説明

アテローム性動脈硬化症などの心血管障害の処置のためのピクノジェノールまたはブドウ種子などのプロアントシアニジンとCentellaasiaticaとの組み合わせ

本発明は、医療目的のための調製物に、より具体的には、アテローム性動脈硬化症の予防または処置における使用のための、ピクノジェノールまたはブドウ種子などのプロアントシアニジンと、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスとの組み合わせからなる調製物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療目的のための調製物に、より具体的には、アテローム性動脈硬化症の予防または処置における使用のための、ピクノジェノール(Pycnogenol)またはブドウ種子などのプロアントシアニジンと、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスとの組み合わせからなる調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓に影響を及ぼす疾患は、一般に、用語「心疾患」のもとに分類される。より具体的には、心血管疾患は、心臓および血管(動脈および静脈)が関与する心疾患の分野を指す。心血管疾患のうちの1つのタイプはアテローム性動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症は、心臓および身体の他の部分へと酸素豊富な血液を運ぶ動脈血管に影響を及ぼす症候群である。この症候群は、脂肪物質、コレステロール、細胞の老廃物、カルシウムおよび他の物質の沈着物が動脈の内側の裏層に堆積して粥腫と呼ばれる硬い物質を形成するプロセスに関係する。この症候群は、通常、大きいサイズおよび中程度のサイズの動脈に影響を及ぼす。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、典型的には幼児期に始まり高齢になったときに進行することが多いゆっくりとした複合疾患である、ということが研究により示されている。時間とともに、粥腫は、動脈を通る血液の流れを著しく減少させるのに十分なほど大きく成長する可能性があり、この血液の流れの著しい減少は、器官への酸素豊富な血液の減少を生じる。障害のほとんどは、粥腫が脆くなって壊れる(破裂する)ときに起こる。壊れる粥腫は、血餅が血流を遮断すること、または身体の別の部分へと移動することを引き起こす。心臓に供給する血管が遮断されると、心臓発作が引き起こされる。脳に供給する血管が遮断されると、発作が引き起こされる。そして、腕または下肢への血液供給が減少すると、動きの困難さおよび最終的には壊疽が引き起こされる可能性がある。
【0004】
特定の状態または習慣が、アテローム性動脈硬化症を発症するという事象を増大させる可能性がある。これらの状態(高血中コレステロール、とりわけLDL、喫煙およびタバコの煙への曝露、高血圧症、糖尿病、肥満症、身体不活動…)は、危険因子として知られている。生活習慣の変化および/またはいくつかの特定の危険因子を処置するための医薬の服用は、遺伝的影響を減少させ、アテローム性動脈硬化症を防止することが多いという可能性がある。
【0005】
上で記載したように、アテローム性動脈硬化症は、幼児期から人々に影響を及ぼして年齢とともに進行する症候群である。何世紀にもわたって、医学は、アテローム性動脈硬化症を予防する、および/またはアテローム性動脈硬化症のリスクを最小にするための適切な処置を見つけようとしている。いくつかの試みが、プロアントシアニジンを含有する組成物(ピクノジェノール(登録商標)など)を用いて行われてきた。
【0006】
特許文献1(Mars,Inc.)は、血管拡張を誘導するため、脈管系の疾患もしくは障害(例えば高血圧、心血管疾患、発作)を処置もしくは予防するため、および/またはNO反応性の状態もしくは疾患を処置もしくは予防するための、混合された4〜6種のプロシアニジン二量体およびその特定の誘導体を含有する組成物を開示する。この開示された組成物は、医薬品、食品、食品添加物、または栄養補助食品として使用されうる。この組成物は、任意に、付加的な治療薬もしくは健康によい薬剤を含有してもよく、または別の治療薬もしくは健康によい薬剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0007】
非特許文献1も、慢性静脈不全(CVI)の処置のための補助的療法として有用である植物性物質を開示する。使用される植物性物質としては、Ruscus aculeatus(ラスカス・アクレアタス、ナギイカダ)、セイヨウトチノキ種子、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)、Vitis vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)、およびオリゴマー状のプロアントシアニジン(ピクノジェノール(登録商標)など)が挙げられる。
【0008】
非特許文献2は、浮腫、および慢性静脈疾患(CVD)とりわけ静脈痛に関連する症候に対して効果を有する静脈作用性薬物(veno−active drugs)(VAD)を開示する。この総説は、種々のVADを分類し、各薬物の根拠に基づいた医療(Evidence−Based Medicine、EBM)のレベルが決定された。ピクノジェノール(登録商標)およびCentelly asiatica(センテラ・アジアティカ)は、慢性静脈疾患に対してあまり十分には実証されていない効果しか示さないとして、等級Cに分類されている。
【0009】
特許文献2(RATH Matthiasら)は、アテローム生成プロセスの阻害から生じる予防および処置において有効な生物化学組成物であって、アスコルビン酸、リジン、マグネシウム、システイン、ピリドキシンHCL、リボフラビン、葉酸、シアノコバラミン ビタミンB12、S−アデノシル−L−メチオニン、重酒石酸コリン、グリシン銅、没食子酸エピガロカテキン、ケルセチン、アシアト酸、およびピクノジェノール(登録商標)を含む生物化学組成物を開示する。より正確にいえば、開示された組成物は、平滑筋細胞の成長および平滑筋細胞による細胞外マトリクスの浸潤に対して作用する。この組成物は、経口的に、静脈内に、または非経口的に投与されてもよい。
【0010】
他の文献は、化合物の大きな一覧の中からの植物エキスの、いくつかの可能性のある関連物を引用する。例えば特許文献3(Cognis Iberia S.L.)は、植物Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)由来のエキス、すなわち有効成分(成分a)を含有する調製物を開示する。含有される植物エキスとしては、camellia sinensis(チャノキ)、pinia silvestris(マツ樹皮)、vitis vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)、litchi chinensis(レイシ)、potentilla errecta(ポテンティラ・エレクタ、タチキジムシロ)およびそれらの混合物が挙げられる。成分aおよび成分bまたは成分cは、質量比90:10〜10:90にある。この調製物は封入されている。
【0011】
特許文献4(Fankeru KK)、XP002578473、は、コラーゲンおよびCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)、および/または海洋深層水ならびに任意にアミノ糖、セラミドおよびポリフェノールを含めることにより調製される、美容目的の、とりわけ皮膚の美容目的の食品組成物を開示する。この薬剤は、皮膚の代謝を亢進させて、コラーゲンの合成を加速し、皮膚が悪化することを防止して新鮮さを保つ。
【0012】
特許文献5(Intaglio INC)、XP002578465、は、洗顔用の分散液タイプの非水系クレンジングバーム組成物を開示する。この組成物は、皮膚刺激作用を引き起こさず、使用後にリフレッシュ感をもたらす。この分散液は、溶媒としての、ポリアルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびブチレングリコールから選ばれる少なくとも1つの多価アルコール(40〜75重量%)と、ナトリウムココイルイセチオナート、ラウロイルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、硬化ヒマシ油、硬化ホホバ油および硬化オリーブ油から選ばれる洗浄剤(5〜30重量%)とを含有する。この分散液は、ホホバワックス粉末、杏核、ブドウ種子およびクルミの果皮、カオリンおよび多孔性ゼオライトを含めたスクラブ試薬(scrub reagent)から選ばれるスクラビング剤(scrubbing agent)(0.5〜15重量%)、ポロキサマーおよびヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる分散剤(0.01〜5重量%)、ならびにカロテノイド、アスタキサンチン、βカロチン、リコピン、フロキサンチン(phylloxanthin)、プロアントシアニジン、フラボノイド、リボフラビン、ビタミン、レチノール、アスコルビン酸、トコフェロール、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)、ビサボロール、カモミール、Glycyrrhiza uralensisFisch(甘草)および大豆イソフラボンから選ばれる皮膚刺激作用低下物質(0.001〜5重量%)をさらに含有する。
【0013】
特許文献6(Perrella Segre)は、硬化療法処置、静脈不全、循環障害および微小循環障害における使用のための、葉酸(ビタミンB9)、ピリドキシン(ビタミンB6)、リポ酸ならびに6種の異なる植物エキス:イチョウ、ニンニク、Andrographis(アンドログラフィス)、セイヨウトチノキ、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)、およびブドウ種子からなる化合物を開示する。硬化療法は、血管または血管形成異常(特に静脈)およびリンパ系の形成異常を処置するために使用される手順である。医薬は、血管(すなわち静脈)の中へと注入され、これによって血管は収縮する。閉塞性の手順である従来の硬化療法では、硬化液剤は、もっぱら、病的な表在性の静脈の中へと注入される。従来の硬化療法は、血管の形成異常またはリンパの形成異常を有する小児および若年成人について使用される。成人では、硬化療法は、静脈瘤および痔を処置するために使用されることが多い。別の手順、いわゆる三次元的な再生硬化療法(regenerative sclerotherapy)、は、下肢の拡張性血管の硬化療法において使用される再生的な、非閉塞性の硬化液剤に関する。この液剤は、表在性のおよび穿孔性の静脈のネットワーク全体と接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2007/084648号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/133981号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第1 523 894号明細書
【特許文献4】特開2002−238497号公報
【特許文献5】韓国特許第100 846 292(B1)号明細書
【特許文献6】国際公開第03/080062号パンフレット
【0015】
【非特許文献1】Abascal Kら、「Botanicals for chronic venous insufficiency」、ALTERNATIVE AND COMPLEMENTARY THERAPIES、2007年12月、第13巻、第6号、304−311頁
【非特許文献2】Ramelet Aら、「Veno−active drugs in the management of chronic venous disease. An international consensus statement: Current medical position,prospective views and final resolution」、CLINICAL HEMORHEOLOGY AND MICROCIRCULATION、2005年、第33巻、第4号、309−319頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、アテローム性動脈硬化症および特に粥状動脈硬化巣(それゆえ、とりわけ動脈に関する)の処置または予防のための有効で安全な組成物に対するニーズが、依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
出願人らは、驚くべきことに、ピクノジェノール(登録商標)およびCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)エキスの組み合わせが、アテローム性動脈硬化症の処置において興味深い潜在性を示すということを見出した。この安全な天然物の組み合わせは、とりわけ動脈の中の粥状動脈硬化巣の処置および予防において特に有望である。
【0018】
本発明の1つの態様では、アテローム性動脈硬化症の予防または処置における使用のための、適切な賦形剤中の、プロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスの組み合わせからなる調製物が提供される。
【0019】
別の態様では、本発明は、本発明の調製物を含む栄養補助食品またはフードサプリメント、食品調製物、飲料、医薬および局所用調製物を提供する。
【0020】
さらなる態様では、本発明の調製物は、とりわけ動脈に関するアテローム性動脈硬化症の処置または予防のために提供される。
【0021】
なおさらなる態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする対象に、有効量の本発明の調製物または医薬を投与することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願明細書に記載される方法および物質と類似のまたは等価な方法および物質を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および物質が下記に記載される。本願明細書中で言及されるすべての公開公報、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体を援用したものとする。本願明細書で論じられる公開公報および出願は、本願の出願日に先立つそれらの開示についてのみ、与えられる。本願明細書中の何事も、本発明は、先行発明という理由でそのような公開公報に先行する権利があるとは言えないということを認める、と解釈されるべきではない。加えて、物質、方法、および実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることは意図されていない。
【0023】
矛盾する場合、本願明細書(定義を含む)が優先することになる。特段の記載がない限り、本願明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の主題が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の理解を容易にするために、本願明細書で使用する場合、以下の定義が与えられる。
【0024】
用語「comprise(含む)」は、一般に、「include(含む、包含する)」の意味で使用される。つまり、1以上の特徴または成分の存在を許容する。
【0025】
本願明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a、an(1つの)」および「the(その、当該、前記)」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、複数の参照対象を包含する。
【0026】
本願明細書で使用する場合、用語「松樹皮エキス」は、例えばピクノジェノール(登録商標) (Horphag)として市販されているFrench maritime pine(フランス海岸松)樹皮エキスを指す。用語「ピクノジェノール(登録商標)」、「松樹皮エキス」および「French maritime pine(フランス海岸松)樹皮エキス」は互換的である。Pinus pinaster(P.pinaster)(ピヌス・ピナステラ)およびPinus maritima(P.maritime)(ピヌス・マルティナ)は、「French Maritime Pine(フランス海岸松)」と一般に呼ばれる同じ生物を指すと理解される。従って、これらの用語は互換的である。
【0027】
用語「エキス」は、本願明細書で使用する場合、抽出方法を使用して植物、果実または野菜から得られる任意の調製物を包含する。
【0028】
用語「食品調製物」は、一般に、植物もしくは動物のいずれか由来の物質、または合成の供給源由来の物質であって、成長、修復、および生命維持に必要なプロセスを持続させるため、ならびにエネルギーを供給するために生物の身体の中で使用される必須栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルなど)を含有する物質を指す。
【0029】
「栄養補助食品またはフードサプリメント」は、ビタミン、ミネラル、食品、植物性物質、アミノ酸などの物質を含有し、かつこれらの物質の通常の摂取を補助することが意図されている製品を指す。栄養補助食品は丸剤、錠剤、カプセル剤、粉末または液体形態で見出され、口によって摂取されることが意図されている。
【0030】
用語「機能性食品」は、食品または食品の一部でありかつ医学的な利益または健康上の利益(疾患の予防および処置を含む)をもたらす任意の物質を指す。このような製品は、単離された栄養素、栄養補助食品および特定の食事から、遺伝子改変のデザイナーフーズ、ハーブ製品、ならびに加工食品(シリアル、スープおよび飲料など)の範囲に及びうる。機能性食品は、食品から単離または精製された製品であって、かつ通常は食品とは関係付けられないが、生理的な利益を有するかまたは例えば慢性疾患などの疾患に対する防御をもたらすことが実証されている医薬品の形態で一般に販売される製品をも指す。
【0031】
用語「飲料」は、飲用の液体を意味し、これは、水、フレーバーウォーター、ソフトドリンク、アルコール飲料、ドリンク剤であってもよいし、または乳製品(ミルク)もしくはフルーツジュースに基づくもののような強化ドリンク(enriched drink)であってもよい。
【0032】
「薬学的に許容できる賦形剤または担体」は、有効成分の薬理活性に干渉しないか、または有効成分が投与されうる対象の身体の機能を低下させないが、剤形の製作または当該組成物の投与を容易にする任意の物質である。薬学的に許容できる賦形剤の例としては、マルトデキストリン、リン酸カルシウム、および溶融シリカが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容できる賦形剤は、香料、ならびに種々の添加物(他のビタミンおよびミネラル、すべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張剤および吸収遅延剤、甘味料など)、無毒な助剤物質(湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など(例えば、酢酸ナトリウムなど、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど))、および不活性成分(錠剤、カプセルおよび他の剤形の製造における標準的な賦形剤であるタルクおよびステアリン酸マグネシウムなど)も包含する。
【0033】
本願明細書で使用する場合、用語「対象」または「患者」は、当該技術分野で十分に認識されており、本願明細書中ではほとんど同義で使用されて、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、およびヒト(最も好ましい)を含めた哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では、この対象は、処置を必要とする対象または疾患もしくは障害を有する対象である。しかしながら、他の実施形態では、この対象は、正常な対象であることができる。この用語は、特定の年齢または性別を意味しない。従って、成人および新生児の対象は、雄性であろうとまたは雌性であろうと、包含されることが意図されている。
【0034】
用語「有効量」は、生理的効果を得るために必要な量を指す。この生理的効果は、1回服用用量または反復服用によって成し遂げられてもよい。投与される投薬量は、当然、特定の組成物の生理的特徴;対象の年齢、健康および体重;症候の性質および程度;併用療法の種類;処置の頻度;および所望の効果などの既知の要因によって変わる可能性があり、当業者はそれを調整することができる。
【0035】
用語「TECA」は、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のトリテルペン画分全体を指す。
【0036】
「アテローム性動脈硬化症」は、動脈の内側の裏層上にある脂肪沈着物の結果としての、中程度のサイズの動脈および大きいサイズの壁の動脈の進行性の肥厚および硬化のプロセスである。
【0037】
換言すれば、アテローム性動脈硬化症(動脈硬化性血管疾患またはASVDとしても知られる)は、コレステロールなどの脂肪物質の堆積の結果として、動脈壁が厚くなる状態である。アテローム性動脈硬化症は、主にマクロファージ白血球細胞の蓄積に起因する動脈血管に影響を及ぼす症候群、動脈の壁の慢性の炎症反応であり、機能的高密度リポタンパク質(HDL)によって脂肪およびコレステロールがマクロファージから十分に除去されないと、低密度リポタンパク質(コレステロールおよびトリグリセリドを運ぶ血漿タンパク質)によって促進される。これは、一般に、動脈の硬化または毛状物付着(furring)と呼ばれる。これは、動脈内の多数の粥腫の形成によって引き起こされる(http://en.wikipedia.org/wiki/Atherosclerosisを参照)。
【0038】
出願人らは、特定の植物およびアテローム性動脈硬化症の処置におけるそれらの応用の可能性を研究してきた。驚くべきことに、適切な賦形剤中の、プロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスの組み合わせからなる調製物の投与が、アテローム性動脈硬化症のリスクを相当に低下させるということが見出された。実際、完全に天然由来の本発明の調製物は、一部の患者において、亜臨床病期から臨床病期へのアテローム性動脈硬化症の進行を止める。プロアントシアニジンを含む組成物とCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスを含む組成物との相乗作用は、いずれの他の薬理作用(すなわちコレステロール低下、血圧降下、高血小板作用)とも別に起こるようである(実施例を参照のこと)。
【0039】
プロアントシアニジンは、亜群プロシアニジン、プロデルフィニジンおよびプロペラルゴニジンを含めたフラボノイドの群を指す。プロアントシアニジンは、4〜8個または4〜6個の結合によって連結されている単量体単位カテキンまたはエピカテキンからなる均一なまたは不均一なポリマーであり、これは、多数の異性体のプロアントシアニジンが存在するということを意味する。典型的には、プロアントシアニジンオリゴマーは、2〜12個の単量体単位の鎖長を有する。プロアントシアニジンは、合成されてもよいし、または植物物質から抽出されてもよい。プロアントシアニジンの植物物質供給源の非限定的な例としては、ブドウ種子、ブドウの皮、松樹皮、イチョウ葉、落花生、カカオ豆、タマリンド、トマト、落花生、アーモンド、リンゴ、クランベリー、ブルーベリー、茶葉が挙げられる。
【0040】
ピクノジェノール(登録商標)の名称で、フードサプリメントの調製物として商業的に入手できる、プロアントシアニジンを含有する周知の製品は、French maritime pine(フランス海岸松)樹皮(Pinus pinaster(ピヌス・ピナステラ))のエキスである。米国特許第3,436,407号明細書(MASQUELIER JACQUES);米国特許第5,720,956号明細書(ROHDEWALD,PETER)および米国特許第6,372,266号明細書(SUZUKI NOBUTAKAら、Horphag Research Ltd.)も参照のこと。これらの特許文献は、参照により本願明細書に援用したものとする。ピクノジェノール(登録商標)は、French maritime pine(フランス海岸松) Pinus pinaster(ピヌス・ピナステラ)、Aiton、亜種Atlantica des Villarの標準化された樹皮エキスである。このエキスの質は、米国薬局方(USP28)で特定される(Maritime Pine(海岸松)エキス:United States Pharmacopeia、Rockville: United States Pharmacopeial Convention,Inc.;2005年、2115−2116頁にある)。このエキスは、ポリフェノールの濃縮物からなる。ポリフェノールは、果実および野菜の中にも含有されているが、低濃度である。このポリフェノールは、フラボノイド、とりわけプロシアニジン、およびフェノール酸から構成される。すべてのこれらの構成成分は、フリーラジカルを不活性化する能力を有する。Rohdewald P.、「A review of the French maritime pine bark extract (Pycnogenol(R)), a herbal medication with a diverse pharmacology」、Int J Clin Pharmacol Ther 2002;40(4):158−168。ピクノジェノール(登録商標)のうちの65〜75%は、様々な鎖長を有するカテキンおよびエピカテキンサブユニットから構成されるプロシアニジンである(Rohdewald P.、A review of the French maritime pine bark extract (Pycnogenol(R)), an herbal medication with a diverse clinical pharmacology」、Int J Clin Pharmacol Ther、2002年、第40巻、158−168頁)。他の構成成分は、ポリフェノール系単量体、フェノール酸またはケイ皮酸およびこれらのグリコシドである(同書)。ピクノジェノール(登録商標)エキスは、米国薬局方に従って65%〜75%のプロシアニジン(70±5%のプロシアニジン)(プロシアニジンは、いくつかの作用の中でもとりわけ比較的顕著な抗酸化活性および抗炎症活性について知られる化合物である)を含有するように標準化されている(Rohdewald P.、「Pycnogenol(R), French Maritime Pine Bark extract」、Encyclopedia of Dietary Supplements、2005年、545−553頁)。
【0041】
Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)は、いくつかの化粧品用途および健康のための治療薬において使用される、小さい草本の一年生植物である。Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)は、Mackinlayaceae(マッキンラヤ)科(Apiaceae(セリ科))またはMackinlayoideae亜科のメンバーであり、スリ・ランカ、オーストラリア北部、インドネシア、イラン、マレーシア、メラネシア、ニューギニア、およびアジアの他の地域原産である。Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)は、一般に、TECA、gotu kola(ゴツコラ)、Asiatic Pennywort(アジアティック・ペニーワート)、Indian Pennywort(インディアン・ペニーワート)、Luei Gong Gen、Takip−kohol、Antanan、Pegagan(ペガガン)、Pegaga(ペガガ)、vallaarai、Kula kud、Bai Bua Bok(バイ・ブアボック)、Brahmi(ブラフミー)およびrau ma’(ラウマー)とも呼ばれる。Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)は、現在、その原産国では、付け合わせとしてまたはドリンクとして料理調製物においても使用される。
【0042】
Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)エキスは、Hydrocotyle(チドメグサ属)Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)の葉および根からなる。Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)の中に含有される主要な有効成分は、トリテルペノイド アシアト酸、マデカシン酸(madecassic acid)、アジアチコシド(asiaticoside)(トリテルペノイドエステルグリコシド)、マデカソシド(madecassoside)、およびブラフミノシド(brahminoside)である。p−シメン、b−カリオフィレンおよびファルネセンを含む揮発性油も、植物中で見出される。Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のエキスも市販されている。あるいは、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)エキスは、植物Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)から、当該技術分野で周知のものなどの抽出技術(疎水性溶媒および親水性溶媒の中での抽出を含む)によって調製することができる。
【0043】
本発明は、アテローム性動脈硬化症の予防または処置における使用のための、適切な賦形剤中の、プロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスの組み合わせからなる調製物を提供する。本発明の調製物は、20%〜80% w/wのプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)およびそれぞれ20%〜80% w/wのCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキス、ならびにq.s.p.(全量100%とするために十分な量)の適切な賦形剤を含有する。好ましくは、本発明の調製物は、約30%〜70% w/wのプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにそれぞれ30%〜70% w/wのCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキス、より好ましくは約40%〜60% w/wのプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにそれぞれ40%〜60% w/wのCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)、さらにより好ましくは約50% w/wのプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにそれぞれ50% w/wのCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)、ならびにq.s.p.の適切な賦形剤を含む。実施例によれば、本発明の調製物は、ピクノジェノール(登録商標)およびTECA(アスピリンを含むかまたは含まない)の組み合わせ(錠剤、各成分について100mg)を含む。ピクノジェノール(登録商標)エキスは、65%〜75%のプロアントシアニジン、好ましくはプロシアニジン(70±5%プロシアニジン)を含有するように標準化されている。このように、実施例で使用される錠剤は、100mgのTECAおよび65mg〜75mgのプロアントシアニジン、好ましくは65mg〜75mgのプロシアニジンを含有する。
【0044】
本発明の調製物は、プロアントシアニジンを含み、好ましくは、植物エキス由来のプロシアニジンからなるか、または合成された物質由来のプロシアニジンからなる(すなわち、合成のプロアントシアニジン)。
【0045】
この植物エキスは、松樹皮、イトスギの球果、ブドウ種子、リンゴ、落花生種皮、クルミ、ザクロ、トマト、アーモンド、茶、サンザシ、ココヤシまたはこれらの組み合わせのエキスから選択されるエキスを含有するプロアントシアニジンからなる群から選択することができる。プロアントシアニジン含有リッチエキスは、(乾燥エキスの)50重量%超のプロアントシアニジン、より好ましくは70重量%超、さらにより好ましくは75重量%超のプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)を有する天然の、好ましくは植物のエキスである。本発明に係る植物エキスは松樹皮に由来することが好ましく、当該植物エキスはピクノジェノール(登録商標)であることがより好ましい。
【0046】
好ましい実施形態では、プロアントシアニジンを含む当該調製物は、松樹皮エキスであってもよい。この松樹皮はP.pinaster(ピヌス・ピナステラ)由来、例えばピクノジェノール(登録商標)由来のものであってもよい。好ましい実施形態では、当該組成物は、総重量の10%〜100%の濃度でプロアントシアニジンを含有してもよい。例えば、ピクノジェノール(登録商標)組成物は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%または95%のプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)を含有するように希釈または濃縮されてもよい。濃縮は、カラムクロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を使用して行ってもよい。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明の調製物の中に存在するCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)エキスは、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のトリテルペン画分全体(TECA)である。
【0048】
本発明の適切な賦形剤の例としては、固着防止剤(anti−adherents)、結合剤(例えば、大粒結晶セルロース、ガムトラガント、もしくはゼラチン)、コーティング、崩壊剤、充填剤、希釈剤、軟化剤、乳化剤、矯味矯臭剤、着色剤、アジュバント、滑沢剤、機能性剤(functional agents)(例えば、栄養素)、粘度調整剤、増量剤、滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)表面活性剤、浸透圧剤、希釈剤、または任意の他の非有効成分、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
例えば、本発明の調製物は、炭酸カルシウム、着色剤、増白剤、防腐剤、および香料、トリアセチン、ステアリン酸マグネシウム、ステロート(sterotes)、天然香料または人工香料、精油、植物エキス、フルーツエッセンス、ゼラチン、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される賦形剤物質を含んでもよい。
【0050】
任意に、本発明の調製物は、他の人工甘味料または天然甘味料、増量甘味料、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。増量甘味料は、カロリー化合物およびノンカロリー化合物の両方を含む。増量甘味料の非限定的な例としては、スクロース、デキストロース、マルトース、デキストリン、乾燥転化糖、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、果糖、ガラクトース、コーンシロップ固形物、タガトース、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、エリスリトール、およびマルチトール)、水素化デンプン加水分解物、イソマルト、トレハロース、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
この適切な賦形剤は、薬学的に許容できる賦形剤であることもできる。
【0052】
任意に、本発明の調製物は、アセチルサリチル酸(アスピリン)などの非ステロイド系抗炎症薬をさらに含むことができる。
【0053】
本発明は、本発明の調製物を含む、食品調製物、栄養補助食品またはフードサプリメント、機能性食品、飲料、医薬および局所用調製物をさらに提供する。上記のとおり、当該医薬および局所用調製物は、アセチルサリチル酸(アスピリン)および薬学的に許容できる賦形剤をさらに含んでもよい。
【0054】
好ましくは、本発明の栄養補助食品、機能性食品または医薬は、1日あたり5mg〜1日あたり2,000mgの投薬量で投与される。好ましくは、1日あたり50mg〜1,000mg、さらにより好ましくは1日あたり100mg〜400mgである。本発明の栄養補助食品、機能性食品または医薬は、20%〜80% w/wのプロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)ならびにそれぞれ20%〜80% w/wのCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキス、ならびにq.s.p.の適切な賦形剤を含有する。ピクノジェノール(登録商標)エキスは、65%〜75%のプロアントシアニジン、好ましくはプロシアニジンを含有するように標準化されているということが知られている。それゆえ、実施例で使用される錠剤は、100mgのTECAおよび65mg〜75mgのプロアントシアニジン、好ましくは65mg〜75mgのプロシアニジン、より好ましくは70mgのプロアントシアニジンまたはプロシアニジンを含有する。
【0055】
本発明は、とりわけ動脈に関するアテローム性動脈硬化症の処置または予防における使用のための本発明の調製物をさらに提供する。好ましくは、この処置または予防は、粥状動脈硬化巣に関する。
【0056】
また本発明は、アテローム性動脈硬化症障害を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする対象に、有効量の本発明の調製物または医薬を投与することを含む方法を提供する。このアテローム性動脈硬化症障害は、好ましくは粥状動脈硬化巣であり、当該対象は哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0057】
本発明の調製物、栄養補助食品、機能性食品または医薬は、1日あたり5mg〜1日あたり2,000mgの投薬量で経口的に、非経口的にまたは局所的に投与することができる。好ましくは、1日あたり50mg〜1,000mg、より好ましくは1日あたり100mg〜400mgである。当該調製物中の有効成分の濃度は、上に記載されている。
【0058】
経口投与のために意図される場合、本発明の医薬は、例えば錠剤、カプレット、丸剤、硬カプセル剤もしくは軟カプセル剤、トローチ剤、カシェ剤、分注可能な粉末(dispensable powder)、顆粒、懸濁液、エリキシル剤、分散液、液体の形態、またはこのような投与に対して合理的に適合している任意の他の形態にあることができる。非経口投与のために意図される場合、本発明の医薬は、例えば、静脈注射、筋肉内注射または皮下注射用の溶液の形態にあることができる。
【0059】
本発明に係る局所用調製物は、クリーム、パッチ、ゲル、軟膏剤、ローション剤、チンキ剤、スプレー、ムース、クレンジング組成物(cleansing composition)または泡沫であることができるが、これらに限定されない。本発明の局所用調製物は、溶媒または脂肪物質中の懸濁液または分散液の形態で、あるいはエマルションまたはマイクロエマルション、PETエマルション、多相エマルション、ビッカーリングエマルション(bickering emulsion)、ヒドロゲル、アルコールゲル、リポゲル(lipogel)、一相溶液もしくは多相溶液または小胞分散液、ならびにペンによって、マスクとしてもしくはスプレーとして付与することもできる他の通常の組成物の形態であることもできる。このエマルションは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤または両性界面活性剤も含有することができる。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明に係る調製物は、プロアントシアニジン(好ましくはプロシアニジン)およびCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスを、対象に投与される唯一の有効成分として含む。
【0061】
当業者は、本願明細書に記載される本発明は、具体的に記載されたもの以外の変更および改変を受けうるということはわかるであろう。本発明は、本発明の趣旨または本質的な特徴から逸脱しないすべてのそのような変更および改変を包含するということを理解されたい。また本発明は、個々にまたは合わせて本願明細書中で参照されまたは示される工程、特徴、組成物および化合物のすべて、ならびにこれらの工程または特徴のいずれかの組み合わせおよびすべての組み合わせまたはいずれか2以上も包含する。それゆえ本開示は、すべての態様において例示として示されていると考えられるべきであり限定的であると考えられるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって示されており、均等の意味および範囲の中に入るすべての変更態様は本発明の中に包含されることが意図されている。
【0062】
種々の参考文献が本願明細書全体を通して引用され、それらの各々は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0063】
上記の記載は、以下の実施例を参照して、より十分に理解されるであろう。しかしながらそのような実施例は、本発明を実施する方法を例示するものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0064】
併用処置(アスピリン100mgを伴うかまたは伴わない、ピクノジェノール100mg+TECA 100mg)を用いた場合の低輝度の(echolucent)頸動脈および大腿の粥状動脈硬化巣のエコー輝度のばらつき。前向きの、試験的な6ヶ月の治験
(TECA=Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のトリテルペン画分全体)
この研究は、アスピリンを伴うかまたは伴わないピクノジェノール(登録商標)およびTECAの組み合わせが、頸動脈分岐部および大腿動脈分岐部のレベルで、血小板凝集、局所的な動脈の炎症、および炎症に起因する内中膜複合体の瘢痕形成過程を減少させることによって、粥腫進行および心血管事象のリスクを低下させることに有効であるかどうかを評価した。
【0065】
心血管事象のリスクの低下は、 −研究仮説によれば− 低輝度の(柔らかく、超音波上では黒く、塞栓形成および血栓症を引き起こす事象につながりやすい)大腿のおよび頸動脈の粥腫のエコー輝度の目に見える増加(超音波)を生成することに主による、粥腫におけるコラーゲン産生を調節することによって得られたはずである。
【0066】
この前向きのプラセボ対照試験は、低エコー−低輝度の粥腫に対する、アスピリンを伴うかまたは伴わないピクノジェノール(登録商標)およびTECAの選択性の効果を評価するという目的を有していた。
【0067】
頸動脈の粥腫の超音波検査を、高分解能超音波を用いて行った。
【0068】
粥腫画像の撮像、デジタル画像処理、および正規化を標準化した。観察者間の、スキャナー内の、ゲインレベルのばらつきも、基準として、粥腫の最も低輝度の部分について血液(黒)および最もエコー源性の部分として外膜(白)を使用して、標準化した。粥腫特性解析およびGSM(Grey Scale Median、グレースケール中央値)測定についての技術は、これまでに詳細に記載されている。
【0069】
これまでの研究では、超音波上の粥腫領域を得た後、エコーテクスチャの正規化を得て、粥腫特性解析を使用して、心血管事象と関連する粥腫のエコーテクスチャと、塞栓形成、血栓症、または心血管事象(すなわちTIA、発作、塞栓形成、血栓症)を引き起こさない粥腫のエコーテクスチャとを区別してきた。
【0070】
この研究では、より高いリスクにある粥腫(黒く、「柔らかい」、低輝度の粥腫)を特定した後、ピクノジェノール(登録商標)およびTECA(アスピリンを伴うかまたは伴わない)の組み合わせ(錠剤、各成分について100mg)を用いて1日1回、6ヶ月間患者を処置し、この凝集化合物が、その抗血小板作用、抗炎症性効果によって、および局所的なコラーゲン合成を調節することによって、エコー輝度、およびそれゆえ低輝度の粥腫の安定性を上昇させることができるかどうかについて評価した。この6ヶ月間の経過観察の間、他の処置は使用しなかった。
【0071】
頸動脈分岐部/大腿分岐部の、一様でない、低輝度の粥腫(GSM<18)を有し、65%超の狭窄(二重で)を引き起こしている無症候性の患者を、インフォームドコンセントの後に、ピクノジェノール(登録商標)およびTECA(アスピリンを伴うかもしくは伴わない)または同等のプラセボを用いて処置した。
【0072】
すべての患者(対照を含む)を、抗血小板薬を用いて処置した(注目する群において、抗血小板作用は、アスピリンおよびピクノジェノール(登録商標)の複合活性によって得られた)。この組み合わせは、400mgのアスピリン(この量のアスピリンは、ほとんどの患者において耐容され得なかった)に相当する可能性がある複合的な抗凝集効果を有する可能性がある。群の詳細を表1および表2に示す。
【0073】
結果:試験対象となったとき、この低エコーの粥腫処置群におけるGSMは15.1(範囲、11〜17.4)であった;6ヶ月で、GSMは上昇した(GSMは19.5に上昇したので、この上昇は有意であった;SD 1.1;P<0.05)。比較の対照では、GSMに変化はなかった。
【0074】
結論として、観察された結果は、低エコーの、低密度(柔らかい)頸動脈の粥腫および大腿の粥腫(これらは、血栓症の塞栓形成に起因する心血管事象に関して最も危険な種類の粥腫である)の安定化に対する、ピクノジェノール(登録商標)+TECAの組み合わせおよびピクノジェノール(登録商標)+TECA+アスピリンの組み合わせ(APT)の重要な有益な作用を示唆する。
【0075】
完全に天然由来の本発明の調製物は、一部の患者において、亜臨床病期から臨床病期へのアテローム性動脈硬化症の進行を止める。ピクノジェノール(登録商標)とTECA(アスピリンを含むかまたは含まない)との相乗作用は、いずれの他の薬理作用(すなわちコレステロール低下、血圧降下、高血小板作用)とも別に起こるようである
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アテローム性動脈硬化症の予防または処置における使用のための、適切な賦形剤中の、プロアントシアニジンならびにCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスの組み合わせからなる調製物であって、前記調製物は、20%〜80% w/wのプロアントシアニジンならびにそれぞれ20%〜80% w/wのCentella asiatica(センテラ・アジアティカ)および/またはこのエキスを含有する、調製物。
【請求項2】
前記調製物は、粥状動脈硬化巣の予防または処置における使用のためのものである、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
プロアントシアニジンは、植物エキス由来または合成された物質由来のプロシアニジンである、請求項1または請求項2に記載の調製物。
【請求項4】
前記植物エキスは、松樹皮、ブドウ種子、リンゴ、落花生種皮、クルミ、ザクロ、トマト、アーモンド、茶、サンザシ、ココヤシまたはこれらの組み合わせのエキスから選択されるエキスを含有するプロアントシアニジンからなる群から選択される、請求項3に記載の調製物。
【請求項5】
前記植物エキスは松樹皮に由来する、請求項3または請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
前記植物エキスはピクノジェノール(登録商標)である、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項7】
Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)エキスは、Centella asiatica(センテラ・アジアティカ)のトリテルペン画分全体(TECA)である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項8】
前記調製物は、アセチルサリチル酸をさらに含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項9】
前記適切な賦形剤は薬学的に許容できる賦形剤である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む食品調製物。
【請求項11】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む栄養補助食品。
【請求項12】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む機能性食品。
【請求項13】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む飲料。
【請求項14】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む医薬。
【請求項15】
前記医薬または栄養補助食品は、1日あたり5mg〜1日あたり2,000mgの投薬量で投与されることを特徴とする、請求項14に記載の医薬または請求項11に記載の栄養補助食品。
【請求項16】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物を含む局所用調製物。
【請求項17】
アテローム性動脈硬化症を処置または予防する方法であって、処置または予防を必要とする対象に、有効量の請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物または請求項14に記載の医薬を投与することを含む、方法。
【請求項18】
粥状動脈硬化巣の予防または処置である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記調製物または前記医薬は、経口的に、非経口的にまたは局所的に投与される、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の調製物または請求項14に記載の医薬は、1日あたり5mg〜1日あたり2,000mgの投薬量で投与される、請求項17から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記処置または予防を必要とする前記対象は哺乳動物、好ましくはヒトである、請求項17から請求項20のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−501774(P2013−501774A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524326(P2012−524326)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053637
【国際公開番号】WO2011/018763
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512024705)ホーファグ リサーチ アイピー (ピーワイシー) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】