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アデノ随伴ウイルス物質および方法
説明

アデノ随伴ウイルス物質および方法

【課題】DNAの細胞への送達に有用なアデノ随伴ウイルス(AAV)物質および方法、具体的には、組換えAAV(rAAV)ゲノム、rAAVをパッケージングするための方法、rAAVを産生する安定な細胞株、およびrAAVを利用して目的の遺伝子を細胞に送達する方
法を提供すること。
【解決手段】組換えアデノ随伴ウイルスゲノムおよびアデノ随伴rep/capタンパク質をコードするDNA配列を含むDNAベクターであって、ここで該組換えアデノ随伴ウイルスゲノムは、プロモーターおよびポリアデニル化配列に作動可能に結合した非アデノ随伴ウイルスDNA配列に隣接するアデノ随伴ウイルス逆方向末端反復を含み、
そしてrep/capタンパク質をコードする該DNA配列は該ゲノムの外に位置する、DNAベクター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同時係属中の米国特許出願第08/254,358号(1994年6月6日出願)の
一部継続出願である。
【0002】
本発明は、大きくはDNAの細胞への送達に有用なアデノ随伴ウイルス(AAV)物質
および方法に関する。より具体的には、本発明は、組換えAAV(rAAV)ゲノム、rAA
Vをパッケージングするための方法、rAAVを産生する安定な細胞株、およびrAAV
を利用して目的の遺伝子を細胞に送達する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は複製能欠損パルボウイルスであり、その1本鎖DNA
ゲノムは長さ約4.7kbで、145ヌクレオチドの逆方向末端反復(ITR)を含む。図1
を参照されたい。AAV2ゲノムのヌクレオチド配列はSrivastavaら、J.Virol.、4
5:555-564(1983)に示される。ウイルスDNA複製(ori)、包膜化/パッケージング(p
kg)および宿主細胞染色体組み込み(int)を指示するシス作用配列がITR中に含ま
れる。3つのAAVプロモーター、p5、p19、p40(これらの相対的なマップ上の位置
により命名される)は、repタンパク質およびcapタンパク質をコードする2つのA
AV内部のオープンリーディングフレームの発現を駆動する。1つのAAVイントロ
ンのディファレンシャルなスプライシング(ヌクレオチド2107および2227で)と関
連する2つのrepプロモーター(p5およびp9)により、rep遺伝子から4つのrepタ
ンパク質(rep78、rep68、rep52およびrep40)の産生が生じる。repタンパク質は
、最終的にウイルスゲノム複製を担う複数の酵素的特性を有する。cap遺伝子はp
40プロモーターから発現され、そして3つのキャプシドタンパク質VP1、VP2およ
びVP3をコードする。オルタナティブかつ非コンセンサスの翻訳開始部位が3つ
の関連するキャプシドタンパク質の産生を担う。1つのコンセンサスポリアデニ
ル化部位はAAVゲノムのマップ上の位置95に位置する。AAVの生活環および遺伝学
は、Muzyczka、CurrentTopicsin Microbiology and Immunology、158:97-129(1
992)に概説される。
【0004】
AAVがヒト細胞に感染すると、ウイルスゲノムは第19染色体中に組み込まれ、
細胞の潜在的感染を生じる。感染性ウイルスの産生は、細胞がヘルパーウイルス
(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)に感染しない限り起こらない
。アデノウイルスの場合、遺伝子E1A、E1B、E2A、E4およびVAがヘルパー機能を
提供する。ヘルパーウイルスでの感染の際に、AAVプロウイルスはレスキューさ
れ、そして増幅され、そしてAAVおよびアデノウイルスの両方が産生される。
【0005】
AAVは独特の特徴を有し、それ故、外来DNAを細胞に送達するためのベクターと
して注目される。培養中の細胞のAAV感染は、非細胞変性であり、そしてヒトお
よび他の動物の自然感染は、サイレント(silent)であり、そして無症候性である
。さらに、AAVはほとんどの(全てではないにしても)哺乳動物細胞に感染し、こ
れは、インビボで多くの異なる組織を標的化する可能性を与える。Kotinら、EMB
OJ.、11(13):5071-5078(1992)は、AAVのDNAゲノムは、感染の際に第19染色体上
に標的化された組み込みを受けることを報告する。組み込みはウイルスDNAの複
製を必要とせず、従ってこのプロセスはヘルパーウイルスを必要としない。AAV
プロウイルスゲノムは、プラスミド中のクローン化DNAと同じく感染性である。
このことは、組換えゲノムの構築を利用可能にする。さらに、AAV複製、ゲノム
包膜化および組み込みを指示するシグナルがAAVゲノムのITR内に含まれているた
め、ゲノムの内部の約4.3kb(複製タンパク質および構造キャプシドタンパク質、
rep-capをコードする)は、従ってプロモーター、目的のDNAおよびポリアデニル
化シグナルを含む遺伝子カセットのような外来DNAで置換され得る。AAVの別の重
要な特徴は、それが極めて安定で頑丈なウイルスであることである。AAVは、ア
デノウイルスを不活性化するために用いられる条件(56℃〜65℃で数時間)に耐え
、これによりrAAVに基づくワクチンの冷却保存はそれ程重要でなくなる。最後に
、AAV感染細胞は重複感染に耐性でない。
【0006】
種々のグループが、疾患状態の処置におけるAAVの可能な使用を研究している
。特許協力条約(PCT)国際公開公報第WO91/18088号(1991年11月28日公開)および
対応する雑誌の記事であるChatterjeeら、Science、258:1485-1488(1992)は、HI
V-1TAR配列に特異的なアンチセンスRNAおよびポリアデニル化シグナルをコード
するrAAVを用いるヒト造血細胞系および非造血細胞系におけるヒト免疫不全ウイ
ルス-1(HIV-1)に対する細胞内耐性の導入を記載する。HIV-1感染の遺伝子治療に
関する概説記事であるYuら、GeneTherapy、1:13-26(1994)は、造血幹細胞用の遺
伝子治療ベクターの可能性を有するものとしてAAVを挙げている。培養気道上皮
細胞における遺伝子(特に、嚢胞性線維症膜貫通調節遺伝子)の安定した組み込み
および発現のための送達系としてのrAAVの使用が、PCT国際公開公報第WO93/2464
1号(1993年12月9日公開)および対応する雑誌の記事であるFlotteら、Am.J.Re
spir.CellMol.Biol.、7:349-356(1992)に記載される。異常血色素症および他
の造血疾患の処理および細胞特異的多剤耐性の付与におけるrAAVを含む遺伝子治
療が、PCT国際公開公報第WO93/09239号(1993年5月13日公開);Muro-Cachoら、J
.Immunol.、11:231-237(1992);LaFaceら、Virol.、162:483-486(1988);およ
びDixitら、Gene、104:253-257(1991)において提唱されている。グリオーム細胞
への治療用遺伝子送達が、Tenenbaumら、GeneTherapy、1(補遺1):S80(1994)
で提唱されている。
【0007】
遺伝子導入の分野における比較的新しい概念は、導入遺伝子の産物により免疫
化がもたらされ得るということである。「遺伝子的免疫化(genetic immunizatio
n)」におけるいくつかの試みが報告されており、これはインフルエンザAの核タ
ンパク質配列の直接DNA注入[Ulmerら、Science、259:1475-1749(1993)]、ヒト成
長ホルモン配列を用いるバイオリスティックガン(biolisticgun)免疫化[Tangら
、Nature:356:152-154(1992)]およびHIV-1gp160エンベロープタンパク質配列を
含むレトロウイルスベクターでの感染[Warnerら、AIDSRESEARCH AND HUMAN RETR
OVIRUSES、7(8):645-655(1991)]が含まれる。これらのアプローチは利用可能の
ようであるが、直接DNA接種は、長く継続する免疫応答を提供し得ず、そしてレ
トロウイルスベクターの使用に関して、深刻な安全性についての疑念が付きまと
う。遺伝学的免疫化のためのAAVの使用は、これらの問題をこうむらない新規な
アプローチである。
【0008】
DNA送達のためのAAVの使用に対する障害は、組換えゲノムの包膜化のための高
度に効率的なスキームの欠如である。rAAVゲノムを包膜化して、組換えウイルス
粒子を作製するためのいくつかの方法が記載されている。これらの方法は全て、
トランスに(intrans)AAVrep-capおよびアデノウイルスヘルパー機能を必要とす
る。最も単純な方法は、rAAVゲノムを宿主細胞にトランスフェクトし、その後野
生型AAVおよびアデノウイルスで同時感染する工程を包含する。例えば、Carter
およびTratschinの米国特許第4,797,368号(1989年1月10日発行)および対応する
雑誌の記事であるTratshinら、Mol.Cell.Biol.、5(11):3251-3260(1985)を参
照されたい。しかし、この方法は、受容不可能に高レベルの野生型AAVを導く。
別の一般的な方策は、rAAVプラスミドと同時トランスフェクトされる第2のプラ
スミド(rAAVゲノムとは分離している)にAAV機能を補充する工程を包含する。例
えば、Hermonatら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6466-6470(1984)およびLe
bkowskiら、Mol.Cell.Biol.、8(10):3988-3996(1988)を参照されたい。2つの
プラスミドの間に配列重複が存在しない場合、Samulskiら、J.Virol.、63(9):3
822-3828(1989)に記載のように、野生型AAV産生は回避される。しかし、rAAV粒
子を作製するために3つの別々のDNA導入事象(2つのプラスミドの同時トランス
フェクションならびにアデノウイルスでの感染)を必要とするため、本来この方
策は非効率的である。この方法によるrAAVの大規模な生産は、コストが高く、そ
してトランスフェクション効率の変動を受けやすい。
【0009】
Vincentら、Vaccines、90:353-359(1990)は、rep-cap機能を発現する細胞株を
用いてrAAVをパッケージングし得たことを報告している。このような方法は、rA
AVゲノムの細胞株へのトランスフェクションをさらに必要とし、そして報告され
た得られたrAAVの力価は非常い低かった(わずか約103感染性ユニット/ml)。Dutt
on、GeneticEngineeringNews、14(1):1および14-15(1994年1月15日)は、Appli
ed ImmuneScienceのJaneLebkowski博士が、組換えAAVゲノム、ヒグロマイシン
耐性遺伝子ならびにEBVori PフラグメントおよびEBNA遺伝子を含むキメラAAV/
エプスタインバールウイルスプラスミドを用いてrAAVを製造することを報告して
いる。プラスミドは細胞にトランスフェクトされて安定な細胞株を生じる。次い
で、この安定な細胞株を野生型AAvrep-cap機能物でトランスフェクトし、そして
アデノウイルスに感染させてrAAVを産生する。vincentの方法と同様に、Lebkows
kiのパッケージング方法は、rAAV粒子を生成させるためにトランスフェクション
事象と感染事象の両方を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、rAAVゲノムをパッケージングする効率的な方法および細胞へのDNA送
達のためのベクターとして有用な特定のrAAVに対する必要性が当該技術分野に存
在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、目的の非AAV DNAを細胞に送達するに有用な組換えAAV(rAAV)ゲノム
を提供する。本発明のrAAVゲノムは,目的の非AAVDNA配列に隣接するAAV ITRを
含み、そして機能的rep-capタンパク質をコードするrep-cap配列を含まない。目
的のDNAを細胞中でポリペプチドとして発現させることが望ましい場合は、rAAV
ゲノムはまた、目的のDNAに作動可能に連結する(構成的または調節可能な)プロ
モーターおよびポリアデニル化シグナルを含んで、遺伝子カセットを形成する。
遺伝子カセットはまた、哺乳動物宿主細胞でのRNA転写物のプロセッシングを促
進するためのイントロン配列を含んでもよい。本発明の好ましい遺伝子カセット
は、以下のDNAセグメントを含む:(1)サイトメガロウイルス(CMV)即時型(immedi
ateearly)プロモーター、(2)ウサギβ-グロブリンイントロン、(3)サル免疫不全
ウイルス(SIV)またはヒト免疫不全(HIV)のrevおよびエンベロープ(gp160)遺伝子
、ならびに(4)ウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナル。本発明のrAAVゲノム
は、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠失アデノウイルスま
たはヘルペスウイルス)による感染に対して許容性(permissible)である細胞のト
ランスフェクションに有用なベクター中で組立てられ得る。前記の好ましい遺伝
子カセット、ネオマイシン耐性遺伝子、および野生型AAVrep-cap配列を含むrAAV
ゲノムを含む本発明のベクターは、E.coli DH5細胞中でアメリカンタイプカル
チャーコレクション(ATCC)、12301ParklawnDrive,Rockville,Maryland 20852
に1994年6月1日に寄託され、そしてATCC受託番号69637を受けている。
【0012】
本発明の好ましいrAAVゲノムは、目的の非AAVDNA(1つまたは複数)としてSIV
revおよびエンベロープ(gp160)遺伝子、またはHIVrevおよびエンベロープ遺伝子
を含む。また、神経学的障害を改善し得るタンパク質をコードする配列(例えば
、神経成長因子(NGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)
、ニューロトロフィン3および4/5(NT-3および4/5)、グリア細胞神経栄養因子(G
DNF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、および酸性および塩基性線維芽細
胞成長因子(aFGFおよびbFGF)をコードする配列);チロシンヒドロキシラーゼ(TH
)、および芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードする配列;スーパ
ーオキシドジスムターゼ(SOD1またはSOD2)、カタラーゼおよびグルタチオンペル
オキシターゼをコードする配列;腫瘍壊死因子(TNF)、CD4特異的抗体およびTNF
またはCD4レセプターのようなインターフェロン、リンホカイン、サイトカイン
およびそれらのアンタゴニスト;GABAレセプターイソ型、GABA合成酵素グルタミ
ン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、カルシウム依存性カリウムチャンネルまたはATP
感受性カリウムチャンネルをコードする配列;およびチミジンキナーゼをコード
する配列を含むrAAVゲノムもまた好ましい。また、グロビン、オンコジーン、ra
s、およびp53配列を含むrAAVゲノムもまた本発明により意図される。細胞死抑制
遺伝子(例えば、bc1-2)のような特定の遺伝子の発現に影響するか、または興奮
性アミノ酸レセプター(例えば、グルタミン酸レセプターおよびNMDAレセプター
)の発現に影響するアンチセンスヌクレオチドを含む組換えAAVゲノムもまた、
神経学的障害の調節のために意図される。
【0013】
本発明により意図される、目的の他のDNA配列は、HIV-1およびHIV-2(revおよ
びgp160配列以外の配列);I型およびII型ヒトT細胞白血病ウイルス;呼吸器多
核体ウイルス(respiratorysyncytialvirus);1〜4型パラインフルエンザウイ
ルス;麻疹ウイルス;ムンプスウイルス;風疹ウイルス;1型〜3型ポリオウイ
ルス、A、BおよびC型インフルエンザウイルス;非ヒト(トリ、ウマ、ブタ)イ
ンフルエンザウイルス;A,B,C,DおよびE型肝炎ウイルス;ロタウイルス
;ノーウォーク(norwalkvirus);サイトメガロウイルス;エプスタインバールウ
イルス;1型および2型単純ヘルペスウイルス;水痘帯状庖疹ウイルス;6型ヒ
トヘルペスウイルス;ハンタウイルス;アデノウイルス;chlamydiapneumoniae
;chlamydiatrachomatis;mycoplasma pneumoniae;mycobacteriumtuberculosi
s;非定型抗酸菌(atypicalmycobacteria);ネコ白血病ウイルス;ネコ免疫不全
ウイルス;ウシ免疫不全ウイルス;ウマ感染性貧血ウイルス;ヤギ関節炎脳炎ウ
イルス;およびビスナウイルスを包含する病原体由来の配列を含む。
【0014】
本発明の細胞株は、本発明の両方のrAAVゲノムならびにAAV repおよびcap遺伝
子のコピーで安定にトランスフェクトされる。好ましい細胞株は、哺乳動物細胞
株(例えば、HeLa細胞株)である。AAVヘルパーウイルスでの本発明の細胞株の感
染により、感染性rAAV粒子としてのrAAVのパッケージングが生じる。本発明の好
ましい安定な細胞株は、1994年6月1日ATCCに寄託され、そしてATCC受託番号CR
L11639を受けているA64HeLa細胞株である。本発明はまた、AAV repおよびcap配
列を含むがrAAVゲノムは含まない安定な細胞株を提供する。
【0015】
上記のパッケージングプロセスにより生成された組換えAAVは、目的のDNAを細
胞へ送達するに有用である。rAAVは、インビボでアンチセンス送達ベクター、遺
伝子治療ベクターまたはワクチン(すなわち、遺伝子的免疫化)ベクターとして使
用され得る。例えば、AIDS;ガン、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチ
ントン病、および多発性硬化症、外傷、鬱病、片頭痛、疼痛または発作性疾患の
ような自己免疫疾患を包含する神経学的障害;成人T細胞白血病;熱帯性痙攣性
不全対麻痺(tropicalspasticparaparesis);上部および下部呼吸器官感染;麻
疹;おたふくかぜ;風疹;灰白髄炎;インフルエンザ;肝炎;下痢;全身性サイ
トメガロウイルス感染;単核細胞症様病;全身性エプスタインバールウイルス感
染;典型的な感染性単核細胞症;全身性1型および2型単純ヘルペス感染;性器
単純ヘルペス感染;水痘;バラ疹;6型ヒトヘルペスウイルスによる熱病;肺炎
および成人呼吸困難症候群;感染;結膜炎;生殖管感染;肺および肺外結核;非
定型抗酸菌による全身性感染;ネコ白血病;ネコAIDS;ウシAIDS;ウマ感染性貧
血;ヤギの関節炎および脳炎;ならびにヒツジの肺炎および脳炎を包含する疾患
状態の処置が本発明により意図される。ワクチンベクターとして、rAAVは目的の
遺伝子を細胞に送達し、そしてこの遺伝子は細胞中で発現される。ワクチンベク
ターを用いて、遺伝子産物が細胞質性である場合(例えば、遺伝子産物がウイル
スの組み込みまたは複製をさまたげる場合)、細胞内免疫性を生じさせ得る。あ
るいは、遺伝子産物が細胞表面で発現されるか分泌される場合、細胞外/全身性
免疫性を生じさせ得る。
【0016】
宿主(特にヒト宿主)は、免疫性誘導量(immunity-inducingamount)の疾患の原
因となる生物のポリペプチドをコードする本発明のrAAを宿主に投与することに
より、このペプチドに対して免疫され得る。本発明のrAAVを用いるヒト宿主の免
疫化は、非経口経路により(例えば、静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射に
より)、表面乱刺によりまたは身体腔内への接種により免疫性誘導用量のウイル
スを接種することにより投与する工程を包含する。代表的には、感受性ヒト細胞
株または非ヒト霊長類細胞株において測定したところ、それぞれ約1000感染単位
と約10,000,000感染単位との間の1回または数回の接種が、ヒト宿主の免疫化を
もたらすのに十分である。ワクチンとして使用されるべきウイルスは、液体形態
または凍結乾燥形態で(1つ以上の適切な保存剤および/または凍結乾燥プロセス
の間ウイルスを保護するための保護(protective)剤と組み合わせて)利用され得
る。(例えば、特定の遺伝子産物により改善され得る神経学的障害の)遺伝子治療
については、ポリペプチドをコードする治療有効用量の本発明のrAAVがこのよう
な治療を必要とする宿主に投与される。宿主中で免疫性を誘導するかまたは宿主
に遺伝子治療を提供するための薬剤の製造における本発明のrAAVの使用が意図さ
れる。
【0017】
本発明のDNAベクターは、組換えアデノ随伴ウイルスゲノムおよびアデノ随伴r
ep/capタンパク質をコードするDNA配列を含むDNAベクターを包含する。ここでこ
の組換えアデノ随伴ウイルスゲノムは、プロモーターおよびポリアデニル化配列
に作動可能に結合した非アデノ随伴ウイルスDNA配列に隣接するアデノ随伴ウイ
ルス逆方向末端反復を含み、そしてrep/capタンパク質をコードする該DNA配列は
該ゲノムの外に位置する。
【0018】
1つの実施形態において、本発明は、上記非アデノ随伴ウイルスDNA配列は、
免疫不全ウイルスタンパク質をコードするDNA配列であり得るDNAベクターを提供
する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、ベクターpAAV/CMV/SIVrev-gp160/neo/rep-
cap(ATCC69637)であり得るDNAベクターを提供する。
【0020】
本発明はまた、本発明のDNAベクターにより安定にトランスフェクトされた哺
乳動物宿主細胞を包含する。
【0021】
1つの実施形態において、本発明は、上記非アデノ随伴ウイルスDNA配列が、
免疫不全ウイルスタンパク質をコードするDNA配列であり得る哺乳動物宿主細胞
を提供する。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、HeLa細胞株A64(ATCC CRL 11639)である哺
乳動物宿主細胞を提供する。
【0023】
本発明はさらに、感染性組換えアデノ随伴ウイルスを産生するための方法を包
含し、この方法は、上記の宿主細胞をアデノ随伴ウイルスのヘルパーウイルスで
感染させる工程を包含する。
【0024】
上記方法の1つの実施形態において、上記ヘルパーウイルスは、そのゲノムに
挿入されたアデノ随伴ウイルスrep-cap遺伝子を含む。
【0025】
なお別の実施形態において、本発明は、上記非アデノ随伴ウイルスDNA配列が
、チロシンヒドロキシラーゼ、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ、神経成長因
子、脳由来神経栄養因子、NT-3、NT-4/5、グリア細胞由来神経栄養因子および線
維芽細胞成長因子を含む群から選択されるポリペプチドをコードするDNA配列で
ある、DNAベクターを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(図面の詳細な説明)
本発明は、本発明のrAAVの産生および使用に関する以下の実施例により説明さ
れる。実施例1は、SIVrevおよびエンベロープ(gp160)遺伝子を含むrAAVゲノム
を含むベクターの構築を記載し、一方実施例2は、AAV rep-cap遺伝子およびネ
オマイシン耐性遺伝子を含むベクターの構築を記載する。実施例3は、実施例1
および2で記載されるベクターからの、rAAVを産生する安定な細胞株を生成させ
るために使用されるベクターの構築を記載する。SIVrevおよびgp160タンパク質
をコードするrAAVを産生する安定な細胞株の生成が実施例4に詳細に記載される
。実施例5は、本発明の安定な細胞株からrAAVを精製するための好ましい手順を
記載する。実施例6は、AAVrep-cap遺伝子を発現する安定な細胞株の生成を記載
する。実施例7は、実施例4で記載されるrAAVでの種々の哺乳動物細胞および細
胞株の感染の結果を表し、これは感染細胞においてgp160タンパク質が発現され
ることを示す。実施例8は、目的のDNAとしてβガラクトシダーゼ遺伝子を含み
、そして標的細胞または組織における目的のDNAの発現についてのポジティブコ
ントロールウイルスとして有用であるrAAVを産生する安定な細胞株の生成を記載
する。実施例9は、本発明のrAAVを用いてインビボで目的のDNAを発現させた実
験の結果を表す。実施例10は、安定な細胞株により産生されるrAAVの力価を増加
させるために本発明により意図される方法を記載する。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
SIV revおよびエンベロープ(gp160)遺伝子カセットを含むrAAVゲノムを含む
ベクターを、psub201[Samulskiら、前出]と呼ばれる既存のプラスミドから構
築した。図2はプラスミドpsub201の図解である。ここで、制限エンドヌクレア
ーゼ部位を示し、そして以下のように略記する:P、PvuII;X、XbaI;B、Bam
HI;H、HindIII;およびN、NaeI。このプラスミドは、PvuII制限部位の間にク
ローン化された改変野生型AAV2ゲノムを含む。野生型AAV2ゲノムのDNA配列を配
列番号1に記載する。AAV2配列を便利な制限部位を含むように改変した。具体的
には、2つのXbaI制限部位を、配列位置190および4484でのリンカー付加を介し
て付加した。これらの部位は、AAVゲノムの145bpの逆方向末端反復(ITR)を含
んだ191 bpのITRの内部にある。これらの部位の挿入により、プラスミドのXbaI
消化で、AAVrep-cap遺伝子を含む内部の4.3kbのフラグメントの完全な取り出し
が可能になる。図2において、191bpのITRを逆方向の矢印で示す。
【0028】
本発明のrAAVゲノムベクター(pAAV/CMV/SIVrev-gp160)をいくつかの工程で
作製した。
【0029】
第1に、プラスミドpsub201をXbaIで消化し、そしてAAV ITRを含む約4kbのベ
クターフラグメントを単離した。次いで、CMV遺伝子発現カセットをAAVITRの間
に平滑末端ライゲーションにより挿入した。このCMV発現カセットは、1.8 kbのX
baI-AflIII DNAフラグメントとして、Karasuyamaら、J.Exp.Med.,169:13-25
(1989)に記載のベクターpCMV-NEO-BAMに由来した。ライゲーションの前に、分子
末端をDNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを使用してフィルインした。C
MV発現カセットは、CMV即時型プロモーターの750bp部分、およびそれに続くウサ
ギβグロビン遺伝子に由来する640 bpのイントロンおよび360 bpのポリアデニル
化シグナル配列を含んだ。イントロンおよびポリA配列の間に2つのクローニン
グ部位が存在した:唯一のBamHI部位および2つの隣接するEcoRI制限部位。生じ
たベクターをpAAV/CMVと命名した。図3Aを参照のこと。ここで、制限エンドヌ
クレアーゼ切断部位を示し、そして以下のように略記する:B、BamHI;E、Eco
RI;N、Nael;およびP、PvuII。
【0030】
第2に、pAAV/CMV発現ベクターをBamHI部位で線状化し、そして付着末端をク
レノウを用いて平滑化した。PCRで生成させた、revおよびエンベロープ(gp160
)配列[配列番号2、Hirschら、Nature,339:389-392(1989)]を含む2.7kbのS
IVサブゲノムフラグメントを、平滑末端化したBamHI部位にクローン化した。生
じた組換えAAVゲノムベクター、pAAV/CMV/SIVrev-gp160は、8.53kbの長さである
。図3Bを参照のこと。ここで、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を示し、そし
て以下のように略記する:N、Nael;およびP、PvuII。このベクターは、以下
のDNAセグメントを配列中に含む:(1)AAVITR、(2)CMVプロモーター、(3)ウサギ
βグロビンイントロン、(4)SIV revおよびエンベロープ配列、(5)ウサギβグロ
ビンポリアデニル化シグナル、および(6)AAV ITR。ヒト293細胞の一過性トラン
スフェクションアッセイにおいて、このベクターはSIV gp160タンパク質の高レ
ベルの発現を生じた。これは、SIVで感染されたサル由来のポリクローナルな血
清を用いる放射性免疫沈降アッセイにより測定した。
【0031】
本発明は、前記のベクター中のSIV rev/エンベロープ配列を、以下の配列で、
標準的な組換えDNA技術により置換することを特に意図する:HIV-1rev/エンベロ
ープ配列(HIV-1MNrev/エンベロープ配列を配列番号3に記載する);神経成長
因子[Levi-Montalcini,Science,237:1154-1162(1987)];毛様体神経栄養因子[
Manthorpeら、NerveGrowth Factors,Wiley and Sons(1989)、135頁から];
グリア細胞由来神経栄養因子[Linら、Science,260: 1130-1132(1993)];トラン
スフォーミング成長因子[Puolakkainenら、NeurotrophicFactors,Academic Pre
ss(1993)、359頁から];酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子[Unsickerら、Neu
rotrophicFactors,AcademicPress(1993)、313頁から];ニューロトロフィン3
[Maisonpierreら、Genomics,10:558-568(1991)];脳由来神経栄養因子[Maisonp
ierre,前出];ニューロトロフィン4/5[Berkemeierら、Neuron,7:857-866(1991
)];チロシンヒドロキシラーゼ[Grimaら、Nature,326:707-711(1987)];
および芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ[Sumiら、J.Neurochemistry,55: 10
75-1078(1990)]。
【0032】
(実施例2)
AAVrep-cap遺伝子およびネオマイシン耐性遺伝子を含むpSV40/neo/rep-capと
呼ばれるプラスミドを、実施例1に記載のrAAVゲノムベクターと共に使用してrA
AVを産生する安定な細胞株を生じさせるために、構築した。
【0033】
pAAV/SVneoと呼ばれるプラスミド(Samulskiら、前出)を、EcoRIおよびBamHI
で消化して、SV40初期プロモーターの421bp部分、1.4kbのネオマイシン耐性遺
伝子、ならびにSV40tスプライス部位およびポリアデニル化シグナルを含む852
bpのDNAフラグメントを含む2.7kbの挿入物を放出させた。この放出された挿入物
をpBLUESCRIPTKS+(Stratagene,La Jolla,CA)のEcoRIおよびBamHI部位にク
ローン化して、5.66kbのプラスミドpSV40/neoを作製した。次に、AAVrep-cap遺
伝子を含む約4.3kbのDNAフラグメント(実施例1に記載のようにpsub201のXbaI
での消化に由来する)を、pSV40/neoのXbaI制限部位に連結して、プラスミドpSV
40/neo/rep-cap(約10kb)を作製した。このプラスミドの構築を、図4の前半に
おいて詳述する。ここで、制限エンドヌクレアーゼ部位を示し、そして以下のよ
うに略記する:B、BamHI;E、EcoRI;P、PvuIIN;NotI;RV、EcoRV;および
X、XbaI。このプラスミドは、repおよびcap活性についての一過性アッセイにお
いて機能性であり、そしてそれ自体を最終的に用いて安定な細胞株を誘導した(
以下の実施例5を参照のこと)。
【0034】
(実施例3)
rAAVを産生する安定な細胞株を生成させるために使用するべき最終的なベクタ
ーを、ベクターpAAV/CMV/SIVrev-gp160(実施例1)およびプラスミドpSV40/neo
/rep-cap(実施例2)から生成させた。
【0035】
構築は、pSV40/neo/rep-capからのneo-rep-cap遺伝子カセットの取り出し、お
よびこのカセットのpAAV/CMV/SIVrev-gp160中の唯一のNaeI部位への挿入を必要
とした(図3Bを参照のこと)。具体的には、ベクターpAAV/CMV/SIVrev-gp160/
neo/rep-capを、pSV40/neo/rep-cap由来のSV/neoおよびrep-cap発現ドメインを
含む7.0kbのEcoRV-NotIDNAフラグメントをアガロースゲルバンド単離すること
によって作製した。フラグメントの付着末端をクレノウを用いて平滑化し、そし
てこのフラグメントをpAAV/CMV/SIVrev-gp160の平滑末端化したNaeI部位に連結
した。図4を参照のこと。ベクターpAAV/CMV/SIVrev-gp160/neo/rep-cap(ATCC6
9637)は、以下の要素を含む:(1)rAAVゲノム;(2)AAVrep-cap遺伝子;および(
3)ネオマイシン耐性遺伝子。
【0036】
(実施例4)
ベクターpAAV/CMV/SIVrev-gp160/neo/rep-capを用いて、本発明のrAAVゲノム
およびAAVrep-cap遺伝子の両方を含む安定な細胞株を生成させた。
【0037】
70%コンフルエントのHeLa細胞を、100mmディッシュ中で、10μgのpAAV/CMV/
SIVrev-gp160/neo/rep-capプラスミドDNAでトランスフェクトした。細胞を、製
造者のプロトコル(Boehringer-Mannheim,Indianapolis,IN)によって指示さ
れるように、血清マイナス培地中てのDOTAP/DNA複合体の形成後6時間トランス
フェクトした。トランスフェクション培地の除去の後、10%ウシ胎児血清を含有
するDMEM培地を細胞に加えた。3日後、700μg/mlのGeneticin(Gibco-BRL,Gai
thersburg,MD)を補充した培地を用いて、ネオマイシン耐性遺伝子を安定に発
現した細胞を選択した。新鮮なGeneticin含有DMEM培地を、4日毎に添加した。G
eneticinn耐性クローンを選択培地を添加した10〜14日後に選択した。全部で55
コロニーを選択して24ウェルプレートに移し、そしてさらなる分析のために拡大
した。
【0038】
55個のネオマイシン耐性HeLa細胞株を、最初に機能性のrep遺伝子活性につい
てスクリーニングした;21個がポジティブと評価された。rep遺伝子活性は、細
胞株を5型アデノウイルス(Ad5)で感染させることによりアッセイした。アデ
ノウイルスによる感染は、repおよびcap遺伝子をトランスアクチベートする。こ
の結果、rAAVゲノムの複製およびその後のこれらの配列の感染性AAV粒子への包
膜化が生じる。rAAV産生の模式図を図5に示す。最大のAd5誘導性細胞変性効果
(CPE;細胞が丸くなることおよび培養フラスコからの90%脱離)の後、細胞溶解
物を調製し、そしてHirtDNA(低分子量DNA)を単離した[Hirt,J.Mol.Biol.
,26:365-369(1967)]。サザンブロット分析を用いて、組換えAAV(rAAV)の複
製型分子(1本鎖、単量体、および2量体形態)の合成を可視化した。Ad5を受
けていないコントロールウェルは、常にネガティブであった。高い相対的レベル
のrep遺伝子活性を有する細胞株を、さらなる研究のために選択した。
【0039】
cap遺伝子の機能性をアッセイするために、細胞株をAd5で感染させ、そして明
澄化した溶解物を最大のCPEの発生の後に調製した。細胞溶解物、Ad5、および野
生型AAVを用いてHeLa細胞を感染させた。Ad5誘導性CPEの発生の後(72時間)、H
irtDNAを単離し、そしてサザンブロット分析を実施した。gp160ハイブリダイズ
可能rAAV(SIVgp160)複製配列を生じた細胞株溶解物は、キャプシド産生につ
いてポジティブであると評価された。
【0040】
各々の細胞株により産生されるrAAVの感染単位/ml(IU/ml)力価を、Ad5およ
び試験されるべき明澄化細胞株溶解物の連続10倍希釈物でC12細胞(安定なrepお
よびcap遺伝子発現を示す)を同時感染させることにより得た。最大のAd5誘導性
CPEの後、HirtDNAを単離し、そしてrAAV複製型分子の存在を検出するためにサザ
ンブロット分析を行った。可視単量体および2量体複製中間体を生成した終点希
釈物を、力価とした。力価の見積は、2回から4回の繰り返し実験に基づいた。
【0041】
55個の細胞株のうち8個の特徴付けの結果を、以下の表1に示す。ここで、「
ND」は値が測定されなかったことを示す。
【0042】
【表1】


細胞株A64(ATCCCRL 11639)は、高力価のrAAV(106iu/ml)を明澄化溶解物
中に産生した。この力価は、Vincentら、前出により報告されたrAAVの力価より
も約1000倍高い。
【0043】
種々の細胞株により産生されたrAAVを、組換えウイルスで感染させたHeLa細胞
におけるSIVgp160を発現するその能力についても試験した。表1に列挙した8つ
の安定な細胞株により産生されるrAAVの濃縮ストックを得た。rAAV粒子を含む細
胞溶解物を、段階密度勾配(CsCl)精製に供した。脱塩透析およびAd5の加熱失
活の後、rAAV粒子を用いて培養物中のHeLa細胞を感染させた(形質導入した)。
2系列の調査を遂行した。第1に、形質導入した細胞を、形質導入後72時間で採
取した全RNAについてのRT-PCRを行うことによって、SIVgp160特異的mRNAの存在
について試験した。SIVgp160に特異的なプライマーにより、逆転写酵素およびT
aqポリメラーゼの存在下でのみ予想された300bpのフラグメントが増幅された;
逆転写酵素なしで行ったサンプルは、一様にネガティブであった。第2に、HeLa
細胞を上記のように種々の希釈度の同一のrAAV/SIVストックで形質導入し、そし
て形質導入後72時間に間接免疫蛍光を感染細胞に対して行った。試験したすべて
の希釈度で(端(out)〜1:200)、SIVgp160タンパク質についてポジティブで
ある細胞が検出された;より低い希釈度が明らかにより多くのポジティブ細胞を
有した。
【0044】
A64細胞株を、標準的な方法により、野生型AAVの産生について試験した。細胞
株をアデノウイルスで感染させてrAAVを溶解物として産生させた。次いで、この
溶解物を用いて正常HeLa細胞を以下のいずれかで感染させた:(i)単独;(ii)ア
デノウイルスとともに;または(iii)アデノウイルスおよび野生型AAVとともに。
コントロールとして、HeLa細胞をrAAVなしでアデノウイルスおよび野生型AAVで
感染させた。HirtDNAを調製し、そしてrAAVまたは野生型AAVのいずれかの複製型
分子についてのサザンブロッティング(2つの異なるブロット)により分析した
。野生型AAVに曝露していないA64細胞中には、野生型AAVは検出されなかった。
【0045】
本発明はAAVrepおよびcap遺伝子のコピーのみならず、rAAVゲノム(目的のIT
Rに隣接するDNAを有する)も含む安定な細胞株の樹立を包含するので、単に細胞
株をアデノウイルスで感染させることによりrAAVが産生される。外因性DNAのト
ランスフェクションは必要でない。その結果、以前に記載された方法に比較して
rAAV産生の効率が増加する。本発明のその他の重要な特徴は、野生型AAVが産生
されないこと、およびrAAVの産生の規模拡大が容易であり、かつ培養における細
胞増殖の通常の抑制によってのみ制限されることである。
【0046】
(実施例5)
安定な(産生(producer))細胞株からrAAVを単離および精製するための方法
を開発した。
【0047】
産生細胞(例えば、実施例4のA64細胞)を、増殖培地中、175 cm2表面積当た
り3×106産生細胞の細胞密度で播種した。細胞は16〜18時間後に約8×106細胞
の密度に達し、次いでこの細胞を、アデノウイルス(Ad5)で、感染多重度(moi
)5で、1〜2時間、増殖培地中で感染させた。15mlの感染容積を使用し、そし
て、1〜2時間の感染後、10mlの増殖培地を各々のフラスコに添加して最終容量
を25 mlとした。[あるいは、Ad5を以下のようにすることにより直接に添加し得
る:ほとんど15mlの増殖培地を取り出し、そして10mlの容量でAd5を添加して(
HBSS中で希釈する)最終容量を25mlとする。]
細胞を、大部分の細胞が激しい振盪の後フラスコから放出された、感染後約48
〜60時間後に回収した。次いで、細胞を生存細胞の割合を測定するためにトリパ
ンブルーで染色した。80%より多くが生存していることが望ましい。次いで、細
胞を250mlディスポーザブル円錐ボトル(Corning)に移し、そして1000×g、15
分間、4℃でペレット化した。生じた上清をアリコートを保存して除去し、そし
て細胞をTM緩衝液(50mM Tris(pH8.0)および1mM MgCl2)中に5×106細胞/m
lの密度で懸濁した。この細胞を、3サイクルのドライアイス上での凍結/融解に
供し、各々の融解の間に2分間ボルテックスした。次いで、溶解した細胞を、最
後の融解の間に、30分間から1時間56℃に加熱して、7.5分毎にボルテックスし
た。10%のデオキシコレートを最終濃度1%になるように溶解物に添加し、そして
この混合物を、完全な溶解を達成するために断続的にボルテックスしながら、37
℃で30分間インキュベートした。完全な溶解が必要な場合は、混合物を毎回2分
間最大設定で3回超音波処理した。血球計を用いて完全な細胞溶解を確認した。
細胞片を2000×g、15分間、4℃でペレット化した。rAAV含有上清を保存した。
【0048】
rAAVを、1.31g/mlのCsClクッションを用いて単離した。21 mlの溶解物上清を
SW-28チューブ中の14mlのCsClクッション上に重層し、そして16,000rpm、10℃
、16時間スピンした。生じた上清を吸引し、そしてrAAVペレットをHBSSで洗浄し
て残渣のCsClを除去した。rAAVペレットを、扱い得る最小の容量(約500μl/ペ
レット)で20mMTris(pH8)、150 mM NaCl、1mM MgCl2(TMN緩衝液)中に再
溶解し、そして一晩水和させた。次いで、これを5分毎にボルテックスしながら
30分間56℃に加熱した。この終点で、ウイルスをさらに精製しない場合は、ウイ
ルスをTMN緩衝液に対して透析してすべての微量のセシウムを除去した。
【0049】
rAAVを等密度バンド化法(isopycnicbanding)によりさらに精製し得る。これ
は、ウイルスをインビボで投与する条件下において適切である。水和したrAAVを
密度1.41g/mlのCsClに移し、次いでSW-41チューブ中で30K、48時間、10℃でス
ピンした。アデノウイルスを含有する勾配上部(密度1.34〜1.36 g/ml)を捨て
、CsCl勾配の残りの部分を1.1g/ml未満の浮遊密度までTMNで希釈した。次いで
、rAAVを一晩>60,000×gでスピンすることによりペレット化した。rAAVを最小
量の1%ゼラチンを補充したTMN緩衝液に再懸濁した。効率的な水和のために、ペ
レットを一晩4℃に置いた。次いで、rAAVをアリコートにして-20℃で保存した

【0050】
(実施例6)
実施例4に記載の安定な細胞の生成と同時に、rep-cap遺伝子を含むがrAAVゲ
ノムを含まない安定なHeLa細胞株を、ピラスミドpSV/neo/rep-cap(実施例2)
を使用して類似の方法により樹立した。全部で52個のネオマイシン耐性HeLa細胞
株を単離し、そして特徴付けした。
【0051】
rep遺伝子機能について試験するために、各々の細胞株をAd5で感染させ、そし
て次にpAAV/CMV/SIVrev-gp160を用いてトランスフェクトした。Ad5誘導性CPEの
後(72時間)、HirtDNAを単離し、そしてサザンブロット分析を実施した。rep遺
伝子機能を、単量体および2量体rAAV gp160配列を生じた細胞株についてポジテ
ィブであると評価した。オートラジオグラフのシグナルの強度を、rep遺伝子発
現の相対的な尺度として用いた(1〜5+)。Ad5マイナスのコントロールサン
プルは、rAAV複製型分子を決して生じなかった。Cap遺伝子向上を、明澄化細胞
溶解物を最大のCPEの発生の後に調製した以外は、同様な方法(Ad5感染およびpA
AV/CMV/SIVrev-gp160トランスフェクション)でアッセイした。次いで、HeLa細
胞を明澄化した細胞溶解物の一部、Ad5、および野生型AAVで同時感染した。Hirt
DNAを72時間後に単離し、そしてハイブリダイゼーション分析を用いてrAAV/gp16
0複製型分子(単量体および2量体)の存在を可視化した。記載したアッセイに
おいて、C12細胞株がrAAV/gp160/120配列の最高の相対的割合を生じた。
【0052】
8つの細胞株についての特徴付けアッセイの結果を表2に示す。ここで、略号
「ND」は値が測定されなかったことを示す。
【0053】
【表2】


rep-cap配列を発現する安定な細胞株の2つの主要な使用方法が存在する:(1)
細胞株をrAAVゲノムでトランスフェクトし、そしてヘルパーウイルスで感染させ
る場合、rAAV粒子を生成すること;および(2)rAAV感染力価を決定すること、で
ある。rAAV感染力価を算定するために、これらの細胞株をアデノウイルスとrAAV
ストックの連続希釈物とで同時トランスフェクトする。最大CPEの後、HirtDNAを
単離し、そして複製型rAAVをサザンブロット分析により視覚化する。次いで、終
点力価(ポジティブハイブリダイゼーションシグナルを与えるための最後のrAAV
ストック希釈)を用いて感染力価を測定する。
【0054】
(実施例7)
HeLa細胞株A64により産生されるrAAVの、HeLa細胞(実施例4を参照のこと)に
加えて種々の哺乳動物の細胞型において感染(形質転換導入)し、そしてSIVgp160
タンパク質を産生する能力を分析した。rAAV(約1の感染多重度)を用いて、細胞
型に応じて単層または浮遊のどちらかの細胞を感染させた。rAAV感染の3日後、
細胞をアセトン/メタノール中で固定し、そしてSIV感染サル由来のポリクローナ
ル抗血清を用いる間接免疫蛍光法によりgp160の産生を評価した。以下の細胞ま
たは細胞株を感染させ、そしてそれらがgp160を産生することを示した;ラット
胎児脳細胞(ニューロンおよびグリア細胞)、マウス3T3線維芽細胞、マウス膣細
胞、ヒト膣細胞、ヒト結腸細胞、ヒトおよびサルリンパ球ならびに293細胞。非
許容性細胞型は同定されなかった。これらの結果は、A64細胞株により産生され
るrAAVは、広範な哺乳動物の細胞型に感染し、そして形質導入細胞において、SI
Vエンベロープ遺伝子産物であるgp160の細胞表面発現を誘導することを示す。
【0055】
(実施例8)
目的の遺伝子としてβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を有するrAAVを産生する安定
な細胞株を生成した。これらのrAAVは標的細胞または組織における目的のDNAの
発現の試験に対するポジティブコントロールとして有用である。
【0056】
ヒトCMVプロモーター、E.coliβ-ガラクトシダーゼ遺伝子、およびSV-40ス
プライス/ポリアデニル化配列を含むβ-ガラクトシダーゼ遺伝子発現カセット(C
lontech、PaloAlto、CA)を、ウサギβ-グロビンイントロン、SIVrevおよびエン
ベロープ配列ならびにウサギβ-グロビンポリアデニル化シグナルの代わりにAAV
ITRの間に含むpAAV/CMV/SIVrep-gp160/neo/rep-capのようなベクターを構築した
。このβ-ガラクトシダーゼ遺伝子発現カセットを、標準的な組換え法によりAAV
ITRの間にクローン化した。
【0057】
β-ガラクトシダーゼ遺伝子を含むrAAV(rAAV/β-gal)を産生する安定なHeLa細
胞株を、実施例4に記載されるように上記ベクターを用いて生成した。
【0058】
(実施例9)
実施例8のrAAV/β-galを用いて、生存マウスの脳への遺伝子導入のための本
発明のrAAVの使用方法を示した。rAAV/β-galをマウスの脳に直接注射し、次い
で脳をβ-ガラクトシダーゼ活性の証拠について検査した。
【0059】
Balb/cマウス(n=3;雄;9ヶ月齢)を麻酔し、そしてマウス固定プラットフ
ォーム上に固定した。滅菌技法を用いて、rAAV/β-gal(1μl、3×106感染単位
を含有する)を右海馬に注射した。さらなるマウス(n=3)はコントロールとして
希釈物の注射を受けた。注射の1週間後、マウスを心臓放血により屠殺し、続い
て50mlのヘパリン化リン酸緩衝化生理食塩水、次いで50mlの0.1Mリン酸緩衝液(
pH7.3)中のパラホルムアルデヒド(0.5%)およびグルタルアルデヒド(2.5%)の混
合物を連続して注入した。脳を全部取り出し、同一の固定混合液中で後固定(pos
t-fix)し(2時間)、そしてO.C.T中で凍結させた。クリオスタット切片(10μm)を
ポリ-L-リジンでコートした顕微鏡スライド上に配置し、そして-20℃で保存した
。スライドを室温で解凍し、再び固定し(4℃で5分間)、PBS中で2回洗浄し、
そしてX-gal染色(β-ガラクトシダーゼの酵素活性の基質)に移した。37℃で一晩
インキュベートした後、スライドをPBS中で2回洗浄し、ヌクレア-ファストレッ
ドで対比染色し、そして青に染色された細胞(β-ガラクトシダーゼが発現されて
いる細胞)について顕微鏡で検査した。
【0060】
rAAV/β-galを注射したマウスの脳において、海馬中で青に染色された細胞は
、顕微鏡検査で容易に検出された。希釈液(コントロール)を注射したマウスの脳
においては、青に染色された細胞は見出されなかった。
【0061】
(実施例10)
安定な細胞株から生成されるrAAVの力価を上昇させる種々の方法が本発明によ
り意図される。この方法は、さらなるAAVrepおよびcap遺伝子を細胞株に供給す
る工程を包含する。
【0062】
さらなるrepおよびcap遺伝子を提供することの有用性を示す第1の方法におい
て、産生細胞株をアデノウイルス感染の前に、AAVrepおよびcap遺伝子を有する
ヘルパープラスミドでトランスフェクトされる。rAAV/β-gal産生細胞株(H44)を
このようにトランスフェクトした実験の結果を下の表3に示す。
【0063】
【表3】


第2の方法において、AAV repおよびcap遺伝子を、EBVまたはBPVのDNA複製起
点および薬剤耐性マーカー(ヒグロマイシン)を含む別々のプラスミドに配置した
。このプラスミドを産生細胞株にトランスフェクトし、次いで新たな細胞株をネ
オマイシンおよびヒグロマイシン上で選択する。この選択圧により、rAAVゲノム
とAAVrepおよびcap遺伝子の複数のコピーとの両方を含む安定な細胞株を得る。
【0064】
第3の方法において、テトラサイクリンオペレーターの制御下でアデノウイル
スのE3位置に、AAVrepおよびcap遺伝子をクローン化する。
【0065】
本発明を好適な実施態様に関して記載したが、当業者には変更および改善が可
能であることはいうまでもない。従って、請求の範囲の限定のみが本発明に適用
される。
【0066】
本発明は、細胞へのDNAの送達に有用なアデノ随伴ウイルス(AAV)材料および方
法を提供する。さらに具体的には、本発明は、プロモーターおよびポリアデニル
化配列に作動可能に連結した免疫不全ウイルスタンパク質をコードするDNA配列
に隣接するアデノ随伴ウイルス逆方向末端反復を含む組換えAAV(rAAV)ゲノム、r
AAVゲノムをパッケージングするための方法、rAAVを産生する安定な宿主細胞株
およびrAAVを利用して目的の遺伝子を細胞に送達するための方法を提供する。特
に、1型ヒト免疫不全ウイルスに対して免疫性を惹起することにおいて、そして
神経学的障害の処置のための治療的遺伝子の送達において有用なrAAVが開示され
る。
【0067】
(発明の効果)
本発明により、DNAの細胞への送達に有用なアデノ随伴ウイルス(AAV)物質およ
び方法が提供される。より具体的には、本発明により、組換えAAV(rAAV)ゲノム
、rAAVをパッケージングするための方法、rAAVを産生する安定な細胞株、および
rAAVを利用して目的の遺伝子を細胞に送達する方法が提供される。本発明のアデ
ノ随伴ウイルスは、神経学的障害の処置のための治療的遺伝子の送達において有
用である。
【0068】
(配列表)
【表101】

【0069】
【表102】

【0070】
【表103】

【0071】
【表104】

【0072】
【表105】

【0073】
【表106】

【0074】
【表107】

【0075】
【表108】

【0076】
【表109】

【0077】
【表110】

【0078】
【表111】

【0079】
【表112】

【0080】
【表113】

【0081】
【表114】

【0082】
【表115】

【0083】
【表116】

【0084】
【表117】

【図面の簡単な説明】
【0085】
本発明の多くの他の局面および利点は、以下の詳細な説明および図面について
なされた参照を考慮すれば明らかである。
【図1】図1は、AAVゲノムの模式図である。
【図2】図2は、実施例で利用されるAAV2配列の供給源であったプラスミドpsub201の模式図である。
【図3】図3(AおよびB)は、ベクターpAAV/CMV/SIVrep-gp160における本発明のrAAVゲノムの構築の流れ図である。
【図4】図4は、本発明のrAAVを産生する安定な細胞株を生成させるために有用なベクターpAAV/CMV/SIVrev-gp160/neo/rep-capの構築の流れ図である。
【図5】図5は、本発明の安定な宿主細胞株を利用するrAAVのパッケージングのための方法の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書等に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−82565(P2007−82565A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−849(P2007−849)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【分割の表示】特願2002−163506(P2002−163506)の分割
【原出願日】平成7年6月6日(1995.6.6)
【出願人】(502200830)チルドレンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】