説明

アナバセイン化合物の制御放出製剤およびその使用

本発明は、アナバセイン化合物、例えば3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン(DMXBAまたはGTS-21としても公知)、または薬学的に許容できるその塩の、制御放出剤形、使用方法、および制御放出剤形を生産する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年8月21日出願の米国出願第61/235,876号の恩典を主張し、そのあらゆる図、表、核酸配列、アミノ酸配列および図面を含む全体を参照として本明細書に組み入れる。
【0002】
政府による援助
本発明は、National Institute of Medical Healthの助成第R01 MH061412号の下で政府の援助を受けてなされたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
複数のタイプのニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)が中枢神経系の活動において役割を果たしていることが知られており、それによって認知、気分および神経保護に関与している。様々なタイプの公知のニコチン性リガンドは、いくつかはすべての受容体に対して影響を及ぼし、それ以外はより選択的な作用を有するというように、影響を及ぼすnAChRのサブタイプに依存して、ニコチン調節性の機能に対して異なる効果の組み合わせを有するようである。
【0004】
アセチルコリン受容体は、哺乳動物の中枢神経系(CNS)において、ムスカリン性(mAChR)およびニコチン性(nAChR)のサブタイプに分類することができる。これらのサブタイプは、キノコ毒であるムスカリンまたは植物アルカロイドであるニコチンのいずれによって刺激を受けるかという性質に基づいて識別される。ニコチン性受容体は、自律神経節、横紋筋、神経筋接合部における、ならびに脳および脊髄シナプスにおけるコリン作動性伝達において重要である。いくつかのnAChRは、非ニューロン細胞または筋肉細胞においても発現される。神経系内では、これらの非ニューロン細胞には、小グリア細胞および星状細胞が含まれ;神経系外では、アルファ7受容体を発現する非ニューロン細胞には、マクロファージ、血管内皮および肺上皮細胞が含まれる。
【0005】
公知の哺乳動物nAChRはすべて、細胞膜において五量体構造を形成するカチオン選択性リガンドゲートイオンチャネルである。この五量体の各サブユニットは、4つの膜貫通ドメインを含む。少なくとも17種の異なるnAChRサブユニット遺伝子が存在し、そのうちの5種は横紋筋において見いだされ(アルファ1、ベータ1、ガンマ、デルタ、シグマ)、12種はニューロンnAChRサブユニットである(アルファ2〜10、ベータ2〜4)。これらのチャネルは、多くの異なるサブユニットの組み合わせから構成され得る。脳において最も豊富なサブタイプの例には、a7サブタイプ(a-ブンガロトキシン感受性)およびアルファ4ベータ2サブタイプ(アルファ4(2)ベータ2(3)またはアルファ4(3)ベータ2(2))が含まれる。大部分のアルファ7受容体はホモ五量体として発現されるという説が、強力な証拠によって支持されている。アルファ7 cDNAのみが注入された場合、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞において機能的なブンガロトキシン感受性チャネルが発現される。しかし、ラット海馬の介在ニューロンもまた、アルファ7含有nAChRを有しており、これは、ホモ多量体のアルファ7受容体とは異なる薬理学的・機能的特性を示す。アフリカツメガエル卵母細胞においてアルファ7サブユニットとベータ2サブユニットを共発現させることにより、ラット海馬介在ニューロンのアルファ7含有受容体と類似の特性を有する機能的なヘテロ多量体チャネルが生成された(Khiroug et al., 2004, J Physiol. (London), 540: 425-434)。ホモ多量体チャネルとして形成される点に加えて、アルファ7 nAChRチャネルは、他のnAChRまたはNMDAグルタミン酸受容体サブタイプよりもずっと高いカルシウムイオン透過性を示す。
【0006】
脳におけるnAChRは、長い間、ニコチンの陶酔効果(euphoric effects)を媒介するのに重要であると認識されていた。ニューロンnAChRの欠陥はまた、アルツハイマー病(AD)および統合失調症を含むいくつかの疾患に関係している。最近まで、神経変性疾患の研究は、ムスカリン性タイプのニューロンアセチルコリン受容体(mAChR)に着目していた。というのも、これらはニューロンニコチン性受容体(nAChR)の集団と比べて脳内に豊富に存在するからである。しかし、アルツハイマー病患者の脳においてはムスカリン性受容体よりもニコチン性受容体の方が相対的損失が大きいという発見およびニコチン性アゴニストが認知力を高めるという証拠が、nAChRに関心を向ける契機となった(Sabbagh et al., 1998, J. Neural Transm., 105: 709-717)。2つの主要な脳nAChRであるアルファ4ベータ2およびアルファ7は、認知プロセス、例えば、注意、学習、および記憶に重要である。脳のアルファ7ニコチン性受容体は、ADにおいてアルファ4ベータ2 nAChRよりも被害が小さく、また、特別に高いカルシウムイオン透過性を有するので、これらはADの処置における非常に見込みのある治療標的と考えられている。それらのシナプス伝達における直接的関与に加えて、特定のニコチン性受容体サブタイプ、特にアルファ7はまた、それらの極めて高いカルシウム透過性により、カルシウム依存性細胞内シグナル伝達プロセスも刺激し、そのため、虚血または機械的外傷のようなストレス状況下でニューロンの統合性を維持することにより神経保護性を示す。
【0007】
ADの特徴的病理には、細胞外のベータアミロイド斑、細胞内の神経原線維変化、ニューロンシナプスおよび錐体細胞の損失が含まれる。ADにおけるコリン作動系の機能障害は、ACh合成酵素コリンアクチルトランスフェラーゼ(ChAT)の活性の低下ならびにニューロンおよびグリアnAChRの損失として表れる。この変化は、コリン作動性神経終末の選択的な損失に起因すると考えられる。統合失調症では、反復刺激を取り除くことでそのような刺激による注意散漫を回避し目前の精神的作業への集中力を高めさせる脳の正常なメカニズムが破壊される。この感覚入力に対する簡易フィルターの機能異常は、感覚刺激から生まれる妄想による錯覚をもたらす刺激の過負荷、または刺激からの逃避を引き起こし、それによって分裂性の挙動を引き起こす。認知機能における脳の重要部分である統合失調性の海馬は、感覚ゲーティングを媒介することが示されているアルファ7タイプのnAChRの発現低下を示すことが示されている。
【0008】
アルファ7 nAChRサブタイプは、アルツハイマー病(Wang et al., 2000, J Biol. Chem., 275(8): 5626-32; Kem, 2000, Brain Biol. Res., 113(1-2): 169-81);統合失調症(Adler et al., 1998, Schizophr Bull, 24(2): 189-202);パーキンソン病(Quik et al., 2000, Eur. J. Pharm. 393(1-3): 223-2)および注意欠陥多動性障害(Wilens et al., 1999, Am. J. Psychiatry, 156(12): 1931-1937; Levin et al., 2000, Eur. J. Pharmacol., 393(1-3): 141-146)を含む様々な中枢神経系(CNS)の疾患において役割を果たしていることが報告されている。多くの薬剤が、アルファ7 nAChRサブタイプの選択的アゴニストとして作用することが同定され、これらおよびその他の中枢神経系の状態の処置に有用であると提言されている(de Fiebre et al., 1995, Mol. Pharmacol., 47: 164-171; Kem et al., 2000, Behav. Brain Res., 13(1-2): 169-81; Kem et al., 2004, Mol. Pharmacol. 65: 56-67; Papke et al., 2009, JPET, 329: 1-17; Horenstein et al., 2008, Mol. Pharmacol., 74: 1496-1511: Papke et al., 2004, Neuropharmacology, 46: 1023-1038; 米国特許第6,110,914号; 同第5,902,814号; 同第6,599,916号; および同第6,432,975号)。
【0009】
現在、選択的アルファ7ニコチン性受容体アゴニストが、記憶に関連する挙動を改善し、かつ、栄養素の喪失、アミロイド暴露、興奮毒性、インビボ虚血および軸索切断により誘導される神経毒に対する保護を与え得ることが公知となっている。アルファ7 nAChRサブタイプは、そのグルタミン酸作動性シナプスに対する影響を通じて長期的なシナプス調節に寄与することが公知である。シナプス前アルファ7含有nAChRの強く短い刺激は、ニコチン性アゴニストが取り除かれた後の一定期間、海馬のグルタミン酸作動性シナプス伝達を亢進することができる。アルファ7受容体アゴニストは、認知および聴覚刺激ゲーティングプロセスを強化するため、老人痴呆および統合失調症の処置において有力な候補薬物である(Freedman et al., 1996, Arch. Gen. Psychiatry, 53: 1114-1121; Stevens et al., 1998, Psychopharmacology (Berl), 136: 320-327; Kem, 2000, J. Pharmacol. Exp. Ther., 283: 979-992)。
【0010】
アナバセイン(2-(3-ピリジル)-3,4,5,6-テトラヒドロピリジン)は、いくつかの海洋虫によって産生される天然のアルカロイド毒であり、海洋虫はこの物質を被食者を麻痺させ捕食者から身を守るために使用する(Kem, et al., 1971, Toxicon, 9: 23-32)。アナバセインは、構造的にニコチンに関連しているが、このタバコアルカロイドとはピロリジニル環ではなくテトラヒドロピリジル環を有している点で相違する。アナバセインは、ニコチンと同様、すべてのnAChRを刺激する(Kem et al., 1997, J. Pharmacol. Exp. Ther. 283: 979-992)。アナバセインは、中枢および末梢のニコチン性受容体のアゴニストとして作用する(de Fiebre et al., 1995, Mol. Pharmacol., 47: 164-171; Kem et al., 1997, J. Pharmacol. Exp. Ther., 283: 979-992)。アナバセインの合成二置換ベンジリデン誘導体である3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン(DMXBA、DMXBおよびGTS-21としても公知)は、比較的低濃度ではヒトアルファ7サブユニット含有nAChRを選択的に刺激し、高濃度ではアルファ4ベータ2受容体のアンタゴニストとなる化合物である(Briggs et al., 1995, Neuropharmacology, 34: 583-590; Kem et al., 2000, Behav. Brain Res., 113: 169-181)。DMXBAは、サルを含む高齢および基底核病変哺乳動物における認知行動を強化し、現在、アルツハイマー病および統合失調症に関連する認知機能障害を改善できるかどうかを判断する臨床試験下にある(Woodruff-Pak et al., 1994, Brain Res., 645: 309-317; Arendash et al., 1995, Brain Res., 674: 252-259; Briggs et al., 1997, Pharmacol. Biochem. Behav., 57: 231-241; Buccafusco and Terry, 2000, J. Pharmacol. Exp. Ther., 295: 438-446; Kitagawa et al., 2003, Neuropsychopharmacology 28: 542-551; Freedman et al., 2008, Am. J. Psychiatry, 165: 1040-1047)。ベンジリデン-アナバセイン(例:DMXBA)およびシンナミリデン-アナバセイン(例:DMAC-アナバセイン、Meyer et al., 1998)はまた、β-アミロイドの神経毒作用に対して(Martin et al., 1994, Drug Dev. Res., 31: 134-141; Kihara et al., 1997, Ann. Neurol., 42: 159-163; Shimohoma et al., 1998, Brain Res., 779: 359-363)および脳卒中の動物モデルにおいて神経保護性を示す。さらに、DMXBAは、ラットによるニコチンの自己投与を阻止することが実証されている(米国特許第5,977,144号, Meyer et al., the University of Floridaによる; 国際出願公開WO/1999/010338, Meyer et al., the University of Floridaによる)。
【0011】
DMXBAはニコチンよりも毒性が低く、認知行動を強化するのに使用される用量では自律神経系および骨格筋系に影響しない。薬物動態の初期分析は、DMXBAが経口投与後に迅速に代謝されることを示した(Mahnir et al., 1998, Biopharm. Drug Dis., 19: 147-151; Azuma et al., 1999, Xenobiotica, 29(7): 747-762)。DMXBAの臨床研究は、大用量で副作用なく安全に経口投与できることおよびこの薬物が約2時間またはそれ未満の半減期を有することを示している(Kitagawa et al., 2003; Hashimoto et al., 2005, Curr. Med. Chem. - Central Nervous System Agents, 5: 171-184; Olincy et al., 2006, Arch. Gen. Psychiat., 63: 630-638)。DMXBAは経口投与後迅速に脳に侵入し、認知行動を強化する(Kem et al., 2004, Molecular Pharmacology, 65(1): 56-67)。しかし、DMXBAの薬物動態プロフィールは、最適ではない。DMXBAは脳に迅速に吸収され分配されるが、生物利用性は比較的低い。DMXBAの半減期は比較的短いため、多くの場合頻繁に投与する必要があり、このことが、認知的に故障のありその信者でもない患者集団への使用の実用性を下げている(Olinsky and Stevens, 2007, Biochem. Pharmacol., 74(8): 1192-1201)。DMXBAのヒドロキシ代謝産物は、ヒトアルファ7受容体に対してDMXBAよりも強力であるが;それらは肝臓によって循環から迅速に抽出され、脳に容易に侵入しない(Kem et al., 2004)。
【0012】
高度に強力かつ選択的なアルファ7ニコチン性受容体アゴニストを開発する重要性は、認知機能障害および変性疾患におけるこれらの受容体の役割が明確になるにつれ高まっている。シンナミリデン-アナバセインは、ベンジリデン誘導体と類似の薬理学的および化学的特性を有し、いくつかはDMXBAよりも強力なアルファ7アゴニストでさえある(米国特許第5,977,144号, Meyer et al., the University of Floridaによる; 国際出願公開WO/1999/010338, Meyer et al., the University of Floridaによる)。より高い生物利用性および脳浸透特性を有する新規のアナバセインアナログを設計する努力もなされている。
【発明の概要】
【0013】
発明の要旨
本発明は、アナバセイン化合物、例えば3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン(DMXBA、DMXBおよびGTS-21としても公知)の制御放出製剤(剤形)、ならびに中枢神経系のニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する様々な疾患もしくは状態、例えばアルツハイマー病、統合失調症、パーキンソン病および注意欠陥多動性障害;末梢のnAChRの欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する様々な疾患もしくは状態;または非ニューロンnAChRの欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する様々な疾患もしくは状態、例えば炎症状態(例えば、関節リウマチ)、外傷、出血、血管新生不全、血管新生過剰もしくは細胞増殖異常(例えば、癌)を処置または予防する方法を提供する。これらの方法において、対象における疾患または状態は、有効量の一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の制御放出製剤を投与し、対象においてこの化合物またはそれらの活性代謝産物の望ましい血漿レベルおよび/または脳レベルを与えることにより処置または予防される。対象においてアナバセイン化合物またはそれらの活性代謝産物の望ましい血漿レベルおよび/または脳レベルを提供する方法も提供される。アナバセイン化合物は、アナバセインアゴニストまたはアナバセインアンタゴニストであり得る。
【0014】
欠陥性および/または機能異常性のニコチン性アセチルコリン受容体のタイプは、例えば、ニューロンニコチン性受容体もしくは非ニューロンニコチン性受容体であり得るし、またはその両方のタイプが欠陥性および/もしくは機能異常性の場合もある。いくつかの態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体は、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体(例えば、脳ニコチン性受容体、例えば、アルファ7含有受容体、アルファ4(2)ベータ2(3)またはアルファ4(3)ベータ2(2))であり、疾患または状態は、アルツハイマー病、統合失調症、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害またはnAChRの欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する別の疾患もしくは状態である。いくつかの態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体は、非ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体であり、疾患または状態は、炎症障害(例えば、関節リウマチ)、外傷、出血、血管新生不全、血管新生過剰もしくは細胞増殖異常(例えば、癌)または非ニューロンnAChR(アルファ7サブタイプのものでもあり得る)の欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する別の疾患もしくは状態である。
【0015】
本発明はまた、アナバセイン化合物、例えばDMXBAの制御放出製剤に関し、これには、例えば、経口投与に適した錠剤およびカプセル剤製剤が含まれる。これらの製剤は、哺乳動物対象における、好ましくはヒトにおけるニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/または機能異常に関連する様々な疾患または状態を、その対象への経口投与により処置または予防するのに有用である。これらの製剤はまた、研究においても、ニコチン性受容体の欠陥および/または機能異常により引き起こされるまたは悪化する疾患または状態の動物モデルに投与することにより使用することができる。
【0016】
アナバセイン化合物または化合物群は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物対象に投与され得る。例えば、アナバセイン化合物または化合物群は、獣医学的患者または疾患の動物モデルに投与され得る。この方法の好ましい態様において、対象はヒト対象である。
【0017】
使用され得る様々な製剤、投与経路および投薬計画が本明細書に詳細に記載されている。この方法のいくつかの態様において、製剤は静脈用製剤である。この方法のいくつかの態様において、製剤は経口用製剤である。製剤は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物と共に、その他の任意成分を含み得る。製剤は、同じ投与経路を通じて投与される場合もされない場合もある一つまたはそれ以上の製剤の投与を含む、様々な投薬計画で投与され得る。製剤はまた、反復投薬により、および実質的に連続的な投薬により送達され得る。
【0018】
いくつかの態様において、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物は、体内からの迅速な排除から一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物を保護する担体、例えば、制御放出マトリクス、インプラントおよび/またはマイクロカプセル化送達システムを用いて調製される。いくつかの態様において、担体は、親水性マトリクスである。
【0019】
本発明は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出製剤を含む、様々な放出速度でのアナバセイン化合物の経口投与のための方法および組成物(例えば、制御放出錠剤およびカプセル剤)を提供する。本発明の一つの局面によれば、親水性マトリクスおよび一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物を含む、対象への経口投与に適した制御放出組成物は、その組成物の以下の因子の一つまたはそれ以上を制御するまたは変化させることにより調製され得る:薬物/ポリマーの比(アナバセイン化合物/ポリマーの比)、ポリマーの粘度、ポリマーの水和特性および活性成分の粒子サイズ。一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物および親水性マトリクスを含む制御放出組成物が対象により摂取されると、制御放出組成物の表面が最初に湿潤する。詳細には、表面が湿潤し、親水性マトリクスのポリマーが水和を開始し、ゲル層が形成される。組成物の表面付近の任意のアナバセイン化合物が放出される。次に、ゲル層の膨張が起こる。詳細には、組成物に水分が浸透し、ゲル層が厚みを増す。乾燥したコア内のポリマーの弛緩もまた、剤形の膨潤に寄与する。外側のポリマー層が十分に水和されると、ついには胃液中に溶解し、水分は組成物のコアに向かって浸透し続ける。一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物は主として、それらの溶解度に依存して二つのメカニズムのいずれかにより放出される。可溶性のアナバセイン化合物は(組成物中に含まれる任意のその他の可溶性の活性薬剤と共に)、主としてゲル層を通じた拡散により放出される。不溶性のアナバセイン化合物は(組成物中に含まれる任意のその他の不溶性の活性薬剤と共に)、主として組成物の浸食を通じて放出される。
【0020】
本発明の一つの局面において、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の持続放出のための組成物をそれを必要とする対象に経口投与する工程を包含する処置方法が提供される。別の局面において、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の持続放出のための経口投与に適した組成物の、対象の処置のための使用が提供される。別の局面において、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出のための経口投与に適した組成物の、対象の処置のための医薬の調製のための使用が提供される。この場合の対象は、例えば、アルツハイマー病、統合失調症、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害、または脳ニコチン性受容体、もしくは他のニューロンニコチン性受容体、もしくは非ニューロンニコチン性受容体における欠陥および/もしくは機能異常に関連するその他の疾患もしくは状態、例えば炎症障害(例えば、関節リウマチ)、外傷、出血、血管新生不全、血管新生過剰、細胞増殖異常(例えば、癌)に罹患している対象であり得る。
【0021】
本発明の別の局面において、経口投与に適した制御放出組成物、例えば、延長放出錠剤またはカプセル剤を調製する方法であって:a)一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物およびマトリクス形成剤、例えば親水性ポリマー、ならびに、場合により、一つまたはそれ以上の他の成分(例えば、滑沢剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤群、補助賦形剤、例えば流動化剤、溶解剤等)をブレンドし混合物を形成する工程;ならびにb)この混合物から、例えば、直接圧縮により、または湿式もしくは乾式造粒後の圧縮により、制御放出組成物を形成する工程、を包含する方法が提供される。
【0022】
本発明の別の局面において、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出のための経口投与に適した組成物であって:a)約0.1重量%〜約80重量%のアナバセイン化合物;および約99.9重量%〜約20重量%の延長放出剤を含む組成物が提供される。この組成物は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の約2時間〜約48時間の期間の延長放出を提供し得る。好ましくは、延長放出剤はマトリクスを含む。いくつかの態様において、延長放出剤は、親水性ポリマー、例えばセルロースエーテルを含む。この組成物はさらに、以下の追加の成分の一つまたはそれ以上を含み得る:滑沢剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、補助賦形剤、例えば流動化剤、および溶解剤。
【0023】
本発明の別の局面において、約4時間〜約8時間の継続期間、対象内の血清アナバセイン化合物濃度を維持する方法であって、本明細書に記載される有効量の制御放出組成物を投与する工程を包含する方法が提供される。本発明の別の局面において、約4時間〜約8時間の継続期間、対象の脳内のアナバセイン化合物濃度を維持する方法であって、本明細書に記載される有効量の制御放出組成物を投与する工程を包含する方法が提供される。
【0024】
本発明の別の局面において、約4時間〜約8時間の継続期間、対象内のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物の血清濃度を維持するための医薬の調製のための、制御放出組成物の使用が提供される。本発明の別の局面において、約4時間〜約8時間の継続期間、対象の脳内のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物の濃度を維持するための医薬の調製のための、本明細書に記載される制御放出組成物の使用が提供される。本発明の別の局面において、nAChRの欠陥および/または機能異常により引き起こされるまたは悪化する疾患または状態の処置のための医薬の調製のための、本明細書に記載される制御放出組成物の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、DMXBA二塩酸塩の4つの制御放出(CR)カプセルのインビトロでの放出プロフィールを示すグラフである(実施例1;表1を参照のこと)。
【図2】図2は、図1のCR製剤および剤形の投与後のヒト対象における、血漿DMXB-Aレベルを示すグラフである。図2は、この製剤が、インビトロ試験から予測された持続的な血漿DMXB-Aレベルをもたらすことを示している。一つのカプセル後、潜在的治療レベルが6〜8時間の間見られる。同一対象における2回の投与の平均レベルが示されている。
【図3】図3は、DMXBA(GTS-21)の遊離塩基型の化学構造を示す。
【図4】図4A〜4Cは、米国特許公開第2005/0288333号の式Iを示す。
【図5】図5は、米国特許公開第2005/0288333号の式IIを示す。
【図6】図6A〜6Bは、米国特許第5,977,144号に記載されるアリーリデン-アナバセインの式を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な開示
本発明の一つの局面は、治療有効量のアナバセイン化合物および制御放出剤を含む制御放出剤形である。好ましくは、制御放出剤はポリマーマトリクスであり、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物がその中に組み込まれる。いくつかの態様において、制御放出剤形は、固形剤形である。いくつかの態様において、制御放出剤形は、経口用剤形である。いくつかの態様において、制御放出剤形は経口用剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、懸濁剤または散剤である。好ましい態様において、制御放出剤形は、経口用固形剤形、例えば、錠剤またはカプセル剤である。
【0027】
好ましくは、制御放出マトリクスのポリマーは、以下の特徴の一つまたはそれ以上を有する:非イオン性、水不溶性およびゲル形成性。いくつかの態様において、ポリマーは、水性環境において水和することで、その剤形の外表面に、剤形内部の湿潤および崩壊を遅らせるゲル状の(ゲル)層を形成するゲル形成性ポリマーであり、このゲル層は水分が剤形に浸透するにつれ膨潤または膨張し(厚みを増し)、アナバセイン化合物はゲル層を通じて拡散する。アナバセイン化合物が水不溶性の場合、この化合物は、好ましくは、主として剤形の侵食を通じて剤形から放出される。アナバセイン化合物が水溶性の場合、この化合物は、好ましくは、主としてゲル層を通じた拡散により剤形から放出される。
【0028】
いくつかの態様において、制御放出マトリクスのポリマーは、セルロースポリマー、例えば、セルロースエーテルである。いくつかの態様において、ポリマーは、ヒプロメロースまたはメチルセルロースである。
【0029】
本発明の製剤および方法において使用されるアナバセイン化合物は、図4A〜4C、図5または図6A〜6Bに示される化学構造を有し得る。好ましい態様において、アナバセイン化合物は、アリーリデン-アナバセイン、例えば、DMXBA(図3に示されている)またはその薬学的に許容できる塩である。
【0030】
アナバセイン化合物は、nAChRアゴニストまたはアンタゴニスト(アナバセインアゴニストまたはアンタゴニストとも称される)であり得る。いくつかの態様において、アナバセイン化合物は、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニスト、例えば、DMXBAである。
【0031】
本発明の別の局面は、アナバセイン化合物を制御放出様式で対象に投与する方法であって、本明細書に記載される制御放出剤形を対象に投与する工程を包含する方法である。いくつかの態様において、治療有効量のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物が、約4時間〜約8時間の範囲の継続期間、対象の血中および/または脳内で維持される。いくつかの態様において、治療有効量のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物が、約6時間〜約8時間の範囲の継続期間、対象の血中および/または脳内で維持される。
【0032】
本発明の別の局面は、ニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/または機能異常に関連する(それにより引き起こされるまたは悪化する)疾患または状態を処置または予防する方法であって、本明細書に記載される制御放出剤形をそれを必要とする対象に投与する工程を包含する方法である。いくつかの態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体は、脳のニューロンニコチン性アセチルコリン受容体であり、疾患または障害は、アルツハイマー病、統合失調症、パーキンソン病または注意欠陥多動性障害である。いくつかの態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体は、非ニューロンニコチン性受容体であり、疾患または障害は、炎症障害(例えば、関節リウマチ)、外傷、出血、血管新生不全、血管新生過剰または細胞増殖異常(例えば、癌)である。いくつかの態様において、治療有効量のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物が、約4時間〜約8時間の範囲の継続期間、対象の血中および/または脳内で維持される。いくつかの態様において、治療有効量のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物が、約6時間〜約8時間の範囲の継続期間、対象の血中および/または脳内で維持される。
【0033】
本発明の別の局面は、経口投与に適した、本明細書に記載される制御放出剤形を調製する方法であって、a)一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物およびマトリクス形成剤、ならびに、場合により、一つまたはそれ以上の他の成分をブレンドし混合物を形成する工程;ならびにb)この混合物から制御放出剤形を形成する工程を包含する方法である。いくつかの態様において、一つまたはそれ以上の他の成分は、滑沢剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤および溶解剤からなる群より選択される少なくとも一つの成分を含む。いくつかの態様において、マトリクス形成剤は親水性ポリマーを含む。
【0034】
制御放出剤形は、この混合物から、例えば、直接圧縮により、または湿式もしくは乾式造粒後の圧縮により形成され得る。
【0035】
定義
本明細書で使用される場合、単数形の語("a"、"and"および"the")は、文脈が明らかにそうでないことを示していない限り、複数の参照を包含する。したがって、例えば、「アナバセイン化合物」に対する参照は、複数のそのような化合物を包含し、「nAChRアゴニスト」または「アナバセインアゴニスト」に対する参照は、複数のそのようなアゴニストを包含し、「nAChRアンタゴニスト」または「アナバセインアンタゴニスト」に対する参照は、複数のそのようなアンタゴニストを包含し、そして「ニコチンアセチルコリン受容体」に対する参照は、一つまたはそれ以上の受容体および当業者に公知のそれらの等価物に対する参照を包含する、等である。
【0036】
本願にしたがい使用される場合、以下の用語は、そうでないことが示されない限り、以下の意味を有するものと理解されたい:
【0037】
「活性成分」は、アナバセイン化合物(例えば、アナバセインアゴニストまたはアナバセインアンタゴニスト)をさす。
【0038】
「アナバセインアゴニスト」は、ニコチン性コリン作動性受容体(nAChR)に実質的に特異的に結合し、この受容体が薬理学的効果を提供するよう活性化させるアナバセイン化合物をさす。典型的には、nAChRの活性化は、それに関連するイオンチャネルを開口させ、カルシウムの流入および膜の脱分極をもたらす。この定義は、nAChRに結合した際に、真のニコチン性アゴニスト、例えばアセチルコリンがもたらす活性化よりは小さいかもしれないが、少なくともその一部にあたる活性化を起こす、アナバセイン部分アゴニストを包含する。
【0039】
「アナバセインアンタゴニスト」は、ニコチン性コリン作動性受容体(nAChR)に実質的に特異的に結合するが、それに関連するイオンチャネルを開口させないアナバセイン化合物をさす。しかし、そのチャネルを開口させないことによって、薬理学的効果を生じるのである。この定義は、nAChRに結合した際に、真のアナバセインアンタゴニストによる活性化のブロックよりは小さいかもしれないが、少なくともその一部にあたる活性化ブロックを起こす、部分アナバセインアンタゴニストを包含する。
【0040】
用語「アナバセイン化合物」および「化合物」は、本明細書で交換可能に用いられ、それらの化学構造の要素としてアナバセインを有し、nAChRに結合することで薬理学的効果を生じる化合物をさす。アナバセイン化合物の例には、米国特許公開第2005/0288333号(Kem, "Controlling Angiogenesis with Anabaseine Analogs")、米国特許第5,977,144号(Meyer et al., "Methods of Use and Compositions for Benzylidene and Cinnamylidene-Anabaseines")および米国特許第5,741,802号(Kem et al., "Anabaseine Derivatives Useful in the Treatment of Degenerative Diseases of the Nervous System")に開示されるもの、ならびにこれらに開示される一般式に包含される任意の化合物が含まれるがこれらに限定されない(これらの内容は、全体的に参照により本明細書に組み入れられる)。好ましい態様において、アナバセイン化合物はアリーリデン-アナバセイン化合物、例えば、3-アリーリデン-アナバセインである。化合物は、それらの化学構造および/または化学名のいずれかによって同定され得る。化学構造および化学名が相反する場合、化学構造が、その化合物の同定の決定要因となる。化合物は、一つまたはそれ以上のキラル中心および/または二重結合を含み得、したがって、立体異性体、例えば二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、鏡像異性体またはジアステレオマーとして存在し得る。したがって、キラル中心における立体化学が特定されていない場合、本明細書に示される化学構造は、立体異性的に純粋な形態(例えば、幾何異性的に純粋、鏡像異性的に純粋またはジアステレオマー的に純粋)ならびに鏡像異性体および立体異性体の混合物を含む、そのキラル中心におけるすべての可能性のある配置を包含する。鏡像異性体および立体異性体の混合物は、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術を用いてそれらの鏡像異性体成分または立体異性体成分に分解することができる。化合物はまた、環状イミン型、環状イミニウム型、アミノ-ケト型、アンモニウム-ケトン型およびそれらの混合物を含む、様々な互変異性体型で存在し得る。したがって、本明細書に示される化学構造は、表示されている化合物のすべての可能性のある互変異性体型を包含する。化合物には、一つまたはそれ以上の原子が自然界で通常見られる原子質量と異なる原子質量を有する同位体標識された化合物も含まれる。化合物に組み込まれ得る同位体の例には、2H、3H、13C、14C、15N、17Oおよび18Oが含まれるがこれらに限定されない。化合物は、水和型およびN-オキシドを含む、非溶媒和型および溶媒和型として存在し得る。水和型、溶媒和型およびN-オキシド型は、概して、本願の範囲に含まれる。特定の化合物は、多結晶型または無定形型で存在し得る。すべての物理的な形態は、概して、本願において想定されている用途については等価なものであり、本願の範囲に含まれることが意図されている。さらに、化合物の部分構造が表示されている場合の括弧表示は、その部分構造とその分子のそれ以外の部分の連結点を示していることを理解されたい。
【0041】
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0042】
「薬学的に許容できる塩」は、薬学的に許容でき、かつ親化合物の望ましい薬理学的活性を保持している化合物の塩をさす。そのような塩には、(1)従来的な化学手段により作製される、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等により形成される;または有機酸、例えば酢酸、酪酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、吉草酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコペプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸等により形成される酸付加塩;または(2)従来的な化学手段により作製される、親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンもしくはアルミニウムイオンで置換されるか;または有機塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルグルカミン等に配位するかのいずれかの場合に形成される塩、が含まれる。DMXBAの薬学的に許容できる塩の非限定的な例は、その二塩酸塩、すなわち、(E)-3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-3,4,5,6-テトラヒドロ-2,3'-ビピリジン二塩酸塩である。
【0043】
「薬学的に許容できる担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤またはビヒクルをさす。
【0044】
「薬学的組成物」は、本明細書で使用される場合、少なくとも一つのアナバセイン化合物(例えば、アナバセインアゴニストまたはアナバセインアンタゴニスト)および当該少なくとも一つのアナバセイン化合物と共に対象に投与される薬学的に許容できる担体をさす。
【0045】
「保護基」は、分子内の反応性官能基に付加された場合に、その官能基の反応性をマスクする、低下させるまたは防ぐ原子団をさす。保護基の例は、Greene et al., "Protective Groups in Organic Chemistry", (Wiley, 4th ed. 2007)および"Compendium of Synthetic Organic Methods", Vols. 1-12 (John Wiley and Sons, 1971-2009)に見いだすことができる。代表的なアミノ保護基には、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル("CBZ")、tert-ブトキシカルボニル("Boc")、トリメチルシリル("TMS")、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル("SES")、トリチルおよび置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル("FMOC")、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル("NVOC")等が含まれるがこれらに限定されない。代表的なヒドロキシ保護基には、ヒドロキシ基をアシル化するかまたはアルキル化するかのいずれかの基、例えば、ベンジル、ならびに、トリチルエーテル、それに加えてアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテルおよびアリルエーテルが含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
用語「アルキル」は、飽和脂肪族基のラジカルをさし、直鎖アルキル基および分枝鎖アルキル基を包含する。用語アルキルはさらに、炭化水素骨格の一つまたはそれ以上の炭素を置換している酸素、窒素、硫黄またはリン原子、例えば酸素、窒素、硫黄またはリン原子をさらに含み得るアルキル基を包含する。好ましい態様において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に30個またはそれ未満(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分枝鎖についてはC3〜C30)、好ましくは26個またはそれ未満、より好ましくは20個またはそれ未満、さらに好ましくは4個またはそれ未満の炭素原子を有する。
【0047】
さらに、本明細書および特許請求の範囲を通して使用される用語アルキルは、「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を包含することが意図されており、後者は、炭化水素骨格の一つまたはそれ以上の炭素上の水素を置換している置換基を有するアルキル部分をさす。このような置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸、硫酸、スルホナト、スルファモイル、スルホナミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分が含まれ得る。適当な場合、炭化水素鎖を置換している部分それ自体も置換され得ることが当業者に理解されるであろう。
【0048】
用語「アルキル」はまた、長さおよび置換可能性に関して上記のアルキルと類似するが、少なくとも一つの二重または三重結合をそれぞれ含む不飽和脂肪族基を包含する。「アルキルアリール」部分は、アリールで置換されたアルキルである(例えば、フェニルメチル(ベンジル))。
【0049】
用語「アルコキシ」、「アミノアルキル」および「チオアルコキシ」は、炭化水素骨格の一つまたはそれ以上の炭素を置換している酸素、窒素または硫黄原子、例えば酸素、窒素または硫黄原子をさらに含む上記のアルキル基をさす。
【0050】
用語「アルケニル」および「アルキニル」は、長さおよび置換可能性に関して上記のアルキルと類似するが、少なくとも一つの二重または三重結合をそれぞれ含む不飽和脂肪族基をさす。例えば、本発明は、プロパルギル基を想定している。
【0051】
用語「アラルキル」は、(C1〜C6)アルキレン基によって別の基に付加されたアリール基を意味する。アラルキル基は、場合により、アラルキル基のアリール部分またはアラルキル基のアルキレン部分のいずれかにおいて、一つまたはそれ以上の置換基で置換され得る。
【0052】
用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、アリール基のラジカルをさし、0〜4個のヘテロ原子を含み得る5員および6員の単環の芳香族基(ヘテロアリール)、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジン等が含まれる。アリール基はまた、縮合多環式芳香族基、例えば、ナフチル、キノリル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル等を包含する。
【0053】
環構造中にヘテロ原子を有するアリール基は、「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」とも称され得る。芳香族環は、一つまたはそれ以上の環上の位置において、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、リン酸、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸、硫酸、スルホナト、スルファモイル、スルホナミド、ニトロ、ハロゲン化アルキル(トリフルオロメチル、ジフルオロメチルおよびフルオロメチルを含む)、ハロゲン化アルコキシ(トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシおよびフルオロメトキシを含む)、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、アリールアルキルまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換され得る。アリール基はまた、芳香族ではない脂環式または複素環式の環と、多環(例えばテトラリン)を形成するよう縮合または架橋され得る。
【0054】
用語「シクリル」は、一定の不飽和度を有する少なくとも一つの非芳香族環を有する、炭化水素3〜8員の単環式または7〜14員の二環式の環系をさす。シクリル基は、場合により、一つまたはそれ以上の置換基で置換され得る。一つの態様において、シクリル基の各環の0、1、2、3または4個の原子が置換基により置換され得る。用語「シクロアルキル」は、少なくとも一つの飽和環を有する、炭化水素3〜8員の単環式または7〜14員の二環式の環系をさす。シクロアルキル基は、場合により、一つまたはそれ以上の置換基で置換され得る。一つの態様において、シクロアルキル基の各環の0、1、2、3または4個の原子が置換基により置換され得る。シクロアルキルはさらに、例えば、上記の置換基で置換され得る。好ましいシクリルおよびシクロアルキルは、それらの環構造中に3〜10個の炭素原子を有するものであり、より好ましくは、環構造中に3、4、5、6または7個の炭素を有するものである。環構造中にヘテロ原子を有する環式基は、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロアラルキル」とも称され得る。芳香族環は、一つまたはそれ以上の環上の位置において、上記のような置換基で置換され得る。
【0055】
用語「ポリシクリル」または「多環式ラジカル」は、2つまたはそれ以上の環式環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリル)のラジカルをさす。いくつかの例において、2個またはそれ以上の炭素が2つの隣接する環に共有されており、例えば、その環は「縮合環」である。非隣接原子を通じて連結された環は、「架橋」環と称される。多環の各環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸、硫酸、スルホナト、スルファモイル、スルホナミド、ニトロ、ハロゲン化アルキル(トリフルオロメチル、ジフルオロメチルおよびフルオロメチルを含む)、ハロゲン化アルコキシ(トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシおよびフルオロメトキシを含む)、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキルまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換され得る。
【0056】
用語「ハロアルキル」は、ハロゲンによって一置換、二置換または多置換された上記のアルキル基、例えばフルオロメチルおよびトリフルオロメチルを包含することが意図されている。
【0057】
用語「ハロゲン」は、-F、-Cl、-Brまたは-Iを表す。
【0058】
用語「ヒドロキシル」は、-OHを意味する。
【0059】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用される場合、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄およびリンである。
【0060】
用語「メチル」はCH3基をさす。好ましい態様において、テトラヒドロピリジル環の4位のR2、5位のR3および6位のR4は、いずれかが単一置換されたメチル基である、例えば、R2がメチル基であるか、または各々がメチルで置換され、(S)-または(R)-(アルファまたはベータ)鏡像異性体型である。
【0061】
用語「メルカプト」は、SH基をさす。
【0062】
用語「スルフヒドリル」または「チオール」は、-SHを意味する。
【0063】
本発明の化合物は、様々な異性体型を包含する。そのような異性体には、例えば、立体異性体、例えばキラル化合物、例えばジアステレオマーおよび鏡像異性体が含まれる。
【0064】
用語「キラル」は、鏡像相手に重ね合わせ不能な特性を有する分子をさし、用語「アキラル」は、それらの鏡像相手に重ね合わせ可能な分子をさす。
【0065】
用語「ジアステレオマー」は、2つまたはそれ以上の非対称中心を有する立体異性体であって、それらの分子が互いに鏡像関係にないものをさす。
【0066】
用語「鏡像異性体」は、互いに対して重ね合わせ不能な鏡像である化合物の2つの立体異性体を意味する。2つの鏡像異性体の等モル混合物は、「ラセミ混合物」または「ラセミ体」と呼ばれる。
【0067】
用語「異性体」または「立体異性体」は、同一の化学的構成要素を有するが、原子または原子団の空間的な配列に関して相違する化合物をさす。
【0068】
さらに、炭素・炭素二重結合をまたぐ配置の表示は、しばしば「シス」(同側)配座と称される「Z」であり得、それに対して「E」は、しばしば「トランス」(反対側)配座と称される配置をさす。いずれにしても、本発明において使用する化合物に関しては、シス/トランスおよび/またはZ/Eの両方の配置が想定されている。
【0069】
キラル中心の命名に関して、用語「S」および「R」の配置は、IUPAC Recommendationsに定義される通りである。用語ジアステレオマー、ラセミ体、エピマーおよび鏡像異性体の使用に関して、これらは、調製物の立体化学を表現する上でそれらの通常の意味で使用される。
【0070】
本発明において使用される化合物により表される天然アミノ酸は、そうでないことが示されていない限り、「L」配置をとるものである。本発明において使用される化合物により表される非天然または合成アミノ酸は、「D」または「L」のいずれかの配置をとるものであり得る。同様に、グリコシド結合は、アルファ配置またはベータ配置のいずれかをとり得る。
【0071】
別の局面は、本明細書に示されたいずれかの式の放射性標識化合物または一つもしくはそれ以上の安定な同位体原子を含む化合物である。このような化合物は、その化合物に組み込まれた、一つもしくはそれ以上の放射性原子(例えば、3H、14C、35S、32P)または一つもしくはそれ以上の安定な同位体原子(例えば、2H、13C)を有する。このような化合物は、薬物代謝研究および診断、ならびに治療用途に有用である。
【0072】
用語「プロドラッグ」は、インビボで代謝され得る部分を有する化合物を包含する。本発明の製剤および方法において使用されるアナバセイン化合物は、プロドラッグであり得る。一般に、プロドラッグは、インビボでエステラーゼによりまたはその他のメカニズムにより活性薬物へと代謝される。プロドラッグの例およびその利用は当技術分野で周知である(例えば、Berge et al., 1977, "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci. 66: 1-19; Silverman, 2004, "The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action", Second Ed., Elsevier Press, Chapter 8, pp.497-549を参照のこと)。プロドラッグは、化合物の最終単離・精製時にインサイチューで、または別途、遊離酸型もしくはヒドロキシル型の精製化合物を適当なエステル化剤と反応させることにより、調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸処理を通じてエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例には、置換および非置換、分枝または非分枝の低級アルキルエステル部分(例えば、プロピオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ低級アルキルアミノ低級アルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例えば、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例えば、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール低級アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル)、置換(例えば、メチル、ハロゲンまたはメトキシ置換)アリールおよびアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ低級アルキルアミドならびにヒドロキシアミドが含まれる。好ましいプロドラッグ部分は、プロピオン酸およびコハク酸エステル、アシルエステルならびに置換カルバメートである。インビボでその他のメカニズムを通じて活性型に変換されるプロドラッグも包含される。
【0073】
「置換」は、一つまたはそれ以上の水素原子が同一または異なる置換基により独立して置換されている基をさす。典型的な置換基には、アルキルおよびN,N-ジアルキルアミノが含まれるがこれらに限定されない。
【0074】
「処置する」、「処置している」および「処置」はすべて、望ましい薬理学的および/または生理学的効果を得ること、例えば、ニコチン性受容体(例えばアルファ7 nAChR)の欠陥および/または機能異常により引き起こされるまたは悪化する疾患または状態に関連する一つまたはそれ以上の症状を予防すること、その発現を遅らせること、取り除くことまたはその重篤度を低下させること、をさす。欠陥性および/または機能異常性のニコチン性受容体は、ニューロンニコチン性受容体もしくは非ニューロンニコチン性受容体であるか、または、両方のタイプの受容体が欠陥性および/または機能異常性であり得、それにより疾患または状態が引き起こされまたは悪化する。例えば、生理学的効果は、認知上の欠陥(例えば、学習および/もしくは記憶の欠陥)の改善、例えば脳のコリン作動性伝達の亢進を通じた改善;または血管新生および/もしくは血管発生の刺激もしくは血管新生の阻止であり得る。その効果は、その疾患もしくは症状を完全にもしくは部分的に防ぐという意味で予防的なものであり得るし、ならびに/または疾患および/もしくはその疾患に起因する悪影響を部分的もしくは完全に治癒するという意味で治療的であり得る。認知機能障害を改善する本発明の態様に関して、本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患の素因を有し得るがそれに罹患していると診断されていない対象において疾患もしくは状態が発症するのを予防するもしくはその発現を遅らせること(例えば、学習および/もしくは記憶上の故障を予防するもしくはその発現を遅らせること);(b)その疾患を阻止すること、例えばその進展を停止させること;または(c)その疾患を軽減すること(例えば、学習および/もしくは認知上の欠陥を改善すること)を包含する。血管新生を刺激する本発明の態様に関して、本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患の素因を有し得るがそれに罹患していると診断されていない対象において疾患もしくは状態が発症するのを予防するもしくはその発現を遅らせること(例えば、不十分な血管分布に起因する皮膚移植片もしくは再付着を施された四肢の損失を予防すること);(b)その疾患を阻止すること、例えばその進展を停止させること;または(c)その疾患を軽減すること(例えば、閉塞した血管を迂回する「バイオ・バイパス」の進展を促し器官への血流を改善することもしくは虚血性の四肢における創傷治癒を促すこと)を包含する。血管新生および/または血管発生の刺激は、血管分布を増やし血流を増やすことによる処置が可能な疾患または状態を有する対象に使用され得る。血管新生を阻止する本発明の態様に関して、本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患の素因を有し得るがそれに罹患していると診断されていない対象において疾患もしくは状態が発症するのを予防するもしくはその発現を遅らせること(例えば、増殖性網膜症を予防すること);(b)その疾患を阻止すること(例えば、腫瘍のさらなる成長を阻止すること);またはその疾患を軽減することを包含する。血管新生および/または血管発生の減少は、血管新生を減少させることによる処置が可能な疾患または状態を有する対象に使用され得る。
【0075】
「診断的」または「診断」は、病理学的状態の存在または性質を同定することを意味する。診断方法は、それらの感度および特異性において相違する。診断アッセイの「感度」は、陽性の評価を得た有疾患個体の割合(「真陽性」の割合)である。そのアッセイによって検出されない有疾患個体は、「偽陰性」である。疾患を患っておらずかつそのアッセイにおいて陰性の評価を得た対象は、「真陰性」と呼ばれる。診断アッセイの「特異性」は、1から偽陽性率を引いたものであり、ここで、「偽陽性」率は、陽性の評価を得た疾患を有さない個体の比率と定義される。個々の診断方法は、ある状態の決定的な診断を提供しないかもしれないが、その方法が診断を助ける肯定的な指標を提供するのであれば、それで足りるといえる。
【0076】
用語「対象」、「患者」または「個体」は、本明細書で交換可能に使用され、処置を受ける哺乳動物対象をさし、ヒト患者が好ましい。いくつかの例において、本発明の方法は、実験動物モデル、獣医用途、ならびに、マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯類;および霊長類を含むがこれらに限定されない疾患動物モデルの開発において利用できる。
【0077】
「サンプル」は、本明細書中では、その広義の意味で使用される。ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体等を含むサンプルは、体液;細胞調製物の可溶性画分または細胞を成長させた培地;細胞から単離または抽出された染色体、オルガネラまたは膜;溶液中のまたは基材に結合しているゲノムDNA、RNAもしくはcDNA、ポリペプチド、またはペプチド;細胞;組織;組織痕;指痕、皮膚または毛髪等を含み得る。
【0078】
「治療有効量」は、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体(例えばアルファ7 nAChR)または非ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/または機能異常により引き起こされるまたは悪化する疾患または状態を処置するために対象に投与された場合に、そのような処置を達成すのに十分な化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、ニコチン性受容体の欠陥および/または機能異常に関連する疾患または状態の重篤度ならびに処置を受ける患者の年齢、体重等により異なる。
【0079】
アルファ7 nAChRは、ニューロンに加えて、神経系内の非ニューロン細胞(例えば、星状細胞および小グリア細胞)ならびに神経系外の非ニューロン細胞;例えば、マクロファージ、気管支上皮、血管内皮においても見出されている。末梢マクロファージのアルファ7受容体は、適当なアゴニストにより刺激されると、腫瘍壊死因子アルファ(TNF)を含む炎症を引き起こすサイトカインの分泌を阻害する。同様に、血管内皮のアルファ7 nAChRの刺激は、新規の血管の形成を促進し(血管新生)、これは創傷治癒における重要なプロセスである。他方、主としてアルファ7 nAChRを発現する特定の小細胞肺癌の増殖は、ニコチン性アゴニストにより刺激され得、かつ、おそらく特定のニコチン性アンタゴニストにより阻害される。したがって、神経系の障害、例えばアルツハイマー病および統合失調症を処置する上での有用な治療標的とみなされているのに加えて、非ニューロン細胞のアルファ7 nAChRはまた、炎症、外傷、血管新生不全または過剰および増殖異常、例えば癌を含むその他の疾患状態を処置する上での治療標的であり得る(Cai, B. et al., October 17, 2008, J. Cell Mol. Med., Epub; Kox, M. et al., 2009, Biochem. Pharmacol., 78(7): 863-872; Rosas-Ballina, M. et al., 2009, Mol. Med., 15(7-8): 195-202; van Westerloo, D.J. et al., 2006, Gastroenterology, 130(6): 1822-1830; van Maanen, M.A. et al., 2009, Arthritis Rheum., 60(5): 1272-1281; De Rosa, M.J. et al., July 24, 2009, Life Sci., Epub; Paleari, L. et al., July 16, 2009, Drug Discov. Today, Epub)。
【0080】
用語「抗血管新生活性」は、本明細書で使用される場合、血管新生の阻害および/または抑制を意味する。
【0081】
用語「血管新生関連疾患」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、例えばヒトにおける、血管新生が異常に長期化する特定の病理学的プロセスをさす。例えば、血管新生関連疾患には、糖尿病性網膜症、慢性炎症疾患、関節リウマチ、皮膚炎、乾癬、胃潰瘍、腫瘍等が含まれる。
【0082】
用語「制御放出」は、有益な薬剤の放出を即時的に行わない製剤、剤形またはその領域をさす、すなわち、「制御放出」剤形を用いた投与によって吸収プールへの有益な薬剤の即時的放出が行われない。この用語は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed. (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995)に定義されている「非即時放出(nonimmediate release)」と交換可能に使用される。一般に、本明細書で使用される用語「制御放出」には、時限放出、持続放出および遅延放出処方が含まれる。
【0083】
用語「持続放出」(「延長放出」と同義語)は、その一般的な意味で使用され、延長された期間の間有益な薬剤の漸次的放出を提供する、そして好ましくは、必ずしもそうではないが、延長された期間の間薬剤の血中レベルを実質的に一定に保つ製剤、剤形またはその領域をさす。
【0084】
本明細書の文脈で、用語「制御放出」および「調節放出」は、本発明に従い調製された組成物からの、対象への投与後に特定の治療的または予防的反応を得るのに適した任意のタイプの薬物放出を包含する等価な用語であることが意図されている。当業者は、制御放出/調節放出が、プレーンな(即時放出)錠剤またはカプセル剤の放出とどのように相違するのかを知悉している。用語「制御様式での放出」または「調節様式での放出」は、上記と同じ意味を有する。これらの用語は、緩慢放出(Cmaxが低くtmaxが遅いがt1/2は変わらない)、延長放出(Cmaxが低くtmaxが遅いが見かけのt1/2が長い);遅延放出(Cmaxは変わらないが遅延時間が発生し、したがってtmaxが遅くなり、t1/2は変わらない)およびパルス放出、バースト放出、持続放出、長時間放出、最適時放出、(作用の強い発現を得るための)高速放出等を包含する。これらの用語には、体内の特定条件、例えば、異なる酵素またはpH変化を利用した薬物性物質の放出の制御も包含される。
【0085】
用語「天然に存在する」は、自然界において生じる化合物または組成物をさし、その化合物または組成物が天然源から単離されたものなのか化学的に合成されたものなのかは問わない。
【0086】
本明細書で使用される場合、「結合」は、受容体(例えば、nAChR、例えば、アルファ7)とリガンドを含む複合体の形成をさし、「結合親和性」は、化合物が受容体に結合する能力をさす。結合親和性は、例えば、Kiによって定量化され得る。
【0087】
化合物は、「選択的」結合を示し得、これは、一つまたはそれ以上の特定の受容体へのその化合物の結合親和性が、一つのその他の受容体、複数のその他の受容体またはその他すべての受容体へのその化合物の結合親和性よりも大きいことを意味する。したがって、選択的結合を示す化合物に関して、一つの受容体に対するその化合物の結合についての結合定数Kiは、一つまたはそれ以上のその他の受容体に対するその化合物の結合についての結合定数Kiよりも低い。例えば、受容体「B」よりも受容体「A」に対して選択的な化合物は、1/1未満の結合定数比Ki (A)/Ki (B)を有する。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「薬物」は、人間または他の動物における疾患の診断、治癒、緩和、処置または予防に使用することが意図されている化合物を意味する。例えば、薬物は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物、例えば、DMXBAであり得る。
【0089】
この文脈で、用語「剤形」は、薬物を対象に送達する形式を意味する。これは、非経口用剤、局所用剤、カプセル剤、錠剤、経口用剤(例えば、液剤または可溶化散剤)、坐剤、吸入用剤、経皮用剤等であり得る。
【0090】
この文脈で、用語「浸食」または「浸食性」は、材料または構造の表面、例えば錠剤もしくはカプセル剤の表面または錠剤もしくはカプセル剤のコーティングの表面の漸次的分解を意味する。
【0091】
本明細書の文脈で、用語「調節放出」または「制御放出」は、薬物組成物からの活性薬物性物質の特定の放出を意図的または能動的に達成する努力がなされたことを示す。本質的には、あらゆるタイプの変更された放出パターンがこれらの用語に包含される。これらの用語は、理論上、薬物のあらゆる治療的投与に適用することができるが、好ましい態様においては、固形剤形の経口投与に限定される。調節放出または制御放出という用語は、多くの下位概念用語、例えば、緩慢放出、延長放出、長時間放出、持続放出、遅延放出、パルス放出ならびに、口腔放出、胃腸放出、胃放出、腸放出、十二指腸放出、空腸放出、回腸放および結腸放出等の部位特異的放出を包含する。
【0092】
遅延放出およびパルス放出を含む部位特異的放出に関しては、通常、特定部位または既定時点での高速放出が望ましい。遅延因子は、特定時点に達するまで、pHが変化するまで、組成物が酵素に供されるまで、またはその他の何らかの部位特異的な外的因子が存在するに至るまで放出を引き留めるコーティングまたは感受性マトリクスであり得る。イオン交換システムも、このクラスのメンバーとみなされる。
【0093】
緩慢放出のグループにおいては、その制御因子は、最も多くの場合、半透性コーティングまたは何らかのゲル化障壁(例えば、ゲル形成性ポリマー)のいずれかである。これらのシステムは、例えば、単粒子状(マトリクス)または多粒子状(顆粒、ペレット、ビーズ等)であり得る。
【0094】
ここでは、特定の好ましい処置方法、化合物、これらの化合物の製造方法および投与方法に対して詳細な言及がなされている。本発明はこれらの好ましい化合物および方法に限定されるものではなく、それは本願に基づき発行される特許請求の範囲により定義されるものである。
【0095】
アナバセイン化合物
本発明は、アナバセイン化合物、例えば、3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン(DMXBA、DMXBおよびGTS-21としても公知)の制御放出製剤(剤形)ならびにニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/または機能異常により引き起こされるまたは悪化する様々な疾患または状態の処置または予防方法を提供する。これらの方法において、疾患または状態は、有効量の一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の制御放出製剤を対象に投与することによって処置または予防され、その投与により、アナバセイン化合物または化合物群は、対象におけるその化合物またはそれらの活性代謝産物の特定の血漿レベルおよび/または脳レベルをもたらす。対象においてアナバセイン化合物またはそれらの代謝産物の所望の血漿レベルおよび/または脳レベルを提供する方法も提供される。アナバセイン化合物は、アナバセインアゴニストまたはアナバセインアンタゴニストであり得る。
【0096】
欠陥性および/または機能異常性のニコチン性アセチルコリン受容体のタイプは、例えば、ニューロンニコチン性受容体もしくは非ニューロンニコチン性受容体であり得るし、またはその両方のタイプが欠陥性および/もしくは機能異常性の場合もある。いくつかの態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体は、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体(例えば、脳ニコチン性受容体、例えば、アルファ7含有受容体、アルファ4(2)ベータ2(3)またはアルファ4(3)ベータ2(2))であり、疾患または状態は、アルツハイマー病、統合失調症、パーキンソン病、注意欠陥多動性障害またはニューロンニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する別の疾患もしくは状態である。いくつかの態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体は、非ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体であり、疾患または状態は、炎症障害、外傷、血管新生不全、血管新生過剰、細胞増殖異常(例えば、癌)または非ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/もしくは機能異常により引き起こされるもしくは悪化する別の疾患もしくは状態である。
【0097】
脳におけるニコチン性コリン作動性受容体(nAChR)は、長い間、ニコチンの陶酔効果を媒介するのに重要であると認識されていたが、それらは、アルツハイマー病患者由来の死後脳サンプルにおいて有意なnAChRの欠陥が発見され、後にこれは主としてアルファ4ベータ2受容体サブタイプの欠陥であると同定されたことにより、さらなる注目を集めるにいたった(Nordberg A. and B. Winblad, 1986, Neurosci. Lett. 72: 115-121; Whitehouse, P.J. et al., 1986. Brain Res., 371: 146-151)。哺乳動物のnAChRは、五量体リガンドゲートイオンチャネルであり、活性化されると、カルシウムを含むカチオンの細胞膜を通る移動を許容する。nAChR(特に、アルファ7タイプ)により媒介される細胞へのカルシウム流入は、膜の脱分極をもたらすのに加えて、いくつかのシグナル伝達経路を刺激する(T. Kihara et al., 2001, J. Biol Chem., 276: 13541-13546; F.A. Dajas-Bailador et al., 2002, J. Neurochem., 80: 520-530)。現在、様々なnAChRサブタイプが哺乳動物の脳に存在することが公知となっている。2つの最も豊富な脳nAChRは、アルファ4ベータ2およびホモマー性のアルファ7サブタイプである。前者は、ラット脳におけるニコチンに対する高親和性結合部位の>90%に寄与している(G.M. Flores et al., 1992, Mol. Pharmacol., 41: 31-37)。低ニコチン親和性のアルファ7 nAChRは、そのアルファ-ブンガロトキシン(BTX)に対するナノモル親和性により認識されている(M.J. Marks and A.C. Collins, 1982, Mol. Pharmacol., 22: 554-564)。
【0098】
アナバセインは、ニコチンと同様、すべてのnAChRを刺激する動物毒素である(W.R. Kem et al., 1997, J. Pharmacol. Exp. Ther., 283: 979-992)。DMXBA、3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン二塩酸塩は、GTS-21としても公知の、アナバセインの合成ベンジリデン誘導体であり、アルファ7サブユニット含有nAChRを選択的に刺激する(C.M. de Fiebre et al., 1995, Mol. Pharmacol., 47: 164-171; E.M. Meyer et al., 1998, J. Pharmacol. Exp. Ther., 287: 918-925)。そのラットアルファ7受容体を活性化する効能(最大効果)は、完全アゴニストであるアセチルコリンおよびアナバセインにおいて観察される効能の59%である(Kem et al., 2004)。ヒトアルファ7受容体に対するDMXBAの効能は、アセチルコリンの最大反応の23%にすぎない(Meyer et al., 1998; Kem et al., 2004)。DMXBAは、神経保護性を示す(E.J. Martin et al., 1994, Drug Dev. Res., 31: 134-141; T. Kihara et al., 1997, Ann. Neurol., 42: 159-163; S. Shimohama et al., 1998, Brain Res., 779: 359-363)。
【0099】
アナバセインの非芳香族テトラヒドロピリジル環のイミン二重結合は、3-ピリジル環のπ電子と共役している。このイミン窒素は、ニコチンのピロリジニル窒素よりも弱い塩基である(Yamamoto, et al., 1962, Agr. Biol Chem., 26: 709)。多くの証拠(Barlow and Hamilton, 1962, Brit. J. Pharmacol., 18: 543)は、ニコチンの非芳香族環窒素は、骨格筋ニコチン性受容体と強く結合しそのチャネルの開口を活性化するためにプロトン化されなければならない(カチオン性でなければならい)ことを示している。生理学的pHにおいて、アナバセインはまた、加水分解されたアンモニウム-ケトン型ならびに環状イミン(非イオン化)型および環状イミニウム(モノカチオン)型で存在する。Kem(Animal Toxins, Tools in Cell Biology, eds., H. Rochat and M.-F. Martin-Eauclaire, Chapman and Hail, pp. 57-73の"Nemertine Toxins")は、アナバセインが、主としてその環状イミニウム型を通じて中枢ニコチン性受容体アゴニストとして作用することを見いだした。
【0100】
適当なアナバセイン化合物には、米国特許公報第2005/0288333号(Kem, "Controlling Angiogenesis with Anabaseine Analogs")に記載されかつ本明細書の図4A〜4Cおよび図5に示される式Iおよび/または式IIのアナバセインアゴニストおよびアナバセインアンタゴニストが含まれるがこれらに限定されない。したがって、いくつかの態様において、アナバセイン化合物は、本明細書の図4A〜4Cに示される、米国特許公報第2005/0288333号の式Iの化学構造を有するかまたはその薬学的に許容できる塩であり;式中、R1は水素アセトキシ、アセトアミド、アミノ、ジメチルカルバメート、ジメチルアミノプロポキシ、ヒドロキシル、メトキシ、メチル、プロピル、エチル、イソプロポキシ、トリフルオロメトキシもしくはチオメトキシまたはC1〜C4アルキルであり;R2は水素、メチル、プロピル、エチル、水素、(S,R)-メチル、S-もしくはR-メチル、(S,R)-プロピル、S-もしくはR-プロピル、(S,R)-エチル、S-もしくはR-エチル、または=CH-Xであり、ここで、Xは、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるナフチル、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるスチリル、フリル、フリルアクロリルまたは本明細書の図4Bの置換基であり、ここで、R3、R4およびR5は各々、水素、メチル、プロピル、エチル、メトキシ、シアノ-、フェノキシ、フェニル、ピリジルまたはベンジルC1〜C4アルキル、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるC1〜C6アルコキシ、アミノ、シアノ、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノ、ハロ、ヒドロキシルおよびニトロから選択されるか;またはR2は=CHCH=CHZであり、ここでZは、本明細書の図4Cに示される置換基であり、ここで、R6、R7およびR8は、水素、メチル、プロピル、エチル、メトキシ、シアノ-、フェノキシ、フェニル、ピリジルまたはベンジル、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるC1〜C4アルキル、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるC1〜C6アルコキシ、アルコキシに1〜4個の炭素を有するカルボアルコキシ、アミノ、アシルに1〜4個の炭素を有するアシルアミノ、シアノ、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノ、ハロ、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より選択されるか;または薬学的に許容できる塩、溶媒和物、包摂体、立体異性体、鏡像異性体、プロドラッグもしくはそれらの組み合わせであり、ここで、式Iおよび/または式IIの化合物は、アナバセインアゴニストまたはアナバセインアンタゴニストのいずれかとして機能する。哺乳動物において血管新生を誘導する方法に関する本発明の態様においては、アナバセインアゴニストとして機能する式Iおよび/またはIIの化合物が投与され得る。哺乳動物において血管新生を減少させる方法に関する本発明の態様においては、アナバセインアンタゴニストとして機能する式Iおよび/またはIIの化合物が投与され得る。
【0101】
好ましい態様において、テトラヒドロピリジル環の4位のR2、5位のR3および6位のR4は、いずれかが単一置換されたメチル、プロピル、エチル基である、例えば、R2がメチル基であるか、または各々がメチルで置換され、(S)-または(R)-(アルファまたはベータ)鏡像異性体型である。
【0102】
本発明の組成物および方法において使用され得るアナバセイン化合物の例には:
3-(4-メトキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(4-ニトロベンジリデン)-アナバセイン;
3-(4-シアノベンジリデン)-アナバセイン;
3-(4-ヒドロキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(4-クロロベンジリデン)-アナバセイン;
3-(4-アミノベンジリデン)-アナバセイン;
3-(4-ジメチルアミノプロポキシ-ベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2-メトキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(3-メトキシベンジリデン)-アナバセイン;
DMXBA、3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシベンジリデン)-アナバセイン;
6'-メチルアナバセイン;
2'-メチルアナバセイン;
4'-メチルアナバセイン;
3-(2,4,6-トリメトキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4-ジクロロベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4-ジメチルベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4,6-トリメチルベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2-フリルメチリデン)-アナバセイン;
3-(2-フリルプロペニリデン)-アナバセイン;
3-(3-フリルメチリデン)-アナバセイン;
3-(4-メチルベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4-ジヒドロキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4-ジプロポキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4-ジイソプロポキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2,4-ジイソペントキシベンジリデン)-アナバセイン;
3-(2-ヒドロキシ-4-イソペントキシベンジリデン)-アナバセイン;
6'-メチル-3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイン;
1-メチル-3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-アナバセイントリフルオロ酢酸塩;
5'-メチルアナバセイン;
3-(2-メトキシ-4-ヒドロキシベンジリデン)-アナバセイン;
2-フェニル-3-(2,4-ジメトキシベンジリデン)-4,5,6-トリヒドロピリジン;
およびDMACA、3-(4-ジメチルアミノシンナミリデン)-アナバセイン;
上記のいずれかの活性代謝産物、ならびに上記化合物または代謝産物の薬学的に許容できる塩、が含まれるがこれらに限定されない。
【0103】
したがって、いくつかの態様において、アナバセイン化合物は、本明細書の図5に示されている、米国特許公報第2005/0288333号の式IIの化学構造を有するかまたはその薬学的に許容できる塩であり;式中、R1は水素、メチル、プロピル、エチル、アセトキシ、アセトアミド、アミノ、ジメチルカルバメート、ジメチルアミノプロポキシ、ヒドロキシル、メトキシ、イソプロポキシ、トリフルオロメトキシもしくはチオメトキシまたはC1〜C4アルキルであり;R2は水素、メチル、プロピル、エチル、(S,R)-メチル、S-もしくはR-メチル、(S,R)-プロピル、S-もしくはR-プロピル、(S,R)-エチル、S-もしくはR-エチル、または=CH-Xであり、ここで、Xは、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるナフチル、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるスチリル、フリル、フリルアクロリルであり、またはR3、R4およびR5は各々、水素、メチル、プロピル、エチル、メトキシ、シアノ-、フェノキシ、フェニル、ピリジルまたはベンジルC1〜C4アルキル、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノにより場合により置換されるC1〜C6アルコキシ、アミノ、シアノ、各アルキルに1〜4個の炭素を有するN,N-ジアルキルアミノ、ハロ、ヒドロキシルおよびニトロから選択され;ここで、式Iの化合物は、アナバセインアゴニストまたはアナバセインアンタゴニストのいずれかとして機能する。
【0104】
好ましい態様において、テトラヒドロピリジル環の4位のR2、5位のR3および6位のR4は、いずれかが単一置換されたメチル、プロピル、エチル基である、例えば、R2がメチル基であるか、または各位置がメチルで置換され、(S)-または(R)-(アルファまたはベータ)鏡像異性体型である。
【0105】
アナバセイン化合物のテトラヒドロピリジル環部分における適当な置換基は、個別になされる場合であっても組み合わせてなされる場合であっても、望ましいアルファ7選択性に基づき選択され得る。例示の置換基は:テトラヒドロピリジル環の4位のR2、5位のR3および6位のR4が、いずれかが単一置換されたアルキル基(例えばメチル基)である、例えば、R2がアルキル基であるか、または各位置がアルキル基で置換され、(S)-または(R)-(アルファまたはベータ)鏡像異性体型である。
【0106】
特定の置換基はまた、アルファ7受容体の効能を決定し:いくつかの置換基は、DMXBAのようなベンジリデン-アナバセインよりも効能を高め、その他は効能を本質的にゼロまで低下させ、それによって、新しいアルファ7 nAChRアンタゴニストのグループを生成する。
【0107】
これらのアナバセイン構造に基づくアルファ7アゴニストおよびアンタゴニストの潜在的用途には、神経変性疾患およびニコチン性受容体関連依存症の治療的処置ならびに抗増殖薬としての開発可能性が含まれる。特に、アナバセイン化合物の極性およびイオン化を変化させることにより、中枢神経系へ相当な侵入をさせずに末梢(血液および間質液)区画へ薬物適用および局在化させることが可能であることが示されている。
【0108】
CNSへの適用に加えて、いくつかのアナバセイン化合物は、非ニューロン細胞、例えば、機能性のアルファ7 nAChRを発現することが公知の末梢細胞であるマクロファージ、血管内皮および肺上皮において発現される末梢アルファ7受容体を選択的に刺激する治療剤を提供することができる。マクロファージアルファ7受容体が刺激されると、それらの炎症性サイトカインの分泌、例えばTNFの分泌が阻害される。これらのサイトカインは、過剰産生された場合に炎症反応を悪化させ、その系から効果的に排除されないことが公知である。アルファ7ニコチン性受容体アゴニストは、創傷治癒および組織内灌流が不十分な他の状態において新血管新生を刺激するのに有用であり得ると考えられる。新しい組織は、効率的に機能するために豊富な血液供給を必要とし、十分な酸素供給を欠く組織は壊死し得る。新しい血管の構築は、損傷した心臓組織の回復において最重要となる。脳は、脳卒中、血管性認知症を含むいくつかのタイプの損傷の部位であり、高齢者の脳では微小血管の数が減少している。したがって、選択された例において、脳において新血管新生を刺激し血液の流れおよび分配を増やすために、本発明の薬剤を用いて基底層の脳微小血管を標的にすることが有益であり得る。
【0109】
血管新生の阻害は、特定の医学的状態において、例えば、腫瘍細胞増殖においておよび網膜(黄斑)変性のいくつかの形態において望ましい。新しい血管の成長は固形腫瘍の成長に必要となるため、アルファ7 nAChRアンタゴニストにより血管新生を阻害するが有用であり得る。極性であり、および/またはイオン化されており、および/または分子の薬物動態を有利にし投与区画への拡散を制限する別の不活性分子、例えば複合糖質またはポリエチレングリコールに結合されているアナバセインアルファ7 nAChRアンタゴニストが、特定の状態の処置における血管新生阻害剤として有用であり得る。このようなアナバセインタイプのアルファ7 nAChRアンタゴニストはまた、より高い作用選択性を達成するため、腫瘍に灌流する動脈血に直接的に投与され得る。
【0110】
アナバセイン化合物は、多くの用途において、特に、アルファ7ニコチン性受容体の活性を上方制御するのが有益な疾患の処置において有用であり得る。ニューロンアルファ7受容体の損失は、アルツハイマー病の進行に伴い起こり、統合失調症においてはこの受容体のサブタイプの発現が不足する。アルファ7アゴニスト、例えばDMXBAの継続的投与は、細胞表面における機能性のアルファ7受容体の発現亢進を誘導できることが示されている。したがって、アルファ7選択的薬物の継続的投与は、アルファ7の数および反応性の上方制御が起きる前よりもずっと高い効果をもたらし得る。アルファ7選択的リガンドと異なり、アルファ4ベータ2受容体リガンドは、一般に、細胞の全体的な反応性の下方制御を引き起こすと同時にアルファ4ベータ2受容体数を増加させ得る。したがって、アルファ4ベータ2アゴニストの継続的投与は、耐性を引き起こす可能性が高い。反応性の上方制御は、本発明の制御放出製剤において、単独でまたは組み合わせてのいずれかで、適当な薬学的に許容できる形態で使用されるアナバセイン化合物により示され得る。
【0111】
本発明の製剤および方法において使用されるアナバセイン化合物は、アルファ7ニコチン性受容体の選択的リガンド(アゴニストまたはアンタゴニスト)であり、その他のnACh受容体サブタイプ、特にアルファ4ベータ2受容体に対してはほとんどまたは全く活性を有さないものであり得る。例示的なアナバセイン化合物には、存在する3つの環系、すなわち、ピリジル、テトラヒドロピリジルおよび3-アリーリデンの一つまたはそれ以上に置換基を有する化合物が含まれる。これらの環のうちの一つに配置する特定の置換基の選択が、アルファ7受容体に対する結合の選択性を向上させ得ること、および、それに占有された受容体が活性化されるのかまたは阻害されるのかも決定し得ることが見いだされている。例えば、これらの特性を提供すると考えられる置換基には、アセトアミド、アセトキシ、アルコキシ、アルキル、アミノ、アリール、ベンゾフラン-2-イルメチレン、ベンジル、カルバメート、ジメチルアミノアルコキシ、修飾グルクロニジルおよび1H-インドール-2-イルメチレン基が含まれる。テトラヒドロピリジル環の4、5および6位のアルファまたはベータ配向部分の置換基は、対応するラセミ置換化合物と比較してアルファ7受容体の選択性の有意な改善を示すキラル産物を形成する。これらのアナバセイン化合物の一つまたはそれ以上の環部分における複数の置換基は、置換基が個々に導入された場合よりもずっと高い選択性を提供すると考えられる。
【0112】
好ましい態様において、テトラヒドロピリジル環の4位のR2、5位のR3および6位のR4は、いずれかが単一置換されたアルキル基(例えば、メチル基)である、例えば、R2がアルキル基であるか、または各々がアルキル基で置換され、単一置換体は(S)-または(R)-(アルファまたはベータ)鏡像異性体型である。
【0113】
別の好ましい態様において、テトラヒドロピリジル環の4位のR2、5位のR3および6位のR4は、メチル、プロピルおよびエチル基の一つまたはそれ以上で置換される。
【0114】
式Iの化合物は、1996年5月14日に発行された米国特許第5,616,785号;1998年4月21日に発行された米国特許第5,741,802号;1999年11月2日に発行された米国特許第5,977,144号;および2003年10月7日に発行された米国特許第6,630,491号に開示される方法に従う化学合成により調製され得る。簡潔に説明すると、R2が=CH-Xまたは=CHCH=CH-Z以外である式Iおよび/または式IIの化合物は、適当な保護された2-ピペリドンと適当なピリジルリチウムまたはフェニルリチウムを反応させることにより調製され得る。ピリジルリチウムは、対応するブロモピリジンから調製され得る(H. Gilman, et al., 1951, J. Org. Chem., 16: 1485)。典型的には、新しく調製したピリジルリチウムを、不活性溶媒、例えば乾燥エーテル中での縮合に使用する。この反応は通常、数時間内に完了する。次に、この反応混合物を酸性化し、その生成物を溶媒抽出により単離し、例えば再結晶化により精製する。
【0115】
R2が=CH-Xである式Iおよび/または式IIの化合物は、アナバセインから調製され得る。一般には、酸性エタノール中のアナバセイン(またはその二塩酸塩)の溶液を、約2モル等量のアルデヒド(X-CHO)で処理し、得られる混合物を約16時間、約70℃に加熱する。式Iおよび/または式IIの化合物は、標準的技術、例えば、クロマトグラフィーおよび再結晶化により単離および精製することができる。
【0116】
上記の酸性の反応条件は一般には十分なものであるが、ニトロのような電子吸引基を有するアルデヒドを反応させる場合はより塩基性の反応条件または緩衝(通常は酢酸・酢酸ナトリウムによる)条件が必要とされ得る。したがって、混合アルドールタイプの縮合には塩基性試薬も使用され得る。
【0117】
Xが置換または未置換フェニルである式Iおよび/または式IIの化合物は、3位の二重結合周りで2つの配座をとることができる。E異性体が好ましいが、Z異性体も生じ得る。EおよびZの両異性体とも、本発明の創作内容に含まれるとみなされる。
【0118】
R2が=CHCH=CH-Zである式Iおよび/または式IIの化合物は、参照により本明細書に組み入れられている、1999年11月2日に発行された米国特許第5,911,144号に開示されているようにして調製され得る。
【0119】
遊離塩基型の式Iおよび/または式IIの化合物は、酸付加塩を形成し得、これらの酸付加塩は治療用途に関して無毒性であり薬学的に許容できるものである。酸付加塩は、標準的方法により、例えば、適当な溶媒(例えば、水、酢酸エチル、アセトン、メタノール、エタノールまたはブタノール)中のアナバセインの溶液を、化学量論的に等量の適当な酸を含む溶液と接触させることにより調製され得る(モノカチオン塩またはジカチオン塩は、アナバセイン化合物の遊離塩基あたり1または2等量の酸を添加することにより調製され得る)。塩は、結晶化または沈殿する場合、ろ過により回収される。あるいは、それは、溶媒の蒸発によって、または水溶液の場合は、凍結乾燥によって回収することができる。特に有用なのは、硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パモ酸塩、過塩素酸塩、スルホサリチル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-トルエンスルホン酸塩および2-ナフタレンスルホン酸塩である。これらの酸付加塩は、本発明の範囲および創作範囲に含まれるとみなされる。
【0120】
本発明の制御放出製剤において使用され得るアナバセイン化合物には、アリーリデン-アナバセイン化合物、例えば、3-アリーリデン-アナバセイン化合物が含まれる。多数の3-アリーリデン-アナバセイン化合物が、神経変性疾患を処置する上での使用可能性のために、特に、いくつかの化合物がニコチン性アルファ7受容体に結合することを期待して、調製されている(それらの全体が参照により本明細書に組み入れられているWO 2004/019943およびWO 2006/133303)。これらのアナバセイン化合物の多くは、アナバセインの3位にメチレン基を通じて付加された縮合環へテロ芳香族部分を含み、アナバセイン分子のテトラヒドロピリジル環に置換基を有さない。
【0121】
制御放出製剤において使用され得る一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物は、例えば、シンナミリデン-アナバセインまたはベンジリデン-アナバセインであり得る。シンナミリデン-アナバセインおよびベンジリデン-アナバセインのようなアリーリデン-アナバセインの例には、米国特許第5,977,144号(Meyer et al., "Methods of Use and Compositions for Benzylidene- and Cinnamylidene-Anabaseines"、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている、本明細書の図6A〜6Bに示される式を有する化合物が含まれる。このような化合物の具体例は、米国特許第5,977,144号の表1〜3に列挙されている。制御放出製剤において使用され得るベンジリデン-アナバセインのさらなる例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられているLeFrancois, S.E., 2004, "A Structure Activity Investigation of Benzylidene Anabaseine Interactions with the Alpha7 Nicotinic Acetylcholine Receptor", A Dissertation, University of Floridaに開示される化合物である
【0122】
制御放出製剤において使用され得るその他のアナバセイン化合物には、米国特許第5,741,802号(Kem et al., "Anabaseine Derivatives Useful in the Treatment of Degenerative Diseases of the Central Nervous System"、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)において同定されたアナバセイン関連化合物が含まれる。
【0123】
制御放出(CR)システム
本明細書に記載されるアナバセイン化合物の製剤は、投薬頻度を減らすまたは与えられたアナバセイン化合物もしくはその他の活性成分の薬物動態もしくは毒性プロフィールを改善するよう一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の放出を制御および調整する制御放出を提供する(「制御放出製剤」)のに使用することができる。
【0124】
本明細書に記載される制御放出製剤は、一日一回、二回もしくは三回またはそれ以上の回数の投薬により適当な治療効果をもたらし得る。制御放出には、例えば移植可能なデバイスからの連続放出および/または持続放出も包含され得る。パルス放出が望ましい場合もある。投与は、1を超える投薬単位、例えば2〜4投薬単位の同時投与を含み得る。
【0125】
制御放出調製物は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の作用の継続期間を制御するのに使用される。制御放出調製物は、制御放出剤、例えば、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物と複合体化するまたはこれを吸着するポリマーの使用により達成され得る。制御送達は、放出を制御するよう、適当な高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび硫酸プロタミン)およびその高分子濃度ならびにその組み込み方法を選択することによって実施され得る。制御放出調製物により作用継続期間を制御する別の実現可能な方法は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物を、ポリマー材料の粒子、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレン酢酸ビニルコポリマーの粒子に組み込むことである。あるいは、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物をこれらのポリマー粒子に組み込むのに代えて、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物を、例えば液滴形成技術によってもしくは界面重合によって調製されたマイクロカプセルに、例えばヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルのそれぞれに、またはコロイド薬物送達システムに、例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセルに、またはマクロエマルションに、捕捉することが可能である。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences (17th Ed., A. Oslo, ed., Mack, Easton, Pa., 1985)に開示されている。
【0126】
いくつかの態様において、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物は、体内からの迅速な排除から一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物を保護する担体、例えば、制御放出マトリクス、インプラントおよび/またはマイクロカプセル化送達システムを用いて調製される。エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリ無水物、ポリグルコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸等の生分解性・生物適合性のポリマーを使用することができる。
【0127】
薬物のCR製剤は:直接圧縮(流動性の賦形剤を用いる薬物の乾式ブレンド後の圧縮)、湿式造粒(粉末ブレンドへの結合剤溶液の適用後の乾燥、サイジング、ブレンドおよび圧縮)、乾式造粒または圧密(スラッギングを通じたまたは圧密機を用いた薬物または薬物/粉末ブレンドの高密度化による流動性の圧縮可能な顆粒の獲得)、油脂ワックス熱溶融造粒(fat-wax mot melt granulation)(溶融させた脂肪アルコールへの薬物の浸漬後の冷却、サイジング、ブレンドおよび圧縮)および粒子のフィルムコーティング(乾式ブレンド、湿式造粒、混練、押出し、球形化、乾燥、フィルムコーティングの後の異なるフィルムコート球状種のブレンドおよび圧縮)を含むがこれらに限定されない方法により処理され得る。
【0128】
薬物の制御放出を達成できるセルロース誘導体には、エステル:酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースおよび酢酸酪酸セルロース(cellulose acetate burtyrates)が含まれ、これらはすべて容易に入手可能である。経口投薬用薬物の溶解を遅らせるのに広く利用されているポリマーはエチルセルロースであり、これはヒドロキシル部位の一部がエトキシル基で置換されたセルロース誘導体である。エチルセルロースは様々な等級で入手可能であり、それらの特性はエトキシル置換度および分子量に依存する。例えば、市販されている等級では、無水グルコース単位あたり2.25〜2.60エトキシル単位の置換度(44%〜50%のエトキシル含有量)を有するものが入手可能である。
【0129】
非経口用途に関しては、生物適合性および生体内浸食分解性のポリマーを使用するのが望ましい。非経口用剤形では、ポリ乳酸およびポリグリコール酸とのコポリマーが使用され得、これらは体内でヒドロキシカルボン酸に加水分解され、最終的には二酸化炭素および水に代謝される。
【0130】
好ましい態様において、制御放出マトリクスは、セルロースポリマー、例えばセルロースエーテルを含む。セルロースエーテルの例には、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHECまたはHEMC)、メチルヒドロキシプロピルセルロース(MHPCまたはHPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチル-HEC、メチル-エチル-HEC(MEHEC)、ブチルグリシジルエーテル-HEC、ラウリルグリシジルエーテル-HEC、カルボキシメチル化MHECまたはMHPC、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)が含まれる。2つ以上の炭素原子を含むアルキル側鎖を有するHECの誘導体は、疎水性修飾HEC(hmHECまたはHMHEC)と称される。
【0131】
特に適したポリマーのグループは、Methocelという商標の下で販売されているポリマーである。さらに、使用されるMethocelは、所望の放出特性に依存して、Methocel K4M、K15M、K100M、またはE、J、F等級であり得る。
【0132】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、The Dow Chemical Co., USA製のMETHOCEL、E、F、JおよびK、British Celanese Ltd. England製のHPMならびにShin Etsu, Ltd, Japan製のMetaluse SHを含むいくつかの商標の下で、様々な等級のものが市販されている。与えられた商標の下で入手可能な様々な等級は、メトキシルおよびヒドロキシプロポキシル含有量ならびに分子量の違いを表している。メトキシル含有量は、ASTM D-2363-72に記載の方法による測定によれば、16.5〜30重量%の範囲であり、ヒドロキシプロポキシル含有量は0〜32重量%の範囲である。これらの様々な形態のヒドロキシプロピルメチルセルロースはすべて、本発明において使用することが想定されている。例えば、本発明は、19〜24%のメトキシル含有量および7〜12%のヒドロキシプロポキシル含有量を有する様々な形態のMethocel K、28〜30のメトキシル含有量および7〜12%のヒドロキシプロピル含有量を有する様々な形態のMethocel E、27〜30%のメトキシル含有量および4〜7.5%のヒドロキシプロポキシル含有量を有する様々な形態のMethocel F、27.5〜31.5%のメトキシル含有量および約0%のヒドロキシプロポキシル含有量を有する様々な形態のMethocel Aの使用を想定している。
【0133】
様々なヒドロキシプロピルメチルセルロースの商品表示は、20℃での2%水溶液の粘度に基づいている。粘度は15cps〜30,000cpsの範囲であり、これは、"Handbook of Methocel Cellulose Ether Products"(The Dow Chemical Co., 1974)のデータから計算すると、約10,000〜150,000超の範囲の数平均分子量に相当する。
【0134】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例には、9〜12重量%のヒドロキシプロポキシル含有量および50,000未満の数平均分子量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースであるMetalose 60 5H50;28〜30重量%のメトキシル含有量、4000cpsの粘度、7〜12のヒドロキシ-プロポキシル重量%および93,000の数平均分子量を有するMethocel E4M;10,000cpsの粘度、28〜30重量%のメトキシル含有量、7〜12重量%のヒドロキシプロポキシルを有するMethocel E10M、89,000の数平均分子量、4,000の粘度、19〜24重量%のメトキシル含有量および7〜12重量%のヒドロキシプロポキシル含有量を有するMethocel K4M;124,000の数平均分子量、19〜24重量%のメトキシル含有量および7〜12重量%のヒドロキシプロポキシル含有量を有するMethocel K15M;ならびに100,000cpsの粘度および19〜24重量%のメトキシル含有量を有しかつ7〜12重量%のヒドロキシプロポキシル含有量であるK100M、それぞれ、5,000、12,000、20,000および75,000cpsの粘度を有するMethocel J5M、J12M、J20MおよびJ75M等が含まれる。本発明の製剤においても使用することができる様々なヒドロキシプロピルメチルセルロース材料は、Schorrに対する米国特許第3,870,790号、Schorrに対する米国特許第4,226,849号、Schorrに対する米国特許第4,357,469号、Schorr et al.に対する米国特許第4,369,172号、Schorr et al.に対する米国特許第4,389,393号、Loweyに対する米国特許第4,259,314号、Davis et al.に対する米国特許第4,540,566号、Hsiauに対する米国特許第4,556,678号に記載されており、これらすべての内容は、参照により本明細書に組み入れられている。本発明の製剤は、一つのセルロースエーテルまたはセルロースエーテルの組み合わせを含み得る。
【0135】
インビボでカプセル剤または錠剤形態の活性成分(アナバセイン化合物)の放出を遅延させることが望まれる場合、水溶性および水不溶性ポリマーの組み合わせまたはそのようなポリマーの混合物が使用され得、水不溶性ポリマーに対する水溶性ポリマーの比率は所望の放出速度を付与するよう変更される。
【0136】
製剤に広く使用されている賦形剤は次の通りである:希釈剤としての微結晶セルロース(MCC;Avicelから販売)、ラクトース、マンニトールおよびDi-Pac(圧縮用砂糖);凝集防止剤としてのケイ酸アルミニウムマグネシウム、キサンタンゴム、ポリビニルピロリドンおよびセルロース化合物;結合剤としてのデンプンヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC E-10)およびキサンタンゴム;スクロース、サッカリンナトリウム、スクラロースおよびMagnasweet等の甘味剤;硬度増強剤としてのリン酸カルシウム;流動化剤としてのタルクならびに滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム。タンニン酸塩複合体として存在しない活性成分もまた、製剤に含まれ得る。
【0137】
MCCは、直接圧縮に特に有用である。MCCは、平均粒子サイズ、粒子サイズ分布、密度および含水量(moisture)等のパラメータの異なる様々な等級で入手可能である。MCC製品に一定の流動特性および圧縮性を提供する他の賦形剤で共処理されたMCCで構成される材料を利用することによって、錠剤の強度および薬物の溶解に潜在的に影響する製造上の制約を変化させ得る。
【0138】
CR錠剤は、親水性マトリクスシステム、疎水性(プラスチックマトリクスシステム)、親水性/疎水性マトリクスシステム、油脂/ワックスシステムおよびフィルムコート粒子システムを含むがこれらに限定されないマトリクスシステムにアナバセイン化合物を組み込むことによって製造され得る。
【0139】
親水性マトリクスシステムは、水性環境下に置かれた後、親水性・ゲル形成性賦形剤を用いて調製された錠剤からの均一かつ一定の薬物拡散を示す。薬物の放出は、形成されたゲル拡散障壁によって制御される。このプロセスは通常、ゲルの水和、薬物の拡散およびゲルの浸食の組み合わせである。
【0140】
疎水性(プラスチック)マトリクスは、薬物を埋め込む多孔性の骨格構造を形成する不活性、不溶性のポリマーおよびコポリマーを利用する。薬物の制御放出は、毛細管状、湿性のチャネルおよびマトリクスの孔を通じた薬物の拡散によりならびにマトリクス自体の浸食により影響される。
【0141】
親水性/疎水性マトリクスシステムは、薬物を埋め込む可溶性/不溶性マトリクスを形成する親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーの組み合わせを利用する。薬物の放出は、孔およびゲル内拡散ならびに錠剤マトリクスの浸食による。親水性ポリマーは、ゲル内拡散の速度を遅らせることが期待される。
【0142】
油脂-ワックスマトリクスシステムにおいて、薬物は、油脂-ワックスマトリクスのホットメルトに加えられ、固化されサイズ調整され、そして適当な錠剤成分と共に圧縮される。薬物の制御放出は、孔内での拡散および油脂-ワックスマトリクスの浸食により影響される。ウィッキング剤としての界面活性剤の添加は、マトリクスへの水分浸透による浸食を助ける。
【0143】
フィルムコート粒子システムは、押出し-球状化処理によりまたは従来的な造粒処理により調製された、特定の薬物放出特性を有する異なる制御放出粒子種を形成するようフィルムコートされた時限放出顆粒を含む。
【0144】
制御放出粒子は、所望の制御放出プロフィールを有する錠剤が製造されるよう、適当な錠剤化用賦形剤と共に圧縮され得る。この文脈で、薬物の放出は、酸(胃)またはアルカリ(腸)のいずれかのpH下での粒子の浸食による。
【0145】
本発明の一つの局面において、組成物は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出のための経口投与に適したものであり、当該組成物は:a)約0.1重量%〜約80重量%のアナバセイン化合物;および約99.9重量%〜約20重量%の延長放出剤を含む。この組成物は、約2時間〜48時間の期間の一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出を提供し得る。いくつかの態様において、少なくとも4〜8時間の期間の一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出が達成される。いくつかの態様において、少なくとも6〜8時間の期間の一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物の延長放出が達成される。好ましくは、一定期間(例えば、2時間〜48時間、4時間〜8時間、6時間〜8時間等)の間に延長様式で放出されるアナバセイン化合物濃度の量は、臨床的に有効な(治療的に有効なおよび/または予防的に有効な)量である。いくつかの態様において、延長放出剤は、親水性ポリマー、例えばセルロースエーテルを含む。この組成物はさらに、以下の追加の成分の一つまたはそれ以上を含み得る:滑沢剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤群、補助賦形剤、例えば流動化剤、および溶解剤。上記の範囲は、その範囲に含まれる全単位および部分範囲を包含することを理解されたい。
【0146】
治療方法および予防方法
一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物を含む制御放出製剤は、腸に、非経口的にまたは漸次的灌流により投与することができる。製剤は、静脈内(IV)に、腹腔内に、筋内に、皮下に、腔内に、経皮的にまたは経口的に投与することができる。好ましい態様において、制御放出製剤は、経口的に、鼻腔内に、舌下にまたは吸入により投与される。特に好ましい態様において、制御放出製剤は経口投与用製剤である。
【0147】
非経口投与用の調製物には、滅菌水性または非水性溶液、懸濁物およびエマルションが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁物が含まれ、これらには生理食塩水および緩衝媒体が含まれる。非経口用のビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲルまたは固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、体液および栄養分補液、電解質補液(例えば、リンゲルデキストロースに基づく補液)等が含まれる。保存剤およびその他の添加剤、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガス等も存在し得る。効果的な投与に適した薬学的に許容できる組成物を構成するために、そのような組成物は、有効量のニコチン性受容体薬剤を、適当量の担体ビヒクルと共に含む。
【0148】
一つの局面において、本発明は、約4時間〜約8時間の継続期間の間、対象において血清または血漿アナバセイン化合物濃度を維持する方法であって、本明細書に記載される有効量の制御放出組成物を投与する工程を包含する方法を包含する。いくつかの態様において、約6時間〜約8時間の継続期間の間の対象における血清または血漿アナバセイン化合物濃度が達成される。好ましくは、対象において維持される血清または血漿アナバセイン化合物濃度は、臨床的に有効(治療的に有効および/または予防的に有効)な量である。
【0149】
本発明の別の局面において、約4時間〜約8時間の継続期間の間、対象の脳においてアナバセイン化合物濃度を維持する方法であって、本明細書に記載される有効量の制御放出組成物を投与する工程を包含する方法が提供される。いくつかの態様において、約6時間〜約8時間の継続期間の間、アナバセイン化合物濃度が脳において達成される。好ましくは、脳において維持されるアナバセイン化合物濃度は、臨床的に有効(治療的に有効および/または予防的に有効)な量である。
【0150】
別の局面において、本発明は、約4時間〜約8時間の継続期間の間、対象においてアナバセイン化合物またはその活性代謝産物の血清濃度を維持するための医薬の調製のための、本明細書に記載の制御放出製剤の使用を包含する。本発明の別の局面において、約4時間〜約8時間の継続期間の間、対象の脳においてアナバセイン化合物またはその活性代謝産物の濃度を維持するための医薬の調製のための、本明細書に記載の制御放出製剤の使用が提供される。本発明の別の局面において、nAChRの欠陥および/または機能異常により引き起こされるまたは悪化する疾患または状態の処置のための医薬の調製のための、本明細書に記載の制御放出組成物の使用が提供される。
【0151】
剤形および投薬量および投薬頻度
一般に、組成物中に存在するアナバセイン化合物または化合物群の量は、とりわけ、個別のアナバセイン化合物および製剤、対象の年齢および状態、ならびに処置および/または予防する疾患または状態、投与経路、ならびに投薬頻度に依存する。
【0152】
投薬頻度もまた、処置および/または予防する疾患または状態、アナバセイン化合物の量または濃度、使用する個別の組成物、投与経路に依存し、年齢、体重、性別、遺伝的背景および全体的な健康状態を含むがこれらに限定されない対象特異的な変動要因が考慮され得る。例えば、経鼻用製剤は、例えば比較的早期の治療効果の発現を達成するために一日一回投与される場合があるし、それよりも頻繁に投与される場合もある。同じ投薬頻度選択基準が、プレーンな錠剤組成物、口腔用組成物、直腸用組成物、経口用組成物、局所用組成物、眼用組成物またはその他の組成物を含むがこれらに限定されない他の剤形にも適用される。
【0153】
典型的には、本明細書に記載されるアナバセイン化合物は、ヒトにおける使用のために処方される。アナバセイン化合物はまた、獣医用製剤、例えば獣医用途に適した、例えば家畜または個人所有動物、例えばイヌ、ネコ、競走馬等の処置に適した薬学的調製物を含み得る。アナバセイン化合物は殺虫性であり得ることも報告されている(Sultana et al., 2002, Insect, Biochem. Mol. Biol., 32: 637-643)。したがって、殺虫性のアナバセイン化合物は、昆虫の神経系への浸透性および作用の継続期間を増強するよう処方され得る。
【0154】
本明細書に記載される制御放出製剤中のアナバセイン化合物または化合物群の実際の投薬レベルは、個々の対象に対して所望の治療効果を達成するのに効果的であり、その対象に対して毒性ではないアナバセイン化合物量が得られるよう変更され得る。
【0155】
選択される投薬レベルは、アナバセイン化合物(またはそのエステル、塩、アミドもしくは製剤)の活性;投与経路;投与時間;使用される個々のアナバセイン化合物の排出速度;処置の継続期間;アナバセイン化合物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料;処置される対象の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康状態および過去の病歴;ならびに医療分野で周知の同様の因子を含むがこれらに限定されない様々な因子に依存する。
【0156】
当技術分野の通常の技能を有する医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し処方することができる。例えば、医師または獣医は、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルのアナバセイン化合物の用量から開始し、所望の治療効果が達成されるまで投薬を漸次的に増やしていくことができる。
【0157】
一般に、アナバセイン化合物または化合物群の適当な用量は、治療効果を生ずるのに有効な最小用量である。このような有効用量は、一般に、上記の因子に依存する。好ましい製剤には、経口および静脈内型(IV)、経鼻型、舌下および指定用量吸入型が含まれる。一般に、対象のための静脈内および経口型のアナバセイン化合物は、約0.1〜約50mg/kg体重/日の範囲である。
【0158】
鼻腔内用製剤およびパッチ製剤が使用され得る。一般に、対象のためのアナバセイン化合物の鼻腔内用製剤およびパッチ製剤は、約0.01〜約10mg/kg体重/日の範囲である。
【0159】
アナバセイン化合物の有効用量は、一日を通じて適当な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6またはそれ以上の分割用量として、場合により、単位剤形で、投与され得る。
【0160】
この処置を受ける対象は、霊長類、特にヒト、およびその他の哺乳動物、例えばウマ、ウシ、ブタおよびヒツジ;ならびに家禽およびペット、例えば一般には特にイヌおよびネコ、を含む、その必要のある任意の動物である。
【0161】
アナバセイン化合物は、経口、非経口、頭蓋内、眼窩内、嚢内、髄腔内、脳槽内、肺内、静脈内、筋内、動脈内、髄内、鞘内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、口腔、歯肉、口蓋または直腸手段による投与を含むがこれらに限定されない、この化合物の治療有効量を送達することができる任意の経路により対象に投与され得る。
【0162】
典型的には、アナバセイン化合物は、各々の投与経路に適した形態で与えられる。例えば、アナバセイン化合物は、注射、注入もしくは吸入により非経口的に投与され得;ローション剤もしくは軟膏剤により局所的に投与され得;または坐剤により直腸的に投与され得る。本明細書に記載される典型的な投与形態は、限定的または排他的なものであることが意図されておらず、それらは単なる例示である。
【0163】
本明細書で使用される句「非経口投与」および「非経口的に投与」は、通常注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内および胸骨内注射および注入が含まれるがこれらに限定されない。
【0164】
本明細書で使用される句「全身投与」または「全身的に投与」は、直接的または非経口経路により対象の体系内に進入し、代謝およびその他の同様のプロセスに供されるよう、化合物、薬物またはその他の材料、例えばアナバセイン化合物を投与することを意味する(例えば皮下投与によるもの)。本明細書で使用される句「末梢投与」および「末梢的に投与」は、間接的または限局的経路により対象に体系内に進入し、代謝およびその他の同様のプロセスに供されるよう、化合物、薬物またはその他の材料、例えばアナバセイン化合物を投与することを意味する(例えば局所投与によるもの)。
【0165】
投与経路にかかわらず、本明細書に記載されるアナバセイン化合物は、上記のような薬学的に許容できる剤形またはその他の当業者に公知の剤形に処方することができる。
【0166】
本明細書で使用される句「薬学的に許容できる」は、妥当な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適しており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応またはその他の問題もしくは合併症を生じず、合理的な利益/危険比が保たれている、化合物、材料、組成物および/または剤形と表現することができる。
【0167】
アナバセイン化合物は、単独でまたは薬学的に許容できるおよび/もしくは滅菌性の担体と共に投与することができ、かつ、その他の薬物(例えば、その他の心血管剤、抗菌剤、抗精神病剤等)と組み合わせて投与することもできる。複数経路の同時または連続投与(例えば、経口および経皮)もまた想定されている。
【0168】
アナバセイン化合物の制御放出製剤は、所望の送達経路に適した任意の様式で処方することができる。典型的には、製剤には、すべての生理学的に許容できる組成物が含まれる。このような製剤は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物および制御放出剤と共に、任意の生理学的に許容できる担体または担体群を含む。製剤はまた、アナバセイン化合物の効果および/またはアナバセイン化合物の生理学的環境(milieu)を強化、変更または調節し得る。
【0169】
アナバセイン化合物は、ヒト用または獣医用の医薬に使用される任意の投与方法用に処方され得る。アナバセイン化合物はそれ自体が活性である場合もあるし、プロドラッグである、例えば生理学的状況で活性化合物に変換され得るプロドラッグである場合もある。
【0170】
本明細書に記載されるアナバセイン化合物は、水、緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)またはそれらの適当な混合物を含むがこれらに限定されない任意の生物学的に許容できる媒体と共に投与されるよう処方され得る。選択された媒体におけるアナバセイン化合物の最適濃度は、当技術分野で周知の手順に従い経験的に決定することができる。本明細書で使用される場合、「生物学的に許容できる媒体」には、薬学的調製物の所望の投与経路に適当であり得る任意かつすべての溶媒、分散媒等が含まれる。生物学的に許容できる媒体を薬学的に活性な物質のために使用することは、当技術分野で公知である。適当な生物学的に許容できる媒体およびそれらの製剤は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sicences (Remington's Pharmaceutical Sciences. Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA 1985)の最新版に記載されている。
【0171】
制御放出製剤は、アナバセイン化合物を薬学的に使用できる調製物に加工するのを容易にする、賦形剤および/または助剤を含む適当な生理学的に許容できる担体を含み得る。アナバセイン化合物の制御放出製剤はまた、薬物の生物利用性を高めるまたはそれ以外の影響を与える追加の薬剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「生物利用性」は、対象に投与された後のアナバセインの効果、利用性および持続性を意味する。
【0172】
薬学的に許容できる担体は、関心対象のアゴニストを器官または体内のある部分に運搬または輸送するのに関与する、液状または固形の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を含むがこれらに限定されない任意の薬学的に許容できる材料、組成物またはビヒクルであり得る。各々の担体は、製剤の他の成分と適合性を有さなければならず、対象に対して有害なものであってはならない。薬学的に許容できる担体として利用できる材料のいくつかの例には、砂糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター、ワックス、動物性および植物性油脂、パラフィン、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、酸化亜鉛;油、例えばピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質非含有水;等張生理食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに薬学的製剤において利用される任意のその他の適合性の物質が含まれるがこれらに限定されない。
【0173】
アナバセイン化合物は、薬学的に許容できる塩、例えば、本明細書に記載されるアナバセイン化合物の無機および有機酸または塩基付加塩を形成することができるものであり得(例えば、Berge et al., 1977, "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., 66: 1-19を参照のこと)、これらは本発明の剤形および方法において使用され得る。特に、アナバセイン化合物のHCl塩が使用され得る。他の塩形態には、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、重硫酸塩、酸性クエン酸塩、重酒石酸塩、エタンスルホン酸塩、硫酸塩(sulphate)、リン酸塩または酸性リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エシル酸塩、コハク酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、硫酸塩(sulfate)等が含まれる。
【0174】
アナバセイン化合物の製剤はまた、湿潤剤;乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤、香味剤および/または芳香剤;保存剤;ならびに抗酸化剤を含み得る。
【0175】
薬学的に許容できる抗酸化剤の例には、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等;および金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等が含まれるがこれらに限定されない。
【0176】
アナバセイン化合物の制御放出製剤はまた、アナバセイン化合物の吸収または安定化を補助する緩衝剤および/または塩を含み得る。薬学的組成物の生物学的活性を補助する他の添加剤、例えばキレート剤、酵素阻害剤等もまた、製剤に含まれ得る。アナバセイン化合物の製剤はまた、乳白剤を含み得る。
【0177】
アナバセイン化合物の制御放出製剤は、単位剤形として提供され得、当技術分野で公知の任意の方法によって調製され得る。単回剤形を製造するために担体材料と組み合わせられ得るアナバセイン化合物の量は変化し得る。例えば、所定の製剤におけるアナバセイン化合物の量は、処置される対象および/または個別の投与様式に依存し得る。単回剤形を製造するために担体と組み合わせられ得るアナバセイン化合物の量は、一般には、治療効果を生じるアナバセイン化合物の量である。
【0178】
これらの製剤を調製する方法は、アナバセイン化合物を担体および/または一つもしくはそれ以上の副成分と組み合わせる工程を包含する。いくつかの製剤は、アナバセイン化合物を、液状担体、微粉化固形担体またはその両方と組み合わせ、次いで生成物を成型することによって調製され得る。
【0179】
経口投与に適したアナバセイン化合物の製剤は、固形の形態(カプセル剤、カシェー剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、散剤、ドラジェ剤、顆粒剤)で;または水性もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤として;または水中油型もしくは油中水型の液状エマルションとして;またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として;または(不活性基材、例えばゼラチンおよびグリセリンもしくはスクロースおよびアカシアを用いる)パステル剤として;ならびに/または口内リンス剤もしくは洗浄剤等として;またはボーラス剤、舐剤もしくはペースト剤として提供され得る。
【0180】
アナバセイン化合物の固形制御放出製剤は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム;デンプン;ラクトース;スクロース;グルコース;マンニトール;および/またはケイ酸を含むがこれらに限定されない薬学的に許容できる担体およびエクステンダーを有し得る。アナバセイン化合物の固形製剤は、結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシア;保湿剤、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天・寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収加速剤、例えば第四級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物;ならびに着色剤を含むがこれらに限定されない追加の成分を含み得る。製剤はまた、特にアナバセイン化合物がカプセル剤、錠剤または丸剤の形態の場合に、緩衝剤を含み得る。
【0181】
固形製剤はまた、ラクトースまたは乳糖等の賦形剤および高分子量ポリエチレングリコール等を使用するソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル用の増量剤を含み得る。
【0182】
固形製剤、例えば丸剤および錠剤は、場合により一つまたはそれ以上の副成分と共に圧縮または成型により形成され得る。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性または分散剤を用いて調製され得る。湿製錠は、適当な機械において不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状アナバセイン化合物の混合物を成型することによって作製され得る。
【0183】
本明細書に記載されるアナバセイン化合物の固形製剤、例えばドラジェ剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤は、場合により、割線を刻まれるかまたはコーティングおよびシェル、例えば腸溶コーティングおよびその他のコーティングを用いて調製され得る。固形剤形は、本明細書に記載されるような、アナバセイン化合物の緩慢または制御放出を提供するように処方され得る。そのため、固形製剤は、様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはその他のポリマーマトリクス、リポソームおよび/またはマイクロスフィアを含むがこれらに限定されない、アナバセイン化合物の所望の放出プロフィールを提供することができる任意に材料を含み得る。
【0184】
アナバセイン化合物の製剤はまた、例えば包埋剤に含めることにより、胃腸管の特定部位においてのみ、またはその部位で優先的に、アナバセイン化合物を放出するよう処方され得る。使用できる包埋剤の例には、ポリマー物質およびワックスが含まれるがこれらに限定されない。アナバセイン化合物はまた、適当な場合、一つまたはそれ以上の上記の賦形剤と共に、マイクロカプセル化形態にされ得る。
【0185】
アナバセイン化合物のコート製剤またはカプセル化製剤もまた、パルス、持続または延長放出を届けるよう処方され得る。例えば、パルス放出の一つの方法は、アナバセイン化合物の複数のコーティングを積層することによって、またはアナバセイン化合物を異なる放出時間を有する異なる製剤領域に組み込むことによって達成され得る。
【0186】
アナバセイン化合物の経口投与用の液体投薬製剤には、薬学的に許容できるエマルション剤、マイクロエマルション剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。液体投薬製剤は、アナバセイン化合物に加えて、水またはその他の溶媒;溶解剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール;油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油);グリセロール;テトラヒドロフリルアルコール;ポリエチレングリコール;ならびにソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含むがこれらに限定されない当技術分野で広く使用されている不活性希釈剤を含み得る。
【0187】
アナバセイン化合物はまた、懸濁剤として処方され得る。アナバセイン化合物の懸濁剤は、懸濁化剤を含み得る。懸濁化剤の例には、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル;微結晶セルロース;メタ水酸化アルミニウム;ベントナイト;寒天・寒天;トラガカント;ならびにそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0188】
アナバセイン化合物の直腸または膣投与用の製剤は、坐剤として提供され得る。坐剤製剤は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物と一つまたはそれ以上の適当な非刺激性賦形剤または担体を混合することによって調製され得る。適当な担体には、室温で固体であるが体温で液体となる、したがって直腸または膣腔で溶けてアナバセイン化合物を放出する任意の化合物が含まれる。そのような担体の例には、ココアバター;ポリエチレングリコール;坐剤用ワックスまたはサリチル酸塩が含まれるがこれらに限定されない。
【0189】
アナバセイン化合物の膣投与に適した製剤には、当技術分野で公知の担体を含む、ペッサリー製剤、タンポン製剤、クリーム製剤、ゲル製剤、ペースト製剤、発泡製剤または噴霧製剤も含まれる。
【0190】
アナバセイン化合物の局所または経皮投与に適した製剤には、散剤、噴霧剤、軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、液剤、パッチ剤および吸入剤が含まれる。アナバセイン化合物は、滅菌条件下で薬学的に許容できる担体および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤もしくは推進剤と混合され得る。
【0191】
散剤および噴霧剤は、アナバセイン化合物に加えて、賦形剤、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末またはこれらの物質の混合物を含み得る。噴霧剤は、常用されている推進剤、例えばクロロフルオロ炭化水素および揮発性未置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含み得る。
【0192】
アナバセイン化合物はまた、経皮パッチ剤として処方され得る。経皮パッチ剤は、アナバセイン化合物の体内への制御送達を提供するという追加の利点を有する。このような製剤は、アナバセイン化合物を適当な媒体に溶解または分散させることによって作製され得る。吸収促進剤もまた、皮膚を通過する化合物の流動を増進させるために使用され得る。流動速度は制御され得る。流動速度を制御する手段の例には、速度制御メンブレンまたは化合物のポリマーマトリクスもしくはゲルへの分散が含まれるがこれらに限定されない。
【0193】
アナバセイン化合物の眼用製剤には、眼用軟膏剤、散剤、液剤等が含まれるがこれらに限定されない。
【0194】
アナバセイン化合物の非経口投与用の製剤は、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物と共に一つまたはそれ以上の薬学的に許容できる等張水溶液または非水溶液、分散物、懸濁物もしくはエマルション、または使用直前に注射可能な滅菌溶液または分散物に再構成され得る粉末を含み得る。非経口用製剤は、抗酸化剤;意図した対象の血液との等張性をその製剤に与える緩衝剤もしくは溶質;静菌剤;懸濁化剤;または増粘剤を含み得る。
【0195】
アナバセイン化合物の注射可能なデポー製剤は、生分解性ポリマー中にアナバセイン化合物を含むマイクロカプセル化マトリクスを形成することによって作製され得る。生分解性ポリマーの例には、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれるがこれらに限定されない。ポリマーに対するアナバセイン化合物の比率および使用される個別のポリマーの性質が、放出されるアナバセイン化合物の速度に影響し得る。注射可能なデポー製剤はまた、薬物をリポソームまたはマイクロエマルション中に捕捉することによっても調製され得る。
【0196】
アナバセイン化合物の液体、懸濁物およびその他の製剤の適当な流動性は、コーティング材料、例えばレシチンの使用により;分散物の場合は必要な粒子サイズの維持により;または界面活性剤の使用により、維持することができる。
【0197】
アナバセイン化合物の製剤はまた、微生物汚染の予防のための汚染防止剤を含み得る。汚染防止剤には、抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0198】
アナバセイン化合物の製剤はまた、例えば、細菌捕捉フィルターを通じたろ過により、または使用もしくは処方の直前に滅菌水もしくはいくつかのその他の滅菌媒体で溶解することができる滅菌固形製剤の形態で滅菌剤を導入することにより、滅菌され得る。
【0199】
アナバセイン化合物の製剤はまた、等張化剤、例えば砂糖、塩化ナトリウム等を含み得る。
【0200】
本発明の製剤はまた、任意成分を含む。例えば、常に必要というわけではないが、好ましい態様において、本発明の製剤は、製薬分野で経口用錠剤に典型的に使用されている滑沢剤を追加で含有する。本明細書で使用される場合、用語「滑沢剤」は、錠剤の圧縮および射出時に発生するダイ壁とパンチ面の間の摩擦を低減することのできる材料を意味する。滑沢剤は、錠剤材料がパンチ面およびダイ壁に付着するのを防止する。本明細書で使用される場合、用語「滑沢剤」には、抗接着剤が含まれる。滑沢剤の例には、ステアリン酸塩、例えば、そのアルカリ金属および遷移金属塩、例えばカルシウム、マグネシウムまたは亜鉛;ステアリン酸、ポリエチレンオキシド、タルク、硬化植物油および植物油誘導体、シリカ、シリコーン、高分子量ポリアルキレングリコール、例えば高分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコールのモノエステル、約8〜22個の炭素原子、好ましくは16〜20個の炭素原子を含む飽和脂肪酸が含まれる。好ましい滑沢剤はステアリン酸塩、ステアリン酸、タルク等である。
【0201】
形成およびまたは射出時の錠剤の付着を回避するために、本発明の製剤は、滑沢有効量の滑沢剤の利用を想定している。好ましくは、滑沢剤は、錠剤重量の約0.1%〜約5%、より好ましくは錠剤重量の約1%〜約4%の範囲の量で存在する。
【0202】
別の任意成分は不活性増量剤である。増量剤は、実質的に水溶性または水不溶性であり得る。増量剤は、必要とされる場合または望ましい場合に使用され得るが、これは本発明の製剤にとって必須ではない。本発明の製剤において使用される増量剤は、好ましくは、製薬分野で経口用錠剤に典型的に使用されている増量剤である。その例には、カルシウム塩、例えば硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム等、リン酸グリセロール;クエン酸塩;およびそれらの混合物等が含まれる。いくつかの態様において、本発明の制御放出製剤の不活性増量剤は、薬学的に許容できる糖類を含み、これには単糖類、二糖類もしくは多価アルコールおよび/または上記のいずれかの混合物が含まれる。その例には、スクロース、デキストロース、ラクトース、微結晶セルロース、フルクトース、キシリトール、ソルビトール、それらの混合物等が含まれる。増量剤は、存在する場合、約1重量%〜約90重量%の範囲の量で存在する。
【0203】
その他の製薬分野で典型的に使用されている任意成分、例えば、着色剤、保存剤(例えばメチルパラベン)、人口甘味剤、香味剤、抗酸化剤等もまた、存在し得る。人工甘味剤には、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、タウマチン等が含まれるがこれらに限定されない。香味剤には、レモン、ライム、オレンジおよびメントールが含まれるがこれらに限定されない。着色剤には、様々な食品用色素、例えばFD & C色素、例えばFD & C Yellow No.6、食品用レーキ等が含まれるがこれらに限定されない。抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム等が含まれる。これらの任意成分は、存在する場合、好ましくは錠剤重量の約0.1%〜約5%の範囲の量で、最も好ましくは錠剤の約3%(w/w)未満の量で存在する。
【0204】
本発明の製剤は、アナバセイン化合物と、滑沢剤、セルロースエーテル、ヒドロコロイドおよびその他の任意成分をブレンドすることによって調製される。これらの成分は、製薬分野で通常使用されている典型的なブレンダー、例えば、Hobartミキサー、V型ブレンダー、プラネタリーミキサー、ツインシェルブレンダー等によって混合され得る。これらの成分は、典型的にはほぼ常温で一つにブレンドされ;追加の加熱は必要ないが、若干の温度調節を利用する場合がある。ブレンド工程は、約10℃〜約45℃の範囲の温度で行うのが好ましい。
【0205】
製剤の成分は、好ましくは、製薬分野で周知の技術を用いて大規模バッチで一つに混合され、その混合物が薬物に関して均一になるまで徹底的に混合される。
【0206】
薬物に関する用語「均一」は、本発明を通じて、様々な成分が実質的に一様であること、すなわち、実質的に均一なブレンドが形成されること、を表すのに使用されている。
【0207】
混合物が均一になると、その混合物の単位投薬量が、製薬分野で典型的に利用されている錠剤製造機を用いて錠剤の形態に圧縮され得る。より具体的には、混合物は錠剤プレス機のダイに供給され、十分な圧力が加えられて固形の錠剤が形成される。そのような圧力は様々であり得、典型的には約1,000psi〜約6,000psiの範囲であり、好ましくは約2,000psiの力である。本発明による固形製剤は、水性媒体が早い段階で錠剤に侵入するのを防止するのに十分な硬度まで圧縮される。好ましくは、製剤は、Schleuniger硬度試験による測定で5〜20Kpのオーダー、より好ましくは8〜20Kpのオーダーの錠剤形態に圧縮される。
【0208】
バリエーションとして、混合工程がまず滑沢剤の非存在下で行われることを除いて上記の工程のすべてが反復される。混合物が薬物に関して均一になったときに滑沢剤が添加され、その滑沢剤が実質的に混合物中に等しく分散するまで混合工程が継続される。その後、混合工程が終了し、そして、上記のように、混合物はその後直ちに錠剤に圧縮される。
【0209】
本発明の製剤を調製する別の手順は、滑沢剤を除くすべての成分を十分量の造粒溶媒と混合して実質的に一様なブレンドを形成する湿式造粒処理による。造粒ビヒクルは、成分に対して不活性でありかつ低い沸点、すなわち、好ましくは約120℃未満の沸点を有するものである。造粒ビヒクルは、好ましくは、OH基を含む溶媒、例えば1〜4個の炭素原子を含むアルコール、例えばイソプロピルアルコールまたはエタノールまたは水等である。水性分散物もまた利用され得る。好ましい態様において、使用される造粒ビヒクルのタイプは、持続放出ポリマーの種類に依存する。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを利用する場合、造粒ビヒクルは水またはアルコールであるのが好ましい。
【0210】
実質的に一様にブレンドされた混合物は、場合により、粒子サイズを小さくするために粉砕される、例えば、スクリーン、ふるい等を通される。スクリーンまたはふるい等は、好ましくは、約140メッシュ未満、より好ましくは約100メッシュ未満、さらに好ましくは約40メッシュ未満、そして最も好ましくは約20メッシュ未満である。
【0211】
次に、ブレンドを乾燥させる。この工程において、溶媒は、当業者に公知の物理的手段により、例えば蒸発により、ブレンドから除去される。得られた顆粒は、粒子のサイズを所望のサイズまでさらに縮小するよう再度粉砕される、例えばスクリーンまたはふるいを通される。次いで、滑沢剤が添加され、顆粒が混合されて、一様なブレンド、すなわち、薬物に関して均一なブレンドが提供され、次いで、得られた混合物が圧縮されて錠剤が形成される。好ましいバリエーションにおいて、ブレンドは、造粒ビヒクル中で造粒されると同時に流動床造粒処理を用いて乾燥される。
【0212】
錠剤が形成された後、その錠剤は、所望の場合、製薬分野で通常使用される材料でコーティングされ得る。コーティングされる場合、そのコーティングは、当技術分野で公知の技術により調製される。しかし、本発明の製剤は好ましくはコーティングされない。
【0213】
医薬用錠剤において典型的に見いだされる所望の硬度および破砕性(friability)を有する錠剤製品が得られる。硬度は、好ましくは5〜25Kp、より好ましくは8〜20Kpである。
【0214】
経口用剤形に関して、アナバセイン化合物は、製剤が胃腸管に沿って移動しつつ体内で消化された後、ゆっくりとまたは所定の速度で放出されることが意図される。この関係で、胃腸管は、消化管の腹部分、すなわち、食道の下端、胃および腸であるとみなされる。
【0215】
本発明による製剤の投薬量は、当業者に公知の個々の活性成分の通常の投薬量に相当する。患者に投与される薬物の正確な量は、様々な因子の中でも特に、患者の年齢、状態の重篤度および過去の病歴を含む多くの因子に依存し、それは担当医の裁量の範囲内である。適当な投薬量のガイドラインについては、Physicians Desk Referenceを参照されたい。
【0216】
本明細書で参照または引用されているすべての特許、特許出願、仮出願および刊行物は、本明細書の明示の教示と相反しない範囲で、すべての図面および表を含むその全体が参照により組み入れられる。
【0217】
以下は、本発明を実施するための手順を説明する実施例である。これらの実施例は、限定の根拠とされるべきではない。そうでないことが明記されない限り、すべての百分率は重量によるものであり、すべての溶媒混合物の比率は体積によるものである。
【実施例】
【0218】
実施例1 - DMXBAの制御放出カプセル剤形の調製
制御放出(CR)カプセルは、二塩酸塩として調製されたDMXBAの総重量に対して30%のK100M METHOCEL(Dow Chemical Co.)を用いて調製した。各カプセルは、用量150mgのDMXBAを含むものであった。増量剤としてAvicel-PH102(微結晶セルロース;FMC Corp., Newark, DE)を使用した。ゼロ時に、(ナイロンネットで吊り下げた)各カプセルを、37±0.5℃で事前に平衡化させておいた1.0リットルの人工胃液(これはSigma製のブタペプシン3.2グラム、0.9%塩化ナトリウムおよびpHを1.20にするHClを含むものであった)を含むビーカーの中央上部付近に浸漬させた。磁気攪拌棒を使用して液体を100rpmで穏やかに攪拌した。これらの条件は、このような制御放出の試験に関してUSPにおいて推奨されているものであった。ほぼ24時間の期間にまたがる9つの時点で1.00mlのサンプルを採取し、次いでこれを等量の人工胃液で置き換えた。これらのサンプルを、分光光度法によりおよびHPLCにより分析するまで凍結状態で(かつ暗所で)保管した。
【0219】
表1は、同じ条件で生産およびインビトロ評価した4つのカプセルの放出特性を示している。吸光度の読み取りは、1.0mlの各サンプルを、pHを1.2にするHClを含む2.0mlの水を添加することによって希釈した後に、(これを実際のペプシン、NaClおよびHClを含むpH 1.2の溶出媒体である人工胃液における吸光度として)測定した。
【0220】
(表1)

【0221】
450nmにおける吸光度は、液体をpH 1.2のHCl溶液で希釈した1:3希釈物から、(これを溶出液からのものとして)得た。希釈は吸光度を正確に測定するために必要とされ;未希釈の液体サンプルの吸光度は、正確な測定を行うには高すぎるものであった。図1は表1の放出プロフィールを示す。
【0222】
平均でみると、放出されたDMXBAは、複数回のサンプル採取の間に失われたDMXBAについての補正を行わない場合、CRカプセル中の150mgのうちの134mgであった(89%回収)。カプセル溶出媒体の最後の4つの各サンプルについてHPLCを実施した。これらの分析的分離により、DMXBAが放出プロセスの間またはCR材料を用いた処方後に変化していなかったことを確認した。
【0223】
150mgのDMXBAの非延長放出(即時放出)カプセルも2つ調製した。これらは、同条件下で測定した場合、同用量のCR型よりも非常に迅速なDMXBAの上昇を示した。表2に示されるように、溶出は、CR材料が存在しない場合、実質的に0.5時間またはそれ未満で完了した。
【0224】
(表2)CR材料を欠く150mg DMXBAカプセルの溶出

【0225】
表1と同じCR製剤および投薬量を、4名のヒトボランティアに投与した。副作用は見られなかった。図2のグラフは、この製剤が、インビトロ試験から予測されたDMXB-Aの持続的血漿レベルをもたらすことを示している。1つのカプセルの後、6〜8時間の間、潜在的治療レベルが見られる。同じ対象への2回の投与の平均レベルが図2に示されている。
【0226】
本明細書に記載される実施例および態様は解説のみを目的とするものであり、これに照らして様々な調整または変更が当業者に示唆されており、かつそれらは本願の精神および創作範囲に包含されるべきものであることが理解されるべきである。さらに、本明細書に開示される任意の発明またはその態様の任意の要素または限定は、それ以外の任意のおよび/もしくはすべての要素もしくは限定と(個別にもしくは任意の組み合わせで)または本明細書に開示されるそれ以外の任意の発明もしくは態様と組み合わせることができ、かつこのような組み合わせはすべて、それらに限定されない本発明の範囲内であることが想定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のアナバセイン化合物および制御放出剤を含む、制御放出剤形。
【請求項2】
制御放出剤が制御放出マトリクスであり、アナバセイン化合物が該制御放出マトリクスに組み込まれている、請求項1記載の制御放出剤形。
【請求項3】
制御放出マトリクスがポリマーを含む、請求項1または2記載の制御放出剤形。
【請求項4】
ポリマーが非イオン性である、請求項3記載の制御放出剤形。
【請求項5】
ポリマーが水溶性である、請求項3または4記載の制御放出剤形。
【請求項6】
ポリマーがゲル形成性ポリマーである、請求項3〜5のいずれか一項記載の制御放出剤形。
【請求項7】
ポリマーが水性環境において水和することで、剤形の外表面に、剤形内部の湿潤および崩壊を遅らせるゲル状の(ゲル)層を形成し、該ゲル層は水分が剤形に浸透するにつれ膨潤または膨張して厚みを増し、アナバセイン化合物が該ゲル層を通じて拡散する、請求項3〜6のいずれか一項記載の制御放出剤形。
【請求項8】
アナバセイン化合物が水不溶性であり、主として剤形の侵食を通じて剤形から放出される、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項9】
アナバセイン化合物が水溶性であり、主としてゲル層を通じた拡散により剤形から放出される、請求項7記載の制御放出剤形。
【請求項10】
ポリマーがセルロースポリマーである、請求項3〜9のいずれか一項記載の制御放出剤形。
【請求項11】
ポリマーがセルロースエーテルである、請求項3〜10のいずれか一項記載の制御放出剤形。
【請求項12】
ポリマーがヒプロメロースまたはメチルセルロースである、請求項3〜11のいずれか一項記載の制御放出剤形。
【請求項13】
錠剤またはカプセル剤である、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項14】
アナバセイン化合物がアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニストである、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項15】
アナバセイン化合物がアリーリデン-アナバセインである、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項16】
アナバセイン化合物がDMXBAまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項1〜14のいずれか一項記載の制御放出剤形。
【請求項17】
0.1重量%〜80重量%のアナバセイン化合物を含む、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項18】
20重量%〜99.99重量%の制御放出マトリクスを含む、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項19】
0.1重量%〜80重量%のアナバセイン化合物を含み、かつ20重量%〜99.99重量%の制御放出マトリクスを含む、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形。
【請求項20】
アナバセイン化合物を制御放出様式で対象に投与する方法であって、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形を対象に投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
剤形が、対象において、2時間〜48時間の期間のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物の制御放出を提供する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
治療有効量のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物が、約4時間〜約8時間の継続期間、対象の血中および/または脳内で維持される、請求項20記載の方法。
【請求項23】
ニコチン性アセチルコリン受容体の欠陥および/または機能異常に関連する疾患または状態を処置または予防する方法であって、前記請求項のいずれか記載の制御放出剤形をそれを必要とする対象に投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
ニコチン性アセチルコリン受容体が脳のニューロンニコチン性アセチルコリン受容体であり、疾患または障害が、アルツハイマー病、統合失調症、パーキンソン病、または注意欠陥多動性障害である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ニコチン性アセチルコリン受容体が非ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体であり、疾患または障害が、炎症障害、外傷、血管新生不全、血管新生過剰、または細胞増殖異常である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
剤形が、対象において、2時間〜48時間の期間のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物の制御放出を提供する、請求項23記載の方法。
【請求項27】
治療有効量のアナバセイン化合物またはその活性代謝産物が、約4時間〜約8時間の継続期間、対象の血中および/または脳内で維持される、請求項23記載の方法。
【請求項28】
経口投与に適した制御放出剤形を調製する方法であって、a)混合物を形成するために、一つまたはそれ以上のアナバセイン化合物およびマトリクス形成剤、さらに任意で一つまたはそれ以上の他の成分をブレンドする工程;ならびにb)該混合物から制御放出剤形を形成する工程を包含する方法。
【請求項29】
一つまたはそれ以上の他の成分が、滑沢剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、および溶解剤からなる群より選択される少なくとも一つの成分を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
制御放出剤形が、直接圧縮により、または湿式もしくは乾式造粒後の圧縮により、前記混合物から形成される、請求項28記載の方法。
【請求項31】
マトリクス形成剤が親水性ポリマーを含む、請求項28記載の方法。
【請求項32】
制御放出剤形が請求項1〜19のいずれか一項記載の制御放出剤形である、請求項28記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−502427(P2013−502427A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525660(P2012−525660)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/045867
【国際公開番号】WO2011/022467
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【出願人】(308032460)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト (25)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
【Fターム(参考)】