アドホックネットワークシステム
【課題】アドホックネットワークグループ間通信において、信頼性が高く、十分かつ安定した通信を実現することができるアドホックネットワークシステムを得ること。
【解決手段】各グループを構成するメンバ無線端末が、自グループ内および前記隣接グループ間のルーティングを管理し、自装置が前記境界無線端末であって前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を検出した場合に前記リーダ無線端末に対して前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を通知するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、計算誤差を補正した自装置の補正位置と計算誤差を補正した隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信する手段を備える。
【解決手段】各グループを構成するメンバ無線端末が、自グループ内および前記隣接グループ間のルーティングを管理し、自装置が前記境界無線端末であって前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を検出した場合に前記リーダ無線端末に対して前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を通知するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、計算誤差を補正した自装置の補正位置と計算誤差を補正した隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信する手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホックグループ間で通信を行うアドホックネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における無線通信技術の進展ならびに電子機器の小型化および高度化に伴い、従来のインフラストラクチャ型の通信形態に対して、既存のネットワーク・インフラを利用することなく通信機器間での通信を可能とするアドホックネットワークへの関心が高まっている。このようなアドホックネットワークに関する技術としては、種々の技術が提案されており、たとえば以下のような技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、複数の端末が、障害物など端末間の直接的な電波伝搬を妨げる場合に、自立的に複数の端末からアドホックグループを形成し、この中で通信の状況に応じて上位局と下位局を決定し、下位局同士の通信ができない時は上位局を介して、グループ内およびグループ外局への情報転送する方法を提案している。この方法によれば、接続性を高めるために複数グループが近づく場合には自立的に1グループを形成するようにして、いずれか一方の上位局が新たな上局となり複数の下位局となるグループ端末に通信を転送するなど、通信が遮断した場合にも上位局を介した新たな通信ルート(以下、ルートと呼ぶ)が形成できる。
【0004】
また、特許文献2では、マルチホップ通信を含む無線ネットワークにおいて、通信状況に応じて親端末を選択し、それぞれの親端末間がブロードキャストを用いて同期を取りながら情報を送信する方法を提案している。この方法では、親端末は様々な目的の通信による干渉やチャネルの衝突を避けるために、グループメンバとなる端末を構成し、クロック制御により同期を確立する。
【0005】
また、非特許文献1では、GPS(Global Positioning System)を用いてゾーン(ゾーン)内に存在する端末の配置を把握するゾーン間通信階層を用いる多階層型のルーティングにより、個々の端末が管理するルーティング範囲を限定し、ルート管理のためのメモリ量削減、および経路検索のための通信量を削減する方式を提案している。この方法では、ゾーン内の経路制御を行う端末レベルルーティングと、ゾーン間の経路制御を行うゾーンレベルルーティングに対応して、それぞれ端末レベルルーティングテーブル、ゾーンレベルルーティングテーブルが存在する。端末レベルルーティングテーブルは、各端末が他の端末あるいは隣接ゾーン(グループ)と通信できる関係を示している。また、ゾーンレベルルーティングテーブルは、各ゾーン(グループ)の隣接関係を示している。このように端末レベルとゾーンレベルによる多階層型のルーティングテーブルを保持することにより、1つの端末が管理するGPSが把握する範囲に対応した限定的なルーティング管理を行う。
【0006】
ここで、従来のアドホックネットワークの代表的な例として、端末Tn−001(以降、例えばグループnに属する識別子001の端末をTn−001と示す)と、ルーティングテーブルと、ルーティング制御装置と、送受信装置と、グループ間ルーティングプロトコルと、グループ内ルーティングプロトコルと、を用いるアドホックネットワークについて説明する。
【0007】
ルーティングテーブルは、グループ内ルーティング、グループ間ルーティングを記録、管理するデータベースである。ルーティング制御装置は、送受信装置を制御し、グループ間ルーティングプロトコル,グループ内ルーティングプロトコルを用いて他の端末との間で制御通信を行い、この結果からルーティングテーブルを管理する。送信端末が受信端末に対してメッセージを送信する場合には、自身の端末識別子と送信先の端末識別子と送信するデータとをメッセージフォーマットに格納して送信する。
【0008】
ルーティングテーブルには、メッセージを送信する送信端末と、メッセージを受信する受信端末と、受信端末にメッセージを送信する際にメッセージをホップする先の隣接端末と、が記録されている。また、例えばアドホックグループとしてグループaとグループbとが形成され、グループa内の端末Ta−001が隣接グループTb内の端末へメッセージを送信するためにまずグループa内の端末Ta−002にホップする必要がある場合には、受信端末:Tb、隣接端末:端末Ta−002、に設定されている。
【0009】
そして、グループa内には端末Ta−001〜端末Ta−005が、グループb内には端末Tb−001〜端末Tb−005が収容され、例えば送信端末でありグループaに属する識別子1の端末Ta−001が、受信端末でありグループbに属する識別子3の端末Tb−003へユーザデータ情報を送信する場合、始めにGPSなどの方法を用いてグループ間ルーティングとしてグループTa,グループTbのグループ間ホップが決定される。この決定に基づき、端末Ta−001がルーティングテーブルから送信端末:Ta−001、受信端末:Tb、のテーブルが選択された結果、端末Ta−001は端末Ta−002にメッセージをホップする。
【0010】
【特許文献1】特開2006−319761号公報
【特許文献2】特表2003−516699号公報
【非特許文献1】高橋道人,萬代雅希,笹瀬巌,「アドホックネットワークにおける階層依存型経路探索を用いた多階層ZHLSルーティング方式」,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J86−B No.10,pp.2107−2116,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来のアドホックネットワークにおける再ルーティング動作においては、信頼性の観点で問題があった。たとえばグループTaに属する無線端末Ta−001からグループTbに属する無線端末Tb−005間で、以下のルートが確立されているものとする。
(ルート001):Ta−001,Ta−002,Ta−003,Tb−001,Tb−002,Tb−005
【0012】
この状況において、電波伝搬状況の変化や無線端末の移動により、無線端末Ta−003の電波伝搬範囲から無線端末Tb−001が外れた場合、このグループ間のルートが断絶され、目的とするTa−001からTb−005間の通信が不可能になる。そして、たとえば災害被災地では無線端末の移動、および地形や倒壊物が無線端末とGPS衛星との通信を妨げるため、無線端末Ta−003やTb−001は正確な自身の位置を判断することができず、マルチホップルートを確保するために必要な電波伝搬構成を実現するトポロジィ配置の決定、適切な端末への配置指示を行うことができず、再ルート確立が妨げられるため、信頼性のある通信が実現できない問題があった。
【0013】
また、上記と同様にグループTaに属する無線端末Ta−001からグループTbに属する無線端末Tb−005間で、以下のルートが確立されているものとする。
(ルート001):Ta−001,Ta−002,Ta−003,Tb−001,Tb−002,Tb−005
【0014】
この状況において、電波伝搬状況の変化や無線端末の移動により、無線端末Ta−003からTb−001間の電波伝搬状況が変化し、帯域劣化が生じた場合、目的とするTa−001からTb−005間の通信において十分な情報量の通信が不可能になる問題があった。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アドホックネットワークグループ間通信において、信頼性が高く、十分かつ安定した通信を実現することができるアドホックネットワークシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるアドホックネットワークシステムは、各グループが少なくとも1台のリーダ無線端末を含む複数のメンバ無線端末により構成され、前記グループ間で通信を行うアドホックネットワークシステムであって、前記メンバ無線端末は、グループ内およびグループ間で他のメンバ無線端末と情報の送受信を行う送受信手段と、GPSと交信を行って自装置の絶対位置を測位するGPS測位手段と、電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接するメンバ無線端末とのホップ間の距離およびホップ間の角度を計算する電波強度観測手段と、前期GPS測位装置により自身の絶対位置を測位した自グループ内の基準無線端末の前記絶対位置と、自装置と前記基準無線端末間におけるホップ間の距離およびホップ間の角度に基づいて自装置の絶対位置を計算する絶対位置計算手段と、自装置がグループ間無線通信の対象である隣接グループのメンバ無線端末と通信を行う境界無線端である場合に、前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置に基づいて前記隣接グループの境界無線端末の相対位置を計算する相対位置計算手段と、前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置と前記隣接グループの境界無線端末が計算した自装置の相対位置とを比較し、前記自装置の絶対位置の計算誤差を補正した補正位置を計算する絶対位置比較手段と、自グループ内および前記隣接グループ間のルーティングを管理し、自装置が前記境界無線端末であって前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を検出した場合に前記リーダ無線端末に対して自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置を要求するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、自装置の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信するルーティング制御手段と、を備え、前記リーダ無線端末は、前記送受信手段と、前記GPS測位手段と、前記電波強度観測手段と、前期絶対位置計算手段と、前期相対位置計算手段と、前記絶対位置比較手段と、前期ルーティング制御手段と、前記自グループの境界無線端末より自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置の要求を受信した場合に、前記メンバ無線端末のいずれかを前記自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を前記自グループの境界無線端末に送信する再配置指示手段と、を備え、前記メンバ無線端末のいずれかを再配置した新たな通信ルートを確立してグループ間で通信を行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、隣接グループの境界端末が自グループの境界端末の電波伝搬範囲から移動して隣接グループの境界無線端末とのマルチホップ通信が構成できなくなった場合においても、自グループの境界端末をトポロジィ制御端末として自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させることにより、新たにマルチホップ通信のルートを確立して、グループ間の通信を確実に継続することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかるアドホックネットワークシステムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
まず、本発明における前提と定義について説明する。本発明は、行動グループをアドホックネットワークグループ(以降、グループと呼ぶ)に割り当て、グループ内ルーティングプロトコルとグループ間ルーティングプロトコルを分離して階層型で管理する方法を前提とする。グループはたとえば災害救助において同一の目的を持つメンバにより構成される単位であり、限定された範囲、かつ計画的に行動する密な関係にあるため、常にマルチホップによる通信が可能である。これに対して異なる目的を持つ行動により、連携が疎の関係となるグループ間では、接続性や帯域の劣化が頻繁に発生する。本発明は、このような問題を解決することができるものである。
【0020】
以降の説明では、以下のルールに基づいて記述する。グループTn(n=1,2,3,4,5,……)は、識別子がnのアドホックグループである。無線端末(以下、端末と呼ぶ)Tn−X(X=001,002,003,004,……)は、グループnに属する識別子Xの端末である。
【0021】
また、グループに属する端末では、以下の役割を定義する。リーダ無線端末(以下、リーダ端末と呼ぶ)は、グループ内で、全てのメンバ端末の通信状況を集中管理するとともに、各端末に指定ポイントまでの移動を指示する機能を持つ。境界端末は、グループ内でグループ境界に配置され、隣接グループに属する端末との間で直接、通信を行う(ルートを確保している)端末である。グループ内で境界端末のみが、隣接グループに関わるルーティング情報を管理する。基準端末は、GPSにより自身の絶対位置の測位に成功した端末である。
【0022】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムの構成を示す図である。本実施の形態では、グループT1とグループT2のアドホックグループが存在し、グループT1が端末T1−001〜端末T1−006により形成され、グループT2が端末T2−001〜端末T2−007により形成されている場合を例に説明する。
【0023】
図2は、グループT1およびグループT2を構成する端末Tn−00xの構成を示す図である。本実施の形態にかかる端末Tn−00xは、ルーティングテーブル1、ルーティング制御装置2、送受信装置3、無線通信アンテナ4、GPS測位装置5、GPSアンテナ6、絶対位置計算装置7、電波強度観測装置8、位置決定装置9、絶対位置比較装置10を備える。
【0024】
ルーティングテーブル1は、グループ内ルーティング、グループ間ルーティングに関する情報を記録、管理するデータベースであり、グループ内ルーティングテーブル1a、グループ間ルーティングテーブル1bを保持する。
【0025】
ルーティング制御装置2は、送受信装置3を制御し、無線通信アンテナ4を用いてグループ内ルーティングプロトコル、グループ間ルーティングプロトコルによる他の端末との間で制御通信を行い、この結果からルーティングテーブルを管理する。ルーティング制御装置2は、グループ内の端末との間で制御通信を行い、この結果からグループ内ルーティングテーブル1aを管理するグループ内ルーティング制御装置2a、他グループの端末との間で制御通信を行い、この結果からグループ間ルーティングテーブル1bを管理するグループ間ルーティング制御装置2bを有する。
【0026】
また、GPS測位装置5は、グループに属する端末がGPSにより、自身の絶対位置を測位する。GPSアンテナ6は、端末がGPSとの交信に用いるアンテナである。絶対位置計算装置7は、基準端末の絶対位置、各ホップ間の距離、ホップ間の角度から三角測量により自身の絶対位置を計算する。電波強度観測装置8は、電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接端末までの距離を計算する。位置決定装置9は、絶対位置計算装置7が計算した絶対位置を自身の絶対位置として決定する。絶対位置比較装置10は、ルーティングを行っている境界端末間で、相互に計算した相手の絶対位置を比較して、絶対位置計算装置7で計算した絶対位置情報の誤算を修正する。
【0027】
図3は、本実施の形態にかかるアドホックネットワークシステムにおけるリーダ端末Tn−00xLの構成を示す図である。リーダ端末Tn−00xLは、図2に示した端末Tn−00xの構成に対して、グループ内端末状況管理テーブル21の機能を追加した構成を有し、グループメンバとなる端末の位置、通信状況を集中管理する役割を持ち、各グループに1つ以上が存在する。
【0028】
図4は、端末Tn−00xにおける絶対位置測位方法を説明するための図である。ここでは、グループT1において、端末T1−005が自身の絶対位置を決定する場合を例に説明する。たとえば災害救助においては、メンバの移動および山岳地形や倒壊物などが各端末とGPSとの間の電波伝搬を妨げるため、常に端末T1−005が自身の絶対位置をGPS測位により決定するとは限らない。
【0029】
この場合は、同じグループT1に属する他の端末のいずれかがGPSにより自身の絶対位置を測位できれば、この端末からマルチホップを介した相対位置を計算し、この値と基準端末の絶対位置を用いて、端末T1−005は、自身の絶対位置を計算することができる。このGPSによる自身の絶対位置の測位に成功した端末を基準端末と呼ぶ。図4では、端末T1−001がGPS測位に成功して基準端末となった場合を示している。
【0030】
図5は、図4に示す絶対位置測位方法において利用する基準端末通知メッセージフォーマットである。基準端末通知メッセージフォーマットは、送信端末(基準端末)31、基準端末の絶対位置32、基準端末から中継端末までの距離33、受信端末34、中継端末数35、中継端末36、中継端末の方向・距離37の格納領域を有する。
【0031】
送信端末が受信端末に対してメッセージを送信する場合に、送信端末は自身の端末識別子を送信端末(基準端末)31に格納し、送信先の端末の端末識別子を受信端末34に格納する。また、送信するデータは、図示しないユーザデータ格納領域に格納する。
【0032】
ここではプロアクティブ型アドホックルーティングによる絶対位置測位の手順を説明する。絶対位置を観測する端末T1−005は、定期的にグループ内の端末の配置と通信ルートを確認し、自身のグループ内ルーティングテーブル1aを更新するために、定期的にHelloメッセージを送信している。これに対して、GPS測位に成功して基準端末となった端末T1−001は、図5に示す基準端末通知メッセージフォーマットを、端末T1−005に返す。このメッセージが返送されるマルチホップルートは、以下のルートである。
(ルート):T1−001,T1−004,T1−005
【0033】
ここで、このルートに含まれる各端末は、以下の観測と計算を行う。
(端末T1−001(基準端末))
端末T1−001では、GPS測位装置5がGPSアンテナ6を用いてGPS衛星と通信を行い、この結果から絶対位置計算装置7が自身の絶対位置(x1,y1,z1)を計算する。ここで、端末T1−001では、Helloメッセージを端末T1−004から受信した場合、計算した自身の絶対位置(x1,y1,z1)の情報を、Helloメッセージの応答として返送する基準端末通知メッセージフォーマットの基準端末の絶対位置32に格納する。
【0034】
また、端末T1−001では、電波強度観測装置8が電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接端末であるT1−004までの距離(たとえば10m)を計算し、この情報を基準端末通知メッセージフォーマットの基準端末から中継端末までの距離33に格納する。また、基準端末である自身の識別子(T1−001)を、送信端末(基準端末)31に格納する。以上の処理を終了した後、このメッセージを端末T1−004に送信する。
【0035】
(T1−004(中継端末))
基準端末であるT1−001から基準端末通知メッセージを受信した中継端末である端末T1−004は、電波強度観測装置8が電波強度を観測し、観測結果に基づいてHelloメッセージの受信側の端末T1−001の方向と、Helloメッセージの送信側の端末T1−005の方向を比較し、これらの方向の違いである角度Β1を計算するとともに、端末T1−005までの距離を観測する。この角度Β1と端末T1−005までの距離(たとえば13m)を、基準端末通知メッセージフォーマットの中継端末の方向・距離37に格納し、また自身の識別子(T1−004)を基準端末通知メッセージフォーマットの中継端末36に格納して、中継端末数35を1だけインクリメントした後に、この基準端末通知メッセージフォーマットを端末T1−005に送信する。
【0036】
さらに中継端末が存在する場合は、基準端末通知メッセージフォーマットの中継端末36と中継端末の方向・距離37の組み合わせを追加し、さらに中継端末36に自身の識別子を格納した後に中継端末数35をインクリメントして、基準端末通知メッセージフォーマットを中継する。
【0037】
(T1−005)
Helloメッセージの応答として基準端末通知メッセージフォーマットを受信した端末T1−005は、基準端末通知メッセージフォーマットに格納された基準端末の絶対位置32、各ホップ間の距離、ホップ間の角度から、絶対位置計算装置7が三角測量により自身の絶対位置を計算し、位置決定装置9がその計算された絶対位置を自身の絶対位置として決定する。
【0038】
各端末が以上の処理を行うにより、端末T1−005は常に同一グループT1に属する端末のいずれかが測位した情報から自身の絶対位置を把握することができる。
【0039】
図6は、隣接端末間の誤差修正について説明する図である。上記において図4に示す方法で端末T1−001が算出した自身の絶対位置はGPS測位により計算した精度の高い値であるが、境界端末であるT1−005の絶対位置は、マルチホップによる電波伝搬の角度と距離という相対的な位置情報を用いて算出しているため、ホップ数が多い通信ほど高い精度を実現することは困難となる。そこで、以下では、相対的な位置情報を用いて境界端末の絶対位置を求める場合における境界端末の位置の誤差を補正する方法について説明する。
【0040】
ここでは、図6において以下のルーティングが行われているものとして、グループT1の境界端末T1−003とグループT2の境界端末T2−001との絶対位置を補正する方法について説明する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0041】
端末T1−003は、絶対位置計算装置7がグループT1内の基準端末を用いて自身の絶対位置を計算し、位置決定装置9で決定する。また、同時に自身の絶対位置を用いて、電波強度観測装置8が隣接グループの境界端末T2−001までの距離と方向を観測し、その結果から、絶対位置計算装置7がT2−002の絶対位置(相対絶対位置)を計算する。この絶対位置(相対絶対位置)は、グループ内で相対的な位置情報を用いて計算したことによる誤差を含むため、グループT2内の基準端末に基づいて計算した絶対位置である端末T2−002とはズレがある。このため、端末T1−003が絶対位置(相対絶対位置)を計算した端末をここでは端末T2−002’とする。
【0042】
端末T2−001は、絶対位置計算装置7がグループT2内の基準端末を用いて自身の絶対位置を計算し、位置決定装置9で決定する。また同時に、自身の絶対位置を用いて、隣接グループの境界端末T1−003までの距離と方向の観測し、その結果から、絶対位置計算装置7が端末T1−003の絶対位置(相対絶対位置)を計算する。この絶対位置(相対絶対位置)は上記と同様にグループ内で相対的な位置情報を用いて計算したことによる誤差を含むため、グループT1内の基準端末に基づいて計算した絶対位置である端末T1−003とはズレがある。このため、端末T2−001が絶対位置(相対絶対位置)を計算した端末をここでは端末T1−003’とする。
【0043】
隣接端末である端末T1−003と端末T2−001とは、相互にHelloメッセージを送信している。そして、このHelloメッセージ送信の段階で、それぞれが計算した相手の絶対位置情報(相対絶対位置情報)を通知する。ここで、例えばグループT1では、T1−003が計算した自身の絶対位置と、隣接グループのT2−001が計算した端末T1−003’の絶対位置(相対絶対位置)と、では誤算によるズレが生じている。同様にグループT2では、T2−001が計算した自身の絶対位置と、隣接グループのT1−003が計算した端末T2−001’の絶対位置(相対絶対位置)と、では誤算によるズレが生じている。
【0044】
この誤差を修正するために例えば端末T1−003では、絶対位置比較装置10が、端末T1−003と端末T1−003’との絶対位置を比較して、その中間点を補正位置C1と定義する。同様にT2−001でも絶対位置比較装置10が、端末T2−001と端末T2−001’との絶対位置を比較して、その中間点を補正位置C2と定義する。そして、端末T1−003と端末T2−001とは相互にHelloメッセージで補正位置を通知し、補正位置C1、C2間を結ぶラインを補正ラインLと定義する。この情報は境界端末T1−003とT2−001とが共有する。補正ラインLはグループT1とグループT2とにおいて、それぞれの基準端末を用いて計算した結果であるため、複数の情報を考慮して決定した補正位置C1、C2は、誤差が排除された信頼性が高い値である。このようにして、境界端末の位置の誤差を補正して、信頼性の高い境界端末の絶対位置を求めることができる。
【0045】
次に、再ルーティングについて説明する。図7は、実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。ここではグループT1に属する端末T1−001からグループT2に属する端末T2−005に対して以下のルートでアドホックネットワークが構築されていた時に、隣接グループの境界端末T2−001が境界端末T1−003の電波伝搬範囲A1から移動したために、マルチホップ通信が構成できなくなった場合を例に説明する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0046】
この時、端末T1−003は、T2−001への再ルーティングを試みるが、T1−003の電波伝搬範囲A1内に通信をホップする端末が存在しないため、再ルートが確立できない。このため、グループT1内の端末T1−005(トポロジィ制御端末)を、T1−003の補正位置C1から補正ラインLに沿って、端末T1−003の補正電波伝搬範囲(補正位置C1の電波伝搬範囲)内に移動させることにより、新たに以下のルートを確立する。
(ルート002):T1−001,T1−002,T1−003,T1−005,T2−001,T2−002,T2−005
【0047】
以下では、再ルーティングを実現するために、トポロジィを変更して移動する端末としてT1−005を選択する手続き、および端末T1−005に対する移動位置を指定する方法を説明する。なお、前提として、予めグループT1において1つのリーダ端末T1−001が定義されており、この存在をグループT1内の全ての端末が既知であるとする。
【0048】
図8は、リーダ端末T1−001が有するグループ内端末状況管理テーブル21の構成を示す図である。これらの情報はグループT1内の端末がルートを確立するタイミングでリーダ端末T1−001に通知され、ルートを開放するタイミングで削除される。通知される情報は、ルート毎に定義されるルート識別子、確保した通信帯域、その通信の優先度であり、それぞれグループ内端末状況管理テーブル21のルート識別子45、通信帯域(b/s)46、優先度47に格納される。
【0049】
リーダ端末T1−001は、これらの情報の通知を受けた時、および開放要求を受けた時に、グループ内端末状況管理テーブル21の無線端末41に登録された端末のうち、該当する端末のテーブルを更新する。また、位置43は、各端末が図4を用いて説明した手順により絶対位置を計算した段階で、リーダ端末T1−001に通知した時に格納される。これによりリーダ端末T1−001は、常にグループT1内のルーティング状況として、通信状況、位置情報を集中管理することができる。
【0050】
図9は、再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。ここでは図7に示した状態における再ルーティングの動作を説明する。はじめに以下のルーティングによりアドホック通信が行われている時に、グループ間の端末T1−003と端末T2−001との間で切断が発生する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0051】
端末T1−003は切断を検出すると(ステップS101)、グループ間ルーティング制御装置2bが再ルーティングを目的に、端末検索メッセージm001を端末T2−001に向けて送信する(ステップS102)。ここで、一定時間、応答する端末が存在しない場合、グループ間ルーティング制御装置2bが引き続き定期的に端末検索メッセージm001を一定周期で再送すると同時に、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置要求メッセージm002をリーダ端末T1−001に送信する(ステップS103)。
【0052】
ここで端末T1−003は、隣接端末T2−001方向の電波伝搬範囲内の、補正ラインL上の位置をトポロジィ制御位置として計算する。再配置要求メッセージm002には、確立する再ルートにおいて使用する帯域、優先度、およびトポロジィ制御位置が付加される。トポロジィ制御位置は、再ルート設定においてトポロジィ制御端末を移動させる位置であり、T1−003の補正電波伝搬範囲(補正位置C1の電波伝搬範囲)内の、T1−003の補正位置C1から補正ラインLに沿った位置である。
【0053】
再配置要求メッセージm002を受信したリーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置指示端末分析処理を実行する(ステップS104)。リーダ端末T1−001は、再配置要求メッセージm002で受信した、確立する再ルートにおいて使用する帯域、優先度と、図8に示すグループ内端末状況管理テーブルを比較し、以下の条件判断を行う。
【0054】
(条件1):許容通信帯域42−Σ通信帯域46≧帯域
且つ
(条件2):位置43がトポロジィ制御位置に最も近い
【0055】
さらに優先度を比較し、確立する再ルートよりも優先度が低い端末を検索する。ここでは端末T1−005を再配置端末(トポロジィ制御端末)に決定する。リーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが、トポロジィ制御端末に決定した端末T1−005に対して、端末T1−003から通知されたトポロジィ制御位置情報を付加して、再配置を指示する再配置指示メッセージm003を送信する(ステップS105)。
【0056】
再配置指示メッセージm003を受信した端末T1−005(トポロジィ制御端末)では、図10に示すように該再配置指示メッセージm003で指定されたトポロジィ制御位置に移動する(ステップS106)。トポロジィ制御位置に移動することにより、トポロジィ制御端末T1−005においては、端末T1−003が定周期に送信している端末検索メッセージm001が受信される。端末検索メッセージm001を受信したトポロジィ制御端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bが、該端末検索メッセージm001を端末T2−001に送信する(ステップS107)。
【0057】
トポロジィ制御端末T1−005の電波伝搬範囲内にある端末T2−001は、端末検索メッセージm001を受信する。端末検索メッセージm001を受信したT2−001は、グループ間ルーティング制御装置2bが端末検索メッセージm001に対する応答として端末検索応答メッセージm004を、トポロジィ制御端末T1−005に返送する(ステップS108)。端末検索応答メッセージm004を受信したトポロジィ制御端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bが該端末検索応答メッセージm004を、端末T1−003に返送する(ステップS109)。
【0058】
端末検索応答メッセージm004を受信した端末T1−003は、端末T2−001の間に新たなルートを確立する。以上の処理により、グループ間となる端末T1−003と端末T2−001との間に、新たにルートが確立され、最終的に以下のルート002が確立される。
(ルート002):T1−001,T1−002,T1−003,T1−005,T2−001,T2−002,T2−005
【0059】
上述したように、実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおいては、グループT1に属する端末T1−001からグループT2に属する端末T2−005に対してアドホックネットワークが構築されていた時に、隣接グループの境界端末T2−001が境界端末T1−003の電波伝搬範囲A1から移動したために、マルチホップ通信が構成できなくなった場合においても、トポロジィ制御端末T1−005を補正ラインL上のトポロジィ制御位置に移動させることにより、新たにルートが確立され、グループT1とグループT2との間の通信を確実に継続することができる。
【0060】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2にかかる端末Tn−00xの構成を示す図である。本実施の形態にかかる端末Tn−00xは、ルーティングテーブル1、ルーティング制御装置2、送受信装置3、無線通信アンテナ4、GPS測位装置5、GPSアンテナ6、絶対位置計算装置7、電波強度観測装置8、位置決定装置9、絶対位置比較装置10、帯域観測装置51、帯域制御テーブル52を備える。
【0061】
図12は、本実施の形態における再ルーティングについて説明するための図である。なお、実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムの構成は、実施の形態1の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。ここではグループT1に属する端末T1−001からグループT2に属する端末T2−005に対して以下のルートでアドホックネットワークが構築されていた時に、グループ間通信となるT1−003とT2−003の間の通信帯域が劣化した場合の再ルーティング動作を説明する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0062】
端末T1−003では帯域観測装置51が、常に送受信装置3の動作を監視しており、グループ間の帯域が一定以下に劣化したことを検出した場合には帯域制御テーブル52の情報に基づいて、端末T1−003と端末T2−003との間に、補正ラインL上に新たに端末T1−004,端末T2−005を配置することにより1ホップの距離を短縮させて帯域を大きくし、信頼性が高い帯域増加を実現する。
【0063】
図13は、帯域制御テーブル52の構成を示す図である。帯域制御テーブル52には、帯域劣化率(%)61と距離拡大率(倍)62の情報を保持しており、この情報は全ての端末が自身の電波伝搬特性から決定し、運用時に保持する情報である。この帯域制御テーブル62を持つ端末は、常に帯域観測装置62が、確保しているルートの帯域の監視を行っている。また、十分な性能で通信を行っている場合のスループットをThr1とし、性能が劣化した時のスループットをThr2とした場合の帯域劣化率61を以下のように定義する。
帯域劣化率(%)=(thr2/Thr1)×100
この帯域劣化率61に応じて、距離拡大率62を特定する。
【0064】
図14は、再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。ここでは図12に示した状態における再ルーティングの動作を説明する。はじめに以下のルーティングによりアドホック通信が行われている時に、グループ間の端末T1−003と端末T2−001との間で帯域劣化が発生する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0065】
境界端末T1−003では、帯域観測装置51が常に帯域劣化率を算出して帯域不足の検出処理を行っている(ステップS201)。境界端末T1−003は、帯域不足の検出処理において帯域不足を検出すると、この帯域劣化率(%)に対応する距離拡大率62を帯域制御テーブルにおいて検索する。
【0066】
そして、境界端末T1−003では、帯域が不足したルートの接続先である端末T2−001までの距離を端末T1−003の電波強度観測装置8が測位し、この値と距離拡大率62の値とから、例えば以下の計算式により端末T1−003と端末T2−001の間に新たに配置する端末数を決定する。
再配置端末数=(端末T1−003と端末T2−001との距離÷距離拡大率62)÷(端末T1−003と端末T2−001との距離)
【0067】
つぎに、境界端末T1−003は、グループ間ルーティング制御装置2bが、帯域が不足している接続先である端末T2−001にルート再設定通知メッセージm101を送信し、再ルーティングの開始を通知する(ステップS202)。同時に端末T1−003は、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置要求メッセージm002をリーダ端末1−001に送信する(ステップS203)。この時、送信する情報は、実施の形態1の場合に対して、帯域不足検出処理において計算した新たに配置する端末数(再配置端末数)を加えたものである。すなわち、再配置要求メッセージm002には、確立する再ルートにおいて使用する帯域、優先度、トポロジィ制御位置、および再配置端末数が付加される。
【0068】
再配置要求メッセージm002を受信したリーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置指示端末分析処理を実行する(ステップS204)。この再配置指示端末分析処理においては、実施の形態1の再配置指示端末分析処理(ステップS104)と同様の分析を行う。ただし、実施の形態2では、再配置端末数にて指示された数を抽出し、これを用いて複数のトポロジィ制御端末の選択および各トポロジィ制御端末のトポロジィ制御位置を決定する点が異なる。ここではトポロジィ制御端末として、端末T1−004と端末T1−005とが選択されたものとする。
【0069】
リーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが、トポロジィ制御端末T1−004とトポロジィ制御端末T1−005とに対して、それぞれに対するトポロジィ制御位置情報を付加して、再配置を指示する再配置指示メッセージm003を送信する(ステップS205)。再配置指示メッセージm003を受信したトポロジィ制御端末T1−004とトポロジィ制御端末T1−005では、図15に示すように該再配置指示メッセージm003で指定されたそれぞれのトポロジィ制御位置に移動する(ステップS206)。ここでは、端末T1−003の補正位置C1と端末T2−001の補正位置C2間の補正ラインLに沿った位置に等間隔に配置する。
【0070】
リーダ端末T1−001はさらに、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置応答メッセージm102を端末T1−003に送信し、再配置が完了したことを通知する(ステップS207)。再配置応答メッセージm102を受信した端末T1−003は、グループ間ルーティング制御装置2bがグループ間ルーティング制御装置2bルート再配置端末検索メッセージm103をトポロジィ制御端末である端末T1−004に送信する(ステップS208)。ルート再配置端末検索メッセージm103を受信した端末T1−004は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索メッセージm103をトポロジィ制御端末である端末T1−005に送信する(ステップS209)。ルート再配置端末検索メッセージm103を受信した端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索メッセージm103を端末T2−001に送信する(ステップS210)。これにより、端末T1−003,端末T1−004,端末T1−005,端末T2−001を指定した再ルーティングを行う。
【0071】
トポロジィ制御端末T1−005の電波伝搬範囲内にある端末T2−001は、ルート再配置端末検索メッセージm103を受信する。ルート再配置端末検索メッセージm103を受信した端末T2−001は、ルート確立の応答としてルート再配置端末検索応答メッセージm104をトポロジィ制御端末である端末T1−005に返送する(ステップS211)。ルート再配置端末検索応答メッセージm104を受信した端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索応答メッセージm104をトポロジィ制御端末である端末T1−004に返送する(ステップS212)。ルート再配置端末検索応答メッセージm104を受信した端末T1−004は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索応答メッセージm104を端末T1−003に返送する(ステップS213)。
【0072】
ルート再配置端末検索応答メッセージm104を受信した端末T1−003は、端末T2−001の間に新たなルートを確立する。以上の処理により、グループ間となる端末T1−003と端末T2−001との間に、新たにホップ距離を短縮することによる帯域の拡大を図ったルートを確立し、最終的に以下のルート003が確立される。
(ルート002):T1−001,T1−002,T1−003,T1−004,T1−005,T2−001,T2−002,T2−005
【0073】
上述したように、実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおいては、グループ間の帯域が一定以下に劣化した場合においても、端末T1−003と端末T2−003との間の補正ラインL上に新たに端末T1−004,端末T2−005を配置することによりホップ間の距離を短縮させて、信頼性が高い帯域増加を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかるアドホックネットワークシステムは、災害被災地など広域なフィールドにおいて、各メンバが無線端末を保持し、それぞれが役割を持つ複数の行動グループに分かれて活動する場合に、無線端末の移動、および地形や倒壊物による電波伝搬の遮断により発生する行動グループ間通信の断絶に対して、特定の位置に無線端末を計画的に配置して新たなルートを計画的に再設定する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおいてグループT1およびグループT2を構成する端末の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおいてグループT1およびグループT2を構成するリーダ端末の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムの端末における絶対位置測位方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける絶対位置測位で利用する基準端末通知メッセージフォーマットを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける隣接端末間の誤差修正について説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおけるリーダ端末が有するグループ内端末状況管理テーブルの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。
【図10】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおいてグループT1およびグループT2を構成する端末の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける帯域制御テーブルの構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。
【図15】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ルーティングテーブル
1a グループ内ルーティングテーブル
1b グループ間ルーティングテーブル
2 ルーティング制御装置
2a グループ内ルーティング制御装置
2b グループ間ルーティング制御装置
3 送受信装置
4 無線通信アンテナ
5 測位装置
6 アンテナ
7 絶対位置計算装置
8 電波強度観測装置
9 位置決定装置
10 絶対位置比較装置
21 グループ内端末状況管理テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホックグループ間で通信を行うアドホックネットワークシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における無線通信技術の進展ならびに電子機器の小型化および高度化に伴い、従来のインフラストラクチャ型の通信形態に対して、既存のネットワーク・インフラを利用することなく通信機器間での通信を可能とするアドホックネットワークへの関心が高まっている。このようなアドホックネットワークに関する技術としては、種々の技術が提案されており、たとえば以下のような技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、複数の端末が、障害物など端末間の直接的な電波伝搬を妨げる場合に、自立的に複数の端末からアドホックグループを形成し、この中で通信の状況に応じて上位局と下位局を決定し、下位局同士の通信ができない時は上位局を介して、グループ内およびグループ外局への情報転送する方法を提案している。この方法によれば、接続性を高めるために複数グループが近づく場合には自立的に1グループを形成するようにして、いずれか一方の上位局が新たな上局となり複数の下位局となるグループ端末に通信を転送するなど、通信が遮断した場合にも上位局を介した新たな通信ルート(以下、ルートと呼ぶ)が形成できる。
【0004】
また、特許文献2では、マルチホップ通信を含む無線ネットワークにおいて、通信状況に応じて親端末を選択し、それぞれの親端末間がブロードキャストを用いて同期を取りながら情報を送信する方法を提案している。この方法では、親端末は様々な目的の通信による干渉やチャネルの衝突を避けるために、グループメンバとなる端末を構成し、クロック制御により同期を確立する。
【0005】
また、非特許文献1では、GPS(Global Positioning System)を用いてゾーン(ゾーン)内に存在する端末の配置を把握するゾーン間通信階層を用いる多階層型のルーティングにより、個々の端末が管理するルーティング範囲を限定し、ルート管理のためのメモリ量削減、および経路検索のための通信量を削減する方式を提案している。この方法では、ゾーン内の経路制御を行う端末レベルルーティングと、ゾーン間の経路制御を行うゾーンレベルルーティングに対応して、それぞれ端末レベルルーティングテーブル、ゾーンレベルルーティングテーブルが存在する。端末レベルルーティングテーブルは、各端末が他の端末あるいは隣接ゾーン(グループ)と通信できる関係を示している。また、ゾーンレベルルーティングテーブルは、各ゾーン(グループ)の隣接関係を示している。このように端末レベルとゾーンレベルによる多階層型のルーティングテーブルを保持することにより、1つの端末が管理するGPSが把握する範囲に対応した限定的なルーティング管理を行う。
【0006】
ここで、従来のアドホックネットワークの代表的な例として、端末Tn−001(以降、例えばグループnに属する識別子001の端末をTn−001と示す)と、ルーティングテーブルと、ルーティング制御装置と、送受信装置と、グループ間ルーティングプロトコルと、グループ内ルーティングプロトコルと、を用いるアドホックネットワークについて説明する。
【0007】
ルーティングテーブルは、グループ内ルーティング、グループ間ルーティングを記録、管理するデータベースである。ルーティング制御装置は、送受信装置を制御し、グループ間ルーティングプロトコル,グループ内ルーティングプロトコルを用いて他の端末との間で制御通信を行い、この結果からルーティングテーブルを管理する。送信端末が受信端末に対してメッセージを送信する場合には、自身の端末識別子と送信先の端末識別子と送信するデータとをメッセージフォーマットに格納して送信する。
【0008】
ルーティングテーブルには、メッセージを送信する送信端末と、メッセージを受信する受信端末と、受信端末にメッセージを送信する際にメッセージをホップする先の隣接端末と、が記録されている。また、例えばアドホックグループとしてグループaとグループbとが形成され、グループa内の端末Ta−001が隣接グループTb内の端末へメッセージを送信するためにまずグループa内の端末Ta−002にホップする必要がある場合には、受信端末:Tb、隣接端末:端末Ta−002、に設定されている。
【0009】
そして、グループa内には端末Ta−001〜端末Ta−005が、グループb内には端末Tb−001〜端末Tb−005が収容され、例えば送信端末でありグループaに属する識別子1の端末Ta−001が、受信端末でありグループbに属する識別子3の端末Tb−003へユーザデータ情報を送信する場合、始めにGPSなどの方法を用いてグループ間ルーティングとしてグループTa,グループTbのグループ間ホップが決定される。この決定に基づき、端末Ta−001がルーティングテーブルから送信端末:Ta−001、受信端末:Tb、のテーブルが選択された結果、端末Ta−001は端末Ta−002にメッセージをホップする。
【0010】
【特許文献1】特開2006−319761号公報
【特許文献2】特表2003−516699号公報
【非特許文献1】高橋道人,萬代雅希,笹瀬巌,「アドホックネットワークにおける階層依存型経路探索を用いた多階層ZHLSルーティング方式」,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J86−B No.10,pp.2107−2116,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来のアドホックネットワークにおける再ルーティング動作においては、信頼性の観点で問題があった。たとえばグループTaに属する無線端末Ta−001からグループTbに属する無線端末Tb−005間で、以下のルートが確立されているものとする。
(ルート001):Ta−001,Ta−002,Ta−003,Tb−001,Tb−002,Tb−005
【0012】
この状況において、電波伝搬状況の変化や無線端末の移動により、無線端末Ta−003の電波伝搬範囲から無線端末Tb−001が外れた場合、このグループ間のルートが断絶され、目的とするTa−001からTb−005間の通信が不可能になる。そして、たとえば災害被災地では無線端末の移動、および地形や倒壊物が無線端末とGPS衛星との通信を妨げるため、無線端末Ta−003やTb−001は正確な自身の位置を判断することができず、マルチホップルートを確保するために必要な電波伝搬構成を実現するトポロジィ配置の決定、適切な端末への配置指示を行うことができず、再ルート確立が妨げられるため、信頼性のある通信が実現できない問題があった。
【0013】
また、上記と同様にグループTaに属する無線端末Ta−001からグループTbに属する無線端末Tb−005間で、以下のルートが確立されているものとする。
(ルート001):Ta−001,Ta−002,Ta−003,Tb−001,Tb−002,Tb−005
【0014】
この状況において、電波伝搬状況の変化や無線端末の移動により、無線端末Ta−003からTb−001間の電波伝搬状況が変化し、帯域劣化が生じた場合、目的とするTa−001からTb−005間の通信において十分な情報量の通信が不可能になる問題があった。
【0015】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アドホックネットワークグループ間通信において、信頼性が高く、十分かつ安定した通信を実現することができるアドホックネットワークシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるアドホックネットワークシステムは、各グループが少なくとも1台のリーダ無線端末を含む複数のメンバ無線端末により構成され、前記グループ間で通信を行うアドホックネットワークシステムであって、前記メンバ無線端末は、グループ内およびグループ間で他のメンバ無線端末と情報の送受信を行う送受信手段と、GPSと交信を行って自装置の絶対位置を測位するGPS測位手段と、電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接するメンバ無線端末とのホップ間の距離およびホップ間の角度を計算する電波強度観測手段と、前期GPS測位装置により自身の絶対位置を測位した自グループ内の基準無線端末の前記絶対位置と、自装置と前記基準無線端末間におけるホップ間の距離およびホップ間の角度に基づいて自装置の絶対位置を計算する絶対位置計算手段と、自装置がグループ間無線通信の対象である隣接グループのメンバ無線端末と通信を行う境界無線端である場合に、前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置に基づいて前記隣接グループの境界無線端末の相対位置を計算する相対位置計算手段と、前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置と前記隣接グループの境界無線端末が計算した自装置の相対位置とを比較し、前記自装置の絶対位置の計算誤差を補正した補正位置を計算する絶対位置比較手段と、自グループ内および前記隣接グループ間のルーティングを管理し、自装置が前記境界無線端末であって前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を検出した場合に前記リーダ無線端末に対して自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置を要求するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、自装置の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信するルーティング制御手段と、を備え、前記リーダ無線端末は、前記送受信手段と、前記GPS測位手段と、前記電波強度観測手段と、前期絶対位置計算手段と、前期相対位置計算手段と、前記絶対位置比較手段と、前期ルーティング制御手段と、前記自グループの境界無線端末より自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置の要求を受信した場合に、前記メンバ無線端末のいずれかを前記自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を前記自グループの境界無線端末に送信する再配置指示手段と、を備え、前記メンバ無線端末のいずれかを再配置した新たな通信ルートを確立してグループ間で通信を行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、隣接グループの境界端末が自グループの境界端末の電波伝搬範囲から移動して隣接グループの境界無線端末とのマルチホップ通信が構成できなくなった場合においても、自グループの境界端末をトポロジィ制御端末として自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させることにより、新たにマルチホップ通信のルートを確立して、グループ間の通信を確実に継続することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかるアドホックネットワークシステムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0019】
まず、本発明における前提と定義について説明する。本発明は、行動グループをアドホックネットワークグループ(以降、グループと呼ぶ)に割り当て、グループ内ルーティングプロトコルとグループ間ルーティングプロトコルを分離して階層型で管理する方法を前提とする。グループはたとえば災害救助において同一の目的を持つメンバにより構成される単位であり、限定された範囲、かつ計画的に行動する密な関係にあるため、常にマルチホップによる通信が可能である。これに対して異なる目的を持つ行動により、連携が疎の関係となるグループ間では、接続性や帯域の劣化が頻繁に発生する。本発明は、このような問題を解決することができるものである。
【0020】
以降の説明では、以下のルールに基づいて記述する。グループTn(n=1,2,3,4,5,……)は、識別子がnのアドホックグループである。無線端末(以下、端末と呼ぶ)Tn−X(X=001,002,003,004,……)は、グループnに属する識別子Xの端末である。
【0021】
また、グループに属する端末では、以下の役割を定義する。リーダ無線端末(以下、リーダ端末と呼ぶ)は、グループ内で、全てのメンバ端末の通信状況を集中管理するとともに、各端末に指定ポイントまでの移動を指示する機能を持つ。境界端末は、グループ内でグループ境界に配置され、隣接グループに属する端末との間で直接、通信を行う(ルートを確保している)端末である。グループ内で境界端末のみが、隣接グループに関わるルーティング情報を管理する。基準端末は、GPSにより自身の絶対位置の測位に成功した端末である。
【0022】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムの構成を示す図である。本実施の形態では、グループT1とグループT2のアドホックグループが存在し、グループT1が端末T1−001〜端末T1−006により形成され、グループT2が端末T2−001〜端末T2−007により形成されている場合を例に説明する。
【0023】
図2は、グループT1およびグループT2を構成する端末Tn−00xの構成を示す図である。本実施の形態にかかる端末Tn−00xは、ルーティングテーブル1、ルーティング制御装置2、送受信装置3、無線通信アンテナ4、GPS測位装置5、GPSアンテナ6、絶対位置計算装置7、電波強度観測装置8、位置決定装置9、絶対位置比較装置10を備える。
【0024】
ルーティングテーブル1は、グループ内ルーティング、グループ間ルーティングに関する情報を記録、管理するデータベースであり、グループ内ルーティングテーブル1a、グループ間ルーティングテーブル1bを保持する。
【0025】
ルーティング制御装置2は、送受信装置3を制御し、無線通信アンテナ4を用いてグループ内ルーティングプロトコル、グループ間ルーティングプロトコルによる他の端末との間で制御通信を行い、この結果からルーティングテーブルを管理する。ルーティング制御装置2は、グループ内の端末との間で制御通信を行い、この結果からグループ内ルーティングテーブル1aを管理するグループ内ルーティング制御装置2a、他グループの端末との間で制御通信を行い、この結果からグループ間ルーティングテーブル1bを管理するグループ間ルーティング制御装置2bを有する。
【0026】
また、GPS測位装置5は、グループに属する端末がGPSにより、自身の絶対位置を測位する。GPSアンテナ6は、端末がGPSとの交信に用いるアンテナである。絶対位置計算装置7は、基準端末の絶対位置、各ホップ間の距離、ホップ間の角度から三角測量により自身の絶対位置を計算する。電波強度観測装置8は、電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接端末までの距離を計算する。位置決定装置9は、絶対位置計算装置7が計算した絶対位置を自身の絶対位置として決定する。絶対位置比較装置10は、ルーティングを行っている境界端末間で、相互に計算した相手の絶対位置を比較して、絶対位置計算装置7で計算した絶対位置情報の誤算を修正する。
【0027】
図3は、本実施の形態にかかるアドホックネットワークシステムにおけるリーダ端末Tn−00xLの構成を示す図である。リーダ端末Tn−00xLは、図2に示した端末Tn−00xの構成に対して、グループ内端末状況管理テーブル21の機能を追加した構成を有し、グループメンバとなる端末の位置、通信状況を集中管理する役割を持ち、各グループに1つ以上が存在する。
【0028】
図4は、端末Tn−00xにおける絶対位置測位方法を説明するための図である。ここでは、グループT1において、端末T1−005が自身の絶対位置を決定する場合を例に説明する。たとえば災害救助においては、メンバの移動および山岳地形や倒壊物などが各端末とGPSとの間の電波伝搬を妨げるため、常に端末T1−005が自身の絶対位置をGPS測位により決定するとは限らない。
【0029】
この場合は、同じグループT1に属する他の端末のいずれかがGPSにより自身の絶対位置を測位できれば、この端末からマルチホップを介した相対位置を計算し、この値と基準端末の絶対位置を用いて、端末T1−005は、自身の絶対位置を計算することができる。このGPSによる自身の絶対位置の測位に成功した端末を基準端末と呼ぶ。図4では、端末T1−001がGPS測位に成功して基準端末となった場合を示している。
【0030】
図5は、図4に示す絶対位置測位方法において利用する基準端末通知メッセージフォーマットである。基準端末通知メッセージフォーマットは、送信端末(基準端末)31、基準端末の絶対位置32、基準端末から中継端末までの距離33、受信端末34、中継端末数35、中継端末36、中継端末の方向・距離37の格納領域を有する。
【0031】
送信端末が受信端末に対してメッセージを送信する場合に、送信端末は自身の端末識別子を送信端末(基準端末)31に格納し、送信先の端末の端末識別子を受信端末34に格納する。また、送信するデータは、図示しないユーザデータ格納領域に格納する。
【0032】
ここではプロアクティブ型アドホックルーティングによる絶対位置測位の手順を説明する。絶対位置を観測する端末T1−005は、定期的にグループ内の端末の配置と通信ルートを確認し、自身のグループ内ルーティングテーブル1aを更新するために、定期的にHelloメッセージを送信している。これに対して、GPS測位に成功して基準端末となった端末T1−001は、図5に示す基準端末通知メッセージフォーマットを、端末T1−005に返す。このメッセージが返送されるマルチホップルートは、以下のルートである。
(ルート):T1−001,T1−004,T1−005
【0033】
ここで、このルートに含まれる各端末は、以下の観測と計算を行う。
(端末T1−001(基準端末))
端末T1−001では、GPS測位装置5がGPSアンテナ6を用いてGPS衛星と通信を行い、この結果から絶対位置計算装置7が自身の絶対位置(x1,y1,z1)を計算する。ここで、端末T1−001では、Helloメッセージを端末T1−004から受信した場合、計算した自身の絶対位置(x1,y1,z1)の情報を、Helloメッセージの応答として返送する基準端末通知メッセージフォーマットの基準端末の絶対位置32に格納する。
【0034】
また、端末T1−001では、電波強度観測装置8が電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接端末であるT1−004までの距離(たとえば10m)を計算し、この情報を基準端末通知メッセージフォーマットの基準端末から中継端末までの距離33に格納する。また、基準端末である自身の識別子(T1−001)を、送信端末(基準端末)31に格納する。以上の処理を終了した後、このメッセージを端末T1−004に送信する。
【0035】
(T1−004(中継端末))
基準端末であるT1−001から基準端末通知メッセージを受信した中継端末である端末T1−004は、電波強度観測装置8が電波強度を観測し、観測結果に基づいてHelloメッセージの受信側の端末T1−001の方向と、Helloメッセージの送信側の端末T1−005の方向を比較し、これらの方向の違いである角度Β1を計算するとともに、端末T1−005までの距離を観測する。この角度Β1と端末T1−005までの距離(たとえば13m)を、基準端末通知メッセージフォーマットの中継端末の方向・距離37に格納し、また自身の識別子(T1−004)を基準端末通知メッセージフォーマットの中継端末36に格納して、中継端末数35を1だけインクリメントした後に、この基準端末通知メッセージフォーマットを端末T1−005に送信する。
【0036】
さらに中継端末が存在する場合は、基準端末通知メッセージフォーマットの中継端末36と中継端末の方向・距離37の組み合わせを追加し、さらに中継端末36に自身の識別子を格納した後に中継端末数35をインクリメントして、基準端末通知メッセージフォーマットを中継する。
【0037】
(T1−005)
Helloメッセージの応答として基準端末通知メッセージフォーマットを受信した端末T1−005は、基準端末通知メッセージフォーマットに格納された基準端末の絶対位置32、各ホップ間の距離、ホップ間の角度から、絶対位置計算装置7が三角測量により自身の絶対位置を計算し、位置決定装置9がその計算された絶対位置を自身の絶対位置として決定する。
【0038】
各端末が以上の処理を行うにより、端末T1−005は常に同一グループT1に属する端末のいずれかが測位した情報から自身の絶対位置を把握することができる。
【0039】
図6は、隣接端末間の誤差修正について説明する図である。上記において図4に示す方法で端末T1−001が算出した自身の絶対位置はGPS測位により計算した精度の高い値であるが、境界端末であるT1−005の絶対位置は、マルチホップによる電波伝搬の角度と距離という相対的な位置情報を用いて算出しているため、ホップ数が多い通信ほど高い精度を実現することは困難となる。そこで、以下では、相対的な位置情報を用いて境界端末の絶対位置を求める場合における境界端末の位置の誤差を補正する方法について説明する。
【0040】
ここでは、図6において以下のルーティングが行われているものとして、グループT1の境界端末T1−003とグループT2の境界端末T2−001との絶対位置を補正する方法について説明する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0041】
端末T1−003は、絶対位置計算装置7がグループT1内の基準端末を用いて自身の絶対位置を計算し、位置決定装置9で決定する。また、同時に自身の絶対位置を用いて、電波強度観測装置8が隣接グループの境界端末T2−001までの距離と方向を観測し、その結果から、絶対位置計算装置7がT2−002の絶対位置(相対絶対位置)を計算する。この絶対位置(相対絶対位置)は、グループ内で相対的な位置情報を用いて計算したことによる誤差を含むため、グループT2内の基準端末に基づいて計算した絶対位置である端末T2−002とはズレがある。このため、端末T1−003が絶対位置(相対絶対位置)を計算した端末をここでは端末T2−002’とする。
【0042】
端末T2−001は、絶対位置計算装置7がグループT2内の基準端末を用いて自身の絶対位置を計算し、位置決定装置9で決定する。また同時に、自身の絶対位置を用いて、隣接グループの境界端末T1−003までの距離と方向の観測し、その結果から、絶対位置計算装置7が端末T1−003の絶対位置(相対絶対位置)を計算する。この絶対位置(相対絶対位置)は上記と同様にグループ内で相対的な位置情報を用いて計算したことによる誤差を含むため、グループT1内の基準端末に基づいて計算した絶対位置である端末T1−003とはズレがある。このため、端末T2−001が絶対位置(相対絶対位置)を計算した端末をここでは端末T1−003’とする。
【0043】
隣接端末である端末T1−003と端末T2−001とは、相互にHelloメッセージを送信している。そして、このHelloメッセージ送信の段階で、それぞれが計算した相手の絶対位置情報(相対絶対位置情報)を通知する。ここで、例えばグループT1では、T1−003が計算した自身の絶対位置と、隣接グループのT2−001が計算した端末T1−003’の絶対位置(相対絶対位置)と、では誤算によるズレが生じている。同様にグループT2では、T2−001が計算した自身の絶対位置と、隣接グループのT1−003が計算した端末T2−001’の絶対位置(相対絶対位置)と、では誤算によるズレが生じている。
【0044】
この誤差を修正するために例えば端末T1−003では、絶対位置比較装置10が、端末T1−003と端末T1−003’との絶対位置を比較して、その中間点を補正位置C1と定義する。同様にT2−001でも絶対位置比較装置10が、端末T2−001と端末T2−001’との絶対位置を比較して、その中間点を補正位置C2と定義する。そして、端末T1−003と端末T2−001とは相互にHelloメッセージで補正位置を通知し、補正位置C1、C2間を結ぶラインを補正ラインLと定義する。この情報は境界端末T1−003とT2−001とが共有する。補正ラインLはグループT1とグループT2とにおいて、それぞれの基準端末を用いて計算した結果であるため、複数の情報を考慮して決定した補正位置C1、C2は、誤差が排除された信頼性が高い値である。このようにして、境界端末の位置の誤差を補正して、信頼性の高い境界端末の絶対位置を求めることができる。
【0045】
次に、再ルーティングについて説明する。図7は、実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。ここではグループT1に属する端末T1−001からグループT2に属する端末T2−005に対して以下のルートでアドホックネットワークが構築されていた時に、隣接グループの境界端末T2−001が境界端末T1−003の電波伝搬範囲A1から移動したために、マルチホップ通信が構成できなくなった場合を例に説明する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0046】
この時、端末T1−003は、T2−001への再ルーティングを試みるが、T1−003の電波伝搬範囲A1内に通信をホップする端末が存在しないため、再ルートが確立できない。このため、グループT1内の端末T1−005(トポロジィ制御端末)を、T1−003の補正位置C1から補正ラインLに沿って、端末T1−003の補正電波伝搬範囲(補正位置C1の電波伝搬範囲)内に移動させることにより、新たに以下のルートを確立する。
(ルート002):T1−001,T1−002,T1−003,T1−005,T2−001,T2−002,T2−005
【0047】
以下では、再ルーティングを実現するために、トポロジィを変更して移動する端末としてT1−005を選択する手続き、および端末T1−005に対する移動位置を指定する方法を説明する。なお、前提として、予めグループT1において1つのリーダ端末T1−001が定義されており、この存在をグループT1内の全ての端末が既知であるとする。
【0048】
図8は、リーダ端末T1−001が有するグループ内端末状況管理テーブル21の構成を示す図である。これらの情報はグループT1内の端末がルートを確立するタイミングでリーダ端末T1−001に通知され、ルートを開放するタイミングで削除される。通知される情報は、ルート毎に定義されるルート識別子、確保した通信帯域、その通信の優先度であり、それぞれグループ内端末状況管理テーブル21のルート識別子45、通信帯域(b/s)46、優先度47に格納される。
【0049】
リーダ端末T1−001は、これらの情報の通知を受けた時、および開放要求を受けた時に、グループ内端末状況管理テーブル21の無線端末41に登録された端末のうち、該当する端末のテーブルを更新する。また、位置43は、各端末が図4を用いて説明した手順により絶対位置を計算した段階で、リーダ端末T1−001に通知した時に格納される。これによりリーダ端末T1−001は、常にグループT1内のルーティング状況として、通信状況、位置情報を集中管理することができる。
【0050】
図9は、再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。ここでは図7に示した状態における再ルーティングの動作を説明する。はじめに以下のルーティングによりアドホック通信が行われている時に、グループ間の端末T1−003と端末T2−001との間で切断が発生する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0051】
端末T1−003は切断を検出すると(ステップS101)、グループ間ルーティング制御装置2bが再ルーティングを目的に、端末検索メッセージm001を端末T2−001に向けて送信する(ステップS102)。ここで、一定時間、応答する端末が存在しない場合、グループ間ルーティング制御装置2bが引き続き定期的に端末検索メッセージm001を一定周期で再送すると同時に、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置要求メッセージm002をリーダ端末T1−001に送信する(ステップS103)。
【0052】
ここで端末T1−003は、隣接端末T2−001方向の電波伝搬範囲内の、補正ラインL上の位置をトポロジィ制御位置として計算する。再配置要求メッセージm002には、確立する再ルートにおいて使用する帯域、優先度、およびトポロジィ制御位置が付加される。トポロジィ制御位置は、再ルート設定においてトポロジィ制御端末を移動させる位置であり、T1−003の補正電波伝搬範囲(補正位置C1の電波伝搬範囲)内の、T1−003の補正位置C1から補正ラインLに沿った位置である。
【0053】
再配置要求メッセージm002を受信したリーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置指示端末分析処理を実行する(ステップS104)。リーダ端末T1−001は、再配置要求メッセージm002で受信した、確立する再ルートにおいて使用する帯域、優先度と、図8に示すグループ内端末状況管理テーブルを比較し、以下の条件判断を行う。
【0054】
(条件1):許容通信帯域42−Σ通信帯域46≧帯域
且つ
(条件2):位置43がトポロジィ制御位置に最も近い
【0055】
さらに優先度を比較し、確立する再ルートよりも優先度が低い端末を検索する。ここでは端末T1−005を再配置端末(トポロジィ制御端末)に決定する。リーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが、トポロジィ制御端末に決定した端末T1−005に対して、端末T1−003から通知されたトポロジィ制御位置情報を付加して、再配置を指示する再配置指示メッセージm003を送信する(ステップS105)。
【0056】
再配置指示メッセージm003を受信した端末T1−005(トポロジィ制御端末)では、図10に示すように該再配置指示メッセージm003で指定されたトポロジィ制御位置に移動する(ステップS106)。トポロジィ制御位置に移動することにより、トポロジィ制御端末T1−005においては、端末T1−003が定周期に送信している端末検索メッセージm001が受信される。端末検索メッセージm001を受信したトポロジィ制御端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bが、該端末検索メッセージm001を端末T2−001に送信する(ステップS107)。
【0057】
トポロジィ制御端末T1−005の電波伝搬範囲内にある端末T2−001は、端末検索メッセージm001を受信する。端末検索メッセージm001を受信したT2−001は、グループ間ルーティング制御装置2bが端末検索メッセージm001に対する応答として端末検索応答メッセージm004を、トポロジィ制御端末T1−005に返送する(ステップS108)。端末検索応答メッセージm004を受信したトポロジィ制御端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bが該端末検索応答メッセージm004を、端末T1−003に返送する(ステップS109)。
【0058】
端末検索応答メッセージm004を受信した端末T1−003は、端末T2−001の間に新たなルートを確立する。以上の処理により、グループ間となる端末T1−003と端末T2−001との間に、新たにルートが確立され、最終的に以下のルート002が確立される。
(ルート002):T1−001,T1−002,T1−003,T1−005,T2−001,T2−002,T2−005
【0059】
上述したように、実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおいては、グループT1に属する端末T1−001からグループT2に属する端末T2−005に対してアドホックネットワークが構築されていた時に、隣接グループの境界端末T2−001が境界端末T1−003の電波伝搬範囲A1から移動したために、マルチホップ通信が構成できなくなった場合においても、トポロジィ制御端末T1−005を補正ラインL上のトポロジィ制御位置に移動させることにより、新たにルートが確立され、グループT1とグループT2との間の通信を確実に継続することができる。
【0060】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2にかかる端末Tn−00xの構成を示す図である。本実施の形態にかかる端末Tn−00xは、ルーティングテーブル1、ルーティング制御装置2、送受信装置3、無線通信アンテナ4、GPS測位装置5、GPSアンテナ6、絶対位置計算装置7、電波強度観測装置8、位置決定装置9、絶対位置比較装置10、帯域観測装置51、帯域制御テーブル52を備える。
【0061】
図12は、本実施の形態における再ルーティングについて説明するための図である。なお、実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムの構成は、実施の形態1の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。ここではグループT1に属する端末T1−001からグループT2に属する端末T2−005に対して以下のルートでアドホックネットワークが構築されていた時に、グループ間通信となるT1−003とT2−003の間の通信帯域が劣化した場合の再ルーティング動作を説明する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0062】
端末T1−003では帯域観測装置51が、常に送受信装置3の動作を監視しており、グループ間の帯域が一定以下に劣化したことを検出した場合には帯域制御テーブル52の情報に基づいて、端末T1−003と端末T2−003との間に、補正ラインL上に新たに端末T1−004,端末T2−005を配置することにより1ホップの距離を短縮させて帯域を大きくし、信頼性が高い帯域増加を実現する。
【0063】
図13は、帯域制御テーブル52の構成を示す図である。帯域制御テーブル52には、帯域劣化率(%)61と距離拡大率(倍)62の情報を保持しており、この情報は全ての端末が自身の電波伝搬特性から決定し、運用時に保持する情報である。この帯域制御テーブル62を持つ端末は、常に帯域観測装置62が、確保しているルートの帯域の監視を行っている。また、十分な性能で通信を行っている場合のスループットをThr1とし、性能が劣化した時のスループットをThr2とした場合の帯域劣化率61を以下のように定義する。
帯域劣化率(%)=(thr2/Thr1)×100
この帯域劣化率61に応じて、距離拡大率62を特定する。
【0064】
図14は、再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。ここでは図12に示した状態における再ルーティングの動作を説明する。はじめに以下のルーティングによりアドホック通信が行われている時に、グループ間の端末T1−003と端末T2−001との間で帯域劣化が発生する。
(ルート001):T1−001,T1−002,T1−003,T2−001,T2−002,T2−005
【0065】
境界端末T1−003では、帯域観測装置51が常に帯域劣化率を算出して帯域不足の検出処理を行っている(ステップS201)。境界端末T1−003は、帯域不足の検出処理において帯域不足を検出すると、この帯域劣化率(%)に対応する距離拡大率62を帯域制御テーブルにおいて検索する。
【0066】
そして、境界端末T1−003では、帯域が不足したルートの接続先である端末T2−001までの距離を端末T1−003の電波強度観測装置8が測位し、この値と距離拡大率62の値とから、例えば以下の計算式により端末T1−003と端末T2−001の間に新たに配置する端末数を決定する。
再配置端末数=(端末T1−003と端末T2−001との距離÷距離拡大率62)÷(端末T1−003と端末T2−001との距離)
【0067】
つぎに、境界端末T1−003は、グループ間ルーティング制御装置2bが、帯域が不足している接続先である端末T2−001にルート再設定通知メッセージm101を送信し、再ルーティングの開始を通知する(ステップS202)。同時に端末T1−003は、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置要求メッセージm002をリーダ端末1−001に送信する(ステップS203)。この時、送信する情報は、実施の形態1の場合に対して、帯域不足検出処理において計算した新たに配置する端末数(再配置端末数)を加えたものである。すなわち、再配置要求メッセージm002には、確立する再ルートにおいて使用する帯域、優先度、トポロジィ制御位置、および再配置端末数が付加される。
【0068】
再配置要求メッセージm002を受信したリーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置指示端末分析処理を実行する(ステップS204)。この再配置指示端末分析処理においては、実施の形態1の再配置指示端末分析処理(ステップS104)と同様の分析を行う。ただし、実施の形態2では、再配置端末数にて指示された数を抽出し、これを用いて複数のトポロジィ制御端末の選択および各トポロジィ制御端末のトポロジィ制御位置を決定する点が異なる。ここではトポロジィ制御端末として、端末T1−004と端末T1−005とが選択されたものとする。
【0069】
リーダ端末T1−001は、グループ内ルーティング制御装置2aが、トポロジィ制御端末T1−004とトポロジィ制御端末T1−005とに対して、それぞれに対するトポロジィ制御位置情報を付加して、再配置を指示する再配置指示メッセージm003を送信する(ステップS205)。再配置指示メッセージm003を受信したトポロジィ制御端末T1−004とトポロジィ制御端末T1−005では、図15に示すように該再配置指示メッセージm003で指定されたそれぞれのトポロジィ制御位置に移動する(ステップS206)。ここでは、端末T1−003の補正位置C1と端末T2−001の補正位置C2間の補正ラインLに沿った位置に等間隔に配置する。
【0070】
リーダ端末T1−001はさらに、グループ内ルーティング制御装置2aが再配置応答メッセージm102を端末T1−003に送信し、再配置が完了したことを通知する(ステップS207)。再配置応答メッセージm102を受信した端末T1−003は、グループ間ルーティング制御装置2bがグループ間ルーティング制御装置2bルート再配置端末検索メッセージm103をトポロジィ制御端末である端末T1−004に送信する(ステップS208)。ルート再配置端末検索メッセージm103を受信した端末T1−004は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索メッセージm103をトポロジィ制御端末である端末T1−005に送信する(ステップS209)。ルート再配置端末検索メッセージm103を受信した端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索メッセージm103を端末T2−001に送信する(ステップS210)。これにより、端末T1−003,端末T1−004,端末T1−005,端末T2−001を指定した再ルーティングを行う。
【0071】
トポロジィ制御端末T1−005の電波伝搬範囲内にある端末T2−001は、ルート再配置端末検索メッセージm103を受信する。ルート再配置端末検索メッセージm103を受信した端末T2−001は、ルート確立の応答としてルート再配置端末検索応答メッセージm104をトポロジィ制御端末である端末T1−005に返送する(ステップS211)。ルート再配置端末検索応答メッセージm104を受信した端末T1−005は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索応答メッセージm104をトポロジィ制御端末である端末T1−004に返送する(ステップS212)。ルート再配置端末検索応答メッセージm104を受信した端末T1−004は、グループ間ルーティング制御装置2bがルート再配置端末検索応答メッセージm104を端末T1−003に返送する(ステップS213)。
【0072】
ルート再配置端末検索応答メッセージm104を受信した端末T1−003は、端末T2−001の間に新たなルートを確立する。以上の処理により、グループ間となる端末T1−003と端末T2−001との間に、新たにホップ距離を短縮することによる帯域の拡大を図ったルートを確立し、最終的に以下のルート003が確立される。
(ルート002):T1−001,T1−002,T1−003,T1−004,T1−005,T2−001,T2−002,T2−005
【0073】
上述したように、実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおいては、グループ間の帯域が一定以下に劣化した場合においても、端末T1−003と端末T2−003との間の補正ラインL上に新たに端末T1−004,端末T2−005を配置することによりホップ間の距離を短縮させて、信頼性が高い帯域増加を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかるアドホックネットワークシステムは、災害被災地など広域なフィールドにおいて、各メンバが無線端末を保持し、それぞれが役割を持つ複数の行動グループに分かれて活動する場合に、無線端末の移動、および地形や倒壊物による電波伝搬の遮断により発生する行動グループ間通信の断絶に対して、特定の位置に無線端末を計画的に配置して新たなルートを計画的に再設定する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおいてグループT1およびグループT2を構成する端末の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおいてグループT1およびグループT2を構成するリーダ端末の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムの端末における絶対位置測位方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける絶対位置測位で利用する基準端末通知メッセージフォーマットを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける隣接端末間の誤差修正について説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【図8】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおけるリーダ端末が有するグループ内端末状況管理テーブルの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。
【図10】本発明の実施の形態1にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【図11】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおいてグループT1およびグループT2を構成する端末の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける帯域制御テーブルの構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングの処理を説明するためのシーケンス図である。
【図15】本発明の実施の形態2にかかるアドホックネットワークシステムにおける再ルーティングについて説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ルーティングテーブル
1a グループ内ルーティングテーブル
1b グループ間ルーティングテーブル
2 ルーティング制御装置
2a グループ内ルーティング制御装置
2b グループ間ルーティング制御装置
3 送受信装置
4 無線通信アンテナ
5 測位装置
6 アンテナ
7 絶対位置計算装置
8 電波強度観測装置
9 位置決定装置
10 絶対位置比較装置
21 グループ内端末状況管理テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各グループが少なくとも1台のリーダ無線端末を含む複数のメンバ無線端末により構成され、前記グループ間で通信を行うアドホックネットワークシステムであって、
前記メンバ無線端末は、
グループ内およびグループ間で他のメンバ無線端末と情報の送受信を行う送受信手段と、
GPSと交信を行って自装置の絶対位置を測位するGPS測位手段と、
電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接するメンバ無線端末とのホップ間の距離およびホップ間の角度を計算する電波強度観測手段と、
前期GPS測位装置により自身の絶対位置を測位した自グループ内の基準無線端末の前記絶対位置と、自装置と前記基準無線端末間におけるホップ間の距離およびホップ間の角度に基づいて自装置の絶対位置を計算する絶対位置計算手段と、
自装置がグループ間無線通信の対象である隣接グループのメンバ無線端末と通信を行う境界無線端である場合に、前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置に基づいて前記隣接グループの境界無線端末の相対位置を計算する相対位置計算手段と、
前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置と前記隣接グループの境界無線端末が計算した自装置の相対位置とを比較し、前記自装置の絶対位置の計算誤差を補正した補正位置を計算する絶対位置比較手段と、
自グループ内および前記隣接グループ間のルーティングを管理し、自装置が前記境界無線端末であって前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を検出した場合に前記リーダ無線端末に対して自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置を要求するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、自装置の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信するルーティング制御手段と、
を備え、
前記リーダ無線端末は、
前記送受信手段と、
前記GPS測位手段と、
前記電波強度観測手段と、
前期絶対位置計算手段と、
前期相対位置計算手段と、
前記絶対位置比較手段と、
前期ルーティング制御手段と、
前記自グループの境界無線端末より自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置の要求を受信した場合に、前記メンバ無線端末のいずれかを前記自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を前記自グループの境界無線端末に送信する再配置指示手段と、
を備え、
前記メンバ無線端末のいずれかを再配置した新たな通信ルートを確立してグループ間で通信を行うこと、
を特徴とするアドホックネットワークシステム。
【請求項2】
前記メンバ無線端末は、
自装置が境界無線端である場合に、前記隣接グループの境界無線端末との通信帯域を観測し、前記通信帯域が一定以下に劣化したことを検出する帯域観測手段と、
自装置が境界無線端である場合の、前記帯域の劣化に関する情報と、自装置と前記隣接グループの境界無線端末との距離に関する情報と、の対応情報を記憶する帯域制御テーブル記憶手段と、
をさらに備え、
前記ルーティング制御手段は、前記帯域観測手段において前記通信帯域が一定以下に劣化したことを検出した場合に、前記リーダ無線端末に対して自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置を要求するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、前記対応情報を用いて自装置と前記隣接グループの境界無線端末間の1ホップの距離を短縮して帯域を増加させるように、自装置の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信し、
前記リーダ無線端末の再配置指示手段は、
前記自グループの境界無線端末より自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置の要求を受信した場合に、前記対応情報を用いて自装置と前記隣接グループの境界無線端末間の1ホップの距離を短縮して帯域を増加させるように、前記メンバ無線端末のいずれかを前記自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を前記自グループの境界無線端末に送信すること、
を特徴とする請求項1に記載のアドホックネットワークシステム。
【請求項1】
各グループが少なくとも1台のリーダ無線端末を含む複数のメンバ無線端末により構成され、前記グループ間で通信を行うアドホックネットワークシステムであって、
前記メンバ無線端末は、
グループ内およびグループ間で他のメンバ無線端末と情報の送受信を行う送受信手段と、
GPSと交信を行って自装置の絶対位置を測位するGPS測位手段と、
電波強度を観測し、観測結果に基づいて隣接するメンバ無線端末とのホップ間の距離およびホップ間の角度を計算する電波強度観測手段と、
前期GPS測位装置により自身の絶対位置を測位した自グループ内の基準無線端末の前記絶対位置と、自装置と前記基準無線端末間におけるホップ間の距離およびホップ間の角度に基づいて自装置の絶対位置を計算する絶対位置計算手段と、
自装置がグループ間無線通信の対象である隣接グループのメンバ無線端末と通信を行う境界無線端である場合に、前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置に基づいて前記隣接グループの境界無線端末の相対位置を計算する相対位置計算手段と、
前記絶対位置計算手段で計算した自装置の絶対位置と前記隣接グループの境界無線端末が計算した自装置の相対位置とを比較し、前記自装置の絶対位置の計算誤差を補正した補正位置を計算する絶対位置比較手段と、
自グループ内および前記隣接グループ間のルーティングを管理し、自装置が前記境界無線端末であって前記隣接グループの境界無線端末との通信の切断を検出した場合に前記リーダ無線端末に対して自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置を要求するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、自装置の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信するルーティング制御手段と、
を備え、
前記リーダ無線端末は、
前記送受信手段と、
前記GPS測位手段と、
前記電波強度観測手段と、
前期絶対位置計算手段と、
前期相対位置計算手段と、
前記絶対位置比較手段と、
前期ルーティング制御手段と、
前記自グループの境界無線端末より自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置の要求を受信した場合に、前記メンバ無線端末のいずれかを前記自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を前記自グループの境界無線端末に送信する再配置指示手段と、
を備え、
前記メンバ無線端末のいずれかを再配置した新たな通信ルートを確立してグループ間で通信を行うこと、
を特徴とするアドホックネットワークシステム。
【請求項2】
前記メンバ無線端末は、
自装置が境界無線端である場合に、前記隣接グループの境界無線端末との通信帯域を観測し、前記通信帯域が一定以下に劣化したことを検出する帯域観測手段と、
自装置が境界無線端である場合の、前記帯域の劣化に関する情報と、自装置と前記隣接グループの境界無線端末との距離に関する情報と、の対応情報を記憶する帯域制御テーブル記憶手段と、
をさらに備え、
前記ルーティング制御手段は、前記帯域観測手段において前記通信帯域が一定以下に劣化したことを検出した場合に、前記リーダ無線端末に対して自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置を要求するとともに前記リーダ無線端末の指示に基づいて前記メンバ無線端末のいずれかに対して、前記対応情報を用いて自装置と前記隣接グループの境界無線端末間の1ホップの距離を短縮して帯域を増加させるように、自装置の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を送信し、
前記リーダ無線端末の再配置指示手段は、
前記自グループの境界無線端末より自グループ内の前記メンバ無線端末の再配置の要求を受信した場合に、前記対応情報を用いて自装置と前記隣接グループの境界無線端末間の1ホップの距離を短縮して帯域を増加させるように、前記メンバ無線端末のいずれかを前記自グループの境界無線端末の前記補正位置と前記隣接グループの境界無線端末の前記補正位置とを結ぶ直線上の再配置位置に移動させる指示情報を前記自グループの境界無線端末に送信すること、
を特徴とする請求項1に記載のアドホックネットワークシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−159113(P2009−159113A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333013(P2007−333013)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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