説明

アディポネクチン産生促進剤

【課題】 血中のアディポネクチン量を増加させるために、様々な技術が提案されている。例えば、緑茶カテキンを有効成分として含有することを特徴とし、血漿中アディポネクチンを上昇させるアディポネクチン分泌促進組成物も提案されている。本発明の課題は、安全性が高く、かつ、さらに優れたアディポネクチン産生効果を有するアディポネクチン産生促進剤およびこれを用いた飲食品を提供することにある。
【解決手段】 メチル化カテキン類を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤。前記のアディポネクチン産生促進剤を含有してなる飲食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキン類、とくにメチル化カテキンを有効成分として含有するアディポネクチン産生促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血中のアディポネクチン量を増加させるために、様々な技術が提案されている。例えば天然物を有効成分とするものとしては、特許文献1に、リンゴ抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とするアディポネクチン調節剤が提案されている。また、特許文献2には、プロアントシアニジンを有効成分とする血中アディポネクチン量増加剤が提案されている。また、特許文献3には、シソ科植物より抽出された抽出物を含有することを特徴とする血中アディポネクチン分泌促進剤が提案されている。
【0003】
一方、カテキン類が様々な生理活性を有することが報告されている。例えば特許文献4には、カテキン類からなるグルコーストランスポーター4発現促進剤が開示されている。また、特許文献5には、脂肪の燃焼を促進させ、肥満症を予防することを目的として、メチル化カテキンを含有させた脂肪蓄積抑制剤が提案されている。さらに、特許文献6には、緑茶カテキンを有効成分として含有することを特徴とし、血漿中アディポネクチンを上昇させるアディポネクチン分泌促進組成物が提案されている。
【特許文献1】特開2006−193502号公報
【特許文献2】特開2006−182706号公報
【特許文献3】特開2007−106718号公報
【特許文献4】特開2003−81825号公報
【特許文献5】特開2006−298792号公報
【特許文献6】特開2006−131512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全性が高く、かつ、さらに優れたアディポネクチン産生効果を有するアディポネクチン産生促進剤およびこれを用いた飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のとおりである。
(1)メチル化カテキン類を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤。
(2)前記(1)に記載のアディポネクチン産生促進剤を含有してなる飲食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、安全性が高く、かつ、優れたアディポネクチン産生効果を有するアディポネクチン産生促進剤およびこれを用いた飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で使用されるメチル化カテキンは、下記一般式(1)で表すことができる。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(1)中、R,R,R,Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、X,Xは、それぞれ独立に水素原子またはヒドロキシル基を表す)
【0010】
なかでも本発明に有用なメチル化カテキンは、上記一般式(1)で表され、エピガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、エピカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、エピガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、カテキン−3−O−(3−O−メチル)ガレート、カテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、ガロカテキン−3−O−(4−O−メチル)ガレート、およびこれらの異性化体等が挙げられる。
【0011】
メチル化カテキンは、「べにふうき」、「べにふじ」、「べにほまれ」、「やえほ」、「するがわせ」、「ゆたかみどり」、「かなやみどり」、「おくむさし」、「青心大パン」、「青心烏龍」、「大葉烏龍」、「紅花」、「べにひかり」、「やまかい」、「やまみどり」、「からべに」、「香駿」、「そうふう」及び「おくみどり」、もしくはこれらの混合物の茶葉由来のものであることができる。
【0012】
メチル化カテキンは、前記茶葉を乾燥させ、粉砕し、これを温水(例えば10℃〜100℃)に浸漬することで容易に抽出することができる。
得られた抽出物は、カラムクロマトグラフィー法を採用して精製してもよい。
【0013】
本発明のアディポネクチン産生促進剤は、メチル化カテキンおよびコエンザイムQ10を含有する形態がさらに好ましく、飲料として摂取されるのが好ましい。コエンザイムQ10は、ユビデカレノンまたはコエンザイムQ10として知られ、融点の低い親油性固体である。
以下、飲料にコエンザイムQ10を配合する方法について説明する。
【0014】
コエンザイムQ10を飲料に配合するには、コエンザイムQ10を有機酸の存在下、水溶性物質溶液に乳化・分散して調製された水溶性組成物として用いるのが好ましい。この水溶性組成物において、乳化・分散した粒子の平均粒径は5μm以下、好ましくは1μ以下である。
【0015】
コエンザイムQ10の分散・乳化に使用される水溶性物質は、保護コロイドを形成してコエンザイムQ10を微細な粒子に分散・乳化し、均一で且つ安定なエマルジョンを維持しうるものである。そのような水溶性物質には、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、デキストリン、カルメロースナトリウム(CMCナトリウム)、D−マンニット、プルラン、コーンファイバー、デンプン、グアーガムおよびペクチン等の植物由来の水溶性多糖類等ならびにポリビニルピロリドン(PVP)などの合成高分子物質が包含され、これらの中から選択される少なくとも1種類の水溶性物質を用いる。これら水溶性物質の中でも、アラビアガムは独自の機能性を持つ天然植物由来の物質であり、高濃度の水溶液としても比較的低粘性で流動性のある溶液状態を保つことから特に好ましい。
【0016】
また、上記有機酸としては、例えばクエン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸および/または酒石酸であり、好ましくはリンゴ酸、酒石酸またはこれらの混合物である。
【0017】
コエンザイムQ10含有水溶性組成物の調製に際して、脂溶性薬剤であるコエンザイムQ10を予め溶融し、これを有機酸の存在下、水溶性物質中に分散・乳化して、微細な粒子のエマルジョンを形成させる。このため、水溶性物質の水溶液、つまり水性保護コロイド溶液を調製し、予め加温しておくことが好ましい。この保護コロイド溶液に、予め加熱・融解したコエンザイムQ10を導入し、次いで公知の手段、例えば高圧ホモジナイザーを使用して、所望の平均粒径まで微細に分散・乳化させることにより、均一で、且つ微細なエマルジョンを形成させることができる。これらの工程は、コエンザイムQ10の融点より高い温度、例えば約45〜90℃、好ましくは50〜70℃で実施する。また、予め加温(約45〜90℃、好ましくは50〜70℃)した水性保護コロイド溶液に、コエンザイムQ10粉末を直接添加・分散し、該溶液中で融解させ、次いで乳化させてもよい。この方法は、作業性を効率化し、原材料の損失を抑制できるために好ましい。
コエンザイムQ10の分散液は、市販されているものも利用でき、例えば日清ファルマ社製の分散液が利用できる。
【0018】
上記とは別に、コエンザイムQ10はシクロデキストリンに包接させることで飲料中に可溶化させることができる。
シクロデキストリンとしては、特に限定されないが、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等を使用することができる。好ましくは、γ−シクロデキストリンである。含有するシクロデキストリンの比率については、コエンザイムQ10の1モルに対して0.1モル〜100モルが好ましく、0.2〜20モルがより好ましい。
シクロデキストリンによるコエンザイムQ10の包接は、両者を適当な溶媒中で、接触する、または混合する方法があげられる。接触または混合するときに、原料を強く攪拌することが、包接化合物を得るために必要な時間を短縮する観点から好ましい。
【0019】
シクロデキストリンにコエンザイムQ10を包接させる際に、メチル化カテキンも同時に包接させれば、苦味のマスキング効果がさらに高まるため、好ましい。
【0020】
また、コエンザイムQ10は、還元型のものがメチル化カテキンの酸化を抑制するとともに、アディポネクチン産生促進効果を増大させるために好ましい。還元型のコエンザイムQ10を得る方法としては特に限定されず、例えば、合成、発酵、天然物からの抽出等の従来公知の方法によりコエンザイムQ10を得た後、クロマトグラフィーにより流出液中の還元型コエンザイムQ10区分を濃縮する方法などを採用することが出来る。この場合には、必要に応じて上記コエンザイムQ10に対し、水素化ほう素ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイトナトリウム)等の一般的な還元剤を添加し、常法により上記コエンザイムQ10中に含まれる酸化型コエンザイムQ10を還元して還元型コエンザイムQ10とした後にクロマトグラフィーによる濃縮を行っても良い。また、既存の高純度コエンザイムQ10に上記還元剤を作用させる方法によっても得ることが出来る。
【0021】
また、本発明における飲料には、柑橘系の油脂を配合するのが好ましい。該油脂を配合することにより、メチル化カテキンの苦味がマスキングされ、不快感を与えずに多量の摂取が可能となる。該油脂としては、リモネン、グナリンギン、ヘスペリジンなどが挙げられる。なお、上記柑橘系の油脂は油溶性であり、飲料にそのまま配合すると分離して浮き上がるため、例えば柑橘系の油脂が1%程度含有されたアロマ果汁として配合するのが好ましい。なお、アロマ果汁として配合する場合には、飲料1lに当たり3〜40g程度添加するのが好ましい。
【0022】
ここで、アロマ果汁は、パルプを含有する柑橘類等のセミクリア果汁または混濁果汁に柑橘系の油脂を例えば1質量%程度配合し、これをホモジナイズして果汁中に油脂を均質に分散させることによって得られる。これによって、柑橘系の油脂は果汁中のパルプに吸着されて均質に分散され、オイルが遊離することのない安定化された風味強化果汁を得ることができる。このホモジナイザーとしては、一般に高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー等の高圧高速型、ホモミキサー、コロイドミル等の高速回転型、超音波ホモジナイザー、連続乳化分散機等のキャビテーション型、プロペラ撹拌、タービン撹拌等の撹拌分散型等が挙げられる。
【0023】
本発明の飲料において、メチル化カテキンの割合は、飲料100mlあたり2〜100mgが好ましい。またコエンザイムQ10の割合は、飲料100mlあたり3〜100mgが好ましい。
なお、メチル化カテキンおよびコエンザイムQ10は、一日あたりの摂取量を勘案して飲料中に適度に配合されるのが好ましい。
【0024】
また本発明の飲料には、必要に応じて酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤などの添加剤を単独、あるいは併用して配合しても良い。
【0025】
本発明の飲料は、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、アルコール飲料等とし、これを缶飲料、ボトル飲料などに調製して提供される。なかでも、アルコール飲料とすることで、メチル化カテキンの苦味が一層マスキングされ好ましい。アルコール飲料としては、焼酎を炭酸水、果汁、甘味料等で割ったチューハイ、カクテル、サワー等であってもよい。ここで、チューハイとは、焼酎を果汁と炭酸で割った飲料であり、カクテルとは、ウイスキー・ブランデー・ジン・ウオツカなどアルコール度の高い蒸留酒をベースとし、リキュール・シロップ・果汁・香料などを混合し氷を加えて作った飲料であり、サワーとは、カクテルの一種で、ウイスキー・ジンなどにレモン・ライムなどのジュースを入れて酸味をもたせた飲料をいう。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0027】
実施例1
べにふうきの茶葉に対し、30質量倍量の純水を用いて、90℃で抽出を行い、抽出液を得た。
55%果糖ぶどう糖液糖100g、上記抽出液適当量(下記のメチル化カテキンが得られる量)、日清ファルマ社製コエンザイムQ10乳化剤(10%溶液)適当量(下記のコエンザイムQ10が得られる量)、クエン酸4g、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g、グレープフルーツ香料3mlに水を加えて1000mlに調合し、公知の手段で混合して飲料を調製した。ついで、この調製した飲料を100mlのビンに詰めてビン入り飲料とし、飲用に供した。
得られた飲料は、1ビン(100ml)当たり、メチル化カテキン20mg、コエンザイムQ10が30mg含有される。また、メチル化カテキンの苦味は感じられなかった。
【0028】
実施例2
べにふうきの茶葉に対し、30質量倍量の純水を用いて、90℃で抽出を行い、抽出液を得た。この抽出液のアディポネクチン産生促進を調べた。
正常ヒト前駆脂肪細胞を使用し、1.0×10個となるように96ウェルマイクロプレートに播種した。播種培地にはヒト前駆脂肪細胞基礎培地を用いた。24時間後に分化誘導添加剤と上記抽出液を加えた増殖培地に交換し、さらに1週間培養した。その後、培養上清中に産生されたアディポネクチン量をELISA法により定量した。各試料の評価結果を、ブランク(試料未添加)のアディポネクチン量を100とした場合の相対値にて下記に示す。なお、上記抽出液中のメチル化カテキン濃度は、10μg/mlであった。
【0029】
上記試験結果:相対値=380。この数値は、危険率1%で有意差を有する。
【0030】
比較例1
前記実施例2において、上記抽出液に替えて、エピカテキンガレートを用いたこと以外は、実施例2を繰り返した。なお、エピカテキンガレートの濃度は、実施例2と同じく10μg/mlである。
その結果、相対値は120であった。
【0031】
比較例2
前記実施例2において、上記抽出液に替えて、エピガロカテキンガレートを用いたこと以外は、実施例2を繰り返した。なお、エピガロカテキンガレートの濃度は、実施例2と同じく10μg/mlである。
その結果、相対値は122であった。
【0032】
実施例3
前記実施例2において、メチル化カテキンに加え、日清ファルマ社製コエンザイムQ10乳化剤(10%溶液)をさらに使用したこと以外は、実施例2を繰り返した。なお、コエンザイムQ10の添加濃度は、メチル化カテキンと同じく10μg/mlである。
その結果、相対値は401であった。
【0033】
実施例4
べにふうきの茶葉に対し、30質量倍量の純水を用いて、90℃で抽出を行い、抽出液を得た。
95%醸造用アルコール54ml、55%果糖ぶどう糖液糖100g、上記抽出液適当量(下記のメチル化カテキンが得られる量)、日清ファルマ社製コエンザイムQ10乳化剤(10%溶液)適当量(下記のコエンザイムQ10が得られる量)、クエン酸4g、グレープフルーツアロマ果汁(グナリンギン1質量%含有)20g、グレープフルーツ香料3mlに水を加えて1000mlに調合し、公知の手段で混合してアルコール飲料を調製した。ついで、この調製したアルコール飲料を100mlのビンに詰めてビン入りアルコール飲料とし、飲用に供した。
得られたアルコール飲料は、1ビン(100ml)当たり、アルコールが5%、メチル化カテキン20mg、コエンザイムQ10が30mg含有される。また、メチル化カテキンの苦味は感じられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のアディポネクチン産生促進剤は、脂肪細胞におけるアディポネクチンの産生を促進することにより、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、脂肪肝などの疾患の予防・改善にも効果を期待することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチル化カテキン類を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤。
【請求項2】
請求項1に記載のアディポネクチン産生促進剤を含有してなる飲食品。

【公開番号】特開2009−120491(P2009−120491A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292962(P2007−292962)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(707000691)辻堂化学株式会社 (104)
【Fターム(参考)】