説明

アドレナリン調節異常症を治療する徐放性の製剤および方法

α−アドレナリン受容体アゴニスト、医薬的に許容される親水性マトリックスおよび放出抑制剤のアルキル硫酸金属塩を含む組成物、ならびに上記組成物を投与することによってアドレナリン調節異常症を治療する方法を開示する。諸実施形態において、上記組成物は、上記アゴニストを徐々に放出し、α−アドレナリン受容体アゴニストの定常状態の血漿中濃度を有する被験者に、約12時間毎に一回だけ上記組成物を投与した後、上記アゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比は約1.9に過ぎない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月8日付け出願の米国仮特許願第60/942,934号の利益を主張し、その全内容はここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする。
【0002】
アドレナリン調節異常症を治療し予防する組成物および方法を開示する。
【背景技術】
【0003】
アドレナリン調節異常症(高アドレナリン症または低アドレナリン症)は、ホルモンのアドレナリンおよび/または神経伝達物質のノルアドレナリンによる異常な神経活性化と異常な分泌に関連している。アドレナリン調節異常症は、ベースラインレベルの刺激でおよび外部ストレスに応答して起こることがある。過剰アドレナリンの刺激によって、高血圧、多動性、身体攻撃性、運動性チックおよび不眠症などの症状が起こる。
【0004】
薬物で有効に治療するには、薬物の血清中濃度を制御する必要がある。製剤の技術分野では徐放性の親水性マトリックスが既知である。例えば、このような親水性マトリックスの一つとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)がある。HPMCマトリックスは、電解質を含有する低イオン強度の周囲媒体中では、一般に水和して、完全なゲル層を生成する。この完全なゲル層によって、組み込まれた薬物が、ゲル層を通過して移行することによってマトリックスから放出されることは予想できる。しかし、イオン強度が中程度の場合は、同じマトリックスは、迅速に形が崩れて崩壊することがある。したがって、周囲媒体中に存在する電解質が、薬物の、HPMCマトリックスからの放出状態を変えることがある。マトリックスの環境の差から起こる薬物の放出状態の変化は、薬物による治療の有効性を阻害することがある。
【0005】
薬物自体が、親水性マトリックスの水和速度およびゲル化速度に影響することもある(Mitchell,et al.,Int.J.Pharm.(1993)100:165−173)。したがって、薬物を親水性マトリックスに混合すると、溶解状態が予想できなくなることがあり、その結果、その製剤の治療効率を予想できなくなることがある。
【0006】
薬物の、固体の経口延長放出性(oral solid extended release)製剤からの放出とこれに続く胃腸管から血液流への吸収は、米国薬局方24,p10に定義されているように、溶解速度依存性であり、特に薬物が少し水溶性、僅かに水溶性、非常に僅かに水溶性、実質的に水に不溶性または水に不溶性の場合、遅くかつ不規則である。
【0007】
添加物を親水性マトリックスに添加して、均質混合された薬物のゲル化速度および/または放出速度を変化させることができる。しかし、特定の薬物と、マトリックスおよび添加物との相互作用の性質は一般に、予想できるわけではない。これは、少ない投与量で投与される薬物または限定された溶解度の薬物にとって特に問題である。複雑なマトリックス/添加物の系を利用する場合は、薬物の放出速度と薬物の血清中濃度もしくは血中濃度との相関関係を立証することは困難である。
【0008】
αアドレナリン受容体アゴニストの従来の経口投与には欠点がある。この従来の経口投与製剤の放出方式は、一般に、迅速なボーラス放出とこれに続く迅速かつ完全な吸収が行なわれる方式である。例えば、クロニジンの従来の経口投与製剤には、所定の投与を行ってから約1時間後に起こる鎮静作用を含む副作用があり、そのとき患者は一時的に鎮静されるかまたは眠り込む。クロニジンは迅速に吸収されるので、クロニジンのこの製剤の半減期は、約4時間から6時間までという生物学的半減期とほぼ同じである。したがって、クロニジンの従来の製剤は、治療作用がすぐに消失し、およびリバウンドの過覚醒を伴う可能性がある。これは、深夜に起こって不眠症や悪夢を起こすことがある。このような副作用によって、経口投与されるクロニジンの実用性が制限されている。クロニジンは、高血圧の治療に有用であるにもかかわらず、この薬物の薬物動態学的側面によって要求される投与方式では、定常状態でさえ、血漿中濃度が非常に大きく変動した(Fujimura A.,et al.,J,Clin.Pharmacol.1994;34:260−265)。クロニジンを経口投与している間に観察される多くの有害事象(AE)は、その高いピーク血漿中濃度に関連していることが分かっている(Lowenthal DT.,J.Cardiovasc Pharcol.,1980;2(Suppl.):S29−S37)。
【0009】
薬物動態学的状態と血漿中レベルとAEの間の関係から、頻繁に投与することが必要になるので、鎮静の「ピーク」AEとリバウンド高血圧のトラフ(trough)AEを特徴とするローラーコースター作用を起こす。この「ローラーコースター」の問題を処理する試みで、クロニジンの7日間貼付製剤(商標名Catapres−TTSで市販されている)が開発された。クロニジンの経皮投与が高血圧を抑制するのに安全かつ有効であることは、初期の研究で判明していた(Weber,MA,et al.,Arch.Intern.Med.,1984;144(6):1211−1213)。さらに、これらの研究は、貼付製剤は、AE状態が経口クロニジンより軽く、鎮静作用が少なくかつリバウンドの高血圧がないことを示唆した。しかし、貼付剤には、厳しい制限があった。第一に、紅斑,掻痒症などの限局性皮膚反応および限局性小胞形成が、50%以上の患者に見られた。FDAが調査した、経皮クロニジンへの暴露に関する大規模なデーターベースでは、これらの皮膚反応のために、19%の患者の治療が中止されていた。さらに、その薬物のラベルは、経皮クロニジンに対してアレルギー反応を起こす患者は、経口クロニジンに切り換えても、全身性発疹、ジンマシンまたは血管性水腫を含むアレルギー反応を起こすこともあると警告している。貼付法の悩みの種になっている別の問題は、接着性が劣るため接着剤の上塗り層を使う必要があることである。
【0010】
ある範囲の異なる放出方式を有するマイクロカプセルが入っているカプセル剤が、クロニジンの徐放性製剤として使用されている(Mancia,G.et al.,J.Cardiovasc.Pharmacol.,1981;3:1193−1201;Fyhrquist,F.,Intl.J Clin.Pharmacol.,Therapy and Toxicol.,1983;21:12:634−636)。この製剤は、Catapresan−Perlongetとして既知でありヨーロッパで入手できる。一般に、この徐放性製剤は、異なる膜でコートされた薬剤の核を含有する。一つの核が薬物を迅速に放出し、その他の核は、3または6時間かけてよりゆっくり放出する(Mancia)。
【0011】
上記理由のため、起こる可能性がある「ピークとトラフ」の副作用(ピークの血清中レベルにおける有効性とトラフのレベルにおける症状のリバウンドした病勢悪化)を避けるために、活性物質の血清中濃度レベルを長期間にわたって延長することによって安定した治療投与を実施できる低投与量医薬製剤などの医薬製剤が必要である。
【発明の概要】
【0012】
(a)経口製剤の0.001重量%と0.5重量%の間の量のα−アドレナリン受容体アゴニスト、ならびに(b)(i)経口製剤の20重量%と80重量%の間の量の少なくとも一種のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル、(ii)経口製剤の20重量%と80重量%の間の量のデンプン、ラクトースもしくはデキストロースのうちの少なくとも一種および(iii)アルキル硫酸金属塩を含む医薬的に許容される親水性マトリックスを含む経口製剤であって、α−アドレナリン受容体アゴニストの定常状態の血漿中濃度を有する被験者に、約12時間ごとに一回だけ投与した後、そのアゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.9に過ぎない経口製剤について、ここで説明する。
【0013】
別の実施形態で、治療を要する被験者のアドレナリン調節異常症の治療方法を開示する。本方法は、被験者に、本明細書に記載の経口製剤を約12時間毎に一回だけ経口投与し約1.9に過ぎない血漿のピーク対トラフ比を提供して、アドレナリン調節異常症を治療することを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aおよび1Bは、Clonicel−Fasted(治療A)、Clonicel−Fed(治療B)およびCatapres−Fasted(治療C)を投与した後のクロニジンの平均濃度−時間のグラフである。
【図2】即時放出組成物と比較して本明細書に記載された例示的な延長放出性組成物の実施形態の曲線(AUC)の血漿中レベルの下の予想面積を示すグラフである。
【図3】治療グループによる、23日目と25日目のクロニジンの平均濃度−時間のグラフである。3治療グループの平均濃度は、約400pg/mLから1800pg/mLまでの範囲であった。血漿中濃度は、投与量の増大に比例して増大し、投与期間を通じてかなり安定し23日目と25日目の間では非常に類似していた。
【図4】定常状態の23日目、25日目および26日目のクロニジンの定常状態のトラフの平均(±SD)濃度を示す。投与量と導出PKパラメータの関係を、25日目のCmax、Cmin、AUCτおよびCL/Fの価を投与量の関数としてプロットすることによって調べた。この図が示すように、3暴露パラメータは投与量に比例して増大するようであり、そしてCL/Fは投与範囲にわたって僅かに低下した。
【図5】収縮期血圧に対する効果とクロニジンCmaxの間のS字型結腸Emaxの関係を示す。
【図6】図6A、6Bおよび6Cは、平均昼間SBP(収縮期血圧)、平均昼間DBP(拡張期血圧)およびこれら血圧のベースラインから26日目までの変化を示す。
【図7】図7Aおよび7Bは、ベースラインおよび26日目〜28日目の平均昼間収縮期血圧および平均昼間拡張期血圧の観察記録を示す。このデータから明らかなように、SBPとDBP両方の昼間値は、試験投与を突然中止しても、オーバーシュート無しで、投与後48時間にわたってベースラインのレベルに徐々に戻った。
【図8】図8A、8Bおよび8Cは、ベースラインと26日目における治療による平均SBPのグラフを示す。
【図9】図9A、9Bおよび9Cは、ベースラインと26日目における治療による平均DBPのグラフを示す。
【図10】図10A、10Bおよび10Cは、ベースラインと26日目における治療による平均心拍数のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施の形態として、一経口製剤を提供する。その製剤は、経口製剤の0.001重量%と0.5重量%の間の量のα−アドレナリン受容体アゴニスト、経口製剤の20重量%と80重量%の間の量の少なくとも一種のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルの混合物を含む医学的に許容される親水性マトリックス、経口製剤の80重量%と20重量%の間の量のデンプン、ラクトースもしくはデキストロースのうちの少なくとも一種、放出抑制剤のアルキル硫酸金属塩および任意にステアリン酸金属塩および/またはコロイダルシリカを含む。
【0016】
別の実施形態で、一経口製剤を開示する。その経口製剤は、(a)経口製剤の0.001重量%と0.5重量%の間の量のα−アドレナリン受容体アゴニスト、ならびに(b)(i)経口製剤の20重量%と80重量%の間の量の少なくとも一種のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル、(ii)経口製剤の20重量%と80重量%の間の量のデンプン、ラクトースもしくはデキストロースのうちの少なくとも一種および(iii)アルキル硫酸金属塩を含む医薬的に許容される親水性マトリックスを含む経口製剤であって、α−アドレナリン受容体アゴニストの定常状態の血漿中濃度を有するである患者に、約12時間毎に一回だけ投与した後、そのアゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.9に過ぎない経口製剤である。
【0017】
別の実施形態で、(a)上記経口製剤の0.001重量%と0.5重量%の間の量のα−アドレナリン受容体アゴニスト、ならびに(b)(i)上記経口製剤の20重量%と80重量%の間の量の少なくとも一種のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル、(ii)上記経口製剤の20重量%と80重量%の間の量のデンプン、ラクトースもしくはデキストロースのうちの少なくとも一種および(iii)アルキル硫酸金属塩を含む医薬的に許容される親水性マトリックスを含有する経口製剤であって、被験者に製剤を最初に投与した後、アゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比が製剤のその後の投与に対して約1.9であり、その後続く投与が約12時間毎に一回だけである経口製剤を開示する。
【0018】
さらに別の実施形態で、治療を要する被験者のアドレナリン調節異常症の症状を治療および/または軽減する固体の経口製剤を開示する。この固体の経口製剤は、a)α−アドレナリン受容体アゴニスト、b)上記α−アドレナリン受容体アゴニストの放出速度を提供する医薬的に許容される親水性マトリックス、およびc)上記親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの放出速度を低下させる量の放出抑制剤を含む。
【0019】
別の実施形態で、治療を要する被験者のアドレナリン調節異常症の症状を治療する方法を開示する。本方法は、放出抑制剤を含む医薬的に許容される親水性マトリックス中に混合されたα−アドレナリン受容体アゴニストの有効量を含む製剤を被験者に経口投与し、製剤からのα−アドレナリン受容体アゴニストの延長放出速度を提供するステップを含み、放出抑制剤を混合された医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの延長放出速度が、放出抑制剤を混合されていない医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの放出速度より小さい方法である。この実施形態では、本方法はさらに、(i)医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの血漿中濃度レベル、および(ii))医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストのピークの血漿中濃度レベルを提供するステップを含み、放出抑制剤を混合された医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの血漿中濃度レベルが、放出抑制剤を混合されていない医薬的に許容される親水性マトリックスとα−アドレナリン受容体アゴニストより、α−アドレナリン受容体アゴニストの血漿中濃度レベルを延長しかつα−アドレナリン受容体アゴニストのピークの血漿中濃度レベルを低下させる。この実施形態では、α−アドレナリン受容体アゴニストの、医薬的に許容される親水性マトリックスからの延長放出速度は、ゼロ次〜一次である。
【0020】
別の実施形態では、治療を要する被験者のアドレナリン調節異常症の治療法を提供する。本発明の製剤を使用することによって、カテコールアミン類の全身制御によるアドレナリン調節異常症から発症する症状の、改良された治療法を提供できる。本方法は、放出抑制剤を含む医薬的に許容される親水性マトリックス中に混合された有効量のα−アドレナリン受容体アゴニストを含む製剤を、被験者に経口投与するステップを含む。この方法はα−アドレナリン受容体アゴニストの延長放出速度を提供する。放出抑制剤を混合された医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの延長放出速度は、放出抑制剤を混合されていない医薬的に許容される親水性マトリックスからのα−アドレナリン受容体アゴニストの放出速度より低い。
【0021】
さらに別の実施形態で、本明細書に記載の経口製剤を、被験者に約12時間毎に一回だけ投与するステップを含み、その被験者はα−アドレナリン受容体アゴニストの定常状態の血漿中濃度を有し、そして投与後、上記アゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.9であり、アドレナリン調節異常症が治療される、治療を要する被験者のアドレナリン調節異常症の治療方法を開示する。
【0022】
上記α−アドレナリン受容体アゴニストは、細胞のα−アドレナリン受容体に結合して細胞内に中枢αアドレナリン刺激を起こすどのような化合物または組成物でもよい。α−アドレナリン受容体アゴニストの例としては、エピネフリン、ノルアドレナリン、イソプレナリン、クロニジン、グアンファシン、ロフェキシジン、キシラジン、またはそれらの塩類がある。好ましい実施形態では、上記アゴニストはクロニジンまたはその医薬的に許容される塩である。上記アゴニストとしては、塩酸クロニジンが最も好ましい。上記アゴニストは、純化合物としてまたは医薬的に活性な塩、異性体、ラセミ混合物の形態で、または生理学的条件下で、アドレナリン調節異常症の治療に効果のある治療を行う他の化学的形態もしくは組合せで供給されている。
【0023】
用語「クロニジン」は、本明細書で使用する場合、9個の炭素原子および2個のリングを有するイミダゾリン誘導体を意味する。用語「クロニジン」は、一般に、一種以上の2,6−ジクロロ−N−2−イミダゾリジニリデンベンゼンアミン、またはこれに構造または機能が類似の米国特許第3,454,701号に記載のベンゼンアミン類を表す。なお、米国特許第3,454,701号のこのような構造または機能が類似しているベンゼンアミン類の開示事項は、参照により本明細書に組み込まれる。用語ロフェキシジンは、本明細書で使用する場合、2−[1−(2,6−ジクロロフェノキシ)エチル]−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールまたは構造と機能が類似しているイミダゾール類を意味する。用語キシラジンは、本明細書で使用する場合、2−(2,6−ジメチルフェニルアミノ)−5,6−ジヒドロ−4H−チアジンまたは構造と機能が類似しているチアジン類を意味する。本発明の好ましい実施形態では、用語「クロニジン」は、2,6−ジクロロ−N−2−イミダゾリジニリデンベンゼンアミンおよびその各種互変異性体またはロートマー(rotomer)を表す。好ましい実施形態では、クロマジンは下記構造式
【化1】

で表される。
【0024】
一経口製剤当たりに含まれるα−アドレナリン受容体アゴニストの量は、広範囲に変えることができる。例えば、α−アドレナリン受容体アゴニストのクロニジンの治療のために有効な投与量の範囲は、先に列挙した臨床障害の大部分の症状に対して、一製剤当たり約0.025mgから約0.40mgまでの範囲である。一製剤当たり約0.025mg−から約0.40mgまでの治療のために有効な投与範囲は、一般に、アドレナリン調節異常症の大部分の症状を抑制する。
【0025】
アドレナリン調節異常症は、一般に、異常な神経の活性化またはアドレナリンおよび/またはノルアドレナリンの異常な分泌から起こる心臓血管、鎮痛薬、神経学的/精神医学的または胃腸/腎臓起源の症状を意味する。例えば、心臓血管の症状としては、高血圧、心房細動、うっ血性心不全および起立性低血圧症に現れる症状がある。鎮痛薬の症状としては、術中および術後の痛み、処置困難な癌の痛み、頭痛、分娩陣痛、および反射性交感神経性ジストロフィに現れる症状がある。神経学的/精神医学的症状としては、アカシジア、末梢神経障害、神経障害性口顔疼痛、糖尿病性胃不全麻痺、本態性振戦、硬膜後(postepidural)悪寒戦慄、麻酔後悪寒戦慄、レストレスレッグ症候群、緊張亢進状態、運動亢進障害、トウーレット症候群、薬物離脱、急性神経性食欲不振症、注意欠陥/多動障害(ADHD)、行為障害、双極性障害、攻撃性、睡眠発作、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害、社交恐怖症および統合失調症に現れる症状がある。胃腸/腎臓の症状としては、潰瘍性大腸炎と直腸炎、嘔吐およびシクロスポリン誘発腎毒に現れる症状がある。内分泌/ホルモン症状としては、甲状腺機能亢進症、小児の発育不全、多汗症、閉経後潮紅および顔面潮紅に現れる症状がある。
【0026】
注意欠陥多動障害およびADHDは、その障害に付随するいずれの病因学的または病理学的症状も意味する。このような症状と病因としては、注意障害、多動および衝動性がある。一般に、被検者は、少なくとも二つの環境で起こる有意な障害を示しおよび/または一貫して、長期間にわたりこのような特徴的挙動を示す。これらの用語には、注意欠陥障害(ADD)も含まれている。
【0027】
高血圧は、一般に、慢性的に上昇する血圧に現れる病因学的または病理学的症状を意味する。このような症状としては、低レニンレベル、インスリン抵抗性、睡眠時無呼吸、過剰の血清中ナトリウムのレベル、肥満症、および遺伝特性(genetic disposition)がある。
【0028】
上記製剤中に存在するアゴニストの有効量は、製剤の約0.001重量%と0.5重量%の間の量である。この量は、好ましくは、約0.01重量%と約0.3重量%の間の量である。この量は、より好ましくは、約0.05重量%と0.2重量%の間の量である。
【0029】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル類の有効量は、製剤の約20重量%と80重量%の間の量である。この量は、好ましくは、約30重量%と約50重量%の間の量である。この量は、より好ましくは、約40重量%と60重量%の間の量である。この量は、最も好ましくは約20重量%と40重量%の間の量または60重量%と80重量%の間の量である。
【0030】
デンプン、ラクトースまたはデキストロースの有効量は、製剤の約20重量%と80重量%の間の量である。この量は、好ましくは、約50重量%と約70重量%の間の量である。この量は、より好ましくは、約40重量%と60重量%の間の量である。この量は、最も好ましくは、約20重量%と40重量%の間の量または60重量%と80重量%の間の量である。
【0031】
アルキル硫酸金属塩の有効量は、製剤の約1重量%と8重量%の間の量である。この量は、好ましくは、約1重量%と約7重量%の間の量である。この量は、より好ましくは、約2重量%と6重量%の間の量である。この量は、最も好ましくは、約2重量%である。アルキル硫酸金属類は当分野で既知であり、例えば、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス(laureth)硫酸マグネシウム、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウレス硫酸ナトリウム、ミレス(myreth)硫酸ナトリウムおよびパレス(pareth)硫酸ナトリウムがある。アルキル硫酸金属塩は、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)である。
【0032】
製剤の有用かつ好ましい価は、本明細書に記載の方法で使用される場合、有用かつ好ましい価でもある。
【0033】
上記ピーク対トラフ比は、投与期間内の最高血漿中濃度を最低血漿中濃度で割り算して得た価と定義する。上記投与期間とは、投与量を投与してから次の投与までの時間である。血漿を測定して上記の最高濃度と最低濃度を確実に測定できる時間を決定することは、熟練職員の権限の範囲内にある。
【0034】
血漿中濃度の変動を最小にすれば有利な結果が得られる。投与期間にわたって血漿中濃度を均等にし、その結果、時には長期間の治療の過程で血漿中濃度を均一にすると、α−アドレナリン調節異常症を治療または改善するのに必要な安定した血漿中レベルが得られる。有用なピーク対トラフ比は、約1.9に過ぎない値である。この比率は、好ましくは約1.6に過ぎない。また、約1.1および約1.6の間の比率が好ましい。この比率は、最も好ましくは、約1.3と1.6の間の価である。最も好ましい比率は約1.4である。この比率が低ければ低いほど、その変動が小さければ小さいほど付随する副作用が小さくなる。
【0035】
定常状態は、約5半減期後の血漿中濃度のレベルと定義する。したがって、定常状態には、活性物質が異なれば、異なる時間に到達する。クロニジンの半減期は約12−17時間である。したがって、クロニジンは、約4日目に定常状態に到達する。
【0036】
親水性マトリックスは、α−アドレナリン受容体アゴニストの制御された薬物動態学放出状態を提供する。親水性マトリックスはα−アドレナリン受容体アゴニストのゼロ次−一次の放出状態を提供する。親水性マトリックスに対して成分を組み合せて利用すると、その成分の比率は、α−アドレナリン受容体アゴニストのマトリックスからの放出状態に影響することがある。α−アドレナリン受容体アゴニスト(例えばクロニジン)の投与量が少ない場合、成分の比率は、予想できないかまたは決定できないことがある。α−アドレナリン受容体アゴニストに対して親水性ポリマーおよび/または放出抑制剤の量を調節することによって、α−アドレナリン受容体アゴニストの放出状態を調節するかまたは特に有利な治療上有効な状態により容易に調整することができる。薬物を長期間にわたって放出することによって、α−アドレナリン受容体アゴニストの24時間までの投与による治療上有効な状態は、過覚醒などの望ましくない副作用を減少させるかまたは排除する。より具体的に述べれば、本明細書に開示した製剤は、定常状態のクロニジンのようなα−アドレナリン受容体アゴニストの血漿中濃度の変動を最小限にする。
【0037】
本明細書に提供したデータは、本発明の製剤が、その日その日に予測可能な定常状態の血漿中濃度を提供することを示している。さらに、48時間へだてた二日に測定すると、上記濃度は患者毎に非常に類似していて、個々の薬剤単位間では終始変わらない性能を示す。血漿中濃度のピーク対トラフの変動が小さいと、従来技術の製剤に見られるピーク対トラフの大きい変動でもたらされるローラ−コースター効果無しで、治療上有効な量の活性薬剤を提供する。本発明の製剤は、クロニジンのパッチから達成される血中レベルを、経口徐放性錠剤で提供する。FDAは、クロニジンのパッチの由来のデータを再検討した結果、クロニジンのパッチに観察された定常状態の濃度のピーク対トラフ比は、平均して約1.33であったが、即時放出性クロニジン錠剤の対応する変動は平均して2.10であったという点に注目した。本出願の試験由来のデータは、クロニセル(Clonicel)の上記比率の平均は約1.4から約1.5までの価であることを示している。この比率は上記即時放出性錠剤より上記クロニジンパッチに非常に近い。
【0038】
用語「親水性マトリックス」は、親水性の一種以上の天然または合成の物質を意味するが、必ずしも水溶性ではない。親水性マトリックスの例としては、セルロースエーテル(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、単糖類もしくは二糖類(例えばデキストロースまたはラクトース)、デンプン、それらの誘導体などの水を吸収する親和性を有する一種以上のポリマーの一つまたは組合せがある。
【0039】
用語「デンプン」は、一般に、植物起源の多糖類、すなわちアミロースおよびアミロペクチンを含む多糖類の混合物を意味する。デンプンとしては、例えば、モロコシ、オオバコおよびトウモロコシのデンプンがある。用語「デンプン」は、水の存在下で化学的におよび/または機械的に処理され次いで乾燥された物質を含む。例えば、用語「デンプン」は、完全に化学的におよび/または機械的に処理されたデンプン、または部分的におよび完全に化学的におよび/または機械的に処理されたデンプンの混合物を包含するα化デンプンを含む。部分的にα化されたデンプンとしては、例えば、一種以上の加工デンプンと一種以上の未加工デンプンを含む混合物があり、各デンプンは、独立して、モロコシ、オオバコおよびトウモロコシのデンプンから選択される。
【0040】
用語「ラクトース」は、β1−4グリコシド化学結合を通じて連結されたβ−D−ガラクトースとβ−D−グルコースの分子を含む化学化合物およびその誘導体を意味する。ラクトースは、いずれの形態で提供してもよく、例えば噴霧乾燥、調整噴霧乾燥または水和されたものがある。
【0041】
用語「デキストロース」はグルコース分子とその誘導体を含む化学化合物を意味する。Dグルコースが好ましい。デキストロースは噴霧乾燥、調整噴霧乾燥または水和されたものなどのいずれの形態で提供されてもよい。
【0042】
用語「治療」およびその文法的に均等な用語は、本明細書で使用する場合、病因学的なまたは病理学的な症状の軽減または除去を意味し、例えば、このような症状の原因を一時的にまたは永久的に除くことまたはこのような症状または症状の悪化の出現を変えるかまたは遅らせることが含まれる。例えば、用語「治療」には、これに限定されないが、アドレナリン調節異常症またはこれに関連する本出願に記載されている合併症に付随する症状の原因の軽減と除去が含まれている。治療は、付随する症状の予防も含む。
【0043】
用語「治療上有効の」は、非毒性であるが、症状を予防しまたは症状の重篤さの改善を達成する望ましい効果を提供するのに十分な、アドレナリン調節異常症の治療に使う一つの薬剤もしくは複数の薬剤の組合せの量を、定性的に示す。アドレナリン調節異常症またはこれに関連する合併症は、利益が達成されれば、軽減または改善の絶対量の如何にかかわらず、予防または改善されているとみなす。例えば、高血圧を起こしている被験者の血圧の低下は、軽減された症状とみなす。同様に、注意障害、多動および衝動性の阻止または抑制もADHDの軽減とみなされる。さらに、ADHD治療中の被験者の血清中レベルのピーク時の一時的な鎮静およびトラフレベルにおける症状のリバウンドした病勢悪化という「ピーク対トラフ」副作用などの副作用の軽減または除去は、軽減された症状とみなす。
【0044】
用語「治療上有効な量」は、本明細書で使用する場合、活性薬剤の量を意味する。この治療上有効な量は、患者の性別、年齢および体重、投与経路、症状の性質と症状に付随する治療または患者の同時に起こる関連するかまたは無関係の治療もしくは症状によって変化する。有効量すなわち有効投与量を決定する際、これに限定されないが、使用される化合物の効力と持続期間、治療される疾病の性質と重篤性、治療される患者の性別、年齢、体重、健康状態および個々の反応性ならびにそのほかの関連する環境を含む多数の要因を、担当医が検討する。治療上有効な量は、当業者が、本出願に記載の典型的な指針に従うことによって必要以上の実験をせずに決定できる。
【0045】
治療または予防の対象の「被験者」という用語は、本明細書で使用する場合、どのような被験者も含まれるが、好ましくはアドレナリン調節異常症の治療を必要とする被験者またはアドレナリン調節異常症に関連する合併症の治療を必要とする被験者である。予防の対象の被験者は、どのような被験者も含まれるが、好ましくは、アドレナリン調節異常症の症状またはその関連する合併症を起こす危険性があるかまたは起こしやすい被験者である。その被験者は一般に動物であり、より一般的には哺乳動物である。好ましくは、その哺乳動物はヒト、ウマ、イヌまたはネコである。
【0046】
用語「治療を必要とする被験者」および文法的に均等な用語は、本明細書で使用する場合、アドレナリン調節異常症またはこれに関連する合併症に冒されているかまたは冒されやすい任意の被験者を意味する。この用語は、少投与量の治療剤を必要とする被験者も含む。さらに、この用語は、治療剤の副作用を軽減する必要がある被験者も含む。その上に、この用語は、アドレナリン調節異常症の治療に使う治療剤に対する耐性を改善する必要がある被験者も含む。
【0047】
本明細書に開示される医薬的に許容される親水性マトリックスとしては、多糖類、例えばセルロース誘導体を含む。このような多糖類の例としては、アルキルセルロース類、例えばメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース類、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース類、例えばヒドロキシエチルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース類、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース類のアルカリ金属塩類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシアルキルアルキルセルロース類、例えばカルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル類、そのほかの天然,半合成または合成の多糖類、例えばアルギン酸、そのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩がある。一例を挙げると医薬的に許容される親水性マトリックスは、セルロースエーテルの誘導体である。このセルロースエーテルの誘導体はヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0048】
親水性マトリックスとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)がある。粘度のグレードが異なるHPMCが市販されている。そのHPMCは、約7重量%から約12重量%までのヒドロキシプロポキシル置換基と約28重量%から約30重量%までのメトキシル置換基を有し,数平均分子量が約86,000であり、2%水溶液の粘度が約4,000cpのものがある。HPMCとしては、約7重量%から約12重量%までのヒドロキシプロポキシル置換基と約19重量%から約24重量%までのメトキシル置換基を有し,数平均分子量が約246,000であり、2%水溶液の粘度が約100,000cpのものがある。上記HPMCの混合物も使用できる。親水性マトリックスとしては、米国のDow Chemical Companyが製造しているMethocel(登録商標)などのヒドロキシプロピルメチルセルロースがある。
【0049】
親水性マトリックスとして、ポリアクリル酸類とその塩、架橋アクリル酸ベースのポリマー類、例えばCARBOPOL(商標)のポリマー類(米国オハイオ州ウイックリフ所在のLubrizol Corp.)、ポリメタクリル酸類とその塩、メタクリレートコポリマー類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー類、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの組合せ、ポリアルキレンオキシド類、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー類がある。
【0050】
HPMCは、追加の親水性ポリマー類、例えばデンプン、α化デンプン、単糖類、または二糖類と混合してもよい。例を挙げると、HPMCは、デキストロース、スクロース、ラクトース、ラクツロース、トレハロース、マルトース、マンニトール、ソルビトールまたはそれらの組合せと混合してもよい。例えば、ラクトースまたはラクトース一水和物を使用できる。異なるグレードのラクトースを使用できる。上記ラクトースは、調整噴霧乾燥ラクトース一水和物(316 Fast Flow、WI)である。その他のラクトース一水和物も使用できる。ラクトース一水和物の粒子は、その98%(w/w)が850μmより小さい。親水性マトリックスとしては、一部α化されたデンプンと混合したHPMC、またはラクトースと一部α化されたデンプンの組合せ/混合物がある。例えば、一部α化デンプンであると生産者が述べているStarch 1500(登録商標)NF(Colorcon、米国ペンシルベニア州ウエストポイント所在)を使用できる。
【0051】
α−アドレナリン受容体アゴニストの延長放出期間は、親水性マトリックスの調節または親水性マトリックスと放出抑制剤の調節によって提供できる。例えば、α−アドレナリン受容体アゴニストの8時間という放出期間は、約7重量%から約12重量%までのヒドロキシプロポキシル置換基と約28%から約30重量%までのメトキシル置換基を有し、数平均分子量が約86,000で、2%水溶液の粘度が約4000cpで、95重量%が100メッシュのスクリーンを通過できるMethocel(登録商標)E4Mを含む親水性マトリックスを使用して提供できる。例えば、α−アドレナリン受容体アゴニストの12時間という放出期間は、約7重量%から約12重量%までのヒドロキシプロポキシル置換基と約19重量%から約24重量%までのメトキシル置換基を有し、数平均分子量が約246,000で、2%水溶液の粘度が約100,000cpで、少なくとも90重量%が100メッシュのスクリーンを通過できるMethocel(登録商標)K100Mを含む親水性マトリックスを使用して提供できる。例えば、α−アドレナリン受容体アゴニストの24時間までの放出期間は、例えば、Methocel(登録商標)および放出抑制剤を含む親水性マトリックスを使用して提供できる。
【0052】
開示した製剤は、製剤の生産、圧縮性、外観および味を高めるため医薬的に許容される製薬剤を任意に含んでいてもよい。このような製薬剤としては、例えば賦形剤、流動促進剤、結合剤、造粒剤、凝結防止剤、潤滑剤、風味剤、着色剤および保存剤を含む。例えば、製剤は、製剤のpH、浸透圧モル濃度、粘度、透明性、色、無菌性、安定性、溶解速度、味またはにおいを調整または維持する他の医薬的に許容される添加剤を含有してもよい。製剤は、さらに、組成物の一種以上の化合物の安定性を調整または維持するための他の医薬的に許容される添加剤を含有してもよい。このような添加剤は、単位投与量または複数投与量の形態で投与する製剤を配合するために通常、一般に利用される物質である。本明細書に記載されている製剤は固体の経口製剤である。上記固体の経口製剤は一般に錠剤、カプセル剤またはゲルカップ剤である。マトリックス製剤中にさらに含まれていてもよい任意の製剤薬としては、例えばポリビドン、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カルシウム、エチルセルロース、コロイダルシリカまたはタルクなどの流動促進剤、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸およびポリエチレングリコールなどの潤滑剤がある。
【0053】
本発明の方法は、治療上有効な量の、本明細書に記載されている化合物または製剤および少なくとも一つの他の追加の治療薬を同時に投与するステップを含む。上記組成物は、一種以上の追加の治療剤とともに、同時に配合されるかまたは投与される。アドレナリン調節異常症の治療、予防および軽減に、一般に使用される任意の治療剤は、本明細書に開示されている製剤とともに投与されるかまたは同時に配合される。追加の治療剤は、本明細書に開示されている組成物および/または製剤を投与する14日、7日、24時間、12時間、1時間前または後、または同時に投与してもよい。いずれの適切な追加の治療薬も、本明細書に記載の組成物と同時に製剤するか、またはこれら薬剤にとって有効であると知られている濃度で、この組成物を、治療される哺乳類に投与してもよい。追加の薬剤ありまたは無しの製剤は、他の有効な投与方式、例えば関節内注射、皮内注射、吸入剤ミスト、経皮イオン導入法または坐薬も考えられるが、経口、または注射による非経口で投与できる。本明細書に記載の化合物および医薬製剤は、ADHDを治療および/または予防する他の方法でも使用できる。ADHDを治療および/または予防する他の方法には、例えば、刺激剤、例えばメチルフェニデート、Ritalin、Concerta、アンフェタミン類、Adderall(登録商標)、デキストロアンフェタミン類、Dexedrine(登録商標)、モダフィニル、Provigil(登録商標)、アミネプチン(Survector(登録商標))、抗うつ剤、例えばブプロピオン、nonstimulant例えば選択的ノルエピネフィリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ剤、選択的セレトニン再取り込み阻害剤(SSRE)例えばチアネプチン(Stablon(登録商標))、ブプロピオン(Wellbutrin(登録商標))、およびこれらの組合せが含まれる。本明細書に記載されている化合物および医薬製剤、例えば、ACE阻害剤、例えばキャプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル(Monopril(登録商標))、リシノプリル(Zestril(登録商標))、キナプリル、ラミプリル(Altace(登録商標))、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えばイルベサルタン(Avapro(登録商標))、ロサルタン(Cozaar(登録商標))、バルサルタン(Diovan(登録商標)、カンデサルタン(Atacand(登録商標))、α遮断薬、例えばドキサゾシン、プラゾシンまたはテラゾシン、β遮断薬 例えばアテノロール、ラベタロール、メトプロロール(Lopressor(登録商標))、Toprol−XL(登録商標))、カルシウムチャネル遮断薬、例えばアムロジピン(Norvasc(登録商標))、ディルチアゼム、ヴェラパミル、利尿薬、例えばベンドロフルメチアジド、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジド、およびこれらの組合せは、高血圧症を治療する既知のの方法で使用できる。
【0054】
アドレナリン調節異常症の存在または変化を診断し監視する方法は既知である。本明細書に開示されている製剤がアドレナリン調節異常症を治療し軽減しまたは予防するのに有用であるかどうかを評価するため、当分野で公知のいずれの方法も使用することができる。例えば、ADHDまたは高血圧の症状に対して医学的に望ましい結果は、衝動性または血圧それぞれの低下である。ADHDまたは高血圧は、例えば、本明細書に開示されている製剤を投与する前、投与中および投与後に被験者の身体検査を行うことによって診断および/または監視することができる。
【0055】
以下の実施例は本発明の実施形態を説明する。アドレナリン調節異常症およびこれに関連する合併症の治療と予防に使用する必要がある追加の薬剤ありまたは無しで、アゴニストの量、ならびにアゴニストと親水性マトリックスおよび放出抑制剤の成分との比率は、広い限度内で変化し、かつ特定の被験者の個々の要件に適合させることができることは理解されるであろう。本発明の広い範囲に記載されている数値の範囲とパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載されている数値は、出来る限り正確に報告してある。しかし、どの数値も、本来、それらそれぞれの測定値(例えば、重量)に見られる標準偏差から必ず生じる特定の誤差を含む。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は限定を目的とするものではない。
【0057】
実施例1
(錠剤の調製)
プレブレンドを以下のように調製した。20メッシュで予め篩い分けしたAPI(塩酸クロニジン、USP、Spectrum Chemical、米国ニュージャージー州、ニューブランズウイック)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hypromellose、USP、Methocel(登録商標)K100M Premium、Dow Chemical)、ラクトース一水和物 NF 316 Fast Flow(登録商標)(Formost Farms、米国ウイスコン州)を使用し(表1と2)、ラクトースの担体をV−ブレンダーで混合し、次いで集めた。
【0058】
上記のようにして得たプレブレンドを、予め篩い分けした部分α化デンプンのNF(Starch 1500(登録商標)、Colorcon 米国ペンシルベニア州)、ラウリル硫酸ナトリウム(Spectrum Chemical、米国ニュージャージー州)およびコロイド二酸化ケイ素(Cab−O−Sil(登録商標)M−5P、Cabot、米国マサチューセッツ州)とを、2 qtのVブレンダー中で組み合せて、約8分間混合し、次いで予め篩い分けしたステアリン酸マグネシウムを加えてさらに3分間混合した。その粉末を、Fette 1200i Tablet Pressを使ってペレット化して錠剤1を得た。ラクトースの特定の種類や粒径によっては、上記粉末ブレンドを乾燥圧縮する前または後にラクトースの担体を加えてもよい。類似の方法で、追加の錠剤2〜4を調製し、それらの組成を表1に要約した。錠剤5も調製し、その組成を表1に要約した。
【0059】
上記錠剤は、当分野で公知のフィルムコーティング組成物でフィルムコートすることができる。上記コーティングを塗布して錠剤の外観および/または味を改善しかつ嚥下しやすくすることができる。錠剤をコーティングすると、安定性と半減期を改善できる。適切なコーティング剤は、フィルム形成ポリマー例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばhypromellose 2910など、可塑剤、例えばグリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど、乳白剤、例えば二酸化チタンなど、およびフィルムスムーサー、例えばタルクなどを含む。適切なコーティング溶媒としては、有機溶媒のみならず水がある。有機溶媒の例は、アルコール類例えばエタノールもしくはイソプロパノール、ケトン類例えばアセトン、またはハロゲン化炭化水素類例えば塩化メチレンである。任意に、コーティングは治療上有効量の一種以上のAPIを含有し、一種以上のAPIを即時放出して、一種以上のAPIで治療される症状を即時に軽減することもできる。Surelease(登録商標)(Colorcon、米国ペンシルベニア州)などのエチルセルロースのコーティングは、パンコーターまたは流動床コーターで錠剤に塗布できる。
【0060】
【表1A】

【表1B】

【0061】
実施例2
(活性放出方式)
pH2の媒体中でUSPのパドル法(500mL、50RPM)を利用して行った錠剤2と3からのクロニジンの溶出試験の結果を図1に示す。その放出方式は、媒体から溶出するクロニジンの%値を時間の関数として表してある。放出抑制剤ありおよび無しの親水性マトリックスからのクロニジンの延長放出状態をグラフで示す。図1に示すように、放出抑制剤ありの錠剤3は、放出抑制剤無しの錠剤2と比べて、クロニジンのゼロ次〜一次の放出方式を示す。
【0062】
実施例3
(一回投与の薬物動態学の臨床試験)
3種の各治療期間中、被験者は、無作為に選んだ順序で、以下の治療すなわち絶食時Clonicel(徐放性塩酸クロニジン)0.1mg、標準化食事に続いてClonicel 0.1mg、および絶食時Catapres(即時放出性塩酸クロニジン)0.1mgの内の一つの治療を受けた。血漿中クロニジンを測定するための血液試料を、投与する前および投与してから48時間後に集めた。投与は、最少7日間の洗い出し期間を取り、隔てて実施した。合計15名の男性と女性の健康な被験者をこの試験に登録させた。
【0063】
Clonicelを投与した後の最大クロニジン濃度は、Catapresを投与後のクロニジン濃度に比べて低くかつ遅れた時点に起こる。この試験では、絶食中Clonicelを投与した後のCmaxは、CatapresのCmax値の約50%であった(235±34.7pg/mL vs.443±59.6pg/mL)。最大濃度に到達する平均時間(Tmax)も、Catapresの2,07時間に比べて絶食時のClonicelの場合、6.80時間と長い。絶食時ClonicelおよびCatapresの投与の後のクロニジンの見かけの半減期の平均推定値は類似し、それぞれ12.67時間と12.52時間である。ANOVAモデルを使って比較する場合、絶食時のClonicel vs.Catapresの後、ln(Cmax)に基づいて、クロニジンの最大暴露を比較するための90%信頼区間は80%〜125%の限度内にはない。しかし、ln(AUClast)とln(AUCinf)に基づいて全身暴露の合計を比較するための90%信頼区間は80%〜125%の限度内にあり、これは、クロニジンに対する全身暴露の合計が、絶食時ClonicelおよびCatapresの投与の後と類似していることを示している。クロニジンの血漿中濃度−時間のグラフは、Clonicelを絶食時および摂食時に投与した後類似している。この試験では、Tmax値は、6.80時間(絶食時)と6.50時間(摂食時)であり、かつクロニジンの濃度は、各条件下での投与の場合、類似している。食料は、Clonicelの消去半減期には全く影響しなかった(12.67時間−絶食時/12.65時間−摂食時)。クロニジンのCmax、AUClastおよびAUCinfの比率(絶食時/摂食時)は80%〜125%の90%信頼区間内にあり、これは、食料が、Clonicel製剤からクロニジンを吸収する速度または程度に対して有意な影響を及ぼさないことを示している。全体として、Clonicelの血漿中濃度−時間のグラフは、絶食条件下のCatapresと比べて遅れてより持続的であり、食料の存在によって影響を受けなかった。データを表2、3および4に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
実施例4
(定常状態の血漿中濃度の臨床試験)
Clonicel、0.2、0.4および0.6mg/dayを利用する三つの経口投与治療方式の定常状態の薬物動態学および薬力学の4週間(28日間)にわたる多中心二重盲検ランダム化平行群試験を実施した。この試験の投与量は、高血圧に処方されるクロニジンの通常の推奨経口一日投与量の範囲、およびその選択された投与量が高血圧の治療に効力を有するクロニジンの血漿中濃度の範囲(0.2 ng/mLから2.0 ng/mまで)を提供するという予想に基づいて選択された。これら投与量はすべて、投与量分割計画すなわち0.1、0.2および0.3mg b.i.d.で、12時間の期間をとって投与した。三つの治療グループの内の一つにランダムに割り当てる評価可能な患者を最少36名(一治療グループ当たり12名)獲得するため、合計40名の患者を登録した。治療グループにランダムに割り当てる前に、患者は、現在実施中の血圧降下薬投与の洗い出し期間を2週間とった。治療期間中、割り当てられた目標投与量を達成するため段階的滴定計画を実施した。歩行時の血圧の監視(ABPM)を、適切なモニターを使って、投与前のベースラインと最終投与日(26日目)に実施した。クロニジンの定常状態での血漿中濃度を測定するため、10個の血液試料を、投与する前および23日目と25日目の朝の投与に続く12時間の期間に収集した。患者に対する試験投与は、26日間の投与期間を完了した後、直ちに停止し、患者は血圧と安全性を評価するため48時間(27日目と28日目)隔離した。患者はすべて、PK解析を行うためABPMのデータと血液試料を獲得する必要がある、特に全試験期間中、その検査ユニットに定住させた。PK/PD集団の患者は39名であり(0.2mg/dayグループと0.4mg/dayグループ各々12名ずつおよび0.6mg/dayグループ15名)、そして安全性集団の患者は42名であった(0.2mg/dayグループ12名、0.4mg/dayグループと0.6mg/dayグループ各々15名ずつ)。有効成分は、0.1mgの塩酸クロニジンを含有する、円形で白色のClonicel 0.1mg経口徐放性錠剤に製剤した。
【0068】
有効成分の定常状態の血漿中濃度に到達するため、段階的滴定計画を実施した。その計画を表5に示す。
【0069】
【表5】

【0070】
薬物の動態と試験の26日目〜28日目に得たABPMの試験結果との相関関係を知るため、試験薬剤治療の前と後に予め指定された時間期間をとって、血液試料を、23日と25日に得た。
【0071】
クロニジンの薬物動態学的パラメータを、ノンコンパートメンタル(noncompartmental)解析を使って計算した。本明細書で定義されるように報告されるパラメータとしては、個々の被験者の血漿中濃度/時間のプロットを検査することによって観察されるクロニジンの最大血漿中濃度(Cmax)、個々の被験者の血漿中濃度/時間のプロットを検査することによって観察される投与からCmaxまでの時間(h)(Tmax)、個々の被験者の血漿中濃度/時間のプロットを検査することによって観察されるクロニジンの最小血漿中濃度(Cmin)、(AUC0−τ)/ τ(Cavg)として計算される定常状態での投与期間中の平均濃度、定常状態のデータの変動比=Cmax/ Cmin、線形台形法を利用して計算される定常状態における12時間の投与期間中の血漿中濃度−時間の曲線の下の面積(AUCτ)、およびAUC によって割り算された投与量として計算される定常状態における見かけの経口クリアランス(CL/Fss)を含む。個々の患者の薬物動態学的解析を、実際の血液サンプリング時間と投与量投与の時間を利用して実施した。定量化の限度より低かった(BLQ)濃度−時間のデータは、記述統計学の計算の際、ゼロとして処理した(0.00pg/mL)。薬物動態解析においてBLQ濃度は、ゼロ時点から第一の定量化可能の濃度が観察された時点までゼロとして処理し、組み込まれているかおよび/または最終のBLQ濃度は欠落していると処理した。ノンコンパートメンタル薬物動態学的パラメータは、WinNonlin(登録商標)バージョン5.2(Pharsight Corp)を使って、23日目と25日目のクロニジン血漿中濃度から計算した。Clonicelは、体重または身体の大きさとは無関係に、一定の投与量で投与したので、CL/F値は、kg当たりをベースにした体重に正規化した。得られたすべての薬物動態学的パラメータおよび計画された評価の各時点における血漿中濃度は、記述統計学(平均値、平均値の標準誤差、標準偏差、変動係数、中央値、観察結果の範囲と数)によって要約した。個々の被験者および平均(与えられた投与量のレベルに対する)血漿中濃度/時間のデータのグラフも作成した。
【0072】
薬物動態学的データ(ABPMの測定値)の最初の評価によって、三つのすべての治療グループを通じて収縮期と拡張期の血圧の平均値が低下するというClonicelの効果を評価した。三つの治療グループの平均ベースラインABPMデータを、26日目(治療の最終日)および27日目と28日目で得た平均データと比較した。個々の患者のABPMデータを使って、治療のベースラインと26日目の血圧の状態を比較することによって、より詳細なPK/PD解析を実施した。昼間(0時間から12時間まで)の期間を解析に利用した。これは、薬物動態学的データは、25日目に、定常状態において昼間の12時間の投与時間にわたって収集したからである。投与期間の末端時における効果の維持を試験するため、ベースラインおよび26日目の投与期間中の最後の2時間(11時間目と12時間目)のSBP、DBPおよびHRの価の差を、各患者について計算した。ベースラインと上記最後の2測定時間の間のこれらの差の有意性を検定するため、ペアドt検定法を実施した。血圧に対するクロニジンの作用を定量化するため実施した方法は、ベースラインと26日目におけるBP/時間の曲線の下の面積(AUCBP)の差を計算する方法であった。これらの価を使って、PK/PD解析を実施したのみならず、薬力学的作用を投与量に関係づけた。薬力学的作用とAUCτ、CmaxおよびCminを含む薬物動態学的パラメータとの間の関係を、式:E=(Emax・Cγ)/(Cγ+EC50γ)(式中、Eは所定の濃度で観察された薬理作用の大きさであり、CまたはAUCは薬理作用を発生する医薬濃度またはAUCであり、Emaxは推定の最大の薬理作用であり、EC50は作用が最大作用の50%である濃度であり、EC90は作用が最大作用の90%である濃度であり、およびγは、E/Cの関係のシェープファクター(傾斜の急勾配の程度)である)のS字型Emaxモデルを利用して評価した。
【0073】
(薬物動態学的データの解析)
クロニジンの血漿中濃度を検定するため、定常状態の各患者から、合計21個の血液試料を採取した。すなわち23日目の10個の試料、25日目の10個の試料および26日目の1個の試料である。血漿中濃度は、患者毎に表に示しかつプロットして図3に示した。3治療グループの平均濃度は、約400pg/mLから1800pg/mLまでの範囲内であった。図3は、血漿中濃度が、投与量の増加に比例して増大し、投与期間全体を通じてかなり保持され、および23日目と25日目が非常に類似していたことを示している。23日目、25日目および26日目の午前の投与の前の平均トラフ濃度をまとめてプロットすることによって、定常状態が達成されたことを確認した。まとめたデータを図4にプロットした。図4が示すように、クロニジンの血漿中濃度が、23日目に始まってサンプリング期間全体にわたって定常状態であったことを示している。三つの独立した繰返し測定値ANOVA検定法を、各グループに一回ずつ実施して、23日目、25日目および26日目のトラフのレベルに統計的に差がないことを証明した。0.2、0.4および0.6mgグループのF値と対応するp値は、それぞれF(2,22)=2.3,p=0.1237、F(2,20)=1.277,p=0.3008、F(2,28)=17.15,p=0.53であった。上記ANOVA検定のどれも統計的有意性に到達しなかったが、これは、3時点および定常状態の達成の間に差がないことを証明している。
【0074】
トラフにおける血漿中濃度は、被験者間の変動を計算するのにも利用できる。血漿中濃度の被験者間の変動を、個々の投与単位間の薬物動態学的特性の精度の指数として研究することは重要であった。被験者間変動係数の平均値は、上記3グループの場合、非常に低く10%から12%までの範囲内であった。これは、この徐放性製剤が、クロニジンを日々むらなく放出したことを示している。
【0075】
定常状態のノンコンパートメンタル薬物動態学的パラメータを、各患者個々に計算し、次いで、治療グループを通じて23日目と25日目についてまとめた。表6は、治療グループと治療日による主要パラメータを示す。Cmaxの平均値は、23日目の0.2mgグループの553pg/mLから23日目の0.6mg/mLグループの1980pg/mLまでの範囲であった。CminとAUCも明らかに同じパターンであった。Tmaxの平均値は、すべての投与レベルで4時間から5時間までであり、個々の患者の全体の範囲は2時間から8時間までであるが、観察されたTmax値は大部分(>60%)、4時間と6時間の間に生じた。主要な派生PKパラメータの変動係数(CV)は18%から42%までの範囲であり、最高の投与量の場合により高いCVが観察されたが、これは、薬物動態学的暴露において被験者間の変動が低いことを示している。全体として、23日目と25日目の平均値の間に大きな差はなかった。定常状態でのCLONICEL(登録商標)製剤の徐放性は、上記3治療群で観察されたCmax/Cmin平均比が低いことから明らかであった。これらの平均比は、平均して1.4から1.5までであったが、これは、ピークからトラフまでの変動が小さいことを示している。25日目のCmax、Cmin、AUCおよびCL/Fの価を投与量の関数として図4にプロットすることによって投与量と派生PKパラメータの関係を調べた。図4が示すように、これら三つの暴露パラメータは、投与量に比例して増大し、かつCL/Fは投与範囲にわたって僅かに低下するようであった。
【0076】
【表6】

【0077】
(薬力学的データの解析)
3種の投与量でClonicel(登録商標)を投与すると、すべて、昼間、夜間および複合24時間の収縮期および拡張期の血圧に有意な変化が生じた。ベースラインと26日目すなわち最終治療日の間の差は、薬力学的観点から非常に重要であると考えられる。表7には、ベースライン(ゼロ日目)と26日目、27日目および28日目の昼間の収縮期と拡張期の血圧の平均測定値が記載され、図6には、ゼロ日目と26日目のデータが記載されている。0.2mg/dayから0.4mg/dayまでの投与量レベルで、昼間の収縮期と拡張期の平均血圧はベースラインに比べて、投与量に依存して低下した(平均SBPはそれぞれ15.5mmHgと25mmHg低下し、および平均DBPはそれぞれ11.2mmHgと16.6mmHg低下した)。しかし、高投与量の0.6mg/dayで、血圧がさらに低下することはなかった(昼間の平均SBPと平均DBPはそれぞれ23.3mmHgと16.9mmHg低下した)が、これは、投与量が0.4mg/dayを超えると血圧制御が横ばいになることを示している。試験投与を突然停止して48時間後、収縮期と拡張期の血圧はともに、行き過ぎることなく、上記ベースライン値の極めて近くまで戻った。血圧に対するこの効果は、すべての投与量における12時間の昼間投与期間全体にわたって維持された。しかし、この効果は、0.2mg/dayの投与量で投与後10時間と12時間の間では小さかった。
【0078】
【表7】

【0079】
Clonicelによる治療を突然中止した後に高血圧がリバウンドする可能性を調べるため、試験薬の投与を、26日目のPM投与の後、漸次減らすことなく中止した。この最後の投与の後、ABPMの測定を、48時間続けた。表7と図7は、ベースラインと26日目〜28日目の昼間の収縮期と拡張期の平均血圧の測定値を示す。これらのデータから明らかなように、SBPとDBPの昼間の価はともに、たとえ試験投与を突然中止しても、投与後48時間にわたって、行過ぎることなく、ベースラインの値に徐々に戻った。
【0080】
26日目、すなわち最終投与日の朝と夕刻の投与の間のABPMのデータをまとめてプロットすることによって、Clonicelの投与期間中の薬力学的効果を調べた。比較のため、同じ時点間のベースラインで集めたABPMのデータもまとめてプロットした。Clonicelによる治療中、2名の患者以外のすべての患者に血圧の低下が観察された。すなわち、降圧効果は、1名の患者(0.2mg/dayの治療グループ)では無視できる程度でありそしてもう1名の患者(0.6mg/dayの治療グループ)では効果はなかった。平均薬力学的効果‐時間のデータを図8、9および10にプロットした。上記概要の項で観察されたように、0.2mgグループの血圧に対する朝の投与の効果の大きさは、これより高い投与量の場合より低いようであった。0.4mgグループと0.6mgグループの投与期間中、血圧と心拍数に類似の効果が観察された。血圧に対する効果の持続期間は、より高い投与量では、昼間12時間の全投与期間にわたって維持されたが、投与後10時間と12時間の間の効果の大きさは小さかった。投与期間の末端における効果の維持を調べるため、ベースラインおよび26日目の投与期間の最後の2時間(11時間目と12時間目)におけるSBP、DBPおよびHRの価の間の差を、各患者について計算した。表8は、治療グループによる平均差およびベースラインと最後の2測定時点との間の平均差の有意性のペアドt検定の結果を示す。表8が示すように、投与量の高いほうの2グループのSBPとDBPの最後の2測定時点において、終始、統計的に有意な差が維持されたが、0.2mg/dayグループではより断続的であった。0.6mgグループの11時間目とベースラインの間の差を除いて、上記最後の2測定時点におけるHRの統計的に有意な差は全くなかった。
【0081】
【表8】

【0082】
(薬物動態学的−薬力学的関係)
投与の25日目の血圧応答のデータならびにCmax、CminおよびAUCτの値を使って、薬物動態学的−薬力学的モデリングを実施した。薬物濃度がゼロの場合、薬理効果は全くないと仮定して、S字型Emaxモデル(WinNonlin PD Model 105)を使用した。効果と暴露との関係は、上記三つの各暴露パラメータの収縮期と拡張期の血圧の変化に類似していた。Clonicelの投与レベルによって識別された観察データの代表的プロットを、曲線を重ね合わせて当てはめて図5に示した。一般に、このS字型Emaxモデルは、血圧に対する効果とクロニジン濃度の間の関係をうまく提示している。濃度の反応の傾斜(γ)は、Clonicelの1日当たり0.2mgの投与量の投与で提供される低濃度において非常に急激な傾斜である。血圧に対する効果に対するモデル当てはめのパラメータ推定値を表9に示す。これらの試験結果は、収縮期血圧に対する最大の応答の50%を起こすのに必要なクロニジンの濃度は、Cmaxについては458pg/mLであり、Cminについては359pg/mLであることを示している。この大きさの濃度は、0.4mgと0.6mgのグループでは終始、達成されたが、0.2mgのグループでは達成されなかった。収縮期血圧に対するクロニジンの効果の推定EC90は646mg/mLのCmax濃度と532mg/mLのCmin濃度が必要であることを示した。0.4mgと0.6mgのグループの患者は、全員、>500pg/mLのクロニジン濃度を達成したが、効果と濃度の関係に基づいて、0.4mg/dayを超えて投与量が増大することから追加の利点がほとんど生じないことは明らかである。表9のデータは、S字型Emaxモデル由来のPK/PDパラメータを示す。
【0083】
【表9】

【0084】
クロニジンのClonicel製剤の徐放性は、Tmaxが遅延し、Cmaxが低下し、クロニジン濃度が12時間の投与期間にわたって延長され、およびクロニジンの血漿中濃度の変動が投与期間にわたって小さかったことによって確認された。この変動が小さいということは、徐放性製剤が示すピーク対トラフの範囲が狭いことに相当する。クロニジンの血漿中濃度−時間のグラフにおける被験者間の変動は、定常状態の二つの12時間の投与期間にわたって小さかった。これは、上記製剤によるクロニジンの送達が安定していることを示している。血圧の有意な降下が治療中のすべての投与レベルで観察され、0,2mg/dayと0.4mg/dayでは投与量に関連して降下したが、0.6mg/dayでは臨床的に有意な追加の利益は全く得られなかった。特に、0,4mg/dayと0.6mg/dayの投与量の場合、投与期間中、全12時間にわたって、効果が維持された。PK/PDモデリングは、血圧の降下と心拍数の効果が定常状態のAUCτ、CmaxとCminのクロニジンの濃度に関連があり、最適の効果は0.4mg/dayの投与レベルで観察されたことを示している。
【0085】
本明細書の特許請求の範囲の範囲内にある他の実施形態は、当業者にとって、本明細書に開示されている本発明の明細書またはプラクティスを検討することによって明らかになる。本明細書は実施例とともに、単に例示されているだけであるとするものであり、本発明の範囲と精神は特許請求の範囲に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口製剤であって、
(a)前記経口製剤の0.001重量%〜0.5重量%の量のα−アドレナリン受容体アゴニストと、
(b)医薬的に許容される親水性マトリックスと
を含み、前記親水性マトリックスが、
(i)前記経口製剤の20重量%〜80重量%の量の少なくとも一種のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルと、
(ii)前記経口製剤の20重量%〜80重量%の量の少なくとも一種のデンプン、ラクトースまたはデキストロースと、
(iii)アルキル硫酸金属塩と
を含み、前記経口製剤を、前記α−アドレナリン受容体アゴニストの血漿中濃度が定常状態にある被験者に、約12時間毎に一回だけ投与した後、前記アゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.9以下に留まる経口製剤。
【請求項2】
前記α−アドレナリン受容体アゴニストがクロニジンまたはその医薬的に許容される塩である請求項1に記載の経口製剤。
【請求項3】
前記クロニジンの量が前記経口製剤の約0.025重量%〜約0.40重量%の量である請求項2に記載の経口製剤。
【請求項4】
前記アルキル硫酸金属塩の量が前記経口製剤の約1重量%〜約7重量%の量である請求項1に記載の経口製剤。
【請求項5】
前記アルキル硫酸金属塩がラウリル硫酸ナトリウムである請求項1に記載の経口製剤。
【請求項6】
前記血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.6以下に留まる請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記α−アドレナリン受容体アゴニストの量が約0.1mg〜約0.7mgの量である請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
アドレナリン調節異常症の治療を必要とする被験者のアドレナリン調節異常症を治療する方法であって
請求項1に記載の経口製剤を、前記α−アドレナリン受容体アゴニストの血漿中濃度が定常状態である前記被験者に、約12時間毎に一回だけ投与し、投与後の前記アゴニストの血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.9に留まるステップを含む
前記アドレナリン調節異常症が治療される方法。
【請求項9】
前記アドレナリン調節異常症が、高血圧、心房細動、うっ血性心不全、起立性低血圧、術後疼痛、難治性癌性疼痛、頭痛、陣痛、反射性交感神経性ジストロフィ、アカシジア、末梢神経障害、神経障害性口顔疼痛、糖尿病性胃不全麻痺、本態性振戦、硬膜後悪寒戦慄、麻酔後悪寒振戦、レストレスレッグ症候群、緊張亢進状態、運動亢進障害、トウーレット症候群、薬物離脱、急性神経性食欲不振症、注意欠陥/多動障害(ADHD)、高血圧、行為障害、双極性障害、攻撃性、睡眠発作、パニック障害、心的外傷後ストレス障害、睡眠障害、社交恐怖、統合失調症、潰瘍性の大腸炎と直腸炎、嘔吐、シクロスポリン誘発性腎毒症、甲状腺機能亢進症、小児の成長遅延、多汗症、閉経後の潮紅と顔面潮紅からなる群から選択される症状で現れる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アドレナリン調節異常症が、注意欠陥/多動障害(ADHD)で現れる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記α−アドレナリン受容体アゴニストがクロニジンまたはその医薬的に許容される塩である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記(b)(iii)経口製剤のアルキル硫酸金属塩がラウリル硫酸ナトリウムである請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記血漿中濃度のピーク対トラフ比が約1.3〜約1.6の値である請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記経口製剤中に存在する前記α−アドレナリン受容体アゴニストの量が、約0.1mg〜約0.7mgの量である請求項8に記載の方法。
【請求項15】
経口製剤であって、
(a)前記経口製剤の0.001重量%〜0.5重量%の量のα−アドレナリン受容体アゴニストと、
(b)医薬的に許容される親水性マトリックスと、
(c)任意のステアリン酸金属塩および/またはコロイダルシリカと
を含み、前記親水性マトリックスが、
(i)前記経口製剤の20重量%〜80重量%の量の少なくとも一種のヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテルと、
(ii)前記経口製剤の80重量%〜20重量%の量の少なくとも一種のデンプン、ラクトースまたはデキストロ−スと、
(iii)アルキル硫酸金属塩の放出抑制剤と
を含むものである経口製剤。
【請求項16】
前記α−アドレナリン受容体アゴニストが塩酸クロニジンである請求項15に記載の経口製剤。
【請求項17】
前記塩酸クロニジンの量が前記経口製剤の約0.025重量%〜約0.40重量%の量である請求項15に記載の経口製剤。
【請求項18】
前記アルキル硫酸金属塩の量が前記経口製剤の約1重量%〜約7重量%の量である請求項15に記載の経口製剤。
【請求項19】
前記アルキル硫酸金属塩がラウリル硫酸ナトリウムである請求項18に記載の経口製剤。
【請求項20】
前記ラウリル硫酸ナトリウムの量が約2%である請求項19に記載の経口製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−529142(P2010−529142A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511351(P2010−511351)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/066036
【国際公開番号】WO2008/154339
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509336901)アドレネクス・ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】