説明

アテローム性動脈硬化症を治療するための組成物

本発明は、アテローム性動脈硬化症を患う対象への継続的な皮下投与により、予防的または治療的処置を適用する組成物またはパッチに関し、当該組成物またはパッチは、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に由来する少なくとも1種のエピトープの有効量を含むことから、前記少なくとも1種のエピトープの前記対象への投与は特異的調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アテローム性動脈硬化症の予防または治療に関し、詳細には、アテローム性動脈硬化症を患う対象に投与され得るアテローム性動脈硬化性を示すタンパク質に由来する少なくとも1種のエピトープを含む組成物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アテローム性動脈硬化症は西洋社会における死因の最も一般的なものであり、そして全世界において20年以内に心疾患の要因を導き始めると予測されている。
【0003】
アテローム性動脈硬化症は、修飾されたリポタンパク質、単球で誘導されるマクロファージ、T細胞及び動脈壁の正常細胞の成分の間の相互作用からもたらされる慢性炎症の形成であるとみなされ得る。この炎症プロセスは、最終的に動脈内腔に突き出る複合病変またはプラークの発達を誘導し得る。プラークの崩壊/浸食及び血栓症は、心筋梗塞及び脳梗塞の急性の臨床的合併症をもたらす(ROSS , N. Eng. J. Med. , vol .340 , p: 115-126 , 1999 ; LIBBY, Nature, vol : 420 , p: 868-74 , 2002 ; VIRMANI等. , Arterioscler. Thromb. Vase. Biol . , vol . 20 , p: 1262-1275 , 2000)。
【0004】
当該疾患は血管の細胞外マトリクスにおけるリポタンパク質粒子の蓄積によって始まる。リポタンパク質粒子の主な脂質成分はコレステロール、トリグリセリド、及びリン脂質である。コレステロールは正常な細胞機能に要求され、そして細胞膜の重要な成分を形成する。コレステロールは循環中で多様な形態で存在し、そして主成分は、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLc、血清総コレステロールの約60%)であり、約25%が高密度リポタンパク質コレステロール(HDLc)の形態にあり、そして残りの循環物は超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDLc)及び他のリポタンパク質粒子である。血漿中の脂質レベルは、LDL受容体遺伝子座、アポリポタンパク質B、遺伝的多型、食事、肥満及びアルコール摂取等の遺伝的且つ環境的因子の両方によって決定される。脂質レベルの一般的な異常は、上昇したLDLc、低いHDLc、及び高いトリグリセリドレベル、またはこれらの脂質異常の組み合せを含む。
【0005】
血漿脂質レベルの一般的な異常は、アテローム硬化性血管疾患(AVD)の発達に寄与し、それは冠状動脈(虚血性心疾患を引き起こす)、脳循環(脳血管性疾患を引き起こす)、大動脈(血栓症になりやすい及び血管崩壊しやすい動脈瘤を生み出す)及び末梢血管、典型的には足の末梢血管(末梢血管性疾患及び間欠性跛行を引き起こす)に影響を及ぼし得ると上記に発表されている。
【0006】
虚血性心疾患(IHD)は、狭心症(心筋への不十分な血液供給によって引き起こされる胸痛)及び心筋梗塞(心筋の死)及び脳血管疾患(脳梗塞及び一過性脳虚血性発作を含む)を含む。男性の3人に1人及び女性の4人に1人はIHDの由来で死亡するだろうし、そして1990年のIHDの死亡率は、100,000人あたり58人であった。
【0007】
HDLcレベルは、AVDのリスクとHDLcに対する総コレステロールの増加した比率によって影響される脂質異常のパターンに逆相関し、上昇した空腹時トリグリセリドレベルと組合せれば単独の総コレステロールレベルよりもIHDのリスクを予測するための優れた判断材料になる。上昇した空腹時トリグリセリドレベルとの高い組み合せの比率は、しばしばアテローム性リポタンパク質表現型(ALP)に付随し、更に上昇した濃度の低密度LDL粒子の存在も含む。高血圧症、喫煙、糖尿病、肥満、座り姿勢(sedentarity)を含む他の心血管のリスクファクターは、アテローム性動脈硬化症にかかりやすくすることが知られている。
【0008】
炎症または内皮機能不全のいくつかのメディエータの血漿中レベルは、更なる心血管系事象を予測することが見出されている。これらのバイオマーマーは、制限されずに、hsCRP、IL-6、CD40L、IL-10、IL-18、MMP9、PlGF、循環微小粒子、分泌PLA2、循環内皮細胞、循環内皮前駆細胞を含む。
【0009】
アテローム性プラークは、大動脈の内皮の下に存在する脂肪線条として発症する。マクロファージの動員及びそれらのその後のLDL-誘導コレステロールの取り込みは、脂肪線条形成に寄与する主な細胞性事象である。多くの系のエビデンスは、脂質及びLDLのアポリポタンパク質B(アポB)成分における酸化的または非酸化的修飾が脂肪線条の最初の形成を促進することを示唆する(NAVAB等., Arterioscler. Thromb. Vase. Biol., vol .16 , p:831-842, 1996)。一般的にin vitroで天然LDLの酸化により試験される酸化LDL(oxLDL)の特殊な性質は、修飾の範囲に依存する。これはLDL粒子がLDL受容体によってかろうじて認識され得る"最小限"の修飾(mmLDL)から、アポB成分が断片化されてリシン残基が酸化脂質の反応機能停止産物により共有結合的に修飾される広範な酸化までの範囲であり得る。かかる粒子は、LDL受容体と結合せず、むしろマクロファージ及び平滑筋細胞上に発現したスカベンジャーと呼ばれる受容体と結合する。多数の炎症誘発及び動脈硬化誘発特質は、mmLDL及びoxLDL、並びにそれらの成分のせいとされてきた。例えば、リゾホスファチジル子リンまたは酸化したリン脂質は単球の接着、単球とT細胞の走化性を増加させて炎症誘発性遺伝子の発現を導くことができる。単球の動脈壁への動員及びその後のマクロファージへの分化は、細胞毒性及び炎症誘発性oxLDL粒子またはアポトーシス細胞を除去することによって最初に機能を提供し得るが、マクロファージの進行性の蓄積及びそれらのoxLDLの取り込みは、最終的にアテローム性動脈硬化症の発達を導く。本明細書で使用される用語"T細胞"は、TCRαの再配列(rearrangement)の有無を問わず、TCRβ遺伝座の表現型マーカー及び再配列を発現するリンパ球を含む。表現型マーカーはCD4及び/またはCD8の発現を含む。
【0010】
比較的に単純な脂肪線条からより複雑なプラークへの変化は、動脈壁の中間層から内弾性薄膜及び血管内膜または内皮下腔への平滑筋細胞の移動、または平滑筋前駆細胞の動員によって特徴付けられる。血管内膜の平滑筋細胞は、増殖して修飾リポタンパク質に取り込まれることによって泡沫細胞形成に寄与し、そして繊維性被膜の発達を導く細胞外マトリクスタンパク質を合成し得る(ROSS, 1999,前記;PAULSSON等., Arterioscler. Thromb. Vase. Biol., vol.20, p:10-17, 2000)。従って、進行したアテローム性プラークは、概略的に2つの部分:表層を作る繊維性被膜及び深層を作る脂質コアに分けられる。この細胞外マトリクス(ECM)は、コラーゲン、エラスチン、糖タンパク質及びプロテオグリカンを含む全く相違する巨大分子から成る(KATSUDA及びKAJI, J. Atheroscler. Thromb., vol.10(5), p:267-274,2003)。大量のECMは、維持されたプラークの強度と共に繊維性被膜に堆積するが、脂質堆積に加えて脂質コアにおいて、ECM悪化(degradation)が増強し、上昇した組織脆弱性を導く。このプラーク脆弱性は、次々とプラーク崩壊を惹起する原因となり始めるプラーク脆弱性を生じる。
【0011】
このプラーク発達の段階は、単球/マクロファージとT細胞の間の相互作用により影響され、細胞性応答及び体液性応答、並びに慢性炎症状態の多くの特徴の獲得をもたらす。重要なクロストークは、特に発達している病変の細胞の成分に発生すると思われる。病変のT細胞は活性化されて、Th1とTh2の両方のサイトカインを発現すると思われる(HANSSON等., Circ. Res. , vol.91(1), p: 281-91, 2002)。同様に、マクロファージ、内皮細胞、及び平滑筋細胞は、MHCクラスII分子及び多くの炎症性産物(TNF、IL-6及びMCP1等)のそれらの発現に基づき活性化されると思われる。
【0012】
アテローム性動脈硬化症の大部分のT細胞は、CD3+CD4+ T-細胞受容体(TCR)αβ+細胞である(JONASSON等., Arteriosclerosis, vol.6, p:131-138, 1986 ; STEMME等., Arterioscler. Thromb. , vol.12, p:206-211, 1992)。これはそれらがエンドソーム経路を介した取り込み及び処理後のマクロファージによって、それらに提示されたタンパク質抗原が認識されることを示唆する。それらの殆どは、T-ヘルパー(Th1)サブタイプであり、IFN-γ、IL-2、TNFα及び-βを分泌し、そしてマクロファージ活性化、血管活性化、及び炎症を引き起こす(FROSTEGARD等., Atherosclerosis, vol.145, p:33-43,1999)。例えば、IFN-γは炎症性サイトカイン及び分泌ホスホリパーゼA2の発現を誘導し、エイコサノイド、リゾホスファチジルコリン及び血小板活性因子(PAF)等の炎症性脂質メディエータの産生を導き得る。少なくとも3つの重要なTh1分化のための刺激は、アテローム性プラークに存在する。多くの病変細胞によって産生されるサイトカインIL-12及びIL-18は、Th1分化のための重要な刺激であり、且つ共にプラーク進行と不安定な性質を促進させることを示した(UYEMURA等., J. Clin. Invest., vol.97 , p:2130-8, 1996 ; MALLAT等., Circ. Res., vol .89, p:e41-e45, 2001)。早期T-リンパ球活性化タンパク質-1(Eta-1)とも呼ばれるオステオポエチンは、Th1応答のために必要とされ、そしてIL-12発現及び肉芽腫形成を促進する(ASHKAR等., Science, vol .287, p:860-4, 2000)。それはプラーク中のマクロファージ、内皮細胞、及び平滑筋細胞によって発現し(O'BRIEN等., Arterioscler. Thromb., vol .14, p:1648-54, 1994)、そして局所免疫や石化に重要であり得る。IL-4、IL-5及びIL-10等のTh2サイトカインは、末期のヒト病変においてTh1タイプのサイトカインよりも十分に存在していない(上記、FROSTERGARD等., 1999)。プロトタイプのTh2-関連サイトカインであるIL-4の欠乏は、アテローム性動脈硬化症形成の減少に付随してきたことから、Th2の前動脈硬化性役割、及びアテローム性プラーク進行が促進して過剰になったTh2応答(KING等., Arterioscler. Thromb. Vase. Biol., vol.22, p:456-461,2002)、更に動脈瘤形成(SHIMIZU等., J.Clin.Invest., vol.114, p:300-308, 2004) を示唆する。Th1とTh2の両応答の上昇を示すマウスは、増強したプラーク炎症を示す(GOJOVA等., Blood, vol.102, p:4052-4058,2003 ;ROBERTSON等., J. Clin. Invest., vol.112:1342-1350, 2003)。したがって、アテローム性動脈硬化症がThl-関連病原事象において最も発症しても、Th2応答の促進が疾患進行の抑制を常に導くであろうことを示唆することが分かる直接且つ確固たる証拠はない。更に、Th1支配的疾患であるヒトのアテローム性動脈硬化症とTh2-支配的プロセスである大動脈瘤の間のいくつもの関連性は、Th1とTh2の両方を介する応答の脱統制(deregulation)を示唆する(MALLAT及びTEDGUI , Expert. Opin. Biol. Ther., vol.4, p:1387-1393, 2004)。
【0013】
本明細書で使用される"Th1細胞"とは、IL-2、IFNγ及びリンホトキシン(LTはTNFβとも呼ばれる)を産する CD4+Tのサブセットを意味する。未感作T細胞からのTh1の分化は、外因性IFNγ、IL-12及びIL-18の存在に託される。IL-12Rβ2サブユニット及びIL-18rの発現は、Th1細胞のマーカーとして見なされ得る。Th1は遅延型過敏症等の細胞性免疫機能において、または寄生虫等の細胞内生物に対する防御において重要な役割を果たす。
【0014】
本明細書で使用される、"Th2細胞"とは、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10及びIL-13を産生する細胞の他のサブセットと意味し、IL-12及びIFNγは意味しない。Th2細胞発達のための本質的なサイトカインは、IL-4である。Th2細胞は、概してB細胞からの抗体産生を促進する。
【0015】
アテローム性動脈硬化症の治療のための現在のアプローチは、ヒト体内で循環している酸化LDLに対する自己抗体の同定(PALINSKI 等., Proc. Natl. Acad. Sci . USA., vol.86(4) ,p:1372-6 , 1989)、及び酸化LDLによる免疫付与がアテローム性動脈硬化症を約50%に減じる効果を有することの観察に起因する。このアプローチでは、アテローム性の効果は、oxLDLに存在するペプチド性配列に対して発生した抗体によって仲介される。それはこれらの抗体がマクロファージによるoxLDLの除去を促進し得ることを支持してきた。したがって、出願WO 02/080954は、人において"抗体形成" を引き起こすアポリポタンパク質Bのエピトープの同定及び抗体産生に対応する体液性免疫応答を誘導するためのかかるエピトープの有効量の使用を発表する。
【0016】
他のアプローチはTh1とTh2経路が重要な役割を果たすために現れる証拠に基づく。ゆえに、調節した免疫を促進する免疫調節処置は、アテローム性動脈硬化症を治療及び/または予防するための魅力的なツールを示すことができる。これはTr1細胞、CD4+CD25+細胞、またはTh3細胞等の調節的なT細胞産生を促進することによって達成され得る。因みに、IL-10及びTGFβは、Th1細胞によって誘発される炎症性プロセスを下方制御することができる2つの最も重要なサイトカインであるように思われる。実際にIL-10は、ヒトにおけるアテローム性プラークを発現させる多能性サイトカインであり、且つ主にマクロファージ、Tヘルパー(Th)タイプ2及びT調節タイプ-1リンパ球(Tr1細胞)によって産生する。ex vivoでのオボアルブミン(OVA)とIL-10による未感作T細胞の反復刺激は、in vivoで細胞注入後にTh1応答を妨げ得る免疫抑制特質を有するT細胞クローンの発生をもたらすことが示されている(GROUX等., Nature, vol .389(6652), p:737-42,1997)。それらの観察に基づき、近年の研究では、雌性アポ-Eヌルマウスに対するそれらの同種抗原を有するOVA-Tr1細胞の腹腔内投与(広範なin vitro)は、アテローム性プラークサイズの有意な減少をもたらすことを示している(MALLAT等., Circulation, vol .108(10), p:1232-7, 2003)。しかしながら、それらの方法の全ては、現実にアテローム性対象へのT調節細胞の投与を関連付ける。したがってこれらの方法は、まず対象由来のT細胞の単離、調節的T細胞を誘導すべき前記T細胞の抗原とIL-10による刺激、前記調節的T細胞の拡大そして最終的に前記細胞の当該対象への投与に関与するので、簡易且つ信頼できるものであるには程遠い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、当業界では、IL-10及び/またはTGFβを増強させて、アテローム性動脈硬化症における炎症性応答を弱める調節的な免疫応答を誘発するための新規の信頼性の高い方法の不変的な必要性が存在し、且つ認識されている。
【0018】
本発明の目的は、アテローム性動脈硬化症部位の中で特異的な調節的免疫応答、好適には調節的T細胞応答を生み出し、所望されないThl/Th2前アテローム性免疫(pro-atherogenic immunity)を予防するための組成物を提供することによってこの必要性を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
意外なことに、本発明者等は、抗体産生に相当する体液性応答を誘導しない濃度で、ALZETミニポンプによるアポB-100ペプチドのアポE-ヌルマウスへの長期に渡る皮下投与は、プラーク抗原特異的耐性の原因であるTreg応答の誘導をもたらすことを実証した。
【0020】
WO 02/080954は、特異的抗体発現の誘導に十分な投与量の、アポB-100に由来する1種以上のエピトープの注入によるアテローム性動脈硬化症の治療を発表する。したがって、WO 02/080954は、特異的抗体の産生に相当する体液性応答の誘導がない、"継続的"投与によるアテローム性動脈硬化症の治療を発表も示唆もしていない。本発明の方法によれば、抗体発現の誘導に付随する炎症性合併症のリスクが抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一つの観点は、アテローム性動脈硬化症を患う対象への予防処置または治療処置の方法に関し、アテローム性プラーム中に存在するタンパク質に由来する少なくとも1種のエピトープを含む組成物を、前記対象に、継続的に皮下投与または経皮投与するステップを含んで成る。
【0022】
本明細書で使用される用語"対象"は、げっ歯類、ネコ科、イヌ科、及び霊長類等の哺乳動物を意味する。対象は例えば、ウシ、ブタ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、及び最適にはヒトといった動物である。
【0023】
炎症性プロセス及び血栓症プロセスは、急性冠症候群(ACS)及び突然死を導くアテローム性プラーク合併症の主要因である。ヒトにおけるプラーク炎症及びプラーク崩壊の間の重要な関連を示す病理学的研究、及びプラーク発達とプラーク組成の両方における免疫炎症性応答の重要な役割を示す実験データに加えて、この10年間は、全身性炎症マーカーの役割及びそれらのアテローム性動脈硬化症の重篤な合併症との関連性の研究の重要性が増していることを示した。CRP、IL-6、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-lra)、血管細胞接着分子(VCAM)-1、及び近年ではミエロペルオキシダーゼを含むいくつかの循環炎症マーカーは、ACSを有する患者おいて上昇し、且つ追跡調査により臨床的な有害な予後に付随することが示されている。LIUZZO等(N. Engl. J. Med., vol .331(7), p:417-24, 1994)の画期的な研究に続き、多くの研究では、ACSを有する患者におけるCRPの予後値が追跡された。より高いCRPレベルは、不安定狭心症またはNSTEMTを有する患者のいくつかの無作為試験の追跡調査における増加したリスクに付随した(TIMI IIa(MORROW等., J. Am. Coll . Cardiol., vol 31(7), p:1460-5, 1998)、CAPTURE(HEESCHEN等., J. Am. Coll. Cardiol., vol 35(6), p:1535-42, 2000)、FRISC(LINDAHL等., N. Engl. J. Med., vol .343(16), p:1139-47, 2000)及びGUSTO-IV(JAMES等.,Circulation, vol .108(3), p;275-81, 2003)を含む)。早期に侵襲的な血管再開通術手順を割り当てられたACS患者におけるCRPレベルは、有害な予後も予測した(MUELLER, Circulation, vol .105(12), p:1412-1415, 2002)。内因性IL-18に関する本発明者等による以前の実験データ及び潜在的な前アテローム性役割を示す他のデータに基づき(MALLAT等., Circulation, vol .104(4), p:1598-603, 2001; MALLAT等., Circulation Res., vol .89(7), E41-5, 2001 ;WHITMAN等., Circulation Res., vol .90(2), E34-8, 2002)、冠動脈疾患の病歴を有する患者と健常中年男性の血漿レベルが測定されて、冠動脈事象の独立した予測の判断材料であることが見出された(BLANKENBERG等., Circulation, vol .107(12), p:1579-85, 2003 ; BLANKENBERG等., Circulation, vol.108(20), p:2453-9, 2003)。
【0024】
本発明に係る方法は、以下の冠動脈疾患のうちの一つを示すと診断された対象に供することができる:
−無症候性虚血を有し、または虚血を有しない、無症候性冠動脈疾患;
−安定狭心症または労作性狭心症等の心筋壊死を有さない慢性虚血性疾患;
−不安定狭心症等の急性虚血性疾患心筋壊死;
−ST上昇心筋梗塞または非-ST上昇心筋梗塞等の心筋壊死を有する虚血性疾患。
【0025】
組織虚血は、組織へ運搬される酸素を超える酸素が必要とされる場合に発症する。心筋虚血は、臨床的に(例えば、胸痛)、生物学的に(例えば、ミエロペルオキシダーゼ活性の上昇)、代謝的に、シンチグラフィーを用いて、または心電図を使用することによって(ST部分の典型的な変化、上方または下方へのST部分のずれ、反転または勾配非対称または大きな振幅でポジティブなT波等のT波の典型的な変化)診断され得る。無症候性虚血は、典型的にシンチグラフィーまたは24時間心電図記録法を用いて診断される。慢性安定狭心症は、心外膜の冠動脈における器質的狭窄に起因し、安静時の血流量を制限せず、心筋の酸素必要量が増加している間に流量制限をし始め得る。直径において50%減少、または横断面の領域において70%減少を生じる狭窄は、増加している心仕事量により起こる充血性応答を損なうのに十分である。選択性冠動脈造影法は、かかる病変を見つけるための判断基準であるが、より拡散的に罹患した動脈におけるCADの重篤性を過小評価し得る。狭心症は、顎、背中、または左腕または肩に広がり得る胸骨後圧として分類的に発表されている。それは吐き気、発汗、及び切迫した破滅感を付随し得る。安定狭心症は、典型的に身体運動、情緒的ストレス、食物及び冷気に曝されることによってもたらされる。狭心症はもともと男性で研究され、女性及び高齢者の狭心症の存在は、より紛れもない傾向にある。肉体的ストレスまたは薬物負荷による刺激的ストレス試験は、制御された条件で心筋虚血を導くことを試みる。虚血領域は、心電図記録法(ECG)における電気的に異常な領域、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)による正常に機能しない放射性核種摂取領域、または心エコー検査における壁運動の異常として検出され得る。典型的な狭心症を有する患者は、高い検査前のCAD可能性を有するが、陰性試験はその診断を除外しない。
【0026】
不安定狭心症は、初発の狭心症、安静時の狭心症、頻度と重篤度が増加した狭心症、または早期-MI開始後の狭心症として定義される。不安定狭心症の病理学的な相関は、非閉塞性、冠動脈内で血小板に富む血栓以外の流量制限の形成によるアテローム性プラークの崩壊である。不安定プラークは、薄い繊維性被膜と圧倒的多数の炎症性細胞を有する厚い脂質コアを有すると考えられる。脆弱なプラークの同定能は制限される。プラーク中の温度差を検出できる血管内超音波検査法と冠動脈内カテーテルは、研究における2つの方法である。不安定狭心症及び非Q-波心筋梗塞(NQWMI)は、病歴、試験、ECG及び研究室実験によって診断される。上記を留意すると、安静時疼痛は不安定狭心症の顕著な特徴である。ECGは虚血領域中で、虚血組織中での極性形成の異常によって引き起こされるST低下を示し得る。ECGの病的なQ波の欠乏は、梗塞が非貫壁性であることを意味する。長期の虚血は、心筋壊死及び心特異的分子であるトロポニンとクレアチンキナーゼ(CK-MB)の血流への放出をもたらす。これらの壊死マーカーは、MIの存在を定義し、且つ 一般的に過去に遡ってのみ明白である。したがって、不安定狭心症及びNQWMIは、一般的に初期管理の目的のために一緒にグループ分けされる。
【0027】
急性心筋梗塞症は、Q-波MI、貫壁性MI、またはST-上昇としても公知である。それはいきなり起こるか、または不安定狭心症が先行して起こり得る。急性MIの病的な相互関係を示すものは、閉塞性のフィブリン及び血小板に富む冠動脈内血栓によるアテローム性プラークの崩壊である。血管の完全な閉塞は、貫壁性心筋障害をもたらす。急性MIを有す患者の臨床像は、軽度の胸痛から心原性ショックまたは突然心臓死の範囲で変幻自在である。健康診断は異常心音のみを明らかにすることができ、または低血圧及び肺浮腫を実証し得る。ECGは、心筋障害を示す虚血領域におけるST-上昇、及び梗塞領域におけるQ波を明らかにする。CK-MB及びトロポニンレベルは上昇する。不良な予後を予測する臨床的特徴は、高齢患者、頻脈、低血圧、及び肺浮腫の存在、及び正常に機能しない組織内還流を含む。
【0028】
好適には、前記組成物の継続投与は、一定期間において、少なくとも1種の前記のエピトープが特異的な調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導するのに十分な量を一日用量として実施される。
【0029】
本明細書で使用される、特異的調節的免疫応答は、投与されたエピトープに対する耐性の誘導に相当する細胞性免疫応答である。それはアテローム性プラーク中にも存在し、またIL-10及びTGF-βの放出を通して、バイスタンダーと呼ばれる調節的免疫応答によって、特異的エピトープの微小環境に存在する任意の他のエピトープに対する免疫応答を弱めて、局所的な炎症応答を阻害する。
【0030】
本明細書で使用される"Treg応答"とは、特異的な"Treg細胞"または"Tr細胞"の応答に相当し、明確なT細胞のサブセットを言う。Tr細胞はTh1とTh2細胞から区別できるサイトカインパターンを示す。特にTr細胞は多量のIL-10を分泌した後、TGF-βを分泌する。Tr細胞は、概して、T細胞、特にTh1細胞の他の個体群により仲介される応答を抑制するそれらの能力によって、耐性の誘導において重要な役割を果たす。Tr細胞はTr1細胞及びTh3細胞を含み、多量のTGF-βの分泌によって特徴付けられる。Tr1細胞は、IL-5またはIL-13の有無を問わず、高レベルのIL-10及び/またはTGF-βを分泌するが、IL-2は殆ど分泌しないか、または全く分泌しない。Tr細胞の他のサブセットが存在し、それは特異的抗原であり、且つCD4+CD25+T細胞に対する耐性を誘導し得る。CD4+CD25+T細胞は、5〜10 %の末梢T細胞プールを含み、且つin vitroとin vivoの両方で免疫抑制能を示す。詳細には、CD4+CD25+T細胞は、Foxp3遺伝子を発現する。この調節活性は、TGFβまたは細胞間の接触に依存し得る。他のTh1-またはTh2-様細胞は、調節活性を発揮し得る。本明細書において使用される"Treg応答"は、細胞応答を提示する寛容抗原の導入に先立ち、または当該抗原の誘導に関連し得る。
【0031】
好都合には、前記組成物の前記継続的な投与は、7日〜30日の範囲内、好適には10日〜20日の範囲内、最適には約14日間に渡り実施される。この期間は1回〜数回繰り返してよい。
【0032】
好都合には、前記組成物の継続的な投与は、1日、体重1kgあたり0.05〜5000μg、好適には0.5〜1000μg及びより好適には5〜500μgの範囲の一日投与量に相当する。この1日投与量は、調節的免疫応答を誘導するのに十分であるが、抗体、特に前記エピトープに対して生み出される防御抗体の産生に相当する体液性免疫応答を誘導するには不十分である。前記防御抗体は、例えば、使用されたエピトープがアポリポタンパク質B由来のペプチドである場合、マクロファージ受容体による酸化的に損傷したLDL粒子の除去を促進することができる。
【0033】
アテローム性プラーク中に存在するタンパク質は、当業者に周知である。かかるタンパク質はアポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含み得る。好適には、当該タンパク質は、アポB-100、HSP 60及びHSP 70の中から選定され、最適な当該タンパク質はアポB-100である。
【0034】
これらのタンパク質由来のエピトープは、当業者によって容易に同定され得る。これらのエピトープは、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質、またはかかるタンパク質から由来し、且つMHCクラスIIの前後関係(context)で提示され得る10個超のアミノ酸、より好適には15個超のアミノ酸の長さの合成ペプチドに相当する。アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に相当するかかるエピトープは、XU等(Arterioscler Thromb. Vol .12 (7) , p: 789-799,1992)によって発表されたようにアテローム性プラークを粉砕することによって得ることができる。
【0035】
好適には、これらのエピトープは、合成ペプチドに相当する。典型的に、これらのペプチドの長さは、15〜25個のアミノ酸を含む。かかるエピトープは、WO 02/080954に発表されたアポB-100エピトープ、WYSOCKI等(Cardiovasc. Pathol , vol.11, p :238-243, 2002)及びCHAN等{Eur. J. Vase. Endovasc. Surg. Vol .18, p:381-385, 1999)に発表されたHSP60及びHSP70エピトープを含み得る。
【0036】
アポB-100由来のエピトープのためのペプチドは、それらの天然の状態で、またはリン脂質リポソームに導入後、LDLの酸化または非酸化的修飾が起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾に類似するアミノ酸修飾後に使用され得る。好適には、この修飾は、銅への暴露による酸化、マロンジアルデヒド(MDA)、ヒドロキシノネナールもしくは他のアルデヒド等のアルデヒド-修飾後の酸化、またはアセチル化の中から選定され、最適にはこの修飾は、マロンジアルデヒド(MDA)-修飾後の酸化に相当する。
【0037】
好適には、これらのエピトープは以下のペプチドに相当する:
【表1】

【0038】
より好適には、当該ペプチドは、IALDDAKINFNEKLSQLQTY (SEQ ID NO: 13)及びKTTKQSFDLSVKAQYKKNKH (SEQ ID NO: 14)の中から選定される。
【0039】
好都合には、前記少なくとも1種のエピトープは、抗体発現を引き起こすような任意のアジュバントまたはかかるアジュバントの任意の有効量と共に投与されない。
【0040】
本発明の他の観点は、アテローム性動脈硬化症を患う対象への予防的処置または治療的処置に適用されるキットに関し、当該キットは:
(i) アテローム性プラーク中に存在するタンパク質から由来する少なくとも1種のエピトープを有効量で含む組成物;及び
(ii) 継続的な方法で前記組成物を皮下または経皮的に投与することにより、対象への前記継続的な投与が特異的な調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導するための手段、を含んで成る。
【0041】
継続的な方法で組成物を皮下または経皮的に投与するための手段は、当業者に周知である。かかる手段はポンプを有する針を含む。
【0042】
前記手段は、7日〜30日間、好適には10日〜20日間の範囲内、最適には約14日間の前記組成物の投与を可能にする。この期間は1回〜数回繰り返してよい。
【0043】
更に、前記手段は、1日あたり、体重1kgあたり0.05〜5000μg、好適には0.5〜1000μg及びより好適には5〜500μgの範囲内の1日投与量に相当する前記組成物の継続的な投与を可能にする。
【0044】
好都合には、前記キットの組成物は、抗体の発現を引き起こすような任意のアジュバントまたはかかるアジュバントの任意の有効量を含まない。かかるアジュバントは当業界において周知である(例えば、非メチル化CGヌクレオチドを有するDNA)。
【0045】
本発明に係るキットの組成物は、以下の冠動脈疾患のうちの一つを示すと診断された対象に供することができる:
−無症候性虚血を有し、または虚血を有しない、無症候性冠動脈疾患;
−安定狭心症または労作性狭心症等の心筋壊死を有さない慢性虚血性疾患;
−不安定狭心症等の急性虚血性疾患心筋壊死;
−ST上昇心筋梗塞または非-ST上昇心筋梗塞等の心筋壊死を有する虚血性疾患。
【0046】
好都合には、前記組成物は、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に由来する少なくとも1種のエピトープを0.05μg〜250 mg/ミリリットル、好適には0.5μg〜50 mg/ミリリットル及び最適には5μg〜25 mgの範囲の量で含む。
【0047】
アテローム性プラーク中に存在するタンパク質は、当業者に周知である。かかるタンパク質はアポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含み得る。好適には、当該タンパク質は、アポB-100、HSP 60及びHSP 70の中から選定され、最適な当該タンパク質はアポB-100である。
【0048】
これらのタンパク質由来のエピトープは、当業者によって容易に同定され得る。これらのエピトープは、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質、またはかかるタンパク質に由来し、且つMHCクラスIIの前後関係を提示することができる10個超のアミノ酸、より好適には15個超のアミノ酸の長さの合成ペプチドに相当する。アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に相当するかかるエピトープは、XU等(1992、上記)によって発表されたようにアテローム性プラークを粉砕することによって得ることができる。
【0049】
好適にはこれらのエピトープは合成ペプチドに相当する。典型的に、これらのペプチドの長さは、15〜25個のアミノ酸を含む。かかるエピトープは、WO 02/080954に発表されたアポB-100エピトープ、WYSOCKI等(2002、上記)及びCHAN等(1999、上記)に発表されたHSP 60及びHSP 70エピトープを含み得る。
【0050】
アポB-100由来のエピトープのためのペプチドは、それらの天然の状態で、またはリン脂質リポソームに導入後、LDLの酸化または非酸化的修飾が起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾に類似するアミノ酸修飾後に使用され得る。好適には、この修飾は、銅への暴露による酸化、マロンジアルデヒド(MDA)、ヒドロキシノネナールもしくは他のアルデヒド等のアルデヒド-修飾後の酸化、またはアセチル化の中から選定され、最適にはこの修飾は、マロンジアルデヒド(MDA)-修飾後の酸化に相当する。
【0051】
好適には、これらのエピトープは以下のペプチドに相当する:
【表2】

【0052】
より好適には、当該ペプチドは、IALDDAKINFNEKLSQLQTY (SEQ ID NO: 13)及びKTTKQSFDLSVKAQYKKNKH (SEQ ID NO: 14)の中から選定される。
【0053】
当該組成物はビヒクルを含み得る。例えば、当該組成物はエマルション、マイクロエマルション、水中の油性エマルション、無水脂質、及び油中の水性エマルション、他のタイプのエマルションを含み得る。これらの組成物は、更に1種以上の添加物(例えば、希釈剤、賦形剤、安定化剤、保存剤)も含み得る。一般的に、Ullmann 's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 6th Ed(various editors , 1989-1998 , Marcel Dekker);及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (ANSEL等. 1994 , WILLIAMS & WILKINS)を参照。
【0054】
エピトープは緩衝剤または水中で、あるいはエマルション及びマイクロエマルション中に導入されて可溶化され得る。適切な緩衝剤は、制限されずにリン酸緩衝生理食塩水Ca++/Mg++遊離(PBS)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、標準の生理食塩水(水中、150 mM NaCl)、及びTris緩衝剤を含む。
【0055】
加水分解及び変性を含むペプチド不安定性または分解性の多くの原因が存在する。疎水性相互作用は、分子が一緒になった塊(即ち、凝集)の原因と成り得る。この結果はTreg応答の導入の減少を引き起こし得る。安定化剤は、かかる問題を減じるまたは予防するために付加され得る。
【0056】
安定化剤はシクロデキストリン及びそれらの誘導体を含む(米国特許No.5,730,969を参照)。適切な保存剤、例えばスクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン及びグリセリンは、更に最終製剤を安定化させるために付加され得る。安定化剤は、非イオン性界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロール、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、及びそれらの混合物から選定され、製剤に付加され得る。アルカリ金属塩または塩化マグネシウムの付加は、ペプチドを安定化され得る。当該ペプチドは、更にデキストラン、コンドロイチン硫酸、スターチ、グリコーゲン、デキストリン、及びアルギン酸塩から成る群から選定される糖質と接触することによっても安定化され得る。付加され得る他の糖は、単糖類、二糖類、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールは、ペプチドを安定化させることができ、且つ水混和性または水溶性である。適切なポリオールは、ポリヒドロキシアルコール、単糖類、及び二糖類であってよく、マンニトール、グリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、及びそれらのポリマーを含む。更に血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸及びリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解したゼラチン、及び硫酸アンモニウムを含む多様な賦形剤もペプチドを安定化させることができる。
【0057】
本発明の他の観点は、アテローム性動脈硬化症を患う対象への予防的処置または治療的処置に、継続的な経皮投与を適用するパッチに関し、当該パッチは:
(a) ドレッシング、及び
(b) アテローム性プラーク中に存在する、有効量のタンパク質由来の少なくとも1種のエピトープを含んで成り、それによって前記パッチのインタクト皮膚への適用が、特異的な調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導する。
【0058】
かかるパッチ製品は、米国特許出願2004/0028727 Al、Gregory M. GLENNにおいて発表されている。
【0059】
本発明に係るパッチは、以下の冠動脈疾患のうちの一つを示すと診断された対象に適用することができる:
−無症候性虚血を有し、または虚血を有しない、無症候性冠動脈疾患;
−安定狭心症または労作性狭心症等の心筋壊死を有さない慢性虚血性疾患;
−不安定狭心症等の急性虚血性疾患心筋壊死;
−ST上昇心筋梗塞または非-ST上昇心筋梗塞等の心筋壊死を有する虚血性疾患
【0060】
ドレッシングは、密封でも非密封でもよい。
【0061】
好都合には、前記有効量の少なくとも1種のエピトープは、前記少なくとも1種のエピトープの、1日あたり、体重1kgあたり0.05〜5000μg、好適には0.5〜1000μg。及びより好適には5〜500μgの範囲内にある1日投与量を得るために適応される。この一日投与量は、調節的免疫応答を誘導するのに十分であるが、抗体、特に前記エピトープに対して作り出される防御抗体の産生に相当する体液性免疫応答を誘導するには不十分である。それは、例えば使用されるエピトープがアポリポタンパク質B由来のペプチドである場合、マクロファージ受容体により酸化的に損傷したLDL粒子の除去を促成することができる。
【0062】
有効な治療のためのマルチプルパッチは、7日〜30日間、好適には10日〜20日間の範囲、最適には約14日間の期間に渡り頻繁に、または継続的に適用され得(例えば、米国特許No.5,049,387及びパッチの詳細の説明に関する実施例1);または同時に適用され得る。
【0063】
アテローム性プラーク中に存在するタンパク質は、当業者に周知である。かかるタンパク質はアポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含み得る。好適には、当該タンパク質は、アポB-100、HSP 60及びHSP 70の中から選定され、最適な当該タンパク質はアポB-100である。
【0064】
これらのタンパク質由来のエピトープは、当業者によって容易に同定され得る。これらのエピトープは、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質、またはかかるタンパク質に由来し、且つMHCクラスIIの前後関係を提示することができる10個超のアミノ酸、より好適には15個超のアミノ酸の長さの合成ペプチドに相当する。アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に相当するかかるエピトープは、XU等(1992、上記)によって発表されたようにアテローム性プラークを粉砕することによって得ることができる。
【0065】
好適にはこれらのエピトープは合成ペプチドに相当する。典型的に、これらのペプチドの長さは、15〜25個のアミノ酸を含む。かかるエピトープは、WO 02/080954に発表されたアポB-100エピトープ、WYSOCKI等(2002、上記)及びCHAN等(1999、上記)に発表されたHSP 60及びHSP 70エピトープを含み得る。
【0066】
アポB-100由来のエピトープのためのペプチドは、それらの天然の状態で、またはリン脂質リポソームに導入後、LDLの酸化または非酸化的修飾が起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾に類似するアミノ酸修飾後に使用され得る。好適には、この修飾は、銅への暴露による酸化、マロンジアルデヒド(MDA)、ヒドロキシノネナールもしくは他のアルデヒド等のアルデヒド-修飾後の酸化、またはアセチル化の中から選定され、最適にはこの修飾は、マロンジアルデヒド(MDA)-修飾後の酸化に相当する。
【0067】
好適には、これらのエピトープは以下のペプチドに相当する:
【表3】

【0068】
より好適には、当該ペプチドは、IALDDAKINFNEKLSQLQTY (SEQ ID NO: 13)及びKTTKQSFDLSVKAQYKKNKH (SEQ ID NO: 14)の中から選定される。
【0069】
パッチは、制御された、放出されたリザーバー(reservoir)またはマトリクス、または速度制御膜を含むことができ、エピトープの段階化された放出を可能にする。かかるパッチは、EP 0318385に発表されている。好適な前記エピトープは投与前に乾燥形態で維持される。その後、製剤の乾燥成分を含むリザーバーからの液体の放出、またはリザーバーへの液体の進入は、その成分を少なくとも部分的に溶かすだろう。
【0070】
当該製剤はビヒクルを含み得る。例えば、当該製剤は、AQUAFOR(WO 98/20734で発表されたようなペトロラタムのエマルション、鉱油、ミネラルワックス、羊毛脂、パンテノール、ビサボール(bisabol)、及びグリセリン)、エマルション、マイクロエマルション、ゲル、水中の油性エマルション、無水脂質、及び油中の水性エマルション、他のタイプのエマルション、脂肪ワックス、オイル、シリコーン、ゲル及び保湿剤を含み得る。
【0071】
当該製剤は、更に1種以上の添加物(例えば、希釈剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、乾燥剤、保存剤、着色剤)を含み得る。一般的に、Ullmann 's Encyclopedia of Industrial Chemistry(上記)及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(上記)を参照。
【0072】
好都合には、前記製剤は、抗体発現を引き起こすような任意のアジュバントまたはかかるアジュバントの任意の有効量を含まない。
【0073】
エピトープは、緩衝剤または水、または有機溶媒(アルコールまたはDMSO等)に溶解されてよく、またはゲル、エマルション、マイクロエマルション、及びクリームに導入してもよい。適切な緩衝剤は、制限されずにリン酸緩衝生理食塩水Ca++/Mg++遊離(PBS)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、標準生理食塩水(水中、150 mM NaCl)、及びTris緩衝剤を含む。中性の緩衝剤に溶解しないエピトープは、10 mM酢酸に溶かし、その後、PBS等の中性緩衝剤により所望される容積に希釈され得る。エピトープが酸性pHでのみ溶解性である場合、酸性pHでの酢酸塩-PBSは、希酢酸中に可溶化にさせた後、希釈剤として使用され得る。グリセロールは、本発明にて使用するために適した非水性緩衝剤であり得る。
【0074】
加水分解及び変性を含むペプチド不安定性または分解性の多くの原因が存在する。疎水性相互作用は、分子が一緒になった塊(即ち、凝集)の原因と成り得る。この結果はTreg応答の導入の減少を引き起こす。安定化剤は、かかる問題を減じ、または予防するために付加され得る。
【0075】
当該製剤、またはその製造における任意の中間体は、薬剤(即ち、抗凍結剤及び乾燥安定剤)で前処理してよく、その後、氷結晶形成を最小限にする冷却速度及び最終温度にかける。適切な凍結剤の選定及び予め選定した乾燥パラメータの使用により、大部分の任意の製剤は、適切な所望される最終的な使用のために冷凍調製され得る。
【0076】
安定剤は、シクロデキストン及びその誘導体を含む(米国特許No. 5, 730 , 969を参照)。適切な保存剤であるスクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン及びグリセリン等は、最終製剤を安定化させるためにも付加され得る。非イオン性界面活性剤、D-グルコース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-ガラクツロン酸、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルスターチ、及びそれらの混合物から選定される安定剤は、当該製剤に付加され得る。アルカリ金属塩または塩化マグネシウムの付加は、ペプチドを安定化し得る。当該ペプチドは、更にデキストラン、コンドロイチン硫酸、スターチ、グリコーゲン、デキストリン、及びアルギン酸塩から成る群から選定される糖質と接触させることによっても安定化され得る。付加され得る他の糖は、単糖類、二糖類、糖アルコール、及びそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールは、ペプチドを安定化させることができ、且つ水混和性または水溶性である。適切なポリオールは、ポリヒドロキシアルコール、単糖類、及び二糖類であってよく、マンニトール、グリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、及びそれらのポリマーを含む。更に血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸及びリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解したゼラチン、及び硫酸アンモニウムを含む多様な賦形剤もペプチドを安定化させることができる。
【0077】
本発明の他の観点は、アテローム性動脈硬化症を患う患者に、特異的な調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導する、継続的な皮下投与または経皮投与による予防または治療において使用するための、医薬を製造するためのアテローム性プラーク中に存在するタンパク質から由来する少なくとも1種のエピトープの使用に関する。
【0078】
本発明に係る医薬は、以下の冠動脈疾患のうちの一つを示すと診断された対象に投与され得る:
−無症候性虚血を有し、または虚血を有しない、無症候性冠動脈疾患;
−安定狭心症または労作性狭心症等の心筋壊死を有さない慢性虚血性疾患;
−不安定狭心症等の急性虚血性疾患心筋壊死;
−ST上昇心筋梗塞または非-ST上昇心筋梗塞等の心筋壊死を有する虚血性疾患。
【0079】
好適には、前記医薬は、一定期間において、少なくとも1種の前記のエピトープの、調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導するのに十分な一日用量で投与される。
【0080】
アテローム性プラーク中に存在するタンパク質は、当業者に周知である。かかるタンパク質はアポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含み得る。好適には、当該タンパク質は、アポB-100、HSP 60及びHSP 70の中から選定され、最適な当該タンパク質はアポB-100である。
【0081】
これらのタンパク質由来のエピトープは、当業者によって容易に同定され得る。これらのエピトープは、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質、またはかかるタンパク質から由来し、且つMHCクラスIIの前後関係に示され得る10個超のアミノ酸、より好適には15個超のアミノ酸の長さの合成ペプチドに相当する。アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に相当するかかるエピトープは、XU等(2002、上記)によって発表されたようにアテローム性プラークを粉砕することによって得ることができる。
【0082】
好適にはこれらのエピトープは合成ペプチドに相当する。典型的に、これらのペプチドの長さは、15〜25個のアミノ酸を含む。かかるエピトープは、WO 02/080954に発表されたアポB-100エピトープ、WYSOCKI等(2002、上記)及びCHAN等(1999、上記)に発表されたHSP 60及びHSP 70エピトープを含み得る。
【0083】
アポB-100由来のエピトープのためのペプチドは、それらの天然の状態で、またはリン脂質リポソームに導入後、LDLの酸化または非酸化的修飾が起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾に類似するアミノ酸修飾後に使用され得る。好適には、この修飾は、銅への暴露による酸化、マロンジアルデヒド(MDA)、ヒドロキシノネナールもしくは他のアルデヒド等のアルデヒド-修飾後の酸化、またはアセチル化の中から選定され、最適にはこの修飾は、マロンジアルデヒド(MDA)-修飾後の酸化に相当する。
【0084】
好適には、これらのエピトープは以下のペプチドに相当する:
【表4】

【0085】
より好適には、当該ペプチドは、IALDDAKINFNEKLSQLQTY (SEQ ID NO: 13)及びKTTKQSFDLSVKAQYKKNKH (SEQ ID NO: 14)の中から選定される。
【0086】
好都合には、前記医薬は、抗体の発現を引き起こすような任意のアジュバントまたはかかるアジュバントの任意の有効量を含まない。
【0087】
好都合には、前記医薬は、7日〜30日の範囲内、好適には10日〜20日の範囲内、最適には約14日間に渡り投与される。この期間は1回〜数回繰り返してよい。好都合には、前記医薬は、1日あたり、体重1kgあたり0.05〜5000μg、好適には0.5〜1000μg及びより好適には5〜500μgの範囲の1日投与量で投与される。この1日投与量は、調節的免疫応答を誘導するのに十分であるが、抗体、特に前記エピトープに対して生み出される防御抗体の産生に相当する体液性免疫応答を誘導するには不十分である。それは、例えば、使用されるエピトープがアポリポタンパク質B由来のペプチドである場合、酸化的に損傷したLDL粒子の除去を、マクロファージ受容体によって促進することができる。
【0088】
本発明は、その範囲を制限することを意図するものではない、以下の実施例によって更に説明される。
【実施例1】
【0089】
1.ペプチド
*P210:ヒトアポB-100由来ペプチド(SEQ ID NO: 14、KTTKQSFDLSVKAQYKKNKH、アミノ酸3136〜3155個)。本ペプチドに関するヒト(アクセス番号: P04114)とマウス(アクセス番号: XP_137955)の配列間の相同性は90%である。
【0090】
*MDA P210:マロンジアルデヒド(MDA)-修飾ヒトアポB-100誘導ペプチド。天然P210のフラクションを0.5 mol/L MDAによって、3時間、37℃で修飾した。当該MDA-修飾ペプチドを、18時間、4℃で、1 mmol/L EDTAを含むPBSに対して、数回変化させて透析した。P210のMDA修飾は、チオバルビツール酸反応性物質アッセイを用いて評価した。
【0091】
*P240:ヒトアポB-100由来ペプチド(SEQ ID NO: 37、FPDLGQEVALNANTKNQKIR、アミノ酸3586〜3605個)。ヒト(アクセス番号: P04114)とマウス(アクセス番号: XP_137955)間の相同性は、86%アミノ酸3591〜3604(SEQ ID NO: 39、QEVALNANTKNQKI)である。
*コントロール:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)。
【0092】
2.ペプチド送達ポンプ処置
雄性アポE-/-マウス(B&M、RY、デンマーク、11週齢)に、1日あたりPBSまたは10μgのP210、MDA-P210またはP240を、14日間、0.25μl/hの速度で分散する、浸透圧ミニポンプ(ALZET1002、DURECT CORPORATION)を皮下に移植した。
【0093】
その後、当該マウスを更に6週間そのままにし、19週齢で殺した。
【0094】
3.脾臓及びリンパ節細胞の精製及び培養
T細胞を脾臓からまたは脱水(draining)リンパ節から、抗-CDllb(Ml/70)、抗B220、抗-CD8及び抗-NK細胞(DX5)による陰性選択によって精製し、その後、抗-ラットIg(DYNAL)で覆った電磁ビーズの混合物により枯渇(depletion)させた。直接結合した抗-CDllcビーズ(クローンN418;MILTENYI BIOTEC)を用いる抗-CDllcによる陽性選択によって、CDllc+樹状細胞を精製した。
【0095】
サイトカイン測定のために、精製したT細胞を、抗-CD3(5μg/ml)及び抗-CD28(lμg/ml)抗体が存在する96-ウェルプレート中で培養した。浮遊物を24時間で(IL-4測定のため)、及び48時間で(IL-5、IL-10及びIFN-γ測定のため)収集し、そしてELISAによりサイトカインレベルをアッセイした。
【0096】
細胞増殖アッセイのために、精製したCD4+細胞(50 000)をCDllc+細胞(10 000)及び抗-CD3抗体(3μg/ml)と72時間混合した。[3H]-チミジン(lμCi;PERKIN ELMER)を細胞培養の最後の18時間に付加した。
【0097】
共培養の実験は、調節的T細胞機能を評価するために実施した。更に単離した樹状細胞をそれらのサイトカイン生産について評価した。
【0098】
4. アテローム性プラークの大きさ及び組成の分析
総血漿中コレステロール及びHDLコレステロールを商業的に入手できるコレステロールキット(SIGMA)を用いて、製造業者の指示に従って測定した。形態学的試験及び免疫組織化学的試験を大動脈洞及び胸大動脈(腕頭動脈から腎臓の血管に渡る)中で実施した。コラーゲン繊維はシリウスレッドで染色した。その後、免疫組織化学的分析を実施した。以下のプライマー抗体を使用した:マクロファージの特異的マーカーとしてMOMA-2(BIOSOURCE INTERNATIONAL);抗-マウスCD3-(SANTA CRUZ);抗-平滑筋アクチン、アルカリホスファターゼ接合体、クローン1A4(SIGMA);及び抗-IL-10抗体(SANTA CRUZ)。形態学的分析は、自動画像処理装置(HISTOLAB, MICROVISION)によって実施した。
【0099】
5.ペプチドに対する抗体滴定測定
マイクロタイタープレート(Nunc MaxiSorp, Nunc , Roskilde,デンマーク)をコーティングするために、4℃で一晩、培養中で、天然またはMDA-修飾ペプチド210及び240を使用した(それぞれのPBS中、10μg/ml、pH 7.4)。コーティングしたプレートをPBS、0.05%Tween-20で洗浄し、その後、Tris-緩衝生理食塩水(TBS, Pierce)で5分間、室温でSuperBlockにより遮断し、マウス血清を、TBS-0.05%Tween-20中で1:50に希釈し、2時間、室温で、そして一晩、4℃で培養した。すすいだ後、沈殿物をビオチン化ヤギ抗-マウスIgMまたはIgG抗体(JACKSON IMMUNORESEARCH, West Grove, Pa)を用いて検出し、それを2時間、室温で培養した。プレートを洗浄し、そして結合したビオチン化抗体をアルカリホスファターゼ結合ストレプトアビジン(SIGMA)により検出した。呈色反応は、ホスファターゼ基質キット(Pierce)を用いて発達させた。405 nmでの吸光度は、室温での培養の1時間後に測定した。バックグラウンド吸光度を差し引いた後、平均値を算出した。
【0100】
6.機能的調節的T細胞活性の測定
Glutamax、10% FCS、0.02 mM 2β-メルカプトエタノール及び抗体を補充したRPMI 1640中のCD4+CD25-細胞を、1:1、1:2、1:4、1:8のCD25-/CD25+比率で、平底の96-ウェルマイクロプレート(0.5xl05細胞/ウェル;総容量200μl/ウェル)の中で、CDllc+樹状細胞及びCD4+CD25+調節的T細胞と共に共培養した。細胞を精製した溶解性CD3-特異的抗体(1μg/ml、Pharmingen)で刺激した。細胞を37℃で、72時間培養し、そして1μCiの[3H]チミジン(Amersham)で、培養の最後の18時間パルスをかけた。チミジン導入は、TopCount NXTシンチレーションカウンター(Perkin Elmer)を用いて評価した。
【0101】
7. 結果
総血漿中コレステロールレベルは、異なる群において相違しなかった:PBSを受けたコントロールマウスで4.82±0.60 g/1、MDA-P210を受けたマウスで5.84±0.61 g/1、P210を受けたマウスで4.66±0.45 g/1、及びP240を受けたマウスで4.95±0.59 g/1。
【0102】
PBSを受けたコントロール群での病変の大きさは、80 664±14 541μm2であった。MDA-P210(26 479±4 303μm2、p<0.0007)及びP210(32 301±11 307μm2、p<0.003)を受けたマウスで顕著な減少があり、及びP240(41 688±10 301μm2、p<0.02)を受けたマウスはより少ないものであるが、有意な減少があった。
【0103】
MDA-P210を受けたマウス由来のCDllc+細胞が存在する中でのコントロールマウス由来のCD4+細胞の増殖は、PBSを受けたコントロールマウス由来のCDllc+細胞が存在するものと比較して顕著に減少し(9500 cpm、対、20 000 cpm)、MDA-P210を受けたマウス由来の樹状細胞が耐性能を獲得したことを示した。
【0104】
天然またはMDA-修飾ペプチドに対するIgG抗体レベルは、異なる群において有意に異ならなかった。P210に対するIgGは、P210、MDA-P210、P240及びPBSの群単位においてそれぞれ、0.81±0.22、0.51±0.07、0.47±0.09及び0.94±0.72の吸光度であった。MDA-P210に対するIgGは、P210、MDA-P210、P240及びPBSの群単位において、それぞれ、1.45±0.49、0.83±0.28、0.62±0.ll及び0.82±0.42の吸光度であった。P240に対するIgGは検出されなかった。MDA-P240に対するIgGは、P210、MDA-P210、P240及びPBSの群単位において、それぞれ0.080±0.038、0.041±0.007、0.037±0.007及び0.049±0.019の吸光度であった。
【0105】
天然またはMDA-修飾ペプチドに対するIgM抗体レベルは、異なる群において有意に異ならなかった。P210に対するIgMは、P210、MDA-P210、P240及びPBSの群単位においてそれぞれ、1.17±0.22、0.55±0.25、0.79±0.45及び1.05±0.30の吸光度であった。MDA-P210に対するIgMは、P210、MDA-P210、P240及びPBSの群単位において、それぞれ、1.38±0.04、1.30±0.13、0.79±0.45及び1.39±0.08の吸光度であった。P240に対するIgMは検出されなかった。MDA-P240に対するIgMは、P210、MDA-P210、P240及びPBSの群単位において、それぞれ1.80±0.41、1.24±0.40、1.34±0.52及び1.14±0.62の吸光度であった。
【実施例2】
【0106】
1.ペプチド
*P210:ヒトアポB-100由来ペプチド(SEQ ID NO:14、KTTKQSFDLSVKAQYKKNKH、アミノ酸3136〜3155個)。このぺプチドに関するヒト(アクセス番号:P04114)及びマウス(アクセス番号:XP_137955)の配列間の相同性は90%である。
【0107】
*MDA P210:マロンジアルデヒド(MDA)-修飾ヒトアポB-100誘導ペプチド。天然のP210のフラクションを0.5 mol/L MDAで、3時間、37℃で修飾した。当該MDA-修飾ペプチドを、18時間、4℃で、1 mmol/L EDTAを含むPBSに対して、数回変化させて透析した。P210のMDA修飾は、チオバルビツール酸反応性物質アッセイを用いて評価した。
【0108】
*P240:ヒトアポB-100ペプチド(SEQ ID NO: 37、FPDLGQEVALNANTKNQKIR、アミノ酸3586〜3605個)。ヒト(アクセス番号: P04114)とマウス(アクセス番号: XP_137955)間の相同性は、86%アミノ酸3591〜3604(SEQ ID NO: 39、QEVALNANTKNQKI)である。
【0109】
*コントロール:トリオボアルブミン(OVA)ペプチド(SEQ ID NO:40、ISQAVHAAHAEINEAGR、アミノ酸323〜339)。
【0110】
2.ペプチド送達ポンプ処置
雄性アポE-/-マウス(B&M、RY、デンマーク、11週齢)に、コントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または1日あたり10μgのP210、MDA-P210またはP240を14日間、0.25μ/1の速度で分散する、浸透圧ミニポンプ(ALZET1002、DURECT CORPORATION)を皮下に移植した。オボアルブミン(OVA)ペプチド(323-339)を受ける更なるマウス群をコントロールとして設けた。
【0111】
その後、これらのマウスを更に6または10週間保ち、19または23週齢で殺した。
【0112】
3. 脾臓及びリンパ節細胞の精製及び培養
CD4+細胞を抗-CDllb(Ml/70)、抗B220、抗CD8及び抗-NK細胞(DX5)による陰性選択によって、脾臓及び脱水リンパ節から精製し、その後、抗-ラットIg(DYNAL)で覆った電磁ビーズの混合物により枯渇(depletion)させた。CDllc+樹状細胞を直接結合した抗-CDllcビーズ(クローンN418;MILTENYI BIOTEC)を用いた抗-CDllcによる陽性選択によって精製した。
【0113】
サイトカイン測定のために、精製したT細胞を、抗-CD3(5μg/mL) + 抗-CD28(lμG/mL)抗体が存在する96-ウェルプレート中で培養した。浮遊物を24時間(IL-4測定のため)及び48時間(IL-5、IL-10及びIFN-γ測定のため)に収集し、そしてELISAでサイトカインレベルをアッセイした。細胞増殖アッセイについては、精製したCD4+細胞(50 000)をCDllc+樹状細胞(10 000)と抗-CD3抗体(3μg/ml)と共に72時間混合した。[3H]-チミジン(lμCi; PERKIN ELMER)を細胞培養の最後の18時間で付加した。
【0114】
共培養実験は、調節的T細胞機能を上昇させるために実施した。また単離した樹状細胞について、それらのサイトカイン産生を評価した。
【0115】
4. アテローム性プラークの大きさ及び組成の分析
総血漿中コレステロール及びHDLコレステロールを、商業的に入手され得るコレステロールキット(SIGMA)を用いて、製造業者の指示通りに測定した。形態学的試験及び免疫組織化学的試験を大動脈洞及び胸大動脈(腕頭動脈から腎臓血管に渡る)中で実施した。コラーゲン繊維は、シトラスレッドで染色した。その後、免疫組織学的分析を行った。以下の一次抗体を用いた:マクロファージのための特異的抗体としてMOMA-2(BIOSOURCE INTERNATIONAL);抗-マウスCD3-(SANTA CRUZ);抗-平滑筋アクチン、アルカリホスファターゼ接合体、クローン1A4(SIGMA);及び抗-IL-10抗体(SANTA CRUZ)。形態学的分析は、自動画像処理装置により実施した(HISTOLAB, MICROVTSION)。
【0116】
5. 結果
雄性アポE-/-マウス(11-週齢)に、コントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、または1日あたり10μgのP210、MDA-P210またはP240を、14日間、0.25μl/hの速度で分散する、浸透圧ミニポンプ(ALZET1002)を皮下に移植した。オボアルブミン(OVA)ペプチド(323-339)を受ける更なるマウス群をコントロールとして設けた。マウスを更に6週間維持し、そして19週齢で殺した。総血漿中コレステロールレベルは、異なる群において相違しなかった:PBSを受けたコントロールマウスにおいて5.09±0.78 g/L、P210を受けたマウスにおいて4.94±0.39 g/L、MDA-P210を受けたマウスにおいて5.49±0.50 g/L、P240を受けたマウスにおいて4.81±0.51 g/L、及びOVAを受けたマウスにおいて5.51±0.78。
【0117】
PBSを受けたコントロール群における病変の大きさは、67 001±12 194μm2 (n=9)であった。P210(27 428±7 735μm2、n=9、p<0.0015)、MDA-P210(31 791±4 284μm2、n=ll、p<0.0029)またはP240(38 080±7 546μm2、n=8、p<0.02)を受けたマウスでは顕著に減少したが、OVA(52 720±10 227 , n=5 , p=0.31 )を受けたマウスでは有意な相違はなかった。
【0118】
14日間の低用量のアポBペプチドの皮下投与の抗動脈硬化性作用が長時間持続するか否かを評価するために、14日間に渡りPBS、P210、MDA-P210またはP240を分散する浸透圧ミニポンプを移植した雄性アポE-/-マウス(11週齢)を更に10週間維持し、そして23週齢で殺した。
【0119】
総血漿中コレステロールレベルは、異なる群において相違しなかった:PBSを受けたマウスにおいて6.38±0.87 g/L、P210を受けたマウスにおいて5.40±0.67 g/L、MDA-P210を受けたマウスにおいて4.67±0.89 g/L、P240を受けたマウスにおいて6.64±0.64 g/L。
【0120】
PBSを受けたコントロール群における病変の大きさは、96 203±13 498μm2(n=6)であった。P210を受けたマウスにおいて顕著に減少したが(58 543±16 735μm2、n=6、p<0.05)またはP240(53 920±8 045μm2、n=8、p<0.02)、MDA-P210を受けたマウスでは相違しなかった(69 026±12 443μm2、n=4、p=0.19)。
【0121】
アポEヌルマウスへのp210ペプチドとp210 MDAの継続的な投与は、より安定な表現型に向かうプラーク組成中の変化と共に、アテローム性プラーク及び関連の炎症の縮小をもたらす。コントロールペプチドの投与では、有意な改善は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アテローム性動脈硬化症を患う対象に特異的調節的免疫応答を誘導する、継続的な皮下投与または経皮投与による予防または治療において使用するための医薬を製造するための、アテローム性プラーク中に存在するタンパク質由来の少なくとも1種のエピトープの使用。
【請求項2】
前記医薬が、以下の冠動脈疾患のうちの一つを示すと診断された対象に投与され得る請求項1に記載の使用:
−無症候性虚血を有し、または虚血を有しない、無症候性冠動脈疾患;
−安定狭心症または労作性狭心症等の心筋壊死を有さない慢性虚血性疾患;
−不安定狭心症等の急性虚血性疾患心筋壊死;
−ST上昇心筋梗塞または非-ST上昇心筋梗塞等の心筋壊死を有する虚血性疾患。
【請求項3】
前記医薬が、一定期間、且つ前記少なくとも1種のエピトープが特異的調節的免疫応答を誘導するのに十分な一日用量で投与される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記アテローム性プラーク中に存在するタンパク質が、アポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含んで成る群から選定される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記エピトープが10個超の長さのアミノ酸由来の合成ペプチドに相当する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記合成ペプチドが、アポB-100に由来する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記合成ペプチドが、その天然の状態において、或いはLDLの酸化または非酸化的修飾の間に起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾と類似するアミノ酸の修飾後に使用される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記ペプチドが以下を含んで成る群から選定される、請求項6または7に記載の使用:
【表1】

【請求項9】
前記医薬が7日〜30日、好適には10日〜20日の期間で投与される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬が1日あたり、1kgの体重あたり、0.05〜5000μgの範囲、好適には0.5〜1000μgの範囲の一日投与量で投与される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
アテローム性動脈硬化症を患う対象への予防処置または治療処置のために適応されるキットであって:
(i) アテローム性プラーク中に存在するタンパク質に由来する有効量の少なくとも1種のエピトープを含む組成物;及び
(ii) 前記組成物を継続的な方法で皮下的にまたは経皮的に投与するための手段を含んで成り、それによって対象への前記継続的な投与が、特異的調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導するキット。
【請求項12】
前記組成物が抗体発現を誘導するような任意のアッジュバント、またはかかるアジュバントの任意の有効量を含まないことを特徴とする、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記組成物が、アテローム性プラーク中に1ミリリットルあたり、0.05μg〜250 mg、好適には1ミリリットルあたたり0.5μg〜50 mgの範囲内の量で存在するタンパク質に由来する少なくとも1種のエピトープを含むことを特徴とする、請求項11または12に記載のキット。
【請求項14】
前記アテローム性プラーク中に存在するタンパク質が、アポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含んで成る群から選定される、請求項11〜13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
前記エピトープが10個超の長さのアミノ酸由来の合成ペプチドに相当する、請求項11〜14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
前記合成ペプチドがアポB-100に由来する、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
前記合成ペプチドが、その天然の状態において、或いはLDLの酸化または非酸化的修飾の間に起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾と類似するアミノ酸の修飾後に使用される、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記ペプチドが以下を含んで成る群から選定される、請求項16または17に記載のキット:
【表2】

【請求項19】
継続的な経皮投与による予防的処置または治療的処置を、アテローム性動脈硬化症を患う対象に適応するためのパッチであって:
(a)ドレッシング、及び
(b)アテローム性プラーク中に存在するタンパク質から由来する、有効量の少なくとも1種のエピトープを含んで成り、それによって前記パッチのインタクト皮膚への適用が、特異的調節的免疫応答、好適にはTreg応答を誘導するパッチ。
【請求項20】
前記有効量の少なくとも1種のエピトープが、1日あたり、体重1kgあたり、0.05〜5000μg、好適には0.5〜1000μg、及びより好適には5〜500μgの範囲内の前記少なくとも1種のエピトープの一日投与量を得るために適応される、請求項19に記載のパッチ。
【請求項21】
前記アテローム性プラーク中に存在するタンパク質が、アポリポタンパク質B-100(アポB-100、ヒト、アクセス番号 P04114)、コラーゲンタイプI(ヒト、アクセス番号 CAA67261 ; AAB59577)、タイプIII(ヒト、アクセス番号 P02458)、タイプIV(ヒト、アクセス番号 P02462)及びタイプV(ヒト、アクセス番号 CAI17260)、エラスチン(ヒト、アクセス番号 P15502)、ラミニン(ヒト、アクセス番号 P024043 ; Q16363)、エンタクチン/ニドゲン(ヒト、アクセス番号 P14543)、フィブロネクチン(ヒト、アクセス番号 NP_997647;NP_997643;NP_997641;NP_997640;NP_997639;NP_997635)、トロンボスポンジン(ヒト、アクセス番号 NP_003237)、ビトロネクチン(ヒト、アクセス番号 P04004)、テネイシン(ヒト、アクセス番号 P24821)、オステオポンチン(ヒト、アクセス番号 NP_000573)、プロテオグリンカン(グリコリン(glycorin)、デコリン(ヒト、アクセス番号 AAV38603)、バーシカン、ヒアルロナン)、メジン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、ラクタドヘリン(ヒト、アクセス番号 Q08431)、β-アミロイド(ヒト、アクセス番号 P05067)、HSP 60(ヒト、アクセス番号 AAA36022.1)またはHSP 70(ヒト、アクセス番号 BAA24847.1)を含んで成る群から選定される、請求項19または20に記載のパッチ。
【請求項22】
前記エピトープが10個超の長さのアミノ酸由来の合成ペプチドに相当する、請求項19〜21のいずれか1項に記載のパッチ。
【請求項23】
前記合成ペプチドがアポB-100に由来する、請求項22に記載のパッチ。
【請求項24】
前記合成ペプチドが、その天然の状態において、或いはLDLの酸化または非酸化的修飾の間に起こり得るアポB-100タンパク質の多様な修飾と類似するアミノ酸の修飾後に使用される、請求項23に記載のパッチ。
【請求項25】
前記ペプチドが以下を含んで成る群から選定される、請求項23または24に記載のパッチ:
【表3】


【公表番号】特表2008−526727(P2008−526727A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548954(P2007−548954)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000291
【国際公開番号】WO2006/072888
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(500248467)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ サントゥ エ ドゥ ラ ルシェルシェ メディカル(イーエヌエスエーエールエム) (19)
【Fターム(参考)】