説明

アデノ随伴ウイルスの薬学処方物における使用のための賦形剤、およびそれにより構成される薬学処方物

【課題】rAAVビリオンを保存するための処方物を提供する。
【解決手段】組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを含む、安定な薬学組成物を記載する。この組成物は、凍結および融解のサイクルへの曝露ならびにガラスおよびポリプロビレンバイアルでの保存のような条件下での組換えAAVベクターゲノムの欠失、ならびに形質転換能力に対する保護を提供する。この組成物は、1つ以上の二価アルコールまたは多価アルコール、および必要に応じてソルビタンエステルのような界面活性剤と組み合わせたAAVウイルスを含む。この組成物の使用方法もまた、記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的にDNAの送達方法に関する。より詳細には、本発明は、処方物の操作、保存、輸送などに起因する形質転換能力の欠損に対する保護を提供する組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンを含む安定な薬学処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
薬剤としての使用のための任意の化合物の商業化は、処方物中で化合物が調製、パッケージ、そして保存される処方物の慎重な研究を必要とする。当然ながら、処方物は、ヒトおよび/または家畜の投与と両立できる。処方物は、薬剤が長期間の有効性を保持するようでなければならない。実際に、処方物それ自体は、長期間にわたって安定でなければない。処方物は、処方物の精製、ならびに処方物中に含まれる薬剤の精製のために使用される技術と適合していなければならない。最終的に、処方物は、その中で薬剤が保存される物質と適合していなければならない。薬剤が、安定性のために凍結されなければならない場合、処方物は、凍結−融解に起因する不活性化または変性に対するいくつかの保護を提供することが好ましい。加えて、処方物は、薬剤の種々の希釈のための適当な環境を提供するべきである。
【0003】
代表的には、薬学的薬剤は、無菌の容器中に凍結乾燥された処方物として保存される。薬学的薬剤処方物は、このような非水性状態で安定である場合、凍結乾燥され得る。処方物が、凍結保存されなければならない場合、これは、特に重要である。なぜなら、凍結乾燥は、水溶液中調製物が凍結され、後に融解される場合、生じ得る有害な後遺症を最小にするからである。
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、多くのヒト組織および細胞型に容易に形質転換するウイルスである。従って、AAVは、遺伝子治療および核酸の免疫化に使用されてきた。これらの状況におけるAAVの使用は、上記の薬学処方物の要件の研究を必要とする。例えば、AAVを含むサンプルが凍結乾燥されないこと好ましい。なぜなら、少量のウイルスが、エアロゾル化され、そして不注意に意図されていない宿主に伝播する可能性があるからである。しかし、AAVは、ほとんどのウイルス、特にエンベロープ化したウイルスを不活性化する種々の条件下で安定であることが公知であるから、AAV処方物の調製は、問題があると以前には考えられていなかった。
【0005】
それゆえ、組換えAAV(rAAV)ビリオンの活性が、保存のために使用された処方物およびその処方物が曝露された条件に依存して、有意に低下したことを見出すとは予期されなかった。例えば、rAAV処方物の形質導入活性は、容器の性質、処方物の組成、処方物の温度、ならびに温度の変化および保存されたrAAVビリオンの濃度に依存し得ることが見出されている。
【0006】
それゆえ、ガラスを含む種々の物質で作られた容器中で長期間のrAAVビリオンの活性を保存する、rAAVビリオンを保存するための処方物を提供することは当該分野における有意な進歩である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の開示)
本発明は、種々の賦形剤組成物が、組換えAAVビリオンを安定する効果を有し、これにより本明細書中で記載される賦形剤を欠くAAV組成物と比較してrAAVベクターゲノムの欠失がより少なくなり、そしてより高いレベルの形質転換能力が達成されたという発見に基づく。本明細書中で記載される異なる実施形態の種々の形態が、組み合わせられ得る。
【0008】
1つの実施形態において、次いで、rAAVビリオンを含む薬学組成物が提供される。その組成物は、rAAVベクターゲノムの欠失ならびに凍結および融解のサイクルへの曝露、およびガラスまたはポリプロピレンバイアル中での保存のような条件下での形質転換能力に対する保護を提供する。その組成物は、1つ以上のソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのような二価アルコールまたは多価アルコール、および必要に応じてソルビタンエステルのような界面活性剤を含む。
【0009】
さらなる実施形態において、1以上の用量で与えられ、そしてソルビトールが約1重量%〜約5重量%の濃度で存在し、ならびに界面活性剤が約0.1重量%〜約1重量%で存在し、ここで、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)またはポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(HYPERLINK "mailto:TWEEN@80" TWEEN−80)である場合、薬学組成物は、治療効果を提供するのに効果的な量でrAAVビリオンを含む。
【0010】
さらに他の実施形態において、凍結および融解のサイクルへのビリオンの曝露から生じる活性の損失から組換えAAVビリオンを保護する方法は、ガラス容器中でのビリオンの保存から生じる活性の損失から組換えAAVビリオンを保護するための方法として提供される。その方法は、ビリオンと二価アルコールまたは多価アルコール含むビリオンを安定化組成物とを混ぜる工程を含む。特定の実施形態では、アルコールは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびソルビトールからなる群より選択された1つ以上のアルコールである。この方法で使用される組成物は、必要に応じてソルビタンエステルのような界面活性剤を含む。
【0011】
特定の実施形態において、この方法において使用される組成物は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(HYPERLINK "mailto:TWEEN@80" TWEEN−80)からなる群より選択されたソルビトールおよびソルビタンエステルを含む。
【0012】
本発明はまた、以下の項目を提供する。
【0013】
(項目1) 組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ビリオンおよび少なくとも1つの二価アルコールまたは多価アルコールを含む、薬学組成物。
【0014】
(項目2) 上記二価アルコールまたは多価アルコールがポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびソルビトールからなる群より選択される1つ以上のアルコールである、項目1に記載の薬学組成物。
【0015】
(項目3) 上記1つ以上のアルコールがソルビトールであり、そして該ソルビトールが約0.1重量%〜約10重量%の濃度で存在する、項目2に記載の薬学組成物。
【0016】
(項目4) ソルビトールが約1重量%〜約5重量%の濃度で存在する、項目3に記載の薬学組成物。
【0017】
(項目5) 上記1つ以上のアルコールがポリエチレングリコールであり、そして該ポリエチレングリコールが約2重量%〜約40重量%の濃度で存在する、項目2に記載の薬学組成物。
【0018】
(項目6) ポリエチレングリコールが約10重量%〜約25重量%の濃度で存在する、項目5に記載の薬学組成物。
【0019】
(項目7) 上記1つ以上のアルコールがプロピレングリコールであり、そして該プロピレングリコールが約2重量%〜約60重量%の濃度で存在する、項目2に記載の薬学組成物。
【0020】
(項目8) プロピレングリコールが約5重量%〜約30重量%の濃度で存在する、項目7に記載の薬学組成物
(項目9) 界面活性剤をさらに含む、項目1〜8のいずれかに記載の薬学組成物。
【0021】
(項目10) 上記界面活性剤が非イオン性の界面活性剤である、項目9に記載の薬学組成物。
【0022】
(項目11) 上記界面活性剤がソルビタンエステルである、項目10に記載の薬学組成物。
【0023】
(項目12) 項目11に記載の薬学組成物であって、ここで上記界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル(TWEEN−40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(TWEEN−60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル(TWEEN−65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)およびポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル(TWEEN−85)からなる群より選択される、薬学組成物。
【0024】
(項目13) 上記界面活性剤が約0.05重量%〜約5重量%の濃度で存在するポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)である、項目12に記載の薬学組成物。
【0025】
(項目14) 上記界面活性剤が約0.05重量%〜約5重量%の濃度で存在するポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)である、項目12に記載の薬学組成物。
【0026】
(項目15) 1以上の用量で与えられる場合に、治療効果を提供するために十分な量で存在する組換えAAVビリオンを含む薬学組成物であって、ソルビトールが約1重量%〜約5重量%の濃度で存在し、そして界面活性剤が約0.1重量%〜約1重量%の濃度で存在し、ここで該界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)またはポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)である、薬学組成物。
【0027】
(項目16) 凍結および融解のサイクルへのビリオンの曝露から生じる活性の損失から組換えAAVビリオンを保護するための方法であって、該方法は該ビリオンと二価アルコールまたは多価アルコールを含むビリオン安定化組成物とを混ぜる工程を包含する、方法。
【0028】
(項目17) 上記二価アルコールまたは多価アルコールが、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびソルビトールからなる群より選択される1つ以上のアルコールである、項目16に記載の方法。
【0029】
(項目18) 上記1つ以上のアルコールがソルビトールである、項目17に記載の方法。
【0030】
(項目19) 上記1つ以上のアルコールがポリエチレングリコールである、項目17に記載の方法。
【0031】
(項目20) 上記1つ以上のアルコールがプロピレングリコールである、項目17に記載の方法。
【0032】
(項目21) 上記ビリオン安定化組成物がさらに界面活性剤を含む、項目16〜20のいずれかに記載の方法。
【0033】
(項目22) 上記界面活性剤がソルビタンエステルである、項目21に記載の方法。
【0034】
(項目23) 項目22に記載の方法であって、ここで上記ソルビタンエステルがポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル(TWEEN−40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(TWEEN−60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル(TWEEN−65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)およびポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル(TWEEN−85)からなる群より選択される、方法。
【0035】
(項目24) 上記組換えAAVビリオンが凍結乾燥された調製物として提供される、項目16〜23のいずれかに記載の方法。
【0036】
(項目25) 凍結および解凍のサイクルへのビリオンの曝露から生じる活性の損失から組換えAAVビリオンを保護する方法であって、該方法は該ビリオンとビリオン安定化組成物(ソルビトールと、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)からなる群より選択されるソルビタンエステルとを含む)とを混ぜる工程を包含する、方法。
【0037】
(項目26) ガラス容器中でのビリオンの保存から生じる活性の損失から組換えAAVビリオンを保護する方法であって、該ビリオンとを二価アルコールまたは多価アルコールを含むビリオン安定化組成物とを混ぜる工程を包含する、方法。
【0038】
(項目27) 上記二価アルコールまたは多価アルコールが、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールおよびソルビトールからなる群より選択される1つ以上のアルコールである、項目26に記載の方法。
【0039】
(項目28) 上記1つ以上のアルコールがソルビトールである、項目27に記載の方法。
【0040】
(項目29) 上記1つ以上のアルコールがポリエチレングリコールである、項目27に記載の方法。
【0041】
(項目30) 上記1つ以上のアルコールがプロピレングリコールである、項目27に記載の方法。
【0042】
(項目31) 上記ビリオン安定化組成物がさらに界面活性剤を含む、項目26〜30のいずれかに記載の方法。
【0043】
(項目32) 上記界面活性剤がソルビタンエステルである、項目31に記載の方法。
【0044】
(項目33) 項目32に記載の方法であって、ここで上記ソルビタンエステルがポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル(TWEEN−40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(TWEEN−60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル(TWEEN−65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)およびポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル(TWEEN−85)からなる群より選択される、方法。
【0045】
(項目34) 上記組換えAAVビリオンが凍結乾燥された調製物として提供される、項目26〜33のいずれかに記載の方法。
【0046】
(項目35) ガラス容器中でのビリオンの保存から生じる活性の損失から組換えAAVビリオンを保護する方法であって、該ビリオンをビリオン安定化組成物(ソルビトールと、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)からなる群より選択されるソルビタンエステルとを含む)とを混ぜる工程を包含する、方法。

本発明のこれらおよび他の実施形態は、本明細書の開示に照らして、当業者に容易である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、実施例中に記載されたような組換えAAVベクター(rAAV−hFIX)の形質導入能力におけるガラスバイアル中での温度、ベクターの希釈および保存の効果を示す棒グラフである。x軸における数値は、保存温度を示し;ppバイアルは、ポリプロピレンバイアル中に保存されたサンプルを示し、そしてglバイアルは、ガラス中に保存されたサンプルを示す。
【図2】図2は、実施例3に記載されるように行われた実験の結果を示す。ここで、293−HEK細胞は、記載された種々の希釈で、ポリプロピレンまたはガラス中に1%または5%ソルビトール中に、保存されたサンプルを使用する1×108ベクターゲノムを用いて形質導入された。棒グラフは、rAAV−hFIXのng/mlを表し、そして棒グラフの上の線グラフは、希釈について正規化したデータを表す。
【図3】図3は、実施例3に記載されるように行われた実験の結果を示す。ここで、293−HEK細胞は、記載された種々の希釈で、ポリプロピレンまたはガラス中に1%または5%ソルビトール中に、保存されたサンプルを使用する5×108ベクターゲノムを用いて形質導入された。棒グラフは、rAAV−hFIXのng/mlを表し、そして棒グラフの上の線グラフは、希釈について正規化したデータを表す。
【図4】図4は、ベクターゲノムの計算および形質導入能力のアッセイのために−80℃または環境温度(室温)で行われた実験の結果を示す。ここで、形質導入は、実施例3に記載されるように1×108ベクターゲノムを用いてなされた。栗色(右上り斜線)のバーは、室温でなされた実験の結果を示し、そして明るい青(右下り斜線)のバーは、−80℃でなされた実験を示す。
【図5】図5は、ベクターゲノムの計算および形質導入能力のアッセイのために−80℃または環境温度(室温)で行われた実験の結果を示す。ここで、形質導入は、実施例3に記載されるように5×108ベクターゲノムを用いてなされた。栗色(右上り斜線)のバーは、室温でなされた実験の結果を示し、そして明るい青(右下り斜線)のバーは、−80℃でなされた実験を示す。
【図6】図6は、表4に与えられたバラメーターを使用する実施例4に記載されたように実験で得られた結果を示す。緑(右上り斜線)のバーは、1×108ベクターゲノムを使用して行われた実験を示し;赤(右下り斜線)のバーは、5×108ベクターゲノムを使用して行われた実験を示し;ピンク(右下り太線入り斜線)のバーは、1×109ベクターゲノムを使用して行われた実験を示し;暗い青(右上り太線入り斜線)のバーは、5×108ベクターゲノムを使用して行われた実験を示す。
【図7】図7は、表4に与えられたパラメーターを使用して実施例4に記載された実験で得られ、そしてベクターゲノムとして再グラフ化された結果を示す。暗い青(右上り斜線)のバーは、希釈剤として培地を使用して行った実験を表し;ピンク(右下り斜線)のバーは、希釈剤として0.1%TWEEN−20を使用して行った実験を表し;黄(縦線)のバーは、希釈剤として0.2%TWEEN−20を使用して行った実験を表し;赤(横線)のバーは、希釈剤として0.5%TWEEN−20を使用して行った実験を表し;緑(右下り破線)のバーは、希釈剤として0.1%TWEEN−80を使用して行った実験を表し;茶(右上り破線)のバーは、希釈剤として0.2%TWEEN−80を使用して行った実験を表し;ラベンダー(横破線)のバーは、希釈剤として0.5%TWEEN−80を使用して行った実験を表し;暗い灰色がかった青(縦破線)のバーは、希釈剤として2%PEG−3350を使用して行った実験を表し;明るい緑がかった青(右下り太線入り斜線)のバーは、希釈剤として3%PEG−3350を使用して行った実験を表し;紫−ストライプ(右上り太線入り斜線)のバーは、希釈剤として2.25%グリシンを使用して行った実験を表し;明るい青(黒ぬり)のバーは、希釈剤として0.1% TWEEN−20+2% PEG−3350+2.25%グリシンを使用して行った実験を表し;青(白ぬき)のバーは、希釈剤として0.1%TWEEN−80+2% PEG−3350+2.25%グリシンを使用して行った実験を表す。すべての事例において、賦形剤は、1%ソルビトールを含む。
【図8】図8は、表5に記載されたようにパラメーターを使用する組換えAAVベクターの安定性における処方物組成物の効果を決定するために実施例5に記載された実験において得られた結果を示す。明るい青(右下り斜線)のバーは、希釈剤として培地を使用して行われた実験を表し;黄(右上り斜線)のバーは、希釈剤として10%プロピレングリコールを使用して行われた実験を表し;ピンク(縦線)のバーは、希釈剤として25%プロピレングリコールを使用して行われた実験を表し;明るい緑がかった青(横線)のバーは、希釈剤として50%プロピレングリコールを使用して行われた実験を表し;暗い青(横破線)のバーは、希釈剤として18%PEG−400を使用して行われた実験を表し;明るい茶(縦破線)のバーは、希釈剤として25%プロピレングリコール+0.2%TWEEN−20を使用して行われた実験を表し;青(右上り破線)のバーは、希釈剤として25%プロピレングリコール+0.2%TWEEN−80を使用して行われた実験を表す。
【図9】図9は、表6に記載されたように組換えAAVベクターの安定性における種々の賦形剤および保存条件の効果を決定するために実施例6に記載された実験において得られた結果を示す。明るい青(右上り斜線)のバーは、希釈剤として、培地そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;赤(右下り斜線)のバーは、希釈剤として、0.5%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;緑−ストライプ(縦線)のバーは、希釈剤として、1%ソルビトールそして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;黄(横線)のバーは、希釈剤として、培地そして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;灰色(右上り破線)のバーは、希釈剤として、0.5%TWEEN−80そして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;紫−ストライプ(右下り破線)のバーは、希釈剤として、1%ソルビトールそして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;暗い青(縦破線)のバーは、希釈剤として、培地そして+4℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;青(横破線)のバーは、希釈剤として、0.5%TWEEN−80そして+4℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;青−ストライプ(右上り破線入り斜線)のバーは、希釈剤として、1%ソルビトールそして+4℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;からし色(右下り破線入り斜線)のバーは、希釈剤として、培地そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;明るい黄(黒ぬり)のバーは、希釈剤として、0.5%TWEEN−80そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;ピンク−ストライプ(白ぬき)のバーは、希釈剤として、1%ソルビトールそして+4℃ポリプロピレン中保存を使用し行われた実験を表す。
【図10】図10は、ガラスバイアルまたはポリプロピレンバイアル中に保存されたサンプルにおけるrAAVベクターの活性の欠失における種々の賦形剤の効果を決定するために実施例7に記載されたように実験において得られた結果を示す。ラベンダー色(右上り斜線)のバーは、希釈剤として、培地そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;明るい青−ストライプ(右下り斜線)のバーは、希釈剤として、1%ソルビトールそして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;暗い青−ストライプ(縦線)のバーは、希釈剤として、10%ポリピレングリコール(PG)そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;灰色(横線)のバーは、希釈剤として、25%PGそして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;青(右下り破線)のバーは、希釈剤として、10%PG+0.2%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;黄(右上り破線)のバーは、希釈剤として、25%PG+0.2%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;茶−ストライプ(横破線)のバーは、希釈剤として、10%PG+0.5%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;紫−ストライプ(縦破線)のバーは、希釈剤として、25%PG+0.5%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;暗い紫(右上り太線入り斜線)のバーは、希釈剤として、培地そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;ピンク(右下り太線入り斜線)のバーは、希釈剤として、1%ソルビトールそして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;明るい黄(右下り破線入り斜線)のバーは、希釈剤として、10%PGそして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;明るい青緑色(右上り破線入り斜線)のバーは、希釈剤として、25%PGそして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;暗い緑(太線入り横線)のバーは、希釈剤として、10%PG+0.2%TWEEN−80そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;明るい青(破線入り横線)のバーは、希釈剤として、25%PG+0.2%TWEEN−80そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;緑(黒ぬり)のバーは、希釈剤として、10%PG+0.5%TWEEN−80そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;暗い青(白ぬき)のバーは、希釈剤として、25%PG+0.5%TWEEN−80そして+4℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表す。図中の番号「118」は、特定の実施形態の番号を表す。
【図11】図11は、ガラスバイアルまたはポリプロピレンチューブに保存されたサンプルの凍結/融解サイクル後の組換えAAVベクターの安定性において5%ソルビトール単独、および種々の賦形剤と組み合わされた5%ソルビトールの効果を決定するために実施例8に記載されたように実験において得られた結果を示す。明るい青(右下り斜線)のバーは、希釈剤として、培地(ソルビトールは含まない)そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;ピンク(右上り斜線)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトールそして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;黄(横線)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトール+0.1%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;緑(縦線)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトール+0.25%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;明るい茶(右上り破線)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトール+0.5%TWEEN−80そして−80℃ガラス中保存を使用して行われた実験を表し;明るい青緑(右下り破線)のバーは、希釈剤として、培地(ソルビトールは含まない)そして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;灰色(縦破線)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトールそして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;青(横破線)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトール+0.1%TWEEN−80そして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;黄緑(黒ぬり)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトール+0.25%TWEEN−80そして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表し;赤(白ぬき)のバーは、希釈剤として、5%ソルビトール+0.5%TWEEN−80そして−80℃ポリプロピレン中保存を使用して行われた実験を表す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(発明の詳細な説明)
本発明の実行は、他で示されない限り、当該技術分野の範囲内のウイルス学、微生物学、分子生物学および組換えDNA技術の従来の方法を利用する。このような技術は、文献において十分に説明される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(最新版);DNA Cloning:A Practical Approach、第1巻および第2巻(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gait編、最新版);Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins編、最新版);Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins編、最新版);CRC IIandbook of Parvoviruses、第1巻および第2巻(P.Tijssen編);Fundamental Virology、第2版、第1巻および第2巻(B.N.FieldsおよびD.M.Knipe編);Freshney Culture of Animal Cells、A Manual of Basic Technique(Wiley−Liss、第3版);およびAusubelら(1991)Current Protocols in Molecular Biology(Wiley Interscience、NY)を参照のこと。
【0049】
本明細書および添付した特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」「an」および「the」は、その中身が他で明確に示されない限り、複数についての言及を含む。
【0050】
(A.定義)
本発明を記載するにおいて、以下の用語が利用され、そして以下に示すように規定されることが意図される。
【0051】
「ベクター」は、任意の遺伝的エレメントを意味し、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオンなどがある。ベクターは、適切な制御エレメントと関連づけられる場合に複製を可能にし、そして細胞の間で遺伝子配列を移動し得る。したがって、この用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。
【0052】
「AAVベクター」は、アデノ随伴ウイルス血清型由来のベクターを意味し、AAV−1、AAV−2、AAV−3、AAV−4、AAV−5、AAV−6などを制限なく含む。AAVベクターは、全体または一部を欠失する1つ以上のAAV野生型遺伝子、好ましくは、rep遺伝子および/またはcap遺伝子(以下に記載される)を有し得るが、機能的連接ITR配列(以下にも記載される)を残存する。機能的ITR配列は、AAVビリオンの救出、ウイルスの複製およびパッケージングに必要である。したがって、AAVベクターは、複製およびパッケージングのためのcisにおいて要求される少なくともこれらの配列(例えば、機能的ITR)を含むことを、本明細書中で規定される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列に必要でなく、そして、この配列が機能的な救出、複製およびパッケージングを提供する限り、変化され得る(例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって)。
【0053】
「組換えウイルス」は、遺伝的に変化された(例えば、粒子中への異種核酸構築物の付加または挿入によって)ウイルスを意味する。
【0054】
「AAVビリオン」は、野生型(wt)AAVウイルス粒子(AAVカプシドタンパク質コートに関与する、直線状で、単鎖のAAV核酸ゲノムを含む)のような完全なウイルス粒子を意味する。この点について、単鎖AAV核酸分子のいずれかの相補的センス(例えば、「センス」鎖または「アンチセンス」鎖)が、いずれか1つのAAVビリオンにパッケージされ得、そして両鎖は同等に感染性である。
【0055】
「組換えAAVビリオン」または「rAAVビリオン」は、感染性で、AAV
ITRによって両側に隣接される目的のDNA分子をカプシド形成するAAVタンパク質シェルを含む複製欠損ウイルスとして、本明細書中で規定される。rAAVビリオンは、AAVベクター、および、そこに導入されたAAVヘルパー機能およびアクセサリー機能を有する適切な宿主細胞内で産生される。この様式において、宿主細胞は、引き続く遺伝子送達のために、組換えビリオン粒子中にAAVベクター(目的の組換えヌクレオチド配列を含む)をパッケージングするために要求される、AAVポリペプチドをコードすることを可能にされる。
【0056】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外因性DNAの取りこみを言及するのに用いられる。外因性DNAが細胞膜内に導入された場合、細胞は「トランスフェクト」されている。多くのトランスフェクション技術が、当該分野において公知である。例えば、Grahamら(1973)Virology、52:456、Sambrookら(1989)Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davisら(1986)Basic Methods in Molecular Biology,ElsevierおよびChuら(1981)Gene 13:197を参照のこと。このような技術は、1つ以上の外因性DNA部分(例えば、プラスミドベクターおよび他の核酸分子)を適切な宿主細胞中に導入するために使用され得る。この用語は、遺伝的物質の安定的な取りこみと一過性の取りこみの両方を言及する。
【0057】
用語「形質導入」は、受容細胞へのインビボまたはインビトロのいずれかでの、複製欠損ウイルスベクターを介する(例えば、組換えAAVビリオンを介する)DNA分子の送達を示す。
【0058】
「DNA」は、弛緩型または高次コイルのいずれかの二本鎖形態または一本鎖形態でのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミンまたはシトシン)の重合体形態を意味する。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみを言及し、任意の特定の三次構造に限定しない。したがって、この用語は、とりわけ、直線状のDNA分子(例えば、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、および染色体において見出される一本鎖DNAおよび二本鎖DNAを含む。特定のDNA分子の構造の議論において、配列は、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’方向における配列のみを与える通常の慣習に従って、本明細書中に記載され得る。この用語は、4塩基(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)を含む分子、および当該分野において公知の塩基アナログを含む分子を含む。
【0059】
「遺伝子」または「コード配列」あるいは特定のタンパク質を「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下に置かれる場合、インビトロまたはインビボで転写される(DNAの場合)およびポリペプチドに翻訳される(RNAの場合)核酸分子である。遺伝子の境界は、5’末端の開始コドン(コードされるタンパク質のアミノ末端に対応する)および3’末端(コードされるタンパク質のカルボキシ末端に対応する)翻訳停止コドンによって決定される。遺伝子は、以下を含むが、これらに限定されない:原核生物もしくは真核生物のmRNA由来のcDNA、原核生物DNAもしくは真核生物DNA由来のゲノムDNA配列、および合成DNA配列。転写終止配列は、通常遺伝子配列の3‘に位置される。
【0060】
用語「制御エレメント」は、プロモーター領域、ポリアデニル化シグナル、転写終止配列、上流の調節ドメイン、複製の起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどをまとめて言及し、これは、受容細胞中のコード配列の複製、転写および翻訳をまとめて提供する。適切な宿主細胞において、選択されたコード配列が複製、転写および翻訳され得る限り、これらの制御エレメントの全てが、常に存在する必要はない。
【0061】
用語「プロモーター領域」は、本明細書中で、その通常の意味において、DNA調節配列を含むヌクレオチド領域を言及し、ここで、この調節配列は、RNAポリメラーゼを結合し得、そして下流(3’−方向)のコード配列の転写を開始し得る遺伝子由来である。
【0062】
「作動可能に連結された」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を遂行するように構成されるエレメントの配置をいう。したがって、コード配列に作動可能に連結された制御エレメントは、コード配列の発現に影響し得る。この制御エレメントは、コード配列に連続する必要はなく、これらがその発現を指向するように機能する限りは、このコード配列から同一の(cis)核酸分子または異なる(trans)核酸分子上にあり得る。従って、例えば、介在性で、翻訳されていないが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在し得、そしてプロモーター配列は、コード配列に「作動可能に連結された」とまだ見なされ得る。
【0063】
本願を通じて特定の核酸分子中のヌクレオチド配列の相対的な位置を記載する目的(例えば、特定のヌクレオチド配列が、別の配列に関して「上流」「下流」「3’」または「5’」に位置すると記載される場合)のために、これは、当該分野において慣用的であるように言及されるDNA分子の「センス」鎖または「コード」鎖中の配列の位置であると理解される。
【0064】
「多価アルコール」は、3つ以上の水酸基(3水酸基)を含むアルコールを意味する。一般には、3つの水酸基を有するアルコールはグリセロールであり、
一方、3を超える水酸基を有するアルコールは、糖アルコールである。「二価アルコール」は、2つの水酸基を有するアルコールである。多価アルコールおよび二価アルコールの例を、以下に示す。
【0065】
(B.一般的方法)
本発明は、rAAVビリオンを含む安定な薬学的組成物を提供する。この組成物は、凍結融解サイクルを受ける場合でさえ、および種々の材料(ガラスを含む)によってできた容器内に保存される場合でさえ、安定かつ活性であり続ける。
【0066】
目的の異種ヌクレオチド配列を含む組換えAAVビリオンは、遺伝子送達のため(例えば、遺伝子治療適用において)、核酸ワクチン接種、リボザイム治療およびアンチセンスにおける治療トランスジェニック動物の作製のため、ならびにインビトロでの種々の細胞型への遺伝子の送達のために用いられ得る。
【0067】
一般に、rAAVビリオンは、インビボ形質導入技術またはインビトロ形質導入技術をいずれかを用いて、被験体の細胞に導入される。インビトロで導入される場合、所望の受容細胞は、その被験体から除かれ、rAAVビリオンで形質導入され、そしてその被験体に再導入される。あるいは、同系の細胞あるいは異種の細胞は、これらの細胞が被験体内の不適切な免疫応答を産生しないように用いられ得る。
【0068】
被験体に形質導入された細胞の送達および導入のための適切な方法が、記載されている。例えば、細胞は、組換えrAAVビリオンをこれらの細胞に結合させることによって(例えば、適切な培地中で)、そしてサザンブロットおよび/またはPCRのような慣用的技術を用いるかまたは適切なマーカーを用いることにより、所望のDNAを含むこれらの細胞をスクリーニングすることによって、インビトロで形質導入され得る。次いで、形質導入された細胞は、以下により十分に記載される薬学的組成物に処方され得、そして種々の経路によって(例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、皮下および腹腔内の注射によって、または平滑筋内への注射(例えば、カテーテルを用いて)または組織内への直接的な注射によって、組成物を被験体に導入した。
【0069】
インビボ送達に関して、rAAVビリオンは、薬学的組成物に処方され、そして一般的には非経口的に投与される(例えば、骨格筋内への直接的な筋肉内注射、動脈内、静脈内または組織への直接の注射によって)。
【0070】
適切な用量は、他の因子の中で、処置される被験体(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類または他の動物)、年齢および処置される被験体の体調、処置される状態の重篤度、rAAVビリオンの投与の方法に依存する。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0071】
したがって、「治療的な有効量」は、臨床試験を通じて決定され得る相対的に広い範囲になる。例えば、インビボ注射(すなわち、被験体への直接注射)のために、治療的な有効用量は、約105〜1016のrAAVビリオン、より好ましくは108から1014のrAAVビリオンの程度である。インビトロ形質導入のために、細胞に送達されるrAAVビリオンの有効量は、約105〜1013、好ましくは108から1013のrAAVビリオンの程度である。組成物が被験体に送達し戻される形質導入された細胞を含む場合、形質導入された細胞の量は、薬学的組成物中に104〜1010の細胞であり、より好ましくは、105〜108の細胞である。もちろん、用量は、形質導入の効率、プロモーターの強度、メッセンジャーRNA(message)およびそれによってコードされるタンパク質の安定性などに依存する。有効投与量は、当業者によって用量応答曲線を確立する慣用的な治験を通じて容易に確立され得る。
【0072】
投薬処置は、上記で特定された量を最終的に送達するための、単一の用量スケジュールまたは複数の用量スケジュールであり得る。さらに被験体は、適切な用量だけ投与され得る。したがって、被験体は、例えば、単一用量において105〜1016のrAAVビリオン、または、例えばまとめて105〜1016のrAAVビリオンの送達を生じ得る、2、4、5、6以上の投与を与えられ得る。当業者は、適切な投与する用量数を容易に決定し得る。
【0073】
したがって、薬学的組成物は、十分な遺伝物質を含み、治療的な有効量(すなわち、問題の疾患の状態の症状を減弱または回復させるために十分な量)、または所望の利益を与えるために十分な量の目的のタンパク質を産生する。したがって、rAAVビリオンは、1つ以上の用量で与えられる場合、本発明の組成物中に十分量で存在し治療効果を提供する。rAAVビリオンは、凍結乾燥調製物として提供され得、そして即時の使用または将来の使用のためにビリオン安定化組成物中に希釈される。あるいは、rAAVビリオンは、産生後直ちに提供され得、そして将来の使用のために貯蔵され得る。
【0074】
薬学的組成物はまた、薬学的に受容可能な賦形剤を含む。このような賦形剤は、その組成物を受け取る個体に対して有害な抗体の産生をそれ自身が誘導せず、そして過度の毒性なしに投与され得る任意の薬学的薬剤を含む。薬学的に受容可能な賦形剤は、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノール)を含むが、それらに限定されない。薬学的に受容可能な塩は、そこに含まれ得る。例えば、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、硫酸塩など)および有機酸塩(例えば、アセテート、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩など)。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質など)は、このようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に受容可能な賦形剤の徹底的な議論は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub,Co.,N.J.1991)に入手可能である。
【0075】
好ましい賦形剤は、rAAVビリオン、および処方手順、パッケージング、貯蔵、移動などから生じる形質導入能の喪失が最小化されるように、rAAVビリオンに保護効果を与える。したがって、これらの賦形剤組成物は、標準アッセイ(例えば、実施例の項に記載されるようなアッセイ)を用いて測定される場合、これらが非保護化対応物に比べて、より高いrAAVビリオン力価およびより高い形質導入能レベルを提供するという意味で、「ビリオン安定化」と見なされる。したがって、これらの組成物は、本明細書中に記載される特定の賦形剤を欠く組成物と比較して、「増加された形質導入能レベル」を示し、したがって、これらの非保護化対応物より、より安定的である。
【0076】
活性分解的条件からrAAVビリオンを保護するために用いられる賦形剤として、以下が挙げられるが、これらに限定されない:界面活性剤、タンパク質(例えば、オブアルブミンおよびウシ血清アルブミン)、アミノ酸(例えば、グリシン)、多価アルコールおよび二価アルコール(例えば、種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG−200、PEG−400、PEG−600、PEG−1000、PEG−1450、PEG−3350、PEG−6000、PEG−8000、およびこれらの値の間の分子量が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは1500〜6000の分子量を有する)、プロピレングリコール(PG)、糖アルコール(例えば、炭水化物、好ましくは、ソルビトール)。存在する場合、界面活性剤は、アニオン生、カチオン性、双性イオン性または非イオン性界面活性剤である。好ましい界面活性剤は、被イオン性界面活性剤である。より好ましくは、この非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル(TWEEN−20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミチン酸エステル(TWEEN−40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル(TWEEN−60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアリン酸エステル(TWEEN−65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル(TWEEN−80)ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル(TWEEN−85))であり、好ましくは、TWEEN−20および/またはTWEEN−80である。これらの賦形剤は、多くのメーカー(例えば、Sigma、St.Louis、MO)から市販されている。
【0077】
存在する種々の賦形剤の量は変動し、そして当業者によって容易に決定される。例えば、存在する場合、タンパク質賦形剤(例えば、BSA)は、一般に1.0重量%〜約20重量%の間、好ましくは10重量%の濃度で存在する。グリシンのようなアミノ酸が処方に用いられる場合、一般に約1重量%〜約5重量%の濃度で存在する。ソルビトールのような炭水化物は、存在する場合、一般に0.1重量%〜約10重量%の間、好ましくは、約0.5重量%〜約15重量%の間、さらに好ましくは、約1重量%〜約5重量%の間の濃度で存在する。PEGが存在する場合、一般に約2重量%〜約40重量%、好ましくは、約10重量%〜約25重量%の程度で存在する。プロピレングリコールが本処方物に用いられる場合、代表的には、約2重量%〜約60重量%、好ましくは、約5重量%〜約30重量%の濃度で存在する。ソルビタンエステル(TWEEN)のような界面活性剤が存在する場合、約0.05重量%〜約5重量%、好ましくは、約0.1重量%と約1重量%の間の濃度で存在する。
【0078】
1つの実施形態において、水性ビリオン安定化処方物は、ソルビトールのような炭水化物を、0.1重量%〜約10重量%の間、好ましくは、約1重量%〜約5重量%の間の濃度で含み、そしてソルビタンエステル(TWEEN)のような界面活性剤を、約0.05重量%〜約5重量%の間、好ましくは、約0.1重量%と約1重量%の間の濃度で含む。ビリオンは、一般的に組成物中に十分量で存在し、上記に規定されるような1つ以上の用量で与えられる場合、治療効果を提供する。
【0079】
(C.実験)
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。実施例は、図解の目的にのみ提供され、いずれにせよ、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0080】
用いられた数(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように試みたが、もちろん、いくらかの実験的誤差および偏差が、考慮されるべきである。
【0081】
(材料および方法)
(組換えAAVビリオンの作製)
組換えAAVビリオンは、Natsoulisの共有に係る米国特許第5,622,856号に記載される方法を用いて作製され得る。
【0082】
簡単には、この方法は、以下の工程を含む:適切な宿主細胞中にAAVベクターを導入する工程;宿主細胞にウイルスヘルパー構築物を導入し、基本的なAAVヘルパー機能を発現する工程;宿主細胞中でウイルスヘルパー機能を発現する工程;および細胞を培養しrAAVビリオンを産生する工程。AAVベクターおよびAAVヘルパー構築物を、当業者に公知の技術を用いて、連続的にかまたは同時に宿主細胞中にトランスフェクトし得る。ウイルスヘルパー機能の発現を、アデノウイルス、ヘルペスウイルスおよびワクシニアウイルスの群から選択される適切なヘルパーウイルスで細胞を感染することによって提供し得る。ウイルスヘルパー機能は、AAV rep領域およびAAV cap領域の転写および翻訳を指向するAAVヘルパー構築物に存在するAAVプロモーターをトランス活性化する。したがって、選択された異種ヌクレオチド配列を有するrAAVビリオンを形成し、そして公知の方法を用いで、調製物から精製し得る。
【0083】
宿主細胞から得られる上清を、ウイルスゲノムの数を計算するためのドットブロットによってか、または産生かつ回収されたrAAVで細胞を形質導入し、そしてrAAV LacZ形質導入能を示すような機能的単位を決定するためにβ−ガラクトシダーゼについてアッセイすることによってかのいずれかで、rAAVウイルス産生について滴定する。形質導入するベクター力価を、rAAVビリオンの一連の希釈を用いて、293細胞、またはAAVでのトランスフェクションにコンピテントな任意の細胞によって決定し得る。24時間後、細胞を固定し、そしてX−Galで染色する。Sanesら(1986)EMBO 5:3133−3142。力価を、青い細胞の数を定領することによって計算する。
【0084】
(pAAV LacZの構築)lacZ遺伝子を保有するAAVベクター(pAAV−lacZ)を以下のように構築した。pSub201(Samulskiら(1987)J.Virol.61:3096−3101)の、XbaI部位の間のAAVコード領域を、EcoRIリンカーで置き換え、プラスミドpAS203を作製した。pCMVβ(CLONETECH)のEcoRI〜HindIIIのフラグメントを平滑末端化し、そしてpAS203のKlenow処理したEcoRI部位にクローニングし、pAAV−lacZを産生した。
【実施例】
【0085】
(実施例1:組換えAAV活性に対する凍結/融解サイクルの効果)
本実施例を行って、rAAV活性に対する凍結/融解サイクルの効果を決定した。表に示すように、凍結前にrAAVに薬剤が添加されない場合、約75%の活性が失われる。ウシ血清アルブミン(BSA)またはポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN−20)の単独での添加は、回収率を改善した(約50%)。しかし、ソルビトールは、サンプルを凍結/融解不活化から完全に保護した。これらの実験を、ポリプロピレンバイアルにおいて行った。
【0086】
AAV−lacZを、イオン交換カラムでクロマトグラフィーした。カラムからの画分の各々からの小容量を、サンプルを凍結する前に同日に青色細胞活性についてアッセイした。ピーク画分は、カラムでの最初の負荷量のうちの47%を含んでいた。
【0087】
各々の画分の残りを4つの部分に分け、そして以下の賦形剤を各部分に添加した:
部分a−賦形剤なし;
部分b−10%の最終濃度になるようなBSA;
部分c−5%の最終濃度になるようなソルビトール;
部分d−0.5%の最終濃度になるようなTWEEN−20;
これらのサンプルを凍結し、数日後に融解し、そして青色細胞活性についてアッセイした。結果を、表1にまとめる。
【0088】
【表1】

【0089】
これらの結果は、1回の凍結/融解サイクルが、rAAV活性の有意な減少をもたらし得ることを示す。活性におけるこの減少は、保護剤(例えば、タンパク質、多価アルコールおよび界面活性剤;これらは全て異なる機構によって作用すると考えられる)の添加によって排除され得る。この実験では、ソルビトールは、最大の保護効果を有した;凍結および融解の後に、ソルビトール含有サンプルにおいては本質的に活性の喪失は観察されなかった。
【0090】
(実施例2:組換えAAV活性に対するベクター希釈、温度およびガラスバイアルにおける保存の効果)
初期安定性実験を行って、保存安定性に対するベクター希釈の効果、ポリプロピレン(pp)バイアルおよびガラス(gl)バイアルからの回収、ならびに温度(−80℃、2〜8℃、37℃)の効果、ならびに安定性および回収に対するソルビトールの添加の効果を決定した。
【0091】
リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の1%ソルビトール溶液におけるrAAVのサンプルを、未希釈で、ならびに1%ソルビトール/DPBS緩衝液中に1倍〜約10倍(1.25ml〜12.5ml)希釈して、アッセイした。希釈シリーズの各メンバーの0.5mlアリコートを、異なる保存条件に置いた。
【0092】
凍結後、サンプルを凍結し、そしてベクターゲノムについて、および形質導入性(transduceability)について、実施例1に記載の通りに分析した。形質導入性研究については、本実験で用いたベクターゲノムの力価を、未希釈のベクターの出発濃度を用いて算出した。各サンプルを、1×108または5×108個のベクターゲノムが、10〜20μLの容量において298−HEK細胞に添加され得るように、完全ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で希釈した。
【0093】
用いた、安定性を示すアッセイは、形質導入性の喪失であった。形質導入性の喪失を、293ヒト胎児腎臓(HEK)細胞のrAAVでの形質導入後のヒト第IX因子タンパク質(hFIX)産生によって測定した。このアッセイでは、異なる量のrAAV−hFIXベクターをHEK細胞に添加し、そして形質導入する能力を測定した。感染の結果産生され、そして分泌された第IX因子タンパク質は、ELISA技術を用いて測定された。結果を、ヒト第IX因子タンパク質(hFIX)のng/mLにおいて報告する。
【0094】
図1に示した結果からわかり得るように、ガラス中でrAAVを保存することは、rAAVを保存した温度にかかわらず、rAAV活性の低下を引き起こした。本実施例では、活性および温度は、逆に関連するようである−−すなわち、温度が低くなるほど、活性が高くなる。
【0095】
(実施例3:組換えAAV活性に対するガラス中での保存の効果)
実施例2において記載された実験の結果は、ガラスにおけるrAAVの保存が、活性の喪失をもたらすことを示す。これが単に、rAAVがガラスバイアルに吸着されるというという事実に起因するか否かを試験するために、本実施例を設計した。
【0096】
この可能性を除外するために、ガラスバイアルおよびポリプロピレンバイアルに添加したゲノム数(サザンブロットドットによって決定した場合の、AAV中にカプセル化されたDNA分子の数)を決定した。rAAVを、種々の処方および温度においてガラスバイアル中およびポリプロピレンバイアル中で静置した。rAAVウイルスの2つのアリコートを採取した:回収されたゲノムの数を再度計数するために用いた第1のもの、および実施例1において決定したような活性(ゲノムとは対照的な機能的単位)を決定するための第2のもの。この結果は、rAAVがガラス中で保存される場合、活性が有意に低下することを示す。これは、種々の希釈のrAAVで生じる。
【0097】
rAAVサンプルを、未希釈で、ならびに5倍、50倍または100倍に希釈して凍結した。用いた希釈剤は、ソルビトールの最終濃度が5%または1%のいずれかであるような希釈剤であった。2連のサンプルを、ガラスバイアル中およびポリプロピレンチューブ中に置いた。サンプルを、−80℃または周囲温度に置いた。凍結後、サンプルを融解し、そして上記のようにベクターゲノムおよび形質導入性について分析した。形質導入性研究については、本実験に用いたベクターゲノム力価を、未希釈のベクターの出発濃度を用いて算出した。各サンプルを、1×108または5×108個のベクターゲノムが10μL〜20μLの容量において293−HEK細胞に添加され得るように、完全DMEM中に希釈した。
【0098】
用いた、安定性を示すアッセイは、ベクターゲノムの喪失および形質導入性の喪失であった。ベクターゲノムの喪失を、ドットブロットアッセイを用いて測定した。このアッセイは、ベクターDNAをサンプルから抽出する工程、このDNAを変性させる工程、およびこのDNAをナイロンメンブレンにローディングする工程を包含する。このDNAを相補的な放射性DNAプローブにハイブリダイズすることにより、ベクターゲノムの数が、標準への比較によって算出され得る。形質導入性の喪失を、実施例2に記載される通りに測定した。
【0099】
表2は、1×108個のベクターゲノムで形質導入された293−HEK細胞について得られたデータを列挙する。−80℃でインキュベートしたサンプルについてのデータを示す。第2欄は形質導入性を示し、第3欄は測定されたベクターゲノム/mlであり、そして第4欄は希釈倍数を掛けた第3欄のデータである。この表では、「ppS」は、ポリプロピレンストック容器を示し、そして「ppC」は、ポリプロピレン容器を示す。
【0100】
【表2】

【0101】
図2は、ベクターゲノムおよび形質導入性の結果についてのデータを示し、ここで、1×108個のベクターゲノムを形質導入性アッセイに用いた。経験的に得られたベクターゲノムは、形質導入性の結果と比較するために希釈について正規化された。さらに、ベクターゲノムの結果を、1×1011によって除算して、グラフのために扱い易い数を得た。
【0102】
表3および図3は、5×108個のベクターゲノムで形質導入した293−HEK細胞についての形質導入性アッセイ以外は上記の通りに行った実験の結果を示す。
【0103】
【表3】

【0104】
図4および図5は、ベクターゲノム数および形質導入性アッセイについて−80℃または周囲温度で行った実験の結果を示し、ここで、形質導入性を、1×108個のベクターゲノム(図4)および5×108個のベクターゲノム(図5)を用いて行った。
【0105】
形質導入性実験からのこれらの結果は、ベクターが希釈されるにつれて、感染能力が減少することを示す。1%ソルビトール中で調製されたサンプルが、5%ソルビトール中で調製されたサンプルと比較して減少した形質導入性を有することもまたわかり得る。これらの結果はまた、−80℃でのガラス中での保存が、ポリプロピレンと比較して減少した形質導入性をもたらすことを示す。
【0106】
従って、これらの実験において調べた条件下で容器におけるベクターの物理的喪失が存在し得るようである。しかし、ベクターゲノムのデータからは、ベクターゲノムの数において観察可能な変化が存在しないことが観察され得る。ベクターゲノムの範囲(表2および表3を参照のこと)における分散の相関の%(%CV)は22.4であり、ドットブロットアッセイの変動性の充分な範囲内である。しかし、両方の力価についての形質導入性についての%CV、すなわち、1×108個のベクターゲノムおよび5×108個のベクターゲノムは、形質導入性アッセイの変動性(約30%)よりも大きい。従って、ベクターゲノム数の喪失よりも、ベクター自体が形質導入性を失うようである。
【0107】
(実施例4:組換えAAV−Iの安定性に対する添加された賦形剤の効果)
これらの実験を、1%ソルビトールならびに種々の濃度のTWEEN−20、TWEEN−80、ポリエチレングリコール(PEG)、グリシンおよびそれらの組み合わせを含む異なる処方の効果について試験するために設計した。増殖培地中に置かれたウイルスを、ベースラインとして用いた。初めから終わりまで用いたチューブは、ポリプロピレン製であった。サンプルを、処方物中で1時間、室温にて維持した後、培養細胞を形質導入した。
【0108】
AAVベクターの安定性を、実施例2に記載の形質導入性の喪失のアッセイを用いて測定して、添加した賦形剤の効果をさらに調べた。サンプルを、培地中または緩衝液賦形剤中に希釈して、15μLにおいて1×108、5×108、1×109または5×109の濃度を得た。サンプルを、ポリプロピレンチューブ中に約1時間置き、次いで293−HEK細胞を形質導入するために用いた。
【0109】
賦形剤の処方および結果を、表4中にヒト第IX因子のng/mlで与え、そしてその中に列挙した結果を図6および図7に示す。全ての場合、賦形剤は、1%ソルビトールを含んでいた。
【0110】
【表4】

【0111】
これらのデータは、TWEENの添加が、安定化されたrAAVを有するようであり、そしてPEGおよびグリシンがほとんど有さず、そしてrAAVの全体の活性をさらに減少させ得ることを示す。
【0112】
(実施例5:組換えAAV−IIの安定性に対する添加された賦形剤の効果)
AAVベクターの安定性を、実施例4に記載のように測定した。賦形剤の処方および結果を表5に示し、そしてその中で列挙した結果を図8に示す。全ての場合、賦形剤は1%ソルビトールを含んでいた。
【0113】
【表5】

【0114】
(実施例6:組換えAAVの安定性に対する添加された賦形剤の効果:ガラスバイアルとポリプロピレンバイアルとの比較)
本実施例を、2つの温度で(4℃および−80℃)、ポリプロピレンバイアル中で保存したrAAVの活性に対する効果と比較した、ガラスバイアル中で保存したrAAVの活性に対する1%ソルビトールおよびTWEEN−80の効果を研究するために設計した。
【0115】
AAVベクターの安定性を、5×107、1×108または5×108個の粒子/ウェルを用いて、記載されたように測定した。各サンプルを、ガラスバイアル(GV)またはポリプロピレンチューブ(PT)中で行い、そして室温(+4℃)または−80℃で一晩保存した。賦形剤の処方および結果を表6に示し、そしてその中に列挙した結果を図9に示す。
【0116】
【表6】

【0117】
これらのデータは、ガラスバイアルにおいて保存された場合、1%ソルビトールがrAAV活性についての有意な防御効果を提供しないことを示す。ソルビトールを単独で用いた場合、ソルビトールはポリプロピレンバイアル中で保存されたrAAVに対して保護効果を提供する。サンプルを−80℃ではなく4℃にて保存した場合、見かけの保護効果もまた存在する。処方物中にTWEENを含むことは、ガラスバイアル中のrAAVサンプルの保存によって引き起こされた減少した活性を逆転させる。
【0118】
(実施例7:組換えAAV−IIIの安定性に対する添加された賦形剤の効果:ガラスバイアルにおける保存とポリプロピレンバイアルにおける保存との比較)
AAVベクターの安定性を、実施例5に記載の通りに測定した。賦形剤の処方および結果を図10に示す。このデータは、プロピレングリコール(PG)もソルビトールも単独では、ガラスバイアル中で保存されたrAAVサンプルの活性の喪失に対して保護しないことを示す。PGおよびTWEENを組み合わせた場合、活性の喪失は最少であった。そして、実際、PGおよびTWEENは一緒になって、活性に対して相乗効果を有し得るようである.
(実施例8:組換えAAVの安定性に対する添加した賦形剤の効果:5%ソルビトールの効果)
これらの実験を、rAAVの活性に対する、種々の濃度のTWEENと組み合わせた、5%ソルビトールの効果を研究するために設計した。
【0119】
凍結/融解サイクル後のAAVベクターの安定性を、1×108、5×108または1×109個の粒子/ウェルを用いて実施例6に記載されるように測定した。各サンプルを、ガラスバイアル中またはポリプロピレンチューブ中で行い、そして−80℃にて一晩保存した。賦形剤の処方および結果を図11に示す。
【0120】
5%ソルビトールを含む処方物は、サンプルをガラスバイアル中で保存した場合、rAAV活性の喪失に対する部分的な保護効果を提供した。しかし、TWEENの添加は、有意に大きな保護効果を提供した。
【0121】
従って、組換えAAV調製物の安定性を増強するための処方物が記載される。本発明の好ましい実施形態を幾分詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、明らかな改変が行われ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−46748(P2011−46748A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274133(P2010−274133)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【分割の表示】特願2000−584922(P2000−584922)の分割
【原出願日】平成11年12月2日(1999.12.2)
【出願人】(500544200)アビジェン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】