アトピー性疾患抑制組成物
【課題】アトピー性疾患を抑制する強力な組成物、飲食品、医薬品、香粧品を容易に入手する。
【解決手段】ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有するアトピー性疾患抑制組成物、これを主成分として含有する飲食品、医薬品、香粧品から構成される。
【解決手段】ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有するアトピー性疾患抑制組成物、これを主成分として含有する飲食品、医薬品、香粧品から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等の
アトピー性疾患を特定のイソチオシアネート類で抑制するアトピー性疾患抑制組成物およびこれを用いた飲食品、医薬品、香粧品に係り、特に、より強力で容易に入手できるアトピー性疾患抑制組成物およびこれを用いた飲食品、医薬品、香粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性疾患とは、マスト細胞や顆粒球の膜受容体に結合した特異的IgE抗体と抗原が結合する反応であり、その抗原体反応は炎症性メディエーターを放出させ、血管拡張、毛細管透過性の亢進、炎症性細胞の組織浸潤などを引き起こす。アトピー性疾患の代表的なものとして、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息が挙げられる。
【0003】
近年になって、何らかのアレルギー症状を訴える人が増えてきているが、中でもI型アレルギーに分類される花粉症は羅患率が高く、日本人の10%が花粉症とも見積もられている。マスト細胞表面に結合したIgE抗体に花粉の抗原が結合すると、脱顆粒によりヒスタミンやプロスタグランジンなどが放出され、目のかゆみやくしゃみ・鼻水などの症状が現れる。この際、炎症部位には好酸球が遊走・浸潤し、アレルギー症状を憎悪させる。
【0004】
わが国の平成14年のアトピー性皮膚炎の患者数は28万人であり、1〜4歳まだの幼児期の発症が最も多い。また、気管支喘息の患者数は約107万人であり、1〜9歳までの幼児・児童期の発症が最も多い。(平成14年度患者調査 厚生労働省)
IgEの産生を抑制する薬剤として、メシル酸ナファモスタット(特開2006−169156号公報)、カテキン類(特開2005−336070号公報)、ストリクチニン(特開2005−198664号公報)などが考案されている。
【0005】
また、炎症性細胞の遊走を抑制する薬剤として、縮合ピリダジン誘導体(特開平11−240882号公報)、n−3系高度不飽和脂肪酸(特開平10−1434号公報)、マスト細胞の脱顆粒を抑制する薬剤として、ニコチンアミド誘導体(特開2004−83583号公報)、チオレドキシンスーパーファミリーポリペプチド(特開2005−225853号公報)などが考案されている。
【0006】
しかし、現在考案されている抗炎症剤の多くは、医薬品や合成物であったり、医師による処方が必要であったりと、日常的に摂取するのが難しい。
【0007】
食生活や住環境の変化により、アレルギー性の疾患が増加傾向である昨今では、より強力な容易に入手できるアトピー性疾患抑制剤、あるいはこれを含む飲食品、医薬品、香粧品の開発が強く望まれている。
【特許文献1】特開2006−169156号公報
【特許文献2】特開2005−336070号公報
【特許文献3】特開2005−198664号公報
【特許文献4】特開2004−83583号公報
【特許文献5】特開2005−225853号公報
【特許文献6】特開平11−240882号公報
【特許文献7】特開平10−1434号公報
【非特許文献1】平成14年度患者調査 厚生労働省
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、好中球や好酸球といった炎症性細胞の遊走抑制作用、マスト細胞の脱顆粒抑制作用を呈し、これにより生体のI型アレルギー症状が改善され、結果として花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息といったアトピー性疾患が改善され、上述の公知技術にない利点を有したアトピー性疾患抑制組成物、これを含む飲食品および医薬品および香粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明のアトピー性疾患抑制組成物によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の飲食品によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネートおよびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1のイソチオシアネート類を
主成分としてなることを特徴とする。
【0011】
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の医薬品によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1のイソチオシアネート類を主成分としてなることを特徴とする。
【0012】
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の香粧品によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1のイソチオシアネート類を主成分としてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明はω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有することによりアトピー性疾患抑制組成物を得、さらに、前述のイソチオシアネート類を飲食品に、医薬品に、または香粧品に主成分として含有せしめることにより、アトピー性疾患を抑制する飲食品、医薬品または香粧品を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。
【0015】
本発明に用いられる原材料はイソチオシアネート類(ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートから選択されるひとつ、あるいは複数種の混合物)である。
【0016】
これらのイソチオシアネート類は、化学的な合成法により得ることができるが、アブラナ科植物、フウチョウソウ科植物、パパイア科植物、モクセイソウ科植物、ノウゼンハレン科植物などより抽出、さらに精製して得ることができる。
【0017】
上述のイソチオシアネート類として、3−メチルチオプロピルイソチオシアネート、4−メチルチオブチルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、9−メチルチオノニルイソチオシアネート、10−メチルチオデシルイソチオシアネート、11−メチルチオウンデシルイソチオシアネート、3−メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフィニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフィニルデシルイソチオシアネート、11−メチルスルフィニルウンデシルイソチオシアネート、3−メチルスルフォニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフォニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフォニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフォニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフォニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフォニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフォニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフォニルデシルイソチオシアネート、11−メチルスルフォニルウンデシルイソチオシアネート、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、6−ヘプテニルイソチオシアネートが単独で、あるいは複数種の組み合わせとして含まれる。
【0018】
上述の本発明に係るアトピー性疾患抑制組成物はそれ単独で用いることも可能であるが、各種飲食品あるいは医薬品、医薬部外品、香粧品に添加して使用することもできる。具体的には、清涼飲料水、茶飲料、ドリンク剤、アルコール飲料等の液体食品、菓子、米飯類、パン類、麺類、調味料等の固形食品、粉末状、顆粒状、カプセル状、錠剤、パップ剤、軟膏、クリーム状等の医薬品、粉末状、顆粒状、カプセル状、錠剤、パップ剤、軟膏、クリーム状等の医薬部外品、化粧水、乳液、石鹸、洗顔料、香水等の香粧品等に添加することができる。
【実施例1】
【0019】
好酸球の遊走抑制試験
プロスタグランジンD2(以降PGD2と表記する)に対する好酸球の遊走能に及ぼすわさび抽出物を抑制効果を測定した。
本わさび根茎抽出物の作製
本わさび根茎の磨砕物342gを1200mlの酢酸エチルで2回抽出し、ロータリーエバポレーターおよび窒素ガスを用いて濃縮乾固し、本わさび根茎抽出物1.14gを得た。
【0020】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートは合成法により調製した。
ヒト末梢血由来好酸球の調製
細胞は健常人末梢血を用いた。細胞の分離は、比重分離法、デキストラン処理法による顆粒球画分の調製法、抗CD16抗体結合ビーズによる好中球除去法により行った。
調製培地
ウシ血清アルブミン、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地。
【0021】
調製後の好酸球については(1)調製後の細胞の80%以上が好酸球であること。(2)著しいランダム・ムーブメントがないこと。(3)PGD2に対して明らかな走化性を有することを確認した。
被験試料による細胞処理
希釈調製した被験試料と好酸球を等量混合し、37℃にて1時間インキュベートした。
以下の条件にて細胞走化を測定した。
【0022】
使用機器; TAXIScanR Analyzer (Effector Cell Institute, Inc.)
細胞走化性測定培地; ウシ血清アルブミン、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI―1640倍地。
【0023】
走化性因子;PGD2 10−7 M、1μ1
測定温度;37℃
測定時間;60分間
測定開始から10分間の好酸球遊走率を図1に示す。本わさび根茎抽出物,6−メチルフィニルへキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオへキシルイソチオシアネートは好酸球の遊走を顕著に抑制した。
【実施例2】
【0024】
マスト細胞の脱顆粒抑制試験
ラット腹腔マスト細胞の脱顆粒に及ぼす本わさび抽出物の抑制効果を測定した。
【0025】
本わさび根茎抽出物6−メチルフィニルへキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオへキシルイソチオシアネートは実施例1の方法により調製した。
ラット腹腔マスト細胞の調製
Wister ラットの常在性腹腔細胞 Percoll 遠心法により分離した。
最終調製培地
HEPES−buffered Tyrode solution を用いた。
【0026】
調製後のマスト細胞については、(イ)toluidine blue 染色によるマスト細胞の純度が95%以上であること。(ロ)マスト細胞の生存率が95%以上であること。(ハ)Concanavalin Aに対して明確な脱顆粒反応を示すことを確認した。
被験試料による細胞処理
調製したマスト細胞と被験試料を混合後、37℃にて1時間インキュベートを行った。
【0027】
以下の条件にて脱顆粒試験を行った。
【0028】
使用機器;TAXIScanR Analyzer (Effector Cell Institute, Inc.)
脱顆粒測定培地;HEPES−buffered Tyrode solution
脱顆粒刺激因子;Concanavalin A + 1 ysophosphatidylscrine
測定温度;37℃
総測定時間;60分間(サンプル投入から脱顆粒観察終了まで)
前培養時間;15分間(サンプル投入から脱顆粒刺激剤投入まで)
脱顆粒観察時間;45分間(脱顆粒刺激剤投入から脱顆粒観察終了まで)
評価方法
撮影された画像全体を観察し、全マスト細胞数と脱顆粒した細胞数を計測する。
【0029】
図2、図3および図4に示したように、本わさび根茎抽出物と6−メチルフィニルへキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオへキシルイソチオシアネートはマスト細胞の脱顆粒を抑制した。
【実施例3】
【0030】
マウスを用いた花粉症抑制試験
花粉抗原に感作させたマウスの鼻掻き行動回数測定と、くしゃみ回数測定、サイトカイイン量測定を行った。
【0031】
試料は、実施例1で使用した本わさび根茎抽出物と6−メチルチオへキシルイソチオシアネートと同様に調製した。
【0032】
実験動物として、BDF−1マウスを用いた。環境順応のため、1週間自由摂食環境下で飼育した。Basal群、コーン油群、本わさび抽出物群、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート群、H1ブロッカー(マレイン酸クロルフェニラミン)群の5群に分け、試料100μlを1日1回、40日間胃内強制投与した。8日目、15日目、22日目に花粉
抗原を3度感作させて花粉アレルギーモデルを作製した。29日から33日にかけて5日間連続で花粉抗原を両鼻に点鼻することで花粉症モデルを作製した。各々の群において、3日目に鼻掻き行動回数とくしゃみ回数を計測した。次に36日目から40日目にかけて、5日間連続で花粉抗原を30分間噴霧することで気道炎症モデルを作製した。40日目に解剖して気管支肺胞洗浄液を回収し、サイトカイン(インターフェロン−γ、インターロイキン−4)の測定を行い、Th1/Th2バランスを算出した。
【0033】
図5に示したように、本わさび抽出物群と6−メチルチオへキシルイソチオシアネート群で鼻掻き行動回数の減少が見られた。
【0034】
図6に示したように、6−メチルチオへキシルイソチオシアネート群において、くしゃみ回数の減少が見られた。
【0035】
図7に示したように、本わさび抽出物群と6−メチルチオへキシルイソチオシアネート群でTh1/Th2の値が向上し、I型アレルギーが改善されていることが示され、その効果はH1ブロッカーより高かった。
【実施例4】
【0036】
本わさび根茎に含まれるイソチオシアネート類の抽出
本わさび根茎抽出物の調製を行った。すりおろし本わさび根茎1kgをステンレス製の密封容器内に入れ、25℃で3時間保温し、イソチオシアネート類を発生させた。その後、この容器内の空気を真空ポンプで吸引しながら1時間辛味成分を除去した。辛味を除去した本わさび根茎に含水エタノール3リットルを加え、1時間室温で攪拌抽出した後、加圧ろ過器にてろ過し、抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターにて濃縮後凍結乾燥したものをフードミルにて粉砕し、55gの茶褐色粉末を得た。これを本わさび根茎抽出物として試験に供した。
【0037】
本わさび葉抽出物をマススペクトルガスクロマトグラフィー(GCMS)に供した結果を図8に示す。本わさび葉抽出物から複数種のイソチオシアネート類が複数検出された。図8において、A;第2級ブチルイソチオシアネート、B;3−ブテニルイソチオシアネート、C;4−ぺンテニルイソチオシアネート、D;5−ヘキセニルイソチオシアネート、E;6−メチルチオへキシルイソチオシアネート、F;7−メチルチオへプチルイソチオシアネート、G;6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、H;7−メチルスルフィニルへプチルイソチオシアネートである。
【実施例5】
【0038】
本わさび根茎抽出物入りタブレットの製作
実施例4にて作製した本わさび根茎抽出物3部に対して果糖2部を加えて打錠して1.0g、直径7mmのタブレットを得た。
【実施例6】
【0039】
本わさび抽出物による花粉症抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いて花粉症の改善効果を確認した、花粉症を発症しているが現在通院治療を行っていない花粉症患者15名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、症状の程度を表1のようにスコア化した。
【0040】
【表1】
図9に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取により花粉症の症状が軽減された。
【実施例7】
【0041】
本わさび抽出物による通年性鼻炎抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いて通年性鼻炎の改善効果を確認した。通年性鼻炎を発症しているが現在通院治療を行っていない通年性鼻炎患者10名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、症状の程度を表2のようにスコア化した。
【0042】
【表2】
図10に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取により通年性鼻炎の症状が軽減された。
【実施例8】
【0043】
本わさび抽出物による気管支喘息抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いて気管支喘息の改善効果を確認した。気管支喘息患者7名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、症状の程度を表3のようにスコア化した。
【0044】
【表3】
図11に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取により気管支喘息の症状が軽減された。
【実施例9】
【0045】
本わさび抽出物によるアトピー性皮膚炎抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いてアトピー性皮膚炎の改善効果を確認した。気管支喘息患者7名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、乾燥、紅斑、鱗屑、丘疹、掻破痕、そう痒感のそれぞれの症状の重症度を表4のようにスコア化した。
【0046】
【表4】
図12に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取によりアトピー性皮膚炎の症状が軽減された。
【実施例10】
【0047】
6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートキャンデイによる花粉症抑制ヒト試験
砂糖、水飴、植物油脂、ゼラチンに0.1%の6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートを添加し、キャンデイを作製した。このキャンデイを用いて花粉症の改善効果を確認した。花粉症を発症しているが現在通院治療を行っていない花粉症患者10名にキャンディを摂取させ(1日6粒、4週間)、鼻炎膜と消化管から6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートを吸収させた。症状の程度を表5のようにスコア化した。
【0048】
【表5】
図13に示したとおり、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート含有キャンデイの摂取により花粉症の症状が軽減された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有するアトピー性疾患抑制組成物を得、これをそのまま、あるいは飲食品に、さらには医薬品に、さらには香粧品に主成分として含有することにより、アトピー性疾患を強力に抑制し、かつ容易に入手でき、産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本わさび成分による好酸球の遊走抑制効果を示したグラフである。
【図2】本わさび抽出物によるマスト細胞の脱顆粒抑制効果を示したグラフである。
【図3】本わさび成分6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートによるマスト細胞の脱顆粒抑制効果を示したグラフである。
【図4】本わさび成分6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートによるマスト細胞の脱顆粒抑制効果を示したグラフである。
【図5】本わさび成分による花粉症モデルマウスの鼻掻き行動改善効果を示したグラフである。
【図6】本わさび成分による花粉症モデルマウスのくしゃみ行動改善効果を示したグラフである。
【図7】本わさび成分による花粉症モデルマウスのTh1/Th2バランス改善効果を示したグラフである。
【図8】本わさび根茎抽出物をGCMSに供した結果を示したグラフである。
【図9】本わさび抽出物によるヒトの花粉症抑制効果を示したグラフである。
【図10】本わさび抽出物によるヒトの通年性鼻炎抑制効果を示したグラフである。
【図11】本わさび抽出物によるヒトの気管支喘息抑制効果を示したグラフである。
【図12】本わさび抽出物によるヒトのアトピー性皮膚炎抑制効果を示したグラフである。
【図13】6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート含有キャンデイによるヒトの花粉症抑制効果を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息等の
アトピー性疾患を特定のイソチオシアネート類で抑制するアトピー性疾患抑制組成物およびこれを用いた飲食品、医薬品、香粧品に係り、特に、より強力で容易に入手できるアトピー性疾患抑制組成物およびこれを用いた飲食品、医薬品、香粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性疾患とは、マスト細胞や顆粒球の膜受容体に結合した特異的IgE抗体と抗原が結合する反応であり、その抗原体反応は炎症性メディエーターを放出させ、血管拡張、毛細管透過性の亢進、炎症性細胞の組織浸潤などを引き起こす。アトピー性疾患の代表的なものとして、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息が挙げられる。
【0003】
近年になって、何らかのアレルギー症状を訴える人が増えてきているが、中でもI型アレルギーに分類される花粉症は羅患率が高く、日本人の10%が花粉症とも見積もられている。マスト細胞表面に結合したIgE抗体に花粉の抗原が結合すると、脱顆粒によりヒスタミンやプロスタグランジンなどが放出され、目のかゆみやくしゃみ・鼻水などの症状が現れる。この際、炎症部位には好酸球が遊走・浸潤し、アレルギー症状を憎悪させる。
【0004】
わが国の平成14年のアトピー性皮膚炎の患者数は28万人であり、1〜4歳まだの幼児期の発症が最も多い。また、気管支喘息の患者数は約107万人であり、1〜9歳までの幼児・児童期の発症が最も多い。(平成14年度患者調査 厚生労働省)
IgEの産生を抑制する薬剤として、メシル酸ナファモスタット(特開2006−169156号公報)、カテキン類(特開2005−336070号公報)、ストリクチニン(特開2005−198664号公報)などが考案されている。
【0005】
また、炎症性細胞の遊走を抑制する薬剤として、縮合ピリダジン誘導体(特開平11−240882号公報)、n−3系高度不飽和脂肪酸(特開平10−1434号公報)、マスト細胞の脱顆粒を抑制する薬剤として、ニコチンアミド誘導体(特開2004−83583号公報)、チオレドキシンスーパーファミリーポリペプチド(特開2005−225853号公報)などが考案されている。
【0006】
しかし、現在考案されている抗炎症剤の多くは、医薬品や合成物であったり、医師による処方が必要であったりと、日常的に摂取するのが難しい。
【0007】
食生活や住環境の変化により、アレルギー性の疾患が増加傾向である昨今では、より強力な容易に入手できるアトピー性疾患抑制剤、あるいはこれを含む飲食品、医薬品、香粧品の開発が強く望まれている。
【特許文献1】特開2006−169156号公報
【特許文献2】特開2005−336070号公報
【特許文献3】特開2005−198664号公報
【特許文献4】特開2004−83583号公報
【特許文献5】特開2005−225853号公報
【特許文献6】特開平11−240882号公報
【特許文献7】特開平10−1434号公報
【非特許文献1】平成14年度患者調査 厚生労働省
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、好中球や好酸球といった炎症性細胞の遊走抑制作用、マスト細胞の脱顆粒抑制作用を呈し、これにより生体のI型アレルギー症状が改善され、結果として花粉症やアトピー性皮膚炎、気管支喘息といったアトピー性疾患が改善され、上述の公知技術にない利点を有したアトピー性疾患抑制組成物、これを含む飲食品および医薬品および香粧品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明のアトピー性疾患抑制組成物によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の飲食品によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネートおよびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1のイソチオシアネート類を
主成分としてなることを特徴とする。
【0011】
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の医薬品によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1のイソチオシアネート類を主成分としてなることを特徴とする。
【0012】
さらに、上述の課題を解決するため、本発明の香粧品によれば、ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1のイソチオシアネート類を主成分としてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明はω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有することによりアトピー性疾患抑制組成物を得、さらに、前述のイソチオシアネート類を飲食品に、医薬品に、または香粧品に主成分として含有せしめることにより、アトピー性疾患を抑制する飲食品、医薬品または香粧品を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。
【0015】
本発明に用いられる原材料はイソチオシアネート類(ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートから選択されるひとつ、あるいは複数種の混合物)である。
【0016】
これらのイソチオシアネート類は、化学的な合成法により得ることができるが、アブラナ科植物、フウチョウソウ科植物、パパイア科植物、モクセイソウ科植物、ノウゼンハレン科植物などより抽出、さらに精製して得ることができる。
【0017】
上述のイソチオシアネート類として、3−メチルチオプロピルイソチオシアネート、4−メチルチオブチルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、9−メチルチオノニルイソチオシアネート、10−メチルチオデシルイソチオシアネート、11−メチルチオウンデシルイソチオシアネート、3−メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフィニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフィニルデシルイソチオシアネート、11−メチルスルフィニルウンデシルイソチオシアネート、3−メチルスルフォニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフォニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフォニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフォニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフォニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフォニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフォニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフォニルデシルイソチオシアネート、11−メチルスルフォニルウンデシルイソチオシアネート、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、6−ヘプテニルイソチオシアネートが単独で、あるいは複数種の組み合わせとして含まれる。
【0018】
上述の本発明に係るアトピー性疾患抑制組成物はそれ単独で用いることも可能であるが、各種飲食品あるいは医薬品、医薬部外品、香粧品に添加して使用することもできる。具体的には、清涼飲料水、茶飲料、ドリンク剤、アルコール飲料等の液体食品、菓子、米飯類、パン類、麺類、調味料等の固形食品、粉末状、顆粒状、カプセル状、錠剤、パップ剤、軟膏、クリーム状等の医薬品、粉末状、顆粒状、カプセル状、錠剤、パップ剤、軟膏、クリーム状等の医薬部外品、化粧水、乳液、石鹸、洗顔料、香水等の香粧品等に添加することができる。
【実施例1】
【0019】
好酸球の遊走抑制試験
プロスタグランジンD2(以降PGD2と表記する)に対する好酸球の遊走能に及ぼすわさび抽出物を抑制効果を測定した。
本わさび根茎抽出物の作製
本わさび根茎の磨砕物342gを1200mlの酢酸エチルで2回抽出し、ロータリーエバポレーターおよび窒素ガスを用いて濃縮乾固し、本わさび根茎抽出物1.14gを得た。
【0020】
6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートは合成法により調製した。
ヒト末梢血由来好酸球の調製
細胞は健常人末梢血を用いた。細胞の分離は、比重分離法、デキストラン処理法による顆粒球画分の調製法、抗CD16抗体結合ビーズによる好中球除去法により行った。
調製培地
ウシ血清アルブミン、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI−1640培地。
【0021】
調製後の好酸球については(1)調製後の細胞の80%以上が好酸球であること。(2)著しいランダム・ムーブメントがないこと。(3)PGD2に対して明らかな走化性を有することを確認した。
被験試料による細胞処理
希釈調製した被験試料と好酸球を等量混合し、37℃にて1時間インキュベートした。
以下の条件にて細胞走化を測定した。
【0022】
使用機器; TAXIScanR Analyzer (Effector Cell Institute, Inc.)
細胞走化性測定培地; ウシ血清アルブミン、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI―1640倍地。
【0023】
走化性因子;PGD2 10−7 M、1μ1
測定温度;37℃
測定時間;60分間
測定開始から10分間の好酸球遊走率を図1に示す。本わさび根茎抽出物,6−メチルフィニルへキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオへキシルイソチオシアネートは好酸球の遊走を顕著に抑制した。
【実施例2】
【0024】
マスト細胞の脱顆粒抑制試験
ラット腹腔マスト細胞の脱顆粒に及ぼす本わさび抽出物の抑制効果を測定した。
【0025】
本わさび根茎抽出物6−メチルフィニルへキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオへキシルイソチオシアネートは実施例1の方法により調製した。
ラット腹腔マスト細胞の調製
Wister ラットの常在性腹腔細胞 Percoll 遠心法により分離した。
最終調製培地
HEPES−buffered Tyrode solution を用いた。
【0026】
調製後のマスト細胞については、(イ)toluidine blue 染色によるマスト細胞の純度が95%以上であること。(ロ)マスト細胞の生存率が95%以上であること。(ハ)Concanavalin Aに対して明確な脱顆粒反応を示すことを確認した。
被験試料による細胞処理
調製したマスト細胞と被験試料を混合後、37℃にて1時間インキュベートを行った。
【0027】
以下の条件にて脱顆粒試験を行った。
【0028】
使用機器;TAXIScanR Analyzer (Effector Cell Institute, Inc.)
脱顆粒測定培地;HEPES−buffered Tyrode solution
脱顆粒刺激因子;Concanavalin A + 1 ysophosphatidylscrine
測定温度;37℃
総測定時間;60分間(サンプル投入から脱顆粒観察終了まで)
前培養時間;15分間(サンプル投入から脱顆粒刺激剤投入まで)
脱顆粒観察時間;45分間(脱顆粒刺激剤投入から脱顆粒観察終了まで)
評価方法
撮影された画像全体を観察し、全マスト細胞数と脱顆粒した細胞数を計測する。
【0029】
図2、図3および図4に示したように、本わさび根茎抽出物と6−メチルフィニルへキシルイソチオシアネート、および6−メチルチオへキシルイソチオシアネートはマスト細胞の脱顆粒を抑制した。
【実施例3】
【0030】
マウスを用いた花粉症抑制試験
花粉抗原に感作させたマウスの鼻掻き行動回数測定と、くしゃみ回数測定、サイトカイイン量測定を行った。
【0031】
試料は、実施例1で使用した本わさび根茎抽出物と6−メチルチオへキシルイソチオシアネートと同様に調製した。
【0032】
実験動物として、BDF−1マウスを用いた。環境順応のため、1週間自由摂食環境下で飼育した。Basal群、コーン油群、本わさび抽出物群、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート群、H1ブロッカー(マレイン酸クロルフェニラミン)群の5群に分け、試料100μlを1日1回、40日間胃内強制投与した。8日目、15日目、22日目に花粉
抗原を3度感作させて花粉アレルギーモデルを作製した。29日から33日にかけて5日間連続で花粉抗原を両鼻に点鼻することで花粉症モデルを作製した。各々の群において、3日目に鼻掻き行動回数とくしゃみ回数を計測した。次に36日目から40日目にかけて、5日間連続で花粉抗原を30分間噴霧することで気道炎症モデルを作製した。40日目に解剖して気管支肺胞洗浄液を回収し、サイトカイン(インターフェロン−γ、インターロイキン−4)の測定を行い、Th1/Th2バランスを算出した。
【0033】
図5に示したように、本わさび抽出物群と6−メチルチオへキシルイソチオシアネート群で鼻掻き行動回数の減少が見られた。
【0034】
図6に示したように、6−メチルチオへキシルイソチオシアネート群において、くしゃみ回数の減少が見られた。
【0035】
図7に示したように、本わさび抽出物群と6−メチルチオへキシルイソチオシアネート群でTh1/Th2の値が向上し、I型アレルギーが改善されていることが示され、その効果はH1ブロッカーより高かった。
【実施例4】
【0036】
本わさび根茎に含まれるイソチオシアネート類の抽出
本わさび根茎抽出物の調製を行った。すりおろし本わさび根茎1kgをステンレス製の密封容器内に入れ、25℃で3時間保温し、イソチオシアネート類を発生させた。その後、この容器内の空気を真空ポンプで吸引しながら1時間辛味成分を除去した。辛味を除去した本わさび根茎に含水エタノール3リットルを加え、1時間室温で攪拌抽出した後、加圧ろ過器にてろ過し、抽出液を得た。この抽出液をエバポレーターにて濃縮後凍結乾燥したものをフードミルにて粉砕し、55gの茶褐色粉末を得た。これを本わさび根茎抽出物として試験に供した。
【0037】
本わさび葉抽出物をマススペクトルガスクロマトグラフィー(GCMS)に供した結果を図8に示す。本わさび葉抽出物から複数種のイソチオシアネート類が複数検出された。図8において、A;第2級ブチルイソチオシアネート、B;3−ブテニルイソチオシアネート、C;4−ぺンテニルイソチオシアネート、D;5−ヘキセニルイソチオシアネート、E;6−メチルチオへキシルイソチオシアネート、F;7−メチルチオへプチルイソチオシアネート、G;6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、H;7−メチルスルフィニルへプチルイソチオシアネートである。
【実施例5】
【0038】
本わさび根茎抽出物入りタブレットの製作
実施例4にて作製した本わさび根茎抽出物3部に対して果糖2部を加えて打錠して1.0g、直径7mmのタブレットを得た。
【実施例6】
【0039】
本わさび抽出物による花粉症抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いて花粉症の改善効果を確認した、花粉症を発症しているが現在通院治療を行っていない花粉症患者15名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、症状の程度を表1のようにスコア化した。
【0040】
【表1】
図9に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取により花粉症の症状が軽減された。
【実施例7】
【0041】
本わさび抽出物による通年性鼻炎抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いて通年性鼻炎の改善効果を確認した。通年性鼻炎を発症しているが現在通院治療を行っていない通年性鼻炎患者10名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、症状の程度を表2のようにスコア化した。
【0042】
【表2】
図10に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取により通年性鼻炎の症状が軽減された。
【実施例8】
【0043】
本わさび抽出物による気管支喘息抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いて気管支喘息の改善効果を確認した。気管支喘息患者7名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、症状の程度を表3のようにスコア化した。
【0044】
【表3】
図11に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取により気管支喘息の症状が軽減された。
【実施例9】
【0045】
本わさび抽出物によるアトピー性皮膚炎抑制ヒト試験
実施例5で作製した本わさび根茎抽出物入りタブレットを用いてアトピー性皮膚炎の改善効果を確認した。気管支喘息患者7名に本わさび根茎抽出物入りタブレットを飲用させ(1日6粒、8週間)、乾燥、紅斑、鱗屑、丘疹、掻破痕、そう痒感のそれぞれの症状の重症度を表4のようにスコア化した。
【0046】
【表4】
図12に示したとおり、本わさび根茎抽出物入りタブレットの摂取によりアトピー性皮膚炎の症状が軽減された。
【実施例10】
【0047】
6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートキャンデイによる花粉症抑制ヒト試験
砂糖、水飴、植物油脂、ゼラチンに0.1%の6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートを添加し、キャンデイを作製した。このキャンデイを用いて花粉症の改善効果を確認した。花粉症を発症しているが現在通院治療を行っていない花粉症患者10名にキャンディを摂取させ(1日6粒、4週間)、鼻炎膜と消化管から6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートを吸収させた。症状の程度を表5のようにスコア化した。
【0048】
【表5】
図13に示したとおり、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート含有キャンデイの摂取により花粉症の症状が軽減された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有するアトピー性疾患抑制組成物を得、これをそのまま、あるいは飲食品に、さらには医薬品に、さらには香粧品に主成分として含有することにより、アトピー性疾患を強力に抑制し、かつ容易に入手でき、産業上の利用可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本わさび成分による好酸球の遊走抑制効果を示したグラフである。
【図2】本わさび抽出物によるマスト細胞の脱顆粒抑制効果を示したグラフである。
【図3】本わさび成分6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネートによるマスト細胞の脱顆粒抑制効果を示したグラフである。
【図4】本わさび成分6−メチルチオヘキシルイソチオシアネートによるマスト細胞の脱顆粒抑制効果を示したグラフである。
【図5】本わさび成分による花粉症モデルマウスの鼻掻き行動改善効果を示したグラフである。
【図6】本わさび成分による花粉症モデルマウスのくしゃみ行動改善効果を示したグラフである。
【図7】本わさび成分による花粉症モデルマウスのTh1/Th2バランス改善効果を示したグラフである。
【図8】本わさび根茎抽出物をGCMSに供した結果を示したグラフである。
【図9】本わさび抽出物によるヒトの花粉症抑制効果を示したグラフである。
【図10】本わさび抽出物によるヒトの通年性鼻炎抑制効果を示したグラフである。
【図11】本わさび抽出物によるヒトの気管支喘息抑制効果を示したグラフである。
【図12】本わさび抽出物によるヒトのアトピー性皮膚炎抑制効果を示したグラフである。
【図13】6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート含有キャンデイによるヒトの花粉症抑制効果を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有することを特徴とするアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項2】
イソチオシアネート類は一種または複数種が選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項3】
アトピー性疾患が、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、または気管支喘息である請求項1のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項4】
アトピー性疾患の抗原が、スギ花粉、ヒノキ花粉、シラカバ花粉、ハンノキ花粉、ヤマハンノキ花粉、カシ花粉、ニレ花粉、カエデ花粉、カバ花粉、ネズ花粉、オリーブ花粉、ブタクサ花粉、オオブタクサ花粉、ギョウギシバ花粉、ヨモギ花粉、カモガヤ花粉、ハルガヤ花粉、イネ花粉、ホソムギ花粉、セイバンモロコシ花粉、オオアワガエリ花粉、カナムグラ花粉、セイタカアワダチソウ花粉、オカヒジキ花粉、オオバコ花粉、テンサイ花粉、スズメノテッポウ花粉、ヒメガマ花粉、ハルジオン花粉、イチゴ花粉、イチョウ花粉、バラ花粉、リンゴ花粉、モモ花粉、アカシア花粉、ヤナギ花粉、ウメ花粉、ヤマモモ花粉、ナシ花粉、コスモス花粉、ピーマン花粉、ブドウ花粉、クリ花粉、コウヤマキ花粉、スズメノカラビラ花粉、サクラ花粉、キク花粉、クロマツ花粉、アカマツ花粉、ケヤキ花粉、クルミ花粉、イチイ花粉、ウイキョウ花粉、ネズ花粉、スターチス花粉、ミカン花粉、ナデシコ花粉、オオバヤシャブシ花粉、ツバキ花粉、タンポポ花粉、ダニ類、カビ類、動物の体毛、動物の表皮、ラッテクスである請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項5】
アトピー性疾患抑制作用が好中球および好酸球の遊走抑制作用である請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項6】
アトピー性疾患抑制作用がマスト細胞の脱顆粒抑制作用である請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項7】
ω−メチルチオアルキルイソチオシアネートが3−メチルチオプロピルイソチオシアネート、4−メチルチオブチルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、9−メチルチオノニルイソチオシアネート、10−メチルチオデシルイソチオシアネート、および11−メチルチオウンデシルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項8】
ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネートが3−メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフィニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフィニルデシルイソチオシアネート、および11−メチルスルフィニルウンデシルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項9】
ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネートが、3−メチルスルフォニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフォニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフォニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフォニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフォニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフォニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフォニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフォニルデシルイソチオシアネート、および11−メチルスルフォニルウンデシルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項10】
ω−アルケニルイソチオシアネートが、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、および6−ヘプテニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のイソチオシアネート類を主成分としてなる飲食品。
【請求項12】
請求項1に記載のイソチオシアネート類を主成分としてなる医薬品。
【請求項13】
請求項1に記載のイソチオシアネート類を主成分としてなる香粧品。
【請求項1】
ω−メチルチオアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネート、ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネート、およびω−アルケニルイソチオシアネートの群から選択されるイソチオシアネート類を有効成分として含有することを特徴とするアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項2】
イソチオシアネート類は一種または複数種が選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項3】
アトピー性疾患が、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、または気管支喘息である請求項1のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項4】
アトピー性疾患の抗原が、スギ花粉、ヒノキ花粉、シラカバ花粉、ハンノキ花粉、ヤマハンノキ花粉、カシ花粉、ニレ花粉、カエデ花粉、カバ花粉、ネズ花粉、オリーブ花粉、ブタクサ花粉、オオブタクサ花粉、ギョウギシバ花粉、ヨモギ花粉、カモガヤ花粉、ハルガヤ花粉、イネ花粉、ホソムギ花粉、セイバンモロコシ花粉、オオアワガエリ花粉、カナムグラ花粉、セイタカアワダチソウ花粉、オカヒジキ花粉、オオバコ花粉、テンサイ花粉、スズメノテッポウ花粉、ヒメガマ花粉、ハルジオン花粉、イチゴ花粉、イチョウ花粉、バラ花粉、リンゴ花粉、モモ花粉、アカシア花粉、ヤナギ花粉、ウメ花粉、ヤマモモ花粉、ナシ花粉、コスモス花粉、ピーマン花粉、ブドウ花粉、クリ花粉、コウヤマキ花粉、スズメノカラビラ花粉、サクラ花粉、キク花粉、クロマツ花粉、アカマツ花粉、ケヤキ花粉、クルミ花粉、イチイ花粉、ウイキョウ花粉、ネズ花粉、スターチス花粉、ミカン花粉、ナデシコ花粉、オオバヤシャブシ花粉、ツバキ花粉、タンポポ花粉、ダニ類、カビ類、動物の体毛、動物の表皮、ラッテクスである請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項5】
アトピー性疾患抑制作用が好中球および好酸球の遊走抑制作用である請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項6】
アトピー性疾患抑制作用がマスト細胞の脱顆粒抑制作用である請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項7】
ω−メチルチオアルキルイソチオシアネートが3−メチルチオプロピルイソチオシアネート、4−メチルチオブチルイソチオシアネート、5−メチルチオペンチルイソチオシアネート、6−メチルチオヘキシルイソチオシアネート、7−メチルチオヘプチルイソチオシアネート、8−メチルチオオクチルイソチオシアネート、9−メチルチオノニルイソチオシアネート、10−メチルチオデシルイソチオシアネート、および11−メチルチオウンデシルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項8】
ω−メチルスルフィニルアルキルイソチオシアネートが3−メチルスルフィニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフィニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフィニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフィニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフィニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフィニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフィニルデシルイソチオシアネート、および11−メチルスルフィニルウンデシルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項9】
ω−メチルスルフォニルアルキルイソチオシアネートが、3−メチルスルフォニルプロピルイソチオシアネート、4−メチルスルフォニルブチルイソチオシアネート、5−メチルスルフォニルペンチルイソチオシアネート、6−メチルスルフォニルヘキシルイソチオシアネート、7−メチルスルフォニルヘプチルイソチオシアネート、8−メチルスルフォニルオクチルイソチオシアネート、9−メチルスルフォニルノニルイソチオシアネート、10−メチルスルフォニルデシルイソチオシアネート、および11−メチルスルフォニルウンデシルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項10】
ω−アルケニルイソチオシアネートが、3−ブテニルイソチオシアネート、4−ペンテニルイソチオシアネート、5−ヘキセニルイソチオシアネート、および6−ヘプテニルイソチオシアネートの群から選択される請求項1に記載のアトピー性疾患抑制組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のイソチオシアネート類を主成分としてなる飲食品。
【請求項12】
請求項1に記載のイソチオシアネート類を主成分としてなる医薬品。
【請求項13】
請求項1に記載のイソチオシアネート類を主成分としてなる香粧品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−115133(P2008−115133A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301959(P2006−301959)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月14日 日本花粉学会主催の「日本花粉学会第47回大会」において文書をもって発表
【出願人】(591011007)金印株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月14日 日本花粉学会主催の「日本花粉学会第47回大会」において文書をもって発表
【出願人】(591011007)金印株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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