンピューターを使った組織形態計測により、正面からのアテローム性動脈硬化の範囲を評価した(非特許文献3及び4参照)。
【0096】
免疫組織化学及び組織形態計測
大動脈洞からの部分をMOMA−2(Serotec)又はCD11c(eBioscience)抗体で染色し、標準的なプロトコルを用いてマクロファージ又は樹枝状細胞を免疫組織化学的に確認した。プラークサイズのためのオイル・レッド・O染色は、標準的なプロトコルを用いて行われた。コンピューターを使ったマクロファージ分析を行い、先に記載されるように組織形態計測を評価した(非特許文献3及び4参照)。
【0097】
血清ELISA
平底96ウェルポリスチレンプレート(MaxiSorp、ドイツ)は、それぞれ100μl(20μg/ml)のp210、KLH、TNP−KLH(Biosearch Technologies T−5060)又はBSA(IgGに対して2μg/ml、IgMに対して10μg/ml)を用いて、4℃で一晩のインキュベーションによってプレコートされ、標準的なプロトコルを用いて抗体レベルを評価した。被覆濃度は、パイロット実験において最適化された。ヤギ抗マウスHRP−IgG(Pierce31437)又はIgM(Southern Biotech)を検出抗体として用い、その結合した抗体を基質としてのABTS(Southern Biotech)中での発現によって検出し、光学密度値を405nmにて記録した。
【0098】
フローサイトメトリー分析
フローサイトメトリー分析は、標準的なプロトコルによって、以下の表1に記載の抗体及びFACScan(Becton Dickinson)又はCyAn ADP分析器(Beckman Coulter)を用いて行われた。細胞内サイトカイン染色については、細胞が染色手順を受ける前に、2時間培養した細胞にブレフェルジンA(3μg/ml)を加えた。細胞内分子の染色のため、細胞膜を透過処理した。
【0099】
【表1−1】

【0100】
【表1−2】

【0101】
養子移植実験
規則正しい食事の雄apoE(−/−)マウスは、先の段落に記載されるように、皮下免疫化を受け、ドナーとして年齢13週時に犠牲にされた。同一処理グループの脾細胞を細胞の単離前に貯めておいた。ドナーCD8(+)T−細胞、CD4(+)CD25(+)T−細胞又はB−細胞を、製造業者のプロトコルに従い、Dynabeads FlowComp(Invitrogen)を用いて、単離した。CD4(+)T−細胞は、脾細胞から負の選択がなされ、次に、CD4(+)CD25(+)細胞の正の選択が行われた。B細胞は、負の単離がなされ、CD8(+)T−細胞は、最初に正の単離がなされ、ビーズから放出された。貯蔵されたCD8(+)T−細胞、CD4(+)CD25(+)T−細胞及びB−細胞の純度は、それぞれ90%、80%及び70%であった。次いで、単離したCD8(+)T−細胞(1×10細胞/マウス)、CD4(+)CD25(+)T−細胞(1×10又は3×10細胞/マウス)、又はB−細胞(2×10細胞/マウス)を、尾静脈注射によって、年齢6〜7週の未処置雄apoE(−/−)受容マウスに養子移植した。血管細胞学の既刊文献では、養子移植したリンパ球の数が、大幅に変化した。B−細胞移植では、2つの事前報告に基づき、2×10細胞/マウスの数を選択した(非特許文献11及び12参照)。CD4(+)CD25(+)T−細胞移植では、移植細胞数は、既刊文献において、5×10細胞/マウス〜1×10細胞/マウスの範囲に及んだ(13、14及び15参照)。それ故、出願人は、我々の実験のため、2つの中間の用量を選ぶ。CD8(+)T−細胞に関しては、自己免疫疾患の分野からの報告に基づき、1×10細胞を選んだ(非特許文献16参照)。出願人は、未処理の又は抗原刺激したCD4(+)T−細胞がアテローム生成に促進的であることが知られているため、CD4(+)T−細胞を養子移植しなかった(非特許文献17及び18参照)。受容マウスに、年齢13週まで、通常の食事を与え、年齢25週での安楽死まで、食事を高コレステロールの食事に切り替えた。大動脈を収集し、アテローム性動脈硬化の範囲を評価した。
【0102】
KLH又はトリニトロフェニル−リポ多糖(TNP−LPS)免疫化
また、出願人は、p210免疫化がその後の他の抗原との免疫化の有効性に影響するかどうかを試験した。KLHを原型のT−細胞依存性抗原として、TNPをT−細胞非依存性抗原として選んだ。規則正しい食事の雄C57/BL6マウスは、apoE(−/−)マウスについて先の段落に記載されるように、p210接合体又はアジュバントコントロールを用いた皮下免疫化を受けた。年齢13及び15週にて、マウスを、p210部位から離れた注入部位で(アジュバントとしてのミョウバンと共に)100μgKLHにより皮下免疫化するか、又は100μgTNP−LPS(Sigma)を腹腔内に注射した。マウスの個々のグループにおいて、KLH又はTNP免疫化を行った。安楽死時点で、後眼窩穿刺によって血液を集めた(年齢16週)。
【0103】
BM由来樹枝状細胞(BMDC)のインビトロ発生
BMDCをGM−CSFにより発生させるための方法を、修飾を用いた先の刊行物から採用した(非特許文献19参照)。簡潔に、雄apoE−/−マウスの大腿骨及び脛骨からの骨髄細胞を、10ng/mlのGM−CSF(R&D Systems)及び10ng/mlのIL−4(Invitrogen)を含有する20mlの完全RPMI−1640を備えた10cm培養皿(Falcon)中に蒔いた。細胞を洗浄し、3日目及び5日目に、その古い培地を除去し、次いで、GM−CSF及びIL−4を備えた新鮮な培地で補充することにより摂食させた。8日目に、未成熟DCは、顕微鏡下で非接着性細胞として現れ、活発なピペット操作によって収集し、1.5mlの培地中に2×10DCを備えた新しい培養皿中に継代培養した。
【0104】
インビトロでのCD8+T−細胞の単離及び樹枝状細胞との共培養
CD8(+)T−細胞用のドナーマウス[雄apoE(−/−)マウス]を、先の段落中に記載された予定に従って、PBS、cBSA/ミョウバン、又はcBSA/ミョウバン/P210により免疫化し、年齢13歳にて脾細胞を収集した。CD8(+)T−細胞は、製造業者のプロトコルによって、CD8選択Dynabeadsキット(Invitrogen)を用いて負の単離がなされた。次いで、選択されたCD8(+)T−細胞を、DCと共に、CD8:DC比3:1で、共培養させた。一連のパイロット研究は、この分析に最適なCD8:DC比を決定するために行われた。4時間の共培養後、細胞を集め、LSR IIフロー血球計算器(BD Biosciences)によるCD11c及び7−AADのフローサイトメトリー決定のために加工し、Summit V4.3ソフトウェアを用いてデータを分析した。共培養中におけるCD8(+)T−細胞なしでの樹枝状細胞死をベースラインとして用い、細胞の特異的な溶解の割合を、先に記載された方法を用いて、求めた(非特許文献20参照)。
【0105】
統計
データを平均値±標準偏差で示す。各グループ中での動物の数を文章又は図面の記載において記載する。データをANOVAにより分析し、次いで、ニューマン−クルーズグループ比較、又は適切な場合にはt−検定を行った。P<0.05は、統計的に有意であると見なされ、各図中の水平バーは、グループ間の統計的に有意な差を示した。
【0106】
(実施例1)
ApoB100の免疫原性断片
LDLに見られる単一タンパク質に焦点を合わせることによって、特異的な免疫原性エピトープ、アポリポタンパク質B−100(apoB)を特徴付けた。302のペプチドからなり、長さが20アミノ酸残基で、ヒトapoBの完全な4563のアミノ酸配列を網羅するペプチドライブラリーを作った。ペプチドは、全ての配列をカバーするために切断点にて5個のアミノ酸を重複させることによって作られた。ペプチドは、以下の表2に示されるように、apoBのN末端から始めて1〜302の番号が付けられた。
【0107】
【表2−1】

【0108】
【表2−2】

【0109】
【表2−3】

【0110】
【表2−4】

【0111】
【表2−5】

【0112】
【表2−6】

【0113】
【表2−7】

【0114】
【表2−8】

【0115】
【表2−9】

【0116】
【表2−10】

【0117】
【表2−11】

【0118】
【表2−12】

【0119】
【表2−13】

【0120】
ApoB100の完全長配列は、その全体が参照することによってここに組み込まれる非特許文献43等の各種出版物において見出すことができる(特には図1参照)。
【0121】
(実施例2)
p210免疫化の粥状保護効果
p210による免疫化は、PBS及びcBSA/ミョウバングループと比べて、アテローム性大動脈硬化をそれぞれ57%及び50%縮小し(図1A)、循環コレステロールレベル又は体重には影響がなかった(表3)。
【0122】
【表3】

【0123】
p210/cBSA/ミョウバングループからの大動脈洞プラークは、有意に減少したマクロファージ及びDC免疫反応性を含有した。それぞれは、MOMA−2及びCD11c免疫染色によって評価された(図1B)。
【0124】
(実施例3)
p210免疫化で誘発された免疫応答の特徴付け
DCは、細胞性及び体液性免疫応答の両方に対して上流の主要な細胞型であるため、出願人は、それら細胞が免疫化戦略の影響を受けるかどうかを決定した。皮下免疫化部位からの細胞を、一次免疫化の1週間後に、フローサイトメトリー分析のため、単離した。PBSグループは、PBS注入を受けるマウスがその注入部位での膨張又は細胞蓄積を発現しなかったため、この分析に含めなくてもよかった。
【0125】
cBSA/ミョウバングループに比べて、p210/cBSA/ミョウバングループは、免疫化部位にて、CD11c(+)及びCD11c(+)CD86(+)細胞が有意に少なかった(図2A及び2B)。3回目の免疫化の1週間後にフローサイトメトリーをLN細胞に関して行った場合、CD11c(+)CD86(+)細胞もまた、cBSA/ミョウバングループと比較して有意に減少した(図2C)。
【0126】
次に、出願人は、抗体応答を評価し、p210に対する体液性免疫応答を明確にした。免疫化前に、3グループのマウスはすべてp210に対するIgG力価が低いレベルであった。安楽死時点では、PBSグループの場合、p210に対するIgG力価が低いままであったが、cBSA/ミョウバングループでは有意に増加した。p210/cBSA/ミョウバンによる免疫化は、PBSグループと比べて、p210IgG力価の増加をもたらしたが、cBSA/ミョウバングループと比べて有意に低減した(図3A)。p210IgG応答と対照的に、全てのグループでp210IgM力価が有意に増加し(図3B)、p210に対する内因性免疫応答を示唆した。
【0127】
IL−2Rα(CD25)は、明確なリンパ球活性化マーカーである。そこで、出願人は、一次免疫化の1週間後に、マウスの浅頸及び腋窩リンパ節(LN)からのCD4(+)又はCD8(+)T−細胞上でのCD25の発現を分析し、T−細胞免疫応答を評価した。リンパ節中のCD8(+)CD25(+)T−細胞集団は、p210/cBSA/ミョウバングループにおける場合、PBS又はcBSA/ミョウバングループと比較して、有意に高かったが(図4A)、一方、リンパ節中のCD4(+)CD25(+)T−細胞は、3つのグループの中で差異がなかった(図4B)。
【0128】
p210/cBSA/ミョウバングループは、PBS又はcBSA/ミョウバングループと比較して、脾臓CD8(+)CD25(+)IL−10(+)T−細胞の集団が有意に大きかったが(図4C)、一方、3つのグループの中では、脾臓CD8(+)CD25(+)IL12(+)T−細胞に差異がなかった(図4D)。脾臓CD4(+)CD25(+)IL−10(+)T−細胞集団は、cBSA/ミョウバングループで有意に増大した。しかしながら、この増大した応答は、p210/cBSA/ミョウバン免疫化によって有意に減弱され(図4E);一方、脾臓CD4(+)CD25(+)IL12(+)T−細胞は、3つのグループで差異がなかった(図4F)。
【0129】
(実施例4)
p210免疫化マウスから未処理受容体へのCD8(+)T−細胞の養子移植は、p210免疫化の粥状保護効果を再現する
PBS、cBSA/ミョウバン又はp210/cBSA/ミョウバングループからのドナーCD8(+)T−細胞は、年齢6〜7週で未免疫の受容apoE(−/−)マウスに養子移植された。安楽死時点では、p210/cBSA/ミョウバングループからのCD8(+)T−細胞が注入された受容マウスが、PBS又はcBSA/ミョウバングループからのCD8(+)T−細胞が注入された受容マウスと比較して、有意に小さいアテローム性動脈硬化症を発現した(図5A)。
【0130】
この大動脈病変の縮小は、脾臓CD11c(+)DCの減少と関連しており(PBSグループ:4.3±1.7%;cBSA/ミョウバングループ:3.4±0.3%;p210/cBSA/ミョウバングループ:1.5±0.3%;各グループn=5、p<0.05 ANOVAによるPBS又はcBSA/ミョウバングループに対するp210/cBSA/ミョウバングループ)、3つのグループの中で、全コレステロールの循環レベルに差異はなかった(PBSグループ:1083±296mg/dl;cBSA/ミョウバングループ:975±401mg/dl;p210/cBSA/ミョウバングループ:1098±379mg/dl)。
【0131】
p210免疫化ドナーマウスの脾臓から単離したB細胞の養子移植は、他のドナーからB細胞を受けたマウスと比較して、受容マウスのアテローム性動脈硬化に影響を与えなかった(図5B)。
【0132】
皮下のp210免疫化によって誘発される可能性がある粥状保護メディエーターとしてCD4(+)CD25(+)T−細胞を除外するため、出願人は、未処理受容apoE−/−マウス中にCD4(+)CD25(+)T−細胞を1×10細胞/マウスの用量で養子移植した。3つのグループのCD4(+)CD25(+)T−細胞受容体の中で病変の大きさに差異はなかった(図5C)。3×10細胞/マウスのより高い数のCD4(+)CD25(+)T−細胞の移植は、3つの受容体グループで病変の大きさを減少しなかった(図5D)。
【0133】
(実施例5)
インビトロでの樹枝状細胞に対するp210免疫化マウスからのCD8(+)T細胞の細胞溶解活性の増大
p210免疫化が免疫化部位及びアテローム性動脈硬化巣中におけるDCを低減し、p210免疫化ドナーからのCD8(+)T−細胞の養子移植が受容体中の脾臓DCを減少させたという観察を鑑みて、出願人は、DCがCD8(+)T−細胞の標的の可能性があると仮定した。
【0134】
これをテストするため、出願人は、各種免疫化グループからのCD8(+)T−細胞と共に、骨髄由来DCを共培養した。p210免疫化マウスからのCD8(+)T−細胞は、PBS又はBSA/ミョウバングループからのものと比較して、DC死の割合が有意に増加した(図6)。このCD8(+)T−細胞の増大した細胞溶解性機能は、グランザイムBの発現の増加と関係があるが、パーフォリンとは関係がなかった(図7)。
【0135】
(実施例6)
p210による免疫化は、他のT−細胞依存性又は非依存性抗原に対する適応性免疫応答に影響を与えない
p210免疫化がCD11c(+)DCを低減し、p210に対する適応性IgG応答を低減したという観察を鑑みて、出願人は、次に、このようなp210免疫化によるDCの修飾が他の抗原に対して宿主免疫応答を変えるかどうかをテストした。
【0136】
出願人は、まず、先のセクションに記載されるように、p210を用いてマウスを免疫化し、次いで、2つの別個の皮下KLH免疫化又はTNP−LPSの腹腔内注射を行った。個々の免疫化の有効性のためにサロゲートとしてKLH−又はTNP−IgG力価を用い、出願人は、p210免疫化マウスとPBS又はcBSA/ミョウバングループのマウスからの力価の間で、KLH−又はTNP−IgG力価の差異がないことが分かった(図8)。
【0137】
追加の例は、US仮S/N61/261,331、特に前述の仮の付属書類Aに記載されており、その全体がここに組み込まれる。要約すれば、幾つかの実施態様において、免疫賦活性T細胞、組成物、方法及びシステムが、アテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態を個体において治療及び/又は予防するために記載されている。
【0138】
先に説明した例は、本開示のT細胞、組成物、システム及び方法の実施態様をどのように作り、どのように使用するかの完全な開示及び説明を当業者に与えるために提供されており、発明者がそれら開示と見なすものの範囲を限定することを目的としていない。当業者に明らかな開示を実施するために上述した形態の変更は、特許請求の範囲内にあることを意図する。本明細書で述べた全ての特許、特許出願及び出版物は、本開示が関連する当業者のレベルを示す。この開示に引用された全ての参考文献は、各参考文献全体が個々に参照されることにより組み込まれた場合と同一の範囲にまで、参照することにより組み込まれる。
【0139】
背景、概要、詳細な説明及び実施例において引用された各文献(特許、特許出願、学術論文、要約書、実験マニュアル、本又は他の開示を含む)の全開示が、参照することにより、ここに組み込まれる。
【0140】
更に、コンピューター可読の形態でここに提出された配列表のコピーは、本記載の一部を形成し、その全体が参照することによりここに組み込まれる。
【0141】
本開示は、特定の組成物又は生体系に限定されず、当然に変わり得ることが理解される。また、ここに使用された専門用語は、特定の実施態様のみを説明するためのものであり、限定することを目的としていないことが理解される。この明細書及び特許請求の範囲に使用されるように、「a」、「an」及び「the」の単数形は、その内容が別に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。「複数(plurality)」の語は、その内容が別に明確に指示しない限り、2つ以上の指示対象を含む。別段の定義がない限り、ここに使用される全ての技術的及び科学的用語は、本開示が関連する当業者によって通常理解されるものと同一の意味を有する。
【0142】
ここに記載されるものと類似の又は同等な方法及び材料は、実施に際して、本開示の物、方法及びシステムのテストのために使用できるが、適当な例示材料及び方法が例としてここに記載されている。
【0143】
本開示の多くの実施態様を説明した。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得ることを理解する。従って、他の実施態様は、特許請求の範囲の範囲内にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0144】
【非特許文献1】Shah, P. K., K. Y. Chyu, G. N. Fredrikson, and J. Nilsson. 2005. Immunomodulation of atherosclerosis with a vaccine. Nat. Clin. Pract. Cardiovasc. Med. 2:639-646
【非特許文献2】Hansson, G. K., P. Libby, U. Schonbeck, and Z. Q. Yan. 2002. Innate and adaptive immunity in the pathogenesis of atherosclerosis. Circ. Res. 91:281-291
【非特許文献3】Chyu, K. Y., X. Zhao, O. S. Reyes, S. M. Babbidge, P. C. Dimayuga, J. Yano, B. Cercek, G. N. Fredrikson, J. Nilsson, and P. K. Shah. 2005. Immunization using an Apo B-100 related epitope reduces atherosclerosis and plaque inflammation in hypercholesterolemic apo E (-/-) mice. Biochem. Biophys. Res. Commun. 338: 1982-1989
【非特許文献4】Fredrikson, G. N., I. Soderberg, M. Lindholm, P. Dimayuga, K. Y. Chyu, P. K. Shah, and J. Nilsson. 2003. Inhibition of Atherosclerosis in ApoE-Null Mice by Immunization with ApoB-100 Peptide Sequences. Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 23:879-884
【非特許文献5】Fredrikson, G. N., L. Andersson, I. Soderberg, P. Dimayuga, K. Y. Chyu, P. K. Shah, and J. Nilsson. 2005. Atheroprotective immunization with MDA-modified apo B-100 peptide sequences is associated with activation of Th2 specific antibody expression. Autoimmunity 38: 171-179
【非特許文献6】Fredrikson, G. N., H. Bjorkbacka, I. Soderberg, I. Ljungcrantz, and J. Nilsson. 2008. Treatment with apo B peptide vaccines inhibits atherosclerosis in human apo B-100 transgenic mice without inducing an increase in peptide- specific antibodies. J. Intern. Med. l-8
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【非特許文献8】Fredrikson, G. N., B. Hedblad, G. Berglund, R. Aim, M. Ares, B. Cercek, K. Y. Chyu, P. K. Shah, and J. Nilsson. 2003. Identification of Immune Responses Against Aldehyde-Modified Peptide Sequences in ApoB Associated With Cardiovascular Disease. Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 23:872-878
【非特許文献9】Schiopu, A., J. Bengtsson, I. Soderberg, S. Janciauskiene, S. Lindgren, M. P. Ares, P. K. Shah, R. Carlsson, J. Nilsson, and G. N. Fredrikson. 2004. Recombinant Human Antibodies Against Aldehyde-Modified Apolipoprotein B-100 Peptide Sequences Inhibit Atherosclerosis. Circulation 2004. 110:2047-2052
【非特許文献10】Sjogren, P., G. N. Fredrikson, A. Samnegard, C. G. Ericsson, J. Ohrvik, R. M. Fisher, J. Nilsson, and A. Hamsten. 2008. High plasma concentrations of autoantibodies against native peptide 210 of apoB-100 are related to less coronary atherosclerosis and lower risk of myocardial infarction. Eur. Heart J. 29:2218-2226
【非特許文献11】Dimayuga, P., B. Cercek, S. Oguchi, G. N. Fredrikson, J. Yano, P. K. Shah, S. Jovinge, and J. Nilsson. 2002. Inhibitory effect on arterial injury-induced neointimal formation by adoptive B-cell transfer in Rag-1 knockout mice. Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 22:644-649
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【非特許文献14】Mor, A., D. Planer, G. Luboshits, A. Afek, S. Metzger, T. Chajek-Shaul, G. Keren, and J. George. 2007. Role of naturally occurring CD4+ CD25+ regulatory T cells in experimental atherosclerosis. Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 27:893-900
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【非特許文献16】Yang, G. X., Z. X. Lian, Y. H. Chuang, Y. Moritoki, R. Y. Lan, K. Wakabayashi, A. A. Ansari, R. A. Flavell, W. M. Ridgway, R. L. Coppel, K. Tsuneyama, I. R. Mackay, and M. E. Gershwin. 2008. Adoptive transfer of CD8(+) T cells from transforming growth factor beta receptor type II (dominant negative form) induces autoimmune cholangitis in mice. Hepatology. 47: 1974-1982
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【非特許文献20】Lecoeur, H., M. Fevrier, S. Garcia, Y. Riviere, and M. L. Gougeon. 2001. A novel flow cytometric assay for quantitation and multiparametric characterization of cell-mediated cytotoxicity. J. Immunol. Methods 253: 177-187
【非特許文献21】Palinski, W., E. Miller, and J. L. Witztum. 1995. Immunization of low density lipoprotein (LDL) receptor-deficient rabbits with homologous malondialdehyde-modified LDL reduces athero genesis. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 92:821-825
【非特許文献22】Ameli, S., A. Hultgardh-Nilsson, J. Regnstrom, F. Calara, J. Yano, B. Cercek, P. K. Shah, and J. Nilsson. 1996. Effect of immunization with homologous LDL and oxidized LDL on early atherosclerosis in hypercholesterolemic rabbits. Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 16: 1074-1079
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【非特許文献24】George, J., A. Afek, B. Gilburd, H. Levkovitz, A. Shaish, I. Goldberg, Y. Kopolovic, G. Wick, Y. Shoenfeld, and D. Harats. 1998. Hyperimmunization of apo-E-deficient mice with homologous malondialdehyde low-density lipoprotein suppresses early athero genesis. Atherosclerosis 138: 147-152
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【非特許文献28】Roselaar, S. E., P. X. Kakkanathu, and A. Daugherty. 1996. Lymphocyte populations in atherosclerotic lesions of apoE -/- and LDL receptor -/- mice. Decreasing density with disease progression. Arterioscler. Thromb. Vase. Biol. 16: 1013-1018
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【非特許文献32】Niessner, A., and C. M. Weyand. 2009. Dendritic cells in atherosclerotic disease. Clin. Immunol. 134:25-32
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【非特許文献36】Sakamoto, N., K. Tsuji, L. M. Muul, A. M. Lawler, E. F. Petricoin, F. Candotti, J. A. Metcalf, J. A. Tavel, H. C. Lane, W. J. Urba, B. A. Fox, A. Varki, J. K. Lunney, and A. S. Rosenberg. 2007. Bovine apolipoprotein B-100 is a dominant immunogen in therapeutic cell populations cultured in fetal calf serum in mice and humans. Blood 110:501-508
【非特許文献37】van den Elzen, p., S. Garg, L. Leon, M. Brigl, E. A. Leadbetter, J. E. Gumperz, C. C. Dascher, T. Y. Cheng, F. M. Sacks, P. A. Illarionov, G. S. Besra, S. C. Kent, D. B. Moody, and M. B. Brenner. 2005. Apolipoprotein-mediated pathways of lipid antigen presentation. Nature 437:906-910
【非特許文献38】Mitchell DM, Ravkov EV, Williams MA Distinct roles for IL-2 and IL-15 in the differentiation and survival of CD8+ effector and memory T cells. J Immunol. 2010 Jun 15;184(12):6719-30. Epub 2010 May 14
【非特許文献39】Perret R, Ronchese F. Effector CD8+ T cells activated in vitro confer immediate and long-term tumor protection in vivo. Eur J Immunol. 2008 Oct;38(10):2886-95.
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【非特許文献41】J. Immunol. 2006;177:5868-5877
【非特許文献42】J. Immunol. 2004;172: 1991-1995
【非特許文献43】San-Hwan Chen et al The compltecDNA and aminoacid sequence of Human Apolipoprotein B100 Journal of Biological Chemistry 1986 Vol. 261No 28, Issue of October 5, 12918-12921

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ApoB100の1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分によって活性化されたCD8(+)T細胞であって、活性化されたCD8(+)T細胞が該1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的である、CD8(+)T細胞。
【請求項2】
前記1種以上の免疫原性断片の各々が、配列番号1〜配列番号302の内の1つを有するペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項3】
前記1種以上の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分が、アテローム性動脈硬化の縮小に関係がある、請求項1又は2に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項4】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号1、配列番号2、配列番号10、配列番号11、配列番号25、配列番号30〜34、配列番号40、配列番号45、配列番号68、配列番号74、配列番号94、配列番号99、配列番号100、配列番号102、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号111、配列番号129、配列番号143、配列番号148、配列番号149、配列番号154、配列番号162、配列番号169、配列番号177、配列番号199、配列番号210、配列番号222、配列番号236、配列番号252、及び配列番号301の内の1つを含むペプチドを1種以上含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項5】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号2、配列番号11、配列番号32、配列番号45、配列番号74、配列番号102、配列番号148、配列番号162、及び配列番号210の内の1つを含むペプチドを1種以上含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項6】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号143を有するペプチド及び配列番号210を有するペプチドを含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項7】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号11を有するペプチド、配列番号25を有するペプチド及び配列番号74を有するペプチドを含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項8】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号99を有するペプチド、配列番号100を有するペプチド、配列番号102を有するペプチド、配列番号103を有するペプチド、及び配列番号105を有するペプチドを含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項9】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号2を有するペプチドを含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項10】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号45を有するペプチドを含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項11】
前記1種以上の免疫原性断片が、配列番号210を有するペプチドを含む、請求項3に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項12】
薬剤として用いるための、請求項3〜11のいずれか1項に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項13】
個体におけるアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防に用いるための、請求項3〜11のいずれか1項に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項14】
前記治療が、個体に有効量のCD8(+)T細胞を投与することを含む、請求項13に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項15】
前記有効量が、約500,000〜約2,000,000の活性化CD8(+)T細胞の間に含まれる、請求項14に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項16】
前記有効量が、約1,500,000の活性化CD8(+)T細胞である、請求項14に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項17】
前記投与が、非経口的に行われる、請求項14〜16のいずれか1項に記載のCD8(+)T細胞。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の活性化されたCD8(+)T細胞を適切な媒体と共に含む組成物。
【請求項19】
請求項3〜11のいずれか1項に記載の活性化されたCD8(+)T細胞を薬学的に許容できる媒体と共に含む医薬品組成物。
【請求項20】
アテローム性動脈硬化及び/又はそれに関係した状態を治療及び/又は予防するのに適した活性化CD8(+)T細胞を提供する方法であって、当該方法は、
CD8(+)T細胞を、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、ある時間の間、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的なCD8(+)T細胞を得るための条件下で接触させる工程であって、該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分がアテローム性動脈硬化の縮小と関係があるところの工程を含む方法。
【請求項21】
前記接触が、インビトロで、CD8(+)T細胞を免疫原性断片約100μgで脈動させることによって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記接触が、非ヒト動物においてインビボで行われ、該接触は、非ヒト動物に有効量の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分を投与することによって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記接触が、CD8(+)T細胞エンハンサーと組み合わせて行われる、請求項20〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
個体におけるアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防用の治療薬を確認する方法であって、当該方法は、
CD8(+)T細胞を、ApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、ある時間の間、活性化CD8(+)T細胞を提供するための条件下で接触させる工程であって、該活性化CD8(+)T細胞が該免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分に対して特異的であるところの工程と、
前記活性化CD8(+)T細胞を動物モデルに投与し、該動物モデルにおけるアテローム性動脈硬化の縮小を検出する工程と
を含む方法。
【請求項25】
個体におけるアテローム性動脈硬化を治療及び/又は予防するシステムであって、当該システムは、個体におけるアテローム性動脈硬化を治療又は予防するための方法において、同時に組み合わせて又は連続的に使用するための、
1種以上の請求項3〜11のいずれか1項に記載のCD8(+)T細胞の2種以上と、
1種以上のアジュバントと、を含んでなり、当該方法が、
請求項3〜11のいずれか1項に記載のCD8(+)T細胞1種以上を適切なアジュバント1種以上と組み合わせて投与する工程を含む、システム。
【請求項26】
活性化CD8(+)T細胞を提供するシステムであって、当該システムは、請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法において、同時に組み合わせて又は連続的に使用するための、
1種以上のCD8(+)T細胞の少なくとも2種と、
1種以上のApoB100の免疫原性断片又はその免疫原性の活性がある部分と、
1種以上のT細胞エンハンサーと、
を含むシステム。
【請求項27】
前記1種以上のApoB100の免疫原性断片が、配列番号1〜配列番号302から選択される配列を有するペプチドを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記1種以上のT細胞エンハンサーが、IL2、IL15及びIL2−抗IL2−抗体複合物の内の1種以上を含む、請求項26又は27に記載のシステム。
【請求項29】
個体におけるアテローム性動脈硬化の治療及び/又は予防用の治療薬を確認するシステムであって、当該システムが、請求項24に記載の方法において、同時に組み合わせて又は連続的に使用するための、
CD8(+)T細胞の少なくとも2種と、T細胞エンハンサーと、動物モデルと、T細胞の活性化を検出する試薬と、アテローム性動脈硬化の縮小を検出する試薬とを含む、
システム。
【請求項30】
前記動物モデルがマウスである、請求項29に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−510586(P2013−510586A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539044(P2012−539044)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/056623
【国際公開番号】WO2011/060329
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512125769)
【出願人】(512125770)
【Fターム(参考)】