説明

アディポネクチン上昇剤及びアディポネクチン上昇用飲食品

【課題】 脂質含有量が少ない物質であってアディポネクチン上昇能を有するアディポネクチン上昇剤及びアディポネクチン上昇用飲食品を提供する。
【解決手段】 ワサビタケ属のきのこ由来物質を有効成分として含む。このきのこは、ムキタケ(Panellus serotinus)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内のアディポネクチン濃度を上昇させるアディポネクチン上昇剤、及びアディポネクチン上昇能を有するアディポネクチン上昇用飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
アディポネクチンは、脂肪細胞から血液中に分泌されるタンパク質であり、インスリン感受性の低下を改善することにより2型糖尿病を抑制すると共に、血管壁に作用して動脈硬化症を抑制するほか、肝機能保護作用も発揮することが知られている。
【0003】
なお、アディポネクチンはAcrp30(adipocyte complement−related protein of 30kDa)、apM−1、Glatin−binding protein、Adipose most abundunt gene transcript 1等としても知られており、また、遺伝子名は、APM1、ACRP30、GBP28として知られている。
【0004】
このアディポネクチンの分泌は脂肪細胞の大きさと関係しており、脂肪細胞が相対的に小さい場合には分泌量は多いものの、肥満によって脂肪細胞が肥大化した場合には分泌量が減少することが知られている。一方、わが国の約半数の国民は、血中のアディポネクチン濃度が相対的に低い値を示す遺伝的素因を持っているといわれている。
【0005】
ところで、本発明者らは従来より、経口摂取又は投与により血中のアディポネクチン濃度を上昇させることができる物質についての検討を行っており、ドコサヘキサエン酸又はその誘導体の摂取によって血中のアディポネクチン濃度が上昇する一方、アディポネクチン濃度の上昇に伴って、血漿中のトリグセリド、コレステロール及びリン脂質の濃度が低下するという知見等を得、それらを有効成分とするアディポネクチン上昇剤という発明を出願している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2006−306866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、血中のアディポネクチン濃度を積極的に上昇させることによって血漿中の脂質濃度の改善等が図れることより、血中のアディポネクチン濃度を上昇させることが、肥満、更には糖尿病・動脈硬化等の生活習慣病の改善・予防に重要であるといえる。
【0007】
ところで、ドコサヘキサエン酸又はその誘導体は脂質であるので、その摂取量・摂取方法が制限されることがある。従って、脂質含有量は少ないが、アディポネクチン上昇能を有する物質があれば、脂質による制限がある場合であってもそれを摂取することができるため好適である。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、脂質含有量が少ない物質であってアディポネクチン上昇能を有するアディポネクチン上昇剤及びアディポネクチン上昇用飲食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、そのような物質について鋭意検討を行った結果、ワサビタケ属のきのこにアディポネクチン上昇能が存在するという知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、(1) 請求項1記載のアディポネクチン上昇剤は、ワサビタケ属のきのこ由来物質を有効成分として含むことを特徴とする。
【0010】
(2) 請求項2記載のアディポネクチン上昇剤は、前記きのこはムキタケ(Panellus serotinus)であることを特徴とする。
【0011】
(3) 請求項3記載のアディポネクチン上昇用飲食品は、ワサビタケ属のきのこ由来物質を有効成分として含むことを特徴とする。
【0012】
(4) 請求項4記載のアディポネクチン上昇用飲食品は、前記きのこはムキタケ(Panellus serotinus)であることを特徴とする。
【0013】
きのこは脂質含有量が非常に少ないが、ワサビタケ属のきのこも後述するように(表1参照)、脂質含有量が非常に少ない。更に、ワサビタケ属のきのこ、特にムキタケ(Panellus serotinus)は血中アディポネクチン濃度を上昇させる作用を有している。
【0014】
つまり、本発明に係るアディポネクチン上昇剤及びアディポネクチン上昇用飲食品は、脂質含有量が少ない物質であってアディポネクチン上昇能を有するという本発明の目的に合致するものである。従って、脂質による制限がある場合であっても、本発明に係るアディポネクチン上昇剤又はアディポネクチン上昇用飲食品を摂取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(本発明の実施形態)
以下に本発明に係る実施の形態について説明する。
(ムキタケ)
ムキタケ(Panellus serotinus)は、キシメジ科ワサビタケ属に属し、わが国では古くから食に供されている。ムキタケの菌糸の成長温度は略5〜略35℃であり、略24〜略25℃が至適温度である。また、子実体の発生温度は略7〜略18℃である。ムキタケの傘は側生であり、半円形をなしている。ムキタケの表皮下にはゼラチン層があり、これによって表皮がはがれやすいことよりムキタケの和名の由来とされている。菌糸は初期pHが略4.0〜略7.5で良好な成長を示し、至適pHは略6.0である。また、胞子は相対的に小さく、ソーセージ形をしている。
ムキタケは広葉樹林に自生しており、これらを原料としてもよいが、原木又は菌床によって人工栽培されたムキタケを原料とすることができる。
原木栽培は例えば次のようにして行うことができる。
【0016】
すなわち、ブナ、サクラ又はコナラ等の広葉樹原木を90〜100cm程度に切断して得たほだ原木に、4月中旬にムキタケの種駒(例えば、森産業株式会社製)を打ち込んでほだ化した後、適度の湿度を保ちつつ日陰で接地伏せする。この状態で2夏経過後の秋より収穫できる。
【0017】
また、菌床栽培は例えば次のようにして行うことができる。
すなわち、ブナおがこ10重量部に米ぬか3重量部を添加し、含水率が略65%になるように水を添加した培地を培養器に充填して高温滅菌(100℃で1時間程度)する。培養器内の培地を冷却した後に種菌を接種し、温度が略23℃、湿度が略70%の条件下で90日間程度培養して原基を形成させた後、温度が略10℃、湿度が略90%の条件下で40日間程度培養することによって子実体を形成させる。
【0018】
一方、このような固体培養以外に、適宜の液体培地を容器に投入して滅菌し、ムキタケの菌糸若しくは胞子、又は液体培地で培養した種菌を接種した後、振とう又は通気攪拌して培養を行う、所謂液体培養によってムキタケ(液体培養物)を得ることもできる。
【0019】
(原料としてのムキタケ由来物質)
アディポネクチン上昇剤及びアディポネクチン上昇用飲食品の原料としてのムキタケ由来物質として、固体培養又は液体培養にて得られたムキタケを、凍結乾燥、加熱乾燥、自然乾燥若しくは減圧乾燥等により、又はそれらを組み合わせて得た乾燥品を粉末化したムキタケ粉を適用することができる。
【0020】
また、前述したムキタケ又は乾燥ムキタケから適宜の有機溶媒若しくは熱水等を用いて抽出した抽出液又はその乾燥物、或いは抽出液又は乾燥物を精製して得られる精製物(液状又は固状)を用いることができる。
なお、かかる精製は、脱色、或いは溶媒抽出法、沈殿による分画法及びクロマトグラフィーによる分画法等を、単独で又は組み合わせて行うことができる。
【0021】
(アディポネクチン上昇剤)
本発明のアディポネクチン上昇剤は、常法にしたがって調整することができ、製剤としては固状又は液状のいずれであってもよい。例えば、錠剤、丸剤。顆粒剤、糖衣剤、カプセル剤、乳剤、液剤、ゲル状剤、シロップ剤、スラリー剤、又は、懸濁剤等が挙げられ、医薬的に許容されるキャリアーを含んでもよい。
【0022】
そのようなキャリアーは、添加剤であってもよく、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルソース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される海面活性剤等が挙げられる。
【0023】
また、製剤化においては、賦形剤を加えることができる。賦形剤としては、目的によって、充填剤、結合剤、凝固剤、滑たく剤、崩壊剤、コーティング剤等を単独で、又は組み合わせて使用することができる。更に、酸化防止剤、色素、甘味料、香料等も添加することができる。
アディポネクチン上昇剤の投与形態は、経口投与又は非経口のいずれでもよいが、精製度が低い場合は経口投与が適用される。
【0024】
本発明に係るアディポネクチン上昇剤に含まれるムキタケ由来物質の含有量は、前述した剤型等にあわせて適宜選択することができるが、本実施例で得られた値に基づいて、例えば、ムキタケ粉を用いた場合、1日の摂取量を10g程度に設定することができる。
【0025】
(アディポネクチン上昇用飲食品)
本発明に係るアディポネクチン上昇用飲食品は、一般の加工飲食品の他に、健康飲食品、機能性飲食品、栄養補助飲食品とすることができる。
【0026】
本発明に係るアディポネクチン上昇用飲食品の様態に制限はなく、例えば、前述したムキタケ粉、抽出液、抽出乾燥物、又は液状若しくは固状の精製物をそのまま飲食材に混合した飲食品として提供することができる。また、液状、ゲル状、粉末状、又は固形状の飲食品、例えば、清涼飲料、茶飲料、スポーツ飲料、スープ、ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、シャーベット、プリン、ドレッシング、マヨネーズ、ふりかけ、味噌、醤油、麺類、畜肉魚肉加工品、ジャム、乳製品、菓子類、パン類、ビスケット類等の原材料として加工して用いることができる。なお、これらの飲食品は添加物を含むことができる。添加物としては、賦形剤、増量剤、結合剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、甘味料、酸味料、調味料等が挙げられる。
【0027】
本発明に係る飲食品は、当業者らが通常行う方法により製造することができる。例えば、前述した抽出乾燥物又は精製物に、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、又はマルトース等の増量剤を添加して力価調整品を製造することができる。また、抽出液又は精製液にデキストリン、シクロデキストリン、デンプン、又はマルトース等を賦形剤として添加して、凍結乾燥又は噴霧乾燥等の乾燥方法により粉末物を製造することができる。
【実施例1】
【0028】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
まず、ムキタケ粉の摂取が被摂取動物の成長に与える影響について試験した結果について説明する。
【0029】
(試験材料及び試薬)
ムキタケ粉は、佐賀県林業試験場に保存されている菌株(SPs−54又はSPs−73)を前述したように菌床培養して得た生ムキタケを凍結乾燥後に粉末化したものを用いた。
【0030】
CE−2粉末(Chow食)は日本クレア株式会社から購入した。セルロース及βコーンスターチはオリエンタル酵母株式会社製から購入し、ビタミン混合物(AIN−76)及びミネラル混合物(AIN−76)は日本農業工業株式会社製から購入し、スクロールは三和製糖株式会社製から購入し、カゼインは和光純薬株式会社製から購入した。
また、Zucker fatty(fa/fa)ラット(以下、ZFラットともいう)は日本エスエルシー株式会社から購入した。
【0031】
なお、ZFラットは、肥満・糖尿病のモデル動物であり、食欲抑制ホルモンであるレプチンのレセプター変異により過食を生じ、肥満、高インスリン血症、脂肪肝を特徴とするメタボリックシンドロームを発症したモデル動物である。更に、ZFラットは、例えば、ヒトに対するインスリン抵抗性改善薬の評価試験にも用いられており、ヒトに対する効果を評価するためのモデル動物としても公知である。
その他の試薬は和光純薬株式会社から購入した特級試薬を使用した。
【0032】
(動物の飼育・処置及び食餌)
5週齢の雄ZFラットを金網ゲージに入れ、12時間の明暗サイクル、23±2℃の環境下で飼育した。12匹の雄ZFラットをラット用Chow食により6日間予備飼育した後、6匹づつ2群に分け、ペアードフィーディング(paired feeding)により本飼育を4週間行った。
【0033】
食餌は、AIN−76組成に順じた組成のものを対象食(FC食群)とし、実験食(MP食群)には、ムキタケ粉を10質量%添加した。なお、表1に示したムキタケ粉の組成におけるタンパク質、炭水化物及び繊維質の含有量に応じて、MP食におけるカゼイン、コーンスターチ及びセルロースの含有量を調整した。
FC食及びMP食の組成を表2に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
飼育中、水は自由に摂取させた。
屠殺は、本飼育終了日に9時間絶食させた後、ジエチルエーテルにより麻酔を行い、腹部大動脈採決により行った。
【0037】
(統計処理)
得られたデータは、Student’s t testを用いて検定し、危険率5%で有意とした。また、各データは平均値±標準誤差で示した。
【0038】
(結果)
ムキタケ粉がZFラットの成長パラメータに及ぼす影響について検討した結果を表3に示した。
【0039】
【表3】

【0040】
表3に示したように、4週間摂食させたZFラットの体重、体重増加量、及び飼料効率はFC食群及びMP食群の間で有意差が見られず、体重、体重増加量、及び飼料効率に対するムキタケ粉の影響は見られなかった。
【0041】
次に、ムキタケ粉の摂取が血中のアディポネクチン濃度に与える影響について検討した結果について説明する。
前述した試験において各ZFラットから採取した血液について、低速遠心法(1,750×g,15分,4℃)にて血清を分画してサンプルとした。そして、各サンプルについて、マウス/ラット・アディポネクチンELISAキット(大塚製薬株式会社)を用いて、ELISA法によりアディポネクチンの量を測定した。
その結果を表4に示した。なお、統計処理は前同様に行った。
【0042】
【表4】

【0043】
表4に示したように、ムキタケ粉を与えたZFラット(MP食群)にあっては、ムキタケ粉を与えていないZFラット(FC食群)に比べて血中のアディポネクチン濃度が略20%有意に上昇していた。
従って、ムキタケ粉は血中のアディポネクチン濃度を上昇させる作用を有するといえる。
【実施例2】
【0044】
次に、ムキタケ粉がZFラットに与える他の影響について検討した結果について説明する。
他の影響についての検討は、各臓器の質量、脂肪組織の質量、血液生化学パラメータ、肝臓脂質濃度、肝臓障害指標酵素活性、及び肝臓脂質代謝酵素活性に及ぼす影響について、実施例1で用いた各ZFラット及び各ZFラットから採取して得た血清のサンプルを用いてそれぞれ行った。
なお、得られたデータの統計処理は実施例1で用いた方法と同様である。
【0045】
(試験材料及び試薬)
シリカゲルはMallinckrodt Backer社(U.S.A)から購入したSilicic Acid(100Mesh)を用いた。5´−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)は東京化成から購入し、トリトンX−100、DTT、及び6−ホスホグルコネイトデヒドロゲナーゼは和光純薬株式会社から購入し、パルミトイルCoAはフナコシから購入し、グルコース6−リン酸はCALZYME Lab,Inc(CA,USA)から購入し、L−リンゴ酸、アセチルCoA、マロニルCoA、L−カルニチン、CoA、FAD、ホスファジン酸、及びホスファチジルコリンSigma Chemical Co.(MO,USA)から購入した。
その他の試薬は、和光純薬株式会社から購入した特級試薬を使用した。
【0046】
(血清分析)
血清トリアシルグリセロール、リン脂質、総コルステロール、遊離脂肪酸(NEFA)及びグルコースの各濃度は、和光純薬株式会社より購入したトリグリセライドE−テストワコー、リン脂質C−テストワコー、コレステロールE−テストワコー、NEFA C−テストワコー、及びグルコースCII―テストワコー酵素キットをそれぞれ用い、酵素法により行った。
また、インスリンの濃度は、レビスインスリン測定キット(株式会社シバヤギ)を用いて行った。
【0047】
(肝臓脂質の抽出)
肝臓総脂質はFolchらの方法により抽出した。
【0048】
(肝臓トリアシルグリセロールの濃度測定方法)
肝臓トリアシルグリセロールの濃度はFletcherらの方法により定量した。
【0049】
(肝臓コレステロール濃度測定方法)
肝臓コレステロールの濃度は、和光純薬株式会社より購入したコレステロールF−テストワコーを用い、コレステロールオキシダーゼ・DAOS法により波長600nmでの吸光度を測定することによって行った。
【0050】
(肝臓リン脂質濃度測定方法)
肝臓リン脂質濃度はFleischerらの方法により定量した。
【0051】
(血中肝臓障害使用酵素活性の測定)
血清中のグルタミン酸・オキザロ酢酸アミノ基転移酵素(GOT)活性、及びグルタミン酸・ピルビン酸アミノ基転移酵素(GPT)活性は、和光純薬株式会社より購入したトランスアミナーゼCII―テストワコーを用いて、POP・TOOS法により測定した。また、乳酸脱水素酵素(LDH)は和光純薬株式会社より購入したラクテートデヒドロゲナーゼCII―テストワコーを用いて乳酸基質・テトラゾリウム塩法により測定し、アルカリ性ホスファターゼ(ALA)は和光純薬株式会社より購入したアルカリ性ホスファK―テストワコーを用いてフェニルリン酸基質法により測定した。
【0052】
(酵素活性用細胞分画)
肝臓2gに12mlの10mMトリス塩酸(pH7.4)−1mM EDTA−50mMスクロース緩衝液(HG緩衝液)を加えてホモジネートした後、遠心分離(12000rpm、10分、4℃)した。得られた沈殿物にHG緩衝液を加えて攪拌し、ミトコンドリア画分とした。遠心分離後の上清は、更に遠心分離(40000rpm、1時間、4℃)を行い、上清を細胞質画分とし、沈殿物にHG緩衝液を加えて攪拌したものをミクロソーム画分とした。
【0053】
(脂肪酸合成酵素(FAS)活性の測定)
脂肪酸合成酵素活性はKelleyらの方法を用いて測定した。
【0054】
(リンゴ酸酵素(ME)活性の測定)
リンゴ酸酵素活性はOchoaらの方法を用いて測定した。
【0055】
(グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PDH)活性の測定)
グルコース6リン酸脱水素酵素活性はKelleyらの方法を用いて測定した。
【0056】
(フォスファチジン酸ホスホヒドラーゼ(APA)活性の測定)
フォスファチジン酸ホスホヒドラーゼ活性はWaltonらの方法を用いて測定した。
【0057】
(カルニチンパルミトイル転移酵素(CPT)活性の測定)
カルニチンパルミトイル転移酵素活性はMarkwellらの方法を用いて測定した。
【0058】
(タンパク質定量法)
各画分中のタンパク質量はLowry法を用いて定量した。
【0059】
(結果)
表5に各臓器の質量に与える影響を、表6に脂肪組織の質量に与える影響を、表7に血液生化学パラメータに与える影響を、表8に肝臓脂質濃度に与える影響を、表9に与える影響を、表10に肝臓脂質代謝酵素活性に及ぼす影響をそれぞれ示している。
【0060】
【表5】

【0061】
表5より明らかなように、肝臓及び脾臓の質量について、ムキタケ粉を与えたZFラット(MP食群)の方が、ムキタケ粉を与えていないZFラット(FC食群)より軽量であった。
かかる肝臓質量の軽減については、ムキタケ粉摂取に係るアディポネクチンの上昇によりZFラットの脂肪肝が改善されたためではないかと考えられる。
【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
表7より明らかなように、血中のリン脂質、コレステロール及びグルコース濃度についてはムキタケ粉摂取の影響は認められなかったが、血中のトリグリセリド濃度はMP食群の方がFC食群より有意に高く、インスリン濃度はMP食群の方がFC食群より有意に低いものであった。
血中インスリン濃度の低下については、ムキタケ粉摂取に係るアディポネクチンの上昇によりZFラットのインスリン抵抗性が軽減されたためではないかと考えられる。
また、血中トリグリセリド濃度の上昇については、ムキタケ粉摂取に係るアディポネクチンの上昇によりZFラットの体内組織へのトリグリセリドの取り込み量が低下したためではないかと考えられる。
【0065】
【表8】

【0066】
表8より明らかなように、肝臓へのトリグリセリドの蓄積量は、MP食群はFC食群の1/6程度であった。
これは、ムキタケ粉摂取に係るアディポネクチンの上昇によりZFラットの肝臓へのトリグリセリドの取り込み量が低下したためではないかと考えられる。
【0067】
【表9】

【0068】
表9より明らかなように、肝臓障害指標酵素活性たるGOT、GPT、ALP、LDHのいずれにおいてもMP食群はFC食群より低下していた。
これは、ムキタケ粉摂取に係るアディポネクチンの上昇によりZFラットの肝機能が改善されたためではないかと考えられる。
【0069】
【表10】

【0070】
表10より明らかなように、肝臓脂質代謝酵素活性たるFAS、G6PDH、PAP及びGPTについては、MP食群とFC食群との間で有意差は認められなかったが、リンゴ酸酵素(ME)活性については、MP食群はFC食群より有意に低下していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワサビタケ属のきのこ由来物質を有効成分として含むアディポネクチン上昇剤。
【請求項2】
前記きのこはムキタケ(Panellus serotinus)である請求項1記載のアディポネクチン上昇剤。
【請求項3】
ワサビタケ属のきのこ由来物質を有効成分として含むアディポネクチン上昇用飲食品。
【請求項4】
前記きのこはムキタケ(Panellus serotinus)である請求項3記載のアディポネクチン上昇用飲食品。

【公開番号】特開2008−201741(P2008−201741A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41063(P2007−41063)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】