説明

アテローム硬化症、メタボリックシンドロームおよびそれらの症状を予防および処置するためのD−タガトースベースの組成物および方法

スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分またはその塩もしくは誘導体とともにD−タガトースを含む、薬学的組成物。アテローム硬化症、メタボリックシンドローム、肥満または糖尿病を予防または処置するために、哺乳動物に、必要に応じてスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはその塩もしくは誘導体と組み合わせた、薬学的に有効な量のD−タガトースを投与することによる、予防方法および治療方法。一つの実施形態において、本発明は、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満および糖尿病またはそれらの任意の組み合わせの予防もしくは処置またはその両方を有利に改善し得る、組成物およびそれを使用する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、薬学的に受容可能な量のスチルベン成分またはスチルベノイド成分またはその塩もしくは誘導体またはそれらの組み合わせと組み合わせて、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む、薬学的組成物に関する。薬学的に有効な量のD−タガトースまたはその塩もしくは誘導体または上記された組成物のうちのいずれかを、哺乳動物に投与することによって、アテローム硬化症、メタボリックシンドローム、肥満および糖尿病を予防または処置するための方法もまた含まれる。本発明はさらに、そのような組成物を含む安定な食品および薬学的な製品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
(3S,4S,5R)−1,3,4,5,6−ペンタヒドロキシ−ヘキサン−2−オンまたはNaturlose(登録商標)としても公知なD−タガトース(TAG)は、ケトヘキソース、すなわち、フルクトースの異性体であり、かつ機能的な甘味料である。それは、白色無水の結晶性の個体であり、180.16の分子量およびC12の実験式を有する。それは、スクロースの甘さの約92%の甘さであり、栄養物または低カロリー甘味料としての使用について報告されている。ヒトに摂取されたTAGのほんのおよそ25%が血流に吸収される。TAGは、滅菌かつ粉末化された牛乳、ホットココア、種々のチーズおよびヨーグルトを含む、加熱された酪農製品に見出される、天然に存在する分子であるが、TAGはまた化学的に製造され得る。種々の特許は、TAGに関する情報およびその従来の使用を開示する。
【0003】
特許文献1は、ラクトースをガラクトースおよびグルコースに加水分解する工程、ガラクトースをタガトースに異性体化する工程、そして次にこの化合物をクロマトグラフィーによって分離して、あらゆる変換されていない化合物を再利用する工程を含む、TAGを製造するためのプロセスを開示する。TAGは、1.5kcal/gのエネルギー(スクロースからの4kcal/gと比較した場合)を供給する。なぜなら、大部分は、TAGが、小腸によって不完全にしか吸収されないからである。TAGのいくつかの用途は、低カロリーの飲料(diet beverage)では1%までの濃度での、低カロリーの(light)アイスクリームまたはヨーグルトでは3%までの濃度での、そして通常または低カロリー食のハードキャンディーでは15%までのレベルでの甘味料として含まれる。
【0004】
特許文献2は、甘くした食用処方物を調製するためのプロセスを開示し、ここで、この甘味剤はスクロースよりもカロリーが低く、このプロセスは、食品(foodstuff)と、この食品を甘くするのに十分な量のTAGとを混合する工程を包含する。特許文献3は、哺乳動物において進行したグリコシル化最終産物の形成を防止するための方法を開示し、この方法は、この哺乳動物に有効量のTAGを投与する工程を包含する。
【0005】
特許文献4は、抗高血糖剤(anti−hyperglycemic agent)としてTAGを開示する。特許文献5は、TAGを投与することによって、それを必要とするヒトの結腸において細菌による、ブチレートの産生を選択的に誘導するための方法を教示する。ブチレートは、伝えられるところでは、結腸癌保護効果を有すると報告されている。
【0006】
スチルベンおよびスチルベノイドは、シアリールエテン(diarylethene)であり、スチルベノイドは、スチルベンのヒドロキシル化誘導体である。スチルベンおよびスチルベノイドは、液果およびIndian Kino tree(インドにおける公知の薬用植物)の心材において天然に見出され得る。スチルベンは、C1412の基本的な実験式を有する。一般的なスチルベノイドは、3,5,4’−トリヒドロキシスチルベン(赤ブドウの皮に見出される天然成分)としても公知なレスベラトロールである。レスベラトロールは、メタノールで抽出した場合、オフホワイトの粉末状の物質であり、228.24の分子量およびC1412の実験式を有する。レスベラトロールは、特定の状況下での、高カロリー食にあるマウスの健康および寿命を改善すると報告されてきた(非特許文献1)。3,5−ジメトキシ−4’−ヒドロキシスチルベンとしても公知なプテロスチルベンは、レスベラトロールに化学的に関連し、多くの類似した特性を有し得る。プテロスチルベンは、白色またはオフホワイトの結晶粉末であり、256の分子量およびC1616の実験式を有する。
【0007】
糖尿病(真性糖尿病としても時折公知である)は、不十分な量のインスリン、またはインスリンに適切に応答できないことによって特徴付けられる障害の一群である。以下を含む、多くの形態の糖尿病が存在する:I型(これは、インスリンを産生することができないことに起因する);およびII型(これは、インスリン抵抗性に起因する);妊娠糖尿病(これは、高いグルコースレベルを有する妊娠した女性に生じる);ならびに種々の他の型(先天性糖尿病(congenital diabetes)、ステロイド糖尿病および単一遺伝子性糖尿病(monogenic diabetes)を含む)。インスリン欠乏の結果として、糖尿病患者は、典型的に高血糖を有し、ケトアシドーシスおよび非ケトン性高浸透圧性昏睡のような急性合併症および慢性合併症にさらされる。長期の合併症は、心臓血管疾患、慢性腎不全、網膜損傷、神経損傷、微小血管の損傷および乏しい循環および創傷治癒を含む。処置の選択肢は、現在、インスリンの使用、糖尿病薬物適用および血圧薬物適用、ならびに節食(diet)および運動を含む。血中グルコースのモニタリングは、通常、処置の本質的な一部である。なぜなら、低血糖または異常に低い血中グルコースが、糖尿病の処置および/または薬物適用の結果として生じ得るからである(“Diabetes Overview,” Nat’l Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases、NIH、(2006))。アテローム硬化症は、通常、コレステロールのような脂肪質物質の蓄積(build−up)の結果として、動脈の血管の壁が厚くなる症候群である。この症候群は、高い量の低比重リポタンパク質(「LDL」)および低い量の高比重リポタンパク質(「HDL」)および高い血清トリグリセリド濃度の存在によって進行され得る。アテローム硬化症の患者は、典型的に、動脈壁に沿って蓄積する、酸化したLDL、コレステロールおよび脂肪酸のような脂質、カルシウムおよび線維性結合組織を取り込んだマクロファージ細胞を含むプラークを有する。時間をわたり、動脈が供給している器官および組織への血液供給の量を減らす、動脈の狭窄または完全な閉鎖が起こり得る。さらに、動脈瘤が、閉塞を埋め合わせるための動脈の拡大の結果として生じ得る。このことは、重篤な出血をもたらし得る破裂のリスクの増大を導く。あるいは、プラークが破裂し得、ある領域への血液の流れを迅速に低下させ得る血栓の形成を引き起こし得る。リスクファクターとしては、高い血圧を有すること、糖尿病を有すること、異常リポタンパク血症(dyslipoproteinemia)を有すること、喫煙および血中の高いC反応性タンパク質濃度を有することが挙げられる。処置の選択肢は、スタチン類、ナイアシン、アスピリン、およびコレステロール低下薬(cholesterol−lowering drug)の医療上の摂取、ならびに節食および運動のような生活様式の改変を含む。時折、狭くなった動脈を広げるために、ステントが挿入され得る血管形成術が実行される(http://www.americanheart.org/print_presenter.jhtml;jsessionid=FCG5JBCHQDELMCQFCX PSCZQ?identifier=4440 (2009)で利用可能な“Atherosclerosis,” American Heart Association)。
【0008】
疾病予防管理センター(CDC)は、米国における成人人口のおよそ3分の2が、それぞれ>25kg/mまたは>30kg/mのボディマス指数(「BMI」)によって定義される、過体重または肥満のいずれかに分類されることを報告する。報告されるところによると、肥満および体重増加は、過食、遺伝的特質、心理学的な因子、生活様式、性別、年齢、薬物適用、体脂肪の分布および特定の医学的な状態(甲状腺機能亢進、クッシング症候群、多嚢胞性卵巣症候群およびプラーダー‐ヴィリ症候群を含む)を含む多くの原因がある。肥満は、心疾患、II型糖尿病、高血圧、脳卒中、乳癌および結腸癌を含む特定の型の癌、胆石、痛風、うつ病、睡眠時無呼吸ならびに変形性関節症を含む、種々の疾患および健康上の問題の可能性を増大させると報告されている。
【0009】
報告されるところによると、処置としては、節食、体操、行動修正(behavior modification)、および時折、抗肥満薬(例えば、食欲抑制剤)ならびに吸収不良手順(malabsorptive procedure)および拘束性手順(restrictive procedure)のような外科手術が挙げられる。肥満は、米国における予防可能な死の二番目に主要な原因である(http://www.cdc.gov/obesity/index.html,(2009)で利用可能な“Overweight and Obesity,”Centers for Disease Control and Prevention)。
【0010】
メタボリックシンドロームは、肥満、体重増加、アテローム生成性異脂肪血症(athergenic dyslipidemia)、特に、高比重リポタンパク質(HDL)コレステロールの正常なレベルよりも低いこと、高血圧、高い血清トリグリセリドレベル(≧150mg/dl)、高血圧、インスリン抵抗性またはグルコース不耐性(glucose intolerance)、および血中の上昇したC反応性タンパク質によって特徴付けられる炎症促進性状態(proinflammatory state)を含むといわれている、一群の因子および実験室試験の結果によって特徴付けられる(非特許文献2)。これらのリスクファクターに対する遺伝的な素因は、メタボリックシンドロームを発症させる可能性を増大させる。報告されるところによると、メタボリックシンドロームを有する人は、II型糖尿病、脂肪異栄養および心臓血管疾患(例えば、冠動脈心疾患、脳卒中(stroke)および末梢血管疾患)の増大したリスクにある。典型的に、メタボリックシンドロームを有する患者は、過体重または肥満である。座りがちな(sedentary)生活様式、喫煙、および高い炭水化物食のようないくつかの環境性の因子が、このシンドロームの発症に寄与すると報告されている。メタボリックシンドロームもまた、肝臓および腎臓の問題、ならびに多嚢胞性卵巣症候群および高齢者における認知の衰退に関連する。報告された処置は、生活様式の変化から構成され得、節食および運動、ならびに個々にこの疾患および症状を処置するための薬物適用を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,991,923号明細書
【特許文献2】米国特許第4,786,722号明細書
【特許文献3】米国特許第5,356,879号明細書
【特許文献4】米国特許第5,447,917号明細書
【特許文献5】米国特許第7,202,219号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Baur,J.A.ら、“Resveratrol improves health and survival of mice on high−calorie diet,”Nature(2006年)444(7117):337〜42
【非特許文献2】Torpy,J.M.ら、“The Metabolic Syndrome,” JAMA(2006年)295(7):850
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
メタボリックシンドロームおよびその根底にある原因、ならびにアテローム硬化症、肥満および糖尿病を予防または処置するための組成物および方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満および糖尿病またはそれらの任意の組み合わせの予防もしくは処置またはその両方を有利に改善し得る、組成物およびそれを使用する方法を包含する。一実施形態において、この薬学的組成物は、薬学的に有効な量のD−タガトース、またはその薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグ、および薬学的に有効な量の少なくとも1つの第二の薬学的に活性な薬物(「第二の活性な薬物成分」とも本明細書においていう)を含む。好ましい実施形態において、この第二の薬学的に活性な薬物成分は、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはその任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形(polymorph)、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態、または任意のその組み合わせを含む。
【0015】
好ましいスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分としては、レスベラトロールもしくはレスベラトロール誘導体またはそれらの組み合わせが挙げられ得る。好ましいレスベラトロール誘導体は、1つまたは複数のレスベラトロールのダイマーを含む。好ましいレスベラトロールのダイマーは、レスベラトロールtrans−デヒドロダイマー(dehydrodimer)、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシド、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11−O−β−D−グルコピラノシドおよびビニフェリン(viniferin)、またはそれらの異性体、またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態において、上記薬学的組成物は、本明細書の組成物のいずれかを含む抗メタボリックシンドローム組成物(anti−metabolic syndrome composition)であり、ここで、この組成物の薬学的に有効な量は、メタボリックシンドロームを予防または処置するのに十分である。この実施形態において、この第二の活性な薬物成分は、特にD−タガトースと組み合わせて、メタボリックシンドロームを予防または処置するのに十分である量で存在する。
【0016】
あるいは、この薬学的組成物は、本明細書の組成物のいずれかを含む抗アテローム硬化症組成物(anti−atherosclerosis composition)であり得、この組成物の薬学的に有効な量は、アテローム硬化症の症候群を予防または処置するのに十分である。この実施形態において、この第二の活性な薬物成分は、特にD−タガトースと組み合わせて、アテローム硬化症を予防または処置するのに十分である量で存在する。あるいは、この薬学的組成物は、本明細書の組成物のいずれかを含む抗肥満組成物(anti−obesity composition)であり得、この組成物の薬学的に有効な量は、肥満を予防または処置するのに十分である。この実施形態において、この第二の活性な薬物成分は、特にD−タガトースと組み合わせて、メタボリックシンドロームを予防または処置するのに十分である量で存在する。
【0017】
あるいは、上記薬学的組成物は、本明細書の組成物のいずれかを含む抗糖尿病組成物(anti−diabetes composition)であり得、この組成物の薬学的に有効な量は、糖尿病を予防または処置するのに十分である。この実施形態において、この第二の活性な薬物成分は、特にD−タガトースと組み合わせて、糖尿病を予防または処置するのに十分である量で存在する。
【0018】
一実施形態において、D−タガトースを含む薬学的組成物または本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかは、総血清トリグリセリドレベルを約1%〜約60%、好ましくは約5%〜約50%、より好ましくは約11%〜約40%低下させるのに十分な量で存在する。
【0019】
別の実施形態において、D−タガトースを含む薬学的組成物または本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかは、血中の低比重リポタンパク質(LDL)の濃度を約0.1%〜約30%、好ましくは約4%〜約20%、より好ましくは約6%〜約10%低下させるのに十分な量で存在する。
【0020】
一実施形態において、D−タガトースを含む薬学的組成物または本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかは、動脈内のプラーク体積(plaque volume)を約0.1%〜約50%、好ましくは約0.5%〜約40%、より好ましくは約1%〜約30%低下させるのに十分な量で存在する。
【0021】
本発明はまた、哺乳動物のメタボリックシンドロームを予防または処置するための方法も包含し、この方法は、この哺乳動物に、この哺乳動物のメタボリックシンドロームを予防または処置するための、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む組成物または本明細書で議論される薬学的組成物のいずれか(例えば、D−タガトースと、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分との組み合わせ)を投与する工程を包含する。好ましくは、この哺乳動物はヒトである。一部の実施形態において、この薬学的組成物は、経口投与のために適合され、この方法は、この薬学的組成物を経口投与する工程を包含する。
【0022】
本発明はさらに、哺乳動物におけるアテローム硬化症を予防または処置するための方法を包含し、この方法は、この哺乳動物に、この哺乳動物のアテローム硬化症を予防または処置するための、薬学的に有効な量の、本明細書に記載の組成物のいずれかを含む組成物(例えば、D−タガトースと、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分との組み合わせ)を投与する工程を包含する。好ましくは、この哺乳動物はヒトである。一つの好ましい実施形態において、この薬学的組成物は、経口投与のために適合され、この方法は、この組成物を経口投与する工程を包含する。この方法で使用される場合、この組成物は、典型的に、本明細書に記載される形態のいずれかの、D−タガトース、D−タガトースおよびスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物の肥満を予防または処置するための方法を包含し、この方法は、この哺乳動物に、この哺乳動物の肥満を予防または処置するための、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む組成物または本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を包含する。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物の糖尿病を予防または処置するための方法を包含し、この方法は、この哺乳動物に、この哺乳動物の糖尿病を予防または処置するための、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む組成物または本明細書に記載の薬学的組成物のいずれかを投与する工程を包含する。
【0025】
一実施形態において、上記薬学的組成物は、経口投与または鼻内投与(nasal administration)に適合され得る。好ましい実施形態において、この組成物は、経口投与のために適合され得、錠剤として形成され得る。例示的な実施形態において、この錠剤は、直接圧縮によって形成され得る。
【0026】
他の実施形態において、本明細書の薬学的組成物のいずれかは、メタボリックシンドロームの予防または処置;アテローム硬化症の予防または処置;肥満の予防または処置;または糖尿病の予防または処置;あるいはそれらの組み合わせに使用される。
【0027】
別の実施形態において、上記薬学的組成物は医薬として使用するためのものである。種々の実施形態において、この薬学的組成物は、メタボリックシンドロームを予防または処置するための医薬;アテローム硬化症を予防または処置するための医薬;肥満を予防または処置するための医薬;あるいは糖尿病を予防または処置するための医薬;あるいはそれらの組み合わせとして使用するためのものである。
【0028】
種々の実施形態において、本発明は、メタボリックシンドロームの1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬の製造;アテローム硬化症の1つまたは複数の症状を処置または改善するための医薬の製造;肥満の1つまたは複数の症状を処置または改善するための医薬の製造;糖尿病の1つまたは複数の症状を処置または改善するための医薬の製造;あるいはこれらの組み合わせにおける、本明細書で言及される薬学的組成物のいずれかの使用を包含する。
【0029】
例示的な実施形態において、薬学的に有効な量の、本明細書の薬学的組成物の使用は、高血圧、高トリグリセリド血症、高血糖、高コレステロール血症またはそれらの組み合わせの1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬の製造におけるものである。糖尿病の場合、好ましい実施形態は、高血糖の1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬を調製するための、薬学的に有効な量の本明細書で議論される組成物の使用である。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、治療における本明細書の薬学的組成物のいずれかまたは全ての使用を包含する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、予防のための、本明細書の薬学的組成物のいずれかまたは全ての使用を包含する。
【0032】
好ましい実施形態において、上記薬学的組成物は、薬学的に有効な量のD−タガトース、またはそれらの薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグ、およびスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはそれらの任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ、またはそれらの任意の組み合わせを含む第二の薬学的に活性な薬物成分を含み、この組成物は、メタボリックシンドロームを有するか、メタボリックシンドロームを有すると疑われるか、またはメタボリックシンドロームを発症するリスクにあるヒトの治療、予防または処置に使用される。
【0033】
別の好ましい実施形態において、上記薬学的組成物は、前述の段落のものと同じ組成を含み、アテローム硬化症を有するか、アテローム硬化症を有すると疑われるか、またはアテローム硬化症を発症するリスクにあるヒトの治療、予防または処置に使用される。
【0034】
別の好ましい実施形態において、上記薬学的組成物は、前述の段落のものと同じ組成を含み、肥満を有するか、肥満を有すると疑われるか、または肥満を発症するリスクにあるヒトの治療、予防または処置に使用される。別の好ましい実施形態において、上記薬学的組成物は、前述の段落のものと同じ組成を含み、糖尿病を有するか、糖尿病を有すると疑われるか、または糖尿病を発症するリスクにあるヒトの治療、予防または処置に使用される。本発明は、薬学的に有効な量のD−タガトース、またはその薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグ、および薬学的に有効な量の、本明細書に記載の第二の活性成分の成分を含む食品もまた包含する。この第二の活性成分の成分は、本明細書で議論されるスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分を含む。
【0035】
本発明の方法のいずれかの実施において、哺乳動物に投与される上記組成物はまた、必要に応じてさらに第二の活性な薬物成分を含み得る。好ましい実施形態において、上記食品は、有効量のスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはそれらの任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。好ましいスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分は、レスベラトロールもしくはレスベラトロール誘導体またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。好ましいレスベラトロール誘導体は、レスベラトロールのダイマーを含む。好ましいレスベラトロールのダイマーは、レスベラトロールtrans−デヒドロダイマー、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシド、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11−O−β−D−グルコピラノシドおよびビニフェリン、またはその異性体、またそれらの組み合わせを含む。
【0036】
本発明の実施は、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満および糖尿病の予防および処置において、最も適切かつ最も近い(immediate)実用性を有することが企図されるが、本開示の範囲は、本明細書で列挙された特定の組成物の投与にのみに限定されると解釈されるとは意図されない。実際に、理論に拘束されずに、本明細書の組成物および方法が、他の疾患および症候群を含む種々の処置レジメン/予防レジメンに広範な適用可能性を見出し得ることが考えられる。本明細書に記載される実施形態の各々が、典型的に本明細書に記載されるその他の実施形態のいずれかと関連して使用され得ることも理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
好ましい実施形態の詳細な説明
薬学的に有効な量のD−タガトース、またはその薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグを、単独で、あるいは薬学的に有効な量の少なくとも1つの第二の薬学的に活性な薬物、またはその薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグと組み合わせて含む薬学的に有効な組成物が、哺乳動物(好ましくは、ヒト)において驚くべきかつ予測できない予防効果または治療効果を有することが、ここで発見された。好ましくは、その組成物は、薬学的に有効な量のD−タガトースおよび少なくとも1つの第二の薬学的に活性な薬物の組み合わせを伴い、薬学的に受容可能なキャリア、および必要に応じて1つまたは複数の追加の予防薬成分または治療薬成分をまた含み得る。メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満または糖尿病を予防または処置するための方法もまた発見され、この方法は、各々そのような適応症に対して、予防的または治療的に有効な量の上記の薬学的組成物を投与することによる。好ましくは、この第二の薬学的に活性な薬物は、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはその任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態、またはそれらの任意の組み合わせを含む。本発明の組成物および方法における活性な薬学的成分はD−タガトース(「TAG」)である。TAGは、任意の状態(その塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物を含む)で使用され得るが、好ましくは、それは、その天然の状態(natural state)の活性成分として含まれる(すなわち、塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体または代謝産物の形態ではない)。本明細書で使用される場合、「TAG」は、活性な薬剤それ自体、またはその活性な代謝産物、薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグまたは任意の組み合わせを含む。「TAG」はまた活性成分の多形を含む。TAGおよび本明細書の任意の他の薬学的に活性な薬物成分と関連して、本明細書に記載される「塩」およびその他の形態とは、薬学的組成物および食品中の薬学的に受容可能な形態をいう。これらの同じ形態は、同様に、本明細書で議論される薬学的に活性な成分のいずれかについての、第二の薬学的に活性な薬物に関する組成物および方法に含まれ得る。
【0038】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの第二の薬学的に活性な薬物と組み合わせた、薬学的に有効な量の第一の活性な薬物(すなわち、TAG)を含む薬学的組成物に関する。この第二の活性な薬物成分は、この第一の活性な薬物であるTAGとの併用療法で薬学的に有用な、任意の薬物、代謝産物またはプロドラッグであり得る。
【0039】
一つの好ましい実施形態において、上記第二の活性な薬物成分は、好ましくは、任意の形態(その任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態、または任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない)での、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分(すなわち、1つまたは複数のスチルベン、スチルベノイドまたはそれらの組み合わせ)を含むか、またはそれらである。したがって、用語「スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分」とは、本明細書に記載される形態のいずれかでの、1つまたは複数のスチルベン、1つまたは複数のスチルベノイド、あるいはそれらの任意の組み合わせを意味する。これらのスチルベン化合物およびスチルベノイド化合物は、当業者に利用可能な任意の適切な技術(化学合成が挙げられるが、これに限定されない)あるいは植物からの抽出、および必要に応じた単離または精製によって取得され得る。このスチルベン化合物は、薬学的に受容可能な酸付加塩および塩基との塩に形成され得る。これらのスチルベン成分およびスチルベノイド成分は、好ましくは、以下のうちの1つまたは複数を含む:ピセアタンノール(piceatannol)、ピノシルビン(pinosylvin)、プテロスチルベン、レスベラトロール、ビニフェリン、アンペロプシン(ampelopsin)A、アンペロプシンE、ジプトインドネシン(diptoindonesin)C、ジプトインドネシンF、グネチン(gnetin)H、ヘムスレアノール(hemsleyanol)D、ホペアフェノール(hopeaphenol)、trans−ジプトインドネシンB、バチカノール(vaticanol)B、アストリンギン(astringin)、ピセイドおよびジプトインドネシンAまたはこれらの任意の組み合わせ。
【0040】
上記第二の活性な薬物成分に含まれる好ましいスチルベノイドは、レスベラトロールおよびその誘導体(複数含む)のうちの1つまたは複数であり得る。レスベラトロールは、植物におけるフェニルアラニン/ポリマロネート経路を介して合成され得、赤ブドウの皮に見出される。レスベラトロールは、cis配置およびtrans配置の両方で存在する脂溶性化合物であり、その各々は1つまたは複数のグルコシドを形成し得る。レスベラトロールはまた、植物由来組成物から化学単離によって取得され得るか、または合成され得る。経口投薬されたレスベラトロールのうちのおよそ70%が人体に吸収されることが報告されている。レスベラトロールのバイオアベイラビリティを低減させる、小腸および肝臓によるレスベラトロールの迅速な代謝に起因して、より多い用量のレスベラトロールが好ましくあり得る。上記の第二の活性な薬物成分は、1つまたは複数のレスベラトロールのダイマー、より好ましくは、レスベラトロールtrans−デヒドロダイマー、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシド、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11−O−β−D−グルコピラノシドおよびビニフェリン、またはその異性体、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない1つまたは複数のレスベラトロール由来成分を含む。
【0041】
レスベラトロール(E)−デヒドロダイマーとしても公知なレスベラトロールtrans−デヒドロダイマーは複素環式であり、C2822の実験式および454.48の分子量を有する。(2S,3R,4S,5S,6R)−2−(3−{(E)−2−[(2S,3S)−3−(3,5−ジヒドロキシ−フェニル)−2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル]−ビニル}−5−ヒドロキシ−フェノキシ)−6−ヒドロキシメチル−テトラヒドロピラン−3,4,5−トリオールとしても公知なレスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシドは複素環式であり、C343211の実験式および616.62の分子量を有する。ビニフェリンは、レスベラトロールのグリコシル化および重合体化した誘導体である。上記の第二の活性成分の好ましい成分は、イプシロンビニフェリン(ε−ビニフェリン)であり、これは、レスベラトロールの環状ダイマーであり、Vitis viniferaから抽出され得る。この化合物は、典型的に、レスベラトロールのペルオキシダーゼ媒介性の酸化的二量体化を介して形成される。5−{6−ヒドロキシ−2−(4−ヒドロキシフェニル)−4−[2−(4−ヒドロキシフェニル)ビニル]−2,3−ジヒドロキシベンゾフラン−3−イル}ベンゼン−1,3−ジオールとしても公知なε−ビニフェリンは複素環式であり、C2822の実験式および454.48の分子量を有する。
【0042】
上記の第二の活性な薬物成分のスチルベノイドは、好ましくは、1つまたは複数のピセイドを含み得る。レスベラトロールは、糖に結合体化し得、これは、1つまたは複数のグルコシド(例えば、trans−およびcis−ピセイド、すなわち3−O−β−D−レスベラトロールグルコシド)を形成し得る。好ましい第二の活性な薬物成分は、trans−(14C6)ピセイドを含む。trans−(14C6)ピセイドは、複素環式であり、C2022の実験式および402.32の分子量を有する。
【0043】
疾患の急性管理または慢性管理における本発明の組成物の予防的な用量または治療的な用量の大きさは、それが投与されている被験体、処置されるべき状態の重症度および投与経路および投与様式に依存して変動し、そしてそれは本明細書に提供されるガイダンスを参照して当業者によって決定され得る。用量、そしておそらく投薬頻度はまた、本明細書のガイダンスに基づいて、個々の患者の年齢、体重および応答にしたがって変動する。一般的に、本明細書に記載の状態のための、総日用量の範囲は、約0.01グラム〜約240グラム、好ましくは約0.1グラム〜200グラム、およびより好ましくは約0.5グラム〜100グラムのTAGである。例示的な実施形態において、TAGの薬学的に有効な量は、約0.75グラム〜90グラム、約1グラム〜80グラム、またはさらには約1.5グラム〜75グラム、またはそれらの間の任意の整数を含み得る。好ましい実施形態において、TAGの薬学的に有効な量は、約2グラム、約2.5グラム、約5グラム、約7.5グラム、約15グラム、約25グラムまたは約50グラムである。一般的に、本明細書に記載される状態のための総日用量の範囲は、約0.0001グラム〜約1.5グラム、好ましくは約0.001グラム〜約0.75グラム、そしてより好ましくは約0.005グラム〜約0.5グラムの前記スチルベン成分または前記スチルベノイド成分である。スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分の例示的な量は、約0.01グラム〜約0.1グラムである。
【0044】
上記組成物は、単一の用量または分割された用量で投与され得、好ましくは、等しい投与量に分割された総日用量が、一日の過程にわたり摂取される。好ましくは、一日あたり1用量しか必要とされない。一実施形態において、投与される組成物は、あらゆる可能性のある胃腸障害(gastrointestinal distress)を排除するために、食物および飲料とともに摂取される(例えば、摂食から約2時間以内、好ましくは、摂食から約1時間以内)。別の実施形態において、この組成物は、摂食にかかわりなく投与され得、一方、別の実施形態において、この組成物は、食品に含まれ、食品として投与される。
【0045】
TAGおよび必要に応じた第二の活性な薬物成分(これは、独立して予防的、治療的であり得るか、あるいは例えば、状態もしくは疾患またはその症状を管理することを補助し得る)を含む、本明細書で議論される薬学的に有効な組成物は、本明細書のガイダンスに少なくとも基づいて、所望の予防効果または治療効果を達成するために、測定された量の薬学的組成物を投与するのに適切な任意の投薬形態(複数含む)で投与され得る。このような投薬形態としては、例えば、固体の投薬形態(例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、およびカシェ剤)または液体の投薬形態(例えば、懸濁剤、シロップ剤、液剤およびエリキシル剤)が挙げられる。この第二の薬物成分は、上記のTAG組成物と組み合わせられ得るか、または別個の投薬形態で投与され得るが、好ましくは錠剤形態にある。この第二の活性な薬物成分を含む投薬形態は、いずれにしても、処置されている被験体の症状もしくは状態を緩和もしくは管理するか、または予防効果を提供するのに有効な量で、ある量の追加の活性な薬物(複数含む)を含む。特定の第二の活性な薬物成分の選択は、処置されている特定の病状に依存し、その一部は、本明細書で詳細に記載されている。好ましくは、全ての活性成分は、経口形態(例えば、経口組成物、すなわち、錠剤、カプセル剤、散剤および/またはカシェ剤)にあり、より好ましくは患者のコンプライアンスを促進するために組み合わせた形態にある。組み合わせた形態にない場合、それらは、同時にまたは連続して投与され得る。例えば、TAGおよびスチルベン成分/スチルベノイド成分のうちの少なくとも2つは、同時にまたは連続して投与され得る。薬物送達の経口形態について、錠剤およびカプセル剤が好ましく、錠剤形態が特に好ましい。例えば、好ましい経口日用量の範囲は、約0.1g〜約20gのTAG、好ましくは約1g〜約15gのTAG、そして一つの例示的な実施形態において、約2g〜10gのTAG(特に、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分と組み合わせて使用する場合)を含み得る。
【0046】
小児、65歳よりも年長の患者、および腎機能または肝機能の障害を有する患者は、最初に低用量を受容し、その後、彼らを、個々の応答(複数含む)または血中レベル(複数含む)に基づいて用量設定(titrate)することがさらに推奨される。当業者に明らかのように、いくつかの場合において、これらの範囲外の投与量を使用する必要があり得る。さらに、臨床医または処置をする医師(treating physician)は、個々の患者の応答と組み合わせて、どのようにしてかつ何時、治療を中断、調整、または終了するかを知っていることに留意する。
【0047】
任意の適切な投与経路が、患者に、本発明の方法にしたがう組成物の有効な投薬を提供するために、使用され得る。例えば、経口、直腸、非経口、静脈内、局所、経皮(transdermal)、皮下、筋肉内などの形態の投与が使用され得る。経口、局所(topical)、経皮、吸入による局所的な(locally)投薬形態が好ましい。非限定的かつ例示的な投薬形態としては、錠剤、トローチ剤、分散物(dispersion)、懸濁剤、液剤、カプセル剤、パッチなどが挙げられる。好ましい投薬形態は、錠剤、一実施形態において、好ましくは、直接圧縮された錠剤を含む。
【0048】
本発明の方法において使用するための組成物は、懸濁物、溶液およびエリキシルのような組成物;エアロゾル;またはキャリア(例えば、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤(granulating agent)、滑沢剤、結合剤、崩壊剤など(経口固体調製物(例えば、散剤、カプセル剤および錠剤)の場合))を含み、経口固体調製物は、経口液体調製物よりも好ましい。最も好ましい経口固体調製物は錠剤である。それらを投与するのが容易なため、錠剤およびカプセル剤は、固体の薬学的なキャリアを使用する場合、最も有利な経口投薬単位形態を代表する。所望される場合、錠剤は、標準的な水性技術または非水性技術によってコーティングされ得る。例えば、錠剤は、必要に応じて1つまたは複数の補助的な成分とともに、直接圧縮または成形によって調製され得る。圧縮錠剤は、適切な機械で、自由に流動する形態(例えば、粉末または顆粒)での活性成分を、必要に応じて結合剤、滑沢剤、不活性な希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合して圧縮することによって調製され得る。成形錠剤(molded tablet)は、適切な機械で、必要に応じて不活性な液体希釈剤で湿らされた、粉末化された化合物の混合物を成形することによって製造され得る。望ましくは、各錠剤は、本明細書で議論される薬学的組成物(複数含む)の単一の用量を含む。
【0049】
一実施形態において、上記第二の活性な薬物成分は、即時放出処方物として形成され得、例えば、限定せずに、従来の方法によるメンブレンへのコーティングによって、TAGの投与量(dosage)とともに単一の投薬形態に組み込まれ得る。一般的に、この第二の活性な薬物成分は、任意の薬学的に受容可能な方法によって、第一の活性な薬物とともに単一の投薬形態に組み込まれ得るか、または組み合わされ得る。
【0050】
TAGおよび第二の活性な薬物成分および任意の必要に応じた予防剤または治療剤および薬学的に受容可能なキャリア(選択される場合)の組み合わせは、薬物の層化(drug layering)、コーティング、成層(lamination)、乾燥圧縮、堆積(deposition)および印刷のような(これらに限定されない)プロセスによって実行され得る。TAG、第二の活性成分(例えば、D−タガトースと、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分との組み合わせ)、またはそれらの両方は、限定せずに例えば、ゲル、マトリクス、カプセルまたは樹脂材料、あるいは上述の一般的な投薬形態の代替法としてか、またはそれに加えて当業者に利用可能な制御放出、徐放、または送達デバイス技術(限定せずに例えば、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同3,536,809号、同3,598,123号および同4,008,719号、以下参照(これらの開示は、各々本明細書への明らかな参照として本明細書に援用される)に記載されるようなもの)の任意の組み合わせとともに、制御放出形態(controlled release form)または徐放形態(sustained release form)で調製され得る。
【0051】
経口投与に適した、本発明の方法で使用するための薬学的組成物は、カプセル剤、カシェ剤または錠剤、あるいはエアロゾルスプレーのような別個の単位(各々、所定量の活性成分を含む)として、散剤または顆粒剤として、あるいは水性の液体、非水性の液体、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンでの液剤または懸濁剤として提示され得る。このような組成物は、薬剤学の方法のいずれかによって調製され得るが、全ての方法は、活性成分と薬学的なキャリアとを結合(association)させる工程を含む。TAGそれ自体が何ら追加のキャリアを使用せずに錠剤化(tabletting)を可能にする希釈剤として機能し得ることを考慮すると、本発明の薬学的組成物は追加の薬学的に受容可能なキャリアを完全に含まないことがあり得ることが理解されるべきである。一般的に、キャリアが使用される場合、この組成物は、活性成分(複数含む)と液体キャリアもしくは微細に分割された固体キャリアまたはそれらの両方とを均一かつ念入り(intimately)に混合し、その後、必要とされる場合、生成物を所望の体裁に形作ることによって調製される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1995)に開示される種々の希釈剤、賦形剤、滑沢剤、染料、顔料、分散剤などが、本明細書で提供される当業者へのガイダンスに概して基づいて、本明細書に記載される任意の成分、層、部分、または組成物を最適化するために使用され得る。
【0052】
好ましくは、本発明に従う固体組成物の成分は、ブレンドされ、そして、湿式造粒手順または乾式造粒手順によって粉末ブレンドの前処理を必要とすることなく、粉末混合物から直接圧縮される。実質的に全ての成分は、好ましくは実質的または完全に均一な粒径を有し、そして好ましくは直接圧縮の間に錠剤に捕捉される空気を実質的に含まないかまたは完全に含まない。実際に、本発明の組成物(複数含む)が、大型の微粒子も他の不純物も、少なくとも実質的に含まない、好ましくはこれらを完全に含まないことが望ましい。TAGの性質および物理学的な特性に起因して、一実施形態において、錠剤の直接圧縮の間に結合剤も他の粘着性物質も使用されないことが好ましい。例示的な錠剤は、当該分野で利用可能な他の造粒手順によって製造され得る。さらに、滑沢剤、顔料または染料のような他の賦形剤もまた、本発明の処方物に使用され得る。あるいは、これらの成分は、経口的に摂取されるか、筋肉内注射、皮下注射もしくは皮内注射によって摂取される液体の溶液に溶解され得る。本発明の化合物が経口調製物に処方される場合、必要とされる賦形剤、結合剤、崩壊剤(disintegrant)、滑沢剤、着色料、矯味矯臭薬などが、それに添加され得、結果として生じた混合物を、錠剤、コーティングされた錠剤、顆粒剤またはカプセル剤などに形成する。注射剤を調製する場合、pH調整剤(pH adjustor)、緩衝剤、安定剤、および防腐薬などが添加され得る。注射剤は、当業者に公知な従来の方法で作製され得る。経口摂取した場合のTAGの比較的低い吸収率に起因して、投薬量への調整が、血流へ注射される場合に必要である。
【0053】
任意の形態のTAGまたはスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分を含む上記薬学的組成物の活性な薬物成分は、当業者に利用可能な任意の化学単離、化学合成またはそれらの組み合わせによって取得され得る。好ましくは、この薬学的組成物の成分は、少なくとも実質的に純粋であり、より好ましくは純粋であり、痕跡量以下の不純物を含む。任意の適切な精製技術は、濾過、抽出、蒸留、分別および結晶化(これらに限定されない)のような当業者に一般的に利用可能な適切なプロセスを使用して、本発明の組成物に関連して実行され得る。好ましくは、この薬学的組成物の成分は、その天然の状態(native state)で見出される場合に、検出可能な量の、この材料に通常付随する他の材料を、少なくとも実質的に含まないか、またはそれを本質的に含まない、好ましくは完全にそれを含まない。さらに、ヒト投与のために、調製物は、FDA Office of Biologiesの基準によって要求される無菌性、発熱性、ならびに全体的な安全性および純度の基準を満たさなければならない。
【0054】
有効量に関連した句「薬学的に」は、予防薬として作用し、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満もしくは糖尿病またはそれらの組み合わせ(限定されずに、それらの症状を含む)の処置に関連した症状または状態の発症を阻害または予防する、および/あるいはそれらの症状または状態の処置または管理において予防効果または治療効果を提供する、単独、または他の活性成分(複数含む)と組み合わせての、D−タガトースの量を含む。このような症状としては、限定せずに、高血圧、血中の高い糖化(glycated)ヘモグロビンレベル、高い血圧、異常リポタンパク血症、高トリグリセリド血症、血中の高C反応性タンパク質濃度、または高濃度のLDLおよび低濃度の高比重リポタンパク質HDL、または1つもしくは複数の他の状態もしくはそれに関連した症状が挙げられる。
【0055】
例えば、本発明の一実施形態において、本明細書に記載される薬学的組成物は、総血清トリグリセリドレベルを約1%〜約60%、好ましくは約5%〜約50%、より好ましくは約11%〜約40%低下または減少させるために十分な量で投与される。血清トリグリセリドレベルを低下させることは、哺乳動物(特に、ヒト)のメタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満または糖尿病のリスクまたは重症度を低減させる重要な局面であり得る。別の実施形態において、本明細書に記載される薬学的組成物は、血中のLDL濃度を約0.1%〜約30%、好ましくは約4%〜約20%、より好ましくは約6%〜約10%低下または減少させるために十分な量で投与される。血中のLDL濃度を低下させることはまた、哺乳動物(特に、ヒト)のメタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満または糖尿病のリスクまたは重症度を低減することにおいて有利であり得る。
【0056】
別の実施形態において、本明細書に記載される薬学的組成物は、動脈内のプラーク体積を約0.1%〜約50%、好ましくは約0.5%〜約40%、より好ましくは約1%〜約30%低下または減少させるために十分な量で投与される。本発明の目的のために、「プラーク」は、動脈内層(arterial lining)における、約0.5mmを超える任意の沈着物または肥厚を含む。動脈内のプラーク体積を低下させることは、哺乳動物(特に、ヒト)のメタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満または糖尿病のリスクまたは重症度を低減させる重要な局面である。
【0057】
本発明はまた、例えば、好ましくは、哺乳動物(より好ましくは、ヒト)において、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満もしくは真性糖尿病またはそれらの組み合わせと関連した症状または状態(高血圧、血中の高い糖化ヘモグロビンレベル、高い血圧、異常リポタンパク血症、高トリグリセリド血症、血中の高C反応性タンパク質濃度、または高濃度のLDLおよび低濃度の高比重リポタンパク質HDLの症状、または1つもしくは複数の他の状態もしくはそれに伴う症状を含む)を処置する方法を提供する。本発明の方法は、患者(好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒト)に有効量の本発明のTAG組成物を投与する工程を包含する。
【0058】
上記組成物の有効量は、処置されている被験体、病状の重症度および投与様式に依存して変動し、当業者によって日常的に決定され得る。用量およびおそらく投薬頻度は、個体の年齢、体重および応答にしたがって変動する。
【0059】
例示的な組成物において、経口錠剤の形態での薬学的に有効な量のTAGは、約2.5グラムの濃度であり、この錠剤は、例えば、食事とともに、一日約1回〜約3回投与される。上記投薬形態が、例えば3つの日用量に分割される他の例示的な組成物において、薬学的に有効な量のD−タガトースは、用量あたり、約0.67グラム、約0.83グラム、約1.67グラム、約5グラム、約7.5グラム、約8.3グラム、約10グラム、約12.5グラム、約15グラムおよび約16.67グラムの量を含み得る。なお他の例示的な組成物において、TAGの薬学的に有効な量が、薬学的に有効な量の少なくとも第二の活性な薬物と共投与(co−administer)され得る。典型的に、上記のレスベラトロール成分またはレスベラトロール誘導体成分に関して、体重1kgあたり約0.05mg〜約50mgの投薬が好ましくあり得、体重1kgあたり約0.1mg〜約10mgの投薬が特に好ましくあり得るが、本発明にしたがって所望の治療効果または予防効果を達成するために、この範囲の外での顕著な投薬の変動が存在し得、この変動は、この組成物中に存在するTAGの量に依存し得る。当業者に明らかであるように、いくつかの場合において、上記の範囲外の投与量を使用する必要があり得る。さらに、臨床医または処置をする医師は、適切な日用量を知っており、また個々の患者の応答と組み合わせて、どのようにしてかついつに、治療を中断、調整、または終了するかを知っていることに留意する。
【0060】
一実施形態において、本発明は、哺乳動物のメタボリックシンドロームを処置する方法に関し、この方法は、この哺乳動物に予防的または治療的に有効な量のTAGの組成物を投与することによる。
【0061】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物のアテローム硬化症を処置する方法に関し、この方法は、哺乳動物に予防的または治療的に有効な量のTAGの組成物を投与することによる。これらの実施形態において、TAGがこの組成物中の唯一の活性成分であることが好ましい。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物のメタボリックシンドロームを予防する方法に関し、この方法は、この哺乳動物に予防的に有効な量のTAGの組成物を投与することによる。
【0062】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物のアテローム硬化症を予防する方法に関し、この方法は、この哺乳動物に予防的に有効な量のTAGの組成物を投与することによる。これらの実施形態において、TAGがこの組成物中の唯一の活性成分であることが好ましい。
【0063】
他の実施形態において、本明細書で議論される状態もしくは疾患またはその症状、あるいは同じ患者が、その予防、処置または管理を必要とし得る任意の他の疾患または状態を予防、処置または管理することにおいて、相加効果、より完全な効果または相乗効果を提供するために、上記方法は、第二の薬学的な薬物成分とともにTAG組成物を含む薬学的に有効な組成物を投与する。種々の実施形態において、予測できずかつ有益な相乗効果は、本明細書で議論される薬学的組成物におけるTAGと第二の活性な薬物成分(例えば、スチルベン成分またはスチルベノイド成分)との組み合わせの適用の結果として生じ得る。結果として、TAG成分と組み合わせた、より少ない用量の第二の活性な薬物成分が、顕著により多い用量の第二の活性な薬物成分のみによって、予測される効果を達成するために使用され得る。反対に、一部の実施形態において、より少ない用量のTAGが、顕著により多い用量のTAGのみによって、予測される効果を達成するために、第二の活性な薬物と組み合わせて使用され得る。例えば、本明細書の薬学的組成物の調製物は、0.15gまたはそれより多い用量のスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分のみ(これは、少なくとも実質的にTAGを含まないかまたは完全にTAGを含まない)と比較して、有効量のTAGと組み合わせた0.075g用量のスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分を、本明細書で議論される状態もしくは疾患またはその症状を予防、処置または管理することにおいてより有効にし得る。例えば、ここに記載される薬学的組成物は、肥満;糖尿病;アテローム硬化症;メタボリックシンドローム;またはメタボリックシンドロームの症状もしくは病状に関連した1つもしくは複数の状態:それらの任意の症状(複数含む);または上記の疾患、症状もしくは状態のいずれかの組み合わせを予防、処置または管理するために投与され得る。一つの例示的な実施形態において、哺乳動物の疾患を予防、処置または管理する方法は、患者に薬学的に有効な量の経口錠剤(これは、薬学的に有効な量のTAGおよびスチルベン成分/スチルベノイド成分の組成物を含む)を投与する工程を包含する。
【0064】
本発明の組成物は、例えば、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満もしくは糖尿病またはそれらの組み合わせの症状を予防、処置または管理するための、併用療法レジメンに関連して投与され得る。この組成物が、メタボリックシンドロームの症状を処置するために有効であり、そして例えば、臨床医または処置をする医師によって決定される個々の患者の必要に依存する別の薬剤とともに投与される、本発明の実施形態に関して、そのような追加の予防剤または治療剤は、例えば、1つまたは複数の有効な薬剤(例えば、利尿薬、ACEインヒビターおよびコレステロール低下薬またはそれらの任意の組み合わせ)を含み得る。
【0065】
上記組成物はまた、医師によって必要とみなされるか、または所望される他の状態の予防、処置または管理のための、1つまたは複数の他のクラスの薬学的に活性な薬剤を含み得る。そのような他の状態は、例えば、1つまたは複数の関連する状態にも罹患している患者で生じ得る。他の状態としては、例えば、痛風、多嚢胞性卵巣症候群および内皮障害(endothelial dysfunction)が挙げられ得るが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明は、哺乳動物のメタボリックシンドロームの症状を予防、処置または改善することにおいて使用するための組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物のアテローム硬化症の症状を予防、処置または改善することにおいて使用するための組成物を提供する。なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物の肥満の症状を予防、処置または改善することにおいて使用するための組成物を提供する。別の実施形態において、本発明は、哺乳動物の糖尿病の症状を予防、処置または改善することにおいて使用するための組成物を提供する。一部の実施形態において、有利な点は、少なくとも2つの活性な薬物(これらの一方は、TAGであり、組成物に存在する各々は、個体のメタボリックシンドロームの症状を処置、予防または軽減するのに有効な量である)を含むように組成物を処方することによって達成され得る。
【0066】
本発明はまた、一般のメタボリックシンドロームならびにアテローム硬化症、肥満および糖尿病の1つまたは複数の臨床症状を予防、処置または改善するための1つまたは複数の医薬の製造における、TAGベースの化合物の使用を提供する。そのような組成物はまた、メタボリックシンドロームならびにアテローム硬化症、肥満および糖尿病を有するか、それらを有すると疑われるか、またはそれらを発症するリスクを有する哺乳動物への全身投与または局所投与に適した医薬の調製において有用な1つまたは複数の薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、一般のメタボリックシンドロームならびにアテローム硬化症、肥満および糖尿病の1つまたは複数の臨床症状を予防、処置または改善するための1つまたは複数の医薬の製造における、TAGベースの化合物の使用を提供する。メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満、糖尿病またはそれらの組み合わせの症状を予防、処置または改善するための医薬の製造における、少なくともTAGおよび第二の活性な薬物、好ましくはスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはその任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態、またはそれらの任意の組み合わせを含み、哺乳動物への投与のために処方された組成物の使用もまた、本明細書に提供される。
【0068】
別の実施形態において、本発明は、高血圧、高トリグリセリド血症、高血糖、高コレステロール血症またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されないメタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満および糖尿病の症状を予防、処置、改善するための組成物および方法を開示する。本明細書に開示される組成物、およびそれらを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる組成物は、LDLレベル、血清トリグリセリドレベル、HbAlcレベルおよび感受性の個体に存在するアテローム硬化症の病変の数を低下させるのに有効であることが示されており、したがって、インビボにおいてメタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満または糖尿病を治癒するか、またはそれらの発症の動力学を著しく減らすレジメン(複数含む)を提供するために、単独療法として、あるいは1つまたは複数の公知の予防剤(複数含む)または治療剤(複数含む)と組み合わせて使用され得る。個々の用量サイズ、治療の期間、追加の化合物を使用する付随の併用療法(co−therapy)に対する必要性の決定、ならびに全ての他の投薬の考慮事項は、本発明の方法を実行する通常の技量を有する医療従事者の範囲に十分入るものとみなされる。
【0069】
本発明はまた、特に、メタボリックシンドローム、アテローム硬化症、肥満および糖尿病を発症する、より高いリスクにある人(例えば、高血圧、高トリグリセリド血症、高血糖、高コレステロール血症またはそれらの組み合わせを現在有する個体)において有用であるように意図されている。
【0070】
別の実施形態において、本発明は、第一の活性成分(好ましくは、TAG)を、少なくとも1つの第二の活性成分と組み合わせて含む食品に関する。用語「食品」は、栄養性の内容物を有する、液体を含む哺乳動物が食用可能な任意のもの(例えば、限定せずに、本発明の組成物で補充された強化食品(fortified food)、本発明の組成物を含む栄養補充物(nutritional supplement)など)を含むことが理解されるべきである。この第二の活性成分は、TAGを使用する併用療法で有用な任意の薬物またはプロドラッグであり得る。一実施形態において、この好ましい第二の活性な薬物は、スチルベン、スチルベノイド、それらの薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態である。これらの化合物は、化学合成によってか、または植物から取得され得る。本発明のスチルベン化合物は、上記のように形成され得る。好ましいスチルベンおよびスチルベノイドは、ピセアタンノール、ピノシルビン、プテロスチルベン、レスベラトロール、ビニフェリン、アンペロプシンA、アンペロプシンE、ジプトインドネシンC、ジプトインドネシンF、グネチンH、ヘムスレアノールD、ホペアフェノール、trans−ジプトインドネシンB、バチカノールB、アストリンギン、ピセイドおよびジプトインドネシンAを含む。本発明で使用するための好ましいスチルベノイドはレスベラトロールおよび/またはその誘導体である。この第二の活性な薬物の特に好ましいレスベラトロール由来成分は、レスベラトロールのダイマー、より好ましくはレスベラトロールtrans−デヒドロダイマー、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシド、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11−O−β−D−グルコピラノシドおよびビニフェリン、またはそれらの異性体を含む。両方の成分(例えば、TAGおよびスチルベン成分もしくはスチルベノイド成分)は、当業者に公知の任意の手段によって任意の食品に組み込まれ得る。
【0071】
一実施形態において、上記組成物または食品は、TAGおよびおそらく上記第二の活性な薬物成分を除いては、任意の甘味料も増量剤(bulking agent)も少なくとも実質的に含まないか、それらを完全に含まない。含まれ得るが、一実施形態では最小にされるもしくは回避される例示的な甘味料および増量剤としては、限定せずに、以下が挙げられる:ネオテーム、スクラロース、サッカリン、アセスルファームカリウム(acesulfame potassium)、アスパルテーム、フルクトース、転化糖、高フルクトースコーンシロップ、スクロース、キシリトール、マルチトール、グルコース、ソルビトール、マンニトール、マルトース、トレハロース、通常のコーンシロップおよび/またはラクトース。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、それがたとえ範囲内の最初の数の前にのみ現れても、数字の範囲内の両方の数に対して言及することが理解されるべきである。さらに、本明細書の全ての数字の範囲は、その範囲内の各々の整数(whole integer)および整数の10分の1を含むことが理解されるべきである。
【0073】
用語「成分(component)」を使用する一部の場合において、用語「活性な薬剤」、「活性成分(active ingredient)」および「薬物」は、哺乳動物に投与された場合に所望の薬理学的な効果、予防効果または治療効果をもたらす1つまたは複数の化学物質または化合物をいうために、本明細書で交換可能に使用される。所望の薬理学的な効果、予防効果または治療効果ももたらす、化合物または化合物のクラス(特に具体的に言及された化合物)の、任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態が含まれる。用語「量」は、薬剤、化合物または成分の乾燥量(dry quantity)(例えば、グラム(g)単位で測定されるか与えられる量)、および特定の体積の溶媒または他の液体試薬に溶解されたかまたは他の方法で存在し、mg/dlのような濃度で表現される薬剤、化合物または成分の量の両方を含む。用語「有効量」または「薬学的に有効な量」は、疾患もしくは状態またはそれらの症状に対して予防上の効能または治療上の効能を得るために、あるいは疾患もしくは状態またはそれらの症状を管理するために必要とされる活性な薬学的な薬剤(pharmaceutical agent)の量を含む。必要とされる正確な量は、被験体の年齢、体重および全般的な状態、処置されている状態の重症度および臨床医の判断などに依存して、被験体ごとに変動する。したがって、正確な「有効量」を特定することは常に可能であるというわけではない。しかしながら、任意の個々の場合における適切な「有効な」量は、慣例的な実験のみを使用して当業者によって決定され得る。例えば、本明細書に記載の組成物の任意の部分および各組成物全体の「有効量」または「薬学的に有効な量」は、本明細書に記載の頻度および投薬量によって包含される。例として、有効量のTAGは、メタボリックシンドローム状態、あるいはそれらの形成または保持、あるいはメタボリックシンドローム状態と関連する症状または状態を予防、処置または管理するための効能を取得するのに必要とされるTAGまたはその塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグの量を含む。用語「管理する」は、例えば、疾患もしくは状態の改善または患者の健康(health)もしくは福祉(well−being)を改善する他の治療効果(例えば、疾患または状態を必ずしも完全に治癒することのない、その症状の予防または低減)をもたらす任意の行為を含む。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は、「からなる(consists of)」、「からなる(consisting of)」、「本質的にからなる(consists essentially of)」および「本質的にからなる(consisting essentially of)」を含むが、これらに限定されない他の移行用語(transition term)を包含する。したがって、本発明に従う各々の実施形態は、たとえこれらの他の移行用語が、この出願をわたって用語を反復する必要性を最小限にするために、この段落においてのみ注記されていても、これらの他の移行用語の各々に関して代替的に記載されていると理解されるべきである。
【0075】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」は、雌性において子または仔を養うために乳を分泌する器官を有する温血脊椎動物のクラスを意味する。哺乳動物としては、ヒト;類人猿;種々の四足の動物(例えば、ウシ、ウマ、イヌおよびネコのような愛玩動物);クジラ;イルカ;およびコウモリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
用語「薬学的に受容可能な塩(複数含む)」または「その薬学的に受容可能な塩」とは、無機酸および無機塩基ならびに有機酸または有機塩基を含む薬学的に受容可能な非毒性の酸または塩基から調製される塩(複数含む)をいう。本発明で使用される薬学的に受容可能な塩は、両性であり得るか、内部塩の形態で存在し得るか、またはそれらの両方であり得る。当業者に利用可能な任意の方法によって作製された任意の利用可能な塩が使用され得るが、いくつかの例示的な酸および塩基が、限定せずに記載される。このような塩を形成するのに使用され得る例示的な無機酸としては、塩酸、ヨウ化水素酸(hydroiodic acid)、臭化水素酸、硫酸またはリン酸のような1つまたは複数の鉱酸が挙げられる。適切な有機酸は、例えば、限定せずに、有機酸の脂肪族系酸、芳香族酸、カルボン酸およびスルホン酸のクラスから選択され得、これらの例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルクロン酸、フロン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エムボン酸(embonic acid)(パモ酸(pamoic acid))、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸(algenic acid)、ガラクツロン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸またはこれらの組み合わせである。
【0077】
本発明のスルフェート化合物またはホスフェート化合物との可能性のある塩形成に関して、このような無機塩基の例は、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の塩ならびにそれらの任意の組み合わせから作製された金属塩を含む。有機塩基に由来する塩としては、例えば、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミン、置換アミンの1つまたは複数の塩が挙げられ、これらとしては、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トリメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabamine)、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、フマレート、マレアート、スクシネート、アセテート、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(meglumaine)(N−メチルグルカミン)およびオキサレートを含む天然に存在する置換アミンおよび環状アミンが挙げられる。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」は、哺乳動物(より好ましくは、ヒト)の特定の疾患および/またはその症状を予防することを網羅し、これは:(i)その疾患に対する素因を有し得るが、まだそれを有しているとは診断されていない被験体において、その疾患またはその症状が発生することを防ぐこと;ならびに(ii)その疾患またはその症状が患者に罹る前、またはそれが患者に罹った後またはその両方において、その疾患またはその症状を抑制すること、すなわち、その発症を停止すること、を含む。メタボリックシンドロームの症状を抑制することが、例えば、根底にある疾患それ自体に実際に影響を与えるか、または影響を与えずにその症状の一部または全てに対処し得るように、任意の疾患の症状がまた、用語「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」または「予防(prevention)」の範囲内に包含されることが理解されるべきである。
【0079】
用語「実質的に」は、例えば、全くの完全にではない、または全くの絶対的にではないことを意味する。典型的に、「実質的に」は、少なくとも約90パーセント、好ましくは少なくとも約95パーセント、そしてより好ましくは少なくとも約99パーセントをいうことが理解されるべきである。1つのより好ましい実施形態において、「実質的に」は、少なくとも約99.5パーセントまたは99.9パーセントをいい得る。一例において、実質的な安定性を有するTAGの処方物のような「実質的に安定な」組成物は、規定された期間にわたって必ずしも絶対的な安定性または100%の安定性を示さない可能性のある溶液を包含する;代わりに、その組成物は、周囲条件下で特定の期間にわたり、約97%超の安定性または約99.8%超の安定性のような完全に近い安定性を示し得る(特に他に指定されなければ)。
【0080】
反対に、「実質的に含まない」は、例えば、言及された特徴をほとんど完全に含まないことを意味する。典型的に、「実質的に含まない」は、約5パーセント未満、好ましくは約1パーセント未満、そしてより好ましくは約0.1パーセント未満をいうことが理解されるべきである。1つのより好ましい実施形態において、これは、約0.05パーセント未満、または約0.01パーセント未満をいう。1つの最も好ましい実施形態において、この用語は、分析で検出可能な量未満をいう。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、または「処置(treatment)」は、哺乳動物(より好ましくは、ヒト)の特定の疾患および/または症状を処置することまたは管理することを網羅し、これは:(i)その疾患またはその症状を軽減すること、すなわち、その疾患の後退を引き起こすこと;(ii)その疾患またはその症状をモニタリングすること、すなわち、薬物送達サイクルを最適なレベルに調整すること、を含む。メタボリックシンドロームの症状を管理することが、例えば、根底にある疾患それ自体に実際に影響を与えるか、または影響を与えずにその症状の一部または全てに対処し得るように、任意の疾患の症状がまた、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、または「処置(treatment)」の範囲内に包含されることもまた理解されるべきである。
【0082】
詳細な説明で言及または引用された特許出願、特許、刊行物および他の公開された書類の各々は、あたかも、その各々が、参考として援用されるように具体的かつ個々に示されているのと同じ程度まで、明確な参考としてそれらの全体が、本明細書に援用される。
【実施例】
【0083】
本発明は、詳細な特定の賦形剤、適応症、組み合わせおよび投薬量などを記載する、以下の例示的な(非限定的な)実施例への言及によってさらに規定される。この実施例は、当業者が、上記組成物を調製または投与し、そして本発明の方法を実行することを補助するために使用され得る。
【0084】
実施例1:本発明にしたがった、コントロール、TAG給餌およびスクロース給餌高コレステロール血症のマウスにおける、体重、脂肪細胞の特徴、血中コレステロール濃度、高血糖およびアテローム硬化症の病変の比較
およそ8週齢である低比重リポタンパク質受容体雄性マウスおよび雌性マウス(LDLr−/−)に、標準的なマウス食餌(「コントロール」)、スクロースに富む食餌またはTAGに富む食餌のいずれかで16週間給餌した。スクロースまたはTAGに富む食餌は、等量(g/kg)のタンパク質、脂肪および炭水化物を含んだが、スクロース(約4.0kcal/g)とTAG(約1.5kcal/g)との間のエネルギー含量(energy content)の差に起因して、このTAGを含有する食餌は、脂肪およびタンパク質に由来する、比較的より多くのカロリーを提供した。16週間の給餌期間の前に、スクロースおよびTAGを、スクロース食餌またはTAG食餌 対 標準的なマウス食餌の増大する比を使用し、3週間の期間にわたり、実験マウスに徐々に導入した。
【0085】
食物摂取量を、上記の16週間の期間のうちの最初の4週間にわたって測定し、マウスの体重を毎週測定した。両方の性において、スクロースに富む食餌を給餌されたマウスは、TAGに富む食餌を給餌されたマウス(雄性では27±0g;雌性では24±1g)およびコントロール(雄性では30±0g;雌性では24±1g)マウスと比較して、体重に顕著な増加を示した(雄性では40±2g;雌性では31±1g)。TAGに富む食餌を給餌されたマウスの体重は、コントロールマウスの体重に匹敵した。研究の終点において、腹膜後の脂肪および精巣上体(epidydimal)の脂肪を、身体から切開して取り出し(dissect out)、ホルマリン中に保存し、次に、形態学および免疫染色の検査のためにパラフィン中に包埋した。総脂肪組織塊は、マウス食餌またはTAGに富む食餌を給餌されたマウスと比較した場合に、スクロースに富む食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスの両方において増加した。
【0086】
脂肪細胞の形態学の特徴づけのために、脂肪組織の切片を、脱パラフィン処理をし(deparrafinize)、ヘマトキシリンおよびエオシンを使用して染色し、その後、Image Pro Plus 5.1(Media Cybernetics,Silver Spring,MD)を使用して分析した。スクロースに富む食餌を給餌されたマウスは、TAG給餌(雄性では79±3μm;雌性では31±1μm)マウスおよびコントロール(雄性では74±3μm;雌性では30±1μm)マウスと比較した場合に、増大した脂肪細胞のサイズを示した(雄性では83±3μm;雌性では50±1μm)。マクロファージ陽性F4/80免疫染色を、スクロースに富む食餌を給餌されたマウスからの脂肪の切片で検出したが、標準的なマウス食餌を給餌されたマウスでもTAGに富む食餌を給餌されたマウスでも検出されなかった。この研究からの結果は、スクロースに富む食餌が肥満の発達を促進する一方で、TAGは、驚くべきことに実質的な体重増加も肥満(adiposity)の増強も脂肪細胞の肥大も促進しないことを示している。
【0087】
総血清コレステロール濃度および総血漿トリグリセリド濃度を、酵素アッセイキット(Wako Pure Chemical,Richmond,VA)を使用して、研究の終了時に個々のマウスに関して測定した。スクロースに富む食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスは、標準的なマウス食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウス(雄性では110±20mg/dl;雌性では79±16mg/dl)ならびにTAG食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウス(雄性では162±29mg/dl;雌性では54±8mg/dl)と比較して、顕著に増加した総血清トリグリセリド濃度を有した(雄性では822±148mg/dl;雌性では326±37mg/dl)。スクロースに富む食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスは、標準的なマウス食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスならびにTAG食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスと比較して、顕著に増加した総血清コレステロール濃度を有した。さらに、スクロースに富む食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスは、超低比重リポタンパク質およびLDLコレステロールの有意に上昇した濃度を有した。比較において、TAGに富む食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスは、雄性および雌性のコントロールマウスと比較して、超低比重リポタンパク質およびLDLコレステロールの、ほんのわずかに上昇した濃度しか有さなかった。
【0088】
総血清コレステロールレベルは、驚くべきことにかつ予想外に、スクロース給餌マウスと比較して、雄性および雌性のTAG給餌マウスの両方で減少した。研究の終点において、マウスを、左心室を介した灌流によって瀉血した。心臓から回腸の分岐までの大動脈組織を切開し、リン酸緩衝化溶液(「PBS」)を使用して作製した4%パラホルムアルデヒド中で一晩固定し、その後PBS中で保管した。アテローム硬化症を、Henriques,TAら、「Orchidectomy,but not ovariectomy,regulates angiotensin II−induced vascular diseases in apolipoprotein E−deficient mice」Endocrinology,145:3866〜3872(2004)に詳述されるように、病変の表面積の正面分析(en face analysis)によって定量化した。アテローム硬化症の病変を、2人の独立した観察者によって定量化した。コントロールおよびTAGに富む食餌を給餌されたマウスの両方と比べて、スクロースに富む食餌を給餌された雄性マウスおよび雌性マウスにおいて、アテローム硬化症の表面積の顕著な増加が存在した。TAG給餌雄性マウスは、コントロールマウスと比較して、有意に異なる量のアテローム硬化症を示さなかったが、雌性マウスは、コントロールマウスよりもわずかに高い率のアテローム硬化症を示した。アテローム硬化症の領域へのマクロファージの浸潤を、免疫組織化学染色を使用して評価した。スクロース給餌マウスは、TAG給餌マウスと比較した場合に、大動脈根(aortic root)においてより大きな程度のマクロファージの浸潤およびより大きな病変を示した。次に、赤外線顕微鏡法を大動脈の病変について実行した。スクロース給餌マウスのアテローム硬化症の病変は、TAG給餌マウスおよびコントロールマウスの病変と比較して、最も高濃度の脂質を有した。TAG給餌マウスは、中間の量の脂質を有したが、病変のGomori Trichome染色によって、スクロース給餌マウスの病変と比較して、TAG給餌マウスのアテローム硬化症の病変におけるより高い濃度のコラーゲンが存在することが明らかとなった。コラーゲンは、脂質で満たされたアテローム中の線維性被膜(fibrous cap)を強化して破裂を防ぎ得る。したがって、雄性および雌性の両方のスクロース給餌マウスは、TAG給餌マウスと比較した場合、大動脈根におけるアテローム硬化症の病変の驚くほどより多い数およびサイズを示した。
【0089】
実施例2:本発明にしたがったTAG投薬による血清トリグリセリドレベルおよび血清コレステロールレベルの変動(variance)
II型糖尿病を有する38人のヒト患者に、食事とともに経口的に、TAGの3つの濃度のうちの1つを投与した。この3つの異なる用量は、2.5g、5.0gおよび7.5gであった。処置期間は、6ヶ月であり、患者は、これらの3つの用量のうちの1つに無作為化した。患者は、6.6%と9.0%との間のHbAlc、すなわち糖化ヘモグロビンレベルを含む特定の包含基準(specific inclusion criteria)に合格する必要があった。患者はまた、TAG用量を受容する前に、本研究者の監督下での体重維持食(weight−maintaining diet)および毎日の運動プログラムを行う、8週間のランイン(run−in)期間を経験しなければならなかった。任意の経口または注射用抗糖尿病治療薬での現在または最近の処置歴を有する患者、ならびに本研究への登録前6ヶ月以内に重篤な低血糖の1つまたは複数のエピソードを有した患者は本研究から排除した。血液サンプルを、本実験を通して採取し、HbAcl、血清トリグリセリド、LDLおよびHDLのレベルを測定した。TAGを6ヶ月与えた後、7.5g群の患者は、2.5g群のHbAlcから、HbAlcにおいて平均0.3%の低減を経験した。5g群は、上記2.5g群のHbAlcから、HbAlcにおいて平均0.05%の低減を経験した。
【0090】
TAGはまた、驚くべきことに、治療の最初の月の終わりまでにTAG消費患者の平均血清トリグリセリドを約59mg/dl減少させ、ベースラインからの減少は、6ヶ月間のこの実験の終わりまでに約41mg/dlで維持された。TAGを6ヶ月与えた後、2.5g群の患者は、驚くべきことに、平均22.2mg/dlの低減を経験し、5g群の患者は、驚くべきことに、平均96.8mg/dlの低減を経験し、そして7.5g群の患者は、驚くべきことに、平均2.8mg/dlの低減を経験した。
【0091】
TAGはまた、治療の最初の月の終わりまでに血清LDLを平均約13mg/dl減少させたが、血清HDLは本質的に変化しなかった。治療の最初の月の終わりまでに、2.5g群の患者におけるLDLレベルは、驚くべきことに約12.3mg/dl減少し、5g群では、驚くべきことに約23.8mg/dl減少した。LDL:HDLの比は、上記の3つの用量群のうちの2つ(すなわち、2.5g群および5g群)に関して、平均0.3で予想外に改善された。
【0092】
実施例3:本発明にしたがったTAG錠剤の形成
直接圧縮によるTAG組成物錠剤の形成は、以下に例示されるが、異なる第二の活性な薬物組成が使用され得る。
【0093】
TAGは、40メッシュのステンレス鋼ふるいを通過させ、レスベラトロールtrans−デヒドロダイマー顆粒とおよそ5分間ブレンドする。ブレンド後、この顆粒を、15/32”の円形の標準的な凹パンチ(concave punch)(プレイン(plain)底面パンチ(lower punch)、約1mmの圧入ピン(indentation pin)を有する上面パンチ(upper punch))を装着したロータリープレスで圧縮する。オリフィスは、製薬業界で一般的に使用される任意の手段によって形成され得る。
【0094】
本発明の好ましい実施形態を、上記の説明で記載してきたが、本発明は、本明細書に開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、当業者によって多様に改変され得ることが理解される。使用される材料および化学上または薬学上の詳細が、本発明によって開示および教示される方法および組成物から逸脱することなく、本明細書の記載からわずかに異なり得るか、または改変され得ること、そしてそのような改変もまた添付の特許請求の範囲の範囲内に入るように意図されることが理解される。上記の開示は、当業者が、本特許請求される発明を実施することを可能にするのに本質的であるとみなされる、全ての情報を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に有効な量のD−タガトース、またはその薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグ;および
薬学的に有効な量の第二の薬学的に活性な薬物
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記第二の薬学的に活性な薬物が、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはその任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態または組み合わせを含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記スチルベン成分または前記スチルベノイド成分が、レスベラトロールもしくはレスベラトロール誘導体またはそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記レスベラトロール誘導体がレスベラトロールのダイマーを含む、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記レスベラトロールのダイマーが、レスベラトロールtrans−デヒドロダイマー、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシド、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11−O−β−D−グルコピラノシドおよびビニフェリン、またはその異性体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む抗メタボリックシンドローム組成物であって、その有効量が、メタボリックシンドロームを予防または処置するのに十分である、抗メタボリックシンドローム組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む抗アテローム硬化症組成物であって、その有効量が、アテローム硬化症を予防または処置するのに十分である、抗アテローム硬化症組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む抗肥満組成物であって、その有効量が、肥満を予防または処置するのに十分である、抗肥満組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を含む抗糖尿病組成物であって、その有効量が、糖尿病を予防または処置するのに十分である、抗糖尿病組成物。
【請求項10】
前記有効な量が、血中の総血清トリグリセリドレベルを約1%〜約60%、好ましくは約5%〜約50%、より好ましくは約11%〜約40%低下させるのに十分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記有効な量が、血中の低比重リポタンパク質の濃度を約0.1%〜約30%、好ましくは約4%〜約20%、より好ましくは約6%〜約10%低下させるのに十分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記有効な量が、動脈内のプラーク体積を約0.1%〜約50%、好ましくは約0.5%〜約40%、より好ましくは約1%〜約30%低下させるのに十分である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
哺乳動物におけるメタボリックシンドロームを予防または処置するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に、該哺乳動物のメタボリックシンドロームを予防または処置するための、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む組成物または請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項14】
前記哺乳動物がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬学的組成物が経口投与される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
哺乳動物におけるアテローム硬化症を予防または処置するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に、該哺乳動物のアテローム硬化症を予防または処置するための、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む組成物または請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項17】
前記哺乳動物がヒトである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薬学的組成物が経口投与される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
哺乳動物における肥満を予防または処置するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に、該哺乳動物の肥満を予防または処置するための薬学的に有効な量の請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
前記哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記薬学的組成物が経口投与される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物における糖尿病を予防または処置するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に、該哺乳動物の糖尿病を予防または処置するための、薬学的に有効な量のD−タガトースを含む組成物または請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記薬学的組成物が経口投与される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記薬学的組成物が錠剤として形成される、請求項15、18、21または24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
メタボリックシンドロームの予防または処置に使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
アテローム硬化症の予防または処置に使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
肥満の予防または処置に使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
糖尿病の予防または処置に使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
医薬として使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
メタボリックシンドロームの1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項32】
アテローム硬化症の1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項33】
肥満の1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項34】
糖尿病の1つまたは複数の症状を予防または処置するための医薬の製造における、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項35】
薬学的に有効な量の前記薬学的組成物の、請求項31〜34のいずれか一項に記載の使用であって、前記症状が、高血圧、高トリグリセリド血症、高血糖、高コレステロール血症またはそれらの組み合わせを含む、使用。
【請求項36】
治療に使用するための、請求項1〜5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項37】
メタボリックシンドロームを有するか、メタボリックシンドロームを有すると疑われるか、またはメタボリックシンドロームを発症するリスクにあるヒトの治療に使用するための、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
アテローム硬化症を有するか、アテローム硬化症を有すると疑われるか、またはアテローム硬化症を発症するリスクにあるヒトの治療に使用するための、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
肥満を有するか、肥満を有すると疑われるか、または肥満を発症するリスクにあるヒトの治療に使用するための、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
糖尿病を有するか、糖尿病を有すると疑われるか、または糖尿病を発症するリスクにあるヒトの治療に使用するための、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
薬学的に有効な量のD−タガトース、またはその薬学的に受容可能な塩、糖アルコール、水和物、溶媒和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、代謝産物、プロドラッグ;および
薬学的に有効な量の少なくとも1つの第二の活性成分
を含む、食品。
【請求項42】
前記第二の薬学的に活性な薬物が、スチルベン成分もしくはスチルベノイド成分、またはその任意の薬学的に受容可能な塩、アルコール、水和物、エステル、アミド、誘導体、類似体、多形、代謝産物、異性体もしくはプロドラッグ形態、または組み合わせを含む、請求項41に記載の食品。
【請求項43】
前記スチルベン成分または前記スチルベノイド成分が、レスベラトロールもしくはレスベラトロール誘導体またはそれらの組み合わせを含む、請求項42に記載の食品。
【請求項44】
前記レスベラトロール誘導体がレスベラトロールのダイマーを含む、請求項43に記載の食品。
【請求項45】
前記レスベラトロールのダイマーが、レスベラトロールtrans−デヒドロダイマー、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11’−O−β−D−グルコピラノシド、レスベラトロール(E)−デヒドロダイマー11−O−β−D−グルコピラノシドおよびビニフェリン、またはその異性体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項44に記載の食品。

【公表番号】特表2012−506912(P2012−506912A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534903(P2011−534903)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/063293
【国際公開番号】WO2010/054001
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(301009830)ユニバーシティ オブ ケンタッキー リサーチ ファウンデーション (2)
【Fターム(参考)】