アデノウイルス親和性の拡大
野生型ウイルスと比較してアデノウイルスの親和性を拡大させる改変ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスを開示する。本明細書中に記載する改変ファイバータンパク質は、固定及び可変アミノ酸残基両方を含有する14アミノ酸コア配列を含む、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。本発明は、開示される改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子、ならびに、前記核酸分子を含有する組み換えベクター及び宿主細胞を含む。CAR以外の細胞結合部位に結合するペプチドリガンドを同定する方法には、CAR陰性細胞におけるアデノウイルスファイバーノブのコンテクスト内に発現されるペプチドリガンドのファージディスプレイライブラリーのスクリーニングが含まれる。本発明の組み換えアデノウイルスは、アデノウイルス感染に対する抵抗性があることが示されている遺伝子治療/遺伝子ワクチン接種治療計画の一部として、重要な細胞及び組織標的に対するアデノウイルスの形質導入能を向上させるものと思われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、野生型ウイルスと比較してアデノウイルスの親和性を広げる、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルス関する。この改変ファイバータンパク質は、固定及び可変アミノ酸残基両方を含有する14アミノ酸コア配列を含む、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CAR)以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。このペプチドリガンドは、代替的な細胞表面結合部位に接近できるように、及びなおファイバーノブ三量体化が保存されるように、アデノウイルスファイバータンパク質配列内に挿入されている。本発明はまた、開示する改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子、ならびに、前記核酸分子を含有する組み換えベクター及び宿主細胞にも関する。本発明はさらに、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する改変アデノウイルスファイバーノブに融合させられたファージ外殻タンパク質を発現する組み換えファージ集団を含有する、ファージディスプレイライブラリーに関する。本発明はまた、CAR陰性又はCAR陽性細胞において前記ライブラリーをスクリーニングすることによって前記ペプチドリガンドを同定する方法、ならびに本明細書中で述べる組み換えアデノウイルスを用いて細胞及び/又は組織に対して形質導入を行うための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えアデノウイルスベクターは、異常細胞又は組織を標的として組み換え遺伝子を導入するための効率的であり用途の広い遺伝子治療系であることが証明されている。アデノウイルスベクターは、広い範囲の標的細胞に感染するが、高いレベルで遺伝子導入されるか否かは、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CAR)が標的とする細胞に存在するか否かに依存する。遺伝子治療にとって重要な標的に相当する細胞型及び組織の中には、アデノウイルス感染が起こりづらいものがいくつかあるが、それは主に、CAR発現レベルが低いことに起因する(例えば、Havengaら、2001、J.Virol.75:3335−3342参照。)。同様に、アデノウイルスが容易に感染する標的細胞の中には、導入を遂行するためにアデノウイルス粒子が高レベルである必要があり(Arthurら、1997、Cancer Gene Ther.4:17−25)、アデノウイルス感染に付随する何らかの免疫反応を悪化させるものがある。従って、治療上意義のあるヒト細胞及び組織に対するアデノウイルス送達の効率を向上させることに対して多大な努力が払われてきた。
【0003】
アデノウイルス血清型5(Ad5)の細胞侵入メカニズムは、2つの別個の連結しない段階からなる。第一に、ウイルスファイバータンパク質の三量体のカルボキシ末端のノブドメインと細胞表面に提示されるCARとの間の高親和性相互作用を介してウイルスが宿主細胞に結合する。ウイルスの感染性を決定するこの最初の相互作用に続いて、細胞表面上のαvβ3及びαvβ5インテグリンとの、ペントンベースにおけるRGD配列の会合が起こり、それにより、ウイルスの内在化が活性化される。Ad5親和性を変更するためのストラテジーは、代替的な細胞特異的受容体を認識できるようにウイルスキャプシドタンパク質を改変することを利用するものである。アデノウイルスキャプシドタンパク質には、ヘキソン、ペントンベース及びファイバータンパク質が含まれる。ウイルスがその同起源の細胞性受容体と結合することでそのウイルスの親和性が調節されるため、そのファイバータンパク質のカルボキシ末端のノブドメインを遺伝子レベルで改変するための研究が盛んに行われてきた(総説として、Kransnyhkら、2000、Mol.Ther.1:391−405を参照。)。多くの研究グループにより、Ad5ファイバー遺伝子を部分的に、又は完全に、異なるアデノウイルス血清型のもので置換すること、つまり、ドナーの血清型由来の親和性を作り出すことが可能であることが示されてきた。実際に、作製されたAd5キメラのうちいくつかでは、選択した細胞型に対して親和性が増強されていた。しかし、利用可能な血清型の数及びそれらの親和性が限定的であることにより、この「ファイバー交換」アプローチは、あまり柔軟ではないものとなっている。さらに、ウイルスキメラの生存性が低く、ウイルスキメラの回収率が低いために、このストラテジーの開発は進んでいない。
【0004】
近年、様々な研究グループが、短いペプチドをAd5ファイバーノブドメインの規定した部位に組み込むことができることを示してきた。このノブドメインから突出したHIループには、ファイバーの三量体化を残し、及びCAR結合機能を変化させずに、構造的に多くのペプチド配列を挿入することができる。これらの知見により、所望する結合特異性を有するリガンドを同定するための有望な経路として、ファージディスプレイペプチドライブラリーのスクリーニングが進歩した。異なるタンパク質の位置、つまり、Ad5ファイバーノブのHIループへと移した場合に、ファージライブラリーから選択されるリガンドがその結合特性を保持していないことが多いという事実があるために、このストラテジーを用いた成功例の報告は少ない。さらに、これらのペプチドの挿入は、ファイバーの三量体化及びウイルスアセンブリーに影響を与え得る。
【0005】
Krasnykhら(1988、J.Virol.72:1844−1852)は、組み換えを利用して、ファイバーノブのHIループドメイン中にFLAGオクタペプチドを含有するAd5ファイバータンパク質を発現させた。この異種ペプチドは、ファイバー三量体化を妨害しないか、又はノブ中の細胞結合部位の形成を妨害しなかった。前記改変Ad5ファイバータンパク質を含有する組み換えアデノウイルスは、適切な生物学的機能を維持していた。
【0006】
Dmitrievら(1988、J.Virol.72:9706−9713)は、Arg−Gly−Asp(RGD)を含有するペプチドをAd5ファイバーループのHIループへ組み込むことにより、得られる組み換えファイバーが、CARへの代替的感染経路として、RGD−インテグリン相互作用を利用できるようになることを示している。
【0007】
Einfeldら(1999、J.Virol.73:9130−9136)は、ヘマグルチニン(HA)タンパク質由来の線状デカペプチドを認識する膜−アンカー単鎖抗体からなる擬似受容体(pseudoreceptor)を開発した。このHAペプチドをAd2ファイバーノブのHIループに組み込むことにより、得られる組み換えアデノウイルスが、CAR結合が阻害される条件下で、擬似受容体発現細胞に対して形質導入できるようになった。
【0008】
Xiaら(2000、J.Virol.74:11359−11366)は、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に特異的なエピトープを同定するために、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)の細胞外ドメインに対して、ノナペプチドファージディスプレイライブラリーのスクリーニングを行った。同定された配列のうち2つをAd5ファイバーノブのHIループに挿入したところ、適切な三量体化及びhTfR発現細胞への遺伝子導入が見られた。
【0009】
Nicklinら(2001、Mol.Ther.4:534−542)は、CAR結合がないファイバーノブのHIループ中に挿入された場合、2種類の内皮細胞(EC)結合ペプチドが、ECに対するアデノウイルス親和性を変化させることを示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、主要な頭部タンパク質D対するカルボキシ末端融合物として、バクテリオファージλのキャプシドにおいて機能的Ad5ファイバーノブドメインを発現させることにより、先行研究の限界を打開する。野生型CARへの結合がない状態で機能的Ad5ファイバーノブ内に組み込まれたペプチド配列の大規模コレクションを構築するために、このファージディスプレイ系を使用した。CAR陰性マウス胚繊維芽細胞 NIH−3T3においてこのライブラリーで選択を行った後、CAR陰性細胞への結合を示す、このノブコンテクスト中の3種類のペプチドリガンドを単離した。
【0011】
これらのペプチドリガンドを組み込んでいるウイルスはCAR陰性細胞及びCARの発現レベルが低い細胞への感染性が増強されている。従って、これらの新規ペプチドリガンドを組み込んでいる改変ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスを作製することにより、アデノウイルス遺伝子治療/遺伝子ワクチン接種系の活性及び機能性が高まる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。このペプチドリガンドは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)であるような、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する。このコアアミノ酸配列において、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失され得る。固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が、残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と残基位置12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるようなアミノ酸配列からなるものではない。CAR以外の細胞表面結合部位への結合能がある改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスは、アデノウイルスの野生型親和性を拡大する効果を有し、遺伝子治療のためのアデノウイルス系の機能性を広げる。
【0013】
本発明はさらに、残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置2が、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から11が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14が、Xaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)であるような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。前記コアアミノ酸配列から、位置3又は位置12の固定されたCys又は位置2のPhe残基の位置以外の前記配列内のいずれかの位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が、残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。本ペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に、連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0014】
本発明はまた、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9が、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11が、セリン(Ser)残基であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)であるような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対する、ペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスにも関する。前記コアアミノ酸配列から、位置1、2、4から7、13及び14を含む前記配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3から8の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0015】
本発明はさらに、残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置2が、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくは、グリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9が、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11が、セリン(Ser)残基であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)であるような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。前記コアアミノ酸配列から、位置1、4から7、13及び14を含む前記配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3から8の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0016】
本発明はまた、上記で挙げた実施形態のそれぞれにおいて説明したようなコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。このコアアミノ酸配列から、固定された残基位置を除く、前記配列内のいずれかの可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。位置3及び12における固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3から12の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、このペプチドリガンドは、配列番号46で記載されているようなアミノ酸配列からなるものではない。
【0017】
本発明はまた、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスに関する。
【0018】
本発明は、細胞表面結合部位へ該ペプチドリガンドが接近できるように、改変されたアデノウイルスファイバータンパク質のペプチドリガンドが該ファイバータンパク質のいずれかの部分に組み込まれるような、本明細書中で述べるように改変されたファイバータンパク質を含有する組み換えアデノウイルスに関する。ある実施形態において、前記ペプチドリガンドは、ファイバータンパク質ノブの露出したループドメイン内に挿入されており、好ましくはAd5由来であり、これにはAd5ファイバーノブのHIループが含まれるがこれに限定されない。特に、該ペプチドリガンドは、該ファイバーノブのHIループ内Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入される。
【0019】
本発明は、図1で開示されており、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスに関する。
【0020】
本発明はまた、図2で開示されており、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスにも関する。
【0021】
本発明はさらに、図3で開示されており、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスに関する。
【0022】
本発明はまた、改変前にアデノウイルスが第一の血清型であり;改変後に前記第一のアデノウイルス血清型のファイバータンパク質の少なくとも一部が除去されるか、又は第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の同じ又は類似部分で置換されており、第二のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質の前記部分が本明細書中で述べるように改変されている、組み換えアデノウイルスにも関する。前記第一のアデノウイルス血清型から除去したファイバータンパク質の部分を置換するために使用される前記第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の部分は、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有する。従って、本発明のある実施形態は、ファイバータンパク質又はその一部が改変ファイバータンパク質又はその一部で置換されており、ヒト又は非ヒト起源の代替血清型のペプチドリガンドを含有する、組み換えアデノウイルスに関する。この改変アデノウイルスファイバータンパク質がそのノブドメイン内に含有されるペプチドリガンドを含む場合、代替的なアデノウイルス血清型の野生型ノブドメインを置換するために、そのペプチドリガンドを含むノブドメインを使用することができる。特に、本発明は、そのファイバータンパク質のノブドメインが、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有するAd5ファイバーノブのノブドメインで置換されている、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ネコ及び鳥類を含むがこれらに限定されない、ヒト起源又は非ヒト起源のあらゆる血清型の組み換えアデノウイルスに関する。
【0023】
本発明はファイバータンパク質の野生型細胞表面結合がないようにさらに改変された、本明細書中で開示するような改変ファイバータンパク質を含む、組み換えアデノウイルスにも関する。ある実施形態において、本明細書中で開示するような改変Ad5ファイバータンパク質はさらに、該改変タンパク質のCAR結合が起こらないように改変される。Ad5ファイバータンパク質のCAR結合は、本タンパク質のアミノ酸残基489からアミノ酸残基492の欠失を含むがこれに限定されない、該ファイバータンパク質に対する特異的配列改変の結果として除去される。本発明の組み換えアデノウイルスがその野生型細胞表面結合部位に結合する能力がないことは、改変ファイバードメイン内に組み込まれる特定のペプチドリガンドの細胞表面部位を発現する特異的細胞型を組み換えアデノウイルスが標的とすることに役立つ。
【0024】
本発明は、図7に開示されており配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含有し、該改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、組み換えアデノウイルスに関する。
【0025】
本発明はまた、図8に開示されており配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含有し、該改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、組み換えアデノウイルスにも関する。
【0026】
本発明はさらに、図9に開示されており配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含有し、該改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、組み換えアデノウイルスに関する。
【0027】
本発明は、上述の特性を包含するように改変された単離されたアデノウイルスファイバータンパク質に関する。ヒト又は非ヒトアデノウイルスの血清型のいずれか1つを、ファイバータンパク質遺伝子のソースとして使用することができる。改変Ad5ファイバータンパク質を含むがこれに限定されない、本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質は、本明細書で述べるように、そのコード領域内に挿入されているペプチドリガンドを有するファイバータンパク質である。ある実施形態において、本ペプチドリガンドは、HIループドメインを含むがこれに限定されない、ファイバーノブの露出したループドメインに挿入されている。例えば、Ad5ファイバータンパク質のHIループ内に位置するアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に本ペプチドリガンドを挿入することができる。本発明はまた、ある1つのアデノウイルス血清型のファイバータンパク質のノブドメインが、本発明のペプチドリガンドを含有する、代替的なアデノウイルス血清型のノブドメインで置換されている、改変ファイバータンパク質も含む。本明細書で述べるように改変されている単離されたアデノウイルスファイバータンパク質を、この改変タンパク質が結合するであろう治療上意義のある細胞及び組織を同定するためのツールとして使用することができるが、これは前記改変ファイバータンパク質を含有するベクターを用いて形質導入する可能性を意味する。説明するようなこの改変単離アデノウイルスファイバータンパク質はまた、他のある部分を標的受容体に向けさせるために、該部分に結合させ得る「結合決定基」(つまり、ウイルス、タンパク質又はDNA)としても使用することができる。
【0028】
本発明はまた、改変前にファイバータンパク質が第一の血清型のものであり;改変後に前記第一のアデノウイルス血清型のファイバータンパク質の少なくとも一部が除去されており、第二のアデノウイルス血清型の改変ファイバータンパク質の類似部分で置換されている、改変アデノウイルスファイバータンパク質にも関する。前記第一のアデノウイルス血清型から除去された部分を置換するために使用される第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の部分は、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有する。従って、本発明のある実施形態は、本明細書で述べるようなペプチドリガンドを含有する、代替的アデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の一部を含有する、改変アデノウイルスファイバータンパク質に関する。この改変アデノウイルスファイバータンパク質がそのノブドメイン内にペプチドリガンドを含む場合、このペプチドリガンドを含むノブドメインは、代替的アデノウイルス血清型の野生型ノブドメインを置換するために使用することができる。とりわけ、本発明は、そのファイバータンパク質のノブドメインが、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有するAd5ファイバーノブのノブドメインで置換されている、ヒト起源又は非ヒト起源のあらゆる血清型の改変アデノウイルスファイバータンパク質に関する。
【0029】
本発明は、図1に開示されており配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0030】
本発明はまた、図2に開示されており配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質にも関する。
【0031】
本発明はさらに、図3に開示されており配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0032】
本発明はまた、その野生型細胞表面結合部位への結合がなくなるようにさらに改変されている、本明細書中で述べるような改変ファイバータンパク質にも関する。ある実施形態において、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合が除かれている。このAd5ファイバータンパク質のCAR結合は、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含むがこれに限定されない、ファイバータンパク質に対する特異的配列改変の結果として除去される。
【0033】
本発明は、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、図7に開示されており配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0034】
本発明はまた、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、図8に開示されており配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質にも関する。
【0035】
本発明はさらに、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、図9に開示されており配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0036】
本発明は、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドリガンドに関する。
【0037】
本発明はまた、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドリガンドにも関する。
【0038】
本発明はさらに、配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドリガンドに関する。
【0039】
本発明は、上述の特性を包含する、改変Ad5ファイバータンパク質を含むがこれに限定されない、改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸分子は、1本鎖(コード又は非コード鎖)又は2本鎖であり得る、デオキシリボ核酸分子(DNA)ならびに合成1本鎖ポリヌクレオチド等の合成DNAを含み得る。本発明の単離された核酸分子はまた、リボ核酸分子(RNA)も含み得る。本発明はまた、本明細書を通して開示する単離された核酸分子を含有する、組み換えベクター及び原核及び真核の組み換え宿主、さらに、組み換え宿主細胞における本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現プロセスにも関する。
【0040】
本発明は、図4に開示されており配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなる、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0041】
本発明はまた、図5に開示されており配列番号5に記載のヌクレオチド配列からなる、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子にも関する。
【0042】
本発明はさらに、図6に開示されており配列番号6に記載のヌクレオチド配列からなる、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0043】
本発明は、図10に開示されており配列番号10に記載のヌクレオチド配列からなる、CAR結合能を欠く、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0044】
本発明はまた、図11に開示されており配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなる、CAR結合能を欠く、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子にも関する。
【0045】
本発明はさらに、図12に開示されており配列番号12に記載のヌクレオチド配列からなる、CAR結合能を欠く、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0046】
本発明の他の局面には、E1及びE1活性の半分において少なくとも部分的に欠失があるアデノウイルスベクターを含むがこれに限定されない、本明細書中で述べる改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする核酸分子;該アデノウイルスベクターを含むパッケージング細胞;及び、293細胞又はPER.C6(R)細胞を含むがこれらに限定されない、組み換えアデノウイルスを回収する宿主細胞を含有する、アデノウイルスベクターが含まれる。本発明のある実施形態において、本アデノウイルスベクターはさらに、パッセンジャー導入遺伝子を含む。
【0047】
本発明の別の局面は、各組み換えファージがその外面に、アデノウイルスファイバータンパク質の改変ノブドメインに融合させられたファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する、組み換えファージのファージディスプレイライブラリーである。Ad5ファイバーノブドメインを含むがそれに限定されないこの改変ファイバーノブは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、ペプチドリガンドを含有する。この改変ファイバーノブの部分は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。前記コアアミノ酸配列から、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。前記固定Cys残基の間に位置するそのコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。
【0048】
本発明の別の実施形態は、各組み換えファージがその外面に、図13に図示した様々なペプチドリガンド図のうち少なくとも1つを含有するアデノウイルスファイバーノブに融合させられたファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する、組み換えファージを含むファージディスプレイライブラリーである。従って、改変Ad5ファイバーノブを含むがこれに限定されない改変ファイバーノブが前記ライブラリーに含まれ、その改変ファイバーノブは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。前記コアアミノ酸配列から、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。この実施形態において、このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。
【0049】
上記で挙げたように、本発明のファージディスプレイライブラリーに含有される、Ad5ファイバーノブドメインを含むがそれに限定されない、この改変ファイバーノブの部分は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。本ファージディスプレイライブラリー内に含有されるファイバーノブはさらに、野生型表面結合がないように改変され得る。ある実施形態において、本ファージライブラリーで表示される改変ファイバーノブは、HIループドメインを含むがこれに限定されない、該ノブの露出したループドメイン内に挿入されている、本明細書で述べるようなペプチドリガンドを含む。ある実施形態において、本ペプチドリガンドは、Ad5ファイバータンパク質のファイバーノブ内に位置する、アミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入され得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、本明細書中で述べるファージディスプレイライブラリーは、バクテリオファージλ上に表示され、本改変ファイバーノブは、λファージの主要頭部Dタンパク質に融合させられている。本発明のファージディスプレイライブラリーは、アデノウイルスファイバーに組み込まれた場合に、結合特性の変化を保持するペプチドリガンドを同定するために使用される既存のファージディスプレイペプチドライブラリーの限界を乗り越えるが、これは候補ペプチドリガンドが、本ファージディスプレイ系の機能的なファイバーノブ内で発現されるからである。本発明のファージディスプレイ系を用いることにより、本ペプチドリガンドが、このファイバーノブコンテクストにおいてCAR以外に細胞表面結合部位と結合する能力があるか否かを調べる。
【0051】
本発明はさらに、(a)上述した特性を有するファージディスプレイライブラリーを提供することと、(b)CAR陰性又はCAR陽性細胞において前記ライブラリーをスクリーニングすることとを含む、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するための方法に関する。ある実施形態において、本発明のファージディスプレイライブラリーは、CAR陰性のNIH−3T3細胞上でスクリーニングされる。
【0052】
本発明はまた、本明細書中で述べるような組み換えアデノウイルスを用いて細胞及び/又は組織に対して形質導入を行う方法にも関する。細胞/組織に対して形質導入を行うために本明細書中で述べるような組み換えアデノウイルスを用いることにより、アデノウイルス感染性の能力及び効率の両方が向上する。ある実施形態において、これらの方法は、CARの発現がわずかであるか又は全くなく、Ad5感染に対して耐性がある細胞に対して、本発明の組み換えアデノウイルスを用いて形質導入を行うことを含む。本発明の組み換えアデノウイルスを用いて形質導入が行われ得る細胞/組織には、これらに限定されないが、滑膜細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、癌細胞、原発腫瘍、樹状細胞、骨格筋、メラノサイト及びマウスメラノーマ細胞が含まれる。別の実施形態には、マウス又はヒト由来のものを含むがこれらに限定されない未成熟の樹状細胞、ならびにマウス骨格筋及びヒト初代メラノサイトに対して、本発明の組み換えアデノウイルスを用いて形質導入を行う方法が含まれる。
【0053】
「実質的に他の核酸を含まない」とは、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%及びさらにより好ましくは99.9%、他の核酸を含まないことを意味する。交換可能に用いられる場合、「実質的に他の核酸を含まない」、「実質的に精製された」、「単離された核酸」又は「精製された核酸」という用語はまた、他の細胞コンポーネントとは分けて精製された本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質に対するコード領域を含むDNA分子も意味する。従って、実質的に他の核酸がない改変アデノウイルスファイバータンパク質のDNA調製物に含まれる非改変アデノウイルスファイバータンパク質核酸は、非改変アデノウイルスファイバータンパク質核酸を、その全核酸の、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満含有する。例えば、臭化エチジウム染色など適切な染色法と組み合わせたアガロースゲル電気泳動等の核酸の精製度を評価する従来の技術により、又は配列決定により、ある改変アデノウイルスファイバータンパク質のDNA調製物に実質的に他の核酸が含まれているか否かを調べることができる。
【0054】
「実質的に他のタンパク質がない」又は「実質的に精製されている」とは、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%及びさらにより好ましくは99.9%、他のタンパク質が含まれていないことを意味する。従って実質的に他のタンパク質が含まれていない改変アデノウイルスファイバータンパク質調製物に含まれる非改変アデノウイルスファイバータンパク質は、その全タンパク質の、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満である。例えば銀染色又はイムノブロッティングなど適切な検出法と組み合わせたドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)等のタンパク質の精製度を評価する従来の技術により、ある改変アデノウイルスファイバータンパク質調製物に実質的に他のタンパク質が含まれているか否かを調べることができる。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「Ad5」とは、アデノウイルス血清型5を意味する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「CAR」とは、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体を意味する。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「Xaa」とは、20種類のアミノ酸残基のいずれかを表す3文字表記を意味する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「可変アミノ酸残基位置」又は「可変残基位置」とは、20種類のアミノ酸残基のいずれかを含有し得るアミノ酸残基位置を意味する。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「結合部分」とは、標的細胞上で分子と結合することができる、アデノウイルスの表面に露出されている分子を意味する。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「標的細胞」とは、組み換えアデノウイルスがその結合部分を用いて結合することができる細胞を意味する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、アデノウイルスファイバータンパク質内に組み込まれている「ペプチドリガンド」とは、標的細胞上の細胞表面結合部位への結合能を有する、異種(つまり、そのアデノウイルスファイバータンパク質に一般的に含有されるものではない。)ポリペプチドを意味する。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「RGD」とは、連続するArg−Gly−Aspアミノ酸配列を意味する。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」とは、プラスミド、ウイルス(アデノウイルスを含む。)、バクテリオファージ及びコスミドを含むがこれらに限定されない、DNA断片を宿主生物又は宿主組織に導入させることができる、ある手段を意味する。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「第一世代」とは、アデノウイルスベクターについて使用される場合、複製欠損のアデノウイルスベクターを言う。第一世代アデノウイルスベクターは一般に、E1遺伝子領域を欠失しているか、又は不活性化されており、好ましくは、E3遺伝子領域を欠失しているか、又は不活性化されている。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「パッセンジャー導入遺伝子」は、本発明による、通常ベクターに存在せず、サブクローニングされる、いずれかの遺伝子である(例えば、アデノウイルスベクター)。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「wt」とは、野生型を意味する。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「vp」とは、ウイルス粒子を意味する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「RPE」とは、R−フィコエリスリンを意味する。
【0069】
本発明の詳細な説明
本発明は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。本改変ファイバータンパク質により、アデノウイルスの親和性を拡大することができ、従って、アデノイルス遺伝子治療系の活性及び機能性が高められる。前記改変ファイバータンパク質のペプチドリガンドは、アミノ酸残基を含有し得る、又は含有しなくてもよい、14個の可能性のある残基位置を表すコアアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、コアアミノ酸残基は、位置1、2及び13にXaa残基、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe);位置、3及び12にシステイン(Cys)残基;位置4から11にXaa残基、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val);位置14にXaa残基、好ましくはプロリン(Pro)を含有する。Xaaは、その特定の残基位置に20アミノ酸残基のいずれかが存在し得ることを表す3文字表記である。従って、この実施形態の組み換えアデノウイルスは、14個の可能性のある残基位置のうち、2個の残基位置のみでアミノ酸残基が固定されている(位置3及び12のCys残基)ペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を含有する。この実施形態において変化させることができるアミノ酸残基位置、位置1、2、4から11、13及び14には、好ましい特定のアミノ酸残基がある。しかし、本ペプチドリガンドのアミノ酸配列は、位置3及び12の固定されたCys残基の間のフレキシブルループドメインにおいて連続的なArg−Gly−Asp(RGD)アミノ酸配列を含まない。さらに、本ペプチドリガンドは、配列番号46において開示されているようなアミノ酸配列からなるものではない。
【0070】
本コアアミノ酸配列の可変残基位置におけるアミノ酸の選好性は、本発明のアデノウイルスファイバータンパク質を改変するために使用されるペプチドリガンドのプールが作られる方法の結果生じる。実施例3において全体的に述べるように、かつ図13で示すように、本発明のペプチドリガンドをコードするオリゴヌクレオチドは、レジンスプリット法により合成される。この方法を用いて、所望する長さの特異的なオリゴヌクレオチド配列を作製するために1個のアミノ酸残基をコードする核酸コドンを連続して付加する。例えば、本発明のペプチドリガンドは全て、残基位置3及び12にCys残基を含有し;従って、3番目及び12番目の残基位置をコードするための核酸配列を合成する際、Cysのみをコードするコドンを使用する。特定の残基位置にあらゆるアミノ酸を有する可能性のあるペプチドリガンドを作製するために(つまり、可変残基位置)、特定の残基位置を合成する際、各アミノ酸残基をコードする核酸コドンを利用する。その特定の残基位置を合成する際に、コドンプール内に特定のアミノ酸又はアミノ酸群をコードするコドンの割合を増加させることにより、可変残基位置に、特定のアミノ酸又はアミノ酸群が入りやすくなるようにする。この方法を用いることにより、本発明で述べるペプチドリガンドのコアアミノ酸配列が、特定のアミノ酸を優先させる可変残基位置を含有するように作製される。チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニン残基は、ある一部の位置において好ましいが、それは、これらの芳香環構造が疎水性受容体構造との相互作用を促進するからである。プロリンは、拡張構造を導入する傾向があるので、挿入したペプチドリガンドの接近性を高めるために、本発明リガンドの残基位置14において好ましい。勿論、一般にこのコア配列の中程に位置する残りの可変残基位置(つまり、ペプチドリガンドのループドメイン)について、ループのフレキシビリティを高めるのを促進するアミノ酸が好ましい。つまり、これらの残基位置は、グリシン、セリン及びバリンなど、小さな側鎖を有するアミノ酸を含有することが多くなる。
【0071】
本発明のペプチドリガンドのコアアミノ酸配列において、固定された残基位置を除く、このコア配列内のあらゆる残基位置で1つ又は複数の残基を欠失させ得る。つまり、このコア配列の14個の可能性のある残基位置のいくつかは、アミノ酸残基を含まないであろう。可変アミノ酸残基位置でのみ欠失を起こすことができる(つまり、Xaa残基で表されるもの。)。つまり、本明細書中で述べるように、固定されたアミノ酸残基が残基位置3及び12に位置するCys残基のみである場合、残りの12個の可能性のある残基位置のいずれにおいてもアミノ酸残基が欠失され得る。位置3及び位置12の固定されたCys残基の間にあるコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含むことが好ましい。空のアミノ酸残基位置の数は、オリゴヌクレオチド合成中に各位置でコドンの欠失を導入する頻度に従い変化する。このコア配列内のアミノ酸残基の欠失は、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置の付番方式を変化させない。例えば、固定されたアミノ酸残基が3番及び12番の位置にあるが、位置2のアミノ酸がアミノ酸残基を失うように削除されている場合、この固定されたアミノ酸残基の番号は同じままである。つまり、この例において、固定されたアミノ酸は、残基位置2番及び11番に移動せずに、残基位置3番及び12番に位置する。
【0072】
さらに、本発明は、本ペプチドリガンドコア配列の固定された残基位置の間に最高で10個までのアミノ酸残基を付加させ得ることを意図する。固定された残基は、本コアアミノ酸配列の末端付近に位置し;従ってこの固定された残基の間のアミノ酸残基付加により、本ペプチドリガンド配列のフレキシブルループドメインの長さが延長される。従って、可能な最大のペプチドリガンドの長さは24アミノ酸長である。本コア配列のこの領域にアミノ酸残基を付加した場合、この14個の可能なアミノ酸残基位置の付番は変化しない。例えば、残基位置番号3及び12に固定された残基が位置し、この固定された残基位置の間に2個のアミノ酸残基が付加される場合、固定されたアミノ酸残基の付番は同じままである。つまり、この例において、固定されたアミノ酸は、残基位置番号3及び14に移動せずに、残基位置番号3及び12に位置する。本ペプチドリガンドのループドメイン内に付加された2個のアミノ酸は、プライム「’」記号を用いて付番する。例えば、アミノ酸1個を残基位置4と5との間に付加し、他のものを残基位置7と8との間に付加する場合、2個の新しい付加アミノ酸は、残基位置4プライム(4’)及び7プライム(7’)でそれぞれ含有されることになる。このループドメイン内に位置するアミノ酸残基位置に複数のアミノ酸を付加することができる。
【0073】
本発明はさらに、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のうち3個が特定のアミノ酸残基に固定されているような、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスに関する。この実施形態において、残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置2が、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から11が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14が、Xaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)である。つまり、固定されたアミノ酸残基位置は、位置2,3及び12に位置し、それぞれPhe、Cys及びCys残基を含有する。可変残基位置に位置する好ましいアミノ酸残基を含む、この実施形態のコアアミノ酸配列は、前の実施形態に述べたようにして作製される。本コアアミノ酸配列から、可変アミノ酸残基位置において(つまり、位置2、3又は12以外の全ての残基位置)1つ又は複数の残基が欠失され得る。固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。最高で10個までのアミノ酸残基の付加は、本実施形態のペプチドリガンドのフレキシブルループドメイン内で許容され得る。ループドメインは、位置3と12の固定されたCys残基の間に位置し、従って最高で10個までのアミノ酸残基が、前記アミノ酸残基位置の間に付加され得る。本明細書で述べるように、このコアアミノ酸配列内のアミノ酸残基の付番は、本コア配列に対するアミノ酸欠失及び/又は付加が起こった場合も同じままである。本ペプチドリガンドのアミノ酸配列は、本実施形態の固定されたCys残基間に位置するフレキシブルループドメインに、連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0074】
本発明はまた、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のうち6個が特定のアミノ酸残基に固定されているような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスにも関する。この実施形態において、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9が、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11が、セリン(Ser)残基であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である。前の実施形態において、本ペプチドリガンドのフレキシブルループドメインを構成する8個の可能性のあるアミノ酸残基それぞれ(つまり、残基位置4から11にわたり、4と11を含む。)は、Xaa残基を含有し、好ましくは、Gly、Ser又はVal残基である。この実施形態において、フレキシブルループドメインの8個の可能性のあるアミノ酸残基のうち4個が固定されており:位置8及び9がGly残基であり、位置10及び11がSer残基である。本コアアミノ酸配列において、残基位置1、2、4から7、13及び14を含む配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基の位置3と8とに位置する固定された残基位置の間に付加され得る。残基位置8から11におけるフレキシブルループドメイン内に位置する固定されたアミノ酸残基は、4個の連続的なアミノ酸として残り、付加的なアミノ酸の挿入により分離されることはない。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と8とに位置する固定された残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0075】
本発明はさらに、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のうち7個が特定のアミノ酸残基に固定されているような、14個の可能性のある残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスに関する。この実施形態において、残基位置1及び13はXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;位置2は、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12は、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7は、Xaa残基であり、好ましくは、グリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9は、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11は、セリン(Ser)残基であり;残基位置14はXaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)である。前の実施形態と同様に、本ペプチドリガンドのフレキシブルループドメイン内に位置する8個の可能性のあるアミノ酸残基のうち4個が固定されており、位置8及び9がGly残基であり位置10及び11がSer残基である。この実施形態において、本ペプチドリガンドのコアアミノ酸配列は、残基位置2に、Phe残基を含有する、1個の付加的な固定されたアミノ酸を含有し得る。本コアアミノ酸配列において、残基位置1、4から7、13及び14を含む配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基の位置3と8との固定された残基位置の間に付加され得る。残基位置8から11におけるフレキシブルループドメイン内に位置する固定されたアミノ酸残基は、4個の連続的なアミノ酸として残り、付加的なアミノ酸の挿入により分離されることはない。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と8とに位置する固定された残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0076】
本発明はまた、CAR以外の細胞表面結合部位に対する、FCVASRGGSSCY(配列番号13)、FCKVVGGGSSCSP(配列番号14)及びFFCVSDGGGSSCP(配列番号15)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスにも関する。
【0077】
本発明はまた、改変前にアデノウイルスが第一の血清型であり;改変後に前記第一のアデノイルス血清型のファイバータンパク質の少なくとも一部が除去されるか、又は第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の同じ又は類似部分で置換されており、第二のアデノウイルス由来の血清型ファイバータンパク質の前記部分が本明細書中で述べるように改変されている、組み換えアデノウイルスにも関する。前記第一のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質から除去した部分を置換するために使用される前記第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の部分は、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有する。この文脈において、「第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の同じ又は類似の部分」とは、前記第一のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質から除去した部分を置換するために使用される前記第二のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質の部分が、第一のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質由来の除去部分とほぼ同じサイズであり、ほほ同じタンパク質ドメインからなることを意味する。従って、本発明のある実施形態は、ファイバータンパク質が代替的な血清型の改変ファイバータンパク質により置換されている、組み換えアデノウイルスに関する。別の実施形態において、改変アデノウイルスファイバータンパク質が、あるアデノウイルス血清型由来のそのノブドメイン内に含有されるペプチドリガンドを含む場合(本明細書中でさらに述べるように)、このペプチドリガンドを含むノブドメインは、適切なファイバー三量体化が維持される限りは、代替的なアデノウイルス血清型の野生型ノブドメインを置換するために使用することができる。とりわけ、本発明は、そのアデノウイルスのノブドメインが、本明細書で述べるような改変Ad5ファイバーノブのノブドメインで置換されている、ヒト起源又は非ヒト起源のあらゆる血清型の組み換えアデノウイルスに関する。例えば、本明細書中で述べるようなキメラファイバータンパク質をコードするキメラウイルスゲノムを含有する組み換えアデノウイルスは、個別のウイルスベクターの再投与において存在し得る宿主の中和反応の抑制又は軽減を促進するための、遺伝子治療/遺伝子ワクチン接種のプライムブースト法において有用となろう。
【0078】
本発明はさらに、アデノウイルスの生来の親和性を除去するためにさらに改変されている改変アデノウイルスファイバータンパク質を含有する組み換えアデノウイルスに関する。本発明はまた、上述のようにさらに改変される改変アデノウイルスファイバータンパク質にも関する。例えば、本明細書中で開示されている何らかの改変CAR認識アデノウイルスファイバータンパク質はさらに、その改変タンパク質のCAR結合がなくなるように改変され得る。アデノウイルスファイバータンパク質のCAR結合は、Roelvinkら、1999、Science286:1568−1571(参照により、本明細書中に組み込まれる。。)で述べられているような特異的な配列改変の結果としてなくすことができる。本発明のある実施形態において、本発明の改変Ad5ファイバータンパク質は、このファイバータンパク質のアミノ酸残基489からアミノ酸残基492に位置する4個のアミノ酸配列TAYT(配列番号45)の欠失によりCAR結合をなくすようにさらに改変される。本発明の組み換えアデノウイルスのその野生型細胞表面結合部位、例えばAd5に対するCAR、への結合能の不活性化により、組み換えアデノウイルスが、本改変ファイバードメイン内に組み込まれた特定のペプチドリガンドの細胞表面結合部位を発現する特異的な細胞型を標的とすることを容易にするであろう。
【0079】
本発明の組み換えアデノウイルス内に含有される単離されたアデノウイルスファイバータンパク質を以下に説明する。本明細書中で述べるように改変されている単離されたアデノウイルスファイバータンパク質は、前記改変タンパク質を含む組み換えアデノウイルスが結合し、その内容物を形質導入するであろう治療上意義のある細胞及び組織を同定するためのツールとして使用することができる。本明細書中で述べるようなこの改変単離アデノウイルスファイバータンパク質はまた、他のある部分(つまり、ウイルス、タンパク質又はDNA)を標的受容体に向けさせるために、該部分に結合させ得る「結合決定基」としても使用することができる。ヒト又は非ヒトアデノウイルスの血清型のいずれか1つを、ファイバータンパク質遺伝子のソースとして使用することができる。本発明のある実施形態において、本ファイバータンパク質遺伝子のソースは、Ad5である。本ファイバータンパク質は、野生型アデノウイルスから単離したようなタンパク質(つまり、ネイティブタンパク質又は野生型タンパク質を含む。)において通常見られないアミノ酸残基を含むように、改変されている。これらの非野生型アミノ酸残基は、細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを表す配列を含む。非野生型アミノ酸残基は、好ましくは、遺伝子発現のレベルで本ファイバータンパク質に導入される(つまり、ペプチドリガンドをコードする核酸配列の導入による。)。
【0080】
本発明のペプチドリガンドは、本明細書の中で詳細を述べるようにアミノ酸残基が付加又は欠失され得る14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のコアアミノ酸配列を含む。この配列は、結果として生じる改変アデノウイルスファイバータンパク質を含む、組み換えアデノウイルスに、CAR以外、及びCARに加えての、細胞に対する細胞表面結合部位を介した結合能を与える。これにより、野生型アデノウイルスと比較して、組み換えアデノウイルスの親和性が拡大される。アデノウイルスファイバータンパク質及びペプチドリガンドは、このペプチドリガンドをコードするオリゴヌクレオチドを、本ファイバータンパク質をコードする遺伝子内に挿入できるようにするための、適合する新規の制限部位を含むように操作され得る。このために、核酸レベルにおいて、ファイバータンパク質へのペプチドリガンドアミノ酸配列の挿入を行うことができる。
【0081】
細胞表面結合部位は、本明細書中で述べるような改変アデノウイルスファイバータンパク質に対する結合部分を含み、受容体(つまり、タンパク質、糖質、糖タンパク質又はプロテオグリカン)、何らかの逆の電荷を有する分子(つまり、その改変ファイバータンパク質に関して逆の電荷を有する。)又は、その改変ファイバータンパク質が結合でき、それにより細胞侵入が促進される他のタイプの細胞表面分子を包含する。本発明の改変ファイバータンパク質及びそれらの使用方法は、細胞相互作用の何らかの特定のメカニズム(つまり、特定の細胞表面結合部位との相互作用)に限定されず、そのように解釈されるものではない。本発明による細胞表面結合部位は、野生型アデノウイルスファイバータンパク質との相互作用のために今までは使用できなかった、又は非常に低いレベルでしか使用できなかった部位である。つまり、ペプチドリガンド挿入の結果としての、改変されたアデノウイルスファイバータンパク質は、野生型ファイバータンパク質が結合しない、又は非常に結合親和性が低い、細胞表面に存在する結合部位と相互作用することができる。これは、ベクターの細胞への侵入効率を上げる、ならびに特異性を上げ、アデノウイルスが標的とする範囲を拡大する効果を有する。
【0082】
改変Ad5ファイバータンパク質を含むがこれに限定されない、本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質は、本明細書中で述べるようにファイバータンパク質内に挿入されるペプチドリガンドを含む。本改変ファイバータンパク質のペプチドリガンドは、このペプチドリガンドが細胞表面結合部位に接近できるようにする本ファイバータンパク質のいずれかの部分内に組み込まれる。Ad5ファイバーノブの結晶構造が述べられている(Xiaら、1994、Structure 2:1259−1270を参照。)。本ファイバーノブ単量体は、8本の逆平行βサンドイッチフォールド(sandwich fold)からなり;ファイバーノブ三量体の全体的な構造は、その羽根の面を含む3つの単量体それぞれの一定のβ鎖を有する、3枚羽根のプロペラに類似している。そのファイバーノブの35%のみがβ鎖を含む。とりわけ、Ad5ファイバーノブの次の残基は、β−サンドイッチモチーフにおける水素結合に重要であると思われる:400−402、419−428、431−440、454−461、479−482、485−486、516−521、529−536、550−557及び573−578。単量体配列の残りの65%は、そのβ鎖を連結するターン及びループからなる。Ad5ファイバーノブ単量体の6個の突出したループは、本ファイバータンパク質二次構造の形成において重要ではないと思われる。とりわけ、403−418の両端を含む残基は、ABループを含み、441−453の両端を含む残基は、CDループを含み、487−514の両端を含む残基は、DGループを含み、522−528の両端を含む残基は、GHループを含み、537−549の両端を含む残基は、HIループを含み、558−572の両端を含む残基は、IJループを含む。
【0083】
本ファイバータンパク質内のペプチドリガンドの付加により細胞標的化のための利用可能な結合部分が作り出されなければならないのと同時に、本ファイバータンパク質の三量体化能が妨害されてはならない。従って、少なくとも本ノブにおける分子内相互作用に関与する露出されたループドメイン内のペプチドリガンドの挿入が好ましい。つまり、本発明のある実施形態において、本ペプチドリガンドは、アデノウイルスファイバーノブの露出されたループドメイン内に挿入される。そのようなループがAd5配列に関して本明細書中で定義されると同時に、他のファイバーノブ種の配列アラインメントが述べられている(Xia、Dら、前出、を参照。)。タンパク質の結合/折り畳みに重要な本ファイバーノブにおける対応する残基は、様々なアデノウイルス血清型のファイバータンパク質間で保存されていると思われる。このことから、ファイバータンパク質の結晶構造が分からないそれらのアデノウイルス種に対してでさえ、これらの保存残基の外側には、非保存領域又はタンパク質の機能性に重要な残基に対して見られる高レベルの保存性を示さない領域があることが示唆される。これらの非保存領域における本ファイバータンパク質の配列は、このタンパク質のこれらの領域において重要な分子内相互作用がないため、ループとして存在すると思われる。
【0084】
本発明のペプチドリガンドを挿入することができるファイバーノブループは、AB、CD、DG、GH、HI及びIJループからなる群から選択される。Ad5において、これらのループは、それぞれ残基403−418、441−453、487−514、522−528、537−549及び558−572からなる群より選択されるアミノ酸残基を含む。本発明のある実施形態において、ペプチドリガンドは、Ad5ファイバーノブを含むがこれに限定されない、アデノウイルスファイバーノブのHIループ内に挿入される。Ad5において、HIループは、それぞれが親水性である、13個のアミノ酸残基を含み、そのノブの外側に露出されている。このHIループは、非常に高いフレキシビリティを示すので、異種リガンドを組み込むのに最適な位置であることが示されている。また、様々なアデノウイルス血清型においてHIループの長さが様々であることから、この元のループ構造における変更が、このノブドメインの適切な折り畳みに影響を与えることなく受容されるであろうことが示唆される。本発明において、細胞表面結合部位に対する本ペプチドリガンドは、内因性のファイバータンパク質配列を除去することなく、本ファイバータンパク質内に、好ましくはこのファイバーノブのループドメイン内に、組み込むことができる。
【0085】
あるいは、そのタンパク質の正常な機能を妨害することなく、アデノウイルスファイバータンパク質のタンパク質配列部分のかわりに本ペプチドリガンドを置き換えることができる。本発明のある実施形態において、及び本明細書中の実施例のセクションで例示するように、本ペプチドリガンドは、本ファイバーノブのHIループ内のAd5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入することができる。この異種アミノ酸配列は、好ましくは、本ファイバータンパク質の核酸レベルで導入される。本ファイバータンパク質においてペプチドリガンドが存在することで、組み換えアデノウイルスがCAR非依存性遺伝子導入を達成できるようになる。
【0086】
本発明の改変ファイバータンパク質が適切な三量体形成を維持することは標的細胞相互作用を支えるために重要である。三量体形成は、ワクシニア発現系を用いて評価することができる。全体的に、Falkner,1988,J.Virol.62:1849−1854により述べられている、組み換えワクシニアウイルスベクター、pTKgpt−3Sを使用して、アデノウイルスの残りの部分から単離した状態の改変アデノウイルスファイバータンパク質を生成させることができる。このベクターは、本ファイバータンパク質に対する都合の良いクローニング部位を有し、アデノウイルスファイバー遺伝子を含有する組み換えワクシニアウイルスに対する選択可能なマーカーとしてE.コリgpt遺伝子を含む。ファイバータンパク質はまた、Fuerstら、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8122−8126により述べられている、2ウイルスバクテリオファージT7RNAポリメラーゼ法を用いて、組み換えワクシニアウイルスでも発現されている。組み換えレトロウイルスなど、他の真核発現ベクターもまた、三量体化の機能テストを行うのに十分な量の正常にグリコシル化されたファイバータンパク質を産生させるために使用することができる。このワクシニアで産生されたファイバータンパク質は、そのタンパク質の単量体と三量体とを区別することができるモノクローナル抗体と組み合わせたウエスタンブロット分析を用いて、三量体化について容易に試験することができる。そのような2種類のモノクローナル抗体、抗体4D2.5と抗体2A6.36の特性は、Hong及びEngler、1991、Virology 185:758−767により調べられている。Hong及びEnglerにより述べられているように、標準的技術を用いて、他の抗体を作製することができる。これらの抗体を用いて、ウエスタンブロット及び間接的免疫蛍光法の両方により、本改変ファイバーの構造に関する情報を得ることができる。
【0087】
本改変ファイバータンパク質の標的細胞への結合は、標準的技術を用いて調べることができる。例えば、本改変ファイバータンパク質を含有する本組み換えアデノウイルスを放射性標識して、細胞に添加し、インキュベーションすることができる。非結合ウイルスを洗い去り、その細胞に結合した放射活性量を測定する。あるいは、既知のウイルスタイターを用いて、本改変ファイバータンパク質を含む組み換えウイルスを細胞に感染させることができる。次に、細胞変性アッセイにより、細胞溶解を調べることができる。そのウイルスが結合する細胞のみが感染を起こし得、その結果細胞死に至る。
【0088】
本発明は、ある部分、図1に開示されており、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスに関する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号1のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質である。配列番号1(Ad5fiber−L1タンパク質)は、配列番号13で開示されるアミノ酸配列からなるL1ペプチドリガンドがアミノ酸残基546と547の間のファイバーノブのHIループ内に挿入されている、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。配列番号1は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、L1ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0089】
【化1】
【0090】
本発明はまた、ある部分、図2に開示されており、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスにも関する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号2のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質である。配列番号2(Ad5fiber−L16タンパク質)は、配列番号14で開示されるアミノ酸配列からなるL16ペプチドリガンドがアミノ酸残基546と547の間のファイバーノブのHIループ内に挿入されている、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。配列番号2は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、L16ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0091】
【化2】
【0092】
本発明はまた、ある部分、図3に開示されており、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスにも関する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号3のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質である。配列番号3(Ad5fiber−L33タンパク質)は、配列番号15で開示されるアミノ酸配列からなるL33ペプチドリガンドがアミノ酸残基546と547の間の本ファイバーノブのHIループ内に挿入されている、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。配列番号3は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、L33ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0093】
【化3】
【0094】
本発明は、以下で開示される:
FCVASRGGSSCYである、
配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチド(L1ペプチドリガンド)に関する。
【0095】
本発明はまた、以下で開示される:
FCKVVGGGSSCSPである、
配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチド(L16ペプチドリガンド)にも関する。
【0096】
本発明はさらに、以下で開示される:
FFCVSDGGGSSCPである、
配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチド(L33ペプチドリガンド)に関する。
【0097】
本発明はまた、その野生型細胞表面結合部位への結合をなくすようにさらに改変されている、本発明で開示されるような改変ファイバータンパク質にも関する。CARは、多くの、しかし全てではない、アデノウイルス血清型にとって、主要な細胞表面結合部位である。ある実施形態において、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がなくなっている。アデノウイルスのその野生型受容体(例えば、多くのアデノウイルス血清型にとってはCAR)への結合能をなくした場合、ウイルス増幅のための、そのウイルスキャプシドとE1発現細胞株において発現される受容体との間の代替的及び効果的な相互作用の存在が必要である。Ad5ファイバータンパク質のCAR結合は、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までを含むがこれに限定されない、そのファイバータンパク質に対する特異的な配列改変により除かれる。
【0098】
本発明は、ある部分、図7に開示されており配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる、単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。配列番号7(Ad5 fiberΔ−L1タンパク質)は、CAR結合を失わせる、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489−492からのアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失があるAd5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。さらに、L1ペプチド(配列番号13)は、アミノ酸546と547との間の、ファイバーノブのHIループに挿入されている。配列番号7は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、欠失に隣接するアミノ酸には二重線を付し、L1ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0099】
【化4】
【0100】
本発明は、ある部分、図8に開示されており配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる、単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。配列番号8(Ad5 fiberΔ−L16タンパク質)は、CAR結合を失わせる、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489−492からのアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失があるAf5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。さらに、L16ペプチド(配列番号14)は、アミノ酸546と547との間の、ファイバーノブのHIループに挿入されている。配列番号8は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、欠失に隣接するアミノ酸には二重線を付し、L16ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0101】
【化5】
【0102】
本発明はまた、ある部分、図9に開示されており配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。配列番号9(Ad5 fiberΔ−L33タンパク質)は、CAR結合を失わせる、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489−492からのアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失があるAf5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。さらに、L33ペプチド(配列番号15)は、アミノ酸546と547との間の、ファイバーノブのHIループに挿入されている。配列番号9は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、欠失に隣接するアミノ酸には二重線を付し、L33ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0103】
【化6】
【0104】
異種ペプチドリガンド配列は、好ましくは、核酸レベルでファイバータンパク質内に挿入されることとなろう。従って、本発明はさらに、本明細書中で述べた特性を有するいずれかの改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸分子は、1本鎖(コード又は非コード鎖)又は2本鎖であり得る、デオキシリボ核酸分子(DNA)ならびに合成1本鎖ポリヌクレオチド等の合成DNAを含み得る。本発明の単離された核酸分子はまた、リボ核酸分子(RNA)も含み得る。本発明の別の局面はまた、本明細書を通して開示する改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子を含有する、組み換えベクター及び、原核及び真核生物の組み換え宿主、さらに、組み換え宿主細胞において本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるプロセスにも関する。
【0105】
本発明によると、本発明で開示するような改変ファイバータンパク質を生成する手段、特に異種ペプチドリガンド配列をDNAレベルで導入する手段は、本分野で周知であり、分子生物学、微生物学及び組み換えDNA技術を使用し得る。このような技術は、文献において詳しく説明されている。例えばSambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと。本発明の核酸分子は、実質的に他の核酸分子が混ざっていない。
【0106】
特異的血清型の野生型アデノウイルスファイバータンパク質をクローニングするために、あらゆる様々な手段を使用し得る。これらの方法には、(1)RACE PCRクローニング技術(Frohmanら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8998−9002)。全長cDNA配列を生成させるために5’及び/又は3’RACEを行い得る。このストラテジーには、アデノウイルスファイバータンパク質 cDNAのPCR増幅のために遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用することが含まれる。これらの遺伝子特異的プライマーは、公開されている核酸及びタンパク質データベースのいくつかを検索することにより、アデノウイルスファイバータンパク質配列の同定を通して設計される;(2)適切な発現ベクター系におけるアデノウイルスファイバータンパク質含有cDNAライブラリーの構築後のアデノウイルスファイバータンパク質 cDNAの直接的機能発現;(3)アデノウイルスファイバータンパク質のアミノ酸配列から設計した標識変性オリゴヌクレオチドプローブを用いた、バクテリオファージ又はプラスミドシャトルベクターにおいて構築したアデノウイルスファイバータンパク質含有cDNAライブラリーのスクリーニング;(4)アデノウイルスファイバータンパク質をコードする部分的cDNAを用いた、バクテリオファージ又はプラスミドシャトルベクターにおいて構築したアデノウイルスファイバータンパク質含有cDNAライブラリーのスクリーニング。この部分的cDNAは、様々な血清型の様々なアデノウイルスファイバータンパク質に対して知られているアミノ酸配列からの変性オリゴヌクレオチドプライマーの設計を介した、アデノウイルスファイバータンパク質DNA断片の特異的PCR増幅により得られる;又は(5)特異的アデノウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列の全長バージョンを単離するために、全長cDNAが既知のRACE技術により生成され得るように、又は、多くのタイプのcDNA及び/又はゲノムライブラリーの1つに対するスクリーニング用のプローブとして使用するためのコード領域の部分を生成させ単離するためにコード領域の一部がこれらの同じ既知のRACE技術により生成され得るように、テンプレートとして配列番号4−6内に位置する野生型Ad5配列を用いて、Ad5ファイバータンパク質のクローニング用の、5’及び3’遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを設計すること、が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
野生型アデノウイルスファイバータンパク質を単離した後、今回改変するアデノウイルスが、野生型タンパク質が持っていない結合部分を含有するように、本ペプチドリガンドをファイバータンパク質とともに挿入する。本ペプチドリガンドを、アデノウイルスファイバータンパク質配列の部分に挿入するか、又はこれで置換することができる。このような改変ファイバータンパク質を調製する方法は、以下の実施例セクションで説明する。一般に、その方法は、野生型ファイバータンパク質のタンパク質配列内、好ましくはそのファイバーノブのループ内に、本ペプチドリガンドを挿入するための、アデノウイルスファイバータンパク質をコードする核酸配列への、異種ペプチドリガンドをコードするオリゴヌクレオチド配列の導入を含む。プラスミド又は配列の操作を容易にするための他のベクターに、野生型ファイバータンパク質をコードする核酸配列をクローニングすることにより、これを遂行することができる。次に、さらなる配列、例えばペプチドリガンドDNA配列をファイバーDNA配列に挿入できる部位を作るために、このファイバータンパク質に1つ又は2つのユニークな制限部位を付加することができる。異種ペプチドリガンドをコードする2本鎖合成オリゴヌクレオチドは一般に、合成1本鎖センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを重複させることにより作製する。得られる2本鎖オリゴヌクレオチドは、そのファイバー遺伝子DNAに既に組み込まれているユニークな制限部位に対して相補的である隣接制限部位を含有する。そのプラスミド又は他のベクターを適切な制限酵素で切断し、適合する粘着末端を有するオリゴヌクレオチド配列をそのプラスミド又は他のベクターにライゲーションし、野生型DNAに付加するか、又はそれを置換する。ペプチドリガンド配列を本アデノウイルスファイバータンパク質コード配列に導入するために、市販のキットにより、当業者にとって公知の他のインビトロ部位特異的突然変異の手段を使用することができる(とりわけ、PCRを使用して)。
【0108】
本発明は、図1(配列番号1;Ad5 fiber−L1)で述べられている改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、図4(Ad5 fiber−L1 DNA)で述べられ、配列番号4に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。Ad5 fiber−L1のヌクレオチド配列は、以下のとおりであり、配列中、ノブには下線を付し、L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で示し、L1をコードするヌクレオチド配列の本ファイバー配列への挿入を容易にするために操作した制限部位を示す付加的配列変化は、小文字で示す:
【0109】
【化7】
【0110】
本発明はまた、図2(配列番号2;Ad5 fiber−L16)で述べられている改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、図5(Ad5 fiber−L16 DNA)で述べられ、配列番号5に記載の、単離又は精製された核酸分子にも関する。Ad5 fiber−L16のヌクレオチド配列は、以下のとおりであり、配列中、ノブには下線を付し、L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で示し、L16をコードするヌクレオチド配列の本ファイバー配列への挿入を容易にするために操作した制限部位を示す付加的配列変化は、小文字で示す:
【0111】
【化8】
【0112】
本発明はさらに、図3(配列番号3;Ad5 fiber−L33)で述べられている改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、図6(Ad5 fiber−L33 DNA)で述べられ、配列番号6に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。Ad5 fiber−L33のヌクレオチド配列は、以下のとおりであり、配列中、ノブには下線を付し、L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で示し、L33をコードするヌクレオチド配列の本ファイバー配列への挿入を容易にするために操作した制限部位を示す付加的配列変化は、小文字で示す:
【0113】
【化9】
【0114】
本発明は、図7に開示されており配列番号7に記載されているような、本発明のAd5 fiberΔ−L1タンパク質をコードする、図10(Ad5 fiberΔ−L1 DNA)で述べられ、配列番号10に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。この配列では、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476
【0115】
【化10】
【0116】
が欠失している。このヌクレオチド欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCARへの結合をなくす、本明細書中で述べた、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に相当する。さらに、この配列は、ファイバーノブのHIループ内のL1ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。Ad 5fiberΔ−L1のヌクレオチド配列は、次のとおりであり、配列中、ノブに下線を付し、欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付し、L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表し、L1をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために、及び野生型配列を維持するための操作した制限部位を意味する付加的な配列変化は、小文字で表す:
【0117】
【化11】
【0118】
本発明はまた、図8に開示され配列番号8に記載されているような、本発明のAd5 fiberΔ−L16タンパク質をコードする、図11(Ad5fiberΔ−L16 DNA)で述べられ、配列番号11に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。この配列では、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476
【0119】
【化12】
【0120】
が欠失している。このヌクレオチド欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCARへの結合をなくす、本明細書中で述べた、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に相当する。さらに、この配列は、ファイバーノブのHIループ内のL16ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。Ad5 fiberΔ−L16のヌクレオチド配列は、次のとおりであり、配列中、ノブに下線を付し、欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付し、L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表し、L16をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために、及び野生型配列を維持するための操作した制限部位を意味する付加的な配列変化は、小文字で表す:
【0121】
【化13】
【0122】
本発明はさらに、図9に開示され配列番号9に記載されているような、本発明のAd5 fiberΔ−L33タンパク質をコードする、図12(Ad5 fiberΔ−L33 DNA)で述べられ、配列番号12に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。この配列では、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476
【0123】
【化14】
【0124】
が欠失している。このヌクレオチド欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCARへの結合をなくす、本明細書中で述べた、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に相当する。さらに、この配列は、ファイバーノブのHIループ内のL33ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。Ad5 fiberΔ−L33のヌクレオチド配列は、次のとおりであり、配列中、ノブに下線を付し、欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付し、L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表し、L33をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために、及び野生型配列を維持するための操作した制限部位を意味する付加的な配列変化は、小文字で表す:
【0125】
【化15】
【0126】
遺伝暗号の縮重は、2つのアミノ酸を除く全てに対して、複数のコドンが特定のアミノ酸をコードすることである。これにより、合成又は組み換えDNAのヌクレオチド配列が、配列番号4−6のヌクレオチド配列と著しく異なるが、同じ配列番号1−3の改変Ad5ファイバータンパク質をそれぞれコードするという、本発明の特異的な改変Ad5ファイバータンパク質をコードする合成又は組み換えDNAの構築が可能となる。そのような合成又は組み換えDNAは、本発明の範囲内にあるものである。特定の宿主細胞又は生物においてそのような合成又は組み換えDNAを発現させたい場合、その特定の宿主のコドン利用を反映するように、つまり、その宿主において改変Ad5ファイバータンパク質の発現レベルを高くするように、そのような合成又は組み換えDNAのコドン利用を調整し得る。言い換えると、特定のアミノ酸をコードする様々なコドンにおけるこの冗長性は、本発明の範囲内である。従って、本発明は、同一のタンパク質を発現するDNA分子が異なり得るというコドン縮重を開示する。
【0127】
本発明において使用される場合、「精製された」及び「単離された」は、これらに限定されないがヌクレオチド配列決定、制限酵素消化、部位特異的突然変異及び核酸断片の発現ベクターへのサブクローニング、ならびに、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体生成、アミノ酸配列決定及びペプチド消化を行う機会を得られるような純粋な量においてタンパク質又はタンパク質断片を得ることなど、当業者により操作され得るように、問題となる核酸、タンパク質又はそれらの個別の断片が実質的にそのインビボ環境から離されているという事柄を表すために、交換可能に使用される。従って、本明細書で主張する核酸は、全細胞又は細胞溶解液又は部分的に精製された、又は実質的に精製された形で存在し得る。核酸は、周囲の混入物質から離されている場合、実質的に精製されているとみなす。つまり、細胞から単離された核酸配列は、標準的方法により細胞性成分から精製されている場合、実質的に精製されているとみなし、同時に、化学的に合成された核酸配列は、その化学的前駆体から離されている場合、実質的に精製されているとみなす。
【0128】
本発明はさらに、本明細書を通じて開示される実質的に精製された核酸分子を含む組み換えベクターに関する。これらのベクターは、DNA又はRNAから構成され得る。大多数のクローニング目的にとって、DNAベクターが好ましい。一般的なベクターには、プラスミド、改変ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体及び、改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードし得るエピソーム性又は統合DNA(integrated DNA)の他の形が含まれる。特定の遺伝子導入又は他の用途に対する適切なベクターを決定することは、当業者の範囲内である。
【0129】
適切なプロモーター及び他の適切な転写制御因子を含有する発現ベクター(pcDNA3.neo、pcDNA3.1、pCR2.1、pBlueBacHis2又はLITMUS28など)へ分子クローニングし、組み換え改変アデノウイルスファイバータンパク質を産生させるために原核又は真核宿主細胞に導入することにより、上述の方法により得られた改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードするクローニング核酸を組み換え発現させ得る。発現ベクターは、本明細書中において、適切な宿主におけるクローニングしたDNAの転写及びそれらのmRNAの翻訳に必要なDNA配列として定義する。そのようなベクターは、細菌、藍藻類、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞などの様々な組み換え宿主細胞においてDNAを発現させるために使用し得る。適切に構築された発現ベクターは、宿主細胞における自己複製のための複製起点、選択可能なマーカー、限定数の有用な制限酵素部位、大量コピー能力及び活性のあるプロモーターを含有する。プロモーターは、RNAポリメラーゼを高頻度でDNAに結合させ、RNA合成を開始させるように導くDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、mRNAを高頻度で開始させるものである。最適なレベルの改変アデノウイルスファイバータンパク質を生じさせるDNA配列を決定する方法は、本分野において周知である。最適な発現を生じるDNAカセットの決定後、この改変アデノウイルスファイバータンパク質核酸コンストラクトを、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、卵母細胞、細菌及び酵母細胞のためのものを含むがこれらに限定されない様々な発現ベクター(組み換えウイルスを含む。)に導入する。
【0130】
従って、本発明の別の局面には、本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードするDNA配列を含有する及び/又は発現するように操作されている宿主細胞が含まれる。組み換えホスト細胞は、原核性又は真核性であり得、E.コリなどの細菌、酵母などの真菌細胞、ウシ、ブタ、サル及びげっ歯類由来の細胞株を含むがこれらに限定されない哺乳類細胞;及びハエ及びカイコ由来の細胞株を含むがこれらに限定されない昆虫細胞を含むがこれらに限定されない。このような組み換え宿主細胞は、改変アデノウイルスファイバータンパク質を産生させるのに適切な条件下で培養することができる。形質転換、トランスフェクション、原形質融合及びエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない数ある技術のいずれか1つにより宿主細胞に発現ベクターを導入し得る。改変アデノウイルスファイバータンパク質を産生するか否かを調べるために、この発現ベクター含有細胞を個別に解析する。アデノウイルスファイバータンパク質抗体を用いた免疫反応性を含むがこれに限定されないいくつかの方法により、改変アデノウイルスファイバータンパク質発現細胞を同定し得る。
【0131】
上述のように、改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターを、組み換え宿主細胞における改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現のために使用し得る。従って、本発明の別の局面は、(a)改変アデノウイルスファイバータンパク質の核酸を含むベクターを適切な宿主細胞に導入することと;(b)前記改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現が可能な条件下でこの宿主細胞を培養することと、を含む、組み換え宿主細胞において改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるためのプロセスである。
【0132】
宿主細胞における改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現後に、この改変アデノウイルスファイバータンパク質を回収し得る。いくつかのタンパク質精製方法、すなわち、塩析による分画、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーを様々に組み合わせる、又は個別に使用することによる、細胞溶解液及び抽出液、又は調整済み培地からの精製が利用可能であり、使用に適切である。さらに、アデノウイルスファイバータンパク質に特異的なモノクローナル又はポリクローナル抗体で作られたイムノアフィニティーカラムを使用することにより、改変アデノウイルスファイバータンパク質を、他の細胞性タンパク質から分離することができる。
【0133】
ある実施形態において、本発明の核酸を、本タンパク質を効率的に発現するように設計した配列を含む発現カセットに組み込み得る。次に、この改変アデノウイルスファイバータンパク質発現カセットをベクターに挿入する。
【0134】
本ベクターは、プロモーターと連結された線状DNA又はアデノ関連ウイルスもしくは改変ワクシニアウイルスベクターなどの他のベクターも使用し得るが、アデノウイルスベクターであることが好ましい。従って、本発明の別の局面には、野生型ファイバー遺伝子のかわりに本明細書中で述べる改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする核酸分子を含むアデノウイルスベクターが含まれる。これらのアデノウイルスベクターの特徴は、非機能的E1遺伝子領域を有することであり、アデノウイルスE1遺伝子領域を欠失していることが好ましい。さらに、これらのベクターは、場合によっては、非機能的なE3領域を有するか、E3領域を欠失している。このアデノウイルスゲノムは、E1及びE3領域両方を欠失している(ΔE1ΔE3)ことが好ましい。このアデノウイルスは、293細胞もしくはPER.C6(R)細胞、又は追加的なタンパク質を発現するように一時的又は安定的に形質転換された293又はPER.C6(R)細胞由来の細胞株などの、ウイルスE1遺伝子を発現する既知の細胞株で増殖させることができる。例えば、テトラサイクリン制御可能プロモーター系など、遺伝子発現が調節されているコンストラクトを使用する場合、その細胞株は、調節系に関与するコンポーネントを発現し得る。そのような細胞株の一例は、T−Rex−293であり、他のものは本分野で公知である。
【0135】
本アデノウイルスベクターの操作を容易にするために、アデノウイルスは、シャトルプラスミドの形態であり得る。本発明はまた、プラスミド部分及び、E1を欠失し場合によってはE3を欠失しているアデノウイルスゲノム(野生型ファイバータンパク質遺伝子を除去。)を含むアデノウイルス部分を含むシャトルプラスミドベクターに関し、これには本明細書中で述べる改変アデノウイルスファイバータンパク質を含む発現カセットが挿入される。好ましい実施形態において、このアデノウイルスベクターを容易に除去できるように、このプラスミドのアデノウイルス部分に隣接する制限部位が存在する。このシャトルプラスミドは、原核細胞又は真核細胞において複製され得る。
【0136】
形質転換、トランスフェクション、原形質融合及びエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない、数ある技術のいずれか1つを介して、このアデノウイルスベクターを適切な宿主細胞へ導入する。前記宿主は、本改変アデノウイルスファイバーが標的細胞のCAR以外の細胞表面結合部位に特異的なペプチドリガンドを含む、感染性ウイルス粒子を産生するであろう。
【0137】
本発明のある実施形態において、本発明の改変アデノウイルスタンパク質を含むアデノウイルスベクターは、パッセンジャー導入遺伝子をさらに含むこととなろう。パッセンジャー導入遺伝子は、あらゆる遺伝子であり得、望ましくは、治療のための遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれかである。好ましくは、パッセンジャー導入遺伝子は、ベクターが取り込まれた細胞で発現され得る。例えば、このパッセンジャー導入遺伝子は、レポーター遺伝子又はある様式で細胞において検出され得るタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。このパッセンジャー導入遺伝子はまた、例えばRNA又はタンパク質のレベルでその効果を表す治療のための遺伝子など、治療のための遺伝子を含むことができる。例えば、導入された治療のための遺伝子によりコードされるタンパク質は、遺伝性疾患の治療に使用することができる。その治療のための遺伝子にコードされるタンパク質は、結果として細胞を殺滅することによりその治療効果を表し得る。例えば、それ自身におけるその遺伝子の発現により、ジフテリア毒素A遺伝子の発現のように、細胞殺滅を導き得るか、又はその遺伝子の発現により、ある一定の薬物の殺滅効果に対して選択的に感受性のある細胞にならしめる。
【0138】
さらに、治療のための遺伝子は、例えば、アンチセンスメッセージ又はリボザイム(スプライシング又は3’プロセシングに影響を与える(例えばポリアデニル化)タンパク質)をコードすることにより、RNAレベルでその効果を表し得るか、又は、おそらく他の事柄の中で、mRNA蓄積の割合の変化、mRNA輸送の変更及び/又は転写後調節の変更を介して、その細胞内の別の遺伝子の発現レベルに影響を与えることにより作用するタンパク質(つまり、この場合、遺伝子発現は転写開始からプロセシングを受けたタンパク質の産生までの全段階を含むと広くみなされる。)をコードし得る。従って、「治療のための遺伝子」という用語の使用は、より一般的に遺伝子治療を意味し、及び当業者にとって公知である、これら及びあらゆる他の実施形態を包含することを意図する。同様に、本組み換えアデノウイルスは、遺伝子治療又は、インビトロもしくはインビボでのある細胞もしくは組織におけるその遺伝子発現の効果を研究するために使用し得る。
【0139】
「遺伝子治療」とは、生物の体内における適切な細胞に外的な核酸を付加することによる、病的状態の治療である。核酸は、その細胞内で機能を保持しているように細胞に付加又は導入されなければならない。大部分の遺伝子治療ストラテジーにとって、新しい核酸は、新しい遺伝子として機能するように、つまり、新しいメッセンジャーRNAをコードし、同様に新しいタンパク質をコードするように設計される。遺伝子治療に有用な核酸には、組み換えウイルスが感染した細胞を同定するために使用されるタンパク質をコードするもの、ウイルスゲノムを含有する細胞を殺滅するように機能するタンパク質をコードするもの又は、体内で病態生理的状態を治療するために働く治療用タンパク質をコードするものが含まれる。
【0140】
本発明の別の局面は、組み換えファージのファージディスプレイライブラリーであるが、このライブラリーにおいて、各組み換えファージは、その外面に、アデノウイルスファイバータンパク質の改変ノブドメインに融合したファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する。Ad5ファイバーノブドメインを含むがそれに限定されない、この改変ファイバーノブは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有するペプチドリガンドを含有する。この改変ファイバーノブ部分は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。このコアアミノ酸配列では、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。前記固定Cys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。空のアミノ酸残基位置の数は、オリゴヌクレオチド合成中に各位置においてコドンの欠失が導入される頻度に従い変化する。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるようなアミノ酸配列からなるものではない。
【0141】
本発明の別の実施形態は、各組み換えファージがその外面に、図13に図示した様々なペプチドリガンドのうち少なくとも1つを含有するアデノウイルスファイバーノブに融合させられたファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する、組み換えファージのファージディスプレイライブラリーである。組み換えファージの部分は、Ad5ファイバーノブドメインを含むがこれに限定されない、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する改変ファイバーノブを表示するが、そのコアアミノ酸配列において、残基位置1、2及び13はXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12はシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11はXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14はXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である。このコアアミノ酸配列では、位置3及び位置12のCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。前記固定Cys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。この実施形態において、このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。
【0142】
本発明のファージディスプレイライブラリー内に含有される、Ad5ファイバーノブを含むがそれに限定されない、改変ファイバーノブは、上述のような様々なペプチドリガンドのうち少なくとも1つを含有する。これらのペプチドリガンドは、ノブコンテクストに表示される場合、CAR以外の細胞表面結合部位への結合の可能性がある候補ペプチドのプールを与える。本明細書中で述べるファージディスプレイライブラリー内に含まれる候補ペプチドリガンドを生成するために使用する方法は、本明細書の実施例3において述べる。本明細書中で述べるファージディスプレイライブラリーにおいて発現されるべき候補ペプチドリガンドは、発現されたペプチドリガンドが可能性のある細胞表面結合部位に接近可能であるように、ファイバーノブ内に挿入される。本改変ファイバーノブの三量体構成は保持されなければならないため、この候補ペプチドリガンドを挿入する好ましい位置は、このノブの露出されたループドメイン内である。従って、ある実施形態において、本発明のファージライブラリーで表示される改変ファイバーノブは、HIループドメインを含むがこれに限定されない、本ノブの露出されたループドメイン内に挿入される、本明細書中で述べるような候補ペプチドリガンドを含む。このファイバーノブがAd5由来である場合、この候補ペプチドリガンドは、Ad5ファイバータンパク質のファイバーノブ内に位置するアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入することができる。本発明のさらなる実施形態において、本発明のファージライブラリー内に表示されるファイバーノブはさらに、そのノブドメインの野生型表面結合がなくなるように改変される。アデノウイルスファイバーノブの野生型CAR結合をなくすある方法は、例えば、残基489から492に位置するAd5ファイバーノブ内の4個のアミノ酸配列TAYT(配列番号45)を欠失させることなど、そのファイバーノブ配列を変更することである。
【0143】
本発明のさらなる実施形態において、本明細書で述べるファージディスプレイライブラリーは、バクテリオファージλ上に表示され、本改変ファイバーノブは、λファージの主要な頭部Dタンパク質に融合させられている。本発明のファージディスプレイライブラリーは、アデノウイルスファイバーに組み込まれた際に、結合特性の変化を保持するペプチドリガンドを同定するために使用される既存のファージディスプレイペプチドライブラリーの限界を乗り越えるが、これは候補ペプチドリガンドが、本ファージディスプレイ系の機能的なファイバーノブ内で発現されるからである。本発明のファージディスプレイ系を用いることにより、そのファイバーノブコンテクストにおいて可能性のあるペプチドリガンドを調べる。線状ファージディスプレイ系において、融合タンパク質は、細胞膜周辺腔の酸化環境に輸送され、その中で折り畳まれる。ファージ粒子は、細胞から分泌される前にここでアセンブリーする。逆に、バクテリオファージλ系では、融合タンパク質の折り畳み及びファージ粒子のアセンブリーは、細菌宿主の溶解前に、細胞質の還元性環境で起こる。これらの後者の状態は、細胞溶解前に哺乳類細胞核の還元性環境においてアセンブルするという、アデノウイルスファイバーが置かれる状態により近い。すなわち、酸化還元状態の変化は、改変ノブの折り畳み及び結合特性に影響を与え得る。従って、本発明のさらなる実施形態において、本明細書中で述べるライブラリーは、バクテリオファージλ上に表示され、本改変アデノウイルスファイバーノブが融合しているファージ外殻タンパク質には、λファージの主要頭部Dタンパク質が含まれるがこれに限定されない。アデノウイルスファイバードメイン内に位置する複雑性の高いペプチドリガンドを発現するファージディスプレイライブラリーの作製により、ファージライブラリーのハイスループットのスクリーニング能と本ファイバーノブコンテクストのペプチドリガンド発現とが組み合わされる。これによりまた、実行可能なファイバータンパク質三量体を妨害するペプチドリガンド配列が削除される。
【0144】
従って、本発明の別の局面は、(a)上述のファージディスプレイライブラリーを提供することと、(b)CAR陰性又はCAR陽性細胞に対する前記ライブラリーをスクリーニングすることとを含む、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するためのプロセスである。基本的に、本ライブラリーは、あらゆる細胞型においてスクリーニングすることができる。しかし、CAR−陽性細胞を対象とする場合、CARへの結合は、代替的な受容体に対するリガンドを同定する可能性を低下させる傾向がある。この問題は、2つの方法により解決できる。第一に、CARへの結合をなくす突然変異を有するファイバーノブにおいて本ライブラリーを構築することができる。この方法を使用して、本明細書中において例示する本ライブラリーをスクリーニングし(実施例4参照)、CAR以外の細胞表面結合部位に結合する3種類の新規ペプチドリガンド(配列番号13、14及び15;ペプチドリガンドL1、L16及びL33にそれぞれ対応)を同定した。これらのペプチドリガンドは、Ad5ゲノムに組み込まれた際に、正確にそれらの特異性を保持する。本新規ペプチドリガンドを含む組み換えアデノウイルスのNIH3T3細胞に対する感染能力は、親ベクターと比較して向上している。この非ネイティブ親和性は、ウイルスノブと標的細胞上の未知の受容体との相互作用が介在するものである。このCAR−非依存性親和性は、CAR発現とは関係なく、様々な種由来の様々な細胞型において活性化され得る。これらの結果は、アデノウイルス親和性を変化させ、様々な遺伝子導入適用に対するその治療域を広げる一般的な方法論として、このストラテジーを支持するものである。新規ペプチドリガンドのスクリーニングの代替的な方法は、操作していないCAR結合を有するライブラリーを作製することであるが、拮抗する過剰な野生型ノブタンパク質の存在下で前記ライブラリーをスクリーニングするものである。
【0145】
このために、本発明はまた、アデノウイルスの特異的細胞型又は組織に対する形質導入能を向上させる方法にも関する。本発明の組み換えアデノウイルスは、滑膜細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、癌細胞、原発腫瘍、樹状細胞、骨格筋、メラノサイト及びマウスメラノーマ細胞を含むがこれらに限定されない、野生型アデノウイルスファイバータンパク質表面受容体を発現しないか、又は前記表面受容体の発現量がわずかしかない細胞型又は組織に対して形質導入するために使用することができる。本発明の組み換えアデノウイルスの野生型親和性が失われない限り、本明細書で述べるように、本発明の組み換えアデノウイルスを、野生型アデノウイルスファイバータンパク質表面受容体を単独で、又は本改変ファイバータンパク質内に位置するペプチドリガンドの細胞特異的表面受容体とともに発現する細胞型又は組織に形質導入を行うために使用することもできる。本明細書中で述べるペプチドリガンドに対する細胞特異的表面受容体と組み合わせて野生型アデノウイルスファイバータンパク質表面受容体を発現する細胞に形質導入を行うために本発明の組み換えアデノウイルスを使用することにより、より効率のよいアデノウイルス感染を達成することが容易になり得る。
【0146】
本発明のある実施形態には、CAR発現レベルが低い、マウス又はヒト由来の未成熟樹状細胞を含むがこれに限定されない、未成熟の樹状細胞(DC)に形質導入する方法が含まれる。樹状細胞は、抗原特異的免疫反応の制御において中枢となる役割を果たす重要な抗原提示細胞(APC)である(Jonuleitら、Trends Immunol.22:394−400(2001);Banchereauら、Nature 392:245−252(1998))。DCの遺伝子改変は、DC機能を調整する経路として、ならびに、癌及び持続性のウイルス感染を含む広い範囲の疾患の治療のために、治療上非常に高い可能性を有する(Nair,Gene Ther.5:1445−1446(1998))。別の実施形態において、本発明の組み換えアデノウイルスを、マウス骨格筋及びを含むがこれに限定されない骨格筋及び、ヒト起源の初代メラノサイトを含むがこれに限定されない初代メラノサイト(両者ともCARの発現量が低い。)に形質導入するために使用する。
【0147】
本明細書中で言及する全ての公表物は、本発明に関連して使用され得る方法論及び材料を説明し開示する目的で、参照により組み込まれる。本明細書中のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0148】
付随する図面を参考として、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明がそれらの明確な実施形態に限定されないこと、及び、添付の請求項に定義するように本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者によりそれらにおける様々な変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【0149】
次の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明するために提供する。
【実施例1】
【0150】
ファージλ細胞のキャプシドにおけるAd5三量体ノブドメインの表示
細胞−ファージのプレーティング及び増幅のために、E.コリ株BB4及びY1090を使用した。
【0151】
プラスミドpDknobの構築−図14で示すように、λD遺伝子の3’−末端を改変することにより、プラスミドpNS3785(Sternberg及びHoess,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1609−1613)を、pDknobに形質転換した。
【0152】
λDam15imm21nin5のユニークなXbaI部位にプラスミド全体をクローニングできるように、プラスミドpNS3785にXbaI制限部位を導入した。逆PCRにより、プライマーXbaI−NS.for:
【0153】
【化16】
及び、XbaI−NS.rev:
【0154】
【化17】
(XbaI部位に下線を付す。)を用いて、プラスミドpNS3785を増幅した。DNA合成の信頼度を上げるために、Taq及びPfuDNAポリメラーゼの混合物を用いて反応を行った(95℃−30秒、55℃−30秒、72℃−20分、25増幅サイクル)。このように、生成されたPCR増幅産物をXbaIエンドヌクレアーゼで消化し、プラスミドpD−XbaIを作製するためにライゲーションを行った。
【0155】
オリゴヌクレオチド、link−SD.s:
【0156】
【化18】
と、link−SD.as:
【0157】
【化19】
とをアニーリングさせることにより、リボソーム結合部位(RBS)及びKpnI部位(下線)を含有する65bpのdsDNA断片を得た。このDNA断片を、プラスミド、pKM3に、λD遺伝子の3’末端で、RsrIIとEcoRI制限部位との間にクローニングし、プラスミドpD−linkerを作製した。
【0158】
D−fbr.for
【0159】
【化20】
及びD−fbr.rev:
【0160】
【化21】
プライマーを用いてプラスミドpAB26(Bettら、1993、J.Virol.67:5911−5921)からAd5ファイバーノブドメインをコードするDNA配列をPCR増幅した。得られた600bpの断片をKpnI及びEcoRI制限酵素で消化し、対応する部位の間で、λD遺伝子の3’末端において、プラスミドpD−linkerに挿入し、プラスミドpDknob_linker0を作製した。複数のGly−Ser(GS)リピートを含有するリンカー配列を、プラスミド、pDknob_linker0のDとノブ遺伝子との間に挿入した。オリゴヌクレオチド、BamHI−link.s:
【0161】
【化22】
と、BamHI−link.as:
【0162】
【化23】
とをアニーリングさせることにより、2.5GSリピートをコードし、BamHI部位を含有するdsDNA断片を得た。この59bpDNA断片を、プラスミドpDknob_linker0のRsrIIとKpnI部位との間に挿入し、プラスミドpDknob_Blinkerを作製した。
【0163】
オリゴヌクレオチド、GS−link.s:
【0164】
【化24】
と、GS−link.as:
【0165】
【化25】
とをアニーリングさせることにより、様々な長さのdsDNAを調製し、重合体産物の形成を促進した。プラスミドpDknob_BlinkerのBamHI部位にこの混合物をクローニングすることにより、1つ(pDknob_linker1)又は2つ(pDknob_linker2)のインサートを含有した3種類のプラスミドが同定された。説明した実験において後者を使用し、pDknobと名付けた。
【0166】
プラスミドpDknob.Δの構築−Nhe−fbr.for:
【0167】
【化26】
及びD−fbr.rev:
【0168】
【化27】
プライマーを用いて、プラスミドpAB26(Bettら、1993、前出)からAd5ファイバーノブのDNA配列をPCR増幅した。この600bpの断片をNheI及びEcoRI制限酵素で消化し、pTRCHisBベクター(Invitrogen,Groningen,The Netherlands)のNheI及びEcoRI部位にクローニングし、プラスミドpHis.knobを作製した。
【0169】
プライマーknobΔ:
【0170】
【化28】
及びpD.rev
【0171】
【化29】
を用いて、プラスミドpDknobΔ.SN−Ctermから増幅し、BglII及びMscI制限酵素で消化したPCR産物を、MscI/BglIIで消化したベクターpHis.knobにクローニングすることにより、アミノ酸TAYT(配列番号45)が欠失しているファイバーノブのコード配列を含有するコンストラクト、pHis.knobΔを得た。プライマーknob−for3:
【0172】
【化30】
及びknobC−Spe/Not.rev
【0173】
【化31】
を用いてpDknobから得て、MscI/EcoRI制限酵素で消化したPCR断片を、MscI/BglIIで消化したベクター、pDknobにクローニングすることにより、プラスミド、pDknobΔ.SN−Ctermを得た。
【0174】
プライマーknobΔ:
【0175】
【化32】
/D−fbr.rev:
【0176】
【化33】
を用いて、プラスミド、pHis−knobΔからPCR断片を得た。このPCR産物をEcoRI及びBGlII制限酵素で消化し、ベクターpDknobの対応する部位に挿入して、wt配列を置換した。得られたプラスミドpDknobΔでは、CAR結合をなくす、ファイバーノブ遺伝子におけるTAYT(配列番号45)欠失が起こっている。
【0177】
ファージλ−knob及びλ−knobΔの生成−XbaI制限酵素で消化してプラスミドpDknob及びpDknob.Δを線状にし、プラスミド全体をλファージDam15imm21nin5のユニークなXbaI部位にクローニングし、ファージλknob−wt及びλknobΔ−wtをそれぞれ生成させた。4℃にて一晩インキュベーションした後、λパッケージングキット(APB,Uppsala、Sweden)を用いてライゲーション混合液をインビトロでパッケージングし、NZY寒天プレートにトップアガーを用いてプレーティングした。PCRにより陽性クローンを同定し、Sambrookら、1989(前出)で述べられているようにして増幅して精製した。pD派生物は全て、対応するλファージを生成した。
【0178】
抗体−標準的プロトコールに従い、細菌で発現させた組み換えAd5ノブタンパク質及びλファージ粒子をそれぞれNew Zeelandラビットに免疫することにより、ウサギ抗ノブR330及び抗λ血清を得た。ヒト血清のパネルをスクリーニングすることにより、細菌で発現させた組み換えAd5ファイバーノブの単量体及び三量体の両者と反応した試料(血清N92)、又は三量体と特異的に反応した試料(血清N93)を同定した。血清R330由来の抗体、抗−λ(Ab抗−λ)及びN92(AbN92)を、製造者の使用説明書に従い、プロテインAセファロース(Amersham−Pharmacia,Little Chalfont,UK)で精製した。組み換えノブタンパク質で、血清N93由来の抗体(AbN93)から抗体をアフィニティー精製した。マウスmAb12D6(McMaster University,Hamilton,Ontario,CanadaのFrank Grahamより提供。)は、Ad5ノブ三量体を選択的に認識する。
【0179】
ウイルス−Per.C6細胞において組み換えアデノウイルスを増殖させ、標準的プロトコールに従いCsCl勾配の遠心により精製した(Fallauxら、1998、Hum.Gene.Ther.9:1090−1917)。
【0180】
ファージ−ELISA−マルチウェルプレート(Nunc,Roskilde,Denmark)を、50mM NaHCO3(pH9.6)中にそれぞれ2.2μg/ml又は5μg/mlの濃度のヤギ抗ヒトIgGFc特異的(Pierce,Rockford,IL)又は抗マウスIgG特異的(SIGMA,St.Louis,MO)で一晩4℃にて被覆した。その被覆溶液を除去した後、0.05%Tween−20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBST)中5%脱脂粉乳から構成されている洗浄バッファーとともにプレートを37℃にて60分間インキュベーションした。ブロッキング溶液を捨て、ブロッキングバッファー中のAbN93、AbN92又はmAb12D6を添加し、室温(RT)にて2時間結合させた。プレートをPBSTで洗浄し、結合バッファー(PBS中5%脱脂粉乳)中のファージ溶解物 約1x109pfuをRTにて4時間インキュベーションした。次に、プレートをPBSで洗浄し、結合バッファー中の抗λポリクローナル抗体によりRTにて2時間、捕捉したファージ粒子を検出した。PBSで洗浄した後、結合バッファー中の抗ウサギIgGアルカリホスファターゼ結合抗体(Sigma,St.Louis,MO)中で、室温にて2時間、プレートをインキュベーションした。次にプレートを洗浄し、ジエタノールアミン中でSigma104ホスファターゼ基質(SIGMA,St.Louis,MO)とともにインキュベーションしてアルカリホスファターゼ活性を検出した。自動ELISAリーダー(Labsystems Multiskan Bichromatic,Helsinki,Finland)でプレートを読み取った。
【0181】
結果−Ad5ファイバーノブドメインをコードする遺伝子の、バクテリオファージλ上流の主要頭部Dタンパク質をコードする遺伝子で構成されるバイシストロニック系の合成を行うように、細菌性発現プラスミドを操作した。このDタンパク質のC−末端に(Gly−Ser)16ペプチドリンカー、続いて、リボソーム結合部位、D遺伝子アンバー翻訳コドンTAG及びAd5ノブ遺伝子メチオニン開始コドンを付加するように、ベクターを設計した(図14)。様々な長さの重合体を試験することによって、(Gly−Ser)16ペプチドリンカー配列により、λキャプシドにおけるノブ三量体発現が最も効率よく行われることが確実になることが明らかとなり、以後の実験で使用した。
【0182】
アンバー突然変異とともにD遺伝子のゲノムコピーを含有する、λDam15imm21nin5ゲノムのXbaI部位にプラスミドpDknobを挿入した。サプレッサー細菌宿主での形質転換後、得られたファージ、λknob−wtは、(i)λゲノムD遺伝子にコードされるwtDタンパク質(D);(ii)プラスミドD遺伝子によりコードされる組み換えwtDタンパク質(reD);(iii)reD−ノブ融合(細菌サプレッションの結果)及び(iv)ノブタンパク質(翻訳再開による。)を発現すると予想される。ファージ粒子は、そのキャプシドにおいてD、reD及び融合reD−ノブタンパク質のキメラのアレイを表示するはずである。さらに、D及びノブタンパク質の両方がホモ三量体複合体を形成するので、reDとノブとの間の条件付融合により、ノブ三量体をXキャプシドにおいてアセンブルさせることができるようになるはずである。Ad5ホモ三量体ノブ構造を選択的に認識するモノクローナル(mAb12D6)又はポリクローナル(AbN93)抗体は、ファージ酵素免疫吸着測定(ELISA)においてλknob−wt溶解物と特異的に反応し、ノブ三量体がそのファージ粒子のキャプシドで効率よく表示されることが示される(図15)。
【0183】
Ad5ファイバーTAYT(配列番号45)残基(ノブDGループの残基位置489から492)の欠失により、CARに対するAd5ファイバーの高親和性結合が完全になくなる(Roelvinkら、1999前出)。対応するλknobΔ−wt派生物は、抗ホモ三量体ノブ抗体と特異的に反応するが、これにより、この改変ノブも又はジキャプシドにおいてホモ三量体として表示されることが示される(図15)。
【0184】
最後に、λwt及びλNS3(その表面においてC型肝炎ウイルスのNS3タンパク質由来の80アミノ酸を発現するネガティブ対照クローン)は、バックグラウンドレベルの結合しか示さなかった。
【実施例2】
【0185】
λ−介在Ad5ノブは、911細胞上のヒトCARに特異的に結合する。
【0186】
細胞−Invitrogen(Rijswijk,The Netherlands)からヒト胎児網膜芽911細胞を得た。10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で911細胞を培養した。
【0187】
ウイルス−Per.C6細胞で組み換えアデノウイルスを増殖させ、標準的プロトコールに従いCsCl勾配の遠心により精製した(Fallauxら、1998、前出)。
【0188】
FACS解析−911細胞上に表示されているヒトCARへのファージλknob−wtの結合を次のように観察した。室温(RT)にて1時間、PBS中3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM MgCl2、1mM CaCl2から構成される結合バッファー中で、2x106細胞/mlの懸濁液とともに、ファージ粒子(0.4x1010から6x1010pfuの範囲)をインキュベーションした。結合バッファーで細胞を洗浄し、4℃にて45分間、FACSバッファー(PBS中2%FBS)中のウサギ抗λ精製Igとともにインキュベーションした。次に、細胞をFACSバッファーで洗浄し、4℃にて45分間、ヤギ抗ウサギIgG PE結合抗体(Diamedix,Miami,FL,USA)を含有するFACSバッファー中でインキュベーションした。FACSバッファーで洗浄した後、FACSバッファー中で約6x105細胞/mlの密度で細胞を再懸濁し、FACSCalibre フローサイトメトリー(Beckton Dickinson,Oxford,UK)で解析した。CELLQuest ソフトウェアにより蛍光強度を解析した。
【0189】
競合実験において、組み換えHisタグ付加ノブタンパク質ファイバー(又はHisタグ付加の無関係のタンパク質)10μg/mlを含有する結合バッファー200μlとともに、RTにて30分間、細胞を再びインキュベーションした。この混合液に対して、非結合タンパク質を除去せずに、ファージ(6x1010pfu)を添加し、さらに60分間インキュベーションした。二次抗体としてヤギ抗ウサギIgGFITC結合抗体(Pierce,Rockford,IL)を使用した。
【0190】
結果−ファージ表示ノブの機能性を評価するために、その表面上にCARを高レベルで発現するヒト胎児網膜芽911細胞とともにλknob−wtビリオンをインキュベーションした。蛍光活性化細胞分類(FACS)解析によりCAR特異的結合をアッセイした。蛍光標識細胞の分布のばらつきにより示されるように、λknob−wtファージ粒子は911細胞に結合した(図16A)。細胞の中央値蛍光を測定したところ、ファージタイターの上昇により、直線的に結合ファージ量が上昇していた。一方、λwt及びλNS3の両者とも、結合は検出可能なレベルではなかった。同様に、911細胞をλknobΔ−wtファージとともにインキュベーションしたところ、細胞結合は全く示されなかった。911細胞に対するλknob−wtの結合は、過剰量の組み換えノブとのインキュベーションにより阻害されたが、一方、非関連タンパク質 NS3とのインキュベーションでは何ら影響は見られなかった(図16B)。同じ試薬で、λwtファージの結合活性は変化しなかった。
【実施例3】
【0191】
λにおいて表示される改変Ad5ファイバーノブのライブラリーの作製。
【0192】
ウイルス−Per.C6細胞で組み換えアデノウイルスを増殖させ、標準的プロトコールに従いCsCl勾配の遠心により精製した(Fallauxら、1998、前出)。
【0193】
λknobΔ−14aa.cysライブラリーの構築−HIループにおいてユニークなSpeI及びNotI部位を導入するPCR増幅産物で、pD−knobΔにおいてBglII/MscI断片を置換することにより、プラスミドpDknobΔ−L0を作製した。プライマーknob.for2:
【0194】
【化34】
及びknobHI−Spe/Not.rev
【0195】
【化35】
又はknobHI−Spe/Not.for
【0196】
【化36】
及びknob.rev3:
【0197】
【化37】
を用いてプラスミドpDknobをPCR増幅することにより、2つの326bp及び93bp DNA断片を得た。これらのDNA断片をPCRライゲーションした。得られたプラスミドpDknobΔ−L0をXbaI消化により直線状にし、プラスミド全体をλDam15imm21nin5のユニークなXbaI部位にクローニングした。生成させたファージλknobΔ−L0を増幅してCsCl精製した。λ粒子からDNAを抽出し、ライブラリー構築に使用した。
【0198】
スプリット合成プロトコールに従い、ライブラリーオリゴヌクレオチドを合成し(Glaserら、1992、J.Immunol.149:3903−3913)、プライマー伸長によりdsDNAに変換し、SpeI/NotI消化し、λknobΔ−L0の対応するSpeI/NotI部位にライゲーションした。このライゲーション混合物をインビトロでパッケージング(APB,Uppsala,Sweden)し、NZY寒天プレートにプレーティングした。一晩インキュベーションした後、SMバッファー(50mM Tris−HCl pH7.5、0.01%ゼラチン、10mM MgSO4、100mM NaCl)でプレートから溶出し、精製し、濃縮して、SMバッファー、7%DMSO中で−80℃にて保存した。λknob−14aa.cysライブラリーの複雑性は、パッケージング混合物のプレーティングにより得られた個々のプラークの数から評価したところ、1.6x105であった。無作為に選択した20個のクローンの配列解析により、そのクローン全てにおいて、予想されたヌクレオチドが確認された。
【0199】
結果−ノブドメインのフレームワーク内の候補ペプチドリガンド配列の大規模コレクションを作製しスクリーニングするために、λknobディスプレイ系を用いた。ネイティブではない親和性に対するスクリーニングにおけるCAR結合の干渉を除くために、λknobΔ−wtベクターにおいてこのライブラリーを構築した。外来ペプチドリガンド配列を挿入するための部位としてノブドメインのHIループを選択し、ペプチドリガンド挿入を容易にするために、ユニークなSpeI及びNotI制限配列を導入した。これらの操作の結果、派生物λknobΔ−L0は、野生型Ad5タンパク質配列のT546とP547との間にさらなるペプチド性配列SGAAA(配列番号39)を組み込んだ(図13の上パネル)。
【0200】
レジンスプリット法により、SpeI及びNotI制限部位に隣接して14個のアミノ酸残基をコードするようにオリゴヌクレオチドを合成した(図13)。位置3及び12に2個の不変のCys残基を組み込むことにより、このペプチドリガンド配列に制約を加えた。位置1、2及び3は、疎水性の受容体構造との相互作用に好都合である芳香族アミノ酸が存在するようにした。拡張構造を導入する傾向があるプロリンは、挿入したペプチドリガンドの接近性を向上させるために位置14に好都合であった。残りの4から11の位置は、ループのフレキシビリティーを向上させるために、優先的に、小さな側鎖を有するアミノ酸(グリシン、セリン又はバリン)を受け入れるように設計した。最後に、固定されたシステインをコードする位置を除き、各位置においてコドンの5%を欠失させることにより、さらなる変更を導入した。適切なプライマーを用いたこれらのオリゴヌクレオチドの伸長によりdsDNA断片を生成させ、それをSpeI及びNotIで制限酵素消化し、ベクターλknobΔ−L0の対応する部位にクローニングした。そのライゲーション混合液のインビトロパッケージング及びプレーティングにより、2x105の個々のクローンから構成される、λknobΔ−14aa.cysライブラリーが得られた。
【実施例4】
【0201】
NIH3T3細胞に対するペプチドリガンド結合のための、ライブラリー、λknobΔ−14aa.cysライブラリーのスクリーニング
細菌−ファージのプレーティング及び増幅のために、E.コリ株BB4及びY1090を使用した。
【0202】
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞を入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でこの細胞を培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0203】
細胞におけるライブラリーの抽出−2x106細胞のNIH3T3細胞を60mm直径のペトリ皿に播種し、5%CO2とともに、37℃にて培養液中で48時間インキュベーションした。次に、コンフルエントになった細胞を、5mlのブロッキングバッファー(PBS中、3%BSA、10mM MgCl2、1mM CaCl2)とともに37℃にて1時間インキュベーションして飢餓状態にした。次に、その溶液を捨て、ブロッキングバッファー1ml中のファージライブラリー 5x109pfuを添加し、37℃にて3時間インキュベーションした。非結合ファージを除去し、細胞をブロッキングバッファーでよく洗浄した。次に、細菌に感染させて、結合したファージを増殖させた。この初回の選択から得られたファージのプールを記載(Beghettoら、2001、Int.J.Parasitol.31:1659−1668)のように精製した。
【0204】
FACS解析−FACSを利用したアッセイを用いてNIH3T3細胞に対するλファージの結合を解析した。2x109pfuファージを含有する、PBS中3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM MgCl2、1mM CaCl2から構成される結合バッファー中で、37℃にて60分間、2x106細胞/mlの懸濁液をインキュベーションした。結合バッファーで細胞を洗浄し、FACSバッファー(PBS中2%FBS)中のウサギ抗λ精製Igとともに4℃にて45分間インキュベーションした。次に、細胞をFACSバッファーで洗浄し、4℃にて45分間、ヤギ抗ウサギIgG PE結合抗体(Diamedix,Miami,FL,USA)を含有するFACSバッファー中でインキュベーションした。FACSバッファーで洗浄した後、FACSバッファー中で約6x105細胞/mlの密度で細胞を再懸濁し、FACSCalibreフローサイトメトリー(Beckton Dickinson,Oxford,UK)で解析した。CELLQuestソフトウェアにより蛍光強度を解析した。
【0205】
組み換えλクローンの免疫学的スクリーニング−記載のようにファージプラークを調製し、ニトロセルロースフィルター(Schleicher&Schuell GmbH,Dassel,Germany)に転写した(Beghetto,Eら、2001、前出)。最初に、RTにて1時間、フィルターをブロッキングバッファー(PBS、0.01%Triton中5%脱脂粉乳)で飽和させた。次に、そのフィルターを、ブロッキングバッファーで希釈したヒトAbN93又はウサギR330抗ノブ抗体(実施例1の抗体に関する記述を参照のこと。)とともに、室温(RT)にて2時間インキュベーションした。PBSTで数回洗浄した後、アルカリホスファターゼ結合二次抗体(抗ヒトIgG又は抗ウサギIgG)をブロッキングバッファーで希釈し、そのフィルターとともにRTにて1時間インキュベーションした。最後に、発色性基質(ニトロブルーテトラゾリウム及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート基質)(Sigma,St.Louis,MO)を用いてフィルターを発色させ、陽性のファージプラークを可視化した。
【0206】
組み換えAd5ファイバーノブの発現及び精製−Nhe−fbr.for:
【0207】
【化38】
及びD−fbr.rev:
【0208】
【化39】
プライマーを用いて、プラスミドpAB26(Bettら、1993、前出)からAd5ファイバーノブのDNA配列をPCR増幅した。この600bpの断片をNheI及びEcoRI制限酵素で消化し、pTRCHisBベクター(Invitrogen,Groningen,The Netherlands)のNheI及びEcoRI部位にクローニングし、プラスミドpHis.knobを生成させた。pHis.knobにクローニングすることにより、pDknobΔ及びpDknobΔ−L0からの適切なPCR増幅産物、プラスミドpHis.knobΔ及びpHis.knobΔ−L0を得た。
【0209】
MscI/BglIIで切断したベクターpHis.knobにクローニングすることにより、アミノ酸TAYT(配列番号45)が欠失したファイバーノブのコード配列を含有する、コンストラクトpHis.knobΔを得た。プライマーknobΔ:
【0210】
【化40】
及びpD.rev
【0211】
【化41】
を用いてプラスミドpDknobΔ.SN−CtermからPCR産物増幅させ、BglII及びMscI制限酵素で消化した。プライマーknob−for3:
【0212】
【化42】
及びknobC−Spe/Not.rev
【0213】
【化43】
を用いてpDknobから得て、MscI/EcoRI酵素で切断したPCR断片を、MscI/EcoRIで消化したベクターpDknobにクローニングし、プラスミドpDknobΔ.SN−Ctermを得た。
【0214】
プライマーknobΔ:
【0215】
【化44】
及びpD.rev
【0216】
【化45】
を用いてプラスミドpDknobΔ−L0をPCR増幅した。得られたPCR産物をBglII及びEcoRI制限酵素で消化し、pHis.knobベクターのBglI及びEcoRI部位にクローニングした。得られたpHis.knobΔ.SN−HI loopベクターをSpeI及びNotI酵素で消化し、選択したエピトープを含有するクローニング断片用に使用した。後者は、プライマーbioSN.for:
【0217】
【化46】
及びbioSN.rev:
【0218】
【化47】
を用いて、L派生物のλDNAをPCR増幅し、SpeI及びNotI酵素で消化し、ストレプトアビジンで被覆した電磁マイクロビーズ(Dynal A.S.,Oslo,Norway)で精製することにより得た。
【0219】
N末端の6個のHis精製タグを含有する組み換えAd5ファイバーノブ派生物(knobΔ−L1、knobΔ−L6及びknobΔ−L33)を、E.コリで発現させ、Hi−TrapキレートHPカラム(APB,Uppsala,Sweden)でFPLCにより精製した。
【0220】
細胞−ELISA−24ウェルプレートにおいて、培養液500μl中の約80,000細胞/ウェルの細胞を播種して、37℃にて、5%CO2とともに、48時間インキュベーションした。次に、コンフルエントになった細胞を37℃にて1時間、血清非添加の培地とともにインキュベーションして飢餓状態にし、冷PBSで1回洗浄し、次に、4%パラホルムアルデヒドとともに4℃にて10分間インキュベーションすることにより固定した。冷PBSで細胞をよく洗浄し、PBBS++バッファー(PBS中1% BSA、10mM MgCl2、1mM CaCl2)とともに4℃にて30分間インキュベーションしてブロッキングした。タンパク質結合を観察するために、細胞を4℃にて一晩、PBBS++中で、精製タンパク質20μg/ml希釈液とともにインキュベーションした。次に、プレートをPBBS++でよく洗浄し、PBBS++バッファーで1:1000に希釈した抗HisHRP結合抗体(Invitrogen)により捕捉したタンパク質を検出した。4℃にて2時間インキュベーションした後、プレートをよく洗浄し、TMB液体基質系とともにインキュベーションしてペルオキシダーゼ活性を検出した。2M H2SO4を添加して発色反応を停止させた。自動ELISAリーダー(Labsystems Multiskan Bichromatic,Helsinki,Finland)でこのプレートの読み取りを行い、A=A405nm−A620nmとして結果を表した。
【0221】
結果−CAR以外の細胞表面受容体に結合するペプチドリガンドを選び出すために、改変ファイバーノブのライブラリーをスクリーニングした。表面のCAR表示レベルが検出できない程度であり、アデノウイルスによりあまり形質導入されないマウス胚繊維芽細胞、NIH3T3細胞を、標的細胞として選択した。λknobΔ−14aa.cysライブラリーの約5x109プラーク形成単位(pfu)を、プレーティングしたNIH3T3細胞に添加した。インキュベーション後、非結合ファージを除去し、細胞をよく洗浄し、細菌に感染させて結合ファージを増殖させた。約1x105個のクローンを回収し、増殖させた。抗ノブ抗体を用いてこのファージのプールを免疫スクリーニングしたところ、クローンの20%がその表面にノブを表示し、そのクローンの100%において三量体複合体として発現されていた。一方、抗ノブ抗体でインプットライブラリーを調べたところ、そのクローンのうち26%で陽性、その75%が抗三量体ノブ抗体とも反応した。これらの知見から、ノブ発現が、増殖率低下を伴うことが示唆される。増幅中に、この傾向は、外来タンパク質を発現しないクローンに著しく片寄っていた。パニングサイクルから得られたファージのプールから、ノブ陽性クローンのうち30個のクローンを無作為に選択した。これらのクローンそれぞれからファージ溶解物を調製し、NIH3T3細胞への結合を細胞−ELISAにより測定した(データを示さず。)。この予備スクリーニングは、3個のクローン(λknobΔ−L1、λknobΔ−L6、λknobΔ−L33)における解析を目的としたものであり、NIH3T3細胞へのそれらの結合をフローサイトメトリーにより観察した(図17)。この方法により単離したこの3個の改変ファイバーノブは、親ベクターと比較して、蛍光標識細胞の分布中央値の変動を示したが、このことから、NIH3T3細胞への結合が増加したことが示される。対照ファージλNS3は、λknobΔ−wtと相当する程度の効率でNIH3T3細胞に結合した。これらの3個の改変ファイバーノブの配列解析から、類似性が高いことが明らかとなり(図18)、このことから、それらが同じ受容体と相互作用することが示唆される。
【0222】
同じAd5knobΔ−L1、L16及びL−33派生物を、組み換えタンパク質として細菌で発現させた。精製を容易にするため、及び検出の際のタグとして使用するために、そのN末端にヒスチジンテールを付加した。これらの組み換えノブタンパク質は、ホモ三量体複合体としてアセンブルし、knobΔ―wtタンパク質よりもNIH3T3細胞への結合が多かった(データを示さず。)。
【実施例5】
【0223】
改変ファイバーノブを有するアデノウイルスベクターは、NIH3T3細胞に対して効率的に形質導入する。
【0224】
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD,U.S.A)よりマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞を入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でこの細胞を培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0225】
ウイルス−Per.C6細胞において組み換えアデノウイルスを増殖させ、CsCl勾配での遠心により精製した。分光学的にウイルス粒子タイターを測定したが、この場合、260nmにおける光学密度1Uが、1.1x1012粒子/mlに相当する。Ad5派生物に対する結合分子が分からないので、細胞あたりのウイルス粒子の等量とベクターを比較する必要がある。様々なバッチのAd5派生物を用いたいくつかの実験からの一貫した結果及びCAR陽性細胞においてウイルス全てに対して測定した感染性が同程度であったことから、ウイルス調製物の質が形質導入効率で見られる変動に関与するという可能性が排除される。ウイルスゲノムの制限分析及びファイバーノブ領域の配列決定から、ウイルス調製物の同一性が確認された。Ad5luc派生物全てが、Ad5luc−wtウイルスのものと同程度の、トランスフェクションから細胞変性効果までの時間の長さ、増幅率及びウイルス回収率を示した。ウイルスをAd5luc−LXと名づけた(ここで、「x」とは、ウイルスゲノムに組み込まれたペプチドリガンドを示す。)。
【0226】
組み換えAdプラスミドの構築−E.コリ、BJ5183における相同的組み換えにより、Ad5ゲノムのE1領域の代わりにルシフェラーゼ発現カセット及びファイバーのHIループに選択したペプチドリガンドを含有する第一世代アデノウイルスを構築した。
【0227】
野生型ファイバー遺伝子を包含するAd5 25219−27018ヌクレオチド断片を、Litmus28ベクター(N.E.B.、Beverly,MA,U.S.A)にクローニングした。MfeI−SwaIオリゴヌクレオチド
【0228】
【化48】
を自己アニーリングさせて、SwaI制限部位を含有する18bpのdsDNA断片を得た。そのMfeI−適合末端により、この断片をLITMUS 28−ファイバーのMfeI部位にクローニングし、ファイバー遺伝子のすぐ下流にユニークなSwaI部位を作った。得られたプラスミドpLITfbr−SwaIを用いて、細菌の相同的組み換えにより、pAd5−H10においてSwaI部位を導入し、このように、pAd5−SwaIを作製したが、これは、トランスフェクションにおいて生存能力のあるウイルスを生成しない。
【0229】
Ad5ゲノムのE1領域のかわりにルシフェラーゼ発現カセットを含有するAd5luc及びAd5luc−SwaI派生物を以下のように構築した。プラスミドpGGluc(Gene Therapy Systems,Inc.,San Diego,CA)をMcsI及びKpnI制限酵素で消化し、CMV−ルシフェラーゼ発現カセットを単離した。得られた3.5−kbのCMV−ルシフェラーゼ発現カセットを、T4ポリメラーゼで平滑末端にし、シャトルベクター、pΔE1sp1A(Bettら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8802−8806)のClaI/EcoRV部位にクローニングし、プラスミドpΔE1CMVLucを得た。Ad5ゲノム配列に隣接したルシフェラーゼ発現カセットを含有する6.4kbのDNA断片を、Ssp1/BstZ17消化によりpΔE1CMVLucから切り出し、E.コリ BJ5183細胞における相同的組み換えにより、Claで線状化したpBHG10プラスミド(Chartierら、1996、J.Virol.79:4805−4810;Bettら、1994、前出)に挿入した。この最後のクローンから8.8kbのAvrII/BstZ17DNA断片を得て、アデノウイルスH10バックボーンのPacI部位に挿入し(Sandigら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:1004−1007)、pAd5luc−wt及びpAd5luc−SwaIを得た。図13で報告するように、ノブHIループ領域においてユニークなSpeI及びNotI部位を入れたAd5ファイバー遺伝子をpLITMUS20ベクターにクローニングすることにより、Ad5ファイバーシャトルプラスミド、pLITfbr−L0を構築した。λDNAテンプレートからペプチドリガンド配列をPCR増幅し、SpeI/NotI制限酵素消化し、pLITfbr−L0の対応する部位にクローニングして、プラスミドpLITfbr−LXを得た。細菌の相同的組み換えにより、pLITfbr−LXプラスミド由来の、突然変異させたファイバー配列を、pAd5luc−SwaIに組み込み、プラスミドpAd5luc−LXを得た。
【0230】
細胞の形質導入−培地500μl中の約50,000細胞/ウェルのNIH−3T3細胞を24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスを感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。製造者の使用説明書に従い、Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI,U.S.A)を用いて細胞抽出及びルシフェラーゼアッセイを行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。表示項目における各点は、3回測定の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【0231】
結果−親和性を調べるために、ファイバーノブ内にペプチドリガンドを組み込むAd5派生物を作製した。前記Ad5派生物では、NIH3T3細胞に対する結合が増加していた。下流遺伝子トランスファーアッセイを簡素化するために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの転写調節下にあるホタルルシフェラーゼ遺伝子を、Ad5バックボーンのE1領域の代わりに挿入した(Ad5luc−wt)。細菌における相同的組み換えにより、ノブHIループ内の図18に挙げるペプチドリガンドをウイルスゲノムの対応領域に入れたアデノウイルス派生物、Ad5luc−L0、−L1、−L16及び−L33を作製した。CAR結合を保持し、ウイルス増殖を可能にするために、TAYT(配列番号45)欠失を移入しなかったが、Ad5luc−wtファイバー遺伝子においてこれらのペプチドリガンドを組み込んだことに留意されたい。
【0232】
Ad5luc−LX派生物とAd5luc−wtウイルスとの間で、増幅率、ウイルス回収率及びウイルス粒子として測定したタイターに関しては顕著な違いは見られなかった。対照として、Ad5luc−wtを用いて、NIH3T3細胞の遺伝子導入効率に関してAd5luc−LX派生物を調べた。Ad5luc−wtと比較して、NIH3T3細胞に対して、Ad5luc−L1、Ad5luc−L16及びAd5luc−L33の形質導入率は顕著に高い(100から700倍まで)ことが示された(図19)。
【0233】
Ad5luc−L0対照ウイルスは、Ad5luc−wtと同じように作用したが、このことから、ファイバーのHIループのT546にSGAAA(配列番号39)配列を挿入してもウイルス親和性に影響を与えないことが示された。
【0234】
Ad5luc−LX派生物の感染経路を解析するために、組み換えノブタンパク質存在下でNIH3T3細胞を感染させることにより、競合アッセイを行った。同種knobΔ−L16タンパク質とプレインキュベーションすることにより、対照knob−wtタンパク質と比較して、NIH3T3細胞におけるAd5luc−L16の遺伝子導入活性が30%に低下した(図20)。これらのデータから、未知の細胞表面受容体への結合が介在するCAR非依存性感染経路を、本改変ノブが活性化することが示される。一方、同種knob−wtタンパク質は、対照のknobΔ−L16タンパク質と比較して、Ad5luc−wtが介在する、既に低いルシフェラーゼ発現レベルにはあまり影響を与えなかった(図20)が、このことから、NIH3T3細胞においてその形質導入活性が低いことにCARは介在していなかったことが示される。
【実施例6】
【0235】
改変Ad5ファイバーの細胞侵入は、αvインテグリンが介在する。
【0236】
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞を入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でこの細胞を培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0237】
細胞の形質導入−培地500μl中の約50,000細胞/ウェルのNIH−3T3細胞を24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスを感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。製造者の使用説明書に従い、Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI,U.S.A)を用いて細胞抽出及びルシフェラーゼアッセイを行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。表示項目における各点は、3回測定の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【0238】
競合実験において、組み換えタンパク質 10μg/ml又は、RGDもしくは対照RGEペプチド4mg/mlとともにDFバッファー中でRTにて60分間、細胞をプレインキュベーションした。次に、組み換えタンパク質又はペプチドを除去せずに、ウイルス(50pp/細胞)を添加し、上述のように感染させた。結果は、それぞれ、対照タンパク質(Ad5luc−wtに対してknobΔ−L16、及びAd5luc−L16に対してknob−wt)又はRGEペプチド存在下における細胞のルシフェラーゼ活性のパーセンテージとして表す。合成ペプチドは、Bio Synthesis(Lewisville,Texas,U.S.A.)から入手した。
【0239】
結果−NIH3T3細胞は、その表面上でCARを発現しないが、αvβ3及びαvβ5インテグリンの発現レベルはかなり高い。従って、発明者らは、RGE(GRGESP;配列番号44)対照ペプチドと比較した、RGD(GRGDSP;配列番号43)ペプチドの存在下でのそれらの形質導入効率を測定することにより、Ad5派生物の細胞侵入におけるインテグリン−ペントン相互作用の役割を調べた。RGDペプチドは、細胞αvインテグリンとのAd5ペントンベースのRGDモチーフの相互作用を妨害し、それによりウイルス侵入を阻害する。NIH3T3細胞をRGDペプチドとプレインキュベーションすることにより、対照RGEペプチドと比較して、Ad5luc−L1、Ad5luc−L16及びAd5luc−L33の形質導入がそれぞれ、40%、60%及び61%低下した。従って、それらが未知の細胞性受容体と最初に相互作用した後、Ad5派生物は、αvインテグリンへの結合を介して内在化される。Ad5luc−wtを用いて同様の実験をおこなったところ、既に低いその形質導入効率が顕著に低下することが明らかとなり、このことから、NIH3T3細胞におけるウイルスの感染性が低いのは、主にαvインテグリンとの直接相互作用によるものであることが示される。
【実施例7】
【0240】
CAR陰性細胞及びCAR陽性細胞における改変Ad5ファイバーの遺伝子導入効率
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)を入手した。この細胞をMEMα培地で培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0241】
American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりマウス肝臓 NMuLi細胞を入手した。この細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0242】
細胞の形質導入−培地500μl中の約50,000細胞/ウェルのNIH−3T3細胞及びNMuLi細胞を24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスを感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。CHO細胞に対しては、MEMα培地を使用した。新鮮な完全培地を添加し、タンパク質発現のために48時間、細胞をインキュベーションした。製造者の使用説明書に従い、Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI,U.S.A)を用いて細胞抽出及びルシフェラーゼアッセイを行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。表示項目における各点は、3回測定の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【0243】
結果−発明者らは、Ad5突然変異体が用いる非ネイティブ感染経路がまた、NIH3T3及びNMuLi以外の細胞型でも形質導入を促進するか否かを調べた。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞はその細胞表面にCAR及びαvβ3インテグリンを検出不可能なレベルでしか発現せず、αvβ5レベルが低いことから、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を選択した。予想通り、CHO細胞は、Ad5luc−wtによりあまり形質導入されなかった(図21)。しかし、3種類のAd5派生物は全て、Ad5luc−wtよりも非常に高い効率でこの細胞に感染した。Ad5luc−L1及びAd5luc−L33が最も効率が高く、それぞれ、対照wtウイルスの、270倍及び320倍高かった。このように、CHO細胞もまた、その表面にノブ突然変異体が標的とする受容体を表示する。CARが存在せず、αvβ5インテグリンのレベルが低い状態において、この相互作用により、CHO細胞を効率的に形質転換できるようになる。
【0244】
Ad5派生物が標的とする受容体が、CAR陽性細胞でも発現されるか否かを調べるために、CAR及びαvインテグリンを高レベルで発現し、Ad5により効率よく形質導入されるマウス肝臓NMuli細胞を感染させた(図19)。3種類のAd5派生物全てが、Nmuli細胞の感染を引き起こし、その効率はAd5luc−wtより高いか同等であった。過剰な組み換えknob−wtタンパク質により、Ad5luc−wtの感染性が5%に低下した(図20)。一方、同じ条件は、派生物の形質導入効率に影響を与えず、このことから、CAR非依存性細胞侵入経路がNMuli細胞においても有効であることが分かった。
【実施例8】
【0245】
ヒト及びマウス樹状細胞、ヒト初代メラノサイト及びマウス筋肉組織の遺伝子導入効率
細胞−初代マウスDCは、Lutzら、1999、J.Immunol.Methods 223:77−92で述べられているように、Balb/cメス骨髄から得た。簡潔に述べると、トータル骨髄白血球を細菌学用ペトリ皿のPRMI及びGM−CSF(2ng/ml)中にプレーティングした。培地を2日から3日ごとに交換した。インビトロ培養第7日に細胞を使用した。
【0246】
Engeringら、2002、J.Immunol.168:2118−2126で述べられているように、ヒトDC細胞を得た。簡潔に述べると、抗−CD14(Milteny Biotec,Auburn,CA,U.S.A.)を用いたアフィニティー精製により、健康な提供者の軟膜からヒト血液単球を単離した。IL−4(100mg/ml;Duotech,Rocky Hill,NJ,U.S.A.)及びGM−CSF(800U/ml;Duotech,Rocky Hill,NJ,U.S.A.)存在下においてRPMI 1640/10% FCSで単球を培養して、未成熟DCを得た。培地は3日ごとに交換し、第7日に細胞を使用した。
【0247】
患者から初代ヒトメラノサイトを単離し、インビトロで4継代にわたり次の培地で培養した。培地は、30% di Ham’sF12、2% FCS4,4mM L−グルタミネナル(glutamminenale)、50IU/ml−50μg/m ペニシリン−ストレプトマイシン、24.3μg/ml アデニン、5μ/ml インスリン、0.4μg/ml ヒドロコルチゾン、1.36ng/ml トリヨードチロニン、10−10M コレラ毒素、10ng/mlEGF、100ng/ml BFGF,TPAを含む、60% DMEMであった。
【0248】
細胞の形質導入−培地500μl中の約200,000細胞/ウェルのマウス及びヒトDCを24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて24時間インキュベーションした。
【0249】
コンフルエントになった細胞をRFバッファー(RPMI中2%FBS)で洗浄し、RTにて40分間、RFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスに感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をRFバッファーで洗浄し、タンパク質発現のために完全培地とともに48時間インキュベーションした。
【0250】
培地500μl中の約50,000細胞/ウェルの初代ヒトメラノサイトを24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスに感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。新鮮な完全培地を添加し、タンパク質発現のために48時間、細胞をインキュベーションした。
【0251】
筋肉組織−8週齢メスBalbCマウスの大腿四頭筋に、アデノウイルス野生型(Ad5luc−wt)又はアデノウイルス派生物(Ad5luc−L1及びAd5luc−L33)109、108又は107vpを注射した。生理溶液 50μlでウイルスを希釈した。12個の筋肉に、各アデノウイルス派生物及び野生型ウイルスを注射した(各moiに対して4個の筋肉を使用した。)。
【0252】
注射から48時間後、マウスを屠殺し、筋肉を取り出し、PBSで洗浄して溶解バッファー(Luciferase Assay System,Promega) 300μl中でホモジェナイズした。凍結融解を1回行った後、4℃にて、14000rpm、20分間、抽出液を遠心した。上清を回収し、ルシフェラーゼアッセイに30μlを使用した(Luciferase Assay System,Promega)。BCA Protein Assay kit(Pierce)によりタンパク質定量を行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。
【0253】
結果−得られた結果から、Ad5派生物のCAR非依存性親和性が、ある一定の細胞型又は一定の種に限定されないことが示唆された。選択した改変ファイバーが治療において関心のある細胞/組織に対する感染を行うためにより適しているかどうかを調べるために、樹状細胞(DC)、ヒトメラノサイト及び骨格筋組織を選択した。
【0254】
骨髄からマウス未成熟DCを得て、インビトロで増殖させた。FACS解析により、この集団がCD11c+、CD11b+、MHC−I及びMHC−II陽性として確認された。骨髄由来のマウス未成熟DCに、様々なmoiで、Ad5luc−L1及びAd5luc−L33を感染させた。両ウイルスとも、Ad5luc−wtと比較して高い効率でマウス未成熟DCに対して形質導入した(図22A)。特に、Ad5luc−L33は、使用したmoiに依存して、親ベクターよりも24倍から100倍、マウスDCに感染した。健康な提供者の末梢血液からCD14−アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、インビトロで分化させたヒト未成熟DCに対して同様の実験を行った。FACS解析により、この集団が、CD1a+、HLA−DR+、CD80+、CD83+、CD86+及びCD14negとして確認された。文献により報告されているように、試験したmoiでは、Ad5luc−wtは未成熟ヒトDCに対してあまり形質導入しなかった(図22B)。一方、Ad5luc−L1及びAd5luc−L33は、形質導入の効率の点で非常に優れていた。すなわち、ヒトDCに取り込まれたAd5luc−L33は、wtウイルスと比較して100倍増加していた。
【0255】
様々なmoiにおいて、Ad5luc−LX派生物をヒト初代メラノサイトに感染させた。Ad5luc−wtと比較して、3種類のAd5luc派生物は、高い形質導入効率を示し、Ad5luc−L33の場合はAd5luc−wtの効率の50倍から900倍であった。
【0256】
BalbCマウス8週齢の大腿四頭筋に、アデノウイルス wt又はアデノウイルス派生物(L1及びL33)109、108又は107vpを注射した。試験した3種類のm.o.i.全てにおいて、アデノウイルス派生物Ad5luc−L1及びAd5luc−L33は、Ad5luc−wtと比較して、筋肉への高い形質導入効率を示した(図23)。すなわち、108vpを注射した場合、Ad5luc−L33及びAd5luc−L1は、マウス筋肉をAd5luc−wtのそれぞれ8倍(p<10exp−5)及び5倍(p<0.001)よく形質導入した。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】図1は、配列番号1に記載の、改変Ad5ファイバータンパク質、Ad5ファイバー−L1のアミノ酸配列を示す。この配列は、該ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のファイバーノブのHIループ内にL1ペプチドリガンド(配列番号13)を含有する。そのノブドメインに下線を付す。L1ペプチドリガンド配列は、斜字体で表す。L1ペプチドリガンドの挿入を促進するために野生型Ad5ファイバー配列に付加したアミノ酸残基は、小文字で表す。
【図2】図2は、配列番号2に記載の、改変Ad5ファイバータンパク質、Ad5ファイバー−L16のアミノ酸配列を示す。この配列は、該ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のファイバーノブのHIループ内にL16ペプチドリガンド(配列番号14)を含有する。そのノブドメインに下線を付す。L16ペプチドリガンド配列は、斜字体で表す。L16ペプチドリガンドの挿入を促進するために野生型Ad5ファイバー配列に付加したアミノ酸残基は、小文字で表す。
【図3】図3は、配列番号3に記載の、改変Ad5ファイバータンパク質、Ad5ファイバー−L33のアミノ酸配列を示す。この配列は、該ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のファイバーノブのHIループ内にL33ペプチドリガンド(配列番号13)を含有する。そのノブドメインに下線を付す。L33ペプチドリガンド配列は、斜字体で表す。L33ペプチドリガンドの挿入を促進するために野生型Ad5ファイバー配列に付加したアミノ酸残基は、小文字で表す。
【図4】図4は、図1で示すような、及び配列番号1に記載のAd5ファイバー−L1タンパク質をコードする、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を示す。この配列は、L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列を本ファイバーノブのHIループに対応する配列内に含有する、Ad5ファイバー遺伝子を表す。そのノブをコードする領域に下線を付す。L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は、斜字体で表す。小文字で表した付加した配列変化は、野生型Ad5ファイバーにL1をコードするヌクレオチド配列の挿入を容易にするために使用する操作を行った制限部位を表し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図5】図5は、図2で示すような、配列番号2に記載のAd5ファイバー−L16タンパク質をコードする、配列番号5に記載のヌクレオチド配列を示す。この配列は、L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列を本ファイバーノブのHIループに対応する配列内に含有する、Ad5ファイバー遺伝子を表す。そのノブをコードする領域に下線を付す。L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は、斜字体で表す。小文字で表した付加した配列変化は、野生型Ad5ファイバーにL16をコードするヌクレオチド配列の挿入を容易にするために使用する操作を行った制限部位を表し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図6】図6は、図3で示すような、配列番号3に記載のAd5ファイバー−L33タンパク質をコードする、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を示す。この配列は、L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列を本ファイバーノブのHIループに対応する配列内に含有する、Ad5ファイバー遺伝子を表す。そのノブドメインをコードする領域に下線を付す。L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は、斜字体で表す。小文字で表した付加した配列変化は、野生型Ad5ファイバーにL33をコードするヌクレオチド配列の挿入を容易にするために使用する操作を行った制限部位を表し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図7】図7は、配列番号7に記載の、改変Ad5ファイバー−L1タンパク質、Ad5 fiberΔ−L1のアミノ酸配列を示す。この配列は、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489から492において、CAR結合をなくす、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失を有する。さらに、これは、アミノ酸残基546から547の間において本ファイバーノブのHIループ内にL1ペプチドリガンド(配列番号13)を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付す。L1ペプチドリガンド配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L1をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図8】図8は、配列番号8に記載の、改変Ad5ファイバー−L16タンパク質、Ad5 fiberΔ−L16のアミノ酸配列を示す。この配列は、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489から492における、CAR結合をなくす、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失を有する。さらに、これは、アミノ酸残基546から547の間において本ファイバーノブのHIループ内にL16ペプチドリガンド(配列番号14)を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付す。L16ペプチドリガンド配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L16をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図9】図9は、配列番号9に記載の、改変Ad5ファイバー−L33タンパク質、Ad5 fiberΔ−L33のアミノ酸配列を示す。この配列は、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489から492における、CAR結合をなくす、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失を有する。さらに、これは、アミノ酸残基546から547の間において本ファイバーノブのHIループ内にL33ペプチドリガンド(配列番号15)を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付す。L33ペプチドリガンド配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L33をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図10】図10は、配列番号10に記載の、本発明のAd5 fiberΔ−L1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。この配列は、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476(ACAGCCTATACA;配列番号47)の欠失を有する。このヌクレオチドの欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCAR結合をなくす、本明細書で述べたアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に対応する。さらに、この配列は、本ファイバーノブのHIループ内のL1ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付す。L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L1をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図11】図11は、配列番号11に記載の、本発明のAd5 fiberΔ−L16タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。この配列は、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476(ACAGCCTATACA;配列番号47)の欠失を有する。このヌクレオチドの欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCAR結合をなくす、本明細書で述べたアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に対応する。さらに、この配列は、本ファイバーノブのHIループ内のL16ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付す。L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L16をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図12】図12は、配列番号12に記載の、本発明のAd5 fiberΔ−L33タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。この配列は、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476(ACAGCCTATACA;配列番号47)の欠失を有する。このヌクレオチドの欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCAR結合をなくす、本明細書で述べたアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に対応する。さらに、この配列は、本ファイバーノブのHIループ内のL33ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付す。L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L33をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図13】図13は、λknobΔ−14aa.cysファージディスプレイライブラリーの構造を示す。この図の上部は、野生型Ad5ファイバー遺伝子のアミノ酸位置546から547のknobΔ−L0配列の部分を表す。アミノ酸残基は、三文字コードで示す。knobΔ−L0において、位置546のスレオニン(Thr)及び位置547のプロリン(Pro)をコードするコドン配列の間にヌクレオチドが付加される。さらなるヌクレオチドにより、この領域にSpeI及びNotI部位を入れるが、これは本ファイバーノブ内の候補ペプチドリガンドの挿入を容易にする。このさらなるヌクレオチドは、太字、大文字で表し、それらがコードするさらなるアミノ酸残基は太字で表す。配列番号16は、本ファイバータンパク質配列の残基546及び547、ならびにそれらの間に付加された新しい残基を含む、knobΔ−L0の領域のアミノ酸配列断片を表す。配列番号17は、本ファイバータンパク質のアミノ酸残基546及び547をコードするコドン配列ならびにそれらの間に付加された新しいヌクレオチドを含む、knobΔ−L0の領域のヌクレオチド配列断片を表す。 下のパネルは、knobΔ−14aa.cysライブラリーを作製するために使用される、候補ペプチドリガンドをコードするこのオリゴヌクレオチド混合物の組成を説明する。このペプチドは、レジンスプリット技術により調製した。このパネルの下部の数字は、knobΔ−L0内に挿入される候補ペプチドリガンドの可能性のある14個のアミノ酸残基位置を示す。各バー内の、影付きのボックスは、そのアミノ酸残基位置を作るために使用したコドンプールの個々のコドンの割合を表す。その影付きボックスに、積み重なった2個のボックスが付いているが、これらは、その個々のコドンの配列及びそれがコードするアミノ酸残基を示す。例えば、位置1及び2において、それらの位置に対するアミノ酸残基を作るために使用した個々のコドン配列の35%がNNSヌクレオチド配列を有する。コドン配列内の「N」は、4種類のヌクレオチド:アデニン(A)、シトシン(C)、チミジン(T)又はグアニン(G)のうちいずれかを示す。「S」は、C及びGヌクレオチドが等モル頻度であることを意味する。従って、NNSは、そのバーの上部ボックスにおいて「Xxx」により表されている場合、いずれかのアミノ酸残基を表す。あるいは、それらの位置においてアミノ酸残基を作るために使用した個々のコドン配列の20%が、フェニルアラニン残基(Phe)をコードするTTCヌクレオチド配列を有する。このライブラリーにさらなる変化を加えるために、位置3及び12における固定されたシステイン(Cys)をコードするものを除き、可能性のある各アミノ酸残基位置を作るために使用したコドン配列の5%を欠失させる。ヌクレオチド及び14個の可能性のあるアミノ酸残基位置に隣接する対応するアミノ酸配列は、この合成ペプチドリガンドがknobΔ−L0内に挿入される位置に相当する。このペプチドリガンドは、新しく作られたSpeI及びNotI制限部位を使用して、knobΔ−L0内に挿入される。この候補ペプチドリガンドを挿入した後、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のknobΔ−L0に見られる付加されたGly(G)残基を除去する。この新しく付加されたSer残基(S)は、挿入されたペプチドリガンドのアミノ末端に隣接し、新しく付加されたAla−Ala−Ala(AAA)残基は、カルボキシ末端に隣接する。
【図14】図14は、λD−Ad5knob発現カセットの構造を示す。λファージのDタンパク質とAd5遺伝子のノブ領域との間の領域のヌクレオチド配列(配列番号18)及び対応するアミノ酸配列(配列番号19)を詳述する。16Gly−Ser(GS)リピートのリンカー、リボソーム結合部位(RBS)配列及びアンバーコドン配列は、λDタンパク質のカルボキシ末端とノブタンパク質のアミノ末端との間に位置する。数字は、野生型λDのアミノ酸残基及びファイバーアミノ酸残基の位置を意味する。
【図15】図15は、λキャプシドにおける三量体Ad5ノブドメインの表示を示している。マウスmAb12D6及びヒトAbN93(両者とも、Ad5ノブの三量体型に対して特異的)、ならびにAb92抗体(単量体及び三量体構造の両方を検出する。)の、指示されるタンパク質への結合を、ファージ−ELISAにより評価した。結果は、A=A405nm−A620nmとして表す。各点は、3回測定した値の平均を表す。各値に対する標準偏差を報告する。
【図16A】図16A−Bは、λ表示Ad5knobのCAR−陽性911細胞との結合のFACS解析を示す。(A)ファージ介在Ad5knob−wt及びAd5knobΔ−wtの911細胞との結合。ネガティブ対照(Swt及びkNS3)を含む。(B)knob−wtタンパク質の存在下における911細胞へのλknob−wtの結合。タンパク質の非存在下又はλNS3の存在下における対照反応も報告する。
【図16B】図16A−Bは、λ表示Ad5knobのCAR−陽性911細胞との結合のFACS解析を示す。(A)ファージ介在Ad5knob−wt及びAd5knobΔ−wtの911細胞との結合。ネガティブ対照(Swt及びkNS3)を含む。(B)knob−wtタンパク質の存在下における911細胞へのλknob−wtの結合。タンパク質の非存在下又はλNS3の存在下における対照反応も報告する。
【図17】図17は、λknobΔ−L1(L1)、λknobΔ−L16(L16)及びλknobΔ−L33(L33)からのファージ溶解物がNIH3T3細胞と結合することを示す。λファージのNIH3T3細胞への結合は、フローサイトメトリー解析によりアッセイした。データは、PRE標識集団のパーセンテージとして報告する。
【図18】図18は、本発明の新規ペプチドリガンドのアミノ酸配列を示す。本ペプチドリガンドを構成するアミノ酸残基は一文字コードで示す。パネルの一番上の数字は、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置で構成される、本ペプチドリガンドのコアアミノ酸配列を示す。
【図19】図19は、NIH3T3又はNMuLi細胞において野生型Ad5luc及びAd5luc−L0両方と比較した、Ad5luc−LXアデノウイルス派生物(Ad5luc−L1、Adluc−L16及びAdluc−L33)の遺伝子導入効率を示す。多重感染度(moi)50で、指示されたウイルスをNIH3T3又はNMuLi細胞に感染させた。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)で表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。ヒストグラムの上の値は、そのウイルスの活性と親Ad5luc−wtのウイルス活性との比を意味する。
【図20】図20は、NIH3T3又はNMuLi細胞における、組み換えノブタンパク質、knobΔ−L16及びknob−wtとの、Ad5luc−L16感染の競合を示す。結果はヒストグラムの上部に示し、対照タンパク質存在下での細胞のルシフェラーゼ活性のパーセンテージとして表す(Ad5luc−wtに対してknobΔ−L16、及びAd5luc−L16に対してknob−wt。)。
【図21】図21は、Ad5luc−LX派生物を用いたCHO細胞に対する感染を示す(Ad5luc−L1、Ad5luc−L16及びAd5luc−L33)。様々なmoiでAd5luc派生物をCHO細胞に感染させた。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)で表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。ヒストグラムの上の値は、このウイルスの活性と親Ad5luc−wtのウイルス活性との比を意味する。
【図22】図22は、Ad5luc−LX派生物が効率的に樹状細胞(DC)に対して形質導入を行うことを示す。(A)骨髄由来マウス未成熟DCの感染。(B)単球由来ヒト未成熟DCの感染。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)として表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【図23】図23は、Ad5luc−LX派生物がインビボにおいて筋肉への形質導入を促進することを示す。マウスの大腿四頭筋に、野生型又はAd5luc−LX派生物(L1、L33) を109、108又は107ウイルス粒子(vp)を注射した。注射から48時間後、マウス屠殺し、筋肉を取り出し、ルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)として表す。各値に対する標準偏差を報告する。
【図24】図24は、Ad5luc−LX派生物(L1、L16及びL33)を用いた、ヒト初代メラノサイトの感染を示す。細胞は、様々なmoiでAd5luc派生物を用いて感染させた。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)として表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。ヒストグラムの上の値は、このウイルスの活性と親Ad5luc−wtのウイルス活性との比を意味する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、野生型ウイルスと比較してアデノウイルスの親和性を広げる、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルス関する。この改変ファイバータンパク質は、固定及び可変アミノ酸残基両方を含有する14アミノ酸コア配列を含む、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CAR)以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。このペプチドリガンドは、代替的な細胞表面結合部位に接近できるように、及びなおファイバーノブ三量体化が保存されるように、アデノウイルスファイバータンパク質配列内に挿入されている。本発明はまた、開示する改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子、ならびに、前記核酸分子を含有する組み換えベクター及び宿主細胞にも関する。本発明はさらに、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する改変アデノウイルスファイバーノブに融合させられたファージ外殻タンパク質を発現する組み換えファージ集団を含有する、ファージディスプレイライブラリーに関する。本発明はまた、CAR陰性又はCAR陽性細胞において前記ライブラリーをスクリーニングすることによって前記ペプチドリガンドを同定する方法、ならびに本明細書中で述べる組み換えアデノウイルスを用いて細胞及び/又は組織に対して形質導入を行うための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えアデノウイルスベクターは、異常細胞又は組織を標的として組み換え遺伝子を導入するための効率的であり用途の広い遺伝子治療系であることが証明されている。アデノウイルスベクターは、広い範囲の標的細胞に感染するが、高いレベルで遺伝子導入されるか否かは、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CAR)が標的とする細胞に存在するか否かに依存する。遺伝子治療にとって重要な標的に相当する細胞型及び組織の中には、アデノウイルス感染が起こりづらいものがいくつかあるが、それは主に、CAR発現レベルが低いことに起因する(例えば、Havengaら、2001、J.Virol.75:3335−3342参照。)。同様に、アデノウイルスが容易に感染する標的細胞の中には、導入を遂行するためにアデノウイルス粒子が高レベルである必要があり(Arthurら、1997、Cancer Gene Ther.4:17−25)、アデノウイルス感染に付随する何らかの免疫反応を悪化させるものがある。従って、治療上意義のあるヒト細胞及び組織に対するアデノウイルス送達の効率を向上させることに対して多大な努力が払われてきた。
【0003】
アデノウイルス血清型5(Ad5)の細胞侵入メカニズムは、2つの別個の連結しない段階からなる。第一に、ウイルスファイバータンパク質の三量体のカルボキシ末端のノブドメインと細胞表面に提示されるCARとの間の高親和性相互作用を介してウイルスが宿主細胞に結合する。ウイルスの感染性を決定するこの最初の相互作用に続いて、細胞表面上のαvβ3及びαvβ5インテグリンとの、ペントンベースにおけるRGD配列の会合が起こり、それにより、ウイルスの内在化が活性化される。Ad5親和性を変更するためのストラテジーは、代替的な細胞特異的受容体を認識できるようにウイルスキャプシドタンパク質を改変することを利用するものである。アデノウイルスキャプシドタンパク質には、ヘキソン、ペントンベース及びファイバータンパク質が含まれる。ウイルスがその同起源の細胞性受容体と結合することでそのウイルスの親和性が調節されるため、そのファイバータンパク質のカルボキシ末端のノブドメインを遺伝子レベルで改変するための研究が盛んに行われてきた(総説として、Kransnyhkら、2000、Mol.Ther.1:391−405を参照。)。多くの研究グループにより、Ad5ファイバー遺伝子を部分的に、又は完全に、異なるアデノウイルス血清型のもので置換すること、つまり、ドナーの血清型由来の親和性を作り出すことが可能であることが示されてきた。実際に、作製されたAd5キメラのうちいくつかでは、選択した細胞型に対して親和性が増強されていた。しかし、利用可能な血清型の数及びそれらの親和性が限定的であることにより、この「ファイバー交換」アプローチは、あまり柔軟ではないものとなっている。さらに、ウイルスキメラの生存性が低く、ウイルスキメラの回収率が低いために、このストラテジーの開発は進んでいない。
【0004】
近年、様々な研究グループが、短いペプチドをAd5ファイバーノブドメインの規定した部位に組み込むことができることを示してきた。このノブドメインから突出したHIループには、ファイバーの三量体化を残し、及びCAR結合機能を変化させずに、構造的に多くのペプチド配列を挿入することができる。これらの知見により、所望する結合特異性を有するリガンドを同定するための有望な経路として、ファージディスプレイペプチドライブラリーのスクリーニングが進歩した。異なるタンパク質の位置、つまり、Ad5ファイバーノブのHIループへと移した場合に、ファージライブラリーから選択されるリガンドがその結合特性を保持していないことが多いという事実があるために、このストラテジーを用いた成功例の報告は少ない。さらに、これらのペプチドの挿入は、ファイバーの三量体化及びウイルスアセンブリーに影響を与え得る。
【0005】
Krasnykhら(1988、J.Virol.72:1844−1852)は、組み換えを利用して、ファイバーノブのHIループドメイン中にFLAGオクタペプチドを含有するAd5ファイバータンパク質を発現させた。この異種ペプチドは、ファイバー三量体化を妨害しないか、又はノブ中の細胞結合部位の形成を妨害しなかった。前記改変Ad5ファイバータンパク質を含有する組み換えアデノウイルスは、適切な生物学的機能を維持していた。
【0006】
Dmitrievら(1988、J.Virol.72:9706−9713)は、Arg−Gly−Asp(RGD)を含有するペプチドをAd5ファイバーループのHIループへ組み込むことにより、得られる組み換えファイバーが、CARへの代替的感染経路として、RGD−インテグリン相互作用を利用できるようになることを示している。
【0007】
Einfeldら(1999、J.Virol.73:9130−9136)は、ヘマグルチニン(HA)タンパク質由来の線状デカペプチドを認識する膜−アンカー単鎖抗体からなる擬似受容体(pseudoreceptor)を開発した。このHAペプチドをAd2ファイバーノブのHIループに組み込むことにより、得られる組み換えアデノウイルスが、CAR結合が阻害される条件下で、擬似受容体発現細胞に対して形質導入できるようになった。
【0008】
Xiaら(2000、J.Virol.74:11359−11366)は、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)に特異的なエピトープを同定するために、ヒトトランスフェリン受容体(hTfR)の細胞外ドメインに対して、ノナペプチドファージディスプレイライブラリーのスクリーニングを行った。同定された配列のうち2つをAd5ファイバーノブのHIループに挿入したところ、適切な三量体化及びhTfR発現細胞への遺伝子導入が見られた。
【0009】
Nicklinら(2001、Mol.Ther.4:534−542)は、CAR結合がないファイバーノブのHIループ中に挿入された場合、2種類の内皮細胞(EC)結合ペプチドが、ECに対するアデノウイルス親和性を変化させることを示した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、主要な頭部タンパク質D対するカルボキシ末端融合物として、バクテリオファージλのキャプシドにおいて機能的Ad5ファイバーノブドメインを発現させることにより、先行研究の限界を打開する。野生型CARへの結合がない状態で機能的Ad5ファイバーノブ内に組み込まれたペプチド配列の大規模コレクションを構築するために、このファージディスプレイ系を使用した。CAR陰性マウス胚繊維芽細胞 NIH−3T3においてこのライブラリーで選択を行った後、CAR陰性細胞への結合を示す、このノブコンテクスト中の3種類のペプチドリガンドを単離した。
【0011】
これらのペプチドリガンドを組み込んでいるウイルスはCAR陰性細胞及びCARの発現レベルが低い細胞への感染性が増強されている。従って、これらの新規ペプチドリガンドを組み込んでいる改変ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスを作製することにより、アデノウイルス遺伝子治療/遺伝子ワクチン接種系の活性及び機能性が高まる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。このペプチドリガンドは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)であるような、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する。このコアアミノ酸配列において、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失され得る。固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が、残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と残基位置12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるようなアミノ酸配列からなるものではない。CAR以外の細胞表面結合部位への結合能がある改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスは、アデノウイルスの野生型親和性を拡大する効果を有し、遺伝子治療のためのアデノウイルス系の機能性を広げる。
【0013】
本発明はさらに、残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置2が、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から11が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14が、Xaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)であるような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。前記コアアミノ酸配列から、位置3又は位置12の固定されたCys又は位置2のPhe残基の位置以外の前記配列内のいずれかの位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が、残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。本ペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に、連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0014】
本発明はまた、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9が、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11が、セリン(Ser)残基であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)であるような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対する、ペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスにも関する。前記コアアミノ酸配列から、位置1、2、4から7、13及び14を含む前記配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3から8の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0015】
本発明はさらに、残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置2が、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくは、グリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9が、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11が、セリン(Ser)残基であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)であるような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。前記コアアミノ酸配列から、位置1、4から7、13及び14を含む前記配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3から8の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0016】
本発明はまた、上記で挙げた実施形態のそれぞれにおいて説明したようなコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。このコアアミノ酸配列から、固定された残基位置を除く、前記配列内のいずれかの可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。位置3及び12における固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3から12の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、このペプチドリガンドは、配列番号46で記載されているようなアミノ酸配列からなるものではない。
【0017】
本発明はまた、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスに関する。
【0018】
本発明は、細胞表面結合部位へ該ペプチドリガンドが接近できるように、改変されたアデノウイルスファイバータンパク質のペプチドリガンドが該ファイバータンパク質のいずれかの部分に組み込まれるような、本明細書中で述べるように改変されたファイバータンパク質を含有する組み換えアデノウイルスに関する。ある実施形態において、前記ペプチドリガンドは、ファイバータンパク質ノブの露出したループドメイン内に挿入されており、好ましくはAd5由来であり、これにはAd5ファイバーノブのHIループが含まれるがこれに限定されない。特に、該ペプチドリガンドは、該ファイバーノブのHIループ内Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入される。
【0019】
本発明は、図1で開示されており、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスに関する。
【0020】
本発明はまた、図2で開示されており、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスにも関する。
【0021】
本発明はさらに、図3で開示されており、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスに関する。
【0022】
本発明はまた、改変前にアデノウイルスが第一の血清型であり;改変後に前記第一のアデノウイルス血清型のファイバータンパク質の少なくとも一部が除去されるか、又は第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の同じ又は類似部分で置換されており、第二のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質の前記部分が本明細書中で述べるように改変されている、組み換えアデノウイルスにも関する。前記第一のアデノウイルス血清型から除去したファイバータンパク質の部分を置換するために使用される前記第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の部分は、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有する。従って、本発明のある実施形態は、ファイバータンパク質又はその一部が改変ファイバータンパク質又はその一部で置換されており、ヒト又は非ヒト起源の代替血清型のペプチドリガンドを含有する、組み換えアデノウイルスに関する。この改変アデノウイルスファイバータンパク質がそのノブドメイン内に含有されるペプチドリガンドを含む場合、代替的なアデノウイルス血清型の野生型ノブドメインを置換するために、そのペプチドリガンドを含むノブドメインを使用することができる。特に、本発明は、そのファイバータンパク質のノブドメインが、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有するAd5ファイバーノブのノブドメインで置換されている、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ネコ及び鳥類を含むがこれらに限定されない、ヒト起源又は非ヒト起源のあらゆる血清型の組み換えアデノウイルスに関する。
【0023】
本発明はファイバータンパク質の野生型細胞表面結合がないようにさらに改変された、本明細書中で開示するような改変ファイバータンパク質を含む、組み換えアデノウイルスにも関する。ある実施形態において、本明細書中で開示するような改変Ad5ファイバータンパク質はさらに、該改変タンパク質のCAR結合が起こらないように改変される。Ad5ファイバータンパク質のCAR結合は、本タンパク質のアミノ酸残基489からアミノ酸残基492の欠失を含むがこれに限定されない、該ファイバータンパク質に対する特異的配列改変の結果として除去される。本発明の組み換えアデノウイルスがその野生型細胞表面結合部位に結合する能力がないことは、改変ファイバードメイン内に組み込まれる特定のペプチドリガンドの細胞表面部位を発現する特異的細胞型を組み換えアデノウイルスが標的とすることに役立つ。
【0024】
本発明は、図7に開示されており配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含有し、該改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、組み換えアデノウイルスに関する。
【0025】
本発明はまた、図8に開示されており配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含有し、該改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、組み換えアデノウイルスにも関する。
【0026】
本発明はさらに、図9に開示されており配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含有し、該改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、組み換えアデノウイルスに関する。
【0027】
本発明は、上述の特性を包含するように改変された単離されたアデノウイルスファイバータンパク質に関する。ヒト又は非ヒトアデノウイルスの血清型のいずれか1つを、ファイバータンパク質遺伝子のソースとして使用することができる。改変Ad5ファイバータンパク質を含むがこれに限定されない、本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質は、本明細書で述べるように、そのコード領域内に挿入されているペプチドリガンドを有するファイバータンパク質である。ある実施形態において、本ペプチドリガンドは、HIループドメインを含むがこれに限定されない、ファイバーノブの露出したループドメインに挿入されている。例えば、Ad5ファイバータンパク質のHIループ内に位置するアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に本ペプチドリガンドを挿入することができる。本発明はまた、ある1つのアデノウイルス血清型のファイバータンパク質のノブドメインが、本発明のペプチドリガンドを含有する、代替的なアデノウイルス血清型のノブドメインで置換されている、改変ファイバータンパク質も含む。本明細書で述べるように改変されている単離されたアデノウイルスファイバータンパク質を、この改変タンパク質が結合するであろう治療上意義のある細胞及び組織を同定するためのツールとして使用することができるが、これは前記改変ファイバータンパク質を含有するベクターを用いて形質導入する可能性を意味する。説明するようなこの改変単離アデノウイルスファイバータンパク質はまた、他のある部分を標的受容体に向けさせるために、該部分に結合させ得る「結合決定基」(つまり、ウイルス、タンパク質又はDNA)としても使用することができる。
【0028】
本発明はまた、改変前にファイバータンパク質が第一の血清型のものであり;改変後に前記第一のアデノウイルス血清型のファイバータンパク質の少なくとも一部が除去されており、第二のアデノウイルス血清型の改変ファイバータンパク質の類似部分で置換されている、改変アデノウイルスファイバータンパク質にも関する。前記第一のアデノウイルス血清型から除去された部分を置換するために使用される第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の部分は、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有する。従って、本発明のある実施形態は、本明細書で述べるようなペプチドリガンドを含有する、代替的アデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の一部を含有する、改変アデノウイルスファイバータンパク質に関する。この改変アデノウイルスファイバータンパク質がそのノブドメイン内にペプチドリガンドを含む場合、このペプチドリガンドを含むノブドメインは、代替的アデノウイルス血清型の野生型ノブドメインを置換するために使用することができる。とりわけ、本発明は、そのファイバータンパク質のノブドメインが、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有するAd5ファイバーノブのノブドメインで置換されている、ヒト起源又は非ヒト起源のあらゆる血清型の改変アデノウイルスファイバータンパク質に関する。
【0029】
本発明は、図1に開示されており配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0030】
本発明はまた、図2に開示されており配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質にも関する。
【0031】
本発明はさらに、図3に開示されており配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0032】
本発明はまた、その野生型細胞表面結合部位への結合がなくなるようにさらに改変されている、本明細書中で述べるような改変ファイバータンパク質にも関する。ある実施形態において、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合が除かれている。このAd5ファイバータンパク質のCAR結合は、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含むがこれに限定されない、ファイバータンパク質に対する特異的配列改変の結果として除去される。
【0033】
本発明は、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、図7に開示されており配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0034】
本発明はまた、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、図8に開示されており配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質にも関する。
【0035】
本発明はさらに、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がない、図9に開示されており配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。
【0036】
本発明は、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドリガンドに関する。
【0037】
本発明はまた、配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドリガンドにも関する。
【0038】
本発明はさらに、配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチドリガンドに関する。
【0039】
本発明は、上述の特性を包含する、改変Ad5ファイバータンパク質を含むがこれに限定されない、改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸分子は、1本鎖(コード又は非コード鎖)又は2本鎖であり得る、デオキシリボ核酸分子(DNA)ならびに合成1本鎖ポリヌクレオチド等の合成DNAを含み得る。本発明の単離された核酸分子はまた、リボ核酸分子(RNA)も含み得る。本発明はまた、本明細書を通して開示する単離された核酸分子を含有する、組み換えベクター及び原核及び真核の組み換え宿主、さらに、組み換え宿主細胞における本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現プロセスにも関する。
【0040】
本発明は、図4に開示されており配列番号4に記載のヌクレオチド配列からなる、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0041】
本発明はまた、図5に開示されており配列番号5に記載のヌクレオチド配列からなる、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子にも関する。
【0042】
本発明はさらに、図6に開示されており配列番号6に記載のヌクレオチド配列からなる、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0043】
本発明は、図10に開示されており配列番号10に記載のヌクレオチド配列からなる、CAR結合能を欠く、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0044】
本発明はまた、図11に開示されており配列番号11に記載のヌクレオチド配列からなる、CAR結合能を欠く、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子にも関する。
【0045】
本発明はさらに、図12に開示されており配列番号12に記載のヌクレオチド配列からなる、CAR結合能を欠く、改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子に関する。
【0046】
本発明の他の局面には、E1及びE1活性の半分において少なくとも部分的に欠失があるアデノウイルスベクターを含むがこれに限定されない、本明細書中で述べる改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする核酸分子;該アデノウイルスベクターを含むパッケージング細胞;及び、293細胞又はPER.C6(R)細胞を含むがこれらに限定されない、組み換えアデノウイルスを回収する宿主細胞を含有する、アデノウイルスベクターが含まれる。本発明のある実施形態において、本アデノウイルスベクターはさらに、パッセンジャー導入遺伝子を含む。
【0047】
本発明の別の局面は、各組み換えファージがその外面に、アデノウイルスファイバータンパク質の改変ノブドメインに融合させられたファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する、組み換えファージのファージディスプレイライブラリーである。Ad5ファイバーノブドメインを含むがそれに限定されないこの改変ファイバーノブは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、ペプチドリガンドを含有する。この改変ファイバーノブの部分は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。前記コアアミノ酸配列から、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。前記固定Cys残基の間に位置するそのコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。
【0048】
本発明の別の実施形態は、各組み換えファージがその外面に、図13に図示した様々なペプチドリガンド図のうち少なくとも1つを含有するアデノウイルスファイバーノブに融合させられたファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する、組み換えファージを含むファージディスプレイライブラリーである。従って、改変Ad5ファイバーノブを含むがこれに限定されない改変ファイバーノブが前記ライブラリーに含まれ、その改変ファイバーノブは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。前記コアアミノ酸配列から、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。この実施形態において、このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。
【0049】
上記で挙げたように、本発明のファージディスプレイライブラリーに含有される、Ad5ファイバーノブドメインを含むがそれに限定されない、この改変ファイバーノブの部分は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。本ファージディスプレイライブラリー内に含有されるファイバーノブはさらに、野生型表面結合がないように改変され得る。ある実施形態において、本ファージライブラリーで表示される改変ファイバーノブは、HIループドメインを含むがこれに限定されない、該ノブの露出したループドメイン内に挿入されている、本明細書で述べるようなペプチドリガンドを含む。ある実施形態において、本ペプチドリガンドは、Ad5ファイバータンパク質のファイバーノブ内に位置する、アミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入され得る。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、本明細書中で述べるファージディスプレイライブラリーは、バクテリオファージλ上に表示され、本改変ファイバーノブは、λファージの主要頭部Dタンパク質に融合させられている。本発明のファージディスプレイライブラリーは、アデノウイルスファイバーに組み込まれた場合に、結合特性の変化を保持するペプチドリガンドを同定するために使用される既存のファージディスプレイペプチドライブラリーの限界を乗り越えるが、これは候補ペプチドリガンドが、本ファージディスプレイ系の機能的なファイバーノブ内で発現されるからである。本発明のファージディスプレイ系を用いることにより、本ペプチドリガンドが、このファイバーノブコンテクストにおいてCAR以外に細胞表面結合部位と結合する能力があるか否かを調べる。
【0051】
本発明はさらに、(a)上述した特性を有するファージディスプレイライブラリーを提供することと、(b)CAR陰性又はCAR陽性細胞において前記ライブラリーをスクリーニングすることとを含む、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するための方法に関する。ある実施形態において、本発明のファージディスプレイライブラリーは、CAR陰性のNIH−3T3細胞上でスクリーニングされる。
【0052】
本発明はまた、本明細書中で述べるような組み換えアデノウイルスを用いて細胞及び/又は組織に対して形質導入を行う方法にも関する。細胞/組織に対して形質導入を行うために本明細書中で述べるような組み換えアデノウイルスを用いることにより、アデノウイルス感染性の能力及び効率の両方が向上する。ある実施形態において、これらの方法は、CARの発現がわずかであるか又は全くなく、Ad5感染に対して耐性がある細胞に対して、本発明の組み換えアデノウイルスを用いて形質導入を行うことを含む。本発明の組み換えアデノウイルスを用いて形質導入が行われ得る細胞/組織には、これらに限定されないが、滑膜細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、癌細胞、原発腫瘍、樹状細胞、骨格筋、メラノサイト及びマウスメラノーマ細胞が含まれる。別の実施形態には、マウス又はヒト由来のものを含むがこれらに限定されない未成熟の樹状細胞、ならびにマウス骨格筋及びヒト初代メラノサイトに対して、本発明の組み換えアデノウイルスを用いて形質導入を行う方法が含まれる。
【0053】
「実質的に他の核酸を含まない」とは、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%及びさらにより好ましくは99.9%、他の核酸を含まないことを意味する。交換可能に用いられる場合、「実質的に他の核酸を含まない」、「実質的に精製された」、「単離された核酸」又は「精製された核酸」という用語はまた、他の細胞コンポーネントとは分けて精製された本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質に対するコード領域を含むDNA分子も意味する。従って、実質的に他の核酸がない改変アデノウイルスファイバータンパク質のDNA調製物に含まれる非改変アデノウイルスファイバータンパク質核酸は、非改変アデノウイルスファイバータンパク質核酸を、その全核酸の、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満含有する。例えば、臭化エチジウム染色など適切な染色法と組み合わせたアガロースゲル電気泳動等の核酸の精製度を評価する従来の技術により、又は配列決定により、ある改変アデノウイルスファイバータンパク質のDNA調製物に実質的に他の核酸が含まれているか否かを調べることができる。
【0054】
「実質的に他のタンパク質がない」又は「実質的に精製されている」とは、少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%及びさらにより好ましくは99.9%、他のタンパク質が含まれていないことを意味する。従って実質的に他のタンパク質が含まれていない改変アデノウイルスファイバータンパク質調製物に含まれる非改変アデノウイルスファイバータンパク質は、その全タンパク質の、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満、さらにより好ましくは0.1%未満である。例えば銀染色又はイムノブロッティングなど適切な検出法と組み合わせたドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)等のタンパク質の精製度を評価する従来の技術により、ある改変アデノウイルスファイバータンパク質調製物に実質的に他のタンパク質が含まれているか否かを調べることができる。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「Ad5」とは、アデノウイルス血清型5を意味する。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「CAR」とは、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体を意味する。
【0057】
本明細書中で使用される場合、「Xaa」とは、20種類のアミノ酸残基のいずれかを表す3文字表記を意味する。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「可変アミノ酸残基位置」又は「可変残基位置」とは、20種類のアミノ酸残基のいずれかを含有し得るアミノ酸残基位置を意味する。
【0059】
本明細書中で使用される場合、「結合部分」とは、標的細胞上で分子と結合することができる、アデノウイルスの表面に露出されている分子を意味する。
【0060】
本明細書中で使用される場合、「標的細胞」とは、組み換えアデノウイルスがその結合部分を用いて結合することができる細胞を意味する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、アデノウイルスファイバータンパク質内に組み込まれている「ペプチドリガンド」とは、標的細胞上の細胞表面結合部位への結合能を有する、異種(つまり、そのアデノウイルスファイバータンパク質に一般的に含有されるものではない。)ポリペプチドを意味する。
【0062】
本明細書中で使用される場合、「RGD」とは、連続するArg−Gly−Aspアミノ酸配列を意味する。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」とは、プラスミド、ウイルス(アデノウイルスを含む。)、バクテリオファージ及びコスミドを含むがこれらに限定されない、DNA断片を宿主生物又は宿主組織に導入させることができる、ある手段を意味する。
【0064】
本明細書中で使用される場合、「第一世代」とは、アデノウイルスベクターについて使用される場合、複製欠損のアデノウイルスベクターを言う。第一世代アデノウイルスベクターは一般に、E1遺伝子領域を欠失しているか、又は不活性化されており、好ましくは、E3遺伝子領域を欠失しているか、又は不活性化されている。
【0065】
本明細書中で使用される場合、「パッセンジャー導入遺伝子」は、本発明による、通常ベクターに存在せず、サブクローニングされる、いずれかの遺伝子である(例えば、アデノウイルスベクター)。
【0066】
本明細書中で使用される場合、「wt」とは、野生型を意味する。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「vp」とは、ウイルス粒子を意味する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、「RPE」とは、R−フィコエリスリンを意味する。
【0069】
本発明の詳細な説明
本発明は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する、組み換えアデノウイルスに関する。本改変ファイバータンパク質により、アデノウイルスの親和性を拡大することができ、従って、アデノイルス遺伝子治療系の活性及び機能性が高められる。前記改変ファイバータンパク質のペプチドリガンドは、アミノ酸残基を含有し得る、又は含有しなくてもよい、14個の可能性のある残基位置を表すコアアミノ酸配列を含む。ある実施形態において、コアアミノ酸残基は、位置1、2及び13にXaa残基、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe);位置、3及び12にシステイン(Cys)残基;位置4から11にXaa残基、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val);位置14にXaa残基、好ましくはプロリン(Pro)を含有する。Xaaは、その特定の残基位置に20アミノ酸残基のいずれかが存在し得ることを表す3文字表記である。従って、この実施形態の組み換えアデノウイルスは、14個の可能性のある残基位置のうち、2個の残基位置のみでアミノ酸残基が固定されている(位置3及び12のCys残基)ペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を含有する。この実施形態において変化させることができるアミノ酸残基位置、位置1、2、4から11、13及び14には、好ましい特定のアミノ酸残基がある。しかし、本ペプチドリガンドのアミノ酸配列は、位置3及び12の固定されたCys残基の間のフレキシブルループドメインにおいて連続的なArg−Gly−Asp(RGD)アミノ酸配列を含まない。さらに、本ペプチドリガンドは、配列番号46において開示されているようなアミノ酸配列からなるものではない。
【0070】
本コアアミノ酸配列の可変残基位置におけるアミノ酸の選好性は、本発明のアデノウイルスファイバータンパク質を改変するために使用されるペプチドリガンドのプールが作られる方法の結果生じる。実施例3において全体的に述べるように、かつ図13で示すように、本発明のペプチドリガンドをコードするオリゴヌクレオチドは、レジンスプリット法により合成される。この方法を用いて、所望する長さの特異的なオリゴヌクレオチド配列を作製するために1個のアミノ酸残基をコードする核酸コドンを連続して付加する。例えば、本発明のペプチドリガンドは全て、残基位置3及び12にCys残基を含有し;従って、3番目及び12番目の残基位置をコードするための核酸配列を合成する際、Cysのみをコードするコドンを使用する。特定の残基位置にあらゆるアミノ酸を有する可能性のあるペプチドリガンドを作製するために(つまり、可変残基位置)、特定の残基位置を合成する際、各アミノ酸残基をコードする核酸コドンを利用する。その特定の残基位置を合成する際に、コドンプール内に特定のアミノ酸又はアミノ酸群をコードするコドンの割合を増加させることにより、可変残基位置に、特定のアミノ酸又はアミノ酸群が入りやすくなるようにする。この方法を用いることにより、本発明で述べるペプチドリガンドのコアアミノ酸配列が、特定のアミノ酸を優先させる可変残基位置を含有するように作製される。チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニン残基は、ある一部の位置において好ましいが、それは、これらの芳香環構造が疎水性受容体構造との相互作用を促進するからである。プロリンは、拡張構造を導入する傾向があるので、挿入したペプチドリガンドの接近性を高めるために、本発明リガンドの残基位置14において好ましい。勿論、一般にこのコア配列の中程に位置する残りの可変残基位置(つまり、ペプチドリガンドのループドメイン)について、ループのフレキシビリティを高めるのを促進するアミノ酸が好ましい。つまり、これらの残基位置は、グリシン、セリン及びバリンなど、小さな側鎖を有するアミノ酸を含有することが多くなる。
【0071】
本発明のペプチドリガンドのコアアミノ酸配列において、固定された残基位置を除く、このコア配列内のあらゆる残基位置で1つ又は複数の残基を欠失させ得る。つまり、このコア配列の14個の可能性のある残基位置のいくつかは、アミノ酸残基を含まないであろう。可変アミノ酸残基位置でのみ欠失を起こすことができる(つまり、Xaa残基で表されるもの。)。つまり、本明細書中で述べるように、固定されたアミノ酸残基が残基位置3及び12に位置するCys残基のみである場合、残りの12個の可能性のある残基位置のいずれにおいてもアミノ酸残基が欠失され得る。位置3及び位置12の固定されたCys残基の間にあるコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含むことが好ましい。空のアミノ酸残基位置の数は、オリゴヌクレオチド合成中に各位置でコドンの欠失を導入する頻度に従い変化する。このコア配列内のアミノ酸残基の欠失は、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置の付番方式を変化させない。例えば、固定されたアミノ酸残基が3番及び12番の位置にあるが、位置2のアミノ酸がアミノ酸残基を失うように削除されている場合、この固定されたアミノ酸残基の番号は同じままである。つまり、この例において、固定されたアミノ酸は、残基位置2番及び11番に移動せずに、残基位置3番及び12番に位置する。
【0072】
さらに、本発明は、本ペプチドリガンドコア配列の固定された残基位置の間に最高で10個までのアミノ酸残基を付加させ得ることを意図する。固定された残基は、本コアアミノ酸配列の末端付近に位置し;従ってこの固定された残基の間のアミノ酸残基付加により、本ペプチドリガンド配列のフレキシブルループドメインの長さが延長される。従って、可能な最大のペプチドリガンドの長さは24アミノ酸長である。本コア配列のこの領域にアミノ酸残基を付加した場合、この14個の可能なアミノ酸残基位置の付番は変化しない。例えば、残基位置番号3及び12に固定された残基が位置し、この固定された残基位置の間に2個のアミノ酸残基が付加される場合、固定されたアミノ酸残基の付番は同じままである。つまり、この例において、固定されたアミノ酸は、残基位置番号3及び14に移動せずに、残基位置番号3及び12に位置する。本ペプチドリガンドのループドメイン内に付加された2個のアミノ酸は、プライム「’」記号を用いて付番する。例えば、アミノ酸1個を残基位置4と5との間に付加し、他のものを残基位置7と8との間に付加する場合、2個の新しい付加アミノ酸は、残基位置4プライム(4’)及び7プライム(7’)でそれぞれ含有されることになる。このループドメイン内に位置するアミノ酸残基位置に複数のアミノ酸を付加することができる。
【0073】
本発明はさらに、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のうち3個が特定のアミノ酸残基に固定されているような、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスに関する。この実施形態において、残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置2が、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から11が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14が、Xaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)である。つまり、固定されたアミノ酸残基位置は、位置2,3及び12に位置し、それぞれPhe、Cys及びCys残基を含有する。可変残基位置に位置する好ましいアミノ酸残基を含む、この実施形態のコアアミノ酸配列は、前の実施形態に述べたようにして作製される。本コアアミノ酸配列から、可変アミノ酸残基位置において(つまり、位置2、3又は12以外の全ての残基位置)1つ又は複数の残基が欠失され得る。固定されたCys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域が少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。最高で10個までのアミノ酸残基の付加は、本実施形態のペプチドリガンドのフレキシブルループドメイン内で許容され得る。ループドメインは、位置3と12の固定されたCys残基の間に位置し、従って最高で10個までのアミノ酸残基が、前記アミノ酸残基位置の間に付加され得る。本明細書で述べるように、このコアアミノ酸配列内のアミノ酸残基の付番は、本コア配列に対するアミノ酸欠失及び/又は付加が起こった場合も同じままである。本ペプチドリガンドのアミノ酸配列は、本実施形態の固定されたCys残基間に位置するフレキシブルループドメインに、連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0074】
本発明はまた、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のうち6個が特定のアミノ酸残基に固定されているような14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスにも関する。この実施形態において、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12が、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9が、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11が、セリン(Ser)残基であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である。前の実施形態において、本ペプチドリガンドのフレキシブルループドメインを構成する8個の可能性のあるアミノ酸残基それぞれ(つまり、残基位置4から11にわたり、4と11を含む。)は、Xaa残基を含有し、好ましくは、Gly、Ser又はVal残基である。この実施形態において、フレキシブルループドメインの8個の可能性のあるアミノ酸残基のうち4個が固定されており:位置8及び9がGly残基であり、位置10及び11がSer残基である。本コアアミノ酸配列において、残基位置1、2、4から7、13及び14を含む配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基の位置3と8とに位置する固定された残基位置の間に付加され得る。残基位置8から11におけるフレキシブルループドメイン内に位置する固定されたアミノ酸残基は、4個の連続的なアミノ酸として残り、付加的なアミノ酸の挿入により分離されることはない。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と8とに位置する固定された残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0075】
本発明はさらに、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のうち7個が特定のアミノ酸残基に固定されているような、14個の可能性のある残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む、改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスに関する。この実施形態において、残基位置1及び13はXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;位置2は、フェニルアラニン(Phe)残基であり;残基位置3及び12は、システイン(Cys)残基であり;残基位置4から7は、Xaa残基であり、好ましくは、グリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置8及び9は、グリシン(Gly)残基であり;残基位置10及び11は、セリン(Ser)残基であり;残基位置14はXaa残基であり、好ましくは、プロリン(Pro)である。前の実施形態と同様に、本ペプチドリガンドのフレキシブルループドメイン内に位置する8個の可能性のあるアミノ酸残基のうち4個が固定されており、位置8及び9がGly残基であり位置10及び11がSer残基である。この実施形態において、本ペプチドリガンドのコアアミノ酸配列は、残基位置2に、Phe残基を含有する、1個の付加的な固定されたアミノ酸を含有し得る。本コアアミノ酸配列において、残基位置1、4から7、13及び14を含む配列内の可変残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基の位置3と8との固定された残基位置の間に付加され得る。残基位置8から11におけるフレキシブルループドメイン内に位置する固定されたアミノ酸残基は、4個の連続的なアミノ酸として残り、付加的なアミノ酸の挿入により分離されることはない。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と8とに位置する固定された残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有しない。
【0076】
本発明はまた、CAR以外の細胞表面結合部位に対する、FCVASRGGSSCY(配列番号13)、FCKVVGGGSSCSP(配列番号14)及びFFCVSDGGGSSCP(配列番号15)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含有するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有する組み換えアデノウイルスにも関する。
【0077】
本発明はまた、改変前にアデノウイルスが第一の血清型であり;改変後に前記第一のアデノイルス血清型のファイバータンパク質の少なくとも一部が除去されるか、又は第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の同じ又は類似部分で置換されており、第二のアデノウイルス由来の血清型ファイバータンパク質の前記部分が本明細書中で述べるように改変されている、組み換えアデノウイルスにも関する。前記第一のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質から除去した部分を置換するために使用される前記第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の部分は、本明細書中で述べるようなペプチドリガンドを含有する。この文脈において、「第二のアデノウイルス血清型由来のファイバータンパク質の同じ又は類似の部分」とは、前記第一のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質から除去した部分を置換するために使用される前記第二のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質の部分が、第一のアデノウイルス血清型ファイバータンパク質由来の除去部分とほぼ同じサイズであり、ほほ同じタンパク質ドメインからなることを意味する。従って、本発明のある実施形態は、ファイバータンパク質が代替的な血清型の改変ファイバータンパク質により置換されている、組み換えアデノウイルスに関する。別の実施形態において、改変アデノウイルスファイバータンパク質が、あるアデノウイルス血清型由来のそのノブドメイン内に含有されるペプチドリガンドを含む場合(本明細書中でさらに述べるように)、このペプチドリガンドを含むノブドメインは、適切なファイバー三量体化が維持される限りは、代替的なアデノウイルス血清型の野生型ノブドメインを置換するために使用することができる。とりわけ、本発明は、そのアデノウイルスのノブドメインが、本明細書で述べるような改変Ad5ファイバーノブのノブドメインで置換されている、ヒト起源又は非ヒト起源のあらゆる血清型の組み換えアデノウイルスに関する。例えば、本明細書中で述べるようなキメラファイバータンパク質をコードするキメラウイルスゲノムを含有する組み換えアデノウイルスは、個別のウイルスベクターの再投与において存在し得る宿主の中和反応の抑制又は軽減を促進するための、遺伝子治療/遺伝子ワクチン接種のプライムブースト法において有用となろう。
【0078】
本発明はさらに、アデノウイルスの生来の親和性を除去するためにさらに改変されている改変アデノウイルスファイバータンパク質を含有する組み換えアデノウイルスに関する。本発明はまた、上述のようにさらに改変される改変アデノウイルスファイバータンパク質にも関する。例えば、本明細書中で開示されている何らかの改変CAR認識アデノウイルスファイバータンパク質はさらに、その改変タンパク質のCAR結合がなくなるように改変され得る。アデノウイルスファイバータンパク質のCAR結合は、Roelvinkら、1999、Science286:1568−1571(参照により、本明細書中に組み込まれる。。)で述べられているような特異的な配列改変の結果としてなくすことができる。本発明のある実施形態において、本発明の改変Ad5ファイバータンパク質は、このファイバータンパク質のアミノ酸残基489からアミノ酸残基492に位置する4個のアミノ酸配列TAYT(配列番号45)の欠失によりCAR結合をなくすようにさらに改変される。本発明の組み換えアデノウイルスのその野生型細胞表面結合部位、例えばAd5に対するCAR、への結合能の不活性化により、組み換えアデノウイルスが、本改変ファイバードメイン内に組み込まれた特定のペプチドリガンドの細胞表面結合部位を発現する特異的な細胞型を標的とすることを容易にするであろう。
【0079】
本発明の組み換えアデノウイルス内に含有される単離されたアデノウイルスファイバータンパク質を以下に説明する。本明細書中で述べるように改変されている単離されたアデノウイルスファイバータンパク質は、前記改変タンパク質を含む組み換えアデノウイルスが結合し、その内容物を形質導入するであろう治療上意義のある細胞及び組織を同定するためのツールとして使用することができる。本明細書中で述べるようなこの改変単離アデノウイルスファイバータンパク質はまた、他のある部分(つまり、ウイルス、タンパク質又はDNA)を標的受容体に向けさせるために、該部分に結合させ得る「結合決定基」としても使用することができる。ヒト又は非ヒトアデノウイルスの血清型のいずれか1つを、ファイバータンパク質遺伝子のソースとして使用することができる。本発明のある実施形態において、本ファイバータンパク質遺伝子のソースは、Ad5である。本ファイバータンパク質は、野生型アデノウイルスから単離したようなタンパク質(つまり、ネイティブタンパク質又は野生型タンパク質を含む。)において通常見られないアミノ酸残基を含むように、改変されている。これらの非野生型アミノ酸残基は、細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを表す配列を含む。非野生型アミノ酸残基は、好ましくは、遺伝子発現のレベルで本ファイバータンパク質に導入される(つまり、ペプチドリガンドをコードする核酸配列の導入による。)。
【0080】
本発明のペプチドリガンドは、本明細書の中で詳細を述べるようにアミノ酸残基が付加又は欠失され得る14個の可能性のあるアミノ酸残基位置のコアアミノ酸配列を含む。この配列は、結果として生じる改変アデノウイルスファイバータンパク質を含む、組み換えアデノウイルスに、CAR以外、及びCARに加えての、細胞に対する細胞表面結合部位を介した結合能を与える。これにより、野生型アデノウイルスと比較して、組み換えアデノウイルスの親和性が拡大される。アデノウイルスファイバータンパク質及びペプチドリガンドは、このペプチドリガンドをコードするオリゴヌクレオチドを、本ファイバータンパク質をコードする遺伝子内に挿入できるようにするための、適合する新規の制限部位を含むように操作され得る。このために、核酸レベルにおいて、ファイバータンパク質へのペプチドリガンドアミノ酸配列の挿入を行うことができる。
【0081】
細胞表面結合部位は、本明細書中で述べるような改変アデノウイルスファイバータンパク質に対する結合部分を含み、受容体(つまり、タンパク質、糖質、糖タンパク質又はプロテオグリカン)、何らかの逆の電荷を有する分子(つまり、その改変ファイバータンパク質に関して逆の電荷を有する。)又は、その改変ファイバータンパク質が結合でき、それにより細胞侵入が促進される他のタイプの細胞表面分子を包含する。本発明の改変ファイバータンパク質及びそれらの使用方法は、細胞相互作用の何らかの特定のメカニズム(つまり、特定の細胞表面結合部位との相互作用)に限定されず、そのように解釈されるものではない。本発明による細胞表面結合部位は、野生型アデノウイルスファイバータンパク質との相互作用のために今までは使用できなかった、又は非常に低いレベルでしか使用できなかった部位である。つまり、ペプチドリガンド挿入の結果としての、改変されたアデノウイルスファイバータンパク質は、野生型ファイバータンパク質が結合しない、又は非常に結合親和性が低い、細胞表面に存在する結合部位と相互作用することができる。これは、ベクターの細胞への侵入効率を上げる、ならびに特異性を上げ、アデノウイルスが標的とする範囲を拡大する効果を有する。
【0082】
改変Ad5ファイバータンパク質を含むがこれに限定されない、本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質は、本明細書中で述べるようにファイバータンパク質内に挿入されるペプチドリガンドを含む。本改変ファイバータンパク質のペプチドリガンドは、このペプチドリガンドが細胞表面結合部位に接近できるようにする本ファイバータンパク質のいずれかの部分内に組み込まれる。Ad5ファイバーノブの結晶構造が述べられている(Xiaら、1994、Structure 2:1259−1270を参照。)。本ファイバーノブ単量体は、8本の逆平行βサンドイッチフォールド(sandwich fold)からなり;ファイバーノブ三量体の全体的な構造は、その羽根の面を含む3つの単量体それぞれの一定のβ鎖を有する、3枚羽根のプロペラに類似している。そのファイバーノブの35%のみがβ鎖を含む。とりわけ、Ad5ファイバーノブの次の残基は、β−サンドイッチモチーフにおける水素結合に重要であると思われる:400−402、419−428、431−440、454−461、479−482、485−486、516−521、529−536、550−557及び573−578。単量体配列の残りの65%は、そのβ鎖を連結するターン及びループからなる。Ad5ファイバーノブ単量体の6個の突出したループは、本ファイバータンパク質二次構造の形成において重要ではないと思われる。とりわけ、403−418の両端を含む残基は、ABループを含み、441−453の両端を含む残基は、CDループを含み、487−514の両端を含む残基は、DGループを含み、522−528の両端を含む残基は、GHループを含み、537−549の両端を含む残基は、HIループを含み、558−572の両端を含む残基は、IJループを含む。
【0083】
本ファイバータンパク質内のペプチドリガンドの付加により細胞標的化のための利用可能な結合部分が作り出されなければならないのと同時に、本ファイバータンパク質の三量体化能が妨害されてはならない。従って、少なくとも本ノブにおける分子内相互作用に関与する露出されたループドメイン内のペプチドリガンドの挿入が好ましい。つまり、本発明のある実施形態において、本ペプチドリガンドは、アデノウイルスファイバーノブの露出されたループドメイン内に挿入される。そのようなループがAd5配列に関して本明細書中で定義されると同時に、他のファイバーノブ種の配列アラインメントが述べられている(Xia、Dら、前出、を参照。)。タンパク質の結合/折り畳みに重要な本ファイバーノブにおける対応する残基は、様々なアデノウイルス血清型のファイバータンパク質間で保存されていると思われる。このことから、ファイバータンパク質の結晶構造が分からないそれらのアデノウイルス種に対してでさえ、これらの保存残基の外側には、非保存領域又はタンパク質の機能性に重要な残基に対して見られる高レベルの保存性を示さない領域があることが示唆される。これらの非保存領域における本ファイバータンパク質の配列は、このタンパク質のこれらの領域において重要な分子内相互作用がないため、ループとして存在すると思われる。
【0084】
本発明のペプチドリガンドを挿入することができるファイバーノブループは、AB、CD、DG、GH、HI及びIJループからなる群から選択される。Ad5において、これらのループは、それぞれ残基403−418、441−453、487−514、522−528、537−549及び558−572からなる群より選択されるアミノ酸残基を含む。本発明のある実施形態において、ペプチドリガンドは、Ad5ファイバーノブを含むがこれに限定されない、アデノウイルスファイバーノブのHIループ内に挿入される。Ad5において、HIループは、それぞれが親水性である、13個のアミノ酸残基を含み、そのノブの外側に露出されている。このHIループは、非常に高いフレキシビリティを示すので、異種リガンドを組み込むのに最適な位置であることが示されている。また、様々なアデノウイルス血清型においてHIループの長さが様々であることから、この元のループ構造における変更が、このノブドメインの適切な折り畳みに影響を与えることなく受容されるであろうことが示唆される。本発明において、細胞表面結合部位に対する本ペプチドリガンドは、内因性のファイバータンパク質配列を除去することなく、本ファイバータンパク質内に、好ましくはこのファイバーノブのループドメイン内に、組み込むことができる。
【0085】
あるいは、そのタンパク質の正常な機能を妨害することなく、アデノウイルスファイバータンパク質のタンパク質配列部分のかわりに本ペプチドリガンドを置き換えることができる。本発明のある実施形態において、及び本明細書中の実施例のセクションで例示するように、本ペプチドリガンドは、本ファイバーノブのHIループ内のAd5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入することができる。この異種アミノ酸配列は、好ましくは、本ファイバータンパク質の核酸レベルで導入される。本ファイバータンパク質においてペプチドリガンドが存在することで、組み換えアデノウイルスがCAR非依存性遺伝子導入を達成できるようになる。
【0086】
本発明の改変ファイバータンパク質が適切な三量体形成を維持することは標的細胞相互作用を支えるために重要である。三量体形成は、ワクシニア発現系を用いて評価することができる。全体的に、Falkner,1988,J.Virol.62:1849−1854により述べられている、組み換えワクシニアウイルスベクター、pTKgpt−3Sを使用して、アデノウイルスの残りの部分から単離した状態の改変アデノウイルスファイバータンパク質を生成させることができる。このベクターは、本ファイバータンパク質に対する都合の良いクローニング部位を有し、アデノウイルスファイバー遺伝子を含有する組み換えワクシニアウイルスに対する選択可能なマーカーとしてE.コリgpt遺伝子を含む。ファイバータンパク質はまた、Fuerstら、1986、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8122−8126により述べられている、2ウイルスバクテリオファージT7RNAポリメラーゼ法を用いて、組み換えワクシニアウイルスでも発現されている。組み換えレトロウイルスなど、他の真核発現ベクターもまた、三量体化の機能テストを行うのに十分な量の正常にグリコシル化されたファイバータンパク質を産生させるために使用することができる。このワクシニアで産生されたファイバータンパク質は、そのタンパク質の単量体と三量体とを区別することができるモノクローナル抗体と組み合わせたウエスタンブロット分析を用いて、三量体化について容易に試験することができる。そのような2種類のモノクローナル抗体、抗体4D2.5と抗体2A6.36の特性は、Hong及びEngler、1991、Virology 185:758−767により調べられている。Hong及びEnglerにより述べられているように、標準的技術を用いて、他の抗体を作製することができる。これらの抗体を用いて、ウエスタンブロット及び間接的免疫蛍光法の両方により、本改変ファイバーの構造に関する情報を得ることができる。
【0087】
本改変ファイバータンパク質の標的細胞への結合は、標準的技術を用いて調べることができる。例えば、本改変ファイバータンパク質を含有する本組み換えアデノウイルスを放射性標識して、細胞に添加し、インキュベーションすることができる。非結合ウイルスを洗い去り、その細胞に結合した放射活性量を測定する。あるいは、既知のウイルスタイターを用いて、本改変ファイバータンパク質を含む組み換えウイルスを細胞に感染させることができる。次に、細胞変性アッセイにより、細胞溶解を調べることができる。そのウイルスが結合する細胞のみが感染を起こし得、その結果細胞死に至る。
【0088】
本発明は、ある部分、図1に開示されており、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスに関する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号1のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質である。配列番号1(Ad5fiber−L1タンパク質)は、配列番号13で開示されるアミノ酸配列からなるL1ペプチドリガンドがアミノ酸残基546と547の間のファイバーノブのHIループ内に挿入されている、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。配列番号1は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、L1ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0089】
【化1】
【0090】
本発明はまた、ある部分、図2に開示されており、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスにも関する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号2のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質である。配列番号2(Ad5fiber−L16タンパク質)は、配列番号14で開示されるアミノ酸配列からなるL16ペプチドリガンドがアミノ酸残基546と547の間のファイバーノブのHIループ内に挿入されている、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。配列番号2は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、L16ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0091】
【化2】
【0092】
本発明はまた、ある部分、図3に開示されており、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる改変Ad5ファイバータンパク質を含む組み換えアデノウイルスにも関する。本発明のさらなる実施形態は、配列番号3のアミノ酸配列からなる単離されたAd5ファイバータンパク質である。配列番号3(Ad5fiber−L33タンパク質)は、配列番号15で開示されるアミノ酸配列からなるL33ペプチドリガンドがアミノ酸残基546と547の間の本ファイバーノブのHIループ内に挿入されている、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。配列番号3は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、L33ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0093】
【化3】
【0094】
本発明は、以下で開示される:
FCVASRGGSSCYである、
配列番号13に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチド(L1ペプチドリガンド)に関する。
【0095】
本発明はまた、以下で開示される:
FCKVVGGGSSCSPである、
配列番号14に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチド(L16ペプチドリガンド)にも関する。
【0096】
本発明はさらに、以下で開示される:
FFCVSDGGGSSCPである、
配列番号15に記載のアミノ酸配列からなる単離されたペプチド(L33ペプチドリガンド)に関する。
【0097】
本発明はまた、その野生型細胞表面結合部位への結合をなくすようにさらに改変されている、本発明で開示されるような改変ファイバータンパク質にも関する。CARは、多くの、しかし全てではない、アデノウイルス血清型にとって、主要な細胞表面結合部位である。ある実施形態において、改変Ad5ファイバータンパク質の野生型CAR結合がなくなっている。アデノウイルスのその野生型受容体(例えば、多くのアデノウイルス血清型にとってはCAR)への結合能をなくした場合、ウイルス増幅のための、そのウイルスキャプシドとE1発現細胞株において発現される受容体との間の代替的及び効果的な相互作用の存在が必要である。Ad5ファイバータンパク質のCAR結合は、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までを含むがこれに限定されない、そのファイバータンパク質に対する特異的な配列改変により除かれる。
【0098】
本発明は、ある部分、図7に開示されており配列番号7に記載のアミノ酸配列からなる、単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。配列番号7(Ad5 fiberΔ−L1タンパク質)は、CAR結合を失わせる、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489−492からのアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失があるAd5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。さらに、L1ペプチド(配列番号13)は、アミノ酸546と547との間の、ファイバーノブのHIループに挿入されている。配列番号7は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、欠失に隣接するアミノ酸には二重線を付し、L1ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0099】
【化4】
【0100】
本発明は、ある部分、図8に開示されており配列番号8に記載のアミノ酸配列からなる、単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。配列番号8(Ad5 fiberΔ−L16タンパク質)は、CAR結合を失わせる、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489−492からのアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失があるAf5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。さらに、L16ペプチド(配列番号14)は、アミノ酸546と547との間の、ファイバーノブのHIループに挿入されている。配列番号8は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、欠失に隣接するアミノ酸には二重線を付し、L16ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0101】
【化5】
【0102】
本発明はまた、ある部分、図9に開示されており配列番号9に記載のアミノ酸配列からなる、単離されたAd5ファイバータンパク質に関する。配列番号9(Ad5 fiberΔ−L33タンパク質)は、CAR結合を失わせる、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489−492からのアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失があるAf5ファイバータンパク質のアミノ酸配列を表す。さらに、L33ペプチド(配列番号15)は、アミノ酸546と547との間の、ファイバーノブのHIループに挿入されている。配列番号9は以下のとおりであり、配列中、ノブドメインには下線を付し、欠失に隣接するアミノ酸には二重線を付し、L33ペプチドリガンド配列は斜字体で示し、本ペプチドリガンド挿入を容易にするため、及び野生型配列を維持するために野生型Ad5ファイバー配列に付加した残基は、小文字で示す:
【0103】
【化6】
【0104】
異種ペプチドリガンド配列は、好ましくは、核酸レベルでファイバータンパク質内に挿入されることとなろう。従って、本発明はさらに、本明細書中で述べた特性を有するいずれかの改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子に関する。本発明の単離された核酸分子は、1本鎖(コード又は非コード鎖)又は2本鎖であり得る、デオキシリボ核酸分子(DNA)ならびに合成1本鎖ポリヌクレオチド等の合成DNAを含み得る。本発明の単離された核酸分子はまた、リボ核酸分子(RNA)も含み得る。本発明の別の局面はまた、本明細書を通して開示する改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする単離された核酸分子を含有する、組み換えベクター及び、原核及び真核生物の組み換え宿主、さらに、組み換え宿主細胞において本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるプロセスにも関する。
【0105】
本発明によると、本発明で開示するような改変ファイバータンパク質を生成する手段、特に異種ペプチドリガンド配列をDNAレベルで導入する手段は、本分野で周知であり、分子生物学、微生物学及び組み換えDNA技術を使用し得る。このような技術は、文献において詳しく説明されている。例えばSambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと。本発明の核酸分子は、実質的に他の核酸分子が混ざっていない。
【0106】
特異的血清型の野生型アデノウイルスファイバータンパク質をクローニングするために、あらゆる様々な手段を使用し得る。これらの方法には、(1)RACE PCRクローニング技術(Frohmanら、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8998−9002)。全長cDNA配列を生成させるために5’及び/又は3’RACEを行い得る。このストラテジーには、アデノウイルスファイバータンパク質 cDNAのPCR増幅のために遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーを使用することが含まれる。これらの遺伝子特異的プライマーは、公開されている核酸及びタンパク質データベースのいくつかを検索することにより、アデノウイルスファイバータンパク質配列の同定を通して設計される;(2)適切な発現ベクター系におけるアデノウイルスファイバータンパク質含有cDNAライブラリーの構築後のアデノウイルスファイバータンパク質 cDNAの直接的機能発現;(3)アデノウイルスファイバータンパク質のアミノ酸配列から設計した標識変性オリゴヌクレオチドプローブを用いた、バクテリオファージ又はプラスミドシャトルベクターにおいて構築したアデノウイルスファイバータンパク質含有cDNAライブラリーのスクリーニング;(4)アデノウイルスファイバータンパク質をコードする部分的cDNAを用いた、バクテリオファージ又はプラスミドシャトルベクターにおいて構築したアデノウイルスファイバータンパク質含有cDNAライブラリーのスクリーニング。この部分的cDNAは、様々な血清型の様々なアデノウイルスファイバータンパク質に対して知られているアミノ酸配列からの変性オリゴヌクレオチドプライマーの設計を介した、アデノウイルスファイバータンパク質DNA断片の特異的PCR増幅により得られる;又は(5)特異的アデノウイルスタンパク質をコードするヌクレオチド配列の全長バージョンを単離するために、全長cDNAが既知のRACE技術により生成され得るように、又は、多くのタイプのcDNA及び/又はゲノムライブラリーの1つに対するスクリーニング用のプローブとして使用するためのコード領域の部分を生成させ単離するためにコード領域の一部がこれらの同じ既知のRACE技術により生成され得るように、テンプレートとして配列番号4−6内に位置する野生型Ad5配列を用いて、Ad5ファイバータンパク質のクローニング用の、5’及び3’遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを設計すること、が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
野生型アデノウイルスファイバータンパク質を単離した後、今回改変するアデノウイルスが、野生型タンパク質が持っていない結合部分を含有するように、本ペプチドリガンドをファイバータンパク質とともに挿入する。本ペプチドリガンドを、アデノウイルスファイバータンパク質配列の部分に挿入するか、又はこれで置換することができる。このような改変ファイバータンパク質を調製する方法は、以下の実施例セクションで説明する。一般に、その方法は、野生型ファイバータンパク質のタンパク質配列内、好ましくはそのファイバーノブのループ内に、本ペプチドリガンドを挿入するための、アデノウイルスファイバータンパク質をコードする核酸配列への、異種ペプチドリガンドをコードするオリゴヌクレオチド配列の導入を含む。プラスミド又は配列の操作を容易にするための他のベクターに、野生型ファイバータンパク質をコードする核酸配列をクローニングすることにより、これを遂行することができる。次に、さらなる配列、例えばペプチドリガンドDNA配列をファイバーDNA配列に挿入できる部位を作るために、このファイバータンパク質に1つ又は2つのユニークな制限部位を付加することができる。異種ペプチドリガンドをコードする2本鎖合成オリゴヌクレオチドは一般に、合成1本鎖センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを重複させることにより作製する。得られる2本鎖オリゴヌクレオチドは、そのファイバー遺伝子DNAに既に組み込まれているユニークな制限部位に対して相補的である隣接制限部位を含有する。そのプラスミド又は他のベクターを適切な制限酵素で切断し、適合する粘着末端を有するオリゴヌクレオチド配列をそのプラスミド又は他のベクターにライゲーションし、野生型DNAに付加するか、又はそれを置換する。ペプチドリガンド配列を本アデノウイルスファイバータンパク質コード配列に導入するために、市販のキットにより、当業者にとって公知の他のインビトロ部位特異的突然変異の手段を使用することができる(とりわけ、PCRを使用して)。
【0108】
本発明は、図1(配列番号1;Ad5 fiber−L1)で述べられている改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、図4(Ad5 fiber−L1 DNA)で述べられ、配列番号4に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。Ad5 fiber−L1のヌクレオチド配列は、以下のとおりであり、配列中、ノブには下線を付し、L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で示し、L1をコードするヌクレオチド配列の本ファイバー配列への挿入を容易にするために操作した制限部位を示す付加的配列変化は、小文字で示す:
【0109】
【化7】
【0110】
本発明はまた、図2(配列番号2;Ad5 fiber−L16)で述べられている改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、図5(Ad5 fiber−L16 DNA)で述べられ、配列番号5に記載の、単離又は精製された核酸分子にも関する。Ad5 fiber−L16のヌクレオチド配列は、以下のとおりであり、配列中、ノブには下線を付し、L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で示し、L16をコードするヌクレオチド配列の本ファイバー配列への挿入を容易にするために操作した制限部位を示す付加的配列変化は、小文字で示す:
【0111】
【化8】
【0112】
本発明はさらに、図3(配列番号3;Ad5 fiber−L33)で述べられている改変Ad5ファイバータンパク質をコードする、図6(Ad5 fiber−L33 DNA)で述べられ、配列番号6に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。Ad5 fiber−L33のヌクレオチド配列は、以下のとおりであり、配列中、ノブには下線を付し、L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で示し、L33をコードするヌクレオチド配列の本ファイバー配列への挿入を容易にするために操作した制限部位を示す付加的配列変化は、小文字で示す:
【0113】
【化9】
【0114】
本発明は、図7に開示されており配列番号7に記載されているような、本発明のAd5 fiberΔ−L1タンパク質をコードする、図10(Ad5 fiberΔ−L1 DNA)で述べられ、配列番号10に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。この配列では、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476
【0115】
【化10】
【0116】
が欠失している。このヌクレオチド欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCARへの結合をなくす、本明細書中で述べた、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に相当する。さらに、この配列は、ファイバーノブのHIループ内のL1ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。Ad 5fiberΔ−L1のヌクレオチド配列は、次のとおりであり、配列中、ノブに下線を付し、欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付し、L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表し、L1をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために、及び野生型配列を維持するための操作した制限部位を意味する付加的な配列変化は、小文字で表す:
【0117】
【化11】
【0118】
本発明はまた、図8に開示され配列番号8に記載されているような、本発明のAd5 fiberΔ−L16タンパク質をコードする、図11(Ad5fiberΔ−L16 DNA)で述べられ、配列番号11に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。この配列では、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476
【0119】
【化12】
【0120】
が欠失している。このヌクレオチド欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCARへの結合をなくす、本明細書中で述べた、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に相当する。さらに、この配列は、ファイバーノブのHIループ内のL16ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。Ad5 fiberΔ−L16のヌクレオチド配列は、次のとおりであり、配列中、ノブに下線を付し、欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付し、L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表し、L16をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために、及び野生型配列を維持するための操作した制限部位を意味する付加的な配列変化は、小文字で表す:
【0121】
【化13】
【0122】
本発明はさらに、図9に開示され配列番号9に記載されているような、本発明のAd5 fiberΔ−L33タンパク質をコードする、図12(Ad5 fiberΔ−L33 DNA)で述べられ、配列番号12に記載の、単離又は精製された核酸分子に関する。この配列では、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476
【0123】
【化14】
【0124】
が欠失している。このヌクレオチド欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCARへの結合をなくす、本明細書中で述べた、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に相当する。さらに、この配列は、ファイバーノブのHIループ内のL33ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。Ad5 fiberΔ−L33のヌクレオチド配列は、次のとおりであり、配列中、ノブに下線を付し、欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付し、L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表し、L33をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために、及び野生型配列を維持するための操作した制限部位を意味する付加的な配列変化は、小文字で表す:
【0125】
【化15】
【0126】
遺伝暗号の縮重は、2つのアミノ酸を除く全てに対して、複数のコドンが特定のアミノ酸をコードすることである。これにより、合成又は組み換えDNAのヌクレオチド配列が、配列番号4−6のヌクレオチド配列と著しく異なるが、同じ配列番号1−3の改変Ad5ファイバータンパク質をそれぞれコードするという、本発明の特異的な改変Ad5ファイバータンパク質をコードする合成又は組み換えDNAの構築が可能となる。そのような合成又は組み換えDNAは、本発明の範囲内にあるものである。特定の宿主細胞又は生物においてそのような合成又は組み換えDNAを発現させたい場合、その特定の宿主のコドン利用を反映するように、つまり、その宿主において改変Ad5ファイバータンパク質の発現レベルを高くするように、そのような合成又は組み換えDNAのコドン利用を調整し得る。言い換えると、特定のアミノ酸をコードする様々なコドンにおけるこの冗長性は、本発明の範囲内である。従って、本発明は、同一のタンパク質を発現するDNA分子が異なり得るというコドン縮重を開示する。
【0127】
本発明において使用される場合、「精製された」及び「単離された」は、これらに限定されないがヌクレオチド配列決定、制限酵素消化、部位特異的突然変異及び核酸断片の発現ベクターへのサブクローニング、ならびに、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体生成、アミノ酸配列決定及びペプチド消化を行う機会を得られるような純粋な量においてタンパク質又はタンパク質断片を得ることなど、当業者により操作され得るように、問題となる核酸、タンパク質又はそれらの個別の断片が実質的にそのインビボ環境から離されているという事柄を表すために、交換可能に使用される。従って、本明細書で主張する核酸は、全細胞又は細胞溶解液又は部分的に精製された、又は実質的に精製された形で存在し得る。核酸は、周囲の混入物質から離されている場合、実質的に精製されているとみなす。つまり、細胞から単離された核酸配列は、標準的方法により細胞性成分から精製されている場合、実質的に精製されているとみなし、同時に、化学的に合成された核酸配列は、その化学的前駆体から離されている場合、実質的に精製されているとみなす。
【0128】
本発明はさらに、本明細書を通じて開示される実質的に精製された核酸分子を含む組み換えベクターに関する。これらのベクターは、DNA又はRNAから構成され得る。大多数のクローニング目的にとって、DNAベクターが好ましい。一般的なベクターには、プラスミド、改変ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体及び、改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードし得るエピソーム性又は統合DNA(integrated DNA)の他の形が含まれる。特定の遺伝子導入又は他の用途に対する適切なベクターを決定することは、当業者の範囲内である。
【0129】
適切なプロモーター及び他の適切な転写制御因子を含有する発現ベクター(pcDNA3.neo、pcDNA3.1、pCR2.1、pBlueBacHis2又はLITMUS28など)へ分子クローニングし、組み換え改変アデノウイルスファイバータンパク質を産生させるために原核又は真核宿主細胞に導入することにより、上述の方法により得られた改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードするクローニング核酸を組み換え発現させ得る。発現ベクターは、本明細書中において、適切な宿主におけるクローニングしたDNAの転写及びそれらのmRNAの翻訳に必要なDNA配列として定義する。そのようなベクターは、細菌、藍藻類、植物細胞、昆虫細胞及び哺乳類細胞などの様々な組み換え宿主細胞においてDNAを発現させるために使用し得る。適切に構築された発現ベクターは、宿主細胞における自己複製のための複製起点、選択可能なマーカー、限定数の有用な制限酵素部位、大量コピー能力及び活性のあるプロモーターを含有する。プロモーターは、RNAポリメラーゼを高頻度でDNAに結合させ、RNA合成を開始させるように導くDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、mRNAを高頻度で開始させるものである。最適なレベルの改変アデノウイルスファイバータンパク質を生じさせるDNA配列を決定する方法は、本分野において周知である。最適な発現を生じるDNAカセットの決定後、この改変アデノウイルスファイバータンパク質核酸コンストラクトを、哺乳類細胞、植物細胞、昆虫細胞、卵母細胞、細菌及び酵母細胞のためのものを含むがこれらに限定されない様々な発現ベクター(組み換えウイルスを含む。)に導入する。
【0130】
従って、本発明の別の局面には、本発明の改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードするDNA配列を含有する及び/又は発現するように操作されている宿主細胞が含まれる。組み換えホスト細胞は、原核性又は真核性であり得、E.コリなどの細菌、酵母などの真菌細胞、ウシ、ブタ、サル及びげっ歯類由来の細胞株を含むがこれらに限定されない哺乳類細胞;及びハエ及びカイコ由来の細胞株を含むがこれらに限定されない昆虫細胞を含むがこれらに限定されない。このような組み換え宿主細胞は、改変アデノウイルスファイバータンパク質を産生させるのに適切な条件下で培養することができる。形質転換、トランスフェクション、原形質融合及びエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない数ある技術のいずれか1つにより宿主細胞に発現ベクターを導入し得る。改変アデノウイルスファイバータンパク質を産生するか否かを調べるために、この発現ベクター含有細胞を個別に解析する。アデノウイルスファイバータンパク質抗体を用いた免疫反応性を含むがこれに限定されないいくつかの方法により、改変アデノウイルスファイバータンパク質発現細胞を同定し得る。
【0131】
上述のように、改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターを、組み換え宿主細胞における改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現のために使用し得る。従って、本発明の別の局面は、(a)改変アデノウイルスファイバータンパク質の核酸を含むベクターを適切な宿主細胞に導入することと;(b)前記改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現が可能な条件下でこの宿主細胞を培養することと、を含む、組み換え宿主細胞において改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるためのプロセスである。
【0132】
宿主細胞における改変アデノウイルスファイバータンパク質の発現後に、この改変アデノウイルスファイバータンパク質を回収し得る。いくつかのタンパク質精製方法、すなわち、塩析による分画、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィー及び疎水性相互作用クロマトグラフィーを様々に組み合わせる、又は個別に使用することによる、細胞溶解液及び抽出液、又は調整済み培地からの精製が利用可能であり、使用に適切である。さらに、アデノウイルスファイバータンパク質に特異的なモノクローナル又はポリクローナル抗体で作られたイムノアフィニティーカラムを使用することにより、改変アデノウイルスファイバータンパク質を、他の細胞性タンパク質から分離することができる。
【0133】
ある実施形態において、本発明の核酸を、本タンパク質を効率的に発現するように設計した配列を含む発現カセットに組み込み得る。次に、この改変アデノウイルスファイバータンパク質発現カセットをベクターに挿入する。
【0134】
本ベクターは、プロモーターと連結された線状DNA又はアデノ関連ウイルスもしくは改変ワクシニアウイルスベクターなどの他のベクターも使用し得るが、アデノウイルスベクターであることが好ましい。従って、本発明の別の局面には、野生型ファイバー遺伝子のかわりに本明細書中で述べる改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする核酸分子を含むアデノウイルスベクターが含まれる。これらのアデノウイルスベクターの特徴は、非機能的E1遺伝子領域を有することであり、アデノウイルスE1遺伝子領域を欠失していることが好ましい。さらに、これらのベクターは、場合によっては、非機能的なE3領域を有するか、E3領域を欠失している。このアデノウイルスゲノムは、E1及びE3領域両方を欠失している(ΔE1ΔE3)ことが好ましい。このアデノウイルスは、293細胞もしくはPER.C6(R)細胞、又は追加的なタンパク質を発現するように一時的又は安定的に形質転換された293又はPER.C6(R)細胞由来の細胞株などの、ウイルスE1遺伝子を発現する既知の細胞株で増殖させることができる。例えば、テトラサイクリン制御可能プロモーター系など、遺伝子発現が調節されているコンストラクトを使用する場合、その細胞株は、調節系に関与するコンポーネントを発現し得る。そのような細胞株の一例は、T−Rex−293であり、他のものは本分野で公知である。
【0135】
本アデノウイルスベクターの操作を容易にするために、アデノウイルスは、シャトルプラスミドの形態であり得る。本発明はまた、プラスミド部分及び、E1を欠失し場合によってはE3を欠失しているアデノウイルスゲノム(野生型ファイバータンパク質遺伝子を除去。)を含むアデノウイルス部分を含むシャトルプラスミドベクターに関し、これには本明細書中で述べる改変アデノウイルスファイバータンパク質を含む発現カセットが挿入される。好ましい実施形態において、このアデノウイルスベクターを容易に除去できるように、このプラスミドのアデノウイルス部分に隣接する制限部位が存在する。このシャトルプラスミドは、原核細胞又は真核細胞において複製され得る。
【0136】
形質転換、トランスフェクション、原形質融合及びエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない、数ある技術のいずれか1つを介して、このアデノウイルスベクターを適切な宿主細胞へ導入する。前記宿主は、本改変アデノウイルスファイバーが標的細胞のCAR以外の細胞表面結合部位に特異的なペプチドリガンドを含む、感染性ウイルス粒子を産生するであろう。
【0137】
本発明のある実施形態において、本発明の改変アデノウイルスタンパク質を含むアデノウイルスベクターは、パッセンジャー導入遺伝子をさらに含むこととなろう。パッセンジャー導入遺伝子は、あらゆる遺伝子であり得、望ましくは、治療のための遺伝子又はレポーター遺伝子のいずれかである。好ましくは、パッセンジャー導入遺伝子は、ベクターが取り込まれた細胞で発現され得る。例えば、このパッセンジャー導入遺伝子は、レポーター遺伝子又はある様式で細胞において検出され得るタンパク質をコードする核酸配列を含むことができる。このパッセンジャー導入遺伝子はまた、例えばRNA又はタンパク質のレベルでその効果を表す治療のための遺伝子など、治療のための遺伝子を含むことができる。例えば、導入された治療のための遺伝子によりコードされるタンパク質は、遺伝性疾患の治療に使用することができる。その治療のための遺伝子にコードされるタンパク質は、結果として細胞を殺滅することによりその治療効果を表し得る。例えば、それ自身におけるその遺伝子の発現により、ジフテリア毒素A遺伝子の発現のように、細胞殺滅を導き得るか、又はその遺伝子の発現により、ある一定の薬物の殺滅効果に対して選択的に感受性のある細胞にならしめる。
【0138】
さらに、治療のための遺伝子は、例えば、アンチセンスメッセージ又はリボザイム(スプライシング又は3’プロセシングに影響を与える(例えばポリアデニル化)タンパク質)をコードすることにより、RNAレベルでその効果を表し得るか、又は、おそらく他の事柄の中で、mRNA蓄積の割合の変化、mRNA輸送の変更及び/又は転写後調節の変更を介して、その細胞内の別の遺伝子の発現レベルに影響を与えることにより作用するタンパク質(つまり、この場合、遺伝子発現は転写開始からプロセシングを受けたタンパク質の産生までの全段階を含むと広くみなされる。)をコードし得る。従って、「治療のための遺伝子」という用語の使用は、より一般的に遺伝子治療を意味し、及び当業者にとって公知である、これら及びあらゆる他の実施形態を包含することを意図する。同様に、本組み換えアデノウイルスは、遺伝子治療又は、インビトロもしくはインビボでのある細胞もしくは組織におけるその遺伝子発現の効果を研究するために使用し得る。
【0139】
「遺伝子治療」とは、生物の体内における適切な細胞に外的な核酸を付加することによる、病的状態の治療である。核酸は、その細胞内で機能を保持しているように細胞に付加又は導入されなければならない。大部分の遺伝子治療ストラテジーにとって、新しい核酸は、新しい遺伝子として機能するように、つまり、新しいメッセンジャーRNAをコードし、同様に新しいタンパク質をコードするように設計される。遺伝子治療に有用な核酸には、組み換えウイルスが感染した細胞を同定するために使用されるタンパク質をコードするもの、ウイルスゲノムを含有する細胞を殺滅するように機能するタンパク質をコードするもの又は、体内で病態生理的状態を治療するために働く治療用タンパク質をコードするものが含まれる。
【0140】
本発明の別の局面は、組み換えファージのファージディスプレイライブラリーであるが、このライブラリーにおいて、各組み換えファージは、その外面に、アデノウイルスファイバータンパク質の改変ノブドメインに融合したファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する。Ad5ファイバーノブドメインを含むがそれに限定されない、この改変ファイバーノブは、残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12がシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14がXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有するペプチドリガンドを含有する。この改変ファイバーノブ部分は、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する。このコアアミノ酸配列では、位置3及び位置12の固定されたCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。前記固定Cys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。空のアミノ酸残基位置の数は、オリゴヌクレオチド合成中に各位置においてコドンの欠失が導入される頻度に従い変化する。さらに、最高で10個までのアミノ酸残基が残基位置3と残基位置12との間に付加され得る。このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるようなアミノ酸配列からなるものではない。
【0141】
本発明の別の実施形態は、各組み換えファージがその外面に、図13に図示した様々なペプチドリガンドのうち少なくとも1つを含有するアデノウイルスファイバーノブに融合させられたファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質を表示する、組み換えファージのファージディスプレイライブラリーである。組み換えファージの部分は、Ad5ファイバーノブドメインを含むがこれに限定されない、14残基位置のコアアミノ酸配列を含有する、CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有する改変ファイバーノブを表示するが、そのコアアミノ酸配列において、残基位置1、2及び13はXaa残基であり、好ましくは、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)又はフェニルアラニン(Phe)であり;残基位置3及び12はシステイン(Cys)残基であり;残基位置4から11はXaa残基であり、好ましくはグリシン(Gly)、セリン(Ser)又はバリン(Val)であり;残基位置14はXaa残基であり、好ましくはプロリン(Pro)である。このコアアミノ酸配列では、位置3及び位置12のCys残基以外の前記配列内のいずれかの残基位置で1つ又は複数の残基が欠失され得る。前記固定Cys残基の間に位置するコアアミノ酸配列の領域は、少なくとも2個のアミノ酸残基を含有することが好ましい。この実施形態において、このペプチドリガンドのアミノ酸配列は、残基位置3と12との間に連続したArg−Gly−Asp(RGD)配列を含有せず、該ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。
【0142】
本発明のファージディスプレイライブラリー内に含有される、Ad5ファイバーノブを含むがそれに限定されない、改変ファイバーノブは、上述のような様々なペプチドリガンドのうち少なくとも1つを含有する。これらのペプチドリガンドは、ノブコンテクストに表示される場合、CAR以外の細胞表面結合部位への結合の可能性がある候補ペプチドのプールを与える。本明細書中で述べるファージディスプレイライブラリー内に含まれる候補ペプチドリガンドを生成するために使用する方法は、本明細書の実施例3において述べる。本明細書中で述べるファージディスプレイライブラリーにおいて発現されるべき候補ペプチドリガンドは、発現されたペプチドリガンドが可能性のある細胞表面結合部位に接近可能であるように、ファイバーノブ内に挿入される。本改変ファイバーノブの三量体構成は保持されなければならないため、この候補ペプチドリガンドを挿入する好ましい位置は、このノブの露出されたループドメイン内である。従って、ある実施形態において、本発明のファージライブラリーで表示される改変ファイバーノブは、HIループドメインを含むがこれに限定されない、本ノブの露出されたループドメイン内に挿入される、本明細書中で述べるような候補ペプチドリガンドを含む。このファイバーノブがAd5由来である場合、この候補ペプチドリガンドは、Ad5ファイバータンパク質のファイバーノブ内に位置するアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に挿入することができる。本発明のさらなる実施形態において、本発明のファージライブラリー内に表示されるファイバーノブはさらに、そのノブドメインの野生型表面結合がなくなるように改変される。アデノウイルスファイバーノブの野生型CAR結合をなくすある方法は、例えば、残基489から492に位置するAd5ファイバーノブ内の4個のアミノ酸配列TAYT(配列番号45)を欠失させることなど、そのファイバーノブ配列を変更することである。
【0143】
本発明のさらなる実施形態において、本明細書で述べるファージディスプレイライブラリーは、バクテリオファージλ上に表示され、本改変ファイバーノブは、λファージの主要な頭部Dタンパク質に融合させられている。本発明のファージディスプレイライブラリーは、アデノウイルスファイバーに組み込まれた際に、結合特性の変化を保持するペプチドリガンドを同定するために使用される既存のファージディスプレイペプチドライブラリーの限界を乗り越えるが、これは候補ペプチドリガンドが、本ファージディスプレイ系の機能的なファイバーノブ内で発現されるからである。本発明のファージディスプレイ系を用いることにより、そのファイバーノブコンテクストにおいて可能性のあるペプチドリガンドを調べる。線状ファージディスプレイ系において、融合タンパク質は、細胞膜周辺腔の酸化環境に輸送され、その中で折り畳まれる。ファージ粒子は、細胞から分泌される前にここでアセンブリーする。逆に、バクテリオファージλ系では、融合タンパク質の折り畳み及びファージ粒子のアセンブリーは、細菌宿主の溶解前に、細胞質の還元性環境で起こる。これらの後者の状態は、細胞溶解前に哺乳類細胞核の還元性環境においてアセンブルするという、アデノウイルスファイバーが置かれる状態により近い。すなわち、酸化還元状態の変化は、改変ノブの折り畳み及び結合特性に影響を与え得る。従って、本発明のさらなる実施形態において、本明細書中で述べるライブラリーは、バクテリオファージλ上に表示され、本改変アデノウイルスファイバーノブが融合しているファージ外殻タンパク質には、λファージの主要頭部Dタンパク質が含まれるがこれに限定されない。アデノウイルスファイバードメイン内に位置する複雑性の高いペプチドリガンドを発現するファージディスプレイライブラリーの作製により、ファージライブラリーのハイスループットのスクリーニング能と本ファイバーノブコンテクストのペプチドリガンド発現とが組み合わされる。これによりまた、実行可能なファイバータンパク質三量体を妨害するペプチドリガンド配列が削除される。
【0144】
従って、本発明の別の局面は、(a)上述のファージディスプレイライブラリーを提供することと、(b)CAR陰性又はCAR陽性細胞に対する前記ライブラリーをスクリーニングすることとを含む、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するためのプロセスである。基本的に、本ライブラリーは、あらゆる細胞型においてスクリーニングすることができる。しかし、CAR−陽性細胞を対象とする場合、CARへの結合は、代替的な受容体に対するリガンドを同定する可能性を低下させる傾向がある。この問題は、2つの方法により解決できる。第一に、CARへの結合をなくす突然変異を有するファイバーノブにおいて本ライブラリーを構築することができる。この方法を使用して、本明細書中において例示する本ライブラリーをスクリーニングし(実施例4参照)、CAR以外の細胞表面結合部位に結合する3種類の新規ペプチドリガンド(配列番号13、14及び15;ペプチドリガンドL1、L16及びL33にそれぞれ対応)を同定した。これらのペプチドリガンドは、Ad5ゲノムに組み込まれた際に、正確にそれらの特異性を保持する。本新規ペプチドリガンドを含む組み換えアデノウイルスのNIH3T3細胞に対する感染能力は、親ベクターと比較して向上している。この非ネイティブ親和性は、ウイルスノブと標的細胞上の未知の受容体との相互作用が介在するものである。このCAR−非依存性親和性は、CAR発現とは関係なく、様々な種由来の様々な細胞型において活性化され得る。これらの結果は、アデノウイルス親和性を変化させ、様々な遺伝子導入適用に対するその治療域を広げる一般的な方法論として、このストラテジーを支持するものである。新規ペプチドリガンドのスクリーニングの代替的な方法は、操作していないCAR結合を有するライブラリーを作製することであるが、拮抗する過剰な野生型ノブタンパク質の存在下で前記ライブラリーをスクリーニングするものである。
【0145】
このために、本発明はまた、アデノウイルスの特異的細胞型又は組織に対する形質導入能を向上させる方法にも関する。本発明の組み換えアデノウイルスは、滑膜細胞、平滑筋細胞、内皮細胞、癌細胞、原発腫瘍、樹状細胞、骨格筋、メラノサイト及びマウスメラノーマ細胞を含むがこれらに限定されない、野生型アデノウイルスファイバータンパク質表面受容体を発現しないか、又は前記表面受容体の発現量がわずかしかない細胞型又は組織に対して形質導入するために使用することができる。本発明の組み換えアデノウイルスの野生型親和性が失われない限り、本明細書で述べるように、本発明の組み換えアデノウイルスを、野生型アデノウイルスファイバータンパク質表面受容体を単独で、又は本改変ファイバータンパク質内に位置するペプチドリガンドの細胞特異的表面受容体とともに発現する細胞型又は組織に形質導入を行うために使用することもできる。本明細書中で述べるペプチドリガンドに対する細胞特異的表面受容体と組み合わせて野生型アデノウイルスファイバータンパク質表面受容体を発現する細胞に形質導入を行うために本発明の組み換えアデノウイルスを使用することにより、より効率のよいアデノウイルス感染を達成することが容易になり得る。
【0146】
本発明のある実施形態には、CAR発現レベルが低い、マウス又はヒト由来の未成熟樹状細胞を含むがこれに限定されない、未成熟の樹状細胞(DC)に形質導入する方法が含まれる。樹状細胞は、抗原特異的免疫反応の制御において中枢となる役割を果たす重要な抗原提示細胞(APC)である(Jonuleitら、Trends Immunol.22:394−400(2001);Banchereauら、Nature 392:245−252(1998))。DCの遺伝子改変は、DC機能を調整する経路として、ならびに、癌及び持続性のウイルス感染を含む広い範囲の疾患の治療のために、治療上非常に高い可能性を有する(Nair,Gene Ther.5:1445−1446(1998))。別の実施形態において、本発明の組み換えアデノウイルスを、マウス骨格筋及びを含むがこれに限定されない骨格筋及び、ヒト起源の初代メラノサイトを含むがこれに限定されない初代メラノサイト(両者ともCARの発現量が低い。)に形質導入するために使用する。
【0147】
本明細書中で言及する全ての公表物は、本発明に関連して使用され得る方法論及び材料を説明し開示する目的で、参照により組み込まれる。本明細書中のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0148】
付随する図面を参考として、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明がそれらの明確な実施形態に限定されないこと、及び、添付の請求項に定義するように本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者によりそれらにおける様々な変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【0149】
次の実施例は、本発明を限定することなく、本発明を説明するために提供する。
【実施例1】
【0150】
ファージλ細胞のキャプシドにおけるAd5三量体ノブドメインの表示
細胞−ファージのプレーティング及び増幅のために、E.コリ株BB4及びY1090を使用した。
【0151】
プラスミドpDknobの構築−図14で示すように、λD遺伝子の3’−末端を改変することにより、プラスミドpNS3785(Sternberg及びHoess,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1609−1613)を、pDknobに形質転換した。
【0152】
λDam15imm21nin5のユニークなXbaI部位にプラスミド全体をクローニングできるように、プラスミドpNS3785にXbaI制限部位を導入した。逆PCRにより、プライマーXbaI−NS.for:
【0153】
【化16】
及び、XbaI−NS.rev:
【0154】
【化17】
(XbaI部位に下線を付す。)を用いて、プラスミドpNS3785を増幅した。DNA合成の信頼度を上げるために、Taq及びPfuDNAポリメラーゼの混合物を用いて反応を行った(95℃−30秒、55℃−30秒、72℃−20分、25増幅サイクル)。このように、生成されたPCR増幅産物をXbaIエンドヌクレアーゼで消化し、プラスミドpD−XbaIを作製するためにライゲーションを行った。
【0155】
オリゴヌクレオチド、link−SD.s:
【0156】
【化18】
と、link−SD.as:
【0157】
【化19】
とをアニーリングさせることにより、リボソーム結合部位(RBS)及びKpnI部位(下線)を含有する65bpのdsDNA断片を得た。このDNA断片を、プラスミド、pKM3に、λD遺伝子の3’末端で、RsrIIとEcoRI制限部位との間にクローニングし、プラスミドpD−linkerを作製した。
【0158】
D−fbr.for
【0159】
【化20】
及びD−fbr.rev:
【0160】
【化21】
プライマーを用いてプラスミドpAB26(Bettら、1993、J.Virol.67:5911−5921)からAd5ファイバーノブドメインをコードするDNA配列をPCR増幅した。得られた600bpの断片をKpnI及びEcoRI制限酵素で消化し、対応する部位の間で、λD遺伝子の3’末端において、プラスミドpD−linkerに挿入し、プラスミドpDknob_linker0を作製した。複数のGly−Ser(GS)リピートを含有するリンカー配列を、プラスミド、pDknob_linker0のDとノブ遺伝子との間に挿入した。オリゴヌクレオチド、BamHI−link.s:
【0161】
【化22】
と、BamHI−link.as:
【0162】
【化23】
とをアニーリングさせることにより、2.5GSリピートをコードし、BamHI部位を含有するdsDNA断片を得た。この59bpDNA断片を、プラスミドpDknob_linker0のRsrIIとKpnI部位との間に挿入し、プラスミドpDknob_Blinkerを作製した。
【0163】
オリゴヌクレオチド、GS−link.s:
【0164】
【化24】
と、GS−link.as:
【0165】
【化25】
とをアニーリングさせることにより、様々な長さのdsDNAを調製し、重合体産物の形成を促進した。プラスミドpDknob_BlinkerのBamHI部位にこの混合物をクローニングすることにより、1つ(pDknob_linker1)又は2つ(pDknob_linker2)のインサートを含有した3種類のプラスミドが同定された。説明した実験において後者を使用し、pDknobと名付けた。
【0166】
プラスミドpDknob.Δの構築−Nhe−fbr.for:
【0167】
【化26】
及びD−fbr.rev:
【0168】
【化27】
プライマーを用いて、プラスミドpAB26(Bettら、1993、前出)からAd5ファイバーノブのDNA配列をPCR増幅した。この600bpの断片をNheI及びEcoRI制限酵素で消化し、pTRCHisBベクター(Invitrogen,Groningen,The Netherlands)のNheI及びEcoRI部位にクローニングし、プラスミドpHis.knobを作製した。
【0169】
プライマーknobΔ:
【0170】
【化28】
及びpD.rev
【0171】
【化29】
を用いて、プラスミドpDknobΔ.SN−Ctermから増幅し、BglII及びMscI制限酵素で消化したPCR産物を、MscI/BglIIで消化したベクターpHis.knobにクローニングすることにより、アミノ酸TAYT(配列番号45)が欠失しているファイバーノブのコード配列を含有するコンストラクト、pHis.knobΔを得た。プライマーknob−for3:
【0172】
【化30】
及びknobC−Spe/Not.rev
【0173】
【化31】
を用いてpDknobから得て、MscI/EcoRI制限酵素で消化したPCR断片を、MscI/BglIIで消化したベクター、pDknobにクローニングすることにより、プラスミド、pDknobΔ.SN−Ctermを得た。
【0174】
プライマーknobΔ:
【0175】
【化32】
/D−fbr.rev:
【0176】
【化33】
を用いて、プラスミド、pHis−knobΔからPCR断片を得た。このPCR産物をEcoRI及びBGlII制限酵素で消化し、ベクターpDknobの対応する部位に挿入して、wt配列を置換した。得られたプラスミドpDknobΔでは、CAR結合をなくす、ファイバーノブ遺伝子におけるTAYT(配列番号45)欠失が起こっている。
【0177】
ファージλ−knob及びλ−knobΔの生成−XbaI制限酵素で消化してプラスミドpDknob及びpDknob.Δを線状にし、プラスミド全体をλファージDam15imm21nin5のユニークなXbaI部位にクローニングし、ファージλknob−wt及びλknobΔ−wtをそれぞれ生成させた。4℃にて一晩インキュベーションした後、λパッケージングキット(APB,Uppsala、Sweden)を用いてライゲーション混合液をインビトロでパッケージングし、NZY寒天プレートにトップアガーを用いてプレーティングした。PCRにより陽性クローンを同定し、Sambrookら、1989(前出)で述べられているようにして増幅して精製した。pD派生物は全て、対応するλファージを生成した。
【0178】
抗体−標準的プロトコールに従い、細菌で発現させた組み換えAd5ノブタンパク質及びλファージ粒子をそれぞれNew Zeelandラビットに免疫することにより、ウサギ抗ノブR330及び抗λ血清を得た。ヒト血清のパネルをスクリーニングすることにより、細菌で発現させた組み換えAd5ファイバーノブの単量体及び三量体の両者と反応した試料(血清N92)、又は三量体と特異的に反応した試料(血清N93)を同定した。血清R330由来の抗体、抗−λ(Ab抗−λ)及びN92(AbN92)を、製造者の使用説明書に従い、プロテインAセファロース(Amersham−Pharmacia,Little Chalfont,UK)で精製した。組み換えノブタンパク質で、血清N93由来の抗体(AbN93)から抗体をアフィニティー精製した。マウスmAb12D6(McMaster University,Hamilton,Ontario,CanadaのFrank Grahamより提供。)は、Ad5ノブ三量体を選択的に認識する。
【0179】
ウイルス−Per.C6細胞において組み換えアデノウイルスを増殖させ、標準的プロトコールに従いCsCl勾配の遠心により精製した(Fallauxら、1998、Hum.Gene.Ther.9:1090−1917)。
【0180】
ファージ−ELISA−マルチウェルプレート(Nunc,Roskilde,Denmark)を、50mM NaHCO3(pH9.6)中にそれぞれ2.2μg/ml又は5μg/mlの濃度のヤギ抗ヒトIgGFc特異的(Pierce,Rockford,IL)又は抗マウスIgG特異的(SIGMA,St.Louis,MO)で一晩4℃にて被覆した。その被覆溶液を除去した後、0.05%Tween−20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(PBST)中5%脱脂粉乳から構成されている洗浄バッファーとともにプレートを37℃にて60分間インキュベーションした。ブロッキング溶液を捨て、ブロッキングバッファー中のAbN93、AbN92又はmAb12D6を添加し、室温(RT)にて2時間結合させた。プレートをPBSTで洗浄し、結合バッファー(PBS中5%脱脂粉乳)中のファージ溶解物 約1x109pfuをRTにて4時間インキュベーションした。次に、プレートをPBSで洗浄し、結合バッファー中の抗λポリクローナル抗体によりRTにて2時間、捕捉したファージ粒子を検出した。PBSで洗浄した後、結合バッファー中の抗ウサギIgGアルカリホスファターゼ結合抗体(Sigma,St.Louis,MO)中で、室温にて2時間、プレートをインキュベーションした。次にプレートを洗浄し、ジエタノールアミン中でSigma104ホスファターゼ基質(SIGMA,St.Louis,MO)とともにインキュベーションしてアルカリホスファターゼ活性を検出した。自動ELISAリーダー(Labsystems Multiskan Bichromatic,Helsinki,Finland)でプレートを読み取った。
【0181】
結果−Ad5ファイバーノブドメインをコードする遺伝子の、バクテリオファージλ上流の主要頭部Dタンパク質をコードする遺伝子で構成されるバイシストロニック系の合成を行うように、細菌性発現プラスミドを操作した。このDタンパク質のC−末端に(Gly−Ser)16ペプチドリンカー、続いて、リボソーム結合部位、D遺伝子アンバー翻訳コドンTAG及びAd5ノブ遺伝子メチオニン開始コドンを付加するように、ベクターを設計した(図14)。様々な長さの重合体を試験することによって、(Gly−Ser)16ペプチドリンカー配列により、λキャプシドにおけるノブ三量体発現が最も効率よく行われることが確実になることが明らかとなり、以後の実験で使用した。
【0182】
アンバー突然変異とともにD遺伝子のゲノムコピーを含有する、λDam15imm21nin5ゲノムのXbaI部位にプラスミドpDknobを挿入した。サプレッサー細菌宿主での形質転換後、得られたファージ、λknob−wtは、(i)λゲノムD遺伝子にコードされるwtDタンパク質(D);(ii)プラスミドD遺伝子によりコードされる組み換えwtDタンパク質(reD);(iii)reD−ノブ融合(細菌サプレッションの結果)及び(iv)ノブタンパク質(翻訳再開による。)を発現すると予想される。ファージ粒子は、そのキャプシドにおいてD、reD及び融合reD−ノブタンパク質のキメラのアレイを表示するはずである。さらに、D及びノブタンパク質の両方がホモ三量体複合体を形成するので、reDとノブとの間の条件付融合により、ノブ三量体をXキャプシドにおいてアセンブルさせることができるようになるはずである。Ad5ホモ三量体ノブ構造を選択的に認識するモノクローナル(mAb12D6)又はポリクローナル(AbN93)抗体は、ファージ酵素免疫吸着測定(ELISA)においてλknob−wt溶解物と特異的に反応し、ノブ三量体がそのファージ粒子のキャプシドで効率よく表示されることが示される(図15)。
【0183】
Ad5ファイバーTAYT(配列番号45)残基(ノブDGループの残基位置489から492)の欠失により、CARに対するAd5ファイバーの高親和性結合が完全になくなる(Roelvinkら、1999前出)。対応するλknobΔ−wt派生物は、抗ホモ三量体ノブ抗体と特異的に反応するが、これにより、この改変ノブも又はジキャプシドにおいてホモ三量体として表示されることが示される(図15)。
【0184】
最後に、λwt及びλNS3(その表面においてC型肝炎ウイルスのNS3タンパク質由来の80アミノ酸を発現するネガティブ対照クローン)は、バックグラウンドレベルの結合しか示さなかった。
【実施例2】
【0185】
λ−介在Ad5ノブは、911細胞上のヒトCARに特異的に結合する。
【0186】
細胞−Invitrogen(Rijswijk,The Netherlands)からヒト胎児網膜芽911細胞を得た。10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で911細胞を培養した。
【0187】
ウイルス−Per.C6細胞で組み換えアデノウイルスを増殖させ、標準的プロトコールに従いCsCl勾配の遠心により精製した(Fallauxら、1998、前出)。
【0188】
FACS解析−911細胞上に表示されているヒトCARへのファージλknob−wtの結合を次のように観察した。室温(RT)にて1時間、PBS中3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM MgCl2、1mM CaCl2から構成される結合バッファー中で、2x106細胞/mlの懸濁液とともに、ファージ粒子(0.4x1010から6x1010pfuの範囲)をインキュベーションした。結合バッファーで細胞を洗浄し、4℃にて45分間、FACSバッファー(PBS中2%FBS)中のウサギ抗λ精製Igとともにインキュベーションした。次に、細胞をFACSバッファーで洗浄し、4℃にて45分間、ヤギ抗ウサギIgG PE結合抗体(Diamedix,Miami,FL,USA)を含有するFACSバッファー中でインキュベーションした。FACSバッファーで洗浄した後、FACSバッファー中で約6x105細胞/mlの密度で細胞を再懸濁し、FACSCalibre フローサイトメトリー(Beckton Dickinson,Oxford,UK)で解析した。CELLQuest ソフトウェアにより蛍光強度を解析した。
【0189】
競合実験において、組み換えHisタグ付加ノブタンパク質ファイバー(又はHisタグ付加の無関係のタンパク質)10μg/mlを含有する結合バッファー200μlとともに、RTにて30分間、細胞を再びインキュベーションした。この混合液に対して、非結合タンパク質を除去せずに、ファージ(6x1010pfu)を添加し、さらに60分間インキュベーションした。二次抗体としてヤギ抗ウサギIgGFITC結合抗体(Pierce,Rockford,IL)を使用した。
【0190】
結果−ファージ表示ノブの機能性を評価するために、その表面上にCARを高レベルで発現するヒト胎児網膜芽911細胞とともにλknob−wtビリオンをインキュベーションした。蛍光活性化細胞分類(FACS)解析によりCAR特異的結合をアッセイした。蛍光標識細胞の分布のばらつきにより示されるように、λknob−wtファージ粒子は911細胞に結合した(図16A)。細胞の中央値蛍光を測定したところ、ファージタイターの上昇により、直線的に結合ファージ量が上昇していた。一方、λwt及びλNS3の両者とも、結合は検出可能なレベルではなかった。同様に、911細胞をλknobΔ−wtファージとともにインキュベーションしたところ、細胞結合は全く示されなかった。911細胞に対するλknob−wtの結合は、過剰量の組み換えノブとのインキュベーションにより阻害されたが、一方、非関連タンパク質 NS3とのインキュベーションでは何ら影響は見られなかった(図16B)。同じ試薬で、λwtファージの結合活性は変化しなかった。
【実施例3】
【0191】
λにおいて表示される改変Ad5ファイバーノブのライブラリーの作製。
【0192】
ウイルス−Per.C6細胞で組み換えアデノウイルスを増殖させ、標準的プロトコールに従いCsCl勾配の遠心により精製した(Fallauxら、1998、前出)。
【0193】
λknobΔ−14aa.cysライブラリーの構築−HIループにおいてユニークなSpeI及びNotI部位を導入するPCR増幅産物で、pD−knobΔにおいてBglII/MscI断片を置換することにより、プラスミドpDknobΔ−L0を作製した。プライマーknob.for2:
【0194】
【化34】
及びknobHI−Spe/Not.rev
【0195】
【化35】
又はknobHI−Spe/Not.for
【0196】
【化36】
及びknob.rev3:
【0197】
【化37】
を用いてプラスミドpDknobをPCR増幅することにより、2つの326bp及び93bp DNA断片を得た。これらのDNA断片をPCRライゲーションした。得られたプラスミドpDknobΔ−L0をXbaI消化により直線状にし、プラスミド全体をλDam15imm21nin5のユニークなXbaI部位にクローニングした。生成させたファージλknobΔ−L0を増幅してCsCl精製した。λ粒子からDNAを抽出し、ライブラリー構築に使用した。
【0198】
スプリット合成プロトコールに従い、ライブラリーオリゴヌクレオチドを合成し(Glaserら、1992、J.Immunol.149:3903−3913)、プライマー伸長によりdsDNAに変換し、SpeI/NotI消化し、λknobΔ−L0の対応するSpeI/NotI部位にライゲーションした。このライゲーション混合物をインビトロでパッケージング(APB,Uppsala,Sweden)し、NZY寒天プレートにプレーティングした。一晩インキュベーションした後、SMバッファー(50mM Tris−HCl pH7.5、0.01%ゼラチン、10mM MgSO4、100mM NaCl)でプレートから溶出し、精製し、濃縮して、SMバッファー、7%DMSO中で−80℃にて保存した。λknob−14aa.cysライブラリーの複雑性は、パッケージング混合物のプレーティングにより得られた個々のプラークの数から評価したところ、1.6x105であった。無作為に選択した20個のクローンの配列解析により、そのクローン全てにおいて、予想されたヌクレオチドが確認された。
【0199】
結果−ノブドメインのフレームワーク内の候補ペプチドリガンド配列の大規模コレクションを作製しスクリーニングするために、λknobディスプレイ系を用いた。ネイティブではない親和性に対するスクリーニングにおけるCAR結合の干渉を除くために、λknobΔ−wtベクターにおいてこのライブラリーを構築した。外来ペプチドリガンド配列を挿入するための部位としてノブドメインのHIループを選択し、ペプチドリガンド挿入を容易にするために、ユニークなSpeI及びNotI制限配列を導入した。これらの操作の結果、派生物λknobΔ−L0は、野生型Ad5タンパク質配列のT546とP547との間にさらなるペプチド性配列SGAAA(配列番号39)を組み込んだ(図13の上パネル)。
【0200】
レジンスプリット法により、SpeI及びNotI制限部位に隣接して14個のアミノ酸残基をコードするようにオリゴヌクレオチドを合成した(図13)。位置3及び12に2個の不変のCys残基を組み込むことにより、このペプチドリガンド配列に制約を加えた。位置1、2及び3は、疎水性の受容体構造との相互作用に好都合である芳香族アミノ酸が存在するようにした。拡張構造を導入する傾向があるプロリンは、挿入したペプチドリガンドの接近性を向上させるために位置14に好都合であった。残りの4から11の位置は、ループのフレキシビリティーを向上させるために、優先的に、小さな側鎖を有するアミノ酸(グリシン、セリン又はバリン)を受け入れるように設計した。最後に、固定されたシステインをコードする位置を除き、各位置においてコドンの5%を欠失させることにより、さらなる変更を導入した。適切なプライマーを用いたこれらのオリゴヌクレオチドの伸長によりdsDNA断片を生成させ、それをSpeI及びNotIで制限酵素消化し、ベクターλknobΔ−L0の対応する部位にクローニングした。そのライゲーション混合液のインビトロパッケージング及びプレーティングにより、2x105の個々のクローンから構成される、λknobΔ−14aa.cysライブラリーが得られた。
【実施例4】
【0201】
NIH3T3細胞に対するペプチドリガンド結合のための、ライブラリー、λknobΔ−14aa.cysライブラリーのスクリーニング
細菌−ファージのプレーティング及び増幅のために、E.コリ株BB4及びY1090を使用した。
【0202】
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞を入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でこの細胞を培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0203】
細胞におけるライブラリーの抽出−2x106細胞のNIH3T3細胞を60mm直径のペトリ皿に播種し、5%CO2とともに、37℃にて培養液中で48時間インキュベーションした。次に、コンフルエントになった細胞を、5mlのブロッキングバッファー(PBS中、3%BSA、10mM MgCl2、1mM CaCl2)とともに37℃にて1時間インキュベーションして飢餓状態にした。次に、その溶液を捨て、ブロッキングバッファー1ml中のファージライブラリー 5x109pfuを添加し、37℃にて3時間インキュベーションした。非結合ファージを除去し、細胞をブロッキングバッファーでよく洗浄した。次に、細菌に感染させて、結合したファージを増殖させた。この初回の選択から得られたファージのプールを記載(Beghettoら、2001、Int.J.Parasitol.31:1659−1668)のように精製した。
【0204】
FACS解析−FACSを利用したアッセイを用いてNIH3T3細胞に対するλファージの結合を解析した。2x109pfuファージを含有する、PBS中3%ウシ血清アルブミン(BSA)、10mM MgCl2、1mM CaCl2から構成される結合バッファー中で、37℃にて60分間、2x106細胞/mlの懸濁液をインキュベーションした。結合バッファーで細胞を洗浄し、FACSバッファー(PBS中2%FBS)中のウサギ抗λ精製Igとともに4℃にて45分間インキュベーションした。次に、細胞をFACSバッファーで洗浄し、4℃にて45分間、ヤギ抗ウサギIgG PE結合抗体(Diamedix,Miami,FL,USA)を含有するFACSバッファー中でインキュベーションした。FACSバッファーで洗浄した後、FACSバッファー中で約6x105細胞/mlの密度で細胞を再懸濁し、FACSCalibreフローサイトメトリー(Beckton Dickinson,Oxford,UK)で解析した。CELLQuestソフトウェアにより蛍光強度を解析した。
【0205】
組み換えλクローンの免疫学的スクリーニング−記載のようにファージプラークを調製し、ニトロセルロースフィルター(Schleicher&Schuell GmbH,Dassel,Germany)に転写した(Beghetto,Eら、2001、前出)。最初に、RTにて1時間、フィルターをブロッキングバッファー(PBS、0.01%Triton中5%脱脂粉乳)で飽和させた。次に、そのフィルターを、ブロッキングバッファーで希釈したヒトAbN93又はウサギR330抗ノブ抗体(実施例1の抗体に関する記述を参照のこと。)とともに、室温(RT)にて2時間インキュベーションした。PBSTで数回洗浄した後、アルカリホスファターゼ結合二次抗体(抗ヒトIgG又は抗ウサギIgG)をブロッキングバッファーで希釈し、そのフィルターとともにRTにて1時間インキュベーションした。最後に、発色性基質(ニトロブルーテトラゾリウム及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート基質)(Sigma,St.Louis,MO)を用いてフィルターを発色させ、陽性のファージプラークを可視化した。
【0206】
組み換えAd5ファイバーノブの発現及び精製−Nhe−fbr.for:
【0207】
【化38】
及びD−fbr.rev:
【0208】
【化39】
プライマーを用いて、プラスミドpAB26(Bettら、1993、前出)からAd5ファイバーノブのDNA配列をPCR増幅した。この600bpの断片をNheI及びEcoRI制限酵素で消化し、pTRCHisBベクター(Invitrogen,Groningen,The Netherlands)のNheI及びEcoRI部位にクローニングし、プラスミドpHis.knobを生成させた。pHis.knobにクローニングすることにより、pDknobΔ及びpDknobΔ−L0からの適切なPCR増幅産物、プラスミドpHis.knobΔ及びpHis.knobΔ−L0を得た。
【0209】
MscI/BglIIで切断したベクターpHis.knobにクローニングすることにより、アミノ酸TAYT(配列番号45)が欠失したファイバーノブのコード配列を含有する、コンストラクトpHis.knobΔを得た。プライマーknobΔ:
【0210】
【化40】
及びpD.rev
【0211】
【化41】
を用いてプラスミドpDknobΔ.SN−CtermからPCR産物増幅させ、BglII及びMscI制限酵素で消化した。プライマーknob−for3:
【0212】
【化42】
及びknobC−Spe/Not.rev
【0213】
【化43】
を用いてpDknobから得て、MscI/EcoRI酵素で切断したPCR断片を、MscI/EcoRIで消化したベクターpDknobにクローニングし、プラスミドpDknobΔ.SN−Ctermを得た。
【0214】
プライマーknobΔ:
【0215】
【化44】
及びpD.rev
【0216】
【化45】
を用いてプラスミドpDknobΔ−L0をPCR増幅した。得られたPCR産物をBglII及びEcoRI制限酵素で消化し、pHis.knobベクターのBglI及びEcoRI部位にクローニングした。得られたpHis.knobΔ.SN−HI loopベクターをSpeI及びNotI酵素で消化し、選択したエピトープを含有するクローニング断片用に使用した。後者は、プライマーbioSN.for:
【0217】
【化46】
及びbioSN.rev:
【0218】
【化47】
を用いて、L派生物のλDNAをPCR増幅し、SpeI及びNotI酵素で消化し、ストレプトアビジンで被覆した電磁マイクロビーズ(Dynal A.S.,Oslo,Norway)で精製することにより得た。
【0219】
N末端の6個のHis精製タグを含有する組み換えAd5ファイバーノブ派生物(knobΔ−L1、knobΔ−L6及びknobΔ−L33)を、E.コリで発現させ、Hi−TrapキレートHPカラム(APB,Uppsala,Sweden)でFPLCにより精製した。
【0220】
細胞−ELISA−24ウェルプレートにおいて、培養液500μl中の約80,000細胞/ウェルの細胞を播種して、37℃にて、5%CO2とともに、48時間インキュベーションした。次に、コンフルエントになった細胞を37℃にて1時間、血清非添加の培地とともにインキュベーションして飢餓状態にし、冷PBSで1回洗浄し、次に、4%パラホルムアルデヒドとともに4℃にて10分間インキュベーションすることにより固定した。冷PBSで細胞をよく洗浄し、PBBS++バッファー(PBS中1% BSA、10mM MgCl2、1mM CaCl2)とともに4℃にて30分間インキュベーションしてブロッキングした。タンパク質結合を観察するために、細胞を4℃にて一晩、PBBS++中で、精製タンパク質20μg/ml希釈液とともにインキュベーションした。次に、プレートをPBBS++でよく洗浄し、PBBS++バッファーで1:1000に希釈した抗HisHRP結合抗体(Invitrogen)により捕捉したタンパク質を検出した。4℃にて2時間インキュベーションした後、プレートをよく洗浄し、TMB液体基質系とともにインキュベーションしてペルオキシダーゼ活性を検出した。2M H2SO4を添加して発色反応を停止させた。自動ELISAリーダー(Labsystems Multiskan Bichromatic,Helsinki,Finland)でこのプレートの読み取りを行い、A=A405nm−A620nmとして結果を表した。
【0221】
結果−CAR以外の細胞表面受容体に結合するペプチドリガンドを選び出すために、改変ファイバーノブのライブラリーをスクリーニングした。表面のCAR表示レベルが検出できない程度であり、アデノウイルスによりあまり形質導入されないマウス胚繊維芽細胞、NIH3T3細胞を、標的細胞として選択した。λknobΔ−14aa.cysライブラリーの約5x109プラーク形成単位(pfu)を、プレーティングしたNIH3T3細胞に添加した。インキュベーション後、非結合ファージを除去し、細胞をよく洗浄し、細菌に感染させて結合ファージを増殖させた。約1x105個のクローンを回収し、増殖させた。抗ノブ抗体を用いてこのファージのプールを免疫スクリーニングしたところ、クローンの20%がその表面にノブを表示し、そのクローンの100%において三量体複合体として発現されていた。一方、抗ノブ抗体でインプットライブラリーを調べたところ、そのクローンのうち26%で陽性、その75%が抗三量体ノブ抗体とも反応した。これらの知見から、ノブ発現が、増殖率低下を伴うことが示唆される。増幅中に、この傾向は、外来タンパク質を発現しないクローンに著しく片寄っていた。パニングサイクルから得られたファージのプールから、ノブ陽性クローンのうち30個のクローンを無作為に選択した。これらのクローンそれぞれからファージ溶解物を調製し、NIH3T3細胞への結合を細胞−ELISAにより測定した(データを示さず。)。この予備スクリーニングは、3個のクローン(λknobΔ−L1、λknobΔ−L6、λknobΔ−L33)における解析を目的としたものであり、NIH3T3細胞へのそれらの結合をフローサイトメトリーにより観察した(図17)。この方法により単離したこの3個の改変ファイバーノブは、親ベクターと比較して、蛍光標識細胞の分布中央値の変動を示したが、このことから、NIH3T3細胞への結合が増加したことが示される。対照ファージλNS3は、λknobΔ−wtと相当する程度の効率でNIH3T3細胞に結合した。これらの3個の改変ファイバーノブの配列解析から、類似性が高いことが明らかとなり(図18)、このことから、それらが同じ受容体と相互作用することが示唆される。
【0222】
同じAd5knobΔ−L1、L16及びL−33派生物を、組み換えタンパク質として細菌で発現させた。精製を容易にするため、及び検出の際のタグとして使用するために、そのN末端にヒスチジンテールを付加した。これらの組み換えノブタンパク質は、ホモ三量体複合体としてアセンブルし、knobΔ―wtタンパク質よりもNIH3T3細胞への結合が多かった(データを示さず。)。
【実施例5】
【0223】
改変ファイバーノブを有するアデノウイルスベクターは、NIH3T3細胞に対して効率的に形質導入する。
【0224】
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD,U.S.A)よりマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞を入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でこの細胞を培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0225】
ウイルス−Per.C6細胞において組み換えアデノウイルスを増殖させ、CsCl勾配での遠心により精製した。分光学的にウイルス粒子タイターを測定したが、この場合、260nmにおける光学密度1Uが、1.1x1012粒子/mlに相当する。Ad5派生物に対する結合分子が分からないので、細胞あたりのウイルス粒子の等量とベクターを比較する必要がある。様々なバッチのAd5派生物を用いたいくつかの実験からの一貫した結果及びCAR陽性細胞においてウイルス全てに対して測定した感染性が同程度であったことから、ウイルス調製物の質が形質導入効率で見られる変動に関与するという可能性が排除される。ウイルスゲノムの制限分析及びファイバーノブ領域の配列決定から、ウイルス調製物の同一性が確認された。Ad5luc派生物全てが、Ad5luc−wtウイルスのものと同程度の、トランスフェクションから細胞変性効果までの時間の長さ、増幅率及びウイルス回収率を示した。ウイルスをAd5luc−LXと名づけた(ここで、「x」とは、ウイルスゲノムに組み込まれたペプチドリガンドを示す。)。
【0226】
組み換えAdプラスミドの構築−E.コリ、BJ5183における相同的組み換えにより、Ad5ゲノムのE1領域の代わりにルシフェラーゼ発現カセット及びファイバーのHIループに選択したペプチドリガンドを含有する第一世代アデノウイルスを構築した。
【0227】
野生型ファイバー遺伝子を包含するAd5 25219−27018ヌクレオチド断片を、Litmus28ベクター(N.E.B.、Beverly,MA,U.S.A)にクローニングした。MfeI−SwaIオリゴヌクレオチド
【0228】
【化48】
を自己アニーリングさせて、SwaI制限部位を含有する18bpのdsDNA断片を得た。そのMfeI−適合末端により、この断片をLITMUS 28−ファイバーのMfeI部位にクローニングし、ファイバー遺伝子のすぐ下流にユニークなSwaI部位を作った。得られたプラスミドpLITfbr−SwaIを用いて、細菌の相同的組み換えにより、pAd5−H10においてSwaI部位を導入し、このように、pAd5−SwaIを作製したが、これは、トランスフェクションにおいて生存能力のあるウイルスを生成しない。
【0229】
Ad5ゲノムのE1領域のかわりにルシフェラーゼ発現カセットを含有するAd5luc及びAd5luc−SwaI派生物を以下のように構築した。プラスミドpGGluc(Gene Therapy Systems,Inc.,San Diego,CA)をMcsI及びKpnI制限酵素で消化し、CMV−ルシフェラーゼ発現カセットを単離した。得られた3.5−kbのCMV−ルシフェラーゼ発現カセットを、T4ポリメラーゼで平滑末端にし、シャトルベクター、pΔE1sp1A(Bettら、1994、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8802−8806)のClaI/EcoRV部位にクローニングし、プラスミドpΔE1CMVLucを得た。Ad5ゲノム配列に隣接したルシフェラーゼ発現カセットを含有する6.4kbのDNA断片を、Ssp1/BstZ17消化によりpΔE1CMVLucから切り出し、E.コリ BJ5183細胞における相同的組み換えにより、Claで線状化したpBHG10プラスミド(Chartierら、1996、J.Virol.79:4805−4810;Bettら、1994、前出)に挿入した。この最後のクローンから8.8kbのAvrII/BstZ17DNA断片を得て、アデノウイルスH10バックボーンのPacI部位に挿入し(Sandigら、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:1004−1007)、pAd5luc−wt及びpAd5luc−SwaIを得た。図13で報告するように、ノブHIループ領域においてユニークなSpeI及びNotI部位を入れたAd5ファイバー遺伝子をpLITMUS20ベクターにクローニングすることにより、Ad5ファイバーシャトルプラスミド、pLITfbr−L0を構築した。λDNAテンプレートからペプチドリガンド配列をPCR増幅し、SpeI/NotI制限酵素消化し、pLITfbr−L0の対応する部位にクローニングして、プラスミドpLITfbr−LXを得た。細菌の相同的組み換えにより、pLITfbr−LXプラスミド由来の、突然変異させたファイバー配列を、pAd5luc−SwaIに組み込み、プラスミドpAd5luc−LXを得た。
【0230】
細胞の形質導入−培地500μl中の約50,000細胞/ウェルのNIH−3T3細胞を24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスを感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。製造者の使用説明書に従い、Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI,U.S.A)を用いて細胞抽出及びルシフェラーゼアッセイを行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。表示項目における各点は、3回測定の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【0231】
結果−親和性を調べるために、ファイバーノブ内にペプチドリガンドを組み込むAd5派生物を作製した。前記Ad5派生物では、NIH3T3細胞に対する結合が増加していた。下流遺伝子トランスファーアッセイを簡素化するために、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの転写調節下にあるホタルルシフェラーゼ遺伝子を、Ad5バックボーンのE1領域の代わりに挿入した(Ad5luc−wt)。細菌における相同的組み換えにより、ノブHIループ内の図18に挙げるペプチドリガンドをウイルスゲノムの対応領域に入れたアデノウイルス派生物、Ad5luc−L0、−L1、−L16及び−L33を作製した。CAR結合を保持し、ウイルス増殖を可能にするために、TAYT(配列番号45)欠失を移入しなかったが、Ad5luc−wtファイバー遺伝子においてこれらのペプチドリガンドを組み込んだことに留意されたい。
【0232】
Ad5luc−LX派生物とAd5luc−wtウイルスとの間で、増幅率、ウイルス回収率及びウイルス粒子として測定したタイターに関しては顕著な違いは見られなかった。対照として、Ad5luc−wtを用いて、NIH3T3細胞の遺伝子導入効率に関してAd5luc−LX派生物を調べた。Ad5luc−wtと比較して、NIH3T3細胞に対して、Ad5luc−L1、Ad5luc−L16及びAd5luc−L33の形質導入率は顕著に高い(100から700倍まで)ことが示された(図19)。
【0233】
Ad5luc−L0対照ウイルスは、Ad5luc−wtと同じように作用したが、このことから、ファイバーのHIループのT546にSGAAA(配列番号39)配列を挿入してもウイルス親和性に影響を与えないことが示された。
【0234】
Ad5luc−LX派生物の感染経路を解析するために、組み換えノブタンパク質存在下でNIH3T3細胞を感染させることにより、競合アッセイを行った。同種knobΔ−L16タンパク質とプレインキュベーションすることにより、対照knob−wtタンパク質と比較して、NIH3T3細胞におけるAd5luc−L16の遺伝子導入活性が30%に低下した(図20)。これらのデータから、未知の細胞表面受容体への結合が介在するCAR非依存性感染経路を、本改変ノブが活性化することが示される。一方、同種knob−wtタンパク質は、対照のknobΔ−L16タンパク質と比較して、Ad5luc−wtが介在する、既に低いルシフェラーゼ発現レベルにはあまり影響を与えなかった(図20)が、このことから、NIH3T3細胞においてその形質導入活性が低いことにCARは介在していなかったことが示される。
【実施例6】
【0235】
改変Ad5ファイバーの細胞侵入は、αvインテグリンが介在する。
【0236】
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりマウス繊維芽細胞NIH3T3細胞を入手した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)でこの細胞を培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0237】
細胞の形質導入−培地500μl中の約50,000細胞/ウェルのNIH−3T3細胞を24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスを感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。製造者の使用説明書に従い、Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI,U.S.A)を用いて細胞抽出及びルシフェラーゼアッセイを行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。表示項目における各点は、3回測定の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【0238】
競合実験において、組み換えタンパク質 10μg/ml又は、RGDもしくは対照RGEペプチド4mg/mlとともにDFバッファー中でRTにて60分間、細胞をプレインキュベーションした。次に、組み換えタンパク質又はペプチドを除去せずに、ウイルス(50pp/細胞)を添加し、上述のように感染させた。結果は、それぞれ、対照タンパク質(Ad5luc−wtに対してknobΔ−L16、及びAd5luc−L16に対してknob−wt)又はRGEペプチド存在下における細胞のルシフェラーゼ活性のパーセンテージとして表す。合成ペプチドは、Bio Synthesis(Lewisville,Texas,U.S.A.)から入手した。
【0239】
結果−NIH3T3細胞は、その表面上でCARを発現しないが、αvβ3及びαvβ5インテグリンの発現レベルはかなり高い。従って、発明者らは、RGE(GRGESP;配列番号44)対照ペプチドと比較した、RGD(GRGDSP;配列番号43)ペプチドの存在下でのそれらの形質導入効率を測定することにより、Ad5派生物の細胞侵入におけるインテグリン−ペントン相互作用の役割を調べた。RGDペプチドは、細胞αvインテグリンとのAd5ペントンベースのRGDモチーフの相互作用を妨害し、それによりウイルス侵入を阻害する。NIH3T3細胞をRGDペプチドとプレインキュベーションすることにより、対照RGEペプチドと比較して、Ad5luc−L1、Ad5luc−L16及びAd5luc−L33の形質導入がそれぞれ、40%、60%及び61%低下した。従って、それらが未知の細胞性受容体と最初に相互作用した後、Ad5派生物は、αvインテグリンへの結合を介して内在化される。Ad5luc−wtを用いて同様の実験をおこなったところ、既に低いその形質導入効率が顕著に低下することが明らかとなり、このことから、NIH3T3細胞におけるウイルスの感染性が低いのは、主にαvインテグリンとの直接相互作用によるものであることが示される。
【実施例7】
【0240】
CAR陰性細胞及びCAR陽性細胞における改変Ad5ファイバーの遺伝子導入効率
細胞−American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)を入手した。この細胞をMEMα培地で培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0241】
American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,MD.U.S.A)よりマウス肝臓 NMuLi細胞を入手した。この細胞をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。培地には全て、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FCS)を添加した。
【0242】
細胞の形質導入−培地500μl中の約50,000細胞/ウェルのNIH−3T3細胞及びNMuLi細胞を24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスを感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。CHO細胞に対しては、MEMα培地を使用した。新鮮な完全培地を添加し、タンパク質発現のために48時間、細胞をインキュベーションした。製造者の使用説明書に従い、Luciferase Assay System(Promega,Madison,WI,U.S.A)を用いて細胞抽出及びルシフェラーゼアッセイを行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。表示項目における各点は、3回測定の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【0243】
結果−発明者らは、Ad5突然変異体が用いる非ネイティブ感染経路がまた、NIH3T3及びNMuLi以外の細胞型でも形質導入を促進するか否かを調べた。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞はその細胞表面にCAR及びαvβ3インテグリンを検出不可能なレベルでしか発現せず、αvβ5レベルが低いことから、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を選択した。予想通り、CHO細胞は、Ad5luc−wtによりあまり形質導入されなかった(図21)。しかし、3種類のAd5派生物は全て、Ad5luc−wtよりも非常に高い効率でこの細胞に感染した。Ad5luc−L1及びAd5luc−L33が最も効率が高く、それぞれ、対照wtウイルスの、270倍及び320倍高かった。このように、CHO細胞もまた、その表面にノブ突然変異体が標的とする受容体を表示する。CARが存在せず、αvβ5インテグリンのレベルが低い状態において、この相互作用により、CHO細胞を効率的に形質転換できるようになる。
【0244】
Ad5派生物が標的とする受容体が、CAR陽性細胞でも発現されるか否かを調べるために、CAR及びαvインテグリンを高レベルで発現し、Ad5により効率よく形質導入されるマウス肝臓NMuli細胞を感染させた(図19)。3種類のAd5派生物全てが、Nmuli細胞の感染を引き起こし、その効率はAd5luc−wtより高いか同等であった。過剰な組み換えknob−wtタンパク質により、Ad5luc−wtの感染性が5%に低下した(図20)。一方、同じ条件は、派生物の形質導入効率に影響を与えず、このことから、CAR非依存性細胞侵入経路がNMuli細胞においても有効であることが分かった。
【実施例8】
【0245】
ヒト及びマウス樹状細胞、ヒト初代メラノサイト及びマウス筋肉組織の遺伝子導入効率
細胞−初代マウスDCは、Lutzら、1999、J.Immunol.Methods 223:77−92で述べられているように、Balb/cメス骨髄から得た。簡潔に述べると、トータル骨髄白血球を細菌学用ペトリ皿のPRMI及びGM−CSF(2ng/ml)中にプレーティングした。培地を2日から3日ごとに交換した。インビトロ培養第7日に細胞を使用した。
【0246】
Engeringら、2002、J.Immunol.168:2118−2126で述べられているように、ヒトDC細胞を得た。簡潔に述べると、抗−CD14(Milteny Biotec,Auburn,CA,U.S.A.)を用いたアフィニティー精製により、健康な提供者の軟膜からヒト血液単球を単離した。IL−4(100mg/ml;Duotech,Rocky Hill,NJ,U.S.A.)及びGM−CSF(800U/ml;Duotech,Rocky Hill,NJ,U.S.A.)存在下においてRPMI 1640/10% FCSで単球を培養して、未成熟DCを得た。培地は3日ごとに交換し、第7日に細胞を使用した。
【0247】
患者から初代ヒトメラノサイトを単離し、インビトロで4継代にわたり次の培地で培養した。培地は、30% di Ham’sF12、2% FCS4,4mM L−グルタミネナル(glutamminenale)、50IU/ml−50μg/m ペニシリン−ストレプトマイシン、24.3μg/ml アデニン、5μ/ml インスリン、0.4μg/ml ヒドロコルチゾン、1.36ng/ml トリヨードチロニン、10−10M コレラ毒素、10ng/mlEGF、100ng/ml BFGF,TPAを含む、60% DMEMであった。
【0248】
細胞の形質導入−培地500μl中の約200,000細胞/ウェルのマウス及びヒトDCを24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて24時間インキュベーションした。
【0249】
コンフルエントになった細胞をRFバッファー(RPMI中2%FBS)で洗浄し、RTにて40分間、RFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスに感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をRFバッファーで洗浄し、タンパク質発現のために完全培地とともに48時間インキュベーションした。
【0250】
培地500μl中の約50,000細胞/ウェルの初代ヒトメラノサイトを24ウェルプレートに播種し、5%CO2とともに37℃にて48時間インキュベーションした。コンフルエントになった細胞をDFバッファー(DMEM中2%FBS)で洗浄し、RTにて30分間、DFバッファー中でCsCl精製したアデノウイルスに感染させた。非結合ウイルスを除去し、細胞をDFバッファーで洗浄した。新鮮な完全培地を添加し、タンパク質発現のために48時間、細胞をインキュベーションした。
【0251】
筋肉組織−8週齢メスBalbCマウスの大腿四頭筋に、アデノウイルス野生型(Ad5luc−wt)又はアデノウイルス派生物(Ad5luc−L1及びAd5luc−L33)109、108又は107vpを注射した。生理溶液 50μlでウイルスを希釈した。12個の筋肉に、各アデノウイルス派生物及び野生型ウイルスを注射した(各moiに対して4個の筋肉を使用した。)。
【0252】
注射から48時間後、マウスを屠殺し、筋肉を取り出し、PBSで洗浄して溶解バッファー(Luciferase Assay System,Promega) 300μl中でホモジェナイズした。凍結融解を1回行った後、4℃にて、14000rpm、20分間、抽出液を遠心した。上清を回収し、ルシフェラーゼアッセイに30μlを使用した(Luciferase Assay System,Promega)。BCA Protein Assay kit(Pierce)によりタンパク質定量を行った。タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)としてルシフェラーゼ活性を表す。
【0253】
結果−得られた結果から、Ad5派生物のCAR非依存性親和性が、ある一定の細胞型又は一定の種に限定されないことが示唆された。選択した改変ファイバーが治療において関心のある細胞/組織に対する感染を行うためにより適しているかどうかを調べるために、樹状細胞(DC)、ヒトメラノサイト及び骨格筋組織を選択した。
【0254】
骨髄からマウス未成熟DCを得て、インビトロで増殖させた。FACS解析により、この集団がCD11c+、CD11b+、MHC−I及びMHC−II陽性として確認された。骨髄由来のマウス未成熟DCに、様々なmoiで、Ad5luc−L1及びAd5luc−L33を感染させた。両ウイルスとも、Ad5luc−wtと比較して高い効率でマウス未成熟DCに対して形質導入した(図22A)。特に、Ad5luc−L33は、使用したmoiに依存して、親ベクターよりも24倍から100倍、マウスDCに感染した。健康な提供者の末梢血液からCD14−アフィニティークロマトグラフィーにより精製し、インビトロで分化させたヒト未成熟DCに対して同様の実験を行った。FACS解析により、この集団が、CD1a+、HLA−DR+、CD80+、CD83+、CD86+及びCD14negとして確認された。文献により報告されているように、試験したmoiでは、Ad5luc−wtは未成熟ヒトDCに対してあまり形質導入しなかった(図22B)。一方、Ad5luc−L1及びAd5luc−L33は、形質導入の効率の点で非常に優れていた。すなわち、ヒトDCに取り込まれたAd5luc−L33は、wtウイルスと比較して100倍増加していた。
【0255】
様々なmoiにおいて、Ad5luc−LX派生物をヒト初代メラノサイトに感染させた。Ad5luc−wtと比較して、3種類のAd5luc派生物は、高い形質導入効率を示し、Ad5luc−L33の場合はAd5luc−wtの効率の50倍から900倍であった。
【0256】
BalbCマウス8週齢の大腿四頭筋に、アデノウイルス wt又はアデノウイルス派生物(L1及びL33)109、108又は107vpを注射した。試験した3種類のm.o.i.全てにおいて、アデノウイルス派生物Ad5luc−L1及びAd5luc−L33は、Ad5luc−wtと比較して、筋肉への高い形質導入効率を示した(図23)。すなわち、108vpを注射した場合、Ad5luc−L33及びAd5luc−L1は、マウス筋肉をAd5luc−wtのそれぞれ8倍(p<10exp−5)及び5倍(p<0.001)よく形質導入した。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1】図1は、配列番号1に記載の、改変Ad5ファイバータンパク質、Ad5ファイバー−L1のアミノ酸配列を示す。この配列は、該ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のファイバーノブのHIループ内にL1ペプチドリガンド(配列番号13)を含有する。そのノブドメインに下線を付す。L1ペプチドリガンド配列は、斜字体で表す。L1ペプチドリガンドの挿入を促進するために野生型Ad5ファイバー配列に付加したアミノ酸残基は、小文字で表す。
【図2】図2は、配列番号2に記載の、改変Ad5ファイバータンパク質、Ad5ファイバー−L16のアミノ酸配列を示す。この配列は、該ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のファイバーノブのHIループ内にL16ペプチドリガンド(配列番号14)を含有する。そのノブドメインに下線を付す。L16ペプチドリガンド配列は、斜字体で表す。L16ペプチドリガンドの挿入を促進するために野生型Ad5ファイバー配列に付加したアミノ酸残基は、小文字で表す。
【図3】図3は、配列番号3に記載の、改変Ad5ファイバータンパク質、Ad5ファイバー−L33のアミノ酸配列を示す。この配列は、該ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のファイバーノブのHIループ内にL33ペプチドリガンド(配列番号13)を含有する。そのノブドメインに下線を付す。L33ペプチドリガンド配列は、斜字体で表す。L33ペプチドリガンドの挿入を促進するために野生型Ad5ファイバー配列に付加したアミノ酸残基は、小文字で表す。
【図4】図4は、図1で示すような、及び配列番号1に記載のAd5ファイバー−L1タンパク質をコードする、配列番号4に記載のヌクレオチド配列を示す。この配列は、L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列を本ファイバーノブのHIループに対応する配列内に含有する、Ad5ファイバー遺伝子を表す。そのノブをコードする領域に下線を付す。L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は、斜字体で表す。小文字で表した付加した配列変化は、野生型Ad5ファイバーにL1をコードするヌクレオチド配列の挿入を容易にするために使用する操作を行った制限部位を表し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図5】図5は、図2で示すような、配列番号2に記載のAd5ファイバー−L16タンパク質をコードする、配列番号5に記載のヌクレオチド配列を示す。この配列は、L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列を本ファイバーノブのHIループに対応する配列内に含有する、Ad5ファイバー遺伝子を表す。そのノブをコードする領域に下線を付す。L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は、斜字体で表す。小文字で表した付加した配列変化は、野生型Ad5ファイバーにL16をコードするヌクレオチド配列の挿入を容易にするために使用する操作を行った制限部位を表し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図6】図6は、図3で示すような、配列番号3に記載のAd5ファイバー−L33タンパク質をコードする、配列番号6に記載のヌクレオチド配列を示す。この配列は、L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列を本ファイバーノブのHIループに対応する配列内に含有する、Ad5ファイバー遺伝子を表す。そのノブドメインをコードする領域に下線を付す。L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は、斜字体で表す。小文字で表した付加した配列変化は、野生型Ad5ファイバーにL33をコードするヌクレオチド配列の挿入を容易にするために使用する操作を行った制限部位を表し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図7】図7は、配列番号7に記載の、改変Ad5ファイバー−L1タンパク質、Ad5 fiberΔ−L1のアミノ酸配列を示す。この配列は、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489から492において、CAR結合をなくす、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失を有する。さらに、これは、アミノ酸残基546から547の間において本ファイバーノブのHIループ内にL1ペプチドリガンド(配列番号13)を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付す。L1ペプチドリガンド配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L1をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図8】図8は、配列番号8に記載の、改変Ad5ファイバー−L16タンパク質、Ad5 fiberΔ−L16のアミノ酸配列を示す。この配列は、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489から492における、CAR結合をなくす、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失を有する。さらに、これは、アミノ酸残基546から547の間において本ファイバーノブのHIループ内にL16ペプチドリガンド(配列番号14)を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付す。L16ペプチドリガンド配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L16をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図9】図9は、配列番号9に記載の、改変Ad5ファイバー−L33タンパク質、Ad5 fiberΔ−L33のアミノ酸配列を示す。この配列は、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基489から492における、CAR結合をなくす、アミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失を有する。さらに、これは、アミノ酸残基546から547の間において本ファイバーノブのHIループ内にL33ペプチドリガンド(配列番号15)を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するアミノ酸に二重線を付す。L33ペプチドリガンド配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L33をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図10】図10は、配列番号10に記載の、本発明のAd5 fiberΔ−L1タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。この配列は、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476(ACAGCCTATACA;配列番号47)の欠失を有する。このヌクレオチドの欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCAR結合をなくす、本明細書で述べたアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に対応する。さらに、この配列は、本ファイバーノブのHIループ内のL1ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付す。L1ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L1をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図11】図11は、配列番号11に記載の、本発明のAd5 fiberΔ−L16タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。この配列は、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476(ACAGCCTATACA;配列番号47)の欠失を有する。このヌクレオチドの欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCAR結合をなくす、本明細書で述べたアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に対応する。さらに、この配列は、本ファイバーノブのHIループ内のL16ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付す。L16ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L16をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図12】図12は、配列番号12に記載の、本発明のAd5 fiberΔ−L33タンパク質をコードするヌクレオチド配列を示す。この配列は、野生型Ad5ファイバータンパク質をコードする核酸配列のヌクレオチド1465から1476(ACAGCCTATACA;配列番号47)の欠失を有する。このヌクレオチドの欠失は、Ad5ファイバータンパク質のCAR結合をなくす、本明細書で述べたアミノ酸残基TAYT(配列番号45)の欠失に対応する。さらに、この配列は、本ファイバーノブのHIループ内のL33ペプチドリガンドをコードする核酸配列を含有する。このノブドメインに下線を付す。欠失部分に隣接するヌクレオチドコドンに二重線を付す。L33ペプチドリガンドをコードする核酸配列は斜字体で表す。小文字で表すさらなる配列変化は、L33をコードするヌクレオチド配列の野生型ファイバーへの挿入を容易にするために使用する操作した制限部位を意味し、野生型ファイバーアミノ酸配列を維持するように作用する。
【図13】図13は、λknobΔ−14aa.cysファージディスプレイライブラリーの構造を示す。この図の上部は、野生型Ad5ファイバー遺伝子のアミノ酸位置546から547のknobΔ−L0配列の部分を表す。アミノ酸残基は、三文字コードで示す。knobΔ−L0において、位置546のスレオニン(Thr)及び位置547のプロリン(Pro)をコードするコドン配列の間にヌクレオチドが付加される。さらなるヌクレオチドにより、この領域にSpeI及びNotI部位を入れるが、これは本ファイバーノブ内の候補ペプチドリガンドの挿入を容易にする。このさらなるヌクレオチドは、太字、大文字で表し、それらがコードするさらなるアミノ酸残基は太字で表す。配列番号16は、本ファイバータンパク質配列の残基546及び547、ならびにそれらの間に付加された新しい残基を含む、knobΔ−L0の領域のアミノ酸配列断片を表す。配列番号17は、本ファイバータンパク質のアミノ酸残基546及び547をコードするコドン配列ならびにそれらの間に付加された新しいヌクレオチドを含む、knobΔ−L0の領域のヌクレオチド配列断片を表す。 下のパネルは、knobΔ−14aa.cysライブラリーを作製するために使用される、候補ペプチドリガンドをコードするこのオリゴヌクレオチド混合物の組成を説明する。このペプチドは、レジンスプリット技術により調製した。このパネルの下部の数字は、knobΔ−L0内に挿入される候補ペプチドリガンドの可能性のある14個のアミノ酸残基位置を示す。各バー内の、影付きのボックスは、そのアミノ酸残基位置を作るために使用したコドンプールの個々のコドンの割合を表す。その影付きボックスに、積み重なった2個のボックスが付いているが、これらは、その個々のコドンの配列及びそれがコードするアミノ酸残基を示す。例えば、位置1及び2において、それらの位置に対するアミノ酸残基を作るために使用した個々のコドン配列の35%がNNSヌクレオチド配列を有する。コドン配列内の「N」は、4種類のヌクレオチド:アデニン(A)、シトシン(C)、チミジン(T)又はグアニン(G)のうちいずれかを示す。「S」は、C及びGヌクレオチドが等モル頻度であることを意味する。従って、NNSは、そのバーの上部ボックスにおいて「Xxx」により表されている場合、いずれかのアミノ酸残基を表す。あるいは、それらの位置においてアミノ酸残基を作るために使用した個々のコドン配列の20%が、フェニルアラニン残基(Phe)をコードするTTCヌクレオチド配列を有する。このライブラリーにさらなる変化を加えるために、位置3及び12における固定されたシステイン(Cys)をコードするものを除き、可能性のある各アミノ酸残基位置を作るために使用したコドン配列の5%を欠失させる。ヌクレオチド及び14個の可能性のあるアミノ酸残基位置に隣接する対応するアミノ酸配列は、この合成ペプチドリガンドがknobΔ−L0内に挿入される位置に相当する。このペプチドリガンドは、新しく作られたSpeI及びNotI制限部位を使用して、knobΔ−L0内に挿入される。この候補ペプチドリガンドを挿入した後、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546と547との間のknobΔ−L0に見られる付加されたGly(G)残基を除去する。この新しく付加されたSer残基(S)は、挿入されたペプチドリガンドのアミノ末端に隣接し、新しく付加されたAla−Ala−Ala(AAA)残基は、カルボキシ末端に隣接する。
【図14】図14は、λD−Ad5knob発現カセットの構造を示す。λファージのDタンパク質とAd5遺伝子のノブ領域との間の領域のヌクレオチド配列(配列番号18)及び対応するアミノ酸配列(配列番号19)を詳述する。16Gly−Ser(GS)リピートのリンカー、リボソーム結合部位(RBS)配列及びアンバーコドン配列は、λDタンパク質のカルボキシ末端とノブタンパク質のアミノ末端との間に位置する。数字は、野生型λDのアミノ酸残基及びファイバーアミノ酸残基の位置を意味する。
【図15】図15は、λキャプシドにおける三量体Ad5ノブドメインの表示を示している。マウスmAb12D6及びヒトAbN93(両者とも、Ad5ノブの三量体型に対して特異的)、ならびにAb92抗体(単量体及び三量体構造の両方を検出する。)の、指示されるタンパク質への結合を、ファージ−ELISAにより評価した。結果は、A=A405nm−A620nmとして表す。各点は、3回測定した値の平均を表す。各値に対する標準偏差を報告する。
【図16A】図16A−Bは、λ表示Ad5knobのCAR−陽性911細胞との結合のFACS解析を示す。(A)ファージ介在Ad5knob−wt及びAd5knobΔ−wtの911細胞との結合。ネガティブ対照(Swt及びkNS3)を含む。(B)knob−wtタンパク質の存在下における911細胞へのλknob−wtの結合。タンパク質の非存在下又はλNS3の存在下における対照反応も報告する。
【図16B】図16A−Bは、λ表示Ad5knobのCAR−陽性911細胞との結合のFACS解析を示す。(A)ファージ介在Ad5knob−wt及びAd5knobΔ−wtの911細胞との結合。ネガティブ対照(Swt及びkNS3)を含む。(B)knob−wtタンパク質の存在下における911細胞へのλknob−wtの結合。タンパク質の非存在下又はλNS3の存在下における対照反応も報告する。
【図17】図17は、λknobΔ−L1(L1)、λknobΔ−L16(L16)及びλknobΔ−L33(L33)からのファージ溶解物がNIH3T3細胞と結合することを示す。λファージのNIH3T3細胞への結合は、フローサイトメトリー解析によりアッセイした。データは、PRE標識集団のパーセンテージとして報告する。
【図18】図18は、本発明の新規ペプチドリガンドのアミノ酸配列を示す。本ペプチドリガンドを構成するアミノ酸残基は一文字コードで示す。パネルの一番上の数字は、14個の可能性のあるアミノ酸残基位置で構成される、本ペプチドリガンドのコアアミノ酸配列を示す。
【図19】図19は、NIH3T3又はNMuLi細胞において野生型Ad5luc及びAd5luc−L0両方と比較した、Ad5luc−LXアデノウイルス派生物(Ad5luc−L1、Adluc−L16及びAdluc−L33)の遺伝子導入効率を示す。多重感染度(moi)50で、指示されたウイルスをNIH3T3又はNMuLi細胞に感染させた。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)で表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。ヒストグラムの上の値は、そのウイルスの活性と親Ad5luc−wtのウイルス活性との比を意味する。
【図20】図20は、NIH3T3又はNMuLi細胞における、組み換えノブタンパク質、knobΔ−L16及びknob−wtとの、Ad5luc−L16感染の競合を示す。結果はヒストグラムの上部に示し、対照タンパク質存在下での細胞のルシフェラーゼ活性のパーセンテージとして表す(Ad5luc−wtに対してknobΔ−L16、及びAd5luc−L16に対してknob−wt。)。
【図21】図21は、Ad5luc−LX派生物を用いたCHO細胞に対する感染を示す(Ad5luc−L1、Ad5luc−L16及びAd5luc−L33)。様々なmoiでAd5luc派生物をCHO細胞に感染させた。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)で表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。ヒストグラムの上の値は、このウイルスの活性と親Ad5luc−wtのウイルス活性との比を意味する。
【図22】図22は、Ad5luc−LX派生物が効率的に樹状細胞(DC)に対して形質導入を行うことを示す。(A)骨髄由来マウス未成熟DCの感染。(B)単球由来ヒト未成熟DCの感染。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)として表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。
【図23】図23は、Ad5luc−LX派生物がインビボにおいて筋肉への形質導入を促進することを示す。マウスの大腿四頭筋に、野生型又はAd5luc−LX派生物(L1、L33) を109、108又は107ウイルス粒子(vp)を注射した。注射から48時間後、マウス屠殺し、筋肉を取り出し、ルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)として表す。各値に対する標準偏差を報告する。
【図24】図24は、Ad5luc−LX派生物(L1、L16及びL33)を用いた、ヒト初代メラノサイトの感染を示す。細胞は、様々なmoiでAd5luc派生物を用いて感染させた。ルシフェラーゼ活性は、タンパク質1mgあたりの相対発光量(RLU)として表す。表示項目の各点は、3回測定した値の平均を表し、各値に対する標準偏差を報告する。ヒストグラムの上の値は、このウイルスの活性と親Ad5luc−wtのウイルス活性との比を意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。)、
組み換えアデノウイルス。
【請求項2】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項3】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項4】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含有されている、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項5】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項6】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項7】
前記Ad5ファイバータンパク質が、CAR結合がなくなるように、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項6に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項8】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置2が、Phe残基であり;
(c)残基位置3及び12が、Cys残基であり;
(d)残基位置4から11が、Xaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(e)残基位置14が、Xaa残基であり、好ましくは、Pro残基であり;
位置2、3又は12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(d)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(c)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(c)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まない。)、
組み換えアデノウイルス。
【請求項9】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12が、Cys残基であり;
(c)残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置8及び9が、Gly残基であり;
(e)残基位置10及び11が、Ser残基であり;
(f)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置1、2、4から7、13及び14を含むいずれかの可変残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、最高10個のアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、残基位置3と8との間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まない。)
組み換えアデノウイルス。
【請求項10】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置2が、Phe残基であり;
(c)残基位置3及び12が、Cys残基であり;
(d)残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくは、Gly、Ser又はValであり;
(e)残基位置8及び9が、Gly残基であり;
(f)残基位置10及び11が、Ser残基であり;
(g)残基位置14がXaa残基であり、好ましくは、Proであり;
位置1、4から7、13及び14を含むいずれかの可変残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、最高10個のアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、残基位置3と8との間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まない。)
組み換えアデノウイルス。
【請求項11】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、組み換えアデノウイルス。
【請求項12】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項13】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項14】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含まれている、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項15】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項16】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項17】
前記Ad5ファイバータンパク質が、CAR結合をなくすように、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項16に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項18】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含み、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で開示されているアミノ酸配列からなるものではない。)、
単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項19】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項20】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項21】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含まれている、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項22】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項18に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項23】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項24】
CAR結合をなくすように、前記Ad5ファイバータンパク質が、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項23に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項25】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含み、該ペプチドリガンドが、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項26】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項27】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項28】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含まれている、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項29】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項25に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項30】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項31】
CAR結合をなくすように、前記Ad5ファイバータンパク質が、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項30に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項32】
前記ペプチドリガンドのアミノ酸配列が、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択される、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項33】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含み、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置、3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置、4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置、14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。)、
改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項34】
請求項33に記載の核酸分子を含む、組み換え細胞において改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるための、発現ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載の発現ベクターを含有する、改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現する宿主細胞。
【請求項36】
(a)請求項34に記載の発現ベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクションすることと;
(b)前記発現ベクターから改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させる条件下で、段階(a)の宿主細胞を培養することと、を含む、組み換え宿主細胞において改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるプロセス。
【請求項37】
請求項33に開示されているペプチドリガンドをコードし、前記ペプチドリガンドのアミノ酸配列が配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択される、単離された核酸分子。
【請求項38】
改変アデノウイルスファイバーノブに融合したファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質をそれぞれがその外面にディスプレイすることができる組み換えファージを、複数含み、前記改変ファイバーノブが、14残基位置のコアアミノ酸配列を含む、CAR以外の表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有し、前記コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で開示されているアミノ酸配列からなるものではない。)、
ファージディスプレイライブラリー。
【請求項39】
改変アデノウイルスファイバーノブに融合したファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質をそれぞれがその外面にディスプレイすることができる組み換えファージを、複数含み、前記改変ファイバーノブが、14残基位置のコアアミノ酸配列を含む、CAR以外の表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有し、前記コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
図13に図示されているように、位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含む(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で開示されているアミノ酸配列からなるものではない。)、
ファージディスプレイライブラリー。
【請求項40】
前記ペプチドリガンドが、ファイバーノブのループドメイン内に挿入されている、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項41】
前記改変ファイバーノブが、Ad5ファイバーノブである、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項42】
前記ペプチドリガンドが、ファイバーノブのHIループ内に含まれている、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項43】
前記ライブラリーが、バクテリオファージλ上にディスプレイされる、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項44】
前記ファージ外殻タンパク質が、バクテリオファージλの主要頭部Dタンパク質である、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項45】
(a)請求項44に記載のファージディスプレイライブラリーを提供する段階と、
(b)CAR陽性又はCAR陰性細胞に対する前記ライブラリーをスクリーニングする段階と、を含む、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するための方法。
【請求項46】
前記ライブラリーがNIH−3T3細胞上でスクリーニングされる、請求項45に記載の、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するための方法。
【請求項47】
請求項1に記載の組み換えアデノウイルスを投与する段階を含む、宿主細胞に対してインビボで形質導入を行う方法。
【請求項48】
前記細胞がCARを殆ど又は全く発現しない、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が樹状細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が筋肉細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞がメラノサイトである、請求項47に記載の方法。
【請求項1】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。)、
組み換えアデノウイルス。
【請求項2】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項3】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項4】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含有されている、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項5】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項6】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項1に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項7】
前記Ad5ファイバータンパク質が、CAR結合がなくなるように、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項6に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項8】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置2が、Phe残基であり;
(c)残基位置3及び12が、Cys残基であり;
(d)残基位置4から11が、Xaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(e)残基位置14が、Xaa残基であり、好ましくは、Pro残基であり;
位置2、3又は12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(d)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(c)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(c)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まない。)、
組み換えアデノウイルス。
【請求項9】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12が、Cys残基であり;
(c)残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置8及び9が、Gly残基であり;
(e)残基位置10及び11が、Ser残基であり;
(f)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置1、2、4から7、13及び14を含むいずれかの可変残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、最高10個のアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、残基位置3と8との間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まない。)
組み換えアデノウイルス。
【請求項10】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置2が、Phe残基であり;
(c)残基位置3及び12が、Cys残基であり;
(d)残基位置4から7が、Xaa残基であり、好ましくは、Gly、Ser又はValであり;
(e)残基位置8及び9が、Gly残基であり;
(f)残基位置10及び11が、Ser残基であり;
(g)残基位置14がXaa残基であり、好ましくは、Proであり;
位置1、4から7、13及び14を含むいずれかの可変残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、最高10個のアミノ酸残基が残基位置3と残基位置8との間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、残基位置3と8との間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まない。)
組み換えアデノウイルス。
【請求項11】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含む改変ファイバータンパク質を有し、前記ペプチドリガンドが配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、組み換えアデノウイルス。
【請求項12】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項13】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項14】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含まれている、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項15】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項16】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項11に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項17】
前記Ad5ファイバータンパク質が、CAR結合をなくすように、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項16に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項18】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含み、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で開示されているアミノ酸配列からなるものではない。)、
単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項19】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項20】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項21】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含まれている、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項22】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項18に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項23】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項18に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項24】
CAR結合をなくすように、前記Ad5ファイバータンパク質が、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項23に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項25】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含み、該ペプチドリガンドが、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項26】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのループドメイン内に挿入されている、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項27】
前記改変ファイバータンパク質が、Ad5ファイバータンパク質である、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項28】
前記ペプチドリガンドが、ファイバータンパク質ノブのHIループ内に含まれている、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項29】
前記改変ファイバータンパク質が、CARを結合しない、請求項25に記載の組み換えアデノウイルス。
【請求項30】
前記ペプチドリガンドが、Ad5ファイバータンパク質のアミノ酸残基546とアミノ酸残基547との間に位置する、請求項25に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項31】
CAR結合をなくすように、前記Ad5ファイバータンパク質が、アミノ酸残基489からアミノ酸残基492までの欠失を含有する、請求項30に記載の単離されたアデノウイルスファイバータンパク質。
【請求項32】
前記ペプチドリガンドのアミノ酸配列が、配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択される、請求項1に記載の単離されたペプチド。
【請求項33】
CAR以外の細胞表面結合部位に対するペプチドリガンドを含み、前記ペプチドリガンドが14残基位置のコアアミノ酸配列を含み、該コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置、3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置、4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置、14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で述べられるアミノ酸配列からなるものではない。)、
改変アデノウイルスファイバータンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項34】
請求項33に記載の核酸分子を含む、組み換え細胞において改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるための、発現ベクター。
【請求項35】
請求項34に記載の発現ベクターを含有する、改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現する宿主細胞。
【請求項36】
(a)請求項34に記載の発現ベクターを適切な宿主細胞にトランスフェクションすることと;
(b)前記発現ベクターから改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させる条件下で、段階(a)の宿主細胞を培養することと、を含む、組み換え宿主細胞において改変アデノウイルスファイバータンパク質を発現させるプロセス。
【請求項37】
請求項33に開示されているペプチドリガンドをコードし、前記ペプチドリガンドのアミノ酸配列が配列番号13、配列番号14及び配列番号15からなる群より選択される、単離された核酸分子。
【請求項38】
改変アデノウイルスファイバーノブに融合したファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質をそれぞれがその外面にディスプレイすることができる組み換えファージを、複数含み、前記改変ファイバーノブが、14残基位置のコアアミノ酸配列を含む、CAR以外の表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有し、前記コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含み、最高10個のアミノ酸残基が部分(b)で述べられた残基位置の間に付加されることができる(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で開示されているアミノ酸配列からなるものではない。)、
ファージディスプレイライブラリー。
【請求項39】
改変アデノウイルスファイバーノブに融合したファージ外殻タンパク質を含む融合タンパク質をそれぞれがその外面にディスプレイすることができる組み換えファージを、複数含み、前記改変ファイバーノブが、14残基位置のコアアミノ酸配列を含む、CAR以外の表面結合部位に対するペプチドリガンドを含有し、前記コアアミノ酸配列において、
(a)残基位置1、2及び13がXaa残基であり、好ましくは、Tyr、Trp又はPheであり;
(b)残基位置3及び12がCys残基であり;
(c)残基位置4から11がXaa残基であり、好ましくはGly、Ser又はValであり;
(d)残基位置14がXaa残基であり、好ましくはProであり;
図13に図示されているように、位置3及び位置12以外の前記配列内のいずれかの残基位置において、1つ又は複数の残基が前記コアアミノ酸配列から欠失されることができ、領域(c)が少なくとも2個のアミノ酸残基を含む(但し、前記コアアミノ酸配列は、部分(b)で述べられた残基位置の間に連続したArg−Gly−Asp配列を含まず、前記ペプチドリガンドは、配列番号46で開示されているアミノ酸配列からなるものではない。)、
ファージディスプレイライブラリー。
【請求項40】
前記ペプチドリガンドが、ファイバーノブのループドメイン内に挿入されている、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項41】
前記改変ファイバーノブが、Ad5ファイバーノブである、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項42】
前記ペプチドリガンドが、ファイバーノブのHIループ内に含まれている、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項43】
前記ライブラリーが、バクテリオファージλ上にディスプレイされる、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項44】
前記ファージ外殻タンパク質が、バクテリオファージλの主要頭部Dタンパク質である、請求項38に記載のファージディスプレイライブラリー。
【請求項45】
(a)請求項44に記載のファージディスプレイライブラリーを提供する段階と、
(b)CAR陽性又はCAR陰性細胞に対する前記ライブラリーをスクリーニングする段階と、を含む、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するための方法。
【請求項46】
前記ライブラリーがNIH−3T3細胞上でスクリーニングされる、請求項45に記載の、CAR以外の細胞特異的結合部位に対するペプチドリガンドを同定するための方法。
【請求項47】
請求項1に記載の組み換えアデノウイルスを投与する段階を含む、宿主細胞に対してインビボで形質導入を行う方法。
【請求項48】
前記細胞がCARを殆ど又は全く発現しない、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が樹状細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が筋肉細胞である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞がメラノサイトである、請求項47に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2007−503843(P2007−503843A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529775(P2006−529775)
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004999
【国際公開番号】WO2004/101799
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月10日(2004.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004999
【国際公開番号】WO2004/101799
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(501209427)イステイチユート・デイ・リチエルケ・デイ・ビオロジア・モレコラーレ・ピ・アンジエレツテイ・エツセ・ピー・アー (90)
【Fターム(参考)】
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